説明

有機半導体デバイス、これを用いた光ヘッドおよび画像形成装置

【課題】簡易な封止工程を用いて、水分やガスに対して十分なバリア性を確保することの可能な有機半導体デバイスを提供する。
【解決手段】ガラス基板上に形成した有機半導体素子を金属材で封止した有機半導体デバイスであって、前記金属材は、可撓性の金属材料であり、前記ガラス基板に接着剤を介して固着されたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機半導体デバイス、これを用いた光ヘッドおよび画像形成装置に係り、特に発光素子をライン状に配置して発光素子列を形成した光ヘッドに用いられる有機発光デバイスの封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子は固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスであり、小型のディスプレイとして一部で実用化されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセント素子は発光層に用いられる材料によって、いくつかのグループに分類することが出来る。代表的なもののひとつは発光層に低分子量の有機化合物を用いる低分子有機エレクトロルミネッセント素子で、主に真空蒸着を用いて作製される。そして今一つは発光層に高分子化合物を用いる高分子有機エレクトロルミネッセント素子である。
【0004】
高分子有機エレクトロルミネッセント素子は各機能層を構成する材料を溶解した溶液を用いることでスピンコート法やインクジェット法、印刷法等による成膜が可能であり、その簡便なプロセスから低コスト化や大面積化が期待できる技術として注目されている。
【0005】
典型的な高分子有機EL素子は陽極および陰極の間に電荷注入層、発光層等の複数の機能層を積層することで作製される。以下に代表的な高分子有機EL素子の構成およびその作製手順を説明する。
【0006】
まず陽極としてのITO(インジウム錫酸化物)を成膜したガラス基板上に電荷注入層としてのPEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物:以下PEDOTと記載する)薄膜をスピンコートなどによって成膜する。PEDOTは電荷注入層として事実上の標準となっている材料であり、陽極側に配置されることでホール注入層として機能する。
【0007】
PEDOT層の上に発光層としてポリフェニレンビニレン(以下PPVと表す)およびその誘導体、またはポリフルオレンおよびそれらの誘導体がスピンコート法などによって成膜される。そしてこれら発光層上に真空蒸着によって陰極としての金属電極が成膜され素子が完成する。
【0008】
このように高分子有機エレクトロルミネッセント素子は簡易なプロセスで作製することが出来るという優れた特徴を備えており、様々な用途への応用が期待されているが、十分に大きな発光強度を得ることが出来ない点、および長時間駆動に際しては、寿命が十分でない点が改善すべき課題となっている。
特に、露光ヘッドなどにおいて露光用光源として用いられる場合には、高輝度特性が求められており、画素領域、画素面積および画素内の発光特性の制御性においても、更なる制御性の向上を求めて鋭意研究がなされている。
【0009】
ところでこのような有機エレクトロルミネッセンス素子は、周りを、バスタブ形状を有するガラスによって構成される封止部で被覆している。封止部は少なくとも有機エレクトロルミネッセンス素子の全面を覆うように設けられ、その外周部はガラス基板などに接着剤を用いて接着されている。後述するように発光層を低分子の有機材料層で構成した有機エレクトロルミネッセンス素子は、高温を嫌うことや熱硬化型の接着剤は長い硬化時間が必要であるため、一般的には接着剤として例えば紫外線を照射することで硬化する光硬化樹脂が多用されている。
【0010】
上記構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極をプラス極として、また陰極をマイナス極として図示しない電気回路を介して直流電圧又は直流電流を印加すると、陽極から正孔輸送層を介して有機材料層に正孔が注入され、陰極から有機材料層に電子が注入される。この結果、陽極と陰極とに挟まれた発光層を構成する有機材料層では正孔と電子の再結合が生じ、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起こる。(このように少なくとも陽極と陰極に挟まれ、実質的に発光に寄与する部分を以降「発光部」と呼称する。)
【0011】
このように、有機エレクトロルミネッセンス素子は非常に簡易な構造を有しており、大量生産が可能であり低コスト化やディスプレイなどの表示装置の大面積化が期待できる技術として注目されている。
【0012】
しかしその一方で有機エレクトロルミネッセンス素子の有する課題の一つとして、水分の影響を受けると発光領域が経時的に収縮(シュリンキング)したり、発光領域内に非発光部位(ダークスポット)が生じることが知られている。シュリンキングやダークスポットの発生や拡大を防止するためには、有機エレクトロルミネッセンス素子を低湿度状態に保つことが必要であり、前述のごとく有機エレクトロルミネッセンス素子をガラスなどの封止部により封止し、封止領域の内部空間を減圧あるいは加圧状態にしたり、低湿度の不活性ガスを充填するなどの方法が用いられている。また封止効果をより一層高めるために、上述したようなガラス体で覆われることによって形成されたバスタブ状の空間に乾燥剤を設ける、あるいは接着材中に吸着作用を有する材料を混在させるような場合もある。
【0013】
さて最近では例えば樹脂からなる有機物層と金属酸化物などからなる無機物層を積層構造とした、いわゆるガスバリア性積層材を有機エレクトロルミネッセンス素子の封止部として用いる研究開発も行なわれている。このようなガスバリア性積層材の例としては、特許文献1に開示される製造方法が知られている。特許文献1では「(前略)無機膜、有機膜の単体層または有機膜/無機膜ガスバリア層の積層化などに多くの検討がなされてきたが、それだけでは決して満足のいくガスバリア性を発現させることはできなかった。」としてフィルムなどの基材上に金属酸化膜または金属窒化膜または金属膜を設け、その上に熱硬化性樹脂からなる有機層を積層し、更にこの有機層の上に第2の金属酸化膜または金属窒化膜または金属膜を設けたガスバリア性積層材において、中間層である有機層を積層した直後に120℃〜180℃の範囲で第1の硬化を行い、第2の金属酸化膜または金属窒化膜または金属膜を設けた後に180℃〜240℃の範囲で第2の熱硬化を行なうものであり、これによって無機膜、有機膜の単体層または有機膜/無機膜ガスバリア層の積層化などでは発現が困難であったガスバリア性を獲得することができるとしている。
【0014】
また封止技術に関する他のアプローチとして例えば特許文献2に開示される発光装置の製造方法が知られている。特許文献2ではガラス基板と封止部を貼り合わせるための封止接着剤として、熱硬化性(あるいは熱可塑性)を有する樹脂に光熱変換物質(即ち赤外線または近赤外線を吸収する物質)を含有させ、これにレーザ光を照射して封止部を接着すべき部位を局所的に加熱することで、一般に100℃〜120℃の耐熱性しかもたない有機エレクトロルミネッセンス素子にダメージを与えないで封止を行なうことができるとしている。
【0015】
【非特許文献1】タン(C.W.Tang)、ヴァンスリク(S.A.Vanslyke),「アプライドフィジックスレター(Appl.Phys.Lett.)」(米国),第51巻,1987年,p.913
【特許文献1】特開2004−181793号公報
【特許文献2】特開2001−237066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
有機エレクトロルミネッセンス素子はその製造工程が無機デバイスに比べてシンプルであるため、有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した発光素子基板や、有機エレクトロルミネッセンス素子を光源として応用した露光装置などのアプリケーションは低コスト化に有利だと言われている。しかし特許文献1の方法では、その製造工程において、複数の温度管理を有する工程が存在し、これが生産性低下の原因となる。また、このような金属製の缶やガラスなどの剛性材料による封止は、水分や酸素からの遮断効果には優れるが、高さが必要であり、小型化薄型化が困難であった。またガラス製の缶は機械的強度や耐衝撃性が低いため、大型化や薄層化は困難であった。また金属製の缶は前記ガラス製の缶に比べて機械的強度や耐衝撃性には優れるが、基板との熱膨張率差が大きく、大型化は極めて困難であった。
また、特許文献2の製造方法も、レーザ光を用いて局所的な封止を行なうことから、やはり製造設備などが大掛かりとなりコスト的には課題を有している。
【0017】
また有機エレクトロルミネッセンス素子基板などの有機半導体デバイス基板の実際の構成において例えば基板上には有機エレクトロルミネッセンス素子、例えばTFTによって構成される駆動回路、引き回し配線などが形成、配置され、封止部はこれらの構造物を被覆することとなり、封止体としては大型化の傾向にある。
【0018】
このため、いわゆるガスバリア性などの封止性能は接着の対象となる構造物の表面状態に大きく左右されるため、いずれの有機半導体デバイスを構成するどの部分に封止部の外周が接して接着されるかは確実に封止を行なうための重要な要素である。
【0019】
このような状況の中で、樹脂フィルムを用いて封止を行うと、ガラス製あるいは金属性の缶に比べて高さを低くすることができるが、水分や酸素などの腐食性物質に対する封止遮断性能が十分ではなく、実用上は問題であった。
【0020】
一方、封止部材として金属を用いようとすると、金属の熱膨張率はガラス基板に比べて大きいため、熱膨張率の差に起因してガラス基板にクラックが生じたり、封止部で剥離が生じたりするという問題があった。
【0021】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、簡易な封止工程を用いて、水分やガスに対して十分なバリア性を確保することの可能な有機半導体デバイスを提供することを目的とする。
また、このような有機半導体デバイスを用いて長寿命、高画質の画像を得ることのできる光ヘッドおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで本発明は、基板上に形成した有機半導体素子を金属材で封止した有機半導体デバイスであって、前記金属材は、可撓性の金属材料であり、前記基板に接着剤を介して固着されたことを特徴とする。
この構成によれば、金属材が可撓性を有するため、使用環境に温度変化がある場合にも、クラックの進行は、抑制され、素子部の保護を図ることが可能となる。また、接着剤の緩衝効果も加わり、より保護性が高められている。
【0023】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材は、熱膨張係数が、10−5以下であるものを含む。
この構成により、基材であるガラスに近い熱膨張特性とすることによって、熱歪をより小さく抑えることができ、封止部とガラス基板との密着性の向上をはかることができる。
【0024】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材は、膜厚が0.3mm以下であるものを含む。
この構成により、金属材の熱による体積変化を十分に吸収できる可撓性を確保することが出来るので、熱歪をより小さく抑えることができ、封止部とガラス基板との密着性の向上をはかることができる。鉄やニッケルの場合は、アルミニウムに比べて若干薄い方がよいが、0.3mm以下であれば、熱歪を抑えることができる。
【0025】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材は、樹脂層との積層体であるものを含む。
この構成により、封止部自体の防湿性と絶縁性、さらに材料の耐食性を高めることができる。
【0026】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記接着剤は、前記基板上に前記有機半導体素子を囲むように形成され、前記接着剤の形成された領域でのみ、前記基板に固着されたものを含む。
この構成により、接着剤が緩衝材として作用するため、クラックの発生を防止することができる。
【0027】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記基板はガラス基板であり、前記ガラス基板上に前記有機半導体素子を囲むように形成された接着剤を具備し、前記金属材は、前記接着剤を介して、前記接着剤の形成された領域でのみ、前記ガラス基板に固着されたものを含む。
【0028】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材がニッケルまたはニッケル合金であるものを含む。
【0029】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材が鉄または鉄合金であるものを含む。
【0030】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材がニッケル鉄クロム合金であるものを含む。
【0031】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記樹脂層は、前記金属材上に形成された塗布膜であるものを含む。
【0032】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記有機半導体素子は、封止用樹脂で被覆され、前記封止用樹脂の外側に金属材が配されたものを含む。
【0033】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記有機半導体素子は、前記ガラス基板上に形成され、第1および第2の電極とこれらの間に介在せしめられた発光機能を有した層を含む機能層とを備えた有機エレクトロルミネッセント素子であるものを含む。
【0034】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記ガラス基板上に形成された光量検出素子と、前記光量検出素子上に積層された有機エレクトロルミネッセント素子とを備えたものを含む。
【0035】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、有機エレクトロルミネッセント素子と、前記有機エレクトロルミネッセント素子から出力される光を検出する光量検出回路とを具備し、前記光量検出回路が、光検出素子と、前記光検出素子に並列接続された容量素子と、前記容量素子に接続され、前記容量素子の読み出しを制御するスイッチング用の薄膜トランジスタとを備え、前記有機エレクトロルミネッセント素子の光量を検出するように構成されており、少なくとも前記光検出素子および前記有機エレクトロルミネッセント素子が前記金属材で封止され、光ヘッドを構成するものを含む。
【0036】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記有機エレクトロルミネッセント素子は、前記ガラス基板の端面から所定の間隔を隔てた位置にライン状に形成されたものを含む。
【0037】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記ガラス基板は前記有機エレクトロルミネッセント素子の素子列の両端に、前記金属材から露呈する領域を具備し、前記領域に検査用端子が配設されたものを含む。
【0038】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記素子列は前記素子列の両端側からジャンパー線を介して給電されるように構成されたものを含む。
【0039】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記ガラス基板の一辺に相対向する一辺側の前記金属材から露呈する領域に、前記発光素子を駆動するための駆動用ICチップが搭載されたものを含む。
【0040】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスで構成された光ヘッドを構成する。
【0041】
また、本発明は、上記光ヘッドを像形成用の露光手段として用いた画像形成装置を構成する。
【0042】
また本発明は前記光ヘッドにおいて、光検出素子が、エレクトロルミネッセンス素子の駆動回路となる薄膜トランジスタと同じ層から形成されたものを含む。薄膜トランジスタと光検出素子をエッチング等の加工方法を用いて同じ層から形成することで、光ヘッドの製造工程が簡素化し、製造に要するコストを低減させることが可能になる。特にガラス基板上への多結晶シリコン層の形成工程は、高温プロセスを経ることになるが、1回の調整で極めて制御性よく信頼性の高い特性を得ることが可能となる。
【0043】
また本発明は、上述した光ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置である。発光分布が均一な光ヘッドを搭載することで、耐久性、画質の点で優れた画像形成装置が得られる。
ここでエレクトロルミネッセンス素子の光検出素子側に形成される第1の電極は通常陽極であり、透光性を有する電極材料で構成される。
【発明の効果】
【0044】
本発明の有機半導体デバイスでは、可撓性の金属材料で封止されているため、防湿性が高く、温度変化に伴うクラックの発生は、抑制され、素子部の保護を図ることが可能となる。
また本発明の光ヘッドでは、光検出回路を構成する薄膜トランジスタとともに有機エレクトロルミネッセンス素子が金属膜で被覆され、保護されているため、高精度で信頼性の高い光量検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
次に本発明の実施の形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子について図1を参照しつつ説明する。本実施の形態では、膜厚0.3μmのNi−Fe合金箔にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなる樹脂膜を積層してなる可撓性の金属材64をエポキシ系樹脂からなる接着剤63を介して基板100に固着して、封止部を構成するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、通例の構成がなされているが、本実施の形態では、透光性の基板100上に形成された透光性の陽極111上に、電荷注入層115として金属酸化物薄膜であるMoOを形成するとともに、この上に電子ブロック機能を持つバッファ層116と、発光層112としての高分子材料を順次積層し、この上に陰極113を形成している。また、有機エレクトロルミネッセンス素子の表面はパッシベーション膜117で被覆されている。
【0046】
上記有機エレクトロルミネッセント素子の陽極111をプラス極として、また陰極113をマイナス極として直流電圧または直流電流を印加すると、発光層112には、陽極111から電荷注入層115を介してホールが注入されるとともに陰極113から、電子が注入されバッファ層116にブロックされ、効率よく発光層中に荷電粒子が存在する。発光層112では、このようにして注入されたホールと電子とが再結合し、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起る。
【0047】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子によれば、MoO層によるホール注入効果が高いため、均一な発光特性を得ることが可能となる。
【0048】
次に本発明の有機エレクトロルミネッセント素子の製造工程について説明する。
まずガラス基板100上にマスクを用いてスパッタリング法によりITO薄膜、続いて真空蒸着法により、金属酸化物薄膜としてのMoO層を形成する、あるいはガラス基板100上にスパッタリング法によりITO薄膜、これをフォトリソグラフィによりパターニングし、続いて真空蒸着法により、金属酸化物薄膜を形成し、これらをフォトリソグラフィあるいはマスクによりパターニングすることにより、陽極111および電荷注入層115を形成する。
【0049】
そして、スクリーン印刷やスピンコートなどの塗布法により、このバッファ層116と、この上層に発光層112とを形成する。
【0050】
そして最後に陰極113(113a、113b)を形成する。このときさらに、外側をパッシベーション膜117で被覆する。このパッシベーション膜117は、金属材が、内側に絶縁性の樹脂層を積層した可撓性膜である場合には省略してもよい。
【0051】
このように本発明の方法によれば、金属材が可撓性を有するため、使用環境に温度変化がある場合にも、クラックの進行は、抑制され、素子部の保護を図ることが可能となる。また、接着剤の緩衝効果も加わり、より保護性が高められている。ここで用いられるNi−Fe合金はNiとFeの組成比を変えることで、熱膨張係数を10−7から10−4程度の間で調整できることが知られている。基板100としてガラスを採用した場合、一般的にガラスの熱膨張係数は10−6程度であり、封止に用いる金属材の熱膨張係数の調整範囲に含ませることができる。また基板100として樹脂を採用した場合、例えば樹脂としてポリカーボネートのように硬度が高く、かつ熱膨張係数が比較的小さい(10−5)ものを選択した場合にも、金属材の熱膨張係数の調整範囲に含ませることができる。このように基材100と封止に供する金属材の熱膨張係数を共に10−5以下を満たす程度に小さく、かつ互いの熱膨張係数を近接させ、結果的に両者の熱による膨張差を小さくすることで、熱歪をより小さく抑えることができ、封止部と基板100との密着性の向上をはかることができる。
さて、鉄とニッケルの合金の場合、組成比はニッケルが30%から65%のものが低膨張であることから、本発明に用いることが可能であるが、より好ましくはニッケルの組成比率を36%から42%の範囲にするとよい。この金属材は上述したガラスの熱膨張率に極めて近くなり、可撓性の金属材64材料としてより望ましいものとなる。更にこの組成比の場合は、後に詳細に説明する有機エレクトロルミネッセント素子を構成する保護膜等に採用される窒化珪素の熱膨張係数にも極めて近くなり、有機半導体デバイス全体の信頼性を向上させるのにより好適なものとなる。
【0052】
また、発光層112を電子ブロック層116上にスクリーン印刷することにより形成することにより、製造が容易でかつ微細化および高集積化が可能である。なお、本実施の形態ではMoO層は電子ブロック層としての作用もしている。
【0053】
本実施の形態におけるモリブデン酸化物薄膜は、真空蒸着で作製された非晶質の薄膜である。真空蒸着時の環境は還元的雰囲気であり、その中で加熱昇華して基板上に堆積する過程でモリブデン酸化物は還元を受ける。還元を受けたモリブデン酸化物は、6価のMoOの他に、より小さい酸化数を持ついつかの酸化物を生じる。それらはたとえば4価のMoOや3価のMoなどである。還元を受けるということは電子を受け取るということに等しいため、還元され価数が小さくなった酸化物は価数が大きな酸化物よりも電子を放しやすい状態、即ちホールを受け取りやすい状態になる。これはより上方のエネルギーレベルを持つということに等しい。
【0054】
このように封止部は更に陰極113を完全に被覆している。
ここで接着剤63としては、熱硬化性樹脂が用いられる。この熱硬化性樹脂としてはエポキシ系樹脂とアクリル系樹脂が一般的であるが、熱収縮性が小さい点と脱ガスが少ない点を考慮してエポキシ系樹脂を採用している。ガラス基板100上に金属材64を固着して封止部を形成するにあたっては、ディスペンサーを用いてガラス基板100上に熱硬化性樹脂が塗布されるが、ディスペンサーの塗布速度と熱硬化性樹脂の供給量を調整して接着剤63を所定の厚みに形成することができる。
【0055】
なお、熱硬化樹脂の塗布方法としては、上述のディスペンサーに限定されるものではない。また硬化条件は使用する熱硬化性樹脂によって異なるが、第一の硬化温度として100゜Cにて1時間ほど加熱処理を行い、その後150゜Cにて更に1時間ほど加熱処理を行うことが望ましい。急激な加熱による応力を緩和するために段階的に昇温硬化を行うことが望ましい。
【0056】
また、前記実施の形態では熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を採用したが、他にポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、メチルフタレート単独重合体、または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル/スチレン共重合体、ポリ(−4−メチルペンテン−1)、フェノール樹脂、シアナート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、またこれらをポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、多官能性アクリレート化合物等で変性したものや、架橋ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン/エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル/シアナート樹脂等の熱可塑性樹脂で変性した熱硬化性樹脂などを用いることも可能である。また上記に挙げたような複数種の樹脂を併用して用いてもよい。なお光硬化性樹脂であっても加熱により硬化が促進するものであれば使用することが可能である。
【0057】
また熱硬化性樹脂のガラス転移温度は高くなればなるほど硬化後の樹脂の硬度は上がるため、接着強度は低下し外部もしくは内部からの応力により基板からの剥離の原因となる。そのため樹脂のガラス転移温度は高ければ封止性能が上がるというものではない。逆にガラス転移温度が低い樹脂は樹脂内部の密着強度が低くなり機密性が低下してしまう。これらを勘案するとガラス転移温度が140゜Cから180゜Cの範囲である樹脂を選択することが望ましい。
【0058】
更に樹脂の透湿性を改善するために樹脂自体に無機物の充填剤(フィラー)を加えてもよい。無機物の充填剤を加えることによって樹脂内部を透過する水分やガス等の浸入経路を長くすることができる。また樹脂からの脱ガスにより高分子有機エレクトロルミネッセンスへのダメージを極力抑えるため、溶媒や反応開始剤などが少なく、さらに温度変化により発生が加速される脱ガスや外部よりの水分を吸着する性能を有している充填材であるほうが望ましい。充填剤(フィラー)としてはシリカゲルや、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ希土類酸化物、あるいは、アルミナ、アルミノケイ酸塩や珪藻土などが用いられるが、吸湿性能や分散形成の点でシリカゲルと、樹脂にはポリエチレンテレフタレート、あるいは、ポリエチレンを用いることが望ましい。吸湿剤の含有量は5〜40重量%であるが、樹脂の強度を勘案すると30〜40重量%であることが望ましい。また樹脂層の厚みを厚くすることにより、吸湿性能を高めることができ20〜100μm、望ましくは30〜50μmの範囲のものを用いる。
【0059】
なお前記実施の形態では、金属材は、Ni−Fe箔単体で用いたが、金属材と樹脂層との積層体であってもよく、2層構造となるため封止部自体の防湿性を高めることができる。さらに、2層以上にすることにより一層当たりの金属材(金属層)の厚さを小さくすることが出来るので、材料の可撓性を高めることが出来る。
【0060】
また、本発明は、前記金属材は、前記接着剤を介して、前記接着剤の形成された領域でのみ、前記ガラス基板に固着されるようにすれば、この接着剤が緩衝剤として作用し、より長寿命化をはかることができる。
【0061】
また、本発明は、上記有機半導体デバイスにおいて、前記金属材としてはNi−Feに代えて、ニッケルまたはニッケル合金鉄または鉄合金、ニッケル鉄クロム合金を用いるようにしてもよい。このとき、熱膨張係数が10−6以下である金属材料としては、鉄とニッケルの合金や鉄とニッケルとコバルトの3元素系の合金を用いるが、組成を変えることにより膨張率を選択することが出来る。鉄とニッケルとコバルトによる3元素系の合金の場合、ニッケル29%とコバルト17%で残りが鉄である合金は、ガラスや窒化珪素の熱膨張係数に近く可撓性の金属材64として望ましい。
【0062】
また、金属材を構成するに際し、金属材上に塗布膜を形成してもよい。塗布あるいは塗装により形成することのより、フィルムを積層するよりコストを大幅に低減することができる。
また、金属材にはアルミニウムやステンレス材、鉄やニッケル、コバルトなどの金属材料あるいはCuなど展性に優れた材料塑性加工したものを用いることも出来る。このとき金属材が、アルミニウムあるいはアルミニウム合金の場合、厚みが0.005〜0.3mmの範囲で、塗布膜を含めた金属材全体の厚さとして50μm以下であることが、封止材料に柔軟性を付与するために望ましい。鉄やニッケルの場合は、アルミニウムに比べて若干薄い方がよいが、0.3mm以下であればよい。
(実施の形態2)
【0063】
図2(a)は本発明の実施の形態2に係る画像形成装置の露光装置に用いられる光ヘッド本体部の要部を示す平面概要図である。また図2(b)は図2(a)のA-A断面説明図、図3はこの光ヘッド本体の製造工程におけるダイシングやレーザー及びカッターによる分離前を示す図である。以後、本実施例ではダイシングによる加工について説明を行なう。
この光ヘッド本体部は、図2に示すように、ガラス基板などによって構成される基板100と、この基板100上に、光検出素子120を含む光検出回路(ピクセル回路)Cと、発光素子としてのエレクトロルミネッセンス素子110とを集積化して形成したもので、光検出回路の一部であるスイッチング用の薄膜トランジスタ130が発光素子列よりも、基板100の端面側に形成され、上層を接着剤63で被覆され、この接着剤63を介して封止用金属フィルム64が固着されたことを特徴とするものである。
【0064】
ダイシング工程において、基板100にクラックが生じると、薄膜トランジスタを構成する多結晶シリコンからなる半導体層の剥離や劣化が生じ、素子特性の低下を招き易いが、この構成により、接着剤63が、下層の半導体層(薄膜トランジスタ130)を確実に保護し、信頼性の向上をはかることができる。
【0065】
製造に際しては、図3(a)に示すように、マザーガラスGMと呼ばれるガラス母材上に、多結晶シリコン層を成膜し、パターニング工程およびドーピング工程を経、さらに絶縁膜、金属膜などの導電性膜を形成し、光検出素子120を含む光検出回路および、発光素子などの素子部を形成する。素子部の形成については後述する。
【0066】
この後、図3(b)に示すように、薄膜トランジスタ130上を含む領域に接着剤63を塗布する。なお、この接着剤63の塗布領域はガラス基板100の端面から1mm程度離間しているのが望ましい。なお図2(b)は断面図であるから描かれていないが、接着剤63は実際は封止用金属フィルム64の全周囲にそって塗布されている。
そして、図3(c)に示すように、封止用金属フィルム64を、装着する。
【0067】
そして図4に平面図を示すように、ダイシングラインDLに沿ってダイシングを行い、図1に示した個々の光ヘッド本体部に分割する。
このとき、薄膜トランジスタ130上は接着剤63で被覆されているため、ダイシング時にかかる応力によってクラックが入り易いが、光検出回路を構成する薄膜トランジスタ上は接着剤で被覆されているため、クラックの進行を抑制することができると共に、光検出回路は接着剤で保護され、信頼性の向上をはかることが可能となる。また、封止用金属フィルムの装着に際しても、薄膜トランジスタは接着剤で覆われているため、封止用金属フィルム装着時の応力も緩和され、クラックの発生は防止される。
【0068】
なお前記実施の形態2では、封止用金属フィルム64を装着した後、ダイシングを行うことにより、個々の光ヘッド本体部に分割したが、図5に示すように、封止用金属フィルム64を装着する前にマザーガラスGMをカットし、分割後、封止用金属フィルムを装着するようにしてもよい。この場合は、熱溶融性の樹脂材料を接着剤として使用し、接着剤を塗布した後、ダイシングを行い、接着剤上に封止用金属フィルムを載せた状態で熱圧着するようにしてもよい。この場合、ダイシング時は、接着剤で覆われているためダイシング時のクラックの進行は抑制される。また、この場合も封止用金属フィルムの装着に際しても、薄膜トランジスタは接着剤で覆われているため、封止用金属フィルム装着時の応力も緩和され、クラックの発生は防止される。
また、前記実施の形態2では、接着剤はライン状に形成したが、基板の端面から所定の間隔を隔てた位置例えば1mm以上はなれた位置を含むように封止用金属フィルム64の下部全面にベタ状に形成してもよい。
また、ダイシング時の応力緩和のためには、接着剤は前記基板の端面から1mm以上離間してなるのが望ましく、これにより、接着剤で被覆されていない端部の領域が、応力緩和領域となり、ダイシング時の応力発生を抑制している。また、この領域にクラックが入ったとしても、接着剤でクラックの進行が阻止され、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0069】
(実施の形態3)
以下に、本発明の光ヘッドおよびこれを用いた画像形成装置の詳細について説明する。
図6は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の露光装置に用いられる光ヘッドの要部を示す平面概要構成図である。また図7(a)は図6のA-A断面要部図、図7(b)は図6のB-B断面要部図、図8はこの等価回路を示す図である。この光ヘッドは、ガラス基板100上に、発光素子110としての複数の有機エレクトロルミネッセンス素子からなる素子列を配列するとともに、この発光素子110から出力される光を検出するフォトダイオードで構成された光検出素子120と、この光検出素子120の出力に接続され、発光素子110の光量を検出する光量検出回路Cと、光量検出回路Cの出力に基づいて光量を算出する光量演算回路150と、発光素子110の駆動制御を行う駆動回路160とを備えた光ヘッドであって、前記光量検出回路Cは、光検出素子120に並列接続された容量素子140と、容量素子140に接続され容量素子140の読み出しを制御するスイッチング用の薄膜トランジスタ130とを備え、選択トランジスタ130と光検出素子120は、容量素子140を挟んで離間して配置されている。ここで、選択トランジスタ130と容量素子140と光検出素子120とは、発光素子120の素子列とは直交する方向に順次配列されている。この選択トランジスタ130は光量演算回路を含む処理回路部に接続される。
【0070】
また光検出素子120は、発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子110の、光検出素子120側に位置する第1の電極111をゲート電極とした薄膜トランジスタを構成し、光量検出回路の光量読み出しを選択するタイミングを選択するスイッチング用の薄膜トランジスタ130と同一工程で形成される多結晶シリコン層で構成される。このように同一層で形成され、光量を検出するための薄膜トランジスタ(光検出素子)120と、信号選択を行うためのスイッチング用の薄膜トランジスタ130がとが、同時に作業性よく形成されるが、容量素子140分だけ光検出素子110と離間して配置することになり、スイッチング用の薄膜トランジスタ130への光の入射による閾値の変動による誤動作を防止することが可能となる。また容量素子140は、3層の電極を層間絶縁膜を介して2層づつ向かい合うように形成してなるものであるため、遮光性が高く確実に迷光を防止可能であることから、誤動作を防ぐことができ、微小な電流である光電流を効率よく検出し高精度で信頼性の高い光量検出が可能となる。
【0071】
さらにまた、光量検出回路Cが、発光素子の素子列を挟んで、駆動回路160と分離して配置されるようにしたことを特徴とするものである。この構成を用いることにより、微小電流を扱う光量検出回路が、比較的大電流をあつかう駆動回路と分離して配置されることになり、ノイズの影響を回避し、高精度の光量検出を行うことが可能となる。
また光量検出回路Cは、光検出素子120に並列接続された容量素子140と、薄膜トランジスタからなるスイッチング用の薄膜トランジスタ130と、光量演算回路を含む処理回路部である光量演算回路(IC)150とで構成されている。
また駆動回路160は、多結晶シリコン層161(161c、161S,161D)からなるスイッチング用の薄膜トランジスタと、図示しない駆動用ICチップとで構成される。
【0072】
すなわち、本実施の形態の光ヘッドは、図7(a)および(b)に断面図を示すように、表面に平坦化のためのベースコート層101を形成したガラス基板100上に、光検出素子120と、エレクトロルミネッセンス素子110とを順次積層するとともに、光検出素子120の出力に応じて、駆動電流または駆動時間を補正しつつ前記エレクトロルミネッセンス素子を駆動するためのスイッチングトランジスタ130としての薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続されたチップICとしての駆動回路(160)を搭載したものである。そして、光検出素子120はベースコート層101表面に形成された多結晶シリコン層からなる島領域ARを帯状のi層からなるチャネル領域を隔てて 所望の濃度にドープすることによりソース領域121S、ドレイン領域121Dを形成し、この上層に形成される酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜122、第2の絶縁膜123を貫通するようにスルーホールを介して形成された多結晶シリコン層からなるソースおよびドレイン電極125S,125Dで構成される。また、この上層に保護膜124としての窒化シリコン膜を介して、エレクトロルミネッセンス素子110が形成されており、第1の電極としての陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、保護膜124、発光層112、第2の電極としての陰極113の順に各層が積層形成されている。ここでは光出射領域を規定する絶縁膜はこの保護膜に相当する。
【0073】
また容量素子140は、配線用の図7(b)に示すように、多結晶シリコン層で構成された第1層電極141と、選択トランジスタのゲート電極133と同一工程で形成される第2層電極142とで前述した第1の絶縁膜122を挟むとともに、第2層電極と第3層電極とによって第2の絶縁膜123を挟むことによって形成されたコンデンサで構成される。コンデンサ140は、この第1層電極141、第2層電極142、第3層電極143の3層の導電性材料と絶縁膜とで構成される。これら3層の電極は重なった状態で形成されるため、遮光材料で形成すれば、3重構造の遮光膜として作用し、この存在により、スイッチング用の薄膜トランジスタ130を構成する薄膜トランジスタのソース・ドレイン領域、ゲート電極のいずれかと同一工程で形成することができるため、工程も簡略化可能である。また、所望の遮光性を有する導電性材料を用い、選択トランジスタとは別の工程で形成するようにしてもよい。
【0074】
一方、光検出素子120を構成する各層は、駆動トランジスタとしての選択トランジスタ130と同一の製造工程で形成される。すなわちチャネル領域131Cを挟んでソース領域132S,132Dが、光検出素子の半導体島と同一工程で形成され、これにコンタクトするソース・ドレイン電極134S,134Dが積層され、ゲート電極133とで選択トランジスタとしての薄膜トランジスタを構成している。
これら各層は、CVD法による半導体薄膜の形成、フォトリソグラフィによるパターニング、不純物イオンの注入、絶縁膜の形成、など通例の半導体プロセスを経て形成される。
【0075】
ここで、ガラス基板100は無色透明なガラスの一枚板である。ガラス基板100としては、例えば透明または半透明のソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の無機酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラスを用いることができる。
【0076】
その他の材料をガラス基板100として採用することも可能であり、例えば透明または半透明のポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂ポリシロキサン、ポリシラン等のポリマー材料を用いた高分子フィルム等、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素金属酸化物や、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化クロムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を、透光性に支障が無い範囲で、単層もしくは積層して用いることができる。あるいは透明または半透明のAs23、As4010、S40Ge10等のカルコゲノイドガラス、ZnO、Nb2O、Ta25、SiO、Si34、HfO2、TiO2等の金属酸化物および窒化物等の材料、或いは発光領域から出射される光を基板を介さずに取り出す場合には、不透明のシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体材料、或いは顔料等を含んだ前述の透明基板材料、表面に絶縁処理を施した金属材料等から適宜選択して用いることができ、複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0077】
またガラス基板100などの基板の表面あるいは基板内部には、後述するようにエレクトロルミネッセンス素子110を駆動するための抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等からなる回路を集積化して形成しても良い。
【0078】
さらに用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能をもった特定の波長の光へ変換する材料などであってもよい。また基板は絶縁性であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、エレクトロルミネッセンス素子110の駆動を妨げない範囲或いは用途によって導電性を有していても良い。
【0079】
ガラス基板100の上には、ベースコート層101が形成される。ベースコート層101は、例えばSiNから成る第1の層と、SiOから成る第2の層の2つから構成される。SiN、SiOの各層は蒸着法等によっても形成できるが、スパッタ法により形成することが望ましい。
【0080】
ベースコート層101の上には、エレクトロルミネッセンス素子110の選択トランジスタ130、及び光検出素子120が同一工程で形成される多結晶シリコン層を用いて形成される。エレクトロルミネッセンス素子110の駆動用回路は、抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等の回路素子から構成されるが、光ヘッドの小型化を考慮すると薄膜トランジスタを用いることが望ましい。実施の形態3において光検出素子120は、図7から明らかなように発光層112を含むエレクトロルミネッセンス素子110と、光の出力面となるガラス基板100の中間に位置しており、且つ光検出素子110の素子領域Aは光出射領域ALEよりも大きい。また光出射領域ALEは、光検出素子120の内側に存在するため、光を透過しない材料を光検出素子120に用いることはできない。したがって、発光層112から出力された光を妨げないようにするため、光検出素子120には透光性を有した材料を用いなければならない。透光性を有した光検出素子120の材料としては、例えば多結晶シリコンを選択することが望ましい。
【0081】
実施の形態3では、ベースコート層101の上に一様な半導体層を形成した後、半導体層に対してフォトリソグラフィを用いてエッチング加工を施すことにより、選択トランジスタ130及び光検出素子120を同じ層から形成している。同一の半導体層から島状に独立した選択トランジスタ130及び光検出素子120の半導体層を一括で形成する加工は、製造工数の削減と製造コストの抑制に有利である。なお光検出素子120において、光出射領域ALEから出力される光を受光する素子領域Aは光検出素子120となる島状に構成された多結晶シリコンまたは非晶質シリコンである。
【0082】
エレクトロルミネッセンス素子110の発光層112に電界をかけるための選択トランジスタ130及び光検出素子120の上には、この酸化シリコン膜からなる第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護膜124とが、エレクトロルミネッセンス素子の陽極としてのITO111との間でゲート絶縁膜として作用し、この膜厚による電圧降下によってITOの電位からの降下幅が決定される。このゲート絶縁膜を構成する第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護膜124は、例えばSiO等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0083】
また、選択トランジスタ130の真上にあるゲート絶縁膜としての第1の絶縁層122の表面にはゲート電極131が形成される。ゲート電極131の材料としては、例えばCrが用いられる。ゲート電極131は、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0084】
ゲート電極131が形成された基板表面に、第2の絶縁層123が形成される。第2の絶縁層123は、これまで形成してきた積層体の全表面に渡って形成される。第2の絶縁層123は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0085】
第2の絶縁層の上には、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成される。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは光検出素子120のソース・ドレイン領域121S,121Dに接続されており、光検出素子120から出力される電気信号の伝達と光検出素子120の接地を行う。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、選択トランジスタ130のソース・ドレイン領域132S,132Dに接続されており、ソース電極134Sとドレイン電極134Dの間に所定の電位差を付与した状態で先述したゲート電極133に所定の電位を付与することで、チャネル領域132Cに電界が印加され、選択トランジスタ130はスイッチング素子としての機能を有するようになり、発光素子としてのエレクトロルミネッセンス素子110の駆動を行う回路として動作する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの材料としては、例えばCr等の金属が用いられる。図6に示すように、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極は第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して光検出素子120の端部と接続されており、ソース電極134S及びドレイン電極134Dも同様に第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して選択トランジスタ130の端部に接続されている。したがって、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの形成に先立ち、第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123に対して、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120を接続するためのスルーホール、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130を接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールは光検出素子120の表面と選択トランジスタ130の表面、即ち光検出素子120と光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sの接触面と選択トランジスタ130とソース電極134S及びドレイン電極134Dの接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、光検出素子120及び選択トランジスタ130の端部の真上にエッチング加工等により設けられる。エッチングにはハロゲン系のエッチングガスを用いる。フォトリソグラフィにより、開口を形成したレジストパターンで表面を被覆した状態でエッチングガスを導入し、パターニングすることにより、第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123のスルーホールを開口する。このとき、エッチングガスには光検出素子120及び選択トランジスタ130を構成する材料と化学反応を生じないものを選択する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120の接触面、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130の接触面を露出させる加工が終了した後、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dを形成する。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、センサ電極となる金属層を第2の絶縁層123の表面、先述したスルーホールの表面及び両センサ電極、光検出素子120の表面及び選択トランジスタ130の接触面の表面に一様に形成した後、この金属層に対してエッチングを施し、一様の金属層を光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dに分割することにより得られる。
【0086】
光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成された後に、保護膜124が形成される。保護膜124は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0087】
保護膜124の上には、陽極111が形成される。陽極111は、例えばITO(インジウム錫酸化物)から成る。陽極111の構成材料としてはITOの他にIZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)、ZnO、SnO、In等を用いることができる。陽極111は図6のように、光検出素子120に対して真上にあたる保護膜124の表面に形成される。図6に示すように、陽極111は保護膜124を貫通してドレイン電極134Dの端部に接続されている。したがって陽極111の形成の前には、保護膜124に対して陽極111とドレイン電極134Dを接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールはドレイン電極134Dの表面、即ちドレイン電極134Dと陽極111との接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、ドレイン電極134Dの端部に真上にエッチング加工等により設けられる。このエッチング加工が施された後、陽極111の層が形成される。陽極111は蒸着法等によっても形成できるがスパッタ法により形成することが望ましい。なお実施の形態3では陽極111としてITOを用いている。
【0088】
陽極111が形成された後、画素規制部としての窒化シリコン膜114が形成される。画素規制部としての窒化シリコン膜114の材料としては絶縁性が高く、絶縁破壊に対して強く、かつ製膜性が良くパターニング性が高いものが望ましい。実施の形態3では画素規制部としての窒化シリコン膜114を構成する材料として、窒化シリコン、窒化アルミニウムを用いている。画素規制部としての窒化シリコン膜114は、後述する発光層112と陽極111との間に設けられ、光出射領域ALEの領域外にある発光層112を陽極111から絶縁し、発光層112の発光する箇所を規制している。したがって、画素規制部としての窒化シリコン膜114に重なる発光層112の領域は非発光領域となり、画素規制部としての窒化シリコン膜114に重ならない領域が光出射領域ALEとなる。画素規制部としての窒化シリコン膜114は、発光層112の光出射領域ALEが光検出素子120の素子領域Aよりも小さくなるように規制し、且つ光出射領域ALEを光検出素子120の素子領域Aの内側に配置するように構成される。
【0089】
画素規制部としての窒化シリコン膜114が形成された後、発光層112が形成される。発光層112は無機発光材料、若しくは以降詳細に説明する高分子系、あるいは低分子系の有機発光材料から形成される。発光層112を形成する無機発光材料としては、チタン・リン酸カリウム、バリウム・ホウ素酸化物、リチウム・ホウ素酸化物等を用いることができる。発光層112を構成する高分子系の有機発光材料としては、可視領域で蛍光または燐光特性を有しかつ製膜性の良いものが望ましく、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン等のポリマー発光材料等を用いることができる。また、発光層112を構成する低分子系の有機発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4'−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4'−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2'−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体等が用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光発光材料を用いることもできる。高分子系材料、低分子系材料から成る発光層112は、材料をトルエン、キシレン等の溶媒に溶解したものをスピンコート法で層状に成形し、溶解液中の溶媒を揮発させることで得られる。
【0090】
また実施の形態3では、発光層112を便宜上単一の層として記述しているが、発光層112を陽極111の側から順に正孔輸送層/電子ブロック層/上述した有機発光材料層(ともに図示せず)の三層構造としてもよいし、発光層112を陰極113の側から順に電子輸送層/有機発光材料層(ともに図示せず)の二層構造、あるいは陽極111の側から順に正孔輸送層/有機発光材料層の2層構造(ともに図示せず)、あるいは陰極113の側から順に正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロック層/有機発光材料層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層のごとく7層構造(ともに図示せず)としてもよい。またはより単純に発光層112が上述した有機発光材料のみからなる単層構造であってもよい。このように実施の形態3において発光層112と呼称する場合は、発光層112が正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層などの機能層を有する多層構造である場合も含んでいる。後に説明する他の実施の形態についても同様である。
【0091】
上述した機能層における正孔輸送層としては、正孔移動度が高く、透明で製膜性の良いものが望ましくTPDの他に、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4',4''−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−2−2'−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル、N、N'−ジフェニル−N、N'−ジ−m−トリル−4、4'−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4'−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラジヘクシルフルオレニルビフェニル(TFB)あるいはポリ3−メチルチオフェン(PMeT)といったポリチオフェン誘導体等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。またMoO、V、WO、TiO、SiO、MgO等の無機酸化物を用いることもある。またこれらの正孔輸送材料は電子ブロック材料として用いることもできる。
【0092】
上述した機能層における電子輸送層としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料等、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)、バソフプロイン(BCP)等が用いられる。またこれらの電子輸送層を構成可能な材料は正孔ブロック材料として用いることもできる。
【0093】
発光層112が形成された後、陰極113が形成される。陰極113は、例えばAl等の金属を蒸着法等によって層状に形成することにより得られる。有機エレクトロルミネッセンス素子110の陰極113としては仕事関数の低い金属もしくは合金、例えばAg、Al、In、Mg、Ti等の金属や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金や、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等が用いられる。あるいは、Ba、Ca、Mg、Li、Cs等の金属、あるいは、LiF、CaOといったこれら金属のフッ化物や酸化物からなる有機物層に当接する第1の電極層と、その上に形成されるAg、Al、Ag、In等の金属材料からなる第2の電極とからなる金属の積層構造を用いることもできる。
【0094】
図7に示すような実施の形態3の光ヘッドは、有機エレクトロルミネッセンス素子の選択トランジスタ130側から光を出力する方式を採用しており、このような有機エレクトロルミネッセンス素子の構造をボトムエミッションという。ボトムエミッション構造は、ガラス基板100の側から光を取り出すため、既に述べたように光検出素子120は透明度の高い材料、例えば多結晶シリコン(ポリシリコン)で構成される必要がある。多結晶シリコンで構成された光検出素子120は非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で構成したものと比較して光電流の生起能力が低いという問題があるが、例えばコンデンサ(図示せず)を有機エレクトロルミネッセンス素子110の近傍に設け、光検出素子120から出力された電流に基づく電荷をコンデンサに所定期間蓄積して、その後に電圧変換を行なうような処理回路を設けることで解決することができる。ボトムエミッション構造の場合は、光を取り出す側の電極(陽極)の透明化が容易なため、製造が簡単になる利点がある。
【0095】
図6は、本発明の実施の形態3における光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した構成平面図である。
【0096】
図6および図7に示すように実施の形態3の光ヘッドは、複数のエレクトロルミネッセンス素子110を主走査方向(素子列の方向)に配置して構成されており、1つの発光領域(光出射領域)に対して、1つの光検出素子120を対応させて配置している。このような構造とすることで、光検出素子120によって各有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光光量を独立して計測できる。即ち同時に複数の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測することが可能となり、計測時間を大幅に短縮できる。
【0097】
この光検出素子から出力される電気信号を基に、補正回路が生成するフィードバック信号が決定され、このフィードバック信号を基に光の補正に必要な処理が行われる。実施の形態3ではこのフィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセンス素子110の発光光量を補正するようにしており、図示しないドライバ回路によって各エレクトロルミネッセンス素子110を駆動する電流値を制御している。このように実施の形態3では光検出素子120の出力に基づいて発光光量を制御しているが、フィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセンス素子110の駆動時間を制御する、いわゆるPWM制御を行なうように構成してもよい。
【0098】
光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは、光検出素子120の接地を行う電極である。発光素子としてのエレクトロルミネッセンス素子110の陽極であるITO(インジウム錫酸化物)111は、選択トランジスタ130のドレイン電極134Dと接続されており、エレクトロルミネッセンス素子110はドレイン電極134Dを介して選択トランジスタ130で制御されている。
【0099】
図7に示したように、実施の形態3の光ヘッドは、島状に形成された多結晶シリコン(ポリシリコン)から構成される光検出素子120を主走査方向に列状に配置し、各有機エレクトロルミネッセンス素子110においては画素規制部としての窒化シリコン膜114により光出射領域ALEが制限された発光層112の下部に光出射領域ALEよりも大きな素子領域Aを有した光検出素子120を配置して構成される。光出射領域ALEよりも光検出素子120の素子領域A(島状に形成された多結晶シリコンの島状部分)を大きくすることで、発光層112の局所的な層厚の変化を抑えることができ、発光層112を流れる電流の偏りを抑えることができる。したがって、均一な発光分布と寿命の向上を実現した光ヘッドを製造することができる。
【0100】
さらに、実施の形態3の光ヘッドに搭載される島状に構成された光検出素子120の素子領域Aは発光領域すなわち光出射領域ALEに比べて大きいため、発光層からの出力光を光の補正に用いる電気信号へと効率的に変換することができる。
【0101】
次に、本発明の光ヘッドで用いられる光量補正回路について説明する。光量補正回路は、図8に等価回路を示すように、チャージアンプを備えた駆動用IC150と、この駆動用IC150の入力端子に接続されるように前述したガラス基板100に集積化して形成された補正回路部C(図18ではピクセル回路60)とで構成され、この補正回路部Cは前述したスイッチングトランジスタ130と、光検出素子120と、この光検出素子に並列接続され、光検出素子の出力電流をチャージするコンデンサ140とで構成される。このコンデンサ140は図6の断面図に図示していないが、光検出素子のソース電極134S,ドレイン電極134Dにそれぞれ接続されるようにこれらと同一工程で形成された導電性膜で、第1および第2の絶縁膜122,123を挟むことによって形成されている。
【0102】
ここで光検出素子は、エレクトロルミネッセンス素子からの光によって多結晶シリコン層(チャネル領域)121iで光電変換が行われ、ソース領域からドレイン領域に流れる電流を光電流として取り出すことにより、光量を検出するものである。しかしながら、前述したように、エレクトロルミネッセンス素子110の陽極であるITO電極111をゲート電極とし、このゲート電極の電位によって光検出素子のチャネル領域121iである多結晶シリコン層に電界がかかり、これにより、ドレイン電流Iが流れることになる。このドレイン電流Iが上記光電変換電流に付加されることになるため、ドレイン電極125Dからセンサ出力として補正回路部C(図8参照)に出力される光電変換電流は実際の光電変換電流にドレイン電流Iを加えたものとなる。このため光量検出精度が低下するという問題がある。このゲート電圧Vgとドレイン電流IDとの関係を測定した結果を図9に実線で示す。この図から明らかなように、この薄膜トランジスタのドレイン電流が0である領域すなわち、トランジスタの動作がオフとなる領域(OFF領域)で使用するのが望ましい。
【0103】
望ましくは、図9に破線で示すように、ゲート電位をマイナス方向にシフトさせるようにすることにより、薄膜トランジスタをOFF領域で使用することができ、暗電流をほとんど皆無とすることができる。本発明では、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域121iとなる多結晶シリコン層全体がエレクトロルミネッセンス素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
【0104】
そしてこの光検出素子の出力は図10(a)乃至(e)にタイミングチャートを示すように選択トランジスタ130のスイッチングにより、コンデンサ140にエレクトロルミネッセンス素子の所望の回数の点灯時間分チャージされた電流を取り出すことにより、高精度の光量検出が可能となる。ここで図10(a)は、チャージの状態を示す図、図10(b)は、選択トランジスタの動作を示す図、図10(c)は、エレクトロルミネッセンス素子の点灯タイミングを示す図、図10(d)は、容量素子140の電位を示す図、図10(e)は、オペアンプの出力電圧を示す図である。
まず、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140に初期電圧Vrefをチャージする(S1:リセットステップ)。
そして、この選択トランジスタ130がOFFとなると、容量素子140にチャージされた電荷は光検出素子120を流れる光電流により減少する(S2:点灯ステップ)。
この状態でチャージアンプ150のスイッチSWがOFFとなり、チャージアンプは測定可能な状態となる(S3:測定開始ステップ)。
そして、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140で失われた電荷はチャージアンプの容量素子Crefから供給される。その結果チャージアンプ150のオペアンプの出力電圧Vr0は上昇する。この期間も光検出素子の光電流は流れVr0は上昇する(S4:電荷転送ステップ)。
そして選択トランジスタ130がOFFとなり、Vr0が確定する。この電圧をADコンバータで取り込み、出力電圧Voutとして、出力し、測光動作が終了する(S5:リードステップ)。
【0105】
このようにして得られた光検出回路の出力電圧に基づいて、光量演算回路150で、補正電圧を算出し、駆動回路160を介して発光素子の陽極111と陰極113とに印加する電圧が制御され、これらの間に形成された発光層112に電圧が印加され、発光素子の光量のばらつきや経時変化に伴う光量の変動を補償し、均一な露光が維持されるように構成される。
【0106】
(実施の形態4)
実施の形態4について説明する。本実施の形態では、上記光ヘッドをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色用として形成した露光装置13Y〜13Kとを用いた画像形成装置1について説明する。この画像形成装置1は、図11に示すように、装置内にイエロー現像ステーション2Y、マゼンタ現像ステーション2M、シアン現像ステーション2C、ブラック現像ステーション2Kの4色分の現像ステーションを縦方向に階段状に配列し、その上方には記録紙3が収容される給紙トレイ4を配設すると共に、各現像ステーション2Y〜2Kに対応した箇所には給紙トレイ4から供給された記録紙3の搬送路となる記録紙搬送路5を上方から下方の縦方向に構成したものである。
【0107】
現像ステーション2Y〜2Kは記録紙搬送路5の上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成するものであり、イエロー現像ステーション2Yは感光体8Y、マゼンタ現像ステーション2Mには感光体8M、シアン現像ステーション2Cには感光体8C、ブラック現像ステーション2Kには感光体8Kが含まれ、更に各現像ステーション2Y〜2Kには後に説明する現像スリーブ、帯電器など、一連の電子写真方式における現像プロセスを実現する部材が含まれている。
【0108】
更に各現像ステーション2Y〜2Kの下部には感光体8Y〜8Kの表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置13Y、13M、13C、13Kが配置されている。
【0109】
現像ステーション2Y〜2Kは充填された現像剤の色が異なっているが、構成は現像色に関わらず同一であるため、以降の説明を簡単にするため特に明示する必要がある場合を除いて現像ステーション2、感光体8、露光装置13のごとく特定の色を明示せずに説明する
【0110】
図12は本発明の画像形成装置1における現像ステーション2の周辺を示す構成図である。図12において、現像ステーション2の内部にはキャリアとトナーの混合物である現像剤6が充填されている。7a、7bは現像剤6を攪拌する攪拌パドルであり、攪拌パドル7aと7bの回転によって現像剤6中のトナーはキャリアとの摩擦によって所定の電位に帯電されると共に、トナーとキャリアは現像ステーション2の内部を巡回することで十分に攪拌混合される。感光体8は図示しない駆動源によって方向D3に回転する。9は帯電器であり感光体8の表面を所定の電位に帯電する。10は現像スリーブ、11は薄層化ブレードである。現像スリーブ10は内部に複数の磁極が形成されたマグネットロール12を有している。薄層化ブレード11によって現像スリーブ10の表面に供給される現像剤6の層厚が規制されると共に、現像スリーブ10は図示しない駆動源によって方向D4に回転し、この回転およびマグネットロール12の磁極の作用によって現像剤6は現像スリーブ10の表面に供給され、後述する露光装置13によって感光体8に形成された静電潜像を現像するとともに、感光体8に転写されなかった現像剤6は現像ステーション2の内部に回収される。
【0111】
13は露光装置である。露光装置13は露光光源としての有機エレクトロルミネッセンス素子を600dpi(dot/inch)の解像度で列状に配置した発光素子列を有しており、帯電器9によって所定の電位に帯電した感光体8に対し、画像データに応じて選択的に有機エレクトロルミネッセンス素子をON/OFFすることで、最大A4サイズの静電潜像を形成する。現像スリーブ10に所定の電位(現像バイアス)を印加すると、この静電潜像部分と現像スリーブ10の間に電位勾配が生じる。そして、現像スリーブ10の表面に供給され、所定の電位に帯電している現像剤6中のトナーにクーロン力が作用し、感光体8には現像剤6のうちトナーのみが付着し、静電潜像が顕画化される。
【0112】
後に詳細に説明するように露光装置13には、有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測する光量計測手段として光検出素子が設けられている。
【0113】
16は転写ローラである。転写ローラ16は感光体8に対し記録紙搬送路5と対向する位置に設けられており、図示しない駆動源により方向D5に回転する。転写ローラ16には所定の転写バイアスが印加されており、感光体8上に形成されたトナー像を、記録紙搬送路5を搬送されてきた記録紙3に転写する。
【0114】
以降図11に戻って説明を続ける。
【0115】
17はトナーボトルであり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが格納されている。トナーボトル17から各現像ステーション2Y〜2Kには図示しないトナー搬送用のパイプが配設され、各現像ステーション2Y〜2Kにトナーを供給している。
【0116】
18は給紙ローラであり、図示しない電磁クラッチを制御することで方向D1に回転し、給紙トレイ4に装填された記録紙3を記録紙搬送路5に送り出す。
【0117】
給紙ローラ18と最上流のイエロー現像ステーション2Yの転写部位との間に位置する記録紙搬送路5には、入口側のニップ搬送手段としてレジストローラ19、ピンチローラ20対が設けられている。レジストローラ19、ピンチローラ20対は、給紙ローラ18により搬送された記録紙3を一時的に停止させ、所定のタイミングでイエロー現像ステーション2Yの方向に搬送する。この一時停止によって記録紙3の先端がレジストローラ19、ピンチローラ20対の軸方向と平行に規制され、記録紙3の斜行を防止する。
【0118】
21は記録紙通過検出センサである。記録紙通過検出センサ21は反射型センサ(フォトリフレクタ)によって構成され、反射光の有無で記録紙3の先端および後端を検出する。
【0119】
さて図示しない電磁クラッチによって動力伝達を制御しレジストローラ19の回転を開始すると記録紙3は記録紙搬送路5に沿ってイエロー現像ステーション2Yの方向に搬送されるが、レジストローラ19の回転開始のタイミングを起点として、各現像ステーション2Y〜2Kの近傍に配置された露光装置13Y〜13Kによる静電潜像の書込みタイミング、現像バイアスのON/OFF、転写バイアスのON/OFFなどがそれぞれ独立して制御される。
【0120】
以降図12を用いて説明を続ける。
【0121】
図12に示す露光装置13から現像領域(感光体8と現像スリーブ10の間隔が最も狭い部位の近傍)までの距離は設計事項であるから、例えば露光装置13による露光を開始して感光体8上に形成された潜像が現像領域に到達する時間も設計事項である。
【0122】
本実施の形態ではレジストローラ19の回転開始のタイミングを起点として、後に説明するように複数ページを連続して印字する際に、記録紙搬送路5を搬送される記録紙と記録紙の間(即ち紙間)において露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を設定して点灯させるとともに、感光体8上に形成された潜像位置に対して現像バイアスをOFFにするような制御を行なっている。
【0123】
以降図11に戻って説明を続ける。
【0124】
最下流のブラック現像ステーション2Kの更に下流側に位置する記録紙搬送路5には出口側のニップ搬送手段として定着器23が設けられている。定着器23は加熱ローラ24と加圧ローラ25から構成されている。
【0125】
27は加熱ローラ24の温度を検出するための温度センサである。温度センサ27は金属酸化物を主原料とし、高温で焼結して得られるセラミック半導体であり、温度に応じて負荷抵抗が変化することを応用して接触した対象物の温度を計測することができる。温度センサ27の出力は後述するエンジン制御部42に入力され、エンジン制御部42は温度センサ27の出力に基づいて加熱ローラ24に内蔵された熱源(図示せず)に供給する電力を制御し、加熱ローラ24の表面温度が約170゜Cとなるように制御する。
【0126】
この温度制御がなされた加熱ローラ24と加圧ローラ25によって形成されるニップ部にトナー像が形成された記録紙3が通紙されると、記録紙3上のトナー像は加熱ローラ24と加圧ローラ25によって加熱および加圧され、トナー像が記録紙3上に定着される。
【0127】
28は記録紙後端検出センサであり、記録紙3の排出状況を監視するものである。32はトナー像検出センサである。トナー像検出センサ32は発光スペクトルの異なる複数の発光素子(共に可視光)と単一の受光素子を用いた反射型センサユニットであり、記録紙3の地肌と画像形成部分とで、画像色に応じて吸収スペクトルが異なることを利用して画像濃度を検出するものである。またトナー像検出センサ32は画像濃度のみならず画像形成位置も検出できるため、実施の形態における画像形成装置1ではトナー像検出センサ32を画像形成装置1の幅方向に2ヶ所設け、記録紙3上に形成した画像位置ずれ量検出パターンの検出位置に基づき画像形成タイミングを制御している。
【0128】
33は記録紙搬送ドラムである。記録紙搬送ドラム33は表面を200μm程度の厚さのゴムで被覆した金属製ローラであり、定着後の記録紙3は記録紙搬送ドラム33に沿って方向D2に搬送される。このとき記録紙3は記録紙搬送ドラム33によって冷却されると共に、画像形成面と逆方向に曲げられて搬送される。これによって記録紙全面に高濃度の画像を形成した場合などに発生するカールを大幅に軽減することができる。その後、記録紙3は蹴り出しローラ35によって方向D6に搬送され、排紙トレイ39に排出される。
【0129】
34はフェイスダウン排紙部である。フェイスダウン排紙部34は支持部材36を中心に回動可能に構成され、フェイスダウン排紙部34を開放状態にすると、記録紙3は方向D7に排紙される。このフェイスダウン排紙部34は閉状態では記録紙搬送ドラム33と共に記録紙3の搬送をガイドするように、背面に搬送経路に沿ったリブ37が形成されている。
【0130】
38は駆動源であり、本実施の形態ではステッピングモータを採用している。駆動源38によって給紙ローラ18、レジストローラ19、ピンチローラ20、感光体8Y〜8K、および転写ローラ16(図12参照)を含む各現像ステーション2Y〜2Kの周辺部、定着器23、記録紙搬送ドラム33、蹴り出しローラ35の駆動を行っている。
【0131】
41はコントローラであり外部のネットワークを介して図示しないコンピュータなどからの画像データを受信し、プリント可能な画像データを展開、生成する。後に詳細に説明するように、コントローラ41に搭載されたコントローラCPU(図示せず)は露光装置13Y〜13Kから発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子の光量の計測データを受け取り光量補正データの生成を行なう光量補正手段であるとともに、この光量補正データに基づき有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を設定する光量設定手段でもある。
【0132】
42はエンジン制御部である。エンジン制御部42は画像形成装置1のハードウェアやメカニズムを制御し、コントローラ41から転送された画像データおよび光量補正データに基づいて記録紙3にカラー画像を形成すると共に、上述した定着器23の加熱ローラ24の温度制御を含む画像形成装置1の制御全般を行っている。
【0133】
43は電源部である。電源部43は、露光装置13Y〜13K、駆動源38、コントローラ41、エンジン制御部42へ所定電圧の電力供給を行なうと共に、定着器23の加熱ローラ24への電力供給を行っている。また感光体8の表面を帯電するための帯電電位、現像スリーブ(図12参照)に印加する現像バイアス、転写ローラ16に印加する転写バイアスなどのいわゆる高圧電源系もこの電源部に含まれている。エンジン制御部42は電源部43を制御することで、高圧電源のON/OFFのみならず出力電圧値や出力電流値を調整している。
【0134】
また電源部43には電源監視部44が含まれ、少なくともエンジン制御部42に供給される電源電圧、および電源部43の出力電圧をモニタできるようになっている。このモニタ信号はエンジン制御部42おいて検出され、電源スイッチのオフや停電などの際に発生する電源電圧の低下や、特に高圧電源の出力異常を検出している。
【0135】
以上のように構成された画像形成装置1について、図11と図12を用いてその動作について説明する。
【0136】
なお以降の説明において、画像形成装置1の構成および動作全般に関わる説明については主に図11を用い、現像ステーション2Y〜2K、感光体8Y〜8K、露光装置13Y〜13Kのように色を区別して説明するが、露光や現像過程など単色に関わる説明については主に図12を用い、簡単のために現像ステーション2、感光体8、露光装置13のように色を区別せずに説明する。
【0137】
<初期化動作>
まず画像形成装置1に電源が投入された際の初期化動作について説明する。
【0138】
電源が投入されるとエンジン制御部42に搭載されたエンジン制御CPU(図示せず)は画像形成装置1を構成する電気的リソース、即ち書込み/読出しが可能なレジスタ、メモリなどのエラーチェックを実行する。このエラーチェックが完了するとエンジン制御CPU(図示せず)は駆動源38の回転を開始する。上述したように駆動源38によって給紙ローラ18、レジストローラ19、ピンチローラ20、感光体8Y〜8K、および転写ローラ16を含む各現像ステーション2Y〜2Kの周辺部、定着器23、記録紙搬送ドラム33、蹴り出しローラ35が駆動される。ただし電源投入直後は記録紙3の搬送にかかわる給紙ローラ18およびレジストローラ19は、これらに駆動力を伝達する電磁クラッチ(図示せず)は直ちにOFFに設定され、記録紙3を搬送することがないように制御されている。
【0139】
以降図12を中心に説明を続ける。
【0140】
駆動源38(図11参照)の回転に伴って現像ステーション2の攪拌パドル7a、7bおよび現像スリーブ10も回転を始め、これによって現像ステーション2に充填されたトナーとキャリアからなる現像剤6は現像ステーション2内を周回するとともに、トナーとキャリアの相互の摩擦によってトナーはマイナス電荷を付与される。
【0141】
エンジン制御CPU(図示せず)は駆動源38(図11参照)の回転を開始して所定時間経過後に、電源部43(図11参照)を制御して帯電器9をONにする。帯電器9によって感光体8の表面は例えば−700Vの電位に帯電される。感光体8は方向D3に回転しており、エンジン制御CPU(図示せず)は帯電領域が現像領域、即ち感光体8と現像スリーブ10の最近接位置に到達した後に、電源部43(図11参照)を制御して現像スリーブ10に例えば−400Vの現像バイアスを印加する。このとき感光体8の表面電位は−700Vであり、現像スリーブ10に印加された現像バイアスは−400Vであるから、電気力線は現像スリーブ10から感光体8の方向を向き、マイナス電荷を有するトナーに作用するクーロン力は感光体8から現像スリーブ10の方向となる。よってトナーは感光体8に付着することはない。
【0142】
既に述べたように電源部43(図11参照)には高圧電源の出力異常(例えばリークなど)をモニタする機能があり、エンジン制御CPU(図示せず)は帯電器9や現像スリーブ10に高電圧を印加した際の異常をチェックすることができる。
【0143】
これら一連の初期化動作の最後にエンジン制御CPU(図示せず)は、露光装置13の光量補正を実行する。エンジン制御部42(図11参照)に搭載されたエンジン制御CPU(図示せず)はコントローラ41(図11参照)に対して光量補正用のダミーイメージ情報の作成要求を出力する。この作成要求に基づきコントローラ41(図11参照)は光量補正用のダミーイメージ情報を生成し、これに基づいて露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子は初期化の時点で実際に点灯制御される。本実施の形態では、このときに上述した露光装置13に設けられた光量計測手段(図示せず)で有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測し、この光量の検出結果に基づいて個々の有機エレクトロルミネッセンス素子の光量が略等しくなるように光量の補正を行なっている。光量の計測は上述したように画像形成装置1の感光体8や現像ステーション2Y〜2Kなどの作像に係るユニットが駆動している状態で実行される。これは感光体8の回転を停止した状態で光量を計測すると感光体8の同一部分が継続的に露光され、いわゆる光暴露の状態となって感光体8の特性が局所的に劣化するためである。よって光量の計測は少なくとも感光体8を回転駆動させると共に、感光体8へのトナー付着を防止するために帯電器9で感光体8を帯電させた状態で行なう必要がある。
【0144】
本発明に係る画像形成装置1は後に詳細に説明するように、複数の発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を列状に形成した発光素子列を設けた露光装置13を有し、この露光装置13によって像担持体である感光体8を露光して画像形成を行なう画像形成装置であって、発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を設定する光量設定手段(上述のコントローラ41に搭載されたコントローラCPU)と、発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を計測する光量計測手段(上述の露光装置13に設けられた光検出素子)を有し、光量設定手段(コントローラ41に搭載されたコントローラCPU)は、非画像形成時において発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を計測する際の発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を、画像形成を行なう際の光量よりも低く設定している。
【0145】
更に本発明に係る画像形成装置1は複数の発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を列状に形成した発光素子列を設けた露光装置13と、この露光装置13によって潜像が形成される感光体8と、この感光体8に形成された潜像を現像して顕画化する現像手段(現像ステーション2を構成する現像スリーブ10)を有しており、これも後に詳細に説明するように、発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を設定する光量設定手段(コントローラ41に搭載されたコントローラCPU)と、発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を計測する光量計測手段(上述の露光装置13に設けられた光検出素子)を有し、光量設定手段(コントローラ41に搭載されたコントローラCPU)は、非画像形成時において発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を計測する際の発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の光量を、感光体8に形成された潜像が現像手段(現像ステーション2を構成する現像スリーブ10)によって現像されない光量に設定している。
【0146】
これらによって画像形成装置1の初期化動作時において、露光装置13を構成する露光光源としての有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させ、この光量を計測することで光量を補正しても感光体8にトナーは付着せずトナーを無駄に消費することはない。更に感光体8と接触回動する転写ローラ16にトナーが付着し、初期化動作に引き続いて行なわれる画像形成において、転写ローラ16に付着したトナーが記録紙3の裏面に付着して記録紙3を汚染することもなくなる。
【0147】
この光量補正において有機エレクトロルミネッセンス素子を点灯することによって感光体8が露光された領域が現像スリーブ10に近接し、いわゆる現像領域を通過する際、即ち有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測する計測期間に露光された感光体8の領域に対しては現像スリーブ10に印加する現像バイアスはOFFにしておくことが望ましい。これによって更に効果的に感光体8へのトナー付着を防止することが可能となる。
【0148】
<画像形成動作>
次に画像形成装置1の画像形成時の動作について引き続き図11および図12を参照して説明する。
【0149】
コントローラ41に外部からイメージ情報が転送されると、コントローラ41はイメージ情報を印字可能な例えば2値画像データとしてイメージメモリ(図示せず)に展開する。イメージ情報の展開が完了するとコントローラ41に搭載されたコントローラCPU(図示せず)はエンジン制御部42に対して起動要求を発する。この起動要求はエンジン制御部42に搭載されたエンジン制御CPU(図示せず)によって受信され、起動要求を受信したエンジン制御CPU(図示せず)は直ちに駆動源38を回転させて画像形成の準備を開始する。
【0150】
この過程は電気的リソースに関するエラーチェックを除き、既に説明した<初期化動作>と同様であり、エンジン制御CPU(図示せず)はこの時点でも上述の光量を計測することが可能である。ただし後述するように光量の計測には10秒程度の時間を要することからファーストプリント時間(最初の一枚目を印字するのに要する時間)に影響を与える。従ってこの起動時の光量補正は、図示しない操作パネルあるいは画像形成装置1の外部(例えばコンピュータ)からの指示によってユーザが実行の有無を選択可能としている。
【0151】
上述した過程を経て画像形成の準備が完了すると、エンジン制御部42に搭載されたエンジン制御CPU(図示せず)は、電磁クラッチ(図示せず)を制御して給紙ローラ18を回転させ記録紙3の搬送を開始する。給紙ローラ18は例えば全周の一部を欠いた半月ローラであって、記録紙3をレジストローラ19の方向に搬送するとともに、一回転するとその回転を停止する。エンジン制御CPU(図示せず)は搬送された記録紙3の先端が記録紙通紙センサ21で検出すると、所定のディレイ期間を設けた上で電磁クラッチ(図示せず)を制御してレジストローラ19を回転させる。このレジストローラの回転に伴って記録紙3は記録紙搬送路5に供給される。
【0152】
エンジン制御CPU(図示せず)は、このレジストローラ19の回転を開始のタイミングを起点として、各露光装置13Y〜13Kによる静電潜像の書込みタイミングをそれぞれ独立に制御する。静電潜像の書込みタイミングは画像形成装置1における色ずれなどに直接的に影響するため、この書込みタイミングはエンジン制御CPU(図示せず)が直接発生させることはない。具体的にはエンジン制御CPU(図示せず)は、図示しないハードウェアであるタイマなどに各露光装置13による静電潜像の書込みタイミングを予め設定しておき、上述したレジストローラ19の回転を起点として各露光装置13Y〜13Kに対応するタイマの動作を同時に開始する。各タイマは予め設定された時間が経過すると、コントローラ41に対して画像データ転送要求を出力する。
【0153】
画像データ転送要求を受信したコントローラ41のコントローラCPU(図示せず)は、コントローラ41のタイミング生成部(図示せず)で生成されたタイミング信号(クロック信号、ライン同期信号など)に同期して2値画像データを各露光装置13Y〜13Kに独立して転送する。このようにして2値画像データが露光装置13Y〜13Kに送られ、この2値画像データに基づき露光装置13Y〜13Kを構成する有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯/消灯が制御され各色に対応した感光体8Y〜8Kが露光される。
【0154】
露光によって形成された潜像は、図12に示すように現像スリーブ10上に供給された現像剤6に含まれるトナーによって顕画化される。顕画化された各色のトナー像は記録紙搬送路5を搬送されてきた記録紙3に順次転写される。4色のトナー像の転写を完了した記録紙3は定着器23に搬送され、定着器23を構成する過熱ローラ24と加圧ローラ25によって挟持搬送され、この熱と圧力によってトナー像は記録紙3に定着される。
【0155】
形成されるべき画像が複数ページの場合は、エンジン制御CPU(図示せず)は1ページ目の記録紙3の後端を記録紙通過検出センサ21で検出した後、レジストローラ19の回転を一旦停止し、所定の時間経過後に給紙ローラ18を回転させて次の記録紙3の搬送を開始し、更に所定時間経過後に再度レジストローラ19の回転を開始して、次のページの記録紙3を記録紙搬送路5に供給する。このようにレジストローラ19の回転ON/OFFのタイミング制御によって、複数のページにわたって画像を形成する場合に記録紙3の間の紙間を設定することができる。この紙間による時間(以降紙間時間と呼称する)は画像形成装置1の仕様によっても異なるが、一般に500ms程度を設定することが多い。もちろんこの紙間の期間には通常の画像形成動作(即ち露光装置13による感光体8に対する露光動作)が行われることはない。
【0156】
本発明に係る画像形成装置1は、このように複数ページの画像形成を行なう際に、各ページ間に相当する期間(紙間時間)に露光装置13を構成する発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を発光させ、その光量を計測するようにしている。この際の光量は<初期化動作>で説明したように、通常の画像形成時よりも低く制御され、現像に寄与しない光量が設定される。
【0157】
さて上述したように本実施の形態における紙間時間は500ms程度である。後に詳細に説明するが<初期化動作>の説明でも触れたように、本実施の形態では全ての有機エレクトロルミネッセンス素子に対して光量を計測するのに必要な時間は約10秒程度であり、一回の紙間時間の中で全ての有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測することはできない。よって実施の形態では各ページ間に相当する期間に有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測するに際し、露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子のうち一部の有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測するようにしている。
【0158】
紙間時間は500msであり、光量の計測期間は10秒程度であることから、単純計算によれば、紙間が約20回発生すれば露光装置13を構成する全ての有機エレクトロルミネッセンス素子の光量を計測できることになる。もちろん一連の印刷ジョブにおけるページ数はそれ以下であることも多いが、このような場合は印刷ジョブが完了した後に(画像形成装置1が印字指令待ちの待機状態に移行する際に)光量を計測するようにしてもよい。
【0159】
図13は本発明の実施の形態の画像形成装置1における露光装置13の構成図である。以降露光装置13の構造について図13を用いて詳細に説明する。図13において50は無色透明なガラス基板である。本実施の形態ではガラス基板100としてコスト的に有利なホウケイ酸ガラスを用いているが、発光素子やガラス基板100上に薄膜トランジスタにより形成される制御回路、駆動回路などの発熱をより効率的に放熱する必要がある場合にはMgO、Al3、CaO、ZnOなどの熱伝導度加成因子を含有するガラス、または石英を用いてもよい。
【0160】
ガラス基板100の面Aには発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子が図面と垂直な方向(主走査方向)に600dpi(dot/inch)の解像度で形成されている。51はプラスティックまたはガラスで構成される棒レンズ(図示せず)を列状に配置したレンズアレイであり、ガラス基板100の面Aに形成された有機エレクトロルミネッセンス素子の出射光を正立等倍の像として感光体8の表面に導く。レンズアレイ51の一方の焦点はガラス基板100の面Aであり、もう一方の焦点は感光体8の表面となるようにガラス基板100、レンズアレイ51、感光体8の位置関係が調整されている。即ち面Aからレンズアレイ51の近い方の面までの距離L1と、レンズアレイ51の他方の面と感光体8の表面までの距離L2とするとき、L1=L2となるように設定される。
【0161】
52は例えばガラスエポキシ基板の上に電子回路を構成した中継基板である。53aはコネクタA、53bはコネクタBであり、中継基板52には少なくともコネクタA53aおよびコネクタB 53bが実装されている。中継基板52は例えばフレキシブルフラットケーブルなどのケーブル56によって露光装置13に外部から供給される画像データや光量補正データ、およびその他の制御信号をコネクタB53bを介して一旦中継し、これらの信号をガラス基板100に渡す。
【0162】
ガラス基板100の表面にコネクタを直接実装することは接合強度や多様な環境における信頼性を考慮すると困難であるため、本実施の形態では中継基板52のコネクタA53aとガラス基板100との接続手段としてFPC(Flexible Printed Circuit;フレキシブルプリント回路)を採用し(図示せず)、ガラス基板100とFPCの接合は例えばACF(Anisotropic Conductive Film;異方性導電フィルム)を用いて、予めガラス基板100上に形成された例えばITO(Indium Tin Oxide;錫ドープ酸化インジウム)電極に直接接続する構成としている。
【0163】
一方コネクタB 53bは、露光装置13を外部と接続するためのコネクタである。一般的にACFなどによる接続は接合強度が問題となる場合が多いが、このように中継基板52上にユーザが露光装置13を接続するためのコネクタB53bを設けることで、ユーザが直接アクセスするインタフェースに十分な強度を確保することができる。
【0164】
54aは筐体Aであり金属板を例えば折り曲げ加工により成型したものである。筐体A 54aの感光体8に対向する側にはL字状部位55が形成されており、L字状部位55に沿ってガラス基板100およびレンズアレイ51が配設されている。筐体A54aの感光体8側の端面とレンズアレイ51の端面を同一面に合わせ、更に筐体A 54aによってガラス基板100の一端部を支持する構造とすることで、L字状部位55の成型精度を確保すれば、ガラス基板100とレンズアレイ51の成す位置関係を精度よく合わせ込むことが可能となる。このように筐体A54aは寸法精度を要求されるため、金属にて構成することが望ましい。また筐体A 54aを金属製とすることで、ガラス基板100上に形成される制御回路およびガラス基板100上に表面実装されるICチップなどの電子部品へのノイズの影響を抑制することが可能である。
【0165】
54bは樹脂を成型して得られる筐体Bである。筐体B 54bのコネクタB 53bの近傍には切欠き部(図示せず)が設けられており、ユーザはこの切欠き部からコネクタB53bにアクセスが可能となっている。コネクタB 53bに接続されたケーブル56を介して既に説明したコントローラ41(図11参照)から露光装置13に画像データ、光量補正データ、クロック信号やライン同期信号などの制御信号、制御回路の駆動電源、発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電源などが供給される。
【0166】
図14(a)は本発明の実施の形態の画像形成装置1における露光装置13に係るガラス基板100の上面図であり、図14(b)は同要部拡大図である。以降図14に図13を併用して実施の形態におけるガラス基板100の構成について詳細に説明する。
【0167】
図14においてガラス基板100は厚みが約0.7mmの、少なくとも長辺と短辺を有する長方形形状の基板であり、その長辺方向(主走査方向)には発光素子である複数の有機エレクトロルミネッセンス素子110が列状に形成されている。実施の形態ではガラス基板100の長辺方向には少なくともA4サイズ(210mm)の露光に必要な有機エレクトロルミネッセンス素子110が配置され、ガラス基板100の長辺方向は後述する駆動制御部58の配置スペースを含め250mmとしている。また実施の形態では簡単のためにガラス基板100を長方形として説明するが、ガラス基板100を筐体A54aに取り付ける際の位置決め用などのために、ガラス基板100の一部に切り欠きを設けるような変形を伴っていてもよい。
【0168】
58はガラス基板100の外部から供給される2値画像データ、光量補正データおよびクロック信号やライン同期信号などの制御信号を受け取り、これらの信号に基づいて有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動を制御する駆動制御部であり、これらの信号をガラス基板100の外部から受け取るインタフェース手段とインタフェース手段を介して受け取った制御信号に基づき有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動を制御するICチップ(ソースドライバ61)を含んでいる。
【0169】
60は中継基板52のコネクタA 53aとガラス基板100とを接続するインタフェース手段としてのFPC(フレキシブルプリント回路)であり、コネクタなどを介さずガラス基板100に設けられた図示しない回路パターンに直接接続されている。既に説明したように露光装置13に外部から供給された、2値画像データ、光量補正データおよびクロック信号やライン同期信号などの制御信号、制御回路の駆動電源、発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動電源は、図13に示す中継基板52を一旦経由した後にFPC60を介してガラス基板100に供給される。
【0170】
110は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、露光装置13における露光光源である。実施の形態では有機エレクトロルミネッセンス素子110は主走査方向に600dpiの解像度で5120個が列状に形成されており、個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110はそれぞれ独立に後述のTFT回路によって点灯/消灯を制御される。
【0171】
61は有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動を制御するICチップとして供給されるソースドライバであり、ガラス基板100上にフリップチップ実装されている。ガラス面へ表面実装を行なうことを考慮しソースドライバ61はベアチップ品を採用している。ソースドライバ61には露光装置13の外部からFPC60を介して電源、クロック信号、ライン同期信号などの制御関連信号および8bitの光量補正データが供給される。ソースドライバ61は有機エレクトロルミネッセンス素子110に対する駆動電流設定手段である。より具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量補正手段であり光量設定手段でもある、コントローラ41(図11参照)に搭載されたコントローラCPU(図示せず)によって生成された光量補正データに基づいて、ソースドライバ61は個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110を駆動するための駆動電流を設定する。光量補正データに基づくソースドライバ61の動作については後に詳細に説明する。
【0172】
ガラス基板100においてFPC60の接合部とソースドライバ61は、例えば表面にメタルを形成したITOの回路パターン(図示せず)を介して接続されており、駆動電流設定手段たるソースドライバ61にはFPC60を介して光量補正データ、クロック信号、ライン同期信号などの制御信号が入力される。このようにインタフェース手段としてのFPC60および駆動パラメータ設定手段としてのソースドライバ61は駆動制御部58を構成している。
【0173】
62はガラス基板100上に形成されたTFT(Thin Film Transistor)回路である。TFT回路62はシフトレジスタ、データラッチ部など、有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯/消灯のタイミングを制御するゲートコントローラ(図示せず)、および個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110に駆動電流を供給する駆動回路(図示せず、以降ピクセル回路と呼称する。)を含んでいる。ピクセル回路は各有機エレクトロルミネッセンス素子110に対して1つずつ設けられ、有機エレクトロルミネッセンス素子110が形成する発光素子列と並列に設けられている。駆動パラメータ設定手段であるソースドライバ61によって、個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110を駆動するための駆動電流値がこのピクセル回路に設定される。
【0174】
TFT回路62を構成するゲートコントローラ(図示せず)には露光装置13の外部からFPC60を介して電源、クロック信号、ライン同期信号などの制御信号および2値画像データが供給され、ゲートコントローラ(図示せず)はこれらの電源および信号に基づいて個々の発光素子の点灯/消灯タイミングを制御する。ゲートコントローラおよびピクセル回路(ともに図示せず)の動作については後に図面を用いて詳細に説明する。
【0175】
64は封止用金属フィルムである。有機エレクトロルミネッセンス素子110は水分の影響を受けると発光領域の経時的な収縮(シュリンキング)や、発光領域内に非発光部位(ダークスポット)が生じるなどして発光特性が極端に劣化するため、水分を遮断するための封止が必要である。実施の形態ではガラス基板100に接着剤を介して封止用金属フィルム64を貼り付けるベタ封止法を採用しているが、封止領域は一般に有機エレクトロルミネッセンス素子110が構成する発光素子列から副走査方向に2000μm程度が必要とされており、実施の形態でも封止しろとして2000μmを確保している。
【0176】
57は多結晶シリコン層で構成される薄膜トランジスタからなる光検出素子で構成された複数の光検出素子をガラス基板100の長辺に沿って主走査方向に配置した光量検出手段としての光量センサであり、59は少なくとも増幅回路およびアナログ−ディジタル変換回路を含む処理回路である。この光検出素子57によって個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量が計測される。計測に際しては原則的には有機エレクトロルミネッセンス素子110を一つ一つ個別に点灯して光量を計測する必要があるが、計測の対象となる有機エレクトロルミネッセンス素子110から十分に離間した光検出素子には、その発光の影響が殆どない(有機エレクトロルミネッセンス素子110からの出射光が減衰してしまう)ことから、実施の形態では光検出素子57を複数の光検出素子で構成することで複数の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を同時に計測することを可能としている。
【0177】
複数の光検出素子120の出力は図示しない配線によって処理回路59に入力される。処理回路59はアナログ/ディジタル混載のICチップである。光検出素子57を構成する個々の光検出素子の出力は、処理回路59において電荷蓄積法による電圧変換を施され、更に所定の増幅率で増幅された後にアナログ−ディジタル変換され、このディジタル変換後のディジタルデータ(以降、光量計測データと呼称する)が、FPC60、中継基板52、ケーブル56(ともに図13参照)を介して露光装置33の外部に出力される。後に詳細に説明するように光量計測データはコントローラ41(図11参照)に搭載されたコントローラCPU(図示せず)にて受信、処理されて8bitの光量補正データが生成される。
【0178】
図15は本発明の実施の形態の画像形成装置1におけるコントローラ41の構成を示すブロック構成図である。以降図15を用いてコントローラ41の動作を説明するとともに、光量補正について更に詳細に説明する。
【0179】
図15において80はコンピュータである。コンピュータ80はネットワーク81に接続され、ネットワーク81を経由してコントローラ41にイメージ情報や印字枚数や印字モード(例えばカラー/モノクロ)などのプリントジョブ情報を転送する。82はネットワークインタフェースである。コントローラ41はネットワークインタフェース82を介してコンピュータ80から転送されたイメージ情報やプリントジョブ情報を受信し、イメージ情報を印字可能な2値画像データに展開するとともに、逆に画像形成装置側で検出されたエラー情報などをいわゆるステータス情報としてネットワーク81経由でコンピュータ80に送信する。
【0180】
83はコントローラCPUであり、ROM84に格納されたプログラムに基づきコントローラ80の動作を制御する。85はRAMでありコントローラCPU83のワークエリアとして使用されるとともに、ネットワークインタフェース82を介して受信したイメージ情報やプリントジョブ情報などが一時的に記憶される。
【0181】
86は画像処理部である。画像処理部86ではコンピュータ80から転送されたイメージ情報とプリントジョブ情報に基づき、ページ単位に画像処理(例えばプリンタ言語に基づくイメージ展開処理、色補正、エッジ補正、スクリーン生成など)を行って印字可能な2値画像データを生成し、これをページ単位にイメージメモリ65に格納する。
【0182】
66は例えばEEPROMなど書き換え可能な不揮発性メモリによって構成された光量補正データメモリである。
【0183】
図11は本発明の実施の形態の画像形成装置1における光量補正データメモリの内容を示す説明図である。
【0184】
以降図11を用いて光量補正データメモリにおけるデータ構造およびデータの内容について説明する。
【0185】
図11に示すように光量補正データメモリ66は第1エリアから第3エリアの三つの領域を有している。それぞれの領域は露光装置13(図13参照)を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110(図14参照)の個数と等しい5120個の8bitのデータを含み、合計15360バイトを占有している。
【0186】
まず第1エリアに格納されているデータDD[0]〜DD[5119]について図11に図13と図14を併用して説明する。
【0187】
既に説明した露光装置13(図13参照)は、その製造工程において露光装置13を構成する個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110(図14参照)の光量を調整する工程を含んでいる。この工程において露光装置13は所定の治具(図示せず)に取り付けられ、露光装置13の外部から供給される制御信号に基づいて、有機エレクトロルミネッセンス素子110が個別に点灯制御される。
【0188】
更に治具(図示せず)に設けられたCCDカメラによって、感光体8(図13参照)の像面位置における個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の二次元の光量分布が計測される。治具(図示せず)はこの光量分布に基づき感光体8上に形成される潜像の電位分布を計算し、更に実際の現像条件(現像バイアス値)に基づいてトナー付着量との相関が高い潜像断面積を計算する。治具(図示せず)では有機エレクトロルミネッセンス素子110を駆動するための駆動電流値を変化させ{既に説明したようにソースドライバ61(図14参照)を介してTFT回路62(図14参照)を構成するピクセル回路にアナログ値をプログラムすることで有機エレクトロルミネッセンス素子110を駆動する電流値を設定することができる。}個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積のどれもが略等しくなるような駆動電流値、即ちピクセル回路への設定値(制御する観点からはソースドライバ61への設定データ)を抽出する。
【0189】
さて有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光面積および発光面内における発光光量分布が等しく、かつ通常の現像条件を想定した場合、上述の潜像断面積は光量とほぼ比例する。更に「露光時間を一定としたときの発光光量」と「露光量」は同義であり、また一般的に有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光光量と駆動電流値(即ちピクセル回路への設定値)は比例するから、全てのピクセル回路への駆動電流設定を同一とした上で個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光光量を一度計測することで、各有機エレクトロルミネッセンス素子110による潜像断面積を一定にするピクセル回路への設定値(前述のごとくソースドライバ61への設定データ)を計算によって求めることも可能である。
【0190】
光量補正データメモリ66の第1エリアには、このようにして求めたソースドライバ61への設定データが格納されている。その個数は前述のごとく露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110の個数と等しい(即ちピクセル回路の個数とも等しい)5120個である。このように光量補正データメモリ66の第1エリアには「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくするためのソースドライバ61の設定値」が格納されている。
【0191】
次に第2エリアに格納されているデータID[0]〜ID[5119]について図11に図13と図14を併用して説明する。
【0192】
治具は第1エリアに格納されるデータを取得するとの同時に、露光装置13の処理回路59(図14参照)を介して光検出素子57(図14参照)の出力に基づく8bitの光量計測データを取得する。これによって「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくした際の光量計測データ」を取得できる。第2エリアにはこの8bitの光量計測データID[n]が格納されている。
【0193】
さて治具によってID[n]を取得する際の有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動条件は、光量計測時と同等にしておく必要があり、実施の形態では後述するように画像形成装置1の1ライン期間(ラスタ期間)である350μsを複数回適用して総計約30msの点灯期間を付与している。
【0194】
このようにして露光装置13の製造工程において第1エリアおよび第2エリアに格納されるデータが取得され、これらのデータは図示しない電気的な通信手段によって治具から光量補正データメモリ66に書き込まれる。
【0195】
次に第3エリアに格納されているデータND[0]〜ND[5119]について図11に図13と図14および図15を併用して説明する。
【0196】
本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、光量計測手段としての光検出素子57による計測結果に基づき、有機エレクトロルミネッセンス素子110の各々の光量を略等しく補正する光量補正手段{コントローラCPU83(図15参照)}を有し、この光量補正手段の出力に基づいて、光量設定手段(同じくコントローラCPU83)は画像形成を行なう際の各有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を設定する。第3エリアには光量補正手段たるコントローラCPU83によって画像形成を行なう際の各有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量の設定値、即ち光量補正データが書き込まれる。
【0197】
実施の形態の画像形成装置1では、画像形成装置1の初期化動作、画像形成動作の起動時、紙間、画像形成動作の完了時などにおいて、露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測することは既に述べたとおりである。コントローラCPU83はこれらの時点で計測された光量計測データと、露光装置13の製造工程において第1エリアに格納された「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくするためのソースドライバ61の設定値」と、同じく露光装置13の製造工程において第2エリアに格納された「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくした際の光量計測データ」とに基づいて光量補正データを生成する。
【0198】
以降コントローラCPU83による光量補正データの計算内容について説明するが、本発明のポイントを明確にするため、まず光量計測時の光量を画像形成時と等しくしたと想定して説明する。
【0199】
第1エリアに格納された「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくするためのソースドライバ61の設定値」をDD[n](nは主走査方向における個々の有機エレクトロルミネッセンス素子番号、以下同じ)、第2エリアに格納された「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくした際の光量計測データ」をID[n]、初期化動作などにおいて新たに計測された光量計測データをPD[n]とするとき、第3のエリアに書き込まれる新たな光量補正データND[n]は(数1)に基づきコントローラCPU83によって生成される。
【0200】
【数1】

【0201】
さて(数1)に示す計算式は光量補正データ算出にあたっての原則的な計算式であり、上述のごとく画像形成時と光量計測時の光量が等しい場合に適用されるべきものである。実施の形態では光量補正に係る光量計測の際の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を画像形成の際の光量よりも小さく設定する。これを実現するためには光量の計測をする際は、露光装置13に送出する光量補正データとしてDD[n]に1より小さい定数kを乗じ、これに基づいて有機エレクトロルミネッセンス素子110を点灯させればよい。例えばkを0.5とし、これを乗じた光量補正データDD[n]を前述したようにソースドライバ61(図14参照)を介して図示しないピクセル回路にプログラムすることで、有機エレクトロルミネッセンス素子110を、画像形成時と比較して0.5倍の光量(単位はcd/m2)で発光させることができる。そしてこのときの新たな光量補正データND[n]は(数2)に基づいて生成すればよい。
【0202】
【数2】

【0203】
このようにして生成された光量補正データND[n]は一旦光量補正データメモリ66(図15参照)のエリア3に書き込まれる。以降画像形成に先立って光量補正データND[n]は光量補正データメモリ66からイメージメモリ65(図15参照)の所定の領域にコピーされる。画像を形成するにあたってイメージメモリ65にコピーされた光量補正データND[n]は、2値画像データとともに後述するバッファメモリ88(図15参照)に一時的に蓄積され、プリンタインタフェース87(図15参照)を介してエンジン制御部42(図15参照)に出力される。
【0204】
光量計測データは前述した処理回路59(図14参照)において電荷蓄積法による電圧変換を施される。電荷蓄積法はSN比を向上させるために有効であるが、光検出素子57(図14参照)を構成する光検出素子の出力(電流値)は微小であるため、電荷蓄積にはある程度の蓄積時間を必要とする。実施の形態では蓄積時間を30ms程度とすることで光量計測におけるSN比=48dBを確保している。しかし蓄積時間を30msとすると光量の計測には長時間を要する。5120個の有機エレクトロルミネッセンス素子110(図14参照)に対して一つずつ光量を計測すると5120×30ms=154秒となってしまい、実用に耐えられるものではない。よって実施の形態では光検出素子120を構成する光検出素子57をガラス基板上に集積化して形成した多結晶シリコンセンサとし、これを偶奇の2群に分け群単位で同時に電荷蓄積を行ない、電荷蓄積後の光検出素子の端子電圧を計測することで、隣接する光検出素子間のクロストークを抑えた上で処理の高速化を実現している。これによって光量の計測は154/16=9.6秒で行なうことが可能となった。
【0205】
以降図15に戻って説明を続ける。
【0206】
88はバッファメモリであり、イメージメモリ65に格納された2値画像データおよび前述の光量補正データは、エンジン制御部42への転送にあたって一旦バッファメモリ88に蓄積される。バッファメモリ88はイメージメモリ65からバッファメモリ88への転送速度と、バッファメモリ88からエンジン制御部42へのデータ転送速度の差を吸収するため、いわゆるデュアルポートRAMによって構成されている。
【0207】
87はプリンタインタフェースである。イメージメモリ65に格納されたページ単位の2値画像データおよび光量補正データは、タイミング生成部67が生成するクロック信号やライン同期信号と同期してプリンタインタフェース87を介してエンジン制御部42に転送される。
【0208】
図17は本発明の実施の形態の画像形成装置1におけるエンジン制御部42の構成を示すブロック構成図である。以降図17に図11を併用してエンジン制御部42の動作を詳細に説明する。
【0209】
図17において90はコントローラインタフェースである。コントローラインタフェース90は、コントローラ41から転送される光量補正データ、ページ単位の2値画像データなどを受信する。
【0210】
91はエンジン制御CPUであり、ROM92に格納されたプログラムに基づき画像形成装置1における画像形成動作を制御している。93はRAMでありエンジン制御CPU91が動作する際のワークエリアとして使用される。94はEEPROMなどのいわゆる書き換え可能な不揮発性メモリである。不揮発性メモリ94には例えば画像形成装置1の感光体8の回転時間、定着器23(図11参照)の動作時間など、構成要素の寿命に関する情報が格納されている。
【0211】
95はシリアルインタフェースである。記録紙通過検出センサ21(図11参照)や記録紙後端検出センサ28(図11参照)などのセンサ群からの情報や電源監視部44(図11参照)の出力は、図示しないシリアル変換手段によって所定の周期のシリアル信号に変換され、シリアルインタフェース95で受信される。シリアルインタフェース95で受信されたシリアル信号はパラレル信号に変換された後にバス99を介してエンジン制御CPU91に読取られる。
【0212】
一方給紙ローラ18や駆動源38(ともに図11参照)の起動・停止、給紙ローラ18(図11参照)に対する駆動力伝達を制御する電磁クラッチ(図示せず)などのアクチュエータ群96に対する制御信号や、現像バイアス、転写バイアス、帯電電位などの電位設定を管理する高圧電源制御部97に対する制御信号などは、パラレル信号としてシリアルインタフェース95に送られる。シリアルインタフェース95ではパラレル信号をシリアル信号に変換してアクチュエータ群96、高圧電源制御部97に出力する。このように実施の形態では高速に検出する必要のないセンサ入力やアクチュエータ制御信号の出力は全てシリアルインタフェース95を介して行っている。一方ある程度の高速性が要求される例えばレジストローラ19を駆動/停止させるための制御信号はエンジン制御CPU42の出力端子に直接接続されている。
【0213】
98はシリアルインタフェース95に接続された操作パネルである。ユーザが操作パネル98に対して行なった指示はシリアルインタフェース95を介してエンジン制御CPU91によって認識される。実施の形態ではユーザの指示を入力する指示入力手段としての操作パネルを有し、この操作パネルへの入力に基づいて、露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測し、光量を補正するようにしている。この指示は外部のコンピュータなどからコントローラ41を経由して与えることももちろん可能である。具体的な使用態様としては、例えば大量の印字を行なった際にユーザが印字面に濃度ムラを発見したような場合に、ユーザが光量の補正を強制的に行なって画質確保を図るような場合が想定される。画像形成装置1が待機中であればユーザはいつでも強制的な光量補正の実行を指示することが可能であるし、画像形成時であっても画像形成装置1をオフラインに遷移させ画像形成を一時的に保留することで、ユーザは光量補正の実行を指示することができる。
【0214】
いずれにしても指示手段としての操作パネル98などから光量の補正要求が入力されると、エンジン制御CPU91は<初期化動作>で説明したように、画像形成装置1の構成要素の駆動を開始し、コントローラ41に対して光量補正用のダミーイメージ情報の作成要求を出力する。この要求に基づきコントローラ41に搭載されたコントローラCPU83は光量補正用のダミーイメージ情報を生成し、これに基づいて露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110は点灯制御される。このときに上述した露光装置13に設けられた光検出素子57で、個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を検出し、この光量の検出結果に基づいて個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量が略等しくなるように光量の補正を行なう。
【0215】
次に有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測する際の動作について、図17に図11、図15および図16を併用して詳細に説明する。
【0216】
既に述べたように光量の補正は画像形成装置1の起動直後の初期化動作、印字開始前、紙間、印字開始後、操作パネル98などによるユーザ指定時のタイミングで行なわれるが、簡単のために画像形成装置1の初期化動作時点で光量の計測を実行する場合について説明する。また実施の形態の画像形成装置1はフルカラー画像を形成可能に構成されたものであり、既に説明したように4色に対応した露光装置13Y〜13K(図11参照)を有しているが、これも簡単のために1色に対する動作のみを説明し、露光装置13のように記載する。また以下に示す状況において例えば駆動源38(図11参照)や現像ステーション2(図12参照)などは、<初期化動作>にて既に詳細を示したように既に起動されているものとする。
【0217】
画像形成装置1において画像形成動作を管理しているのはエンジン制御部42であるため、光量の補正シーケンスはエンジン制御部42のエンジン制御CPU91によって起動される。まずエンジン制御CPU91はコントローラ41に対して、画像形成に係る正規の2値画像データとは異なるダミーイメージ情報の作成要求を出力する。
【0218】
エンジン制御部42とコントローラ41は双方向のシリアルインタフェース(図示せず)で接続されており、リクエストコマンド(要求)およびこれに対するアクノリッジ(応答情報)を相互にやり取りすることができる。エンジン制御CPU91が発するダミーイメージ情報の作成要求は、この双方向のシリアルインタフェース(図示せず)を用いてバス99を経由しコントローラインタフェース90からコントローラ41に出力される。
この要求に基づいてコントローラ41に搭載されたコントローラCPU83はダミーイメージ情報、即ち光量の計測に用いる2値画像データをイメージメモリ65に直接的に作成する。更にコントローラCPU83は光量補正データメモリ66の第1エリア(図11参照)に格納された「初期状態において個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110によって形成される潜像断面積を等しくするためのソースドライバ61の設定値」DD[n](n:0〜5119)を読出し、これに1より小さい定数k(例えば0.5)を乗じて、有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を通常の画像形成時よりも低く設定する。そしてこの値をイメージメモリ65の所定領域に書き込む。これらの処理を完了するとコントローラCPU83はプリンタインタフェース87を介して応答情報をエンジン制御部42に出力する。
【0219】
光量を計測する際における有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を設定する上記定数kの値は、0.5(即ち光量を計測する際の光量を画像形成時の1/2にする)に限られるものではない。本発明の目的は光量を計測する際に有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光によって感光体8が露光され、それが顕画化されることによる不具合を解消するものであるから、この目的が達せられるのであれば、定数kの値はどのような値を設定してもよい。定数kを小さくするほど有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光光量は小さくなり、従って感光体8上に形成される潜像の電位ポテンシャルも小さくなる。よって現像されにくい状態となる。しかしながら光検出素子57で検出される値も小さくなるため、光量を計測する際のSN比の観点では不利となる。実際の適用にあたって定数kの値は、「現像されにくさ」と、「光量を計測する際のSN比」を考慮しながら決定する必要がある。
【0220】
また定数kの値は画像形成装置1の置かれる環境や状況に応じて変化させることが望ましい。特に電子写真方式を応用した画像形成装置1は環境(温度、湿度)、感光体8の経時劣化などによって現像特性は変化するため、例えば温湿度センサ(図示せず)や既に述べた不揮発性メモリ94に格納された寿命に関する情報に基づいてkの値を変化させることが望ましい。また既に説明した処理回路59(図14参照)による電荷蓄積時間を延長することによって実質的に計測時のSN比の改善を図ることが可能であるから、例えば画像形成装置1の機内温度の上昇が少なく、紙間において光量の計測対象となる有機エレクトロルミネッセンス素子110の数を少なくできる場合は、定数kをより小さく設定できることとなり定数kの選択の幅が拡大する。
【0221】
さて上述の応答情報を受信したエンジン制御部42のエンジン制御CPU91は、直ちに露光装置13に対して書込みタイミングを設定する。即ちエンジン制御CPU91は図示しないハードウェアであるタイマなどに露光装置13による静電潜像の書込みタイミングを設定し、応答情報を受信したら直ちにタイマの動作を開始する(この機能はもともと複数の露光装置13の色毎の起動タイミングを定めるためのものである。光量の計測においてはこのような厳密なタイミング設定は不要であり、例えばタイマに0を設定してもよい)。各タイマは予め設定された時間が経過すると、コントローラ41に対して画像データ転送要求を出力する。画像データ転送要求を受信したコントローラ41はコントローラインタフェース90を介してタイミング生成部67で生成されたタイミング信号(クロック信号、ライン同期信号など)に同期して2値画像データを露光装置13に転送する。これと同時に既にイメージメモリ65に書き込まれた「通常の画像形成時よりも低く設定された光量の設定値」も上述のタイミング信号に同期して露光装置13に転送される。なお光量計測時ではなく通常の画像形成時は、「通常の画像形成時よりも低く設定された光量の設定値」の代わりに光量補正データ(既に説明したND[n])が同じ転送経路によって露光装置13に供給されることになる。
【0222】
このようにタイミング信号に同期して転送された2値画像データは露光装置13のTFT回路62に入力され、同時に光量の設定値は露光装置13のソースドライバ61に入力される。露光装置13では入力された2値画像データ、即ちON/OFF情報に基づいて該当する有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯と消灯が制御される。そしてこのときの有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量は、光量の設定値に基づくものとなり通常の画像形成時に対する光量より低い光量で発光する。そしてこのときの個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量は光検出素子57で計測される。
【0223】
有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯がクロストークを防止するように制御され、その光量が光検出素子57によって計測される。光検出素子57の出力(アナログ電流値)は処理回路59において電荷蓄積法によって電圧に変換され、所定の増幅率で増幅された後、アナログ−ディジタル変換を施されて8bitの光量計測データ(ディジタルデータ)として処理回路59から出力される。
【0224】
処理回路59から出力された光量計測データはコントローラインタフェース90を経由してエンジン制御部42からコントローラ41に転送され、コントローラ41のコントローラCPU83によって受信される。コントローラCPU83では、図15、図16を用いて説明したように、これを(数2)のPD[n]として光量補正データND[n]を生成する。
【0225】
図18は本発明の実施の形態の画像形成装置1における露光装置13の回路図である。以降図18を用いてTFT回路62およびソースドライバ61による点灯制御についてより詳細に説明する。
【0226】
TFT回路62はピクセル回路69とゲートコントローラ68とに大別されている。ピクセル回路69は個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110に対して一つずつ設けられており、有機エレクトロルミネッセンス素子110のM画素分を一つのグループとしてガラス基板100上にNグループ設けられている。
【0227】
実施の形態においては一つのグループを8画素(即ちM=8)とし、このグループを640個としている。従って全画素数は8×640=5120画素となる。各ピクセル回路69は有機エレクトロルミネッセンス素子110に電流を供給して駆動するドライバ部70と、有機エレクトロルミネッセンス素子110を点灯制御するにあたってドライバが供給する電流値(即ち有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動電流値)を内部に含むコンデンサに記憶させる、いわゆる電流プログラム部71を有しており、予め所定のタイミングでプログラムされた駆動電流値に従って有機エレクトロルミネッセンス素子110を定電流駆動することができる。
【0228】
ゲートコントローラ68は入力された2値画像データを順次シフトするシフトレジスタと、シフトレジスタと並列に設けられシフトレジスタに所定の画素数の入力が完了した後にこれらを一括して保持するラッチ部と、これらの動作タイミングを制御する制御部からなる(共に図示せず)。ゲートコントローラ68はコントローラ41から2値画像データ(画像形成時はコントローラ41によって変換されたイメージ情報、光量計測時はコントローラ41によって変換されたダミーイメージ情報)を渡され、この2値画像データ即ちON/OFF情報に基づいてSCAN_AおよびSCAN_B信号を出力し、これによってピクセル回路69に接続された有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯/消灯を行なう期間および、駆動電流を設定する電流プログラム期間のタイミングを制御する。
【0229】
一方ソースドライバ61は内部に有機エレクトロルミネッセンス素子110のグループ数Nに相当する数(実施の形態では640個)のD/Aコンバータ72を有している。ソースドライバ61はFPC60を介して供給された8bitの光量補正データ(画像形成時は図11に示すND[n]、光量計測時は図11に示すDD[n]に1より小さい定数kを乗じた値)に基づいて、個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110に対する駆動電流を設定する。この構成によって画像形成時においては既に述べた光量補正データND[n]によって個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量が均一に制御され、光量計測時においては通常の画像形成時の光量よりも低い光量で有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量が制御される。
【0230】
図19は本発明の実施の形態の画像形成装置1における露光装置13に係る電流プログラム期間と有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯期間を示す説明図である。以降図19に図18を併用して実施の形態の点灯制御について更に詳細に説明する。以降説明を簡単にするために8画素から成る一つの画素グループ(例えば図19の「主走査方向における画素番号」=1〜8)について説明を行なう。
【0231】
実施の形態では露光装置13の1ライン期間(ラスタ期間)は350μsに設定されており、この1ライン期間のうち1/8(43.77μs)を電流プログラム部71に形成されたコンデンサに対し駆動電流値を設定するプログラム期間として当てている。
【0232】
まずゲートコントローラ68(図18参照)は画素番号=1の画素に対してSCAN_A信号をONに、SCAN_B信号をOFFにしてプログラム期間を設定する。プログラム期間にソースドライバ61(図18参照)に内蔵されたD/Aコンバータ72には8bitの光量補正データが供給されており、この供給されたディジタルデータをD/A変換したアナログレベル信号によって電流プログラム部71(図18参照)のコンデンサが充電される。このプログラム期間はゲートコントローラ68に入力される2値画像データのON/OFFに係らず実行される。これによって電流プログラム部71に形成されたコンデンサには、8bitの光量補正データ(画像形成時は図16に示すND[n]、光量計測時は図16に示すDD[n]に1より小さい定数kを乗じた値)に基づくアナログ値が1ライン期間の都度、毎回書き込まれる。即ち電流プログラム部71に形成されたコンデンサの蓄積電荷は常にリフレッシュされ、これに基づき決定される有機エレクトロルミネッセンス素子110の駆動電流は常に一定に保たれるのである。
【0233】
プログラム期間が完了するとゲートコントローラ68(図18参照)は直ちにSCAN_A信号をOFFに、SCAN_B信号をONに切り替えて点灯期間を設定する。既に説明したようにゲートコントローラ68(図18参照)には画像形成時、光量計測時に応じて2値画像データが供給されており、点灯期間であっても画像データがOFFの場合、有機エレクトロルミネッセンス素子110は点灯しない。一方画像データがONの場合、有機エレクトロルミネッセンス素子110は残りの306.25μs(350μs−43.75μs)の期間、点灯を継続する(実際は制御信号の切り替わり時間が存在するため発光時間は若干短くなる)。既に述べたように前記実施の形態では有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測する際は30msの計測期間を想定しているため、光量計測時の点灯回数は例えば100回(即ち100ライン)となるように、コントローラ41でダミーイメージ情報が生成されることとなる。
【0234】
一方、図19に示す画素番号=1のピクセル回路69(図18参照)に対するプログラム期間が終了すると、ゲートコントローラ68(図18参照)は直ちに画素番号=8のピクセル回路69(図19参照)に対する電流プログラム期間を設定する。以降、画素番号1のピクセル回路に対する手順と同様に、画素番号8のピクセル回路に対するプログラム期間が完了すると直ちに当該画素番号の有機エレクトロルミネッセンス素子110(図18参照)の点灯期間に移行する。
【0235】
このようにしてゲートコントローラ68(図18参照)は主走査方向における画素番号=「1→8→2→7→3→6→4→5→1....」の順にプログラム期間と点灯期間を設定していく。このような点灯順序とすることで、隣接する画素グループ間において最も近い画素の点灯タイミングが時間的に近接するため、1ライン形成時の画像段差を目立たなくすることができる。
【0236】
さて、ここで電流プログラム期間にピクセル回路69(図18参照)に設定される値は、前述のとおり例えば8bitの光量補正データである。有機エレクトロルミネッセンス素子110(図18参照)は例えばスピンコートなどによる塗布プロセスによって作成されるため、隣接画素相関は極めて高くなる。この効果により特定の有機エレクトロルミネッセンス素子110(図18参照)の近傍にある有機エレクトロルミネッセンス素子110(図19参照)の発光輝度は殆ど同じになる。従ってこれら近傍の有機エレクトロルミネッセンス素子110(図18参照)に対する光量補正データの相関も非常に高いため、例えば画素番号=1の光量補正データと画素番号=8の光量補正データは大きく変わらないのである。
【0237】
ゲートコントローラ68(図18参照)が制御する電流プログラム期間においては、ピクセル回路69(図18参照)に光量補正データに従った電流値を供給して、ピクセル回路69(図18参照)内の容量素子(コンデンサ)140をいわゆる定電流源にて充電することになり、充電に必要な時間は(数3)となる。
【0238】
【数3】

【0239】
(数3)によれば、充電時間は静電容量と比例しており、配線引き回しに伴う配線容量の増大によって静電容量Cが大きくなると充電時間が大きくなってしまう。実施の形態ではソースドライバを発光素子列の延長線上の位置であり、かつガラス基板100の長辺方向の端部に配置するために、ソースドライバ61(図18参照)から最も遠い画素グループでは、通常であれば配線容量による充電遅延が懸念される。
【0240】
しかし実施の形態ではソースドライバ61(図18参照)によって供給されるのは、光量補正データであり、前述したように1つの画素グループ内では光量補正データの値は同一性が高いため、同一の画素グループ内では(数3)におけるVが殆ど変化しない。結局、電流プログラムの過程では順次選択される画素番号間でのVの差が充電時間を支配するが、もともと選択された画素番号間でのVの差は非常に小さいため、充電時間は極めて短くなるのである。従ってソースドライバ61(図19参照)からの配線長が長くなることに起因する電流プログラム期間の時間的不足については、実施の形態においては殆ど問題がなくなり、これまで説明してきたようにソースドライバ61(図19参照)とピクセル回路69(図19参照)間の距離を大きく離せることとなる。
【0241】
この辺りの事情は、電流プログラム法を用いて各画素単位に駆動電流を設定し、各画素単位に64階調、256階調といった多階調を再現するディスプレイとは大きく異なっており、2値画像データに基づいて点灯/消灯を制御し、多値の光量補正データに基づいて電流プログラム法で駆動電流を設定することが可能な露光装置13ならではのメリットであるといえる。
【0242】
さて実施の形態においては露光装置13を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子110の点灯時間を一定とし、電流値を変化させることで、有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を制御する構成を前提として説明してきたが、本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子110などの発光素子の駆動電流値を固定的に設定し、点灯時間を変化させて発光素子の光量を制御する、いわゆるPWM方式においても容易に適用できる。この場合は図11を用いて説明した第1エリアの内容を「潜像断面積を等しくするための駆動時間の設定値」と置き換えればよい。
【0243】
また露光装置によっては有機エレクトロルミネッセンス素子などによって構成された発光素子列を複数列有し、感光体の回転方向に対して略同じ位置に複数回の露光を行なうことで、潜像を形成するものも知られている。このような露光装置であっても複数回の露光によって形成される潜像が現像に寄与しないように光量やPWM時間を設定することで、本発明の技術的思想を適用することが可能となる。このような露光装置では単一の発光素子列では現像に寄与する潜像は形成されないから、例えば紙間において列単位で光量を計測するようなシーケンスが考えられる。
【0244】
また実施の形態では露光装置13のガラス基板100の端面に配置した光検出素子を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子110の光量を計測しているが、本発明の技術的思想はこれに限定されるものではない。TFT回路62を構成可能な例えば低温ポリシリコンの光透過率は比較的高いため、実施の形態で説明したガラス基板100側から露光光を取り出すいわゆるボトムエミッション構成であっても、個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の内部に各有機エレクトロルミネッセンス素子110に対応する光検出素子を埋設することができる。この場合の光検出素子は例えば個々の有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光面の直下全面に形成してもよいし、その一部に対応して形成してもよい。
【0245】
以上述べてきたように、実施の形態では電子写真法を応用した画像形成装置について説明したが、本発明は電子写真法に限られるものではない。有機エレクトロルミネッセンス素子によってRGB光源は容易に実現できるため、例えば露光光源としてR光源、G光源、B光源をそれぞれ有する複数の露光装置を配置し、RGB各色の画像データに基づいて印画紙を直接的に露光する画像形成装置に対しても容易に応用が可能であることは言うまでもない。
【0246】
また、前記実施の形態では光ヘッドについて説明したが、光ヘッドに限定されることなく、表示装置あるいは、光伝送装置などに用いられる光モジュールなど、これまで基板を部分的にガラス封止していたようなアプリケーションに適用可能である。
特に、ディスプレイなどの表示装置では、今後表示面積が拡大するのは確実だが、このような大画面化された表示装置における封止面積は膨大なものとなり、ここに従来のようにガラス材料を用いて封止を行なうことは、材料コスト、製造コスト等を考慮すると現実的でない。一方、本実施の形態で説明した封止材料は、例えばロール状に大量生産することが可能である。これによって材料コストを低減し、更に製造時のハンドリングが容易になるため製造コストの低減にも寄与することができる。
【0247】
(実施の形態5)
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の実施の形態として、図20に示すように、金属材64を陰極113にコンタクトするように形成してもよい。他の構成は前記実施の形態と同様であり、同一部位には同一符号を付した。この場合は、パッシベーション膜117に開口を形成し、陰極の一部が露呈するようにし、この陰極を金属材64にコンタクトさせるようにすることにより、容易に、電極の取り出しが可能となる。
【0248】
(実施の形態6)
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の実施の形態として、図21に示すように、金属材64の内面側にポリイミド樹脂膜64aを塗布形成し、これを接着剤63に貼着している。他の構成は前記実施の形態と同様であり、同一部位には同一符号を付した。
ポリイミド樹脂は、接着剤への密着性も良好であり、金属材の機械的強度も向上することから、薄型化も可能となる。また、耐湿性も向上する。
さらにまた、このように内面側を絶縁性のポリイミド樹脂膜64aで構成しているため、前記実施の形態5の構造に比べてパッシベーション膜117を省略することができる。
【0249】
また、この封止材料は金属材を含むことから、表示装置の表示領域を封止する工程において、金属材を接地しておくことで、製造工程における発光素子の静電破壊を未然に防止することができる。更に封止が完了した後に、封止材料を直接的に接地することも極めて容易に行なえる。表示装置を駆動するドライバICチップなどをも含めて、この封止材料で封止すれば、これらの電子部品も含めて電気的なシールドを行なうことが可能となり、製造時の歩留まり、製造後の耐ノイズ性能の向上などに大いに寄与することができる。
【0250】
本発明の各種実施の形態を説明したが、本発明は前記実施の形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0251】
以上のように本発明にかかる光ヘッドおよび画像形成装置は、特に電子写真装置に
おいてトナーの無駄を防止し、かつ記録紙の裏面のトナーによる汚染を有効に防止す
ることができることから、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、フォトプリ
ンタなどへの利用が可能である。また、その他光モジュールや表示装置(ディスプレ
イ)などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概要図
【図2】本発明の実施の形態2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた光ヘッド本体部を示す平面図および断面概要図
【図3】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッド本体部の製造工程を示す断面概要図
【図4】本発明の実施の形態2に記載の光ヘッド本体部の製造工程を示す平面図
【図5】本発明の実施の形態2の変形例に記載の光ヘッド本体部の製造工程を示す平面図
【図6】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセンス素子110およびその周辺の断面図
【図7】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した平面構成説明図
【図8】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドの光量検出回路の等価回路図
【図9】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドの光検出素子の特性を示す図
【図10】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドの光量検出フローを示す図
【図11】本発明の実施の形態4の画像形成装置の構成図
【図12】同実施の形態の画像形成装置における現像ステーションの周辺を示す構成図
【図13】同実施の形態の画像形成装置における露光装置の構成図
【図14】(a)は同実施の形態の画像形成装置における露光装置に係るガラス基板の上面図、(b)は同要部拡大図
【図15】同実施の形態の画像形成装置におけるコントローラの構成を示すブロック構成図
【図16】同実施の形態の画像形成装置における光量補正データメモリの内容を示す説明図
【図17】同実施の形態の画像形成装置におけるエンジン制御部の構成を示すブロック構成図
【図18】同実施の形態の画像形成装置における露光装置の回路図
【図19】同実施の形態の画像形成装置における露光装置に係る電流プログラム期間と有機エレクトロルミネッセンス素子の点灯期間を示す説明図
【図20】本発明の実施の形態5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概要図
【図21】本発明の実施の形態6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す概要図
【符号の説明】
【0253】
1 画像形成装置
2,2Y,2M,2C,2K 現像ステーション
3 記録紙
4 給紙トレイ
5 記録紙搬送路
6 現像剤
8,8Y,8M,8C,8K 感光体
10 現像スリーブ
13,13Y,13M,13C,13K 露光装置
19 レジストローラ
20 ピンチローラ
21 記録紙通過検出センサ
41 コントローラ
42 エンジン制御部
43 電源部
51 レンズアレイ
57 光検出素子
59 処理回路
61 ソースドライバ
62 TFT回路
63 接着剤
64 封止用金属フィルム
65 イメージメモリ
66 光量補正データメモリ
67 タイミング生成部
68 ゲートコントローラ
69 ピクセル回路
70 ドライバ部
71 電流プログラム部
72 D/Aコンバータ
80 コンピュータ
83 コントローラCPU
87 プリンタインタフェース
90 コントローラインタフェース
91 エンジン制御CPU
98 操作パネル
100 ガラス基板
110 有機エレクトロルミネッセンス素子
117 パッシベーション膜
120 光検出素子
130 薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成した有機半導体素子を金属材で封止した有機半導体デバイスであって、
前記金属材は、可撓性の金属材料で構成され、
前記基板に接着剤を介して固着された有機半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材は、熱膨張係数が、10−5以下である有機半導体デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材は、膜厚が0.3mm以下である有機半導体デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材は、樹脂層との積層体を構成する有機半導体デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の有機半導体デバイスであって、
前記接着剤は、前記基板上に前記有機半導体素子を囲むように形成され、
前記金属材は、前記接着剤を介して、前記接着剤の形成された領域でのみ、前記基板に固着された有機半導体デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の有機半導体デバイスであって、
前記基板はガラス基板であり、前記ガラス基板上に前記有機半導体素子を囲むように形成された接着剤を具備し、
前記金属材は、前記接着剤を介して、前記接着剤の形成された領域でのみ、前記ガラス基板に固着された有機半導体デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材が、ニッケルまたはニッケル合金である有機半導体デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材が、鉄または鉄合金である有機半導体デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材が、ニッケル鉄クロム合金である有機半導体デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記金属材が、アルミニウムまたはアルミニウム合金である有機半導体デバイス。
【請求項11】
請求項4乃至9のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記樹脂層は、前記金属材上に形成された塗布膜である有機半導体デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記有機半導体素子は、封止用樹脂で被覆され、前記封止用樹脂の外側に金属材が配された有機半導体デバイス。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記有機半導体素子は、前記ガラス基板上に形成され、
第1および第2の電極とこれらの間に介在せしめられた発光機能を有した層を含む機能層とを備えた有機エレクトロルミネッセント素子である有機半導体デバイス。
【請求項14】
請求項6乃至12のいずれかに記載の有機半導体デバイスであって、
前記ガラス基板上に形成された光量検出素子と、前記光量検出素子上に積層された有機エレクトロルミネッセント素子とを備えた有機半導体デバイス。
【請求項15】
請求項13に記載の有機半導体デバイスであって、
有機エレクトロルミネッセント素子と、
前記有機エレクトロルミネッセント素子から出力される光を検出する光量検出回路とを具備し、
前記光量検出回路が、光検出素子と、前記光検出素子に並列接続された容量素子と、前記容量素子に接続され、前記容量素子の読み出しを制御するスイッチング用の薄膜トランジスタとを備え、前記有機エレクトロルミネッセント素子の光量を検出するように構成されており、
少なくとも前記光検出素子および前記有機エレクトロルミネッセント素子が前記金属材で封止され、光ヘッドを構成する有機半導体デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の有機半導体デバイスであって、
前記有機エレクトロルミネッセント素子は、前記ガラス基板の端面から所定の間隔を隔てた位置にライン状に形成された有機半導体デバイス。
【請求項17】
請求項15に記載の有機半導体デバイスであって、
前記ガラス基板は前記有機エレクトロルミネッセント素子の素子列の両端に、前記金属材から露呈する領域を具備し、
前記領域に検査用端子が配設された有機半導体デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の有機半導体デバイスであって、
前記素子列は前記素子列の両端側からジャンパー線を介して給電されるように構成された有機半導体デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載の有機半導体デバイスであって、
前記ガラス基板の一辺に相対向する一辺側の前記金属材から露呈する領域に、前記発光素子を駆動するための駆動用ICチップが搭載された有機半導体デバイス。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれかに記載の有機半導体デバイスで構成された光ヘッド。
【請求項21】
請求項20に記載の光ヘッドを像形成用の露光手段として用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−287557(P2007−287557A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115854(P2006−115854)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】