説明

既設配管老朽度診断装置及びこの装置を用いた診断方法

【課題】分岐管から探傷センサの到達位置までの距離が長くなっても容易に探傷センサを所望位置まで到達させることができる既設配管老朽度診断装置及びこの診断装置を用いた診断方法を提供する。
【解決手段】気体が送り込まれることによって膨らんで探傷センサ20部分に浮力を付与する浮力付与バッグ25を設け、浮力付与バッグ25へ気体を供給して浮力付与バッグ25を膨らませ、探傷センサ20を見かけ上軽くするとともに、分岐管13を介して信号伝達用ケーブル24を既設配管10内に押し込みながら、既設配管10の流体の流れによって下流側の到達予定位置まで探傷センサ20を移動させ、探傷センサ20が到達予定位置に到達すると、浮力付与バッグ25の気体を排気して浮力付与バッグ25の浮力を小さくして探傷センサ20を既設配管10の管底に接地させたのち、信号伝達用ケーブル24を分岐管13外へ引き抜きながら探傷センサ20を管底に沿って移動させて診断するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既設の地中に埋設された水道管等の金属製管あるいは鉄などの金属管部の内面に保護層を備えた複合管の金属管部の腐食などによる損傷部の有無や損傷部の大きさを非破壊で診断する既設配管老朽度診断装置及びこの装置を用いた診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地中に埋設された水道管は、全国で約60万kmという膨大な量に達している。これらの水道管は、埋設後40年から50年を経過したものも多く、更新の必要性を確認する上で、老朽度の把握が重要になってきている。
【0003】
従来、水道管の老朽度(老朽化の程度)の診断は、地面を開削して水道管を露出させ、主に管外面の腐食状態を目視により検査していたが、費用や手間がかかることから、開削せずに診断できる手法の開発が望まれている。
【0004】
特に、水道管の中でも、主に鋼管やダクタイル鋳鉄管などの金属管が使われている配水本管では、その必要性が強く求められている。
【0005】
鋼管やダクタイル鋳鉄管などの磁性を有する金属管については、水道管以外にガス配管や熱交換器配管などにも広く使用されているが、これら磁性を有する金属管の損傷部(主に、腐食による減肉部の有無)を診断する手法として、リモートフィールド渦流探傷法(以降、「RFEC法」という)を採用した探傷センサを備えた既設配管老朽度診断装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
すなわち、かかる既設配管老朽度診断装置を用いれば、配管の一部を切り離し、この切り離した配管の開口端から探傷センサを配管内に挿入していくことで、配管の大部分を配管の内側から損傷部の有無や損傷部の大きさを非破壊で診断することができる。
したがって、地中の埋設されている配管の場合においても、地面の一部のみを開削し、配管の一部を露出させ、この露出した配管の部分で、配管の一部を切り離せば、配管の大部分は、開削することなく、探傷を行うことができる。
【0007】
しかしながら、上記のような診断方法では、水道管を流れる上水を長時間停止する必要があるとともに、やはり、開削作業、配管の一部を取り除く作業、取り除いた配管の一部を元に戻す作業、埋め戻し作業が必要で、作業性及びコスト面でもまだまだ問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3428734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、探傷センサを小型化するとともに、この探傷センサを信号伝達用ケーブルの先端に取り付け、液体が流れる探傷検査しようとする金属管部を有する既設配管に、この既設配管に接続された分岐管(例えば、既設配管が水道管であれば、消火栓等)を介して探傷センサを先頭にして信号伝達用ケーブルを既設配管内に送り込み、信号伝達用ケーブルを進退させることによって探傷センサを前記既設配管の内壁面に沿って移動させながら、前記既設配管の金属管部の損傷部を探傷センサによって探査する方法が提案されている。
すなわち、この方法によれば、開削作業、配管の一部を取り除く作業、取り除いた配管の一部を元に戻す作業、埋め戻し作業が不要になり、また、本管の配水を止めることなく作業することができる。
【0010】
しかしながら、上記方法の場合、信号伝達用ケーブルを押し込むことによって探傷センサを既設配管の所定位置まで到達させるようになっているため、うまく奥まで押し込めるように、信号伝達用ケーブルを剛性の高いものにする必要があるが、信号伝達用ケーブルをできるだけ剛性のあるものにしたとしても、信号伝達用ケーブルを押し込める長さは数十メートルが限界である。
診断対象となる既設配管が配水支管であれば、100m以内に消火栓が設置されていることが多いため、押し込める長さが数十メートルであっても、隣接した消火栓から対向するように信号伝達用ケーブルを押し込むようにすれば、両消火栓間の全長にわたって探傷可能である。
【0011】
しかし、口径の大きい配水本管(呼び径350又は400以上)の場合、探傷センサを挿入する位置は、200〜300mおきに設けられた空気弁に限られてしまうため、上記のように、数十メートルしか押し込めないと、配水本管の一部しか診断することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて、分岐管から探傷センサの到達位置までの距離が長くなっても容易に探傷センサを所望位置まで到達させることができる既設配管老朽度診断装置及びこの診断装置を用いた診断方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明にかかる既設配管老朽度診断装置は、探傷検査しようとする金属管部を有する流体が流れる既設配管に、この既設配管に接続された分岐管を介して送り込まれる信号伝達用ケーブル及びこの信号伝達用ケーブルの先端に設けられた探傷センサを備え、前記信号伝達用ケーブルを、前記探傷センサを先頭にして前記分岐管を介して前記既設配管内に送り込んだのち、前記探傷センサを前記既設配管の内壁面に沿って移動させながら、前記既設配管の金属管部の傷を前記探傷センサによって損傷部を探索する既設配管老朽度診断装置であって、気体が送り込まれることによって膨らんで探傷センサ部分に浮力を付与する浮力付与バッグと、前記分岐管外側から前記浮力付与バッグへ気体を給排気して浮力付与バッグを膨縮させる給排気管とを備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の既設配管老朽度診断装置は、特に限定されないが、例えば、探傷センサ部分の、分岐管から既設配管への挿入及び既設配管から分岐管側への引き抜きを容易にするため及び浮力付与バッグのきずつきを防止するために、浮力付与バッグが膨らむに伴って開放され、浮力付与バッグが縮むに伴って浮力付与バッグを隠蔽するように閉じるバッグカバーを備えていることが好ましい。
また、上記バッグカバーは、探傷センサの後端側で開閉自在に枢支されていることが好ましい。
【0015】
浮力付与バッグは、特に限定されないが、既設配管に沿って探傷センサを押し込んでいく際に既設配管内の流体抵抗を少なくするために、探傷センサの先端側が尖頭状に形成されていることが好ましい。
なお、尖頭状とは、先細り形状であれば特に限定されず、例えば円錐形、紡錘形、角錐形、円錐台形などが挙げられる。
また、浮力付与バッグは、その探傷センサの先端側が、浮力付与バッグが膨らむに伴って探傷センサの先端側に移動可能に探傷センサに支持されていることが好ましい。
【0016】
探傷センサは、特に限定されないが、既設配管にリモートフィールド渦流を発生させる励磁コイルユニットと、この励磁コイルユニットから間隔を隔てて配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する受信コイルユニットとを備えるものが挙げられる。
また、上記探傷センサは、励磁コイルユニットが、既設配管の管軸に対してコイルの軸線が平行に配設され、励磁信号を印加することにより前記既設配管にリモートフィールド渦流を発生させる励磁コイルと、前記既設配管の内壁と対向する部分を除いて前記励磁コイルを囲むように配設された第1のケーシングとを備え、受信コイルユニットは、前記既設配管の管軸に対してコイルの軸線が垂直に配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する第1の受信コイルと、前記既設配管の管軸に対してコイルの軸線が平行に配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する第2の受信コイルと、前記既設配管の内壁と対向する部分を除いて前記第1および第2の受信コイルを囲むように配設された第2のケーシングとを備える構成とすることが好ましい。
【0017】
上記第1および第2のケーシングは、電磁シールド性を高めるとともに、ケーシングと管内壁との摺動による受信信号へのノイズ発生防止効果発現させることを目的として、非磁性の金属から形成されていることが好ましい。
本発明にかかる診断方法は、分岐管入口側から信号伝達用ケーブルを操作して、既設配管の、分岐管の分岐部の直下あるいはその近傍まで探傷センサの先端側を既設配管の下流側に向かうように挿入した後、浮力付与バッグに気体を送り込んで浮力付与バッグを膨らませて、探傷センサに浮力を付与した状態で分岐部から既設配管の下流側の予定到達位置まで探傷センサを送り込む工程と、探傷センサが既設配管の予定到達位置まで送り込まれたら、浮力付与バッグ内の気体を排気して、探傷センサを自重によって既設配管の底面に当接させたのち、信号伝達用ケーブルを引き抜きながら探傷サンサを前記分岐部側に移動させて、既設配管の予定到達位置から分岐部までの探傷を行う工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
本発明の診断方法は、特に限定されないが、探傷センサの先端側を既設配管の底から浮き上らせ、探傷センサの後端側が既設配管の底に接地した状態で探傷センサを既設配管の所望位置まで送り込むことが好ましい。
【0019】
本発明において、既設配管内を流れる流体としては、一般的には液体、特に水道水であるが、気体でも構わない。なお、流体が気体である場合、浮力付与バッグに供給される気体は、既設配管内を流れる気体より比重の軽いものが用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる既設配管老朽度診断装置は、気体が送り込まれることによって膨らんで探傷センサ部分に浮力を付与する浮力付与バッグと、前記分岐管外側から前記浮力付与バッグへ気体を給排気して浮力付与バッグを膨縮させる給排気管とを備えるで、探傷センサを既設配管の所定位置まで押し込む際に、浮力付与バッグに給排気管を介して気体を送り込むようにすれば、既設配管を流れる流体から浮力付与バッグが受ける浮力によって探傷センサから既設配管にかかる荷重が軽減される。したがって、探傷センサを既設配管内の所定位置まで移動させる際に既設配管の内壁面に対する摩擦抵抗が低減され、容易に探傷センサを既設配管の所定位置まで送り込める。
【0021】
そして、探傷センサが既設配管の所定位置まで到達すると、給排気管を介して浮力付与バッグ内の気体を排気すれば、浮力付与バッグによって得られる浮力が小さくなり、探傷センサが、探傷可能状態に既設配管の管底に受けられる。
したがって、この状態で信号伝達用ケーブルを徐々に引き抜きながら、探傷センサを管底に沿って移動させれば、探傷センサによって探傷センサの到達位置から分岐管の分岐部までの既設配管の腐食などの損傷部の有無を診断できる。
【0022】
また、本発明にかかる診断方法は、上記既設配管老朽度診断装置を用い、分岐管入口側から信号伝達用ケーブルを操作して、既設配管の、分岐管の分岐部の直下あるいはその近傍まで探傷センサの先端側を既設配管の下流側に向かうように挿入した後、浮力付与バッグに気体を送り込んで浮力付与バッグを膨らませて、探傷センサに浮力を付与した状態で分岐部から既設配管の下流側の予定到達位置まで探傷センサを送り込むようにしたので、探傷センサを既設配管内の所定位置まで移動させる際に既設配管の内壁面に対する摩擦抵抗が低減されるだけでなく、既設配管内を流れる流体の圧力によって探傷センサがスムーズに予定対象位置まで送り込める。
そして、探傷センサが既設配管の予定到達位置まで送り込まれたら、浮力付与バッグ内の気体を排気して、探傷センサを自重によって既設配管の底面に当接させたのち、信号伝達用ケーブルを引き抜きながら探傷サンサを前記分岐部側に移動させて、既設配管の予定到達位置から分岐部までの探傷を行うようにしたので、既設配管が地中埋設管であっても、地面を開削することなく、地上に露出する分岐管の端部から探傷センサを既設配管内に送り込み、分岐管から到達位置までの距離が長くても探傷センサをスムーズに所定の到達位置まで到達させ、既設配管の金属管部の腐食などの損傷部の有無を診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる既設配管老朽度診断装置の1つの実施の形態であって、その既設配管内に探傷センサを挿入し、浮力付与バッグを膨らます前の状態を模式的にあらわす断面図である。
【図2】図1の既設配管老朽度診断装置の浮力付与バッグを膨らました状態を模式的にあらわす断面図である。
【図3】浮力付与バッグの励磁センサユニット側の固定構造を説明する要部平面図である。
【図4】図1の既設配管老朽度診断装置に用いられる探傷センサの受信信号の一例を示す電圧波形図である。
【図5】図1の既設配管老朽度診断装置に用いられる探傷センサの受信信号をベクトル平面に表示したリサージュ図形の一例を示す図である。
【図6】実施の形態で用いる基準管の断面図である。
【図7】基準管における受信信号の位相差と実測減肉率との関係の一例を示すグラフである。
【図8】基準管における励磁信号の周波数と受信信号の位相差との関係の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態にかかる既設配管老朽度診断装置の信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図10】基準管を用いて減肉率基準データDsを作成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】基準管を用いて位相差補正データDcを作成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】既設配管における探傷センサの受信信号の位相差を測定し、その値から減肉率を推定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかる既設配管老朽度診断装置の1つの実施の形態をあらわしている。
【0025】
図1及び図2に示すように、この既設配管老朽度診断装置Aは、探傷センサ20と、信号伝達用ケーブル24と、浮力付与バッグ(リフティングバッグともいう)25と、バッグカバー26とを備えている。
探傷センサ20は、信号伝達用ケーブル24の先端に設けられていて、励磁コイルユニット21と、受信コイルユニット22と、励磁コイルユニット21と受信コイルユニット22とを連結する弾性連結体23とを備えている。
【0026】
浮力付与バッグ25は、塩化ビニル樹脂等のゴム状の材料で形成されていて、収縮した状態では、図1に示すように、長手方向が、ほぼ弾性連結体23の長さになり、弾性連結体23の上面をほぼ覆うように配置されている。
そして、浮力付与バッグ25は、後述するエアー配管27を介して空気が供給されることによって、図2に示すように、励磁コイルユニット21側の先端部を除き円筒状に膨らみ、先端部が先端に向かって徐々に縮径する尖頭状になり、空気が排気されることによって、収縮してほぼ元の状態(図1に示す状態)に戻るようになっている。
【0027】
また、浮力付与バッグ25は、円筒状部の端部が線条材(例えば、テグスなど)を用いて受信コイルユニット22に固定されるとともに、後述する気体の給排気管としてのエアー配管27の一端が接続され、円筒状部の尖頭状部側の端部がスライダ29を介して励磁コイルユニット21に沿って設けられたスライド固定部28に固定されている。
浮力付与バッグ25の容量は、探傷センサ2の重量及び既設配管10内を流れる流体の比重によっても異なるが、流体が水道水で、探傷センサ20の重量が3kg程度の場合、2〜3リットル程度の大きさとすることが望ましい。
【0028】
スライド固定部28は、図1〜図3に示すように、励磁コイルユニット21のケーシング212の上面から受信コイルユニット22側の面に沿って設けられ、ガイド溝281を備えている。
ガイド溝281は、励磁コイルユニット21の幅方向に貫通していて、励磁コイルユニット21の上面に平行な部分(以下、「水平部」と記す)281aと、励磁コイルユニット21の受信コイルユニット22側の面に平行な部分(以下、「垂直部」と記す) 281bと、これらを連結する湾曲部281cとを備えている。
【0029】
スライダ29は、2本の固定バー291と、ガイドピン292とを備えている。
2本の固定バー291は、スライド固定部28の幅方向の寸法より少し広い間隔でスライド固定部28を両側から挟むように配置され、それぞれ一端が浮力付与バッグ25の先端部に図示していないがねじジョイントを用いて固定されている。
【0030】
ガイドピン292は、ガイド溝281に挿通され、ガイド溝281に沿ってスライド可能になっているとともに、その両端部が固定バー291の他端部に固定されている。
また、ガイドピン292は、図示していないが、スライダ付勢バネ(ステンレス製等のコイル状のばね)によって、ガイド溝281の垂直部281a下端側に向かって付勢されている。
【0031】
バッグカバー26は、収縮した状態の浮力付与バッグ25の上方を覆うとともに、その一端が、受信コイルユニット22に枢支されて、この枢支軸261を中心に回動自在となっているとともに、枢支軸261に巻回されたコイルばね(図示せず)によって、浮力付与バッグ25側に向かって付勢されている。
なお、上記コイルばねの付勢力は、無負荷では、閉じた状態が保持できれば、浮力付与バッグ25が膨らむ際には、その障害にならないようにできるだけ小さくすることが好ましい。
【0032】
つぎに、探傷センサ20を詳しく説明する。
励磁コイルユニット21は、励磁コイル211と、それを収納する金属製の第1のケーシング212で構成されている。励磁コイル211は、樹脂製のコアもしくはフェライトコアにコイルが巻回されたもので、コイルの軸線は既設配管10の管軸Cに対して平行に配設されている。励磁コイル211に励磁信号が印加されると、既設配管10の金属管部11にリモートフィールド渦流が発生する。
【0033】
第1のケーシング212はアルミ合金などの非磁性の金属で作られ、既設配管10の内壁と対向する部分を除いて、励磁コイル211を囲むように配設されている。また図示しないが、励磁コイル211の表面および励磁コイル211と第1のケーシング212との隙間には、防水のために樹脂が充填されている。
【0034】
受信コイルユニット22は、第1の受信コイル221および第2の受信コイル222と、これらを収納する金属製の第2のケーシング223とで構成されている。第1の受信コイル221および第2の受信コイル222は、共に樹脂製のコアもしくはフェライトコアにコイルが巻回されたものであるが、コイルの軸線の方向が異なっている。すなわち、第1の受信コイル221は、図1に示すように、既設配管10の内壁面に沿うように探傷センサ20を設置した状態で、既設配管10の管軸Cに対してコイルの軸線が垂直(既設配管10の径方向)に配設されるようになっている。これに対し第2の受信コイル222は、コイルの軸線が、第1の受信コイル221のコイルの軸線に直交するとともに、第1の受信コイル221の軸線が、既設配管10の管軸Cに対して垂直に配設されたとき、既設配管10の管軸Cに対して平行に配設されるようになっている。
【0035】
第2のケーシング223は、第1のケーシング211と同様にアルミ合金などの非磁性の金属で作られ、既設配管10の内壁と対向する部分を除いて、第1の受信コイル221および第2の受信コイル222を囲むように配設されている。また図示していないが、励磁コイルユニット21と同様に、第1の受信コイル221および第2の受信コイル222の表面ならびにこれらのコイルと第2のケーシング223の隙間には、防水のために樹脂が充填されている。
なお、診断距離が長くなると、探傷センサ20と、信号処理回路との距離が遠くなり、信号処理回路で受信する信号が微弱化してしまい、診断ができなくなってしまうため、受信コイルユニット22内にプリアンプを設置することが好ましい。
プリアンプを使用して信号を増幅した場合には、データの伝送精度と信号伝達用ケーブル24の長さの制約を考慮しても、200m〜300m程度は十分に診断可能である。
【0036】
弾性連結体23は、励磁コイルユニット21と受信コイルユニット22を連結する例えばコイルばねで構成され、このコイルばねの内部に、励磁コイルユニット21に励磁信号を伝送するコア芯線が挿入されている。
【0037】
信号伝達用ケーブル24は、図示していないが、内部に複数のペア芯線と、気体給排気管としてのエアー配管と、探傷センサ20を押し込むための、例えばFRPロッドのようなテンションメンバとが通っていて、図示していないケーブルドラムに巻回されていて、ケーブルドラムを回転させることによって、送り出し及び巻き戻しできるようになっている。
【0038】
そして、信号伝達用ケーブル24は、主にポリエチレン樹脂製等の外装と芯線等で形成され、内部のペア芯線やエアー配管、テンションメンバ等を含んでトータル比重が1に近くなるように調整したものが使用されている。
また、信号伝達用ケーブル24は、図示していないが、コネクタを介して探傷センサ20に接続され、コネクタを介して探傷センサ20に接続されることによって、信号伝達用ケーブル24内の複数のペア芯線と探傷センサ20とが電気的に接続されるとともに、信号伝達用ケーブル24内のエアー配管が、後述するエアー配管27に接続されるようになっている。
【0039】
信号伝達用ケーブル24内に通された複数のペア芯線の他端は、ケーブルドラム側で図9に示す既設配管老朽度診断装置本体A内の信号処理回路等と接続されている。
信号伝達用ケーブル24内に通されたエアー配管の他端は、ケーブルドラム側で図示していない給排気可能なエアーポンプに接続されている。
【0040】
信号伝達用ケーブル24は、ロータリエンコーダ等の移動量検出手段(図示せず)によって信号伝達用ケーブル24の送り出し量を測定することができるようになっている。すなわち、信号伝達用ケーブル24の送り出し量を測定することによって、探傷センサ20の移動量(既設配管10内での位置)を特定するようになっている。
【0041】
エアー配管27は、第2のケーシング223の励磁コイルユニット22側の端面から突出する一端部を除き、第2のケーシング223内に内蔵されていて、他端に図示していないが、信号伝達用ケーブル24がコネクタを介して接続されることによって信号伝達用ケーブル24内に通されたエアー配管の端部が嵌合して、信号伝達用ケーブル24内に通されたエアー配管と気密状態で連通する受口を備えている。
そして、エアー配管27は、励磁コイルユニット22側の端面から突出するエアー配管27の先端が浮力付与バッグ25にねじジョイントを用いて接続されている。
【0042】
つぎに、この既設配管老朽度診断装置Aを用いた既設配管10である水道の配水支管あるいは配水本管の診断方法の1例を工程順に詳しく説明する。
(1)既設配管10の診断対象部の始端に位置する消火栓あるいは空気弁が設けられた分岐管13の消火栓あるいは空気弁(図示せず)の根元に設けられたボール弁13aを閉じて消火栓あるいは空気弁を取り外す。
(2)挿入用筒体18の蓋19に設けられたゴム製シールリング(図示せず)を備えた挿入孔19aに信号伝達用ケーブル24の先端部を挿通する。なお、挿入孔19aへの信号伝達用ケーブル24の挿通によって、上記ゴム製シールリングの内周面が、信号伝達用ケーブル24がスライド可能な状態で信号伝達用ケーブル24の周壁面にほぼ水密に圧接される。
(3)信号伝達用ケーブル24の先端にコネクタを介して探傷センサ20を接続する。
(4)探傷センサ20が挿入用筒体18内に収まるように配置した状態で、蓋19によって挿入用筒体18の一方の開口端を閉じる。
(5)挿入用筒体18の他方の開口端をボール弁13aに固定する。
(6)ボール弁13aを開放し、挿入用筒体18と分岐管13とを連通させたのち、探傷センサ20の先端が水道水の下流方向を向くとともに、既設配管10の管底に探傷センサ20が接するまで信号伝達用ケーブル24を既設配管10方向に押し込む。なお、このとき、信号伝達用ケーブル24の周壁面に上記ゴム製シールリングの内周面が、ほぼ水密に圧接されているので、挿入孔19aからの漏水はあっても少量に保たれる。
(7)エアーポンプを作動させて、信号伝達用ケーブル24内のエアー配管及びエアー配管27を介してエアーを浮力付与バッグ25に送り、浮力付与バッグ25を膨らませ、探傷センサ20に浮力を与え、探傷センサ20の先端側を浮き上らせる。
このとき、探傷センサ20が上下反転しないように、探傷センサ20の後端は、管底の接地した状態を保持する。また、スライダ29は、ガイド溝281にガイドされながら、水平部281bの先端まで移動する。そして、膨らんだ浮力付与バッグ25は、尖頭状をした先端がほぼ流れに平行な方向を向くとともに、後端側がバッグカバー26の側方にはみ出た状態となる。また、バッグカバー26は、浮力付与バッグ25の膨らみに伴って枢支軸261を中心に回動して、水道水の流れを遮るように立ち上がり、水道水によって下流側へ押される。
(8)上記の浮力付与バッグ25が膨らんで探傷センサ20に浮力が付与された状態でさらに信号伝達用ケーブル24を既設配管10に押し込んで、探傷センサ20を既設配管10の探傷しようとする位置(例えば、隣接する消火栓あるいは空気弁が設けられた分岐管の分岐部)まで移動させる。
すなわち、探傷センサ20がその後端部を除いて浮き上っているので、探傷センサ20の管底との接触面積が少なく移動に際しての摩擦抵抗が少ない。また、立ち上がったバッグカバー26及び浮力付与バッグ25の後端部のバッグカバーからはみ出た部分が水道水の圧力を受けるので、探傷センサ20が移動方向(水道管の下流方向)に向かって付勢される。また、浮力付与バッグ25の先端側が尖頭状になっているので、移動方向に向かっての抵抗が少ない。したがって、軽い力で信号伝達用ケーブル24を押し込むことができる。なお、探傷センサ20が所定の位置まで移動したかどうかは、信号伝達用ケーブル24に設けたロータリエンコーダ等の移動量検出手段によって検出される。
(9)所定の位置まで探傷センサ20が移動すると、エアーポンプを逆転して浮力付与バッグ25の空気を、エアー配管27及び信号伝達用ケーブル24内のエアー配管を介して排気し、浮力付与バッグ25を収縮させる。
浮力付与バッグ25が収縮することで、探傷センサ20の励磁コイルユニット21及び受信コイルユニット22がそれぞれ完全に接地する。また、スライダ29は、ばねの付勢力によってガイド溝281の垂直部下端まで移動する。バッグカバー26は、枢支軸261に巻回されたコイルばねの付勢力及び水道水の水圧によって、浮力付与バッグ25が収縮するに伴って閉じる方向(弾性連結体23方向)に枢支軸261を中心に回動し、収縮した浮力付与バッグ25を弾性連結体23との間で収容状態に保持する。
(10)信号伝達用ケーブル24を徐々に引き抜くことによって、探傷センサ20を管底の沿わせながら、分岐管13側に移動させ、同時に探傷センサ20によって後述するようにして既設配管10の金属管部11の腐食などによる損傷部の有無やその大きさを調べる。
(11)探傷センサ20が挿入用筒体18内に入り込むまで信号伝達用ケーブル24を引き抜いたのち、ボール弁13aを閉じて、挿入用筒体18をボール弁13aから取り外す。
(12)ボール弁13aに取り外した消火栓や空気弁を取り付ける。
【0043】
<探傷センサの機能>
次に、図4〜図8を参照して探傷センサ20の機能について説明する。探傷センサ20では、励磁コイル211を囲むように金属製のケーシング212を配設し、このケーシング212と既設配管10の金属管部11によって擬似的な金属管を構成することによって、閉じた磁場を形成している。この閉じた磁場によって既設配管10の金属管部11にリモートフィールド渦流が発生する。
【0044】
このように本実施の形態の探傷センサ20は、直径の大きい励磁コイルを用いて既設配管10の円周方向に閉じた磁場を形成する代わりに、金属製のケーシング212と既設配管10の金属管部11で擬似的な金属管を構成することによって閉じた磁場を形成している。結果として、既設配管10の内径に比較して小さなサイズの励磁コイルユニット21を用いて、既設配管10の金属管部11にリモートフィールド渦流を発生させることができる。
【0045】
また、ケーシング212と既設配管10の金属管部11によって形成される閉じた磁場は、リフトオフによる変動が少ないため、防食層12の厚みの違いを吸収できるメリットを併せ持っている。
【0046】
さらに、励磁コイル211および受信コイル221、222を非磁性の金属製ケーシング212および223で囲むことによって、ケーシング内で渦電流損が生じて直接伝播波が減衰する。結果として、受信信号への直接伝播波の影響を低減できるので、励磁コイルユニット21と受信コイルユニット22の間隔を狭めて、探傷センサ10をコンパクトに構成できる。
【0047】
金属製ケーシング212および223の材質としては、非磁性の金属、例えばアルミニウムを主体とする合金やオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)を用いることが好ましい。金属製ケーシング212および223に磁性体の金属を用いた場合、探傷センサ20の移動時に、ケーシングと管内壁との摺動によって受信信号にノイズが発生するため、ケーシングの材質としては好ましくない。
【0048】
次に、受信コイルユニット22について説明する。前述したように受信コイルユニット22は、既設配管10の管軸Cに対してコイルの軸線が垂直に配設される第1の受信コイル221と、既設配管10の管軸Cに対してコイルの軸線が平行に配設される第2の受信コイル222を含む。
【0049】
図4に第1の受信コイル221および第2の受信コイル222で受信した信号の電圧波形の一例を示す。図中、横軸は既設配管10の管軸方向の位置を表す。図4の電圧波形は、0.4mmφ×1000巻の励磁コイル211、0.07mmφ×2000巻の第1の受信コイル221および0.1mmφ×1000巻の第2の受信コイル222を使用し、周波数35Hz、電圧15Vp−pの励磁電圧を印加した時の波形である。
【0050】
図4(A)および(B)は、第1の受信コイル221の受信信号を同期検波することにより得られる2つの信号成分A1cosφ1およびA1sinφ1を示す。A1は受信信号の振幅である。信号成分A1cosφ1とA1sinφ1は、受信信号を励磁信号と同位相および90度位相の異なる参照信号でそれぞれ同期検波することにより得られる。また図4(C)および(D)は、第2の受信コイル222の受信信号を同期検波することにより得られる2つの信号成分A2cosφ2およびA2sinφ2を示す。A2は受信信号の振幅である。
【0051】
図5に示したリサージュ図形は、第1の受信コイル221の受信信号から得られた2つの信号成分A1cosφ1およびA1sinφ1のうち、図4(A)、(B)の中央部に示すように、既設配管10の損傷部(きずがある箇所)の信号成分をベクトル平面に表示したものの一例である。横軸は受信信号を励磁信号と同位相の参照信号で同期検波した値A1cosφ1を表し、縦軸は受信信号を励磁信号と90度位相の異なる参照信号で同期検波した値A1sinφ1を表す。リサージュ図形の軸が横軸となす角θが励磁信号と受信信号との位相差を表す。なお、XgおよびYgはリサージュ図形のオフセット値である。これらのオフセットは、第1受信コイル221で検出する電磁エネルギーの方向がコイルの軸心と一致していないことにより生じる。
【0052】
既設配管10の金属管部11に損傷部がある場合、励磁コイル211により発生し既設配管10の金属管部11を伝搬する電磁エネルギーは、管軸Cに対して垂直方向(半径方向)のベクトルを有する電磁エネルギーの流れを生じ、第1の受信コイル221で効率よく検出することができる。従って、第1の受信コイル221は、金属管部11の肉厚の測定に用いられる。
【0053】
一方、既設配管10の金属管部11に損傷部がない場合、管軸Cに垂直方向の電磁エネルギーの流れは発生せず、管軸Cに平行な電磁エネルギーの流れのみとなる。その結果、電磁エネルギーは、コイルの軸線が管軸Cに平行に配設された第2の受信コイル222により検出される。第2の受信コイル222は、既設配管10の電磁気特性に関する情報を得るために用いられる。
【0054】
<肉厚の推定方法>
以下、第1の受信コイル221の受信信号を用いた肉厚の推定方法について説明する。前述したように、励磁信号と受信信号との位相差θは既設配管10の肉厚に応じて変化する。既設配管10と同じ材質で作られた、概ね同一の肉厚の基準管10Sをあらかじめ用意し、この基準管10Sの外面に損傷部として深さの異なる複数のきずをつける。次に、探傷センサ20を移動させながら基準管10Sの位相差θを測定し、測定した位相差θと実測した金属管部11の減肉率との関係を求めてデータ化する。
【0055】
そして、既設配管10で測定した位相差θを上述のデータと照合することにより、既設配管10の肉厚を推定することができる。ここで、「減肉率」とは、腐食等によって既設配管10の金属管部11の厚みが当初の厚みから減少した割合をいい、きずの深さ(損傷深さ)を表す指標として用いられる。
【0056】
減肉率の推定方法についてさらに具体的に説明する。まず、測定を行なう既設配管10と材質が同じで(例えばダクタイル鋳鉄管)、金属管部11の厚さが概ね等しい基準管10Sを用意する。図6に基準管10Sの断面を示す。図6に示すように、基準管10Sの外周面には減肉率の異なるきず11a〜11cが形成されている。前述した方法で探傷センサ20を移動させながら、励磁コイル211を任意の周波数の信号で励磁し、第1の受信コイル221で受信した信号から位相差θを算出する。
【0057】
次に、算出した位相差θと実測した減肉率をグラフ化して相互の関係を求める。図7に、このようにして求めた位相差θと減肉率の関係の一例を示す。図7において、横軸は第1の受信センサ221で測定した位相差θを表し、縦軸は減肉率の実測値を表す。図中の■は実測値をグラフにプロットしたものである。
【0058】
図7に示すように、実測値に沿うように直線または曲線を引き、その直線または曲線上の位相差と減肉率の関係をデータ化してメモリに記憶する。以降、このデータを「減肉率基準データ」Dsという。既設配管10で測定した位相差θを、減肉率基準データDsの位相差と照合すれば、既設配管10の損傷部の減肉率を推定することができる。
【0059】
<位相差の補正方法>
次に、第2の受信コイル222の受信信号を用いた位相差の補正方法について説明する。RFEC法において、励磁コイルに印加される励磁信号と受信コイルで受信した信号との位相差θは、以下の式(1)で示される。
θ=k(π・f・μ・σ)1/2・・・・・(1)
ここで、kは比例定数、πは円周率、fは励磁信号の周波数、μは金属管部の透磁率、σは金属管部の導電率を表す。
【0060】
式(1)から明らかなように、受信信号の位相差θは、金属管部の透磁率μ、導電率σおよび励磁コイルに印加される励磁信号の周波数fにより変化する。このうち、電磁気特性すなわち透磁率μと導電率σは管に固有のものである。このため、受信コイルの測定信号の位相差が肉厚と比例するからといって、得られた位相差を基に一律に肉厚を導き出すと、測定した肉厚に誤差が生じる。金属管部の肉厚を精度よく導き出すためには、電磁気特性の違いにより生じる受信信号の位相差の変動を補正する必要がある。
【0061】
以下、位相差の補正方法について具体的に説明する。まず第2の受信コイル222を用いて、励磁信号の周波数を変えながら既設配管10のきずのない健全な金属管部(以降、「健全部」という)の位相差θを測定する。健全部では、前述の図6に示すようなリサージュ図形は生成されず、A1cosφ1とA1sinφ1は点gに集束するため、位相差θは、原点Oと点gを結ぶ線と、横軸とのなす角度として表される。
【0062】
図8に、励磁信号の周波数と第2の受信コイル222を用いて測定した位相差との関係を示す。図8において、横軸は励磁信号の周波数、縦軸は位相差を表す。図から明らかなように、周波数と位相差との間にほぼ比例の関係がある。
【0063】
前述の式(1)より、電磁気特性すなわち透磁率μと導電率σが異なる金属管を用いた場合、周波数fの値を変えることによって、位相差θを同一の値にすることができる。言い換えれば、周波数を変えることによって金属管の電磁気特性の違いによって生じる位相差の変動を補正できることになる。
【0064】
例えば、図8において、前述した減肉率基準データDsを作成した時の励磁信号の周波数が35Hzとすると、第2受信コイルの健全部の位相差θは240度となる。一方、既設配管10の健全部の位相差が260度であったとすると、位相差に20度の違いが生じる。従って、基準管10Sの健全部の位相差が220度となる周波数32Hzで既設配管10の位相差θを求めれば、基準管10Sの位相差とほぼ同じ値となり、金属管部の電磁気特性の違いを吸収することができる。
【0065】
図8に示した周波数と位相差の関係を、既設配管10の位相差θを測定する際の補正データとして用いるため、データ化してメモリに記憶する。以降、このデータを「位相差補正データ」Dcという。また初期の周波数f0の励磁信号を用いて測定した基準管10Sの健全部の位相差θと同一の位相差が得られる既設配管10の励磁信号の周波数f1を「特定周波数」という。
【0066】
既設配管10を、探傷センサ20を移動させながら特定周波数f1の励磁信号を用いて励磁させ、受信信号を第1の受信コイルで受信して位相差を算出し、その値を前述の減肉率基準データDsと照合すれば、減肉率を精度よく推定できる。その結果、電磁気特性の異なる管であっても、肉厚に関するより正確な情報を得ることができる。
【0067】
<既設配管老朽度診断装置の信号処理回路>
次に、既設配管老朽度診断装置Aの信号処理回路を説明する。図9に示すように、この既設配管老朽度診断装置Aは、探傷センサ20に接続される信号処理回路が、励磁信号生成部30、信号処理部40および50、診断部60ならびに制御部70を備えている。
【0068】
励磁信号生成部30は、周波数f0またはf1の交流信号を生成し、励磁信号として探傷センサ20の励磁コイル211に送出する。信号処理部40は、第1の受信コイル221の受信信号を処理してA1cosφ1とA1sinφ1を作成する。信号処理部50は、第2の受信コイル221の受信信号を処理してA2cosφ2とA2sinφ2を作成する。診断部60は、信号処理部40の出力に基づいて既設配管10の減肉率を推定する。制御部70は、信号処理部50の出力に基づいて、励磁信号生成部30で生成する励磁信号の周波数を設定する。
【0069】
励磁信号生成部30は、基準発信器301、プログラマブルデバイダ302、PLL回路303、分周器304および305、波形成形回路306、アンプ307、インバータ308、ならびにフリップフロップ309および310を含む。
【0070】
プログラマブルデバイダ302およびPLL回路303は可変分周器を構成し、制御部70の指示信号Isに基づいて、基準発振器301から出力されたクロック信号を任意の値に分周する。PLL回路303の出力信号は分周器304でさらに1/2n(nは整数)に分周され、波形成形回路306で矩形波からSin波に変換され、アンプ308で増幅された後、励磁信号Smとして、ペア芯線311を介して励磁コイル211に送出される。
【0071】
またPLL回路303の出力信号は、分周器305でさらに1/nに分周された後2つに分岐する。一方の信号はインバータ308で反転され、フリップフロップ(図では「FF」と表示)309で1/2に分周された後、信号処理部40および50に供給される。また他方の信号はフリップフロップ(FF)310で1/2に分周された後、信号処理部40および50に供給される。
【0072】
信号処理部40は、差動アンプ401、ローパスフィルタ(図では「LPF」と表示)402、バンドパスフィルタ(図では「BPF」と表示)403、同期検波器404および405を含む。第1の受信コイル221からペア芯線406を通して受信した受信信号Sr1は差動アンプ401で増幅され、ローパスフィルタ402で高周波ノイズが除去される。バンドパスフィルタ403はPLL回路303の出力信号に応じて取り出せる周波数帯域が変更できる。バンドパスフィルタ403によって励磁信号の周波数を中心とした成分が取り出された受信信号Sr1は、同期検波器404および405に入力され、それぞれフリップフロップ309および310の出力を参照信号として同期検波され、さらに全波整流されてA1cosφ1とA1sinφ1が出力される。
【0073】
信号処理部50は、差動アンプ501、ローパスフィルタ(LPF)502、バンドパスフィルタ(BPS)503、同期検波器504および505を含む。信号処理部50の構成および機能は信号処理部40のそれと同じであり、第2の受信コイル222からペア芯線406を通して受信した受信信号Sr2は、信号処理部40と同様の処理が施される。信号処理部50からは、第2の受信コイル222の受信信号Sr2を同期検波したA2cosφ2とA2sinφ2が出力される。
【0074】
診断部60は、CPU(Central Processing Unit)601、メモリ602および表示回路603を含む。CPU601は、信号処理部40の出力A1cosφ1とA1sinφ1に基づいて受信信号Sr1の位相差θを算出する。またCPU601は、算出した位相差θをメモリ602に記憶された減肉率基準データDsと照合して減肉率を推定する。表示回路603は、CPU601によって推定された減肉率の値を数字もしくは長さで表示する。
【0075】
制御部70は、CPU701とメモリ702を含む。CPU701は、信号処理部50の出力である第2の受信コイル222の受信信号Sr2の同期検波出力A2cosφ2とA2sinφ2に基づいて位相差θを算出する。またCPU701は、算出した位相差θをメモリ702に記憶された位相差補正データDcと照合して、位相差θが最も近い周波数を抽出する。
【0076】
さらにCPU701は、励磁信号生成部30のプログラマブルデバイダ302に指示信号Isを送信し、初期周波数f0もしくは周波数f1のいずれかの励磁信号を生成するよう指示する。またCPU701は、診断部60のCPU601に対し、位相差θの算出と減肉率の推定を指示する。
【0077】
<既設配管老朽度診断装置の動作>
次に、図9のブロック図、図10、図11および図12のフローチャートを参照して、既設配管老朽度診断装置Aの動作を説明する。図10は基準管10Sを用いて減肉率基準データDsを作成する際の処理の流れを示す。図11は基準管10Sを用いて位相差補正データDcを作成する際の処理の流れを示す。図12は既設配管10の位相差θを算出し、その値から減肉率を推定する際の処理の流れを示す。
【0078】
最初に、図10に基づいて、減肉率基準データDsを作成する際の処理を説明する。ステップS11において、励磁信号生成部30は、制御部70の指示に基づいて初期周波数f0の励磁信号Smを生成し、励磁コイル211に送出する。励磁コイル211に送出された励磁信号Smによって基準管10Sの金属管部11にリモートフィールド渦流が生成され、これにより電磁波が発生する。
【0079】
ステップS12において、信号処理部40は、第1受信コイル221で受信した信号Sr1を同期検波して、直交する2つの信号成分(A1cosφ1とA1sinφ1)を作成する。
【0080】
ステップS13において、診断部60のCPU601は、信号処理部40の出力に基づいて受信信号Sr1の位相差θを算出すると共に、一時的にメモリ602に記憶する。位相差θの算出に際しては、前述の図5において、横軸および縦軸をそれぞれXgおよびYgだけシフトして原点Oを点gと一致させた後、下記式(2)により位相差θを求める。
θ=180−tan-11sinφ1/A1cosφ1・・・・・(2)
【0081】
ステップ14において、制御部70のCPU701は、図示しない移動量検出手段の出力信号から探傷センサ20の移動量を確認し、測定対象領域の測定を全て終了したか否か判断する。未測定領域が残っている場合は、探傷センサ20が次の測定位置に移動したことを確認した後、ステップS11の処理に戻り、対象領域の測定が完了した場合はステップS15の処理に移る。
【0082】
ステップS15において、診断装置Aの操作者は、メモリ602に一時記憶された位相差θとあらかじめ測定した減肉率の実測値の関係を図7に示すグラフにプロットし、その値に沿うように直線または曲線を引き、その直線または曲線上の位相差と減肉率との関係を、減肉率基準データDsとしてデータ化する。
【0083】
ステップS16において、診断部60は、作成された減肉率基準データDsを図示しない入力手段によって取り込み、メモリ602に記憶する。
【0084】
次に図11に基づいて、位相差補正データDcを作成する際の処理を説明する。この処理においては、基準管10Sの健全部の受信信号が必要となるため、図示しないケーブルドラムを巻回して探傷センサ20を移動させ、診断部60からの信号に基づいて、第1受信コイル221の受信信号Sr1が最低となる位置、すなわち、きず11a〜11cのない位置で探傷センサ20を停止させておく。
【0085】
ステップS21において、制御部70は、励磁信号生成部30に指示信号Isを送信して周波数を初期周波数f0から変更するよう指示する。励磁信号生成部30は指示された周波数の励磁信号Smを生成して励磁コイル211に送出する。
【0086】
ステップS22において、信号処理部50は、第2受信コイル222で受信した信号Sr2を同期検波して、直交する2つの信号成分(A2cosφ2とA2sinφ2)を作成する。
【0087】
ステップS23において、制御部70のCPU701は、信号処理部50の出力に基づいて受信信号Sr2の位相差θを算出し、メモリ702に一時的に記憶する。
【0088】
ステップS24において、CPU701は、予定した周波数の変更が全て終了したか否か判断し、周波数の変更が終了していない場合はステップS21の処理に戻り、周波数の変更が全て終了した場合は、ステップS25の処理に移る。
【0089】
ステップS25において、CPU701は、メモリ702に一時記憶されたデータに基づいて、図8に示す位相差θと周波数の関係を示す位相差補正データDcを作成し、引き続いてステップS26において、このデータをメモリ702に記憶する。
【0090】
次に、図12に基づいて、既設配管10の位相差θを測定し、その値から減肉率を推定する際の処理について説明する。ステップS31において、励磁信号生成部30は、制御部70の指示に基づいて初期周波数f0の励磁信号Smを生成し、励磁コイル211に送出する。励磁コイル211に送出された励磁信号Smによって既設配管10の金属管部11にリモートフィールド渦流が生成され、これに伴って電磁波が発生する。
【0091】
この際、探傷センサ20は、図示しないケーブルドラムを巻回して探傷センサ20を移動させ、第1受信コイル221の受信信号が最低となる位置、すなわち既設配管10の健全部に置かれている。このような状態において、リモートフィールド渦流により生じた電磁波を第2受信コイル222で受信する。
【0092】
ステップS32において、信号処理部50は、第2受信コイル222の受信信号Sr2を同期検波して、直交する2つの信号成分(A2cosφ2とA2sinφ2)を作成する。
【0093】
ステップS33において、制御部70のCPU701は、信号処理部50の出力(A2cosφ2とA2sinφ2)に基づいて、既設配管10の健全部の位相差θを算出する。CPU701は、さらにステップS34において、算出した既設配管10の健全部の位相差θ1を、メモリ702にあらかじめ記憶されている位相差補正データDcと照合して、θ1に最も近い位相差に対応した特定周波数f1を抽出する。
【0094】
ステップS35において、制御部70のCPU701は、ステップS34で選択した特定周波数f1の励磁信号の生成を励磁信号生成部30に指示し、励磁信号生成部30は、制御部70の指示に従って周波数f1の励磁信号Smを生成し、励磁コイル211に送出する。
【0095】
ステップS36において、信号処理部40は、第1受信コイル221の受信信号Sr1を同期検波して、直交する2つの信号成分(A1cosφ1とA1sinφ1)を作成する。
【0096】
ステップS37において、診断部60は、信号処理部40の出力に基づき、既設配管10の外周面に損傷部がある箇所について受信信号Sr1の位相差θを算出する。診断部60は、さらにステップS38において、算出した受信信号Sr1の位相差θをメモリ602に記憶された減肉率基準データDsと照合し、算出した位相差θに最も近い位相差に対応する減肉率を抽出する。
【0097】
このようにして抽出された減肉率は、ステップS31からS34までの処理により既設配管10の電磁気特性の違いによる受信信号の変動が補正されているため、既設配管10の減肉率の実測値に近い値となる。
【0098】
続いてステップS39において、制御部70のCPU701は、図示しない移動量検出手段の出力信号から探傷センサ20の移動量を確認し、測定対象領域の測定が全て終了したか否か判断する。未測定の領域がある場合は探傷センサ20が次の測定位置に移動したことを確認した後ステップS31の処理に戻り、対象領域の測定が全て終了した場合は処理を終了する。
【0099】
上述した処理により得られた減肉率は、金属管部11の電磁気特性の違いによる受信信号の変動が補正されているため、金属管部11の減肉率について高い精度の推定が可能となる。そしてこの値に基づいて既設配管10の損傷部の状態を検査することにより、老朽度のより正確な診断が可能となる。
【0100】
また、上述した処理では、励磁信号Smの周波数の補正は、制御部70のCPU701によって自動的に行われるため、既設配管10の診断を行う担当者は既設配管10の電磁気特性の違いを考慮する必要がなく、診断作業の効率化が図れる。
【0101】
この既設配管老朽度診断装置Aは、以上のように構成されているので、以下のような優れた効果を備えている。
(1)浮力付与バッグ25を備えているので、浮力付与バッグ25にエアーを送り込んで浮力付与バッグ25を膨らませれば、既設配管10を流れる流体から浮力付与バッグ25が受ける浮力によって探傷センサ20の先端側が浮き上り、既設配管10の管底にかかる探傷センサ20の荷重が軽減される。したがって、探傷センサを既設配管10内の所定位置まで移動させる際に既設配管10の内壁面に対する摩擦抵抗が低減され、容易に探傷センサ20を既設配管10の所定位置まで送り込める。
そして、探傷センサ20が既設配管10の所定位置まで到達すると、エアー配管27及び信号伝達用ケーブル24内のエアー配管を介して浮力付与バッグ25内の空気を排気すれば、浮力付与バッグ25によって得られる浮力が小さくなり、探傷センサ20が、探傷可能状態に既設配管10の管底に受けられる。
したがって、この状態で信号伝達用ケーブル25を徐々に引き抜きながら、探傷センサ20を管底に沿って移動させれば、探傷センサ20によって探傷センサ20の到達位置から分岐管13の分岐部までの既設配管10の損傷部の有無及び損傷部の損傷度合いの診断を行うことができる。
そして、既設配管10内を流れる流体を停止することなく探傷を行えるので、例えば、既設配管10が配水本管などであっても、断水することなく損傷部の有無及び損傷部の損傷度合いの診断を行うことができる。
勿論、開削などの作業を必要としないので、コストダウンをはかることができる。
(2)上記のように、浮力付与バッグ25が膨らんだ状態で、探傷センサ20が受信コイルユニット22の後端側が常に管底に接地した状態に保持されるので、探傷センサ20を所定位置まで移動させる際に探傷センサ20が反転したりすることを防止できる。
(3)バッグカバー26を備えていて、浮力付与バッグ25が収縮した状態では、浮力付与バッグ25がこのバッグカバー26に収容された状態となり、浮力付与バッグ25が挿入や、引き抜き時に邪魔にならず、また、きずつきも防止できる。
(4)浮力付与バッグ25の先端側が尖頭状をしているので、膨らんだ状態でスムーズに流体内を移動させることができる。
(5)浮力付与バッグ25が膨らんだ状態で、バッグカバー26が立ち上がるとともに、浮力付与バッグ25の後端側がバッグカバー26の側方にはみ出るようになるので、探傷センサ20を励磁コイルユニット側を先頭にして流体の下流側に向かって移動させる場合、
バッグカバー26及び浮力付与バッグ25のバッグカバー26の側方にはみ出た部分に流体が当たり、下流側に向かっての推進力が得られる。したがって、より軽い力で探傷センサ20を所定位置まで移動させることができる。
(6)信号伝達用ケーブル24が、内部のペア芯線やエアー配管、テンションメンバ等を含んでトータル比重が1に近くなるように調整したものが使用されているので、探傷センサ20に、重量的な負荷が極力かからないようにすることができる。
(7)探傷センサ20が、上記のように構成されているので、小型でコンパクトになるとともに、より正確な診断を行うことができる。
(8)信号伝達用ケーブル24が、コネクタにあらかじめ定めた角度以上回転しないような捩れ逃がし機構を介して接続されているので、信号伝達用ケーブル24の巻癖による探傷センサ20の回転を最小限に抑え、探傷センサ20の浮き上がりや転倒を防止する。すなわち、信号伝達用ケーブル24は、図示しないケーブルドラムに巻き取り、もしくは巻き戻されるため、ケーブル製造時、あるいはドラムへの巻き取り、巻き戻しにより、信号伝達ケーブルに巻癖が生ずるが、既設配管10内にケーブルを出し入れする際に、ケーブルの巻癖が捩れ逃がし機構により逃がされて、コイルユニット21および22が既設配管10内でひっくり返ることがなく、正確な診断が可能となる。
【0102】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、既設配管が水道管であったが、既設配管としては、水道水以外に、農水や工場用水、その他の液体を搬送する配管でも構わないし、ガス配管でも構わない。
上記の実施の形態では、空気を浮力付与バッグ内に供給して浮力付与バッグを膨らますようにしていたが、ヘリウムなどのより軽量な気体を用いるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、探傷センサが受信コイルユニット内に2つの受信コイルを備えていたが、場合によっては、第1の受信コイルだけでも構わない。
【符号の説明】
【0103】
A 既設配管老朽度診断装置
10 既設配管
11 金属管部
13 分岐管
20 探傷センサ
21 励磁コイルユニット
211 励磁コイル
212 第1のケーシング
22 受信コイルユニット
221 第1の受信コイル
222 第2の受信コイル
223 第2のケーシング
23 弾性連結体
24 信号伝達用ケーブル
25 浮力付与バッグ
27 エアー配管(給排気管)
26 バッグカバー
28 スライド固定部
29 スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探傷検査しようとする金属管部を有する流体が流れる既設配管に、この既設配管に接続された分岐管を介して送り込まれる信号伝達用ケーブル及びこの信号伝達用ケーブルの先端に設けられた探傷センサを備え、
前記信号伝達用ケーブルを、前記探傷センサを先頭にして前記分岐管を介して前記既設配管内に送り込んだのち、前記探傷センサを前記既設配管の内壁面に沿って移動させながら、前記既設配管の金属管部の傷を前記探傷センサによって損傷部を探索する既設配管老朽度診断装置であって、
気体が送り込まれることによって膨らんで探傷センサ部分に浮力を付与する浮力付与バッグと、前記分岐管外側から前記浮力付与バッグへ気体を給排気して浮力付与バッグを膨縮させる給排気管とを備えることを特徴とする既設配管老朽度診断装置。
【請求項2】
浮力付与バッグが膨らむに伴って開放され、浮力付与バッグが縮むに伴って浮力付与バッグを隠蔽するように閉じるバッグカバーを備えている請求項1に記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項3】
バッグカバーが探傷センサの後端側で開閉自在に枢支されている請求項2に記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項4】
浮力付与バッグは、探傷センサの先端側が尖頭状に形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項5】
浮力付与バッグの探傷センサの先端側が、浮力付与バッグが膨らむに伴って探傷センサ
の先端側に移動可能に探傷センサに支持されている請求項1〜請求項4にいずれかに記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項6】
探傷センサが、既設配管にリモートフィールド渦流を発生させる励磁コイルユニットと、この励磁コイルユニットから間隔を隔てて配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する受信コイルユニットとを備える請求項1〜請求項5のいずれかに記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項7】
励磁コイルユニットが、既設配管の管軸に対してコイルの軸線が平行に配設され、励磁信号を印加することにより前記既設配管にリモートフィールド渦流を発生させる励磁コイルと、
前記既設配管の内壁と対向する部分を除いて前記励磁コイルを囲むように配設された第1のケーシングとを備え、
受信コイルユニットが、前記既設配管の管軸に対してコイルの軸線が垂直に配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する第1の受信コイルと、前記既設配管の管軸に対してコイルの軸線が平行に配設され、前記リモートフィールド渦流により生じた電磁波を受信する第2の受信コイルと、
前記既設配管の内壁と対向する部分を除いて前記第1および第2の受信コイルを囲むように配設された第2のケーシングとを備える請求項6に記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項8】
第1および第2のケーシングが、非磁性の金属から形成されている請求項7に記載の既設配管老朽度診断装置。
【請求項9】
分岐管入口側から信号伝達用ケーブルを操作して、既設配管の、分岐管の分岐部の直下あるいはその近傍まで探傷センサの先端側を既設配管の下流側に向かうように挿入した後、浮力付与バッグに気体を送り込んで浮力付与バッグを膨らませて、探傷センサに浮力を付与した状態で分岐部から既設配管の下流側の予定到達位置まで探傷センサを送り込む工程と、
探傷センサが既設配管の予定到達位置まで送り込まれたら、浮力付与バッグ内の気体を排気して、探傷センサを自重によって既設配管の底面に当接させたのち、信号伝達用ケーブルを引き抜きながら探傷サンサを前記分岐部側に移動させて、既設配管の予定到達位置から分岐部までの探傷を行う工程とを含む請求項1〜請求項8のいずれかに記載の診断装置を用いた既設配管の老朽度診断方法。
【請求項10】
探傷センサの先端側を既設配管の底から浮き上らせ、探傷センサの後端側が既設配管の底に接地した状態で探傷センサを既設配管の所望位置まで送り込む請求項9に記載の既設配管の老朽度診断方法。
【請求項11】
既設配管が、水道水の配水本管または配水支管である請求項9または請求項10に記載の既設配管の老朽度診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−18115(P2012−18115A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156513(P2010−156513)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】