説明

有機光電変換素子、それを用いた太陽電池、及び光センサアレイ

【課題】高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供する。
【解決手段】陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層と発電層が順次積層された構成を有する有機光電変換素子であって、該正孔輸送層は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーで形成され、かつ、該発電層は、p型半導体材料及びn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層であり、更に、該正孔輸送層と該発電層の間に下記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有することを特徴とする有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイ。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子、この有機光電変換素子を用いた太陽電池、および光アレイセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
バルクヘテロジャンクション型の有機太陽電池(有機光電変換素子)は、光吸収によって形成した励起子を失活する前に効率よく電荷分離できることが特徴だが、発生したキャリアは、有機ドナー材料または有機アクセプタ材料がそれぞれ相分離し、電極まで繋がったドメイン構造中を拡散によって移動するため、両極性のキャリア同士が電極上で再結合してしまい、エネルギー変換効率においてロス要因となっていた。
【0003】
この様な課題に対し、発電層と電極との間に電荷輸送層を有する構成により、正孔と電子のキャリア分離能を高める試みが成されている。例えば、光電変換層と電極の間にバンドギャップ1.8eV以上の共役ポリマー層を形成する方法(例えば、特許文献1参照)や、熱変換型のベンゾポルフィリン層を形成する方法(例えば、特許文献2参照)、金属アルコキシドの溶液を塗布し、大気中で加水分解させることで金属酸化物層とする方法(例えば、特許文献3、4参照)等が紹介されている。
【0004】
上述した従来構成の課題について図1を用いて説明する。図1(a)は従来の素子構成を示し、図1(b)はそのエネルギーダイアグラムを示す。図1中の光電変換素子10は、第1の電極101(正極)上に、正孔輸送層102を積層し、p型半導体材料103aとn型半導体材料103bとを混合したバルクヘテロジャンクション型の発電層103と、電子輸送層104、第2の電極105(陰極)とを積層した構造が一般的に用いられる。
【0005】
ここで発電層103は、103aと103bとが相分離したドメイン構造を有し、実際には両極側にそれぞれのドメインが部分的に接しているため、電子と正孔の逆流を抑制するために、正孔輸送層102、もしくは電子輸送層104を配することで、電子と正孔の分離性を高める試みが成されている。上述した従来技術では、正孔輸送層102のLUMO(伝導帯/CB)レベルを制御し、発電層から電子が逆流することを防ぐ。また、電子輸送層104のHOMO(価電子帯/VB)レベルを制御し、発電層から正孔が逆流するのを防ぐ。
【0006】
しかしながら、実際にこの様な構成では、正孔輸送層102および電子輸送層104は、様々な内部欠陥準位(図1b中、106または107)を有するため、この過程を通過して逆のキャリアが電極まで輸送され、再結合することによって発電のロスになっている。
【0007】
したがって、上述した課題に対し、電子と正孔を効率よく分離することで、電極に回収されるキャリアを増大させ、より優れた光電変換特性を発現する技術が求められている。
【0008】
しかし、この上述した何れの解決策においても未だ発電層で光吸収によって発生したキャリア(正孔と電子)の分離能が十分でなく、電極上でのフリーキャリア同士の再結合を十分に抑制できていない結果、光電変換特性を高めることが出来ず、更には光照射時の素子耐久性においても十分な性能が得られていなかった。
【0009】
また、このような目的でITO側のバッファ層としてPEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)の様な導電性高分子とポリ陰イオンのポリマー層を導入した場合に、該層の酸が陰極層まで拡散し、素子の酸化による劣化を促進している(例えば、非特許文献1参照)と言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2004/017422号パンフレット
【特許文献2】特開2008−135622号公報
【特許文献3】WO2007/011741号パンフレット
【特許文献4】特開2007−273939号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】高分子学会予稿集、vol158, No2,5654−5655ページ、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0014】
1.陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層と発電層が順次積層された構成を有する有機光電変換素子であって、該正孔輸送層は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーで形成され、かつ、該発電層は、p型半導体材料及びn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層であり、更に、該正孔輸送層と該発電層の間に下記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子または炭化水素基を表す。)
2.前記π共役系導電性高分子が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする、前記1記載の有機光電変換素子。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す)
3.前記一般式(2)で表される部分構造を有するπ共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンの重合体または共重合体であることを特徴とする、前記2記載の有機光電変換素子。
【0019】
4.前記ポリ陰イオンが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする、前記1〜3のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは、単なる結合手、置換または非置換のC〜C30のアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルコキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルコキシ基;置換または非置換のC−C30のアリール基;置換または非置換のC〜C30のアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C20のシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のアリールエステル基;及び、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールエステル基からなる群から選択され、Bは、イオン基、またはイオン基を含む基を表し、この際、前記イオン基は、陰イオンと陽イオンとの共役であり、前記陰イオンは、SO、COO、から選択され、前記陽イオンは、Na、K、Li、Mg+2、Zn+2、およびAl+3から選択される金属イオンまたはH、NH、CH(−CH−)(nは、1〜50の整数である)から選択される有機イオンのいずれかである。)
5.前記ポリ陰イオンが、スルホン酸基を有することを特徴とする、前記4記載の有機光電変換素子。
【0022】
6.前記ポリ陰イオンが、ポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする、前記5記載の有機光電変換素子。
【0023】
7.前記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有する層が0.5〜10nmの膜厚で形成されていることを特徴とする、前記1〜6のいずれか一項記載の有機光電変換素子。
【0024】
8.前記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物が、チオフェンオリゴマーであることを特徴とする、前記1〜7のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【0025】
9.前記チオフェンオリゴマーの分子量が400以上であることを特徴とする、前記8記載の有機光電変換素子。
【0026】
10.前記チオフェンオリゴマーの分子量が600以上であることを特徴とする、前記9記載の有機光電変換素子。
【0027】
11.前記正孔輸送層を形成し、前記正孔輸送層の上に該正孔輸送層が形成された後、前記アミノ基を有する化合物を含有する層と前記発電層は、前記アミノ基を有する化合物、前記p型半導体材料及び前記n型半導体材料が含まれた溶液を塗布することによって形成されることを特徴とする、前記1〜10のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【0028】
12.前記1〜11のいずれか1項記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【0029】
13.前記1〜11のいずれか1項記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、それを用いた太陽電池及び光センサアレイを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術における有機光電変換素子(有機太陽電池素子)の断層構造、およびエネルギーダイアグラムを示した図である。
【図2】本発明のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。
【図3】光センサアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討したところ、正孔輸送層がπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーで形成され、発電層がp型半導体材料及びn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層である有機光電変換素子において、正孔輸送層と陰極の間に一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有させることで、高い光電変換効率及び耐久性を発現できることを見いだした。
【0034】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0035】
〔一般式(1)〜一般式(3)で表される部分構造を有する化合物〕
まず、本発明における一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物について説明する。
【0036】
一般式(1)において、式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子または炭化水素基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、iso−プロピル基等が挙げられ、炭化水素基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、iso−プロピル基等)、シクロアルキル基(シクロプロピル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(フェニル基等)等が挙げられる。一般式(1)で表される化合物としては、公知の共役ポリマー化合物、芳香族オリゴマー化合物や縮合多環芳香族化合物等が好適に用いられる。
【0037】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater.,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0038】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0039】
芳香族オリゴマー化合物としては、チオフェンオリゴマー、ピロールオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、フェニレンビニレンオリゴマー又はチエニレンビニレン等が挙げられる。本発明において、オリゴマーとは、分子量が3000以下の化合物を表す。
【0040】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0041】
一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物としては、チオフェンオリゴマーが好適に用いられ、より好ましくは、分子量が400以上のチオフェンオリゴマーであり、更に好ましくは、分子量が600以上のチオフェンオリゴマーが用いられる。
【0042】
以下、本発明に係る一般式(1)で表される部分構造を有する化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
なお、これらの化合物は公開公報2004−137502号、公開公報2005−294588号、公開公報2006−117672号、公開公報2007−59558号、J.Heterocyclic Chem.、33、173−178、1996などを参考にして公知の方法で合成することができる。
【0047】
次に、本発明における導電性ポリマーについて説明する。
【0048】
本発明における導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなり、主鎖がカチオン性のπ共役導電性高分子を有し、ポリ陰イオンを対アニオンとして有する複合体構成を有する。
【0049】
次に、本発明におけるπ共役系導電性高分子について説明する。
【0050】
本発明のπ共役系導電性高分子とは、金属的又は半導体的な導電性を示す、主鎖がπ共役系骨格である高分子物質を表す。本発明において、「導電性」とは、電気が流れる状態を指し、JIS K 7194の「導電電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が10×8Ω/□より低いことをいう。π共役系導電性高分子としては、芳香族炭化水素の重合体、複素環化合物の重合体が例示される。具体的には、チオフェンおよびその誘導体の重合体(例えば、ポリ−3−アルキルチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン)、ピロールおよびその誘導体の重合体(例えばポリピロール)、アニリンおよびその誘導体の重合体(例えばポリアニリン)、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体、ポリイソチオナフテンおよびその誘導体が例示される。これらの中で、好ましくは、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、であり、より好ましくは、ポリアニリン類、ポリチオフェン類である。
【0051】
これらのπ共役系導電性高分子は、無置換のままでも、十分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシキル基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基を有機高分子に導入することが好ましい。
【0052】
有機高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0053】
これらの中でも特に上記一般式(2)で表される構造単位を繰り返し含む有機高分子が好ましく、本発明に係る導電性化合物が上記一般式(2)で表される構造単位を繰り返し含む態様が好ましい態様である。
【0054】
(一般式(2)で表される構造単位)
一般式(2)中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0055】
一般式(2)で表される構造単位を含む有機高分子は、同一の構造単位を繰り返し含んでもよいし、異なる2種類以上の構造単位を繰り返し含んでいても良い。
【0056】
中でもポリエチレンジオキシチオフェン(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);PEDOT)がより好ましい。
【0057】
一般式(2)で表される構造単位であるチオフェン化合物の合成は、例えば下記のようにして行うことができる。
【0058】
一般式(2)においてQが酸素原子である3,4−ジ−置換チオフェンは、3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボン酸エステルのアルカリ金属塩と適当なアルキレン−vic−ジハライドとを反応させ、次いで遊離3,4−(アルキレン−vic−ジオキシ−)チオフェン−2,5−ジカルボン酸を脱カルボン酸にして得ることができる(例えば、Tetrahedron,1967,23,2437−2441およびJ.Am.Chem.Soc.,1945,67,2217−2218参照)。
【0059】
次に、本発明におけるポリ陰イオンについて説明する。
【0060】
本発明におけるポリ陰イオンとしては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等の高分子状カルボン酸類、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等の高分子状スルホン酸類等が挙げられる。また、これらの高分子状カルボン酸類および高分子状スルホン酸類等のポリ陰イオンとしては、ビニルカルボン酸類またはビニルスルホン酸類等から選ばれる1種類のアニオン性モノマーのみから重合される単独重合体であってもよく、あるいは複数種類のアニオン性モノマーからなる共重合体であってもよく、さらにはアニオン性モノマーと、当該モノマーと共重合可能な他のアニオン性ではないモノマー類との共重合体であってもよい。アニオン性モノマーと共重合可能な他のアニオン性ではないモノマーとしては、例えばアニオン性ではないアクリル酸類、スチレン等を挙げることができる。ポリ陰イオンが共重合体である場合には、少なくとも1種のアニオン性モノマーが共重合体成分として含まれていればよく、複数種のアニオン性モノマー、あるいは複数種の他の共重合モノマーを任意に用いることができる。
【0061】
また、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホ基を含有するナフィオン(アルドリッチ社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
【0062】
本発明おいて、ポリ陰イオンは一般式(3)で表されることが好ましい。
【0063】
一般式(3)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは、単なる結合手、置換または非置換のC〜C30のアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルコキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルコキシ基;置換または非置換のC−C30のアリール基;置換または非置換のC〜C30のアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C20のシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のアリールエステル基;及び、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールエステル基からなる群から選択され、好ましくは、置換又は非置換のフェニル基または単なる結合手を表す。
【0064】
Bは、イオン基、またはイオン基を含む基を表し、この際、前記イオン基は、陰イオンと陽イオンとの共役であり、前記陰イオンは、SO、COOから選択され、前記陽イオンは、Na、K、Li、Mg+2、Zn+2、およびAl+3のような金属イオンまたはH、NH、CH(−CH−)(nは、1〜50の整数である)のような有機イオンから選択される。好ましいBは、−SONaである。
【0065】
一般式(3)で表されるポリ陰イオンは、Aがフェニル及びRが水素原子を表すポリスチレンスルホン酸又はAが単なる結合手及びRが水素原子を表すポリビニルスルホン酸であることが好ましい。
【0066】
本発明におけるポリアニオンの合成は、塊状、溶液、沈澱、懸濁または(逆)乳化重合法によって実施することができる。適当な分子量を得るには溶液重合法が好ましい。
【0067】
本発明におけるポリアニオンの合成に使用する開始剤としては、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド類、過硫酸塩、アゾ化合物またはレドックス触媒等を用いることができる。過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過流酸塩、2,2’−アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物が好ましく使用される。
【0068】
本発明におけるポリアニオンの合成に使用する重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、水が好ましい。溶液重合は1〜80質量%、好ましくは10〜60質量%の総モノマー濃度で実施することができる。
【0069】
本発明におけるポリアニオンの合成を実施する重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。出発材料は溶剤中に最初に導入しても、溶剤中に別々に導入してもまたは一緒に導入してもよい。場合によっては適当な溶剤に溶解した遊離基開始剤の添加は、出発材料の添加前、添加と同時にまたは添加後に実施することができる。重合の妨害を回避するために、反応は還流下にまたは保護ガス雰囲気、好ましくは窒素ガスまたはアルゴン中で実施することが好ましい。
【0070】
本発明におけるポリアニオンの合成に使用するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、スチリルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる、これらは単独で使用しても、複数使用して共重合体を合成しても良い。
【0071】
本発明におけるポリアニオンの分子量は好ましくは1,000〜2,000,000の範囲、より好ましくは2,000〜500,000、さらに好ましくは3000〜100000の範囲内である。分子量が1000未満もしくは2,000,000を超えると、十分な導電性を得ることができないため好ましくない。
【0072】
本発明におけるポリアニオンの分子量はゲルパーミッションクロマトグラフィーまたは浸透圧測定の様な慣用の方法で測定することができる。
【0073】
本発明に係るπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーは、市販の分散液を用いても良い。市販していない場合、合成品を用いても良い。これらの導電性ポリマの合成法について、一般式(4)で表される構造単位を有する有機高分子である、3,4−ジアルコキシチオフェン構造を有するカチオン性有機高分子を有する場合を例にして説明する。
【0074】
本発明におけるポリ陰イオンの存在下に、ピロールの酸化重合に代表的に用いる酸化剤を用い、溶媒中で3,4−ジアルコキシチオフェンの酸化重合により得られる。
【0075】
ポリチオフェンは酸化重合により正に荷電されるが、その数および位置を明確に求めることは困難である。
【0076】
本発明に係るπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーの合成は、本発明におけるポリ陰イオンと、カチオン性有機高分子を形成する構造単位である化合物を含有する溶媒中で、重合反応が完了するまで所定の重合温度で撹拌することで行われる。
【0077】
カチオン性有機高分子と本発明におけるポリ陰イオンの質量比は、ポリ陰イオンがリッチな環境ならば特に限定はないが、該π共役系導電性高分子が1に対し50以下が好ましく、より好ましくは25以下、更に好ましくは10以下である。
【0078】
重合時間はバッチの大きさ、重合温度および酸化剤に依存して数分乃至30時間の間であり得る。重合時間は一般に30分乃至24時間の間である。
【0079】
適切な酸化剤は例えばJ.Am.Soc.85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適するいずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価で且つ取扱い易い酸化剤例えば鉄(III)塩例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸および有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩(例えば、Fe(SO)、またはH、KCr、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウムおよび銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンおよびバナジウムイオンの存在下における空気および酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸および有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例にはC1〜20アルカノールの硫酸半エテルの鉄(III)塩の例えばラウリル硫酸のFe(III)塩がある。有機酸の鉄(III)塩の例として次のものが挙げられる:C1〜20アルキルスルホン酸例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族C1〜20カルボン酸例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸例えばトリフルオロ酢酸およびパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時C1〜20−アルキル置換されたスルホン酸例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩、また上記の有機酸のFe(III)塩の混合物も使用することができる。
【0080】
酸化重合反応において、例えば、本発明におけるポリ陰イオンの好ましい構造である一般式(3)で表される構造単位は、対応するチオフェン各1モルに対して0.25〜10個、好ましくは0.8〜8個のアニオン基が存在する量で加えることが好ましい。
【0081】
理論的にはチオフェン1モル当り2.25当量の酸化剤が対応するチオフェンの酸化重合に必要である[例えばJ.Polym.Sci.PartA、Polymer Chemistry,第26巻、1287頁(1988)参照]。しかしながら実際には、酸化剤はある過剰量で、例えばチオフェン1モル当り0.1〜2当量の過剰で用いる。
【0082】
重合に用いる有機溶剤としては、反応条件化で不活性であり、例えば脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびプロパノール;脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル;芳香族炭化水素、例えばトルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタンおよびジクロロエタン;脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル;脂肪族スルホキシドおよびスルホン、例えばジメチルスルホキシドおよびスルホラン;脂肪族カルボキシアミド、例えばメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;脂肪族および芳香族エーテル、例えばジエチルエーテルおよびアニソール等が挙げられる。さらに水又は水と上記有機溶剤との混合物も溶媒として使用することができる。好ましくは水である。
【0083】
酸化重合に用いられる溶媒の量としては、合成された導電性ポリマーの分散性の面から、本発明に係る導電性ポリマーが、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜50質量%の固体含有量を有するような溶媒の量が好ましい。
【0084】
酸化重合においては、使用する酸化剤および必要とする反応時間によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0085】
出発材料は溶剤中に最初に導入しても、溶剤中に別々に導入してもまたは一緒に導入してもよい。場合によっては適当な溶剤に溶解した酸化剤の添加は、出発材料の添加前、添加と同時にまたは添加後に実施することができる。重合の妨害を回避するために、反応は還流下にまたは保護ガス雰囲気、好ましくは窒素ガスまたはアルゴン中で実施することが好ましい。
【0086】
本発明に係る導電性ポリマーは、一般式(1)で表される構造単位以外にアニオン基を有する構造単位を有してもよいが、全体のアニオン基のうち50%(モル)以上は一般式(1)で表される構造単位であることが好ましく、特に90%以上が一般式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
【0087】
〔有機光電変換素子及び太陽電池〕
図2は、本発明のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図2において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子20は、基板201の一方面上に、陽極202、正孔輸送層203、アミン化合物を含有する層207、バルクヘテロジャンクション層の発電層204、電子輸送層205及び陰極206が順次積層されている。
【0088】
基板201は、順次積層された陽極202、正孔輸送層203、アミン化合物を含有する層207、バルクヘテロジャンクション層の発電層204、電子輸送層205、及び陰極206を保持する部材である。本実施形態では、基板201側から光電変換される光が入射するので、基板201は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板201は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板201は、必須ではなく、例えば、光電変換部204の両面に陽極202及び陰極206を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子20が構成されてもよい。
【0089】
光電変換部204は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0090】
図2において、基板201を介して陽極202から入射された光は、発電層204のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極202と陰極206の仕事関数が異なる場合では陽極202と陰極206との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、陽極202の仕事関数が陰極206の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、陽極202へ、正孔は、陰極206へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極202と陰極206との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0091】
なお、図2には記載していないが、平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0092】
図2において、正孔輸送層203は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンから構成されており、発電層204との間にアミン化合物を含有する層207が挿入されている。本発明者等は鋭意検討の結果、アミン化合物を正孔輸送層と発電層間に含有させることで、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する光電変換素子を実現することができた。この原因は定かではないが、恐らくアミン化合物が正孔輸送層203の酸部分を中和し、発電層204への酸の拡散を防ぐことで素子の耐久性を改善していると思われ、また、電極上での再結合を防止することができるため、光電変換効率を向上させていると思われる。さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。
【0093】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0094】
(正孔輸送層)
本発明の有機光電変換素子20は、発電層と陽極との間に正孔輸送層202を有する。これによりバルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となる。
【0095】
本発明の正孔輸送層202は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーで形成される。
【0096】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0097】
(アミン化合物を含有する層)
本発明の光電変換素子20は、発電層と正孔輸送層の間に一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する層を有するのが好ましい。一般式(1)で表されるアミン化合物はチオフェン化合物であることが好ましく、更に好ましくは分子量が400以上であり、更に好ましくは分子量が700以上である。
【0098】
この層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。例えば、正孔輸送層を形成した上に、該アミノ基を有する化合物、p型材料及びn型材料を混合した溶液を塗布することによってアミン化合物を自己組織的に正孔輸送層側に堆積させるような方法で積層構造を形成しても良い。
【0099】
(p型半導体材料)
本発明において、p型半導体材料としては、公知のp型半導体材料(縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー等)を用いることができる。
【0100】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0101】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基を持ったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,4986,J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9,2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、特開2008−16834号等に記載のポルフィリン系化合物等が挙げられる。
【0102】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater.,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0103】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0104】
(n型半導体材料)
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0105】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0106】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0107】
(発電層の形成方法)
P型半導体材料とn型半導体材料とが混合された発電層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0108】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0109】
発電層14は、P型半導体材料とn型半導体材料とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、P型半導体材料とn型半導体材料との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0110】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間に電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0111】
電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0112】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0113】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0114】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0115】
〔電極〕
本発明の有機光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極とを有する。また、タンデム構成をとる場合には中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0116】
また透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0117】
(陽極)
本発明の陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0118】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0119】
(陰極)
陰極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。陰極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0120】
陰極の導電材として金属材料を用いれば陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0121】
また、陰極206は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0122】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0123】
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0124】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0125】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0126】
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0127】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダ樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0128】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0129】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0130】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0131】
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0132】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0133】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【0134】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0135】
〔光センサアレイ〕
次に、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0136】
図3は、光センサアレイの構成を示す図である。図3(A)は、上面図であり、図3(B)は、図3(A)のA−A’線断面図である。
【0137】
図3において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての陽極22、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び陽極22と対をなし、上部電極としての陰極23が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24cと、本発明のアミン化合物を含有する層24bと、正孔輸送層24aの3層で構成される。そし図3に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0138】
これら基板21、陽極22、光電変換層24b及び陰極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子20における陽極202、光電変換部204及び陰極206と同等の構成及び役割を示すものである。
【0139】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、陽極22には、例えば、ITOが用いられ、陰極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24cのp型半導体材料には、例えば、前記ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)が用いられ、アミン化合物を含有する層24bには、例えば、前記AM−5が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記PCBMが用いられる。また、正孔輸送層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。このような光センサアレイ20は、次のようにして製作された。
【0140】
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における測定部面積(受光面積)は、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルター径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0141】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、アミン化合物AM−5の膜を蒸着法で5nm形成した。その上に、P3HTとPCBMの1:4混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルター径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、P3HT及びPCBMをクロロベンゼン溶媒に=1:4で混合し、これを攪拌(5分)して得た混合液を用いた。P3HTとPCBMの混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで180℃、30分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後のP3HTとPCBMの混合膜の厚さは70nmであった。
【0142】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、P3HTとPCBMの混合膜の上に、電子輸送層としてフッ化リチウムを5nm蒸着し、ついで陰極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、光センサアレイ20が作製された。
【0143】
この光センサアレイ20上に、所定のパターンを有する光を照射したところ、光の当たったセルのみから光電流が検出され、光センサとして機能することが確認された。
【実施例】
【0144】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
実施例1
〔有機光電変換素子の作製〕
(有機光電変換素子SC−101の作製)
ガラス基板上にパターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
【0146】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートしてPEDOT−PSS層を形成後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0147】
この基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方タンタル製抵抗加熱ボート本発明の化合物AM−1をそれぞれ入れ、真空蒸着装置(第1真空槽)に取り付けた後、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物AM−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚5nmの厚さになるように蒸着した。
【0148】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。
【0149】
クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)を1.5質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら500rpmで60秒、次いで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分放置した。
【0150】
【化7】

【0151】
次にエタノールにTi−イソプロポキシドを25mmol/lになるように溶解した液を調製し、取り出し電極部をマスキングした後に2000rpmでスピンコートした後、大気中に取り出して60分間放置してTi−イソプロポキシドを加水分解することによって、膜厚10nmのTiOx層を形成し、膜厚10nmの正孔ブロック層を形成した。
【0152】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を大気に晒すことなく真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、Alを100nm蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子SC−101を得た。なお蒸着速度は2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0153】
得られた有機光電変換素子SC−101は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
【0154】
(有機光電変換素子SC−102〜SC−105の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、化合物AM−1を下記表1記載の本発明の化合物に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子SC−102〜SC−105を作製した。
【0155】
(比較の有機光電変換素子SC−106の作製)
有機光電変換素子SC−101の作製において、化合物AM−1の膜を製膜しない以外は同様にして、比較用の有機光電変換素子SC−106を作製した。
【0156】
〔有機光電変換素子の評価〕
得られた、有機光電変換素子SC−101〜SC−106について、下記の変換効率、耐久性、及び折り曲げ耐性の評価を行った。
【0157】
(エネルギー変換効率)
上記作製した光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。またJsc、Voc、FFから式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求め、SC−101のエネルギー変換効率を100としたときの相対値を表1に示した。
【0158】
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
(耐久性)(相対低下効率)
ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、式2に従って相対低下効率を算出した。
【0159】
式2 相対低下効率(%)=(1−暴露後の変換効率/暴露前の変換効率)×100
(折り曲げ耐性保持率)
上記方法で作製した有機光電変換素子について、1インチφのプラスチック製の円柱棒を用意し、表裏を1セットとして、50セット巻きつけた前後のエネルギー変換効率ηの保持率を式2に従って求め、表4に示した。
【0160】
式3 保持率(%)=巻きつけ後のη/巻きつけ前のη×100
評価の結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
表1から、本発明の有機光電変換素子は、変換効率が高いものが得られることが分かる。また、相対低下効率が低く、耐久性が向上したことが分かり、更に、折り曲げ耐性も改善された。
【0163】
実施例2
(有機光電変換素子201の作製)
次いで、実施例1の有機光電変換素子SC−101と同様にしてPEDOT−PSS層まで設けた後、同様に基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。酢酸エチルにアミン化合物として化合物AM−2を0.1質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら2000rpmで60秒間のスピンコートを行い、50℃で5分間加熱した後、室温で6時間放置した。
【0164】
次いでこの上に、クロロベンゼンにp型半導体材料として、P3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリー3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000)を0.5質量%、n型半導体材料として前記フロンティアカーボン社製E100(PCBM)を2.0質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら2000rpmで60秒間のスピンコートを行い、50℃で10分間加熱した後、室温で12時間放置した。
【0165】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を大気に晒すことなく真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下に真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.6nm、及びAlを100nm蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、有機光電変換素子SC−201を得た。なお蒸着速度は2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0166】
得られた有機光電変換素子SC−201は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
【0167】
(有機光電変換素子SC−202〜SC−206の作製)
有機光電変換素子21の作製において、アミン化合物AM−2に代えて、下記表2記載の本発明の化合物に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子SC−202〜SC−206を作製した。
【0168】
(比較の有機光電変換素子SC−207の作製)
有機光電変換素子SC−201の作製において、アミン化合物の層を形成しない以外は同様にして、比較用の有機光電変換素子SC−207を作製した。
【0169】
〔有機光電変換素子の評価〕
得られた有機光電変換素子について、実施例1と同様にしてエネルギー変換効率の相対値、相対低下効率(耐久性)、及び折り曲げ耐性保持率の評価を行った。
【0170】
評価の結果を表2に示す。
【0171】
【表2】

【0172】
表2からも、本発明の有機光電変換素子は、変換効率の高いものが得られることが分かる。また、相対低下効率が低く、耐久性が高いことが分かり、更に、折り曲げ耐性も改善された。
【0173】
実施例3
(有機光電変換素子SC−301の作製)
実施例2の有機光電変換素子SC−202を作製する際に、アミン化合物AM−5の層を形成せずに、実施例1の有機光電変換素子1と同様にしてPEDOT−PSS層まで設けた後、クロロベンゼンにアミン化合物としてAM−5を0.1質量%、p型半導体材料として、P3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリー3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000)を0.5質量%、n型半導体材料として前記フロンティアカーボン社製E100(PCBM)を2.0質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら2000rpmで60秒間のスピンコートを行い、50℃で10分間加熱した後、室温で12時間放置した。後は、SC−202と同様にフッ化リチウム、陰極を製膜した後封止して、有機光電変換素子SC−301を作製した。
【0174】
〔有機光電変換素子の評価〕
得られた有機光電変換素子について、実施例2と同様にしてエネルギー変換効率の相対値、相対低下効率(耐久性)、及び折り曲げ耐性保持率の評価を行い結果を表3に示す。
【0175】
【表3】

【0176】
表3から、SC−201のエネルギー変換効率を100としたときのSC−301のエネルギー変換効率の相対値は101、相対低下効率は20%、折り曲げ耐性保持率は85%ととなり、比較の素子に比べ改善されている。このように、発電層を形成する際に、アミン化合物とn型材料とp型材料と混ぜて形成した場合でも光電変換特性、耐久性及び折り曲げ耐性に効果があった。これは、定かではないが、恐らく、ファンデルワールス相互作用により、アミン化合物がPEDOT層側に局在化していると考えられる。このような方法で積層構造が形成されているとすると、製膜プロセスの簡易化にもつながる。
【符号の説明】
【0177】
10 光電変換素子
101 第1の電極(正極)
102 正孔輸送層
103 バルクヘテロジャンクション型の発電層(光電変換層)
104 電子輸送層
105 第2の電極(陰極)
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b アミン化合物を含有する層
24c 光電変換層
200 光電変換素子
201 基板
202 陽極
203 正孔輸送層
204 バルクヘテロジャンクション層の発電層
205 電子輸送層
206 陰極
207 アミン化合物を含有する層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層と発電層が順次積層された構成を有する有機光電変換素子であって、該正孔輸送層は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを含んでなる導電性ポリマーで形成され、かつ、該発電層は、p型半導体材料及びn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層であり、更に、該正孔輸送層と該発電層の間に下記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有することを特徴とする有機光電変換素子。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子または炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記π共役系導電性高分子が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする、請求項1記載の有機光電変換素子。
【化2】

(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す)
【請求項3】
前記一般式(2)で表される部分構造を有するπ共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェンの重合体または共重合体であることを特徴とする、請求項2記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記ポリ陰イオンが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは、単なる結合手、置換または非置換のC〜C30のアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルコキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルコキシ基;置換または非置換のC−C30のアリール基;置換または非置換のC〜C30のアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリール基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールオキシ基;置換または非置換のC〜C20のシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のC〜C30のアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のヘテロアルキルエステル基;置換または非置換のC〜C30のアリールエステル基;及び、置換または非置換のC〜C30のヘテロアリールエステル基からなる群から選択され、Bは、イオン基、またはイオン基を含む基を表し、この際、前記イオン基は、陰イオンと陽イオンとの共役であり、前記陰イオンは、SO、COO、から選択され、前記陽イオンは、Na、K、Li、Mg+2、Zn+2、およびAl+3から選択される金属イオンまたはH、NH、CH(−CH−)(nは、1〜50の整数である)から選択される有機イオンのいずれかである。)
【請求項5】
前記ポリ陰イオンが、スルホン酸基を有することを特徴とする、請求項4記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
前記ポリ陰イオンが、ポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする、請求項5記載の有機光電変換素子。
【請求項7】
前記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物を含有する層が0.5〜10nmの膜厚で形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の有機光電変換素子。
【請求項8】
前記一般式(1)で表されるアミノ基を有する化合物が、チオフェンオリゴマーであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【請求項9】
前記チオフェンオリゴマーの分子量が400以上であることを特徴とする、請求項8記載の有機光電変換素子。
【請求項10】
前記チオフェンオリゴマーの分子量が600以上であることを特徴とする、請求項9記載の有機光電変換素子。
【請求項11】
前記正孔輸送層を形成し、前記正孔輸送層の上に該正孔輸送層が形成された後、前記アミノ基を有する化合物を含有する層と前記発電層は、前記アミノ基を有する化合物、前記p型半導体材料及び前記n型半導体材料が含まれた溶液を塗布することによって形成されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の有機光電変換素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−96812(P2011−96812A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248605(P2009−248605)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】