説明

有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤及び有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止できる有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を提供する。また、該有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】ラジカル重合性単量体と光ラジカル開始剤とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤であって、前記ラジカル重合性単量体は、脂環式多官能(メタ)アクリレートを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止できる有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤に関する。また、該有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス材料(以下、有機EL材料という)を発光層に用いた電界発光素子(以下、有機EL表示装置という)は、通常、基板上に設けられた一の電極上に、正孔注入層、発光層及び電子注入層が、順次積層され、更にその上に他の電極が設けられた薄膜構造体からなる。図1に、このような薄膜構造体の一例を模式的に示す断面図を示した。図1に示した薄膜構造体20は、基板1上に、陽極2、正孔注入層3及び正孔輸送層4からなる正孔注入電極と、有機薄膜5(発光層)と、電子注入層6及び陰極7からなる電子注入電極とが、順次、積層された構造となっている。なお、薄膜構造体の構造は、図1に示す構造に限定されず、例えば、少なくとも陽極2及び陰極7の間に有機薄膜5が形成されていればよいが、素子の性能を向上させるという点から、図1に示す薄膜構造体20のように、正孔注入層3、正孔輸送層4及び電子注入層6が形成された構造が好ましい。
このような薄膜構造体からなる有機EL素子は、自己発光を行うため視認性がよく、固体素子であるため耐衝撃性に優れ、直流低電圧駆動素子を実現するものとして注目を集めている。
【0003】
有機EL素子を構成する有機薄膜(発光層)、正孔注入層及び電子注入層の材料である発光材料、正孔注入材料及び電子注入材料等の有機固体は、水分や酸素等に侵されやすいという問題を有している。また、有機固体の上下に設けられている対向電極は、酸化により特性が劣化するため、有機EL素子を大気中で駆動させると発光特性が急激に劣化する。従って、実用的な有機EL素子を得るためには、有機固体に水分や酸素が侵入しないように、また、対向電極が酸化されないように、有機固体及び対向電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。
【0004】
有機固体及び対向電極を大気と遮断する方法としては、封止剤を用いて有機EL素子を封止することが行われている(例えば、特許文献1)。
有機EL素子を封止剤で封止する場合、水分や酸素等の透過を充分に抑えるため、機EL素子上にパッシベーション膜と呼ばれる無機膜を設け、更にその上を封止剤で封止することが行われている。しかしながら、現在用いられている一般的なパッシベーション膜は、チッ化シリコーンをCDV法により製膜していることから、極めて煩雑であり、かつ、高コストであるという問題があった。そこで、パッシベーション膜を省略して、直接有機発光素子を封止剤で封止することが検討されている。
【0005】
しかしながら、従来の封止剤では、パッシベーション膜を設けずに有機EL素子に塗布した場合、充分に封止剤が硬化せずに封止できないことがあるという問題があった。
【特許文献1】特開2007−115692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止できる有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を提供することを目的とする。また、該有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ラジカル重合性単量体と光ラジカル開始剤とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤であって、前記ラジカル重合性単量体は、脂環式多官能(メタ)アクリレートを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、パッシベーション膜を設けずに有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)に塗布したときに、充分に封止剤が硬化せずに封止できない原因について検討した。その結果、従来の封止剤のほとんどがカチオン重合系の硬化性樹脂組成物からなるところ、有機EL封止剤から溶出する物質によってカチオン重合反応が阻害されることが原因であることを突き止めた。ラジカル重合性単量体を含有するラジカル重合系硬化性樹脂組成物からなる封止剤であれば、有機EL封止剤から溶出する物質によっても重合反応を阻害されることなく、確実に封止できる。しかしながら、ラジカル重合性単量体は、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解してしまうという問題もあった。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、ラジカル重合性単量体のなかでも脂環式多官能(メタ)アクリレートを用いれば、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解することなく、パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤(以下、「有機EL素子用接着剤」ともいう。)は、ラジカル重合性単量体と光ラジカル開始剤とを含有する。ラジカル重合性単量体と光ラジカル開始剤とを含有するラジカル重合系であることにより、本発明の有機EL封止用接着剤は、有機EL封止剤から溶出する物質によっても重合反応を阻害されることなく、確実に有機EL素子を封止することができる。
【0010】
上記ラジカル重合性単量体は、脂環式多官能(メタ)アクリレートを含有する。脂環式多官能(メタ)アクリレートは、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解することがない。また、脂環式多官能(メタ)アクリレートは、比較的低粘度であることから、得られる有機EL素子封止用接着剤の取扱い性にも優れる。
【0011】
上記脂環式多官能(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、トリシクロロデカンジメタノールジアクリレート、水添ビスフェノールAエポキシアクリレート、水添ビスフェノールFエポキシアクリレート等が挙げられる。これらの脂環式多官能(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記ラジカル重合性単量体は、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解しない範囲で、多官能エポキシ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。多官能エポキシ(メタ)アクリレートを含有することにより、得られる有機EL素子封止用接着剤は、硬化時の硬化収縮が少ないものとなる。
なお、本明細書において多官能エポキシ(メタ)アクリレートとは、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて(メタ)アクリレート化したものを意味する。
【0013】
上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートの原料となる多官能エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートにおいては、全てのエポキシ基が(メタ)アクリレート化されていることが好ましい。エポキシ基が残存する多官能エポキシ(メタ)アクリレートは、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解しやすい。また、エポキシ基が残存する多官能エポキシ(メタ)アクリレートは、電極を腐食することがある。
【0015】
上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートを配合する場合、上記ラジカル重合性単量体中に占める上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートの配合量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は80重量%である。上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートの配合量が10重量%未満であると、硬化収縮を抑える効果が得られないことがある。上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートの配合量が80重量%を超えると、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解してしまうことがある。上記多官能エポキシ(メタ)アクリレートの配合量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0016】
上記ラジカル重合性単量体は、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解しない範囲で、上記脂環式多官能(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートを含有することにより、得られる有機EL素子封止用接着剤は、硬化物の重合度が向上し、未反応物が低減するとともに、耐熱性が向上する。
【0017】
上記脂環式多官能(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記脂環式多官能(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを配合する場合、上記ラジカル重合性単量体中に占める上記多官能(メタ)アクリレートの配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が1重量%未満であると、硬化物の重合度を向上させる効果が得られないが得られないことがある。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が20重量%を超えると、有機EL素子の発光層を構成する樹脂を溶解してしまうことがある。また、硬化収縮が大きくなり、残留応力が大きくなって接着力が低下することがある。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0019】
上記光ラジカル開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン等が挙げられる。
【0020】
上記光ラジカル開始剤としては、高分子量化した高分子型光ラジカル重合体が好適である。上記光ラジカル開始剤に光を照射してラジカル重合を開始させた後には、その残存物がアウトガスとなって素子を劣化させたりすることがある。しかし、高分子型光ラジカル重合体を用いれば、アウトガスの発生を抑制できることを見出した。
【0021】
上記高分子型光ラジカル重合体のうち市販されているものとしては、例えば、KIP−150、KIP EM(ランベルティー社製)等が挙げられる。
【0022】
上記光ラジカル開始剤の配合量と特に限定されないが、上記ラジカル重合性単量体100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部である。上記光ラジカル開始剤の配合量が0.1重量部未満であると、光を照射しても充分に硬化できないことがあり、5重量部を超えて配合しても、それ以上の効果は得られないことがある。上記光ラジカル開始剤の配合量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0023】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、更に、熱ラジカル開始剤を含有することが好ましい。熱ラジカル開始剤を含有することで、加熱することにより硬化後の残留モノマーを低減させることができる。
【0024】
上記熱ラジカル開始剤は特に限定されず、例えば、有機化酸化物(日油社製、パーブチルO等)、アゾ重合開始剤(和光純薬社製、V−65等)等が挙げられる。これらの熱ラジカル開始剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0025】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤は、主に本発明の有機EL素子封止用接着剤と有機ELパネル及び保護用基板とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0026】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記シランカップリング剤の配合量としては特に限定されないが、上記ラジカル重合性単量体100重量部に対して好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の配合量が0.1重量部未満であると、シランカップリング剤を添加した効果がほとんど得られないことがあり、10重量部を超えると、余剰のシランカップリング剤のアルコキシ基が分解してアルコールが発生するため、有機EL素子を劣化させる恐れがある。上記シランカップリング剤の配合量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0028】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、透明性を阻害しない範囲で充填剤を含有していてもよい。
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト等の無機フィラーやポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機フィラー等が挙げられる。
【0029】
本発明の有機EL素子封止用接着剤の粘度の好ましい下限は0.1Pa・s、好ましい上限は300Pa・sである。本発明の有機EL素子封止用接着剤の粘度が0.1Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、例えば、封止用接着剤を用いて有機EL素子を封止する際に、有機ELパネル又は保護用基板表面に形成した封止用接着剤層が形状を維持できず流れてしまうことがある。本発明の有機EL素子封止用接着剤の粘度が300Pa・sを超えると、粘度が高すぎて、例えば、封止用接着剤を用いて有機EL素子を封止する際に、有機ELパネルや保護用基板表面に形成した封止用接着剤層の厚さにムラが生じることがある。本発明の有機EL素子封止用接着剤の粘度のより好ましい下限は0.3Pa・sであり、より好ましい上限は50Pa・sである。
なお、上記粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製、TV−22型)を用いて25℃、5rpmの条件で測定した値である。
【0030】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、硬化収縮率の上限が5%であることが好ましい。5%を超えると、有機EL素子封止用接着剤の重合硬化時における収縮量が大きくなり、有機EL素子に応力を与え、素子の剥離の原因となる。より好ましい上限は4%である。
【0031】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、その硬化物を厚さを0.1mmとしたときの可視光領域における光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、有機EL素子封止用接着剤を用いて有機EL素子を封止したときに、得られる有機EL素子の表示品質が低下することがある。
なお、本明細書において、可視光領域とは、波長400〜800nmの光線を意味する。
【0032】
本発明の有機EL素子封止用接着剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上述したラジカル重合性単量体、光ラジカル開始剤、及び、必要に応じて添加する添加剤等を混合する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明の有機EL素子封止用接着剤は、パッシベーション膜を設けずに直接有機EL素子を封止する場合でも、確実に硬化して封止することができる。
本発明の有機EL素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子もまた、本発明の1つである。
【0034】
本発明の有機EL素子封止用接着剤を用いて有機EL素子を封止する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の有機EL素子封止用接着剤を有機EL素子を封止するための封止板に塗布し、封止板と有機EL素子形成された構造体とを貼合わせた後に、光を照射して有機EL素子封止用接着剤を硬化させる方法等が挙げられる。
【0035】
また、特に高い水分や酸素等の遮断性が要求される場合には、特開2007−115692号公報に記載されたようなレーザーアニール法により周辺封止を行う方法を併用することが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止できる有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を提供することができる。また、該有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
(実施例1〜6、比較例1)
表1に示した組成に従って、各材料をホモディスパー型撹拌混合機(ホモディスパーL型、特殊機化社製)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合して有機EL素子封止用接着剤を調製した。
用いた各材料は以下のようである。
【0039】
(1)脂環式多官能(メタ)アクリレート
トリシクロロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセルサイテック社製、IRR214)
水添ビスフェノールAエポキシアクリレート(共栄社化学社製、エポライト4000)
【0040】
(2)多官能エポキシ(メタ)アクリレート
ビスフェノールA型エポキシメタアクリレート(ダイセルサイテック社製、EB3700)
【0041】
(3)その他の多官能(メタ)アクリレート
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、M400、DPHA)
ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(ダイセルサイテック社製、EBECRYL40)
【0042】
(4)光ラジカル開始剤
高分子開始剤(ランベルティー社製、KIP−150)
【0043】
(5)シランカップリング剤
信越化学社製、KBM−303
【0044】
(評価)
下記の方法により有機EL素子封止用接着剤の評価を行った。
結果を表1に示した。
【0045】
(1)発光層の溶解性試験
2.5cm×2.5cmの大きさに打ち抜いたマスクを配置した5cm×5cmのガラス基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8−ヒドロキシキノリラ)アルミニウム(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10−4Paまで減圧した。その後、α−NPD入りの坩堝を加熱し、α−NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの膜を成膜した。次いでAlq3の坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの膜を形成した。
上記有機膜を蒸着したガラスに実施例1〜6、比較例の組成物を2.5cm×2.5cmの蒸着領域よりも広い面積に、100μmの厚みに塗布し、カバーガラスを貼付して未硬化のまま30分放置した。その後、蒸着部の境界の有機膜のにじみを目視で観察した。界面のにじみのない組成物を「○」、にじみのあるものを「×」として、有機膜の組成物への溶解性を評価した。
【0046】
(2)有機EL素子の表示の評価
ガラス基板(25mm×25mm×0.7mm)にITO電極を1000Åの厚さで成膜したものを透明支持基板とした。上記透明支持基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更にUV−オゾンクリーナ(NL−UV253、日本レーザー電子社製)にて直前処理を行った。次に、この透明支持基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8−ヒドロキシキノリラ)アルミニウム(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10−4Paまで減圧した。その後、α−NPD入りの坩堝を加熱し、α−NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いでAlq3の坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの発光層を形成した。その後、透明支持基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mg、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後真空槽を2×10−4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し透明支持基盤を取り出して透明支持基盤上に作製した有機EL素子基板を得た。
【0047】
有機EL素子封止用接着剤をガラス製背面板にディスペンサーにて塗布し、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を照射量が1500mJ/cmとなるように照射した。その後、窒素ガスを流通させたグローブボックス中で、有機EL素子基板と有機EL素子封止用接着剤を塗布したガラス製背面板を貼合後、10分間放置し接着剤を硬化して有機EL素子を封止した。貼合後60℃で5分間加熱して接着剤の硬化を行った。
【0048】
封止された有機EL素子を温度60℃、湿度90%の条件下に100時間暴露した後、10Vの電圧を印加し素子の発光状態(発光及びダークスポットの有無)を目視で観察した。ダークスポットなく、均一に発光した場合を「○」と、発光はするが、ダークスポットがあった場合を「△」と、全く発光しなかった場合を「×」と評価した。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、パッシベーション膜を有しない有機エレクトロルミネッセンス素子を確実に封止できる有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を提供することができる。また、該有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止された有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】薄膜構造体の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 有機薄膜(発光層)
6 電子注入層
7 陰極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性単量体と光ラジカル開始剤とを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤であって、
前記ラジカル重合性単量体は、脂環式多官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤。
【請求項2】
ラジカル重合性単量体は、更に多官能エポキシ(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤。
【請求項3】
ラジカル重合性単量体は、更に脂環式多官能(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤。
【請求項4】
光ラジカル開始剤は、高分子型光ラジカル重合体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子封止用接着剤を用いて封止されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。


【図1】
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【公開番号】特開2010−111743(P2010−111743A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284432(P2008−284432)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】