説明

日焼け止め水中油型乳化化粧料

【課題】紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、疎水化処理酸化亜鉛を油相中に均一に分散させることにより優れた乳化安定性を発揮する日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)〜(F)を配合することを特徴とする日焼け止め水中油型乳化化粧料である。
(A)オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛
(B)揮発性油分
(C)液状高級脂肪酸
(D)カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステル
(E)非イオン性界面活性剤
(F)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め水中油型乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、疎水化処理酸化亜鉛を油相中に均一かつ安定に分散させることによって、優れた乳化安定性を発揮する日焼け止め水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水化処理した紫外線散乱剤を内相に分散させた日焼け止め水中油型乳化化粧料は、みずみずしい使用感触と高SPF化を両立できる処方系として有用である。
紫外線散乱剤としては、主に酸化チタンと酸化亜鉛が活用されているが(例えば特許文献1)、酸化チタンは、酸化亜鉛に比べて白さやきしみが目立つため、優れた外観及び使用感触を有する日焼け止め化粧料を調製するためには、酸化亜鉛を活用することが望ましい。そして、酸化亜鉛を水中油型乳化化粧料の内相である油相へ安定に配合するためには、酸化亜鉛を油分中にて均一かつ安定に分散させる技術が極めて重要となる。
【0003】
酸化亜鉛を油分中にて均一に分散させる技術として、特許文献2には、日焼け止め化粧料に使用する酸化亜鉛粒子を油分に分散させた油分散物が開示されている。
特許文献1による酸化亜鉛粒子の油分散物の製造方法は、その実施例において、ガラスビーズが入った高速ビーズミルを用いて酸化亜鉛粒子を油中に分散させており、酸化亜鉛を油分中に均一に分散させる方法としては、OBミル(ビーズを用いたメディア分散)処理によって物理的に均一に分散させる技術が採用されている。
【0004】
しかしながら、OBミルによって酸化亜鉛を油分中に均一に分散させる方法は、分散力は強い反面、OBミルが必ず必要となり、OBミルを所有する工場でしか製造できないため、油分中に酸化亜鉛が均一に分散した日焼け止め化粧料の生産拠点が限定されてしまうという問題点がある。
【0005】
一方、酸化亜鉛の保存時の分散安定性に優れる日焼け止め化粧料として、特許文献3には、揮発性オルガノポリシロキサンとシリコーン系分散剤とを使用し、酸化亜鉛の表面を特定構造のシリコーン化合物で表面処理した日焼け止め化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−222349号公報
【特許文献2】特開平5−213618号公報
【特許文献3】特開2009−084171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は上述の観点に鑑み、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、疎水化処理酸化亜鉛の極めて高い分散性を実現させるために鋭意研究を重ねた結果、特定の油分と分散剤を使用し、特定の化合物で疎水化処理した酸化亜鉛を使用すると、驚くべきことに、酸化亜鉛の油分中の分散性に極めて優れた水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、OBミルなどの粉砕装置を使用することなく、疎水化処理酸化亜鉛を油相中に均一かつ安定に分散させることにより、極めて優れた乳化安定性を発揮する日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(F)を配合することを特徴とする日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供するものである。
(A)オクチルトリエトキシシラン及び又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛
(B)揮発性油分
(C)液状高級脂肪酸
(D)カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステル
(E)非イオン性界面活性剤
(F)水
【0010】
また、本発明は、前記(A)疎水化処理した酸化亜鉛の配合量が、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して3〜18質量%であり、前記(B)揮発性油分の配合量が、質量比で前記(A)疎水化処理した酸化亜鉛の配合量の10/7倍以上であることを特徴とする上記の日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記(B)揮発性油分が、デカメチルシクロペンタシロキサン及び/又はイソドデカンであることを特徴とする上記の日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、さらに、(G)紫外線吸収剤を配合することを特徴とする上記の日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、疎水化処理酸化亜鉛を油相中に均一かつ安定に分散させることが可能であり、極めて優れた乳化安定性を発揮する日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳述する。
【0015】
「(A)オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛」
本発明においては、酸化亜鉛の疎水化処理剤はオクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンに限定される。これら以外の疎水化処理剤を使用すると、酸化亜鉛の分散性が悪化する。なお、ジメチルポリシロキサンは重合度100〜1000のジメチルポリシロキサンが好ましい。
酸化亜鉛の疎水化処理の方法は特に限定されず常法に従って表面処理される。例えば、オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサン中にて酸化亜鉛を、一定時間、混合攪拌し、これをろ過することによって、オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛を製造することが出来る。なお、ジメチルポリシロキサンは疎水化処理可能な液状のものを用いる。
本発明に用いる酸化亜鉛は微粉末であり、平均粒子径が10〜80nmである微粉末を用いることが好ましい。
【0016】
オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛の配合量は、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、3〜18質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜12質量%であり、最も好ましくは5〜8質量%である。
オクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛の配合量が上記範囲外であると、酸化亜鉛の分散性が悪化する場合がある。
【0017】
「(B)揮発性油分」
本発明に用いる揮発性油分としては、例えば、比較的低分子量の炭化水素油、比較的低分子量の直鎖状シリコーン、比較的低分子量の環状シリコーンが挙げられ、特に、軽質流動性イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、揮発性ジメチルポリシロキサン、または環状ポリシロキサンが好ましい。具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルシクロヘプタシロキサンが好ましい。特に好ましくは、軽質流動性イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、デカメチルシクロペンタシロキサンである。
本発明に用いる揮発性油分は、(C)成分の液状高級脂肪酸や(D)成分の分散剤と共に、日焼け止め水中油型乳化化粧料の内相の油相を構成する成分であり、当該内相の油分中に、上記の(A)成分の疎水化処理した酸化亜鉛が均一に分散する。
また、本発明においては、(A)成分の疎水化処理酸化亜鉛の分散安定性のため、(A)成分を(B)〜(D)成分のみに分散させた分散体パーツを調製し、その他の油相成分
は別パーツで調製する。そして、分散体パーツと別パーツを混合して油相を形成する。
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料の内相の油分は、主成分として、上記(B)成分の揮発性油分と(C)成分の液状高級脂肪酸から構成されるが、使用性の調整や油分同士の相溶性向上のため水添ポリデセンを、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して1〜2質量%程度配合することが好ましい。
【0018】
揮発性油分の配合量は、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、5〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは7〜18質量%であり、最も好ましくは7〜12質量%である。
揮発性油分の配合量が上記範囲外であると、酸化亜鉛の分散性が悪化したり、みずみずしい使用感が低下したりする場合がある。
また、揮発性油分の配合量は、質量比で上記(A)疎水化処理した酸化亜鉛の配合量の10/7以上であることが好ましい。
【0019】
「(C)液状高級脂肪酸」
本発明に用いる液状高級脂肪酸は、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、特にイソステアリン酸が好ましく使用される。
本発明において、液状高級脂肪酸は、(B)成分の揮発性油分と共に、日焼け止め水中油型乳化化粧料の内相の油分を構成する成分である。当該内相の油分中に、上記の(A)成分の疎水化処理した酸化亜鉛が均一に分散するが、液状高級脂肪酸が配合されないと、
酸化亜鉛の分散性が低下する。
【0020】
液状高級脂肪酸の配合量は、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、0.1〜1質量%が好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.8質量%であり、最も好ましくは0.5〜0.7質量%である。
液状高級脂肪酸の配合量が上記範囲外であると、酸化亜鉛の分散性が低下する場合がある。
【0021】
「(D)カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステル(分散剤)」
本発明に用いるカルボキシル基を構造中に有するシリコーンは、例えば、カルボキシデシルトリシロキサン、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステルなどが挙げられる。特に好ましくはカルボキシデシルトリシロキサンである。
また、本発明に用いる糖エステルは、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。特に好ましくはセスキイソステアリン酸ソルビタンである。
本発明において、(D)成分は油相中に疎水化処理酸化亜鉛を均一かつ安定に分散させるための分散剤として機能する。
【0022】
カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステルの配合量は、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、0.1〜0.7質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6質量%であり、最も好ましくは0.3〜0.4質量%である。
カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステルの配合量が上記範囲外であると、酸化亜鉛の分散性が悪化する場合がある。
【0023】
「(E)非イオン性界面活性剤」
本発明に用いる非イオン性界面活性剤は、本発明において、安定した水中油型乳化組成物を製造するために、乳化剤として配合される成分である。
具体的には、親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテルなどが挙げられる。
また、親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル類(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP-アルキルエーテル類(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE-ヒマシ油・POE-硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸などが挙げられる。
本発明においては、親水性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0024】
非イオン性界面活性剤の配合量は、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、0.5〜2.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.7質量%であり、最も好ましくは1.0〜1.5質量%である。
非イオン性界面活性剤の配合量が上記範囲外であると、水中油型乳化化粧料の安定性が低下する場合がある。
【0025】
「(F)水」
本発明で用いる水は特に限定されず、具体的に示すとすれば、精製水、イオン交換水などが挙げられる。
水はその他の水性成分と共に、日焼け止め水中油型乳化化粧料の外相の水相を構成する成分である。
水の配合量は、内相の油相を構成する油分の配合量によって適宜決定されるが、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、40〜65質量%が好ましく、さらに好ましくは45〜60質量%であり、最も好ましくは50〜55質量%である。
水の配合量が上記範囲外であると、水中油型乳化化粧料の安定性が低下したり、みずみずしい使用感が低下したりする場合がある。
【0026】
「(G)紫外線吸収剤」
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料には任意の紫外線吸収剤を配合することができる。日焼け止め効果を上げるためには、一種又は二種又は三種以上の紫外線吸収剤を配合することが好ましい。
紫外線吸収剤としては具体的に下記化合物が挙げられる。
(1)安息香酸系紫外線吸収剤
例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステルなど。
(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤
例えば、ホモメンチル-N- アセチルアントラニレートなど。
(3)サリチル酸系紫外線吸収剤
例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレートなど。
(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤
例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメートなど。
(5)トリアジン系紫外線吸収剤
例えば、ビスレゾルシニルトリアジン。
さらに具体的には、ビス{〔4−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス{4−(2−エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5−トリアジンなど。
(6)その他の紫外線吸収剤
例えば、3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン。ジモルホリノピリダジノンなどのピリダジン誘導体。
【0027】
紫外線吸収剤の配合量は適宜決定されるが、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して、5〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは7.5〜12質量%であり、最も好ましくは8〜10質量%である。
【0028】
「水中油型乳化化粧料」
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料は、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、保湿剤、増粘剤、粉末、アルコール、天然高分子、合成高分子、糖類、酸化防止剤、緩衝剤、各種抽出液、安定化剤、防腐剤、色素、香料等の通常化粧料に配合される成分を適宜配合することができる。
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料の製造方法においては、(A)成分のオクチルトリエトキシシラン及び/又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛の分散は、分散性が良い(B)成分の揮発性油分と(C)成分の液状高級脂肪酸と(D)成分の分散剤のみをHMミキサー等を使用して混合攪拌して、分散体パーツを調製する。そして、その他の油分や親油性の紫外線吸収剤などの油性成分は別パーツで調製し、この別パーツと分散体パーツとを混合して、油相とする。一方、(F)成分の水と(E)成分の親水性非イオン性界面活性剤と、エタノールや増粘剤や保湿剤などの水性成分を混合して水相とする。最後に、水相と油相を常法により乳化して、本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料が得られる。
本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料は極めて優れた乳化安定性を有する乳化組成物である。
また、本発明の日焼け止め水中油型乳化化粧料は、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を使用し、油相中に酸化亜鉛が均一に分散しているので、塗布した際に紫外線散乱剤の白さが目立つことを抑制し、また、きしみがなく、みずみずしいという優れた使用感を有し、例えば、日焼け止め乳液や日焼け止めクリームとして好適に利用される。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0030】
「表1」及び「表2」に示す処方にて、常法により、日焼け止め水中油型乳化化粧料である乳液を製造し、以下の評価を行った。
【0031】
「疎水化処理酸化亜鉛の分散性」
製造直後の実施例及び比較例の乳液中の疎水化処理酸化亜鉛の分散状態について、光学顕微鏡(400倍)を用いて目視にて観察し、以下の評価基準で判定した。
<評価基準>
○:疎水化処理酸化亜鉛の微粒子が油分中に均一に分散している。
△:疎水化処理酸化亜鉛の微粒子が油分中で分散してはいるが、均一さにやや欠けている。
×:疎水化処理酸化亜鉛の微粒子が油分中に均一に分散しておらず、偏在している。
【0032】
「水中油型乳化化粧料における乳化安定性」
実施例及び比較例の乳液を−5℃、0℃、RT、37℃、50℃の各恒温槽に1ヶ月放置した後、乳液中の乳化粒子の分散状態を光学顕微鏡(400倍)よる目視にて観察し、以下の評価基準で判定した。
<評価基準>
○:いずれの温度の恒温槽に放置した乳液においても、乳化粒子が均一に分散しており、外観に変化がないと認められる。
×:いずれかの温度の恒温槽に放置した乳液において、乳化粒子が均一に分散しておらず、外観において、酸化亜鉛が内相から飛び出ている乳液が認められる。
【0033】
【表1】

<製法>
[水相の調製]
(1)に(11)(12)(22)を添加し、溶解する。(3)を(4)(5)(6)で湿潤し、(1)に混合する。一部のイオン交換水と(23)とを混合した水溶液にて(10)を溶解し、(1)に混合する。
[油相の調製]
(7),(8),(9)を均一に混合し、70℃に加熱する。そこに、(13)〜(18)を混合した油分に(19)〜(21)を添加し、HMミキサーにて分散した酸化亜鉛の分散体パーツを混合する。
[水中油型乳化組成物の調製]
上記水相(70℃)に、(25)を混合した油相(70℃)を乳化する。(24)(2)の混合パーツを添加し、冷却することにより、乳液を得る。
【0034】
【表2】

<製法>
表1の実施例の製法に準じて比較例1〜7の水中油型乳化化粧料の乳液を製造した。
【0035】
「表1」及び「表2」とから、本発明の必須成分を全て配合した実施例1〜4の日焼け止め水中油型乳化化粧料は、疎水化処理酸化亜鉛の分散性と乳化安定性との両方に優れた効果を発揮することが分かる。
すなわち、分散剤の観点から上記効果を考察すると、実施例1〜4と比較例1とから、本発明の必須成分である(D)成分として特定された分散剤を使用した場合に、疎水化処理酸化亜鉛の分散性と乳化安定性とに優れた効果を有する。
しかしながら、比較例1にて(D)成分以外の分散剤を用いた場合には(比較例1では分散剤として多用されるグリセリン骨格の分散剤を使用している)、本発明の実施例1〜4と同じ効果は発揮されず、疎水化処理酸化亜鉛の分散性と乳化安定性の効果は悪化する。また、分散剤を使用しない比較例2及び3は、疎水化処理酸化亜鉛の分散性と乳化安定性の効果は悪化する。
一方、比較例4〜6の結果から、本発明に用いる(D)成分の分散剤を使用した場合であっても、酸化亜鉛の処理剤が(A)成分で使用するオクチルトリエトキシシラン又はジメチルポリシロキサンではない場合は(比較例4〜6の疎水化処理酸化亜鉛は、疎水化処理剤として多用されるパルミチン酸デキストリンにより疎水化処理している)、疎水化処理酸化亜鉛の分散性と乳化安定性の効果は悪化する。
さらに、比較例7の結果から、本発明の必須成分である(D)成分の分散剤と(A)成分の疎水化処理酸化亜鉛を使用した場合であっても、(C)成分の液状高級脂肪酸を配合しないと、疎水化処理酸化亜鉛の分散性が低下することが分かる。
以上から、分散剤としてビスブチルジメチコンポリグリセリルを用いた場合と、分散剤を配合しなかった場合は、どの揮発性油分を用いても、酸化亜鉛を良好に分散することが出来なかった。
また、パルミチン酸デキストリン酸処理の酸化亜鉛を用いた場合、どの分散剤を活用しても良好に分散することは出来なかった。
以上の結果より、分散剤が酸化亜鉛の表面に吸着して分散性を向上させるためには、酸化亜鉛の表面処理剤と分散剤との相性が重要であると考えられる。
また、液状高級脂肪酸であるイソステアリン酸の配合も分散性向上に効果があった。これは分散剤と同様、酸化亜鉛表面に吸着するといったメカニズムで分散性向上に寄与していると考えられる。
なお、本発明の実施例1〜4の乳液は、塗布した際に紫外線散乱剤の白さが目立つという属性を抑制し、また、きしみがなく、みずみずしいという優れた使用感を有する日焼け止め水中油型乳化化粧料である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛を含有する日焼け止め化粧料において、OBミルなどの粉砕装置を使用する必要がなく、特定の必須配合成分を用いることによって疎水化処理酸化亜鉛を油相中に均一に安定分散させることが可能となり、かつ乳化組成物としても優れた乳化安定性を発揮するので、日焼け止め水中油型乳化化粧料として極めて有用に利用される。
さらに、本発明によれば、塗布した際に紫外線散乱剤の白さが目立つという属性を抑制し、また、きしみがなく、みずみずしいという優れた使用感を有するので、極めて有用な日焼け止め水中油型乳化化粧料を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(F)を配合することを特徴とする日焼け止め水中油型乳化化粧料。
(A)オクチルトリエトキシシラン又はジメチルポリシロキサンで疎水化処理した酸化亜鉛
(B)揮発性油分
(C)液状高級脂肪酸
(D)カルボキシル基を構造中に有するシリコーン又は糖エステル
(E)非イオン性界面活性剤
(F)水
【請求項2】
前記(A)疎水化処理した酸化亜鉛の配合量が、日焼け止め水中油型乳化化粧料全量に対して3〜18質量%であり、前記(B)揮発性油分の配合量が、質量比で前記(A)疎水化処理した酸化亜鉛の配合量の10/7倍以上であることを特徴とする請求項1記載の日焼け止め水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記(B)揮発性油分が、デカメチルシクロペンタシロキサン及び/又はイソドデカンであることを特徴とする請求項1又は2記載の日焼け止め水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
さらに、(G)紫外線吸収剤を配合することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の日焼け止め水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2012−111726(P2012−111726A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263399(P2010−263399)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】