説明

有機ナノ顔料粒子疎水性凝集体および有機ナノ顔料粒子非水性分散物の製造方法、その分散物を含む着色感光性樹脂組成物、ならびにそれを用いたカラーフィルタ

【課題】有機ナノ顔料粒子水性分散物を有機ナノ顔料粒子非水性分散物に相転換させる際の、フラッシングに代表されるような一旦水性ペーストを作成する工程、すなわちフィルタろ過などのような莫大な時間を要する煩雑な工程を必要としない、有機ナノ粒子顔料水性分散物中のナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な凝集体とする、凝集体を製造する方法を提供する。
【解決手段】水性媒体中に有機ナノ顔料粒子親水性凝集体を含有する混合液に、質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物を共存させて、前記親水性凝集体を疎水性凝集体とし、該疎水性凝集体を単離する有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ナノ顔料粒子水性分散物を非水性媒体へ相転換させて得る有機ナノ顔料粒子の非水性分散物の製造方法に関し、更に詳しくいえば、本発明は、従来、ろ過が困難であった有機ナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な疎水性凝集体とし、これをろ過操作により単離し、非水性媒体中で再分散させて得る有機ナノ顔料粒子非水性分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子を小サイズ化する取り組みが進められている。特に、粉砕法、析出法などでは製造することが困難なナノメートルサイズ(例えば、10〜100nmの範囲)にまで小サイズ化する研究が進められている。さらに、ナノメートルサイズに小サイズ化し、しかも単分散性(本発明において、単分散性とは粒径が揃っている度合いをいう。)の高い粒子とすることが試みられている。
【0003】
このようなナノメートルサイズの微粒子の大きさは、より大きなバルク粒子や、より小さな分子や原子の中間に位置し、従来にないサイズ領域であり、予想できなかった新たな特性を引き出しうることが指摘されている。しかも、この単分散性を高くできれば、その特性を安定化することも可能であり、このようなナノ粒子のもつ可能性はさまざまな分野で期待され、生化学、新規材料、電子素子、発光表示素子、印刷、医療などの広い分野で研究が盛んになりつつある。
【0004】
特に、有機化合物からなる有機ナノ粒子は、有機化合物自体が多様性を有するため、機能性材料としてのそのポテンシャルは高い。例えば、ポリイミドは、耐熱性、耐溶剤性、機械的特性など、化学的および機械的に安定な材料であること、電気絶縁性が優れているなどのことから多く分野で利用されている。そしてポリイミドを微粒子化して、ポリイミド有する特性と形状とを組み合わせて、さらに広い分野で利用されるようになってきている。例えば、微粒子化したポリイミドを、画像形成用の粉末トナーの添加剤とすることなどが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、有機ナノ粒子のなかでも有機顔料についてみると、例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等を用途として挙げることができる。これらは、今や、生活上欠くことができない重要な化合物となっている。なかでも高性能が要求され、実用上、特に重要なものとして、インクジェットインク用顔料およびカラーフィルタ用顔料が挙げられる。
【0006】
有機粒子の製造方法に関しては、気相法(不活性ガス雰囲気下で試料を昇華させ、粒子を基板上に回収する方法)、液相法(例えば、良溶媒に溶解した試料を撹拌条件や温度を制御した貧溶媒に注入することにより、微粒子を得る再沈法)、レーザーアブレーション法(溶液中に分散させた試料に、レーザーを照射しアブレーションさせることにより粒子を微細化する方法)などが研究されている。また、これらの方法により、所望のサイズで単分散化を試みた製造例が報告されている。中でも液相法は、簡易性および生産性に優れた有機粒子の製造法として注目されている(特許文献2、3など参照)。この液相法で製造した有機粒子は、析出条件を溶媒種、注入速度、温度等で調整することにより結晶形や粒子表面の性質を調整でき、特許文献3には、キナクリドン顔料の結晶形を貧溶媒種によって調整した例が記載されている。
【0007】
また、前記液相法によって調製した顔料粒子を用い、分散性を改善した例が報告されている。特許文献4には、液相法によって顔料粒子水分散体を調製した例が記載されている。しかしながら、この方法は、最終的に水性分散体として提供する方法であり、有機溶剤分散体として提供する方法については、何ら言及されていない。
【0008】
特許文献5には、液相法によって調製した顔料粒子を用い、有機溶剤分散体として提供する例が記載されている。特許文献5では、顔料を塩基性化合物および/または塩基性溶液に溶解させ、ついで液体の中性化合物および/または酸性化合物、または中性液体および/または酸性液体を添加することで、顔料を析出させる方法が記載されている。しかしながら、この手法で得られた有機顔料粒子は、一次粒子径が大きいものになってしまい、微粒子化の要求に、充分に答えられていなかった。
【0009】
前記液相法におけるナノ粒子の調製においては、ナノ粒子の凝集を防ぐために、低分子界面活性剤や中性の水溶性ノニオン系高分子化合物を使用している。そのため高濃度でナノ粒子を分散できても、使用する分散助剤の量が多く必要であるという欠点があり、インクジェットのように粘度が低く高分子化合物含有率の極端に低い場合に、それらの技術をそのまま適用することは困難である。さらに水性媒体中でナノ粒子を調製した後に溶剤系に相転換させる要求のためには、顔料を高濃度に含有する水性スラリーや水性ペーストを作成し、樹脂又は樹脂溶液を添加し、混合攪拌し、顔料の周囲の水分を樹脂又は樹脂溶液で置換するフラッシング法が知られている。しかしこの方法では一度水性媒体中で粒子が強く凝集した形を経るので、樹脂での被覆の効率が悪くなり再分散が困難になるという問題がある(例えば特許文献6〜7などを参照。)。さらに別の手法としては、水性ペーストを作成するために一旦水性溶媒中で調製したナノ顔料粒子を一次粒子のままあるいは凝集させた状態でフィルタろ過する方法もあるが、ろ過に莫大な時間がかかり工業的に大変非効率で煩雑になってしまうという問題がある。また低分子のアニオン系又はカチオン系界面活性剤も分散剤として使用できるが、低分子であることによる分散安定性不足が問題である。そこでカチオン性高分子化合物を使用して粒子の水性分散物をろ過の工程を経ずにイオン性液体に相転換させる手法も試みられている(例えば非特許文献1を参照)。しかし、非特許文献1記載の方法は低濃度の無機粒子を対象とするものであり、有機顔料に関する言及がなく、さらに最終分散媒が不揮発性のイオン性液体であることもあり、非特許文献2記載の方法は工業的な使用には適していない。また、特許文献8には、水性媒体中で有機ナノ顔料粒子を凝集体とし、非水性媒体で抽出操作を行った後、メンブレンフィルタろ過を行って単離し、その後有機高分子存在下に非水性媒体中に再分散させる方法が開示されている。しかし、単離時の凝集体が親水性であるため、ろ過に多大な時間がかかるという問題がある。
【特許文献1】特開平11−237760号公報
【特許文献2】特開平6−79168号公報
【特許文献3】特開2004−91560号公報
【特許文献4】特開2004−43776号公報
【特許文献5】特開2004−123853号公報
【特許文献6】特開平5−301037号公報
【特許文献7】特開平6−161154号公報
【特許文献8】特開2007−262378号公報
【非特許文献1】「small」,2006,Vol.2,No.7,p.879-883
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、煩雑な工程を経ずに、水性媒体中の有機ナノ顔料粒子を、容易にろ過可能な非水性の凝集体とし、これを単離して、効率良く有機ナノ顔料粒子疎水性凝集体を得る製造方法を提供することを目的とする。さらに上記の疎水性凝集体を非水性媒体中で再分散させて、有機ナノ顔料粒子非水性分散物を効率よく得る製造方法の提供を目的とする。さらに上記の有機ナノ顔料粒子分散物を用いた着色感光性樹脂組成物およびそれにより作成された、大量生産可能で、高性能なカラーフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体に対して、質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物を添加することにより、ろ過容易な疎水性凝集体とし、この凝集体を単離することにより、効率良く有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体を得ることができることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0012】
上記課題は下記の手段によって達成された。
(1)水性媒体中に有機ナノ顔料粒子親水性凝集体を含有する混合液に、質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物を共存させて、前記親水性凝集体を疎水性凝集体とし、該疎水性凝集体を単離することを特徴とする有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(2)前記有機高分子化合物を前記水性媒体と混和する溶媒中に溶解し、前記親水性凝集体を含有する混合液中に添加することを特徴とする(1)記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(3)前記単離をろ過により行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(4)前記水性媒体中に有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体を含有する混合液を調製するに当たり、良溶媒に溶解した有機顔料の溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる媒体とを混合することを特徴とする(1)〜(3)いずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(5)前記有機ナノ顔料粒子の平均一次粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(6)前記有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の平均粒径が10μm以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
(7)前記有機高分子化合物が、非水性媒体に親和性を有する基と前記有機ナノ顔料粒子に親和性を有する基とを有し、非水性媒体中で該有機ナノ顔料粒子を分散させる作用を有する化合物であることを特徴とする(1)〜(6)いずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性分散物の製造方法。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の単離された有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体を非水性媒体中に含有させ、該非水性媒体中の凝集体の凝集を解き再分散させることを特徴とする有機ナノ顔料粒子の非水性分散物の製造方法。
(9)(7)または(8)記載の有機ナノ顔料粒子の非水性分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを少なくとも含む着色感光性樹脂組成物。
(10)(9)記載の着色感光性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子から、効率的に有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体を製造することができる。また、この有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体を用いることで、非水性媒体へ容易に相転換させることが可能であり、有機ナノ顔料粒子非水性分散物を工業的規模で効率よく製造することができる。本発明の製造方法によればカラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適した有機ナノ顔料粒子分散物およびその分散液を工業的規模で生産することができる。また、本発明の有機ナノ顔料粒子非水性分散物は、優れた分散性、高いコントラストを有し、これを用いたカラーフィルタは目的の色純度と高いコントラストとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の有機ナノ顔料粒子の製造方法について説明する。
[有機顔料]
本発明の有機ナノ顔料粒子の製造方法に用いられる有機顔料は、液相法で粒子形成できるものであれば特に限定されず、単独で用いても、複数であっても、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0015】
有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0016】
更に詳しくは、たとえば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン化合物顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ化合物顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン化合物顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン化合物顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム化合物顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン化合物顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール化合物顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン化合物顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン化合物顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン化合物顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(C.I.番号60010)等のイソビオラントロン化合物顔料が挙げられる。なかでも、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料又はジオキサジン化合物顔料がより好ましい。
【0017】
C.I.P.R.254、255、264に代表されるピロロピロール化合物顔料は、カラーフィルタを構成する赤画素の色純度を高めるのに適した吸収域を有し、色再現域を広げられるため、そのカラーフィルタへの利用が試みられている。しかしながら従来の顔料では、色純度やコントラスト等、要求に応えられていない。例えば特開2003−336001号公報に記載されているインクジェット用インク、ビーズ分散やソルトミリングによる方法で得たものなどでは良好なカラーフィルタは得られない。
【0018】
本発明の製造方法によれば、ナノサイズのピロロピロール化合物顔料微粒子を粒径分布がシャープな状態で得ることができる。また、その顔料微粒子をカラーフィルタに用いたとき、所望の色純度と高いコントラストを両立でき、しかも耐光性に優れ、また折出物の発生を抑えることができる。
本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
[有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製]
次に、有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製について説明する。
本発明において、有機ナノ顔料粒子は、有機顔料を良溶媒に溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し、有機顔料に対しては貧溶媒となる溶媒(以下、この溶媒を[有機顔料の貧溶媒]ともいい、あるいは単に[貧溶媒]ということもある。)とを混合することにより生成させる(以下、この方法を「再沈法」ということもあり、このとき得られる有機ナノ粒子を含有する分散液を「有機ナノ顔料粒子再沈液」ということもある。)。
【0020】
有機顔料の貧溶媒は、有機顔料を溶解する良溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の貧溶媒としては、有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0021】
貧溶媒としては、水性媒体であれば、特に制限はなく、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0022】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ヨードホルムなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6-との塩などが挙げられる。
【0023】
次に、有機顔料を溶解する良溶媒について説明する。
良溶媒は用いる有機顔料を溶解することが可能で、前記貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の良溶媒への溶解性は有機材料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機顔料の良溶媒への溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。貧溶媒と良溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は前述のとおりである。
【0024】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸がより好ましく、スルホキシド化合物溶媒、アミド化合物溶媒、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、硫酸が特に好ましい。
【0025】
アルコール化合物溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ヨードホルムなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、2,2−ジクロロプロピオン酸、スクアリン酸などが挙げられる。スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
【0026】
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各有機顔料との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、例えばその溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0027】
また、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機顔料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
【0028】
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0029】
本発明において有機顔料は、良溶媒中に均一に溶解されなければならないが、酸性でもしくはアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解される。
【0030】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。
【0031】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは1.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは1.0〜20モル当量である。有機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0032】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。
【0033】
使用される酸の量は、有機顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは有機材料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【0034】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、有機顔料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機材料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0035】
有機粒子作製時、すなわち有機粒子を析出し、形成する際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
【0036】
有機顔料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を貧溶媒に添加して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。有機顔料溶液と貧溶媒の混合比(有機ナノ顔料粒子再沈液中の良溶媒/貧溶媒比)は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。本発明においては、有機ナノ顔料粒子は、まず水性媒体中に分散されるものであり、この場合の水性媒体としては、上記の水性溶媒が少なくとも60質量%含まれているものであり、好ましくは80質量%以上含まれているものである。
【0037】
有機ナノ顔料粒子再沈液中の有機顔料粒子の濃度は特に制限されないが、水性媒体1000mlに対して有機ナノ顔料粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0038】
また、有機ナノ顔料粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が1〜1000Lの調製スケールであることが好ましく、1〜100Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0039】
有機ナノ顔料粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。有機ナノ顔料粒子(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜1μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明において形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0040】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。有機ナノ顔料粒子の濃縮方法に用いられる有機ナノ顔料粒子分散液に含まれる粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0041】
有機ナノ顔料粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、重量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ、堀場製作所社製LB−400などが挙げられる(いずれも商品名)。
【0042】
本発明においては、有機ナノ顔料粒子を析出させ分散液を調製するに当り、有機顔料溶液及び貧溶媒の少なくとも一方に分散剤を含有させてもよい。このとき少なくとも有機顔料溶液に分散剤(本発明においては、粒子析出時に添加する分散剤を単に「分散剤」といい、後述する疎水性化用分散剤と区別していうことがある。)を含有させることが好ましい。
用いることのできる分散剤として、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料誘導体の、低分子または高分子の分散剤を使用することができる。なお、低分子または高分子分散剤の添加量は、溶解された顔料に対して10質量%以上1000質量%以下が好ましい。更には、10質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満では顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が少なくなり、1000質量%を超えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。
【0043】
以下、高分子分散剤について説明する。
高分子分散剤の分子量は、数平均分子量で1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。1,000未満では顔料粒子の成長及び強凝集を抑制する効果が少なくなり、200,000を超えると粘度上昇、溶解不良等の問題が発生し易くなる。なお、本発明における高分子とは数平均分子量で1000以上のものを指す。
【0044】
高分子分散剤としては、ノニオン性のものとして、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド体、ビニルピロリドン−ビニルピリジン共重合体、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体などが挙げられ、中でもポリビニルピロリドン、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド体、ビニルピロリドン−ビニルピリジン共重合体、ビニルピロリドン−ビニルイミダゾール共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体が好ましい。
【0045】
アニオン性のものとしては、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリベンゼンスルホン酸塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。中でも、ポリベンゼンスルホン酸塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩がより好ましい。
これらアニオン性のものは、アニオン性のモノマーを共重合することにより得られるが、アニオン性モノマー自身だけでなく、ノニオン性のモノマーとも共重合させたものであっても良い。ノニオン性のモノマーは、具体的には、ビニルピロリドン、スチレン、ナフタレン、スチリルメチルクロリド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
カチオン性のものとしては、特に4級アンモニウム部位を有する高分子化合物が好ましく、ポリ(メタクリルオキシアルキルアンモニウム塩)、ポリ(メタクリルオキシアリールアンモニウム塩)、ポリ(アクリルオキシアルキルアンモニウム塩)、ポリ(アクリルオキシアリールアンモニウム塩)、ポリ(ジアリルアンモニウム塩)、ポリスチリルメチレンイミダゾリウム塩類、ポリスチリルメチレンピリジニウム塩類などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トラガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。
両イオン性のものとしては、上記アニオン性、カチオン性として挙げたものの共重合体が好ましい。
【0047】
これら高分子分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0048】
以下、低分子分散剤について説明する。
低分子分散剤としては、アニオン性のものとして、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
カチオン性のものとしては、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
両イオン性のものとしては、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
顔料誘導体型のものとしては、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料誘導体型分散剤、ピペリジル含有顔料誘導体型分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料誘導体型分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料誘導体型分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料誘導体型分散剤、スルホンアミド基を有する顔料誘導体型分散剤、エーテル基を有する顔料誘導体型分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料誘導体型分散剤などがある。
【0052】
本発明においては、良溶媒に溶解させた有機顔料溶液を調製する際、アミノ基を含有する顔料分散剤を共存させることも好ましい。ここで、アミノ基とは一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基を含み、アミノ基の数は一つでも複数でもよい。顔料骨格にアミノ基を有する置換基を導入した顔料誘導体化合物でも、アミノ基を有するモノマーを重合成分としたポリマー化合物でもよい。これらの例として、例えば、特開2000−239554号公報、2003−96329号公報、2001−31885号公報、特開平10−339949号公報、特公平5−72943号公報に記載の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明においては、有機ナノ顔料粒子の水性分散液調製後に酸を添加して親水性凝集体としても良いが、有機ナノ顔料粒子を析出させ水性分散液を調製するに当たり、貧溶媒中に酸を添加しておき、ここへ顔料溶液を添加することにより有機ナノ顔料粒子を親水性凝集体として得ることが好ましい。特に、貧溶媒に酸を添加しておいて親水性凝集体を得ることが好ましい。ここで、本発明において「親水性凝集体」とは、該凝集体、あるいは該凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子の表面が、親水性の分散剤で被覆されている状態の凝集体を指す。ここで、沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式(日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項)を用いて、分散剤について計算した値が20MPa1/2以上である時、該分散剤は親水性であるという。親水性凝集体としては有機ナノ顔料粒子の一次粒子が2粒子以上凝集していれば特に制限されないが、通常平均粒径5μm程度であり、好ましくは0.04〜10μmである。
親水性凝集体を形成させるために使用する酸としては、好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、ギ酸であり、より好ましくは酢酸、塩酸である。
親水性凝集体形成時の水性分散液のpHについては凝集体が形成されればよく特に制限されないが、好ましくはpH1〜6、より好ましくはpH2〜4である。
【0054】
[有機高分子化合物(疎水性化用分散剤)]
以下、質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物について詳細に説明する。(以後、「質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物」を「有機高分子化合物」または「疎水性化用分散剤」といい、上述の高分子分散剤と区別していうことがある。)
本発明においては、水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子に対して、少なくとも1種の質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物を添加することにより疎水性の凝集体を作製した後、有機ナノ粒子凝集体を単離する。水性媒体中に存在する有機ナノ粒子は、そのままではろ紙によるろ過を行っても、ろ紙をすり抜けたり、ろ過フィルタでろ過をしても、莫大な時間がかかってしまう。上述したように貧溶媒に酸、あるいはアルカリを添加しておくことで、有機ナノ顔料粒子の水性分散液の調製時に有機ナノ顔料粒子を親水性凝集体として得ることができる。しかし、これだけであると、凝集体が親水性であるため、水性媒体中では大きな凝集体とはならず、且つ脱水性も悪いため、これをろ過してもろ過に多大な時間がかかってしまう。そこで、本発明の製造方法では、有機高分子化合物を添加することで該親水性凝集体を非親水性の凝集体(以後、「疎水性凝集体」ということもある)とする。有機高分子化合物の添加によって、有機ナノ顔料粒子が水性媒体中でより大きな凝集体となる。この方法によれば、ろ過に要する時間が短縮され、大幅なろ過性の改善が可能である。本発明において「疎水性凝集体」とは、該凝集体、あるいは該凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子の表面が、疎水性化用分散剤で被覆されている状態の凝集体を指す。ここで、沖津俊直により提案されている溶解性パラメータ(SP値)の理論式(日本接着学会誌Vol.29,No.6(1993)249〜259項)を用いて、分散剤について計算した値が20MPa1/2を下回る時、該分散剤を疎水性化用分散剤という。
本発明においては、有機高分子化合物の添加は、親水性凝集体を含む水性分散液に対して行うことが好ましい。
【0055】
疎水性凝集体としては、平均粒径が10μm以上であることが好ましく、大きければ大きいほうがより好ましい。10μm未満であると、凝集体の単離に多大な時間を要したり、ろ取しようとしてもろ紙、あるいはフィルタを通り抜けてしまったり、目詰りしたりする。ここで言う平均粒径とは、凝集体を光学顕微鏡で観察し、別途観察したモノサシを比較に測定した凝集体の直径である。ここで言う直径とは、凝集体の端から端の長さを測定し、その長さが最も長いところを直径と定義する。本発明における凝集体とは、本来肉眼では見ることができないナノ粒子の一次粒子が、二つ以上寄り集まって大きく成長して二次粒子になったものである。
【0056】
本発明における有機高分子化合物は、上記のとおり、水性媒体中の親水性凝集体に作用して疎水性凝集体とすることができる化合物であれば特に制限されない。好ましくは、非水性媒体に親和性のある構造部位(非水性媒体に親和性を有する基を有する繰り返し単位)と有機ナノ顔料粒子に親和性のある構造部位(有機ナノ顔料粒子に親和性を有する基を有する繰り返し単位)とを有し、非水性媒体中で有機ナノ顔料粒子を分散させる作用を有する化合物である。有機高分子化合物は、親水性凝集体に作用し、有機ナノ顔料粒子に親和性のある構造部位が、親水性凝集体表面あるいは該凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子表面を被覆し、結果的に該凝集体あるいは該粒子が、非水性媒体に親和性のある構造部位により疎水化される。
本発明における有機高分子化合物は、凝集した有機ナノ顔料粒子に吸着する。このため、ろ過、洗浄、再分散等の工程を経た後も、該有機高分子化合物がそのまま非水性媒体中で分散剤として作用できるため、新たに分散剤を添加する必要がない。分散性の調整のため、分散剤を後で新たに添加しても良いが、製造コストの観点から添加しないほうが好ましい。
さらに本発明における凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子は、有機高分子化合物にコーティングされた状態で凝集しているので、このような有機高分子化合物なしで凝集した場合、例えば、塩酸などで凝集させた場合に比べ、その後の再分散が容易で、有機ナノ顔料粒子が一次粒子にまでほぐれやすく、コントラストが高くなる。
該有機高分子化合物はそのまま添加してもよいが、該有機高分子化合物を溶媒に溶解して添加するほうが、良好なろ過性を得るという観点で好ましい。
【0057】
前記溶媒としては、有機ナノ顔料粒子水性分散液と混和でき、且つ該有機高分子化合物を溶解可能であり、さらに、添加後も該有機高分子化合物がそれ自身で析出してしまわなければ、特に制限はない。
【0058】
該溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、特にケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、またはこれらの混合物がより好ましい。
【0059】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6-との塩などが挙げられる。
【0060】
該溶媒の使用量としては、有機高分子化合物を溶解でき、ろ過容易な疎水性凝集体が形成できる量であれば、特に制限はないが、製造の煩雑さ、原材料コストをより低減させることを考慮して、できる限り少量であることが好ましい。これを質量比で示すと、有機ナノ顔料粒子水性分散液を100としたとき、添加される溶媒は0〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜70の範囲が特に好ましい。多すぎるとろ過に多大な時間がかかることがある。
【0061】
該有機高分子化合物を添加した後、有機ナノ顔料粒子水性分散液と十分に混合するように撹拌することが好ましい。撹拌混合は通常の方法を用いることができる。該有機高分子化合物を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。該有機高分子化合物の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、撹拌羽、ラモンドスターラーなどの装置を用いて実施できる。
【0062】
なお、有機高分子化合物の添加量は、顔料に対して10質量%以上1000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満ではナノ粒子の疎水性化(非水性化)効果が少なくなり、1000質量%を超えると、再分散時の粘度上昇等の問題が発生し易くなる。本発明においては、有機高分子化合物の質量平均分子量は1000以上であることが好ましい。特に上限はないが、3000000以下であることがより好ましく、より好ましくは300000以下であることが好ましい。
【0063】
本発明に用いうる公知の有機高分子化合物の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース55000(グラフト型高分子)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。
【0064】
本発明における有機高分子化合物としては、公知の高分子化合物を単独で用いてもよく、2種以上用いても良い。また公知の高分子化合物は、次に説明する有機高分子化合物1種以上と併用してもよく、さらに次に説明する有機高分子化合物は単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
さらに、有機高分子化合物は、以下の(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを用いて共重合させて得られる高分子化合物か、(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを用いて合成される一般式(1)で表される高分子化合物が好ましい。
【0065】
【化1】

【0066】
(一般式(1)中、Xは、(l+m)価の連結基を表し、Sは硫黄原子を表す。Yは(A)〜(B)のモノマーの少なくとも1つのモノマー骨格からなる基であり、Zは(C)〜(D)のモノマーの少なくとも1つのモノマー骨格からなる基である。l+mは3〜10であり、lは0〜10、mは0〜10である。)
(A)酸性基、塩基性基の少なくともどちらか一方を含有するモノマー
(B)含窒素ヘテロ環を含有するモノマー
(C)非水性媒体と親和性のあるオリゴマーを含有するモノマー
(D)水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子と親和性のあるオリゴマーを含有するモノマー
【0067】
(A)〜(D)成分の組み合わせのうち、(A)、(C)、あるいは(B)、(C)の成分を組み合わせることが好ましく、(A)、(B)、(C)の成分、あるいは(A)、(C)、(D)の成分、あるいは(B)、(C)、(D)の成分を組み合わせることがより好ましく、(A)、(B)、(C)、(D)の成分を組み合わせることが特に好ましい。
(A)の酸性基、塩基性基の少なくともどちらか一方を含有するモノマーとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アミド基、ウレア基を含むモノマーが挙げられ、得られた有機高分子化合物が有機ナノ顔料粒子に酸塩基相互作用を介して吸着し得る構造が好ましい。具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0068】
【化2】

【0069】
【化3】

【0070】
(B)の含窒素ヘテロ環を含有するモノマーとしては、ベンズイミダゾロン基、ベンズイミダゾール基、アントラキノン基、ウラシル基、アクリドン基、ナフタルイミド基、カルバゾール基、ピリジル基、イミダゾリル基、スクシンイミド基、ベンゾピロール基などを有するモノマーが挙げられ、得られた有機高分子化合物が有機ナノ顔料粒子に水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子−双極子相互作用などを介して吸着し得る構造が好ましい。具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化4】

【0072】
(C)の非水性媒体と親和性のあるオリゴマーを含有するモノマーとしては、特に限定されないが、後述の再分散する際に用いる非水性媒体に溶解するものであることが好ましく、非水性媒体中で有機ナノ顔料粒子の分散を立体反発力で安定化し得る構造であることがより好ましい。
(C)のモノマーとしては、ポリスチレン骨格、ポリメチルメタクリレート骨格、ポリ−n−ブチルメタクリレート骨格、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート骨格、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート骨格、ポリエチレングリコール骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ポリカプロラクトン骨格を含有することが好ましく、特に、ポリスチレン骨格、ポリメチルメタクリレート骨格、ポリエチレングリコール骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ポリカプロラクトン骨格を含有することが好ましい。
またこのモノマーは市販品であってよく、また適宜合成したものであってもよい。
【0073】
市販品としては具体的には、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AA−714,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:707S,東亜合成化学工業(株)社製)、片末端メタクリロイル化ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートオリゴマー(Mn=7000、商品名:AY−707S、AY−714S,東亜合成化学工業(株)社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)社製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)社製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)社製)などが挙げられる。
【0074】
合成品の具体例としては、2−エチルヘキサノールとε―カプロラクトンとの開環重合により得られる2−エチルヘキシルオキシポリカプロラクトンオリゴマー、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム共重合片末端一級アミノ基オリゴマー(商品名:Jeffamine2005、HUNTSMAN社製)、ブトキシポリプロピレングリコールオリゴマー(アルドリッチ社製)などと、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応させて得られる片末端に重合性基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0075】
(D)の水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子と親和性のあるオリゴマーを含有するモノマーとしては、特に限定されないが、水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子と親和性があり、かつ再分散時の非水性媒体とも親和性があるものが好ましく、すなわち親水性部位(親水性基を有する繰り返し単位)と疎水性部位(疎水性基を有する繰り返し単位)を併せ持つ構造が好ましい。該モノマーとしては、水性媒体にも非水性媒体にも溶解するものが特に好ましく、水性媒体中に存在する有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体への濡れ性が付与でき、非水性媒体中での有機ナノ顔料粒子の分散を立体反発力で安定化し得る構造であることが好ましい。また、(D)のモノマーを(C)のモノマーと同時に用いる場合は、(C)のモノマーと同一のものでなく、(C)より親水性が高いものであることがより好ましい。
(D)のモノマーとしては、ポリスチレン骨格、ポリメチルメタクリレート骨格、ポリ−n−ブチルメタクリレート骨格、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート骨格、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート骨格、ポリエチレングリコール骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ポリカプロラクトン骨格を含有することが好ましく、特に、ポリエチレングリコール骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ポリカプロラクトン骨格を含有することが好ましい。
またこのモノマーは市販品であってよく、また適宜合成したものであってもよい。
【0076】
市販品としては具体的には、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、東亜合成化学工業(株)社製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)社製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B,日本油脂(株)社製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日本油脂(株)社製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日本油脂(株)社製)などが挙げられる。
【0077】
合成品の具体例としては、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダム共重合片末端一級アミノ基オリゴマー(商品名:Jeffamine1000、Jeffamine2070、HUNTSMAN社製)、メトキシポリエチレングリコールオリゴマー(アルドリッチ社製)などと、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応させて得られる片末端に重合性基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0078】
(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを共重合させて得られる高分子化合物においては、質量比で(A):(B):(C):(D)=(0.1〜60):(0〜50):(20〜90):(0〜60)であることが好ましく、これら質量比は総和が100となるように適宜選ばれる。
一般式(1)で表される高分子化合物においては、物質量比(モル比)で(A):(B):(C):(D)=(0.1〜6):(0.1〜5):(1〜9):(1〜6)であることが好ましく、これら物質量比は総和が一般式(1)中のXの(l+m)価と等価になるように適宜選ばれる。
【0079】
(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを共重合させて得られる高分子化合物は、(A)〜(D)のモノマーを、例えば、溶媒中でラジカル重合させることにより得ることができる。該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノール及びドデシルメルカプタン)を使用することができる。共重合体を含有する顔料分散剤については特開2001−31885号公報の記載を参考に合成することもできる。
【0080】
また、(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを用いて合成される一般式(1)で表される高分子化合物は、一般式(2)と(A)〜(D)のモノマーを用いて、特開2007−262378記載に記載の方法により合成できる。
【0081】
【化5】

【0082】
前記一般式(1)、(2)中、Xは、(l+m)価の連結基を表す。l+mは3〜10を満たす。前記Xで表される(l+m)価の連結基としては、1〜100個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜200個までの水素原子、および0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。
前記一般式(1)、(2)におけるXは、1〜60個までの炭素原子、0個〜10個までの窒素原子、0個〜50個までの酸素原子、1個〜100個までの水素原子、及び0個〜20個までの硫黄原子から成り立つ基であることが好ましい。
Xで表される連結基は有機連結基であることが好ましく、その有機連結基の好ましい具体的な例〔具体例(r−1)〜(r−17)〕を以下に示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0083】
【化6】

【0084】
【化7】

【0085】
上記の中でも、原料の入手性、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点から、上記(r−1)、(r−2)、(r−10)、(r−11)、(r−16)、(r−17)の基が好ましい。
また、上記のXが置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1〜6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6までのアルコキシ基、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0086】
以下に(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを共重合させて得られる高分子化合物、(A)〜(D)のモノマーの少なくとも1つを用いて合成される一般式(1)で表される高分子化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。下記においてMeはメチル基、Buはブチル基を表す。Rは−O−CO−CH−CH−を表し、炭素原子で繰り返し単位中のS(硫黄原子)と結合している。また、以下の具体例において、構成される高分子化合物の末端に各繰返し単位が位置する場合にはその繰返し単位の末端は水素原子によって置換されている。P−9〜P−11において、繰り返し単位を示す括弧〔〕の下に記載された数値は物質量比を示す。
【0087】
【化8】

【0088】
【化9】

【0089】
【化10】

【0090】
【化11】

【0091】
[単離]
以下、有機ナノ粒子の疎水性凝集体の単離方法について説明する。
【0092】
まず単離前に、凝集した液を0.5〜2時間静置することが好ましい。凝集体が沈降するので、上澄みをデカントしたり、吸い取ることにより除去でき、凝集体の単離がさらに容易になる。また静置の代わりに遠心分離を行うことで、より速い凝集体の沈降が可能であり、時間短縮ができる。
【0093】
単離方法としては、種種のろ取方法が可能であり、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過が挙げられる。
【0094】
限外ろ過による場合、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)およびNo.16 351(1977)に記載の方法が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的の有機ナノ粒子分散物を処理する上では、粒子の必要以上の凝集を抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、イオン交換または蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、有機ナノ粒子分散物に直接添加してもよい。
【0095】
フィルタろ過は、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどが挙げられる。
【0096】
遠心分離による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる遠心分離機は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)中の有機ナノ粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。遠心分離機としては、例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
【0097】
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0098】
単離した凝集体については、脱塩、脱水、余分な分散剤の除去を目的に、洗浄を行うこともできる。洗浄操作は、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過の後に、そのまま洗浄液を添加してかけ洗いしてもよく、一旦凝集体を取り出し、洗浄液中でリスラリーした後に、限界ろ過、遠心分離、ろ紙やフィルタによるろ過で単離してもよく、それらを組み合わせた洗浄を行っても良い。
【0099】
また、洗浄は上述のような単離の後に行うことだけでなく、単離前に行うこともできる。凝集したナノ顔料粒子分散液を静置し、上澄み液を除き、洗浄液を添加し、リスラリーさせることにより達成される。リスラリーの後は、静置し、上澄み液を除き、ろ過してもよいが、そのままろ過してもよい。単離前に洗浄を行うと、凝集体が常に湿潤しているため、洗浄効率が上がるのみならず、後述の再分散がより容易になる。
【0100】
洗浄液としては、脱塩、脱水、余分な分散剤・凝集剤の除去が達成できれば、特に限定されないが、具体的には、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、特に水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒が好ましい。
【0101】
単離された疎水性凝集体中には、有機ナノ顔料粒子の他に分散剤、疎水性化用分散剤が含まれていることが好ましい。分散剤は、顔料に対して10質量%以上1000質量%以下で共存していることが好ましい。更には、10質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満でも、1000質量%を超えても、非水性媒体中での分散不良等の問題が発生し易くなる。疎水性化用分散剤は、顔料に対して10質量%以上1000質量%以下で共存していることが好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。10質量%未満では分散不良になり、1000質量%を超えると、再分散時の粘度上昇等の問題が発生し易くなる。
分散剤は、該有機ナノ顔料粒子を非水性媒体中で分散する際に疎水性化用分散剤の該有機ナノ顔料粒子への吸着を促し、保持する働きがある。そのため、分散剤が少なすぎると、疎水性化用分散剤が該有機ナノ顔料粒子から脱着してしまい非水性媒体への再分散時に分散不良に陥ることがある。一方で、分散剤が親水性であり、その量が多すぎると、該分散剤に比べて相対的に疎水性化用分散剤が少なくなる。そのため、水性媒体中では疎水化効果が不十分となることがあり、非水性媒体中では再分散時に分散不良に陥ることがある。疎水性化用分散剤についてみると、少なすぎる場合は水性媒体中での該疎水性化分散剤による疎水化効果が不十分となることがある。一方、非水性媒体中では分散不良となることがある。疎水性化用分散剤が多すぎる場合は、有機ナノ顔料粒子に吸着できない余分な疎水性化用分散剤が生じることとなり、再分散時に粘度上昇することがある。
【0102】
単離された凝集体は、そのまま後述の再分散を行っても、再分散溶媒(後述)で濡らした後再分散を行っても、乾燥して有機ナノ粒子分散物の粉体として取り出した後再分散を行っても良い。
【0103】
乾燥方法は特に制限されないが、凍結乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。
凍結乾燥の方法については、特に限定されず、当業者が利用可能な方法であればいかなるものを採用してもよい。例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
【0104】
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
【0105】
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、さらに好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120−129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328−331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0106】
減圧乾燥による有機ナノ粒子の濃縮に用いられる装置は有機ナノ粒子分散液(または有機ナノ粒子濃縮抽出液)の溶媒を蒸発させることができれば特に制限はない。例えば、汎用の真空乾燥器およびロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
【0107】
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
【0108】
[再分散]
本発明の製造方法によれば、必要に応じて、凝集状態にある有機ナノ顔料粒子を微細分散化することができる(本発明において、微細分散化または再分散とは、分散液中の粒子の凝集を解き分散度を高めることをいう)。本発明においては、得られた疎水性凝集体を非水性媒体中に再分散することが好ましい。(このようにして得られた分散物を非水性分散物ということがある。)
【0109】
上述した凝集化した有機ナノ顔料粒子を、速やかなフィルタろ過が可能で良好な分散状態とするためには、有機ナノ顔料粒子を再分散可能な程度に凝集させたフロックとして得ることが好ましい。ここでフロックとは、再分散しうる程度に弱く凝集させた(軟凝集させた)微粒子の集合体をいう。上記親水性凝集体および疎水性凝集体もフロックであることが好ましい。このように有機ナノ顔料粒子をフロックとすることで、例えば水系の混合液中に析出させた有機ナノ顔料粒子を素早くろ過等により媒体から分離することができる。そして、分離したフロック(軟凝集体)をカラーフィルタの作製に適した有機溶媒に再分散させ、効率良く有機溶媒系の顔料分散組成物(非水性分散組成物)とすることができる。すなわち、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒が水系の溶媒であるとき、これを効率的に有機溶媒からなる第3の溶媒へ置換し分散媒(連続相)を切り換えることができる。
【0110】
また、通常の分散化方法を用いて分散化した程度では微粒子化に不十分であり、さらに微細化効率の高い方法が必要となることがある。このような強い凝集状態の有機粒子においても(本発明において、凝集有機粒子とは、凝集体など有機粒子が二次的な力で集まっているものをいい、一次粒子がナノメートルサイズであるとき凝集ナノ粒子ということもある。)、凝集有機粒子液に質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物が含有されていることにより、有機粒子を好適に微細分散化した分散物とすることができる(本発明において、凝集有機粒子液とは、凝集有機粒子を液中に含むものをさし、分散液、濃縮液、ペースト、スラリーなどであっても凝集有機粒子が含まれればよい。)。さらに詳述すると、上記有機高分子化合物を用いることにより、良溶媒と貧溶媒との混合液に析出させたときの良好な微細分散性(均一で微小な粒径が実現される特性)及び分散安定性(均一で微細な粒径が長期間維持される特性)が、媒体をカラーフィルタに適した有機溶媒に切り換え再分散させた後も維持され、カラーフィルタにおける高性能を実現しうる。しかも、上記有機高分子化合物がカラーフィルタの光学特性等を妨げることなく、有機ナノ顔料微粒子の着色性と相互に作用しあいカラーフィルタにおける高性能を実現しうる。
【0111】
このようなナノ粒子の凝集体を微細分散化する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。
【0112】
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(非特許文献1参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
【0113】
物理的なエネルギーを加えて濃縮した有機ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0114】
有機ナノ粒子分散物の好ましい製造方法としては、着色剤を樹脂成分で混練分散処理後の25℃における粘度が10,000mPa・s以上、望ましくは100,000mPa・s以上の比較的高粘度になるように混練分散処理し、次いで溶剤を添加して、微分散処理後の粘度が1,000mPa・s以下、望ましくは100mPa・s以下の比較的低粘度になるように微分散処理する方法が好ましい。
【0115】
再分散処理で使用する機械は二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸および2軸の押出機等であり、強い剪断力を与えながら分散する。次いで、溶剤を加えて、主として縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機、高圧分散機等を使用し、0.1〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理する。さらに0.1mm以下の微小粒子ビーズを用いて精密分散処理をすることもできる。
【0116】
また主顔料と補顔料を別々に分散処理した後、両者の分散液を混合して更に分散処理を加えたり、主顔料と補顔料をいっしょに分散処理することも可能である。
【0117】
尚、分散についての詳細はT.C. Patton著“Paint Flow and ピグメント Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等にも記載されており、この方法を用いてもよい。
【0118】
再分散後の有機ナノ顔料粒子分散物には、有機ナノ顔料粒子の分散性を向上させる目的で通常の顔料分散剤や界面活性剤を添加することができる。これらの分散剤としては、多くの種類の化合物が用いられるが、例えば、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−6745(エフカ社製))、ソルスパース5000(ゼネカ(株)社製);オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上森下産業(株)社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(ゼネカ(株)社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)社製)およびイソネットS−20(三洋化成(株)社製)が挙げられる。また、2000−239554号公報に記載の顔料分散剤や、特公平5−72943号公報に記載の化合物(C)や、特開2001−31885号公報に記載の合成例1の化合物なども好適に用いることができる。
【0119】
再分散後の有機ナノ粒子分散組成物においては、有機ナノ粒子(一次粒子)を微細分散化した粒子とすることができ、粒径を好ましくは1〜200nmとすることができ、2〜100nmがより好ましく、5〜50nmが特に好ましい。また、再分散後の粒子のMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0120】
本発明の製造方法によれば、顔料微粒子をナノメートルサイズ(例えば、10〜100nm)という微小な粒径にもかかわらず、濃縮再分散化することができ、例えば、有機ナノ顔料粒子分散組成物や後述する着色感光性樹脂組成物とすることができる。このため、これらの組成物をカラーフィルタに用いたときには、光学濃度が高く、フィルタ表面の均一性に優れ、コントラストが高く、かつ画像のノイズを少なくすることができる。
【0121】
さらに、有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性組成物に含まれる有機ナノ顔料粒子を、高度に、また均一に、微細分散化することができるため、薄い膜厚さで、高い着色濃度を発揮し、例えばカラーフィルタ等の薄層化を可能とするものである。
【0122】
また有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物において、鮮明な色調と高い着色力とを示す顔料を含有させることで、例えばカラープルーフやカラーフィルタ等を作製するための画像形成材料として優れている。
【0123】
さらに、着色画像形成時の露光・現像に用いられるアルカリ性の現像液に対して、有機ナノ粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物に、結合剤(バインダー)としてアルカリ性水溶液に可溶なものを用いることができ、環境上の要求にも応えることができる。
【0124】
また有機ナノ顔料粒子分散組成物、着色感光性樹脂組成物に用いられる溶媒(顔料の分散媒)として適度な乾燥性を有する有機溶媒を用いることができ、塗布後の乾燥の点でもその要求を満足することができる。
【0125】
[着色感光性樹脂組成物]
本発明の着色感光性樹脂組成物は、少なくとも、(a)有機ナノ顔料粒子、(b)バインダー、(c)モノマーもしくはオリゴマー、および(d)光重合開始剤もしくは光重合開始剤系を含む。以下、本発明の着色感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0126】
(a)有機ナノ顔料粒子
有機ナノ顔料粒子を作製する方法については既に詳細に述べた。有機ナノ顔料粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。着色剤として機能する有機ナノ顔料粒子としては、粒径0.1μm以下、特には粒径0.08μm以下であることが好ましい。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。本発明においては、有機ナノ粒子は、上記の有機ナノ顔料非水性分散物として用いられることが好ましい。
【0127】
(b)バインダー
着色感光性樹脂組成物中のバインダーとしては、先に述べた質量平均分子量1000以上の高分子化合物を好ましく用いることができる。バインダーの含有量は、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対して15〜50質量%が一般的であり、20〜45質量%が好ましい。この量が多すぎると組成物の粘度が高くなりすぎ製造適性上問題となる。少なすぎると塗布膜の形成上問題がある。
【0128】
(c)モノマー又はオリゴマー
本発明の着色感光性樹脂組成物に含有させるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に記載の一般式(1)および(2)のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
【0129】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
【0130】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0131】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0132】
これらのモノマー又はオリゴマーは(モノマー又はオリゴマーとしては、分子量200〜1000のものが好ましい。)、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0133】
(d)光重合開始剤又は光重合開始剤系
本発明の着色感光性樹脂組成物に含有させる光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
【0134】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
【0135】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
【0136】
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0137】
(その他の添加剤)
〔溶媒〕
本発明の着色感光性樹脂組成物においては、上記成分の他に、更に有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の例としては、特に限定されないが、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレシ等が挙げられる。これら溶剤のうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が本発明における溶剤として好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0138】
また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。これらの高沸点溶剤としては、次のものが例示される。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ブチルラクテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−エチルヘキシルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γブチルラクトン、トリプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコール−n−ブチルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールジアセテート。
【0139】
溶媒の含有量は、樹脂組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0140】
〔界面活性剤〕
従来用いられてきたカラーフィルタにおいては、高い色純度を実現するために各画素の色が濃くなり、画素の膜厚のムラが、そのまま色ムラとして認識されるという問題があった。そのため、画素の膜厚に直接影響する、感光性樹脂層の形成(塗布)時の、膜厚変動の良化が求められていた。
【0141】
本発明のカラーフィルタ又は本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた転写材料においては、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラ(膜厚変動による色ムラ)を効果的に防止するという観点から、該着色感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。
【0142】
上記界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0143】
〔熱重合防止剤〕
本発明の着色感光性樹脂組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
【0144】
〔補助的に使用する染料、顔料〕
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、着色感光性樹脂組成物中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒径が0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
【0145】
染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0146】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0147】
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0148】
また、本発明の着色感光性樹脂組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0149】
[着色感光性樹脂組成物の塗布膜]
本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜における含有成分については、既に[着色感光性樹脂組成物]の項において記載したものと同様である。また、本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜の厚さは、その用途により適宜定めることができるが、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがより好ましい。この本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた塗布膜においては、そこに含まれる(c)モノマー又はオリゴマーを重合させて着色感光性樹脂組成物の重合膜とし、それを有するカラーフィルタを作製することができる(カラーフィルタの作製については後述する。)。重合性モノマー又は重合性オリゴマーの重合は、光照射により(d)光重合開始剤又は光重合開始剤系を作用させて行うことができる。
【0150】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタおよびその製造方法について説明する。
【0151】
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の光硬化性組成物(着色感光性樹脂組成物)を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
【0152】
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0153】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、本発明の光硬化性組成物を、直接もしくは他の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する工程(以下、適宜「感光性膜形成工程」と略称する。)と、形成された感光性膜を、パターン露光する(マスクを介して露光する)工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の感光性膜を現像して着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含むことを特徴とする。
【0154】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
(感光性膜形成工程)
感光性膜形成工程では、直接もしくは他の層を有する基板上に、本発明の光硬化性組成物を塗布して(付与して)感光性膜を形成する。
【0155】
本工程に用いうる基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスおよびこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
【0156】
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは、基板表面の平坦化のために下塗り層(他の層)を設けてもよい。
【0157】
基板上への本発明の光硬化性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0158】
光硬化性組成物の塗布膜厚としては、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましく、0.2〜3μmがさらに好ましい。
【0159】
基板上に塗布された感光性膜の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10〜300秒で行うことができる。
(露光工程)
露光工程では、前記感光性膜形成工程において形成された感光性膜を、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光する、即ち、パターン露光を行う。
【0160】
本工程では、塗布膜である感光性膜に対し、所定のマスクパターンを介して露光を行うことで、光照射された塗布膜部分だけを硬化させることができる。
【0161】
露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cm2が好ましく10〜1000mJ/cm2がより好ましく、10〜500mJ/cm2が最も好ましい。
【0162】
本発明のカラーフィルタが液晶表示素子用である場合は、上記範囲の中で5〜200mJ/cm2が好ましく10〜150mJ/cm2がより好ましく、10〜100mJ/cm2が最も好ましい。また、本発明のカラーフィルタが固体撮像素子用である場合は、上記範囲の中で30〜1500mJ/cm2が好ましく50〜1000mJ/cm2がより好ましく、80〜500mJ/cm2が最も好ましい。
【0163】
(現像工程)
次いで、現像処理を行うことにより、露光工程における未露光部分が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、未硬化部における光硬化性組成物の膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0164】
現像温度としては、通常20℃〜30℃であり、現像時間は20〜90秒である。
【0165】
前記有機溶剤としては、本発明の顔料分散組成物または光硬化性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
【0166】
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。
【0167】
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0168】
現像工程後、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行う。
【0169】
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃の熱硬化処理を行う。基板がガラス基板またはシリコン基板の場合は上記温度範囲の中でも200℃〜240℃が好ましい。
【0170】
このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0171】
以上説明した、感光性膜形成工程、露光工程、および現像工程(更に、必要により加熱処理)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0172】
本発明の光硬化性組成物を基板上に付与して膜形成する場合、膜の乾燥厚みとしては、一般に0.3〜5.0μmであり、好ましくは0.5〜3.5μmであり、最も望ましくは1.0〜2.5μmである。
【0173】
基板としては、例えば、液晶表示素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている。
【0174】
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
【0175】
本発明の光硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタの画素への用途を主体に述べてきたが、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスにも適用できることは言うまでもない。ブラックマトリックスは、本発明の光硬化性組成物に着色剤として、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色の着色剤を添加したものを用いる他は、上記画素の作製方法と同様に、パターン露光、アルカリ現像し、更にその後、ポストベークして膜の硬化を促進させて形成させることができる。
【実施例】
【0176】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0177】
<実施例1>
[有機ナノ顔料粒子水性分散液の調製]
C.I.ピグメントレッド254(45質量部)とポリビニルピロリドン(K−25、和光純薬工業社製、90質量部)をジメチルスルホキシド(DMSO)(953質量部)に添加し攪拌した。この溶液に28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(30体積部)を添加し、顔料溶液Aを調製した。一方、塩酸(0.5体積部)を添加した水(4000質量部)を顔料不溶性溶媒Bとして調製した。
前記顔料不溶性溶媒Bを30℃で藤沢製薬工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名)により500rpmで攪拌しながら、該顔料不溶性溶媒Bに前記顔料溶液Aを日本精密科学社製NP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名)で流速100mL/minで、4分4秒間注入して有機ナノ顔料粒子を晶析させ、有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体を得た。該凝集体を構成する有機ナノ顔料粒子の一次粒子のサイズの評価を透過型電子顕微鏡にていったところ、平均20〜30nmであった。
【0178】
[有機高分子化合物の添加]
有機高分子化合物としてP−1(3質量部)をアセトン(200質量部)に溶解させ、上述の有機ナノ粒子の親水性凝集体の分散液(300質量部)に添加し、0.5時間撹拌した。0.5時間静置し、生じた凝集体を光学顕微鏡で観察した後、凝集体を沈降させ、上澄み液をデカントにより除去した。
【0179】
[単離・洗浄・乾燥]
ろ紙(ADVANTEC社製、No.2)により上述の凝集体をろ取し、この時のろ過に要する時間を測定した。ろ取した凝集体については、水(300質量部)で洗浄した。得られた固体を室温下、一晩真空乾燥させた。
【0180】
[再分散]
この有機顔料固体(1質量部)に下記非水性溶媒1−メトキシ−2−プロピルアセテート(4質量部)を添加し、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて超音波照射を3時間行うことにより、下記非水性溶媒を分散媒とする有機ナノ顔料粒子非水性分散液(以下、顔料分散組成物Aとも言う。)を得た。
【0181】
【化8】

【0182】
(評価試験)
得られた顔料分散組成物Aについて下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
(1)顔料分散組成物A中の有機ナノ顔料粒子の平均粒径
透過型電子顕微鏡に測定した。
(2)疎水性凝集体の直径
凝集体を光学顕微鏡で観察し、別途観察したモノサシを参考に凝集体の直径を測定した。ここでいう凝集体の直径については、凝集体の端から端の長さを測定し、その長さが最も長いところを直径と定義した。
(3)ろ過時間
直径9cmのヌッチェとろ紙(アドバンテック社製フィルターペーパーNo.2(商品名))を用いて、アスピレーターで減圧ろ過することにより顔料1g当たりのろ過時間を測定した。
【0183】
(4)コントラスト評価
得られた顔料分散組成物Aを、ガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/m2になるように設定した。
【0184】
<実施例2>
実施例1のP−1をP−3に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ顔料粒子非水性分散液を顔料分散組成物Bとも言う。顔料分散組成物Bについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。有機ナノ顔料粒子の一次粒子のサイズは平均20〜30nmであった。
【0185】
<実施例3>
実施例1のポリビニルピロリドンをビニルピロリドン−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(質量比90/10)に、P−1をP−7に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Cとも言う。顔料分散組成物Cについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。有機ナノ顔料粒子の一次粒子のサイズは平均20〜30nmであった。
【0186】
<実施例4>
実施例1のポリビニルピロリドンをビニルピロリドン−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体(質量比90/10)に、P−1をP−9に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Dとも言う。顔料分散組成物Dについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。有機ナノ顔料粒子の一次粒子のサイズは平均20〜30nmであった。
【0187】
<実施例5>
実施例1のP−1をルーブリゾール社製「ソルスパース55000(グラフト型高分子)、重量平均分子量13000(ポリスチレン換算)」に変更し、実施例1と同様の操作を行った。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Eとも言う。顔料分散組成物Eについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。有機ナノ顔料粒子の一次粒子のサイズは平均20〜30nmであった。
【0188】
<比較例1>
実施例1と同様な操作で調製した有機ナノ粒子水性分散液に存在する親水性凝集体を、フィルタ(アドバンテック社製H010A047A、商品名)を用いてフィルタろ過し、要する時間を測定した。ろ取した固体に対して実施例1と同様な洗浄、乾燥した固体(1質量部)に対して、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(1質量部)、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(8質量部)添加し、日本精密製作所社製超音波ホモジナイザーUSシリーズ(商品名)を用いて超音波照射を3時間行うことにより、下記非水性溶媒を分散剤とする有機ナノ粒子非水性分散液を得た。得られた有機ナノ粒子非水性分散液を顔料分散組成物Fとも言う。評価は、親水性凝集体の直径を測定したことおよび上記のようにフィルタろ過を行った以外は実施例1と同様な評価を行った。顔料分散組成物Fについて実施例1と同様の評価試験を行った結果を表1に示す。
【0189】
【表1】

【0190】
本発明の製造方法によれば、有機ナノ顔料粒子を容易にろ過可能な疎水性凝集体とし、短い時間で効率良く単離することができた。さらに得られた凝集体を用いて作成した分散組成物は、高いコントラストを示した。これは、非水性媒体中で凝集状態を解いた際に、粒子析出時の良好な微細分散性が再現的に得られたためと考えられる。
【0191】
[着色感光性樹脂組成物の調製]
実施例1〜5、比較例1で得られた顔料分散組成物A〜F1000質量部にさらに下記組成の成分を添加し、撹拌混合して、本発明の着色感光性樹脂組成物(カラーレジスト液)を調製した。
〔組成〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート ・・・80質量部
・4−[o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−S−トリアジン (光重合開始剤) ・・・30質量部
・メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸(=70/30[モル比])共重合体(質量平均分子量:10,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分40%) ・・・200質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート ・・・490質量部
【0192】
得られた光硬化性組成物(カラーレジスト液)を、100mm×100mmのガラス基板(1737、コーニング社製)上に、色濃度の指標となるx値が0.650となるように塗布し、90℃のオーブンで60秒間乾燥させた(プリベーク)。その後、塗膜の全面に200mJ/cm2にて(照度20mW/cm2)露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液にて覆い、60秒間静止した。静止後、純水をシャワー状に散布して現像液を洗い流した。そして、上記のように露光および現像が施された塗膜を220℃のオーブンで1時間加熱処理し(ポストベーク)、ガラス基板上にカラーフィルタ用の着色樹脂被膜を形成し、着色フィルタ基板(カラーフィルタ)を作製した。
得られた各膜のR成分のコントラストを実施例1と同様に測定した結果を、表2に示した。
【0193】
【表2】

【0194】
以上、本発明により得られた有機ナノ粒子非水性分散物を用いた着色感光性樹脂組成物から作成したカラーフィルタは、比較例のものに比べ、極めて優れたコントラストを示した。含まれている有機ナノ顔料粒子が微細な粒子として得られたためであると考えられる。本発明の製造方法によれば、製造時間の短縮とカラーフィルタの高性能化とを両立させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体を含有する混合液に、質量平均分子量1000以上の有機高分子化合物を共存させて、前記親水性凝集体を疎水性凝集体とし、該疎水性凝集体を単離することを特徴とする有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項2】
前記有機高分子化合物を前記水性媒体と混和する溶媒中に溶解し、前記親水性凝集体を含有する混合液中に添加することを特徴とする請求項1記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記単離をろ過により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項4】
前記水性媒体中に有機ナノ顔料粒子の親水性凝集体を含有する混合液を調製するに当たり、良溶媒に溶解した有機顔料の溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる媒体とを混合することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項5】
前記有機ナノ顔料粒子の平均一次粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項6】
前記有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の平均粒径が10μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体の製造方法。
【請求項7】
前記有機高分子化合物が、非水性媒体に親和性を有する基と前記有機ナノ顔料粒子に親和性を有する基を有し、非水性媒体中で該有機ナノ顔料粒子を分散させる作用を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の有機ナノ顔料粒子の疎水性分散物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離された有機ナノ顔料粒子の疎水性凝集体を非水性媒体中に含有させ、該非水性媒体中の凝集体の凝集を解き再分散させることを特徴とする有機ナノ顔料粒子の非水性分散物の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の有機ナノ顔料粒子の非水性分散物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを少なくとも含む着色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9記載の着色感光性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラーフィルタ。


【公開番号】特開2009−227743(P2009−227743A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72513(P2008−72513)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】