説明

有機カーボネート又は有機カルバメートを連続生産するための製造方法、及び、そのための固体触媒

反応物のエステル交換反応及び/又は不均化反応を含むアルコール分解プロセスが開示される。アルコール分解プロセスは、反応物と微量の可溶性有機金属化合物をアルコール分解固体触媒を備えるリアクタに供給する工程を含み、可溶性有機金属化合物とアルコール分解固体触媒は、それぞれ第2族〜第6族元素を有しており、これは様々な実施例において同一のものが用いられてもよい。例えば、固体触媒上でエステル交換反応を行い、微量の可溶性有機金属化合物がエステル交換リアクタに供給される不均化反応を次いで行うことでジフェニルカーボネートが連続的に生成可能であってもよい。さらに、エステル交換反応及び/又は不均化反応に好適な触媒等の使用済みのアルコール分解固体触媒を再活性化させるプロセスが開示される。このプロセスは、触媒上に堆積したポリマー材料を除去する工程と、その固体触媒上に触媒作用活性金属を再堆積させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する実施形態は、概して、アルコール分解、エステル交換及び不均化を行う製造方法と、その反応のための固体触媒に関する。より具体的には、本明細書に開示する実施形態は、固体固定層触媒上でアルコール分解、エステル交換、及び/又は不均化を行うことで、有機カーボネート、有機カルバメート及び他の生成物を連続生産するための製造方法に関する。長い周期に亘って確実に触媒活性を維持するために、可溶性の有機金属化合物が、非常に低レベルで反応装置に連続的に供給されてもよい。
【背景技術】
【0002】
エステル交換又はエステルのアルコールとの交換反応(アルコール分解反応)は、酸性と塩基性の触媒の両方によって触媒作用を受ける反応の重要な種類である。一般的に、エステル交換の実施例は、反応剤、生成物又はその両方として、有機カーボネートとカルボン酸エステルを用いた化学反応を含む。他のエステル交換反応は、エタノール又はメタノールでトリグリセリドをエステル交換することによって、バイオディーゼルを生産することを含む。一般的に、アルコール分解は、化合物の1つ以上の官能基がアルコールのアルコキシル基又はアリールオキシ基(アルキルヒドロキシル化合物又はアリールヒドロキシル化合物)によって交換される反応である。アルコール分解の実施例は、尿素を用いた化学反応を含んでいる。その化学反応では、有機カルバメートと有機カーボネートを生産するために、アミン基がアルコキシ基によって置換される。
【0003】
カルボン酸エステルは、酸性と塩基性触媒の存在下における、アルコールによるカルボン酸エステルのエステル交換によって生成される。硫酸(均質)ならびに酸性の樹脂(固形)は、酸性の触媒として好ましい。NaOH、KOH、様々なNa/Kアルコキシド、又はアミン(均質)等の可溶性の塩基、および様々な塩基性樹脂(固形)は、塩基性触媒として好ましい。カルボキシルエステルのエステル交換のための触媒は、均一系触媒あるいは不均一系触媒のいずれであってもよいが、一般的に、塩基性触媒は酸性触媒より効果的である。例えば、長鎖アルキルメタクリル酸エステルは、塩基性触媒の存在下における長鎖アルコールとメチルメタクリレートの交換反応によって生成される。
【0004】
バイオディーゼルは、ナトリウムメトキシドやカルシウム酢酸塩等の同種系塩基性触媒、ならびに酸化亜鉛及びアルミナの混合酸化物又はアルミン酸亜鉛(アルミナの上に酸化亜鉛が担持されて、高温でか焼されたもの)等の固体塩基性触媒を用いてメタノール又はエタノールで植物性油脂(トリグリセリド)をエステル交換することによって生産されてもよい。これは、米国特許第6,712,867号明細書、第5,525,126号明細書に開示されるものである。固形アルミン酸亜鉛触媒は、例えば、米国特許第5,908,946号明細書ならびに米国特許出願公開第2004/0034244号で開示されるものである。
【0005】
米国特許第5,908,946号明細書は、酸化亜鉛又はスピネル型アルミン酸亜鉛等の固体触媒の存在下で植物性油脂又は動物性油脂をアルコールと反応させることによってエステルを作り出すための、ツーステッププロセスを開示している。第1のステップでは、トリグリセリドの変換は、概して90%を超える高変換が強制的に行われる。第2ステップでは、残存するトリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドが変換される。エステル交換は、約5.2バール(約725psia)、230〜245℃の温度で実行される。高変換は、比較的低い供給混合物の流速(0.5h−1以下の空間速度)を必要とする。
【0006】
米国特許第6,147,196号明細書は、不均一系触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で植物性又は動物性油脂から高純度脂肪酸エステルを作り出すためのプロセスを開示する。米国特許出願公開第2004/0034244号は、不均一系触媒(アルミン酸亜鉛)の存在下で、植物性又は動物性油脂とアルコールとからアルキルエステルを生成するプロセス手法に関連する。エステルは、2個の固定層リアクタ内でエステル交換によって生成される。第1リアクタでは、トリグリセリド高変換を得ることができる。第1のエステル交換反応流からグリセロールを切り離した後に、残余の未反応のトリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドは、第2リアクタでエステルに変換される。エステル交換は、200℃、約62バール(900psia)、及び0.5h−1の空間速度で実行される。
【0007】
W.Xie et al.(J.Mol.Cat.A:Chem.246,2006,pp24−32)は、か焼されたMg−Alヒドロタルサイト触媒の存在下での大豆油の加メタノール分解について述べている。500℃でのか焼により得られたMg/Al比が3.0のか焼ヒドロタルサイトは、前述の反応のための高い塩基性と好適な触媒活動を提供可能な触媒である。Xieらは、様々な温度でか焼されたヒドロタルサイトの可溶性塩基性を報告している。
【0008】
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも粉塵とNOを放出する。ジアルキルカーボネートがディーゼルエンジン排気の粉塵を減少させるのに有効であることが報告されている。米国特許第5,954,280号明細書によると、尿素とアンモニアは有効なNO還元剤である。しかしながら、ディーゼルエンジンに尿素とアンモニアを使用することには、実用的な問題及び利用困難性が存在する。米国特許第6,017,368号明細書は、ディーゼルエンジンからNOを減少させるのに有効であるとして、エチルカルバメートを開示している。米国特許第4,731,231号明細書(1988)は、昇華されたシアヌル酸がNOの除去または減少のための有能な物質であるかもしれないことを報告している。シアヌル酸の高温昇華は、イソシアン酸(HNCO)を生成し、これがNOを除去するものであると考えられている。欧州特許第0363681号と第0636681号は、ロースモーク平滑剤の成分として、脂肪族のトリオールかテトラオールの炭酸エステルを開示している。
【0009】
N−アリールメチルカルバメート系は、通常、塩基性触媒の存在下で芳香族アミンとジメチルカーボネートとの反応によって生産される。これは、塩基性触媒が存在しない場合の反応速度が遅いためである。N−アリールメチルカルバメート系は、高温でこれを分解して芳香族イソシアナートを生産することができる。例えば、トルエンジカルバメートは、触媒の存在下でトルエンジアミンとジメチルカーボネートとを反応させることによって生産される。トルエンジカルバメートの高温での分解は、トルエンジイソシアネートを生成する。
【0010】
有機カーボネート(炭酸のジエステル)は、溶媒、アルキル化物質、カルボニル化物質、共重合化物質、燃料添加剤等として利用することができる有用な化合物である。ジメチルカーボネート(DMC)は重要なジアルキルカーボネートであり、ジフェニルカーボネート(DPC,ジアリールカーボネート)を生産するための原料として一般的に用いられる。DMCを商業生産する様々な方法が存在する。そのような商業生産方法の1つとして、均一系触媒の存在下で環状カーボネートとメタノールとをエステル交換反応させることでDMCを生成するものがある。環状カーボネートとメタノールのエステル交換反応に均一系触媒又は不均一系触媒を用いることは種々の特許によって開示されているが、DMCの生産に異種系又は固体触媒を用いる商的慣行は現在存在しない。これは、不均一系触媒の寿命サイクルがそのようなプロセスには短いということに起因するものと思われる。DPCは、一般的に、ビスフェノールA等のジオールと共重合され、ポリカーボネートを生成する。ポリカーボネートは、メモリディスク、フロントガラス、工業プラスチック、光学材料等の特化された様々な用途に用いられている。
【0011】
ホスゲンプロセス不使用のジアリールカーボネートの生産のための最新の技術では、連続多段反応蒸留リアクタを用いて、同質系有機金属触媒の存在下でDMCとフェノールのエステル交換反応させることによってメチルフェニルカーボネートとメタノールを生成し、次いでメチルフェニルカーボネートの不均化を行ってDPCとDMCを生成することにより、DPC等の芳香族カーボネートを生成する。好ましい均一系触媒はチタンアルコキシドである。そのようなプロセスが、例えば、米国特許第4,045,464号、第4,554,110号、第5,210,268号及び第6,093,842号明細書に開示されている。均一系触媒は、生成物流のうちの固体として最も重い部分から回収され、リサイクルのために可溶性均一系触媒に変換されてもよい。
【0012】
DPCの生産に均一系触媒を用いる場合、特に、触媒が比較的大きい供給速度で使用されている場合などにおいて、均一系触媒を生成物から分離する必要があることが多い。ジアリールカーボネートの生産に均一系触媒を用いることに関するこの点およびその他の不利益を緩和するために、米国特許第5,354,923号及び第5,565,605号明細書、ならびにPCT出願公開公報03/066569号は、不均一系触媒を用いた代替的プロセスを開示している。例えば、米国特許第5,354,923号明細書は、DECあるいはDMC及びフェノールからEPC,MPC,DPCを作成することを例示するために、粉末状の酸化チタン触媒を開示している。米国特許第5,565,605号明細書は、第4族元素を触媒として含む、エステル交換反応及び不均化反応に用いる微孔性材料を開示している。しかしながら、粉末状の固体触媒は、一般的に、DPC又はメチルフェニルカーボネートの商業的な大量生産には適していないか、あるいはあまり好適ではない。国際公開公報03/066569号は、酸化チタンをシリカ上に担持することで作成した不均一系触媒の存在下で、ツーステップ固定層プロセスによってDMCをフェノールと反応させることでDPCを連続生成するプロセスを開示している。
【0013】
Z−H.Fu、Y.Ono(J.Mol.Catal.A.Chemical,118(1997),pp.293−299)及び特開平07−6682号公報は、DMCとフェノールのエステル交換反応によりMPCとし、シリカ、ジルコニア、チタン等の無機担持体に担持されたMoO又はVの存在下でMPCを不均化してDPCとすることによってジフェニルカーボネートを生成するための不均一系触媒を開示している。エステル交換反応及び不均化反応は、リアクタと、副生成物を蒸留により除去する蒸留塔とからなるリアクタ蒸留塔において行われる。
【0014】
米国特許出願公開第2007/0093672(‘672)号及び第2007/0112214(‘214)号(現在では米国特許第7,288,668号)は、DPCを含むジアリールカーボネートなどの様々な有機カーボネートを不均一系触媒の存在下で生成するプロセスを開示する。‘214号公報では、必要な反応(エステル交換反応及び不均化反応)は、不均一系触媒の存在下で、液相で行われる。エステル交換反応及び不均化反応のための複合固定床リアクタは、単一の蒸留カラムに接続されており、エタノールやDECなどの軽化合物はオーバーヘッド留分として除去され、DPCを含む高沸点化合物は、混合底部留分として除去される。その後、DPCはその底部留分から回収される。
【0015】
‘672号公報では、エステル交換反応と不均化反応に用いられる様々な固体触媒上で必要な反応を二重相(気相及び液相)反応によって行うことでジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを作成するプロセスを開示している。有機カーボネートを生産する化学反応は、連続固定床リアクタ内で行われ、この一方で、好ましくない平衡反応を望ましい生成物へとシフトさせるために、液相から気相における軽副生成物の分離が行われる。このプロセスは、特に、EPC(エチルフェニルカーボネート)などのアルキルアリールカーボネート、及びDPC(ジフェニルカーボネート)などのジアリールカーボネートの生産に有用である。また、このプロセスは、DECなどのジアルキルカーボネートの生産に有用である。連続固定床リアクタが、サイドドローストリーム及び還流ストリームを介して単一の蒸留カラムの異なる位置に接続されている。蒸留カラムはまた、連続している最後のリアクタの上であるとともに連続している第1リアクタの下となる位置に、分離ステージを備えている。不均一系触媒は、Ti,Zr,Nb,Hf,Ta,Mo,V,Sb等の1つ又は2つの金属酸化物を、例えばシリカゲル等の多孔質担持体の上に堆積することで作成されてもよい。不均一系触媒はまた、Ti,Zr,Nb,Hf,Ta,Mo,V,Sb等の元素からの1つ又は複数の有機金属化合物を、表面にヒドロキル基あるいはヒドロキル基及びアルコキシ基の混合物を有する多孔質担持体の上に接合することで作成されてもよい。
【0016】
不均一系触媒を用いて有機カーボネートを生産する様々なその他のプロセスが、米国特許第5,231,212号,第5,498,743号,及び第6,930,195号明細書に開示されている。
【0017】
P.Ball et al.(C1 Mol.Chem.Vol.1,1984,pp.95−108)は、様々な同種系あるいは不均一系触媒の存在下におけるジアルキルカーボネートの生産に際する化学的現象について研究している。例えば、ジメチルカーボネートは尿素のアルコール分解によって生成される。ジブチルすずジメトキシドが特に効果的な触媒であることが報告されている。不均一系触媒が、例えば4−ジメチルアミノピリジンやPPh等の、共触媒の存在下における科学的現象に有効であることもまた報告されている。報告のあった不均一系触媒は、Al、Sb、及びシリカである。溶融したSiOは触媒ではなく、これはPPhの存在下で触媒化するものである。
【0018】
米国特許第7,074,951号明細書では、ジアルキルカーボネートは、トリエチレングリコールジメチルエーテル(triglyme)等の高沸点電子ドナー原子を含む溶媒の存在下における同種系すず錯体触媒の存在下でのアルコールによる尿素のアルコール分解によって生成される。本願では、DMCを約1500時間連続して生産する生産能力を具現している。
【0019】
EP1629888 and D. Wang et al.(Fuel Processing Tech.88,8,2007,pp807−812)は、DMC及びDECがシリカに担持された酸化亜鉛及び酸化亜鉛の存在下で生成されることを開示している。この文献では、触媒の安定性または触媒の寿命サイクルについて何も記載されていない。
【0020】
エステル交換反応及び不均化反応における触媒の不活性化は、触媒の表面及び孔上への重ポリマーの堆積によって引き起こされている可能性がある。ポリマー堆積による触媒の不活性化速度は、反応混合物内のアルキルアリールカーボネート、ジアリールカーボネート、あるいはこれら両方の濃度に応じて増大する。不均一系触媒上でのポリマーの脱重合化については、‘672号公報に開示されている。しかしながら、脱重合化では、固体触媒活性の部分的な回復しか得られない場合がある。
【0021】
米国特許第6,768,020号及び第6,835,858号明細書は、ジアルキルカーボネートとその副生成物のプロピレングリコールを、アルミナ、シリカ等に担持された酸化ランタンや酸化亜鉛などの固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートとDMC、水、あるいはそれら両方との反応によって生成するプロセスを開示している。触媒の不安定性は、米国特許第6,768,020号明細書において、アルミナやシリカ等の担持体上に大量の酸化ランタンを堆積させることにより部分的に解決されている。
【0022】
触媒の不活性化を補償する好適な技術に、触媒が不活性化するのに応じた反応温度のランプアップ(ramping up)がある。この技術では、しかしながら、不均一系触媒の不活性化を促進してしまうことが多々ある。
【0023】
不均一系触媒を用いた商業生産では、固体触媒の長期間安定したパフォーマンスが一般的に要求される。触媒のコスト、触媒の交換によるダウンタイム、ならびに本発明の業界において既知のその他の要因を鑑みると、不均一系触媒の最短の寿命は、プロセスによって異なるが、概して3ヶ月、6ヶ月、あるいは1年よりも長い。
【0024】
上記の特許ならびに公開された文献に記載されるように、様々なエステル交換反応における異種系触媒作用が可能であるが、それらは、触媒の寿命あるいは寿命サイクルについて報告していない。本願発明者は、そのような不均一系触媒が望ましからぬ短い寿命サイクルを有していると感じていた。
【0025】
このように、不均一系触媒を用いたエステル交換反応及び/又は不均化プロセスにおいて、触媒のパフォーマンスを改善する要望が存在する。
【発明の概要】
【0026】
1つの側面では、本明細書で開示される実施例は、反応物質と微量の可溶性有機金属化合物を、アルコール分解固体触媒を備えたリアクタに供給する工程を備えたアルコール分解プロセスに関しており、可溶性有機金属化合物とアルコール分解固体触媒は、それぞれ第2族〜第6族元素を有している。いくつかの実施例では、固体触媒と有機金属化合物は、同一の第2族〜第6族元素を有していてもよい。
【0027】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、アルコールと、少なくとも尿素、有機カルバメート、環状カーボネートのうちの1つを含むアルコール分解反応物とをアルコール分解固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、第1反応ゾーンに可溶性有機金属化合物を供給する工程とを備えたジアルキルカーボネートを生成するプロセスに関しており、アルコール分解固体触媒と可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0028】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、ジアリールカーボネートを生成するプロセスに関しており、このプロセスは、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを、エステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程とを備え、エステル交換反応固体触媒及び可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0029】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、アルキルアリールカーボネートを生成するプロセスに関しており、このプロセスは、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを、エステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程とを備え、エステル交換反応固体触媒及び可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0030】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、バイオディーゼルを生成するプロセスに関しており、このプロセスは、アルコール及びグリセリドを、エステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程を備え、エステル交換反応固体触媒及び可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0031】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、アルキルアリールカーボネートを生成するプロセスに関しており、このプロセスは、芳香族ヒドロキシ化合物及びジアルキルカーボネートを、エステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程とを備え、エステル交換反応固体触媒及び可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0032】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、バイオディーゼルを生成するプロセスに関しており、このプロセスは、アルコール及びグリセリドを、エステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程を備え、エステル交換反応固体触媒及び可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有している。
【0033】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、アルコール分解固体触媒を再活性化させるプロセスに関しており、このプロセスは、触媒上に堆積したポリマー材料を除去する工程と、固体触媒上に触媒作用活性金属を再堆積させる工程とを備える。
【0034】
その他の側面及び作用効果は、以下の記載及び本明細書に添付の特許請求の範囲より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1は、本明細書で開示される実施例におけるジアリールカーボネートの生産プロセスを表わす概略プロセスフロー図である。
【0036】
図2は、本明細書で開示される実施例におけるジアリールカーボネートの生産プロセスを表わす概略プロセスフロー図である。
【0037】
図3は、本明細書で開示される実施例におけるジアリールカーボネートの生産プロセスを表わす概略プロセスフロー図である。
【0038】
図4は、均一系触媒を用いたエステル交換反応を図示したものである。
【0039】
図5は、本明細書で開示される実施例における触媒再活性化後の触媒活性を図示したものである。
【0040】
図6は、本明細書で開示される実施例において、微量の可溶性有機金属化合物がリアクタに供給されたときの固体触媒の活性を図示したものである。
【0041】
図7は、微量の可溶性有機金属化合物がリアクタに追加されたときの不均一系触媒活性と固体触媒活性を比較した図である。
【0042】
図8は、本明細書で開示される実施例において、微量の可溶性有機金属化合物がリアクタに供給されたときの固体触媒の活性を図示したものである。
【0043】
図9Aおよび9Bは、本明細書で開示される実施例において、微量の可溶性有機金属化合物がリアクタに供給された場合におけるEPCならびにDPC生産時の固体触媒の活性をそれぞれ図示したものである。
【0044】
図10は、触媒がエステル交換反応を行うと同時に接合される場合におけるEPC生産時の不均一系触媒の活性を図示したものである。
【0045】
図11は、本明細書で開示される実施例における、固体触媒の存在しない状態におけるEPCのDPC及びDECへの変換を図示したものである。
【0046】
図12は、本明細書で開示される実施例において、固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートをエタノールでアルコール分解した結果として生成されるEC及びプロピレングリコールを表わす図である。
【0047】
図13は、均一系触媒を用いたDEC生産の結果を表わす。
【0048】
図14は、本明細書で開示される実施例において、固体触媒を用いたDEC生産の結果を表わす。
【0049】
図15は、本明細書で開示される実施例における固体触媒を用いたジアルキルカーボネートの生産プロセスを表わす概略プロセスフロー図である。
【0050】
図16は、固体触媒を用いてエチルカルバメートからDECを生産した結果を表わす。
【0051】
図17は、本明細書で開示される実施例において、固体触媒を用いてキャノーラ油をメタノールでアルコール分解した結果を表わす。
【0052】
図18は、本明細書で開示される実施例において、固体触媒の存在下でプロピレンカーボネートをエタノールでアルコール分解することによってDEC及びプロピレングリコール副生成物を連続的に生成するプロセスを表わす概略プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
1つの側面において、本明細書で開示される実施例は、固体触媒を用いたアルコール分解、エステル交換反応、及び/又は不均化プロセスに関する。以下に用いられるように、アルコール分解は、有機ヒドロキシル化合物(アルコール)が、生成物及び副生成物を生産するための2つの反応物のうちの1つとして含まれる様々な化学反応を表わしている。アルコール分解は、炭素原子と分子のヘテロ原子Yとの(C−Y)結合をアルコール分子(ROH)によって切断することと定義することができる。アルコール分解は、分子のカルボニル基を用いた反応であり、カルボニル基自体が生成物である分子内に保持される。すなわち、C−Y結合のC原子は、分子のカルボニル基の炭素原子である。一般的に、アルコール分解は可逆反応であり、以下のように表わすことができる。ここで、Yはヘテロ原子又は官能基のヘテロ原子であり、Rは1又は複数のヘテロ原子を有するアルキル基、アリール基、又は官能基である。
【化1】

【0054】
アルコール分解反応の例として、アルコールと炭酸のジエステル、カルボン酸のエステル、尿素、及びカルバメートとの反応がある。ジアルキルカーボネートのフェノールを用いたアルコール分解(文献では、しばしばエステル交換反応と称される)では、アルキルアリールカーボネートとアルコールが生成される。カルボン酸のエステルのアルコールによるアルコール分解では、エステルのアルキル基がアルコール分子のアルキル基と置換され、新たなアルコール分子が生成される。尿素のアルコールによるアルコール分解では、有機カルバメートとアンモニアが生成される。有機カルバメートのアルコールによるアルコール分解では、ジアルキルカーボネートとアンモニアが生成される。アルコール分解反応の具体例として、EPCとエタノールを生成するDECとフェノールのエステル交換反応、有機カルバメート又はジアルキルカーボネート及びアンモニアを生成する尿素又は有機カルバメートのアルコールによるアルコール分解、メチルエステル(バイオディーゼル)とグリセリンを生成するトリグリセリドとメタノールのエステル交換反応等がある。
【0055】
非対称炭酸ジエステルの不均化と、ジアルキルカーボネートと有機アミンの反応は、反応物としてアルコールを含まないが、利便性を鑑みて、これらのタイプの反応についてもここではアルコール分解反応として定義する。これは、RA基(Rはアルキル又はアリール、Aは酸素原子又は窒素原子)が分子レベルでの当該反応のメカニズムに関係するためである。よって、エステル交換反応と不均化は、様々な実施例の記載において、必要に応じてアルコール分解の同義語として使用される。そのようなアルコール分解反応の一部は、以下の反応式で表わすことができる。
【化2】

【0056】
他の側面では、本明細書で開示される実施例は、固体触媒の触媒活性を長期間にわたって維持するための新規な技術に関する。本明細書において、固体触媒のサイクルタイムまたは寿命サイクルは、意図する化学反応のために、固体触媒を問題なく連続的に使用可能な時間として定義される。例えば、触媒が6ヶ月間の使用の後に触媒再生や交換を必要とする場合、この触媒の寿命サイクルまたは時間は、6ヶ月である。ここに開示される技術において、アルコール分解プロセスの固体触媒は、様々な実施例において、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年又はそれ以上の長期のサイクルタイムの間その触媒活性を維持するものである。
【0057】
DECとフェノールのエステル交換反応の間に、不均一系触媒(シリカ上に固定された酸化チタン及びニオブと酸化チタンとの混合酸化物)の不活性化が本発明者によって観察され、‘672号公報のテスト4で報告された。触媒活性を向上させるために触媒上に堆積したポリマーを脱重合化することは、‘672号公報のテスト6で行われている。しかしながら、脱重合化による触媒の再活性化は、もとの触媒活性の部分的な回復という結果しかもたらすことができなかった。触媒の不活性化の特性は、当時においてよく理解されていなかった。
【0058】
驚くことに、例えばDPCを作成するための不均一系触媒等の異質系エステル交換反応触媒は、ポリマー堆積及び触媒作用活性金属成分の浸出(leaching)という、主に2つの理由によって不活性化することが発見された。環状カーボネートをアルコールによってエステル交換反応することによってジアルキルカーボネートを作成するための不均一系触媒は、主に、触媒作用活性金属成分の浸出によって不活性化する。
【0059】
不均一系触媒上でのアルコール分解又はエステル交換反応の間に、様々な反応条件下において、固体触媒の触媒作用活性金属成分は異質系酸化金属触媒から浸出することがあり、様々な多孔性担持体に固定された有機金属触媒が反応媒体の中へと浸出することがある。これは、触媒の恒久的な不活性化を生じさせる。これは、様々な有機カーボネートの連続的生産に用いられる商品としての不均一系触媒を、許容できない程に短命化することがある。さらに、上述したように、ポリマー堆積はエステル交換反応触媒のパフォーマンスに影響することがある。さらなる触媒の不活性化モードに汚染化がある。
【0060】
商業用固定床リアクタで用いられる不均一系触媒は、タイムサイクル並びにトータル的なサービスタイムの両方において、合理的な長命性を有する必要がある。汚染化がないと仮定し、かつ、不均一系触媒へのポリマーの堆積がないか、あるいは少量である場合には、不均一系触媒からの活性金属成分の溶解割合が触媒の長命性を決定しうる。
【0061】
本明細書で開示される実施例は、様々な有機化合物を商業的スケールで連続的生産するのに適するように、固体触媒活性を、長期にわたって定常、あるいはほぼ定常的に維持するプロセスに関する。このようなプロセスは、特に、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート、アルキルアリールカーボネート等の様々な有機カーボネートの連続生産、ならびに、バイオディーゼルの生産等の、その他のエステル交換反応に有用である。本明細書で選択的に開示される実施例は、有機カーボネート、カルボキシル酸エステル、あるいはその他の有機カルバメートを連続生産する大規模な商業用リアクタにおいて、安定した触媒活性を長期にわたって維持する方法に関する。
【0062】
長期のサイクルタイムにわたって固体触媒の触媒活性を維持する新規な技術は、固体触媒を備えたリアクタへの液体供給流(供給ストリーム)に微量の可溶性活性金属成分を添加することで、固体触媒の触媒活性を、長期のサイクルタイムにわたって定常、あるいはほぼ定常的に維持することができる。予期せぬことに、例えば活性金属成分を触媒に再度堆積させること等によって、固体触媒を備えたリアクタへの液体供給流に微量の可溶性活性金属成分を添加することで、金属浸出による固体触媒の金属損失が相殺されることが発見された。これにより、長期のサイクルタイムにわたって固体触媒の触媒活性を定常、あるいはほぼ定常的に維持するという結果が得られる。例えば、本発明者の現在の鋭意努力により、固体触媒を備えたリアクタへの液体供給流に微量の可溶性活性金属成分を添加することで、触媒活性を1年以上維持することが可能であることがわかっている。
【0063】
固体触媒の活性を維持するために必要とされる活性金属化合物の量は、特定の活性金属成分、反応物、その他の供給成分等に応じて、1ppm以下から約3000ppmの幅を有している。例えばエステル交換反応による有機カーボネートの生産のための供給物内の活性金属の量は、均一系触媒のみを用いた比較対象となりうるプロセスにおける均一系触媒の濃度よりも1桁、2桁、又はそれ以上低くてもよい。いくつかの実施例では、活性金属化合物は、触媒作用反応ゾーンに流入する液体の総重量に基づいて、1〜400ppm/重量であり、その他の実施例では10〜300ppm/重量であり、その他の実施例では15〜200ppm/重量であり、その他の実施例では20〜200ppm/重量であり、その他の実施例では30〜100ppm/重量の割合で供給されてもよい。
【0064】
例えば、固体触媒が第2族〜第6族金属などの活性金属を有している場合、これと同一の第2族〜第6族の活性金属を含む微量の可溶性活性金属化合物が、固体触媒の活性を維持するためにリアクタに供給されることがある。この具体例として、固体触媒がチタンを活性金属として有する場合には、チタンを含む可溶性有機金属化合物を用いることができる。
【0065】
例えば、不均化反応リアクタを備える連続エステル交換反応リアクタ等の連続リアクタのが使用される場合、それぞれのリアクタにおける触媒活性を維持するために、微量の可溶性有機金属化合物をそれらのリアクタの1つ又は両方に供給することができる。いくつかの実施例では、微量の可溶性有機金属化合物を連続リアクタ群の第1リアクタにのみ供給することで、それぞれのリアクタにおける触媒活性を維持することができる。例えば、エステル交換反応リアクタがチタンとニオブの混合酸化物固体触媒を備え、不均化反応リアクタがシリカに接合した固体チタンアルコキシドを備える場合、例えば酸化チタン等の可溶性有機チタン化合物を第1リアクタに少量添加することで、両方の種類の固体触媒のサイクルタイムを延ばすことができる。
【0066】
可溶性有機金属化合物は、要望に応じて回収され、また、リサイクルされてもよい。いくつかの実施例では、リサイクルのためにリアクタの流出物流から活性金属を回収することが経済的ではない場合がある。回収される場合、リアクタの流出物流に含まれる活性金属成分は、重底流から固形材料として回収され、回収された固形材料と有機カーボネートあるいは有機カーボネートとアルコールの混合物とを昇温して反応させることによって、リアクタにリサイクルされる可溶性有機金属化合物に変換される。回収された有機金属化合物は、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)、あるいはそれらの混合物であってもよい。
【0067】
以上によって得られたアルコール分解固体触媒の延長された寿命により、アルコール分解及び/又はその他のエステル交換反応において、有機カーボネートの生産のために商業的に利用可能な固体触媒プロセスを得ることができる。触媒の延長されたサイクルタイムとより低減した分離要件(より少ないユニット作業により、潜在的な投資及び作業コストが節約される)によって、顕著な節約を実現することができる。
【0068】
固体触媒へのポリマー堆積もまた、触媒活性を損じさせる。このような場合、不活性化された触媒は、本明細書ならびに米国特許出願公開第2007/0093672号で開示される脱重合化技術によって再生することができる。脱重合化もまた、金属損失を生じさせることがある。不均一系触媒が触媒活性をもとの活性に対して許容なレベルまで回復不能な以下の脱重合化では、本明細書で開示される触媒の再活性化技術によって不均一系触媒が金属の再堆積化を必要とすることがある。
【0069】
ポリマー堆積及び金属浸出の両方によって触媒の不活性化が引き起こされる場合、触媒活性は本明細書で開示される触媒の再生及び再活性化技術によって回復させることができる。触媒の再活性化は、第1ステップにおける脱重合化と表面調整と、第2ステップにおける金属再堆積化の2つのステップからなる。第1ステップでは、不活性化された固体触媒には脱重合化ステップが実施されて固体触媒上のポリマーが除去され、次いで乾燥による表面調整が行われる。第2ステップでは活性金属成分の再堆積化が実行され、金属損失を補償する。不活性化された固体触媒の再活性化は、以下で詳しく説明する。
【0070】
触媒再活性化及び/又は再生化が考慮される場合、触媒の再活性化及び回復プロセスを行っている間であっても連続的な生産を可能とするために複数のリアクタを並列に用いることが好ましい。
【0071】
上述したように、本明細書で開示される加アルコールによる固形物分解、エステル交換反応及び不均化反応プロセスは、固体触媒を備えたリアクタへ反応物質と微量の可溶性活性金属化合物を供給する工程と、固体触媒の存在下で反応物質同士を接触させて、反応物質の少なくとも一部をアルコール分解、エステル交換、あるいは不均化する工程を含んでいる。そのようなアルコール分解、エステル交換、あるいは不均化するプロセスは、例えば、その他の反応の中でも、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネート、バイオディーゼル、有機エステル、及びN−アリール及びN−アルキルカルバメート等の生産のための反応を含んでいてもよい。
【0072】
上記では、概してアルコール分解とエステル交換反応と不均化反応について述べているが、上記のプロセスは以下に記載の有機カーボネートの生産に応用してもよい。米国特許出願公開第2007/0093672号(‘672)及び第2007/0112214号(‘214)では、上述したように、不均一系触媒を用いた有機カーボネートの生産が開示される。それらは参照により本明細書に援用される。
【0073】
有機カーボネート及び有機カルバメートの生産
【0074】
有機カーボネートあるいは有機カルバメートは、単一のあるいは複数のリアクタシステムを用いて、1個の固体触媒又は2個の異なる固体触媒の存在下で連続的に生成されてもよい。固体触媒又は複数の触媒は、触媒のサイクルタイムを延長させるために、微量の可溶性活性金属化合物をリアクタの供給流に添加することを必要とする。固体触媒は如何なる物理的な形状を有していてもよく、また様々な有機金属化合物が多孔性担持体に固定されたものを含んでいてもよく、及び/又は第2,3,4,5,6族の1成分あるいは複数成分を含む酸化物が適切な多孔性担持体に固定されたものを含んでいてもよい。触媒は、酸性触媒又は塩基性触媒であってもよい。担持触媒における触媒活性金属又は金属成分の総量は、約0.02wt%から約20wt%の範囲内にあってもよく、他の実施例では約0.05wt%から約10wt%の範囲内にあってもよい。
【0075】
本明細書で開示される実施例で使用されるリアクタは、如何なる物理的デバイスを備えていてもよく、また2以上のデバイスの組合せであってもよい。リアクタは、気液分離及び気体/液体の移行のための様々な内部デバイスを備えていてもよい。
【0076】
微量の可溶性活性金属化合物を供給流に添加することによって、安定した触媒活性を驚くほど長い期間にわたって得ることができる。例えば、微量の可溶性活性金属化合物をエチルフェニルカーボネートとジフェニルカーボネートの混合物を生成する固定床リアクタに供給されるストリームに添加することで、運転時間にして14ヵ月以上のサイクルタイムを得ることができる。このような安定した触媒のパフォーマンスは、所望の生成物のより高い生産性という結果につながっていく。複数のリアクタを有する実施例では、微量の活性金属成分は第1リアクタの供給流にのみ添加されてもよい。並列の多段リアクタシステムでは、微量の活性金属成分はすべてのリアクタに添加されてもよい。
【0077】
活性金属成分は、周期表の第2,3,4,5,6族金属の1つ又は複数の金属を含む化合物または複数の化合物の混合物であってもよい。活性金属の例として、Mg,Ca,Zn,La,Ac,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Nb,W,Sn,Pb,Sb等が挙げられる。活性金属化合物は反応混合物に可溶であるべきであり、あるいは少なくともエマルジョンの形態であるべきである。供給流における微量金属の量は、プロセス流からリサイクルのために金属を回収する必要がない程度に十分に小さくてもよいが、そのようなプロセスを行うことを選択してもよい。
【0078】
必要であれば、リアクタ内の不活性化された触媒はそのままの位置で、比較的短時間で再活性化されてもよく、これによりその他の稼動中のリアクタと交代してもよいし、あるいは、その稼動を再開してもよい。よって、本明細書で開示されるプロセスの実施例では、触媒の寿命サイクルならびにその他の要因に応じて、スペアのリアクタを必要としてもよい。
【0079】
ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、エチルフェニルカーボネート等のアルキルアリールカーボネート、あるいはジエチルカーボネート又はジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートの生産に特に有用である。ジアリールカーボネートを生成するための反応は、例えば第1及び第2反応ゾーン等の、複数の反応ゾーンで行われてもよい。第1反応ゾーンは、主にジアルキルカーボネートと芳香族アルコールの複数のエステル交換反応を行ってアルキルアリールカーボネートを生成する役割を有するが、ここで少量のジアリールカーボネートも生成される。第2反応ゾーンは、アルキルアリールカーボネートの不均化を行ってジアリールカーボネートとジアルキルカーボネートを生成する役割を有する。固体触媒の第2反応ゾーンにおける存在は不要であるが、そこに固体触媒を用いることを選択してもよい。
【0080】
DMCやDEC等のジアルキルカーボネートは、同様に、プロピレンカーボネートあるいはエチレンカーボネート等の環状カーボネートとメタノール又はエタノールのエステル交換を行うことで生成される。ジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを生成する反応は、反応混合物から生成物を回収する材料分離ユニットを備える複数のリアクタシステムにおいて行われる。未反応の反応物質と中間物質は、リサイクルのために回収されてもよいし、第2の不均化又は第2のエステル交換を行って終了させてもよい。エステル交換反応ゾーンにある液状の反応混合物内の未反応のフェノールは、アルキルフェニルカーボネートの不均化を行う前、あるいは不均化の後に分離してもよい。さらに、副生成物であるアルキルフェニルエーテルを反応システムから取り除くための様々なオプションが存在する。材料分離ユニットを有するリアクタの適切な配置は、当業者が通常の能力を持って行う範疇の事項である。
【0081】
反応は、好ましくは混合相システムとして実施されることが好ましい。ここでは、反応物と生成物は液体及び気体であり、所望の方向へとその平衡をシフトさせることができる。この代替として、当業者は、反応生成物の沸点が、反応を行うのに好適な温度範囲よりも高いために平衡反応をシフトさせることができないか、あるいはできたとしても僅かである液相において、当該反応を行ってもよい。
【0082】
本明細書で開示される実施例は、ジエチルカーボネート又はジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートとフェノールとのエステル交換反応、及び、エチルフェニルカーボネート又はメチルフェニルカーボネート等のアルキルアリールカーボネートを不均化してジフェニルカーボネートを生成することによって、エチルフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネート等の有機カーボネートを生産する際においてもまた有用である。
【0083】
本明細書で開示される実施例は、環状カーボネートとアルコールのエステル交換反応によってジメチルカーボネート又はジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを生産する際においてもまた有用である。ジアルキルカーボネートを生産するその他の実施例では、ジアルキルカーボネートは固体触媒の存在下で尿素とアルコールのアルコール分解によって生成されてもよい。例えば、米国特許第7,074,951号では、ジアルキルカーボネートは、高沸点電子ドナー原子を含む溶媒の存在下で同種系の有機すず錯体触媒を用いて生成される。本明細書で開示される実施例では、そのようなプロセスが固体触媒上で行われてもよい。本明細書で開示される実施例では、ジアルキルカーボネートと芳香族アミンとを固体触媒の存在下で反応させることによって、N−アリールアルキルカルバメート等の様々な有機カルバメートが有用に生成されてもよい。
【0084】
本明細書に記載の反応を実行するために、どのようなリアクタが用いられてもよい。有機カーボネート又は有機カルバメート反応に関連する反応を行うのに好適なリアクタは、蒸留塔リアクタ、分割壁蒸留塔リアクタ、伝統的な筒状の固定床リアクタ、気泡塔リアクタ、蒸留塔を有する、あるいは有していないスラリーリアクタ、間欠的な流動リアクタ、スラリー状の固体触媒がカラムを流下する触媒蒸留塔であってもよく、あるいは、これらの如何なる組合せによってもよい。
【0085】
本明細書で開示される実施例において有用な多段リアクタシステムは、連続多段リアクタあるいは第1反応ゾーンに対して並列な多段リアクタを含んでいてもよい。仮に、反応物からアルキルアリールカーボネート等の中間生成物を経て生成物が生成される場合、第1反応ゾーンは主にその中間物質を生成するために機能するが、第1反応ゾーンでは、少量の反応生成物もこれと同時に生成される。
【0086】
アルコールとジアルキルカーボネートを除去した後の第1反応ゾーンからのプロセス流は、副生成物であるジアルキルカーボネートとともにジアリールカーボネートが生成される第2反応ゾーンへと入っていく。軽反応生成物を触媒反応ゾーンから除去する間に、エステル交換反応が同時に行われてもよく、これにより平衡反応が順反応へとシフトする。
【0087】
有機カーボネート又は有機カルバメートを生成する反応は、一般的に、いくつかの実施例では約104℃から約260℃(約220°Fから約500°F)であり、その他の実施例では約121℃から約232℃(約250°Fから約450°F)である。反応の圧力は、反応物と生成物の沸点、使用されるリアクタの種類、及び反応ゾーンが液相と二重層(気相、液相)のいずれであるか等によって異なる。一般的に、リアクタ圧力は、いくつかの実施例では約22バール(約319psia)の低大気圧力であり、その他の実施例では約0.005バールから約17バール(約0.1psiaから約250psia)である。ある種の実施例では、反応は、反応生成物の分離に影響しない適切な溶媒を用いて行われてもよい。
【0088】
いくつかの選択された実施例において、本明細書で開示される実施例は、ジアルキルカーボネートとフェノールからジフェニルカーボネート(DPC)を生産する場合等の、ジアルキルカーボネートと芳香族ヒドロキシ化合物からジアリールカーボネートを連続的に生産する際に特に有用である。DPCを生産する1つのルートに、1個又は複数の固体触媒の存在下でジエチルカーボネート(DEC)とフェノールを反応させる手法が挙げられる。DECを用いてDPCを生成する利点として、工場の設置に際する省エネルギー性と省材料性が挙げられる。これは、共沸混合物からの材料の分離が不要だからである。全ての材料は、それを生成するためにエネルギーを要する。よって、建設材料とエネルギーを節約することで、“グリーン”であるということができる。これに反して、ホスゲンを使用せずにDPCを生成する現行の商業プロセスでは、DMCを原料の1つとして用いている。DMCとメタノールは、共沸混合物を生成するプロセス流から溶媒による抽出蒸留によって分離する必要がある。抽出蒸留ユニットの稼動は、多大なエネルギーを要する。DMCを介してDPCを生産することは可能であるが、省エネルギー化と省材料化の観点から、DECの使用がより好適である。
【0089】
本明細書で開示される実施例はまた、環状カーボネートとメタノールやエタノール等のアルコールとのエステル交換反応によってジアルキルカーボネートを生産する際にも有用である。
【0090】
DPCをジアルキルカーボネート及びフェノールから生成する工程は、第1反応ゾーンでのエステル交換反応とこれに続く第2反応ゾーンでの不均化の、二つの反応ステップを含む。この反応は、以下のように表わすことができる。
【化3】

【化4】

ここで、全体の反応は以下のように表わすことができる。
【化5】

【0091】
反応(1)は、アルキルフェニルカーボネートとアルコールを生成する、ジアルキルカーボネートとフェノールのエステル交換反応である。反応(2)は、ジフェニルカーボネートを生成するアルキルフェニルカーボネートの不均化に関する。これらの反応ステップはともに、平衡反応である。しかしながら、不均化は熱力学的にはエステル交換反応よりも好ましい。エステル交換反応は、主に第1反応ゾーンで行われ、ここには単一のリアクタあるいは複数のリアクタシステムが含まれている。不均化反応はその後に、主に第2反応ゾーンで行われる。
【0092】
環状カーボネートとアルコールのエステル交換反応によってジアルキルカーボネートを生成する工程もまた、ツーステップの平衡反応である。環状カーボネートとアルコールのエステル交換反応には、酸性及び塩基性触媒の両方が用いられる。
【0093】
本明細書で開示される実施例によると、延長された触媒の寿命サイクルを得るために、微量の可溶性金属化合物がリアクタへの供給流に添加される。例えば、ジアルキルカーボネート及びジオールを生成するための、環状カーボネートとアルコールのエステル交換反応では、固形の塩基性触媒あるいは酸性触媒が用いられてもよい。当業者は、アルコールの一部を水に替えてエステル交換反応を行ってもよい。代替的には、エステル交換反応は第1ステップで行われ、その後の第2ステップにおいて、主たる反応生成物としてグリコールを生成するために、未変換の環状カーボネートと中間物質の水―アルコール混合液との反応が行われてもよい。水の添加は、環状カーボネートの変換率又はジオールの生産性を向上させる。しかしながら、このような水による効果は、ジアルキルカーボネートの減産によってのみ実現されるものである。
【0094】
有機カーボネート及び有機カルバメートの生産に有用な触媒
【0095】
上述したように、有機カーボネート及び有機カルバメートの生産に有用な触媒は、周期表の第2,3,4,5,6族のうちの1つ又は複数の活性金属を有する、担持固体触媒を含んでいてもよい。本明細書で開示される実施例において有用な1つの触媒に、上記の元素のうち単一の有機金属化合物又は複数の有機金属化合物が多孔性坦持体に固定されているものが挙げられる。本明細書で開示される実施例で有用な多孔性坦持体は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基とアルコキシ基の混合物、塩素等の表面官能基を含んでいてもよい。坦持体の具体例には、シリカ、シリカ-アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、MCM−41、MCM−48、SBA−15等のゼオライト材料、及びバインダとゼオライトを含む複合材料が挙げられる。
【0096】
代替的な坦持体は、炭素及び/又は炭素質の材料を含んでいてもよい。上述したように、炭素及び炭素質の坦持体は、有機金属化合物をその表面に固定するために、ヒドロキシル基、カルボニル基、あるいは両方の表面官能基を有していてもよい。酸化金属が担持された触媒、水酸化物触媒、オキシ水酸化物触媒を準備するために、表面官能基は必須ではないが、いくつかの実施例では有用である。炭素質の坦持体は、木、ココナツ皮、でんぷん、セルロース、でんぷんとセルロースの混合物、砂糖、メチルセルロース等の炭水化物を、高温で制御加熱脱水することにより準備されてもよい。炭素質の坦持体は、担持されていてもよいし、されていなくてもよい。担持された炭素質の材料を準備するためには、炭水化物を適切な多孔性坦持体に堆積させ、次いで、不活性雰囲気又は不活性ガスと少量の酸素によって構成される雰囲気、そのストリームあるいは混合体を用いて、例えば250℃から1000℃の温度範囲等の高温で制御加熱脱水してもよい。炭素質の材料の坦持体は、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、シリカ−アルミナを含む合成及び天然粘土等の無機材料を含んでいてもよく、また、その他の周知の坦持体であってもよい。
【0097】
坦持体は、いくつかの実施例では、有機金属化合物と坦持体を接触させて固定化する前に孔内の凝縮水を除去する必要がある。ここでいう坦持体上の凝縮水は、担持体の化学組成によるものの、坦持体を乾燥ガスフローあるいは真空内で50℃から400℃の温度範囲で乾燥させることにより除去可能な水分である。ここでいう固体触媒は、1つまたは2つの活性触媒サイトを有する有機金属化合物を多孔性の固形坦持体に固定化することで準備することができる。固定化は、例えば、グラフティング、テザリング(tethering)、吸着等の手法を用いて行うことができる。例えば、多孔性坦持体上のチタンアルコキシド等の有機金属化合物を利用して触媒を準備する手法は、‘672号公報に開示されている。
【0098】
本明細書で開示される実施例で有用な触媒の第2の種類は、多孔性担持体に堆積された酸化金属、混合酸化金属、あるいはオキシ水酸化物を含む。このような種類の触媒の具体例も、‘672号公報に開示されている。
【0099】
坦持体は、様々な固定床リアクタに応じて、ペレット、押出形成品、球体、顆粒、ハニカム等の形状であってもよく、そのサイズは約1mmから約5mmの範囲であってもよい。粉末およびミクロスフィア状の坦持体も、スラリーあるいは撹拌式リアクタで使用される触媒を用意するために用いられる。
【0100】
上述した第2種類の触媒の準備は、表面官能基を有する坦持体を必須としていなくてもよい。しかしながら、シリカ、炭素質の材料、アルミナ等の表面官能基を有する坦持体は、チタンアルコキシド等の金属アルコキシドをシリカ上にグラフティングし、約90℃から約500℃で蒸し加熱あるいは加水分解及び/又は乾燥することでヒドロキシ金属/酸化金属触媒を用意する場合に用いることができる。
【0101】
酸化金属又はオキシ水酸化物触媒を準備するその他の手法に、所望の元素の塩又は異なる2つの元素の塩の混合物を坦持体に堆積し、約300℃から1000℃の温度で焼成して塩を酸化金属に分解する方法がある。
【0102】
プロセス条件下で、触媒反応ゾーンにおけるエステル交換反応及び不均化反応は、反応媒体内のアルキルアリールカーボネートの濃度が増大するのと同時に起こってもよい。上述した触媒の不活性化の2つの要因として挙げられた浸出とポリマー堆積は、反応条件下で同時に起こることがある。ポリマー堆積は恒久的なダメージを触媒に生じさせない一方で、反応条件下での活性金属成分の不均一系触媒からの浸出は、恒久的なダメージを触媒に生じさせる。エステル交換反応が低変換レベルの場合、あるいはアルキルアリール及びジアリールカーボネートの濃度が低い場合、触媒の不活性化は主に活性金属触媒成分が固体触媒から反応媒体へと浸出することにより起こる。換言すれば、全ての反応条件下における恒久的な触媒の不活性化の原因は、金属浸出である。
【0103】
エステル交換反応の変換が増大すると、触媒のポリマー堆積はさらに、急速な触媒の不活性化を引き起こす。ポリマー堆積は主に、アルキルアリール及びジアリールカーボネートの副反応(及び、ごく小規模な望ましくない副反応によって生成されるフェノール供給物内の潜在的に微量なポリヒドロキシ芳香化合物の不純物)の結果起こっている。よって、不均一系触媒の存在下でフェノールとジエチルカーボネート又はジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートとからジフェニルカーボネートを連続的に生成するためには、(1)ポリマー堆積と(2)活性金属触媒成分の分解/浸出の両方に起因する触媒の不活性化に対処する必要がある場合がある。ポリマー堆積は、上述したように、‘672号公報に開示されるように、触媒の再活性化を通じて、触媒作用反応ゾーンにおける芳香族カーボネートの変換率、濃度、あるいはそれら両方を調整することで対処することができる。浸出には、上述したように、微量の可溶性有機金属化合物を添加することで対処することができる。
【0104】
ジアルキルカーボネートとフェノールとのアルコール分解及び/又はエステル交換反応のために、シリカあるいは炭素質の材料等の坦持体への有機金属化合物の固定化(例えば、グラフティング、テザリング、吸着等)は、単一の反応ゾーンステップあるいは複数の反応ゾーンステップによって行われてもよい。ここで開示される有機金属化合物の具体例には、金属アルコキシド、アルコキシ塩化物、カルボン酸塩、炭酸塩等の、第2,3,4,5,6族元素が含まれる。活性金属の例として、MG、CA、ZN、LA、AC、TI、ZR、HF、V、NB、TA、CR、MO、W、Sn、Pb、Sb等が挙げられる。様々な実施例では、すずアルコキシド、アルキルすずアルコキシド、酸化アルキルすず、水酸化アルキルすず、二塩化ジアルキルすず、三塩化アルキルすず、ならびにこれらの種類の混合物、及びオキシアルコキシド金属[(RO)MO]、アルコキシ金属水酸化物[(RO)M(OH)]又はこれらのオキシアルコキシド及びアルコキシ水酸化物のオリゴマーが含まれる。ここで、Mは第4,5,6族のいずれかの元素であり、n=2,3,4のいずれかであり、x=0,1,2,3のいずれかであり、n+x=4,5,6のいずれかである。いくつかの選択された実施例では、有機金属化合物はチタンアルコキシド又はフェノキシド、アルキルアリールチタン酸塩、炭酸物エステルのチタン塩のうちの1つ又は複数であってもよい。また、金属アルコキシドは、アルコキシド又はアリールオキシドの炭素鎖の長さとアルキル基の構造に応じて、モノマー、様々なオリゴマー、様々なモノマーとオリゴマー種の混合物を含むことが理解される(例えば、Coordin.、Chem.Rev.,2(1967)299−318;J.Chem.、Soc.,3977(1955)を参照)。
【0105】
ここに記載するように、遷移金属のアルコキシドは、モノマーと様々なオリゴマーの全ての種を含む。例えば、チタンエトキシド(Ti(OEt))が主にトリマーとして沸騰エタノール又はベンゼン内に存在しているのに対し、チタンイソプロキシド等の立体障害チタンアルコキシドは、沸騰炭化水素溶液内ではモノマー状である。例えば、チタンイソプロキシドは、主にモノマーとして沸騰トルエン溶液内に存在すると考えられている。
【0106】
本明細書で開示される実施例で用いられる様々な多孔性坦持体は、表面官能基、アルコキシ基、又はこれらの両方を有していてもよい。多孔性坦持体を準備するために、気相、液相、又は気相−液相システムにおいて、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の多孔性の酸化金属坦持体を、いくつかの実施例では約130℃から約400℃の温度で、アルコール、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の有機カーボネートの1つ又は複数を含むストリームで処理することができる。その他の実施例では150℃から350℃であってもよい。いくつかの実施例では、ストリームは、0wt%から約20wt%の水を含んでいてもよく。その他の実施例では0wt%から約10wt%であってもよく、さらに他の実施例では約0.005wt%から約5wt%であってもよい。水はDMC及びDECに対する溶融性が低いため、ストリームは適切な量のメタノール及び/又はエタノールを水の溶媒として含んでいてもよい。いくつかの実施例では、商業的に利用可能な表面官能基を有するシリカゲルあるいはシリカを用いてもよい。オプションとして、いくつかの実施例では、当業者は、約80℃から約500℃の温度でシリカを液状水、ストリーム、それらの混合物で処理し、次いで約70℃から約800℃の温度で乾燥してもよい。その他の実施例では、約80℃から約500℃の温度であってもよい。
【0107】
遷移金属のシロオキサンおよびシロキサン化合物もまた、上述した多孔性坦持体に固定された固体触媒又は酸化金属触媒を準備するために用いられてもよい。シロオキサンおよびシロキサン化合物の例として、(RO)n―xM[―O−Si(O−R)、M(O−SiR、(RSiO)n−2MO等が挙げられる。ここで、各Rは個別のアルキル又はアリール基であり、n=3,4,5であり、x=1または2であり、n+x=4,5,6であり、Mは上述した第4,5,6族の遷移金属である。その他のシリコン金属化合物も、それを固定化することで固体触媒の触媒活性を起こすものであれば、本明細書で開示される実施例の範疇に含まれている。遷移金属のシロオキサンおよびシロキサン化合物は、‘672号公報及び‘214号公報で開示されるプロセス態様ならびに反応蒸留塔リアクタにおいて、可溶性有機金属化合物として用いることもできる。遷移金属の様々なオリゴマーおよびポリマーへテロシロオキサン又はヘテロシロキサンを用いることもでき、これらは固定化された固体触媒の準備に用いてもよいし、様々な実施例における可溶性有機金属化合物として用いることもできる。上述したように、EPC又はMPCのDPC及びDEC又はDMCへの不均化は、第2反応ゾーンにおいて固体触媒の存在しない状態で行われてもよく、有用な活性触媒種は、Ti等の遷移金属のシロオキサン又はシロキサン化合物を含んでいてもよい。
【0108】
シロキサンの酸化金属及びアルコキシドは、様々なオリゴマーを含んでいてもよい。様々なオリゴマーは、ブラッドリーによる論文に見ることができる(D.C.Bradley,Coordin.Chem.Rev.,2(1967)p.p.299−318);J.Chem.Soc.,(1955)3977)。当業者であれば、これらの化合物の1つを反応ゾーンへの供給物に微量添加することで、安定した触媒活性を得ることを選択することができる。
【0109】
均一系触媒の存在下で第2反応ゾーンにおいてジアリールカーボネート及びジアルキルカーボネートを生成するためにアルキルアリールカーボネートを不均化する際には、その均一系触媒は、アルキルアリールチタン酸塩、炭酸モノエステルのチタン塩、上述のチタンのシロキサン化合物のいずれかであってもよい。均一系触媒は、エステル交換反応ゾーンで用いられる固体触媒及び可溶性触媒から生じるものであることが理解される。
【0110】
本明細書で開示される様々な有機金属化合物は、供給流内の湿度に敏感であるため、反応ゾーンへの供給流内の水分保有量を調整することが重要となる。いくつかの実施例では、供給流内の水分保有量は約700ppmより少なく、その他の実施例では約600ppmより少ない。
【0111】
坦持体に固定された固体金属アルコキシド触媒は、in situ技術によってリアクタ内部で準備されてもよいし、あるいは、リアクタの外で準備されてもよい。in situ準備手法では、所定量の適切な坦持体がリアクタ内に配置され、凝縮水の少なくとも一部を除去するために、適切な温度による乾燥が行われる。その後、担持体は、いくつかの実施例では約周囲温度から約260℃(500°F)、また別の実施例では約37℃から約204℃(約100°から約400°F)の温度範囲で、単一又は複数の遷移金属の可溶性金属アルコキシド又は混合金属アルコキシドを含む溶液と接触される。この接触は、いくつかの実施例では約5分から約24時間であり、また別の実施例では約15分から約15時間であり、これは、温度及び溶液内の活性金属成分の濃度に応じて異なる。過剰の金属アルコキシド溶液をリアクタから排出した後であって、かつ、不均化又はエステル交換反応での使用の前に、リアクタ内の触媒は溶媒(通常、金属アルコキシド溶液を用意する際と同一の溶媒)を用いて洗浄される。溶媒は、アルコール、エーテル、炭化水素、炭化水素とアルコールの混合物、ジアルキルカーボネーとフェノール又はアルコールの混合物、又はこれら全ての混合物であってもよい。
【0112】
別の形態では、金属が周期表の第2,3,4,5,6族のうちの1つまたはそれ以上からなる酸化金属触媒、混合酸化金属触媒、あるいは金属ヒドロキシ触媒もまた、本明細書で開示される実施例において用いられてもよい。いくつかの酸化金属触媒が周知である。例えば、P.Iengo et al.,Appl Catal.A: General 178(1999)97−109によると、チタンイソパーオキサイドを接合し、蒸気加熱/か焼することによりシリカ上に担持された酸化チタン触媒を準備することができる。担持触媒は、注入や共沈によって得られる触媒とは異なる触媒を得ることが可能な、強化改良されたオリジナルのシリカ表面を有する。
【0113】
担持金属又は混合金属ヒドロキシドあるいはオキシヒドロキシド触媒を準備するために、当業者は、グラフトされた金属アルコキシド触媒を上述したように加水分解してもよく、これに次いで、約50℃から110℃の温度範囲で乾燥してもよい。いくつかの実施例では、乾燥をしなくともよい。
【0114】
有機カーボネートを生成する反応を行う以前に、非担持の酸化金属触媒のプレコンディショニングが行われてもよい。プレコンディショニングは、いくつかの実施例では約125℃から約450℃の温度範囲で、また別の実施例では約150℃から約350℃の温度範囲で、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、又は酸化バナジウム等の多孔性の酸化金属触媒とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の有機カーボネートのストリームとを接触させることで行われてもよい。有機カーボネートは、気相、液相、あるいは混合相であってもよい。プレコンディショニングは、いくつかの実施例では約2分から約50時間の間行われてもよく、また別の実施例では約4分から約24時間の間行われてもよい。有機カーボネートを含むストリームは、水とアルコールを含んでいてもよく、存在する水の量は、いくつかの実施例では0wt%よりも多く、かつ10wt%よりも少なく、また別の実施例では0.005wt%よりも多く、かつ4wt%よりも少なくてもよい。触媒の選択性は、プレコンディショニングによって改善することができる。プレコンディショニングの後に、酸化金属触媒は、約80℃から約300℃の温度で、不活性ガスフロー内で約2分から約6時間の間乾燥されてもよい。
【0115】
アルコールによる環状カーボネートのエステル交換反応には、2種類の酸化金属触媒を用いることができる。その混合酸化金属触媒の第1種類は、周期表の第3,4,5,6族からの1又は2の元素を坦持体に坦持して有していてもよい。その混合酸化金属触媒の第2種類は、周期表の第2族から1又は2の元素及びランタノイド又はアクチノイドを坦持体上に有する固体塩基性触媒を含んでいてもよい。オプションとして、当業者は、シリカ坦持体に接合又はテザリングされた水酸化第4級アンモニウムを用いてもよい。酸化触媒は、通常、アルミナ又はシリカに担持されており、混合酸化物又は固溶体の形態をとっている。第2種類の固体触媒に有用な元素は、Mg、Ca、Zn、La等を含んでいてもよい。
【0116】
第2種類の触媒の活性金属成分は、エステル交換反応条件下において浸出してしまうことがあり、これにより、触媒の不活性化が生じることがある。実際に、シリカ担持体もまた浸出することがわかっているが、これは第2族の活性金属成分の速度よりも非常に遅い速度で生じる。シリカ担持体上のアルカリ金属不純物は、シリカの反応媒体への浸出を促進させることがあり、シリカ担持体のアルカリ金属不純物は最小限にとどめることが非常に好ましい。微量の可溶性有機金属化合物を供給流に添加することにより、固定床リアクタの固体触媒の寿命サイクルを延ばすことができる。このような可溶性化合物の例として、亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロポキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルキルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、Mg、Ca、Znプロピレングリセリド等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。
【0117】
Ca、Mg、Zn、Laの可溶性化合物は、これらの金属の酸化物または水酸化物を、いくつかの実施例では約105℃(221°F)から約260℃(500°F)、また別の実施例では約149℃(300°F)から約227℃(440°F)の温度で、アルコール、有機カーボネート、または有機カーボネートとアルコールの混合物で、液相または混合相(気液)システム内で反応させることにより得ることができる。このようにして準備された溶液は、微量のこれらの金属を長いサイクルタイムを得るためにリアクタへの供給流に添加するのに有用である。固体金属アルコキシド、水酸化金属、あるいは参加金属触媒の活性金属又は金属成分の総量は、約0.02wt%から約20wt%であり、好ましくは約0.05wt%から12wt%である。
【0118】
触媒の寿命サイクルと使用寿命の改善
【0119】
本明細書で開示される固体触媒は長い寿命サイクルを有しており、触媒の再生及び再活性化を多数回にわたって経験する可能性があり、これにより、長期の触媒使用期間を得ることができる。ここに開示される触媒の寿命サイクルの延長と触媒の再活性化の技術は、様々な有機カーボネートを商業的に生産するのに有用な研究目的にとって触媒を特に興味深いものにする。定常状態でシリカに固定され、担持酸化金属触媒と金属アルコキシド触媒のどちらからスタートしたとしても、活性触媒はシリカに固定された有機金属化合物種であると推察される。微量の活性金属を供給物に添加することの利点を説明するために、様々な実験が行われており、それらについては後で詳しく説明する。簡潔に説明すると、1つの実験では、シリカゲルに担持された酸化チタン触媒(6wt%Ti)は、約350時間使用された後に、脱重合によって再生され、ジエチルカーボネートとフェノールのエステル交換反応に関する本来の活性の半分以下が回復された。使用期間中に、半分以上のTiが触媒から反応媒体へと浸出していたことがわかった。他の実験では、シリカゲル上に接合されたチタンブトキシド触媒(4wt%Ti)は、エチルフェニルカーボネートの不均化に使用していたわずか171時間の期間にそのTiの90%以上が失われていた。シリカゲルに担持され、プロピレンカーボネートをエタノールでエステル交換してジエチルカーボネートとプロピレングリコールを生成するのに173時間使用された別の酸化チタン触媒(5.7wt%)は、触媒のTiの35%を失っていた。これらの知見より、担持酸化チタン触媒とグラフトされたチタンアルコキシド触媒のどちらにも触媒の恒久的な不活性化が短い使用時間で生じることから、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート、ジアリールカーボネート等の有機カーボネートの連続生産のための商用リアクタに不適切であることは明らかである。有機カーボネート及び/又は反応混合物は、固体触媒と反応することによって可溶性有機金属化合物を反応媒体内にゆっくりと生成させるのに十分な反応性を有しているようである。
【0120】
DMC及びDECの蒸気流が、約350℃以上の温度でシリカ又は酸化チタンと反応してオルトケイ酸テトラアルキル及びチタンテトラアルコキシドを形成することが発表されている。DMC及びDECとシリカの反応は、シリカ上に触媒作用を有する量のアルカリ金属が存在することで行われやすくなる。よって、商用リアクタに適合させるために、簡単な触媒再活性化のための技術と十分に長いサイクルにわたって触媒の活性金属成分の表面濃度を一定に保つ方法とを見出す必要があった。
【0121】
脱重合及び金属再堆積による触媒の再生は、ポリマー堆積に関連する問題を解決する。しかしながら、脱重合による再生は、反応条件下における活性金属の不均一系触媒からの浸出の問題に対処することができない。活性金属の不均一系触媒からの継続的な損出は、商用スケールのリアクタに適切な長い触媒寿命サイクルを得るために解決しなければならない。不均一系触媒からの金属浸出の影響は、微量の活性金属化合物を、連続多段リアクタシステムにおける第1リアクタへの1つ又は複数の供給流に添加することで緩和することができる。微量の活性金属化合物を添加することにより、金属浸出と再堆積はバランスをとるか、あるいはほぼバランスの取れた状態となり、固体触媒上の活性サイトの定常数を良好に維持することができ、これにより長期の触媒サイクル時間にわたって安定した触媒活性を得ることができる。第1リアクタの固体触媒から浸出する可溶性金属成分は、様々な金属化合物種である。混合物内の金属化合物種は、第1リアクタに流入する金属化合物種と同一でなくともよい。第2リアクタにおける金属浸出と再堆積もまた、同様の態様でバランスを図ることができる。並列の多段リアクタシステムでは、微量の活性金属化合物を、第1リアクタへのすべての供給流に添加することが必要とされることがある。よって、触媒再活性化(in situ脱重合/表面コンディショニング及び金属再堆積)及び微量の活性金属化合物の添加とこれに続く金属再堆積は、金属浸出とポリマー堆積の両方に対処することが可能である。触媒の再活性化は、(1)脱重合/触媒表面のコンディショニングと(2)活性金属成分の再堆積の、2つのステップで行うことができる。触媒表面のコンディショニングは、チタンアルコキシドをシリカ坦持体表面に固定するために必要である。新たに固定された触媒又は再活性化された触媒は常にその触媒活性を失っており、これにより、大型の商用リアクタでは許容できないほどの短いサイクル時間となってしまうことがある。ジアルキルカーボネートとフェノールのエステル交換反応のための本来の触媒活性の約半分を損失するまでに、約80〜150時間の運転時間が要されるが、これは商用リアクタの連続稼動には明らかに不適である。微量の活性金属化合物を添加するとともに、2段階の再活性化を行うことで、触媒の寿命サイクルを伸ばすことが可能であり、様々な有機カーボネートの連続生産において触媒の再活性化を複数回にわたっておこなうことも可能となる。
【0122】
不活性化された触媒の脱重合は、触媒とヒドロキシ化合物を含むストリーム又はヒドロキシ化合物とをそのまま(in situ)接触させることで行われてもよい。これは、いくつかの実施例では102℃(215°F)から316℃(600°F)の温度で、また別の実施例では104℃(220°F)から232℃(450°F)の温度で行われもよく、いくつかの実施例では約10分から約50時間、また別の実施例では約30分から約15時間行われてもよい。脱重合は、気相、液相、混合相、又は液相の後に気相、あるいはこの逆の順序で行われてもよい。脱重合による生成物は、フェノール、アルコール、二酸化炭素、マルチヒドロキシベンゼン、ジアルキルカーボネート、アルキルフェニルカーボネート、及び重化合物である。
【0123】
脱重合に用いられる触媒上のヒドロキシ化合物の例として、アルコール(好ましくはメタノール又はエタノール)、水、あるいはこれらの混合物が挙げられる。仮に、ジメチルカーボネートが用いられていた場合、メチルフェニルカーボネート及びジフェニルカーボネートを生成するための原料の1つにジメチルカーボネートが用いられている場合、メタノールあるいは水とメタノールの混合物が脱重合に用いられてもよい。原料の1つにジエチルカーボネートが用いられている場合、エタノールあるいは水とエタノールの混合物が脱重合に用いられてもよい。当業者は、メタノールとエタノールの混合物を用いてもよい。脱重合に水が用いられる場合、混合物の水の含有量は、いくつかの実施例では0wt%より大きく100wt%より小さい範囲内であり、また別の実施例では10重量ppmから15重量%であり、また別の実施例では15重量ppmから5重量%であってもよい。ジエチルカーボネートが原料の1つとして用いられている場合、水(4wt%)とエタノールの共沸混合物は、脱重合に非常に効果的である。いくつかの実施例では、触媒表面のコンディショニングと活性金属成分の再堆積の容易さという点において、水とアルコールの混合物がアルコール単体よりも好ましい。さらに、水とアルコールの混合物は、水またはアルコール単体での使用よりも脱重合と表面コンディショニングに効果的である場合がある。
【0124】
当業者は、脱重合に溶媒を用いてもよい。有用な溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペタン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラヒドロフラン、エーテル等、又はこれら溶媒の如何なる組み合わせを含んでいてもよい。脱重合混合物の溶媒濃度は、0wt%から90wt%の範囲であってもよい。
【0125】
脱重合化された触媒は、活性金属成分の触媒への再堆積の前に、触媒上の余分な水分を除去し、表面官能基の数をコントロールするために乾燥されてもよい。in situ乾燥は、いくつかの実施例では、約49℃(120°F)から約427℃(800°F)の温度で、また別の実施例では、約65℃(150°F)から約316℃(600°F)の温度で、活性触媒成分の再堆積の前に、不活性ガスフロー内で、約15分から40時間、周囲圧下又は低大気圧下で行われてもよい。不適切な触媒表面のプレコンディショニングは、触媒活性の一部のみの回復という結果を引き起こす。ここで開示される脱重合技術は、芳香族カーボネートの生産に関する如何なるプロセス、又は有機カーボネートが反応物、生成物あるいはその両方に関連する如何なる反応に用いてもよい。
【0126】
開示される脱重合技術は、均一系触媒の存在下で有機カーボネートを生成する反応にも有用である。均一系触媒システムの再生には、アルコール溶液は、水分含有量が0.01wt%を超えないように、かなり乾燥していなければならない。よって、ここで開示される触媒の再生技術は、有機カーボネートを生成する如何なるプロセスに用いてもよい。
【0127】
脱重合中のリアクタからの流出物ストリームは、どのようにして脱重合が行われているのかによっては、微量の活性金属成分を含んでいることがある。このストリームは、主な脱重合生成物として、フェノール、DEC,少量のフェネトール、EPC及び重化合物を含んでいる。当業者は、必要であれば、例えばフェノール、エタノール、アルキルフェニルカーボネート、DEC等の有用な成分をストリームから回収することができる。
【0128】
活性金属成分の脱重合化され、かつ、表面調整された坦持体への再堆積は、上述した坦持体へ金属アルコキシドを固定する場合と同様に行うことができる。金属アルコキシドの坦持体への固定化は、単一又は複数ステップによって行うことができる。再活性化された触媒のリアクタは、再び稼動させることができる。
【0129】
上述したように供給流に触媒の可溶性活性金属成分を微量添加することは、安定した触媒性能と延長されたサイクルタイムをもたらす。その一例として、DECとフェノールのエステル交換反応が、上向流であって、一度使用されている固定床リアクタで、約45から約60重量ppmのTiを供給流に添加して行われた。14ヵ月以上の連続した運転時間が経過しても、触媒の不活性化の兆候は殆どみられていない。
【0130】
ここで開示される可溶性活性金属成分を微量添加することは、様々な有機カーボネートあるいはカルバメートの連続した商用生産に有用である。有機カーボネートを生成する反応は、特定の反応システムがそうであるように、単一リアクタ内で行われてもよいし、連続多段リアクタ、あるいは並列の多段リアクタシステムで行われてもよい。例えば、反応は、1つ又は2つの異なる固体触媒が配された単一の触媒蒸留塔リアクタ又は連続多段触媒蒸留塔リアクタで行われてもよい。オプションとして、連続多段スラリーリアクタを用いて有機カーボネートを生成してもよい。供給流への可溶性活性金属成分の微量添加は、連続多段リアクタの第1リアクタにのみ行われてもよい。供給流への活性金属成分の微量添加における所望量は、特定の供給成分に対する特定の活性金属元素に応じて異なる。ジアルキルカーボネートとフェノールのエステル交換反応では、金属に応じて、いくつかの実施例では約15重量ppmから約400重量ppmであり、また別の実施例では約20重量ppmから約300重量ppmであり、また別の実施例では約25重量ppmから約200重量ppmである。ジエチルカーボネートとフェノールからなる供給流の場合、所望のTi量はいくつかの実施例では約20重量ppmから約150重量ppm、また別の実施例では約30重量ppmから約100重量ppmである。供給流の活性金属成分量は、先行技術における均一系触媒の濃度よりも、ほぼ1桁から2桁小さい。
【0131】
リアクタの流出物ストリームのTi濃度は、リアクタへの供給流の活性金属濃度にもよるが、通常、約20ppmから約100ppmの範囲である。このレベルでは、通常では、Tiをリサイクルのためにリアクタの流出物ストリームから回収することは、当業者がそれを行うことを選択可能であったとしても、経済的ではない。リアクタの流出物ストリームの活性金属成分は、粗DPC回収カラムの重底部流から固形材料として回収することができ、有機カーボネート又は有機カーボネートとアルコールの混合物と反応させることにより、高温で再利用可能な可溶性有機金属化合物に変換させることができる。回収される有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの金属塩)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0132】
DPC回収カラムの底部流から可溶性有機金属成分を固形材料として回収するためには、DPC回収カラムからの重廃棄底部流を湯またはストリームと水の混合物で処理して、固形の金属成分を沈殿させることができる。固体チタンを含む触媒の場合、液相における固体チタンの沈殿は、ろ過や遠心分離等の従来の手法によって液体から分離される。分離された固体は、ジアルキルカーボネート又はジアルキルカーボネートとアルコールの混合物の液体流で、121から343℃(250かあ650°F)の温度で、圧力をかけながら、いくつかの実施例では10分から80時間、また別の実施例では20分から45時間処理することで可溶性材料に変換される。圧力は、ジアルキルカーボネート又はジアルキルカーボネートとアルコールの混合物が少なくとも、オートクレーブ、筒状リアクタ等の反応缶内の液体の一部として存在するのに十分な高さである。オプションとして、液体流はベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、エーテル等の不活性溶媒を含んでいる。液体流の例として、エタノールとDEC、あるいはメタノールとDMCの混合物が挙げられる。アルコールとジアルキルカーボネートの混合物内のジアルキルカーボネートの含有量は、0.1wt%から100wt%の間であってもよい。
【0133】
有機カーボネート又はカルバメートを生成する反応は、単一のリアクタ、又は、様々なリアクタの配置と適切な蒸留カラムの配置を有する、反応生成物の省コストな分離と未反応の反応物のリサイクルを行う連続多段リアクタで行われてもよい。代替的に、反応は、単一又は並列な多段リアクタで行われてもよい。当業者によって、その他の様々なリアクタと蒸留カラムの配置も用いられてもよい。
【0134】
反応は、単一の触媒蒸留塔、連続多段触媒蒸留塔、連続多段固定筒又は連続多段タンクリアクタ、またはその他の種類のリアクタの組合せで行われてもよい。3つの触媒蒸留塔を用いてDPCが生成される場合、エステル交換反応のために、固体触媒は連続する第1及び第2リアクタに配置される。第3蒸留カラムリアクタは、固体触媒を備えていてもよいし、これに代えて、固体触媒を備えていなくともよい。第3リアクタの不均化は、反応媒体の存在下で可溶性の均一系触媒のみを用いて行われてもよい。
【0135】
典型的な筒状固定床リアクタにおける反応は、上向流モード又は下向流モードのどちらで行われてもよい。EPC等のアルキルアリールカーボネート及びDPC等のジアリールカーボネートを生成する反応は、例えば、液相で行ってもよいが、1つ又は複数の固体触媒の存在下で混合相システムで行われてもよい。エステル交換反応のための連続した2つのリアクタは、サイクルタイムを延ばすために、定期的に交互に第1ないしは第2リアクタとして機能してもよい。ECPを不均化してDPC及びDECを生成する第3リアクタは、低大気圧で運転されるフェノール回収カラムの下半分で行われてもよい。選択された実施例では、ここで開示されるプロセスは、ジエチルカーボネートとフェノールをエステル交換反応させ、次いでエチルフェニルカーボネートを不均化させることによるジフェニルカーボネートの生成に有用である。
【0136】
エチルフェニルチタネートあるいはエトキシチタンエチルカーボネート等、又はチタンアルコキシドとアルコキシチタンアルキルカーボネートの混合物等の微量の可溶性活性金属化合物は、例えば、第1反応ゾーンに供給された液体反応媒体に添加してもよい。これに代えて、フェノール回収カラムからの底部流がカラムの上方中間部における適切なポイントから導入される触媒蒸留塔で不均化が行われてもよい。不均化は、エステル交換反応リアクタからの底部流がフェノール除去されずに直接的に導入される触媒蒸留塔で行われてもよい(フェノールは、EPC不均化カラムの底部流から回収されてもよい)。第1反応ゾーンは、DECとフェノールのエステル交換反応ための連続した2つの触媒蒸留塔又は並列の2つの触媒蒸留塔を備えていてもよい。第2反応ゾーンは、EPCをDPCとDECに不均化する触媒蒸留塔リアクタを備えていてもよい。当業者は、DECの代わりにDMCを選択し、EPCの代わりにMPCを選択してもよい。第1反応ゾーンの触媒蒸留カラムリアクタは、シリカ坦持体に固定されたチタンアルコキシドあるいはシリカ坦持体に担持された酸化チタン等の、1つ又は複数の固体触媒を備えていてもよい。一般的に、ジフェニルカーボネートの連続生産のためには2つの異なるプロセスがあり、これらは、2個以上のリアクタが用いられる場合に使用することができる。
【0137】
ジフェニルカーボネートを連続生産する第1のプロセスでは、様々な実施例において、3つから7つの触媒蒸留塔リアクタが備えられていてもよい。これらの触媒蒸留塔リアクタのうちの1つ又は複数がスペアのリアクタとして機能し、稼動中の複数のリアクタのうち最も活性の低いリアクタと交代することができる。複数の蒸留塔リアクタのうち、2つから6つのリアクタが、主にEPCの生成に用いられてもよい。残りの触媒蒸留塔リアクタは、主にEPCのDPC及びDECへの不均化が生じる第2反応ゾーンとして機能してもよい。第2反応ゾーンに入る前に、DEC及び第1反応ゾーンからのストリーム内のフェノールの少なくとも一部は、第1反応ゾーンからの重流出物ストリームから除去される。これに代えて、第1反応ゾーンからの重流出物ストリーム内のフェノールの除去は、ストリーム内のフェノールの濃度によっては、不均化後まで持ち越されてもよい。稼動される触媒が古くなるにつれて、触媒の活性は徐々に不活性化していく。複数の連続リアクタを、芳香族カーボネートの生産運転と触媒再活性化との間でローテーションさせるために、以下の3つの方法がある。
(1)所定の運転時間を経た後に、最も古く、触媒の再活性化が必要になってきているリアクタから順番に全てのリアクタを周期的にローテーションさせ、その一方で新品又は再活性化された触媒を有するリアクタを、複数の連続リアクタの第1リアクタとして投入する(例:新品→第1リアクタ、第1リアクタ→第2、第2→第3、第3→触媒再活性化又は交換)。あるいは、新品のリアクタを最後の連続リアクタとして投入し、第2リアクタを第1リアクタとして昇順(前述のフォワードシーケンスの逆順)させてもよい。
(2)リアクタを第1反応ゾーンリアクタと第2反応ゾーンリアクタの2つのグループに分け、それぞれのグループに稼動と触媒交換/再活性化のローテーション用のスペアリアクタを用意する。
(3)複数の連続リアクタの中で最も活性の低いリアクタを運転から外し、必要に応じて触媒活性化を行い、(触媒がすでに再活性化されている)スペアのリアクタを、外したリアクタの代わりに投入する。
【0138】
代替のプロセスとして、2つの連続リアクタを用いて第1反応ゾーンとする。これらの2つのリアクタの順序は、例えば6000時間等の所定時間を経過する毎に、定期的に第1リアクタと第2リアクタの間で入れ替えられる。この入れ替えは、必要なだけ何度でも行うことができる。第2反応ゾーンのスペアリアクタは存在しない。この稼動形態では、微量の活性金属化合物を連続する第1リアクタに添加することで可能となる。第1反応ゾーンからのストリーム内のDECとフェノールは蒸留によって除去され、残余のストリームが第2反応ゾーンでEPCからDPCを生成する不均化に供される。不均化は、以下の2つの方法により行うことができる。
(1)第1の方法では、不均化は、固定床リアクタ内の固体触媒の存在下で行われる。稼動しているリアクタのスペアのリアクタが用意されている。不活性化された触媒は、上述した方法で再活性化される。
(2)第2の方法では、不均化は、触媒蒸留リアクタ内で固体触媒なしで行われ、スペアのリアクタは存在しない。第1反応ゾーンからのストリームの活性可溶性金属種が、不均化反応の均一系触媒として機能する。
【0139】
固体触媒があるかないかに関わらず、第2反応ゾーンのための触媒蒸留カラムは、カラムの上半分の部分(フェノール回収部)が主に第1反応ゾーンから入ってくる反応混合物からフェノールを蒸留によって除去し、下半分の部分が主にEPC又はMPCの不均化を行うように設計されていてもよい。別のプロセス設計では、フェノール回収カラムと触媒蒸留カラムは、個別の2つのカラムとしてもよいが、この場合、フェノール回収カラムの底部において多少の不均衡が生じる可能性がある。上述したように、流入する供給流のフェノール濃度に応じて、フェノール回収は不均化の後まで持ち越されてもよいが、一部のフェノールは、オーバーヘッド蒸気流として、DECとともに触媒蒸留カラムから剥離する。不均化のための触媒蒸留カラムは、低大気圧で運転されてもよい。
【0140】
図1は、本明細書で開示される実施例において、3つの触媒蒸留カラムを用いたDPCの連続生産のプロセスを簡略化して表わした図である。2つの連続した触媒蒸留カラムは、DECとフェノールのエステル交換を固体触媒の存在下で行ってEPCを生成する第1反応ゾーンとして機能し、もう1つの触媒蒸留カラムはEPCからDPC及びDECを生成する不均化のための第2反応ゾーンとして機能する。
【0141】
図1を参照して、本明細書で開示される実施例におけるDECとフェノールからDPCを生産するプロセスを説明する。C1及びC2は、エステル交換反応用の触媒蒸留カラムであり、C3はエタノール回収カラム、C4はDEC回収カラム(フェネトール除去用カラム)、C5は不均化及びフェノール回収カラム、C6はEPC回収カラム、C7はDPC回収カラムである。
【0142】
カラムC1,C2は連続した触媒蒸留カラムであり、反応ゾーンR1,R2のそれぞれに構造化された充填デバイスが配置されている。特別に構造化された充填デバイスは、固体触媒を有している。フェノールとDECを含む供給流1,4はそれぞれ触媒蒸留カラムC1,C2の、触媒作用反応ゾーンR1,R2の上部のトレイに導入される。未使用のDEC及び未使用のフェノールの供給流におけるフェノールに対するDECのモル比は、約1:2であってもよい。これに対し、触媒作用反応ゾーンR1,R2におけるフェノールに対するDECのモル比は、いくつかの実施例では約12:1から約1:2.5であってもよく、また別の実施例では約10:1から約1:2であってもよく、さらに別の実施例では約7:1から約1:1であってもよい。
【0143】
可溶性有機金属化合物も、フローライン3を通じてC1上部のトレイに導入される。例えば、反応ゾーンR1,R2のチタン含有固体触媒へは、第1触媒蒸留塔リアクタC1の上部から、Ti(Oet)4−x(Oph)x(ただしxは0,1,2,3,4のいずれか)等の可溶性チタン化合物含有溶液、エトキシチタンエチルカーボネート等の炭酸モノエステルのチタン塩、またはこれらの混合物等が導入されてもよい。触媒溶液の溶媒は、例えば、DEC、DECとフェノールの混合溶液、DECとエタノールの混合溶液、DECとエタノールの混合溶液、エタノール、フェノール等であってもよい。
【0144】
触媒溶液の流速は、第1カラムリアクタにおける触媒上の液体流のチタン濃度が、いくつかの実施例では約20重量ppmから約100重要ppmの活性金属(先の段落で例示された触媒溶液におけるチタン)となるように調整され、また別の実施例では約25重量ppmから約80重量ppmとなるように調整され、さらに別の実施例では30重量ppmから約70重量ppmとなるように調整されてもよい。
【0145】
触媒蒸留カラムC1,C2からのオーバーヘッド蒸気流6、14は、フローライン8を通じてエタノール回収カラムC3に送られる。このオーバーヘッド流は、ジエチルエーテル、二酸化炭素、微量のフェノール等の、微量の副生成物を含んでいてもよい。ジエチルエーテルと二酸化炭素は、オーバーヘッド蒸気流9として除去できる。エタノールは、カラムC3から横引きされたフローライン10を介して回収することができる。底部流11は、カラムC3から触媒蒸留カラムリアクタC1,C2へと、それぞれフローライン12,13を通じてDECをリサイクルする。
【0146】
カラムC1は、触媒作用反応ゾーンR1が約160℃から約210℃(約320°Fから約410°F)の温度となるように運転される。カラムC1のオーバーヘッド圧力は、絶対圧力約2バールから絶対圧力約4.8バール(約14.7psigから約55psig)である。触媒蒸留カラムC1からの底部流7は触媒蒸留カラムC2の頂部に導入されてもよく、触媒蒸留カラムC2はその触媒作用反応ゾーンが約162℃から約216℃(約325°Fから約420°F)の温度となり、かつ、その頂部圧力が、低大気圧、約1バール(約0psig)から約4.5バール(約51psig)となるように運転される。オプションとして、リサイクル又は未使用のDECの小留分のストリームが、フローライン4a,4bを通じてカラムC1,C2にそれぞれ導入されてもよい。
【0147】
触媒蒸留カラムC1,C2のEPCの濃度は、下部の段階に行くほど増大する。EPCのDPC及びDECへの不均化の一部はリアクタC1,C2内で生じており、DPCの濃度もこれにより増大する。蒸留カラムリアクタC2からの底部流15は、DECがオーバーヘッド蒸気流16として回収されるDEC回収カラムC4に送られる。カラムC4は、約127℃から約204℃(約260°Fから約400°F)の温度で、約0.3バール(約4psia)から約1.5バール(約22psia)のオーバーヘッド圧力で運転されてもよい。ストリーム16はエタノール回収カラムC3に導入され、ストリーム16に含まれるDECとフェノールが分離される。これらのDECとフェノールは、ライン11,12,13を通じてC1,C2へとリサイクルされる。
【0148】
カラムC4からのオーバーヘッド流16もまた、DECと少量のフェネトール、フェノール及びエタノールを含んでいることがある。カラムC4からの横引き流18は、システム内でのフェネトールの堆積を防止するために、フェネトールパージ流として用いられてもよい。
【0149】
カラムC4からの底部流17は、カラムC1,C2からの均一系触媒を含んでいる。底部流17は、蒸留カラムC5の頂部の適切な位置に導入することができる。カラムC5は、EPCの不均化を行うために用いられてもよく、反応ゾーンR3には不均一系触媒を備えていてもよい。
【0150】
カラムC5は、底部流17のフェノールならびにEPC不均化における副生成物のDECをオーバーヘッド流19として除去することと、EPCを不均化してDPCを生成するという2つの目的のために設計され、運転されてもよい。カラムC5は、同質系触媒作用反応ゾーンR3が約165℃から約210℃(約330°Fから約410°F)の温度で、約0.07バール(約1psia)から約0.6バール(約9psia)のオーバーヘッド圧力となるように運転されてもよい。
【0151】
DECとフェノールを含むカラムC5からのオーバーヘッド蒸気流19は、ストリーム20,21をそれぞれ通じてカラムC1,C2でリサイクルされてもよい。(DPC,未変換のEPC,フェノール、フェネトール、重Ti触媒及び可溶性Ti触媒を含む)C5底部流22は、約168℃から約213℃(約335°Fから約415°F)の温度で、約0.03バール(約0.4psia)から約0.55バール(約8psia)の範囲の低大気圧力で運転されるEPC回収カラムC6に導入される。
【0152】
EPC回収カラムC6底部流25は、DPCを横引き流27として回収するためにDPC回収カラムC7に導入される。DPC回収カラムC7は高真空状態下(例えば、<0.03バール(<0.4psia))で運転される。オーバーヘッド流26は、EPCカラムC6オーバーヘッド流23と連結され、ライン24を通じてカラムC5にリサイクルされてもよい。
【0153】
重触媒及び可溶性触媒を含むDPC回収カラムC7底部流28は、回収されてもよいし、廃棄されてもよい。チタン触媒が用いられ、リアクタに供給される場合に、必要であれば、例えば、当業者はチタンを可溶性Ti触媒(Ti(OEt)またはTi(OEt)とエトキシチタンエチルカーボネートの混合物)を上述したようにリサイクルのために回収してもよい。一つの廃棄方法として、ストリーム28をチタン精製部に送り、Tiを回収してもよい。当業者は、当業者であれば周知の方法で、回収と精製を連続して交互に繰り返すことで、ストリーム22からDPCを回収することができる。
【0154】
上記に代えて、EPCのDPC及びDECへの不均化は、触媒蒸留カラムC5の固体触媒の存在下で行うことができる。C5の固体触媒は、しかしながら、図1に示す第2の触媒蒸留カラムC2の固体触媒よりも早く不活性化してしまうことがある。
【0155】
上述したように、C5は固体触媒を備えているため、プロセスに十分な触媒活性を維持するために、蒸留カラムリアクタを循環させる様々なオプションを用いることができる。図示しないバルブとパイプの十分な配設によってリアクタの循環を行うことができ、これは当業者の通常の能力の範囲内にある事項である。
【0156】
図2は、別のプロセスフロー図であるが、同様の構成には同様の参照番号が付されている。エステル交換反及び不均化を行う触媒蒸留カラム及び材料分離用のカラムの数は、図1と同じである。しかしながら、触媒蒸留カラムC5からのオーバーヘッド流19の留分は、ライン30を通じてDEC回収カラムC4へとリサイクルされる。ライン30を通じたリサイクルにより、フェネトールを除去する別の方法が許容される。
【0157】
図3は、本明細書で開示される実施例におけるさらに別のプロセスフロー図であるが、図1,2と同様に、同様の構成には同様の参照番号が付されている。第1触媒蒸留カラムC1は、先に説明した場合(図1,2)とほぼ同様の態様で運転される。しかしながら、第2触媒蒸留カラム2及びDEC回収カラムC4が、先に説明した場合と異なる態様で運転される。カラムC2は、先に説明した場合よりも高い温度と低い圧力で運転される。リサイクルDEC流13は、カラムC2の底部に導入される。オプションとして、フレッシュDEC流4の一部もまた、カラムC2の底部に導入されてもよい。C2オーバーヘッド流14はその他の成分とともに、フェネトールを含んでいる。ストリーム14は、カラムC4に導入されてもよく、この場合、C4底部流17はフェネトール除去流である。
【0158】
本明細書で開示される実施例において精製される粗DPC生成物から、非常に純度の高いDPCを得ることができる。高純度DPCは、ヘキサン−ジエチルエーテル混合物等の炭化水素−エーテル混合物を用いた分別晶出によって生成することができる。いくつかの実施例では、精製されたDPCにおけるフェノール以外の検出可能な不純物は、キサントンであり、その量は約0.5重量ppm以下である。精製されたDPCにおけるフェノールは微量でり、例えばウェイトあたり約5から約17ppmであってもよい。本明細書で開示される実施例において生成されるDPCの微量成分分析によれば、得られたDPCの純度は、研究化学薬品用に通常の販売者から得られるDPCのそれよりも非常に高いことが示された。
【0159】
実施例
【0160】
実験1を除いてDECとフェノールとのエステル交換反応は、全て上向流沸点リアクタ内で実施した。したがって気液相が触媒反応ゾーン内に共存する。固定床リアクタの寸法は、直径1.3cm(1/2インチ)×長さ6.5cm(25インチ)とした。リアクタは上下加熱ゾーンで別々に制御した。固定床リアクタは垂直に取り付けた。固体触媒の体積は25mlとした。
【0161】
比較実験1
【0162】
撹拌される50mlオートクレーブリアクタを使用して、均一系チタンアルコキシド触媒存在下で、DECとフェノールとのエステル交換実験を実施した。表1に示す約35mlのDEC/フェノール混合物をオートクレーブに充填した。オートクレーブを油浴に浸漬して、反応温度を制御した。反応実施後、オートクレーブを油浴から取り出して冷水で急冷した。いずれの反応混合物中にもジフェニルエーテルは観察されなかった。反応の結果を表1に列挙する。
【表1】

【0163】
供給液中のTi濃度が4767重量ppmの場合、約3時間の反応時間後の最大フェノール変換率は約15%であり、EPCとDPCとの選択性は非常に不良であった(<20.5モル%)。反応時間が2時間の場合、フェノールの変換率は5%未満であり、選択性はより良かったがなおも不良であった(63モル%)。触媒濃度が42重量ppmTiに低下すると選択性は大幅に改善されたが、変換は不良であった。
【0164】
比較実験2
【0165】
本実験の目的は、本明細書で開示される実施態様に従った実施例の結果と比較する対照として、均一系触媒の実験データを得ることである。リアクタ内に固体触媒はなかった。リアクタ内の固体触媒のための25mlの空間は空であった。様々な反応条件下で、運転時間0〜768、次に運転時間1266〜1362にわたって、様々な量のTi(OEt)4−x(OPh)(x=約2)の均一系触媒を有する、73.3wt%のDECと26.7wt%のフェノール(2.19のDEC/PhOHモル比)との反応混合物をリアクタに上向流で通過させた。図4に示すように、供給混合物中のTi濃度は59重量ppm〜709重量ppmTiの範囲であった。流速は操作時間のほとんどで0.5ml/分であった。供給流速の履歴を表2に列挙する。
【表2】

【0166】
複合エステル交換生成物中のエタノールを蒸留して除去し、次にDECを添加して第2のエステル交換供給物を調製することで、DECを添加してDEC/PhOHモル比を2.19に調節した。第2のエステル交換供給物は、平均して約3.4wt%のEPC、約250重量ppmのフェネトール、及び約300重量ppmのDPCを有した。第2のエステル交換供給物中の均質触媒濃度の履歴を表3に列挙する。
【表3】

【0167】
これらの供給混合物を使用して、第2のエステル交換を運転時間768〜1266にわたって実施した。図4のこの時間内のフェノール変換率は、第1及び第2のエステル交換の双方を通じた総体的変換率である。
【0168】
反応温度の範囲は、図4に示すように174℃〜210℃(345°F〜410°F)であった。リアクタ圧力は、約2.9〜約5.5バール(約27psig〜約65psig)であった。全ての反応は、沸騰条件下で実施した。したがって反応は、(気液)混合相系として実施した。図4中の温度はリアクタ下部温度である。
【0169】
反応混合物中の触媒濃度が118ppmTiよりも高い場合、フェノールの変換に対して触媒の悪影響があった。この悪影響の原因は完全に理解されていないが、Ti触媒上の2つのエトキシ基の影響である可能性もある。また供給物中のTi濃度が約300ppmよりも高い場合、Ti触媒の沈殿に起因するリアクタ流出ラインのライン閉塞問題があった。したがって一組のインラインフィルターを設置して、ライン閉塞問題に対処した。Ti濃度が59ppmの場合、フェノール変換に対する温度効果は中程度であり、DECとフェノールとのエステル交換の活性化エネルギーが低いことが示唆された。第1のエステル交換の最大フェノール変換率は、337ppmTiで204℃(400°F)及び4.5バール(50psig)において約11.3モル%であった。第2のエステル交換の最大フェノール変換率は、188ppmのTi濃度で193℃(380°F)および2.9バール(27psig)において、約14.5モル%であった。実験はまた、予期されたように液相反応(410℃および7.9バール(100psig))のより低い変換率を示唆する。
【0170】
実験3
【0171】
この実験の目的は、(1)シリカゲル担持体上に固定化されたチタンn−ブトキシドをin situ調製する技術、(2)触媒を再活性化する技術、及び(3)エステル交換のための二重相固定床リアクタの性能を実証することであった。反応混合物を沸騰させることで、触媒反応ゾーン内に気液二重相を作り出した。
【0172】
周囲温度で撹拌しながら約42℃の温度で7分間、45.74gの粒状シリカゲル(+8メッシュ)を水酸化ナトリウム溶液(550mlの水内に7.5gのNaOH)で処理した。シリカゲルを最初に冷水、次に熱水(約80℃)で洗浄し、シリカ上の微量のナトリウムを除去した。得られた処理済みシリカゲルを窒素パージ下で125℃で2時間、次に300℃で2時間乾燥させた。乾燥シリカゲル担持体は23重量ppmのNaを有していた。処理済みシリカゲル担持体は、以下の特性を有していた。BET:291m/g、孔容量:1.052cm/g、平均孔径:16.3nm。
【0173】
25mlの乾燥粒状シリカゲル担持体(約9.3g)をリアクタ内に装入した。27gのチタンn−ブトキシドを500mlの乾燥トルエンに溶解して、チタンn−ブトキシド溶液を調製した。チタンn−ブトキシド溶液を容器に入れた。チタンn−ブトキシド溶液を周囲温度で15分間、15ml/分の上向流でリアクタ内を循環させた後、リアクタを約5.5バール(65psig)の圧力で168℃(335°F)に加熱した。循環を168℃(335°F)で4.5時間継続し、次にリアクタを冷却した。過剰な溶液をリアクタから排出した後、担持型触媒を、4ml/分の乾燥トルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を168℃(335°F)で350cc/分の窒素ガス(上向流)中で2時間乾燥させた。in situ調製によって得られた粒状シリカゲル担持体上にグラフトされたチタンn−ブトキシド触媒を、DECとフェノールとのエステル交換について試験した。
【0174】
第1のエステル交換サイクル:固定床沸点リアクタ内において、in situ調製された固体触媒存在下で、DECとフェノールとのエステル交換を実施した。168℃(335°F)、2.4バール(20psig)、及び0.2ml/分の供給流速で、DECとフェノールの混合物(25.57wt%のフェノール及び74.43wt%のDEC;2.32のDEC/PhOHモル比)を固体触媒床に上向流で通過させた。この試験は第1のエステル交換サイクルを構成しており、結果を図5に示す。触媒は運転時間約40時間で、その最大活性に達した(12モル%のフェノール変換率)。運転時間約80時間後、触媒はその活性の大部分を失った。この不活性化触媒に、次のようにして第1の再活性化を実施した。
【0175】
第1の触媒再活性化:触媒再活性化は、2段階を含んでいる。触媒脱重合/表面調整及び触媒への活性チタン金属再堆積。リアクタを排出した後、触媒を周囲温度で乾燥トルエン(300ml)の上向流で洗浄し、次にトルエンをリアクタから排出した。400mlエタノールと1700mlトルエンの混合によって調製した2リットルのエタノール溶液に、0.19gのチタンn−ブトキシドを溶解した。168℃(335°F)及び12バール(160psig)で13.5時間、チタン溶液を2.2ml/分の上向流でリアクタに通過させた。過剰なチタン溶液をリアクタから排出した後、触媒を周囲圧力下168℃(335°F)で200cc/分の窒素の上向流内で45分間乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(2リットルのトルエン中、135gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に168℃(335°F)及び10.7バール(140psig)で4時間、15ml/分の上向流でリアクタ内を循環させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を168℃(335°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。再活性化触媒を、次のようにして、第2のエステル交換サイクル中で使用した。
【0176】
第2のエステル交換サイクル:エステル交換を第1のサイクルと同一の様式で実施した。結果を図5に示す。再活性化触媒は、第1のサイクル程良好には機能せず、触媒はわずか約40運転時間後に機能しなくなった。次に、第2の触媒再活性化を次のようにして実施した。
【0177】
第2の触媒再活性化:材料をリアクタから排出した後、リアクタ内の触媒を周囲温度で30分間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次にトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を168℃(335°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流で1時間乾燥させた。8mlの水、500mlのエタノール、及び1100mlのトルエンを混合して調製された溶液を、168℃(335°F)及び12バール(160psig)で12.1時間、2.2ml/分の上向流でリアクタに通過させた。過剰な溶液をリアクタから排出した後、触媒を周囲圧力下168℃(335°F)で200cc/分の窒素の上向流内で1時間乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中、135gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に168℃(335°F)及び10.7バール(140psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させた。冷却後、過剰なチタン溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を168℃(335°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥した。再活性化触媒を、次のようにして、第3のエステル交換反応サイクル中で使用した。
【0178】
第3のエステル交換サイクル:エステル交換を第1のサイクルと同一の様式で実施した。結果を図5に示す。再活性化触媒は、第1のサイクルの触媒と同程度に機能した。それでもなお、触媒は、約90運転時間後に機能しなくなった。
【0179】
リアクタ内の不活性化触媒に、同様の条件下でさらに2回の触媒再活性化、次にさらに2回のエステル交換を実施し、結果は同様であった。第5のエステル交換反応サイクル後、次のようにして触媒に第5の触媒再活性化を実施した。第3から第5の触媒再活性化の履歴について後述する。
【0180】
第3の触媒再活性化:第3のエステル交換サイクルから残されたリアクタ内の全材料を排出した後、リアクタ内の触媒を周囲温度で1時間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次に過剰なトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を157℃(315°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流内で1時間乾燥させた。8mlの水、500mlのエタノール、及び1100mlのトルエンを混合して調製された溶液を、157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間、2.2ml/分の上向流でリアクタに通過させた。過剰な溶液をリアクタから排出した後、触媒を周囲圧力下149℃(300°F)で200cc/分の窒素の上向流内で1時間乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中、135gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分トルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を163℃(325°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。
【0181】
再活性化触媒に第4のエステル交換を実施した。再活性化触媒の性能は、第2のエステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示していない。
【0182】
第4の触媒再活性化:第4のエステル交換サイクルから残されたリアクタ内の材料を排出した後、リアクタ内の触媒を周囲温度で1時間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次に過剰なトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を157℃(315°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流内で1時間乾燥させた。8mlの水、500mlのエタノール、及び1100mlのトルエンを混合して調製された溶液を、157℃(315°F)及び2.7バール(25psig)で12.1時間、2.2ml/分の上向流でリアクタに通過させた。リアクタから過剰な溶液を排出した後、触媒を周囲圧力下149℃(300°F)で200cc/分の窒素の上向流内で1時間乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(2Lのトルエン中、135gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に157℃(315°F)及び7.2バール(90psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を163℃(325°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。次に再活性化触媒を第5のエステル交換サイクル中で使用した。触媒の性能は、第3のエステル交換サイクルと同様であった。結果は図5に示していない。
【0183】
第5の触媒再活性化:リアクタ内の触媒を材料リアクタから排出した後、周囲温度で1時間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次に過剰なトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を124℃(255°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流内で1時間乾燥させた。152〜154℃(305〜310°F)及び周囲圧力で、水を0.3ml/分の下向流で6時間リアクタに通過させた。リアクタ内の水蒸気処理触媒を、146〜149℃(295〜300°F)で100cc/分の窒素ガスの下向流で1時間20分乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(1600mlのトルエン中、135gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に127℃(260°F)及び3.1バール(30psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。次に、再活性化触媒に次のようにして第6のエステル交換を実施した。
【0184】
第6のエステル交換サイクル:エステル交換を第1のサイクルと同一の様式で実施した。結果を図5に示す。再活性化触媒は、第1のサイクルと同様に機能した。興味深いことに、触媒は、より緩慢な速度で不活性化した。
【0185】
上の実験は、シリカゲル担持体上に固定化された不活性化チタンアルコキシド触媒をそのまま再活性化できることを実証する。しかし芳香族カーボネートを連続生産するための大型商用リアクタ内でこの技術を実行するには、触媒寿命サイクルが短すぎる場合もある。
【0186】
実験4
【0187】
この実験の目的は、微量(42重量ppmのTi)の可溶性Ti化合物(チタンn−ブトキシド)を供給流に添加することで達成できる延長触媒寿命サイクルを実証することであった。実験3の第6のエステル交換サイクルからの不活性化触媒に、重ねて次のようにして第7の触媒再活性化を実施した。材料を排出した後、リアクタ内の触媒を周囲温度で1時間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次に過剰なトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を124℃(255°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流内で1時間乾燥させた。エタノール中の水(4wt%)の混合溶液を154℃(310°F)及び周囲圧力で6時間、リアクタに1.4ml/分の下向流で通過させた。リアクタ内の触媒を154℃(310°F)で1時間25分、150cc/分の窒素ガスの下向流内で乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中、67.5gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に3.4バール(35psig)の下127℃(260°F)で6時間、リアクタに15ml/分の上向流で通過させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。再活性化触媒に次のようにして、第7のエステル交換サイクルを実施した。
【0188】
様々な反応条件下で、微量(42重量ppmのTi)のチタンn−ブトキシドを供給流に添加して、第7のエステル交換サイクルを実施した。この実験では、2種の異なる供給混合物を使用した。最初の593運転時間では、19.73wt%のフェノール及び80.27wt%のDEC(3.24のDEC/PhOHモル比)の混合供給液を使用し、それに続いて749運転時間での停止まで25.83wt%のフェノール及び74.17wt%のDEC(2.29のDEC/PhOHモル比)の混合供給液を使用した。チタンn−ブトキシドを、プレミックスDEC/PhOH供給液中に混合した。供給速度は、最初の353運転時間では0.2ml/分、353〜401運転時間では0.3ml/分、次に終了時間までは0.2ml/分であった。様々な運転時間で採取した生成物サンプルの微量成分分析は、48時間で21ppmTi、305時間で44ppmTi、449時間で44ppmTi、491時間で31ppmTi、593時間で51ppmTi、713時間で51ppmTi、及び749時間で31ppmTiを示した。この実験の結果を図6に示す。図6中に示す温度は、触媒床下部で読み取られた温度であった。触媒床上部での温度読み取りは、生成流中のエタノール濃度次第で、通常、リアクタ下部温度よりも1.5〜3℃(3〜5°F)低く、触媒床上部でのエタノールの気化が示唆される。触媒床上部のより低いリアクタ浸出物温度は、生成物中のエタノール濃度が約1.2wt%よりも高ければ目立つようになった。フェネトールが唯一の検出可能な副産物であった。フェノールを基準にしたフェネトール選択性は、0.3モル%未満であった。
【0189】
図6に示すように、操作時間(749時間)全体で触媒不活性化はなく、可溶性の42重量ppmのTiを供給流に添加することで、触媒寿命サイクルが80時間未満から749時間以上に延長できることが、成功裏に実証された。
【0190】
リアクタ内の触媒は操作の終わりに分析され、そのほとんどは黄色顆粒であり、いくらかの触媒顆粒は暗褐色であった。比較としてチタンフェノキシドは、濃橙色または琥珀様の色を呈する。使用済み触媒の分析は、触媒上に0.55wt%のTiを示した。これは意外な発見であった。
【0191】
実験5
【0192】
この実験の目的は、(1)反応を実施する前に触媒を予備形成する必要性、(2)触媒再活性化、(3)触媒サイクル時間の延長、及び(4)供給物中の含水量を制御する(約650重量ppm未満)必要性を実証することであった。この実験では、酸化ケイ素ペレットを使用して、その上にチタンn−ブトキシドがグラフトされる担持体を調製した。
【0193】
酸化ケイ素ペレット担持体(0.3cm(1/8インチ)、555重量ppmのNa、及び2500重量ppmのAl、280m/gのBET SA及び1cc/gのPV)を使用して、固定化チタンn−ブトキシド触媒を調製した。100gの酸化ケイ素ペレットを水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中、10gのNaOH)と共に撹拌しながら、約52℃で5分間処理した。シリカを冷水で完全に洗浄し、次に熱水(約80℃)で洗浄してシリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理済みシリカを最初に室温で乾燥させ、次に真空オーブン内で130℃で1.5時間、次に150℃で1時間乾燥させた。乾燥シリカ担持体は150重量ppmのNaを有した。調製されたシリカ担持体は以下の特性を有した。BET:252m/g、孔容量:1.035cm/g、平均孔径:15.7nm。
【0194】
25mlの乾燥酸化ケイ素ペレット(9.72g)をリアクタ内に装入した。触媒溶液用容器に、135gチタンn−ブトキシドを1600mlトルエンに溶解して調製したチタンn−ブトキシド溶液を充填した。この触媒溶液を周囲温度で20分間、次に135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間、流速15ml/分の上向流でリアクタを通して循環させた。冷却後、過剰な触媒溶液をリアクタから排出し、次にin situ調製された触媒を周囲温度で流速4ml/分のトルエンの上向流で1.5時間洗浄した。過剰なトルエンをリアクタから排出した後、触媒を138℃(280°F)で350cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させた。得られた触媒を次のようにして、第1のエステル交換サイクル中で使用した。
【0195】
第1のエステル交換サイクル:0.2ml/分の上向流の供給速度で、168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下で、可溶性チタン化学種を供給流に注入することなく第1のエステル交換サイクルを実施した。供給組成物は26.07wt%のフェノール及び73.93wt%のDEC(2.56のDEC/フェノールモル比)であった。結果を図7に示す。触媒は運転時間(on stream time)で不活性化した。約100運転時間後、触媒にはわずかな活性しかなかった。
【0196】
第1の触媒再活性化:材料をリアクタから排出した後、リアクタ内の触媒を周囲温度で1時間、10ml/分の乾燥トルエンの上向流で洗浄し、次に過剰なトルエンをリアクタから排出した。リアクタ内の触媒を124℃(255°F)で250cc/分の窒素ガスの上向流内で1時間乾燥させた。水(4wt%)及びエタノール混合溶液を154℃(310°F)及び周囲圧力で6時間、2.2ml/分の上向流でリアクタに通過させた。触媒を154℃(310°F)で150cc/分の窒素の上向流内で1時間25分乾燥させた。チタンn−ブトキシド溶液(800mlのトルエン中、67.5gのチタンn−ブトキシド)を室温で20分間、次に134℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させた。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出した。触媒を4ml/分のトルエンの上向流内で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分の窒素ガスの上向流内で2時間乾燥させ、第2のエステル交換反応サイクル中で使用した。
【0197】
第2のエステル交換サイクル:第1のエステル交換サイクルと同一条件の同一供給液を用いて、再活性化触媒に第2のエステル交換サイクルを実施した。結果を図7に示す。第1のエステル交換サイクルと同様の結果が得られた。
【0198】
第2の触媒再活性化。第2の触媒再活性化を第1の触媒再活性化と同一の様式で実施した。
【0199】
第3のエステル交換サイクル:第1のエステル交換サイクルと同一条件で同一供給液に可溶性チタン化学種を添加して、第2の触媒再活性化から得られた再活性化触媒に第3のエステル交換サイクルを実施した。第3のエステル交換サイクルの結果を図7に示す。第1のエステル交換サイクルと同様の結果を得たが、触媒は長期間にわたり安定した触媒活性を維持した。270運転時間で採取したサンプルの微量分析は、47重量ppmのTiを示した。270運転時間でのサンプル採取後、供給容器を新しい供給物で再充填した。残念なことに、チタンn−ブトキシドと混合すると供給物は濁った。濁りは、給液物中の含水量が意外にも前回の供給液よりも高かったことに起因すると考えられる。この新しい供給液では、触媒活性がより迅速に低下した。この新しい供給物を用いた複合生成物の微量分析は、9重量ppmのTiを示した。供給流中の含水量は、約650重量ppm未満に保たなくてはならないことが見出された。
【0200】
ブランク試験(Tiアルコキシド触媒の固定化なし):同一リアクタに、約52℃で5分間撹拌しながら酸化ケイ素ペレットを水酸化ナトリウム溶液(570mlの水中、10gのNaOH)で処理して調製した25ml(9.54g)酸化ケイ素ペレット担持体を装入した。シリカを冷水で完全に洗浄し、次に熱水(約80℃)で洗浄してシリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理済みシリカを最初に室温で乾燥させ、次に真空オーブン内で130℃で1.5時間、次に150℃で1時間乾燥させた。触媒は担持体上にグラフトしなかった。0.2ml/分の上向流の供給速度で、同一条件下(168℃(335°F)及び2.4バール(20psig)の沸騰反応条件下)で、上と同一の組成供給物中の42重量ppmのTiを用いてエステル交換反応を実施し、ここで供給組成物は26.07wt%のフェノール及び73.93wt%のDEC(2.56のDEC/フェノールモル比)であった。結果を図7に示す。フェノールの変換率は操作全体を通じて2%未満であった。
【0201】
この一連の実験(実験5)は、不活性化触媒を再活性化して、触媒サイクル時間を250時間を超えて延長できることを成功裏に実証する。ブランク試験はエステル交換を実施する前に、触媒を調製することが必要であることを明らかに実証する。代案としては、リアクタ外で予備調製したグラフト化チタンアルコキシド触媒を用いて、エステル交換を開始することを選択してもよい。この実験はまた、供給物中の含水量を約650重量ppm未満に制御して、安定した触媒活性を維持することが必要な場合があることを示唆する。
【0202】
実験6
【0203】
この実験の目的は、シリカ担持体上に担持される酸化チタン触媒存在下で、連続多段リアクタ内における芳香族カーボネートの連続生産を実証することであった。実験3と同一の粒状シリカゲル(40.7g)を撹拌しながら周囲温度で7分間、水酸化ナトリウム溶液(500mlの水中、6.86gのNaOH)で処理した。シリカゲルを最初に冷水で完全に洗浄し、次に熱水(約80℃)で洗浄してシリカ上の微量のナトリウムを除去した。処理済みシリカゲルを140℃で2時間、345℃で3時間、次に375℃で2時間乾燥させた。30ml(10.99g)を、4.71gのチタンn−ブトキシドを80mlの乾燥トルエンに溶解して調製されるチタンn−ブトキシド溶液で含浸させた。含浸シリカゲル担持体を500℃で3時間焼成した。シリカ上に担持される酸化チタン触媒上のチタン含有量は、チタンn−ブトキシドの使用量を基準として5.48wt%Tiとした。25ml(9.8g)のシリカ上に担持される酸化チタン触媒をリアクタ内に装入した。DECとフェノールとのエステル交換を様々な条件下で実施した。0〜308運転時間の供給物は、2種の異なるDEC及びフェノール混合物である。これらの供給物を使用して、第1のDECとフェノールとのエステル交換を実施した。DEC/PhOH供給液(0〜308運転時間)中のチタン含有量は59重量ppmのTiであり、Ti(OEt)4−x(OPh)(x=約2)の原液を混合して調製された。Ti(OEt)4−x(OPh)の原液は、120℃〜125℃で約3時間、適切な量のチタンテトラエトキシドをDEC及びフェノール(PhOH)(25wt%)混合溶液に混合して調製された溶液から、エタノールを蒸留して調製した。308〜986運転時間の供給物は、第1のエステル交換の複合生成物からエタノールを蒸留して調製した。これらの供給物を使用して、第2の連続リアクタ内の、または多段触媒蒸留塔の供給点より下段内の反応に相当する第2のエステル交換を実施した。986〜1136運転時間の供給物は、第2のエステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸留して調製した。これらの供給物を使用して、第3のエステル交換を実施した。第2または第3のエステル交換のための供給物には、可溶性チタン触媒構成要素を混合しなかった。供給組成物を表4に列挙する。エステル交換は、185℃(365°F)、2.9バール(27psig)、及び供給速度0.24ml/分で実施した。この実験結果を図8に示す。図8中のフェノールの変換は、第1のエステル交換から第3のエステル交換に至る総合的フェノール変換である。操作全体を通じて、触媒不活性化の徴候はなかった(1362時間の連続操作)。操作の終わりにリアクタから回収された触媒の検査からは、重質ポリマーのわずかな堆積しか示されなかった。触媒の分析は2.3wt%のTiを示し、生成流中への浸出に起因する約58%のTi損失が示唆された。686、887、及び1293運転時間で採取した生成流内のTiの微量分析は、それぞれ75、57、及び78重量ppmTiを示した。
【0204】
この実験結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給流に添加することで、触媒サイクル時間が長い連続多段リアクタを使用した、芳香族カーボネートの連続生産を明らかに実証した。あらゆる過剰量の酸化チタンは、可溶性有機チタン化合物を形成して洗い流される場合があるので、この実験はまた触媒上に大量の酸化チタンは必要ないかもしれないことを示唆し得る。触媒サイクル時間は、触媒再活性化の所要時間を満たして有り余る。EPC及びDPCの合わせた選択性は、転換フェノールを基準にして約98モル%〜約93モル%であり、操作条件に左右された。
【表4】

【0205】
実験7
【0206】
この実験の目的は、シリカゲル担持体上の固定化チタンエトキシド触媒存在下においてDECとフェノールとのエステル交換を実施することで、連続多段リアクタ内の芳香族カーボネートの連続生産を実証することであった。
【0207】
この実験は、実験7A及び7Bの2つの部分からなる。実験7Aでは、エステル交換を実施する前に、シリカゲル担持体上のTiエトキシドの固定化を実施した。供給物は、様々な量の可溶性Ti(OEt)4−x(OPh)(x=約2)化合物を含有した。実験7Bでは、リアクタ内の25mlの空間に25mlのシリカゲル担持体を装入し、シリカ担持体上にTiテトラエトキシドをグラフトせずにエステル交換を実施した。
【0208】
実験7A
【0209】
in situ調製の触媒のために使用される担持体は、球状に成形されたシリカゲル球(直径1.7〜4mm)として。このシリカゲル担持体は、1nmあたり約6個の水酸基、BET:392m/g、孔容量:0.633cm/g、平均孔径:6.48nm、ABD:約0.58g/mlを有していた。このシリカゲル担持体(25ml;1446g)をリアクタ内に装入した。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中、45.25gのチタンエトキシド)を周囲温度で20分間、次に3.4バール(35psig)下で135℃(275°F)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させ、チタンエトキシドをシリカゲル担持体上にグラフトした。冷却後、システム内の過剰な溶液を排出し、次に触媒を4ml/分のトルエンで1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を、138℃(280°F)で流速300cc/分の窒素ガス内で2時間乾燥させた。
【0210】
EPC及びDPCを生成する反応を様々な条件で実施した。結果を図9A及び9Bに示す。151ppmのTiが添加される709〜799運転時間を除いて、全ての第1のエステル交換反応は、供給流に添加されるTiエトキシドとして59ppmのTiを用いて実施した。第1のエステル交換では、操作は185℃(365°F)、2.9バール(27psig)、及び0.24ml/分で開始された。最初の50運転時間後、続く96運転時間にわたり、温度を174℃(345°F)に緩慢に低下させ、供給速度は0.5ml/分に緩慢に増大させた。その後、全ての第1及び第2のエステル交換を174℃(345°F)、2.9バール(27psig)、及び0.5ml/分の条件で実施した。第1、第2、及び第3のエステル交換からの複合生成物からエタノールを蒸発させることで、第2、第3、及び第4のエステル交換のための供給混合物を調製した。973〜1064運転時間では、混合エステル交換及び不均化反応を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)、及び0.5ml/分の供給速度で実施した。反応のための供給物の組成は、重量を基準にして、18.553%のDEC、0.108%の炭酸エチルブチル、0.283%のフェネトール、0182%の未知成分、57.508%のフェノール、22.03%のEPC、0.054%のp−フェノキシフェニルメチルカーボネート、及び1.282%のDPCであった。結果は、主反応が不均化であることを示唆する。しかしデータ分析はまた、不均化のために供給物からDECを除去することの必要性も示唆する。図9Aでは、44重量ppmTi〜69重量ppmTiの範囲にわたる供給物中のTi濃度で、第2のエステル交換を174℃(345°F)、2.4バール(20psig)、及び0.5ml/分で実施した。図9Bでは、45重量ppmTi〜75重量ppmTiの範囲にわたる供給物中のTi濃度で、第2のエステル交換を174℃(345°F)、2.9バール(27psig)、及び0.5ml/分で実施した。第3のエステル交換は、52重量ppmTi〜74重量ppmTiの範囲にわたる供給物中のTi濃度で、174℃(345°F)、2.5バール(22psig)、及び0.5ml/分で実施した。第4のエステル交換は、51重量ppmTi〜73重量ppmTiの範囲にわたる供給物中のTi濃度で、174℃(345°F)、2.4バール(20psig)、及び0.5ml/分で実施した。
【0211】
芳香族カーボネートの選択性は、フェノールの変換と共に低下する。第1のエステル交換中のEPC及びDPCの合わせた選択性は、フェノールを基準にして約99モル%である。第4のエステル交換中のEPC及びDPCの合わせた選択性は、フェノールを基準にして94モル%〜95モル%である。
【0212】
固体触媒は、触媒活性と関係ない実験終了まで、14ヶ月にわたって機能し続けた。図9A及び9Bは、14ヶ月にわたって触媒不活性化がわずかまたは皆無であったことを強く示唆する。触媒床の上下から注意深く採取した2つの触媒サンプルの分析は、双方の触媒サンプルで0.28wt%(550℃焼成ベース)Tiの同一量を示唆する。この実験は、微量の可溶性チタン化合物を供給流に添加することで、(14ヶ月を超える)長い触媒サイクルが得られることを成功裏に実証する。
【0213】
実験7B(ブランク試験)
【0214】
この実験の目的は、エステル交換を実施しながら、シリカ担持体上へのTiアルコキシド固定を試みることであった。様々な量の可溶性Ti(OEt)(OPh)4−x化合物を供給流に添加した。DECとフェノールとのエステル交換を174℃(345°F)及び2.9バール(27psig)で実施した。結果を図10に示す。
【0215】
実験5(図7)のブランク試験及び実験7B(図10)と、結果(図9A及び9B)とを比較すると、エステル交換を実施する前に、シリカゲル担持体上にチタンアルコキシドを固定化することの必要性が明らかである。比較実験1及び2(図4)と、図9A及び9Bとを比較すると、微量の可溶性活性有機金属化合物を供給物に添加する新しい固体触媒技術の、先行技術と比べた優位性もまた明らかに実証される。
【0216】
実験8
【0217】
この実験の目的は、固体触媒不在下であるが可溶性Ti触媒構成要素の存在下における、EPCからDPC及びDECへの不均化を実証することであった。窒素ブランケット下で、実験7の第4のエステル交換からの複合生成物からエタノール、DEC、及びフェノールの一部を蒸留して、不均化供給物を調製した。供給混合物中の均一系Ti触媒は、第4のエステル交換複合生成物に由来した。追加の可溶性Ti触媒は、供給混合物に添加しなかった。トルエンを2種の供給混合物に添加して、沸点リアクタのための気相を作り出した。第1の供給物組成は、16.26wt%のトルエン、1.61wt%のDEC、49.33wt%のフェノール、30.91wt%のEPC、及び0.78wt%のDPCであり、残りは微量のMPCをはじめとする副産物であった。第2の供給物組成は、16.15wt%のトルエン、1.61wt%のDEC、49.28wt%のフェノール、31.08wt%のEPC、及び0.80wt%のDPCであり、残りは微量のMPCをはじめとする副産物であった。第1及び第2の供給物中の均一系触媒濃度は、それぞれ180重量ppm及び200重量ppmのTiであった。
【0218】
(固体触媒の不在下で)25mlの空の触媒空間を有するリアクタ内において、179℃(355°F)及び2.9バール(27psig)で不均化を実施した。供給速度は最初の72運転時間中は0.5ml/分の上向流であり、その後は0.60ml/分の上向流であった。不均化反応の結果を図11に示す。実験結果は、DPCに加えて少量のEPCもまた生成したことを示唆する。キサントンは、約35重量ppmの量で不均化中に生成した唯一の新しい副産物であった。ジフェニルエーテルは、どのサンプル分析でも検出されなかった。全ての副産物の選択性は、3.0モル%〜3.3モル%であった。この実験は、本明細書で開示される実施態様に従った、DPC及びDECを生成するEPC不均化を成功裏に実証する。
【0219】
実験9
【0220】
この実験はDPCの精製を実証する。実験用蒸留装置を使用し、実験8からの複合不均化生成物を蒸留し、エタノール、DEC、及びフェノールのかなりの部分を除去した。蒸留フラスコ内の残りの材料は、以下の組成を有した。0.024%のEtOH、0.204%のDEC、0.017%のフェネトール、1.619%の未知成分、12.563%のフェノール、25.377%のEPC、59.474%のDPC及び0.723%の重質成分)。真空蒸留を実施することにより、粗製DPC(235〜245℃の蒸気温度でカット)を得た。この粗製DPCの組成は、0.535%の未知成分、2.112%のフェノール、0.013%フェニルエーテル、0.030%のEPC、94.555%のDPC、0.026%のキサントン、及び2.73%の重質成分であった。この粗製DPCを、ヘキサン中の5wt%のジエチルエーテルの混合物中で5回再結晶化させた。最終DPC生成物は、0.4重量ppmのキサントン及び11.6重量ppmのフェノールの不純物を有した。微量分析によってその他の不純物は検出されなかった。このDPC生成物は、市販される高純度DPC(28.7重量ppmの未知成分及び67.2重量ppmのフェノール)よりもさらに高い純度を有した。
【0221】
環状カーボネートとアルコールとのエステル交換によるジアルキルカーボネート
【0222】
ジアルキルカーボネートは、固体触媒存在下で環状カーボネートとアルコールとのエステル交換を実施することにより、連続的に生成される。上述のように、本明細書で開示される実施態様は、特にDMCやDECなどのジアルキルカーボネートの連続生産に有用な場合がある。エステル交換のためのいくつかの均一系触媒がある。均一系触媒を多孔性担持体に固定化して調製された、担持金属酸化物または混合金属酸化物触媒または固体触媒存在下で、環状カーボネートとアルコールとのエステル交換を実施することによりジアルキルカーボネートを生成する場合、触媒は、大型商用リアクタの操作にとっては許容できないほど短い寿命サイクルを有する。有機カーボネートの取り扱いに伴う恒久的な触媒不活性化は、活性触媒の構成要素が不均一系触媒から反応媒体中に浸出することに起因する。したがって、DMCなどのジアルキルカーボネートは、一般に均一系触媒存在下でエステル交換を実施することによって生成される。
【0223】
しかしながら、本明細書で開示される実施態様は、固体触媒存在下でジアルキルカーボネートを生成するプロセスを提供する。固体触媒は、周期表のII、III、IV、V、及びVI族からの1つ以上の元素を含んでいてもよい。第1のタイプの固体触媒は、ヒドロキシル、カルボニル、アルコキシ、ヒドロキシル及びアルコキシ混合物、塩素などの表面官能基を有することがある多孔性担持体上に固定化された、上記元素の1つ以上の有機金属化合物を含む。担持体は、シリカ、酸化チタン、MCM−41とMCM−48とSBA−15などのゼオライト材料、炭素及び/または炭素質材料などを含んでいてもよい。第2のタイプの固体触媒は、多孔性担持体に堆積された上記元素の1つ以上の金属酸化物、水酸化物またはオキシ水酸化物を含む。安定した触媒活性を維持するために、微量の可溶性触媒の構成要素が供給流に添加される。そうすることで、商用リアクタに適するように触媒寿命サイクルを延長し得る。
【0224】
エステル交換は、伝統的な固定床リアクタ、触媒蒸留塔、沸点リアクタ、分割壁蒸留塔、間欠的な流動リアクタ、またはこれらの機器のあらゆる組み合わせなどのあらゆる物理機器内で実施してもよい。組み合わせの例としては、固定床沸点リアクタと、それに続く触媒蒸留塔リアクタが挙げられる。エタノールまたはメタノールなどの一級アルコールを用いた環状カーボネートのエステル交換は、2種のエチルプロピレングリコールカーボネート中間体がある2段階反応として実施してもよい。また反応生成物は、DECによるプロピレングリコールのO−アルキル化によって生成される、プロピレングリコールエチルエーテル異性体などの少量の副産物を含有する。エステル交換は、単一反応ゾーンまたは多重反応ゾーン内で実施してもよい。
【0225】
図18は、本明細書で開示される実施態様に従って、固体触媒存在下でプロピレンカーボネートとエタノールとのエステル交換を実施することにより、DEC及びプロピレングリコール副産物を連続生産するための単純化した工程系統図を示す。エステル交換は、図示されるように、反応混合物組成に応じて約2バール〜約11.4バール(約45psig〜150psig)の圧力下、約149℃〜約177℃(約300°F〜350°F)の温度で、触媒蒸留リアクタ101内で実施してもよい。触媒蒸留リアクタ101に加えて、工程は2本の蒸留塔102及び114を含む。触媒蒸留塔101は、その中に固体触媒が位置してもよい反応ゾーンRZを含む。新鮮なプロピレンカーボネート供給105を再循環流117と合わせ、組み合わせ流106を固体触媒床反応ゾーンRZより上の適切な位置で触媒蒸留塔101に導入する。
【0226】
軽質構成要素からDECを分離するために、エタノール、DEC、及び二酸化炭素などの軽質成分の混合物であるカラム101のオーバーヘッド流107をDEC回収カラム102に導入する。カラム102のオーバーヘッド流108を気体液体分離ドラム110に導入して、ライン111を通じて排気される気体から液体エタノールを分離してもよい。ドラム110から回収されたプロセス流112内の液体エタノールを新鮮なエタノール供給流103と合わせ、組み合わせ流104を加熱して、反応ゾーンRZより下の適切な位置で触媒蒸留塔101に導入するエタノール蒸気を生成する。蒸留カラム102の缶出液流109は生成物DECを含有し、それは保存タンク(図示せず)またはその他の下流工程に送ってもよい。
【0227】
プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、l−エトキシ−2−プロパノールや重質成分などの反応中間体及び副産物、及び微量の触媒を含有する触媒蒸留塔101からの缶出液113を第2の蒸留カラム114に誘導して、プロピレングリコール、l−エトキシ−2−プロパノールなどを含有するオーバーヘッド流115を回収する。プロピレングリコールは、蒸留によってプロセス流115中の混合物から回収してもよい(図示せず)。カラム114の缶出液流116をライン117及び106を通じて触媒蒸留塔101に再循環する。缶出液流116の一部をプロセス流118を通じてシステムから除去して、システム内の重質成分の蓄積を防止してもよい。
【0228】
微量の可溶性有機金属化合物をライン119を通じて、触媒蒸留塔101に触媒反応ゾーンより上で導入する。いくつかの実施態様では、触媒反応ゾーンRZを流れ落ちる液体反応混合物が、典型的に5重量ppm〜約100重量ppmのMg、Ca、Zn、La、Ac、またはTi化合物などの微量可溶性金属構成要素を含有するような速度で、触媒溶液を供給する。
【0229】
ジアルキルカーボネートの生成を以下の実験によって例示する。
【0230】
実験10
【0231】
この実験の目的は、固体触媒存在下で、DEC及びプロピレングリコールを生成するためのエタノールによるプロピレンカーボネートのエステル交換を実証することであった。固体触媒は、担持体上にチタンエトキシドシリカゲルを固定化することでそのまま調製される。
【0232】
リアクタに、25ml(直径1.7〜4mm)の球状シリカゲル担持体を装入した。担持体重量は10.097gであった。このシリカゲル担持体は、1nmあたり約6個の水酸基、BET:314m/g、孔容量:1.055cm/g、平均孔径:13.46nmを有していた。チタンエトキシド溶液(800mlのトルエン中、40gのチタンエトキシド)を周囲温度で30分間、次に135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で6時間、15ml/分の上向流でリアクタ内に循環させて、チタンエトキシドをシリカゲル担持体にグラフトした。冷却後、過剰な溶液をリアクタから排出し、次に触媒を4ml/分のトルエンで1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を138℃(280°F)で300cc/分窒素ガス流内で2時間乾燥させた。
【0233】
プロピレンカーボネートとエタノールの混合溶液を調製し、チタンエトキシドとして45ppmのTiを混合供給液中に混合した。174℃(345°F)及び17.9バール(245psig)で様々な供給混合物を用いて、上向流液相内でエステル交換を実施した。操作条件を表5に列挙する。この実験の結果を図12に示す。
【表5】

【0234】
この実験の結果は、微量の可溶性Ti化合物を供給流に添加することにより、シリカゲル担持体上に固定化された固体Tiアルコキシド触媒存在下で、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートとエタノールとのエステル交換を実施することで、DEC(ジアルキルカーボネート)を生成してもよいことを明らかに実証する。微量のTiを供給流に添加しなければ、触媒活性は、図12に示すように1397〜1469操作時間をかけて迅速に低下する。
【0235】
実験11
【0236】
この実験の目的は、固体触媒存在下で、DEC及びプロピレングリコールを生成するためのエタノールによるプロピレンカーボネートのエステル交換を実証することである。実験は、比較実験11A(非発明)及び11Bの2つの部分からなる。
【0237】
比較実験11A
【0238】
均一系の第3級マグネシウムブトキシド存在下で、エステル交換を実施した。供給混合物のエタノール/プロピレンカーボネートのモル比は6.85であった。均一系触媒濃度は57重量ppmMgであった。エステル交換を168℃(335°F)、17.9バール(245psig)、及び0.5ml/分で実施した。結果を図13に示す。プロピレンカーボネートの平均変換率は約24.3モル%である。DEC及びプロピレングリコールの平均選択性は、それぞれ95.7及び94.3モル%である。
【0239】
実験11B
【0240】
固体触媒存在下でエステル交換を実施した。出発固体触媒は、シリカゲル担持体上にMgOが担持されたものである。初期含浸によって、10.098gのMg(NO・6HOを22.73g脱イオン水に溶解して、硝酸マグネシウム溶液を調製した。初期含浸によって、実験10で使用されるのと同一の30ml(11.777g)のシリカゲル担持体上に硝酸マグネシウムを堆積させた。含浸生成物を真空オーブン内で100℃で1時間乾燥させた後に、510℃で2時間焼成し、シリカゲル上に担持されるMgOを調製した。このMgOとシリカゲルの表面混合酸化物触媒25ml(10.77g)をリアクタ内に装入した。表6に列挙する様々な条件で、プロピレンカーボネートとエタノールとのエステル交換を実施した。
【表6】

【0241】
反応生成物は、副産物として1−エトキシ−2−プロパノール及びジプロピレングリコールを含有した。ジエチルエーテルはいずれの生成物サンプルでも検出されなかった。結果は図14にも示めしている。第1のエステル交換では、DEC及びプロピレングリコールの平均選択性は、それぞれ95.3モル%及び94.8モル%である。一般に選択性は、プロピレンカーボネートの変換と共に緩慢に低下する。また選択性は、EtOH/プロピレンカーボネートのモル比と共に増大する。第2のエステル交換では、DEC及びプロピレングリコールの平均選択性は、それぞれ94.0モル%及び92.8モル%である。
【0242】
本明細書で開示される実施態様に従った、尿素及びアルコールからのジアルキルカーボネート
【0243】
上述したように、P.Ballら及びD.Wangらなどの出版物によれば、ジアルキルカーボネートの生成に有用である尿素及びアルコールからの不均一系触媒は、Al、Sb、及びシリカを含んでもよい。溶融SiOは触媒ではないが、PPhの存在下で触媒性になってもよい。シリカ上に担持されるZnO及びMgOはまた、尿素及びアルコールからジアルキルカーボネートを生成するのに使用してもよい。
【0244】
しかしながら、ZnOまたはMgOなどの金属酸化物触媒は、反応条件下で固体触媒から浸出し、恒久的な触媒不活性化が帰結する。触媒蒸留は、液体触媒反応媒体からのDMCまたはDEC及びアンモニアの迅速な除去を提供して、ジアルキルカーボネート生産性及び選択性を改善するので、触媒蒸留塔リアクタを使用したジアルキルカーボネートの商業生産では触媒寿命サイクルは非常に重要である。さらに上述の不均一系触媒は、均一系ジブチルすずジメトキシド触媒程には効果的でない。
【0245】
本明細書で開示される実施態様に従って、ジアルキルカーボネートは、固体触媒存在下で2段階でアルコールを用いることで尿素のアルコール分解を引き起こすことにより、連続的に生成してもよい。どちらの反応工程も平衡状態反応である。ジアルキルカーボネートを生成するのに使用されるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。第1の逐次反応では、触媒の不在または存在下で、第1の反応ゾーンとしての機能を果たす反応性蒸留塔(予備リアクタ)内で、尿素とアルコールとを反応させてカルバミン酸アルキル及びアンモニアを生成する。第1ステップ反応では触媒は必要ない。水及びカルバミン酸アンモニウムなどの供給流中の不純物はまた、第1の反応ゾーン内でCO及びアンモニアとして除去され、下流触媒を保護する。第2ステップ反応では、第2の反応ゾーンの機能を果たす1つ以上の触媒蒸留カラム(主リアクタ)内において、固体触媒存在下で第1の反応ゾーンで生成されたカルバミン酸アルキルと、アルコールとを反応させて、ジアルキルカーボネート及びアンモニアを生成する。2段反応は次のように図示される。
【化6】

【0246】
固体触媒は、シリカまたは炭素質材料などの担持体上に有機すず化合物、有機アンチモン化合物などを固定化することで調製してもよい。すず及びアンチモン化合物の例は、アルキルすずアルコキシド、すずアルコキシド、アンチモンアルコキシドなどである。その他のタイプの固体触媒は、担持体上に担持される酸化すずまたは酸化アンチモンである。反応のはじめにおいては、2つのタイプの触媒がある。第1のタイプの触媒は、シリカまたは炭素質材料などの担持体上に固定化された金属アルコキシド、炭酸モノエステル金属塩、またはこれらの混合物である。第2のタイプの触媒は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭素質材料などの担持体上に担持される金属酸化物である。活性金属構成要素は、Sn、Sb、Ti、Zr、Zn、Mg、Caなどの元素であってもよい。
【0247】
少量の可溶性金属化合物をリアクタ内に入る反応流に再度添加し、延長した寿命サイクルにわたって触媒活性を維持する。そうすることによって、触媒寿命サイクルを商業的プロセスで使用するのに適するように延長し得る。定常状態条件下で機能する触媒は、担持体上に固定化された、金属アルコキシド、金属アルコキシアルキルカーボネート(炭酸モノエステルの塩、またはそれらのオリゴマーまたは混合物である考えられる。反応混合物中のジブチルすずジアルコキシドなどの可溶性有機金属化合物の濃度は、米国特許第7,074,951号明細書で使用される均一系触媒よりも顕著により低い。
【0248】
トリグリムなどの高沸点溶媒は、第2の工程で溶媒として使用してもよく、共触媒の役割を果たして反応速度及び選択性を改善する。重要なことには、溶媒の沸点が高いため反応を低圧下で実施し得るので、それは洗浄ガスとしての過剰なエタノール蒸気と共に、DEC及びアンモニアの液体反応媒体から気相への迅速な除去を助け、高いDEC生産性及び選択性がもたらされる。本明細書で開示される実施態様は、固体触媒存在下でジアルキルカーボネートを製造する別の改善されたプロセスを提供する。このプロセスはプロセス流中のすず触媒濃度を実質的に低下させるので、「環境により配慮した(green)」プロセスかもしれない。プロセス流中の微量の可溶性触媒化合物は、工程系内に留まる。プロセス流中の可溶性触媒化合物の回収または分離は必要でない。
【0249】
図15は、本明細書で開示される実施態様に従ったDECの連続生産工程のフロー図を示す。尿素のカルバミン酸エチル(EC)への変換のために、倍径蒸留塔リアクタ36を予備リアクタとして使用して、供給流中の不純物を除去する。尿素溶液は、ドラム34内で尿素供給31及びエタノール流33を混合して調製する。エタノール流33は、フレッシュエタノール供給32及び再循環流74からのエタノールを含んでいてもよい。
【0250】
ドラム34からの尿素溶液35を倍径塔リアクタ36上部の狭いカラム部分中央に導入する。リアクタ36は予備リアクタの役割を果たして、供給物、エタノール、及び尿素中の不純物(水及びカルバミン酸アンモニウム)を浄化し、尿素をECに転換する。予備リアクタ36からの蒸気流37は、アンモニア、二酸化炭素、及びエタノールから構成される。浄化された混合溶液を缶出液流38として、予備リアクタ36から除去する。缶出液流38を固体触媒を含有する触媒反応ゾーン39Rよりも上の位置で、主リアクタ39(触媒蒸留塔)に導入する。
【0251】
再循環エタノール流40を、過熱エタノール蒸気として、触媒反応ゾーン39Rよりも下の位置でリアクタ39に導入する。触媒蒸留塔39からの缶出液流を、ライン42、44、及び78を通じて、カラム39上部のライン38の供給点よりも上の位置に再循環させる。再循環ループからの小さなスリップ流43をDEC回収塔63からの缶出液流65と合わせてプロセス流66にし、それを、固体触媒を含有する別の小型触媒蒸留塔である浄化リアクタ67に、触媒反応ゾーンよりも上の位置で導入する。スリップ流43は、エタノール、アンモニア、エチルアミン、ジエチルエーテル、DEC、カルバミン酸エチル、N−エチルカルバミン酸エチル、トリグリム(TG)、重質成分、及び微量の可溶性触媒構成要素を含んでもよい。DEC回収塔63からの缶出液流65は、カルバミン酸エチル、N−エチルカルバミン酸エチル、TG、及び微量の触媒を含んでもよい。浄化リアクタ67からのオーバーヘッド流68は、アンモニア、エチルアミン、CO、ジエチルエーテル、エタノール、及びDECを含んでもよい。浄化リアクタ67からの缶出液流69は、アンモニア、エチルアミン、CO、ジエチルエーテル、エタノール、N−エチルカルバミン酸エチル、カルバミン酸エチル、複素環化合物、及び微量の可溶性触媒構成要素を含んでいてもよい。
【0252】
リアクタ67からの缶出液流69を冷却/濾過システム70内で冷却して、複素環化合物を沈殿させる。沈殿した固体副産物を、ライン71を通じてシステム70から除去する。システム70からの液体流72を、2つのプロセス流77及び78に分割して、それぞれ浄化リアクタ67及び主リアクタ39に再循環させる。
【0253】
主リアクタ39からのオーバーヘッド流41を、浄化リアクタ67からのオーバーヘッド流68と合わせて、プロセス流42にしてもよい。主リアクタ39からのオーバーヘッド流41は、アンモニア、CO、エチルアミン、ジエチルエーテル、エタノール、カルバミン酸エチル、N−エチルカルバミン酸エチル、DEC、TG、及び微量の触媒を含んでいてもよい。組み合わせたプロセス流42を蒸留塔43に導入し、そこで軽質成分及び重質の化合物が分離させる。アンモニア、CO、エチルアミン、ジエチルエーテル、及びエタノールを含むことができる蒸留塔43からのオーバーヘッド流44を、予備リアクタ36からのオーバーヘッド流37と合わせてプロセス流45とし、蒸留塔46に導入する。
【0254】
蒸留塔46からのオーバーヘッド流47を冷却し、COとアンモニアの反応を引き起こしてカルバミン酸アンモニウムを形成する。カルバミン酸アンモニウムは、液体アンモニア中に沈殿し、冷却/濾過システム48からライン49を通じて固形物として除去される。冷却/濾過システム48からの液体アンモニアプロセス流50を、アンモニア保存タンクに送る。
【0255】
カラム46からの缶出液流51は、エチルアミン、ジエチルエーテル、エタノール、及び少量のDECを含んでもよい。プロセス流51をエチルアミン回収カラム52に導入する。エチルアミンのオーバーヘッド流53を保存タンクに送る。カラム52からの缶出液流54と蒸留塔43からの缶出液流55とを合わせて、プロセス流56にする。プロセス流56をエーテル回収塔57に導入する。蒸留塔57からエーテルをオーバーヘッド流58として除去し、それをエーテル保存タンクに送る。蒸留塔57からの缶出液流59を蒸留塔60(エタノール回収塔)に導入する。
【0256】
オーバーヘッド流61として回収されたエタノールを、主リアクタ39、浄化リアクタ67、及び予備リアクタ36(またはドラム34)に再循環させる。エタノール再循環流74は、蒸留塔60(エタノール回収塔)のオーバーヘッド流61の一部である。プロセス流61を3つのプロセス流40、73、及び74に分割する。プロセス流73を浄化リアクタ67に再循環させる。プロセス流74は、尿素溶液調製のためにドラム34に再循環させる。プロセス流61の大部分となり得るプロセス流40を、主リアクタ39に再循環させる。エタノール回収塔60からの缶出液流62をDEC回収塔63に導入する。生成物DECを蒸留塔63からオーバーヘッド流64として回収し、DEC保存タンクに送る。塔63からの缶出液流65は、カルバミン酸エチル、N−エチルカルバミン酸エチル、TG、及び微量の可溶性触媒構成要素を含んでもよい。このプロセス流65をライン66を通じて浄化リアクタ67に送る。
【0257】
DMCは、図15について記載されるDECを製造するプロセスと同様のプロセスで、メタノール及び尿素から生成し得る。しかし最終生成物DMCは、メタノール−DMC共沸混合物を有するプロセス流から回収されるものと理解される。溶剤抽出蒸留技術によって、メタノール−DMC共沸混合物を分離することによるDMCの回収は、米国特許第7,074,951号明細書などで記載されるように文献で十分に立証されている。
【0258】
実験12
【0259】
この実験の目的は、固体触媒存在下で、DEC及びアンモニアを生成するカルバミン酸エチルとエタノールとの反応を実証することである。ジブチルすずジメトキシドをシリカゲル上にそのまま固定化することにより、固体触媒を調製した。
【0260】
実験7Aで使用した25ml(14.79g)の球状に成形されたシリカゲル担持体をリアクタ内に装入した。2リットルの乾燥トルエン中に87gのジブチルすずジメトキシドを混合して、ジブチルすずジメトキシド溶液を調製した。周囲温度及び周囲圧力で、リアクタにこの溶液を上向流で充填させた。この溶液を2ml/分で上向きに流しながら、リアクタを110℃(230°F)に緩慢に加熱した。110℃(230°F)でリアクタを3.4バール(35psig)にして、次に135℃(275°F)まで過熱を継続した。135℃(275°F)及び3.4バール(35psig)で、ジブチルすずジメトキシド溶液を、リアクタに0.5ml/分の上向流で6時間通過させた。冷却後、リアクタ内の過剰な溶液を排出し、次に触媒を4ml/分の乾燥トルエンの上向流で1.5時間洗浄した。洗浄した触媒を、周囲圧力下104℃(220°F)で、300cc/分のNの下向流内で2時間乾燥させた。
【0261】
沸点リアクタ内で、13.2wt%のカルバミン酸エチル、31.36wt%のトリグリム、及び55.44wt%のエタノールの溶液を、窒素ガスと共に上向流で固体触媒床に通過させて反応を実施した。反応はまた、下向流リアクタ内で実施してもよい。微量のジブチルすずジメトキシドをこの溶液に混合する。反応条件を表7に列挙し、この試験結果を図16に示す。反応生成物の分析は、微量のN−エチルカルバミン酸エチル及びジエチルエーテルを示した。カルバミン酸エチルを基準にしたDECの選択性は98.5モル%〜99.9モル%の範囲であり、カルバミン酸エチル変換の増大と共に選択性が低下する一般的傾向があった。
【表7】

【0262】
この実験は、尿素及びエタノールからDECを生成してもよいことを成功裏に実証する。第1の工程では、触媒不在下で尿素とエタノールとを反応させることでカルバミン酸エチルが生成される(米国特許第7,074,951号明細書参照)。第2の工程では、固体触媒存在下でカルバミン酸エチルとエタノールとの反応を実施し、微量の可溶性有機金属化合物を供給流に添加して浸出に起因する金属損失を埋め合わせることで、DECが生成される。第2の工程におけるDECの商業生産は、好ましくは1つ以上の触媒蒸留塔内で実施される。
【0263】
本明細書で開示される実施態様に従ったバイオディーゼルの生産
【0264】
バイオディーゼルは、均一系触媒及び固体触媒存在下で、植物油及び動物脂肪とメタノールとのエステル交換を実施することで生産されている。バイオディーゼル生産の原材料は、高級脂肪酸エステルである植物油及び動物脂肪である。脂肪という用語は(液体の場合は植物または動物油)は、通常脂肪酸とグリセロールとのエステル(グリセリド)に限定され、ワックスという用語はその他のアルコールとのエステルに限定される。バイオディーゼル生産に関わる基礎化学は、天然エステル(主にグリセリド)と第一級アルコール(典型的にメタノールまたはエタノール)との触媒交換反応である。塩基(通常NaOH、KOH、カリウムメトキシド、またはナトリウムメトキシド)のアルコール溶液を触媒として使用してもよい。したがってバイオディーゼルは、様々な飽和及び不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルの混合物である。副産物はグリセロールであり、その量は16〜25wt%である。バイオディーゼルはまた、供給物中の水の量または使用触媒に応じて、脂肪酸(エステルの加水分解生成物)を少量含有してもよい。
【化7】

【0265】
天然物グリセリドのアルキル基R、R、及びRは、一般に鎖長及び不飽和度が異なる。アルキル基は通常直鎖であって、4〜26個の偶数の炭素原子を有する。例外は分岐イソ吉草酸(CHCHCHCOOHであり、これはイルカに比較的大量にみられる。不飽和脂肪酸によっては、アルキル鎖中に2または3個の二重結合を有する。不飽和脂肪酸は、それらの飽和対応物よりもさらに低い融点を有する。不飽和脂肪酸の鎖長は、一般にC10〜C24の範囲である。キャノーラ油はC16〜C20の鎖長中に、コーンオイルよりもさらに高い不飽和度を有する。
【0266】
一般に、カルボン酸エステルとアルコールとのエステル交換のためには、酸性触媒よりも塩基性触媒がより効果的である。先行技術で開示される不均一系触媒(背景技術参照)もまた、塩基性触媒である。残念なことに、活性触媒の構成要素は反応条件下では固体触媒から浸出して、触媒不活性化をもたらす。アルミン酸亜鉛触媒はあまり活性の高い触媒でなく、MgOまたはCaOなどのより塩基性の高い触媒よりも、さらに高い反応温度とさらに低い供給速度を必要とする。しかしながら、後者はアルミン酸亜鉛よりも迅速に、固体触媒から浸出する。
【0267】
植物油または動物脂肪のエステル交換は、1段または2段反応で、供給混合物中に微量の可溶性触媒構成要素を有する沸点リアクタ、間欠的な流動リアクタ、または触媒蒸留塔内で、固体触媒存在下でメタノールまたはエタノールを用いて実施してもよい。出発触媒は、シリカ、アルミナ炭素及び/または炭素質材料などの担持体上に担持される酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ランタンなどの金属酸化物を含んでいてもよい。炭素及び炭素質担持体は、好ましくはヒドロキシルまたはカルボニルまたは双方等の表面官能基を有して、有機金属化合物を担持体表面に固定化する。
【0268】
担持金属酸化物、水酸化物、または酸素水酸化物を調製するために、表面官能基が必要でない場合もある。炭素質担持体は、高温で、木材、ヤシ殻、でんぷん、セルロース、でんぷんとセルロースの混合物、糖、メチルセルロースなどの炭水化物の加熱脱水を制御することによって調製してもよい。炭素質担持体は、非担持型または担持型のどちらであってもよい。担持炭素質材料を調製するために、炭水化物を適切な多孔性担持体上に堆積させるのに続いて、不活性雰囲気内、または不活性ガス、少量の酸素または蒸気または双方から構成される雰囲気内における300℃〜1000℃の高温での制御された加熱脱水を行った。炭素質材料のための担持体は、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、粘土、シリカ−アルミナなどのあらゆる無機材料であってもよい。
【0269】
2ステップ法では、第1のリアクタ全体のトリグリセリドの変換率は、約90%より高くてもよい。第1のエステル交換リアクタからの反応生成流中の残りの未変換トリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドは、第2のエステル交換リアクタ内で完全に変換されてもよい。エステル交換は二相反応なので、沸点リアクタまたは間欠的な流動リアクタ内でエステル交換を実施することは、触媒孔を通して、バルク液状媒体と、触媒反応の大部分が起こる触媒ペレット内部との間を往復させて、大型のトリグリセリド分子、メチルエステル、及び粘着性のグリセロールを移送するのを助け、高生産性が得られる。本明細書で開示される触媒は高活性を有するので、エステル交換はより低い温度及び圧力で実施してもよく、そのことは、より低い建設費及び光熱費を意味する。
【0270】
リアクタへの供給流への可溶性触媒構成要素の添加は、いくつかの実施態様では約0.5重量ppm〜約500重量ppm、別の実施態様では約5重量ppm〜約250重量ppm、及び別の実施態様では10重量ppm〜50重量ppmである。可溶性触媒の化合物の例としては、特に、亜鉛2−メトキシエトキシド、カルシウム2−メトキシエトキシド、亜鉛2−メトキシプロポキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛アルコキシアルキルカーボネート、カルシウム2−メトキシプロキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムアルコキシアルキルカーボネート、マグネシウム2−メトキシエトキシド、マグネシウム2−メトキシプロキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムブトキシド、マグネシウムアルコキシアルキルカーボネート、ランタンアルコキシド、ランタンアルコキシアルキルカーボネート、カルボン酸の亜鉛塩、カルボン酸のマグネシウム塩、カルボン酸のカルシウム塩、及びMg、Ca、及びZnグリセリドが挙げられる。これらの混合物もまた、使用することができる。Ca、Mg、Zn、及びLaの可溶性化合物は、液相中でまたは液体及び気体存在中で、93℃〜260℃(200°F〜500°F)、好ましくは121℃〜232℃(250°F〜450°F)の温度で、これらの金属の酸化物または水酸化物と、有機カーボネートまたは有機カーボネートとアルコールの混合物とを、またはカルボン酸または有機カルボン酸とメタノールや2−メトキシエタノールなどのアルコール混合物とを反応させて得てもよい。オプションとして、リサイクルのために、金属構成要素を回収することを選択してもよい。このような調製溶液は、リアクタへの供給流にこれらの金属を微量添加して、長い触媒サイクル時間を得るのに有用である。固体金属アルコキシド、金属水酸化物または金属酸化物触媒上の活性金属または金属構成要素の総量は、いくつかの実施態様では約0.05wt%〜約20wt%であり、その他の実施態様では約0.07wt%〜約12wt%である。
【0271】
第2のリアクタ内または任意に第3のリアクタ内におけるメタノールとのエステル交換に加えて、任意に、DMC、メチル2−エチル−l−ヘキシルカーボネート、メチルカルバメート、2−エチル−l−ヘキシルカルバメート、尿素、またはこれらの混合物との反応によって、ジ−またはモノ−グリセリドの全部または一部を有機カーボネートまたは有機カルバメート、または双方に変換してもよい。得られた有機カーボネート及びカルバメートは、還元性微粒子、NOx排出、またはディーゼルセタン価改善のためのバイオディーゼル添加剤の役割を果たしてもよい。
【0272】
天然の植物油は様々な少量の遊離脂肪酸を含有し得るので、固体塩基性触媒存在下でアルコールとのエステル交換を実施する前に、前処理によって遊離脂肪酸を除去しなくてはいけない。このような前処理方法の一例は、酸性触媒存在下におけるメタノールによる遊離脂肪酸のエステル化である。このような酸性触媒は、炭素質担持体上に固定化されるスルホン酸である。担持体としては、多孔性担持体上に担持または堆積された、ヤシ殻の制御加熱脱水調製品、または炭水化物が挙げられる。触媒蒸留リアクタ内において固体酸触媒存在下で、アルコールにより遊離脂肪酸のエステル化を実施することは、オーバーヘッド流として反応ゾーンから連続的に水を除去し、エステル化を完了に向けて推進させ、トリグリセリドとアルコールとのエステル交換を実施する前に、別個のエステル化生成物の乾燥工程が排除されるという利点を有する。別の重要な利点は、エステル化時間の短縮である。
【0273】
以下の実施例の全てのエステル交換反応は、下向流リアクタ内で実施された。固定床リアクタの寸法は、直径1.3cm(1/2インチ)×長さ53.3cm(21インチ)とした。リアクタは、別々に制御される上下加熱ゾーンを有する。供給メタノール流及び植物油流(植物油中の6wt%のメタノール)をリアクタ上部に別々に汲み上げ、そこで2つのプロセス流は触媒反応ゾーンを流れ落ちた。微量の可溶性触媒構成要素がメタノール流に混合され、または部分的に変換された生成流に既に含有された。固体触媒体積は15mlであった。
【0274】
実験13
【0275】
この実験の目的は、下向流沸点リアクタまたは触媒蒸留リアクタ内において、固体触媒存在下でキャノーラ油とメタノールとのエステル交換を実証することである。固体触媒は、シリカゲル上に担持されるMgOである。
【0276】
10.96gのMg(NO・6HOを24gの脱イオン水に溶解して、硝酸マグネシウム溶液を調製した。初期湿潤化技術によって、30ml(11.91g)のシリカゲル球形担持体(直径1.7〜4mm;1nmあたり約6個の水酸基、BET:314m/g、孔容量:1.055cm/g、平均孔径:13.46nm)を上記硝酸マグネシウム溶液で含浸させた。シリカゲル球状担持体を油滴下技術によって調製した。含浸生成物を100℃で1時間乾燥した後、次にそれを510℃で2時間焼成した。
【0277】
15ml(6.30g)のMgO/SiO触媒を、リアクタ内に装入した。キャノーラ油供給物(地元の食料品店からから購入)は、メタノール(5.39wt%)とキャノーラ油(94.61wt%)を混合して調製した。この供給物の遊離脂肪酸の酸価は、0.48mgKOH/gであった。キャノーラ油供給物およびメタノールをそれぞれ0.2ml/分で供給して、165℃(33O°F)及び19.4バール(267psig)でキャノーラ油とメタノールとのエステル交換を実施した。触媒反応ゾーン内で28重量ppmのMgを有するように、マグネシウムエトキシドをメタノール供給物に溶解した。
【0278】
溶出流は2つの透明層から構成された。上層は生成物メチルエステル及び少量の未変換トリグリセリドを含有していた。上層からのメタノールを除いた反応生成物中の未変換トリグリセリドの平均含有量は、約1.2wt%であった。下層はほとんど未変換トリグリセリドを含有する。結果を図17に示しておるり、それは安定した触媒性能を示唆する。
【0279】
実験14
【0280】
この実験の目的は、第1のリアクタからの溶出流(静置において2層)内の残留未変換または部分的変換材料の、第2の下向流沸点リアクタまたは触媒蒸留リアクタ内における変換、または任意に単一エステル交換リアクタ前部への再循環を実証することである。
【0281】
9.04gのMg(NO・6HOを、19.1gの脱イオン水に溶解して、硝酸マグネシウム溶液を調製した。初期湿潤化技術によって、22ml(9.14g)のシリカゲルの球状担持体(9〜14メッシュ、BET:309m/g、孔容量:1.03cm/g)を上記硝酸マグネシウム溶液で含浸させた。含浸生成物を150℃で1時間乾燥させた後、それを510℃で2時間焼成した。最終触媒は4.5wt%のMgを含有した。
【0282】
15ml(7.2g)のMgO/SiO触媒を、実験13で使用されたのと同一リアクタに装入した。キャノーラ油とメタノールとの第1のエステル交換反応からの2層の複合生成物を分離漏斗を使用して複合生成物から分離し、第2のエステル交換反応の供給物として使用した。下部複合生成供給物の組成は、25.4wt%のトリグリセリド、8.5wt%のジグリセリド、3.1wt%のモノグリセリド、0.1wt%のグリセリン、47.1wt%のメチルエステル、及び15.8wt%のメタノールであった。供給物は約8.5重量ppmの可溶性Mg化学種を含有し、0.32mgKOH/gの遊離脂肪酸価を有した。下向流沸点リアクタ内に、供給物を0.12ml/分で、メタノールを0.10ml/分で汲み入れて、160℃(320°F)及び19.5バール(268psig)でエステル交換を実施した。2つの供給流のいずれにも追加のMgアルコキシドを添加しなかった。リアクタ溶出流は透明な淡黄色溶液(単層)であった。
【0283】
上部複合生成供給物の組成は、1.12wt%のトリグリセリド、0.57wt%のジグリセリド、3.78wt%のモノグリセリド、7.47wt%のメチルエステル、0.03wt%のグリセリン、及び87.03wt%のメタノールであった。この供給物の遊離脂肪酸価は、0.51mgKOH/gであった。同一温度及び圧力、0.2ml/分の供給流速で、同一触媒上でエステル交換を実施した。リアクタに追加のメタノールは汲み入れなかった。下部および上部複合生成供給物からのこれらの2つの最終エステル交換生成物を合わせて、過剰なメタノールを蒸留して除去し、粗製バイオディーゼルを回収した。粗製バイオディーゼルは0.36wt%の未変換トリグリセリドを含有し、0.74mgKOH/gの遊離脂肪酸価を有した。
【0284】
上記実験結果は、固体触媒存在下で、植物油とメタノールなどのアルコールとのエステル交換を実施することで、バイオディーゼルを生成し得ることを成功裏に実証する。
【0285】
上述のように、本明細書で開示される実施態様は、供給物への微量の可溶性有機金属化合物の導入を通じて、様々な固体触媒のための延長触媒サイクル時間を提供する。本明細書で開示されるその他の実施態様としては、安定した速度で有機カーボネートまたは有機カルバメートを連続生産する方法;固定化固体触媒をin situ触媒調製する技術;商業的固定床リアクタに適するように、長い触媒サイクル時間及び耐用時間にわたり安定した触媒活性を維持する技術;及び不活性固体触媒を活性化するためのin situ方法が挙げられる。
【0286】
有用なものとして、本明細書で開示される実施態様は延長した寿命サイクルを有するエステル交換触媒を提供し、したがって頻繁な操業停止及び触媒変更に付随する運用経費が削減され得る。さらに使用される微量の可溶性有機金属化合物により、様々な生成流からの均一系触媒の除去が実質的に低減され得る。
【0287】
開示には限られた数の実施態様が含まれるが、本開示の利点を有する当業者は、本開示の範囲を逸脱することなくその他の実施態様を考案してもよいことを理解するであろう。したがって範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9A】

【図9B】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物質と微量の可溶性有機金属化合物とをアルコール分解固体触媒を備えたリアクタに供給する工程を備えており、
前記可溶性有機金属化合物と前記アルコール分解固体触媒は、それぞれ第2族〜第6族元素を有しているアルコール分解プロセス。
【請求項2】
アルコール分解は、エステル交換反応である請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
アルコール分解は、不均化反応である請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
固体触媒と有機金属化合物は、同一の第2族〜第6族元素を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
アルコール分解固体触媒の存在下で反応物を接触させて、反応物の少なくとも一部をアルコール分解する工程と、
可溶性有機金属化合物と、アルコール分解した生成物と、未反応の反応物とを含むリアクタの流出物を回収する工程と、をさらに備える請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
アルコール分解プロセスは、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキルアリールカーボネート、バイオディーゼル、有機エステル、有機カルバメートのうちの少なくとも1つを生成するアルコール分解、エステル交換反応、不均化反応のうちの少なくとも1つを備える請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
可溶性有機金属化合物は、供給反応物の総重量に基づいて、1ppmから2000ppmの範囲の速度で供給される請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
アルコール分解固体触媒は、有機チタンを固定した化合物とチタンを担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能なチタン化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
アルコール分解固体触媒は、有機カルシウムを固定した化合物とカルシウムを担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能なカルシウム化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
アルコール分解固体触媒は、有機マグネシウムを固定した化合物とマグネシウムを担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能なマグネシウム化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
アルコール分解固体触媒は、有機亜鉛を固定した化合物と亜鉛を担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能な亜鉛化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
アルコール分解固体触媒は、有機すずを固定した化合物とすずを担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能なすず化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
アルコール分解固体触媒は、有機アンチモンを固定した化合物とアンチモンを担持した化合物のうちの少なくとも1つを有しており、
可溶性有機金属化合物は、供給反応物質内で溶融可能なアンチモン化合物を有する請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
リアクタ流出物から可溶性有機金属化合物の少なくとも一部を回収する工程をさらに備える請求項3に記載のプロセス。
【請求項15】
回収された可溶性有機金属化合物の少なくとも一部をアルコール分解した反応物へとリサイクルする工程をさらに備える請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
アルコールと、尿素,有機カルバメート,環状カーボネートのうちの少なくとも1つを有するアルコール分解した反応物とを、アルコール分解固体触媒を備える第1反応ゾーンに供給する工程と、
第1反応ゾーンに可溶性有機金属化合物を供給する工程を備えており、
前記アルコール分解固体触媒と前記可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有する、ジアルキルカーボネートを生成するプロセス。
【請求項17】
前記アルコールは、アルキルアルコールである請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
アルコール分解した反応物の少なくとも一部とアルコールとが反応してアルキルアリールカーボネートとジアルキルカーボネートのうちの少なくとも1つを生成する条件で、アルコール分解固体触媒の存在下でアルコールとアルコール分解した反応物を接触させる工程と、
第1反応ゾーンからの可溶性有機金属化合物を含む流出物を回収する工程と、をさらに備える請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
リアクタの流出物はさらにアルキルアリールカーボネートを有しており、
プロセスは、
第1反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部を第2反応ゾーンに供給する工程と、
アルキルアリールカーボネートの少なくとも一部を不均化してジアルキルカーボネートを作成する工程と、をさらに備える請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
ジアルキルカーボネートはジエチルカーボネートとジメチルカーボネートのうちの少なくとも1つを有する請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとをエステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、
可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程と、を備え、
前記エステル交換反応固体触媒及び前記可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有する、ジアリールカーボネートを生成するプロセス。
【請求項22】
ジアルキルカーボネートの少なくとも一部と芳香族ヒドロキシ化合物とが反応してアルキルアリールカーボネートとジアリールカーボネートのうちの少なくとも1つを生成する条件で、エステル交換反応固体触媒の存在下で芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを接触させる工程と、
均一系触媒を備える第1反応ゾーンからの流出物を回収する工程と、をさらに備える請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
リアクタ流出物は、アルキルアリールカーボネートをさらに有しており、
プロセスは、
第1反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部を第2反応ゾーンに供給する工程と、
アルキルアリールカーボネートの少なくとも一部を不均化してジアリールカーボネートを作成する工程と、をさらに備える請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
芳香族ヒドロキシ化合物は、フェノールを有する請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
ジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートを有する請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートとをエステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、
可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程と、を備え、
前記エステル交換反応固体触媒及び前記可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有する、アルキルアリールカーボネートを生成するプロセス。
【請求項27】
ジアルキルカーボネートの少なくとも一部と芳香族ヒドロキシ化合物とが反応してアルキルアリールカーボネートを生成する条件で、エステル交換反応固体触媒の存在下で芳香族ヒドロキシ化合物とジアルキルカーボネートを接触させる工程と、
均一系触媒を備える第1反応ゾーンからの流出物を回収する工程と、をさらに備える請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
アルコール及びグリセリドをエステル交換反応固体触媒を備えた第1反応ゾーンに供給する工程と、
可溶性有機金属化合物を第1反応ゾーンに供給する工程と、を備え、
前記エステル交換反応固体触媒及び前記可溶性有機金属化合物は、それぞれ独立して第2族〜第6族元素を有する、バイオディーゼルを生成するプロセス
【請求項29】
アルコールの少なくとも一部とグリセリドとが反応してグリセロールと脂肪酸エステルのうちの少なくとも1つを生成する条件で、エステル交換反応固体触媒の存在下でアルコールとグリセリドを接触させる工程と、
第1反応ゾーンから可溶性有機金属化合物を含む流出物を回収する工程と、をさらに備える請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
触媒上に堆積したポリマー材料を除去する工程と、
その固体触媒上に触媒作用活性金属を再堆積させる工程と、を備える使用済みのアルコール分解した固体触媒を再活性化させるプロセス。
【請求項31】
前記除去工程と前記再堆積工程は、エステル交換反応リアクタの内部でそのまま実行される請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記除去工程は、固体触媒をアルコールと水の少なくとも1つを含む溶液に接触させる工程を備える請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記溶液は溶媒を含む請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記溶媒は、ベンゼン,トルエン,キシレン,ヘキサン,オクタン,デカン,テトラヒドロフラン,エーテルのうちの少なくとも1つを有する請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記再堆積工程前に固体触媒を調整する工程をさらに備える請求項30に記載のプロセス。
【請求項36】
前記調整工程は、不活性ガス流内で約49℃から約427℃(約120°Fから約800°F)の温度で固体触媒を乾燥させる工程を有する請求項35に記載のプロセス。


【公表番号】特表2011−511791(P2011−511791A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545931(P2010−545931)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/032309
【国際公開番号】WO2009/102556
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(599003073)キャタリティック・ディスティレイション・テクノロジーズ (28)
【Fターム(参考)】