説明

月経前症候群および月経前不快気分障害の処置のためのピンドロール

本発明によれば、ピンドロールはPMS及び/又はPMDDの高度に有効な処置を可能にすることがわかった。即ち本発明は一般的にPMS又はそれに関連する症状、例えば月経前緊張又は月経前不快気分を処置及び/又は予防するための方法及び組成物に関する。本発明の方法及び組成物はまた既知の避妊薬と組み合わせて既知のベータアドレナリンブロッカーであるピンドロールの使用を包含する。本発明は、月経前症候群(PMS)及びそれに関連する症状の処置及び/又は予防のための医薬の製造における、ラセミ体ピンドロール又はエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択されるピンドロール化合物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2004年9月17日に出願された米国仮特許出願第60/610,610号;2005年2月23日に出願された米国仮特許出願第60/654,943号;2005年6月1日に出願された米国仮特許出願第60/686,718号の出願日の利益を主張する。これらの各々は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は月経前症候群又は後期黄体期障害及び関連の障害の処置のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
月経前症候群(PMS)又は黄体期後期精神症状(LLPDD)はその他の面では健康である女性における月経の一般的合併症である。月経前症候群は感情面及び身体的な症状の両方を特徴とする。感情面は特に感情の不安定性、抑鬱気分、興奮、嗜眠および他の特徴を包含し、身体的特徴は鼓腸及び胸部圧痛を包含する場合が多い。
【0004】
PMSに対しては、現在のところ僅かに限られた治療法しかない。関連する、そしてより重篤な精神障害である月経前不快気分障害(PMDD)は、現在では選択的セロトニン再取り込み抑制剤(SSRI)、例えばフルオキセチン及びセルトラリンの使用により処置されている。これらの薬剤は黄体期の投与によりPMDDにおいてある程度の薬効を示している(非特許文献1)。しかしながらSSRIは、このスペクトルの最も重度の端部においては効果的であるが、極めて魅力的な解決法ではない。SSRIは典型的には嘔気及び性的機能不全のような多くの患者にとって許容できない顕著な副作用を有する。更に又、SSRIは1つの形態の精神病治療であるという事実が処置を受け入れる際に多くの女性にとって、特にPMDD患者よりも病状が軽い者にとって、回避要因となっている。即ち、PMS及びPMDDの症状の処置において効果的であり、十分な耐容性を有し、そして更に好ましくは既存の精神病薬の新しい適応症処置とならない処置方法が必要とされていることは明らかである。
【0005】
より詳細には、PMSにおけるSSRIの15の「高品質」試験の系統的検討が評価されており、著者はSSRIは重度のPMSの第1の選択肢となる処置法として機能すると結論している。このクラスの薬剤は挙動(興奮、不安、抑鬱等)並びに身体的症状(胸部圧痛等)の両方を処置している。連続投与と間歇的投与の間には症状の低減において有意差がないことも検知している。しかしながら、このクラスの薬剤は副作用を回避することができず、そして、プラセボ群と比較した場合に活性物質投与群において副作用が2.5倍高確率であることから処置法から脱落している。最も一般的な副作用は嘔気、不眠、口渇、眩暈及び胃腸障害、例えば下痢、便秘及び膨満感であった。しかしながら、その有効性はPMSにおける5HTの中枢的及び不可欠の関与を示している。
【0006】
PMS関連の症状を処置するために使用できる他の市販薬は多数存在し、例えば漢方薬、カルシウム補給剤及び待宵草油等が挙げられる。生活習慣の変化、例えば炭水化物の規則正しい摂取、規則正しい運動及びアルコール、カフェイン及び飽和脂肪酸の減量が症状を改善させることが示唆されている。プロゲステロン及びプロゲストゲンはPMSの処置のために使用されているが、14の二重盲検のメタアナリシスによれば、プラセボと処置薬の間に臨床的な有意差は発見されなかった(非特許文献2)。ゴナドレリン類縁体は幾つかの小規模の試験においてPMSの症状を緩解させているが、そのエストロゲン低下性の副作用(顔面紅潮及び骨粗鬆症)及び高価格のためにその使用が限定されている。
【0007】
レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系の関与もまたPMSの要因として示唆されており、ベータブロッカー薬のアテノロールの使用がPMSの試験において検討されている(非特許文献3)。アテノロールは試験した被験体において興奮、活力、気分高揚及び親密性の評点の有意な改善を誘導したが、幾つかの他の尺度に関しては有意な改善が観察されず、アテノロールは特定の症状のみ処置することを示していた。
【0008】
更に又、ベータ2−アドレナリン作用性受容体の役割がPMDD患者の小規模サンプル(n=18)において検討されており、異常なベータ2−アドレナリン受容体調節を示すデータが得られている(非特許文献4)。抗欝剤は幾つかの試験においてベータアドレナリン受容体の密度をダウンレギュレートし、そして、G蛋白アデニルサイクラーゼ系から受容体を脱カップリングさせることがわかっている。Gurguins等は対照に対してPMDD患者でベータアドレナリン作用性受容体の密度がより高値であることを示している。
【0009】
経口避妊薬がPMS及びPMDDの症状の処置において、又は一部の症状に対して有用であるかどうかについては、矛盾する証拠が存在する。一部の女性は経口避妊薬使用中に気分が悪化することを報告している。しかしながら、一部の危険因子がOC関連気分悪化に関連していることがわかっている。これらには抑鬱の病歴、月経障害、月経前抑鬱、エストロゲン及びプロゲスチンの高用量、3相性製剤の使用並びにOC関連気分変化の家族歴が包含される。MillerとJoffeは少なくとも3ヶ月OCを使用したことのある658人の女性のアンケート調査においてOCの使用の危険因子及び利益を評価している。女性の71.4%では気分変化は報告されておらず;16.3%が気分悪化を報告したのに対し、12.3%は気分の改善を報告している。早期に発症した月経前気分障害及び月経障害の病歴を有する女性はOC服用中に改善された月経前気分を有する傾向がより高かった(非特許文献5)。
【0010】
最近、エチニルエストラジオール及びドロスピレノンを含有する新しい避妊薬が導入された(商標名「Yasmin」)。ドロスピレノンは抗鉱質コルチコイド及び抗アンドロゲン特性を有するスピリノラクトン類縁体である。これはPMSにおいて試験されている。ベースライン及び第6月経周期における326人の女性における非盲検の試験によれば否定的感情及び水分貯留においてベースライン値からの統計学的に有意な低下が観察された(非特許文献6)。
【0011】
PMS及びPMDDを有する261人の女性のサンプルに対するYasminを用いた二重盲検プラセボコントロール試験も実施されている。PMDDの基準も満たしたこのPMS群の82人の女性のうち、42人はドロスピレノン/EE処置の支配下にあった。因子1(気分)の分析によれば、能動的処置は良好な応答をもたらしたが統計学的な有意性には至らなかった。統計学的有意性は3項目、即ち食欲増進、食物渇望及び座瘡において達成された。
【0012】
これらの試験にも関わらず、PMS及びPMDDの処置の向上した方法がなお求められている。
【非特許文献1】Freeman EW.Luteal Phase administration of agents for the treatment of premenstrual dysphoric disorder,CNS Drugs 2004:18(7):452−68
【非特許文献2】Wyatt et al.,Efficacy of progesterone and prostogen in the management of premenstrual syndrome:systemic review,BMJ,2001:323:776−83
【非特許文献3】Rausch,JL,J.Affect Disorder,1988,Sept−Oct:15(2):141−7
【非特許文献4】Gurguis et al.,Psychiatry Res,1998,June2:79(1):31−42
【非特許文献5】Miller,KE and Joffe H,Am J Obstet Gynecol,Dec 2003;189:1523−30
【非特許文献6】Parsey et al.,Contraception,2000,61:105−111
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ピンドロールは、ラセミ混合物(R/S)として、又はS−(−)−エナンチオマーの形態において投与された場合に、月経前症候群(PMS)及びそれに関連する症状、例えば月経前緊張及び/又は月経前不快気分障害(PMDD)の効果的な処置及び/又は予防法であることが発見された。
【0014】
即ち、本発明の1つの特徴は、本発明のピンドロール化合物少なくとも1つの治療有効量を含む組成物を、それを必要とする被験体に、好ましくは月経周期の黄体期の間に投与することを含む月経前症候群(PMS)を処置及び/又は予防するための方法に関する。
【0015】
本発明によれば、ピンドロールは、S−(−)−ピンドロールの形態でヒトに投与された場合に、ラセミ体ピンドロールよりも血圧低下に対する低減された作用を有することが発見された。5HT1a部位において活性であり、そして低減された血圧効果作用を有するこのような薬学的組成物は多くの状態の処置において有用である。
【0016】
本発明によれば、マイナスピンドロールを心臓血管的見地から健康である被験体に投与した場合にラセミ混合物を投与した場合よりもこのようなはるかに高用量に耐容性が示され得ることが発見された。例えばS−(−)−ピンドロール10mgは健常被験体の大部分において血圧に変化をもたらさなかった。これとは明らかに対照的に、10mgの用量のピンドロールのラセミ混合物は拡張期血圧の決定的な低下をもたらした。この所見は予測できなかったことであり、出版されている文献においても推測されていなかった。
【0017】
本発明の1つの別の特徴は、S−(−)−ピンドロールの治療有効量を含む組成物を、それを必要とする被験体に、好ましくは月経周期の黄体期の間に投与することを含む月経前症候群(PMS)を処置及び/又は予防するための方法に関する。
【0018】
本発明の更に別の特徴において、経口避妊薬とピンドロールの組み合わせが避妊を必要又は所望とする女性におけるPMS及びPMDDの症状の高度に効果的な処置法を提供することがわかった。いかなる特定の作用機序にも制約されないが、経口避妊薬及びCNS活性薬剤ピンドロールの添加は相加的な態様において作用することにより、PMS及びPMDDの身体的及び精神的な症状及び特に最も困難な感情及び認知の症状の高度に有効な緩解がもたらされる。これらの薬剤を服用している女性はCOPE(Calender of Premenstrual Event)により測定した場合、情動上の不安定さ、緊張、不安及び集中困難において顕著な改善を示した。これらの薬剤を服用している女性はまた鼓腸、胸部圧痛、頭痛及び食物渇望のような他の症状においても改善を示した。
【0019】
即ち、1つの実施形態において、本発明は例えば1日1回ピンドロール又はS−ピンドロールと組み合わせた1相性、2相性又は3相性の経口避妊薬を開示する。最適の利点は、連続28日間の周期に対してピンドロール成分を使用することにより得られ、即ち、本明細書に記載する通り、通常の7日避妊薬プラセボをピンドロール又はS−ピンドロールと組み合わせる。
【0020】
本発明の別の特徴において、薬学的に受容可能な賦形剤1つ以上とともに本発明のピンドロール化合物少なくとも1つの治療有効量を含む薬学的組成物が提供される。ピンドロール化合物はラセミ体又はエナンチオマー的に純粋な形態であることができる。
【0021】
本発明のこれら及び他の特徴は当業者には自明となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明によれば、5HT1a受容体及びベータアドレナリン受容体の両方において作用を複合化させる化合物は月経前症候群(PMS)の広範な症状の緩解において最適相乗作用を有することになることが発見された。この点に関し、上記した通り、PMDDにおけるSSRIの有用性及び他の証拠はPMS及びPMDDにおけるセロトニン作用不全を示唆している。
【0023】
即ち、本発明は一般的にPMS又はそれに関連する症状、例えば月経前緊張又は月経前不快気分を処置及び/又は予防するための方法及び組成物に関する。本発明の方法及び組成物はピンドロール、即ち既知のベータアドレナリンブロッカーの使用を包含する。
【0024】
PMSにおける5HT1a受容体の関与は本明細書の主要な共同発明者(Ted Dinan教授)により示唆されている。データは5HT1a受容体は月経前の数日において漸増的に感受性となることを示している。この過敏性は性ステロイド濃度の変動に二次的なものである可能性がほとんどである。バックグラウンドとして、Dinan教授は既存の薬剤の新しい使用が新しく認可された特許又は特許出願の要件である他の発明において同様の手法を以前に用いている。例えば、Dinan教授は以前に、ピンドロールは慢性疲労症候群及び線維性筋肉痛の処置においても有用であることを示している(米国特許6,855,729)。米国特許6,855,729及び本発明は各々の場合に使用される薬剤、ピンドロール又はS−ピンドロールが同じである点において関連している。更に、米国特許5,403,848は非潰瘍性消化不良におけるピンドロール又はS−ピンドロールの使用を記載している。
【0025】
更に又、ある範囲の精神病の共存症との関連でPMS及びPMDDは生じる場合が多いことが明らかである。PMS及びPMDDは著明なうつ病、循環気質、不安、例えば全般性不安障害及び慢性疲労症候群に関連して起こる場合がある。更に又、PMS及びPMDD患者はまた身体的症状、例えば過敏性腸症候群、慢性疲労、線維性筋肉痛、頭痛、疼痛症候群、他の泌尿器科の問題又は精神性的な問題及び睡眠障害を示す場合もある。
【0026】
近年、本質的には複数各種の身体的愁訴の長期の病歴が関与する未知起源の精神症状の形態である「身体化障害」の領域に多大な関心が寄せられている。DMS−IVに包含される身体化障害の診断基準が存在し、これらには30歳以前に始まる長年に亘る身体的愁訴;異なる部位における少なくとも4種の疼痛症状;嘔気又は鼓腸のような2種の胃腸症状;勃起不全又は生理不順のような1種の性的又は生殖的症状及び1種の擬似神経学的症状が包含される。
【0027】
一部のPMS/PMDD患者はこの範疇に属し、そしてIBS及び慢性疲労症候群/線維性筋肉痛に罹患した患者と重複することは明らかである。本発明はPMS及びPMDD患者を主に指向しているが、PMS/PMDD及び身体化障害、IBS、慢性疲労症候群及び/又は線維性筋肉痛に同時罹患していると診断された患者も包含する。
【0028】
A.本発明の化合物
本発明の化合物はラセミ(R/S)体又はS−(−)−エナンチオマー的に純粋な形態のピンドロールを包含する。本明細書においては、「エナンチオマー的に純粋」とは単一の異性体より本質的になる(即ち対になる異性体を実質的に含まない)、好ましくは単一の異性体90%、92%、95%、98%、99%又は100%よりなる組成物を指す。好ましい実施形態においてはエナンチオマー的に純粋な組成物は単一の異性体少なくとも95%を含む。別の好ましい実施形態においては、エナンチオマー的に純粋な組成物は単一の異性体少なくとも98%を含む。ピンドロールの化学構造は下記式(I)に示す通りであり、そしてS異性体は図(Ia)に示す。本明細書においては、S−(−)−エナンチオマーピンドロール、S−ピンドロール、マイナス−ピンドロール、(−)ピンドロール等は互換的に使用する。
【0029】
【化1】

ピンドロールはマイナスエナンチオマー及びプラスエナンチオマーの両方よりなるラセミ混合物である。ある範囲のベータブロッカーのエナンチオマーの立体選択性は薬物動態及び薬力学の両方に関して研究されている。しかしながら今日まで、全て又は殆ど全ての試験が動物から得たデータを報告している。ヒトにおいて実施されたものとしての試験はラセミ体の投与後のエナンチオマーの薬物動態の測定を包含する(例えば評論誌中で報告されたもの:Mehvar et al.,J.Pharm Pharmaceut Sci,2001,4(2):185−200)。このような試験はAUC、Cmax及びt1/2時間のような薬物動態パラメーターの領域における(−)と(+)ピンドロールの間の僅かな差を示している。
【0030】
一般的に、このクラスの薬剤の心臓ベータブロッキング活性はそのS(−)エナンチオマーに存在する。しかしながら、このような試験は今日まで動物データに基づくものであった。即ち、ピンドロールについてはモルモットにおけるベータ−1及びベータ−2受容体のブロッキングにおいて(−)エナンチオマーが(+)エナンチオマーに対し200:1の選択性を有する報告されている(Jepsson,AB,et al.,Acta Pharmacol Toxicol,1984,54:285−91)。
【0031】
しかしながら、これらのエナンチオマーの活性においては明確な種の相違がある。げっ歯類とヒトのベータアドレナリン受容体機能の比較は現時点においては殆ど理解されていない。このような種の相違に関するあるヒントがやはり5HT1aに関する一部の以前の試験において明らかになっている。例えばGricbel, et al.,J Neuropharmacogy,2000 Jul 24:39(10):1848−57は不安試験におけるマウスとラットの応答の相違を発見しており、5HT1a受容体機能の種の相違の問題であると考えている。ラットにおいては、マイナスエナンチオマーは5HT1a及びベータブロッキング能力の両方を有すること考えられるのに対し、ヒトにおいては本発明者等の試験はノルアドレナリン作用性の活性よりもむしろより大きい5HT1aを示唆している。
【0032】
上記した通り、ピンドロールは既知のベータアドレナリンブロッカーであり、そしてラセミ体又はエナンチオマー的に純粋な形態におけるその製造及び合成は当該分野で知られている。ピンドロールは5HT1a及びベータアドレナリン作用性の部位の両方において有効であることがわかっている。理論に制約されないが、ピンドロールはその生物学的特性を主にそのS−(−)エナンチオマーを介して示すと考えられている。この点に関し、ラットにおいては、S及びRピンドロールの示差的な組織内分布が観察されており、S/R比は脳の1.74もの高値から血漿の0.82もの低値まで変動しており、即ち、ラットにおいて血液脳関門を通過するS(−)ピンドロールの立体選択的輸送を示唆している(Hongmei Yan,et al.,European Neuropharmacology,1999,Dec:10(1):59−62)。
【0033】
バックグラウンドとして、ピンドロールは抗欝剤のための強化手段として広範に試験されているのに対し、結果は今日まで混濁している。これらの試験は使用されているピンドロールの用量が5HT1aの自己受容体遮断を起こすためには低値過ぎたことを示している最近のPET試験を参考にしながら再評価されている(Rabiner Eugenii A et al.,Am J Psychiatry,2001,158:2080−2082)。ヒトの試験において、ピンドロール2.5mg(以前のSRRI試験のほぼ全てにおいて使用されている用量)の使用は5HT1a受容体のいかなる有意な占有も起こさなかったのに対し、5.0mgは中等度であるが有意な占有19%をもたらしたことが分かった。効果的なSSRI強化のために必要な用量は未知とされている。
【0034】
更に本発明の範囲内に包含されるものは、本明細書に記載したピンドロール化合物のインビボの代謝産物である。このような産物は主に酵素的過程による例えば酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化等に起因する。従って、本発明は本発明のピンドロール化合物を、その代謝産物が生じるのに十分な時間、哺乳類組織又は哺乳類と接触させることを含む方法により製造された化合物を包含する。そのような産物は典型的には本発明の放射標識(例えばC14又はH)ピンドロール化合物を製造すること、それを検出可能な用量において(例えば約0.5mg/kg超)ラット、マウス、モルモット、サル又はヒトのような哺乳類に投与すること、代謝が起こるために十分な時間を設けること(典型的には約30秒〜30時間)、及び、尿、血液、腫瘍又は他の生物学的試料からその変換生成物を単離することにより発見される。これらの生成物は、それらが標識されているため容易に単離される(他のものは代謝産物中に存続しているエピトープに結合することができる抗体の使用により単離される)。代謝産物の構造は従来の態様において、例えばMS又はNMR分析により測定される。一般的に、代謝産物の分析は当該分野でよく知られている従来の薬剤代謝の試験と同様に行ってよい。変換生成物は、それらが別の態様においてはインビボで存在しない限り、それら自体が生物学的活性を保有していない場合であっても、本発明の化合物の治療投与のための診断試験において有用である。
【0035】
B.本発明の方法
本発明によれば、ピンドロールはラセミ混合物(R/S)として、又はS−(−)−エナンチオマーの形態において投与された場合に、PMS及びそれに関連する症状、例えば月経前緊張及び/又は月経前不快気分障害の効果的な処置及び/又は予防法であることが発見された。
【0036】
即ち、本発明の1つの特徴は、本発明のピンドロール化合物少なくとも1つの治療有効量を含む組成物を、それを必要とする被験体に、好ましくは月経周期の黄体期の間に投与することを含む月経前症候群(PMS)を処置及び/又は予防するための方法に関する。
【0037】
本発明の別の特徴によれば、ピンドロールは、S−(−)−ピンドロールの形態でヒトに投与された場合に、ラセミ体ピンドロールの血圧低下作用が望ましくない新しい適応症の多くの処置及び/又は予防において有効であることが発見された。
【0038】
上記した通り、ピンドロールは既知のベータアドレナリンブロッカーであり、そしてラセミ体又はエナンチオマー的に純粋な形態におけるその製造及び合成は当該分野で知られている。ピンドロールは5HT1a及びベータアドレナリン作用性の部位の両方において有効であることがわかっている。理論に制約されないが、ピンドロールはその生物学的特性を主にそのS−(−)エナンチオマーを介して示すと考えられている。この点に関し、ラットにおいては、S及びRピンドロールの示差的な組織内分布が観察されており、S/R比は脳の1.74もの高値から血漿の0.82もの低値まで変動しており、即ち、ラットにおいて血液脳関門を通過するS(−)ピンドロールの立体選択的輸送を示唆している(Hongmei Yan,et al.,European Neuropharmacology,1999,Dec:10(1):59−62)。
【0039】
作用機序の如何なる1つの理論にも制約されないが、本明細書に記載したデータから、S−(−)ピンドロールはベータ−1及びベータ−2受容体のその拮抗に関連してヒトにおいて種特異的な態様において作用していると考えられる。いずれの場合にも、本発明によれば、血圧に対する作用はラセミ体と比較した場合にピンドロールのS−(−)エナンチオマーを用いれば低値となることが意外にもわかった。
【0040】
即ち、本発明の1つの特徴は、S−(−)−ピンドロールの治療有効量を含む組成物を、それを必要とする被験体に、好ましくは月経周期の黄体期の間に投与することを含む月経前症候群(PMS)を処置及び/又は予防するための方法に関する。
【0041】
本発明は避妊を必要又は所望とする女性における月経前症候群の症状を処置するための1日1回経口避妊薬と組み合わせたピンドロールの1日1回服用型を提供する。
【0042】
即ち、本発明の1つの特徴は、避妊薬とともに、避妊を所望している被験体にPMS又はPMDDを処置及び/又は予防するために有効なある量の本発明のピンドロール化合物少なくとも1つ以上を含む組成物を投与することを含む、避妊を所望している被験体におけるPMS及び/又はPMDDを処置及び/又は予防するための方法に関する。ピンドロール化合物は月経周期を通じて投与してよく、又は、月経周期の黄体期の間に投与してよい。更に又、ピンドロール化合物及び避妊薬は単一の固定された用量の組成物として投与してよく、又は、別個の組成物として逐次的に投与してよい。
【0043】
即ち、1つの特徴において、ラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールの何れかと組み合わせた1相性、2相性又は3相性の経口避妊薬の投与を提供する。1つの実施形態において、ピンドロール成分は連続28日間の周期に対して投与してよく、その場合、本明細書に記載する通り、通常の7日避妊薬プラセボをラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールと組み合わせる。
【0044】
別の特徴において、本発明は心臓血管事象の増大したリスクを有し、経口避妊薬、経皮「パッチ」避妊薬などのような避妊を所望している被験体により利用されてよい複合療法を提供する。本明細書に記載する通り、方法によりもたらされる血圧の僅かな低下はこの集団における危険因子の有用な低下をもたらす。
【0045】
1つの実施形態において、本発明は避妊を所望とする女性におけるPMS又はPMDDの症状を処置するための1日1回経口避妊薬との固定用量複合物におけるピンドロールの1日1回投与を用いる。別の実施形態においては本発明は抗鉱質コルチコイド特性を有するピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回服用型を包含する。
【0046】
別の実施形態においては本発明はエストロゲン又はその類縁体及びプロゲスチンを含む経口避妊薬と組み合わせたラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回投与を包含する。ラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールは全周期を通じて投与してよい。別の実施形態においては、本発明は唯一の避妊薬としてのプロゲスチンと組み合わせたラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回服用型を包含する。
【0047】
別の実施形態においては、ピンドロールは経皮パッチ又はインプラントとして避妊薬と組み合わせて投与してよい。
【0048】
1つの実施形態においては、本発明はエストロゲン又はその類縁体及びプロゲスチンを含有する複合経口避妊薬と組み合わせたラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回投与を包含する。ピンドロール又はS−ピンドロールは全周期を通じて投与してよい。
【0049】
別の実施形態においては、本発明は唯一の避妊薬としてのプロゲスチンと組み合わせたラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回服用型を包含する。
【0050】
別の実施形態においては本発明は抗鉱質コルチコイド特性を有するピンドロール又はS−ピンドロールの1日1回服用型を包含する。
【0051】
更に別の実施形態においては、複合薬は閉経後の症状の処置において有用である。ドロスピレノン+エチニルエストラジオール+ピンドロール又はS−ピンドロールのいずれかの複合物は、性ホルモン離脱現象に関連した顔面紅潮の処置をもたらし、ピンドロールに起因する血圧の僅かな低下はこの集団における心臓血管系リスクを低下させる。ピンドロール又はS−ピンドロールのCNS作用も追加的にこの群における不安の処置をもたらす。
【0052】
更に別の特徴において、本発明は閉経周辺期間、閉経時及び閉経後の期間における女性により効果的に利用されて良い複合療法を提供する。PMSは発熱感及び抑鬱を包含する困難な閉経周辺期間、閉経時及び閉経後の症状の予測材料である。
【0053】
即ち、本発明の更に別の実施形態において、複合療法は閉経周辺期間、閉経時及び閉経後の症状の処置において有用である。例示すれば、ラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールのいずれかと組み合わせたドロスピレノン及びエチニルエストラジオールは性ステロイドの離脱現象に関連する顔面紅潮の処置を提供する。更にまた、ピンドロールに起因する血圧の僅かな低下はこの集団における心臓血管系リスクを低下させる。ラセミ体ピンドロール又はS−ピンドロールのCNS作用も追加的にこの群における不安の処置をもたらす。
【0054】
本発明の別の特徴はPMS又はPMDD及び他の精神的又は身体的な共存症を呈する患者の処置における本発明の薬剤の使用に関する。以前の発明に基づけば、本発明の薬剤は不安、慢性疲労症候群、線維性筋肉痛又はPMS又はPMDDに関連する他の疼痛症候群に罹患した患者の処置において有用である。更に又、本発明の薬剤は身体化障害におけるPMS又はPMDDの二重診断を有する患者の処置において使用してよい。
【0055】
本発明の方法によれば、化合物は当該分野で知られた何れかの薬剤送達経路を介して被験体に投与してよい。特定の例示される投与経路は末梢及び中枢経路、例えば経口、眼内、直腸、口内、局所、鼻内、眼科用、皮下、筋肉内、静脈内(瞬時又は注入)、脳内、経皮及び肺内投与を包含する。好ましい実施形態においては、組成物は当該分野で知られた方法を用いて経皮パッチとして投与される。
【0056】
「治療有効量」及び「予防有効量」という用語は本明細書においては、発見された疾患又は状態を処置、緩和又は予防するか、又は、検知可能な施療又は抑制作用を示すための医薬の量を指す。作用は当該分野で知られた何れかの手段により検知できる。被験体に対する厳密な有効量は被験体の体重、大きさ及び健康状態;状態の性質及び程度;及び投与のために選択された治療薬又は治療薬の組み合わせに依存する。所定の状況に対する治療有効量は医師の技能及び判断の範囲内の日常的実験により決定できる。
【0057】
より詳細には、本発明の化合物の好ましい治療有効量は約5μg/ml〜約100μg/ml、好ましくは約10μg/ml〜約50μg/ml、更に好ましくは約10μg/ml〜約25μg/mlの範囲の初期標的血漿中濃度を包含する。このような結晶中濃度を達成するためには、本発明の化合物は投与経路に応じて0.1μg〜100,000mgに変化する用量において投与してよい。特定の投薬量及び送達の方法の指針は文献に記載されており、当該分野の専門家が一般的に入手できるものである。一般的に、用量は約40〜約100kgの体重の患者に対して、単回、分割又は連続用量において、約0.1mg/日〜約10g/日、又は約0.5mg〜約3g/日、又は約1mg〜約3g/日、又は約1mg〜約50g/日、又は約2mg/日〜約25mg/日の範囲である(この用量はこの体重範囲を超過するか満たない患者、特に40kg未満の小児に対しては調節してよい)。
【0058】
厳密な用量は処置を必要とする被験体及び使用するピンドロール化合物の形態(例えばラセミ又はS−(−)エナンチオマー形態)に関する要因を鑑みながら専門家により決定される。用量及び投与は活性物質の十分な濃度を提供するため、及び、所望の作用を維持するために調節される。投薬量はピンドロール化合物がラセミ混合物として投与されるか又はS−(−)エナンチオマー的に純粋な形態として投与されるかにより調節してよい。上記したとおり、ピンドロールのS−(−)−エナンチオマーがピンドロールの生物学的活性の主因であると考えられている。即ち、エナンチオマー的に純粋な組成物を使用する場合は、用量は一般的にラセミ混合物を使用する場合よりも低値となる。考慮すべき他の要因は疾患状態の重症度、被験体の全身健康状態、被験体の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性及び耐容性/治療への応答を包含する。長時間作用性の薬学的組成物は特定の製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて3日又は4日毎、毎週、又は2週毎に1回投与してよい。
【0059】
C.本発明の薬学的組成物
本発明の更に別の特徴において、本発明の方法において有用な薬学的組成物が提供される。本発明の薬学的組成物は投与の特定の様式及び剤型に応じて担体、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤等のような薬学的に受容可能な賦形剤とともに製剤してよい。薬学的組成物は一般的に生理学的に適合性のあるpHを達成するように製剤しなければならず、そして製剤及び投与経路に応じて約3のpHから約11のpH、好ましくは約pH3〜約pH7の範囲であってよい。別の実施形態においては、pHは約pH5.0〜約pH8.0の範囲に調節する。
【0060】
より詳細には、本発明の薬学的組成物は本発明のピンドロール化合物少なくとも1つの治療有効量を1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とともに含む。例えば、薬学的組成物を内服用の錠剤として製剤する場合は、組成物は好ましくはピンドロール化合物約0.1mg〜約25mg、より好ましくは約5mg〜約25mgを含む。上記した通りピンドロール化合物の厳密な量は使用するピンドロール化合物の形態(例えばラセミ体又はエナンチオマー)により変動してよい。
【0061】
場合により本発明の薬学的組成物は本発明のピンドロール化合物の複合物を含んでよく、又は、PMS又は関連の症状の処置において有用な第2の治療薬を包含してよい。第2の薬剤の治療上の量は当該分野で一般的に知られたものであるか、又は、専門医師が決定してよい。
【0062】
別の実施形態においては、本発明の薬学的組成物は当該分野で知られる通り避妊薬を含んでよい。例えば、組成物は1相性、2相性又は3相性の避妊薬、例えばエストロゲン又はその類縁体及びプロゲスチンを含んでよく、或いはプロゲスチンのみを含んでよい。或いは、組成物は閉経周辺期間、閉経時又は閉経後の症状の処置に有用な治療薬、例えばドロスピレノン及びエチニルエストラジオールを含んでよい。
【0063】
本発明の製剤、例えば非経腸投与又は経口投与用のものは、最も典型的には、固体、液体、溶液、乳液又は懸濁液であるが、肺投与用の吸入可能な製剤は一般的には液体又は粉末であり、ここで粉末製剤が一般的に好ましい。本発明の代替の薬学的組成物はシロップ、クリーム、軟膏、錠剤等として製剤してよい。
【0064】
「薬学的に受容可能な賦形剤」という用語は本発明の化合物のような医薬の投与のための賦形剤を指す。用語は不適切な毒性を伴うことなく投与してよい如何なる薬品用賦形剤も指すものとする。薬学的に受容可能な賦形剤は部分的には投与される特定の組成物により、並びに、組成物を投与するために使用される特定の方法により決定される。従って、本発明の薬学的組成物の適当な製剤の広範な種類が存在する(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences参照)。
【0065】
適当な賦形剤は大型の緩徐に代謝される巨大分子、例えば蛋白、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体アミノ酸、アミノ酸共重合体および不活性のウィルス粒子を包含する担体分子であってよい。他の例示される賦形剤は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;キレート系製剤、例えばEDTA;炭水化物、例えばデキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸;液体、例えば油状物、水、食塩水、グリセロール及びエタノール;水和又は乳化剤;pH緩衝物質等を包含する。リポソームもまた薬学的に受容可能な賦形剤の定義に包含される。
【0066】
本発明の薬学的組成物は投与の意図する方法に適する何れかの形態に製剤してよい。例えば経口用途を意図する場合は、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、非水性溶液、分散性の粉末又は顆粒(ミクロ化粒子又はナノ粒子)、乳液、ハード又はソフトカプセル、シロップ又はエリキシルを製造してよい。経口用途を意図する組成物は薬学的組成物の製造に関する当該分野で知られた何れかの方法にしたがって製造してよく、そして、そのような組成物は、服薬しやすい製剤を提供するために、甘味剤、フレーバー剤、着色料及び保存料を包含する1つ以上の物質を含有してよい。
【0067】
錠剤に関わる用途に特に適する薬学的に受容可能な賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えばセルロース、カルシウム又はナトリウムの炭酸塩、乳糖、カルシウム又はナトリウムのリン酸塩、錠剤崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、交差結合ポビドン、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばポビドン、澱粉、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクを包含する。錠剤は未コーティングとするか、又は、知られた手法により、例えば胃腸管内の崩壊及び吸収を遅延させることにより長時間に亘る持続作用をもたらすマイクロカプセル化によりコーティングしてよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートのような時間遅延物質を単独又はワックスとともに使用してよい。
【0068】
経口用の製剤はまた活性成分を不活性の固体希釈剤、例えばセルロース、乳糖、リン酸カルシウム又はカオリンと混合するハードゼラチンカプセルとして、又は、活性成分を非水性又は油性の媒体、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ピーナツ油、流動パラフィン又はオリーブ油と混合するソフトゼラチンカプセルとして提供してもよい。
【0069】
別の実施形態においては、本発明の薬学的組成物は懸濁液の製造に適する薬学的に受容可能な賦形剤少なくとも1つとの混合物として本発明の化合物を含む懸濁液として製剤してよい。別の実施形態においては、本発明の薬学的組成物は適当な賦形剤を添加することにより懸濁液の製造に適する分散性粉末および顆粒として製剤してよい。
【0070】
懸濁液に関連した使用に適する賦形剤は、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アカシアガム、分散剤又は水和剤、例えば天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドの脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導した部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート);及び増粘剤、例えばカーボマー、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを包含する。また、懸濁液は、1つ以上の保存料、例えば酢酸、メチル及び/又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート;1つ以上の着色料;1つ以上のフレーバー剤;及び1つ以上の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンも含有してよい。
【0071】
本発明の薬学的組成物は水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は植物油、例えばオリーブ油又はアラキス油、鉱物油、例えば流動パラフィン又はこれらの混合物であってよい。適当な乳化剤は天然に存在するガム類、例えばアカシア及びトラガカントガム;天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸から誘導したエステル又は部分エステル;ヘキシトール無水物、例えばソルビタンモノオレエート;及びこれらの部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを包含する。エマルジョンは甘味料及びフレーバー剤も含有してよい。シロップ及びエリキシルは甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトール又はスクロースと共に製剤してよい。このような製剤はまた刺激軽減剤、保存料、フレーバー剤又は着色剤を含有してよい。
【0072】
D.複合療法
本発明の何れかのピンドロール化合物は、処置を要する患者への同時又は逐次的投与を意図した統合型剤型として、又は、別個の剤型として、PMS又はその関連症状の処置に有用な1つ以上の別の活性物質と組み合わせることが可能である。逐次的に投与される場合は、複合物は2回以上の投与において投与してよい。別の実施形態においては、本発明の化合物1つ以上及び別の活性成分1つ以上を異なる経路で投与することも可能である。
【0073】
当業者の知る通り、本発明のピンドロール化合物の活性を強化するか相乗作用的に増強する作用を有する種々の活性成分を本発明の化合物と組み合わせて投与してよい。
【0074】
本発明の方法によれば、活性成分の組み合わせは(1)複合製剤において同時製剤されて投与されるか、又は同時に送達されるか;(2)交互に、又は別個の製剤として並行して送達されるか、又は(3)当該分野で知られている何れかの他の複合療法により送達されてよい。交互療法において送達される場合は、本発明の方法は例えば別個の溶液、乳液、懸濁液、錠剤、丸薬又はカプセル中において、又は、別個のシリンジ中の異なる注射により、活性成分を逐次的に投与又は送達することを含んでよい。一般的に交互療法の間は、各活性成分の有効用量を逐次的、即ち順次投与するが、同時療法の場合は、2種以上の活性成分の有効用量を共に投与する。種々の順序の間歇的複合療法もまた使用してよい。
【0075】
本発明を理解しやすくするために、以下の実施例を記載する。本発明に関連する実験は当然ながら本発明を特に限定するものではなく、そして当業者の想到する範囲内にある発明のそのような変形例は、既知のもの及び後に開発されるものに関わらず、本明細書及び請求項に記載した本発明の範囲に属するものとする。
【実施例】
【0076】
本発明は本発明を更に十分に説明するために提示されたものであって、その範囲を限定するものではない以下の非限定的な実施例を参照しながら更に詳細に説明する。実施例は本発明の特定の化合物の製造及びこれらの化合物の試験を説明する。当業者の知る通り、これらの実施例に記載した手法は本発明の実施において良好に機能するように本発明者等により説明される手法を示しており、そしてそのまま、その実施のための好ましい様式を構成している。しかしながら、当業者の知る通り、本発明の開示を鑑みれば、開示した特定の方法は、本発明の精神及び範囲から外れることなく多くの変更が可能であり、そしてなお同様又は類似の結果が得られる。
【0077】
(実施例1)
PMSにおけるピンドロールの安全性、薬効及び耐容性を評価するための一重盲検パイロット試験を1試験施設において開始した。治験の目的は、(1)PMSの22の身体的及び「挙動上の」症状のダイアリーであるCalender of Premenstrual Experiencesにより測定した場合のPMS(月経前症候群)の症状を軽減することにおけるピンドロールの薬効を測定すること;(2)PMSにおけるピンドロールの耐容性を測定すること;(3)PMSにおけるピンドロールの安全性を測定すること;及び、(4)後の二重盲検治験において使用できるピンドロールの用量範囲を確立すること、であった。
【0078】
試験参加基準に合致する20被験体を採用した。スクリーニングの後、被験体を予測的ダイアリー(COPE、Calender of Premenstrual Events)を用いた1ヶ月の評価期間に付した。濾胞期及び黄体期の被験体のCOPE評点を計算することにより、黄体期後期精神症状の診断を行った。次に全被験体を一重盲検プラセボ投与期間に導入し、このサイクルの終了時における被験体の結果をそのベースライン評価として機能させた。次に被験体を次の3周期についてピンドロールを投与し、COPEを用いて評価した。3ヶ月の期間の間、応答を最適化するために、被験体に対し、15〜25mg/日からの用量の逐次的増量を、1か月おきに行った。耐容性の問題が生じた場合のために用量低減のための条件を設定した。被験体は自身が活性物質3ヶ月及びプラセボ1ヶ月を投与されていることは知っていたが、プラセボを投与されている時期は知らされなかった。一次的な結果の尺度は活性物質投与(ピンドロール)の3月経周期の後の黄体期総COPE評点におけるプラセボ期の終了時からの平均の変化とした。二次的な薬効の尺度は、黄体期の総COPE評点におけるプラセボ期の終了時からの平均の変化;黄体期身体的COPE症状におけるプラセボ期の終了時からの平均の変化;黄体期の挙動上の症状の終了時からの平均の変化;濾胞期の総COPE評点におけるプラセボ期の終了時からの平均の変化;3月経周期の各々におけるCGI改善評点を包含する。
【0079】
活性薬剤を投与した全患者において、総COPE評点の低下の減少が観察された。総COPE評点の有意な減少は15mg以上の用量を投与した患者において観察された。特に有意な減少は挙動上のCOPE評点において、そしてCGIの改善に関して観察された。薬剤は極めて良好な耐容性を示し、血圧の許容できない低下を理由とする試験中止症例は報告されなかった。
【0080】
(実施例2)
10人の健常男性ボランティアを1週間あけて2回の別個の機会に試験した。両方の機会において、その血圧をベースライン値として測定した。無作為に1回の機会にはピンドロール10mgを経口投与し、そしてもう1回の機会には(−)ピンドロール10mgを経口投与した。ピンドロール投与2時間以内に血圧の明確な低下が検知された。全被験体において(−)ピンドロール10mgは血圧の変化はもたらさなかった。
【0081】
(実施例3)
患者は月経前不快気分障害の長期病歴を有する26の歳女性であった。3ヶ月の処置は以下の通り、即ち、第1月:3相性の経口避妊薬;第2月:黄体期を通じて(−)ピンドロール5mg1日3回;第3月:黄体期に3相性ピル及び(−)ピンドロールの複合療法とした。
【0082】
各周期を通じて、毎日のダイアリーを用いて症状を文書化した。第1月においては、経口避妊薬は胸部圧痛のような身体的症状を低減した。第2月においては、(−)ピンドロールは気分の改善及び不安の低減に寄与した。最大の改善は身体的及び精神的な症状の両方の低下があった第3月に観察された。
【0083】
幾つかの実施例を記載したが、当業者の知る通り、本発明の精神から外れることなく種々の変形、代替的構成及び等価物を使用してよい。従って、上記記載は添付する請求項において定義される本発明の範囲を限定するものと見なしてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
月経前症候群(PMS)及びそれに関連する症状の処置及び/又は予防のための医薬の製造における、ラセミ体ピンドロール又はエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択される、ピンドロール化合物の、使用。
【請求項2】
PMSに関連する前記症状が黄体期後期精神症状(LLPDD)及び月経前不快気分障害(PMDD)よりなる群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記医薬が、月経周期の黄体期の間の処置及び/又は予防のためのものである、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記医薬が、エナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択されるピンドロールの治療有効量又は予防有効量を含み、該医薬の製造において使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記医薬が治療有効量又は予防有効量のラセミ体ピンドロールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記医薬が、約1〜約50mgの前記ピンドロール化合物と、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記医薬が、約2〜約50mgのラセミ体ピンドロールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記医薬が、約1〜約25mgのエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
避妊を望む被験体における月経前症候群(PMS)及びそれに関連する症状の処置及び/又は予防のための医薬の製造における、避妊薬と組み合わせた、ラセミ体ピンドロール又はエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択されるピンドロール化合物の、使用。
【請求項10】
PMS又はPMDDに罹患した被験体における避妊の作用を強化するための医薬の製造における、避妊薬と組み合わせた、ラセミ体ピンドロール又はエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択されるピンドロール化合物の、使用。
【請求項11】
閉経周辺期間、閉経時及び/又は閉経後の症状の処置又は予防を必要とする被験体における、閉経周辺期間、閉経時及び/又は閉経後の症状の処置又は予防のための医薬の製造における、避妊薬と組み合わせた、ラセミ体ピンドロール又はエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールから選択されるピンドロール化合物の、使用。
【請求項12】
前記医薬が、心臓血管事象の増大したリスクを有する被験体の処置のためのものであり、そして、該医薬が該被験体における血圧を低下させるために有効な量で該ピンドロール化合物を含む、請求項9〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記避妊薬が1相性、2相性又は3相性の経口避妊薬である、請求項9〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が、約1〜約50mgの前記ピンドロール化合物を含み、かつ該医薬は経口避妊薬の有効量をさらに含む、請求項9〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記ピンドロール化合物がエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールであり、そして前記医薬が約1〜25mgのS−(−)−ピンドロールを含む、請求項9〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記医薬が前記ピンドロール化合物及び前記避妊薬を含む単回固定用量組成物として製剤される、請求項9〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記医薬が前記ピンドロール化合物を含み、そして前記避妊薬が該医薬とは別個に投与される、請求項9〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記医薬が以下の共存症:慢性疲労症候群、線維性筋肉痛、他の慢性疼痛症候群及び/又は身体化障害、の1つ以上と診断された被験体における、PMS及びそれに関連する症状の処置のためのものである、請求項1〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
5HT1a受容体の超感受性の関与する状態または障害の処置及び/又は予防のための医薬の製造における、エナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールの使用であって、該医薬は、ある量のエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールを、該エナンチオマーがラセミ体ピンドロールよりも高用量において安全に投与されるように含んでいる、使用。
【請求項20】
前記状態又は障害が、閉経前症候群、線維性筋肉痛及び慢性疲労症候群から選択される、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記医薬が、約1〜約50mgのエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールと、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
エナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールの治療有効量又は予防有効量と、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項23】
前記組成物が、単回又は分割用量において投与された場合に、被験体に少なくとも約1mg〜約50mgを送達するような量のエナンチオマー的に純粋なS−(−)−ピンドロールを含む、請求項22記載の薬学的組成物。

【公表番号】特表2008−513430(P2008−513430A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531860(P2007−531860)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002769
【国際公開番号】WO2006/030306
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(507086192)ニューロキュア リミテッド (2)
【Fターム(参考)】