説明

易接着ポリエステルフィルム

【課題】 生産工程における塗工液の安定性と延伸後の塗膜の均一性に優れ、加工工程等において高温処理しても帯電防止性能が低下することなく、印刷インキ、バインダー、接着剤、光硬化樹脂等との密着性に優れた易接着ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、易接着層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、2種類以上の架橋剤(B)、界面活性剤(C)、及び分散消泡剤(D)を含有する塗工液を塗布して形成されたものであり、(A)の4級アンモニウム基の対イオンがアルキルサルフェートイオンであり、(A)と(B)の質量比(A/B)が95/5〜70/30であり、(C)が、(A)と(B)の合計100質量部に対し1〜10質量部であり、かつ(D)が塗工液100質量部に対し0.5〜3質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易接着ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは、印刷インキ、接着剤、光硬化樹脂・バインダー等との易接着性、及び帯電防止性を有し、包装材料、情報記憶材料、建築材料、印刷材料、電子材料等に有用な易接着ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは機械的性質、耐熱性および透明性に優れ、包装食品用途に、また工業材料である包装材料、情報記憶材料、建築材料、電子材料、印刷材料などのベースフィルムや工程フィルムとして広く使用されている。
しかし、一般にプラスチックフィルムやその積層フィルムは、加工工程や製品の使用時に接触摩擦や剥離によって静電気が発生しやすく、そのためチリや小さなゴミが付着しやすいので、食品類、医薬品の包装材料として利用するのに好ましくないことがあり、また、印刷する際に給紙適性や排紙適性が悪化するなどの問題がある。
【0003】
そこで、従来、プラスチックフィルム基材の接着複合フィルムの帯電防止方法としては、イオン化エアーによる電荷中和法や帯電防止剤のフィルム樹脂への混入(例えば特許文献1参照)、ないしは塗布による方法が代表的なものとして知られている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、電荷中和法はそのための装置を必要とし、その効果も持続性に乏しいなどの欠点を有している。また、帯電防止剤をフィルム樹脂に混入ないしは塗布する方法は、フィルム表面にフィルム基材とは異質の化合物である帯電防止剤が存在するために、さまざまな弊害が生じている。例えば、食品類や医薬品の包装材料として用いる場合、帯電防止剤の有害性や食品や医薬品に対する変質などの問題があり、また印刷する際には印字特性に劣るという問題がある。
【0004】
上記のような弊害を改善するため、側鎖にイオン性基をもつ高分子系帯電防止剤が提案されている(例えば特許文献3)。この帯電防止剤は、側鎖にカルボキシル基及びアンモニウム塩基を有する高分子重合体を用いたものであるが、具体的には対イオンとして塩素イオンを用いるため、耐熱性が十分ではなく、例えばPVCシートへの使用時の加熱加工や、延伸ポリエステルフィルム製造時の加熱工程において、熱劣化により帯電防止性能が低下するという問題や、易接着ポリエステルフィルム製造において、塗布し乾燥後、延伸熱セットする工程で高熱にさらされるため、遊離塩素ガスが発生し延伸機内の機器を長期に渡り腐食するという問題があった。
また、対イオンとしてアルキルサルフェートイオンを用いた、より耐熱性に優れた帯電防止剤が提案されているが、これは生産時に塗工液の安定性や塗膜の均一性に欠けるという問題があった(特許文献4)。
【特許文献1】特開平06−228366号公報
【特許文献2】特開2002−265860号公報
【特許文献3】特開平07−252456号公報
【特許文献4】特開2003−226866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生産工程における塗工液の安定性と延伸後の塗膜の均一性に優れ、加工工程等において高温処理しても帯電防止性能が低下することなく、印刷インキ、バインダー、接着剤、光硬化樹脂等との密着性に優れた易接着ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、特定の重合体、架橋剤、界面活性剤、分散消泡剤からなる塗工液で易接着層を形成することにより、上記問題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、易接着層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、2種類以上の架橋剤(B)、界面活性剤(C)、及び分散消泡剤(D)を含有する塗工液を塗布して形成されたものであり、重合体(A)の4級アンモニウム基の対イオンがアルキルサルフェートイオンであり、重合体(A)と架橋剤(B)の質量比(A/B)が95/5〜70/30であり、界面活性剤(C)が、重合体(A)と架橋剤(B)の合計100質量部に対し1〜10質量部であり、かつ分散消泡剤(D)が塗工液100質量部に対し0.5〜3質量部であることを特徴とする易接着ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の易接着ポリエステルフィルムは、塗膜均一性、帯電防止性能、耐熱性、密着性に優れるので、印刷インキ、接着剤、光硬化樹脂・バインダー等を密着させ、包装材料、情報記憶材料、建築材料、印刷材料、電子材料等に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレートなどが挙げられ、特にポリエチレンフタレートが好ましい。なお、ポリエステルフィルムのハジキなどを防止して良好な塗工性を実現したり、塗膜とフィルムとの接着性を改良する目的で、コロナ放電やイオンブロー等をインラインでフィルム表面に処理してもよい。
【0009】
本発明において、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)としては、静電分極緩和性を有する高分子(イオン伝導高分子)であればよく、重合体(A)中の4級アンモニウム塩は、静電分極性とイオン導電性による速やかな静電分極緩和性を付与することができる。
重合体(A)としては、4級アンモンニウム基を側鎖に有するとともに、カルボキシル基も側鎖に有するポリアクリル共重合体が好ましい。ポリアクリル共重合体は架橋剤との架橋反応により、接着性、耐久性、耐熱性などの特性が著しく向上するとともに、重合体の静電分極緩和性能により、ポリエステルフィルムに効果的な帯電防止性を付与することができる。なお、重合体(A)が水溶性又は水分散性であると、有機溶剤を使用せずにポリエステルフィルムに塗工できるので好ましい。
ポリアクリル共重合体を構成する単量体の具体例として、4級アンモニウム塩をもつ単量体としては、対イオンがメチルサルフェートまたはエチルサルフェートのジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物などが挙げられ、カルボキシル基をもつ単量体としては(メタ)アクリル酸が挙げられ、さらに、その他の単量体として(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、その他のビニル誘導体が挙げられる。
これらの単量体の組成比は広い範囲で変えることができるが、4級アンモニウム基をもつ単量体は、共重合体の全単量体に対して15〜25mol%であることが好ましく、カルボキシル基をもつ単量体は、5〜10mol%であることが好ましく、その他の単量体は、65〜80mol%であることが好ましい。4級アンモニウム基をもつ単量体やカルボキシル基をもつ単量体の共重合量がこの範囲を超えると、得られる重合体(A)を用いた塗工液は、粘度が上昇し、フィルムへの塗工性が低下することがある。
【0010】
本発明では、側鎖の4級アンモニウム基の対イオンとしてアルキルサルフェートイオンを使用することが必要である。アルキルサルフェートイオンの具体例としては、メチルサルフェート、エチルサルフェートなどが例示される。これらのイオンは本重合体中に1種または2種以上が用いられる。
【0011】
本発明において、従来のハロゲンイオン特に塩素イオンの代わりに分子量の大きなアルキルサルフェートイオンを使用するので、4級アンモニウム塩が熱によってホフマン分解しにくくなり、耐熱性を付与することができる。
また塩素イオンのように分解され、塩素ガスが発生して、積層フィルムに接触する金属を腐食するなどの悪影響を及ぼすことがない。具体的には、塩素イオンを対イオンとするプライマー層を有する帯電防止性熱溶融転写インキリボンに、高温のサーマルヘッドが接触した場合、分解して発生した塩素ガスによってサーマルヘッドが腐食することがある。これに対して本発明の熱安定性に優れた対イオンを有する易接着層をもつフィルムからなるインキリボンでは、帯電防止性能を損なうことなく、サーマルヘッドが腐食することもない。例えば、対イオンに塩素イオンを持つトリメチルアミノエチルアクリレート・クロライドの共重合体は150℃に加熱すると1〜2分で分解して塩素ガスを発生し、また帯電防止性能は劣化する。これに対して、対イオンとしてメチルサルフェート塩を使用すると、200℃で1分間加熱しても表面固有抵抗値の上昇は少なく、また帯電防止性能も維持される。
【0012】
本発明において架橋剤(B)としては、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコールが挙げられる。本発明においてはこれらから選ばれる2種類以上を併用することが必要である。架橋剤が1種類であると塗膜の凝集性・密着性が不十分であり、シールバー取られが発生することがある。なお、架橋剤(B)も、有機溶剤を使用せずにポリエステルフィルムに塗工するためには、水溶性又は水分散性であることが好ましい。
【0013】
エポキシ化合物としては、ジエチレングリコールジグリシジールエーテル、グリセリンジグリシジールエーテル、ビスフェノールAジグリシジールエーテルなどの2官能誘導体、トリメチロールプロパントリグリシジールエーテルなどの3官能誘導体などが挙げられる。なおエポキシ化合物は、原料にエピクロヒドリンを使用する関係から塩素イオンの残留が避けられないので、可能な限り塩素イオンを除去したものが望ましい。
【0014】
メラミン系樹脂としては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、トリスメトキシメチルメラミン、ヘキサキスメトキシメチルメラミンなどが挙げられる。
【0015】
イソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネートなどのような芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ブタンジイソシアネートなどのような脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体が挙げられ、反応性を調整し塗工液の安定性を高める点でブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0016】
シランカップリング剤としては、エポキシアルキルシラン、アミノアルキルシラン類が挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0017】
ポリエチレンイミンとしては、一級、二級、三級アミンからなる枝分かれ構造を有する高極性・高密度ポリアミンが挙げられる。そのほかに水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂などが挙げられ、ポリビニルアルコール樹脂はケン化度が89%以上、分子量が100〜1000であるものが望ましい。
【0018】
上記重合体(A)と架橋剤(B)との質量比(A/B)は、95/5〜70/30であることが必要であり、90/10〜80/20であることが好ましい。架橋剤(B)が5%未満であると密着性が良好でなくなることがあり、また30%を超えると帯電防止性能が低下することがある。
【0019】
なお、架橋剤(B)の触媒として、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、ポリアミン、ポリエチレンイミン誘導体などのエポキシ開環反応触媒、バラトルエンスルホン酸のようなメラミン架橋用触媒、イミダゾール、有機錫化合物などのウレタン架橋用触媒等を用いてもよい。これらの触媒の量は特に規定されないが、重合体(A)と架橋剤(B)との合計質量に対して5〜30質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。触媒量が30質量%を超えると易接着層が脆くなり、接着性が低下するだけでなく、高湿下ではべたつきなどが生じやすくなる。
【0020】
本発明において界面活性剤(C)は、静電分極緩和性を有する重合体(A)の帯電防止性能をより高度に引き出すために、特に湿度に依存せずに帯電防止性を安定させるために添加されるものであり、低分子イオン伝導タイプの界面活性剤であることが好ましい。具体的には、一般的なアニオン系界面活性剤、カチオン系界面剤、ノニオン系界面活性剤から選択することができる。特に4級アンモンニウム塩を有する化合物、スルホン酸塩を有する化合物が、塗工液との相溶性、塗工適性、接着性、耐ブロッキング性から好ましい。
界面活性剤(C)の添加量は、重合体(A)と架橋剤(B)合計100質量部に対して1〜10質量部であることが必要であり、1〜5質量部であることがより好ましい。添加量が1質量部未満であると、帯電防止の効果が十分でなく、10質量部を超えると、接着性を阻害したり、基材フィルムの塗工面の反対面を汚染することがある。
【0021】
本発明において、易接着層を形成する際に使用する塗工液には、上記重合体(A)、架橋剤(B)、及び界面活性剤(C)に加えて、分散消泡剤(D)を含有していることが必要である。分散消泡剤(D)としては、ノニオン系界面活性剤が挙げられ、アセチレングリコール系化合物やそのエチレンオキシド付加体が好ましい。具体的には、3,6−ジメチル−4−デシン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−
4,7−ジオール、およびこれらにエチレンオキサイドを付加した化合物も有効である。
分散消泡剤(D)の添加量は、塗工液100質量部に対して通常使用される量より多い0.5〜3質量部であることが必要である。
分散消泡剤を塗工液に添加することによって、極性の高い重合体(A)、架橋剤(B)、及び界面活性剤(C)とを混合均一分散して塗工液を調合することが可能となり、またこれにより、塗工時の発泡を押さえることができ、塗膜の均一性に優れた易接着ポリエステルフィルムが得ることができる。
【0022】
本発明において、易接着ポリエステルフィルムの易接着層は、重合体(A)、架橋剤(B)、界面活性剤(C)、及び分散消泡剤(D)を含有する塗工液を塗布して形成される。塗工液は、生産工程での安全性、衛生性の観点から水溶性および又は水分散溶体であることが好ましい。また、塗工液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、塗工作業性から10〜20質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの易接着層の厚さは、0.05〜0.5μmであることが好ましい。易接着層の厚さが0.05μm未満であると帯電防止性能が発現しないことがあり、また0.5μmを超えると帯電防止性能が飽和し、塗工粘度を高く設定するため外観不良が生じやすくなる。
【0024】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの易接着層は上記組成の塗工液から形成されるので、その表面固有抵抗値は、23℃、50%RHにおいて、1×1012Ω/□未満とすることができ、また、200℃、5分間の熱処理後の表面固有抵抗値(T2)は、熱処理前の表面固有抵抗値(T1)の100倍以下、すなわち(T2/T1)を100以下とすることができる。表面固有抵抗値が、1×1012Ω/□を超えると帯電防止性能が不十分であり、また(T2/T1)が100を超えると高温処理が必要な分野では実用化できないことがある。
【0025】
本発明の易接着ポリエステルフィルムの製造方法としては、延伸したフィルムに上記塗工液を塗布した後、乾燥する方法や、2軸配向結晶化終了前のフィルムに塗工液を塗布し乾燥したのち、少なくとも一方向に延伸後、熱処理する方法などが挙げられる。
塗工液をフィルムに塗工する方法は、一般的な塗工方法が可能であり、例えばメイヤーバーコート、エアーナイフコート、リバースロールコート、リバースグラビアロールコート、グラビアロールコート、リップコート、ダイコートなどの方法が挙げられる。塗工液塗布量は、1〜10g/m2が好ましい。塗工後の乾燥条件は、50〜90℃、10〜60秒であることが好ましい。塗布、乾燥後に、フィルムを延伸する場合、延伸温度は、110〜130℃、延伸倍率は、3〜4倍であることが好ましい。さらに延伸後に、熱処理する場合、熱処理温度は、220〜240℃、時間は5〜15秒間が好ましい。
なお、塗工液や基材のポリエステルフィルムには、本発明の効果を防げない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、滑剤等の添加剤を配合しておいてもよい。
【0026】
本発明の易接着ポリエステルフィルムはそのまま使用することもできるが、易接着面もしくは非易接着面に表面処理としてコロナ放電やイオンブローなどの表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた評価方法を以下に示した。
【0028】
塗膜均一性:
易接着ポリエステルフィルムの易接着層表面に約5〜45°の斜めから白色光線で、塗膜のコート抜けや、コート斑の有無を調べた。
○:全くコート抜け、斑なし。
△:微小なコート抜け、斑あり。
×:多数のコート抜け、斑あり。
【0029】
帯電防止性(耐熱性):
帯電防止性は、易接着ポリエステルフィルムの易接着層表面の表面固有抵抗値をもって評価した。易接着ポリエステルフィルムを温度23℃、湿度50%RH下で3時間放置調湿後、同温度、湿度においてダイアインスツルメンツ社製高抵抗計HT−260測定器を用いて、印加電圧500V−10秒後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定(T1)した。
測定した易接着ポリエステルフィルムを金枠に張り、200℃±3℃に調整したオーブンで5分間熱処理した。このフィルムを温度23℃、湿度50%RH下で3時間放置調湿後、同様にして表面固有抵抗値(T2)を測定し、熱処理前後の表面固有抵抗値比(T2/T1)を求めた。
【0030】
耐水密着性:
JIS L0849−1996の摩擦試験器II型湿潤試験に準じ、易接着ポリエステルフィルムの易接着層表面を、摩擦用綿布を水でぬらしたもので30回摩擦摩耗した後、易接着層の剥離程度を評価した。
○:まったく剥離していない。
△:極わずか剥離している。
×:かなり剥離している。
【0031】
UVコート剤の接着性:
易接着ポリエステルフィルムの易接着層表面の上に、紫外線硬化型ハードコート樹脂(大日精化社製 セイカビームPETHC8改)をメイヤーバー#6番で塗布した後、低圧水銀灯UVキュア装置(東芝ライテック社製、40mW/cm、一灯式)でキュアリングを行い、厚さ3μmのハードコート層を形成した。このUVハードコート層に、JIS K5400−1990(塗料一般試験方法)に準拠し、1mm間隔で碁盤目をいれ、ニチバン社製粘着テープ(エルパックLP−24)を手で空気層が入らないように貼り、強く押さえつけ密着させたのち、粘着テープを90°方向に急激に剥離した。接着性は碁盤目の剥離した面積により評価した。
○:全く剥離しない。
△:5〜10%剥離する。
×:10%以上剥離する。
【0032】
実施例1
(塗工液調製)
重合体(A)として、重合体(A−1)(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルサルフェート4級化物を、45/5/5/45の質量比で共重合したもの、固形分濃度30質量%)30kg(固形分9kg)を用い、これに、架橋剤(B)としてポリエチレンイミン(日本触媒社製、P−1000、固形分濃度30質量%)3kg(固形分0.9kg)を加えて、プロペラ攪拌機で強く撹拌した後に、界面活性剤(C)としてアデカミン4MAC−30(旭電化工業社製、固形分濃度30質量%)1kg(固形分0.3kg)を添加し撹拌した。次に分散消泡剤(D)としてオルフインE1004(日信化学工業社製、有効成分100質量%)1kgを添加後、30分間撹拌し、さらに撹拌しながら、2種類目の架橋剤(B)としてエポキシ化合物(ナガセ化成工業社製、デナコールEX1610、固形分濃度100質量%)1kg(固形分1kg)を添加し、60分間撹拌した。次いで純水で希釈して、総固形分濃度を15質量%に調整し、更に30分撹拌後、停止し脱泡して、塗工液を得た。なお、塗工液の調製は20〜25℃で行った。
【0033】
(フィルムの製造と易接着層の形成)
ポリエステルチップ(相対粘度1.38(20℃、フェノール/テトラクロロエタン=50/50、0.5g/dl))を280℃で溶融押出しし、Tダイ法−静電ピニング方式でキャスティングドラムに密着急冷し、厚さ210μmの未延伸フィルムを成形した。続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.8倍に延伸した。この縦延伸したフィルムの片面に、リバースクラビアコーターを用いて、上記塗工液を5g/m2の塗布量になるように塗工し、58℃オーブンで乾燥した後、横延伸テンターで120℃で4.8倍延伸した。次いで230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた易接着ポリエステルフィルムのポリエステルフィルムの厚さは12μmであり、易接着層はおよそ0.15μmであった。このフィルムの性能評価を行い、結果を表1に示した。
【0034】
実施例2、3、比較例1〜4
塗工液組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順で塗工液を調製し、縦延伸フィルムに塗工、乾燥、横延伸、熱処理し易接着ポリエステルフィルムを得た。性能評価結果を表1に示した。なお、重合体(A−2)として、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩化物の各モノマーを、45/5/5/45の質量比で共重合したもの(固形分濃度30%)を用い、また、架橋剤(B)としてシランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM403、固形分濃度100質量%)も併せて用いた。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例の易接着ポリエステルフィルムは、塗膜均一性、帯電防止性能、耐熱性、密着性に優れるものであった。一方、比較例1では易接着層に分散消泡剤(D)が添加されていないため、塗膜にコート抜けや斑が認められ、塗膜均一性に劣るものであった。比較例2では易接着層に使用した架橋剤(B)が1種類だけであったため、重合体(A)の架橋が不充分であり、耐水密着性やUVコート接着性に劣るものであった。比較例3では、重合体(A)の4級アンモニウム基の対イオンが塩素イオンであるため耐熱性に劣り、フィルムを熱処理すると帯電防止性能が低下した。比較例4は、易接着層に界面活性剤(C)が添加されていないので帯電防止性能が劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、易接着層が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有する重合体(A)、2種類以上の架橋剤(B)、界面活性剤(C)、及び分散消泡剤(D)を含有する塗工液を塗布して形成されたものであり、重合体(A)の4級アンモニウム基の対イオンがアルキルサルフェートイオンであり、重合体(A)と架橋剤(B)の質量比(A/B)が95/5〜70/30であり、界面活性剤(C)が、重合体(A)と架橋剤(B)の合計100質量部に対し1〜10質量部であり、かつ分散消泡剤(D)が塗工液100質量部に対し0.5〜3質量部であることを特徴とする易接着ポリエステルフィルム。
【請求項2】
重合体(A)が、4級アンモニウム基とカルボキシル基とを側鎖に有するポリアクリル共重合体であり、架橋剤(B)が、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンから選ばれる2種類以上であることを特徴とする請求項1記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項3】
易接着層の厚さが0.05〜0.5μmである請求項1又は2記載の易接着ポリエステルフィルム。
【請求項4】
23℃、50%RHにおける表面固有抵抗値が1×1012Ω/□未満であり、200℃、5分間の熱処理前後の易接着層の表面固有抵抗値の比が100以下であり、かつ耐水性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の易接着ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−160883(P2006−160883A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354200(P2004−354200)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】