説明

有機エレクトロルミネッセンスパネル及びその製造方法

【課題】薄型固体封止をしてもレーザリペア時のダメージを抑制でき、EL発光特性が低下することなく長期間にわたり維持することが可能な有機EL素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基材上に、少なくとも、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層をこの順に積層して有機EL素子を形成する工程と、前記有機EL素子中の異物を検査する工程と、前記異物又は前記異物の接する範囲の前記第一電極層若しくは前記第二電極層に焦点を持つマイクロレンズを前記パッシベーション層上に形成する工程と、前記マイクロレンズを介してレーザを照射する工程と前記マイクロレンズを備えたパッシベーション層上に封止層を積層し、有機EL素子を形成する工程と、を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法としたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、パソコンモニタ、携帯電話等の携帯端末などに使用されるフラットパネルディスプレイや、面発光光源、照明、発光型広告体などとして、幅広い用途が期待される有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)を用いる有機エレクトロルミネッセンスパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を画素に用いた有機ELディスプレイは、広視野角、応答速度が速い、低消費電力などの利点から、ブラウン管や液晶ディスプレイに替わるフラットパネルディスプレイとして期待されている。
【0003】
有機EL素子は、少なくともどちらか一方が透光性を有する二枚の電極層(第一電極層と第二電極層)の間に、有機発光媒体層を挟持した構造であり、両電極間に電圧を印可し電流を流すことにより有機発光媒体層で発光が生じる自発光型の表示素子である。しかし、有機EL素子は、電流注入型の発光素子であるために、例えば、厚みが0.1μm程度の有機発光層の中に、1μmの金属異物が存在すると、両電極で短絡してしまい、画素が光らなくなる滅点と呼ばれるパネル表示不良が発生する。
【0004】
このような問題を解決するために、異物などの欠陥部にレーザを照射し、有機層や電極層、欠陥部分を除去する技術が報告されている。しかし、有機EL素子では、このような高エネルギーの照射によって欠陥箇所が焼き切る際に、以下のような問題があった。
【0005】
つまり、有機層と電極層との熱伝導率が異なる為に剥離が生じたり、有機層や電極層を含んだ塊がレーザ照射部周辺に飛散したり、レーザ照射によって熱エネルギーが周囲の層へ加わり収縮して亀裂が生じる等のダメージを受けることがある。このようなレーザリペアによるダメージが原因となり、レーザリペアを行った箇所から酸素や水分の浸入が起こり、ダークスポットが発生したり、エージング中に上部電極と下部電極間でリークが進行して、不良箇所の再発や広がりが生じるという問題が発生する。
【0006】
また、近年において一般的な封止構造である薄型固体封止は、パッシベーション層、接着剤層、ガラスを順に積層した構造である場合が多い。このため、薄型固体封止をした後にレーザ照射を行うと、パッシベーション層に亀裂等の欠陥が生じるといった問題や、レーザ照射時の熱により接着剤層の剥離が生じ、パネルの表示不良となるだけでなく、薄型固体封止の有する封止性能が大幅に低下するといった問題が発生するおそれがある。
【0007】
したがって、薄型固体封止の場合、封止する前にレーザリペアすることが好ましいが、薄型固体封止では、有機層や電極層に空いた穴の端面にバリが生じるため、この穴をパッシベーション層で完全に塞ぐことは困難であるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−158433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄型固体封止をしてもレーザリペア時のダメージを抑制でき、EL発光特性が低下することなく長期間にわたり維持することが可能な有機EL素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、基板上に有機EL素子を複数備える有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法であって、
基材上に、少なくとも、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層をこの順に積層して有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子中の異物を検査する工程と、
前記異物又は前記異物の接する範囲の前記第一電極層若しくは前記第二電極層に焦点を持つマイクロレンズを前記パッシベーション層上に形成する工程と、
前記マイクロレンズを介してレーザを照射する工程と
前記マイクロレンズを備えたパッシベーション層上に封止層を積層し、有機EL素子を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法である。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、前記マイクロレンズを前記パッシベーション層上に形成する工程は、インクジェット法を用いて形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法である。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、前記異物を検査する工程は赤外線を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法である。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、前記異物を検査する工程は不活性雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法である。
【0014】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造される有機エレクトロルミネッセンスパネルであって、少なくとも基材上に、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層、封止層が順に積層された複数の有機EL素子を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記パッシベーション層の第二電極層と接する面の反対面上に、少なくとも1つ以上のマイクロレンズを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルである。
【0015】
本発明の請求項6に係る発明は、前記マイクロレンズの形状が半球形であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルである。
【0016】
本発明の請求項7に係る発明は、前記マイクロレンズはフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項5又は6に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルである。
【0017】
本発明の請求項8に係る発明は、前記接着層はスペーサを含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルである。
【発明の効果】
【0018】
以上から、本発明によれば、薄型固体封止する前に、パッシベーション層上にインクジェット法で半球形のフッ素樹脂からなるマイクロレンズを形成し、マイクロレンズを介してレーザ光を集束してレーザ強度を高めることで、容易にレーザリペアすることができる。且つ、マイクロレンズがリペア部の上部に備えられることで、リペアすることによって発生する飛散物の抑制、及び、パッシベーション層に亀裂が生じた影響による酸素や水分の浸入を防ぐことが可能となり、生産性に優れた有機EL素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】レーザリペア時の本発明の有機EL素子の断面概略図。
【図2】第二電極層の異物に接する部分をレーザリペアした後の本発明の有機EL素子の断面概略図。
【図3】レーザリペア後、封止プロセスまで行った後の本発明の有機EL素子の断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の有機EL素子の一例を、図面を参照しながら、説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明により製造される有機EL素子は、電極基材10を用いる。電極基材10としては、ガラスや石英、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムに、後述する第一電極層11が少なくとも形成されていれば良いが、有機エレクトロルミネッセンスパネルを表示装置として用いる場合には、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された駆動用基板を用いる。なお、有機エレクトロルミネッセンスパネルを単色のバックライトのような発光装置や照明装置として用いる場合には、薄膜トランジスタを形成しなくとも良く、第一電極層が形成されていれば良い。
【0022】
薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、ボトムゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0023】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiHガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Siガスを用いてLPCVD法により、また、SiHガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザ等のレーザによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にnポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0024】
ゲート絶縁膜としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO、SiNx;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO等を用いることができる。
【0025】
ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン、高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。また、薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0026】
有機EL素子は、薄膜トランジスタが有機EL素子のスイッチング素子として機能するように接続し、トランジスタのドレイン電極と有機EL素子の第一電極11が電気的に接続されている。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機EL素子の第一電極層11との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0027】
また、第一電極層11は隔壁20によって区画され、有機エレクトロルミネッセンスパネルを表示装置として用いる場合には各画素に対応した画素電極となるようパターニングされる第一電極層11の材料としては、ITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましく、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。また、上面発光型の有機EL素子の場合のように、第一電極層として正孔注入性と反射性を必要な場合には、AgやAlのような金属材料の上にITO膜を積層すればよい。第一電極層11の膜厚は、有機EL素子の素子構成により最適値が異なるが、単層、積層にかかわらず、100Å以上10000Å以下であり、より好ましくは、3000Å以下である。
【0028】
第一電極層11の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。
【0029】
本発明の有機エレクトロルミネッセンスパネルを表示装置等に用いる場合には、隔壁20は画素に対応した発光領域を画素状に区画するように基板上に形成する。一般的にアクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素に対して第一電極層11が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとするため、第一電極層11の端部を覆うように形成される隔壁20の最も好ましい形状は第一電極層11を最短距離で区切る格子状を基本とする。なお、有機エレクトロルミネッセンスパネルを単色のバックライトのような発光装置や照明装置として用いる場合には隔壁を設けなくとも良い。
【0030】
隔壁20の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソグラフィ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与したりすることもできる。
【0031】
隔壁20の好ましい高さは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。隔壁20の高さが10μmを超えると対向電極の形成及び封止を妨げてしまい、0.1μm未満だと第一電極層11の端部を覆い切れない、あるいは発光媒体層の形成時に隣接する画素とショートしたり混色したりしてしまうからである。
【0032】
次に、隔壁に区切られた第一電極上に有機発光媒体層12を形成する。本発明における有機発光媒体層12としては、発光物質を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔(電子)注入機能と正孔(電子)輸送機能を分けたり、正孔や電子の輸送をブロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。
【0033】
正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、CuO,Cr,Mn,FeOx(x〜0.1),NiO,CoO,Pr,AgO,MoO,Bi,ZnO,TiO,SnO,ThO,V,Nb,Ta,MoO,WO,MnOなどの無機材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0034】
高分子EL素子の場合には、正孔輸送材料に、インターレイヤ層を形成することが好ましい。インターレイヤ層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコート法等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成することができる。
【0035】
発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の蛍光発光材料や燐光発光材料を用いることができる。これらの材料のうち赤、青、緑の発光を示すものを第一電極上に画素状に塗りわけることで有機エレクトロルミネッセンスパネルを表示装置とすることができる。また、これらの材料を組み合わせて用いて白色の発光とすることで有機エレクトロルミネッセンスパネルを照明装置とすることができる。
【0036】
電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。また、これらの電子輸送材料に、ナトリウムやバリウム、リチウムといった仕事関数が低いアルカリ金属、アルカリ土類金属を少量ドープすることにより、電子注入層としてもよい。
【0037】
有機発光媒体層12の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても、1000nm以下であり、好ましくは50〜200nm程度である。
有機発光媒体層12の形成方法としては、材料に応じて、真空蒸着法や、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、ノズルコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法や印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
【0038】
次に、有機発光媒体層12上に第二電極層13を形成する。第二電極層13としては、少なくとも、電子注入性の陰極としての役割があればよく、LiやBa、Caなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属と、AlやAgといった安定性のある金属膜の積層膜が用いられる。トップエミッション型の有機EL素子の場合には、透明電極としての役割を兼用する必要があるため、電子注入性の陰極としては、仕事関数が低いLiやBa、Mg、Caといったアルカリ金属やアルカリ土類金属や、これら金属の酸化物、フッ化物などの化合物を用いることができる。これら材料は電子注入性に優れるものの、安定性に乏しいため、AlやAgなどの安定性に優れた金属との積層膜もしくは合金膜を用いることがより好ましい。
【0039】
第二電極層13の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を選択すればよい。また、第二電極層13の厚さに特に制限はないが、10nm以上1000nm以下程度で用いることができる。トップエミッション型EL素子の場合には、Baなどのアルカリ金属を5nm程度、Alなどの安定金属を10nm程度としてもよく、さらにITOなどの透明電極を100nm程度積層し低抵抗化することもできる。
【0040】
次に、有機発光媒体層12及び第二電極層13の劣化を防ぐために第二電極層13上にパッシベーション層18を形成する。パッシベーション層18としては酸素透過性や水分透過性の低い材料を用いることができ、パッシベーション層18としては、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化炭素などの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、炭化ケイ素などの金属炭化物、必要に応じて、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜との積層膜を用いてもよい。特に、バリア性と透明性の面から、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素を用いることが好ましく、さらには、成膜条件により、膜密度を可変した積層膜や勾配膜を使用してもよい。
【0041】
パッシベーション層18の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法を用いることができるが、特に、バリア性や透光性の面でCVD法を用いることが好ましい。CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法、VUV−CVD法などを用いることができる。また、CVD法における反応ガスとしては、モノシランや、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)やテトラエトキシシランなどの有機シリコン化合物に、N、O、NH、H、NOなどのガスを必要に応じて添加してもよく、例えば、シランの流量を変えることにより膜の密度を変化させてもよく、使用する反応性ガスにより膜中に水素や炭素が含有させることもできる。封止層の膜厚としては、有機EL素子の電極段差や基板の隔壁高さ、要求されるバリア特性などにより異なるが、10nm以上10000nm以下程度が一般的に用いられている。
【0042】
ここで、有機発光媒体層の形成工程中には種々の異物が混入する。たとえば、低分子型の有機発光媒体層12を形成する場合には、主に蒸着法などが用いられるため、チャンバ構成材であるSUS材の削りカスや、蒸着時に内壁やマスクに付着した蒸着材料などが、成膜時に有機発光媒体層の中に異物14として取り込まれることがある。また高分子発光材料や、塗布型の低分子発光材料を、IJ法やフレキソ法などの印刷法などを用いて形成する場合には、大気中での膜形成となるため、環境異物や印刷機からの発塵物を、有機発光媒体層12の中に異物14として取り込むことがある。
【0043】
有機発光媒体層12は、100nm程度の薄膜で形成されているため、例えばSUSなど金属異物が混入すると、両電極が短絡してしまい、短絡した画素全体が光らない滅点と呼ばれる表示不良となる。SiOやAlといった絶縁物であっても、有機発光媒体層12形成時に混入すると、異物周辺部の有機発光媒体層が薄くなり、両電極が短絡することがある。
【0044】
このことから、有機発光媒体層12形成時に混入した異物14は、表示欠陥を誘引する危険性が大いにある。しかし、封止プロセスを行った後に、有機発光媒体層の欠陥部にレーザを照射する場合には、パッシベーション層に亀裂等の欠陥が生じるといった問題や、レーザ照射時の熱により接着剤層の剥離が生じ、パネルの表示不良となるだけでなく、薄型固体封止の有する封止性能が大幅に低下するといった問題が発生するおそれがある。
【0045】
そこで、本発明においては、第二電極層13に対向するパッシベーション層18上に前記マイクロレンズ15を形成することにより、前記マイクロレンズ15を介してレーザ光を集束してレーザ強度を高めることで、パッシベーション層に亀裂などの欠陥を生じることなく異物のみをレーザリペアすることができる。また、封止前の有機EL素子基板をリペアすることで、封止性能に影響を与えることなく、リペア工程で発生する飛散物の抑制、及びパッシベーション層に亀裂が生じた場合でも酸素や水分の浸入を防ぐことが可能となる。
【0046】
本発明は基材上に、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層からなる有機EL素子が複数形成された有機エレクトロルミネッセンスパネルに対して行なうものであり、有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造ライン中においてパッシベーション層を形成する工程の後で、接着層17及び封止基材16と基材とを張り合わせる工程の前に行なう。さらに、リペア工程の前にパッシベーション層が形成された有機エレクトロルミネッセンスパネル上の複数の有機発光媒体層の全てについて、異物の有無を走査し、検出された異物の位置情報をリペア工程に伝達する。
【0047】
異物14の検出に用いる検査機の光源としては、有機発光媒体層12を光劣化させないように赤外線を用いることが好ましい。赤外線であれば透過、反射光源のいずれでも用いることが可能であるが、形成された有機発光媒体層12は膜厚が非常にうすく、光学的な吸収が小さいため、膜を光線が1回通過する透過光源よりも基板表面で反射する光が2回通過する反射光源のほうがよりコントラストを得やすいため好ましい。また、用いる赤外線はイメージセンサに感度を有する波長領域であれば特に制限はないが、波長が長すぎると画像の解像度が悪くなるため検査光の波長は700〜1500nmが好適である。また、イメージセンサはエリアセンサ、ラインセンサのいずれでも用いることが可能である。イメージセンサは、検査時間短縮のため、複数台を並置して処理してもよい。また、検査装置全体を不活性ガス雰囲気中に置き、有機発光層の劣化を防ぐことがより好ましい。異物が検出された場合、その位置情報を後述のリペア工程に伝達し、リペア用のマイクロレンズ形成位置を決定する。
【0048】
次に、リペア工程で用いるマイクロレンズ15を形成する。マイクロレンズ15の大きさとしては、有機ELディスプレイの製造工程で主に混入する異物14の大きさが0.1μm〜10μmと小さく、マイクロレンズ15を100μm以上の大きさとすると非発光エリアとして視認できてしまうことから、直径10μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下の円であることが好ましい。ここで、マイクロレンズ15は、レーザ光を集束するようなマイクロレンズ形状であることが特に好ましく、大きさは、異物14がマイクロレンズ15によって覆われる大きさであれば良い。
【0049】
次に、マイクロレンズ15の形成方法について以下に説明する。
マイクロレンズ15の形成方法としては、フォトリソグラフィにより円柱状のフォトレジストパターンを形成した後、基板を加熱してレジストを流動させ、表面張力によりレンズ形状を形成するリフロー法などを用いることができるが、インクジェットノズルから上記検出工程で検出された異物位置のみにレンズ材料溶液を吐出し、レンズ材料溶液の表面張力によってマイクロレンズ15を形成するインクジェット法が形成工程、装置、操作が簡便であるため好ましい。
【0050】
インクジェットノズルにレンズ材料となる透明樹脂を溶媒に溶解又は分散させたものを充填し、インクジェットノズルの吐出口からレンズ材料を異物14の上に形成されている第二電極層13に対向するパッシベーション層18上に1回、又は複数回滴下する。パッシベーション層上に着弾したレンズ材料に、透明樹脂がUV光硬化樹脂であればUV光を照射し、熱硬化樹脂であれば加熱し、透明樹脂を硬化させ凸型のマイクロレンズとして成形する。マイクロレンズの形状は、凸レンズとし、プリズム状、台形状でもよいが、本発明のインクジェット法で形成する場合はパッシベーション層18表面の状態によって半球状レンズとなる。
【0051】
ここで、レンズ材料となる透明樹脂としては、後に使用するレーザ光の波長に対して十分な透過性を有するものであればよく、またパッシベーション層18に着弾後にレンズ形状として硬化できるもの、例えば光硬化樹脂、熱硬化樹脂が用いることができる。
また、レーザリペアのレーザ波長として紫外線領域のレーザ光を用いる場合、UV透過性の樹脂がより好ましい。例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メタクリレ−ト樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂の中でUV透過性の樹脂を用いることができる。また、撥液性の材料としてフッ素原子が含まれた樹脂や炭化水素のみで構成された樹脂等は一般にUV透過性も高いため特に好適に用いることができる。より詳しくは、分子内にフッ素原子を含有するモノマーを含む樹脂、或いは全て炭素と水素原子のみから構成されるモノマーを含む樹脂が挙げられる。なお、これらの樹脂材料を用いる場合、その粘度は、溶媒を用いて溶解又は分散することで調整するとよい。他にもUV透過性を有する、アクリル、ベンゾシクロブテン、パリレン、フッ化アリーレンエーテル、ポリイミドなどの有機材料、シロキサン系ポリマー等の重合によってできた化合物材料、水溶性ホモポリマーと水溶性共重合体を含む組成物等を用いることができる。
【0052】
以上のように本発明では、インクジェット法によってレンズ材料を任意の吐出量で吐出することができるため、パッシベーション層18上の任意の位置に、必要な仕様のマイクロレンズ15を検出された異物の数だけ形成することが可能である。すなわち、パッシベーション層18上の任意の位置にレンズ材料を滴下した後、インクジェットノズルもしくは基板を搭載した走査ステージを移動させ、また別のパッシベーション層18上の任意の位置にレンズ材料を滴下することで、一度で複数の位置にマイクロレンズ15を形成することができる。1つも異物が含まれないよう有機発光媒体層を形成することは現在困難であり、通常、有機発光媒体層には1以上の異物が含まれるため、マイクロレンズは少なくとも1つ以上は形成されることになる。なお、上述の検査工程にて異物が検出されない場合にはマイクロレンズは形成されない。
【0053】
なお、インクジェット法によって滴下された液状物質は、着弾後にパッシベーション層18との接触角に応じて濡れ広がる場合がある。そこで、液状物質が濡れ広がるのを防止し、所望の形状、レンズ曲率に成形するため、着弾するパッシベーション層18表面に撥液処理を施しておくことが望ましい。撥液処理としては撥液性の膜のコーティング処理や表面のフッ素プラズマ処理等が挙げられる。本発明においては、前記液状物質の付与時における、前記液状物質の前記パッシベーション層18に対する接触角は、50°以上90°未満であることが好ましい。
【0054】
マイクロレンズ15を形成する位置は、上述の異物の検出工程から伝達される基板上における異物の位置情報に基づいて決定され、図1に示したように、後述のレーザ光を照射する側から見て異物上を覆うような位置にマイクロレンズが形成される。より詳細には、マイクロレンズの焦点と異物の位置が、後述のレーザ光照射側から見て重なるようにマイクロレンズが形成される。
【0055】
次に、マイクロレンズ15にレーザ光を照射し、レーザ光を集光させる。このとき、レーザ光の焦点位置を異物または異物の接する範囲の第一電極層または第二電極層の何れかに合わせる。これによりレーザ光は、焦点位置を昇華させるのに十分なエネルギー密度に高められ、図2のように異物または異物の接する範囲の第一電極層または第二電極層の何れかを光分解・昇華することでその部分は通電しなくなるため、短絡を防ぐことができる。また、異物または異物の接する範囲の第一電極層または第二電極層の何れかが光分解・昇華すればその部分の短絡が防げるため、レンズの焦点がその範囲にあるようにすればよく、レンズ形状の自由度が高い。
【0056】
ここで用いるレーザとしては、インクジェット法によって形成されたマイクロレンズ15に十分な透過性を有し、かつマイクロレンズ15によって屈折されること、また、昇華の対象となる部位に吸収性を有する波長であれば、いかなるレーザを用いてもよく、以下に示すレーザから適宜選択することができる。また、パッシベーション層18に必要以上のレーザ光が吸収され、ダメージが入ることを防止するため、パルスレーザを用いるのが望ましく、パルス幅が極めて短いピコ秒レーザやフェムト秒レーザを用いることがさらに望ましい。
【0057】
例えば、紫外光であればFレーザなどのエキシマレーザや、固体レーザであるYAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、Yレーザ、PbWOレーザ、YVOレーザ等高調波等が挙げられ、可視光であれば、ArレーザやKrレーザ、上記固体レーザの高調波等が挙げられ、赤外光であれば、上記固体レーザの基本波やCOレーザ、ガラスレーザ、Tiサファイアレーザ、色素レーザ、アレキサンドライトレーザ等が挙げられる。以上の中でも紫外光を発振するレーザであれば、照射による熱の発生が少なく、周囲の熱損失が抑えられるため特に好適に用いることができる。
【0058】
次に、図3に示すように、リペア後の有機発光媒体層が形成された基材上に封止基材16と接着層17からなる封止層を形成する工程を行なう。
【0059】
本発明は、封止層形成前にリペア工程を行なうため、封止構造によらず、有機発光媒体層12の欠陥をリペアすることが可能であり、例えば、ガラスキャップからなる封止基材16を用いたキャップ封止や、接着層17と封止基材16を用いたべた封止などである。
【0060】
接着層17の材料としては、公知の接着性樹脂を使用することができるが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを使用することができる。接着層17には、必要に応じてギャップ制御のためにガラスや樹脂からなる球状、棒状などのスペーサ19を混入することができる。
【0061】
接着層17の形成方法としては、材料やパターンに応じて、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法や、インクジェット法、ディスペンサ塗布、ノズル吐出、転写法、ラミネート法などを用いることができる。
【0062】
封止基材16としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。封止基材の材料としては、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。また、これらには必要に応じて色変換層やカラーフィルター層、光取出し層などを設けても良い。
【0063】
接着層17を介して電極基材10と封止基材16とを貼り合わせる工程は、接着層17中に有機EL素子の劣化の原因となる酸素や水分が含まれないように真空中、又は不活性ガス雰囲気中で行う。不活性ガスを用いる場合は、アルゴンなどの希ガスを用いることもできるが、取り扱い易さや経済的な理由から窒素が好適に用いられる。
【0064】
以下、本発明を実施例1及び比較例により具体例を説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
<実施例1>
ガラス基材からなる電極基材10上に、第一電極層11としてITO膜(150nm)をスパッタリング法およびフォトリソ、エッチング法を用いてパターン形成した。
次に、有機発光媒体層12として、正孔輸送層にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(20nm)、発光層にポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)(100nm)をそれぞれ、凸版印刷法を用いてパターン形成した。
【0066】
次に、第二電極層13として、Ba膜(5nm)とAl膜(200nm)を蒸着法を用いて積層し、さらに、パッシベーション層18として、CVD法により、酸窒化珪素膜(50nm)を形成した。
【0067】
次に、不活性雰囲気下にて、赤外線を光源に持つ異物検査機を用いて、作製した有機EL素子の画素の有機発光媒体層12中に含まれる異物14の検査を行い、大きさ1〜10μmの異物14がある画素100個の座標情報を記録した。
【0068】
次いで、パッシベーション層18表面をフッ素プラズマ処理により撥液処理を施した。レンズ材料となる紫外光透過性に優れた樹脂としてフッ素樹脂であるダイニオン(登録商標:スリーエム社製)のエタノール溶液をインクジェットノズルに充填し、インクジェットの吐出口からレンズ材料を異物14上の接着層17に対向するパッシベーション層18上に滴下、着弾させる。パッシベーション層18上に着弾したレンズ材料を乾燥硬化させマイクロレンズ15として成形する。インクジェット法によってレンズ材料を任意の吐出量で吐出することができるため、パッシベーション層18上の任意の位置に、必要な仕様のマイクロレンズ15を形成することが可能となる。
【0069】
次に、異物14に接する第二電極層13にレーザの焦点を調整し、不活性化雰囲気下でレーザリペアを行った。
【0070】
レーザリペアした有機EL素子を点灯させて、大きさ1〜10μmの異物があった100画素を検査した結果、滅点無く全ての画素が発光しており、レーザリペアが成功したことを確認した。リペアした部分は非発光部にはなっていたが、目視検査では検出できなかった。
【0071】
その後、マイクロレンズ15を表面に備えたパッシベーション層18上に接着層17(光硬化型のエポキシ接着剤)と、封止基材16(ガラス基材)を順に積層して、本発明例の有機EL素子を製造した。
上記のように製造した、本発明例の有機EL素子を点灯させて、大きさ1〜10μmの異物があった100画素を検査した結果、滅点無く全ての画素が発光しており、封止プロセス後もEL発光特性に変化がないことを確認した。
【0072】
<比較例1>
実施例1に記載した有機ELディスプレイにおいて、100個の異物14に、マイクロレンズ15を形成せずに、実施例1と同様のリペア工程を行った。
レーザリペアした有機EL素子を点灯させて、大きさ1〜10μmの異物があった100画素を検査した結果、レーザ照射によってパッシベーション層18に亀裂が生じた影響で酸素や水分が浸入し、全ての画素で、滅点となっていたり、ダークスポットが発生したりしていた。
【0073】
その後、マイクロレンズ15を表面に備えたパッシベーション層18上に接着層17(光硬化型のエポキシ接着剤)と、封止基材16(ガラス基材)を順に積層して、本発明例の有機EL素子を製造した。
上記のように製造した、本発明例の有機EL素子を点灯させて、大きさ1〜10μmの異物があった100画素を検査した結果、レーザリペア後より滅点の増加及びダークスポットの悪化が見られた。
【符号の説明】
【0074】
10…電極基材
11…第一電極層
12…有機発光媒体層
13…第二電極層
14…異物
15…マイクロレンズ
16…封止基材
17…接着層
18…パッシベーション層
19…スペーサ
20…隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に有機EL素子を複数備える有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法であって、
基材上に、少なくとも、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層をこの順に積層して有機EL素子を形成する工程と、
前記有機EL素子中の異物を検査する工程と、
前記異物又は前記異物の接する範囲の前記第一電極層若しくは前記第二電極層に焦点を持つマイクロレンズを前記パッシベーション層上に形成する工程と、
前記マイクロレンズを介してレーザを照射する工程と
前記マイクロレンズを備えたパッシベーション層上に封止層を積層し、有機EL素子を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロレンズを前記パッシベーション層上に形成する工程は、インクジェット法を用いて形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項3】
前記異物を検査する工程は赤外線を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項4】
前記異物を検査する工程は不活性雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造される有機エレクトロルミネッセンスパネルであって、少なくとも基材上に、第一電極層、有機発光媒体層、第二電極層、パッシベーション層、封止層が順に積層された複数の有機EL素子を有する有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記パッシベーション層の第二電極層と接する面の反対面上に、少なくとも1つ以上のマイクロレンズを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項6】
前記マイクロレンズの形状が半球形であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネル。
ンスパネル。
【請求項7】
前記マイクロレンズはフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項5又は6に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項8】
前記接着層はスペーサを含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンスパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−74276(P2012−74276A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218572(P2010−218572)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】