説明

易破壊性カプセル及びその製品

【課 題】化粧料、薬液の液体又は薬剤の粉末からなる局所用組成物を収納してなるカプセルであって、少なくとも1方のシール部に易破壊性のヒートシール部を設けた易破壊性カプセル。
【解決手段】合成樹脂フィルムからなる2方シール又は3方シールによる局所用組成物収納用包装体であって、該シールの少なくとも1ヶ所が、幅3mm以下のジグザグ形状に130℃以下でヒートシールされたヒートシール強さが「日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類」の下限基準値の3〜6N/15mmを満たす易破壊部であり、且つ残りが、幅5mm以上の帯状に140℃以上の温度でヒートシールされた易破壊性カプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料、薬液の液体又は薬剤の粉末からなる局所用組成物を収納してなる2方シール又は3方シールのうち、少なくとも1方に易破壊性のヒートシール部を設けた易破壊性カプセルに関する。
本発明は、処置面素材と天面素材を積層した美容製品の内部に局所用組成物を収納した易破壊性カプセルを収納させて、使用時に該カプセルを指圧で破壊して収納した粉末又は液体を外部に滲出させて、顔、首、胸、頭髪、手、足等に用いる美容製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗布材料を予め密封した破壊性カプセルを内部空間に収納する化粧用塗布具等の美容製品は公知である。例えば、片面を塗布剤透過性のフェルトとし、他の面を合成樹脂フィルムとした化粧用塗布具は特許文献1に示されており、特許文献2には、上層が通液性素材、下層が液非通過性素材からなり、局所薬組成物を含有する小さな球状カプセルを収納する塗布具が示されている。特許文献3には、軟質フィルムと硬質フィルムの界面からカプセルを破壊させて局所用組成物を滲出せしめる構成のものが知られているが、いずれのものも使用に際して指圧による破壊がスムースにできず、使用性が乏しいという問題があった。
【0003】
また、特許文献4では、破壊部外側が金属薄片、内側が分割片からなる構造を有するカプセル状包装体、特許文献5では、軟質フィルムによる局所用組成物収納用の収納部が易破壊部をもって形成され、該収納部の開口部が硬質又は半硬質フィルムの上蓋で覆われ、両フィルムの局縁部がヒートシールされて易破壊部を有するカプセル、が提案されているが、生産性が低いこと、コスト高になること等に問題があった。
さらに、特許文献6に、液体や粉末を充填して周囲をヒートシールしたフィルムで形成された使い捨て容器に、シールの一部に易破壊部を設けた4方シール製袋による易開封性の容器が示されているが、粉末状の出がよくない、充填シールの品種切り替えに難点があり、包装能力を上げることも困難、コスト高になる等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】実開昭63−28175号公報
【特許文献2】WO01/03538号公報
【特許文献3】特表2003−514639号公報
【特許文献4】特開平07−10171号公報
【特許文献5】特開2005−218756号公報
【特許文献6】特開2004−106917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述するように、従来、化粧料を収納したカプセルを美容製品に収納させることは知られていたが、公知のカプセルでは、指で押圧したときカプセル自体の弾性により応力が分散してカプセルを簡単に破壊することが困難であった。複合素材により易破壊性に工夫したものでは、生産性が低く、美容製品に用いるにはコストが高い課題があった。
そこで、本発明では、上述する従来の課題を解決した易破壊性の製袋包装体であって、高生産性で、経済性が高く、取扱い性がよく、安全であるような、易破壊性カプセル及びそれらのカプセルを収納する美容製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の易破壊性カプセルは、合成樹脂フィルムによる2方シール又は3方シールによる易破壊性の製袋包装体であり、2方シール又は3方シール包装機による製袋充填の高速化に伴って生産性は高く、原料素材のフィルムは特殊なものでなく、極めて安価に生産できる。破壊されてはならない時の事故に対する易破壊部の構成を、日本包装技術協会の包装製品の「使用目的に応じたヒートシールの強さの分類」に応じた下限基準値を満たすことにより取扱いの安全な品質とした。
【0007】
上記日本包装技術協会では、包装製品の「使用目的に応じたヒートシール強さの分類」として、内容物が入った包装品の試験方法や審査基準(JISの一部と食品衛生法の用途別格基準の一部に見られる程度で、これらに関する基準はあまり存在していない)について定めている。すなわち、社団法人日本包装技術協会が包装製品の試験と検査基準について定めた「容器:包装 規制・基準の手引き」中の「包装製品の検査基準」の項中には、「袋の使用目的に応じたヒートシール強さの目安として、(A)重量物包装用袋などで、特に強いヒートシール強さを要する場合、ヒートシール強さN(N/15mm、以下共通){kgf/15mm}が、35N{3.5kgf/15mm}以上、(B)レトルト殺菌袋などで、強いヒートシール強さを要する場合、23N{2.3kgf/15mm}以上、(C)一般包装用袋などで、内容物の質量が大きく、やや強いヒートシール強さを要する場合、15N{1.5kgf/15mm}以上、(D)一般包装用袋などで、内容物の質量が小さく、普通のヒートシール強さを要する場合、6N{0.6kgf/15mm}以上、バーコード又はイージーピールの袋などで、ヒートシール強さが小さくてよい場合、3N{0.3kgf/15mm}以上と定められている。
本発明における日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類の下限基準値の3〜6N/15mmとは、上記(C)及び(D)の場合を意味する。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を基本とするものである。
(1)合成樹脂フィルムからなる2方シール又は3方シールによる局所用組成物収納用製袋包装体であって、該シールの少なくとも1ヶ所が、他のヒートシール部より接着力が弱く、幅3mm以下のジグザグ形状に130℃以下でヒートシールされたヒートシール強さが「日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類」の下限基準値の3〜6N/15mmを満たす易破壊部であり、且つ残りが、幅5mm以上の帯状に140℃以上の温度でヒートシールされたことを特徴とする易破壊性カプセル。
(2)上記局所用組成物が、粉末状、液状、ゲル状、クリーム状の化粧料又は薬剤から選ばれたものであることを特徴とする(1)に記載の易破壊性カプセル。
(3)上記易破壊性カプセルが、処置面素材及び天面素材で形成された内部空所に内蔵されてなることを特徴とする美容製品。
【0009】
柔軟な合成樹脂フィルムは、2方シール又は3方シールによりヒートシールで製袋されるものであり、ヒートシール材としては、ポリエチレン、ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を単独又は他のフィルムと複合したフィルムを用い、収納成分によりバリヤー機能を有するフィルムを複合して用いることもできる。
シール形状と幅は、剥離のし易さと安全性に重要な機能を果たすものであり、ヒートシーラント素材の温度と強度の関係は、綿状低密度ポリエチレン(LLDPE)では、温度120℃のヒートシール強度3N/15mm、温度140℃のヒートシール強度50N/15mmが得られる。低密度ポリエチレン(LDPE)では、温度120℃のヒートシール強度8N/15mm、温度140℃のヒートシール強度35N/15mmが得られる。ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)では、温度100℃のヒートシール強度3N/15mm、温度130℃のヒートシール強度40N/15mmが得られるように、ヒートシール温度によってシール強度の差を設けることができる。
なお、ヒートシール強さは、「日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類」の基準値によった。
【0010】
易破壊部の強さを上記測定法で3〜6N/15mmとし、易破壊部以外のシール部強さを23N/15mm以上とするには、ヒートシール温度を上記のように使用するフィルム種によって条件を使い分けて設定することが必要である。
本発明では、ヒートシール温度を130℃以下と140℃以上の温度差を設けて、130℃以下では易破壊部のヒートシールを行うことが適当であり、これに適するヒートシール材としては、LLDPEやLDPEが好ましい。
また、易破壊部の形成に当たっては、ヒートシールの幅を3mm以下のジグザグ形状にして130℃以下の温度でヒートシールをすることで、易破壊部の強さを3〜6N/15mmに設定する。
易破壊部以外のヒートシール部は、必然的に上記易破壊部のヒートシール条件よりは強固な接着力を得るハードな条件が必要で、例えば5mm幅以上の帯状に140℃以上の温度でヒートシールをすることで強さ23N/15mm以上に設定することによって、易破壊部とのシール力の差異を顕著に設定することができる。
【0011】
ヒートシール部を指圧により剥離し易くするには、幅を細くすることも重要な構成であるが、ヒートシールの形状、ヒートシール温度、と合間って、強さを3〜6N/15mmに設定して易破壊部を設けることにより、易破壊性に対して破壊事故を防止するために、(社)日本包装技術協会が示す包装製品に規制されている使用目的に応じたヒートシール強さの最低基準値は満たすようにした。強さはJISZ0238(1998)によるヒートシール軟包装体の試験方法による。
易破壊に選ばれる少なくとも1ヶ所のヒートシール部は、包装体の両端のいずれかでも、センターシール部でもよい。該当する包装体は縦形の2方シール機、3方シール機、ピロー包装機、テトラパック包装機、を用いて充填シールをすることができる。
易破壊性カプセルには局所用組成物として、粉末状、液状、ゲル状、クリーム状の化粧料、薬剤を充填し収納することができる。
処置面素材及び天面素材で形成された内部に易破壊性カプセルを内蔵することにより、局所用組成物の塗布具として美容製品の分野に幅広い用途開発が期待される。特に化粧用塗布具の分野、パック材の分野では手を汚すことなく使用に便利な製品として、効果を十分に発揮することができる。
【実施例1】
【0012】
合成樹脂フィルムとして、40μmポリプロピレン/10μmLDPE低密度ポリエチレン積層フィルムを用いて、縦形ピロー包装機により、幅2cm長さ3cmのピロー包装体の下端及びセンターシールを幅5mmに140℃のヒートシールを行って、ヒートシールの強さを29N/15mmとした。
ヒートシール強さの設定は、「日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類」の基準値によった。
上記包装体の上端部は、幅2.5mmのジグザグ形状に120℃でヒートシールし、ヒートシールの強さを3.4N/15mmとした。
次いで、局所用組成物として表1の処方のクレンジング液を収納し、本発明の易破壊性カプセルとした。
比較のために、易破壊部を設けた上端部を、幅2.5mmのジグザグ形状に140℃でヒートシールして強度14N/15mmのカプセル(比較例1)、易破壊部の幅を5mmとして120℃でヒートシールをして強度9N/15mmのカプセル(比較例2)を作成した。
得られたカプセルを、処置面素材が不織布で天面素材が合成樹脂フィルムで形成された内部に内蔵させて化粧落しに用いるクレンジング用美容製品を製造した。
上記クレンジング用美容製品の中央部を指で加圧することで、実施例1の易破壊性カプセルは指で押して内蔵のカプセルを簡単に破壊してクレンジング液を処置面に滲出させることができて、化粧落としをすることができた。手を汚すことなく、クレンジングを短時間で行うことができ、使用性が抜群であった。
これに対して、比較例1、比較例2のものはカプセルを容易に破壊することができず、易破壊機能を発揮しなかった。
【0013】
【表1】

【実施例2】
【0014】
合成樹脂フィルムとして、アルミニウムを蒸着したポリプロピレンに低密度ポリエチレンをラミネートしたものを用いて、縦型ピロー包装機により、幅3cm長さ4cmのピロー包装体の、上下端を幅5mmに140℃のヒートシールを行って、ヒートシールの強さを28N/15mmとした。
センターシール部を幅2mmのジグザグ形状に125℃でヒートシールし、ヒートシールの強さを3N/15mmとした。
局所用組成物として表2の処方の粉白粉を収納して易破壊性カプセルとした。
比較のために、易破壊部としたセンターシール部を140℃でヒートシールを行ったものを比較例3とした。
得られた易破壊性カプセルを、処置面素材が不織布で天面素材が合成樹脂フィルムでグローブ型に形成された内部に収納させた白粉を含有する美容製品を製造した。該美容製品の中央部を指で加圧することで、内蔵のカプセルを破壊して白粉粉末を処置面から出すことができ、簡単に粉白粉を肌に塗布することができた。
実施例2の易破壊性カプセルは、指で押して容易に破壊することができたが、比較例1のものは破壊することが困難であった。
【0015】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の易破壊性カプセルの概念的平面図
【図2】本発明の易破壊性カプセルの概念的平面図(別例)
【図3】本発明の易破壊性カプセルの概念的平面図(別例)
【図4】本発明の易破壊性カプセルの概念的平面図(別例)
【図5】本発明の易破壊性カプセルの概念的平面図(別例)
【符号の説明】
【0017】
1 易破壊シール部
2 易破壊シールではない通常のシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムからなる2方シール又は3方シールによる局所用組成物収納用製袋包装体であって、該シールの少なくとも1ヶ所が、他のヒートシール部より接着力が弱く、幅3mm以下のジグザグ形状に130℃以下でヒートシールされたヒートシール強さが「日本包装技術協会作成の包装製品のヒートシール強さ分類」の下限基準値の3〜6N/15mmを満たす易破壊部であることを特徴とする易破壊性カプセル。
【請求項2】
上記局所用組成物が、粉末状、液状、ゲル状、クリーム状の化粧料又は薬剤から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の易破壊性カプセル。
【請求項3】
上記易破壊性カプセルが、処置面素材及び天面素材で形成された内部空所に内蔵されてなることを特徴とする美容製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−19184(P2008−19184A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190644(P2006−190644)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】