説明

曲データ再生装置、曲データ配信装置、および該曲データ再生装置および曲データ配信装置をそれぞれ制御する各制御方法を実現するためのプログラム

【課題】複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる曲データ再生装置、曲データ配信装置、および該曲データ再生装置および曲データ配信装置をそれぞれ制御する各制御方法を実現するためのプログラムを提供する。
【解決手段】パート購入情報10a1で示されるパート3および4に対応する音源回路13のMIDIチャンネルがオフ設定される。MIDIシーケンサおよびデコード回路14に対して再生開始が指示されると、音源回路13からパート1および2のノートイベントに応じた楽音信号がミキシング回路15へ供給され、デコード回路14からパート3および4のオーディオデータに応じた楽音信号がミキシング回路15へ供給される。つまり購入したパートについては高品質の楽音信号が供給され、未購入のパートについては低品質の楽音信号が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数パートの曲データを再生する曲データ再生装置、複数パートの曲データを配信する曲データ配信装置、および該曲データ再生装置および曲データ配信装置をそれぞれ制御する各制御方法を実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
曲データを再生する曲データ再生装置も、曲データを配信する曲データ配信装置も、従来から知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2005−148565号公報
【特許文献2】特開2007−219054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、複数パートからなる曲データについて、パート毎に著作権料の徴収/非徴収を設定したり、著作権料の額をパート毎に異ならせて設定したりして、著作権料の徴収/非徴収あるいは額に応じて、パート毎に当該パートデータ(1つのパートの楽音を生成するための曲データ)を制御(オン(再生)/オフ(非再生)、エフェクトの付加/非付加、レベル調整など)したいことがある。より具体的には、無料のお試し版では、すべてのパートが低品質パートデータ(MIDI(musical instrument digital interface)形式の演奏データあるいは低品質オーディオデータ)からなる曲データが再生される(たとえば、その曲にボーカルパートがあったとしても、ボーカルパートは、歌声ではなく、適当な楽器音色の楽音が生成される)ようにしておき、ボーカルパートについては、高品質パートデータ(高品質オーディオデータ)を購入してこれを再生し、ピアノパートについては、ユーザ自身が鍵盤を用いて演奏し、他のパートについては、お試し版の低品質パートデータをそのまま再生したいことがある。
【0004】
しかし、上記従来の曲データ再生装置および曲データ配信装置では、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御していなかったので、上記ユーザの要望に応えることはできなかった。
【0005】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる曲データ再生装置、曲データ配信装置、および該曲データ再生装置および曲データ配信装置をそれぞれ制御する各制御方法を実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の曲データ再生装置は、ユーザからの指示に応じて、複数パートのパートデータからなる曲を選曲する選曲手段と、該選曲手段によって選曲された曲の各パートについて、高品質パートデータを購入したかどうかを判別する判別手段と、該判別手段による判別の結果、高品質パートデータを購入したパートについては、当該高品質パートデータを取得するとともに、高品質パートデータを購入していないパートについては、低品質パートデータを取得する取得手段と、該取得手段によって取得された各パートのパートデータを同期させて再生する再生手段とを有することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項2に記載の曲データ配信装置は、複数パートのパートデータからなる曲データを複数記憶する記憶手段と、曲データを受信する曲データ受信装置と通信回線を介して接続する接続手段と、該接続手段によって接続された曲データ受信装置から、ユーザ情報および当該曲データ受信装置が受信する曲データの選曲要求を取得する取得手段と、該取得手段によって取得されたユーザ情報および選曲要求の対象となる曲に基づいて、当該曲のパート毎に高品質パートデータが購入されているかどうかを判別する判別手段と、該判別手段による判別の結果、高品質パートデータが購入されているパートについては、当該高品質パートデータを準備するとともに、高品質パートデータが購入されていないパートについては、低品質パートデータを準備する準備手段と、該準備手段によって準備された各パートのパートデータを前記曲データ受信装置に配信する配信手段とを有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項3に記載のプログラムは、請求項1と同様の技術的思想によって実現できる。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項4に記載のプログラムは、請求項2と同様の技術的思想によって実現できる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1または3に記載の発明によれば、複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料が適切に設定され、ユーザが高品質パートデータでの再生を望むパートについては、所定の料金を支払うことで高品質パートデータを取得し、前記ユーザが高品質パートデータでの再生を望まないパートについては、前記所定の料金より低額の料金を支払うことで、あるいは無料で低品質パートデータを取得し、これら取得された各パートのパートデータを同期させて再生するようにしたので、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる。
【0011】
請求項2または4に記載の発明によれば、複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料が適切に設定され、曲データ受信装置のユーザが高品質パートデータでの配信を望むパートについては、所定の料金を支払うことで高品質パートデータを配信要求し、前記ユーザが高品質パートデータでの配信を望まないパートについては、前記所定の料金より低額の料金を支払うことで、あるいは無料で低品質パートデータを配信要求し、これら配信要求された各パートのパートデータを前記曲データ受信装置に配信するようにしたので、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る曲データ再生装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
同図に示すように、曲データ再生装置100は、音高情報を含む演奏データを入力するための鍵盤を含む演奏操作子1と、各種情報を入力するための複数のスイッチやダイアル、ジョイスティックを含むパネル操作子2と、演奏操作子1の操作状態を検出する検出回路3と、パネル操作子2の操作状態を検出する検出回路4と、装置全体の制御を司るCPU5と、該CPU5が実行する制御プログラムや、各種テーブルデータ等を記憶するROM6と、演奏データ、曲データ、各種入力情報および演算結果等を一時的に記憶するRAM7と、タイマ割込み処理における割込み時間や各種時間を計時するタイマ8と、各種情報等を表示する、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)および発光ダイオード(LED)等を備えた表示器9と、前記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する外部記憶装置10と、外部からのMIDIメッセージを入力したり、MIDIメッセージを外部に出力したりするMIDIインターフェース(I/F)11と、通信ネットワーク400を介して、曲データ配信装置200とデータの送受信を行う通信インターフェース(I/F)12と、演奏操作子1から入力された演奏データや、前記外部記憶装置10に記憶されたいずれかの楽曲データを再生して得られた演奏データ等を楽音信号に変換する音源回路13と、曲データ配信装置200から配信された圧縮オーディオデータや外部記憶装置10に記憶された圧縮オーディオデータを伸長して楽音信号に変換するデコード回路14と、音源回路13からの楽音信号とデコード回路14からの楽音信号をミキシングするミキシング回路15と、該ミキシング回路15からのミキシングされた楽音信号に各種効果を付与するための効果回路16と、該効果回路16からの楽音信号を音響に変換する、たとえば、DAC(digital-to-analog converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム17とにより構成されている。
【0015】
上記構成要素3〜16は、バス18を介して相互に接続され、CPU5にはタイマ8が接続され、MIDII/F11には他のMIDI機器300が接続され、通信I/F12には通信ネットワーク400が接続され、音源回路13およびデコード回路14にはミキシング回路15が接続され、ミキシング回路15には効果回路16が接続され、効果回路16にはサウンドシステム17が接続されている。ここで、通信I/F12および通信ネットワーク400は、有線方式のものに限らず、無線方式のものであってもよい。また、両方式のものを備えていてもよい。
【0016】
外部記憶装置10としては、たとえば、フレキシブルディスクドライブ(FDD)、ハードディスクドライブ(HDD)、CD−ROMドライブおよび光磁気ディスク(MO)ドライブ等を挙げることができる。そして、外部記憶装置10には、前述のように、CPU5が実行する制御プログラムも記憶でき、ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、この外部記憶装置10に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。
【0017】
MIDII/F11は、専用のものに限らず、RS−232CやUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインターフェースより構成してもよい。この場合、MIDIメッセージ以外のデータも同時に送受信してもよい。
【0018】
通信I/F12は、上述のように、たとえばLAN(local area network)やインターネット、電話回線等の通信ネットワーク400に接続されており、該通信ネットワーク400を介して、曲データ配信装置200に接続される。外部記憶装置10に前記各プログラムや各種パラメータが記憶されておらず、それらが曲データ配信装置200に記憶されている場合には、通信I/F12は、曲データ配信装置200からプログラムやパラメータをダウンロードするために用いられる。クライアントとなる曲データ再生装置100は、通信I/F12および通信ネットワーク400を介して曲データ配信装置200へとプログラムやパラメータのダウンロードを要求するコマンドを送信する。曲データ配信装置200は、このコマンドを受け、要求されたプログラムやパラメータを、通信ネットワーク400を介して曲データ再生装置100へと配信し、曲データ再生装置100が通信I/F12を介して、これらプログラムやパラメータを受信して外部記憶装置10に蓄積することにより、ダウンロードが完了する。
【0019】
音源回路13は、波形メモリ方式、FM(frequency modulation)方式、物理モデル方式、高調波合成方式、フォルマント合成方式、VCO(voltage controlled oscillator)+VCF(voltage controlled filter)+VCA(voltage controlled amplifier)のアナログシンセサイザ方式、アナログシミュレーション方式など、どのような方式のものでもよい。また、専用のハードウェアを用いて音源回路を構成してもよいし、DSP(digital signal processor)+マイクロプログラムを用いて音源回路を構成してもよいし、CPU+ソフトウェアのプログラムで音源回路を構成してもよいし、さらに、これらの組み合わせでもよい。また、1つの回路を時分割で使用して複数の発音チャンネルを形成してもよいし、1つの発音チャンネルを1つの回路で形成してもよい。
【0020】
デコード回路14は、各種形式のオーディオデータをデコードすることができるように構成されている。その形式としては、MP3(MPEG Audio Layer III),ATRAC3(adaptive transform acoustic coding),Windows(登録商標)MediaAudio,AAC(advanced audio coding),TwinVQ(transform domain weighted interleave vector quantization)などを挙げることができる。
【0021】
効果回路16は、ミキシング回路15の後段に設けられ、ミキシング回路15から出力された楽音信号に各種効果を付与するようにしているので、ミキシングされる前の楽音信号、つまり音源回路13あるいはデコード回路14から出力された楽音信号に直接、各種効果を付与することはできない。ミキシングされる前の楽音信号に直接、各種効果を付与したいのであれば、ミキシング回路15と効果回路16の接続順序を逆にすればよい。
【0022】
なお、本実施の形態では、曲データ再生装置100を電子鍵盤楽器上に構築するようにしたが、これに限らず、鍵盤を外部接続した汎用的なPC上に構築してもよい。また、鍵盤楽器の形態に限らず、弦楽器タイプや管楽器タイプ等の形態でもよい。
【0023】
曲データ配信装置200は、曲データ再生装置100の上記構成から、演奏操作子1、パネル操作子2、検出回路3,4、表示器9、MIDII/F11、音源回路13、デコード回路14、ミキシング回路15、効果回路16およびサウンドシステム17を除き、その代わりに、キーボード、マウスおよび大型ディスプレイを加えた、通常のPC上に構築される。なお、曲データ配信装置200は、本実施の形態では、1台によって構成されているが、これに限らず、複数台によって構成されていてもよい。
【0024】
以上のように構成された曲データ再生装置100が実行する制御処理を、まず図2を参照してその概要を説明し、図4および図5を参照して詳細に説明する。
【0025】
図2は、曲データ再生装置100が実行する曲データ再生処理を説明するための図である。
【0026】
同図に示すように、曲データ再生装置100の外部記憶装置10には、複数パートからなる曲データ10aを複数蓄積するデータベースが構築されている。曲データ10aは、主として、パート購入情報10a1、(低品質)演奏データ10a2および購入済み(高品質)オーディオデータ10a3とによって構成されている。パート購入情報10a1は、パートデータとして高品質オーディオデータを購入したパート(の番号)を示すものであり、図示例では、パート3および4について高品質オーディオデータを購入していることを示している。なお、高品質オーディオデータは、常に一部のパートについて購入される訳ではなく、いずれのパートについても購入されない場合や、すべてのパートについて購入される場合があり得る。演奏データ10a2は、高品質オーディオデータと異なり、すべてのパートが揃ったものであり、各パートは低品質パートデータ(本実施の形態では、SMF(standard MIDI file)形式のデータ)によって構成されている。ここでは、演奏データ10a2は、無料のお試し版としているが、これに限らず、高品質オーディオデータの料金より低額の料金を設定するようにしてもよい。購入済みオーディオデータ10a3は、パート購入情報10a1によって示されるパートの高品質オーディオデータであり、前記デコード回路14がデコード可能な形式のオーディオデータである。高品質オーディオデータは有料であり、ユーザは、その著作権を管理している団体あるいは会社に所定の料金を支払うことで、そのオーディオデータを使用(再生)することができる。なお、高品質オーディオデータを購入していない場合には、曲データに高品質オーディオデータが含まれないことは、言うまでもない。
【0027】
ユーザが再生したい曲を選曲し、その再生を指示すると、前記CPU5は、前記データベースから選曲した曲の曲データ10aを検索し、曲データ10aに含まれるパート購入情報10a1、演奏データ10a2および購入済みオーディオデータ10a3をそれぞれ、前記RAM7の所定位置に確保されたパート購入情報格納領域、演奏データ格納領域およびオーディオデータ格納領域(すべて図示せず)に格納した後、演奏データ格納領域およびオーディオデータ格納領域内の各データ、つまり演奏データ10a2およびオーディオデータ10a3の再生を開始する。演奏データ10a2の再生は、CPU5によって実行されるソフトウェアである、MIDIシーケンサ(図示せず)によって行われ、オーディオデータ10a3の再生は、デコード回路14によって行われる。そして、MIDIシーケンサおよびデコード回路14は、CPU5によって再生開始が指示されると、自動的に演奏データ格納領域およびオーディオデータ格納領域内の各データの再生を開始する。具体的には、MIDIシーケンサは、演奏データ格納領域内のノートイベントを所定のタイミング(当該ノートイベントに付随するデルタタイムとMIDIクロックに応じた時刻)で読み出して、前記音源回路13に供給する。これに応じて、音源回路13は、供給されたノートイベントに応じた楽音信号を生成するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定し、所定のタイミングで、設定された楽音パラメータに基づく楽音信号を生成して、ミキシング回路15へ供給する。一方、デコード回路14は、オーディオデータ格納領域内のオーディオデータを所定のタイミング(ワードクロックの周期、あるいはワードクロックの周期に基づいた圧縮のフレーム単位のタイミング)で読み出し、読み出したオーディオデータをデコードした後、ミキシング回路15に供給する。
【0028】
CPU5は、MIDIシーケンサに再生開始を指示する前に、パート購入情報格納領域内のデータ内容をチェックすることで、再生対象の演奏データについて、どのパートが購入されているかを判別する。パート購入情報10a1はパート3および4を購入したことを示しているので、CPU5は、MIDIシーケンサに再生開始を指示する前に、音源回路13の、パート3および4にそれぞれ対応するMIDIチャンネルをオフ設定する。これにより、MIDIシーケンサから音源回路13にパート3および4のノートイベントが供給されたとしても、音源回路13は当該ノートイベントに応じた楽音信号を生成しないので、音源回路13からミキシング回路15へ当該ノートイベントに応じた楽音信号は供給されない。この状況は、図2では、音源回路13のブロック内の“×”で表現されている。
【0029】
この後、MIDIシーケンサおよびデコード回路14に対して再生開始が指示されると、音源回路13からミキシング回路15へはパート1および2のノートイベントに応じた楽音信号が供給され、デコード回路14からミキシング回路15へはパート3および4のオーディオデータに応じた楽音信号が供給される。つまり、ミキシング回路15には、料金を払って購入したパートについては高品質の楽音信号が供給され、未購入のパートについては低品質の楽音信号が供給される。ミキシング回路15は、両品質の楽音信号をミキシングして前記効果回路16に供給する。効果回路16は、供給された楽音信号に所定の効果を付与した後、前記サウンドシステム17へ供給する。サウンドシステム17は、供給された楽音信号に応じた音響を生成して出力する。
【0030】
このように、本実施の形態では、複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料を適切に設定しておき、ユーザが高品質パートデータでの再生を望むパートについては、所定の料金を支払うことで高品質パートデータを取得し、ユーザが高品質パートデータでの再生を望まないパートについては、無料で低品質パートデータを取得し、これら取得された各パートのパートデータを同期させて再生するようにしたので、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる。
【0031】
なお、本実施の形態では、高品質オーディオデータは、一部のパートを購入したときには、当該一部のパートのみデータベースに登録されるようにしたが、このときでも、すべてのパートがデータベースに登録されるようにしてもよい。図3は、一部のパートを購入したときでも、すべてのパートのオーディオデータがデータベースに登録される一例を示す図である。同図に示すように、一部パートのオーディオデータを購入すると、すべてのパートのオーディオデータ10a3′がデータベースに登録される。しかし、オーディオデータ10a3′は、所定の暗号化方法で暗号化され、購入したパートについてのみ、たとえば鍵をユーザに公開することで復号可能にしている。したがって、ユーザは、購入したパートについてのみ、高品質オーディオデータを再生することができる。このように、すべてのパートのオーディオデータがデータベースに登録されていると、ユーザは、未購入のパートを追加購入するときに、当該パートのオーディオデータを改めて取得しなくてもよく、何らかの方法によって鍵だけ取得すればよい。
【0032】
また、本実施の形態では、演奏データの再生とオーディオデータの再生とを同期させる処理は、特に行わず、単にMIDIシーケンサとデコード回路14のそれぞれの開始タイミングを合わせたに過ぎないが、再生が進むに従って両再生にずれが生じる場合には、ワードクロックの進み具合にMIDIクロックの進み具合を(あるいは、MIDIクロックの進み具合にワードクロックの進み具合を)合わせるようにすればよい。
【0033】
次に、この制御処理を詳細に説明する。
【0034】
図4は、曲データ再生装置100 、特にCPU5が実行するメインルーチンの手順を示すフローチャートである。
【0035】
本メインルーチンは、主として
(1)初期設定処理(ステップS101)
(2)選曲・曲データ取得処理(ステップS102,S103)
(3)演奏データ再生準備処理(ステップS104,S105)
(4)オーディオデータ再生準備処理(ステップS106)
(5)演奏データ・オーディオデータの再生開始指示処理(ステップS107)
(6)ミキシング回路/効果回路に対する指示処理(ステップS108)
(7)演奏操作に応じた楽音生成指示処理(ステップS109)
(8)演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理(ステップS110)
によって構成されている。本メインルーチンは、ユーザによって前記パネル操作子2に含まれる電源スイッチ(図示せず)が操作されて、電源がオンされたときに起動される。起動後、前記(1)の初期設定処理が1回実行され、これに続いて、前記(2)〜(8)の各処理が順次実行される。そして(8)の処理が終了すると、(2)の処理に戻って、(2)〜(8)の処理が、電源スイッチが操作されて電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0036】
前記(1)の初期設定処理では、CPU5は、RAM7をクリアしたり、各種パラメータの値をデフォルト値に設定したりする等の初期設定を行う。
【0037】
ユーザが、前記パネル操作子3に含まれるモード切替スイッチ(図示せず)を操作することにより、再生したい曲データを選曲するための選曲モードを選択すると、CPU5は、処理を前記(2)の選曲・曲データ取得処理に進める。この(2)選曲・曲データ取得処理では、まずCPU5は、前記表示器9のLCD上に選曲可能な曲データの一覧である、曲リストを表示する。ここで、曲リストは、前記データベースに記憶された曲データの一覧である。しかし、曲データ再生装置100は、前述のように、通信I/F12および通信ネットワーク400を介して曲データ配信装置200と接続されており、曲データ配信装置200からその記憶された曲データを取得することができるので、曲リスト内に、曲データ配信装置200に記憶されている曲データの一覧を表示するようにしてもよい。この場合には、曲データ配信装置200に曲リストの配信要求を行い、これに応じて曲データ配信装置200が配信した曲リストを取得して、それを表示するようにすればよい。このようにして表示された曲リストからユーザが好みの曲を選曲する(ステップS102)と、CPU5は、選曲された曲の曲データをデータベースから読み出して、前記パート購入情報格納領域、演奏データ格納領域およびオーディオデータ格納領域に格納する(ステップS103)。なお、選曲された曲の曲データが前記曲データ配信装置200に記憶されているときには、CPU5は、その曲データの配信要求を曲データ配信装置200に行い、これに応じて曲データ配信装置200が配信した曲データを取得する。
【0038】
次にCPU5は、処理を前記(3)の演奏データ再生準備処理に進める。この(3)演奏データ再生準備処理では、まずCPU5は、パート購入情報格納領域に格納されたパート購入情報に基づいて、演奏データ格納領域に格納された演奏データの各パートが購入済みか否かを判別する(ステップS104)。次にCPU5は、演奏データの購入済みパートをミュートし、未購入パートを有効にする(ステップS105)。このステップS105の処理では、概要で前述したように、音源回路13の、購入済みパートに対応するMIDIチャンネルをオフ設定する。なお、演奏データの購入済みパートをミュートする方法は、これに限られる訳ではなく、購入済みパートの演奏データの先頭に、当該MIDIチャンネルのボリュームをオフ(“0”)に設定するチャンネル・ボリューム・メッセージ等を埋め込むようにしてもよい。
【0039】
次にCPU5は、処理を前記(4)のオーディオデータ再生準備処理に進める。この(4)オーディオデータ再生準備処理では、CPU5は、デコードすべきオーディオデータ、つまりオーディオデータ格納領域に格納されたオーディオデータに応じて、デコード回路14の各種パラメータを設定する。このパラメータには、ワードクロックの周期を決定するパラメータが含まれ、デコード回路14は、デコードすべきオーディオデータに応じたワードクロックで、あるいは圧縮されている場合には、ワードクロックの周期に基づいた圧縮のフレーム単位のタイミングで、オーディオデータ格納領域に格納されているオーディオデータを読み出すように設定される。なお、オーディオデータが、前記図3で説明したように、暗号化されたものである場合には、事前に、あるいは(4)オーディオデータ再生準備処理内で、購入済みパートのみ復号化しておく必要がある。また、購入済みパートのオーディオデータが、曲データ再生装置100内にない場合には、事前に、外部装置、たとえば曲データ配信装置200から取得しておく必要がある。このオーディオデータの外部からの取得処理も、(4)オーディオデータ再生準備処理内で行うようにすればよい。
【0040】
ユーザが、パネル操作子2に含まれる再生開始/停止スイッチ(図示せず)を操作することにより、前記選曲された曲の再生開始を指示すると、CPU5は、処理を前記(5)の演奏データ・オーディオデータの再生開始指示処理に進める。この(5)演奏データ・オーディオデータの再生開始指示処理では、CPU5は、前記MIDIシーケンサおよびデコード回路14に対して再生開始を指示する。これに応じて、MIDIシーケンサおよびデコード回路14は、演奏データ格納領域およびオーディオデータ格納領域にそれぞれ格納されているデータの再生を開始する。なお、MIDIシーケンサおよびデコード回路14がそれぞれ行う再生処理については、概要で詳述したので、ここでは繰り返さない。
【0041】
次にユーザが、パネル操作子2に含まれる、パート毎のレベル調整つまみや各種エフェクト付与スイッチ(共に図示せず)を操作すると、CPU5は、処理を前記(6)のミキシング回路/効果回路に対する指示処理に進める。この(6)ミキシング回路/効果回路に対する指示処理では、CPU5は、あるパートのレベル調整つまみが操作されたときには、当該パートのレベルが操作に応じた値になるようにミキシング回路15に指示する一方、あるエフェクトを付与するスイッチが操作されたときには、当該エフェクトを楽音信号に付与するように効果回路16に指示する。
【0042】
さらにユーザが、前記演奏操作子1に含まれる鍵盤を押鍵すると、CPU5は、処理を前記(7)の音源回路に対する楽音生成指示処理に進める。この(7)音源回路に対する楽音生成指示処理では、CPU5は、前記検出回路3からユーザの押鍵状態を取得し、取得した押鍵状態に応じたキーオンイベントを生成して前記音源回路13へ供給するとともに、キーオンイベントに応じた楽音信号の生成を音源回路13に指示する。これに応じて、音源回路13は、供給されたノートオンイベントに応じた楽音信号を生成するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定し、所定のタイミングで、設定された楽音パラメータに基づく楽音信号を生成して、ミキシング回路15へ供給する。たとえば前記図2において、パート3が「ボーカルパート」であり、パート4が「ピアノパート」であるとし、ユーザが、「ピアノパート」は前記鍵盤を用いて自分で演奏したいので、高品質オーディオデータをパート3についてのみ購入し、パート4については購入しなかったとすると、音源回路13からミキシング回路15には、MIDIシーケンサによって再生されたパート1および2についての楽音信号と、ユーザの演奏によって生成されたパート4についての楽音信号が供給される一方、デコード回路14からミキシング回路15には、パート3についてのボーカルの楽音信号が供給される。ミキシング回路15は、音源回路13からの楽音信号とデコード回路14からの楽音信号をミキシングして、効果回路16に供給する。効果回路16は、供給された楽音信号に所定の効果を付与した後、サウンドシステム17へ供給する。サウンドシステム17は、供給された楽音信号に応じた音響を生成して出力する。これにより、ボーカルパートについては、高品質オーディオデータが再生され、ピアノパートについては、ユーザ自身が鍵盤を用いて演奏され、他のパートについては、お試し版の演奏データが再生される。
【0043】
曲データの再生が継続しているときに、ユーザが前記再生開始/停止スイッチを操作すると、CPU5は、処理を前記(8)演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理に進める。この(8)演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理では、CPU5は、MIDIシーケンサおよびデコード回路14に対して再生終了を指示する。これに応じて、MIDIシーケンサおよびデコード回路14は、それぞれの再生を停止する。
【0044】
図5は、曲データ再生装置100および曲データ配信装置200が協働して実行するパート購入情報関連処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
概要では、曲データ10aの取得先を明示しなかったが、曲データ10aは、実際には、曲データ配信装置200から取得される。したがって、パート購入情報10a1も、曲データ配信装置200から取得される。本パート購入情報関連処理は、曲データ再生装置100がパート購入情報を含む曲データを、曲データ配信装置200から取得する処理を示している。
【0046】
ユーザ(「ユーザ」には、曲データ再生装置100のユーザと曲データ配信装置200のユーザがあり得るが、以下、単に「ユーザ」と記載した場合には、曲データ再生装置100のユーザを指すものとする)が曲データ再生装置100を介して曲データ配信装置200へのログインを指示すると、曲データ再生装置100は、曲データ配信装置200に対するログインを行う(ステップS121)。これに応じて曲データ配信装置200は、ログインを受け付け、ユーザ情報を取得する(ステップS221)。
【0047】
ユーザが、取得可能な曲データのリストの配信を要求すると、曲データ再生装置100は、その配信要求を曲データ配信装置200に送信する(ステップS122)。前述したように、曲データ再生装置100と曲データ配信装置200との間のデータ(情報)のやり取りは、通信I/F12および通信ネットワーク400を介して行われるので、曲リストの配信要求も、通信I/F12および通信ネットワーク400を介して、曲データ再生装置100から曲データ配信装置200に送信される。以下、曲データ再生装置100側から曲データ配信装置200側への、あるいは曲データ配信装置200側から曲データ再生装置100側への各種情報の「送信」は、通信手段が記載されていなくても、通信I/F12および通信ネットワーク400を介してなされるものとする。
【0048】
曲データ配信装置200は、曲データ再生装置100からの配信要求に応じて、曲リスト(前記(2)の選曲・曲データ取得処理で説明した曲リストとは異なるものである)を送信する(ステップS222)。曲データ再生装置100は、この曲リストを受信して、前記LCD上に表示する(ステップS122)。ユーザが、曲リストから購入する曲とパートを指定し、その購入要求を指示すると、曲データ再生装置100は、その購入要求を曲データ配信装置200に送信する(ステップS123)。曲データ配信装置200は、この購入要求を受信し(ステップS223)、この購入要求の対象となる曲データを検索して、曲データ再生装置100に送信する(ステップS224)。曲データ再生装置100は、演奏データを受信して、データベースに登録(記憶)する(ステップS124)。ここで、曲データとは、ユーザが購入を指定した曲およびパートの高品質オーディオデータであるが、曲データ再生装置100のデータベースに、対応する演奏データが登録されていないときには、当該演奏データも曲データに含まれる。
【0049】
さらに、曲データ配信装置200は、パート購入情報を発行して、曲データ再生装置100に送信する(ステップS225)ので、曲データ再生装置100は、これを受信してデータベースに登録(蓄積)する(ステップS125)。
【0050】
そして、曲データ再生装置100は、曲データ配信装置200にログアウトを送信し(ステップS126)、これに応じて、曲データ配信装置200は、そのログアウトを受け付ける(ステップS226)。
【0051】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る曲データ再生装置および曲データ配信装置について説明する。
【0052】
本実施の形態の曲データ再生装置は、上記第1の実施の形態の曲データ再生装置に対して、制御処理の一部が異なるのみであるので、そのハードウェアは、上記第1の実施の形態の曲データ再生装置と同様のハードウェア、すなわち図1に記載のものをそのまま使用することにする。本実施の形態の曲データ配信装置についても同様である。
【0053】
上記第1の実施の形態では、複数パートからなる曲データを複数蓄積するデータベースを曲データ再生装置側に構築し、曲データを購入するときに、曲データ配信装置200から、購入した高品質オーディオデータおよびパート購入情報を取得して、曲データ再生装置のデータベースに登録するようにしたのに対して、本実施の形態では、データベースを曲データ配信装置200側に構築し、ユーザが好みの曲を選曲して、その再生を指示したときに、その指示された曲の曲データが曲データ配信装置200から曲データ再生装置100に配信されて、曲データ再生装置100で再生するようにした点が異なっている。
【0054】
図6は、曲データ再生装置100および曲データ配信装置200が協働して実行する曲データ再生処理を説明するための図である。
【0055】
同図に示すように、曲データ配信装置200は、曲データ再生装置100の他にも、通信ネットワーク400上に接続されているクライアント(図示せず)から、曲データの配信要求を受けるため、パート購入情報は、前記図2のパート購入情報10a1と異なり、ユーザ&(かつ)曲毎のパート購入情報200bとなっている。そして、ユーザ&曲毎のパート購入情報200bとして、曲データから分離し、高品質オーディオデータについては購入したパートのもののみ配信するようにしたので、曲データ200aも、図2の曲データ10aと異なり、演奏データ200a2もオーディオデータ200a3もすべてのパートが揃っている。さらに、高品質オーディオデータは、データ容量が大きいことと著作権保護の観点から、曲データ配信装置200から曲データ再生装置100へは、ストリーミング配信によって配信するようにしている。
【0056】
図7は、曲データ再生装置100および曲データ配信装置200が協働して実行する曲データ関連処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
曲データ受信装置100が実行する曲データ関連処理は、主として
(11)ログイン処理(ステップS131)
(12)選曲処理(ステップS132)
(13)演奏データ再生準備処理(ステップS133)
(14)演奏データ・オーディオデータの同期再生開始指示処理(ステップS134)
(15)演奏データ・オーディオデータの再生処理(ステップS135)
(16)ミキシング回路/効果回路に対する指示処理(ステップS136)
(17)音源回路に対する楽音生成指示処理(ステップS137)
(18)演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理(ステップS138)
によって構成されている。
【0058】
前記(11)のログイン処理と、この(11)ログイン処理に応じた曲データ配信装置200側の処理(ステップS231)は、前記図5のステップS121およびS221の各処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0059】
ユーザが、曲データ配信装置200から配信して欲しい曲データを選曲するための選曲モードを選択すると、CPU5は、処理を前記(12)の選曲処理に進める。この(12)選曲処理では、まずCPU5は、表示器9のLCD上に選曲可能な曲データの一覧である、曲リストを表示する。曲リストは、既に曲データ配信装置200から取得しているときには、それを表示すればよいし、未だ曲データ配信装置200から取得していないときには、曲データ配信装置200に曲リストの配信要求を行い、これに応じて曲データ配信装置200が配信した曲リストを取得して、それを表示するようにすればよい。このようにして表示された曲リストからユーザが好みの曲を選曲し、その配信を指示すると、CPU5は、選曲された曲の配信要求を曲データ配信装置200に送信する(ステップS132)。
【0060】
曲データ配信装置200は、曲データ再生装置100から送信されてきた曲の配信要求を受信すると、その配信要求の対象となる曲と、前記ステップS231で取得されたユーザ情報とによって特定されるパート購入情報を、自身の外部記憶装置上に構築されたデータベースから取得する(ステップS232)。そして、曲データ配信装置200は、前記配信要求の対象となる曲の曲データをデータベースから同様に取得し(ステップS233)、前記取得されたパート購入情報を参照して、購入済みパートをミュートするように、前記取得された演奏データを修正する(ステップS234)。このステップS234の修正方法としては、購入済みパートの演奏データの先頭に、当該MIDIチャンネルのボリュームをオフ(“0”)に設定するチャンネル・ボリューム・メッセージ等を埋め込む方法が考えられる。そして、曲データ配信装置200は、修正された演奏データを曲データ再生装置100に送信する(ステップS235)。あるいは、演奏データのうちの当該MIDIチャンネルのMIDIイベントをフィルタリングして曲データ再生装置100に送信しないようにしてもよい。
【0061】
曲データ再生装置100(のCPU5)は、曲データ配信装置200から修正された演奏データを受信すると、処理を前記(13)の演奏データ再生準備処理に進める。この(13)演奏データ再生準備処理は、前記第1の実施の形態の(3)演奏データ再生準備処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0062】
次に曲データ配信装置200は、前記取得されたパート購入情報を参照して、購入済みパートのオーディオデータのストリーミング配信を開始する(ステップS236)。
【0063】
曲データ再生装置100(のCPU5)は、曲データ配信装置200からストリーミング配信されたオーディオデータを受信すると、処理を前記(14)の演奏データ・オーディオデータの同期再生開始指示処理に進める。この(14)演奏データ・オーディオデータの同期再生開始指示処理では、CPU5は、受信したオーディオデータを、前記RAM7の所定位置に確保されたバッファに格納する。そして、1回に読み出されるオーディオデータの容量が1回に受信されるオーディオデータの容量より多いなどの理由により、読み出すべきオーディオデータが不足することのないように、再生に十分な量のオーディオデータがバッファ内に溜まるのを待って、CPU5は、オーディオデータの再生と演奏データによる楽音生成の同期再生を開始する。
【0064】
前記ステップS236の処理によって、ストリーミング配信が開始されると、曲データ配信装置200は、配信対象のオーディオデータを順次ストリーミング配信する(ステップS237)。
【0065】
曲データ再生装置100(のCPU5)は、曲データ配信装置200からストリーミング配信されたオーディオデータを受信すると、処理を前記(15)の演奏データ・オーディオデータの再生処理に進める。この(15)演奏データ・オーディオデータの再生処理では、CPU5は、オーディオデータのストリーミング再生と演奏データの再生を行う(ステップS135)。
【0066】
次にCPU5は、処理を前記(16)のミキシング回路/効果回路に対する指示処理に進めた後、前記(17)の音源回路に対する楽音生成指示処理に進める。この(16)および(17)の各処理は、それぞれ前記第1の実施の形態の(6)ミキシング回路/効果回路に対する指示処理および(7)演奏操作に応じた楽音生成指示処理の各処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0067】
ストリーミング配信が、配信対象のオーディオデータの末尾まで進むと、曲データ配信装置200は、終了通知を曲データ再生装置100に送信する(ステップS238)。
【0068】
曲データ再生装置100(のCPU5)は、曲データ配信装置200から終了通知を受信すると、処理を前記(18)の演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理に進める。この(18)演奏データ・オーディオデータの再生終了指示処理では、CPU5は、再生終了をMIDIシーケンサおよびデコード回路14に指示する。
【0069】
図8は、曲データ再生装置100および曲データ配信装置200が協働して実行するパート購入情報関連処理の手順を示すフローチャートであり、本パート購入情報関連処理は、前記第1の実施における図5のパート購入情報関連処理に対応している。
【0070】
第1の実施の形態におけるパート購入情報関連処理が、パート購入情報を曲データ再生装置100側の外部記憶装置10に記憶するのに対して、本パート購入情報関連処理では、パート購入情報を曲データ配信装置200側の外部記憶装置に記憶する点およびこの時点では曲データを送信しない点のみが異なっている。このため、パート購入情報を更新して記憶する処理(ステップS225′)が、曲データ配信装置200側のパート購入情報関連処理内に設けられているとともに、曲データを送受信する処理(ステップS124およびS224)が削除されている。その他の処理は、第1の実施の形態におけるパート購入情報関連処理内の処理と異ならないので、その説明は省略する。なお、図8中、図5中の処理と同じ処理を行うステップには、同一ステップ番号が付与されている。
【0071】
このように、本実施の形態では、複数パートのパートデータからなる曲データについて、パート毎に著作権料を適切に設定しておき、ユーザが高品質パートデータでの配信を望むパートについては、所定の料金を支払うことで高品質パートデータを曲データ配信装置200に配信要求し、ユーザが高品質パートデータでの配信を望まないパートについては、無料で低品質パートデータを曲データ配信装置200に配信要求し、これに応じて曲データ配信装置200は、配信要求された各パートのパートデータを曲データ再生装置100に配信するようにしたので、パート毎に著作権料を適切に管理しつつ、パート毎に当該パートデータを制御することが可能となる。
【0072】
なお、上記各実施の形態では、低品質パートデータとして、SMF形式のデータを採用したが、これに限らず、低品質オーディオデータを採用してもよい。
【0073】
また、上記各実施の形態では、パートデータの品質は、低品質と高品質の2種類としたが、3種類以上の多段階としてもよい。この場合、品質が向上するに従って著作権料を増額して行くようにした方が好ましい。
【0074】
なお、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0075】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードおよび該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0076】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、通信ネットワークを介してサーバコンピュータからプログラムコードが供給されるようにしてもよい。
【0077】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0078】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る曲データ再生装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の曲データ再生装置が実行する曲データ再生処理を説明するための図である。
【図3】一部のパートを購入したときでも、すべてのパートのオーディオデータがデータベースに登録される一例を示す図である。
【図4】図1の曲データ再生装置 、特にCPUが実行するメインルーチンの手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の曲データ再生装置および曲データ配信装置が協働して実行するパート購入情報関連処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る曲データ再生装置および曲データ配信装置が協働して実行する曲データ再生処理を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る曲データ再生装置および曲データ配信装置が協働して実行する曲データ関連処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る曲データ再生装置および曲データ配信装置が協働して実行するパート購入情報関連処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
2…パネル操作子(選曲手段),5…CPU(選曲手段、判別手段、取得手段、再生手段),9…表示器(選曲手段),14…デコード回路(再生手段),100…曲データ再生装置(曲データ受信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザからの指示に応じて、複数パートのパートデータからなる曲を選曲する選曲手段と、
該選曲手段によって選曲された曲の各パートについて、高品質パートデータを購入したかどうかを判別する判別手段と、
該判別手段による判別の結果、高品質パートデータを購入したパートについては、当該高品質パートデータを取得するとともに、高品質パートデータを購入していないパートについては、低品質パートデータを取得する取得手段と、
該取得手段によって取得された各パートのパートデータを同期させて再生する再生手段と
を有することを特徴とする曲データ再生装置。
【請求項2】
複数パートのパートデータからなる曲データを複数記憶する記憶手段と、
曲データを受信する曲データ受信装置と通信回線を介して接続する接続手段と、
該接続手段によって接続された曲データ受信装置から、ユーザ情報および当該曲データ受信装置が受信する曲データの選曲要求を取得する取得手段と、
該取得手段によって取得されたユーザ情報および選曲要求の対象となる曲に基づいて、当該曲のパート毎に高品質パートデータが購入されているかどうかを判別する判別手段と、
該判別手段による判別の結果、高品質パートデータが購入されているパートについては、当該高品質パートデータを準備するとともに、高品質パートデータが購入されていないパートについては、低品質パートデータを準備する準備手段と、
該準備手段によって準備された各パートのパートデータを前記曲データ受信装置に配信する配信手段と
を有することを特徴とする曲データ配信装置。
【請求項3】
複数パートのパートデータからなる曲データを再生する曲データ再生装置を制御する制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御方法は、
ユーザからの指示に応じて、複数パートのパートデータからなる曲を選曲する選曲ステップと、
該選曲ステップによって選曲された曲の各パートについて、高品質パートデータを購入したかどうかを判別する判別ステップと、
該判別ステップによる判別の結果、高品質パートデータを購入したパートについては、当該高品質パートデータを取得するとともに、高品質パートデータを購入していないパートについては、低品質パートデータを取得する取得ステップと、
該取得ステップによって取得された各パートのパートデータを同期させて再生する再生ステップと
を有することを特徴とするプログラム。
【請求項4】
複数パートのパートデータからなる曲データを複数記憶する記憶手段を備えた曲データ配信装置を制御する制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御方法は、
接続手段によって通信回線を介して接続された曲データ受信装置から、ユーザ情報および当該曲データ受信装置が受信する曲データの選曲要求を取得する取得ステップと、
該取得ステップによって取得されたユーザ情報および選曲要求の対象となる曲に基づいて、当該曲のパート毎に高品質パートデータが購入されているかどうかを判別する判別ステップと、
該判別ステップによる判別の結果、高品質パートデータが購入されているパートについては、当該高品質パートデータを準備するとともに、高品質パートデータが購入されていないパートについては、低品質パートデータを準備する準備ステップと、
該準備ステップによって準備された各パートのパートデータを前記曲データ受信装置に配信する配信ステップと
を有することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244643(P2009−244643A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91839(P2008−91839)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】