説明

映像伝送システム及び映像伝送装置

【課題】駅のホームと車両間で1対多通信や双方向通信を可能とし、複数の情報を伝送する際にも送信側や受信側で適切な情報を選択的に授受できるようにする。
【解決手段】ホーム側装置110のホーム側無線伝送部160と、車両側装置210の車両側無線伝送部260とを無線接続する。車両側装置210に対し各ホームを撮影した複数の映像情報が伝送される場合、伝送制御装置140は、車両の進路に関する進路情報と、ホームへの車両の在線状態に関する在線情報とを含む、車両の運行状態に関する軌道回路情報を駅から取得し、この軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定し、決定した映像情報を示す映像選択情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道等の旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システム及び映像伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の旅客運搬システムにおける車両のワンマン運転支援のために、駅のホームから車両に映像信号を伝送し、車両の運転室においてホーム上の撮影映像を表示する映像伝送システムがある。このようなホーム周辺の映像を利用することによって、運転士が乗客の乗り降りや有無などを目視で確認でき、ホーム及び車両の状態を監視することができる。この種の映像伝送システムでは、ラジオ放送等と同様にして、映像信号自体を無線変調して伝送する方法が用いられており、1対1かつ片方向の通信であった(例えば、特許文献1参照)。上記従来例の映像伝送システムでは、1対1通信であるため、車両側で複数の映像を受信して切り替えることや、複数の映像をそれぞれ別の車両に対して配信することができない。また、片方向通信であるため、車両から駅のホーム側に対して情報を伝送することができない。
【0003】
最近では、駅のホームと車両間で用いる映像伝送システムにおいて、ホーム両側に停車している複数の車両に対してそれぞれ映像を配信したり、映像以外の情報をやり取りする1対多通信や双方向通信の機能が望まれている。ここで、上記1対1片方向の通信方式のシステムを用いる場合、伝送する情報ごとに伝送装置を設ける必要があるため、システム構成が煩雑になったり、コストやレイアウト上の問題などもあり、配置が困難である。双方向通信が可能なシステムとしては、旅客運搬システムにおいて、無線LAN等の通信方式を利用して無線通信を行い、情報の伝送を行う情報通信システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この種のホーム−車両間の映像伝送システムにおいて、単純に無線LAN等の通信方式を適用するだけでは、ホーム側で伝送対象の車両を正しく識別し、複数の車両それぞれに対して適切なホーム映像などの情報を選択的に伝送することができない。車両側では、表示すべきホーム番線についての情報を得られないため、1対1以外の通信を行おうとすると、適切なホーム映像を選択する方法がなかった。
【特許文献1】特開2002−104189号公報
【特許文献2】特開2005−136885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の映像伝送システムでは、1対多や双方向の通信を行おうとした場合、単純に無線LAN等の通信方式を適用するだけでは、ホーム側で伝送対象の車両を正しく識別し、複数の車両それぞれに対して適切なホーム映像などの情報を選択的に伝送することができないという課題がある。また、車両側では、表示すべきホーム番線についての情報を得られないため、ホーム側から複数の情報が伝送された場合に、適切なホーム映像などの情報を選択して表示等することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、駅のホームと車両間で1対多通信や双方向通信が可能であり、複数の情報を伝送する際にも送信側や受信側で適切な情報を選択的に授受することが可能な映像伝送システム及び映像伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムであって、前記ホームまたはその近傍に設けられるホーム側装置と、前記車両に設けられる車両側装置とを備え、前記ホーム側装置は、前記ホームにおいて撮影した映像情報を生成して伝送する映像伝送部と、1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、前記車両側装置との間で1対多通信及び双方向通信が可能なホーム側無線伝送部と、前記車両の運行状態に関する軌道回路情報を駅から取得し、この軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定し、決定した映像情報を示す映像選択情報を出力する伝送制御部と、を有し、前記車両側装置は、前記ホーム側無線伝送部と無線接続され、前記ホーム側装置との間で双方向通信が可能な車両側無線伝送部と、前記映像選択情報に基づき、前記ホーム側装置から伝送された情報から表示すべき映像情報を出力する映像取得部と、前記映像取得部より出力された映像情報を表示する表示部と、を有する映像伝送システムを提供する。
これにより、ホーム側無線伝送部と車両側無線伝送部とを無線接続することで、駅のホームと車両間で1対多通信や双方向通信が可能となる。また、例えば駅にホームが複数あり、各ホームを撮影した複数の映像情報がホーム側装置から車両側装置に伝送される場合であっても、軌道回路情報と駅の構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき適切な映像情報を決定することが可能である。したがって、複数の情報を伝送する際にも送信側や受信側で適切な情報を選択的に授受することが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記の映像伝送システムであって、前記伝送制御部は、前記軌道回路情報として、前記車両の進路に関する進路情報と、前記ホームへの前記車両の在線状態に関する在線情報とを含む軌道回路情報を用い、さらに前記ホーム側無線伝送部と前記車両側無線伝送部の接続情報に基づき、前記伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定するものを含む。
これにより、進路情報、在線情報、接続情報に基づき、車両の進路や在線状態、ホーム側無線伝送部と車両側無線伝送部の接続状態によって、伝送先の車両において適切な映像情報を選択することが可能となる。
【0008】
また、本発明は、上記の映像伝送システムであって、前記伝送制御部は、前記表示すべき映像情報を決定した際、該当車両と映像選択情報との対応を示す車両−映像対応情報を保持し、前記接続情報に基づいて前記車両−映像対応情報を参照し、該当する車両に対応する以前の映像選択情報が保持されている場合は、この映像選択情報によって前記表示すべき映像情報を決定するものを含む。
これにより、該当する車両に対応する以前の映像選択情報が保持されている場合は、この映像選択情報によって表示すべき映像情報を決定することで、例えば、無線通信が一旦途切れて復帰した場合などに、以前の決定結果を利用して迅速に適切な映像情報を選択可能となる。
【0009】
本発明は、旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムに用いられ、前記ホームまたはその近傍に設けられるホーム側装置となる映像伝送装置であって、前記ホームにおいて撮影した映像情報を生成して伝送する映像伝送部と、1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、車両側装置との間で1対多通信及び双方向通信が可能なホーム側無線伝送部と、車両の運行状態に関する軌道回路情報を駅から取得し、この軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定し、決定した映像情報を示す映像選択情報を出力する伝送制御部と、を備える映像伝送装置を提供する。
【0010】
本発明は、旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムに用いられ、前記車両に設けられる車両側装置となる映像伝送装置であって、1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、ホーム側装置との間で双方向通信が可能な車両側無線伝送部と、前記ホーム側装置において、車両の運行状態に関する軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて決定された、当該車両において表示すべき映像情報を示す映像選択情報を取得し、この映像選択情報に基づき、前記ホーム側装置から伝送された情報から表示すべき映像情報を出力する映像取得部と、前記映像取得部より出力された映像情報を表示する表示部と、を備える映像伝送装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駅のホームと車両間で1対多通信や双方向通信が可能であり、複数の情報を伝送する際にも送信側や受信側で適切な情報を選択的に授受することが可能な映像伝送システム及び映像伝送装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る映像伝送システムの概略構成を示す図である。本実施形態の映像伝送システムは、鉄道等の旅客運搬システムに用いられるものであり、ワンマン運転支援などのために、駅のホームと車両間において映像を含む情報を伝送する機能を有している。この映像伝送システムは、大別して、ホーム側装置と車両側装置とを有して構成される。ここでは、旅客運搬システムとして、鉄道の駅のホームと、ホームに入線して停車する列車の車両とに適用する場合を例示する。
【0013】
駅のホーム101には、車両が停車するホーム番線などに対応して、ホーム側装置が設けられている。図1の例では、ホーム101の上りと下りの2つの番線それぞれに対応して、2系統のホーム側装置が設けられている。一方のホーム側装置は、複数(ここでは4つ)のカメラ151a、151b、151c、151dと、映像伝送部150と、ホーム側無線伝送部(AP)160とを有している。他方のホーム側装置は、複数(ここでは4つ)のカメラ171a、171b、171c、171dと、映像伝送部170と、ホーム側無線伝送部(AP)180とを有している。また、ホーム側装置としては、映像伝送部150、170によるデータ伝送処理を制御する伝送制御装置140が設けられる。なお、ホーム構成によっては、映像伝送部やホーム側無線伝送部を1つだけ設ける場合や3つ以上設ける場合もある。
【0014】
1つの車両200には、無線伝送部及び表示部を含む車両側装置210、220が設けられる。通常は、車両の前後端部にある運転室に1つずつ、合計2つの車両側装置が設けられる。他の車両300にも同様に、車両側装置310、320が設けられる。
【0015】
図2は本実施形態に係る旅客運搬システムの概略構成を示す図である。鉄道網600の中には、A駅100、B駅500があり、これらの駅にはそれぞれホーム側装置110、510が設けられている。例えば車両200がA駅100のホームに停車すると、ホーム側装置110と車両200の車両側装置210とが無線接続され、無線通信によって映像情報等がホーム側装置110から車両側装置210へ伝送される。これらのホーム側装置110、510や車両側装置210は、有線ネットワークまたは無線ネットワークによってIP(Internet Protocol)ネットワークを構築するようになっており、鉄道網600の司令所等に設けられる管理センタ650によってIPアドレス等が管理される。車両側装置のIPアドレスは、無線接続した際にホーム側装置から割り当てられる。
【0016】
図3は本実施形態の映像伝送システムの詳細構成を示すブロック図である。ホーム側装置110は、カメラ151a、151b、151c、151dと、映像伝送部150と、伝送制御装置140と、入出力インタフェース155と、メディアコンバータ156、157と、ホーム側無線伝送部(AP)160と、アンテナ161とを有している。カメラ151a、151b、151c、151dは、ホーム上の各部を車両や乗客を含めて撮影し、ホーム及び車両の状態を写したホーム映像の映像信号を出力する。入出力インタフェース155は、その他の駅情報や車両運行情報、ニュースなどのホーム映像以外の他の伝送情報の入出力を行う。
【0017】
映像伝送部150は、カメラ151a、151b、151c、151dで撮影したホームの映像信号の伝送処理を行うもので、画像合成部152、エンコーダ153、スイッチ154を有して構成される。また、映像伝送部150は、入出力インタフェース155より入力した情報の伝送処理も行えるようになっている。画像合成部152は、カメラ151a、151b、151c、151dで撮影された4つの映像信号の合成を行う。エンコーダ153は、画像合成部152からの出力される映像信号をエンコードし、ネットワーク上で伝送可能なデータパケットを生成する。ここで、映像伝送部150を複数のホーム番線で兼用する場合、複数系統の映像情報がエンコーダ153に入力される。例えば、上り番線と下り番線で1つの映像伝送部150を用いる場合、それぞれのホーム番線の映像情報が入力される。
【0018】
スイッチ154は、IPネットワーク上で動作するレイヤ2スイッチ(L2スイッチ)などで構成され、エンコーダ153からの映像情報や入出力インタフェース155からの他の伝送情報のデータパケットを入力し、アドレス情報の判読や付加、変更等を行い、ホーム側無線伝送部160に向けて出力する。また、スイッチ154は、ホーム側無線伝送部160から入力したデータパケットを入力し、入出力インタフェース155へ出力することもできる。映像伝送部150のスイッチ154とホーム側無線伝送部160との間は、メディアコンバータ156、光通信回線158、メディアコンバータ157を介して接続され、遠距離通信と高速データ伝送が可能になっている。
【0019】
ホーム側無線伝送部160は、無線送受信部を有して構成され、アンテナ161を介して無線信号の送受信を行い、車両側装置210の車両側無線伝送部260と無線接続される。ここで、ホーム側無線伝送部160は、複数の車両側装置の無線伝送部と接続し、それぞれの無線伝送部との間で並列的に複数のデータの送受信が可能である。
【0020】
伝送制御装置140は、車両の運行状態に関する軌道回路情報として、駅からの接点信号による進路情報、在線情報を入力し、これらの軌道回路情報と、ホーム側装置と車両側装置の無線伝送部の接続情報と、予め設定されている駅の構成情報とに基づき、伝送対象の特定の車両側装置に対して表示すべき映像情報を決定し、決定した映像選択情報を映像伝送部150のスイッチ154に出力して指示する。この伝送制御装置140が伝送制御部の機能を実現する。進路情報、在線情報については後で詳述する。ここで、映像伝送部150、入出力インタフェース155、伝送制御装置140を含めて映像伝送制御部130と呼ぶことにする。
【0021】
車両側装置210は、車両側無線伝送部(STA)260と、アンテナ261と、映像取得部250と、表示部253と、入出力インタフェース255と、車載機コントローラ240とを有している。車両側無線伝送部260は、無線送受信部を有して構成され、アンテナ161を介して無線信号の送受信を行い、ホーム側無線伝送部160と無線接続される。車載機コントローラ240は、車両信号として、車両からの前位置信号、低速信号を入力し、車両側無線伝送部260における無線接続等の動作を制御する。この前位置信号、低速信号については後で述べる。なお、実際の装置では、車両側無線伝送部260と車載機コントローラ240とを一体的に構成してもよい。
【0022】
映像取得部250は、ホーム側装置110から伝送された情報から表示すべき映像情報を出力するもので、スイッチ251と、デコーダ252とを有して構成される。スイッチ251は、IPネットワーク上で動作するレイヤ2スイッチ(L2スイッチ)などで構成され、車両側無線伝送部260から出力される映像情報や他の伝送情報のデータパケットを入力し、アドレス情報の判読や付加、変更等を行い、デコーダ252や入出力インタフェース255に向けて出力する。また、スイッチ251は、入出力インタフェース255から入力したデータパケットを入力し、車両側無線伝送部260へ出力することもできる。デコーダ252は、スイッチ251から出力される映像情報のデータパケットをデコードし、映像信号を再生出力する。この際、ホーム側装置110から送られる映像選択情報に基づき、表示すべき適切な映像情報を選択して出力する。表示部253は、デコーダ252から出力される映像信号を表示する。これにより、車両側装置210が設けられる運転室において、カメラ151a、151b、151c、151dで撮影したホーム映像が表示される。
【0023】
ホーム側無線伝送部160と車両側無線伝送部260は、IEEE802.11a/b/g/j等の無線LANの通信方式に対応した無線LANモジュールを実装しており、無線LANによる無線ネットワーク伝送が可能になっている。これにより、伝送制御装置140、エンコーダ153、スイッチ154、ホーム側無線伝送部160、車両側無線伝送部260、スイッチ251、デコーダ252は、互いにIP通信を行うことができる。IP通信であることによって、1対多通信や双方向通信、及び映像以外の様々なデータ通信が可能になる。なお、無線LANに限らず、Bluetooth(登録商標)などの1対多通信や双方向通信が可能な他の無線通信方式を適用してもよい。
【0024】
映像データは、ホーム側装置110のエンコーダ153でIP化することで、複数の映像を同一通信路に多重させることができる。各映像データには、通信先としてそれぞれ異なるIPアドレスを設定し、車両側装置210の車両側無線伝送部260が自らの無線モジュールのIPアドレスを切り替えることによって、受け取る映像データを柔軟に切り替えることができる。車両側装置210で受信した映像データは、デコーダ252によってアナログ信号の映像信号に戻され、運転室内の表示部に表示される。
【0025】
ここで、上りホーム番線の1番ホームと下りホーム番線の2番ホームとでホーム側装置110を兼用する構成とし、それぞれのホームに停車した車両に映像を伝送する場合の具体例を示す。
【0026】
この場合、例えば、1番ホームの映像はアドレス192.168.255.253宛てに、2番ホームの映像はアドレス192.168.255.252宛てに、それぞれホーム側装置110から無線LANによって送信する。
【0027】
そして、車両側装置210の車両側無線伝送部260では、無線モジュール(eth0)にはエイリアスも含め下記のIPアドレスを設定する。
eth0:DHCP(172.16.xxx.xxx)
eth0:0:192.168.255.254
eth0:1:192.168.255.253
eth0:2:192.168.255.252
車両側無線伝送部260は、1番ホームの映像を表示するときは、eth0:1を有効にし、eth0:2を無効にする。また、2番ホームを表示するときは、eth0:1を無効にし、eth0:2を有効にする。これにより、所望の映像データだけを受信することが可能である。
【0028】
なお、車両側無線伝送部260において、どのIPアドレス宛の映像を表示すべきかの情報、すなわち伝送制御装置140で決定された表示すべき映像情報の映像選択情報は、車両側無線伝送部260のeth0(DHCPで割り振り)を使って送受される。この「どのIPアドレス宛の映像を表示すべきかの映像選択情報」は、「映像ストリーム情報」とも呼ぶことにする。詳細は後述する。
【0029】
図4は本実施形態の映像伝送システムにおける映像情報伝送動作を示すシーケンス図である。ここでは、ホーム側装置110で撮影したホーム映像の映像ストリームを選択的に伝送する場合の動作を中心に説明する。
【0030】
車両が駅のホームに到着して停止し、運転室にある車両側無線伝送部260がホーム側無線伝送部160の通信エリアに入ると、車両側無線伝送部260からホーム側無線伝送部160に接続要求を送り、無線LANによる接続処理を行う(ステップS11)。これにより、車両側無線伝送部260とホーム側無線伝送部160がそれぞれリンク状態となる(ステップS12、S13)。
【0031】
この際、車両側装置210の車載機コントローラ240に入力される低速信号、前位置信号の状態によって、無線接続動作が開始される。低速信号は、例えば停止直前の状態で速度が5km/h以下となった場合にONとなり、出発後に速度が5km/hを超えるとOFFとなる。前位置信号は、進行方向側の運転台である状態で、運転台にキー入力状態となった場合にONとなり、進行方向と反対側の運転台である状態でOFFとなる。この前位置信号は前後の運転台で同時にONとはならないように排他制御を行う。上記の低速信号がON、かつ、前位置信号がONの場合に、車載機コントローラ240から車両側無線伝送部260に接続指示が送られ、車両側無線伝送部260がホーム側無線伝送部160に接続を試みる。
【0032】
ホーム側無線伝送部160は、車両側無線伝送部260とリンク状態となった場合に、該当車両の無線伝送部とリンク状態であることを示すリンク情報を映像伝送制御部130の伝送制御装置140に送信する(ステップS14)。これに応答して、伝送制御装置140はリンク情報のACK(Acknowledgment)をホーム側無線伝送部160に返送する(ステップS15)。伝送制御装置140は、ホーム側無線伝送部160から送られるリンク情報によって、どのホーム側無線伝送部と車両側無線伝送部とが無線LAN接続したかの情報を得る。
【0033】
次に、車両側無線伝送部260は、リンク状態になると、映像情報要求を伝送制御装置140に送信する(ステップS16)。ホーム側無線伝送部160からの映像情報要求には、該当車両の識別用の列車IDと、該当ホーム側装置の無線伝送部のアドレス情報(MACアドレスやIPアドレスなど)とを付与する。
【0034】
伝送制御装置140は、車両の運行状態に関する軌道回路情報として、駅から進路情報及び在線情報を取得している。そして、映像情報要求を受けると、前記リンク情報に基づくホーム側装置と車両側装置の無線伝送部の接続情報と、前記進路情報及び在線情報と、予め設定保持している駅の構成情報とに基づき、伝送対象の特定車両の車両側装置において、どのホーム映像を表示すべきか、表示すべき適切な映像ストリームを決定する(ステップS17)。なお、条件によっては前記車両識別用の列車IDを用いて表示すべき映像ストリームを決定する場合もある。この伝送対象映像ストリームの決定手順については後述する。
【0035】
映像ストリームの決定後、伝送制御装置140は映像伝送部150に指示を送り、どのホーム映像を表示すべきかの映像ストリーム情報と、映像情報要求に対応する映像情報とを映像伝送制御部130の映像伝送部150から車両側無線伝送部260に送信する(ステップS18)。車両側無線伝送部260では、送信された映像ストリーム情報と映像情報を受信する。この取得した映像ストリーム情報によって、どのIPアドレス宛の映像を表示すべきかの情報を得る。そして、車両側無線伝送部260は、映像ストリーム情報に基づいて映像情報の出力を設定し、伝送制御装置140から指示された適切なIPアドレス宛の映像情報を選択的に車両側装置210のスイッチ251に出力し、表示対象の映像信号を再生して表示部253に出力させる(ステップS19)。これにより、目的のホーム映像の映像ストリームが表示部253に表示される。なお、上記手順では、映像情報要求に対応して映像情報を送信するように述べたが、通常は、無線伝送部同士がリンク状態となった場合に、常時ホーム側装置110から車両側装置210に1つまたは複数の映像ストリームを伝送しておき、車両側装置210において映像ストリーム情報に基づいて表示すべき適切なIPアドレス宛の映像ストリームを選択して表示する。
【0036】
次に、進路情報及び在線情報、並びに列車IDの具体例について説明する。図5は進路情報及び在線情報を説明する図である。進路情報は、車両の進路に関する情報である。図5(a)の例では、ホーム及び軌道に対して、(1)、(2)、(3)、(4)の4つの進路情報を設定可能である。車両がホームに入線してきた場合、進行経路によっていずれかの進路情報(1)〜(4)が伝送制御装置140に入力される。この進路情報は、その経路に進路が引かれたらONとなり、車両の先頭が経路の所定地点((1)〜(4)の図示地点)を通過したらOFFとなる。つまり、進路情報によってどの経路を通って車両が入線しているかが判別可能である。
【0037】
在線情報は、ホームへの車両の在線状態に関する情報である。図5(a)の例では、ホームに対して[A]、[B]の2つの在線情報を設定可能である。車両がホームに入線してきた場合、在線状態によっていずれかの在線情報[A]、[B]が伝送制御装置140に入力される。この在線情報は、ホーム前後の例えば20m弱のエリアに車両の先頭が進入した場合にONとなり、このエリアから車両の後方が抜けるとOFFとなる。つまり、在線情報によって現在どのホームに車両が存在するか(停止しているか)が判別可能である。
【0038】
図5(b)中の矢印に示すように車両が入線してホームに停止した場合、まず進路情報(1)がONとなり、この経路の所定地点を車両の先頭が通過すると進路情報(1)がOFFとなり、ホームの前後20m以内に車両の先頭が入ると在線情報[A]がONとなる。このとき、在線情報は進路情報がOFFになった後にONになるよう設定されている。進路情報同士、及び進路情報と在線情報とは排他制御がなされ、同時に同一方向の進路情報がONになること、在線情報がONのときに関連する進路情報がONになること、また、同一ホームで関連する進路情報が同時にONになることを禁止している。
【0039】
図6は駅の構成例に対応する進路情報及び在線情報を示す図である。図6の例では、駅のホームはホームAとホームBの2つがあり、これら2つのホームに対して3つの進路がある場合を示している。図中上側のホームAに対応する軌道では右→左、左→右、右から入線して再度右への折り返しの3つの入線パターンがあり、図中下側のホームBに対応する軌道では右→左、右から入線して再度右への折り返しの2つの入線パターンがある。この例では、進路情報(1)、(2)、(3)、在線情報[A]、[B]が設定可能であり、これらの進路情報及び在線情報によって各ホームに停止した車両に対して適切な映像ストリームを決定する。この場合、ホームAに停止した車両に対してはホームAを撮影した映像ストリーム1を表示させ、ホームBに停止した車両に対してはホームBを撮影した映像ストリーム2を表示させる。
【0040】
また、駅のホーム上には、図中右側の一方の端部に、ホームAに対応してホーム側無線伝送部AP1が配置され、反対側のホームBに対応してホーム側無線伝送部AP2が配置されている。また、図中左側の他方の端部に、ホームA及びホームBの両方に対応してホーム側無線伝送部AP3が配置されている。ここで、少なくとも近傍に配置されるホーム側無線伝送部AP1とAP2とは、無線通信に使用する周波数(チャンネル)を異なるものにする。
【0041】
図7は図6の構成例における在線情報及び進路情報の組み合わせによる駅の構成情報を説明する図であり、図7(a)は各ホーム側無線伝送部に対応する映像ストリーム、在線情報及び進路情報の組み合わせを示す図、図7(b)は進路情報の排他関係を示す図である。図7(a)に示すように、ホーム側無線伝送部AP1は、ホームAに対応する映像ストリーム1を送信する。この場合に該当する在線情報及び進路情報は、在線情報[A]ONかつ進路情報(3)ONの状態、及び、在線情報[A]ONのみ(進路情報なし)の状態がある。ホーム側無線伝送部AP2は、ホームBに対応する映像ストリーム2を送信する。この場合に該当する在線情報及び進路情報は、在線情報[B]ONのみ(進路情報なし)の状態がある。ホーム側無線伝送部AP3は、ホームAに対応する映像ストリーム1を送信する場合と、ホームBに対応する映像ストリーム2を送信する場合とがある。映像ストリーム1を送信する場合に該当する在線情報及び進路情報は、在線情報[A]ONかつ進路情報(1)ONの状態がある。また、映像ストリーム2を送信する場合に該当する在線情報及び進路情報は、在線情報[B]ONかつ進路情報(2)ONの状態がある。
【0042】
図7(b)に示すように、進路情報(1)ONが入力される場合、排他制御により進路情報(2)ON及び進路情報(3)ONの入力はあり得ない。また、進路情報(2)ONが入力される場合、排他制御により進路情報(1)ONの入力はあり得ない。また、進路情報(3)ONが入力される場合、排他制御により進路情報(1)ONの入力はあり得ない。
【0043】
図8は図7の在線情報及び進路情報の組み合わせに対応する設定情報をテーブルで示した図であり、図8(a)は各ホーム側無線伝送部に対応する映像ストリーム、在線情報及び進路情報の組み合わせを示す映像ストリーム構成設定情報テーブルの図、図8(b)は進路情報の排他関係を示す進路情報排他設定情報テーブルの図である。図7に示した各ホーム側無線伝送部ごとの無線伝送部番号(AP番号)、これに紐付く映像ストリーム番号、在線情報及び進路情報の組み合わせは、図8のように表現することができる。ここで、在線情報[A]、[B]はそれぞれ番号1、2を対応させている。これらの情報の組み合わせを設定した駅の構成情報は、当該駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する情報であり、車両の進路及び在線状態と各状態において適切な映像情報との対応関係を示すものである。伝送制御装置140は、これらの駅の構成情報を用いて、在線している車両に表示すべき映像ストリームを決定可能である。なお、伝送制御装置140では、現在の在線情報及び進路情報とともに、前回ONとなった進路情報を保持しておくようにする。
【0044】
図9は列車IDと映像ストリームの対応の具体例を示す列車ID管理テーブルの図である。列車ID管理テーブルには、該当車両と表示すべき映像情報との対応を示す車両−映像対応情報が保持される。伝送制御装置140は、車両側無線伝送部からの映像情報要求から該当車両の列車IDを取得する。列車IDは、車両ごとに特有の番号を予め付与しておく。そして、その車両に対して表示すべき映像ストリームを決定した際、決定した映像ストリーム情報を車両側装置に送るとともに、該当車両の列車IDに紐付く映像ストリーム情報(車両−映像対応情報)として、決定した映像ストリーム番号を列車ID管理テーブルに保持する。その後、伝送制御装置140は、ホーム側無線伝送部から列車IDを含む映像情報要求を受けた場合に、列車ID管理テーブルを参照し、該当する列車IDに紐付く映像ストリーム情報がある場合は、この列車IDの映像ストリーム情報に基づいて映像ストリームを決定する。なお、列車ID管理テーブルの映像ストリーム情報は、在線情報がOFFになったタイミングで保持内容をクリアする。
【0045】
次に、伝送制御装置140における伝送対象映像ストリームの決定手順について詳しく説明する。図10は本実施形態における伝送対象映像ストリームの決定手順を示すフローチャートである。伝送制御装置140は、上述した各ホーム側無線伝送部に対応する映像ストリーム、在線情報及び進路情報の組み合わせによる駅の構成情報を保持するとともに、駅から進路情報及び在線情報を取得し、車両の在線状態を判別する。また、上述したリンク情報に基づき、それぞれのホーム側無線伝送部と車両側無線伝送部との接続状態を判別する。これらの車両の在線状態や無線伝送部の接続状態に基づき、該当車両において表示すべき映像ストリームを決定する。
【0046】
まず、伝送制御装置140は、ホーム側無線伝送部(AP)からのリンク情報と、そのホーム側無線伝送部に接続された車両側無線伝送部(STA)からの映像情報要求を受けているかどうかを判断する(ステップS31)。ここで、リンク情報及び映像情報要求を受けていない場合は、処理を終了する。ステップS31でリンク情報及び映像情報要求を受けた場合は、駅の構成情報を参照し、該当するリンク状態のホーム側無線伝送部に紐付く映像ストリームが1つであるかどうかを判断する(ステップS32)。ステップS32において、構成情報上で該当するホーム側無線伝送部に紐付く映像ストリームが1つである場合、すなわちリンク状態のホーム側無線伝送部が1つのホームの映像ストリームのみを伝送する構成である場合は、その映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定する(ステップS33)。例えば、図8(a)の構成情報の例では、ホーム側無線伝送部AP2から映像情報要求を受けた場合、このホーム側無線伝送部AP2に紐付く映像ストリームは映像ストリーム2の1つだけであるので、この映像ストリーム2に決定する。
【0047】
また、ステップS32において、構成情報上で該当するホーム側無線伝送部に紐付く映像ストリームが複数ある場合は、続いて列車ID管理テーブルに映像ストリーム情報が保持されているかどうかを判断する(ステップS34)。ここで、列車ID管理テーブルに映像ストリーム情報が保持されている場合は、この映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定する(ステップS33)。例えば、図9の列車ID管理テーブルの例では、列車ID2の車両からの映像情報要求を受けた場合、この列車ID2に紐付く映像ストリーム1の映像ストリーム情報が保持されているので、この映像ストリーム1に決定する。無線接続においては、途中で接続が途切れる場合がある。このような場合に再接続して映像情報要求を受けたときは、列車ID管理テーブルに以前の映像ストリーム情報が残っているので、この映像ストリーム情報に基づき前回と同様の映像ストリームに決定する。
【0048】
また、ステップS34において、列車ID管理テーブルに映像ストリーム情報が保持されていない場合は、続いてリンク状態のホーム側無線伝送部に対応する在線情報ON(在線状態)が1つかどうかを判断する(ステップS35)。ここで、リンク状態のホーム側無線伝送部に対応する在線情報ONが1つの場合は、この在線情報ONに対応する映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定する(ステップS33)。例えば、図8(a)の構成情報の例では、ホーム側無線伝送部AP3から映像情報要求を受けた場合、このホーム側無線伝送部AP3に対応する在線情報ONが番号1(在線情報[A])だけである場合は、このホーム側無線伝送部AP3、在線情報[A]ONに対応する映像ストリーム1に決定する。
【0049】
また、ステップS35において、リンク状態のホーム側無線伝送部に対応する在線情報ONが複数ある場合、すなわち複数ホームをカバーするホーム側無線伝送部において複数の車両側無線伝送部が接続され、複数ホームが在線状態となっている場合は、続いてステップS36の処理を行う。ステップS36では、在線情報ONで進路情報要、かつ進路情報の記憶(進路記憶)がONとなっているものがあるかどうかを判断する。ここで、この判定条件に該当するものがある場合は、進路記憶をOFFとし(ステップS37)、進路記憶がされていた進路情報に対応する映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定する(ステップS33)。例えば、図8(a)の構成情報の例において、ホームAに列車(列車ID2)が在線状態であるときにホームBに列車(列車ID3)が入線し、ホーム側無線伝送部AP3に対応する在線情報[A]、[B]が共にONで、進路情報(2)がONになっている場合を考える。この場合、ホーム側無線伝送部AP3、在線情報[B]ON、進路情報(2)ONに対応する映像ストリーム2に決定し、この進路情報(2)の進路記憶をOFFする。
【0050】
ここで、進路記憶のON/OFFについて説明する。図11は進路記憶のON/OFFタイミングを示すタイムチャートであり、図11(a)は映像ストリーム決定による進路記憶OFFを、図11(b)は排他制御による進路記憶OFFを示す図である。進路情報の接点信号の入力があった場合、車両が所定地点を通過した進路情報OFFのタイミングで該当の進路情報を記憶する進路記憶ONとする。その後、対応する映像ストリームを決定したタイミングで進路記憶OFFとし、保持していた進路情報をクリアする。また、第1の進路情報の入力により進路記憶ONとなった状態で、第2の進路情報の入力があり、進路記憶ONとする場合は、排他制御により、先の進路情報を進路記憶OFFとし、後の進路情報を進路記憶ONにする。
【0051】
また、ステップS36において、上記判定条件に該当するものが無い場合は、続いて在線情報ONで進路情報不要のものがあるかどうかを判断する(ステップS38)。ここで、この判定条件に該当するものがある場合は、この在線情報ONに対応する映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定する(ステップS33)。例えば、車両基地など、駅の構成によってこの判定条件に該当する場合があり、このときは在線状態のホームに対応する映像ストリームに決定する。
【0052】
また、ステップS38において、判定条件に該当するものが無い場合は、リンク状態のホーム側無線伝送部に対応する一番最初の映像ストリームに表示すべき映像ストリームを決定し(ステップS39)、処理を終了する。
【0053】
上記の決定アルゴリズムを用いることにより、入線した車両に対して表示すべき適切な映像ストリームを選択することが可能になる。車両側装置では、車両から前位置信号、低速信号を得ることができるが、どのホームに入線したかといった情報は得られない。このため、駅に複数のホームがあり、それぞれのホームを撮影した複数の映像情報がホーム側装置から車両側装置に伝送される場合などには、車両側装置は受信可能な複数の映像データのうちのどの映像情報を表示すべきか判断できない。また、ホーム側装置では、車両側装置とのリンク情報などによる接続情報だけでは、車両が本当にホームに停止しているかどうかは判断できない。そこで、進路情報や在線情報を用いて、ホーム側装置の伝送制御装置140において車両の進路や在線状態を判別し、伝送先の車両に対して適切な映像情報を選択する。なお、在線情報だけでは、複数のホームにそれぞれ車両が停止している状態で、どちらの車両にどのホームの映像ストリームを割り当てればよいか判別できない場合がある。このような場合は、進路情報のON/OFFや進路記憶の履歴を参照し、進路情報及び在線情報を合わせて考慮して適切な映像ストリームを判定する。
【0054】
ホーム側装置で撮影したホーム映像の映像ストリームは、リンク状態の車両側装置へ常時伝送される。このため、車両側装置では、自車両に対して決定された映像ストリームを示す映像ストリーム情報を取得し、これに基づいて必要な映像ストリームを取り出して表示した際、以降は継続して映像ストリームを取得して表示可能である。
【0055】
上記実施形態の説明では、ホームを撮影したホーム映像を適宜選択する際の手順について述べたが、別の映像情報を追加したり、車両側で複数の映像を切り替えて表示することもできる。また、車内にカメラを設けてその撮影映像を伝送し、運転席の車両側装置の表示部に表示したり、ホーム側装置に伝送して管理センタ等で表示することも可能である。また、映像情報以外の情報についてもホームと車両間で伝送して用いることが可能である。
【0056】
伝送制御装置140は、上記の決定アルゴリズムによって映像ストリームを決定した後、この映像ストリームを第1候補として映像ストリーム情報に入れるとともに、リンク状態のホーム側無線伝送部や隣接するホーム側無線伝送部の表示可能な映像情報を全て第2候補、第3候補、…として映像ストリーム情報に含める。これにより、車両側装置では、最初に自動的に第1候補の映像情報を表示され、その後、運転士などが切り替えボタンを押すなどの操作によって、第2候補、第3候補の映像情報を表示することも可能になる。これにより、反対側のホーム映像を表示したり、或いは、その他の駅情報や車両運行情報、ニュースなどの種々の情報についても車両側で選択して表示、再生等を行うことができる。
【0057】
上述したように、本実施形態の映像伝送システムでは、無線LAN技術を応用した双方向通信とし、映像情報はIP化することで、複数映像を同一通信路に多重させ、通信先を柔軟に変更できるようにしている。伝送制御装置では、駅から得られる進路情報、在線情報等を使用した決定アルゴリズムにより、該当する車両において表示すべき適切な映像情報を決定することができ、入線した車両に適切な映像の選択と表示指示を行うことができる。特に、複数のホームを1つのホーム側装置でカバーし、各ホームに停車している複数の車両にそれぞれ映像情報を伝送する場合などにも、適切な映像情報を選択することが可能である。また、映像情報以外の双方向通信や1対多通信に使用可能であるので、配置スペースや機器の有効活用、同一映像の複数配信による機器コスト削減などの効果が得られる。
【0058】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0059】
上記実施形態では、鉄道の駅のホームと車両間に適用した例を説明したが、進路情報、在線情報等の軌道回路情報を有するものであれば、鉄道に限らず、他の交通システムにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、駅のホームと車両間で1対多通信や双方向通信が可能であり、複数の情報を伝送する際にも送信側や受信側で適切な情報を選択的に授受することが可能となる効果を有し、鉄道等の旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システム及び映像伝送装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る映像伝送システムの概略構成を示す図
【図2】本実施形態に係る旅客運搬システムの概略構成を示す図
【図3】本実施形態の映像伝送システムの詳細構成を示すブロック図
【図4】本実施形態の映像伝送システムにおける映像情報伝送動作を示すシーケンス図
【図5】進路情報及び在線情報を説明する図
【図6】駅の構成例に対応する進路情報及び在線情報を示す図
【図7】図6の構成例における在線情報及び進路情報の組み合わせによる駅の構成情報を説明する図
【図8】図7の在線情報及び進路情報の組み合わせに対応する設定情報をテーブルで示した図
【図9】列車IDと映像ストリームの対応の具体例を示す列車ID管理テーブルの図
【図10】本実施形態における伝送対象映像ストリームの決定手順を示すフローチャート
【図11】進路記憶のON/OFFタイミングを示すタイムチャート
【符号の説明】
【0062】
100、500 駅
101 ホーム
110、510 ホーム側装置
140 伝送制御装置
150、170 映像伝送部
151a、151b、151c、151d、171a、171b、171c、171d カメラ
152 画像合成部
153 エンコーダ
154 スイッチ
155 入出力インタフェース
156、157 メディアコンバータ
160、180 ホーム側無線伝送部(AP)
161 アンテナ
200、300 車両
210、220、310、320 車両側装置
240 車載機コントローラ
250 映像取得部
251 スイッチ
252 デコーダ
253 表示部
255 入出力インタフェース
260 車両側無線伝送部(STA)
261 アンテナ
600 鉄道網
650 管理センタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムであって、
前記ホームまたはその近傍に設けられるホーム側装置と、前記車両に設けられる車両側装置とを備え、
前記ホーム側装置は、
前記ホームにおいて撮影した映像情報を生成して伝送する映像伝送部と、
1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、前記車両側装置との間で1対多通信及び双方向通信が可能なホーム側無線伝送部と、
前記車両の運行状態に関する軌道回路情報を駅から取得し、この軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定し、決定した映像情報を示す映像選択情報を出力する伝送制御部と、を有し、
前記車両側装置は、
前記ホーム側無線伝送部と無線接続され、前記ホーム側装置との間で双方向通信が可能な車両側無線伝送部と、
前記映像選択情報に基づき、前記ホーム側装置から伝送された情報から表示すべき映像情報を出力する映像取得部と、
前記映像取得部より出力された映像情報を表示する表示部と、を有する映像伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像伝送システムであって、
前記伝送制御部は、前記軌道回路情報として、前記車両の進路に関する進路情報と、前記ホームへの前記車両の在線状態に関する在線情報とを含む軌道回路情報を用い、さらに前記ホーム側無線伝送部と前記車両側無線伝送部の接続情報に基づき、前記伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定する映像伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の映像伝送システムであって、
前記伝送制御部は、前記表示すべき映像情報を決定した際、該当車両と映像選択情報との対応を示す車両−映像対応情報を保持し、前記接続情報に基づいて前記車両−映像対応情報を参照し、該当する車両に対応する以前の映像選択情報が保持されている場合は、この映像選択情報によって前記表示すべき映像情報を決定する映像伝送システム。
【請求項4】
旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムに用いられ、前記ホームまたはその近傍に設けられるホーム側装置となる映像伝送装置であって、
前記ホームにおいて撮影した映像情報を生成して伝送する映像伝送部と、
1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、車両側装置との間で1対多通信及び双方向通信が可能なホーム側無線伝送部と、
車両の運行状態に関する軌道回路情報を駅から取得し、この軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて、伝送先の車両において表示すべき映像情報を決定し、決定した映像情報を示す映像選択情報を出力する伝送制御部と、
を備える映像伝送装置。
【請求項5】
旅客運搬システムの駅のホームと車両間において、映像を含む情報を伝送する映像伝送システムに用いられ、前記車両に設けられる車両側装置となる映像伝送装置であって、
1つまたは複数の前記映像情報を含む情報を無線伝送するもので、ホーム側装置との間で双方向通信が可能な車両側無線伝送部と、
前記ホーム側装置において、車両の運行状態に関する軌道回路情報と、駅のホーム及びホーム側装置の配置に関する構成情報とに基づいて決定された、当該車両において表示すべき映像情報を示す映像選択情報を取得し、この映像選択情報に基づき、前記ホーム側装置から伝送された情報から表示すべき映像情報を出力する映像取得部と、
前記映像取得部より出力された映像情報を表示する表示部と、
を備える映像伝送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−255782(P2009−255782A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108299(P2008−108299)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】