説明

有機化合物の加熱装置

【課題】本発明は、有機化合物が保有するエネルギーを高効率で回収する加熱装置を提供するものである。
【解決手段】壁面が加熱されて内部に収納されている有機化合物101を加熱する外熱式の反応器102と、有機化合物101の熱化学的反応に伴い発生する可燃成分の一部を燃焼して得られる燃焼熱を熱源として高温空気を生成する空気加熱器112とを備え、高温空気を反応器102に供給することにより、有機化合物101を加熱するもので、有機化合物101の加熱源は、有機化合物101自身から熱分解で発生する可燃成分の燃焼熱を利用するものである。そのため、外部からのエネルギー供給量が抑制された場合であっても有機化合物101から高効率で可燃成分を回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーを回収するべく有機化合物あるいは有機廃棄物を加熱する加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物や有機廃棄物を熱分解あるいはガス化して、原料がもつエネルギーを回収し、有効利用するシステムの研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
このようなシステムで重要なことは、原料がもつエネルギーを最大限に回収することと、そのエネルギー回収のためにシステムが消費するエネルギーを最小限にすることである。前者の指標としては、回収したガス発熱量を原料発熱量で除した冷ガス効率がある。しかし、後者の指標は定義や、実測が困難であり、明確な指標や検討例などの報告はほとんど見当たらない。
【0004】
有機化合物のガス化では、生成物として熱分解ガス、タール等の揮発成分、チャー、灰分等の残渣がある。冷ガス効率を向上させるためには、前述の揮発成分、残渣をうまくガスに転換することが必要である。また、揮発成分の一部は、低温部で凝縮することにより、長時間運転した場合等において排気管の閉塞等の原因となるため、非凝縮性ガスになるまで低分子化することが好ましい。
【0005】
揮発成分をガス化する一つの方法として、分解触媒がある。ここでいう揮発成分とは、高分子の炭化水素が主成分であるので、石油精製プロセスで使用されるニッケル等が効果的と期待されている。また、ニッケルより高性能な触媒としてはルテニウム等がある。
【0006】
また、生成した揮発成分を多孔質粒子で一時的に捕捉し、その後酸素や空気により燃焼する方法がある。この場合、燃焼熱をシステム内で利用することにより、システムのエネルギー消費量を低減することができる。
【0007】
例えば、媒体粒子を循環させることにより、媒体粒子中に捕集されたチャーの燃焼熱を原料の熱分解に利用する循環流動床がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図2は、上記特許文献1に記載された従来の統合型循環流動床ガス化炉の基本構成図である。
【0009】
図2に示すように、統合型循環流動床ガス化炉は、ガス化室1、捕集装置2、燃焼室3を併せ持つことにより構成されている。ガス化室1には原料aが供給され、そのガス化室1において原料aの熱分解ガス化、および生成ガスの分解、改質が行われる。ガス化室1内で生成されたチャーや生成ガスは、流動媒体とともに捕集装置2に流入する。捕集装置2では、飛散粒子eの捕集と可燃ガスcの分離回収を行い、燃焼室3では飛散粒子e中におけるチャー等の可燃分の燃焼を行う。
【0010】
ガス化室1の下部には、濃厚流動層または高速流動層が形成されている。そして、ガス化室1の下部が濃厚流動層である場合には、濃厚流動層上部から蒸気または窒素などのガスを流動化ガスb2として供給する。これによってガス化室1上部を高速流動層とする。
【0011】
ガス化室1では、熱分解ガス化により生成したガスを分解、改質することを目的として、高速流動層を高温化するために酸素を含むガスを、流動化ガスb1、b2として供給してもよく、生成したガスの一部を燃焼させてもよい。酸素を含むガスは、b1とb2のいずれか一方もしくは双方に供給する。
【0012】
燃焼室3でチャー等を燃焼した飛散粒子eは、再度ガス化室1に戻される。
【0013】
以上の連続した作用により、前記有機化合物の熱分解ガス化プロセスにおいて発生するタールなどを分解、改質し、さらにチャーを燃焼した燃焼熱を再度熱分解に利用することにより、ガス転換率を向上させるとともに、システムの消費エネルギーを低減することができる。
【特許文献1】特開2003−176486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の構成は、有機化合物の熱化学的反応により発生するタール等の高分子成分を、高温水蒸気をガス化剤としてガス化室で水素、メタンなどの低分子ガスに分解、改質する。
【0015】
また、流動媒体で捕捉された高分子成分は、燃焼室に運ばれ、そこで高温空気を用いて燃焼する。この高温水蒸気や高温空気は反応系外から供給されており、蒸気発生用ボイラや高温空気発生器で多くの燃料を消費するという課題があった。
【0016】
さらに、これらの付属装置を備える必要があるために、システム全体が大型化するという課題があった。
【0017】
また、原料の含水量が多い場合、熱分解ガス化の初期における乾燥過程で発生した水蒸気はそのまま排気され、水蒸気が保有するエネルギーをシステム系外に廃棄しているため、システムの消費エネルギーが増大し、高含水原料の熱分解ガス化には適さないという課題があった。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、有機化合物の熱分解ガス化で発生する可燃成分の燃焼熱を利用して、原料の乾燥、そして蒸発した水蒸気の過熱を利用して余分な可燃成分の分解、改質剤として利用することにより、高含水の有機化合物からエネルギー的に効率よく可燃成分を回収する加熱装置と、さらに小型の加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明の有機化合物の加熱装置は、壁面が加熱されて内部に収納されている有機化合物を加熱する外熱式の反応器と、前記有機化合物の熱化学的反応に伴い発生する可燃成分の一部を燃焼して得られる燃焼熱を熱源として高温空気を生成する空気加熱器とを備え、前記高温空気を前記反応器に供給することにより、前記有機化合物を加熱するものである。
【0020】
したがって、前記有機化合物の加熱源として、有機化合物自身から熱分解で発生する可燃成分の燃焼熱を利用する。このことにより、外部からのエネルギー供給量を抑制しても、前記有機化合物から高効率で可燃成分が回収できる装置を提供できる。
【0021】
また、本発明の有機化合物の加熱装置は、前記反応器を、前記有機化合物を収納して加熱する第1の加熱室と、前記有機化合物から発生する揮発成分を燃焼または熱分解する第2の加熱室とから構成し、前記第1の加熱室を、前記第2の加熱室内部に設けた構成としている。したがって、前記第1および第2の各加熱室からなる加熱部は二重構造となり、前記第2の加熱室で得られる燃焼熱の一部は、壁面を介して第1の加熱室に供給される構成となる。その結果、前記反応器外への放熱量が抑制され、エネルギー的に効率が良く、さらにシステム全体も小型化できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、有機化合物から燃料ガスを高効率で発生させることにより、大規模なガス化プラントではなく小型ガス化装置として提供できるので、回収エネルギーがエネルギー消費地で生産可能となる。そのため、エネルギー搬送等の設備も簡略化され、従来の化石燃料の代替となる新しく、環境負荷の小さいエネルギー供給システムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
請求項1に記載の発明は、壁面が加熱されて内部に収納されている有機化合物を加熱する外熱式の反応器と、前記有機化合物の熱化学的反応に伴い発生する可燃成分の一部を燃焼して得られる燃焼熱を熱源として高温空気を生成する空気加熱器とを備え、前記高温空気を前記反応器に供給することにより前記有機化合物を加熱するものである。
【0024】
かかる構成とすることにより、前記有機化合物の加熱源は、有機化合物自身から熱分解で発生する可燃成分の燃焼熱を利用しているため、外部からのエネルギー供給量を抑制しても、有機化合物から高効率で可燃成分を回収することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明は、前記反応器を、前記有機化合物を収納して加熱する第1の加熱室と、前記有機化合物から発生する揮発成分を燃焼または熱分解する第2の加熱室とより構成し、さらに、前記第1の加熱室を、前記第2の加熱室内部に設けたものである。
【0026】
かかる構成により、前記第1の加熱室は、前記第2の加熱室内部に設けられた二重構造となるため、前記第2の加熱室で得られる燃焼熱の一部は壁面を介して第1の加熱室に供給される。その結果、前記反応器外への放熱量が抑制され、エネルギー的に効率が良く、さらにシステム全体も小型化できる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、前記第1の加熱室と前記第2の加熱室を区切る壁面内に、前記空気加熱器で加熱された高温空気を前記第2の加熱室に導入する導入管を設け、前記導入管の一端を前記空気加熱器に接続し、さらに他端を、前記第2の加熱室内部に配置したものである。
【0028】
かかる構成とすることにより、高温空気が有する熱エネルギーのうちの顕熱を、前記第1の加熱室の熱源として利用することができる。このため、前記第1の加熱室に別途熱源を設ける必要が無く、さらにシステムが小型化できる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、前記第2の加熱室に、耐熱性の多孔質粒子を充填したものである。
【0030】
かかる構成により、前記第2の加熱室において、有機化合物から発生する可燃成分のうち、凝縮性の高い高分子炭化水素の多くが多孔質粒子表面で捕捉される。そしてこの捕捉物質を、高温空気により燃焼させて得られる燃焼熱は、一時的に多孔質粒子に蓄熱され、有機化合物の加熱源等として利用できる。したがって、エネルギー的にさらに効率が良く、システム全体もさらに小型化できる。
【0031】
請求項5に記載の発明は、前記反応器から排出される可燃成分の顕熱を熱源とし、前記空気加熱器に供給される空気を予備加熱する熱交換器を備えたものである。
【0032】
かかる構成は、可燃成分が有する廃熱を高温空気生成用熱源として利用できるため、エネルギー的にさらに効率が良い。
【0033】
請求項6に記載の発明は、前記可燃成分の一部を、発電用燃料として発電機に供給するものである。
【0034】
かかる構成とすることにより、可燃成分を燃料として発電に利用できるため、熱として利用困難なエネルギーを、質の高いエネルギーである電気に変換して利用することができる。このため、システムとしての有効エネルギー量が増加し、さらにエネルギー的に効率の良い加熱装置が得られる。
【0035】
請求項7に記載の発明は、前記空気加熱器の流体入口側に、前記空気加熱器に供給する可燃成分量を調整するガス流量調整弁および、前記可燃成分の燃焼用空気量を調整する空気流量調整弁をそれぞれ設け、さらに、前記ガス流量調整弁と空気流量調整弁を制御し、前記空気加熱器の吐出流体温度を所定の温度に調整する制御手段を設けたものである。
【0036】
かかる構成は、高温空気生成量に適した熱量を得るべく、可燃成分量および燃焼用空気量を調整することができる。そのため、必要以上の可燃成分を消費することなく、余った可燃成分はエネルギーとして有効に利用でき、システム全体としてさらにエネルギー的に効率の良い加熱装置が得られる。
【0037】
請求項8に記載の発明は、前記有機化合物を、動植物を起源としたものである。
【0038】
この種の有機化合物は、一般的に高含水量であるため、可燃成分とともに多量の水蒸気を発生する。したがって、可燃成分中の比較的高分子である凝縮性炭化水素を高温雰囲気で水蒸気改質することが可能となり、エネルギー回収量が一層増加する。このため、さらにエネルギー的に効率の良い加熱装置を提供できる。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機化合物の加熱装置を模式的に示した構成図である。
【0041】
図1において、有機化合物101は主として動植物由来の燃料であるバイオマスを想定しており、代表例として家庭や事業所等からの廃棄物、製材所等からの木屑、畜産業者などからの家畜糞尿等がある。有機化合物101のその他のものとしては、プラスチック、樹脂、石炭、木炭等があり、これらを用いても差し支えない。
【0042】
反応器102は、有機化合物101を収納して加熱する第1の加熱室103と、第1の加熱室103を囲むように設けられた第2の加熱室104を主体に構成され、第1の加熱室103と第の加熱室104は、その内側、外側の位置関係から二重構造に構成されている。
【0043】
ここで、第1の加熱室103での加熱は、主に有機化合物101の乾燥、熱分解を目的としており、約100〜600℃の温度帯としている。一方、第2の加熱室104は、第1の加熱室103で有機化合物101から発生する熱分解ガスやタール等の可燃成分の一部を、高温空気により燃焼させることを目的としており、約600〜1000℃の温度帯としている。
【0044】
また、第2の加熱室104には、この燃焼反応を効率的に行うべく、整流板105および多孔質粒子106を備えている。整流板105の役割は、第1の加熱室103から流れてくるガス流を均一にし、多孔質粒子106層に送り込むことである。多孔質粒子106は、約600〜1000℃の温度に耐えうる耐熱性が必要であり、アルミナ粒子などを用いることができる。さらに、この多孔質粒子106は可燃成分の燃焼熱を一時的に蓄える蓄熱効果もあり、第2の加熱室104の温度安定化にも寄与している。
【0045】
反応器102の上部には、加熱前の有機化合物101を保存するホッパー107と、ホッパー107から有機化合物101を反応器102に連続的に供給する第1のロータリーバルブ108が備えられている。また、反応器102の底部には、有機化合物101の余分な残渣を反応器102外へ排出する第2のロータリーバルブ109が備えられている。
【0046】
第1の加熱室103と第2の加熱室104とを区切る壁面には、高温空気を第2の加熱室104に導入する導入管110および、有機化合物101の初期加熱を行うための熱源とする電気ヒータ120がそれぞれ備えられている。前記熱源は、電気ヒータ120に限るものではなく、石油、ガス等を燃料とするバーナ装置等であっても良い。
【0047】
このような構造から、第1の加熱室103は、第2の加熱室104の燃焼熱及び導入管110内を流れる高温空気の顕熱を熱源として壁面が加熱され、内部の有機化合物101を加熱する外熱式となる。
【0048】
導入管110は、配管111を介して空気加熱器112から熱交換器113へと接続されている。熱交換器113では、第2の加熱室104から排出される可燃成分の顕熱を熱源として配管入口111aから矢印で示すごとく流入する空気を予備加熱する。そして、熱交換器113から排出される可燃成分と予備加熱された空気は、それぞれ分岐管121、122へ流入し、各分岐管121、122に設けたガス流量調整弁114と空気流量調整弁115によってその流量が調整された状態で空気加熱器112へ流れる。したがって、前記可燃成分は、空気加熱器112内で燃焼される。
【0049】
上記空気加熱器112での燃焼により、熱交換器113で予備加熱され、分岐管121を流れなかった空気を加熱する。この加熱により、配管111を流れる空気は高温空気となる。
【0050】
前記高温空気の温度は、空気加熱器112における吐出側の配管111上に設けられた熱電対116で検出され、マイコン117を介してガス流量調整弁114および空気流量調整弁115の開度を調整する。高温空気温度は約600〜1200℃の範囲で設定可能である。
【0051】
ガス浄化器118では、分岐管122から空気加熱器112に供給されることのなかった可燃成分を、例えば周知の手段によって浄化し、発電機119に供給する。発電機119は、ガス浄化器118からの可燃成分をエネルギーとして作動し、発電する。
【0052】
以上のように構成された有機化合物の加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0053】
まず、原料である有機化合物101をホッパー107に供給する。有機化合物101の中には、食品残渣や汚泥など臭気の強いものも多いため、開口部は蓋付きとして原料投入後、臭気拡散を防止すると良い。また、加熱処理をより安定的に行うためには、事前に粉砕、あるいは水分調整すると良いことは言うまでもない。
【0054】
ホッパー107に投入された有機化合物101は、第1のロータリーバルブ108によって、連続的に反応器102に供給される。なお、有機化合物101の形態に応じて第1のロータリーバルブ108の替わりに、ピストン式供給機、あるいは一軸偏心ネジポンプ、さらにはコンベア式供給機等を用いても構わないし、単純な構造である回分(バッチ)式としても差し支えない。
【0055】
反応器102の第1の加熱室103に供給された有機化合物101は、初期段階において壁面に設けられた電気ヒータ120により、壁面から与えられる熱によって加熱される。有機化合物101は、その性状により幅があり、おおよそ10〜90%の水分を含んでいることから加熱初期段階において水蒸気が発生する。
【0056】
さらに加熱され昇温すると、約300℃付近から有機化合物101の熱分解が開始する。この段階になると、有機化合物101に含まれるタールなどの揮発成分や、熱分解により水素、メタン、エチレン、一酸化炭素等の可燃ガスが発生する。
【0057】
これらの可燃成分の内非凝縮性成分は、燃料ガスとして比較的容易に利用できるが、凝縮性成分は、低温部で凝縮することにより、流路の閉塞やエネルギー回収量の低下に伴う効率低下の原因となる。
【0058】
そこで、第2の加熱室104では、内部に充填された多孔質粒子106でこれらの凝縮性成分を吸着、捕捉する。そして、ここへ高温空気を投入することにより、前記凝縮性成分を燃焼して得られる燃焼熱を、システム内の熱源として利用する。また、多孔質粒子106は、それ自体に蓄熱作用があるため、余分な熱を一時蓄えておくことも可能である。
【0059】
また、第1の加熱室103で発生する熱分解残渣は、第2のロータリーバルブ109を介して反応器102の外へ排出される。
【0060】
反応器102内の作用(有機化合物101の燃焼加熱)が安定すると、第2の加熱室104から排出される可燃成分は、約600〜1000℃の温度と非常に高温となる。このとき、必要性に応じて電気ヒータ120の通電を停止してもよい。そして、この高温の可燃成分の顕熱は、配管104aを介して熱交換器113に送られ、この熱交換器113において配管入口111aからの空気を予備加熱する熱源として利用される。前記予備過熱を行った配管104aを流れる空気の顕熱は、その後、ガス洗浄器118で余分な成分が除去されて発電機119用燃料として利用される。
【0061】
また、可燃成分の一部と予備加熱された空気の一部は、それぞれ分岐管122、121へ流れ、各分岐管121、122に設けられたガス流量調整弁114と空気流量調整弁115によってその流量が調整され、空気加熱器112に供給される。前記可燃成分は、この空気加熱器112で燃焼する。そして、前記可燃成分の燃焼により得られた燃焼熱は、配管111を流れる前記予備加熱された空気の加熱用熱源として利用される。
【0062】
上述の流量制御により調整される発熱量は、配管111における空気加熱器112の吐出側に設けられた熱電対116によってその空気温度を測定して行われる。すなわち、検出した温度が所定の温度より低い場合は、ガス流量調整弁114および空気流量調整弁115の開度をそれぞれ大きくするようにマイコン117が判断して、発熱量を増加し、逆に温度が高い場合には開度を絞り、発熱量が小さくなるように制御する。
【0063】
そして、空気加熱器112により加熱された高温の加熱空気は、配管111を介して反応器102内へ流れ、第1の加熱室103内に設けられた有機化合物101を加熱し、以下、第2の加熱室104を流れて熱交換器113において配管入口111aからの導入空気の予備加熱を行い、そして、一部は洗浄器118から発電機119の燃料に供され、残りは分岐管122、ガス流量調整弁114を介して、同様に分岐管121、空気流量調整弁115を流れる予熱された空気の一部と混合し、そして、空気加熱器112内で燃焼して導入空気の加熱を行い、再び反応器102内へ流れるサイクルを繰り返す。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、壁面が加熱されて内部に収納されている有機化合物101を加熱する外熱式の反応器102と、有機化合物101の熱化学的反応に伴い発生する可燃成分の一部を燃焼し、得られた燃焼熱を熱源として高温空気を生成する空気加熱器112とを備え、前記高温空気を反応器102に供給することにより、有機化合物101を加熱するもので、有機化合物101の加熱源は、有機化合物101自身から熱分解で発生する可燃成分の燃焼熱を利用しているため、外部からのエネルギー供給量を抑制しても有機化合物101から高効率で可燃成分を回収することができる。
【0065】
また、反応器102は、有機化合物101を収納して加熱する第1の加熱室103と、有機化合物101から発生する揮発成分を燃焼または熱分解する第2の加熱室104とから構成され、第1の加熱室103は、第2の加熱室104内部に設けられた二重構造としている。
【0066】
したがって、第2の加熱室104で得られる燃焼熱の一部は壁面を介して第1の加熱室103に供給されるため、反応器102外への放熱量が抑制され、エネルギー的に効率が良く、さらにシステム全体も小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる有機化合物の加熱装置は、有機化合物を加熱したときに発生する揮発成分または熱分解ガスの一部を燃焼させて発熱し、この燃焼熱を熱源として、有機化合物の乾燥とそれに伴い発生する水蒸気を過熱して過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気を利用して残りの揮発成分、熱分解ガスあるいは熱分解残渣の分解、改質を行うことにより、有機化合物のエネルギー化システムの高効率化が可能となる。
【0068】
したがって、システム全体を小型化でき、設置面積が限られる小店舗、家庭など有機系廃棄物が排出されるその場所への設置が可能となり、ガスエンジン、ガスタービンあるいは燃料電池等の小型発電機を併設し、駆動源として使用することにより、オンサイト発電も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1における有機化合物の加熱装置を模式的に示した構成図
【図2】従来例を示す統合型循環流動床ガス化炉の基本構成図
【符号の説明】
【0070】
101 有機化合物(動植物)
102 反応器
103 第1の加熱室
104 第2の加熱室
106 多孔質粒子
110 導入管
112 空気加熱器
113 熱交換器
114 ガス流量調整弁
115 空気流量調整弁
116 熱電対
119 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面が加熱されて内部に収納されている有機化合物を加熱する外熱式の反応器と、前記有機化合物の熱化学的反応に伴い発生する可燃成分の一部を燃焼して得られる燃焼熱を熱源として高温空気を生成する空気加熱器とを備え、前記高温空気を前記反応器に供給することにより前記有機化合物を加熱する有機化合物の加熱装置。
【請求項2】
前記反応器を、前記有機化合物を収納して加熱する第1の加熱室と、前記有機化合物から発生する揮発成分を燃焼または熱分解する第2の加熱室とより構成し、さらに、前記第1の加熱室を、前記第2の加熱室内部に設けた請求項1に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項3】
前記第1の加熱室と前記第2の加熱室を区切る壁面内に、前記空気加熱器で加熱された高温空気を前記第2の加熱室に導入する導入管を設け、前記導入管の一端を前記空気加熱器に接続し、さらに他端を、前記第2の加熱室内部に配置した請求項1または2に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項4】
前記第2の加熱室に、耐熱性の多孔質粒子を充填した請求項1から3のいずれか一項に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項5】
前記反応器から排出される可燃成分の顕熱を熱源とし、前記空気加熱器に供給される空気を予備加熱する熱交換器を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項6】
前記可燃成分の一部を発電用燃料として発電機に供給する請求項1から5のいずれか一項に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項7】
前記空気加熱器の流体入口側に、前記空気加熱器に供給する可燃成分量を調整するガス流量調整弁および、前記可燃成分の燃焼用空気量を調整する空気流量調整弁をそれぞれ設け、さらに、前記ガス流量調整弁と空気流量調整弁を制御し、前記空気加熱器の吐出流体温度を所定の温度に調整する制御手段を設けた請求項1から6のいずれか一項に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項8】
前記有機化合物を、動植物を起源とした請求項1から7のいずれか一項に記載の有機化合物の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−335937(P2006−335937A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163914(P2005−163914)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】