説明

有機半導体を含む電子デバイス

本発明は、少なくとも1つの追加の架橋可能な層を挿入することによる有機電子素子のための新規な設計原理を記述する。電子デバイスの特性は、それにより向上する。これらのデバイスの構造化された構築がさらに容易になる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
有機、有機金属またはポリマー半導体またはこれら3つの群のうち2以上の化合物を含む電子デバイスは、市販製品にますまず多く用いられるようになり、または近々市場に導入されようとしている。現存する市販製品の例は、コピー機における有機系の電荷輸送材料(一般的にトリアリールアミン系の正孔輸送体)およびディスプレー装置における有機もしくはポリマー発光ダイオード(OLEDまたはPLED)を含む。有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機回路素子(O−IC)または有機レーザーダイオード(O−レーザー)は高度に進歩した研究段階にあり、将来非常に重要になるであろう。
【0002】
意図した目的に関係なく、これらのデバイスの多くは、個々の用途に相応して合わせた以下の一般的な層構造を有する。
【0003】
(1)基板
(2)コンタクト:導電性物質、電極;しばしば金属または無機物であるが、有機またはポリマー導電性材料からなるものもある
(3)任意の電荷注入層または電極の凹凸を補償するための中間層(「平坦化層」)、しばしば導電性のドープされたポリマーからなる
(4)有機半導体
(5)任意に絶縁層
(6)第2のコンタクト:(2)と同様;第2の電極、(2)で言及した材料
(7)内部結線(interconnection)
(8)封止材。
【0004】
これらの有機デバイス、とりわけポリマー、デンドリマーまたはオリゴマーの半導体をベースとするものの多くが有する1つの利点は、これらが、低分子量化合物について一般的に行われる真空プロセスよりも、技術的なおよびコストの支出がより少ない、溶液から製造できることである。たとえば、カラーの電界発光デバイスは、溶液からの表面コーティング(たとえば、スピンコーティング、ドクターブレード法など)による材料の処理により比較的簡単に製造できる。構造化、すなわち、個々のイメージポイントの駆動は、ここでは通常、「リード」で、すなわちたとえば電極で行われる。これは、たとえば、テンプレートの形態のシャドウマスクを用いて行ってもよい。有機回路および部分的に有機の太陽電池パネルまたはレーザーアレーの構造化は同様に行うことができる。しかし、工業的な大量生産のためには、このことはかなりの不利益をもたらす。これらを1回以上用いた後に、マスクは堆積物形成のために使用不可能となり、苦心して再生しなければならない。したがって、製造のためには、シャドウマスクを必要としないプロセスを利用できることが望ましいであろう。
【0005】
さらに、シャドウマスクによる表面コーティングおよび構造化は、たとえば、フルカラーのディスプレーまたは様々な回路素子を有する有機回路を製造しようとする場合には容易に用いることができない。フルカラーのディスプレーのためには、個々の画素(イメージポイント)において三原色(赤、緑および青)を高い解像度で互いに隣りあわせて塗布しなければならない。同様の検討が、様々な回路素子を有する電子回路に当てはまる。低分子量の蒸着可能な分子の場合には、シャドウマスクを用いて個々のカラーを蒸着させることにより個々のイメージポイントを作り出すことができるけれども(すでに上述した関連する困難を伴う)、これは、ポリマー材料および溶液から加工される材料については不可能であり、単に電極を構造化することによっては、もはや構造化を行うことができない。この場合の代替案は、構造化された形態で直接に活性層を塗布することである(たとえば:OLED/PLEDにおける発光層;同様の検討が、レーザーまたはすべての用途における電荷輸送層に当てはまる)。このことがかなりの問題を引き起こすという事実は、単に寸法から理解できる。数十μmの範囲の構造が100nm未満から数μmの範囲の層厚を備えることが必要である。特に、種々の印刷法、たとえばインクジェット印刷、オフセット印刷などが、最近はこのために検討されている。しかし、これらの印刷法は独自の問題を有しており、これらのいずれも大量生産プロセスに使用できるようにはいまだ発達していない。さらに、上述したマスク技術は、ここでは(OLEDの分野において)電極のために用いられている。ここで再び、このことは上述した堆積物形成の問題を伴う。したがって、印刷法による構造化能力(structurability)は、現在のところまだ解決されていない問題とみなさなければならない。
【0006】
構造化能力に対する別のアプローチが、WO02/10129およびNature2003,421,829において提案されている。これらには、構造化デバイス、たとえばOLED、PLED、有機レーザー、有機回路素子、または有機太陽電池において使用するのに適した構造化可能な材料が記載されている。これらは架橋が可能な少なくとも1つのオキセタン基を含む有機の、特に電界発光材料であり、その架橋反応は計画的に開始でき制御できる。Macromol.Rapid Commun.1999,20,225は、光誘起する方法で架橋できるオキセタン基で官能化したN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンを記載している。
【0007】
これらの化合物のクラスは、有機電子デバイスのアノード上に直接に構造化可能な正孔伝導体として用いられる。少なくとも1種の光開始剤を架橋のために材料に添加する。化学放射線への露光により、カチオン開環重合による架橋反応を開始する酸が発生する。したがって、架橋した材料を有する領域と架橋していない材料を有する領域からなるパターンを、構造化された露光により得ることができる。その後、架橋されていない材料からなる領域を、好適な操作(たとえば好適な溶媒による洗浄)により除去できる。このことは所望の構造化をもたらす。したがって、様々な層(または第1の材料に近接して塗布されるであろう他の材料)の続いての塗布を、架橋が完了した後に行うことができる。構造化のために用いたように、露光は現代のエレクトロニクスにおける標準プロセスであり、たとえば、レーザーを用いるかまたは好適なフォトマスクを用いた表面露光により行うことができる。ここではマスクは堆積のリスクを伴わない。というのは、この場合には、照射のみをマスクによって境界を区切ることになる(そして材料の流れはまったくそうではない)からである。ChemPhysChem2000,207においては、このような架橋されたトリアリールアミン層を、導電性のドープされたポリマーと有機発光半導体との間の中間層として導入している。この場合、より高い効率が得られる。ここで再び、フォトアシッドを架橋のために用いている。このことはトリアリールアミン層の完全な架橋のために必要であるように見える。しかし、フォトアシッドまたはその反応生成物は、架橋後に電子デバイス中に汚染物質として残留する。有機および無機の両方の不純物とも有機電子デバイスの操作を乱すことがあることが一般に認められている。この理由のために、可能な限りフォトアシッドの使用を減少できることが望ましいであろう。
【0008】
EP0637899は、少なくとも1層が熱誘起または照射誘起の架橋により得られ、さらに少なくとも1つの発光層および1層あたり少なくとも1つの電荷輸送単位を含む、1以上の層を有する電界発光の配置を提案している。架橋は、ラジカル的に、イオン的に、カチオン的に、または光誘起の閉環反応を介して起こりうる。言及された利点は、それによって複数の層を互いの上に形成できるか、または複数層を照射により誘起される方法でも構造化できるということである。しかし、種々の架橋反応のうちどれにより好適なデバイスを製造でき、どのように架橋反応を最も良好に行えるかについての教示はない。単に、ラジカル的に架橋可能な単位または光環状付加が可能な基が好ましく、たとえば開始剤のような種々のタイプの補助物質が含まれていてもよく、熱的にではなく化学放射線により膜を架橋することが好ましいことが言及されている。好適なデバイスの形態も記載されていない。したがって、デバイスがどのくらいの数の層を有するのが好ましく、これらはどのくらいの厚さがよく、どの材料の種類を用いるのが好ましく、そのうちどれを架橋すべきであるかは明確でない。したがって、当業者にとっても、記載された発明が実際にどのくらいうまく実施できるか明らかではない。
【0009】
有機エレクトオロニクスのためのデバイスにおいて、導電性のドープされたポリマーからなる中間層は、しばしば、電極(特にアノード)と機能材料との間の電荷注入層として導入される(Appl.Phys.Lett.1997,70,2067〜2069)。代わりに、導電性のドープされたポリマーは直接アノードとしても(または用途に応じてさらにカソードとしても)用いることができる。これらのポリマーのうち最も一般的なのは、ポリチオフェン誘導体(たとえば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、PEDOT)およびポリアニリン(PANI)であり、これらは一般的にポリスチレンスルホン酸または他のポリマーに結合したブレンステッド酸でドープされ、こうして伝導状態になっている。以下の発明においてこの特定の理論の正確さに拘束されることは望むわけではないが、我々は、デバイスの操作の間に、プロトンまたは他の不純物が酸基から機能層へ拡散し、そこでこれらがデバイスの機能をかなり乱しているらしいと思っている。したがって、これらの不純物は、デバイスの効率および寿命を減少させると思っている。プロトンまたは他のカチオン性不純物は、特にこの層の上に塗布される機能性半導体層がカチオン架橋可能であり、上述したように、構造化することを意図している場合に、悪い影響がある。我々は、機能層が、プロトンまたは他のカチオン性不純物の存在により、たとえば化学放射線によって架橋を制御する機会を提供することなく、すでに部分的にまたは完全に架橋していると疑っている。したがって、制御された構造化能力の利点が消失する。カチオン架橋可能な材料は、こうして原理的に、構造化の可能性、したがって印刷法の代替法を提供する。しかし、これらの材料の技術上の実施は現在まで可能ではなかった。というのは、ドープされた電荷注入層上での未制御の架橋の問題がいまだ解決していないからである。
【0010】
驚くべきことに、今や、カチオン架橋可能な少なくとも1つのバッファー層を、ドープされた中間層と機能性有機半導体層との間に導入した場合、デバイスの電子特性をかなり改善できることが見出された。カチオン架橋が熱的にすなわち50から250℃、好ましくは80から200℃への温度上昇により誘起されるバッファー層を用い、これにフォトアシッドを添加しない場合に、特に良好な特性が得られる。このバッファー層の別の利点は、半導体の制御された構造化をはじめて可能にするバッファー層を用いることによって、カチオン架橋可能な半導体の制御不可能な架橋を回避できるということである。バッファー層を架橋することのさらに別の利点は、材料のガラス転移温度、したがって層の安定性が、架橋により増すことである。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも1層の導電性のドープされたポリマーおよび少なくとも1層の有機半導体を含む電子デバイスであって、カチオン重合可能であり、0.5%未満のフォトアシッドが添加された、少なくとも1つの導電性または半導体性の有機バッファー層がこれらの層の間に導入されていることを特徴とする電子デバイスに関する。
【0012】
フォトアシッドは、半導体性の有機バッファー層に添加されていないことが好ましい。
【0013】
対応するデバイス配置における架橋が、さらなる助剤たとえばフォトアシッドを添加することなく、熱的に、すなわち50〜250℃、好ましくは80〜200℃への温度上昇により誘起できる有機バッファー層がさらに好ましい。
【0014】
フォトアシッドは、化学放射線に露光されたときに光化学反応によりプロトン酸を放出する化合物である。フォトアシッドの例は、たとえばEP1308781に記載されているように、4−(チオフェノキシフェニル)−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートまたは{4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシル]−フェニル}−フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどである。フォトアシッドを架橋反応のために添加してもよく、その場合、先行技術に従ってほぼ0.5からほぼ3重量%の比が好ましくは選択される。
【0015】
本発明のコンテキストにおける電子デバイスは、有機またはポリマー発光ダイオード(OLED、PLED、たとえばEP0676461、WO98/27136)、有機太陽電池(O−SC、たとえばWO98/48433、WO94/05045)、有機電界効果トランジスタ(O−FET、たとえばUS5705826、US5596208、WO00/42668)、電界クエンチ素子(FQD、たとえばUS2004/017148)、有機回路素子(O−IC、たとえばWO95/31833、WO99/10939)、有機光増幅器または有機レーザーダイオード(O−レーザー、WO98/03566)である。本発明のコンテキストにおける有機とは、少なくとも1層の有機の導電性のドープされたポリマー、少なくとも1つの導電性または半導体性の有機バッファー層および少なくとも1種の有機半導体を含む少なくとも1層が存在することを意味する。さらなる有機層(たとえば電極)がこれらに加えて存在していてもよい。さらに、有機材料をベースとしない層、たとえば無機中間層または電極が存在していてもよい。
【0016】
最も単純な場合には、電子デバイスは、基板(通常はガラスまたはプラスチックシート)、電極、導電性のドープされたポリマーからなる中間層、本発明による架橋可能なバッファー層、有機半導体および背面電極から構築される。このデバイスは、相応に(用途に応じて)構造化され、コンタクト形成され、気密シールされる。というのは、このようなデバイスの寿命は、水および/または空気の存在下で劇的に短くなるからである。一方または両方の電極の電極材料として導電性のドープされたポリマーを用い、導電性のドープされたポリマーからなる中間層を導入しないことも好ましいであろう。O−FETの用途のためには、電極および背面電極(ソースおよびドレン)に加えて、構造が、一般的に高い誘電定数を有する絶縁層により有機半導体から分離されるさらなる電極(ゲート)をも含むことがさらに必要である。さらに、デバイスにさらに他の層を導入することも有効であろう。
【0017】
電極は、最大限に効率的な電子または正孔注入を確実にするために、それらの電位が隣接する有機層の電位と可能な限り良好に一致するように選択される。カソードが、たとえばOLED/PLEDまたはn型導電性O−FETにおける場合のように電子を注入するものであるか、またはたとえばO−SCにおける場合のように正孔を受容するものであるならば、低い仕事関数を有する金属、金属合金、または異なる金属たとえばアルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属またはランタノイド(たとえばCa、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)を含む多層構造がカソードにとって好ましい。多層構造の場合には、上述した金属に加えて、たとえばAgのような比較的高い仕事関数を有する他の金属を使用することもでき、その場合には金属の組み合わせたとえばCa/AgまたはBa/Agが一般的に用いられる。カソードは、通常、10ないし10,000nm、好ましくは20ないし1000nmの厚さである。金属カソードと有機半導体(または任意に存在していてもよい他の機能性有機層)との間に高い誘電定数を有する材料からなる中間層を導入することも好ましいであろう。このためには、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物、あるいは対応する酸化物が好適であろう(たとえば、LiF、Li2O、BaF2、MgO、NaFなど)。この誘電層の層厚は、好ましくは1ないし10nmである。
【0018】
アノードで正孔を注入する(たとえばOLED/PLED、p型導電性O−FETにおけるように)かまたは電子を受容する(たとえばO−SCのように)場合、高い仕事関数を有する材料がアノードにとって好ましい。アノードは好ましくは、真空に対して4.5eVを超える電位を有する。一方、高い酸化還元電位を有する金属、たとえば、Ag、PtまたはAuがこれに好適である。金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiOx、Al/Pt/PtOx)も好ましいであろう。アノードは、導電性の有機材料(たとえば導電性のドープされたポリマー)からなっていてもよい。
【0019】
一部の用途については、電極の少なくとも一方は、有機材料の照射(O−SC)または光の出力(OLED/PLED、O−レーザー、有機光増幅器)を可能とするために透明でなければならない。好ましい構造は透明なアノードを用いる。ここで、好ましいアノード材料は、導電性の混合金属酸化物である。インジウム−錫酸化物(ITO)またはインジウム−亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。導電性のドープされた有機材料、特に導電性のドープされたポリマーはさらに好ましい。同様の構造は、光がカソードから出力されるかまたはカソードに入射する反転構造にも当てはまる。このときカソードは好ましくは上述した材料からなるが、金属が極めて薄く、したがって透明であるという違いがある。カソードの層厚は、好ましくは50nm未満、特に好ましくは30nm未満、特に10nm未満である。さらなる透明な導電材料、たとえば、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)などをその上に付ける。
【0020】
様々な有機のドープされた導電性ポリマーが導、電性のドープされたポリマーにとって好適であろう(電極として、追加の電荷注入層として、または電極の凹凸を補償しることにより短絡を最小限にするための「平坦化層」として)。用途に応じて>10-8S/cmの導電性を有するポリマーがここでは好ましい。本発明の好ましい実施形態において、導電性のドープされたポリマーは、アノード上に塗布されるか、またはアノードとして直接機能する。ここでは、この層の電位は、好ましくは真空に対して4から6eVである。この層の厚さは、好ましくは10ないし500nm、特に好ましくは20ないし250nmである。導電性のドープされたポリマーそれ自体が電極であるならば、良好な外部への電気的接続と低い容量インピーダンスを保証するために、これらの層は一般的により厚い。特に好ましく用いられるのは、ポリチオフェンの誘導体(特に好ましくはポリ(エチレンジオキシチオフェン)、PEDOT)およびポリアニリン(PANI)である。ドーピングは一般的に酸または酸化剤を用いて行われる。ドーピングは好ましくはポリマーに結合したブレンステッド酸を用いて行われる。このためには、一般的にポリマーに結合したスルホン酸、特にポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)およびPAMPSA(ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸))が特に好ましい。導電性ポリマーは一般的に水溶液または分散液から塗布され、有機溶媒には不溶である。これによって、次の層が有機溶媒から容易に塗布できる。
【0021】
低分子量オリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの半導体材料が、原理的に有機半導体に適している。本発明のコンテキストにおける有機材料は、純粋な有機材料のみならず、有機金属材料および有機リガンドを有する金属配位化合物も意味することが意図される。オリゴマー、デンドリマーまたはポリマー材料は、共役していても非共役でも部分的に共役していてもよい。本発明のコンテキストにおける共役ポリマーは、主鎖(対応するヘテロ原子により置換されていてもよい)中に主にsp2−混成炭素原子を含むポリマーである。最も単純な場合には、このことは、主鎖中における二重結合と単結合の交互の存在を意味する。主にとは、共役の中断をもたらす自然発生の欠陥が、「共役ポリマー」という用語を無効にしないことを意味する。さらに、共役という用語は、同様に本出願のテキストにおいて、主鎖がたとえばアリールアミン単位および/または特定のヘテロ環(すなわち、N、OまたはS原子を介しての共役)および/または有機金属錯体(すなわち金属原子を介しての共役)を含む場合に当てはまる。しかし、たとえば単純なアルケン鎖、(チオ)エーテル橋、エステル、アミドまたはイミド結合のような単位は、明白に非共役セグメントとして定義されるであろう。さらに、共役有機材料という用語は、有機側鎖を有し、したがって有機溶媒から塗布できる、σ−共役ポリシラン、σ−共役ゲルミレンおよび類似体たとえばポリ(フェニルメチルシラン)を含むことも意図している。非共役材料は、長い共役単位が主鎖またはデンドリマーバックボーン中に存在しない材料である。部分的に共役した材料という用語は、主鎖またはデンドリマーバックボーン中に長い共役単位を有しそれが非共役単位により橋渡しされているか、または側鎖に長い共役単位を含む材料を意味することを意図している。たとえば、PLEDまたはO−SCに用いられるであろう共役ポリマーの典型例は、ポリ−パラ−フェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレンまたは最も広い意味でポリ−p−フェニレン(PPP)およびこれらの構造の誘導体をベースとする系である。高い電荷担体移動度を有する材料は、O−FETに用いるのに主に興味がある。これらは、たとえばオリゴまたはポリ(トリアリールアミン)、オリゴまたはポリ(チオフェン)および大きな比率のこれらの単位を含むコポリマーである。
【0022】
有機半導体の層厚は、用途に応じて、好ましくは10〜500nm、特に好ましくは20〜250nmである。
【0023】
ここで、デンドリマーという用語は、多官能性コアに枝分れしたモノマーが規則的な構造で結合したものから構成され、その結果として樹状構造が得られている、高度に枝分れした化合物を意味することを意図している。コアとモノマーの両方が、純粋な有機単位と有機金属化合物または配位化合物の両方からなる、任意の分枝構造を想定できる。ここでは、デンドリマーを、たとえばM.Fischer,F.Voegtle,Angew.Chem.Int.Ed.1999,38,885〜905に記載されているように理解すべきである。
【0024】
上記の複数の有機半導体を互いに溶液から塗布することが可能になるように(このことは、多くの光電子用途(たとえばPLED)にとって好都合である)、架橋可能な有機層が開発されてきた(WO02/10129)。架橋反応後には、これらは不溶であり、したがって、もはやさらなる層の塗布の間に溶媒により攻撃されることがない。架橋可能な有機半導体は、マルチカラーのPLEDの構造化のためにも利点を有する。このため、架橋可能な有機半導体の使用はさらに好ましい。好ましい架橋反応は、電子リッチのオレフィン誘導体、ヘテロ原子、またはヘテロ基、またはヘテロ原子(たとえばO、S、N、P、Siなど)をもつ環を有するヘテロ核多重結合に基づくカチオン重合である。特に好ましい架橋反応は、ヘテロ原子をもつ環に基づくカチオン重合である。このような架橋反応は、本発明によるバッファー層について以下に詳細に記載している。
【0025】
化学的に架橋できる半導体性の発光ポリマーは、一般的にWO96/20253において開示される。WO02/10129に記載されているように、オキセタン含有半導体ポリマーは特に好適であることがわかっている。これらは、フォトアッシッドの添加と照射により、計画的かつ制御された仕方で架橋できる。架橋可能な低分子量化合物、たとえばカチオン架橋可能なトリアリールアミンはさらに好適であろう(M.S.ベイヤーら、Macromol.Rapid Commun.1999,20,224〜228、D.C.ミュラーら、ChemPhysChem2000,207〜211)。これらの記載は参照により本発明に組み込まれている。
【0026】
特定の理論によって拘束されることを望むわけではないが、我々は、導電性のドープされたポリマーに含まれる水素原子または他のカチオン性不純物は、カチオン架橋可能な半導体がその上に塗布されたとき、すでにカチオン重合を開始でき、したがって後者を構造化することを不可能にすると思っている。しかし、導電性のドープされたポリマー上のカチオン架橋可能ではない有機半導体の層でさえ問題がある。というのは、不純物とそれらのドープされたポリマーからの拡散が、電子デバイスの寿命を制限しそうなためである。さらに、ドープされたポリマーから有機半導体への正孔注入はしばしば不満足である。
【0027】
したがって、本発明によれば、導電性のドープされたポリマーと有機半導体との間に導入され、カチオン架橋可能な単位を有するバッファー層の導入が、導電性のドープされたポリマーから拡散するかもしれない低分子量カチオン種および内在的なカチオン電荷担体を吸収できるようになる。架橋前には、バッファー層は低分子量かつオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーでありうる。層厚は、好ましくは5〜300nmの範囲、特に好ましくは10〜200nmの範囲にある。層の電位は、好ましくは導電性のドープされたポリマーの電位と有機半導体の電位との間にある。このことは、バッファー層の材料の好適な選択および材料の好適な置換により達成できる。
【0028】
バッファー層のための好ましい材料は、正孔伝導性の材料、たとえば他の用途において正孔伝導体として用いられるものから得られる。このためには、カチオン架橋可能な、トリアリールアミン系、チオフェン系またはトリアリールホスフィン系の材料またはこれらの系の組み合わせが特に好ましい。高い比率のこれらの正孔伝導性の単位を有する、他のモノマー単位、たとえばフルオレン、スピロビフルオレンなどとのコポリマーも好適である。これらの化合物の電位は、好適な置換により調節できる。たとえば電子吸引性置換基(たとえばF、Cl、CNなど)の導入により、低いHOMO(=最高被占分子軌道)を有する化合物を達成することが可能であり、一方、高いHOMOを電子供与性置換基(たとえばアルコキシ基、アミノ基など)の導入により達成できる。
【0029】
本発明によるバッファー層は、層中で架橋し、そうして不溶になる低分子量化合物を含んでいてもよい。続くカチオン架橋により不溶になるオリゴマー、デンドリマーまたはポリマー可溶溶液も好適であろう。さらに低分子量化合物とオリゴマー、デンドリマーおよび/またはポリマー化合物との混合物を用いてもよい。本発明において特別の理論によって拘束されることを望むわけではないが、導電性のドープされたポリマーから拡散することがあるカチオン種は、第1に用いられるドーパント(しばしばポリマーが結合するスルホン酸)に由来するであろうプロトンであるが、それのみならず偏在する水もある。カチオン種たとえば金属イオンも、導電性ポリマー中の(望ましくない)不純物として存在するであろう。カチオン種の別のありそうな供給源は、その上に導電性ポリマーが塗布される電極である。たとえば、インジウムイオンはITO電極から出て、デバイスの活性層に拡散するであろう。存在するかもしれない他の低分子量カチオン種は、導電性ポリマーのモノマーおよびオリゴマーの構成成分であり、これらはプロトン化または他のドーピングによりカチオン状態に変換される。さらに、酸化剤ドーピングにより導入された電荷担体が、半導体層に拡散することがありうる。カチオン架橋可能なバッファー層は拡散するカチオン種を捕捉でき、続いて架橋反応を開始するようになる。他方、バッファー層は同時に不溶になり、その結果、次の通常の有機溶媒からの有機半導体の塗布が問題を引き起こすことがなくなる。架橋したバッファー層は、拡散に対するさらなるバリアになる。
【0030】
バッファー層の好ましいカチオン重合可能な基は以下の官能基である。
【0031】
1)電子リッチのオレフィン誘導体、
2)ヘテロ原子またはヘテロ基を有するヘテロ核多重結合、または
3)ヘテロ原子(たとえばO、S、N、P、Siなど)を有する環。これらはカチオン開環重合によって反応する。
【0032】
カチオン開環重合によって反応する少なくとも1つの置換基を有する有機材料が好ましい。カチオン開環重合の一般的概説は、たとえば、E.J.ゲータルズら「カチオン開環重合」(New Methods Polym.Synth.1992,67〜109)によって示されている。このために、1以上の環原子が同一または異なってO、S、N、P、Siなどである非芳香族環構造が一般的に好適である。
【0033】
3個から7個の環原子を有し、そのうち1から3個の環原子が同一または異なりO、SまたはNである環構造が好ましい。そのような系の例は、置換されていないか置換されている、環状アミン(たとえばアジリジン、アゼチシン、テトラヒドロピロール、ピペリジン)、環状エーテル(たとえばオキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン)、ならびに対応する硫黄誘導体、環状アセタール(たとえば、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、トリオキサン)、ラクトン、環状カーボネート、のみならず環中に異なるヘテロ原子を含む環構造、たとえばオキサゾリン、ジヒドロオキサジンまたはオキサゾロンである。さらに、4個から8個の環原子を有する環状シロキサンが好ましい。
【0034】
特により好ましいのは、少なくとも1つのH原子が式(I)、(II)または(III)からなる基により置換された、低分子量オリゴマーまたはポリマーの有機材料である。
【化2】

【0035】
式中、
1はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数のR1基は互いにまたはR2、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成してもよく、
2はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数のR2基は互いにまたはR1、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、
Xはそれぞれの場合に、同一または異なり、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−O−CO−または二価の−(CR34n−基であり、
Zはそれぞれの場合に、同一または異なり、二価の−(CR34n−基であり、
3、R4はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1個以上の水素原子はハロゲンたとえばClもしくはF、またはCNで置換されていてもよく;2以上のR3またはR4基は互いにまたはR1、R2とともに環構造を形成していてもよく、
nはそれぞれの場合に同一または異なり、0ないし20、好ましくは1ないし10、特に1ないし6の整数であり;
ただし、式(I)および/または式(II)および/または式(III)によるこれらの基の数は最大限に利用可能な、すなわち置換可能なH原子によって制限される。
【0036】
これらの単位の架橋は、好ましくは、この段階でのデバイスの熱処理により行われる。架橋のためにフォトアシッドを添加することは必要ではなく好ましくさえない。というのは、このことはデバイスに不純物を導入するためである。特定の理論によって拘束されることを望むわけではないが、我々は、バッファー層の架橋が導電性のドープされたポリマーから出るプロトンにより開始されると思っている。この架橋は、好ましくは、不活性雰囲気中において、80から200℃の温度で、0.1から120分、好ましくは1から60分、特に好ましくは1から10分の期間のあいだ行われる。この架橋は、特に好ましくは、不活性雰囲気中において、100から180℃の温度で、20から40分の期間のあいだ行われる。架橋にとって、フォトアシッドではなく、架橋を促進できるさらなる助剤をバッファー層に添加することも好都合であろう。このために、たとえば、架橋を改善するための支持電解質として添加される塩、特に無機塩たとえばテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、酸、特に有機酸たとえば酢酸、もしくは導電性ポリマーへのポリスチレンスルホン酸のさらなる添加、または酸化性物質たとえばニトリリウムもしくはニトロシリウム塩(NO+、NO2+)も好適であろう。架橋を行った後、これらの助剤は容易に洗い出すことができ、したがってフィルム中に汚染物質として残留しない。助剤は、それによって架橋がより容易に完全に行われ、それによってより厚いバッファー層も作ることができるという利点を有する。
【0037】
デバイスの製造のためには、以下の一般的方法(これはさらなる進歩性なしに特定の場合に適切に合わせることができる)が一般的に用いられる。
【0038】
・基板(たとえばガラスまたはプラスチック)をアノード(たとえばインジウム−錫酸化物ITOなど)でコートする。続いて、意図した用途に応じて、アノードを(たとえばフォトリソグラフィーにより)構造化し相互接続する。この場合、基板全体と対応する相互接続を最初に非常に手の込んだプロセスを用いて作り、いわゆるアクティブマトリックスコントロールを容易にするようにしてもよい。アノードでコートされた予備洗浄した基板を、オゾン、酸素プラズマ、またはエクシマランプに短時間露光することにより処理する。
【0039】
・続いて、導電性ポリマー、たとえばドープされたポリチオフェン誘導体(PEDOT)またはポリアニリン誘導体(PANI)を、スピンコーティングまたは他のコーティング法により、ITO基板上に通常は10ないし500nm、好ましくは20ないし300nmの層厚で塗布して薄層にする。
【0040】
・本発明によるカチオン架橋可能なバッファー層を、この層の上に塗布する。この目的のために、対応する化合物をまず溶媒または溶媒混合物に溶解してろ過する。有機半導体とりわけ層の表面はときに酸素または他の空気構成成分により著しく影響を受けるので、この操作を保護ガス下で行うことを推奨する。芳香族液体、たとえば、トルエン、キシレン、アニゾール、クロロベンゼンなど、たとえば環状エーテル(たとえば、ジオキサン、メチルジオキサン、THF)、ならびにアミド、たとえばNMPまたはDMFのみならず、出願テキストWO02/072714に記載されているような溶媒混合物が、芳香族化合物のための溶媒として好適である。他の有機溶媒(これらは用いられる化合物クラスの関数として選択される)も低分子量化合物にとって好適である。これらの溶液を用いて、前もってコートした支持体を、たとえばスピンコーティング法、フローまたはウエーブコーティングまたはドクターブレード法により、表面全体にわたってコートまたはカバーすることができる。バッファー層の架橋を、この段階で不活性雰囲気中においてデバイスを加熱することにより行ってもよい。ここで、フォトアシッドを添加することは必要ではなく、望ましくさえない。ドープされたポリマー上のバッファー層の熱処理が、架橋反応を行うためには十分である。続いて、任意に、これを溶媒たとえばTHFで洗い流してもよい。その後、任意にこれを乾燥する。
【0041】
・その後、有機半導体の溶液を塗布する。半導体の選択は、意図した用途に依存する。架橋可能な有機半導体が用いる場合、意図した用途に応じて、制御された架橋により、これを構造化してもよい。たとえば、カチオン架橋可能な半導体の場合、フォトアシッドの添加、シャドウマスクを通しての露光および続いての熱処理により、これを行ってもよい。下にあるバッファー層が酸性ではないので、ここではフォトアシッドの使用を除外すべきではない。続いて、半導体の架橋していない部分を、半導体が可溶な有機溶媒を用いて洗浄してもよい。このプロセスは、異なる材料について繰り返し、構造化された仕方で複数の材料を連続的に塗布することができる。たとえば、異なる発光色を有する電界発光ポリマーをフルカラーのディスプレーのために構造化された仕方で連続的に塗布してもよいし、異なる機能を有する有機電界効果トランジスタを有機回路のために連続的に塗布してもよい。複数の架橋可能な層を互いの上に塗布することもできる。
【0042】
・任意に、さらなる機能層たとえば電荷注入層または電荷輸送層、さらなる発光層および/または正孔阻止層を、たとえばバッファー層について記載したような方法により溶液からのみならず蒸着により、これらのポリマー層上に塗布してもよい。
【0043】
・続いてカソードを付ける。これは先行技術にしたがって真空プロセスにより行われ、たとえば、熱蒸着またはプラズマスプレー(スパッタリング)により行われるであろう。カソードは、表面全体にわたって付けてよいし、マスクを用いて付け、それを構造化するようにしてもよい。その後、電極のコンタクト形成を行う。
【0044】
・多くの用途は、水、水素または大気の他の成分に対して敏感に反応するので、デバイスの効果的な封止が必須である。
【0045】
・上述した構造を個々の用途に相応して適合させ、一般的に様々な用途、たとえば有機およびポリマー発光ダイオード、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機回路素子、有機光増幅器または有機レーザーダイオードに用いることができる。
【0046】
驚くべきことに、導電性のドープされたポリマーと有機半導体との間に導入されるこの架橋可能なバッファー層は以下の利点を提供する。
【0047】
1)本発明による架橋可能なバッファー層の導入は、このようなバッファー層を含まないデバイスと比較して、電子デバイスの光電子特性を改善する。たとえば、低い作動電圧で、高い効率と長い寿命が認められる。この効果は、バッファー層の架橋を熱的に開始した場合に、特に顕著であることがわかる。文献に記載されているように架橋のためにフォトアシッドをバッファー層に添加した場合、寿命は実質的に変化しないままである。
【0048】
2)おそらくバッファー層は導電性のドープされたポリマーから出るカチオン種を捕捉するので、これらが有機半導体に拡散することが防止される。有機半導体がカチオン架橋可能な化合物であれば、それによって半導体の望ましくない架橋が回避される。このことは半導体の制御された構造化をはじめて可能にする。これは、このような方法では、以前には可能でなかった。
【0049】
本発明を以下の例により、さらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定することを意味しない。これらの例では、有機およびポリマー発光ダイオードのみを議論する。しかし、当業者であれば進歩性なしに、示した例に基づいて他の電子デバイスたとえばO−SC、O−FET、O−IC、光増幅器およびO−レーザーを製造することができ、多くのさらなる用途に言及することができるであろう。
【0050】

例1:バッファー層として使用されるカチオン架橋可能な化合物P1の合成
a)文献により公知の前駆体の合成
3−エチル−3−(ヨードメチル)オキセタン(WO96/21657)、11−(4−ブロモフェノキシ)−1−ウンデカノール(M.トロールサーズら、Macromol.Chem.Phys.1996,197,767〜779)およびN,N’−ジフェニルベンジジン(K.ビーヒェルトら、Zeitschrift Chem.1975,15,49〜50)を文献に従って合成した。
【0051】
b)N,N’−ビス−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス−(4−tert−ブチルフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン(モノマーM1)の合成
【化3】

【0052】
モノマーM1の合成は、WO02/077060に記載されている。
【0053】
c)N,N’−ビス−(4−ピナコールボロネート)フェニル−N,N’−ビス−(4−tert−ブチルフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン(モノマーM2)の合成
【化4】

【0054】
モノマーM2の合成は、まだ公開されていない出願DE10337077.3に記載されている。
【0055】
d)3−(11−(4−ブロモフェノキシ)−ウンデカン−1−オキシ)メチレン−3−エチル−オキセタンの合成
【化5】

【0056】
1.6g(30mmol)のNaHを70mlの乾燥DMF中に懸濁し、保護ガス下で攪拌した。6.8g(20mmol)の11−(4−ブロモフェノキシ)−1−ウンデカノールを25mlのDMFに入れた溶液を40℃でこれに加えた。1時間後、2.96g(22mmol)の3−エチル−3−(ヨードメチル)オキセタンおよび0.166g(1.0mmol)のKIを加え、40℃で24時間攪拌した。室温まで冷却した後、200mlの水と200mlのCH2Cl2を反応混合物に加え、有機相を分離し、Mg2SO4によって乾燥し、溶媒を真空中で除去した。生成物をクロマトグラフィーにより精製した(シリカ、溶出剤ヘキサン)。収量は3.2g(89%Th)であり、純度は98%であった(HPLCによる)。
【0057】
1H−NMR(CDCl3,500MHz):1.45(t,J=7.3Hz,3H),1.45(m,14H),1.55(m,2H),1.75(m,4H),3.42(t,J=6.3Hz,2H),3.46(s,2H),3.85(t,J=6.3Hz,2H),4.39(d,J=5.9Hz,2H),4.44(d,J=5.9Hz,2H),6.75(d,J=9Hz,2H),7.35(d,J=9Hz,2H)。
【0058】
e)オキセタン置換されたN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンの合成
【化6】

【0059】
5.1g(9.7mmol)のN,N’−ジフェニルベンジジンおよび14g(21.4mmol)の3−(11−(4−ブロモフェノキシ)−ウンデカン−1−オキシ)メチレン−3−エチル−オキセタンを250mlのトルエンに入れた脱ガス溶液をN2により1時間飽和させた。まず0.12g(0.39mmol)のP(tBu)3、次に69mg(0.19mmol)のPd(OAc)2を溶液に加えた。続いて3.8g(50.4mmol)の固体NaOtBuを加えた。反応混合物を還流下で5時間加熱した。室温まで冷却した後、0.85gのNaCNおよび10mlの水を加えた。有機相を4×50mlのH2Oで洗浄し、MgSO4により乾燥し、溶媒を真空中で除去した。ジオキサンからの再結晶により、純粋な生成物を99.2%の純度(HPLCによる)で得た。収量は12gであった(75%Th.)。
【0060】
1H−NMR(CDCl3,500MHz):0.81(t,J=7.3Hz,6H),1.17(t,J=7.0Hz,12H),1.23−1.35(m,28H),3.94(t,J=6.3Hz,4H),4.03(t,J=6.3Hz,8H),4.21(d,J=5.9Hz,4H),4.29(d,J=5.9Hz,4H),6.91−7.01(m,14H),7.04(d,J=9Hz,4H),7.27(d,J=8Hz,4H),7.49(d,J=8.7Hz,4H)。
【0061】
f)オキセタン−置換された臭化N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン(モノマーM3)の合成
【化7】

【0062】
45.72g(43.7mmol)のオキセタン置換されたN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンを500mlのTHF中で調製した。光を遮断しながら、15.15g(84.4mmol)のNBSを300mlのTHFに入れた溶液を0℃でそれに滴下して加えた。これを室温に戻してさらに4時間攪拌した。500mlの水を加え、混合物をCH2Cl2で抽出した。有機相をMgSO4により乾燥し、溶媒を真空中で除去した。生成物をヘキサンとともに攪拌することにより加熱抽出し、吸引した。クロマトグラフィーによる精製(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル4:1)を繰り返した後、生成物を44g(85%Th.)の収量で青みがかった茶色のオイルとして得た。純度(HPLCによる)は99.2%であった。
【0063】
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz):0.81(t,J=7.3Hz,6H),1.17(t,J=7.0Hz,12H),1.23−1.35(m,28H),3.94(t,J=6.3Hz,4H),4.03(t,J=6.3Hz,8H),4.21(d,J=5.9Hz,4H),4.29(d,J=5.9Hz,4H),6.91−7.02(m,12H),7.04(d,J=9Hz,4H),7.29(d,J=8Hz,4H),7.51(d,J=8.7Hz,4H)。
【0064】
g)ポリマー合成:ポリマーP1の合成
1.7056g(2mmol)のモノマーM2、0.9104g(1.2mmol)のモノマーM1、0.9723g(0.8mmol)のモノマーM3および2.03g(4.4mmol)の水和リン酸カリウムを12.5mlのトルエン、12.5mlのジオキサンおよび12mlの水(すべての溶媒は酸素を含まない)に溶解し、アルゴン流により40℃で30分間脱ガスした。0.90mgのPd(OAc)2および6.30mgのP(o−tol)3を触媒として加え、反応混合物を還流下で3時間加熱した。20mlのトルエンおよびエンドキャップ剤として12mg(0.04mmol)の3,4−ビスペントキシベンゼンホウ酸を加え、還流下で1時間加熱し、その後20mg(0.06mmol)の臭化3,4−ビスペントキシベンゼンを加え、還流下で1時間加熱した。反応溶液を65℃まで冷却し、10mlの5%強度ナトリウムN,N−ジエチルジチオカーバメート水溶液を用いて4時間攪拌することにより抽出した。有機相を3×80mlの水で洗浄し、これを2倍容量のメタノールに加えることにより沈殿させた。未精製ポリマーをクロロベンゼンに溶解し、セライトを用いてろ過し、2倍容量のメタノールを加えることにより沈殿させた。2.24g(78%Th.)のポリマーP1を得た。
【0065】
例2:バッファー層として使用されるカチオン架橋可能なポリマーP2の合成
a)ビス−(4−ブロモフェニル)−(4−secブチルフェニル)−アミン(モノマーM4)の合成
【化8】

【0066】
M4の合成をDE19981010における合成と同様に行った。
【0067】
b)ビス−((4−ピナコールボロネート)フェニル)−(4−secブチルフェニル)−アミン(モノマーM5)の合成
【化9】

【0068】
モノマーM5の合成は、まだ公開されていない出願DE10337077.3に記載されている。
【0069】
c)2,7−ジブロモ−(2,5−ジメチルフェニル)−9−(3,4−ジ(3−エチル(オキセタン−3−エチルオキシ)−ヘキシルオキシフェニル))−フルオレン(モノマーM6)の合成
【化10】

【0070】
モノマーM6の合成は、C.D.ミュラーら、Nature2003,421,829において記載されている。
【0071】
d)ポリマー合成:ポリマーP2の合成
1.4695g(3.2mmol)のモノマーM4、2.2134g(4mmol)のモノマーM5、0.7463g(0.8mmol)のモノマーM6および4.05g(8.8mmol)の水和リン酸カリウムを25mlのトルエン、25mlのジオキサンおよび25mlの水(すべての溶媒は酸素を含まない)に溶解し、アルゴン流中において40℃で30分間脱ガスした。その後1.80mgのPd(OAc)2および14.61gのP(o−tol)3を加え、反応混合物を還流下で10時間加熱した。最初の量のPd(OAc)2およびP(o−tol)3をそれぞれ、4時間後、5.5時間後、および8.5時間後に加えた。2mlのトルエンを8時間の反応時間後に加えた。24mg(0.08mmol)の3,4−ビスペントキシベンゾールホウ酸をエンドキャップ剤として加え、還流下で2時間加熱し、その後40mg(0.12mmol)の臭化3,4−ビスペントキシベンゼンを加え、還流下で1時間加熱した。反応溶液を65℃まで冷却し、その後20mlのナトリウムN,N−ジエチルジチオカーバメートの5%強度水溶液とともに4時間攪拌することにより抽出した。相を分離し、40mlのジチオカーバメート溶液を用いてこのプロセスをもう一度繰り返した。相を分離し、有機相を3×150mlの水で洗浄し、これを2倍容量のメタノールに加えることにより沈殿させた。未精製ポリマーをクロロベンゼンに溶解し、セライトを用いてろ過し、2倍容量のメタノールを加えることにより沈殿させた。1.84g(64%Th.)のポリマーP2を得た。これはクロロベンゼンに可溶であるが、トルエン、THFまたはクロロホルムに不溶である。
【0072】
例3:バッファー層として使用されるカチオン架橋可能な分子V1の合成
【化11】

【0073】
カチオン架橋可能な分子V1の合成は、M.S.ベイヤーら、Macromol.Rapid Commum.1999,20,224〜228に記載されている。
【0074】
バッファー層としてポリマーP1およびP2または分子V1を用いた場合に得られたデバイスの結果を例6〜8にまとめている。
【0075】
例4:追加のバッファー層を有するLEDの製造
LEDを、特定の場合におけるそれぞれの条件(たとえば、溶液粘度およびデバイス中の機能層の最適な層厚)に合わせた一般的な方法に従って製造した。以下に記載するLEDはそれぞれ3層系(3つの有機層)、すなわち基板//ITO//PEDOT//バッファー層//ポリマー//カソードである。PEDOTはポリチオフェン誘導体である(ゴスラーのH.C.StarkからのBayron P4083)。すべての場合に、アルドリッチからのBaおよびアルドリッチからのAgをカソードとして用いた。PLEDを一般的に製造できる方式は、WO04/037887およびその中に引用されている文献に詳細に記載されている。
【0076】
これと対照的に、カチオン架橋可能な半導体を、PEDOT層上のバッファー層として塗布した。ここで、架橋可能なポリマーP1およびP2または架橋可能な低分子量化合物V1をバッファー層の材料として用いた。架橋可能な材料の溶液(たとえば、トルエン、クロロベンゼン、キシレンなどの中で4〜25mg/mlの濃度)を取り、室温で攪拌することにより溶解した。材料に応じて、50〜70℃で何回か攪拌することも好都合であろう。化合物を完全に溶解した後、5μmフィルターを通してろ過した。その後、不活性雰囲気中においてスピンコーターを用いて可変速度(400〜6000rpm)でバッファー層をスピンコートした。こうして、層厚をほぼ20から300nmの範囲で変化させることができた。続いて、不活性雰囲気中においてホットプレート上でデバイスを180℃に30分間加熱することにより架橋を行った。その後、WO04/037887およびその中に引用されている文献に記載されているように、有機半導体およびカソードをバッファー層上に付けた。
【0077】
例5:追加のバッファー層を有する構造化されたLEDの製造
構造化されたLEDを、バッファー層を架橋する工程までとその工程を含んで例4と同様に製造した。これと対照的に、カチオン架橋可能な半導体を有機半導体として用いた。これらは、オキセタン基で官能化されたポリスピロビフルオレンをベースとする赤色、緑色および青色発光の共役ポリマーである。これらの材料およびその合成は、文献(Nature2003,421,829)にすでに記載されている。溶液(一般的に、たとえば、トルエン、クロロベンゼン、キシレン:シクロヘキサノン(4:1)の中で4〜25mg/mlの濃度)を取り、室温で攪拌することにより溶解した。化合物に応じて、50〜70℃で何回か攪拌することも好都合であろう。ほぼ0.5重量%(ポリマーに関して表す)のフォトアシッド{4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシル]−フェニル}−フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを、カチオン架橋可能な半導体の溶液に加えた。その後、第1のカチオン架橋可能な半導体とフォトアシッドの溶液を、バッファー層の場合と同程度の条件下でスピンコーティングにより架橋したバッファー層上に塗布した。フィルムを乾燥した後、マスクを用いたUVランプ(10W、302nm、5min.)への露光により構造化された架橋を行った。その後フィルムを不活性雰囲気中において130℃で3分間熱処理し、続いてTHF中10-4モルLiAlH4溶液で処理し、THFで洗浄した。これによってフィルム中の非架橋部分を洗い流した。このプロセスを、架橋可能な有機半導体の他の溶液を用いて繰り返し、それによって三原色を構造化された仕方で連続的に塗布した。その後、上述したように、電極の蒸着コーティングとコンタクト形成を行った。
【0078】
例6:追加のバッファー層P1を有するLEDの寿命測定
例4に記載したようにLEDを製造した。20nmのPEDOTを用いた。20nm厚のポリマーP1の層をバッファー層として塗布し、例4に記載したようにこれを熱的に架橋した。青色発光ポリマーを半導体ポリマーとして用いた(組成:50mol%モノマーM7、30mol%モノマーM8、10mol%モノマーM1、10%モノマーM9)。モノマーを以下に示す。これらの合成は、WO03/020790に記載されている。電界発光において、このポリマーは室温でほぼ1600時間の寿命(初期輝度の半分までの輝度の減少)と300cd/m2の初期輝度を示す。バッファー層のない比較例のLEDでは、その他は等しい条件下で、このポリマーはほぼ500時間の寿命を示す。また、そのバッファー層を、0.5重量%の{4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシル]−フェニル}−フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを添加し、UV線に露光(3s、302nm)し、続いて90℃に30秒間加熱することにより、光化学的に架橋したLEDも製造した。その後、バッファー層をTHFで洗浄し、180℃に5分間加熱した。その他は等しい条件下で、このLEDは野寿命はほぼ630時間であった。
【化12】

【0079】
例7:追加のバッファー層P2を有するLEDの寿命測定
バッファー層としてポリマーP2を用い、その他は同一の条件下で例6に記載したように測定を繰り返した。このポリマーは、バッファー層へのフォトアシッドの添加なしでほぼ1500時間の寿命を示し、フォトアシッドの添加ありでほぼ600時間の寿命を示す。
【0080】
例8:追加のバッファー層V1を有するLEDの寿命測定
バッファー層として化合物V1を用い、その他は同一の条件下で例6に記載したように測定を繰り返した。このポリマーは、バッファー層へのフォトアシッドの添加なしでほぼ1350時間の寿命を示し、フォトアシッドの添加ありでほぼ550時間の寿命を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の導電性のドープされたポリマーと少なくとも1層の有機半導体とを含む電子デバイスであって、カチオン重合可能であり、0.5%未満のフォトアシッドが添加された、少なくとも1つの導電性または半導体性の有機バッファー層がこれらの層の間に導入されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
フォトアシッドが前記バッファー層に添加されていないことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記有機バッファー層の架橋が熱的に開始されることを特徴とする請求項1および/または2記載の電子デバイス。
【請求項4】
有機またはポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機回路素子(O−IC)、有機電界クエンチデバイス(O−FQD)、有機光増幅器または有機レーザーダイオード(O−レーザー)を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項5】
以下の要素:基板、電極、導電性のドープされたポリマーからなる中間層、導電性または半導体性の有機のカチオン架橋可能なバッファー層、有機半導体層および背面電極を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項6】
高い誘電定数を有する材料からなる中間層が金属カソードと有機半導体との間に導入されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項7】
真空に対して4.5eVを超える電位を有するアノード材料を用いたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項8】
導電性のドープされたポリマーが>10-8S/cmの導電性および真空に対して4〜6eVの電位を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項9】
ポリチオフェンまたはポリアニリンの誘導体を導電性ポリマーとして用い、ドーピングをポリマーに結合したブレンステッド酸を介して行うことを特徴とする請求項8記載の電子デバイス。
【請求項10】
低分子量オリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの半導体材料を有機半導体として用いることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項11】
有機半導体が共役ポリマーであることを特徴とする請求項10記載の電子デバイス。
【請求項12】
有機半導体がカチオン架橋可能な化合物であることを特徴とする請求項10および/または11記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記カチオン架橋がヘテロ環の開環カチオン重合を介して起こることを特徴とする請求項12記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記カチオン架橋が、フォトアシッドを添加することによる照射を介して架橋することができるオキセタン基を介して起こることを特徴とする請求項13記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記架橋可能なバッファー層が架橋前に低分子量オリゴマー、デンドリマーまたはポリマーであることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記バッファー層の層厚が5〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記バッファー層の電位が導電性のドープされたポリマーの電位と有機半導体の電位との間にあることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項18】
カチオン架橋可能な正孔伝導性の材料をバッファー層に用いることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項19】
カチオン架橋可能なトリアリールアミン系、チオフェン系またはトリアリールホスフィン系の材料をバッファー層に用いることを特徴とする請求項18記載の電子デバイス。
【請求項20】
少なくとも1つのH原子がカチオン開環重合により反応するヘテロ環基によって置換された材料を、バッファー層の材料として用いたことを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1項記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記カチオン重合可能なヘテロ環が式(I)、(II)または(III)の基
【化1】

(式中、
1はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数のR1基は互いにまたはR2、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成してもよく、
2はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1以上の水素原子はハロゲンたとえばClおよびF、またはCNで置換されていてもよく、1以上の非隣接C原子は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−O−CO−で置換されていてもよく;複数のR2基は互いにまたはR1、R3および/またはR4とともに単環式または多環式の脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、
Xはそれぞれの場合に、同一または異なり、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−O−CO−または二価の−(CR34n−基であり、
Zはそれぞれの場合に、同一または異なり、二価の−(CR34n−基であり、
3、R4はそれぞれの場合に、同一または異なり、水素、1個から20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルもしくはチオアルコキシ基、4個から24個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族の環構造、または2個から10個のC原子を有するアルケニル基であり、ここで、1個以上の水素原子はハロゲンたとえばClもしくはF、またはCNで置換されていてもよく;2以上のR3またはR4基は互いにまたはR1、R2とともに環構造を形成していてもよく、
nは、それぞれの場合に同一または異なり、0ないし20の整数であり;
ただし、式(I)および/または式(II)および/または式(III)によるこれらの基の数は最大限に利用可能な、すなわち置換可能なH原子によって制限される。)
であることを特徴とする請求項20記載の電子デバイス。
【請求項22】
これらの単位の架橋がデバイスの熱処理により行われることを特徴とする請求項21記載の電子デバイス。
【請求項23】
架橋が不活性雰囲気中において80から200℃の温度で0.1から120分の期間のあいだ起こることを特徴とする請求項22記載の電子デバイス。

【公表番号】特表2007−504656(P2007−504656A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525128(P2006−525128)
【出願日】平成16年9月4日(2004.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009902
【国際公開番号】WO2005/024970
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】