説明

有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造および誤挿入検出方法

【課題】有極部品のプリント基板実装に関し、より詳細には有極部品のプリント基板への実装時の誤挿入検出を可能とする構造およびその方法を提供する。
【解決手段】有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造は、特定の端子を所定の形状に成形した有極部品と所定の実装高さを有する導体から成るチェック端子とプリント基板とを備え、有極部品はプリント基板の所定位置に実装され、チェック端子は有極部品の特定の端子の成形部がチェック端子と接触する位置に実装され、有極部品の特定の端子とチェック端子にそれぞれ接続するランドまたはパッドを導通チェックによる誤挿入検出用測定パッドとする、よう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有極部品のプリント基板実装に関し、より詳細には有極部品のプリント基板への実装時の誤挿入を検出することを可能とする構造およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサやダイオードなどは電圧を印加する方向が定められており、有極部品と称されている。これらの有極部品はプリント基板への搭載において極性を間違えないよう外装に端子の極性を示す表示をしている。例えば、電解コンデンサでは外装に帯状の極性マークを印刷し、この極性マークに近い端子がマイナス極性の端子であることを示すことが一般に行なわれている。また、ダイオードの場合の極性マークは環状であり、この極性マークに近いリード線がカソードであることを示している。ICも有極部品の一つであり、例えばパッケージに「点」や「切欠き」を設けプリント基板への挿入方向を示すようにしている。これらの有極部品のプリント基板への搭載時には、極性マークに基づいて搭載方向を定めて端子をプリント基板に挿入することになる。
【0003】
部品搭載後のプリント基板は、通電動作確認前に部品定数確認のためインピーダンス測定を行なうことが一般的に行なわれている。このインピーダンス測定は、プリント基板の端子やランドからインピーダンスを測定し、異なった値の部品を搭載していないかどうかをチェックするものであるが、測定した回路に逆実装の有極部品が含まれるとインピーダンス値が設計値と異なり、誤挿入も検出できる。また、同じ目的で、目視によりプリント基板に挿入された部品をチェックすることも行なわれており、この場合はプリント基板上にシルク印刷した極性を表す文字や記号を見て、そこに搭載された部品の部品定数を確認し、さらにその部品が有極部品である場合には極性マークで示される端子が正しく挿入さているかどうかを調べる。図5は従来技術により有極部品をプリント基板30に搭載した例を示しており、例えばプリント基板30の左側に搭載した部品は電解コンデンサ10を有極部品として示したものであり、外装に印刷された帯状のマークが極性マーク11で、この極性マーク11に近い端子(リード線)12がマイナスの極性を持った端子である。また、右側に搭載した部品はダイオード20の例を示しており、環状のマークが極性マーク21である。この極性マーク21に近い端子23がカソードである。目視チェックはこのような極性マークの付いた端子が正しい方向に挿入され搭載されているかを調べる。
【0004】
有極部品のプリント基板への挿入を間違いなく行なう方法として、有極部品の1つのリードに誤挿入防止用の屈曲部を形成し、このリードに対応するプリント基板の取付孔をリードの屈曲部が通過するように長孔として形成しておく。極性を間違えて有極部品をプリント基板に挿入しょうとしても屈曲部が孔を通過できず誤挿入を防ぐことができる提案である(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−251712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に示したように、プリント基板への部品搭載後にインピーダンス測定を行い、有極部品の誤挿入を検出することが行なわれている。しかし、逆実装された電解コンデンサのインピーダンスは正実装されたものと大きな差が得られない場合があることや、電解コンデンサ自身のインピーダンス値のバラツキが比較的大きいことからインピーダンス値で正逆を検出することが難しい、という問題があった。
【0006】
また、目視による方法は実装密度が高くなるとプリント基板にシルク印刷された文字や記号が搭載部品に隠れて読み取ることが難しく、チェックに多くの時間を要するという問題がある。
【0007】
特許文献1に提案されている方法は、有極部品の誤挿入を物理的に阻止できる効果があるが、長孔を明けるコストが高いという問題がある。
【0008】
本発明は、従来から行なわれているインピーダンス測定を行いながら逆実装された有極部品を確実に検出する構造とその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造と誤挿入検出方法は以下のように構成される。
(1)第1の発明
第1の発明の有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造は、有極部品とチェック端子とプリント基板とから構成する。
【0010】
有極部品は特定の端子に所定の形状に成形したものであり、チェック端子は所定の実装高さを有する導体から成り、プリント基板は搭載する部品を貫通孔に挿入して実装するものである。
【0011】
有極部品はプリント基板の所定位置に実装され、チェック端子は有極部品の特定の端子の成形部がチェック端子と接触する位置に実装される。そして、有極部品の特定の端子とチェック端子とにそれぞれ接続するランドまたはパッドを導通チェックによる誤挿入検出用測定端子とする、ことを特徴とする構造である。
【0012】
上記の構造により、導通チェックを行なうことにより、有極部品の特定端子がチェック端子と接触しているかどうかの判定ができる。有極部品を正しい方向でプリント基板に挿入したときに特定端子の接触があるようにしておけば、接触があることは正しい挿入と判定でき、誤挿入の検出が可能となる。
(2)第2の発明
第2の発明の有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造は、第1の発明と同様に有極部品とチェック端子とプリント基板とから構成する。また、有極部品は特定の端子に所定の形状に成形したもので、チェック端子は所定の実装高さを有する導体から成り、プリント基板は搭載する部品を貫通孔に挿入して実装する点、および有極部品はプリント基板の所定位置に実装され、チェック端子は有極部品の特定の端子の成形部がチェック端子と接触する位置に実装される点も第1の発明と同様である。
【0013】
第2の発明では、有極部品の特定の端子とチェック端子とを含んだ回路に接続されたランドまたはパッドをインピーダンスチェックによる誤挿入検出用端子とする、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記の構造により、インピーダンスチェックを行なうことにより、有極部品の特定端子がチェック端子と接触しているかどうかの判定できる。有極部品を正しい方向でプリント基板に挿入したときに特定端子の接触があるようにしておけば、接触があることは正しい挿入と判定でき、誤挿入の検出が可能となる。
(3)第3の発明
第3の発明の有極部品のプリント基板への誤挿入検出方法は、プリント基板への実装において有極部品の特定の端子の所定の形状に成形した部分と所定の実装高さを有する導体から成るチェック端子とが接触する実装位置に形成されたプリント基板の貫通孔に、その有極部品とチェック端子とを挿入して実装する。そして、有極部品の挿入された特定の端子とチェック端子との間の導通チェックを行い、導通がなければ有極部品が逆実装であると判定する。
【0015】
上記の方法により、有極部品を正しい方向でプリント基板に挿入したとき、特定端子の接触があるようにしておけば、導通チェックまたはインピーダンスチェックにより有極部品の誤挿入の検出が可能となる。
(4)第4の発明
第4の発明は、第1と第2の発明において有極部品の特定の端子に成形する所定の形状が屈曲部を持つものである。この有極部品のプリント基板への実装時において屈曲部がチェック端子と接触する。
【0016】
特定の端子を屈曲部があるように成形することにより、実装時にチェック端子への接触が確実な構造となる。
(5)第5の発明
第5の発明は、第3の発明において有極部品の特定の端子に成形する所定の形状が屈曲部を持つものであり、有極部品の実装時にこの特定の端子がチェック端子へ確実に接触が行なわれる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明により、実装時に有極部品の特定の端子(マイナス極の端子、またはプラス極端子)とチェック端子とが接触するようにしたので、接触の有無により有極部品の誤挿入の検出が可能な構造の提供ができる。
【0018】
第2の発明により、第1の発明と同様に有極部品の誤挿入の検出が可能な構造の提供ができる。
【0019】
第3の発明により、第1の発明と同様に有極部品の特定の端子とチェック端子の接触の有無により有極部品の誤挿入の検出が可能な方法の提供ができる。
【0020】
第4の発明により、特定の端子に屈曲部を成形することでチェック端子との接触が確実に行なえ、有極部品の誤挿入検出が可能な構造の提供ができる。
【0021】
第5の発明により、特定の端子に屈曲部を成形することでチェック端子との接触が確実に行なえ、有極部品の誤挿入検出が可能な方法の提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態について図1から図4を用いて説明する。
【0023】
図1は本発明を構成する有極部品とチェック端子、およびプリント基板を示している。図1(a)は有極部品の例として図4の従来技術で示したものと同じく電解コンデンサ100とダイオード200を示している。電解コンデンサ100に示された極性マーク110に近い端子120はマイナスの極性を持つ端子であり、図に示すように屈曲部を持つように成形している。もう一つの端子130は成形を施してなくストレートである。ダイオード200も電解コンデンサ100と同様にカソードの端子220は屈曲部を持つように成形しており、他方の端子230はストレートである。
【0024】
図1(b)に示す部品はチェック端子400である。チェック端子400は例えば0.6mmφの錫メッキ銅線(裸線)を「コ」の字に成形したものである。チェック端子400の長さは5mmから10mmである。
【0025】
図1(c)は有極部品とチェック端子を搭載するプリント基板300を示している。図1(c)の上の図は部品搭載面から見た図を示し、搭載する部品の記号やシンボルをシルク印刷している。例えば、左側に示す丸い形状320は、その位置に電解コンデンサ100を搭載することを示し、丸い形状の中に示される「+」の記号321はプラスの極性の端子が挿入されることを示している。また、ダイオードの回路記号322はダイオード200が搭載される位置と方向を示している。
【0026】
ランド301から314は、部品搭載面の裏側のパターン面に形成している。ランド301と302は電解コンデンサ100搭載用のランドであり、ランド303と304はダイオード200搭載用のランドである。また、ランド311と312、ランド313と314にはそれぞれチェック端子400を搭載するランドである。
【0027】
図1(c)の下の図は、プリント基板300を横から見た図を示している。ランドに明けられた貫通孔を示している。上の面が部品搭載面で下の面がランドや配線パターンが形成されるパターン面である。
【0028】
図2は、図1で示した電解コンデンサ100とダイオード200およびチェック端子400をプリント基板300に搭載した例を示すものである。図2(a)は搭載した状態を横から見た図であり、図2(b)は図2(a)で示されるA−A’から下を見た図である。
【0029】
図2(a)において、最初にチェック端子400を挿入し、続いて電解コンデンサ100あるいはダイオード200を貫通孔に挿入する。この時、電解コンデンサ100あるいはダイオード200の端子に成形された屈曲部がチェック端子400と接触するように圧を加えて挿入する。図2(a)はこの時の状態を示している。その後、挿入した部品が外れないように貫通孔を通った端子を外側に曲げ所定の長さにカットし、全ての部品の挿入が終わった時点で半田付けされることになる。
【0030】
図2(b)では、電解コンデンサ100の端子120、あるいはダイオード200の端子230のそれぞれの屈曲部がチェック端子400と接触している状態をA−A’から見た状態を示している。また、図2(b)では、部品搭載面にシルク印刷した記号およびパターン面に形成したランド(点線で表している)も示しているが、ランドに接続する配線パターンはここでは示していない。
【0031】
続いて導通チェックとインピーダンスチェックにより誤挿入検出の例を図3と図4を用いて説明する。
【0032】
図3は図2で示した電解コンデンサ100を用いて導通チェックの例を説明するもので、電解コンデンサ100のマイナス極性を持つ端子を挿入したランド301とチェック端子400を挿入したランド311間を電池510を介してオームメータ500で抵抗値を測定している(図3のプリント基板はパターン面から見た状態を示している)。計測値が略0オームであれば(即ち、導通がある)、電解コンデンサ100のマイナス極性の端子の屈曲部とチェック端子400が接触していることになり、ランド301に挿入した端子は正しくマイナス極性を持つ端子であることが判る。もし、導通がなければ、ランド301にはストレート端子が挿入された(即ち、マイナス極性の端子ではない)ことであり、誤挿入の可能性が高いと判定する。可能性が高いとは、ランド302に挿入された端子がマイナス極性の端子120であっても挿入が不完全(例えば、端子120が外れて浮いている)の状態にあれば導通が得られない場合もあるからである。逆に言えば、このような不完全の挿入も本発明の方法により検出できることになる。
【0033】
図3において計測するランドとして、チェック端子400を挿入したランドではランド311としたがランド312であってもよく、もう一方の計測するランドを電解コンデンサ100のランド301としたが、ランド301と接続する図示しない電極パターンであったり、電極パターンに接続するパッドがあればそれでもよいことは当然である。
【0034】
次に、図4によりインピーダンスチェックの例を説明する。この場合も電解コンデンサ100の誤挿入検出の例で説明する。図4には電解コンデンサ100に接続する配線パターン330を介して抵抗器323が接続され、その抵抗器323はさらに配線パターン331を介してパッド307に接続している状態を示している。即ち、電解コンデンサ100と抵抗器323で回路を構成していることになる。インピーダンスチェックはチェック端子400のランド311とパッド307間の回路に対して発振器610を介してインピーダンスメータ600でインピーダンスの計測を行なう。計測したインピーダンス値が無限大であれば、電解コンデンサ100のマイナス極性の端子120とチェック端子400間がオープンであることになり、電解コンデンサ100は誤挿入の可能性が高いと判定する。正しく挿入されていれば、計測されるインピーダンス値は電解コンデンサ100の容量値に抵抗器323の抵抗値を加えた値になるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による有極部品の実装例(その1)である。
【図2】本発明による有極部品の実装例(その2)である。
【図3】電解コンデンサの極性端子とチェック端子間の導通チェック例である。
【図4】電解コンデンサの極性端子を含むインピーダンスチェック例である。
【図5】従来の有極部品の実装例である。
【符号の説明】
【0036】
10 電解コンデンサ
11 極性マーク
12 端子
13 端子(マイナス極性)
20 ダイオード
21 極性マーク
22 端子
23 端子(カソード側端子)
100 電解コンデンサ
110 極性マーク
120 端子
130 端子(マイナス極性)
200 ダイオード
210 極性マーク
220 端子
230 端子(カソード側端子)
300 プリント基板
301−306 ランド(搭載部品用)
311−314 ランド(チェック端子用)
307 パッド
320 シルク印刷による形状
321 シルク印刷による記号
322 シルク印刷による回路記号
330、331 配線パターン
400 チェック端子
500 オームメータ(抵抗計)
510 電池
600 インピーダンスメータ
610 発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の端子を所定の形状に成形した有極部品と、
所定の実装高さを有する導体から成るチェック端子と、
搭載部品を貫通孔に挿入して実装するプリント基板とを備え、
前記有極部品はプリント基板の所定位置に実装され、前記チェック端子は該有極部品の特定の端子の成形部が該チェック端子と接触する位置に実装され、該有極部品の特定の端子と該チェック端子とにそれぞれ接続するランドまたはパッドを導通チェックによる誤挿入検出用測定端子とする
ことを特徴とする有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造。
【請求項2】
特定の端子を所定の形状に成形した有極部品と、
所定の実装高さを有する導体から成るチェック端子と、
搭載部品を貫通孔に挿入して実装するプリント基板とを備え、
前記有極部品はプリント基板の所定位置に実装され、前記チェック端子は該有極部品の特定の端子の成形部が該チェック端子と接触する位置に実装され、該有極部品の特定の端子と該チェック端子とを含んだ回路に接続されたランドまたはパッドをインピーダンスチェックによる誤挿入検出用端子とする
ことを特徴とする有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造。
【請求項3】
プリント基板への実装において有極部品の特定の端子の所定の形状に成形した部分と所定の実装高さを有する導体から成るチェック端子とが接触する実装位置に形成されたプリント基板の貫通孔に、該有極部品と該チェック端子とを挿入して実装し、
挿入された前記特定の端子と前記チェック端子間の導通チェックを行い、導通がなければ前記有極部品が逆実装であると判定する
ことを特徴とする有極部品のプリント基板への誤挿入検出方法。
【請求項4】
前記所定の形状は前記特定の端子に屈曲部を持ち、前記プリント基板の実装に該屈曲部が前記チェック端子と接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有極部品のプリント基板への誤挿入検出構造。
【請求項5】
前記所定の形状は前記特定の端子に屈曲部を持ち、前記プリント基板の実装に該屈曲部が前記チェック端子と接触する
ことを特徴とする請求項3に記載の有極部品のプリント基板への誤挿入検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−140889(P2008−140889A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324179(P2006−324179)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】