映像信号処理装置、エンハンスゲイン生成方法およびプログラム
【課題】青空のようなフラットな領域でエンハンス処理によるノイズ強調を抑制する。
【解決手段】平均偏差算出部151は、注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。重み付け係数生成部153は、注目画素の平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数を生成する。乗算部154は、重み付け係数を用いて、予め決定されたエンハンスゲインEG0を補正する。すなわち、乗算部154は、エンハンスゲインEG0に重み付け係数を掛けて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された注目画素のエンハンスゲインEG0′を得る。青色領域検出部156は、注目画素が青色領域にあるか否かを判断し、青色領域の検出を行う。セレクタ155は、青色領域の検出信号に基づき、青色領域ではエンハンスゲインEG0′を選択し、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0を選択して、出力エンハンスゲインEGとする。
【解決手段】平均偏差算出部151は、注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。重み付け係数生成部153は、注目画素の平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数を生成する。乗算部154は、重み付け係数を用いて、予め決定されたエンハンスゲインEG0を補正する。すなわち、乗算部154は、エンハンスゲインEG0に重み付け係数を掛けて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された注目画素のエンハンスゲインEG0′を得る。青色領域検出部156は、注目画素が青色領域にあるか否かを判断し、青色領域の検出を行う。セレクタ155は、青色領域の検出信号に基づき、青色領域ではエンハンスゲインEG0′を選択し、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0を選択して、出力エンハンスゲインEGとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、映像信号処理装置、エンハンスゲイン生成方法およびプログラムに関し、特に、映像の先鋭度を向上させるために輝度信号に対してエンハンス処理を行う映像信号処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ受信機またはビデオテープ再生装置、あるいはDVD再生装置において、映像の鮮鋭度を向上させる機能としてエンハンス機能が有り、ユーザはエンハンスゲイン(エンハンス量)の調整を行うことができる。しかし、調整後のエンハンスゲインは、映像内容に関係なく固定となっている。そのため、例えばフラットな領域でエンハンス処理によりノイズを強調することになり、画質を劣化させる。
【0003】
ノイズが小振幅の場合、ノイズにエンハンスをかけない回路として、コアリングエンハンスの技術もある。しかし、信号とノイズの区別ができないため、ノイズのない映像の小振幅つまりディテールも強調できなくなる問題がある。
【0004】
また、例えば特許文献1には、ヒストグラムを算出し、ヒストグラムの変化の大きなエリアをフラット領域として検出し、エンハンスゲインをこのフラット領域で絞ることが提案されている。しかし、予め一画面のヒストグラムを計算する必要があること等、リアルタイム処理上不都合な点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のエンハンス機能では調整後のエンハンスゲインが映像内容に関係なく固定であることから、例えばフラットな領域でエンハンス処理によりノイズを強調して画質を劣化させることがある。
【0007】
この発明の目的は、例えばフラットな領域でノイズが強調されないように、映像の各領域に合ったエンハンスゲインをリアルタイムで生成して適切なエンハンス処理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の概念は、
入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインを得るエンハンスゲイン生成部と、
上記エンハンスゲイン生成部で得られた画素毎のエンハンスゲインに基づいて、上記入力映像信号を構成する輝度信号に対してエンハンス処理を行うエンハンス部を備え、
上記エンハンスゲイン生成部は、
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出部と、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成部と、
上記予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成部で生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算部を有する
映像信号処理装置にある。
【0009】
この発明において、エンハンスゲイン生成部により、入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインが得られる。そして、エンハンス部により、エンハンスゲイン生成部で生成されたエンハンスゲインに基づいて輝度信号に対してエンハンス処理が行われる。
【0010】
エンハンスゲイン生成部は、平均偏差算出部と、重み付け係数生成部と、乗算部を有する構成とされる。平均偏差算出部では、エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、この注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差が求められる。重み付け係数生成部では、平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数が生成される。そして、乗算部では、予め決定されたエンハンスゲインに重み付け係数生成部で生成された重み付け係数が掛けられて、注目画素のエンハンスゲインが得られる。
【0011】
上述したように、各画素のエンハンスゲインは、予め決定されたエンハンスゲインが、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。例えば、フラットな領域の画素のエンハンスゲインは、平均偏差の値が小さくなって重み付け係数が小さくなることから、小さくなる。そのため、フラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることが抑制される。
【0012】
また、この発明において、例えば、エンハンスゲイン生成部は、入力映像信号を構成する色信号に基づいて、特定色領域を検出する色領域検出部と、この色領域検出部の検出信号に基づいて、特定色領域では乗算部で得られたエンハンスゲインを取り出して出力し、特定色領域以外の領域では予め決定されたエンハンスゲインを取り出して出力する出力選択部をさらに有する、ようにしてもよい。
【0013】
この場合、特定色領域では乗算部で得られたエンハンスゲインが取り出されて出力される。そのため、特定色領域でかつフラットな領域では不必要なエンハンス処理は行われない。例えば、特定色領域が青色領域である場合、青空のような青色領域でかつフラットな領域ではエンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0014】
また、この発明において、例えば、エンハンスゲイン生成部は、平均偏差算出部で求められた平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する平滑化部をさらに有し、重み付け係数生成部は、平滑化部で平滑化された平均偏差の値に応じて、注目画素のエンハンスゲインを生成する、ようにしてもよい。この場合、平均偏差算出部で求められた平均偏差が激しく変化しても、平滑化されることでその変化が抑制され、従って、乗算部で得られるエンハンスゲインの変化も抑えられる。そのため、エンハンス処理の回路動作を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、各画素のエンハンスゲインは、予め決定されたエンハンスゲインが、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。そのため、フラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態としてのテレビ受信機の構成例を示すブロック図である。
【図2】テレビ受信機を構成する映像処理回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】映像処理回路を構成するエンハンス回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】エンハンス回路を構成するエンハンスゲイン生成部の構成例を示すブロック図である。
【図5】輝度値の平均偏差を算出する注目画素を中心とした所定領域の一例を示す図である。
【図6】エンハンスゲイン生成部で参照する平均偏差と重み付け係数の対応関係の一例を示す図である。
【図7】R−Y,B−Yの位相と、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)の各色との関係を示す図である。
【図8】エンハンス回路を構成するエンハンス部の構成例を示すブロック図である。
【図9】エンハンス部の各部の信号波形の一例を示す図である。
【図10】エンハンス回路における、ある一つの画素(対象画素)に対する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0018】
<1.実施の形態>
[テレビ受信機の構成]
図1は、実施の形態としてのテレビ受信機100の構成例を示している。このテレビ受信機100は、アンテナ端子103と、デジタルチューナ104と、デマルチプレクサ105と、MPEGデコーダ106を有している。また、テレビ受信機100は、映像処理回路107と、パネル駆動回路108と、表示パネル109と、音声処理回路110と、音声増幅回路111と、スピーカ112を有している。
【0019】
また、テレビ受信機100は、内部バス120と、CPU(Central Processing Unit)121と、フラッシュROM(ReadOnly Memory)122と、SDRAM(Synchronous DRAM)123を有している。また、テレビ受信機100は、イーサネットインタフェース(Ethernet I/F)124と、ネットワーク端子125と、リモコン受信部126と、リモコン送信機127を有している。なお、「イーサネット」、「Ethernet」は、登録商標である。
【0020】
アンテナ端子103は、受信アンテナ(図示せず)で受信されたテレビ放送信号を入力する端子である。デジタルチューナ104は、アンテナ端子103に入力されたテレビ放送信号を処理して、ユーザの選択チャネルに対応した所定のトランスポートストリームを出力する。デマルチプレクサ105は、デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームから、ユーザの選択チャネルに対応した、パーシャルTS(Transport Stream)を抽出する。このパーシャルTSには、映像データのTSパケット、音声データのTSパケットが含まれている。
【0021】
また、デマルチプレクサ105は、デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームから、PSI/SI(Program Specific Information/Service Information)を取り出し、CPU121に出力する。デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームには、複数のチャネルが多重化されている。デマルチプレクサ105で、当該トランスポートストリームから任意のチャネルのパーシャルTSを抽出する処理は、PSI/SI(PAT/PMT)から当該任意のチャネルのパケットID(PID)の情報を得ることで可能となる。
【0022】
MPEGデコーダ106は、デマルチプレクサ105で得られる映像データのTSパケットにより構成される映像PES(Packetized Elementary Stream)パケットに対してデコード処理を行って映像データ(映像信号)を得る。また、MPEGデコーダ106は、デマルチプレクサ105で得られる音声データのTSパケットにより構成される音声PESパケットに対してデコード処理を行って音声データ(音声信号)を得る。
【0023】
映像処理回路107は、MPEGデコーダ106で得られた映像データに対し、ドット妨害、クロスカラー妨害の除去、IP(Interlace/Progressive)変換、スケーリング、エンハンス、グラフィックスデータの重畳等の必要な処理を行う。
【0024】
パネル駆動回路108は、映像処理回路107から出力される映像データに基づいて、表示パネル109を駆動する。表示パネル109は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma DisplayPanel)等で構成されている。音声処理回路110は、MPEGデコーダ106で得られた音声データに対して、音質調整処理、D/A変換処理等の必要な処理を行う。音声増幅回路111は、音声処理回路110から出力される音声信号を増幅してスピーカ112に供給する。
【0025】
CPU121は、テレビ受信機100の各部の動作を制御する。フラッシュROM122は、制御ソフトウェアの格納およびデータの保管を行う。SDRAM123は、CPU121のワークエリアを構成する。CPU121は、フラッシュROM122から読み出したソフトウェアやデータをSDRAM123上に展開してソフトウェアを起動させ、テレビ受信機100の各部を制御する。
【0026】
リモコン受信部126は、リモコン送信機127から送信されたリモーコントロール信号(リモコンコード)を受信し、CPU121に供給する。CPU121は、このリモコンコードに基づいて、テレビ受信機100の各部を制御する。ネットワーク端子125は、ネットワークに接続する端子であり、イーサネットインタフェース124に接続されている。CPU121、フラッシュROM122、SDRAM123およびイーサネットインタフェース124は、内部バス120に接続されている。
【0027】
図1に示すテレビ受信機100の動作を簡単に説明する。アンテナ端子103に入力されたテレビ放送信号はデジタルチューナ104に供給される。このデジタルチューナ104では、テレビ放送信号が処理されて、ユーザの選択チャネルに対応した所定のトランスポートストリームが出力される。この所定のトランスポートストリームは、デマルチプレクサ105に供給される。このデマルチプレクサ105では、トランスポートストリームから、ユーザの選択チャネルに対応した、パーシャルTS(映像データのTSパケット、音声データのTSパケット)が抽出される。このパーシャルTSは、MPEGデコーダ106に供給される。
【0028】
MPEGデコーダ106では、映像データのTSパケットにより構成される映像PESパケットに対してデコード処理が行われて映像データが得られる。この映像データは、映像処理回路107に供給される。この映像処理回路107では、映像データに対して、ドット妨害成分、クロスカラー妨害成分の除去処理、IP変換処理、スケーリング、エンハンス、グラフィックスデータの重畳処理等の処理が行われる。そして、処理後の映像データはパネル駆動回路108に供給される。そのため、表示パネル109には、ユーザの選択チャネルに対応した映像が表示される。
【0029】
また、MPEGデコーダ106では、音声データのTSパケットにより構成される音声PESパケットに対してデコード処理が行われて音声データが得られる。この音声データは、音声処理回路110で音質調整処理、D/A変換処理等の処理が行われ、さらに、音声増幅回路111で増幅された後に、スピーカ112に供給される。そのため、スピーカ112から、ユーザの選択チャネルに対応した音声が出力される。
【0030】
[映像処理回路の構成例]
図2は、映像処理回路107の構成例を示している。この映像処理回路108は、IP変換回路131と、スケーリング回路132と、エンハンス回路133と、コントラスト・ブライトネス調整回路134と、ゲイン調整回路135と、遅延回路136と、マトリクス回路137とを有している。
【0031】
IP変換回路131は、MPEGデコーダ106(図1参照)から出力された輝度データ(輝度信号)Y、色差データ(色信号)R−Y,B−Yを、インターレース信号からプログレッシブ信号に変換する。スケーリング処理部132は、IP変換回路131から出力された輝度データY、色差データR−Y,B−Yに対して、表示パネル109への表示に適した解像度とするためのスケーリング処理を行う。
【0032】
エンハンス回路133は、スケーリング回路132から出力された輝度データYに対して映像の鮮鋭度を向上させるためのエンハンス処理を行う。エンハンス回路133は、各画素のエンハンスゲインEG0′を、ユーザ操作等により予め決定されたエンハンスゲインEG0に、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じた重み付け係数を掛けてリアルタイムに取得する。この場合、フラットな領域では平均偏差の値が小さくなることから、その領域に含まれる各画素のエンハンスゲインEG0′は小さな値として得られる。
【0033】
また、エンハンス回路133は、スケーリング回路132から出力された色差データR−Y,B−Yに基づいて、青色領域を検出する。そして、エンハンス回路133は、青色領域では、上述の平均偏差で制御されたエンハンスゲインEG0′を用いると共に、その他の色領域では、上述の予め決定されたエンハンスゲインEG0を用いて、エンハンス処理を行う。このエンハンス回路133の詳細は後述する。
【0034】
コントラスト・ブライトネス調整回路134は、エンハンス回路133から出力された輝度データYに対して、ユーザ操作に基づいて、コントラストやブライトネスの調整処理を行う。ゲイン調整回路135は、スケーリング回路132から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、ユーザ操作に基づいて、ゲインの調整処理を行う。遅延回路136は、ゲイン調整回路135から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、輝度データYとのタイミング合わせのための遅延処理を行う。
【0035】
マトリクス回路137は、コントラスト・ブライトネス調整回路134から出力された輝度データYおよび遅延回路136から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、マトリクス処理を行い、赤、緑、青の3原色データR,G,Bを出力する。この3原色データR,G,Bは、パネル駆動回路(図1参照)に供給される。
【0036】
[エンハンス回路の構成例]
図3は、エンハンス回路133の構成例を示している。このエンハンス回路133は、エンハンスゲイン生成部141と、エンハンス部142を有している。エンハンスゲイン生成部141は、輝度データY、ユーザ操作等によって予め決定されたエンハンスゲインEG0、色差データR−Y,B−Y等に基づいて、画素毎のエンハンスゲインEGを得る。また、エンハンス部142は、エンハンスゲイン生成部141で得られた画素毎のエンハンスゲインEGに基づいて、輝度データYに対してエンハンス処理を行い、処理後の輝度データY′を出力する。
【0037】
図4は、エンハンスゲイン生成部141の構成例を示している。エンハンスゲイン生成部141は、平均偏差算出部151と、水平、垂直平滑化部152と、重み付け係数生成部153と、乗算部154と、セレクタ155と、青色領域検出部156とを有している。
【0038】
平均偏差算出部151は、エンハンスゲインを得る各画素を順次注目画素とし、その注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。所定領域は、例えば、注目画素を中心とした水平n画素、垂直m画素の矩形領域とされる。図5は、所定領域の一例を示しており、水平3画素、垂直3画素の矩形領域であって、X5が注目画素である。
【0039】
平均偏差算出部151は、以下の(1)式に基づいて、平均偏差を算出する。この例は所定領域が水平n画素、垂直m画素の矩形領域である場合の例である。なお、画素Xiの輝度値を「Xi」としている。ただし、Σは、1〜(n×m)の総和を表す。
平均偏差=1/(n×m)・Σ絶対値{Xi−[(n×m)の平均値]} ・・・(1)
【0040】
水平、垂直平滑化部152は、平均偏差算出部151で得られた平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する。この水平、垂直平滑化部152は、水平方向ローパスフィルタおよび垂直方向ローパスフィルタにより構成されている。平均偏差算出部151で得られた平均偏差が激しく変化する場合であっても、この水平、垂直平滑化部152によりその変化を抑制できる。
【0041】
重み付け係数生成部153は、水平、垂直平滑化部152で平滑化された平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数を生成する。図6(a)は、平均偏差と重み付け係数の対応関係の一例を示している。この場合、重み付け係数は0.0〜1.0の値をとり、平均偏差の値が大きくなるほど、重み付け係数の値は大きくなる。なお、平均偏差と重み付け係数の対応関係は図6(a)の例に限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示す例、あるいは図6(c)に示す例なども考えられる。
【0042】
乗算部154は、ユーザ操作等で予め決定されたエンハンスゲインEG0に、重み付け係数生成部153で生成された各画素の重み付け係数を掛けて、各画素のエンハンスゲイン、つまり平均偏差に応じてリアルタイムに制御されたエンハンスゲインEG0′を得る。
【0043】
青色領域検出部156は、色差データR−Y,B−Yに基づいて、青色領域を検出する。すなわち、この青色領域検出部156は、エンハンスゲインを得る各画素を順次注目画素とし、その注目画素が青色領域にあるか否かを判断する。図7は、R−Y,B−Yの位相と、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)の各色との関係を示している。青色領域検出部156は、注目画素の色差データR−Y,B−Yが、例えば図7の破線で示す矩形領域内にあるとき、注目画素が青色領域にあると判断する。
【0044】
セレクタ155は、乗算部154で得られた画素毎のエンハンスゲインEG0′をa側に入力し、予め決定されたエンハンスゲインEG0をb側に入力する。そして、このセレクタ155は、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0を選択的に取り出し、エンハンスゲインEGとして出力する。セレクタ155は、青色領域では、エンハンスゲインEG0′をエンハンスゲインEGとして出力し、それ以外の色領域では、エンハンスゲインEG0をエンハンスゲインEGとして出力する。
【0045】
図4に示すエンハンスゲイン生成部141の動作を説明する。スケーリング回路132(図2参照)で得られた入力輝度データYは、平均偏差算出部151に供給される。この平均偏差算出部151では、エンハンスゲインを得る各画素が順次注目画素とされ、その注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差が算出される。
【0046】
平均偏差算出部151で順次算出された各画素の平均偏差は、水平、垂直平滑化部152で水平方向および垂直方向に平滑化された後に、重み付け係数生成部153に供給される。この重み付け係数生成部153では、平滑化された平均偏差の値に応じて、各画素の重み付け係数が順次生成される。
【0047】
重み付け係数生成部153で順次生成された各画素の重み付け係数は、乗算部154に供給される。また、この乗算部154には、ユーザ操作等で予め決定されたエンハンスゲインEG0が、例えばCPU121(図1参照)から供給される。この乗算部154では、エンハンスゲインEG0に、重み付け係数が掛けられて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された各画素のエンハンスゲインEG0′が得られる。
【0048】
また、スケーリング回路132で得られた入力色差データR−Y,B−Yは、青色領域検出部156に供給される。この青色領域検出部156では、色差データR−Y,B−Yに基づいて、各画素が青色領域にあるか否かが判断され、青色領域の検出が行われる。
【0049】
乗算部154で得られた各画素のエンハンスゲインEG0′は、セレクタ155のa側に入力される。また、予め決定されたエンハンスゲインEG0は、セレクタ155のb側に入力される。このセレクタ155には、さらに、青色領域検出部156の検出信号が、選択制御信号として供給される。このセレクタ155では、青色領域にあってはエンハンスゲインEG0′が取り出されて、出力エンハンスゲインEGとして出力される。また、このセレクタ155では、その他の色領域にあっては、エンハンスゲインEG0が取り出されて、出力エンハンスゲインEGとして出力される。
【0050】
図8は、エンハンス部142の構成例を示している。このエンハンス部142は、遅延素子161,162と、加算器163と、減算器164と、増幅器165と、乗算器166と、加算器167を有している。
【0051】
スケーリング回路132(図2参照)で得られた入力輝度データY(図9(a)参照)は、遅延素子161,162の直列回路を介して加算器163に供給される。また、この輝度データYは、直接、加算器163に供給される。加算器163では、遅延素子162から出力された輝度データY2d(図9(c)参照)と入力輝度データYが加算される。
【0052】
加算器163の出力データ(Y+Y2d)(図9(d)参照)は、減算器164に供給される。また、遅延素子161から出力された輝度データY1d(図9(b)参照)は、増幅器165で2倍に増幅された後に減算器164に供給される。減算器164では、増幅器165の出力データ2*Y1dから加算器163の出力データ(Y+Y2d)が差し引かれ、エンハンス信号成分Senh(図9(e)参照)が得られる。
【0053】
減算器164で得られたエンハンス信号成分Senhは、乗算器166に供給される。この乗算器166には、上述のエンハンスゲイン生成部141で得られたエンハンスゲインEGが供給される。この乗算器141では、エンハンス信号成分Senhに、エンハンスゲインEGが掛けられ、輝度データに付加すべきエンハンス信号成分Senh′が得られる。この場合、エンハンスゲインEGが大きい程、エンハンス信号成分Senh′のレベルは大きくなる。
【0054】
乗算器166で得られたエンハンス信号成分Senh′は、加算器167に供給される。この加算器167には、遅延素子161から出力された輝度データY1dが、エンハンス処理対象の輝度データとして供給される。加算器167では、輝度データY1dにエンハンス信号成分Senh′が加算され、エンハンス処理された出力輝度データY′が得られる。
【0055】
図10のフローチャートを参照して、図3、図4、図8に示すエンハンス回路133の動作を説明する。この図10のフローチャートは、エンハンス回路133における、ある一つの画素(対象画素)に対する処理手順を示している。
【0056】
エンハンス回路133は、ステップST1において、処理を開始する。そして、エンハンス回路133は、ステップST2において、エンハンスゲイン生成部141の平均偏差算出部151により、対象画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。そして、エンハンス回路133は、ステップST3において、エンハンスゲイン生成部141の重み付け係数生成部153により、ステップST2で算出した対象画素の平均偏差の値に応じて、対象画素の重み付け係数を生成する。
【0057】
次に、エンハンス回路133は、ステップST4において、エンハンスゲイン生成部141の乗算部154により、ステップST3で生成した重み付け係数を用いて、予め決定されたエンハンスゲインEG0を補正する。すなわち、エンハンス回路133は、乗算部154により、予め決定されたエンハンスゲインEG0にステップST3で生成した重み付け係数を掛けて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された対象画素のエンハンスゲインEG0′を得る。
【0058】
次に、エンハンス回路133は、ステップST5において、エンハンスゲイン生成部141の青色領域検出部156により、対象画素が青色領域にあるか否かを判断し、青色領域の検出を行う。そして、エンハンス回路133は、ステップST6において、エンハンスゲイン生成部141のセレクタ155により、最終的に用いるエンハンスゲインの選択を行う。
【0059】
この場合、セレクタ155は、ステップST5の青色領域の検出信号に基づいて、ステップST4で得られた平均偏差に応じてリアルタイムに制御された対象画素のエンハンスゲインEG0′、または予め決定されたエンハンスゲインEG0のいずれかを選択する。すなわち、青色領域では、エンハンスゲインEG0′を選択し、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0を選択する。
【0060】
次に、エンハンス回路133は、ステップST7において、エンハンス部142により、対象画素の輝度データに対して、エンハンス処理を行う。この場合、エンハンス部142は、エンハンス信号成分Senhを生成し、このエンハンス信号成分SenhにステップST6で選択されたエンハンスゲインEGを掛けて、輝度データに付加すべきエンハンス信号成分Senh′を得る。そして、エンハンス部142は、輝度データにエンハンス信号成分Senh′を付加する。
【0061】
エンハンス回路133は、ステップST7の処理の後、ステップST8において、処理を終了する。
【0062】
図3に示すエンハンス回路133において、エンハンスゲイン生成部141では、画素毎に、エンハンスゲインEG0′が生成される。このエンハンスゲインEG0′は、予め決定されたエンハンスゲインEG0が、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。例えば、フラットな領域の画素のエンハンスゲインEG0′は、平均偏差の値が小さくなって重み付け係数が小さくなることから、小さくなる。
【0063】
また、図3に示すエンハンス回路133において、セレクタ155では、平均偏差に応じてリアルタイムに制御されたエンハンスゲインEG0′または予め決定されたエンハンスゲインEG0が、青色領域検出部156の検出信号に応じて選択される。すなわち、青色領域ではエンハンスゲインEG0が選択され、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0が選択され、出力エンハンスゲインEGとされる。
【0064】
そのため、図3に示すエンハンス回路133において、青空のような青色領域でかつフラットな領域では、エンハンス部142のエンハンス処理でエンハンスゲインEG0′が使用され、しかもそのエンハンスゲインEG0′は小さくなっている。したがって、この領域では、エンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0065】
また、図3に示すエンハンス回路133において、エンハンスゲイン生成部141では、平均偏差算出部151で求められた平均偏差が水平、垂直平滑化部152で水平方向および垂直方向に平滑化された後に、重み付け係数生成部153に供給されている。そのため、平均偏差算出部151で求められた平均偏差が激しく変化しても、平滑化されることでその変化が抑制され、重み付け係数生成部153でえられ得る重み付け係数の変化が抑制される。したがって、乗算部154で得られるエンハンスゲインEG0′の変化も抑えられ、エンハンス処理の回路動作を安定化させることができる。
【0066】
<2.変形例>
なお、上述実施の形態において、図4に示すエンハンスゲイン生成部141では、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0が、エンハンスゲインEGとして出力される構成となっている。しかし、エンハンスゲイン生成部としては、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0を例えばユーザ操作で選択してエンハンスゲインEGとして出力する構成も考えられる。その場合、エンハンスゲインEG0′が選択されるとき、エンハンス部142では青色領域に限らず全ての色領域においてこのエンハンスゲインEG0′がエンハンスゲインEGとして用いられる。したがって、全ての色領域において、フラットな領域では、エンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0067】
また、上述実施の形態において、図4に示すエンハンスゲイン生成部141では、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0が、エンハンスゲインEGとして出力される構成となっている。しかし、青色領域検出部156の代わりに、他の一つまたは複数の色領域の検出部を設け、その検出部の検出信号に基づいて、セレクタ155における選択が制御される構成も考えられる。
【0068】
また、上述実施形態において、図3に示すエンハンス回路133(エンハンスゲイン生成部141、エンハンス部142)がハードウェアで構成されるように説明した。しかし、このエンハンス回路133の一部または全部の処理をソフトウェアで実現することも可能である。その場合、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータ装置において、例えばROM等に格納された処理プログラムがRAM上に展開されてCPUで実行される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、例えば、青空のようなフラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることを抑制できるものであり、例えば、テレビ受信機におけるエンハンス回路等に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
100・・・テレビ受信機、103・・・アンテナ端子、104・・・デジタルチューナ、105・・・デマルチプレクサ、106・・・MPEGデコーダ、107・・・映像処理回路、108・・・パネル駆動回路、109・・・表示パネル、110・・・音声処理回路、111・・・音声増幅回路、112・・・スピーカ、120・・・内部バス、121・・・CPU、122・・・フラッシュROM、123・・・SDRAM、124・・・イーサネットインタフェース、125・・・ネットワーク端子、126・・・リモコン受信部、127・・・リモコン送信機、131・・・IP変換回路、132・・・スケーリング回路、133・・・エンハンス回路、134・・・コントラスト・ブライトネス調整回路、135・・・ゲイン調整回路、136・・・遅延回路、137・・・マトリクス回路、141・・・エンハンスゲイン生成部、142・・・エンハンス部、151・・・平均偏差算出部、152・・・水平、垂直平滑化部、153・・・重み付け係数生成部、154・・・乗算部、155・・・セレクタ、156・・・青色領域検出部、161,162・・・遅延素子、163,167・・・加算器、164・・・減算器、165・・・増幅器、166・・・乗算器
【技術分野】
【0001】
この発明は、映像信号処理装置、エンハンスゲイン生成方法およびプログラムに関し、特に、映像の先鋭度を向上させるために輝度信号に対してエンハンス処理を行う映像信号処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ受信機またはビデオテープ再生装置、あるいはDVD再生装置において、映像の鮮鋭度を向上させる機能としてエンハンス機能が有り、ユーザはエンハンスゲイン(エンハンス量)の調整を行うことができる。しかし、調整後のエンハンスゲインは、映像内容に関係なく固定となっている。そのため、例えばフラットな領域でエンハンス処理によりノイズを強調することになり、画質を劣化させる。
【0003】
ノイズが小振幅の場合、ノイズにエンハンスをかけない回路として、コアリングエンハンスの技術もある。しかし、信号とノイズの区別ができないため、ノイズのない映像の小振幅つまりディテールも強調できなくなる問題がある。
【0004】
また、例えば特許文献1には、ヒストグラムを算出し、ヒストグラムの変化の大きなエリアをフラット領域として検出し、エンハンスゲインをこのフラット領域で絞ることが提案されている。しかし、予め一画面のヒストグラムを計算する必要があること等、リアルタイム処理上不都合な点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−318313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のエンハンス機能では調整後のエンハンスゲインが映像内容に関係なく固定であることから、例えばフラットな領域でエンハンス処理によりノイズを強調して画質を劣化させることがある。
【0007】
この発明の目的は、例えばフラットな領域でノイズが強調されないように、映像の各領域に合ったエンハンスゲインをリアルタイムで生成して適切なエンハンス処理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の概念は、
入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインを得るエンハンスゲイン生成部と、
上記エンハンスゲイン生成部で得られた画素毎のエンハンスゲインに基づいて、上記入力映像信号を構成する輝度信号に対してエンハンス処理を行うエンハンス部を備え、
上記エンハンスゲイン生成部は、
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出部と、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成部と、
上記予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成部で生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算部を有する
映像信号処理装置にある。
【0009】
この発明において、エンハンスゲイン生成部により、入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインが得られる。そして、エンハンス部により、エンハンスゲイン生成部で生成されたエンハンスゲインに基づいて輝度信号に対してエンハンス処理が行われる。
【0010】
エンハンスゲイン生成部は、平均偏差算出部と、重み付け係数生成部と、乗算部を有する構成とされる。平均偏差算出部では、エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、この注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差が求められる。重み付け係数生成部では、平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数が生成される。そして、乗算部では、予め決定されたエンハンスゲインに重み付け係数生成部で生成された重み付け係数が掛けられて、注目画素のエンハンスゲインが得られる。
【0011】
上述したように、各画素のエンハンスゲインは、予め決定されたエンハンスゲインが、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。例えば、フラットな領域の画素のエンハンスゲインは、平均偏差の値が小さくなって重み付け係数が小さくなることから、小さくなる。そのため、フラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることが抑制される。
【0012】
また、この発明において、例えば、エンハンスゲイン生成部は、入力映像信号を構成する色信号に基づいて、特定色領域を検出する色領域検出部と、この色領域検出部の検出信号に基づいて、特定色領域では乗算部で得られたエンハンスゲインを取り出して出力し、特定色領域以外の領域では予め決定されたエンハンスゲインを取り出して出力する出力選択部をさらに有する、ようにしてもよい。
【0013】
この場合、特定色領域では乗算部で得られたエンハンスゲインが取り出されて出力される。そのため、特定色領域でかつフラットな領域では不必要なエンハンス処理は行われない。例えば、特定色領域が青色領域である場合、青空のような青色領域でかつフラットな領域ではエンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0014】
また、この発明において、例えば、エンハンスゲイン生成部は、平均偏差算出部で求められた平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する平滑化部をさらに有し、重み付け係数生成部は、平滑化部で平滑化された平均偏差の値に応じて、注目画素のエンハンスゲインを生成する、ようにしてもよい。この場合、平均偏差算出部で求められた平均偏差が激しく変化しても、平滑化されることでその変化が抑制され、従って、乗算部で得られるエンハンスゲインの変化も抑えられる。そのため、エンハンス処理の回路動作を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、各画素のエンハンスゲインは、予め決定されたエンハンスゲインが、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。そのため、フラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態としてのテレビ受信機の構成例を示すブロック図である。
【図2】テレビ受信機を構成する映像処理回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】映像処理回路を構成するエンハンス回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】エンハンス回路を構成するエンハンスゲイン生成部の構成例を示すブロック図である。
【図5】輝度値の平均偏差を算出する注目画素を中心とした所定領域の一例を示す図である。
【図6】エンハンスゲイン生成部で参照する平均偏差と重み付け係数の対応関係の一例を示す図である。
【図7】R−Y,B−Yの位相と、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)の各色との関係を示す図である。
【図8】エンハンス回路を構成するエンハンス部の構成例を示すブロック図である。
【図9】エンハンス部の各部の信号波形の一例を示す図である。
【図10】エンハンス回路における、ある一つの画素(対象画素)に対する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0018】
<1.実施の形態>
[テレビ受信機の構成]
図1は、実施の形態としてのテレビ受信機100の構成例を示している。このテレビ受信機100は、アンテナ端子103と、デジタルチューナ104と、デマルチプレクサ105と、MPEGデコーダ106を有している。また、テレビ受信機100は、映像処理回路107と、パネル駆動回路108と、表示パネル109と、音声処理回路110と、音声増幅回路111と、スピーカ112を有している。
【0019】
また、テレビ受信機100は、内部バス120と、CPU(Central Processing Unit)121と、フラッシュROM(ReadOnly Memory)122と、SDRAM(Synchronous DRAM)123を有している。また、テレビ受信機100は、イーサネットインタフェース(Ethernet I/F)124と、ネットワーク端子125と、リモコン受信部126と、リモコン送信機127を有している。なお、「イーサネット」、「Ethernet」は、登録商標である。
【0020】
アンテナ端子103は、受信アンテナ(図示せず)で受信されたテレビ放送信号を入力する端子である。デジタルチューナ104は、アンテナ端子103に入力されたテレビ放送信号を処理して、ユーザの選択チャネルに対応した所定のトランスポートストリームを出力する。デマルチプレクサ105は、デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームから、ユーザの選択チャネルに対応した、パーシャルTS(Transport Stream)を抽出する。このパーシャルTSには、映像データのTSパケット、音声データのTSパケットが含まれている。
【0021】
また、デマルチプレクサ105は、デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームから、PSI/SI(Program Specific Information/Service Information)を取り出し、CPU121に出力する。デジタルチューナ104で得られたトランスポートストリームには、複数のチャネルが多重化されている。デマルチプレクサ105で、当該トランスポートストリームから任意のチャネルのパーシャルTSを抽出する処理は、PSI/SI(PAT/PMT)から当該任意のチャネルのパケットID(PID)の情報を得ることで可能となる。
【0022】
MPEGデコーダ106は、デマルチプレクサ105で得られる映像データのTSパケットにより構成される映像PES(Packetized Elementary Stream)パケットに対してデコード処理を行って映像データ(映像信号)を得る。また、MPEGデコーダ106は、デマルチプレクサ105で得られる音声データのTSパケットにより構成される音声PESパケットに対してデコード処理を行って音声データ(音声信号)を得る。
【0023】
映像処理回路107は、MPEGデコーダ106で得られた映像データに対し、ドット妨害、クロスカラー妨害の除去、IP(Interlace/Progressive)変換、スケーリング、エンハンス、グラフィックスデータの重畳等の必要な処理を行う。
【0024】
パネル駆動回路108は、映像処理回路107から出力される映像データに基づいて、表示パネル109を駆動する。表示パネル109は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma DisplayPanel)等で構成されている。音声処理回路110は、MPEGデコーダ106で得られた音声データに対して、音質調整処理、D/A変換処理等の必要な処理を行う。音声増幅回路111は、音声処理回路110から出力される音声信号を増幅してスピーカ112に供給する。
【0025】
CPU121は、テレビ受信機100の各部の動作を制御する。フラッシュROM122は、制御ソフトウェアの格納およびデータの保管を行う。SDRAM123は、CPU121のワークエリアを構成する。CPU121は、フラッシュROM122から読み出したソフトウェアやデータをSDRAM123上に展開してソフトウェアを起動させ、テレビ受信機100の各部を制御する。
【0026】
リモコン受信部126は、リモコン送信機127から送信されたリモーコントロール信号(リモコンコード)を受信し、CPU121に供給する。CPU121は、このリモコンコードに基づいて、テレビ受信機100の各部を制御する。ネットワーク端子125は、ネットワークに接続する端子であり、イーサネットインタフェース124に接続されている。CPU121、フラッシュROM122、SDRAM123およびイーサネットインタフェース124は、内部バス120に接続されている。
【0027】
図1に示すテレビ受信機100の動作を簡単に説明する。アンテナ端子103に入力されたテレビ放送信号はデジタルチューナ104に供給される。このデジタルチューナ104では、テレビ放送信号が処理されて、ユーザの選択チャネルに対応した所定のトランスポートストリームが出力される。この所定のトランスポートストリームは、デマルチプレクサ105に供給される。このデマルチプレクサ105では、トランスポートストリームから、ユーザの選択チャネルに対応した、パーシャルTS(映像データのTSパケット、音声データのTSパケット)が抽出される。このパーシャルTSは、MPEGデコーダ106に供給される。
【0028】
MPEGデコーダ106では、映像データのTSパケットにより構成される映像PESパケットに対してデコード処理が行われて映像データが得られる。この映像データは、映像処理回路107に供給される。この映像処理回路107では、映像データに対して、ドット妨害成分、クロスカラー妨害成分の除去処理、IP変換処理、スケーリング、エンハンス、グラフィックスデータの重畳処理等の処理が行われる。そして、処理後の映像データはパネル駆動回路108に供給される。そのため、表示パネル109には、ユーザの選択チャネルに対応した映像が表示される。
【0029】
また、MPEGデコーダ106では、音声データのTSパケットにより構成される音声PESパケットに対してデコード処理が行われて音声データが得られる。この音声データは、音声処理回路110で音質調整処理、D/A変換処理等の処理が行われ、さらに、音声増幅回路111で増幅された後に、スピーカ112に供給される。そのため、スピーカ112から、ユーザの選択チャネルに対応した音声が出力される。
【0030】
[映像処理回路の構成例]
図2は、映像処理回路107の構成例を示している。この映像処理回路108は、IP変換回路131と、スケーリング回路132と、エンハンス回路133と、コントラスト・ブライトネス調整回路134と、ゲイン調整回路135と、遅延回路136と、マトリクス回路137とを有している。
【0031】
IP変換回路131は、MPEGデコーダ106(図1参照)から出力された輝度データ(輝度信号)Y、色差データ(色信号)R−Y,B−Yを、インターレース信号からプログレッシブ信号に変換する。スケーリング処理部132は、IP変換回路131から出力された輝度データY、色差データR−Y,B−Yに対して、表示パネル109への表示に適した解像度とするためのスケーリング処理を行う。
【0032】
エンハンス回路133は、スケーリング回路132から出力された輝度データYに対して映像の鮮鋭度を向上させるためのエンハンス処理を行う。エンハンス回路133は、各画素のエンハンスゲインEG0′を、ユーザ操作等により予め決定されたエンハンスゲインEG0に、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じた重み付け係数を掛けてリアルタイムに取得する。この場合、フラットな領域では平均偏差の値が小さくなることから、その領域に含まれる各画素のエンハンスゲインEG0′は小さな値として得られる。
【0033】
また、エンハンス回路133は、スケーリング回路132から出力された色差データR−Y,B−Yに基づいて、青色領域を検出する。そして、エンハンス回路133は、青色領域では、上述の平均偏差で制御されたエンハンスゲインEG0′を用いると共に、その他の色領域では、上述の予め決定されたエンハンスゲインEG0を用いて、エンハンス処理を行う。このエンハンス回路133の詳細は後述する。
【0034】
コントラスト・ブライトネス調整回路134は、エンハンス回路133から出力された輝度データYに対して、ユーザ操作に基づいて、コントラストやブライトネスの調整処理を行う。ゲイン調整回路135は、スケーリング回路132から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、ユーザ操作に基づいて、ゲインの調整処理を行う。遅延回路136は、ゲイン調整回路135から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、輝度データYとのタイミング合わせのための遅延処理を行う。
【0035】
マトリクス回路137は、コントラスト・ブライトネス調整回路134から出力された輝度データYおよび遅延回路136から出力された色差データR−Y,B−Yに対して、マトリクス処理を行い、赤、緑、青の3原色データR,G,Bを出力する。この3原色データR,G,Bは、パネル駆動回路(図1参照)に供給される。
【0036】
[エンハンス回路の構成例]
図3は、エンハンス回路133の構成例を示している。このエンハンス回路133は、エンハンスゲイン生成部141と、エンハンス部142を有している。エンハンスゲイン生成部141は、輝度データY、ユーザ操作等によって予め決定されたエンハンスゲインEG0、色差データR−Y,B−Y等に基づいて、画素毎のエンハンスゲインEGを得る。また、エンハンス部142は、エンハンスゲイン生成部141で得られた画素毎のエンハンスゲインEGに基づいて、輝度データYに対してエンハンス処理を行い、処理後の輝度データY′を出力する。
【0037】
図4は、エンハンスゲイン生成部141の構成例を示している。エンハンスゲイン生成部141は、平均偏差算出部151と、水平、垂直平滑化部152と、重み付け係数生成部153と、乗算部154と、セレクタ155と、青色領域検出部156とを有している。
【0038】
平均偏差算出部151は、エンハンスゲインを得る各画素を順次注目画素とし、その注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。所定領域は、例えば、注目画素を中心とした水平n画素、垂直m画素の矩形領域とされる。図5は、所定領域の一例を示しており、水平3画素、垂直3画素の矩形領域であって、X5が注目画素である。
【0039】
平均偏差算出部151は、以下の(1)式に基づいて、平均偏差を算出する。この例は所定領域が水平n画素、垂直m画素の矩形領域である場合の例である。なお、画素Xiの輝度値を「Xi」としている。ただし、Σは、1〜(n×m)の総和を表す。
平均偏差=1/(n×m)・Σ絶対値{Xi−[(n×m)の平均値]} ・・・(1)
【0040】
水平、垂直平滑化部152は、平均偏差算出部151で得られた平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する。この水平、垂直平滑化部152は、水平方向ローパスフィルタおよび垂直方向ローパスフィルタにより構成されている。平均偏差算出部151で得られた平均偏差が激しく変化する場合であっても、この水平、垂直平滑化部152によりその変化を抑制できる。
【0041】
重み付け係数生成部153は、水平、垂直平滑化部152で平滑化された平均偏差の値に応じて、注目画素の重み付け係数を生成する。図6(a)は、平均偏差と重み付け係数の対応関係の一例を示している。この場合、重み付け係数は0.0〜1.0の値をとり、平均偏差の値が大きくなるほど、重み付け係数の値は大きくなる。なお、平均偏差と重み付け係数の対応関係は図6(a)の例に限定されるものではなく、例えば、図6(b)に示す例、あるいは図6(c)に示す例なども考えられる。
【0042】
乗算部154は、ユーザ操作等で予め決定されたエンハンスゲインEG0に、重み付け係数生成部153で生成された各画素の重み付け係数を掛けて、各画素のエンハンスゲイン、つまり平均偏差に応じてリアルタイムに制御されたエンハンスゲインEG0′を得る。
【0043】
青色領域検出部156は、色差データR−Y,B−Yに基づいて、青色領域を検出する。すなわち、この青色領域検出部156は、エンハンスゲインを得る各画素を順次注目画素とし、その注目画素が青色領域にあるか否かを判断する。図7は、R−Y,B−Yの位相と、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)の各色との関係を示している。青色領域検出部156は、注目画素の色差データR−Y,B−Yが、例えば図7の破線で示す矩形領域内にあるとき、注目画素が青色領域にあると判断する。
【0044】
セレクタ155は、乗算部154で得られた画素毎のエンハンスゲインEG0′をa側に入力し、予め決定されたエンハンスゲインEG0をb側に入力する。そして、このセレクタ155は、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0を選択的に取り出し、エンハンスゲインEGとして出力する。セレクタ155は、青色領域では、エンハンスゲインEG0′をエンハンスゲインEGとして出力し、それ以外の色領域では、エンハンスゲインEG0をエンハンスゲインEGとして出力する。
【0045】
図4に示すエンハンスゲイン生成部141の動作を説明する。スケーリング回路132(図2参照)で得られた入力輝度データYは、平均偏差算出部151に供給される。この平均偏差算出部151では、エンハンスゲインを得る各画素が順次注目画素とされ、その注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差が算出される。
【0046】
平均偏差算出部151で順次算出された各画素の平均偏差は、水平、垂直平滑化部152で水平方向および垂直方向に平滑化された後に、重み付け係数生成部153に供給される。この重み付け係数生成部153では、平滑化された平均偏差の値に応じて、各画素の重み付け係数が順次生成される。
【0047】
重み付け係数生成部153で順次生成された各画素の重み付け係数は、乗算部154に供給される。また、この乗算部154には、ユーザ操作等で予め決定されたエンハンスゲインEG0が、例えばCPU121(図1参照)から供給される。この乗算部154では、エンハンスゲインEG0に、重み付け係数が掛けられて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された各画素のエンハンスゲインEG0′が得られる。
【0048】
また、スケーリング回路132で得られた入力色差データR−Y,B−Yは、青色領域検出部156に供給される。この青色領域検出部156では、色差データR−Y,B−Yに基づいて、各画素が青色領域にあるか否かが判断され、青色領域の検出が行われる。
【0049】
乗算部154で得られた各画素のエンハンスゲインEG0′は、セレクタ155のa側に入力される。また、予め決定されたエンハンスゲインEG0は、セレクタ155のb側に入力される。このセレクタ155には、さらに、青色領域検出部156の検出信号が、選択制御信号として供給される。このセレクタ155では、青色領域にあってはエンハンスゲインEG0′が取り出されて、出力エンハンスゲインEGとして出力される。また、このセレクタ155では、その他の色領域にあっては、エンハンスゲインEG0が取り出されて、出力エンハンスゲインEGとして出力される。
【0050】
図8は、エンハンス部142の構成例を示している。このエンハンス部142は、遅延素子161,162と、加算器163と、減算器164と、増幅器165と、乗算器166と、加算器167を有している。
【0051】
スケーリング回路132(図2参照)で得られた入力輝度データY(図9(a)参照)は、遅延素子161,162の直列回路を介して加算器163に供給される。また、この輝度データYは、直接、加算器163に供給される。加算器163では、遅延素子162から出力された輝度データY2d(図9(c)参照)と入力輝度データYが加算される。
【0052】
加算器163の出力データ(Y+Y2d)(図9(d)参照)は、減算器164に供給される。また、遅延素子161から出力された輝度データY1d(図9(b)参照)は、増幅器165で2倍に増幅された後に減算器164に供給される。減算器164では、増幅器165の出力データ2*Y1dから加算器163の出力データ(Y+Y2d)が差し引かれ、エンハンス信号成分Senh(図9(e)参照)が得られる。
【0053】
減算器164で得られたエンハンス信号成分Senhは、乗算器166に供給される。この乗算器166には、上述のエンハンスゲイン生成部141で得られたエンハンスゲインEGが供給される。この乗算器141では、エンハンス信号成分Senhに、エンハンスゲインEGが掛けられ、輝度データに付加すべきエンハンス信号成分Senh′が得られる。この場合、エンハンスゲインEGが大きい程、エンハンス信号成分Senh′のレベルは大きくなる。
【0054】
乗算器166で得られたエンハンス信号成分Senh′は、加算器167に供給される。この加算器167には、遅延素子161から出力された輝度データY1dが、エンハンス処理対象の輝度データとして供給される。加算器167では、輝度データY1dにエンハンス信号成分Senh′が加算され、エンハンス処理された出力輝度データY′が得られる。
【0055】
図10のフローチャートを参照して、図3、図4、図8に示すエンハンス回路133の動作を説明する。この図10のフローチャートは、エンハンス回路133における、ある一つの画素(対象画素)に対する処理手順を示している。
【0056】
エンハンス回路133は、ステップST1において、処理を開始する。そして、エンハンス回路133は、ステップST2において、エンハンスゲイン生成部141の平均偏差算出部151により、対象画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を算出する。そして、エンハンス回路133は、ステップST3において、エンハンスゲイン生成部141の重み付け係数生成部153により、ステップST2で算出した対象画素の平均偏差の値に応じて、対象画素の重み付け係数を生成する。
【0057】
次に、エンハンス回路133は、ステップST4において、エンハンスゲイン生成部141の乗算部154により、ステップST3で生成した重み付け係数を用いて、予め決定されたエンハンスゲインEG0を補正する。すなわち、エンハンス回路133は、乗算部154により、予め決定されたエンハンスゲインEG0にステップST3で生成した重み付け係数を掛けて、平均偏差に応じてリアルタイムに制御された対象画素のエンハンスゲインEG0′を得る。
【0058】
次に、エンハンス回路133は、ステップST5において、エンハンスゲイン生成部141の青色領域検出部156により、対象画素が青色領域にあるか否かを判断し、青色領域の検出を行う。そして、エンハンス回路133は、ステップST6において、エンハンスゲイン生成部141のセレクタ155により、最終的に用いるエンハンスゲインの選択を行う。
【0059】
この場合、セレクタ155は、ステップST5の青色領域の検出信号に基づいて、ステップST4で得られた平均偏差に応じてリアルタイムに制御された対象画素のエンハンスゲインEG0′、または予め決定されたエンハンスゲインEG0のいずれかを選択する。すなわち、青色領域では、エンハンスゲインEG0′を選択し、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0を選択する。
【0060】
次に、エンハンス回路133は、ステップST7において、エンハンス部142により、対象画素の輝度データに対して、エンハンス処理を行う。この場合、エンハンス部142は、エンハンス信号成分Senhを生成し、このエンハンス信号成分SenhにステップST6で選択されたエンハンスゲインEGを掛けて、輝度データに付加すべきエンハンス信号成分Senh′を得る。そして、エンハンス部142は、輝度データにエンハンス信号成分Senh′を付加する。
【0061】
エンハンス回路133は、ステップST7の処理の後、ステップST8において、処理を終了する。
【0062】
図3に示すエンハンス回路133において、エンハンスゲイン生成部141では、画素毎に、エンハンスゲインEG0′が生成される。このエンハンスゲインEG0′は、予め決定されたエンハンスゲインEG0が、その画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差に応じて、リアルタイムに制御されたものとなる。例えば、フラットな領域の画素のエンハンスゲインEG0′は、平均偏差の値が小さくなって重み付け係数が小さくなることから、小さくなる。
【0063】
また、図3に示すエンハンス回路133において、セレクタ155では、平均偏差に応じてリアルタイムに制御されたエンハンスゲインEG0′または予め決定されたエンハンスゲインEG0が、青色領域検出部156の検出信号に応じて選択される。すなわち、青色領域ではエンハンスゲインEG0が選択され、その他の色領域ではエンハンスゲインEG0が選択され、出力エンハンスゲインEGとされる。
【0064】
そのため、図3に示すエンハンス回路133において、青空のような青色領域でかつフラットな領域では、エンハンス部142のエンハンス処理でエンハンスゲインEG0′が使用され、しかもそのエンハンスゲインEG0′は小さくなっている。したがって、この領域では、エンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0065】
また、図3に示すエンハンス回路133において、エンハンスゲイン生成部141では、平均偏差算出部151で求められた平均偏差が水平、垂直平滑化部152で水平方向および垂直方向に平滑化された後に、重み付け係数生成部153に供給されている。そのため、平均偏差算出部151で求められた平均偏差が激しく変化しても、平滑化されることでその変化が抑制され、重み付け係数生成部153でえられ得る重み付け係数の変化が抑制される。したがって、乗算部154で得られるエンハンスゲインEG0′の変化も抑えられ、エンハンス処理の回路動作を安定化させることができる。
【0066】
<2.変形例>
なお、上述実施の形態において、図4に示すエンハンスゲイン生成部141では、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0が、エンハンスゲインEGとして出力される構成となっている。しかし、エンハンスゲイン生成部としては、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0を例えばユーザ操作で選択してエンハンスゲインEGとして出力する構成も考えられる。その場合、エンハンスゲインEG0′が選択されるとき、エンハンス部142では青色領域に限らず全ての色領域においてこのエンハンスゲインEG0′がエンハンスゲインEGとして用いられる。したがって、全ての色領域において、フラットな領域では、エンハンス処理によりノイズが強調されるということが抑制される。
【0067】
また、上述実施の形態において、図4に示すエンハンスゲイン生成部141では、青色領域検出部156の検出信号に基づいて、エンハンスゲインEG0′またはエンハンスゲインEG0が、エンハンスゲインEGとして出力される構成となっている。しかし、青色領域検出部156の代わりに、他の一つまたは複数の色領域の検出部を設け、その検出部の検出信号に基づいて、セレクタ155における選択が制御される構成も考えられる。
【0068】
また、上述実施形態において、図3に示すエンハンス回路133(エンハンスゲイン生成部141、エンハンス部142)がハードウェアで構成されるように説明した。しかし、このエンハンス回路133の一部または全部の処理をソフトウェアで実現することも可能である。その場合、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータ装置において、例えばROM等に格納された処理プログラムがRAM上に展開されてCPUで実行される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、例えば、青空のようなフラットな領域でエンハンス処理によりノイズが強調されることを抑制できるものであり、例えば、テレビ受信機におけるエンハンス回路等に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
100・・・テレビ受信機、103・・・アンテナ端子、104・・・デジタルチューナ、105・・・デマルチプレクサ、106・・・MPEGデコーダ、107・・・映像処理回路、108・・・パネル駆動回路、109・・・表示パネル、110・・・音声処理回路、111・・・音声増幅回路、112・・・スピーカ、120・・・内部バス、121・・・CPU、122・・・フラッシュROM、123・・・SDRAM、124・・・イーサネットインタフェース、125・・・ネットワーク端子、126・・・リモコン受信部、127・・・リモコン送信機、131・・・IP変換回路、132・・・スケーリング回路、133・・・エンハンス回路、134・・・コントラスト・ブライトネス調整回路、135・・・ゲイン調整回路、136・・・遅延回路、137・・・マトリクス回路、141・・・エンハンスゲイン生成部、142・・・エンハンス部、151・・・平均偏差算出部、152・・・水平、垂直平滑化部、153・・・重み付け係数生成部、154・・・乗算部、155・・・セレクタ、156・・・青色領域検出部、161,162・・・遅延素子、163,167・・・加算器、164・・・減算器、165・・・増幅器、166・・・乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインを得るエンハンスゲイン生成部と、
上記エンハンスゲイン生成部で得られた画素毎のエンハンスゲインに基づいて、上記入力映像信号を構成する輝度信号に対してエンハンス処理を行うエンハンス部を備え、
上記エンハンスゲイン生成部は、
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出部と、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成部と、
上記予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成部で生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算部を有する
映像信号処理装置。
【請求項2】
上記エンハンスゲイン生成部は、
上記入力映像信号を構成する色信号に基づいて、特定色領域を検出する色領域検出部と、
上記色領域検出部の検出信号に基づいて、上記特定色領域では上記乗算部で得られたエンハンスゲインを取り出して出力し、上記特定色領域以外の領域では上記予め決定されたエンハンスゲインを取り出して出力する出力選択部をさらに有する
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
上記エンハンスゲイン生成部は、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する平滑化部をさらに有し、
上記重み付け係数生成部は、上記平滑化部で平滑化された平均偏差の値に応じて、上記注目画素のエンハンスゲインを生成する
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出ステップと、
上記平均偏差算出ステップで算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成ステップと、
予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成ステップで生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算ステップを有する
エンハンスゲイン生成方法。
【請求項5】
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出ステップと、
上記平均偏差算出ステップで算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成ステップと、
予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成ステップで生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算ステップを有する
エンハンスゲイン生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
入力映像信号を構成する輝度信号および予め決定されたエンハンスゲインに基づいて画素毎のエンハンスゲインを得るエンハンスゲイン生成部と、
上記エンハンスゲイン生成部で得られた画素毎のエンハンスゲインに基づいて、上記入力映像信号を構成する輝度信号に対してエンハンス処理を行うエンハンス部を備え、
上記エンハンスゲイン生成部は、
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出部と、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成部と、
上記予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成部で生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算部を有する
映像信号処理装置。
【請求項2】
上記エンハンスゲイン生成部は、
上記入力映像信号を構成する色信号に基づいて、特定色領域を検出する色領域検出部と、
上記色領域検出部の検出信号に基づいて、上記特定色領域では上記乗算部で得られたエンハンスゲインを取り出して出力し、上記特定色領域以外の領域では上記予め決定されたエンハンスゲインを取り出して出力する出力選択部をさらに有する
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
上記エンハンスゲイン生成部は、
上記平均偏差算出部で算出された平均偏差を水平方向および垂直方向に平滑化する平滑化部をさらに有し、
上記重み付け係数生成部は、上記平滑化部で平滑化された平均偏差の値に応じて、上記注目画素のエンハンスゲインを生成する
請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出ステップと、
上記平均偏差算出ステップで算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成ステップと、
予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成ステップで生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算ステップを有する
エンハンスゲイン生成方法。
【請求項5】
エンハンスゲインを得る画素を注目画素とし、該注目画素を中心とした所定領域内に含まれる複数画素の輝度値の平均偏差を求める平均偏差算出ステップと、
上記平均偏差算出ステップで算出された平均偏差の値に応じて、上記注目画素の重み付け係数を生成する重み付け係数生成ステップと、
予め決定されたエンハンスゲインに上記重み付け係数生成ステップで生成された重み付け係数を掛けて、上記注目画素のエンハンスゲインを得る乗算ステップを有する
エンハンスゲイン生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−41029(P2011−41029A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186923(P2009−186923)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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