説明

日焼け止め化粧料

【課題】高い紫外線防御能力を有し、かつ使用感及び安定性に優れた日焼け止め化粧料を提供すること。
【解決手段】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]と、
(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリンとを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
(a)


式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め化粧料に関するものである。さらに詳しくは、高い紫外線防御能力を有し、かつ使用感及び安定性に優れた日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料による重要な紫外線吸収波長領域は、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)である。そして、UV−A領域(320〜400nm)の紫外線は皮膚を黒く侵すが、UV−B領域(290〜320nm)の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になってUV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対してUV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることがわかってきた。
【0003】
今日までに使用されてきた化粧料用紫外線吸収剤は、構造面から分類すると、(1)安息香酸誘導体、(2)ケイ皮酸誘導体、(3)ベンゾフェノン誘導体、(4)ジベンゾイルメタン誘導体、(5)サリチル酸誘導体等がある。そして近年は、(2)と(4)の紫外線吸収剤が多用されている。
【0004】
しかしながら、上記にあげた紫外線吸収剤は、実用面から見るとそれぞれに問題がある。例えば、(1)の安息香酸誘導体では、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルは、液状、透明であり、扱いやすい長所はあるが、これらの誘導体を含めて安全性の疑いがあり、近年は使用されていない。また、極大吸収波長が290nm付近にあり、UV−B領域のみの紫外線を吸収する。
【0005】
(2)のケイ皮酸誘導体では、現在市販されているサンケア化粧品に最もよく使用されている紫外線吸収剤として、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルエステルがある。極大吸収波長は310nm付近にあり、吸収域がUV−A領域には及ばない。また、日光により変質して着色性や紫外線防御効果の持続性に問題がある。
【0006】
(3)のベンゾフェノン誘導体では、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンがUV−A、UV−B領域にわたって吸収があり、比較的皮膚外用剤基剤への溶解性も良いが、極大吸収波長がややUV−B領域に近いところにあり、吸光度もあまり大きくない。また近年では基本骨格の構造物(ベンゾフェノン)が環境ホルモンとして指摘されていて、その使用が敬遠されている。
【0007】
(4)のジベンゾイルメタン誘導体では、4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンがよく皮膚外用剤に使用されている。極大吸収が360nm付近にあり、吸光度も大きく、UV−A領域の紫外線吸収剤として優れている。しかしながら、光安定性に問題があり、皮膚外用剤用の油分に対しての相溶性が悪く、少量しか混合できない。
【0008】
(5)のサリチル酸誘導体では、サリチル酸オクチルが使われている。UV−B領域に極大吸収波長をもち、オイル状であり、パラフィンオイル等の相溶性に優れるが吸光度が低いため、あまり実用化されていない。
【0009】
このため、UV−B領域においては、(2)のp−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルが、UV−A領域に関しては(4)の4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンが使用されることが多い。特に近年では、UV−A領域の紫外線吸収に対する要求が高まっている。
【0010】
一方、ジメチコジエチルベンザルマロネートや2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]は、UV−A領域の紫外線吸収剤の一種として知られている(特許文献1、2)。
しかしながら、これらの紫外線吸収剤は共に紫外線防御能力が低く、その配合量を多くして高いSPF製品を目指した際には高配合によるきしみや油っぽさといった問題点を有するものである。
【0011】
このように、紫外線吸収剤の中にはその使用感に問題を生じるものがあり、使用感を重要視する日焼け止め化粧料に配合する場合は大きな問題になることがある。すなわち、高い紫外線吸収効果を発揮させるために、紫外線吸収剤の配合量を多めにする場合に、その使用感は極端に悪くなる。さらに、紫外線吸収剤の凝集や析出を生じやすく、安定性に問題が生じてしまう。したがって、希望の紫外線吸収剤を希望する配合量だけ配合できない場合が生じる。
【0012】
また、一般に、幅広い吸収領域を確保する観点から、複数の紫外線吸収剤を日焼け止め化粧料に配合することは行われる。しかしながら、使用感を向上させたり、安定性を確保するためには、複数の紫外線吸収剤を配合することは通常行われていない。
【0013】
【特許文献1】特開平10-175836
【特許文献2】特開平07-23315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、上述の観点に鑑み、日焼け止め化粧料に配合した場合の紫外線吸収剤の使用感について鋭意研究を重ねた結果、多種多様の紫外線吸収剤の中から、ジメチコジエチルベンザルマロネートと2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]とを組み合わせて配合した日焼け止め化粧料に、特定の構造を有する両末端シリコーン変性グリセリンを配合すると、高いSPFを有する製品を製造する場合であっても、優れた使用感と安定性を発揮し、かつ化粧料持ちにも優れた日焼け止め化粧料を提供できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の目的は、使用感と安定性に優れ、特に顕著なUV−A領域の紫外線吸収効果を有する日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]と、
(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリンとを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料を提供するものである。
(a)
【化1】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
【0017】
また、本発明は、上記日焼け止め化粧料が乳化化粧料であることを特徴とする上記の日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の日焼け止め化粧料は、優れた使用感と安定性を有しかつ化粧持ちにも優れている。したがって、紫外線吸収剤を高配合する場合であっても、使用感に問題を生じることがなく、高いSPFを有する日焼け止め化粧料を提供できる。さらに紫外線吸収効果が相乗的に増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
本発明に用いるジメチコジエチルベンザルマロネートは、下記構造を有する公知の紫外線吸収剤であり、市販品としてはパルソールSLX(INCI名:Polysilicone-15、DSM Nutritional Products, Sisseln)を好適に使用できる。この紫外線吸収剤は紫外線吸収能が低く、SPFが向上しない。また、日焼け止め化粧料中にて油っぽいという悪い使用感を発揮することが確認された紫外線吸収剤である。
【化2】

s=3〜6,r=50〜70
【0021】
本発明に用いる2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]は下記構造を有する公知の紫外線吸収剤であり、市販品としてはチノソーブM(50%水分散体。チバスペシャリティーケミカルズ 社)を好適に利用できる。この紫外線吸収剤は紫外線吸収能が低く、SPFが向上しない。また、日焼け止め化粧料中にて「きしみ」という悪い使用感を発揮することが確認された紫外線吸収剤である。
【化3】

【0022】
ジメチコジエチルベンザルマロネートと、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]の配合量は、目的とするSPFに応じて適宜決定されるが、日焼け止め化粧料全量に対して、それぞれ1〜10質量%が好ましい。
さらに好ましくは、ジメチコジエチルベンザルマロネートが1〜7質量%であり、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が1〜5質量%である。
また、両者の最適な配合比は、質量比で、ジメチコジエチルベンザルマロネートを1に対して、2,2'−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が0.3〜0.7である。
【0023】
本発明に用いる両末端シリコーン変性グリセリンは、下記一般式(a)で表される化合物である。本発明においては、上記紫外線吸収剤の安定剤として配合されるものである。
また、本発明の日焼け止め化粧料が乳化化粧料である場合は乳化剤としても好適に機能する。
(a)
【化4】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキル基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
【0024】
好ましくは下記式(b)の両末端シリコーン変性グリセリンである。
(b)
【化5】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基、mは10〜120、nは1〜11である。
【0025】
上記両末端シリコーン変性グリセリンの基本構造はBAB型トリブロック共重合体であり、Bは、例えば下記構造(c)で示される片末端水素残基シリコーンなどを用いることができる。
Aはグリセリン残基である。
下記構造(c)の片末端水素シリコーンは公知の化合物である。そして、任意の重合度のBAB型トリブロック共重合体が公知の方法により製造出来る。
(c)
【化6】

式中、R1はそれぞれ、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基、mは10〜120の数である。
【0026】
AとBとの間の結合は本発明にとって本質的な構造ではないが、本発明に用いる両末端シリコーン変性グリセリンは、化合物(c)と下記構造式(d)で示す化合物を結合させたものである。
(d)
【化7】

式中、nは1〜11の数である。
【0027】
BAB型トリブロック共重合体は公知の方法により合成することが出来る。合成スキームを図1に示す。このようにして、上記構造式(a)、(b)で表される両末端シリコーン変性グリセリンが得られる。
【0028】
シリコーン鎖の重合度のmは10〜120が好ましい。側鎖置換基はメチル基が好ましいが、フェニルや他のアルキルに置換されていても構わない。
グリセリン鎖の重合度のnは1〜11が好ましい。また、安定化剤や乳化剤としての優れた機能発現においては、HLBが0.2〜3.0であることが好ましい。(HLBは公知の方法により求めることができるが、例えばGriffinの式(HLB値=グリセリン部分子量×20/総分子量)により算出される。)
一方、AB両ブロックの分子量が高くなりすぎると、日焼け止め化粧料の塗り伸ばしが難くなる場合があり、また伸びの重さを感じる場合がある。したがって、分子量についても適切な範囲があり、分子量は2000〜20000が好ましい。
【0029】
本発明に安定化剤として配合される両末端シリコーン変性グリセリンの配合量は、特に制限されないが、通常、日焼け止め化粧料に対して0.1〜10.0質量%配合される。1〜5.0質量%の配合量が好適である。
配合量が0.1質量%より少ない場合には安定性に劣る場合があり、また10.0質量%より多く配合しても効果の向上は見られない。
【0030】
本発明は、上記の両末端シリコーン変性グリセリンを日焼け止め化粧料に配合することによって、上記紫外線吸収剤を配合した場合の安定性を改善するというものである。
また、本発明の日焼け止め化粧料を乳化化粧料にする場合は、乳化剤としても機能する。この場合、他の乳化剤を併用することも可能であるが、乳化剤としては実質的に両末端シリコーン変性グリセリンのみの配合で安定した乳化組成物が得られる。特に好ましくは油中水型乳化化粧料であり、特に化粧もちが改善される。
【0031】
本発明の日焼け止め化粧料を特に好ましい剤型の油中水型化粧料にする場合には、極性油分を好適に配合することができる。従来、一般的な乳化剤を用いて極性油性成分を配合した油中水型化粧料を調製しようとした場合、乳化安定性が悪いために水相と油相の分離が生じてしまい、外観が著しく悪化してしまうことがあった。これに対して、本発明では、両末端シリコーン変性グリセリンを配合することによって、極性油性成分を用いた場合の乳化安定性を改善することができる。そして、極性油性成分を安定に乳化することができるため、上記紫外線吸収剤及び非極性油分やシリコーン油等の油分に溶解しにくい成分(極性油分に溶解し易い成分)を安定に配合することが可能となる。
【0032】
本発明に用いる極性油分としては、特に限定されるものではないが、IOB値が0.05〜0.80であることが好ましく、IOB値が0.10〜0.60であることがさらに好ましい。
なお、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、「IOB値=無機性値/有機性値」として表される。ここで、「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、藤田著、「化学の領域」第11巻、第10号、第719頁〜第725頁、1957年参照)。
【0033】
具体的な極性油分としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
上記の極性油分はその1種又は2種以上を選択して配合してもよい。極性油分の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して0.1〜20.0質量%、さらには1.0〜10.0質量%であることが好適である。極性油分の配合量が少なすぎるとべたつく場合があり、多すぎると乳化不良になる場合がある。
【0035】
また、本発明の日焼け止め化粧料には、前記必須成分とともにシリコーン油を好適に配合することができる。本発明に用いるシリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0036】
本発明の日焼け止め化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、その他の紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を、必要に応じて適宜配合して剤型に応じて常法により製造することができる。
【0037】
本発明の日焼け止め化粧料は、クリーム、乳液、ローション等、その製品形態は問わない。またその剤型も特に問わないが、乳化化粧料、特に油中水型乳化化粧料が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0039】
下記表1〜3の油中水型乳化化粧料を常法により製造し、in vitroのSPF、安定性、使用感(油っぽさときしみ)、化粧もちを評価した。
なお、表中、パルソールSLXはジメチコジエチルベンザルマロネートであり、チノソーブMは2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]である。
最初に、両末端シリコーン変性グリセリンの合成例を示す。なお、表中の両末端シリコーン変性グリセリンは下記合成例1のものである。
【0040】
「合成例1 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(e)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒4600)100g、トリグリセリンジアリルエーテル3.5g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(e)
【化8】

【0041】
「合成例2 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(e)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒4600)100g、テトラグリセリンジアリルエーテル4.3g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(e)
【化9】

【0042】
「合成例3 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(f)の片末端水素化ジメチルポリシロキサン(Mw≒7600)100g、テトラグリセリンジアリルエーテル2.6g、およびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(f)
【化10】

【0043】
「合成例4 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(g)の片末端水素化メチルフェニルポリシロキサン(Mw≒5600)100g、トリグリセリンジアリルエーテル2.9gおよびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(g)
【化11】

式中、Phはフェニル基を表す。
【0044】
「合成例5 両末端シリコーン変性グリセリンの合成」
式(h)の片末端水素化メチルドデシルポリシロキサン(Mw≒5900)100g、トリグリセリンジアリルエーテル2.7gおよびイソプロピルアルコール100gを反応容器に仕込み、3%塩化白金酸イソプロピルアルコール溶液0.05gを加えて80℃で5時間反応させる。続いて0.01NのHCl水溶液を1.5g添加し、60℃にて3時間加水分解を行った後、1%重曹水0.2gを添加して中和を行った。反応溶液をエバポレーションにより濃縮し、流動性のある粘性液体である目的化合物を得る。
(h)
【化12】

【0045】
上記合成例1〜5の合成スキームを図1に示す。図2に合成例1で得られた化合物のIRスペクトルを示す。スペクトル中800、1000、1260、2960cm-1付近のピークよりポリジメチルシロキサンに、また1400cm-1付近にポリグリセリン中の二級アルコールに由来するピークがそれぞれ認められることから、合成はスキーム通り進行し、目的化合物が得られていることが分かる。
【0046】
次に、SPF、安定性、使用感(油っぽさときしみ)、化粧もちの評価方法を記載する。
【0047】
「in vitroのSPF」
紫外線防御効果は、特開平7−167781号公報記載の、高精度のin vitro SPF測定システムを用いて行った。具体的には、光源に、ソーラーシュミレーター(Solar Ultraviolet Simulator Model 600:Solar Light Co.)を使用した。塗布体として用いたトランスポアテープ TM (3M Co.)に、試料を2.0mg/cm2の塗布量で均一に塗布し、15分間乾燥後、紫外線を照射した。そして、その透過紫外線スペクトルの演算処理を行い、SPF値を算出した。
【0048】
「安定性」
製造直後の日焼け止め化粧料を透明サンプル瓶に充填し、目視により観察した。
<判定>
○:粉末の凝集が認められなかった。
×:粉末の凝集が認められた。
【0049】
「使用感:油っぽさ」
専門パネル5名により実使用試験を行った。
<判定>
○:4〜5名が油っぽさを感じないと評価した。
△:2〜3名が油っぽさを感じないと評価した。
×:0〜1名が油っぽさを感じないと評価した。
【0050】
「使用感:きしみ」
専門パネル5名により実使用試験を行った。
<判定>
○:4〜5名がきしみを感じないと評価した。
△:2〜3名がきしみを感じないと評価した。
×:0〜1名がきしみを感じないと評価した。
【0051】
「化粧もち」
専門パネル5名により実使用試験を行った。
<判定>
○:4〜5名が化粧もちが良いと評価した。
△:2〜3名が化粧もちが良いと評価した。
×:0〜1名が化粧もちが良いと評価した。
【0052】
【表1】

*1:50%水分散体
【0053】
【表2】

*1:50%水分散体
【0054】
【表3】

*1:50%水分散体
【0055】
上記結果において、本発明の日焼け止め化粧料は、SPF、安定性、使用感、化粧もちの全ての項目について優れた効果を示している。
特に比較例1〜3と実施例1とから、ジメチコジエチルベンザルマロネート(パルソールSLX)と、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チノソーブM)とを組み合わせると安定性は悪化するが、両末端シリコーン変性グリセリンの配合により、その安定性が格別顕著に改善される。
また、実施例2〜16から、両末端シリコーン変性グリセリンの配合により全ての水準で安定性が改善され、使用性、SPF値に影響を与えないことが分かる。
さらに、パルソールSLXを配合する事で、化粧もちが向上する。
そして、パルソールSLXとチノソーブMを併用する事で、飛躍的にSPFが向上し、相乗的効果が認められる。
一方、パルソールSLXを高配合すると油っぽさが目立ち、またチノソーブMを高配合すると、きしみが目立つ様になり、両者には最適な配合比が存在することが分かる。
以上から、ジメチコジエチルベンザルマロネートと2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、両末端シリコーン変性グリセリンとを組み合わせると、SPF値が飛躍的に増大し、安定性、使用感、化粧もちに優れた日焼け止め化粧料が提供できる。
【0056】
以下に本発明の日焼け止め化粧料の処方例を挙げる。なお、両末端シリコーン変性グリセリンは、合成例1〜5にて製造される両末端シリコーン変性グリセリンを利用できる。
【0057】
実施例17:日焼け止め乳液(W/O)
配合成分 質量%
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 30
(2)ポリオキシエチレン・ジメチコン変性オルガノポリシロキサン 2
(3)セチルイソオクタノエート 3
(4)ジメチルポリシロキサン 2
(5)パルソールSLX 5
(6)パラベン 適量
(7)香料 適量
(8)有機変性粘土鉱物 0.5
(9)疎水化処理酸化チタン 4
(10)疎水化処理酸化亜鉛 10
(11)両末端シリコーン変性グリセリン 1
(12)イオン交換水 残量
(13)グリセリン 10
(14)エデト酸塩 適量
(15)チノソーブM 3
製造方法
(1)〜(8)を70℃に加熱混合溶解し、予め油相を調整しておく。次に、(9)〜(11)を加え、ディスパーで分散混合する。(12)〜(14)を70℃で分散混合してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合溶解、冷却して目的の日焼け止めクリームを得る。
【0058】
実施例18:日焼け止めクリーム(W/O)
配合成分 質量%
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 20
(2)ポリオキシエチレン・ジメチコン変性オルガノポリシロキサン 2
(3)セチルイソオクタノエート 3
(4)ジメチルポリシロキサン 2
(5)パルソールSLX 5
(6)パラベン 適量
(7)香料 適量
(8)有機変性粘土鉱物 2
(9)疎水化処理酸化チタン 4
(10)疎水化処理酸化亜鉛 10
(11)両末端シリコーン変性グリセリン 1
(12)イオン交換水 残量
(13)グリセリン 10
(14)エデト酸塩 適量
(15)チノソーブM 3
製造方法
(1)〜(8)を70℃に加熱混合溶解し、予め油相を調整しておく。次に、(9)〜(11)を加え、ディスパーで分散混合する。(12)〜(14)を70℃で分散混合してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合溶解、冷却して目的の日焼け止めクリームを得る。
【0059】
実施例19:日焼け止め乳液(O/W)
配合成分 質量%
《水相成分1》
(1)グリセリン 3
(2)POE60硬化ヒマシ油 1.5
(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
(4)サクシノグリカン 0.3
(5)イオン交換水 残余
(6)エデト酸塩 適量
《油相成分》
(7)疎水化処理酸化チタン 4
(8)疎水化処理酸化亜鉛 10
(9)イソステアリン酸 1
(10)シクロペンタポリシロキサン 10
(11)パルソールSLX 5
(12)メチルフェニルポリシロキサン 1
(13)両末端シリコーン変性グリセリン 1
《水相成分2》
(14)イオン交換水 5
(15)クエン酸 適量
(16)クエン酸ナトリウム 適量
(17)エタノール 5
(18)防腐剤 適量
(19)チノソーブM 3
製造方法
油相成分(7)〜(13)を混合し、混合液をビーズミルにより解砕し、分散体を得る。得られた分散体を水相成分1(1)〜(6)に添加し、ディスパー処理による乳化を行う。その後、水相成分2(14)〜(19)を水相成分1に添加・混合し、ディスパー処理を行うことで目的とする水中油型乳化化粧料を得る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、紫外線吸収剤が有する使用感上の欠点を解決し、高い紫外線防御能力を有し、かつ使用感及び安定性に極めて優れた日焼け止め化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】両末端シリコーン変性グリセリンの合成スキームを説明した図である。
【図2】合成例1の両末端シリコーン変性グリセリンのIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジメチコジエチルベンザルマロネートと、
(B)2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]と、
(C)下記一般式(a)で表される両末端シリコーン変性グリセリンとを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
(a)
【化1】

式中、R1は炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2〜11のアルキレン基であり、mは10〜120、nは1〜11である。
【請求項2】
前記日焼け止め化粧料が乳化化粧料であることを特徴とする請求項1記載の日焼け止め化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47538(P2010−47538A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214463(P2008−214463)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】