説明

最適化された水洗セクションを用いた、吸収溶液を使用するガス脱酸方法

【課題】本方法は、吸収溶液を用いた、ゾーンB1における吸収段階、およびカラムGにおける吸収溶液再生段階を実施することによって、ガス1、例えば燃焼排ガスまたは天然ガス中に含まれるCO2およびH2Sなどの酸性化合物の捕獲を提供する。
【解決手段】本発明によれば、酸性化合物が除去されたガス32が、所定の温度を有する液体水の流れ17と接触することによって、洗浄セクションB3において洗浄および冷却され、その結果、温度が処理される前記ガス2の温度より低い、洗浄されたガス18を得、再生して得られた、酸性化合物に富むガス状流出物22中に含まれる、ある量の水がプロセスから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ガスの脱酸(deacidizing)、例えば、燃焼排ガス(fumes)脱炭酸または天然ガス脱酸の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
地球温暖化現象を制限するために、二酸化炭素は、燃焼排ガスから抜き取られることによって、地下貯蔵所に隔離される。天然ガスの場合、ガスの発熱量を改善し、場合により、輸送のための天然ガスの液化を可能にするために、また毒性の理由で、二酸化炭素および硫化水素の含量が低減される。
【0003】
ガスからCO2およびH2Sを除去するために、アミン水溶液を使用する吸収法が一般に使用される。ガスは、吸収溶液(absorbent solution)と接触することによって浄化され(purified)、次いで吸収溶液は、熱によって再生される。
【0004】
文献EP−502,596は、燃焼排ガス脱炭酸方法を提供し、この方法では、浄化されたガスは水で洗浄されることによって、ガスに同伴された(entrained)、吸収溶液からの反応性化合物が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP−502,596号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、処理されたガスに同伴される反応性化合物の量を低減するために、低温の洗浄水を使用して、流入するガスの温度以下の温度に、処理されたガスを冷却することによって、水洗プロセスを改良することを目的とする。
【0007】
発明の概要
本発明は、処理すべきガス中に含まれるCO2およびH2Sを含む酸性化合物の捕獲方法であって、以下の段階:
a)処理すべきガスを、水溶液中に反応性化合物を含む吸収溶液と接触させて、酸性化合物が除去された(depleted)ガスと、酸性化合物が富化された吸収溶液とを得る段階と、
b)再生カラム(a regeneration column)中で、前記酸性化合物が富化された吸収溶液の少なくとも一部を再生して、再生された吸収溶液と、酸性化合物に富むガス状流出物(gaseous effluent)とを得、この再生された吸収溶液は、吸収溶液として段階a)に再循環される(recycled)段階と、
c)段階a)で得られた酸性化合物が除去されたガスを、所定温度を有する液体水の流れと接触させることによって洗浄セクションにおいて洗浄および冷却して、温度が前記処理すべきガスの温度未満である洗浄されたガスを得る段階と、
d)前記酸性化合物に富むガス状流出物に含まれるある量の水を、プロセスから排出する段階と
が実施される方法に関する。
【0008】
本発明によれば、段階c)において、液体水の流れを所定温度に冷却して、前記処理すべきガスの温度より1℃〜20℃低い温度の洗浄されたガスを得ることができる。
【0009】
酸性化合物に富むガス状流出物は、液体凝縮物および酸性化合物が富化されたガスを得るために、冷却によって部分的に凝縮させることができ、凝縮物の少なくとも第1の部分は、再生カラムに送り込むことができる。
【0010】
前記量の水の少なくとも一部は、前記液体凝縮物の第2の部分で構成する(make up)ことができる。
【0011】
前記量の水の少なくとも一部は、前記酸性化合物が富化されたガス中の蒸気の形態で排出することができる。例えば、液体凝縮物および圧縮される気相を生成するために、酸性化合物が富化されたガスを、冷却によって部分的に凝縮することができる。
【0012】
洗浄セクションの底部において得られる水の一部を冷却および再循環して、段階c)で使用される、前記液体水の流れの少なくとも一部を構成することが可能である。
【0013】
洗浄セクションの底部において得られる水の別の一部は、以下の操作:
− 水のこの一部を、段階b)で得られた再生された吸収溶液と混合すること、
− 水のこの一部を、再生カラム中に送り込むこと、
− 水のこの一部を、段階a)で得られた酸性化合物が富化された吸収溶液と混合すること
のうちの少なくとも1つを実施することによって再循環することができる。
【0014】
前記凝縮物の第3の部分を抜き出すことができ、段階c)において、段階a)で得られた酸性化合物が除去されたガスを、液体水の流れ、およびさらに、前記抜き出された凝縮物の第3の部分と接触させることができる。
【0015】
洗浄セクションは、第1および第2の接触ゾーンを含むことができ、段階c)において、段階a)で得られた酸性化合物が除去されたガスを、洗浄セクションの底部において得られる水の一部と、第1の接触ゾーンにおいて接触させて、予洗された(prewashed)ガスを得ることができ、次いで前記予洗されたガスを、前記抜き出された凝縮物の第3の部分と、第2の接触ゾーンにおいて接触させることができる。
【0016】
段階c)で得られた洗浄されたガスは、機械的な(mechanical)気体/液体分離手段を通して流通する(circulate)ことができる。
【0017】
アミン水溶液は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジグリコールアミン、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、スルホラン、ポリエチレングリコール、ピロリドン、N−ホルミルモルホリン、アセチルモルホリン、炭酸プロピレンからなるリストから選択される、10質量%と80質量%の間の反応性化合物を含むことができる。
【0018】
処理すべきガスは、燃焼排ガス、天然ガス、クラウス法テールガス(Claus tail gas)、合成ガス、石炭、木材、重質原油(heavy crude)または天然ガス燃焼複合プラントで使用される変換ガス(conversion gas)、バイオマス発酵から生じるガス、セメントプラントまたは製鉄所プラントからの流出物からなるリストから選択することができる。
【0019】
本発明による方法により、水洗セクションの運転を最適化する一方で、浄化ガス(purified gas)の水洗に必要なエネルギー消費量を制限し、プロセスの水バランスの平衡状態を保証することが可能になる。
【0020】
処理されたガス中の反応性化合物の蒸気圧は、温度とともに減少する。したがって、水洗によってガスを冷却することで、処理されたガス中の反応性化合物の濃度を低減することによって、熱力学的平衡をシフトすることが可能になる。
【0021】
さらに、ガスを低温に冷却することにより、より大量の水を凝縮させることが可能になる。洗浄水中の反応性化合物の濃度が減少し、それにより、処理されたガスによって同伴される反応性化合物を捕獲する洗浄水の能力が増大する。
【0022】
図面の簡単な説明
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の説明を読めば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による方法を図式的に示す。
【図2】本発明による方法の改良を図式的に示す。
【図3】本発明による方法の改良を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
図1に関連して、処理すべきガスは、1バール(絶対圧)と150バール(絶対圧)の間(0.1〜15MPa(絶対圧))の範囲とすることができる圧力、および10℃と70℃の間の範囲とすることができる温度で、ライン1を通って流れ込む。
【0025】
前記ガスは、燃焼排ガス、天然ガスまたはクラウス法テールガスとすることができる。ガスは、合成ガス、石炭、木材、重質原油または天然ガス燃焼複合プラントで使用される変換ガス、バイオマス発酵から生じるガス、セメントプラントまたは製鉄所プラントからの流出物とすることもできる。
【0026】
前記ガスは、CO2またはH2Sなどの酸性化合物を、0.1体積%と30体積%の間で含む。燃焼排ガスの場合では、SOxおよびNOx型化合物の割合は、前記化合物のそれぞれの1つについて、体積で200mg/Nm3の程度の値に到達し得る。
【0027】
ライン1を通って流れ込むガスは、装置Aによって圧縮することができる。例えば、燃焼排ガスの場合では、装置Aは、100〜250mbar(10〜25kPa)の程度の圧力増加を提供するブロアーまたはコンプレッサーである。
【0028】
前記ガスは、気体/液体接触エレメント(gas/liquid contacting element)、例えば、トレイ、ランダム充填体(packing)または積層(stacked)充填体を備えた吸収セクションB1にライン2を通して送り込まれる。セクションB1では、ガスは、ライン12を通って流れ込む吸収溶液と接触する。ガスは液体溶液と対向して(countercurrent to)流通する。吸収溶液は、酸性化合物、特にガス中に含まれるCO2およびH2Sを捕獲する。酸性化合物を含んだ(laden with acid compounds)吸収溶液は、セクションB1の底部のライン3を通して排出される。酸性化合物が除去されたガスの流れは、セクションB1の頂部で得られ、この流れは、矢印32で表されている。
【0029】
吸収溶液の組成は、酸性化合物を吸収するその能力のために選択される。一般に、10質量%と80質量%の間、好ましくは20質量%と60質量%の間の反応性化合物を含む水溶液を使用することが可能である。
【0030】
反応性化合物は、MEA(モノエタノールアミン)、DEA(ジエタノールアミン)、MDEA(ジメチルエタノールアミン)、DIPA(ジイソプロピルアミン)、DGA(ジグリコールアミン)、ジアミン、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、TMHDA(N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン)の中から選択することができる。
【0031】
反応性化合物は、物理的性質の溶媒(solvents of physical nature)、例えば、メタノール、スルホラン、エーテル化することができるポリエチレングリコール、ピロリドンまたは例えば、N−メチルピロリドンなどの誘導体、N−ホルミルモルホリン、アセチルモルホリン、炭酸プロピレンの中から選択することもできる。
【0032】
加えて、水溶液は、反応性化合物の劣化現象を制限する酸化防止添加剤を含むことができる。例えば、ジチオホスフェートファミリーまたは少なくとも1つのチオール官能基を有する分子のファミリーの酸化防止剤、特に、チアジアゾールの誘導体、またはチオエーテルもしくはジチオエーテルを使用することができる。
【0033】
セクションB1の底部で排出された吸収溶液は、ポンピングされ(pumped)、熱交換器F中で加熱され、次いで再生カラムG中に送り込まれる。すべての吸収溶液は一般に、再生カラムに送られる。
【0034】
あるいは、セクションB1の底部で得られた吸収溶液は、分割して2つの画分(fractions)にすることができる。次いで、1つの画分だけが再生カラムGに送られる。例えば、酸性化合物を含んだ吸収溶液は、分離して酸性化合物に富む画分および酸性化合物に乏しい画分にすることができる。酸性化合物に富む画分はカラムGに送られ、酸性化合物に乏しい画分は再循環され、吸収セクションの頂部に送られる。この実施形態は、文献FR−2,877,858に詳細に記載されている。
【0035】
再生カラムGは、気体/液体接触内部構造物(gas/liquid separation internals)、例えば、トレイ、ランダムまたは積層充填体を備えている。カラムGの底部は、再生に必要な熱を供給するリボイラJを備えている。カラムGでは、酸性化合物がガス状形態で放出され、ライン22を通してGの頂部で排出される。
【0036】
再生された、すなわち酸性化合物が除去された吸収溶液は、ライン6を通してカラムGの底部において排出され、ポンプKでポンピングされ、ライン9を通して交換器Fに送り込まれ、冷却される。冷却された吸収溶液は、ライン10を通して排出され、フィルターHに送り込まれることによって固体化合物および粒子が除去される。Hから排出された吸収溶液は、熱交換器Iで冷却され、ライン12を通してセクションB1に送り込まれる。
【0037】
ライン22を通してGの頂部で排出されたガス状の流れは、交換器N内での冷却によって部分的に液化され、分離器(separator)Oに送り込まれる。凝縮物(condensates)は、カラムGの頂部のライン23およびポンプMを通して、還流として全部または部分的に再循環される。残りの凝縮物は、流れ33によってプロセスから排出される。
【0038】
この方法が排ガスの脱炭酸に適用されるとき、CO2に富むガスがカラムGの頂部で得られる。ライン24を通してドラムOの頂部で排出されたガスは、地下貯蔵所に注入するために、液化される。一連の圧縮および冷却段階を経ることによって、装置PおよびQ内でガスを圧縮および脱水することができ、その結果、非常に高純度、例えば、99体積%を超えるCO2の、約110バール(11MPa)の液体CO2の流れを得ることができる。
【0039】
Gの底部で得られた、再生された吸収溶液の一部は、ライン8を通して、一般にリクレーマ(reclaimer)と呼ばれる気化装置Lに送り込むことができる。装置Lにおいて、吸収溶液は、気化するまで加熱される。ライン7を通してLから排出される蒸気は、カラムGに送り込まれる。反応性化合物の劣化によって形成される塩は、Lの底部において液体溶液中で固体状態としてとどまり、これらはライン31を通して周期的に抜き取られ、排出される。ライン8のレベルで、水および場合により強塩基、例えば、水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、塩、酸を中和し、気化温度を調節する(regulate)ことが可能である。
【0040】
浄化ガス32は、ある量の反応性化合物を運ぶ。実際、ゾーンB1の頂部で、高い反応性化合物濃度、例えば、MEAの場合30質量%を有する液体の吸収溶液は、高速で流通するガスに対向して流れる。この接触により、ガスによる高い量の反応性化合物の同伴(entrainment)がもたらされる。2つの原理が、ガスによる反応性化合物同伴の現象を支配している。一方では、反応性化合物の一部は、反応性化合物の蒸気圧の結果として浄化ガス中に蒸気形態で同伴される。他方では、反応性化合物の損失は、ガス中に液体飛沫が機械的に同伴されることによるものである。これらの2つの現象が、洗浄セクションB3にガスによって同伴される反応性生成物の量を決定する。
【0041】
本発明によれば、反応性化合物の大きすぎる放出および損失を回避するために、特定の洗浄セクションが使用される:ガスは、水洗に付されることによって、浄化ガス中に存在する反応性化合物分子が回収される。ガス32は、洗浄セクションB3に送り込まれ、ライン17を通って流れ込む水と対向して接触する。セクションB3は、気体/液体接触エレメント、例えば、トレイ、ランダム充填体または積層充填体を含む。反応性化合物の痕跡のなくなった浄化ガスは、ライン18を通してB3から排出される。反応性化合物を含んだ水は、洗浄セクションB3の底部において収集される。
【0042】
B3の底部において回収された洗浄水の一部は、ライン13を通して抜き出され、ポンプCによってポンピングされ、熱交換器Dによって冷却され、ライン17を通してセクションB3に送り込まれる。交換器Dにおいて、洗浄水は、ライン16を通って流れ込みライン14を通して排出される冷媒によって冷却される。
【0043】
場合により、新鮮な水を、ライン15を通して供給することができる。前記水は、ループ内を循環する洗浄水と混合され、次いでこの水は、ライン17を通して洗浄セクションB3に送り込まれる。
【0044】
本発明は、洗浄セクションB3に流入および流出するガス状の流れの温度の特定の管理とともに、洗浄を実施することを目的とする。本発明によれば、洗浄水は、直接的な熱交換による冷却手段として使用される。洗浄水は、B3を流通するガスを通して冷却のための冷媒として作用する。本発明によれば、ライン18を通ってこのセクションを出る処理されたガスの温度が、ライン2を通って流れ込む未処理ガスの温度より、厳密に低い温度であるように、例えば1℃低いように、洗浄水の温度が交換器Dによって制御される。例えば、18中で流通するガスの温度は、ライン2中で流通するガスの温度より、1℃〜20℃低く、好ましくは2℃〜10℃低い。ライン18を通して排出されるガスの温度を下げることにより、熱力学的平衡をシフトすることによって、ガス18中に含まれる反応性化合物の量を低減することが可能になる。さらに、B3中で流通するガスの冷却により、ガス32中に含まれる水の一部が凝縮する。この量の凝縮した水により、洗浄水中の反応性化合物の濃度を減少させ、したがって、洗浄水の反応性化合物の吸収能力を改善することが可能になる。
【0045】
本発明による方法を運転するために、交換器Dによって提供される冷却は、ガス18およびガス2の温度に応じて調節することができる。流れ2および18の温度はそれぞれ、検出器C1およびC2によって測定される。C1およびC2によって測定される温度に応じて、Dに供給する冷媒流量を制御するバルブV1を、ライン13および17を通して再循環される洗浄水の温度、したがって、洗浄水によって冷却されるガス18の温度を調節するように、制御することができる。
【0046】
B3におけるガスの冷却によって生じる洗浄水の量の増加は、本発明によれば、例えば流れ33および/または24による、吸収溶液再生のレベルで、プロセスにおいて水を抜き取ることによって補償される。本発明によれば、流れ2と流れ18の間の温度差の結果として凝縮される水の量に少なくとも等しいある量の水が排出される。この量の水は、ドラムOにおいて回収された凝縮物を、ライン33を通して抜き出すことによって、液体の形態で排出することができる。この量の水は、ライン24を通してドラムOの頂部で排出されるガスとともに、蒸気の形態で排出することもできる。プロセスから排出される、この量の水は、ライン33を通して部分的に、およびライン24を通して排出されるガス中に部分的に抜き出すこともできる。吸収セクションB1と再生カラムGの間の閉じたループ内で循環する吸収溶液の含水量の増加は、このように回避される。
【0047】
図1に示すように、吸収セクションB1および洗浄セクションB3は、同じカラム(column)B内に配することができる。この場合、セクションB1からセクションB3へのガスの通過を可能にする液密トレイ(liquid−tight tray)B2を使用することができる。あるいは、吸収セクションB1は、第1のカラムにおいて稼動させることができ、洗浄セクションB3は、第1のカラムと異なる第2のカラムにおいて稼動させることができる。第1のカラムの頂部は、浄化ガスを第1のカラムから第2のカラムに移すために、第2のカラムの底部に接続されたラインを備える。
【0048】
装置Bの直径を最小限にするために、非常に高いガス速度(gas rates)を使用することができるが、これは、17を通してB3に送り込まれる液体と、18を通してB3から排出されるガスとの間の良好な分離にとって好都合ではない。本発明によれば、ライン18を通して排出される流れにおける液体の損失を制限するために、気体/液体を機械的に分離するために意図された手段B4を、セクションB1の頂部に配することができる。例えば、手段B4は、乾燥トレイ(dry tray)または液体が供給されない充填体ハイト(packing height)、または液滴エリミネーターパッド(drop eliminator pad)の形態とすることができる。
【0049】
水の第1の部分は、ライン13、ポンプCを通してB3の底部において回収され、この水は、ライン17を通してセクションB3の頂部に再循環される。ライン17を通してB3に送り込まれる総洗浄水流量は、洗浄セクションB3において良好な流体力学的接触を得、ガス中に含まれる十分な割合の反応性化合物を捕獲するように決定され、その結果、ライン18を通して排出されるガス中の反応性化合物の排出量に関する基準が満たされる。
【0050】
全体的なループに対する吸収溶液中の含水量のバランスは負である:水の損失が存在する。吸収セクションB1では、アミンによる酸性化合物の吸収の発熱反応のために、ガスが温かくなる。B3を出るガス18は、ライン2通してB1に送り込まれるガスよりも温かい。したがってガス18は、B1の入口におけるよりも多くの水を含み、これは水の損失を生じさせる。加えて、ライン24を通して排出される、酸性化合物に富む流れも水を含む。
【0051】
本発明によれば、一方では水の損失を補償し、他方では水洗によって浄化ガスから抜き取られた反応性化合物を回収および再使用するために、B3の底部で得られた水の第2の部分を、ライン19を通して抜き取って、これをプロセス中に再循環することが可能である。より正確には、本発明は、ゾーンB3の底部においてライン19を通して抜き出される液体が、B1の頂部に運ばれる反応性化合物、および水の損失を補償するのに必要とされる量の水を含むように、ライン19を通してのパージ速度(purge rate)をバルブVによって制御することを目的とする。ライン19を通す再循環により、本方法を実施するのに必要とされる補給(makeup)反応性化合物の量を制限することが可能になる。さらに、再循環ライン19を通して反応性化合物を排出することは、洗浄セクションB3における反応性化合物の濃度を低減し、したがって、非常に低い反応性化合物含量を有するガス18を得ることを目的とする。例えば、燃焼排ガスの脱炭酸の場合では、再循環の目的は、大気に排出される処理された排ガス18中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の最大許容可能量に対する基準を満たすことである。
【0052】
図1に関連して、ライン19を通して抜き出される水は、プロセスにおける様々な場所で流通する吸収溶液と混合することができる。
【0053】
水は、ライン20を通してライン10に送り込まれることによって、Gの底部において得られる再生された吸収溶液と混合することができる。水は、交換器Fを通過した後の冷却された、再生された吸収溶液と混合されることが好ましい。
【0054】
水は、ライン29を通してライン4に送り込まれることによって、B1の底部で酸性化合物を含んだ吸収溶液と混合することができる。水は、熱交換器Fから上流の、酸性化合物を含んだ吸収溶液と混合されることが好ましい。
【0055】
ライン19を通して抜き出された水は、ライン30を通して再生カラムGに送り込むこともできる。
【0056】
図1に関連して記載されたライン19を通る水の再循環は、洗浄セクションB3に同伴されるアミンの量を制限するのに不十分である場合がある。この場合、図2および3に関連して記載される解決策の少なくとも1つを、本発明によって実施することができる。図2は、改良を伴った図1の方法を図式的に示し、図3は、図1に関連して記載されたカラムBの頂部を図式的に示す。図1の参照番号と同一の図2および3の参照番号は、同じ要素を示す。
【0057】
第1の解決策は、洗浄セクションB3に向かって吸収セクションB1内を流通するガス中の液体飛沫の機械的な同伴を減少させることにある。図2に関連して、気体/液体の機械的分離手段B5は、セクションB1の頂部に配される。例えば、B5は、乾燥トレイ、または液体を供給されない充填体ハイト、または液滴エリミネーターパッドとすることができる。分離手段B5は、セクションB1からセクションB3への飛沫による反応性化合物の同伴を制限することによって、洗浄ループ内の反応性化合物の量、およびしたがって浄化ガス18によって同伴される反応性化合物の量を制限することを可能にする。セクションB3の頂部での機械的な同伴による反応性化合物の損失は、大気圧での排ガスの場合における反応性化合物の損失の約50%であると推定することができる。吸収セクションB1の頂部に分離手段B5を配することにより、洗浄セクションB3および流れ19における反応性化合物の濃度、およびしたがって流れ18における機械的な同伴による反応性化合物の損失を2分の1に減少させることが可能になる。分離手段B5の実装は、セクションB1およびB3を通って流れるガスの圧力低下のわずかな増大を誘発し得るが、これはなお許容される(一般に15%未満の増大)。この圧力低下の増大は、処理すべきガスの装置Aによる圧力の増加によって補償され得る。
【0058】
第2の解決策は、熱交換器Nによる再生カラムの頂部での中程度の冷却を実施することにある。交換器N2によって代表される第2の凝縮段階が実施される。冷却されたガスは、流れ34を通してドラムRに送られ、凝縮物は、流れ35を通してプロセスから排出され、一方、酸性ガスはライン40を通して圧縮段階に送られる。ライン33および35を通してこのように排出された水は、プロセスの水バランスを保証しながら、ライン18を通して吸収セクションを出る浄化ガスのより著しい冷却を可能にする。
【0059】
第3の解決策は、ライン19を通してのパージ速度を増加させることにある。図2に関連して、追加の量の水を、洗浄セクションB3の頂部にライン50を通して送り込むことによって、セクションB3、およびライン19を通して排出される液体における反応性化合物の濃度を低減することができる。ライン50を通してB3に送り込まれる水は、再生カラムGの頂部から来る水の流れに由来することができる:ライン50は、ドラムOの底部でライン23を通して排出される凝縮物の一部を、それがセクションB3に送り込まれる前に、抜き出す。ライン19を通るパージ速度を2倍にさせる液体の流れが、ライン50を通して導入される場合、洗浄セクションB3および流れ19における反応性化合物の濃度、およびしたがって流れ18における機械的な同伴による反応性化合物の損失は、2分の1に減少させることができる。この解決策は、燃焼排ガスの脱炭酸の場合において特によく適している。実際に、ドラムOの底部において得られる水はCO2を含んでいるが、この水をセクションB3に送り込むことは不利ではなく、これは、1%の程度のCO2濃度は、ライン18を通してB3から排出されるガス中で許容することができるためである。
【0060】
第4の解決策は、2つの段階を伴った洗浄セクションを使用することにある。図3は、図2のカラムBの頂部を示し、ここでセクションB3は、2つの段階のB31およびB32を備えたセクションによって置き換えられている。それぞれの段階B31およびB32には、気体/液体接触エレメント、例えば、トレイ、ランダム充填体または積層充填体が装着されている。ガス中に含まれる液体飛沫の機械的な分離のために意図された手段B6が、段階B31とB32の間に配されている。例えば、B6は、乾燥トレイ、または液体を供給されない充填体ハイト、または液滴エリミネーターパッドとすることができる。吸収セクションB1からのガス32は、分離手段B5を通って流れた後、段階B31、次いで段階B32を通って流れる。第2の段階B32の頂部で、ライン15および50を通して洗浄セクションに送り込まれる水は、段階B32、次いで段階B31においてガスに対向して流れる。洗浄セクションの底部、すなわち、段階B31の底部において収集された水は、ライン13を通して抜き出され、交換器Dによって冷却され、分離手段B6の下のセクションB31の頂部に送り込まれる。交換器Dでは、水は、ライン16を通って流れ込む冷媒との間接的な熱交換によって冷却され、これはライン14を通して排出される。第1の段階B31は、第2の段階B32の流量と比べて、相対的に高い洗浄水の流量で大まかな洗浄を実施する。次いで、仕上げの段階B32は、ライン18を通してB32から排出されるガス中の反応性化合物の含量に関して、高度な仕様を提供する。水の流れは反応性化合物をほとんどまったく含まずにB32に送り込まれ、機械的な同伴による反応性化合物の損失は、実質的にゼロである。段階B32の実装には、比較的低い液体流量と処理すべきガスの比較的高い流量の間の良好な接触を可能にする特定の充填体が要求される。例えば、織布型の充填体を使用することが可能である。この型の充填体は、1m3/m2.h未満の液体噴霧速度(liquid spray rates)に到達することを可能とする。
【0061】
モノエタノールアミン(MEA)水溶液による燃焼排ガスの脱炭酸の場合における、図1に図式的に示した方法の運転を、以下の数値的な例によって説明する。
【0062】
例1、例2はそれぞれ、図1に関連して記載したプロセスにおいて流通する様々な流れの組成を、それぞれ表1、表2に示すように与える。
【0063】
例1および2において、ライン1を通って流れる、処理すべき排ガスは同一であり、その結果、2つの方法を比較することができる。
【0064】
値は、Aspen数値シミュレーションツールを使用して、本方法をシミュレーションすることによって得た。これらは、プロセスの安定な作動状態に対応する。
【0065】
例1
例1は、従来技術によって実施される図1の方法に対応し、すなわち、ライン18を通して排出されるガスの温度は、ライン2を通って流れ込むガスの温度より高い。この場合、水はライン33を通してまったく抜き出されない。
【0066】
【表1】

【0067】
表1において認めることができるように、流れ18におけるMEA含量は、2.2×10-4kmol/hであり、これは、処理されたガス中の3.14mg/Nm3のMEAに相当する。考慮された冷却は45℃であり、すなわち、入口のガス(40℃)より5℃高く、プロセスの水バランスを制御するために、ライン33を通した抜き出しはまったく実施されない。この運転方法は、ライン15を通した補給水の供給を必要とする。
【0068】
例2
この方法は本発明によって実施され、すなわち、ライン18を通して排出される処理された排ガスは、ライン2を通って流れ込むガスよりも低い温度である。さらに、水が、ライン33を通して抜き出される。
【0069】
【表2】

【0070】
処理されたガスの冷却を使用した、図1に関連して記載された方法の運転に関して、表2において認めることができるように、流れ18におけるMEA含量は1.3×10-4kmol/hであり、これは、処理されたガス中の1.9mg/Nm3のMEAに相当する。考慮された冷却は38℃であり、すなわち、入口のガス(40℃)より2℃低い。プロセスの水バランスを満たすために、水は、ライン33を通して抜き出される(2.63kmol/h)。
【0071】
この2つの例の比較は、本発明の有意性を示す。清浄にされたガスを冷却することにより、清浄にされたガス中のMEAの排出を40%低減することが可能になった。
【符号の説明】
【0072】
2 処理すべきガス
3 酸性化合物が富化された吸収溶液
9 再生された吸収溶液
12 反応性化合物を含む吸収溶液
13 洗浄セクションの底部で得られる水の第1の部分
17 所定温度を有する液体水の流れ
18 洗浄されたガス
19 洗浄セクションの底部で得られる水の第2の部分
22 酸性化合物に富むガス状流出物
23 液体凝縮物の第1の部分
24 酸性化合物が富化されたガス
32 酸性化合物が除去されたガス
33 液体凝縮物の第2の部分
35 液体凝縮物
40 気相
50 液体凝縮物の第3の部分
A 圧縮装置
B カラム
B1 吸収セクション
B2 液密トレイ
B3 洗浄セクション
B4 機械的気液分離手段
B5 機械的気液分離手段
B6 ガス中に含まれる液体飛沫の機械的な分離手段
B31 第1の接触ゾーン
B32 第2の接触ゾーン
C ポンプ
C1 温度検出器
C2 温度検出器
D 熱交換器
F 熱交換器
G 再生カラム
H フィルター
I 熱交換器
J リボイラ
K ポンプ
L 気化装置
M ポンプ
N 熱交換器
N2 交換器
O 分離器、ドラム
P 圧縮装置
Q 脱水装置
R ドラム
V バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべきガス(2)中に含まれる、CO2およびH2Sを含む化合物のうちの少なくとも1つを含む酸性化合物の捕獲方法であって、以下の段階:
a)酸性化合物が除去されたガス(32)と、酸性化合物が富化された吸収溶液(3)とを得るために、処理すべきガス(2)を、水溶液中に反応性化合物を含む吸収溶液(12)と接触させる段階と、
b)再生された吸収溶液(9)と、酸性化合物に富むガス状流出物(22)とを得るために、再生カラム(G)中で前記酸性化合物が富化された吸収溶液(3)の少なくとも一部を再生し、前記再生された吸収溶液は、吸収溶液として段階a)に再循環される段階と、
c)前記処理すべきガス(2)の温度より低い温度の、洗浄されたガス(18)を得るために、段階a)で得られた、前記酸性化合物が除去されたガスを、所定温度を有する液体水の流れ(17)と接触させることによって、洗浄セクション(B3)において洗浄および冷却する段階と、
d)前記酸性化合物に富むガス状流出物(22)に含まれる、ある量の水を該方法から排出する段階と
が実施される方法。
【請求項2】
前記処理すべきガス(2)の温度より1℃〜20℃低い温度の洗浄されたガス(18)を得るために、段階c)において、液体水の流れ(17)を所定温度に冷却する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体凝縮物と、酸性化合物が富化されたガス(24)とを得るために、前記酸性化合物に富むガス状流出物(22)を、冷却によって部分的に凝縮し、凝縮物の少なくとも第1の部分(23)を再生カラム(G)に送り込む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記量の水の少なくとも一部が、前記液体凝縮物の第2の部分(33)からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記量の水の少なくとも一部が、前記酸性化合物が富化されたガス(24)中の蒸気の形態で排出される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
液体凝縮物(35)と、圧縮される気相(40)とを生成するために、前記酸性化合物が富化されたガス(24)を、冷却によって部分的に凝縮する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階c)で使用される、前記液体水の流れの少なくとも一部を構成するために、洗浄セクションの底部において得られる水の一部(13)を冷却および再循環する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
洗浄セクションの底部において得られる水の第2の部分(19)が、以下の操作
− 前記水の第2の部分を、段階b)で得られた再生された吸収溶液と混合すること、
− 前記水の第2の部分を、再生カラムに送り込むこと、
− 前記水の第2の部分を、段階a)で得られた酸性化合物が富化された吸収溶液と混合すること
のうちの少なくとも1つを実施することによって再循環される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
凝縮物の第3の部分(50)が抜き出され、段階c)において、段階a)で得られた前記酸性化合物が除去されたガスが、液体水の流れ(17)、およびさらに、前記抜き出された凝縮物の第3の部分(50)と接触する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄セクションが、第1(B31)および第2(B32)の接触ゾーンを含み、
段階c)において、予洗されたガスを得るために、段階a)で得られた前記酸性化合物が除去されたガスを、前記洗浄セクションの底部において得られる水の一部と、前記第1の接触ゾーンにおいて接触させ、次いで前記予洗されたガスを、前記第2の接触ゾーンにおいて、前記抜き出された凝縮物の第3の部分と接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
段階c)で得られた前記洗浄されたガスを、気体/液体の機械的な分離手段(B4)を通して流通させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸収溶液が、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジグリコールアミン、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、スルホラン、ポリエチレングリコール、ピロリドン、N−ホルミルモルホリン、アセチルモルホリン、炭酸プロピレンからなる群のアミンから選択される、10質量%と80質量%の間の反応性化合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記処理すべきガスが、燃焼排ガス、天然ガス、クラウス法テールガス、合成ガス、石炭、木材、重質原油もしくは天然ガス燃焼複合プラントで使用される変換ガス、バイオマス発酵から生じるガス、セメントプラントもしくは製鉄所プラントからの流出物からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−201422(P2010−201422A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47911(P2010−47911)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】