説明

昇降機システム

【課題】乗客がエレベータおよび建物内の他の交通手段のうちいずれを利用して行先階に移動すべきかを容易に把握し、かつ行先階までの乗客の移動の効率を向上させる。
【解決手段】乗客が入力装置1を操作して行先階を入力すると、群管理制御装置2の割り当て制御部21は、入力装置1の設置階へ応答させるのに適切な号機を選択する。エレベータ所要時間算出部23は、選択号機を乗客が利用した場合の行先階までの所要時間を算出する。エスカレータ所要時間算出部24は、乗客がエスカレータを利用した場合の行先階までの所要時間を算出する。案内処理部26は、算出結果をもとに乗客への案内対象の交通手段を判定し、当該交通手段の利用のための案内メッセージ、および乗客の現在位置から案内対象の交通手段の乗場までの経路の案内情報を入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータが設置される建物内において乗客に行先階床までの交通手段を案内する昇降機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内、例えばデパートや大規模量販店等では、各階床への交通手段として、エレベータの他にエスカレータ、つまりマンコンベアが設置される場合がある。
【0003】
このような場合で、建物内の乗客が現在のフロアから別の階床に移動したい場合には、乗客は移動先である行先階までエレベータやエスカレータの何れかを用いて移動する事になる。
【0004】
ここで、エスカレータではフロア間の昇降所要時間は一定だが、昇降速度はエレベータより遅い。一方、エレベータの乗りかごの昇降速度はエスカレータより速いためエレベータのフロア間の昇降所要時間の期待値はエスカレータより短い。しかし、乗りかごが乗客のいるフロアに到着するまでの時間、および当該フロアに乗りかごが到着してから行先階までの昇降に要する時間は、かご位置や呼び登録の状況等によりばらつきが生じ、フロア間の昇降所要時間がエスカレータより遅くなることがある。このため、乗客は現在いるフロアから行先階への移動のためにエスカレータおよびエレベータの何れを利用すべきか悩むことになる。
【0005】
エレベータおよび建物内の他の交通手段のいずれかの利用を乗客に通知する方法として、例えば特許文献1に開示されるように、エレベータのホール呼びが登録された場合に、エレベータ以外の交通手段による移動時間およびエレベータの割当てかごの到着予測時間を計算し、エレベータを利用するより他の交通手段を用いた方が行先階に早く到着すると判断した場合に乗りかごの割当てを保留し、この保留中は乗客にその状態または階段やエスカレータの利用を促す案内を行うものがある。
【0006】
また、例えば特許文献2に開示されるように、登録されたホール呼びおよびホール呼びが登録されていないホールの仮想的なホール呼びのそれぞれに対して乗りかごが応答するまでの予想到着時間を計算し、この予想到着時間に基づいてホール呼びが登録されていないホールの表示装置に混雑度を表示し、ホール呼びが登録されているホールの表示装置には予想到着時間をランタン表示するものがある。
【特許文献1】特開平8−217341号公報
【特許文献2】特開2000−226166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1に開示されたような方法は、始めに乗客によりエレベータのホール呼びを登録する必要があり、乗客はエレベータの実際の利用の有無に関わらずエレベータホールに行かなければならない。よって、乗客は、乗りかごの割り当てが保留されて階段やエスカレータの利用を促された場合にはホール呼びが無駄に登録される事になるだけでなく、当該エレベータホールから階段やエスカレータまで再度移動しなければならなくなる。
【0008】
また、前述した特許文献2に開示されたような方法では、乗りかごの予測到着時間しか計算しておらず、他の交通手段の所要時間は計算していないので、乗客はエレベータを利用すべきか他の交通手段を利用すべきかを判断しにくい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、乗客がエレベータおよび建物内の他の交通手段のうちいずれを利用して行先階に移動すべきかを容易に把握し、かつ行先階までの乗客の移動の効率を向上させることが可能になる昇降機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係わる昇降機システムは、エレベータ乗場や他の交通手段の乗場とは異なる箇所において行先階の入力を受け付ける入力手段と、この入力を行なった乗客がエレベータを用いて行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の行先階までの移動所要時間を算出する第1の算出手段と、乗客が他の交通手段を用いて行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の行先階までの移動所要時間を算出する第2の算出手段とを備え、第1および第2の算出手段による算出結果をもとに、エレベータおよび他の交通手段のうち乗客の行先階までの移動のための利用に適切な交通手段を乗客に案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗客がエレベータおよび建物内の他の交通手段のうちいずれを利用して行先階に移動すべきかを容易に把握し、かつ行先階までの乗客の移動の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本実施形態における昇降機システムの建物は地上10階から地下1階までのフロアでなる百貨店ビルである。この建物内にはエレベータおよびエスカレータが備えられる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態における昇降機システムは建物内交通案内機能を有する昇降機システムであり、エレベータの行先階登録を行なうための入力装置1、案内表示装置3、経路案内表示灯4を備える。入力装置1および案内表示装置3は、建物の玄関階である1階を含む各フロアの特定の箇所において隣接して設置される。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの入力装置の外観の一例を示す図である。
図2に示すように、各階床の入力装置1は、行先階入力釦11、決定釦12およびクリア釦13を備える。行先階入力釦11はテンキーおよび「B」と表記された釦でなり、行先階の階床の入力を受け付ける。「B」と表記された釦は、地下の階床を入力する場合に操作する釦である。たとえば、地下1階を階床として入力する場合には、行先階入力釦11の「B」と表記された釦を操作した上で、テンキーのうち「1」と表記された釦を操作すればよい。「B」と表記された釦は「地下」と表記された釦であってもよい。
【0015】
また、決定釦12は、行先階入力釦11により入力された階床を行先階登録の階床として決定する旨の入力を受け付ける。クリア釦13は、行先階入力釦11による階床の入力後、決定釦12の入力前に操作することで、行先階入力釦11により入力された階床がクリアされる。これにより、行先階入力釦11による入力間違いを正すことができる。
【0016】
また、行先階入力釦11はテンキーに限らず、1階床を1つの釦とする、つまり階床ごとに操作対象の釦を独立させる方式であってもよい。
【0017】
また、案内表示装置3は例えば液晶ディスプレイであり、入力装置1による行先階入力を求めるメッセージを表示したり、エレベータやエスカレータのうち行先階までの利用に適した交通手段の通知メッセージを表示したり、当該交通手段の乗場までの経路の案内マップ情報を表示したりする。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの設置建物の玄関口、エレベータ乗場およびエスカレータ乗場の位置関係の一例を示す図である。
また、経路案内表示灯4は、図3に示すように、前述した各フロアの入力装置1や案内表示装置3の設置箇所から同一フロアのエレベータの各号機の乗場のそれぞれまでの経路の床部分、および前述した設置箇所からエスカレータ乗場33までの経路の床部分に設けられる表示灯である。
【0019】
図3に示した例では、玄関階フロア30の玄関口31の側に入力装置1および案内表示装置3が設けられ、当該玄関口31、エレベータ乗場32、およびエスカレータ乗場33は互いに離れた箇所に設けられており、乗客は、それぞれの箇所の間を店舗エリア34で隔てられた通路35を介して徒歩で移動できるようになっている。
図1に示すように、建物内には複数台のエレベータが設置される。図1には2台のエレベータについて図示しているが、この台数は限定されるものではない。
【0020】
また、建物内には、エレベータの複数台の号機の群管理制御を行う群管理制御装置2と各々の号機の乗りかご6の昇降を個別に制御するかご制御装置5とが備えられる。
また、図示はしないが、各号機の乗りかご6は当該乗りかご6に対応して設けられるシーブに巻き掛けられたロープを介してカウンタウェイトと連結されており、自号機のかご制御装置5からの制御にしたがった巻上機の駆動によるシーブの回転に伴い、カウンタウェイトとともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0021】
また、群管理制御装置2は、割り当て制御部21、記憶装置22、エレベータ所要時間算出部23、エスカレータ所要時間算出部24、所要時間比較部25および案内処理部26を備える。
割り当て制御部21は、図示しないホール呼び釦やかご呼び釦により新規に入力された呼びに対し、各号機の状態情報、つまりかご制御装置5からのかご位置情報や既登録かご呼び情報等に基づいて各号機の評価値を算出し、評価値が最も良好な号機のかご制御装置5に対し割当指令を出力する。
【0022】
記憶装置22は、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、割り当て制御部21、エレベータ所要時間算出部23、エスカレータ所要時間算出部24、所要時間比較部25、案内処理部26といった各部による処理動作のためのプログラムを記憶する。
【0023】
エレベータ所要時間算出部23は、入力装置1により行先階が入力された場合に、乗客が行先階までエレベータを用いて移動すると仮定した場合の、行先階到着までの所要時間を算出する。
【0024】
エスカレータ所要時間算出部24は、入力装置1により行先階が入力された場合に、乗客が行先階までエスカレータを用いて移動すると仮定した場合の、行先階到着までの所要時間を算出する。
【0025】
所要時間比較部25は、エレベータ所要時間算出部23およびエスカレータ所要時間算出部24による算出結果を比較する。案内処理部26は、所要時間比較部25による比較結果をもとに、乗客に案内するのに適した交通手段を判定し、当該交通手段の利用を勧める旨のメッセージを案内表示装置3に表示させる。
【0026】
次に、図1に示した構成の昇降機システムの動作について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。この実施形態では、玄関階フロア30の玄関口31に設けられた入力装置1および案内表示装置3を用いた場合の処理を説明するが、他のフロアに設けられる入力装置1および案内表示装置3を用いた場合の処理も同様である。
【0027】
図5は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される行先階入力画面の一例を示す図である。
まず、初期状態では、案内表示装置3に図5に示した行先階入力画面が表示されている。乗客が当該画面にしたがって入力装置1の行先階入力釦11を操作して行先階を入力して決定釦12を操作すると(ステップS1)、操作された入力装置1の設置階床および行先階を示す信号が群管理制御装置2に出力される。
【0028】
群管理制御装置2の割り当て制御部21は、入力装置1からの信号を入力すると、エレベータ所要時間算出部23は、操作元の入力装置1の設置位置から同一フロアのエレベータ乗場32までの徒歩移動に要する時間を記憶装置22から読み出すことで取得する(ステップS2)。
【0029】
次に、割り当て制御部21は、乗客がエレベータを利用して前述した設置階床から行先階へ移動する、つまり信号出力元の入力装置1の設置階にて行先階登録がなされたと仮定して各号機の評価値を算出し、入力装置1の設置階へ応答させるのに最も適切な号機である仮想割り当て号機を選択する(ステップS3)。
設置階へ応答させるのに最も適切な号機としては、なるべく早く応答して、かつ乗客が乗場に到着する前に戸閉しない号機が挙げられる。
【0030】
そして、エレベータ所要時間算出部23は、乗客が前述したように選択した号機を利用した場合の行先階までの所要時間であるエレベータ利用所要時間を算出する。
このエレベータ所要時間は、乗客が操作元の入力装置1の設置位置、つまり玄関階フロア30の玄関口31から同フロアのエレベータ乗場32までの徒歩移動に要する時間の予測値、乗客がエレベータ乗場32に到着してからステップS3の処理で選択された選択号機が応答するまでの時間の予測値である到着所要時間、および選択号機が応答してから行先階へ到着するまでの時間の予測値である出発後所要時間の和である。各フロアの入力装置1の設置位置から同一フロアのエレベータ乗場32までの徒歩移動に要する時間の予測値は記憶装置22に記憶されている。
【0031】
そして、エレベータ所要時間算出部23は、乗客がエレベータ乗場32に到着してから前述した選択号機が玄関階に到着するまでの到着所要時間を、選択号機のかご位置および既登録の呼び登録情報などをもとに算出する(ステップS4)。
また、エレベータ所要時間算出部23は、選択号機が玄関階に到着してから行先階へ応答するまでの出発後所要時間を、行先階の情報および既登録の呼び登録情報などをもとに算出し(ステップS5)、ステップS3,S4,S5の処理でそれぞれ求めた時間の和であるエレベータ利用所要時間を算出する(ステップS6)。
【0032】
また、ステップS4の処理を省略して、ステップS3の処理において、乗客がエレベータ乗場32に到着してから前述した選択号機が玄関階に到着するまでの到着所要時間を、選択号機のかご位置および既登録の呼び登録情報などをもとに割り当て制御部21により算出して、これを記憶装置22に保持しておき、ステップS6の処理において、前述したように保持した到着所要時間の情報を取り出してエレベータ利用所要時間を算出するようにしてもよい。
【0033】
次に、エスカレータ所要時間算出部24は、乗客がエレベータではなくエスカレータを利用した場合の行先階までの所要時間であるエスカレータ利用所要時間を算出する。このエスカレータ利用所要時間は、乗客が操作元の入力装置1の設置位置である玄関口31から同フロアのエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間の予測値、および乗客がエスカレータ乗場33に到着してからエスカレータに乗って行先階へ到着するまでの時間の予測値である乗車所要時間の和である。
【0034】
各フロアの入力装置1の設置位置からエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間の予測値は記憶装置22に記憶される。エスカレータ所要時間算出部24は、操作元の入力装置1の設置階床である玄関階フロア30の玄関口31からエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間を記憶装置22から読み出すことで取得する(ステップS7)。
【0035】
エスカレータの各フロア間の走行所要時間情報は記憶装置22に記憶されており、エスカレータ所要時間算出部24は、乗客がエレベータ乗場32に到着してからエスカレータに乗って行先階へ応答するまでの出発後所要時間を記憶装置22に記憶される走行所要時間情報をもとに算出し(ステップS8)、ステップS7,S8の処理でそれぞれ求めた時間の和であるエスカレータ利用所要時間を算出する(ステップS9)。
【0036】
所要時間比較部25は、エレベータ所要時間算出部23がステップS6の処理で算出したエレベータ利用所要時間およびエスカレータ所要時間算出部24がステップS9の処理で算出したエスカレータ利用所要時間を比較する(ステップS10)。
【0037】
案内処理部26は、所要時間比較部25による比較結果をもとに、乗客への案内対象の交通手段をエレベータおよびエスカレータの中から判定する。この処理の具体例としては、案内処理部26は、所要時間比較部25による比較の結果、エレベータ利用所要時間がエスカレータ利用所要時間以下であれば、エレベータを案内対象の交通手段と判定し、エレベータ利用所要時間がエスカレータ利用所要時間を越えていれば、エスカレータを案内対象の交通手段と判定する。
【0038】
案内処理部26は、案内対象として判定した交通手段がエレベータである場合には(ステップS11のYES)、このエレベータの利用のための案内メッセージを操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させるとともに(ステップS12)、乗客の現在位置、つまり操作元の入力装置1の設置位置から案内対象として判定済みであるエレベータの乗場までの経路を案内するための案内マップ情報を操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させ、前述した現在位置から判定済みの交通手段であるエレベータの乗場32までの通路35の床に設置される経路案内表示灯4のうち、案内先の割り当て号機である仮想割り当て号機の乗場32までの経路に対応する経路案内表示灯4を点灯させる(ステップS13)。
【0039】
次に、群管理制御装置2は、操作元の入力装置1の設置階床のホール呼び登録および行先階まで運転するための呼びである行先呼び登録を行なう(ステップS14)。このホール呼びにより、前述した仮想割り当て号機が実際の割り当て号機として応答する。
【0040】
一方、案内処理部26は、案内対象として判定した交通手段がエスカレータである場合には(ステップS11のNO)、このエスカレータの利用のための案内メッセージを操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させるとともに(ステップS15)、乗客の現在位置、つまり操作元の入力装置1の設置位置から案内対象として判定済みの交通手段であるエスカレータの乗場33までの経路を案内するための案内マップ情報を操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させ、前述した現在位置からエスカレータの乗場33までの通路35の床に設置される経路案内表示灯4を点灯させる(ステップS16)。
【0041】
図6は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第1の例を示す図である。図7は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第2の例を示す図である。
図6に示した画面は、乗客への案内対象として判定された交通手段がエレベータである場合の建物内交通案内画面であり、乗客の現在位置からエレベータ乗場32までの案内マップ、エレベータの利用のための案内メッセージ、行先階、エレベータの割り当て号機名があわせて表示される。また、図7に示した画面は、乗客への案内対象として判定された交通手段がエスカレータである場合の建物内交通案内画面であり、現在位置からエスカレータ乗場33までの案内マップ、エスカレータの利用のための案内メッセージ、および行先階があわせて表示される。
【0042】
案内処理部26は、建物内交通案内画面の表示後の一定時間、例えば20秒が経過した場合には、乗客が案内画面を確認して乗場へ向かったとみなし、案内表示装置3の画面を初期状態の画面である行先階入力画面に戻す。これにより別の乗客が入力装置1への行先階入力を行なうことができる。
【0043】
また、案内処理部26は、建物内交通案内画面の表示後の所定タイミング、例えば建物内交通案内画面の表示後20秒が経過した上で5秒経過する毎に、前述したように点灯済みの経路案内表示灯4を案内表示装置3の設置箇所から案内先の乗場に向かって一つずつ消灯させる。これにより、別の乗客が入力装置1を用いて行先階入力を行なった場合の案内先の誤認を防止できる。
【0044】
ただし、別の乗客が入力装置1への行先階入力を行った結果、同じ交通手段が案内対象として判定された場合には、案内表示装置3の設置箇所から乗場までの経路案内表示灯4を再び点灯させる。
【0045】
以上のように、本発明の第1の実施形態における昇降機システムでは、フロア内のエレベータやエスカレータの乗場から離れた箇所で行先階が入力された場合に、エレベータやエスカレータのうち当該入力箇所から行先階への移動に利用に適した交通手段を案内する。これにより入力装置1を操作した乗客は、行先階までの利用に適した交通手段を容易に把握することができる。また、乗客は、案内された交通手段の乗場まで現在位置から直接向かうことができるので、実際に利用する交通手段の乗場までの移動距離を短くすることができる。よって、乗客の行先階までの移動の効率を向上させることができるので、時間を有効に活用できるようになる。また、建物の上層階への交通利便性が向上するので、上層階の資産価値が向上する。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態に係る昇降機システムの構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
図8は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本発明の第2の実施形態における昇降機システムは、第1の実施形態と比較して、群管理制御装置2が所要時間比較部25を備えない一方で案内対象認識部27および所要時間通知処理部28をさらに備える。
【0047】
この実施形態では、群管理制御装置2は、行先階が入力された場合に、各交通手段のそれぞれを利用したと仮定した場合の行先階までの移動所要時間を表示し、この移動所要時間を乗客に案内することで、行先階までの移動に利用する交通手段の選択を当該乗客にゆだねる。
【0048】
図9は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの入力装置の外観の一例を示す図である。
本発明の第2の実施形態における入力装置1は、第1の実施形態と比較して選択釦14をさらに備える。選択釦14は、行先階までの移動に利用する交通手段の選択にかかる入力を受け付ける。
【0049】
図10は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
この実施形態では、第1の実施形態で説明したステップS1からS9の処理がなされた後、所要時間通知処理部28は、エレベータ所要時間算出部23がステップS6の処理で算出したエレベータ利用所要時間、エスカレータ所要時間算出部24がステップS9の処理で算出したエスカレータ利用所要時間、行先階の表示、および行先階までの交通手段の選択を求める画面である交通手段選択画面を案内表示装置3に表示させる(ステップS21)。
図11は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される交通手段選択画面の一例を示す図である。
【0050】
交通手段選択画面にしたがって入力装置1の選択釦14の操作を行うことで、行先階までの交通手段の表示をエレベータとエスカレータの間で選択することができる。乗客は、所望の交通手段の名称が交通手段選択画面に表示された際に決定釦12を操作すると(ステップS22)、群管理制御装置2の案内対象認識部27は、決定釦12が操作された際に交通手段選択画面に表示された交通手段を乗客が選択した交通手段の種別として認識する(ステップS23)。
【0051】
案内処理部26は、案内対象として認識した交通手段がエレベータである場合には(ステップS24のYES)、このエレベータの利用のための案内メッセージを操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させるとともに(ステップS25)、乗客の現在位置から案内対象として認識済みの交通手段であるエレベータの乗場32までの経路を案内するための案内マップ情報を操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させ、前述した現在位置から判定済みのエレベータの乗場までの通路35の床に設置される経路案内表示灯4を点灯させる(ステップS26)。ステップS26の処理後はステップS14の処理がなされる。
【0052】
一方、案内処理部26は、案内対象として認識した交通手段がエスカレータである場合には(ステップS24のNO)、このエスカレータの利用のための案内メッセージを操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させるとともに(ステップS27)、乗客の現在位置から案内対象として認識済みの交通手段であるエスカレータの乗場33までの経路を案内するための案内マップ情報を操作元の入力装置1に隣接する案内表示装置3に表示させ、前述した現在位置からエスカレータの乗場33までの通路35の床に設置される経路案内表示灯4を点灯させる(ステップS28)。
図12は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図である。
【0053】
以上のように、本発明の第2の実施形態における昇降機システムでは、フロア内のエレベータやエスカレータの乗場から離れた箇所で行先階が入力された場合に、エレベータやエスカレータのそれぞれを用いた場合の行先階への所要時間を通知して、この通知にしたがって乗客から選択された交通手段の案内を行なう。これにより、エレベータを利用した場合の行先階までの移動所要時間およびエスカレータを利用した場合の行先階までの移動所要時間に殆ど差がない場合に、乗客は、移動所要時間の差の程度を考慮して所望の交通手段を選択することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図13は、本発明の第3の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本発明の第3の実施形態における昇降機システムは、第1の実施形態で説明した構成と比較して、群管理制御装置2はエレベータ乗車可否判別部41をさらに備える。また、入力装置1の外観は図9に示した外観となる。また、各号機の乗りかご6は、かご内の荷重を検出するための荷重検出装置42を備える。荷重検出装置42により検出された荷重を示す荷重信号は図示しないテールコードおよび自号機のかご制御装置5を介して群管理制御装置2に出力される。
【0055】
図14は、本発明の第3の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。図15は、本発明の第3の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される入力画面の一例を示す図である。
この実施形態では、まず、初期状態では、案内表示装置3に図15に示した入力画面が表示されている。玄関口31を訪れた集団のうちの一人の乗客が当該画面にしたがって入力装置1の行先階入力釦11、決定釦12および選択釦14を操作して行先階および当該行先階まで移動する乗客の人数である乗車人数を入力すると(ステップS31)、操作された入力装置1の設置階床、行先階および乗車人数を示す信号が群管理制御装置2に出力される。
【0056】
そして、ステップS2の処理であるエレベータ乗場までの移動所要時間の取得、およびステップS3の処理である割り当て制御部21による仮想割り当て号機の選択がなされた後、エレベータ乗車可否判別部41は、選択された号機の荷重検出装置42からの荷重信号、停止予定階、つまり選択された号機の行先呼びがある階での降車人数および選択された号機の乗場呼びがある階での乗車人数をもとに、これから乗車可能な荷重を計算することで、選択号機の乗りかご5に、ステップS31の処理による出力信号で示される人数の乗客が乗車できるか否かを判別する(ステップS32)。
【0057】
ただし、この判別において、停止予定階のうち基準階では所定の複数人数、その他の階では一人が行先呼びで降車して乗場呼びで乗車するものとする。
また、この判別においては、既に入力装置1で呼びが登録された、まだ乗車していない利用者の行先階と同じ行先階が新たに入力された場合、既に呼びを登録した利用者分の荷重を、これから乗車可能な荷重から差し引く。
【0058】
入力装置1で入力された人数の乗客が乗車できるとエレベータ乗車可否判別部41が判別した場合には(ステップS33のYES)、第1の実施形態で説明したステップS4以降の処理がなされる。
【0059】
一方、入力装置1で入力された人数の乗客が乗車できないとエレベータ乗車可否判別部41が判別した場合には、他の号機の乗りかご5を新たに選択し、エレベータ乗車可否判別部41により、当該号機の荷重検出装置42からの荷重信号、当該号機の行先呼びがある階での降車人数、当該号機の乗場呼びがある階での乗車人数をもとに、ステップS31の処理による出力信号で示される人数の乗客が乗車できるか否かを判別し、乗車できると判別した場合にはステップS4以降の処理がなされる。
【0060】
また、全ての号機について乗車できないとエレベータ乗車可否判別部41が判別した場合は(ステップS33のNO)、案内処理部26は、エレベータを行先階までの交通手段として案内できないとみなし、現在位置からエスカレータ乗場33までの案内マップ、エスカレータの利用のための案内メッセージおよび行先階を示す建物内交通案内画面を案内表示装置3に表示させる(ステップS34)。
【0061】
以上のように、本発明の第3の実施形態における昇降機システムでは、第1の実施形態で説明した特徴に加え、入力装置1により入力された乗客人数をもとに、エレベータを行先階までの案内対象の交通手段とすることが出来るか否かを判別し、エレベータを案内対象の交通手段とすることが出来ないと判別した場合にはエスカレータを行先階までの案内対象とする。よって、乗客の人数が多い場合のエレベータでの積み残しを未然に防止できるので、乗客の利便性および輸送効率を向上させることができる。
【0062】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図16は、本発明の第4の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本発明の第4の実施形態における昇降機システムは、第1の実施形態と比較して、エレベータ優先有無判別部51をさらに備える。
エレベータ優先有無判別部51は、乗客の中にエレベータ希望の乗客がいるか否かを入力装置1への操作内容をもとに判別する。エレベータ希望の乗客とは、ベビーカーに乗った幼児や車椅子利用者などの、エスカレータの利用が困難でエレベータの利用を希望する乗客を指す。
【0063】
図17は、本発明の第4の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
本発明の第4の実施形態では、まず、ステップS1の処理である行先階入力がなされたら、エレベータ優先有無判別部51は、玄関口31にいる乗客の中に、エレベータ希望乗客がいるか否かを乗客に問うための乗客種別問い合わせ画面を案内表示装置3に表示させる。
【0064】
図18は、本発明の第4の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される乗客種別問い合わせ画面の一例を示す図である。
入力装置1により行先階の入力を行なった乗客は、図18に示したような乗客種別問い合わせ画面にしたがって、自身もしくは玄関口31にいる連れの乗客がベビーカーに乗った幼児や車椅子利用者であったりする場合には、入力装置1の選択釦14を操作して乗客種別問い合わせ画面上のカーソルを「はい」に移動させて決定釦12を操作することになる。これらの操作によりエレベータ希望乗客の有無の入力内容が決定されると(ステップS41)、エレベータ優先有無判別部51は、エレベータ希望乗客がいるか否か、つまりエレベータを優先して案内すべきか否かを判別する(ステップS42)。
【0065】
ステップS42の処理で「NO」と判別された場合には、第1の実施形態で説明したステップS2以降の処理がなされる。一方、ステップS42の処理で「YES」と判別された場合には、割り当て制御部21は、エレベータの利用を玄関口31の乗客に案内するべきとみなして、各号機の評価値を算出し、操作元の入力装置1の設置階へ応答させるのに最も適切な号機である割り当て号機を選択する(ステップS43)。
【0066】
そして、案内処理部26は、現在位置からエレベータ乗場32までの案内マップ情報、エレベータの利用のための案内メッセージ、行先階、および割り当て号機名を示す建物内交通案内画面を案内表示装置3に表示させる(ステップS44)。そして、ステップS14の処理と同じ処理であるホール呼び登録および行先呼び登録がなされる(ステップS45)。
【0067】
図19は、本発明の第4の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図である。
以上のように、本発明の第3の実施形態における昇降機システムでは、第1の実施形態で説明した特徴に加え、入力装置1により行先階が入力された場合に、ベビーカーに乗った幼児や車椅子乗客など、エレベータの利用が必要な乗客がいると判別した場合に、所要時間に関わらずエレベータ利用のための案内を行なうので、乗客に応じた適切な案内を行なうことができる。
【0068】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図20は、本発明の第5の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
この実施形態では、建物内の各フロアのうち一部のフロアの営業終了時刻を過ぎたために当該フロア自体が閉鎖されてエスカレータの運転が停止した場合にエレベータの案内を行なう。
【0069】
本発明の第5の実施形態における昇降機システムは、第1の実施形態と比較して、現在時刻を計時する計時部61、案内可否判別部62およびエスカレータ利用可否判別部63をさらに備える。
【0070】
図21は、本発明の第5の実施形態における昇降機システムの群管理制御装置に記憶される営業時間テーブルの構成例を表形式で示す図である。
記憶装置22には、図21に示した形式の営業時間テーブルが記憶される。この営業時間テーブルでは、各フロアの階床名および当該階床の店舗の営業時間が関連付けて管理される。
【0071】
図22は、本発明の第5の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
本発明の第4の実施形態では、まず、ステップS1の処理である行先階入力がなされたら、案内可否判別部62は、入力された行先階に対応する営業時間を記憶装置22に記憶される営業時間テーブルから読み出し(ステップS51)、当該営業時間と計時部61により計時された現在時刻とを照合することで、現在時刻が所定時間内、ここでは入力済み行先階のフロアの営業終了時刻の一定時間前であるか否かを判別する(ステップS52)。
【0072】
案内可否判別部62は、ステップS52の処理で「NO」と判別した場合には、入力済みの行先階に乗客が到着した時点で当該行先階のフロアの営業が終了しているとして、行先階の再入力、つまり別の行先階の入力を求めるための行先階再入力画面を案内表示装置3に表示させる(ステップS53→S1)。
図23は、本発明の第5の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される行先階再入力画面の一例を示す図である。
【0073】
一方、案内可否判別部62は、ステップS52の処理で「YES」と判別した場合には、途中階、つまり操作元の入力装置1の設置階床から行先階の間の階床の営業が終了したか否かを計時部61により計時された現在時刻と記憶装置22に記憶される営業時間テーブルを照合することで判別する(ステップS54)。
【0074】
本実施形態では、各フロアのうち一部のフロアの営業時間外となった場合には、営業終了したフロアを含む全フロア間のエスカレータの運転が停止して乗車出来ないようになっている。
【0075】
案内可否判別部62がステップS54の処理で「NO」と判別した場合には、第1の実施形態で説明したステップS2以降の処理がなされる。一方、案内可否判別部62がステップS54の処理で「YES」と判別した場合には、エスカレータの利用ができないとして、割り当て制御部21は、各号機の評価値を算出し、入力装置1の設置階へ応答させるのに最も適切な号機である割り当て号機を選択する(ステップS55)。
【0076】
そして、案内処理部26は、現在位置からエレベータ乗場32までの案内マップ情報、エスカレータの運転が終了したことに伴うエレベータの利用のための案内メッセージ、行先階、および割り当て号機名を示す建物内交通案内画面を案内表示装置3に表示させる(ステップS56)。そして、ステップS14の処理と同じ処理であるホール呼び登録および行先呼び登録がなされる(ステップS57)。
図24は、本発明の第5の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図である。
【0077】
以上のように、本発明の第5の実施形態における昇降機システムでは、第1の実施形態で説明した特徴に加え、入力装置1により行先階が入力された場合に、途中階の営業が終了したためにエスカレータの運転が停止した場合に所要時間に関わらずエレベータ利用のための案内を行なうので、エスカレータの利用が出来ない場合の適切な案内を行なうことができる。
【0078】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態における昇降機システムの構成は第1の実施形態と同様である。ただし、入力装置1は備えない。
第1乃至第5の実施形態では、入力装置1により行先階が入力された場合に、当該行先階への移動のためのエレベータまたはエスカレータの利用について案内したが、第6の実施形態では、案内表示装置3を用い、当該案内表示装置の設置フロア以外で行先階となりうる各フロアのそれぞれへの移動のための交通手段としてエレベータまたはエスカレータのいずれが適しているかをフロア毎に区分して案内する。
【0079】
図25は、本発明の第6の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
本実施形態において、まず、群管理制御装置2の案内処理部26は、出発階と行先階の組み合わせを選択する(ステップS61)。そして、当該出発階と行先階についてのステップS2からS10までの処理がなされる。
【0080】
そして案内処理部26は、所要時間比較部25による比較結果をもとに、乗客への案内対象の交通手段をエレベータおよびエスカレータの中から判定し、案内対象として判定された交通手段がエレベータである場合(ステップS62のYES)、このエレベータの表記をステップS61の処理で選択した出発階の案内表示装置3の表示領域における同じく選択した行先階への利用に適する表示領域に表示させる(ステップS63)。
【0081】
そして、案内処理部26は、乗客の現在位置からエレベータ乗場32までの経路を案内するための各フロアの案内マップ情報が各フロアのそれぞれの案内表示装置3にまだ表示されていない場合には、これを表示させる(ステップS64)。既に表示されている場合にはステップS64の処理は省略となる。
【0082】
そして案内処理部26は、案内対象として判定された交通手段がエスカレータである場合(ステップS62のNO)、このエスカレータの表記をステップS61の処理で選択した出発階の案内表示装置3の表示領域における同じく選択した行先階への利用に適する表示領域に表示させる(ステップS65)。
【0083】
そして、案内処理部26は、乗客の現在位置からエスカレータ乗場33までの経路を案内するための各フロアの案内マップ情報が各フロアのそれぞれの案内表示装置3にまだ表示されていない場合には、これを表示させる(ステップS66)。既に表示されている場合にはステップS66の処理は省略となる。
【0084】
ステップS64またはステップS66の処理後、案内処理部26は、出発階と行先階の組み合わせのうち、行先階への案内対象の交通手段を一定時間以上判定していない組み合わせがある場合には(ステップS67のYES)、ステップS61の処理に戻る。また、ステップS67の処理で「NO」と判定された場合には処理が終了する。
【0085】
なお、ステップS64の処理およびステップS66の処理は、ステップS67の処理で「YES」と判別された場合に行なってもよい。
また、双方の交通手段の経路案内表示を常時行なってもよい。この場合、例えば全ての階床に対してエレベータおよびエスカレータのうち一方の交通手段、例えばエスカレータを案内対象としている場合には、他方の交通手段であるエレベータの経路案内表示を薄い表示形態で表示させるなどして、各交通手段に関する表示に動的な変化を加えればよい。
【0086】
図26は、本発明の第6の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図である。図26に示した画面は1階の玄関口31の案内表示装置3に表示される建物内交通案内画面であり、1階を除く各フロアのそれぞれについて、行先階までの利用に適する交通手段の種別および各交通手段の乗場までの案内マップ情報が表示されている。
【0087】
前述した処理を行なうことで、玄関階を含む各フロアの案内表示装置3には、図26に示したように、自フロア以外の各フロアへの移動に適した交通手段の種別が表示され、逐次更新されるようになる。
【0088】
また、図26に示すように、建物内交通案内画面で表示される案内マップ情報におけるエレベータ乗場32までの経路とエスカレータ乗場33までの経路の表示形態は異なっており、乗客が違いを視認できるようになっている。
【0089】
以上のように、本発明の第6の実施形態における昇降機システムでは、各フロアのそれぞれについて、当該フロアへの移動のためにエレベータまたはエスカレータのいずれの利用が適しているかを案内するので、乗客は、行先階の入力操作を行なわなくとも、各フロアへの移動に適した交通手段を容易に把握することができる。
【0090】
この実施形態では、建物内交通案内画面には、各フロアの数字および当該フロアへの移動に適した画面が表示されるが、各フロアの取扱商品などのフロアに固有の情報をさらに画面表示させてもよい。
【0091】
また、各実施形態において、建物内のエレベータ以外の交通手段はエスカレータに限らず階段などであってもよい。
【0092】
また、各フロアの入力装置1の設置位置からエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間の予測値や、各フロアの営業時間といった、記憶装置22に記憶される設定データは入力装置1による所定の操作により変更できるようにしてもよい。
【0093】
また、エスカレータ本体と群管理制御装置2を通信線で接続してエスカレータの運行状況を定期的に記憶装置22に記憶させ、運行していないエスカレータを経由する行先階にはエスカレータを交通手段として利用者に案内しないようにしてもよい。
【0094】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの入力装置の外観の一例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの設置建物の玄関口、エレベータ乗場およびエスカレータ乗場の位置関係の一例を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される行先階入力画面の一例を示す図。
【図6】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第1の例を示す図。
【図7】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第2の例を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの入力装置の外観の一例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図11】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される交通手段選択画面の一例を示す図。
【図12】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図。
【図13】本発明の第3の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図14】本発明の第3の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図15】本発明の第3の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される入力画面の一例を示す図。
【図16】本発明の第4の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図17】本発明の第4の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図18】本発明の第4の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される乗客種別問い合わせ画面の一例を示す図。
【図19】本発明の第4の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図。
【図20】本発明の第5の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図21】本発明の第5の実施形態における昇降機システムの群管理制御装置に記憶される営業時間テーブルの構成例を表形式で示す図。
【図22】本発明の第5の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図23】本発明の第5の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される行先階再入力画面の一例を示す図。
【図24】本発明の第5の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図。
【図25】本発明の第6の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図26】本発明の第6の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1…入力装置、2…群管理制御装置、3…案内表示装置、4…経路案内表示灯、5…かご制御装置、6…乗りかご、11…行先階入力釦、12…決定釦、13…クリア釦、14…選択釦、21…割り当て制御部、22…記憶装置、23…エレベータ所要時間算出部、24…エスカレータ所要時間算出部、25…所要時間比較部、26…案内処理部、27…案内対象認識部、28…所要時間通知処理部、30…玄関階フロア、31…玄関口、32…エレベータ乗場、33…エスカレータ乗場、34…店舗エリア、35…通路、41…エレベータ乗車可否判別部、42…荷重検出装置、51…エレベータ優先有無判別部、61…計時部、62…案内可否判別部、63…エスカレータ利用可否判別部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ乗場や他の交通手段の乗場とは異なる箇所において行先階の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段による入力を行なった乗客が前記エレベータを用いて前記行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記行先階までの移動所要時間を算出する第1の算出手段と、
前記乗客が前記他の交通手段を用いて前記行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記行先階までの移動所要時間を算出する第2の算出手段と、
前記第1および第2の算出手段による算出結果をもとに、前記エレベータおよび前記他の交通手段のうち前記乗客の前記行先階までの移動のための利用に適切な交通手段を当該乗客に案内する案内手段と
を備えたことを特徴とする昇降機システム。
【請求項2】
前記案内手段は、
前記第1の算出手段により算出した移動所要時間および前記第2の算出手段により算出した移動所要時間のうち短い移動所要時間に関わる交通手段を案内する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項3】
前記第1の算出手段は、
前記入力手段による行先階の入力箇所から最寄の前記エレベータ乗場までの前記乗客の移動所要時間、当該乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記入力した行先階に到着するまでの所要時間の和を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項4】
前記他の交通手段はエスカレータであり、
前記第2の算出手段は、
前記乗客が前記入力手段による行先階の入力箇所から最寄の前記エスカレータの乗場までの移動所要時間および当該乗客が前記乗場に到着してから前記行先階に到着するまでの所要時間の和を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項5】
前記案内手段により前記エレベータを案内した場合に当該エレベータのホール呼び登録および前記行先階までエレベータを運転するための行先呼び登録を行なう呼び手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項6】
前記乗りかごが複数台あり、
前記入力手段により行先階が入力された場合に、ホール呼びが登録されて前記乗客が前記エレベータを交通手段として前記エレベータ乗場から乗りかごに乗車すると仮定した場合の、前記入力した行先階までの前記乗客の移動所要時間が最短となる乗りかごを選択する選択手段をさらに備え、
前記第1の算出手段は、
前記入力手段による行先階の入力箇所から前記エレベータ乗場までの前記乗客の移動所要時間、当該乗客が前記エレベータ乗場に到着してから前記選択手段により選択した乗りかごが当該エレベータ乗場に到着するまでの所要時間、および前記選択した乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記入力した行先階に到着するまでの所要時間の和を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項7】
前記案内手段は、
前記エレベータを案内する場合に前記選択手段により選択した乗りかごの号機をさらに案内する
ことを特徴とする請求項6に記載の昇降機システム。
【請求項8】
前記案内手段は、
前記案内する交通手段の乗場までの経路をさらに案内する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項9】
前記入力手段による入力箇所から前記エレベータを含む各交通手段までの経路に沿った床に経路案内表示灯をさらに備え、
前記案内手段は、
前記交通手段の案内を行なう際に、当該案内する交通手段の乗場までの経路の床に備えられた前記経路案内表示灯の表示形態を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項10】
前記入力手段は、前記行先階まで移動する乗客の人数をさらに入力し、
前記エレベータの乗りかごの荷重を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果をもとに、前記入力した数の乗客が前記乗りかごに乗車できるか否かを判別する判別手段とをさらに備え
前記案内手段は、
前記入力した数の乗客が前記乗りかごに乗車できないと前記判別手段が判別した場合に前記他の交通手段を案内する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項11】
前記入力手段は、
前記エレベータの利用を要する乗客がいる旨の入力操作をさらに受け付け、
前記案内手段は、
前記エレベータの利用を要する乗客がいる旨の入力操作を前記入力手段により受け付けた場合に当該エレベータを案内する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項12】
現在時刻が前記入力した行先階への前記他の交通手段による移動ができない予め定められた時間帯に属しているか否かを判別する判別手段をさらに備え、
前記案内手段は、
現在時刻が前記定められた時間帯に属していると前記判別手段により判別した場合に前記エレベータを案内する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項13】
エレベータ乗場や他の交通手段の乗場とは異なる箇所で行先階の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段による入力を行なった乗客が前記エレベータを用いて前記行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記行先階までの移動所要時間を算出する第1の算出手段と、
前記乗客が前記他の交通手段を用いて前記行先階まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記行先階までの移動所要時間を算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段により算出した移動所要時間および前記第2の算出手段により算出した移動所要時間を表示する表示手段と、
前記表示された移動所要時間に関わる交通手段のうち利用する交通手段の選択入力を受け付ける選択入力手段と、
前記選択入力手段により選択入力された交通手段に関わる案内表示を行なう案内手段と
を備えたことを特徴とする昇降機システム。
【請求項14】
建物における行先階となりうる階床のそれぞれについて、乗客がエレベータを用いて当該階床まで移動すると仮定した場合の当該階床までの乗客の移動所要時間を算出する第1の算出手段と、
前記行先階となりうる階床のそれぞれについて、前記乗客が他の交通手段を用いて当該階床まで移動すると仮定した場合の当該階床までの乗客の移動所要時間を算出する第2の算出手段と、
前記第1および第2の算出手段による算出結果をもとに、前記エレベータおよび前記他の交通手段のうち前記階床までの前記乗客の移動のための利用に適切な交通手段を階床毎に区分して前記乗客に案内する案内手段と
を備えたことを特徴とする昇降機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−70382(P2010−70382A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243114(P2008−243114)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】