説明

有機スズアルコキシドの製造方法

【課題】 反応によって変性した有機スズアルコキシドを高純度で有機スズアルコキシドへ再生(製造)する方法、更に連続して繰り返して製造する方法を提供すること。
【解決手段】 出発物質としてジアルキル酸化スズおよび/またはアルキルジスタンオキサンからなるアルキルスズ化合物の群より選ばれる有機スズ化合物と反応物質としてアルコールとを金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって有機スズアルコキシドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成触媒として有用な有機スズアルコキシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機スズアルコキシドは、エステル合成触媒、エステル交換反応触媒、シリコンポリマーやウレタン硬化触媒等の触媒として極めて有用である。一般に触媒として使用した後は、そのまま製品中に残存するか、あるいは製品を精製する際に除去され、廃棄されている。有機スズアルコキシドを合成に使用した後に回収し、再生工程を経て再使用する方法が望まれている。本発明者らは、有機金属化合物及び二酸化炭素を使用し、必要に応じて更にアルコールを使用して、これらを反応させて炭酸ジアルキルを容易に製造し、炭酸ジアルキル分離後の残留液から有機金属化合物を再生し、連続して炭酸ジアルキルを製造する方法を発明した(特許文献1、2参照)。本発明は該発明を更に進め、有機スズアルコキシドを使用して炭酸エステルを収率よく繰り返し製造できる方法を提供することに関する。
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/055840号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/014840号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機スズアルコキシドを合成反応に使用した後、回収し、反応によって変性した有機スズアルコキシドを高純度で有機スズアルコキシドへ再生(製造)する方法、更に連続して繰り返して製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、前記課題は、有機スズ化合物とアルコールとを金属容器中において80℃〜200℃の温度範囲に加熱して脱水反応させて有機スズアルコキシドを製造することによって達成されることを見いだし本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 有機スズアルコキシドを合成反応触媒として使用した後の有機スズアルコキシドを含有する溶液から、有機スズアルコキシドを回収する方法において、該有機スズアルコキシドが、出発物質としての下記一般式(1)で示すジアルキル酸化スズおよび下記一般式(2)で示すアルキルジスタンオキサンからなるアルキルスズ化合物の群より選ばれる少なくとも一種の有機スズ化合物と、反応物質としての下記一般式(3)に示すアルコールとを金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって得られた有機スズアルコキシドであり、触媒として使用した後の有機スズアルコキシドを含有する溶液に下記一般式(3)に示すアルコールを添加して、金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって有機スズアルコキシドを回収する方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中:
は、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中:
は、上記した一般式(1)のRと同じであり、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜20のアリール基を表し;
は、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中:
は、上記した一般式(2)のRと同じであり、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換又は置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状または分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
[2] 金属容器がステンレス鋼製の反応容器であることを特徴とする[1]記載の有機スズアルコキシドの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、有機スズアルコキシドを金属容器中で再生するといった簡単な方法で、顕著な収率低下なく炭酸エステルを連続して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明は、有機スズアルコキシドを用いる下記3工程を含む炭酸エステル製造に関するものであり、中でも主に[工程3]に関する。
[工程1]:有機スズアルコキシドを二酸化炭素と反応させて炭酸エステルを得る工程
[工程2]:該反応液から炭酸エステルを分離して有機スズを含有する残留液を得る工程
[工程3]:該残留液とアルコールとを反応させて有機スズアルコキシドを再生する工程
本発明では、有機スズアルコキシドは、主に下記反応式(4)および/または下記反応式(5)で示される脱水反応によって生成される。有機スズアルコキシドを炭酸エステルの製造に使用した際には下記構造以外の有機スズ成分とアルコールとの脱水反応をも含むが、該有機スズ成分の構造が特定できないため、主に反応式(4)及び/または反応式(5)を例示する。
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
(式中 RおよびR’はアルキル基を示す)
【0018】
上記した反応式(4)及び/または反応式(5)のような、有機スズ化合物とアルコールとの脱水反応によって有機スズアルコキシドを得る反応は一般にガラス容器中でおこなわれる場合が多いが、前述した炭酸エステル製造のように、有機スズアルコキシドを反応に用い、反応後、回収して再生する場合、反応器の材質の溶出などが原因と思われるが、反応に悪影響を及ぼすことが明らかになった。そして本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべき事に、該脱水反応を金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって有機スズアルコキシドを製造することによって解決できることを見いだした。
【0019】
まず、本発明で使用する化合物について説明する。
本発明の出発物質として、下記一般式(1)に示すジアルキル酸化スズ及び/または下記一般式(2)に示すアルキルジスタンオキサンが使用できる。
【0020】
【化6】

【0021】
(式中:
は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中:
は、上記した一般式(1)のRと同じであり、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。
は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
【0024】
上記一般式(1)で示されるジアルキルスズオキシドの例としては、ジメチルスズオキシド、ジエチルスズオキシド、ジプロピルスズオキシド(各異性体)、ジブチルスズオキシド(各異性体)、ジペンチルスズオキシド(各異性体)、ジヘキシルスズオキシド(各異性体)、ジヘプチルスズオキシド(各異性体)、ジオクチルスズオキシド(各異性体)、ブチルメチルスズオキシド(各異性体)、ブチルエチルスズオキシド(各異性体)、ブチルプロピルスズオキシド(各異性体)、ジビニルスズオキシド、ジアリルスズオキシド、ジシクロヘキシルスズオキシド、ジシクロオクチルスズオキシド、ビス(トリフルオロブチル)スズオキシド、ビス(ペンタフルオロブチル)スズオキシド、ビス(ヘプタフルオロブチル)スズオキシド、ビス(ナノフルオロブチル)スズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジベンジルスズオキシド、ジフェネチルスズオキシド、ジトリルスズオキシドなどが挙げられ、好ましい例として、ジメチルスズオキシド、ジエチルスズオキシド、ジプロピルスズオキシド(各異性体)、ジブチルスズオキシド(各異性体)、ジペンチルスズオキシド(各異性体)、ジヘキシルスズオキシド(各異性体)、ジヘプチルスズオキシド(各異性体)、ジオクチルスズオキシド(各異性体)などが挙げられる。炭素数の制限はないが、融点や流動性などの理由から上記範囲が好ましい。上記一般式(1)は単量体構造のジアルキルスズオキシドを示しているが、一般にジアルキル酸化スズは多量体構造であることが知られており、上記一般式(1)を単量体ユニットとした下記一般式(6)で示すような多量体構造であってもかまわない。
【0025】
【化8】

【0026】
(式中:
は、上記した一般式(1)のRと同じであり、nは2以上の整数を表す)
上記一般式(2)で示されるアルキルジスタンオキサンの例としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスペンチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスヘキシルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスヘプチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスオクチルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスノニルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスデシルオキシ―ジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスベンジルオキシ―ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビスフェニルエトキシ―ジスタンオキサンが挙げられ、特に好ましくは、脱水反応の容易さから、該アルキルジスタンオキサンのアルコキシ基に相当するアルコールが常圧で水より沸点の高い1級のアルコールであるアルコキシ基をもつアルキルジスタンオキサンであって、例えばRがn−ブチル、iso−ブチル、または炭素数が5以上の直鎖状、分岐状のアルキル基で、Rが炭素数が4から8の直鎖状、分岐状の飽和アルキル基であるアルキルジスタンオキサンである。
本発明の有機スズアルコキシドは、反応物質として、下記一般式(3)で表されるアルコールが使用できる。
【0027】
【化9】

【0028】
(式中:
は、上記した一般式(2)のRと同じであり、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
【0029】
上記一般式(3)で表すアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、フェニルメタノール、2−フェニル−エタノールなどが挙げられ、好ましい例として、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)などが挙げられる。これらアルコールのうち、脱水反応の容易さから、好ましい例としては、常圧で水より沸点の高い1級のアルコールであって、例えばRがn−ブチル、iso−ブチル、または炭素数が5以上の直鎖状、鎖状のアルキル基であるアルコールである。
【0030】
上記した出発物質と反応物質とを脱水反応し、出発物質と反応物質に対応するジアルキルスズアルコキシドが製造できる。
生成物として得られる有機スズアルコキシドは、下記一般式(7)及び下記一般式(8)で表される有機スズアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の有機スズアルコキシドである。
【0031】
【化10】

【0032】
(式中:
は、該出発物質に対応するRと同じあり、Rは、該出発物質及び/または該反応物質に対応するRと同じである。)
【0033】
【化11】

【0034】
(式中:
は、該出発物質に対応するRと同じであり、Rは、該出発物質及び/または該反応物質に対応するRと同じある。)
上記一般式(7)で表される化合物の例としては、一般式(2)の例として示した化合物と同じものがあげられ、一般式(8)で表される化合物の例としては、ジメチル−ジメトキシ−スズ、ジメチル−ジエトキシ−スズ、ジメチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジメチル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ブチル−ジメトキシ−メチル−スズ、ブチル−ジエトキシ−メチル−スズ、ブチル−ジプロポキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ジブトキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスペンチルオキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘキシルオキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘプチルオキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスオクチルオキシ−メチル−スズ(各異性体)、ブチル−ジメトキシ−エチル−スズ、ブチル−ジエトキシ−エチル−スズ、ブチル−ジプロポキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ジブトキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスペンチルオキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘキシルオキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘプチルオキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスオクチルオキシ−エチル−スズ(各異性体)、ブチル−ジメトキシ−プロピル−スズ、ブチル−ジエトキシ−プロピル−スズ、ブチル−ジプロポキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ブチル−ジブトキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスペンチルオキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘキシルオキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスヘプチルオキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ブチル−ビスオクチルオキシ−プロピル−スズ(各異性体)、ジブチル−ジメトキシ−スズ、ジブチル−ジエトキシ−スズ、ジブチル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ジブチル−ビスベンジルオキシ−スズ、ジブチル−ビスフェニルエトキシ−スズ、ジフェニル−ジメトキシ−スズ、ジフェニル−ジエトキシ−スズ、ジフェニル−ジプロポキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ジブトキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスペンチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスヘキシルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスヘプチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスオクチルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスノニルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスデシルオキシ−スズ(各異性体)、ジフェニル−ビスベンジルオキシ−スズ、ジフェニル−ビスフェニルエトキシ−スズ、ジメトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ、ジエトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ、ジプロポキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ(各異性体)、ジブトキシ−ビス−(トリフルオロ−ブチル)−スズ(各異性体)、ビスペンチルオキシビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘキシルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘプチルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスオクチルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスノニルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスデシルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスベンジルオキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ、ビスフェニルエトキシ−ビス−(トリフルオロブチル)−スズ、ジメトキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ、ジエトキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ、ジプロポキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ジブトキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスペンチルオキシビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘキシルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘプチルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスオクチルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスノニルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスデシルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスベンジルオキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ、ビスフェニルエトキシ−ビス−(ペンタフルオロブチル)−スズ、ジメトキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ、ジエトキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ、ジプロポキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ジブトキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスペンチルオキシビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘキシルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘプチルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスオクチルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスノニルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスデシルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスベンジルオキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ、ビスフェニルエトキシ−ビス−(ヘプタフルオロブチル)−スズ、ジメトキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ、ジエトキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ、ジプロポキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ジブトキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスペンチルオキシビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘキシルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスヘプチルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスオクチルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスノニルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスデシルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ(各異性体)、ビスベンジルオキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズ、ビスフェニルエトキシ−ビス−(ノナフルオロブチル)−スズなどがあげられる
【0035】
有機スズ化合物の脱水反応は、金属容器中において、出発物質と反応物質とを80℃〜200℃、好ましくは100℃〜160℃で加熱することによっておこなわれる。このとき、前記反応式(4)および/または(5)に従って、出発物質と反応物質とから有機スズアルコキシドが生成すると共に、水が生成する。反応はこの水を系外へ抜き出すことによって進行させることができる。従って、反応を進めようとすれば、反応温度は反応圧力において、水が蒸気圧をもつ温度であって、該反応圧力において、アルコールの蒸気圧が低い温度であることが反応物質を有効に利用する上で好ましい。また反応温度が高温になるとアルキルジスタンオキサンの熱変性が起こり、好ましくない成分が生成するため、上記した温度範囲でおこなう。
【0036】
反応圧力は、出発物質、反応物質によって異なるが、減圧条件から加圧条件でおこなってよい。例えば100Pa〜1MPaの範囲が好ましい。
金属容器としては、公知のものであればのでも用いることができるが、ステンレス鋼(SUS)製又は鉄製の材料からなる容器を用いることが好ましい。
例えばマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410など)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)があげられる。金属容器の中ではステンレス鋼製の容器が好ましい。
【0037】
脱水反応は、例えば、出発物質と反応物質を金属製の容器(例えば、攪拌槽)に入れて前記の温度に加熱し、発生する水を系外へ抜き出すことによって、バッチ式または連続的におこなわれる。この反応には溶媒は特に必要はないが、必要に応じて非プロトン性の溶媒、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを適宜使用することができる。
【0038】
金属容器としては、公知の金属製の反応器が用いられ、槽型反応器、塔型反応器、多管式反応器、蒸留塔、多段連続蒸留塔などが好ましく用いられる。
水を系外へ早く抜き出すために、不活性ガスを導入してもよい。不活性ガスに水を同伴させて系外へ抜き出すことによって、反応器中の水蒸気圧を下げることによって、反応を促進させることができるので、好ましい方法である。
反応後、生成した有機スズアルコキシドはそのまま反応に使用しても良いし、蒸留等によって精製してもよい。
【0039】
本発明で製造した有機スズアルコキシドは炭酸エステルの製造に好ましく使用できる。
好ましい炭酸エステルの製造方法は下記の工程を含む炭酸エステルの製造方法である。
(工程1):有機スズアルコキシドを二酸化炭素と反応させて炭酸エステルを得、
(工程2):該反応液から炭酸エステルを分離して有機スズを含有する残留液を得、
(工程3):該残留液とアルコールとを反応させて有機スズアルコキシドを再生する
すなわち、本発明で製造した有機スズアルコキシドを上記[工程1]に使用し、上記[工程3]に本発明の方法を利用することで、[工程1]から[工程3]を収率よく連続しておこなうことができる。
【0040】
本発明の方法によって、有機スズアルコキシドは高純度、低コストで製造、再生でき、エステル交換反応や炭酸エステル合成反応、アルキルフェニルカーボネート、ジアリールカーボネートなどの芳香族炭酸エステル、ポリカーボネート、ウレタンなどの有機化合物製造触媒としても好適に用いることができるし、本発明のジアルキルスズアルコキシドを用いて製造した炭酸エステルから、アルキルフェニルカーボネート、ジアリールカーボネートなどの芳香族炭酸エステル、ポリカーボネートや、該芳香族炭酸エステルからポリカーボネート、ヘキサメチレンージーイソシアネートやトルイジンージーイソシアネート、メシチレンージーイソシアネートなどの有機イソシアネート類を好適に得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、本発明の実施例における分析方法について述べる。
【0042】
<分析方法>
1.金属化合物のNMR分析方法
装置:日本電子(株)社製JNM−A400 FTNMRシステム
(1)1H、13C−NMR分析サンプル溶液の作製
金属化合物を0.1から0.5gの範囲で計り取り、重クロロホルムを約0.9g加えてNMR分析サンプル溶液とした。
(2)119Sn−NMR分析サンプル溶液の作製
反応溶液を0.1から1gの範囲で計り取り、更に0.05gのテトラメチルスズ、約0.85gの重クロロホルムを加えてサンプル溶液とした。
【0043】
2.炭酸エステルのガスクロマトグラフィー分析法
装置:(株)島津製作所製GC−2010システム
(1)分析サンプル溶液の作製
反応溶液を0.06g計り取り、脱水されたジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを約2.5ml加える。さらに内部標準としてジフェニルエーテル約0.06gを加えて、ガスクロマトグラフィー分析サンプル溶液とした。
【0044】
(2)ガスクロマトグラフィー分析条件
カラム:DB−1(J&W Scientific)
液相:100%ジメチルポリシロキサン
長さ:30m
内径:0.25mm
フィルム厚さ:1μm
カラム温度:50℃(10℃/minで昇温)300℃
インジェクション温度:300℃
検出器温度:300℃
検出法:FID
【0045】
(3)定量分析法
各標準物質の標準サンプルについて分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(4)炭酸エステルの収率計算方法
有機スズアルコキシドに含まれるスズ原子モル数を基準として、得られた炭酸ジアルキルのモル数から求めた。
[実施例1]
【0046】
(ジブチルスズジアルコキシドの製造)
ジブチル酸化スズ(米国 Aldrich社製)24.5g(約0.1モル)、2−エチルブタノール(米国 Aldrich社製)120g(約1.2モル)200mlオートクレーブ(東洋高圧社製)に入れ蓋をした。オートクレーブのパージラインを開け、ボトムに接続した導入管から窒素ガスを50ml/分で導入を開始し、攪拌しながら内部液温が約140℃になるまで加熱した。パージラインから水分を含むガス相が抜き出されるように内部液温を調節しながら、加熱開始から4時間反応を続けた。ガスの導入を停止したあと、オートクレーブのパージラインに真空コントローラーと真空ポンプを接続し、徐々にオートクレーブ内を減圧しながら過剰の2−エチルブタノールを留去した。留出物がほとんどなくなったら、窒素ガスでオートクレーブ内を常圧に戻し、加熱を停止し、放冷した。内部反応液を分析したところ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン、ジブチル−ジブチルオキシ−スズが生成していた。
【0047】
[工程1]
上記オートクレーブに、メタノール(日本国 和光純薬社製 脱水グレード)96g(約3モル)を加えた。減圧弁を備えた炭酸ガスボンベ(昭和炭酸社製、純度99.99vol%)を接続した。炭酸ガスボンベの2次圧を減圧弁によって5MPaに設定し、バルブを開き、炭酸ガスをオートクレーブに導入し、圧力を4.0MPaに調整した。オートクレーブの加熱、攪拌を開始し、内部温度が160℃となるようにした後、内部圧力が19.6MPaとなるように液化炭酸を注入ラインから徐々にオートクレーブ内に導入した。この状態で1時間反応させた後、加熱を停止し、室温(約20℃)まで放冷し、炭酸ガスをパージした。
【0048】
[工程2]
上記オートクレーブのパージラインに真空コントローラーと真空ポンプを接続し、徐々にオートクレーブ内を減圧しながら、30℃、13KPaで減圧蒸留をおこない、炭酸ジメチルとメタノールをオートクレーブ内部液から留去した。留出物が殆どなくなったら蒸留を停止し、窒素ガスでオートクレーブ内をパージした。得られた炭酸ジメチルは約20ミリモルであった。(収率約20%)
【0049】
[工程3]
上記オートクレーブに、2−エチルブタノールを100g加えた。オートクレーブのパージラインを開け、ボトムに接続した導入管から窒素ガスを50ml/分で導入を開始し、攪拌しながら内部液温が約140℃になるまで加熱した。パージラインから水分を含むガス相が抜き出されるように内部液温を調節しながら、加熱開始から4時間反応を続けた。ガスの導入を停止したあと、オートクレーブのパージラインに真空コントローラーと真空ポンプを接続し、徐々にオートクレーブ内を減圧しながら過剰の2−エチルブタノールを留去した。留出物がほとんどなくなったら、窒素ガスでオートクレーブ内を常圧に戻し、加熱を停止し、放冷した。内部反応液を分析したところ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン、ジブチル−ジブチルオキシ−スズが生成していた。
上記した[工程1]から[工程3]までを15回繰り返した。15回目の[工程2]での炭酸ジメチルの収率は17%であった。
【0050】
[比較例1]
実施例1のオートクレーブをグラスライニングした200mlオートクレーブ(東洋高圧社製)に変更し、実施例1と同様の操作をおこない、[工程1]から[工程3]までを15回繰り返した。15回目の[工程2]での炭酸ジメチルの収率は8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の有機スズアルコキシドは、エステル交換反応や炭酸エステル合成反応などの分野で触媒として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機スズアルコキシドを合成反応触媒として使用した後の有機スズアルコキシドを含有する溶液から、有機スズアルコキシドを回収する方法において、該有機スズアルコキシドが、出発物質としての下記一般式(1)で示すジアルキル酸化スズおよび下記一般式(2)で示すアルキルジスタンオキサンからなるアルキルスズ化合物の群より選ばれる少なくとも一種の有機スズ化合物と、反応物質としての下記一般式(3)に示すアルコールとを金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって得られた有機スズアルコキシドであり、触媒として使用した後の有機スズアルコキシドを含有する溶液に下記一般式(3)に示すアルコールを添加して、金属容器中において80℃〜200℃の範囲に加熱して脱水反応させることによって有機スズアルコキシドを回収する方法。
【化1】

(式中:
は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【化2】

(式中:
は、上記した一般式(1)のRと同じであり、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜20のアリール基を表す。
は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
【化3】

(式中:
は、上記した一般式(2)のRと同じであり、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の炭素数2〜12のアルケニル基、又は無置換若しくは置換された炭素数6〜19のアリール及び直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜14のアルキルと炭素数5〜14のシクロアルキルよりなる群から選ばれるアルキルからなる炭素数7〜20のアラルキル基を表す。)
【請求項2】
金属容器がステンレス鋼製の反応容器であることを特徴とする請求項1記載の有機スズアルコキシドの製造方法。

【公開番号】特開2006−159090(P2006−159090A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354178(P2004−354178)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】