説明

映像出力装置およびプロジェクタ並びに映像出力装置の制御方法

【課題】レベルの補正精度を高め、表示ムラを十分に抑制する。
【解決手段】映像出力装置10は、調整量補正モード時に、チャネル毎のレベル調整部11〜13に第1の基準信号Vref1を投入し、各レベル調整部11〜13からの出力信号を第2の基準信号Vref2とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部11〜13の調整量をそれぞれ補正する。さらに、映像出力装置10は、調整量補正モード時に、液晶ディスプレイ100のイネーブル信号端子ENBXおよびプリチャージタイミング信号端子PreCHGをロウレベルとする。この結果、液晶ディスプレイ100の走査TFTは全てオフ状態となり、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3はオープンの状態となることから、調整量補正モード時に、出力側の負荷変動の影響を受けることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置、または、前記映像出力装置を備えるプロジェクタ、または前記映像出力装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶ディスプレイにおいては、水平方向の画素数が多いため、水平方向に複数チャネルに分割して駆動するようになされている。この構成の液晶ディスプレイと接続される映像出力装置では、表示ムラの発生を抑えるために、チャネル毎に設けられた出力回路の出力レベルを同一とする必要がある。
【0003】
そこで、従来、下記の特許文献1が提案されている。特許文献1では、チャンネル毎に設けられた出力回路をレベル調整が可能なものとし、各出力回路に基準信号を入力し、その際の出力を予め用意した基準データと比較し、その比較結果に応じて各対応する出力回路のレベル調整量を補正する構成とした。
【0004】
【特許文献1】特開平5−150751号公報
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、各出力回路は、液晶ディスプレイにおけるアクティブマトリックス部の信号線に接続されていることから、液晶ディスプレイ側の動作により、前記各出力回路の出力側の負荷が変動する。この結果、液晶ディスプレイ側の動作により、各出力回路の出力が変動することになり、前記レベ調整量の補正を高精度に行うことができないという問題が発生した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、各出力回路のレベル調整量の補正精度を高め、表示ムラを十分に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置において、チャネル毎に設けられるとともに、入力信号のレベルを調整し、前記液晶表示装置のチャネル毎の接続端子に調整済みの出力信号をそれぞれ出力する複数のレベル調整部と、前記各レベル調整部にチャネル毎の映像入力信号を投入するとともに、所定の期間に限り、前記映像入力信号に換えて第1の基準信号を前記各レベル調整部に投入する信号切換投入部と、前記所定の期間に、前記各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する調整量補正部と、前記所定の期間に、前記液晶表示装置に対して前記各接続端子をオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力する接続状態切換部とを備えることを特徴とする映像出力装置。
【0009】
この映像出力装置では、所定の期間において、各レベル調整部に第1の基準信号を投入し、各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する。さらに、この映像出力装置では、前記所定の期間に、液晶表示装置に対して、各レベル調整部に続く各接続端子をオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力する。このために、この適用例1の映像出力装置では、レベル調整量の補正を行う所定の期間において、各レベル調整部は前記液晶表示装置と電気的に非接続の状態となることから、液晶表示装置側の動作により、前記各レベル調整部の出力側の負荷が変動することがない。したがって、映像出力装置は、レベル調整量の補正を高精度に行うことができ、液晶表示装置における表示ムラを十分に抑制することができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の液晶表示装置であって、基板上に、一方の方向に延びる複数の走査線と、他の方向に延びる複数の信号線とをマトリックス状に配置し、両者の各交点に画素電極とスイッチング素子とを形成したアクティブマトリックス部と、前記複数の信号線を前記チャネルの数に分類して、各信号線と前記複数の接続端子のうちの対応するチャネルの接続端子との間を接続する複数の接続線と、前記複数の接続線のそれぞれに設けられ、前記接続端子との導通を制御する複数の接続線導通スイッチとを備え、前記接続状態切換部は、前記液晶表示装置に対して前記接続線導通スイッチをオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力する映像出力装置。
【0011】
適用例2の映像出力装置によれば、前記所定の期間に、液晶表示装置内の表示パネル部分に構成された複数の信号線との接続(導通)をオープンの状態に切り換える、すなわちハイインピーダンスの状態にする旨の制御指令を出力する。このために、この適用例2の映像出力装置では、レベル調整量の補正を行う所定の期間において、各レベル調整部は前記複数の信号線と電気的に非接続の状態となることから、液晶表示装置側の動作により、前記各レベル調整部の出力側の負荷が変動することがない。したがって、映像出力装置は、レベル調整量の補正を高精度に行うことができ、液晶表示装置における表示ムラを十分に抑制することができる。
【0012】
[適用例3] 適用例2に記載の映像出力装置であって、前記液晶表示装置は、 前記複数の接続線導通スイッチの開閉状態を制御するイネーブル信号を受信するためのイネーブル信号端子を備え、前記映像出力装置は、前記イネーブル信号端子にイネーブル信号を出力する表示タイミング発生部を備え、前記映像出力装置の接続状態切換部は、前記所定の期間に、前記イネーブル信号を非アクティブレベルとする第1のオフ切換部を備える、映像出力装置。
【0013】
適用例3の映像出力装置によれば、アクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置に対して送るイネーブル信号を非アクティブレベルとすることで、全ての接続線導通スイッチを閉状態とすることができる。このために、接続状態切換部を簡単な構成とすることができる。
【0014】
[適用例4] 適用例3に記載の映像出力装置であって、前記液晶表示装置は、 前記複数の接続線導通スイッチの開閉状態を制御するプリチャージタイミング信号を受信するためのプリチャージタイミング信号端子を備え、前記表示タイミング発生部は、前記プリチャージタイミング信号端子にプリチャージタイミング信号を出力する手段を備え、前記映像出力装置の接続状態切換部は、前記所定の期間に、前記プリチャージタイミング信号を非アクティブレベルとする第2のオフ切換部を備える、映像出力装置。
【0015】
適用例4の映像出力装置によれば、プリチャージ期間においてプリチャージ電圧を信号線に送るタイプの液晶表示装置において、液晶表示装置に対して送るプリチャージタイミング信号を非アクティブレベルとすることで、全ての接続線導通スイッチを閉状態とすることができる。
【0016】
[適用例5] 適用例4に記載の映像出力装置であって、前記所定の期間に該当するか否かを示す調整量補正モード信号を出力する調整量補正モード信号出力部と、を備え、前記第1のオフ切換部は、前記表示タイミング発生部のイネーブル信号の出力に接続される第1の入力端子と、前記調整量補正モード信号出力部の出力に接続される第2の入力端子と、前記イネーブル信号端子に接続される出力端子とを備える第1の論理積回路であり、前記第2のオフ切換部は、前記表示タイミング発生部のプリチャージタイミング信号の出力に接続される第1の入力端子と、前記調整量補正モード出力部の出力に接続される第2の入力端子と、前記プリチャージタイミング信号端子に接続される出力端子とを備える第2の論理積回路である、映像出力装置。
【0017】
適用例5の映像出力装置によれば、第1および第2の論理積回路といった簡単な構成で接続状態切換部を構成することができる。
【0018】
[適用例6] 前記所定の期間は、垂直帰線期間内に定められた構成である、適用例1ないし5のいずれかに記載の映像出力装置。この構成によれば、液晶表示装置で表示される表示映像に影響を与えることなく、レベル調整量の補正を行うことが可能となる。
【0019】
[適用例7] 適用例1ないし6のいずれかに記載の映像出力装置であって、前記レベル調整部のそれぞれは、映像入力信号であるデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器を備え、前記デジタル/アナログ変換器におけるゲインおよびオフセットの少なくとも一つを調整することによりレベルの調整を行う構成である、映像出力装置。
【0020】
適用例7の映像出力装置によれば、別途専用のレベル補正回路を設ける必要がなく、構成が簡単で済む。
【0021】
[適用例8] 適用例1ないし7のいずれかに記載の映像出力装置と、 前記映像出力装置が接続される液晶表示装置とを備えるプロジェクタ。
【0022】
適用例8のプロジェクタによれば、適用例1ないし7で述べてきた種々の効果を奏するプロジェクタを提供することができる。
【0023】
[適用例9] 一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置における制御方法であって、前記映像出力装置は、チャネル毎に設けられるとともに、チャネル毎の映像入力信号のレベルを調整し、前記液晶表示装置のチャネル毎の接続端子に調整済みの出力信号をそれぞれ出力する複数のレベル調整部を備え、 所定の期間に、前記液晶表示装置に対して前記各接続端子をオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力し、前記映像入力信号に換えて第1の基準信号を前記各レベル調整部に投入し、前記各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する、制御方法。
【0024】
この映像出力装置の制御方法は、前記映像出力装置と同様に、チャネル毎のレベル調整量の補正を高精度に行うことができ、液晶表示装置における表示ムラを十分に抑制することができるという効果を奏する。
【0025】
[適用例10] 一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置において、チャネル毎に設けられるとともに、入力信号のレベルを調整し、前記液晶表示装置のチャネル毎の接続端子に調整済みの出力信号をそれぞれ出力する複数のレベル調整部と、前記各レベル調整部にチャネル毎の映像入力信号を投入するとともに、所定の期間に限り、前記映像入力信号に換えて第1の基準信号を前記各レベル調整部に投入する信号切換投入部と、前記所定の期間に、前記各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する調整量補正部と、を備え、前記レベル調整部のそれぞれは、映像入力信号であるデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器を備え、前記デジタル/アナログ変換器におけるゲインおよびオフセットの少なくとも一つを調整することによりレベルの調整を行う構成であることを特徴とする映像出力装置。
【0026】
適用例10の映像出力装置によれば、別途専用のレベル補正回路を設ける必要がなく、構成が簡単で済む。
【0027】
[適用例11] 適用例10に記載の映像出力装置であって、前記ゲインおよびオフセットの調整手段は、前記デジタル/アナログ変換器に供給する上限基準電圧および下限基準電圧の少なくとも一つを調整することを特徴とする映像出力装置。
【0028】
適用例11の映像出力装置によれば、別途専用のゲインおよびオフセットの調整手段を設ける必要がなく、構成が簡単で済む。
【0029】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、映像出力システム、前記映像出力装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の一実施例としての映像出力装置10の構成を示す回路図である。図2は、前記映像出力装置10が接続される液晶表示装置としての液晶ディスプレイ100を示す回路図である。液晶ディスプレイ100について先に説明する。
【0031】
A.液晶ディスプレイの構成:
液晶ディスプレイ100は、アクティブマトリックス駆動方式を採るものである。液晶ディスプレイ100は、図2に示すように、画像表示を行う液晶パネル110と、液晶パネル110を駆動するための走査線駆動回路120と、同じく液晶パネル110を駆動するための信号線駆動回路130とを備える。
【0032】
液晶パネル110は、アレイ基板(図示せず)を備える。アレイ基板には、X方向(以下、「水平方向」とも呼ぶ)に延びる複数の走査線112と、Y方向(以下、「垂直方向」とも呼ぶ)に延びる複数の信号線114とがマトリックス状に配置され、その交点に、透明電極からなる画素電極(画素パターン)116と、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)118とが形成されている。このTFT118のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極は信号線114に接続され、ドレイン電極は画素電極116に接続される。こうして、基板上に、上記走査線112,信号線114,画素電極116およびTFT118を備えるアクティブマトリックス部が構成されることになる。
【0033】
液晶パネル110は、図示はしないが、さらに、上記構成のアレイ基板に対向する対向電極が形成された対向基板を備え、アレイ基板と対向基板との間に、配向膜を介して液晶材料を保持している。
【0034】
走査線駆動回路120は、Y方向走査回路122を備える。Y方向走査回路122は、液晶パネル110の備える各走査線112と接続されている。Y方向走査回路122は、液晶ディスプレイ100の外部から送られてくる垂直スタート信号S8と垂直クロック信号S9とを受信し、垂直スタート信号S8と垂直クロック信号S9とに基づいてアクティブマトリックス部を垂直方向に走査することにより、走査線112を順次選択する。
【0035】
信号線駆動回路130は、液晶パネル110の備える各信号線114と接続されている。信号線駆動回路130は、X方向走査回路140とイネーブル制御部150とプリチャージ駆動回路160とを備える。
【0036】
X方向走査回路140は、液晶ディスプレイ100の外部から送られてくる水平スタート信号S6と水平クロック信号S7とを受信し、水平スタート信号S6と水平クロック信号S7とに基づいてアクティブマトリックス部を水平方向に走査することにより、信号線114を順次選択する。
【0037】
イネーブル制御部150は、n(nは正の複数)個のアンド回路151,152,…,15nを並べたもので、各アンド回路151〜15nの第1の入力端子T1と、X方向走査回路140の備えるn個の出力端子Q1,Q2,Qnとの間がそれぞれ接続されている。各アンド回路151〜15nの第2の入力端子T2は、1本の線に結ばれて、液晶ディスプレイ100の接続端子の一つであるイネーブル信号端子ENBXと接続されている。各アンド回路151〜15nの出力端子T3は、プリチャージ駆動回路160の後述するオア回路と接続されている。
【0038】
プリチャージ駆動回路160は、n個のオア回路161,162,…,16nを並べたもので、各オア回路161〜16nの第1の入力端子T4に、上記アンド回路151〜15nの出力端子T3がそれぞれ接続されている。各オア回路161〜16nの第2の入力端子T5は、1本の線に結ばれて、液晶ディスプレイ100の接続端子の一つであるプリチャージタイミング信号端子PreCHGと接続されている。
【0039】
各オア回路161〜16nの出力端子T3は、3線に分岐されて、それぞれの分岐先に、液晶パネル110に形成されたスイッチング素子と同じTFT170が接続されている。詳細には、TFT170のゲート電極と接続されている。なお、このTFT170を、液晶パネル110に形成されたTFT118と区別するために「走査TFT」と呼ぶ。液晶パネル110に形成されたTFT118は、「画素TFT」と呼ぶ。上記走査TFT170は、「接続線導通スイッチ」である。
【0040】
走査TFT170のドレイン電極は、液晶パネル110の備える各信号線114と接続されている。すなわち、走査TFT170は、信号線114と同じ数を備えている。したがって、走査TFT170は3×n個であることから、信号線114も3×n個である。換言すれば、nは、信号線の数の1/3となる。すなわち、液晶パネル110を水平方向に3分割して駆動すべく、nは信号線の数の1/3としている。
【0041】
各走査TFT170は、同じオア回路161〜16nに接続されるグループ毎に、第1チャネル用の走査TFT、第2チャネル用の走査TFT、第3チャネル用の走査TFTと分けることができ、上記各グループの同じチャネル用の走査TFTのそれぞれが1本の線に結ばれて、グループ毎の各線は、液晶ディスプレイ100のアナログ映像端子VID1,VID2,VID3と接続されている。
【0042】
上記構成の液晶ディスプレイ100によれば、Y方向走査回路120により走査線112を選択し、X方向走査回路140により信号線114を選択することにより、所望の画素TFT118に対して、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3から送られてくる電気信号を送ることができる。この結果、液晶ディスプレイ100においては、その画素TFT118に対応する画素電極と対向電極との間に挟まれた領域の液晶のみが、電極間の電界を受けて配列を変え、1画素毎の液晶シャッタとして機能する。さらに、上記液晶ディスプレイ100によれば、イネーブル信号端子ENBXから水平書込みイネーブル信号S4を受けることにより、X方向走査回路140の各出力端子Q1,Q2,Qnからの出力信号を有効とすることができる。また、プリチャージタイミング信号端子PreCHGからプリチャージタイミング信号S5を受けることにより、プリチャージタイミング信号S5から定まるプリチャージ期間において、プリチャージ電圧を各信号線114に印加することができる。
【0043】
B.映像出力装置の構成:
液晶ディスプレイ100には、図1に示すように、映像出力装置10が接続される。映像出力装置10は、第1チャネル(チャネル1)、第2チャネル(チャネル2)、第3チャネル(チャネル3)の3つのチャネルにより映像信号を伝送するものであり、映像処理回路(図示せず)から出力された3つのチャネル用としての映像信号に所望の増幅を施す。こうした3つのチャネル用の映像信号を以下、第1ないし第3のデジタル映像入力信号V1,V2,V3と呼ぶ。
【0044】
第1ないし第3のデジタル映像入力信号V1,V2,V3のそれぞれは、D/A変換部21,22,23によりアナログ信号に変換され、増幅部31,32,33により所定倍率に増幅される。すなわち、チャネル毎のD/A変換部21,22,23と増幅部31,32,33とにより、入力レベルを調整するレベル調整部11,12,13を構成している。
【0045】
各増幅部31,32,33は、オペアンプ31a,32a,33aと抵抗器31b,32b,33bとにより構成される。各増幅部31,32,33の倍率は、規格上は同一である。各増幅部31,32,33の出力は、アナログ映像出力信号S1,S2,S3として液晶ディスプレイ100のアナログ映像端子VID1,VID2,VID3にそれぞれ出力される。なお、「レベル調整部」、「D/A変換部」、「増幅部」、「アナログ映像出力信号」、「アナログ映像端子」は、それぞれいずれのチャネルに属するかを示す必要があるときには、「第1の」、「第2の」、「第3の」といった順位を付けるようにする。
【0046】
増幅部31,32,33の倍率は、前述したように規格上は同一であるが、個体差や周囲温度によって厳密には個々に相違する。それらの差を補正すべく、各D/A変換部21,22,23は、デジタル/アナログ変換を行うD/A変換器21a,22a,23aの他に、D/A変換器21a,22a,23aのゲインを調整するゲイン調整部21b,22b,23bと、D/A変換器21a,22a,23aのオフセットを調整するオフセット調整部21c,22c,23cとをそれぞれ備える。ゲイン調整部21b,22b,23bおよびオフセット調整部21c,22c,23cの具体的構成例としては、アップダウンカウンタとR−2R型D/A変換器との組み合わせを使用する手段が簡素であり、ローコストに実現出来る。
【0047】
各D/A変換部21,22,23の前段には、入力切換スイッチ41,42,43が設けられている。入力切換スイッチ41,42,43は、第1ないし第3のデジタル映像入力信号V1,V2,V3のそれぞれを各D/A変換部21,22,23に送る第1の状態と、各デジタル映像入力信号V1,V2,V3に換えて第1の基準信号Vref1を各D/A変換部21,22,23に送る第2の状態との間の切換えを行う。詳しくは、入力切換スイッチ41,42,43は、調整量補正モード信号Calを受けて、調整量補正モード信号Calがロウレベルのときに画像表示モードであるとして上記第1の状態への切換えを行い、調整量補正モード信号Calがハイレベルのときに調整量補正モードであるとして上記第2の状態への切換えを行う。
【0048】
上記第1の基準信号Vref1は、調整制御部50から各入力切換スイッチ41〜43に投入される。調整制御部50は、前記調整量補正モード信号Calを各入力切換スイッチ41〜43に出力する。調整制御部50は、さらに、D/A変換部21,22,23のゲイン調整部21b,22b,23bに対し、補正を行うタイミングを定めた制御信号TG1,TG2,TG3を出力し、オフセット調整部21c,22c,23cに対し、補正を行うタイミングを定めた制御信号TO1,TO2,TO3を出力し、後述する電圧比較器52に第2の基準信号Vref2を出力する。調整制御部50は、クロック信号CLKと垂直同期信号Vsyncとを受けて、上記ゲイン調整部21b,22b,23bとオフセット調整部21c,22c,23cを制御するためのもので、いわゆるマイクロコンピュータあるいは論理回路により構成される。このマイクロコンピュータにより実行される調整量補正処理については後述する。
【0049】
各増幅部31,32,33とアナログ映像端子VID1,VID2,VID3とをそれぞれ結ぶ接続線61,62,63には、分岐線64,65,66が接続されており、各分岐線64,65,66の他端は出力切換スイッチ54と接続されている。出力切換スイッチ54は、電圧比較器52と電気的に接続されており、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3に送られるアナログ映像出力信号S1,S2,S3から一の信号を選択し、電圧比較器52に送る。なお、出力切換スイッチ54は、チャネル1に対応した第1チャネル指令CH1とチャネル2に対応した第2チャネル指令CH2とチャネル3に対応した第3チャネル指令CH3を調整制御部50から受信しており、これら指令CH1〜CH3に基づいて上記アナログ映像出力信号S1,S2,S3の選択を行う。すなわち、第1チャネル指令CH1がハイレベルとなったときに第1のアナログ映像出力信号S1を選択し、第2チャネル指令CH2がハイレベルとなったときに第2のアナログ映像出力信号S2を選択し、第3チャネル指令CH3がハイレベルとなったときに第3のアナログ映像出力信号S3を選択する。
【0050】
電圧比較器52は、出力切換スイッチ54側から送られてくるアナログ映像端子VID1,VID2,VID3と、調整制御部50から送られてくる第2の基準信号Vref2とを比較し、いずれの電圧値が大きいかを判定する。電圧比較器52は、判定結果であるいずれが大きいかを示す比較出力信号Vcompを、各D/A変換部21,22,23のゲイン調整部21b,22b,23bおよびオフセット調整部21c,22c,23cにそれぞれ出力する。
【0051】
ゲイン調整部21b,22b,23bは、電圧比較器52から送られてくる比較出力信号Vcompから調整の方向を定めて、調整制御部50から送られてくるタイミング信号TG1,TG2.TG3に応じた時間に各増幅部31,32,33のゲイン(増幅率)を調整する。すなわち、ゲイン調整部21b,22b,23bは、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3の方が大きいと判定された場合には、調整の方向を減少方向と定めて、ゲインを1ステップ分下げ、一方、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3の方が小さいと判定された場合には、調整の方向を増大方向と定めて、ゲインを1ステップ分上げる。
【0052】
オフセット調整部21c,22c,23cは、電圧比較器52から送られてくる比較出力信号Vcompから調整の方向(大きい側に変えるか小さい側に変えるか)を定めて、調整制御部50から送られてくるタイミング信号TO1,TO2,TO3に応じた時間に各増幅部31,32,33のオフセットを調整する。すなわち、オフセット調整部21c,22c,23cは、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3の方が大きいと判定された場合には、調整の方向を減少方向と定めて、オフセットを1ステップ分下げ、一方、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3の方が小さいと判定された場合には、調整の方向を増大方向と定めて、オフセットを1ステップ分上げる。
【0053】
映像出力装置10は、また、表示タイミング発生部70を備える。表示タイミング発生部70は、周知の構成で詳細な説明は省略するが、要は、クロック信号CLKと垂直同期信号Vsyncと水平同期信号Hsyncとに基づいて前述した水平書込みイネーブル信号S4、プリチャージタイミング信号S5、水平スタート信号S6、水平クロック信号S7、垂直スタート信号S8、垂直クロック信号S9を生成し、これらの信号S4〜S9を液晶ディスプレイ100に出力する。
【0054】
なお、表示タイミング発生部70からの水平書込みイネーブル信号S4の伝送線72には、第1のアンド回路74が設けられている。詳細には、第1のアンド回路74の第1の入力端子74aに伝送線72の上流側が接続され、第1のアンド回路74の出力端子74cに伝送線72の下流側が接続されている。第1のアンド回路74の第2の入力端子74bには、調整制御部50からの調整量補正モード信号Calのハイ/ロウを反転するインバータ(反転器)80の出力端子が接続されている。
【0055】
また、表示タイミング発生部70からのプリチャージタイミング信号S5の伝送線76には、第2のアンド回路78が設けられている。詳細には、第2のアンド回路78の第1の入力端子74aに伝送線76の上流側が接続され、第1のアンド回路74の出力端子74cに伝送線76の下流側が接続されている。第2のアンド回路78の第2の入力端子78bには、インバータ80の出力端子が接続されている。
【0056】
したがって、調整量補正モード信号Calがロウレベルであるとき(画像表示モード時)には、第1のアンド回路74の第2の入力端子74bおよび第2のアンド回路78の第2の入力端子78bはハイレベルとなることから、表示タイミング発生部70から出力された水平書込みイネーブル信号S4およびプリチャージタイミング信号S5は、そのまま液晶ディスプレイ100のイネーブル信号端子ENBXおよびプリチャージタイミング信号端子PreCHGに送られる。一方、調整量補正モード信号Calがハイレベルであるとき(調整量補正モード時)には、第1のアンド回路74の第2の入力端子74bおよび第2のアンド回路78の第2の入力端子78bはロウレベルとなることから、第1のアンド回路74および第2のアンド回路78により、液晶ディスプレイ100のイネーブル信号端子ENBXおよびプリチャージタイミング信号端子PreCHGへのイネーブル信号S4およびプリチャージタイミング信号S5の転送は禁止される。
【0057】
C.調整量補正処理:
映像出力装置10の調整制御部50にて実行される調整量補正処理について次に説明する。図3は調整量補正処理を示すフローチャートであり、図4は映像出力装置10の内部の信号の変化を示すタイミングチャートである。図3のフローチャートを用いて処理を順に説明し、必要に応じて各信号の変化を図4を用いて説明する。調整量補正処理は、前述したように、調整制御部50を構成するマイクロコンピュータ(あるいは論理回路)により実行される。この調整量補正処理は、映像出力装置10の電源がオフ状態からオン状態に切り換わったときに実行開始される。
【0058】
図3に示すように、処理が開始されると、マイクロコンピュータのCPUは、垂直同期信号Vsyncの立ち下がりのタイミングであるか否かを判定し(ステップS100)、そのタイミングでないと判定されたときには、処理を最初に戻し、一方、そのタイミングであると判定されたとき(図4の時刻t1)には、調整量補正モード処理を行う(ステップS200)。
【0059】
ステップS200の調整量補正モード処理では、CPUは、調整量補正モード信号Calをハイレベルとして出力し(ステップS210)、第1の基準信号Vref1として黒色の基準電圧を出力し(ステップS220)、チャネル1のオフセットを調整する処理を行う(ステップS230)。
【0060】
ステップS210により調整量補正モード信号Calがハイレベルとなると、入力切換スイッチ41,42,43は第1の基準信号Vref1を各D/A変換部21,22,23に送る第2の状態に切り換わることになり、また、液晶ディスプレイ100のイネーブル信号端子ENBXおよびプリチャージタイミング信号端子PreCHGに送られるイネーブル信号S4およびプリチャージタイミング信号S5はそれぞれロウレベルとなる。図4のタイミングチャートからも、時刻t1において、調整量補正モード信号Calはハイレベルであり、イネーブル信号S4およびプリチャージタイミング信号S5はロウレベルであることが判る。
【0061】
ステップS210の処理を受けて入力切換スイッチ41,42,43が第1の基準信号Vref1を選択する側に切り替わった上で、ステップS220により黒色基準電圧が出力されると、図4に示すように、各D/A変換部21,22,23のデジタル入力信号VC1,VC2,VC3は、黒色基準電圧、すなわち黒データとなる。
【0062】
ステップS230のチャネル1のオフセットを調整する処理では、詳細には、次のi)〜iii)の処理を行う。
i)出力切換スイッチ54に送るチャネル1に対応した第1チャネル指令CH1をハイレベルとすることにより、出力切換スイッチ54を第1のアナログ映像端子VID1を選択する状態に切り換える。
ii)ステップS220で出力した黒色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2を電圧比較器52に出力する。
iii)チャネル1に対応した第1のD/A変換部21に備えられるオフセット調整部21cにタイミング信号TO1を出力する。
【0063】
ステップS220で黒色基準電圧を第1のD/A変換部21に投入した上で、上記i)〜iii)の処理を実行することで、黒色基準電圧を投入したときに得られる第1の増幅部31の出力としての第1のアナログ映像出力信号S1(図4参照)と、上記色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2とを電圧比較器52により比較し、第1のアナログ映像出力信号S1が第2の基準信号Vref2よりも大きい場合には、オフセット調整部21cにより第1のD/A変換部21のオフセットを1ステップ分下げる。一方、第1のアナログ映像出力信号S1が第2の基準信号Vref2よりも小さい場合には、オフセット調整部21cにより第1のD/A変換部21のオフセットを1ステップ分上げる。
【0064】
黒色基準電圧を投入したときの増幅部31からの出力は、レベル調整部11のオフセットに相当することから、上記出力を第2の基準信号Vref2と比較し、その偏差が減少するように、所定の補正量だけオフセットを増大もしくは減少することにより、チャネル1に対応した第1のレベル調整部11のオフセットを第2の基準信号Vref2から定まるオフセットに近づけることができる。
【0065】
ステップS230の処理を終えると次いで、CPUは、チャネル2のオフセットを調整する処理を行う(ステップS240)。この処理は、ステップS230の処理をチャネル2用に変更したものであり、詳細には、次のiv)〜vi)の処理を行う。
【0066】
iv)出力切換スイッチ54に送るチャネル2に対応した第2チャネル指令CH2をハイレベルとすることにより、出力切換スイッチ54を第2のアナログ映像端子VID2を選択する状態に切り換える。
v)ステップS220で出力した黒色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2を電圧比較器52に出力する。
vi)チャネル2に対応した第2のD/A変換部22に備えられるオフセット調整部22cにタイミング信号TO2を出力する。
【0067】
ステップS240の処理の結果、チャネル2に対応した第2のレベル調整部12のオフセットを第2の基準信号Vref2から定まるオフセットに近づけることができる。続いて、CPUは、チャネル3のオフセットを調整する処理を行う(ステップS250)。この処理は、ステップS230の処理をチャネル3用に変更したものであり、チャネル1用、チャネル2用と説明してきたので説明を省略する。この結果、チャネル3に対応した第3のレベル調整部13のオフセットを第2の基準信号Vref2から定まるオフセットに近づけることができる。ステップS200の調整量補正モード処理が以後に繰り返し実行されることで、チャネル1,2,3に対応した第1〜第3のレベル調整部11〜13の各オフセットは次第に正確に基準信号Vref2に接近し、オフセットがほぼ零となる。
【0068】
ステップS250の終了時点は、図4に示すように帰線期間(垂直帰線期間)の中央時点(時刻t2)となる。図3に戻って、ステップS250の処理の実行後、CPUは、第1の基準信号Vref1として白色の基準電圧を出力し(ステップS260)、チャネル1のゲインを調整する処理を行う(ステップS270)。ステップS270のチャネル1のゲインを調整する処理では、詳細には、次のvii)〜x)の処理を行う。
【0069】
vii)出力切換スイッチ54に送るチャネル1に対応した第1チャネル指令CH1をハイレベルとすることにより、出力切換スイッチ54を第1のアナログ映像端子VID1を選択する状態に切り換える。
ix)ステップS260で出力した白色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2を電圧比較器52に出力する。
x)チャネル1に対応した第1のD/A変換部21に備えられるゲイン調整部21bにタイミング信号TG1を出力する。
【0070】
ステップS260で白色基準電圧を第1のD/A変換部21に投入した上で、上記vii)〜x)の処理を実行することで、白色基準電圧(白データ;図4参照)を投入したときに得られる第1の増幅部31の出力としての第1のアナログ映像出力信号S1(図4参照)と、上記色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2とを電圧比較器52により比較し、第1のアナログ映像出力信号S1が第2の基準信号Vref2よりも大きい場合には、ゲイン調整部21bにより第1のD/A変換部21のゲインを1ステップ分下げる。一方、第1のアナログ映像出力信号S1が第2の基準信号Vref2よりも小さい場合には、ゲイン調整部21bにより第1のD/A変換部21のゲインを1ステップ分上げる。
【0071】
白色基準電圧を投入したときの増幅部31からの出力は、レベル調整部11のゲインに相当することから、上記出力を第2の基準信号Vref2と比較し、その偏差が減少するように、所定の補正量だけゲインを増大もしくは減少することにより、チャネル1に対応した第1のレベル調整部11のゲインを第2の基準信号Vref2から定まるゲインに近づけることができる。
【0072】
ステップS270の処理を終えると次いで、CPUは、チャネル2のゲインを調整する処理を行う(ステップS280)。この処理は、ステップS270の処理をチャネル2用に変更したものであり、詳細には、次のxi)〜xiii)の処理を行う。
【0073】
xi)出力切換スイッチ54に送るチャネル2に対応した第2チャネル指令CH2をハイレベルとすることにより、出力切換スイッチ54を第2のアナログ映像端子VID2を選択する状態に切り換える。
xii)ステップS260で出力した白色基準電圧に対応した第2の基準信号Vref2を電圧比較器52に出力する。
xiii)チャネル2に対応した第2のD/A変換部22に備えられるゲイン調整部22bにタイミング信号TG2を出力する。
【0074】
ステップS280の処理の結果、チャネル2に対応した第2のレベル調整部12のゲインを第2の基準信号Vref2から定まるゲインに近づけることができる。続いて、CPUは、チャネル3のゲインを調整する処理を行う(ステップS290)。この処理は、ステップS270の処理をチャネル3用に変更したものであり、チャネル1用、チャネル2用と説明してきたので説明を省略する。この結果、チャネル3に対応した第3のレベル調整部13のゲインを第2の基準信号Vref2から定まるゲインに近づけることができる。ステップS200の調整量補正モード処理が以後に繰り返し実行されることで、チャネル1,2,3に対応した第1〜第3のレベル調整部11〜13の各ゲインは次第に正確に基準信号Vref2に接近し、オフセットがほぼ零となる。
【0075】
ステップS290の実行後、CPUは、調整量補正モード信号Calをロウレベルとする(ステップS295)。このロウレベルとする時点は、図4に示すように時刻t3であり、垂直帰線期間の終了直前である。調整量補正モード信号Calがロウレベルとなると、入力切換スイッチ41,42,43は、第1ないし第3のデジタル映像入力信号V1,V2,V3のそれぞれを各レベル調整部11〜13に送る第1の状態となり、画像表示モードに切り替わる。なお、画像表示モードのときには、第1のアンド回路74の第2の入力端子74bおよび第2のアンド回路78の第2の入力端子78bはハイレベルとなり、水平書込みイネーブル信号S4およびプリチャージタイミング信号S5は液晶ディスプレイ100に転送可能となる。ステップS295の終了後、すなわち、ステップS200の調整量補正モード処理の完了後、処理はステップS100に戻り、本ルーチンの処理が繰り返し実行される。
【0076】
以上のように構成された映像出力装置10では、レベル調整部11〜13からゲイン調整部21b〜23bとオフセット調整部21c〜23cを除いた部分が、本発明の「レベル調整部」を構成する。入力切換スイッチ41,42,43と調整制御部50とが、本発明の「信号切換投入部」を構成する。電圧比較器52とゲイン調整部21b〜23bとオフセット調整部21c〜23cと調整制御部50とが、本発明の「調整量補正部」を構成する。また、調整制御部50とインバータ80と第1のアンド回路74と第2のアンド回路78とが、本発明の「接続状態切換部」を構成する。
【0077】
D.実施例の作用効果:
以上のように構成された実施例の映像出力装置10では、垂直帰線期間を調整量補正モード時として、その調整量補正モード時に、チャネル毎のレベル調整部11〜13に第1の基準信号Vref1を投入し、各レベル調整部11〜13からの出力信号を第2の基準信号Vref2とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部11〜13の調整量をそれぞれ補正する。さらに、映像出力装置10では、調整量補正モード時に、液晶ディスプレイ100のイネーブル信号端子ENBXおよびプリチャージタイミング信号端子PreCHGをロウレベルとしている。液晶ディスプレイ100において、イネーブル信号端子ENBXとプリチャージタイミング信号端子PreCHGの双方がロウレベルとなると、走査TFT170は全てオフ状態となることから、アナログ映像端子VID1,VID2,VID3はオープンの状態となる。すなわち、映像出力装置10では、レベル調整部11〜13の調整量を補正する調整量補正モード時において、液晶ディスプレイ100のアナログ映像端子VID1,VID2,VID3をオープンの状態としている。
【0078】
このために、映像出力装置10では、調整量補正モード時において、各レベル調整部11〜13は液晶ディスプレイ100と電気的に非接続の状態となることから、液晶ディスプレイ100側の動作により、前記各レベル調整部11〜13の出力側の負荷が変動することがない。したがって、映像出力装置10は、レベル調整量の補正を高精度に行うことができ、液晶ディスプレイ100における表示ムラを十分に抑制することができるという効果を奏する。
【0079】
また、この実施例では、イネーブル信号とプリチャージタイミング信号とのそれぞれの伝送線72、76に第1および第2のアンド回路74,78を設け、各アンド回路74,78の第2の入力端子74b,78bに、調整量補正モード時を示す調整量補正モード信号Calのハイ/ロウを反転するインバータ(反転器)80の出力端子を接続するという構成によって、簡単に本発明の「接続状態切換部」を実現することができる。したがって、映像出力装置10をシンプルな構成とすることができる。
【0080】
さらに、この実施例では、調整量補正モードの期間を垂直帰線期間内に定めた構成であることから、液晶ディスプレイ100で表示される表示映像に影響を与えることなく、レベル調整量を補正することができる。また、本実施例では、ゲイン調整部21b〜23bとオフセット調整部21c〜23cとによりD/A変換部21,22,23のゲインおよびオフセットを調整することにより、レベル調整部11〜13の調整量を補正するように構成したために、別途専用のレベル調整量補正回路を設ける必要がなく、構成が簡単に済む。
【0081】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
E1.変形例1:
前記実施例では、液晶ディスプレイ100は、画面を3チャネルに分割して駆動する構成であったが、これに換えて、2,6,12等、3以外の他の複数のチャネルに分割して駆動する構成としてもよい。この場合には、映像出力装置はチャネル数に対応した数のレベル調整部を備える構成となる。また、液晶ディスプレイは、分割の方向を画面の水平方向に替えて垂直方向とすることもできる。
【0083】
E2.変形例2:
前記実施例では、調整量補正モードの期間、すなわち、本発明でいう「所定の期間」を垂直帰線期間としたが、必ずしも垂直帰線期間とする必要はなく、水平帰線期間等の他の期間としてもよい。また、調整量補正モードの期間は、垂直帰線期間と略同一の期間であったが、必ずしも垂直帰線期間の全体である必要はなく、垂直帰線期間内の一部の期間であってもよい。
【0084】
E3.変形例3:
前記実施例では、調整量補正モード時に、イネーブル信号を非アクティブレベルとするとともにプリチャージタイミング信号を非アクティブレベルとしていたが、これに換えて、液晶表示装置がプリチャージを行わない構成、すなわち、プリチャージタイミング信号端子PreCHGおよびオア回路161〜16nを有しない構成においては、イネーブル信号を非アクティブレベルとするだけで走査TFT170をオフ状態とすることができることから、映像出力装置は、調整量補正モード時に、イネーブル信号だけを非アクティブレベルとする構成とすればよい。また、映像出力装置は、調整量補正モード時に、必ずしもイネーブル信号を非アクティブレベルとする構成である必要もなく、要は走査TFT170をオフ状態に制御しうる制御信号であれば、その制御信号を非アクティブレベルとする構成とすればよい。さらに言えば、各レベル調整部の出力に接続される液晶表示装置側のチャネル毎の接続端子をオープンの状態に切り替える旨の制御指令を出力できればいずれの構成としてもよい。また、液晶表示装置は、接続状態切換部としてTFTに換えてMOSトランジスタを備えた構成としてもよく、また、画素TFTについてもMOSトランジスタに換えてもよい。さらには、液晶表示装置は、アクティブマトリックス駆動方式の構成に換えて、単純マトリクス駆動方式の構成としてもよい。
【0085】
E4.変形例4:
前記実施例では、D/A変換器21a,22a,23aのゲインおよびオフセットを調整することにより、入力信号のレベルを調整する調整量の補正を行っていたが、これに換えて、ゲインおよびオフセットのうちのいずれか一方だけを調整する構成としてよい。また、前記実施例では、第1の基準信号Vref1を投入したときの各レベル調整部11〜13の出力信号と第2の基準信号Vref2とを比較し、両者の差が減少するように、対応するレベル調整部11〜13の調整量を所定の補正量だけ増大もしくは減少する構成としたが、これに換えて、前記比較を行った上で、両者の偏差に基づいて補正量を変化させて、その補正量だけゲインまたはオフセットを増減する構成としてもよい。さらに、本発明は、D/A変換器の調整量を変える構成に限る必要もなく、要は、レベル調整部の調整量を補正することのできる構成であればいずれの手法によるものであってもよい。
【0086】
E5.変形例5:
前記実施例は、映像出力装置10と液晶ディスプレイ100とを備える構成としていたが、これに換えて、プロジェクタに採用する構成としてもよい。すなわち、液晶ディスプレイ100をプロジェクタの部品の一つである液晶パネルとし、映像出力装置10をプロジェクタに内蔵する構成としてもよい。
【0087】
また、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例としての映像出力装置10の構成を示す回路図である。
【図2】映像出力装置10が接続される液晶ディスプレイ100を示す回路図である。
【図3】映像出力装置10の調整制御部50にて実行される調整量補正処理を示すフローチャートである。
【図4】映像出力装置10の内部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0089】
10…映像出力装置
11〜13…レベル調整部
21b〜23b…ゲイン調整部
21c〜23b…オフセット調整部
31〜33…増幅部
31a〜33a…オペアンプ
31b〜33b…抵抗器
41…入力切換スイッチ
50…調整制御部
52…電圧比較器
54…出力切換スイッチ
61〜63…接続線
64〜66…分岐線
70…表示タイミング発生部
72…伝送線
74…第1のアンド回路
76…伝送線
78…第2のアンド回路
80…インバータ
100…液晶ディスプレイ
110…液晶パネル
112…走査線
114…信号線
116…画素電極
118…画素TFT
120…走査線駆動回路
130…信号線駆動回路
150…イネーブル制御部
151…アンド回路
160…プリチャージ駆動回路
161…オア回路
170…走査TFT
ENBX…イネーブル信号端子
PreCHG…プリチャージタイミング信号端子
VID1〜VID3…アナログ映像端子
Vref1…第1の基準信号
Vref2…第2の基準信号
Vsync…垂直同期信号
Vcomp…比較出力信号
V1〜V3…デジタル映像入力信号
S1〜S3…アナログ映像出力信号
S4…イネーブル信号
S5…プリチャージタイミング信号
S6…水平スタート信号
S7…水平クロック信号
S8…垂直スタート信号
S9…垂直クロック信号
VC1〜VC3…デジタル入力信号
TG1〜TG3…制御信号
TO1〜TO3…制御信号
CH1…第1チャネル指令
CH2…第2チャネル指令
CH3…第3チャネル指令
CLK…クロック信号
Cal…調整量補正モード信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置において、
チャネル毎に設けられるとともに、入力信号のレベルを調整し、前記液晶表示装置のチャネル毎の接続端子に調整済みの出力信号をそれぞれ出力する複数のレベル調整部と、
前記各レベル調整部にチャネル毎の映像入力信号を投入するとともに、所定の期間に限り、前記映像入力信号に換えて第1の基準信号を前記各レベル調整部に投入する信号切換投入部と、
前記所定の期間に、前記各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する調整量補正部と、
前記所定の期間に、前記液晶表示装置に対して前記各接続端子をオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力する接続状態切換部と
を備えることを特徴とする映像出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像出力装置であって、
前記液晶表示装置は、
基板上に、一方の方向に延びる複数の走査線と、他の方向に延びる複数の信号線とをマトリックス状に配置し、両者の各交点に画素電極とスイッチング素子とを形成したアクティブマトリックス部と、
前記複数の信号線を前記チャネルの数に分類して、各信号線と前記複数の接続端子のうちの対応するチャネルの接続端子との間を接続する複数の接続線と、
前記複数の接続線のそれぞれに設けられ、前記接続端子との導通を制御する複数の接続線導通スイッチと
を備え、
前記接続状態切換部は、
前記液晶表示装置に対して前記接続線導通スイッチをオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力する映像出力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像出力装置であって、
前記液晶表示装置は、
前記複数の信号線への映像信号の出力を制御するイネーブル信号を受信するためのイネーブル信号端子を備え、
前記映像出力装置は、
前記イネーブル信号端子にイネーブル信号を出力する表示タイミング発生部を備え、
前記映像出力装置の接続状態切換部は、
前記所定の期間に、前記イネーブル信号を非アクティブレベルとする第1のオフ切換部を備える、映像出力装置。
【請求項4】
請求項3に記載の映像出力装置であって、
前記液晶表示装置は、
前記複数の接続線導通スイッチの開閉状態を制御するプリチャージタイミング信号を受信するためのプリチャージタイミング信号端子を備え、
前記表示タイミング発生部は、
前記プリチャージタイミング信号端子にプリチャージタイミング信号を出力する手段を備え、
前記映像出力装置の接続状態切換部は、
前記所定の期間に、前記プリチャージタイミング信号を非アクティブレベルとする第2のオフ切換部を備える、映像出力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の映像出力装置であって、
前記所定の期間に該当するか否かを示す調整量補正モード信号を出力する調整量補正モード信号出力部を備え、
前記第1のオフ切換部は、
前記表示タイミング発生部のイネーブル信号の出力に接続される第1の入力端子と、前記調整量補正モード信号出力部の出力に接続される第2の入力端子と、前記イネーブル信号端子に接続される出力端子とを備える第1の論理積回路であり、
前記第2のオフ切換部は、
前記表示タイミング発生部のプリチャージタイミング信号の出力に接続される第1の入力端子と、前記調整量補正モード出力部の出力に接続される第2の入力端子と、前記プリチャージタイミング信号端子に接続される出力端子とを備える第2の論理積回路である、映像出力装置。
【請求項6】
前記所定の期間は、垂直帰線期間内に定められた構成である、請求項1ないし5のいずれかに記載の映像出力装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の映像出力装置であって、
前記レベル調整部のそれぞれは、
映像入力信号であるデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器を備え、前記デジタル/アナログ変換器におけるゲインおよびオフセットの少なくとも一つを調整することによりレベルの調整を行う構成である、映像出力装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の映像出力装置と、
前記映像出力装置が接続される液晶表示装置と
を備えるプロジェクタ。
【請求項9】
一画面を複数チャネルに分割して駆動する液晶表示装置に映像信号を出力する映像出力装置における制御方法であって、
前記映像出力装置は、
チャネル毎に設けられるとともに、チャネル毎の映像入力信号のレベルを調整し、前記液晶表示装置のチャネル毎の接続端子に調整済みの出力信号をそれぞれ出力する複数のレベル調整部を備え、
所定の期間に、
前記液晶表示装置に対して前記各接続端子をオープンの状態に切り換える旨の制御指令を出力し、
前記映像入力信号に換えて第1の基準信号を前記各レベル調整部に投入し、
前記各レベル調整部からの出力信号を第2の基準信号とそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて、対応する前記レベル調整部の調整量をそれぞれ補正する、制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−282321(P2009−282321A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134623(P2008−134623)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】