説明

有機溶媒ソノケミストリーによるナノ粒子合成法

【課題】ソノケミストリーにより、簡単な手法で、金属酸化物系のナノ粒子だけでなく、金属酸化物以外のナノ粒子を、均一な粒子径を持つナノ粒子として合成する技術の開発。
【解決手段】ソノケミストリーによりナノ粒子前駆体と安定化剤とを含有する液状混合系からナノメーターサイズの粒子を形成させる反応場に、より低沸点を有する有機溶媒を共存せしめ、該有機溶媒存在下に該ナノメーターサイズの粒子形成を行うことで、均一な形状とその粒子径が比較的均一であるナノ粒子を簡単に合成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒ソノケミストリーによるナノ粒子合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメーターサイズの粒子(ナノ粒子)は、様々な特有の優れた性状・特性・機能を示すことから、材料・製品のすべてに対して、現状よりも高精度で、より小型化、より軽量化の要求を満たしている技術を実現するものとして期待されている。このようにナノ粒子は、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料などの高機能・高性能・高密度・高度精密化を可能にするものとして且つ21世紀の材料として注目されている。最近のナノ粒子に関する基礎研究から、ナノ粒子の量子サイズ効果による超高機能性や新しい物性の発現、新物質の合成などの発見も相次いでいることから産業界からも大きな関心を集めている。
【0003】
ナノ粒子合成法は、様々な方法が提案されている。しかし、多くの場合、ナノ粒子の表面エネルギーが極めて高いために凝集しやすく、そのためナノ粒子本来の機能が発現されずにあることが多い。一度凝集したナノ粒子は再分散させることはできず、その段階で界面活性剤等を用いても、ナノ粒子を分散させることはできない。
それを解決するための方法として、ナノ粒子合成場に界面活性剤を共存させ、ナノ粒子が生成すると同時に界面活性剤をその表面に吸着させて安定化・溶媒分散させる方法がある。逆ミセル法では、有機溶媒中に1あるいは2種類の反応性原料水溶液を界面活性剤とともに注入することで逆ミセルを形成させ、熱分解あるいは、異なる反応液からなる逆ミセル同士が合体することで反応させ、それと同時に界面活性剤が生成したナノ粒子を安定化する方法である。ホットソープ法は、界面活性剤そのものを溶媒とし、金属水溶液を注入・激しく攪拌することで微小水滴ミセルを形成させ、熱分解あるいは、2種類の反応性原料間の反応で合成されるナノ粒子を周囲の界面活性剤が被覆保護するものである。
【0004】
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、超音波を用いたソノケミストリーによるナノ粒子の合成は行われてきたが、一般に生成するナノ粒子の凝集を抑制するために界面活性剤中で行い、ナノ粒子生成と同時に界面活性剤で安定化するものであった。ソノケミストリーの原理は、ミクロバブルを発生させてその生成消滅過程でのミクロ反応場のエネルギーを利用するものであり、界面活性剤の沸点が高く、十分に均一にバブルを発生することができなかった。また、金属酸化物系のナノ粒子だけでなく、金属酸化物以外のナノ粒子にも適用でき、且つ、均一な粒子径を持つナノ粒子を、簡単な手法で合成する技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究の結果、より低沸点の有機溶媒を使用することにより、超音波を用いたソノケミストリーでもって、様々なナノ粒子を合成することに成功し、こうして得られたナノ粒子は均一な形状とその粒子径が比較的均一であることを見出した。こうした知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
代表的な態様では、本発明は、次のものを提供している。
〔1〕 ナノ粒子前駆体とナノ粒子安定化剤とを含有する液状混合系からソノケミスト
リーによりナノメーターサイズの粒子を形成させる反応場に、低沸点の有機溶媒を共存せしめ、該有機溶媒存在下に超音波照射を加えて該ナノメーターサイズの粒子形成を行うことを特徴とするナノメーターサイズの粒子の製造法。
〔2〕 ナノ粒子安定化剤が、有機カルボン酸類、有機窒素化合物類、有機硫黄化合物類、及び、有機リン化合物類からなる群から選択されたものである上記〔1〕に記載のナノメーターサイズの粒子の製造法。
〔3〕 有機溶媒が、沸点200℃以下の低沸点溶媒である上記〔1〕又は〔2〕に記載
のナノメーターサイズの粒子の製造法。
〔4〕 有機溶媒が、メタノール、エタノール又はジメチルホルムアミド(DMF)である
上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載のナノメーターサイズの粒子の製造法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の技術によれば、3〜40nmの球状のナノ粒子とか長さ4〜300nmで且つ幅1〜5nmの
棒状のナノ粒子などの様々な形状のナノ粒子を比較的粒子サイズが均一な集団として得ることができる。また、2種類以上の金属からなる前駆体を原料とすることで、2、3元系複
合金属酸化物を含め多元系金属含有ナノ粒子を合成できる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ソノケミストリーでナノ粒子を合成する技術並びに本技術で得られたナノ粒子を提供する。外部からの熱や力が液体を維持するために必要な力に打ち勝ったときに気泡は発生するが、同様に、液体や溶液に超音波を照射した場合にも、局所的な圧力変動により気泡が発生する。超音波により発生した気泡は、断熱圧縮過程で短時間にエネルギーが集中し、その崩壊時には、5,000〜数万度、1,000数百気圧の高温・高圧の局所場を形成すると考えられている。つまり、周波数20kHzから数MHzの強力な超音波を液体や溶液に照射するとキャビテーションが発生する。キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象である。キャビテーションによる気泡の崩壊時には、短寿命の高温・高圧の局所場(ホットスポット)が形成されることが知られている。この反応場は一種の極限反応場として機能し、様々な応用分野で利用できる。ソノケミストリーは、超音波に由来するキャビテーションを利用した化学作用を扱う分野を指しており、超音波キャビテーションによって生じるホットスポット周辺での反応場での化学を言っている。そして、ソノケミストリーは、全体としては、常温常圧であるため、簡単な装置で行うことが可能である。キャビテーションの生じやすさ、すなわち、キャビテーションの発生する圧力はキャビテーション閾値といわれ、液体の粘度、蒸気圧、表面張力などの物理化学的性質と超音波照射条件に依存する。一般には,周波数が低いほどキャビテーションは発生しやすい。
【0010】
本発明のソノケミストリーによるナノ粒子形成法は、欠陥や不純物濃度の低い高品位のナノ粒子形成に適している。本ソノケミストリーナノ粒子形成法とは、ホットスポットでの局所的な高温高圧状態の環境下、所定の液性媒質を保持する容器中で、原料(ナノ粒子前駆体)から粒子を得る方法の総称であるが、本発明では、特に、液性媒質として実質的な量の低沸点の有機溶媒の共存下でのナノ粒子形成を行う技術を指している。
【0011】
ソノケミストリーでは、発振器、振動子、反応容器を使用して粒子形成を行うことができる。超音波発信用振動子には、チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛などのセラミックス振動子やチタン酸バリウムなどの電歪振動子を2枚の厚い金属円筒型の金属で挟み込んだランジェバン振動子などが用いられてよい。また、振動子の先端に取り付けた超音波ホーンを用いて外部から試料溶液に直接超音波を導入する方法もある。コーン型振動子を利用することもできるし、流通型反応器の形態にすることも可能である。超音波照射装置は、当該分野で知られた装置を利用でき、そうした超音波照射装置は、ソニケーター又は超音波ホモジナイザーとしても知られており、市販されているので、そうしたものの中から適切なものを選択して使用でき、例えば、株式会社セントラル科学貿易などからブランソン(BRANSON)社製超音波ホモジナイザー、ホーン型プローブ(タップ型ホーン、ソリ
ッド型ホーン)付き高強度超音波照射装置、例えば、BRANSON Model 250D, BRANSON Model 450Dなどを使用できる。
【0012】
本発明では、ホットソープ法で用いられる界面活性剤を、形成されたナノ粒子の安定化剤として存在している環境で、ナノ粒子前駆体よりのナノ粒子形成が行われる。特に、本発明えは、当該安定化剤及び原料ナノ粒子前駆体に対し、いずれにも親和性が高く、低沸点の溶媒を選択して共存させることを特徴としている。これにより、均一相を形成させつつ、キャビテーション発生を制御して、ナノ粒子を良好に合成させることができる。本発明で「ナノ粒子」とは、ナノメーターサイズの粒子を指しており、例えば、粒子が金属酸化物であるナノ粒子、すくなくとも2種類以上の金属元素からなる複合酸化物であるナノ粒子、金属であるナノ粒子、すくなくとも2種類以上の金属からなる複合金属であるナノ粒子、周期表第5族元素を含有する半導体化合物であるナノ粒子、周期表第6族元素を含有する半導体化合物であるナノ粒子、上記のナノ粒子が結晶ナノ粒子であるものなどである。該ナノ粒子は、代表的には、金属元素を含有しているナノ粒子が包含されうる。本発明の方法では、金属酸化物結晶ナノ粒子を製造することができる。
【0013】
本発明のナノ粒子形成の反応場に存在する安定化剤としては、所望のナノ粒子を形成できる反応場を提供するもの、及び/又は、所望のナノ粒子を形成できる反応場で、形成されたナノ粒子を安定化できるものであれば、特に限定されることはなく、例えば、当該分野で知られたものを使用できる。好適には、該安定化剤としては、上記したようにホットソープ法で用いられる界面活性剤を使用することができる。該安定化剤としては、形成するナノ粒子を安定化する作用のあるものを好適に使用できるし、超音波照射条件下での局所的な高温高圧スポットの存在する液相で有機修飾剤として機能するものも好適に使用できる。該安定化剤としては、例えば、有機カルボン酸類、有機窒素化合物類、有機硫黄化合物類、有機リン化合物類などが挙げられる。当該安定化剤は、本発明の目的効果を著しく損なわない限り任意に選択されることができるし、適宜1種類以上組み合わせて使用することもできる。有機カルボン酸類としては、本発明の目的効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、例えば、脂肪族カルボン酸類、脂環式カルボン酸類、芳香族カルボン酸類などが挙げられ、好適には脂肪族カルボン酸類から選択されて使用できる。カルボン酸類の炭素数は、本発明の目的効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5以上、ある場合には6以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、また、通常24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下であってよい。好ましい態様では、カルボン酸類としては、例えば、長鎖アルキルカルボン酸類が挙げられ、典型的には、C6〜C18の長
鎖アルキルカルボン酸が好ましい。カルボン酸類としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸などが挙げられる。特に好ましくは、オレイン酸が挙げられる。
【0014】
有機窒素化合物類としては、例えば、有機アミン類、有機アミド化合物類、窒素含有複素環式化合物類などが挙げられる。有機アミン類としては、1級アミン類、2級アミン類
及び3級アミン類のいずれであってもよいが、好ましくは1級アミン類、2級アミン類が挙げられる。有機アミン類としては、例えば、脂肪族アミン類などが挙げられ、1級脂肪族アミン類、2級脂肪族アミン類を挙げることができる。アミン類の炭素数は、本発明の目的効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、例えば、通常は8以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上で、また、通常24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。好ましい態様では、有機窒素化合物類としては、例えば、長鎖アルキルアミン類が挙げられ、典型的には、C6〜C18の長鎖アルキルアミンが好ましい。代表的
な脂肪族アミン類としては、例えば、オレイルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン類、アニリン等の芳香族アミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水酸基含有アミン類、さらにそれらの誘導体などが挙げられる。特に好ましくは、オレイルアミンが挙げられる。本発明の一つの態様では、上記カルボン酸類から選択されたものと上記有機アミン類から選択されたものとから成る混合物からなるものも好適に使用される。例えば、オレイン酸とオレイルアミンとを使用する場合も、ある場合では好適である。窒素含有複素環式化合物類としては、例えば、窒素原子を1〜4個含有している飽和又は不飽和の3〜7員環を有する複素環式化合物類が挙げられるが、当該化合物はさらに複素原子として硫黄原子、酸素原子などを含有していてもよい。代表的な窒素含有複素環式化合物類としては、例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類などが挙げられる。
【0015】
有機硫黄化合物類としては、例えば、有機スルフィド類、有機スルホキシド類、硫黄含有複素環式化合物類などが挙げられる。代表的な有機硫黄化合物類としては、例えば、ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、チオフェン、チオラン、チオモルホリン等の硫黄含有複素環式化合物類などが挙げられる。
【0016】
有機リン化合物類としては、例えば、リン酸エステル類、フォスフィン類、フォスフィンオキシド類、トリアルキルフォスフィン類、亜リン酸エステル類、フォスフォン酸エステル類、亜フォスフォン酸エステル類、フォスフィン酸エステル類、亜フォスフィン酸エステルなどが挙げられる。代表的な有機リン化合物類としては、例えば、トリブチルフォスフィン、トリヘキシルフォスフィン、トリオクチルフォスフィン等のトリアルキルフォスフィン類、トリブチルフォスフィンオキシド、トリヘキシルフォスフィンオキシド、トリオクチルフォスフィンオキシド(TOPO)、トリデシルフォスフィンオキシド等のトリアルキルフォスフィンオキシド類などが挙げられる。有機リン化合物類としては、分子中に炭素−リン単結合を有する化合物は好適であり、TOPO等のトリアルキルフォスフィンオキシド類は最適である。
通常、上記安定剤は、原料と溶媒との溶解性を十分に考慮して決定することが好ましい。例えば、均一相を構成するように選択することが好適であり、それが可能であれば、より炭素鎖の短い分子種を使用することも可能である。上記安定化剤は、有機修飾剤として機能するものであってもよく、その場合、好適には、下記する有機分子残基を提供できるように、当該有機分子残基を置換基として含有しているものを使用できる。
【0017】
かかる安定化剤は、単独で液相媒質を構成しても、必要に応じ複数種を混合して使用しても構わず、更に適当な有機溶剤(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、オクタデカン等の長鎖アルカン類を含めたアルカン類、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式炭化水素等)で希釈して使用しても構わない。また、下記する、ナノ粒子前駆体と安定化剤とを含有する液状混合系からナノメーターサイズの粒子を形成させる反応場に共存させる有機溶媒で希釈して使用しても構わ
ない。
【0018】
本発明で使用する、ナノ粒子前駆体と安定化剤とを含有する液状混合系からナノメーターサイズの粒子を形成させる反応場に共存させる有機溶媒としては、超音波照射条件下に良好なナノ粒子形成場を提供するような性状のもの、特には低沸点を有するものであれば特に限定されないが、例えば、安定化剤および原料水溶液に対し、いずれにも親和性が高く、分解性が低く、キャビテーション発生が良好で、反応によりナノ粒子形成を可能にするものが好ましい。該有機溶媒は、原料、そして安定化剤を溶解するものが好適である。該溶媒としては、一般に、極性溶媒にも有機溶媒にも親和性を有するものが好まれ、そうした性状のものであれば、特に制限されることなく使用可能と考えられる。該有機溶媒としては、沸点200℃以下の低沸点溶媒が挙げられ、例えば、水酸基を有するアルコール類
、カルボニル基を有するケトン類又はアルデヒド類、シアノ基を有するニトリル類、ラクタム化合物、オキシム化合物、アミド基を有するアミド類ないしは尿素類、アミノ基を有するアミン類、スルフィド類、スルホキシド類、リン酸エステル類、カルボン酸又はカルボン酸誘導体であるエステル、炭酸又は炭酸エステル、エーテル類などが挙げられる。
【0019】
水酸基を有するアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、オクタノール、シクロオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘプタノール、メトキシエタノール、クロロエタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロプロパノール、フェノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。カルボニル基を有するケトン類又はアルデヒド類として、例えば、アセトン、2-ブタノン、3-ペンタノン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。シアノ基を有するニトリル類として、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。ラクタム化合物として、例えば、ε-カプロラクタム等が挙げられる。オキシ
ム化合物として、例えば、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0020】
アミド基を有するアミド類ないしは尿素類として、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N'-ジメチルエチレン尿素、N,N'-ジメチルプロピレン尿素
、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラミド等が挙げられる。アミ
ノ基を有するアミン類として、例えば、キノリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。スルホキシド類として、例えば、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。リン酸エステル類として、ヘキサメチレンフォスホリックアシッド等が挙げられる。カルボン酸及びエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸アミル、乳酸エチル、ギ酸、酢酸、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピレンカーボネート、3-エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジグライム、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)、1,2-ジメトキシエタン、メトキシメチルブタノール、ブチルカルビトール、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブリツセロソルブ、アニソール、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,3-ジオ
キサン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。中でも、DMFを好適に使用できる。当該有機
溶媒は、本発明の目的効果を著しく損なわない限り任意に水性溶媒とされていてもよいし、適宜1種類以上組み合わせて使用することもできる。有機溶媒は、その沸点が上記安定化剤より低いものが使用でき、DMFの沸点は153℃であり、その近傍又はそれ以下の沸点を有するものが好ましく使用できる。
【0021】
原料であるナノ粒子前駆体は、使用する安定化剤、及び/又は、安定化剤と有機溶媒の混合物に溶解するものを好ましく使用できが、製造操作上の簡便性の理由で液状であるものも好適に使用できる。原料物質は、必要に応じて適当な有機溶媒又は水、あるいはそれらの混合物の溶液としても構わないが、原料物質自身が常温で液体であればそのまま使用して良い。本発明では、ナノ粒子前駆体は、反応場で均一系を形成可能であるものを、好適に使用できる。また、本発明では、反応場で均一系を形成可能であり、水溶性の原料前駆体を使用できる。
【0022】
ナノ粒子前駆体としては、所望のナノ粒子を与えるものを好適に使用でき、それらは所望のナノ粒子が得られる限り任意の物質を使用することができる。したがって、製造しようとするナノ粒子に含有される元素を含有する単体や化合物から適切なものを任意に選択して使用することができる。好ましくは、市販されており容易に入手できるもの、あるいは、それから容易に導くことができるものを使用する。例えば、金属元素を含有するナノ粒子の場合には、金属ナノ粒子(金属化合物ナノ粒子)前駆体としては、例えば、金属ハロゲン化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属アルコキシド、金属アルキルキサントゲン酸塩、金属カルボニル化合物などの金属錯体化合物、金属水酸化物などが挙げられる。代表的な金属ナノ粒子前駆体としては、例えば、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属アミン錯体、金属アセトン錯体、金属アセチルアセトナートなどが好適に用いられる。さらには、所望のナノ粒子の構成元素供与体として、当該構成元素を含有している化合物を共存させるようにして使用できる。そうした構成元素供与体としては、当該分野で知られたものを使用でき、例えば、チオ尿素、セレノ尿素などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
ナノ粒子前駆体としては、所望の金属酸化物結晶ナノ粒子を与えるものも好適に使用でき、それらは所望の金属酸化物結晶ナノ粒子が得られる限り任意の物質を使用することができる。したがって、製造しようとする金属酸化物結晶ナノ粒子に含有される金属元素を含有する金属単体や金属化合物から適切なものを任意に選択して使用することができる。金属酸化物前駆体としては、例えば、金属塩化物、金属アセテート、金属アセチルアセトナート、金属アルコキシド、金属水酸化物などが挙げられる。これらの中でも、副生する不純物(例えば塩化物など)の観点から、金属アルコキシド、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属アセチルアセトナート、金属水酸化物が好適に用いられる。該前駆体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。前駆体は、反応液中においてどのような状態で存在していても良いが、通常は、前駆体は反応系内で溶解した状態で存在する。
【0024】
本発明のナノ粒子を構成する「金属」としては、典型的にはナノ粒子を製造することが可能なものであれば特に限定されず、当業者に知られたものから選択して使用できる。代表的な金属としては、長周期型周期表で第IIIB族のホウ素(B)-第IVB 族のケイ素(Si)-第VB族のヒ素(As)-第VIB 族のテルル(Te)の線を境界としてその線上にある元素並びにその境界より、長周期型周期表において左側ないし下側にあるものが挙げられ、例えば、第VIII族の元素ではFe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなど、第IB族の元素ではCu, Ag, Auなど、第IIB 族の元素ではZn, Cd, Hgなど、第IIIB族の元素ではB, Al, Ga, In, Tlなど、
第IVB 族の元素ではSi, Ge, Sn, Pbなど、第VB族の元素ではAs, Sb, Biなど、第VIB 族の元素ではTe, Poなど、そして第IA〜VIIA族の元素などが挙げられる。第VIIA族の元素では、Mn, Tc, Reなど、第VIA族の元素では、Cr, Mo, Wなど、第VA族の元素では、V, Nb, Ta
など、第IVA族の元素では、Ti, Zr, Hf など、第IIIA族の元素では、Sc, Y, ランタノイ
ド(例えば、La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Yb, Luなど)、アクチノイド(Ac, Thなど)、ミッシュメタルなど、第IIA族の元素では、Be, Mg, Ca, Sr, Ba など、第IA族の元素では、Li, Na, K, Rb, Csなどが挙げられる。
【0025】
本発明のナノ粒子は、(a)金属酸化物であるナノ粒子、(b)すくなくとも2種類以上の金属からなる複合酸化物であるナノ粒子、(c)金属であるナノ粒子、(d)すくなくとも2種類以上の金属からなる複合金属であるナノ粒子、(e)周期表第5族元素を含有する半導体化
合物であるナノ粒子、(f)上記(a)〜(e)のナノ粒子が結晶ナノ粒子であるものを包含する
。本発明のナノ粒子は、粒子が周期表第6族元素を含有する半導体化合物であるナノ粒子も包含する。また、好適なものは、粒子が硫黄化合物であるナノ粒子が挙げられ、例えば、ナノ粒子がZnSであるものが挙げられる。
【0026】
本発明では、ナノ粒子前駆体とナノ粒子安定化剤とを含有する液状混合系に高強度の超音波を照射できる装置の超音波照射プローブを浸漬するなどして系内に超音波照射することで、ミクロバブル発生とその生成消滅過程でのミクロ反応場でのエネルギー利用により、ソノケミストリーによりナノメーターサイズの粒子を形成させるが、その反応場に、低沸点の有機溶媒を共存せしめ、該ナノメーターサイズの粒子形成を行うことを特徴とする。本ソノケミストリーでの化学反応は、温度上昇によって反応性が向上されるわけでなく、主に当該溶媒系の性質に関係して、低温で反応が進行する。従って、装置を簡素化でき、安価且つ簡単な操作で均一な粒子サイズのナノ粒子合成を実施できる。超音波照射を行う場合、超音波自体に分散化能力が備わっているので、攪拌機又はスターラーによる攪拌はとくには要求されない。超音波の発生源は、洗浄用に用いられる超音波洗浄機、粒子の凝集の破砕や乳化に用いられる超音波ホモジナイザーなど、上記した様に、超音波を発生させる装置であればよく、特に限定されることなく目的に応じて選択して適宜使用できる。超音波の周波数は、超音波として指定されているもので、16〜10,000kHzの範囲が使用
でき、代表的な場合、20 kHzとか40kHzが挙げられる。超音波の照射強度としては、0.5〜20W/cm2とすることができる。超音波照射装置の出力としては、例えば、200W、400W、800W、1100Wなどのものが市販されて知られているが、それには限定されない。
【0027】
超音波照射の時間は、所望のナノ粒子を得るように選択できるが、例えば、5〜60分間とすることができる。反応時間は、特に、原料の反応性および安定化剤や添加有機溶媒の熱力学的パラメーターの数値に依存する。上記温度範囲は、目的とするナノ粒子の種類、組成に応じて選択することも可能である。超音波照射に際しては、適宜、50〜90℃、好ましくは55〜80℃、さらに好ましくは60〜75℃、もっと好ましくは65〜70℃に溶液系を加温してから行うことができる。超音波照射は、反応容器の側面、底面、天面、あるいは内部の中心部などのいずれかから、あるいはこれらの全てから行うこともできるが、典型的な場合、プローブを液中に挿入して中心部から行うことが好ましい。超音波照射手段は、側面や底面などのそれぞれに1箇所に配置するものであってよいし、あるいは、複数個所に均一に分散させて配置するものであってもよい。ナノ粒子形成は、流通式の反応装置を用いて連続式で行ってもよいし、バッチ式の反応装置を用いてバッチで行ってもよい。反応容器又は反応装置は、直方体や円筒体に限られず、他の形態のものであってよい。
超音波照射する際の条件は、使用ナノ粒子前駆体、ナノ粒子安定化剤、より低沸点の有機溶媒などの種類や使用量、反応容器の形状、超音波照射装置の種類や数など様々なパラメーターを考慮して、実験により、最適な値を決定できる。
【0028】
反応用出発混合物中のナノ粒子前駆体と安定化剤との比率は、所望のナノ粒子生成物が得られるよう、適宜、実験を行うなどして決定でき、特には限定されないが、例えば、そのナノ粒子前駆体: 安定化剤の比率を、モル比で、約1:10,000〜約1:1、好ましくは約1:2,500〜約1:2、さらに好ましくは約1:250〜約1:4、ある場合には約1:150〜約1:5であり、
さらに好ましくは、約1:100〜約1:6、より好ましくは約1:70〜約1:8、もっと好ましくは
約1:50〜約1:10とすることができる。反応用出発混合物中のナノ粒子前駆体: 安定化剤の比率を、モル比で、約1:60〜約1:40としたり、約1:35〜約1:15としたり、約1:30〜約1:20としたり、約1:35〜約1:20としたり、約1:25〜約1:15としたりしてもよい。反応用出発混合物中の安定化剤と有機溶媒の比率は、所望のナノ粒子生成物が得られるよう、適宜、実
験を行うなどして決定でき、特には限定されないが、例えば、その安定化剤:有機溶媒の
比率を、容量比(v/v)で、約1,000:1〜約1:1,000、好ましくは約100:1〜約1:100、さらに
好ましくは約20:1〜約1:20、ある場合には約10:1〜約1:10であり、さらに好ましくは、約5:1〜約1:5、より好ましくは約5:1〜約2:1、もっと好ましくは約4.5:1〜約2.5:1とすることができる。
【0029】
反応時間については、目的とするナノ粒子の種類、用いる原料、安定化剤の種類、製造するナノ粒子の大きさや量によっても異なるが、通常、数分間から数時間とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温または降温させることもできる。所望のナノ粒子を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、そのまま放冷してもかまわないし、空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することもできる。本発明の方法では、反応時間、前駆体: 安定化剤の比率、長鎖脂肪アミンや長鎖脂肪酸の炭素鎖の長さ、反応温度などのパラメーターを変えることで、2〜22 nmの粒子サイズのナノ粒子を、それぞれ得ることができる。5 nmの幅を有する棒状ナノ粒子やワイアー状ナノ粒子を得ることができ、さらに、均一な大きさのキューブ状ナノ粒子を取得することができる。
【0030】
本発明の一つの典型的な合成工程では、50mLのガラス製ビーカーに、所要量のジメチルホルムアミド(DMF)と30mLのリガンド形成用溶媒を入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温す
る。その溶液中へ所要量の前駆体(プリカーサー)を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得る。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中
に直接浸し、超音波照射(ultrasound irradiation: USI)を開始する。数分間の照射の後
、その澄んだ溶液は濁ることになる。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。USIを所望の時間の間継続する。USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させる。遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させる。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のリガンドのほとんどすべてを取り除く。こうして所望のナノ粒子を簡単な手法で容易に得ることができる。
【0031】
本明細書中、用語「ナノ粒子」とは、上記したように、ナノメーターサイズの粒子を指しており、例えば、その平均粒子径が1 μm(1,000 nm)以下のサイズのものを指しおり、
好ましくはその平均粒子径が 200 nm 以下のサイズのものを指し、また、好ましくは150 nm以下のサイズのものが挙げられる。ある場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が100 nm以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が50 nm 以下のサイズのものであってよい。また好適な場合には、該ナノ粒子は、その平均粒子径が20 nm 以下のサイズのもの、また別の場合にはその平均粒子径が10 nm 以下のサイズのものあるいは5 nm以下のサイズのものであってよい。該ナノ粒子は、0.1〜50nmの粒子、1〜50nmの粒子、好
ましくは1〜25nmの粒子、さらに好ましくは1〜20nmの粒子、より好ましくは5〜20nmの粒子、さらにより好ましくは5〜10nmの粒子である。また好適な場合には、該ナノ粒子の粒
子サイズは均一なものが好ましいが、一定の割合でその粒子サイズの異なるものの混合しているものが好ましい場合もある。
【0032】
本発明の技術では、5 nmの粒子サイズのもの、2〜7 nmの粒子サイズのもの、2〜2.5 nmの粒子サイズのもの、さらにはナノ粒子集団の70%又はそれ以上、80%又はそれ以上、90%又はそれ以上、95%又はそれ以上が、5 nmの粒子サイズのもの、2〜7 nmの粒子サイズ
のもの、あるいは、2〜2.5 nmの粒子サイズのものであるものが得られる。本発明の手法
で得られるナノ粒子集団としては、1〜5nmの粒子、5〜10nmの粒子、10〜15nmの粒子、15
〜20nmの粒子、20〜30nmの粒子、30〜50nmの粒子、1〜3nmの粒子、3〜5nmの粒子、5〜7nmの粒子、7〜10nmの粒子、10〜13nmの粒子、13〜16nmの粒子、16〜20nmの粒子、又は、20
〜25nmの粒子であって、且つ、ナノ粒子集団の70%又はそれ以上、80%又はそれ以上、90
%又はそれ以上、95%又はそれ以上が当該サイズのものとして含んでいるものが挙げられる。
【0033】
上記サイズは、ナノ粒子の形状が、棒体、円柱体、直方体、楕円柱体などの場合は、短軸のサイズが上記粒子サイズの小さな値とし、長軸のサイズをその短軸のサイズより大きな値としものであってよい。ナノ粒子は、球体、立方体、多角形立方体、棒体、円柱体、卵形状体、正方晶、六方晶、三方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶、ウルツ鉱型結晶、単一壁または複数壁ナノチューブの形状、あるいはその他のナノスケールの形状であってもよい。それらは、非常に興味深い電気的・光学的特性を現わすものである。
粒子径の測定は当該分野で知られた方法によりそれを行うことができ、例えば、TEM、
吸着法、光散乱法、SAXSなどにより測定できる。TEMでは電子顕微鏡で観察するが、粒子
径分布が広い場合には、視野内に入った粒子が全粒子を代表しているか否かに注意を払う必要がある。吸着法は、N2吸着などによりBET 表面積を評価するものである。
【0034】
本発明のソノケミストリーナノ粒子形成法では、金属単体からなるナノ粒子、2種以上の金属元素からなる合金ナノ粒子(例えば、二元系合金ナノ粒子、三元系合金ナノ粒子、四元系合金ナノ粒子、多元系合金ナノ粒子など)、半導体ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、蛍光体ナノ粒子、導電体ナノ粒子、顔料ナノ粒子などを、簡単な手法で、有利に、大量に、及び/又は、安価に、そして、均一に分散しているとか、均質なものといった高品質のものを製造できる。したがって、当該ナノ粒子を使用して、高度な性能を有する製品を製造することを可能にする。
【0035】
本ソノケミストリーナノ粒子形成法で製造される金属ナノ粒子、合金ナノ粒子としては、上記金属から選択されたものであり、例えば、Cu, Ag, Auなどの長周期型周期表第IB族の元素(銅族元素)、Fe, Co, Ni, Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Ptなどの周期表第VIII族の元素(鉄族元素及び/又は白金族元素)、Zn, Cd, Hgなどの周期表第IIB族の元素(亜鉛族元
素)、Mn, Tc, Reなどの周期表第VIIA族の元素(マンガン族元素)、Cr, Mo, Wなどの周
期表第VIA族の元素(クロム族元素)、V, Nb, Taなどの周期表第VA族の元素(土酸金属元素)、Ti, Zr, Hf などの周期表第IVA族の元素(チタン族元素)、Sc, Y, ランタノイド
(例えば、La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Yb, Luなど)、アクチノイド(Ac, Thなど)、ミッシュメタルなどの周期表第IIIA族の元素(希土類元素を含む)、B,
Al, Ga, In, Tlなどの周期表第IIIB族の元素(アルミニウム族元素)、Si, Ge, Sn, Pb
などの周期表第IVB族の元素(炭素族元素)、As, Sb, Biなどの周期表第VB族の元素、Te,
Poなどの第VIB 族の元素、Mg, Ca, Sr, Ba などの周期表第IIA族の元素などから選択さ
れた元素で構成されるものが挙げられる。当該ナノ粒子は、単独でも、あるいは、複数の元素を含むものであってよい。また、合金では、上記の元素から選択されたものを二種以上含有するものが挙げられてよい。
【0036】
本発明のソノケミストリーナノ粒子形成法で製造される半導体ナノ粒子としては、周期表第4B族元素の単体(本発明においてはIV族半導体と称する)、例えば、炭素(C)〔例えば
、ダイアモンドなど〕、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)〔例えば、α-Snなど〕
、鉛(Pb)など、周期表第5B族元素の単体、例えば、リン(黒リン)、ヒ素(As) 、アンチモ
ン(Sb)など、周期表第6B族元素の単体、例えば、セレン(Se)、テルル(Te)など、複数の周期表第4B族元素からなる化合物、例えば、SiC、Si1-xGexなど、周期表第4B族元素と周期
表第5B族元素との化合物、例えば、Si3N4など、周期表第4B族元素と周期表第6B族元素と
の化合物、例えば、SiO2、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II)(SnS)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫
化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)など、周期表第3B族元素と周期表第5B族元素との化合物(本発明においてはIII-V族化合物半導体と称する)、例えば、窒化ホウ素(BN)
、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、AlxGa1-xN、AlxGa1-xA
s、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、GaInP2、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、InxGa1-xAs、アンチモン化インジウム(InSb)、Ga-Al-In-Asなど、周期表第3B族元
素と周期表第6B族元素との化合物、例えば、Al2O3、硫化アルミニウム(Al2S3)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga2S3)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガ
リウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In2O3)、硫化インジウム(In2S3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)など、周期表第2B族元素と周期表第5B族元素との化合物、例えば、Cd3P2など、周期表第2B族元素と周期表第6B族元素との化合物(本発明においてはII-VI族化合物半導体と称する)、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)など、周期表第5B族元素と周期表第6B族元素との化合物、例え
ば、硫化アンチモン(III)(Sb2S3)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチ
モン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi2S3)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)など、周期表第1B族元素と周期表第6B族元素との化合物、例
えば、酸化銅(I)(Cu2O)、Cu2S、Ag2Sなど、周期表第4A族元素、周期表第5A族元素、周期
表第6A族元素、周期表第7A族元素及び周期表第8族元素(鉄族元素及び白金族元素を含む)
からなる群から選択されたものと周期表第6B族元素との化合物、例えば、酸化チタン(TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9など)、酸化ジルコニウム(ZrO2、Zr2O3など)など、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)など、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)など、酸化マンガン(II)(MnO)など、酸化コバル
ト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)、酸化ニッケル(II)(NiO)、四酸化三鉄(Fe3O4)、硫化鉄(II)(FeS)、Fe2S、Fe2O3など、周期表第2A族元素と周期表第6B族元素との化合物、例えば、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)など、さらには、カルコゲ
ンスピネル類、例えば、CdCr2O4、CdCr2Se4、CuCr2S4、CuIn2S2、CuIn2Se2、HgCr2Se4
ど、YSi2、BaTiO3などが挙げられる。
これらのうち、重要な半導体としては、例えば、Si、Ge、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、Al2S3、Al2Se3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、In2S3、In2Se3、In2Te3、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、Sb2S3、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi2S3、Bi2Se3、Bi2Te3、MgS、MgSeな
どである。
【0037】
本発明の一つの態様では、本発明のソノケミストリーナノ粒子形成法を用いた半導体ナノ粒子合成法並びに非常に有用な性状を示す半導体ナノ粒子が提供される。典型的な態様では、当該半導体ナノ粒子合成法は、Zn, Cd, Hgなどの長周期型周期表第IIB族の元素、Al, Ga, In, Tlなどの同周期表第IIIB族の元素、及びSi, Ge, Sn, Pbなどの同周期表第IVB族の元素からなる群から選択されたものを含有するナノ粒子前駆体、例えば、それらの元素のキサントゲン酸塩、酢酸塩、又は、アセチルアセトナートを、安定化剤と有機溶媒の混合物中で、ソノケミストリーのナノ粒子形成条件に付して、ナノメーターサイズの粒子形成を行うことを特徴とするナノメーターサイズの粒子の製造法が提供され、こうして均一な粒径を有し且つ良好な分散状態を保持できるナノ粒子及び/又はナノ粒子分散体又はナノ粒子組成物を取得できる。本法では、必要に応じて、例えば、チオ尿素、セレノ尿素などの所望のナノ粒子の構成元素供与体を、混合物中に添加しておくことができる。こうして得られるナノ粒子の一つであるZnSナノ粒子は、例えば、粒子表面に有機分子残基、
例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基などの炭化水素基が化学結合で結合されているものである。こうしたものは、当該有機分子残基間の反発により、ナノ粒子の媒体中での分散性が優れている。
【0038】
本発明の製造方法で得られる半導体ナノ粒子は、その主要ナノ粒子構成成分に対して、
任意の付活物質がドープ(故意に添加する事を意味する)されていても構わない。かかる付活物質の例としては、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、マンガン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどのアルミニウム族元素、炭素、スズ、ゲルマニウムなどの炭素族元素、リン、砒素、アンチモン、ビスマスなどの窒素族元素、銅、銀などの銅族元素、イットリウム、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、ツリウムなどのランタノイドを含めた希土類元素、塩素、フッ素などのハロゲン元素などが挙げられるが、それに限定されず当該分野で使用されるものの中から選択されて使用される。
【0039】
本発明のソノケミストリーで製造される磁性体ナノ粒子としては、鉄族又はマンガン族元素を必須成分とする金属又は合金類、あるいは、鉄族元素酸化物を含有するナノサイズの粒子からなるものが挙げられる。代表的な磁性体としては、Fe、Co、Niの金属類、FePt、CoPt、FePd、M1nAl、FePtM1、CoPtM1、FePdM1、M1nAlM1からなる群から選択される合金類(化学式中、M1は金属元素を表し、M1としては、例えば、Li、Mg、Al、Si、P、S、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Au、Tl、Bi、Po、Atが含まれる)、又は、酸化鉄Fe2O3を含有する金属酸化物が挙げられる。代表的なものとしては、FeNi、FePd、FePt、FeRh、CoNi、CoPt、、CoPd、CoRh、CoAu、Ni3Fe、FePd3、Fe3Pt、FePt3、CoPt3、Ni3Pt、CrPt3、Ni3Mn、FeNiPt、FeCoPt、CoNiPt、FeCoPd、FeNiPd、FePtCu、FePtIn、FePtPb、FePtBi、FePtAg、CoPtCu、FePdCu、FeCoPtCu、FeNiPtCu、FePtCuAg、FeNiPdCuなどが包含されていてよい。金属酸化物としては、例えば一般式:(M2O)m・Fe2O3(式中、M2は2価の金属原子を表し、、M2としては、例えば、Mn、Ni、Co、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Zn、Pbなどが含まれ、mは0≦m≦1の数である)で表されるフェライト、Y-Feガーネッ
ト(YIG)などが包含されてよい。より代表的なものとしては、Fe2O3を主成分として含有しているスピネル形結晶、マグネトプランバイト型六方晶系結晶のものなどが挙げられ、Mnフェライト、Niフェライト、Znフェライト、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライトなどが包含されてよい。
【0040】
重要なものとしては、磁性酸化鉄(例えばマグネタイト(Fe3O4)、γ-Fe2O3など)が挙げ
られる。磁性体としては、Ni-Fe合金(パーマロイ)、Fe又はFe-Co合金、Fe-Cr-Co合金、アルニコ磁石合金、希土類コバルト金属間化合物、Nd-Fe-B金属間化合物なども包含され
てよい。さらには、磁性ナノ粒子として、一般式、AxB3-xM3yFe5-yO12(式中、0≦x<3,0≦y<5であり、Aは、Bi、Ca、Ce、Pb、Ptの中から選ばれる1種以上の元素であり、Bは、Y(イットリウム)を含めて希土類元素の中から選ばれる1種以上の元素、具体的にはCe、Dy、Eu、Er、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pm、Pr、Sm、Tb、Tm、Y、Ybなどであり、M3は、Al、Co、Cr、Cu、Fe(II)、Ga、Ge、Hf、In、Li、Mn、Mo、Nd、Ni、Pb、Rh、Ru、Sc、Si、Sn、Ti、V、Zn、Zrの中から選ばれる一種以上の元素を示す)で表される磁性体、例えばガーネット型磁性体などであってよい。ここでx=0,BがYで、y=0のとき、代表的な酸化物磁性体である組成式Y3Fe5O12で表されるイットリウム−鉄ガーネット(YIG)となる。また、この組
成の中で、Yの一部をBi、Gdなどで置換し、Feの一部をGa、In、Alなどで置換することが
できる。このように置換したYIGを置換型YIGといい、置換型YIGを用いた場合、キュリー
温度、磁気異方性、磁気ひずみ係数等を変化させることができる。
【0041】
本発明の技術を利用すれば、高い結晶性のナノ粒子を得ることができる。
高い結晶性は, 電子回折法、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope: STEM)などの電子顕微鏡写真の解析、エックス線回折(XRD)、熱重量分析などにより確認できる。例えば、電子回折では、単結晶であれば回折干渉像としてドットが得られ、多結晶ではリング、そしてアモルファスではハローが得られる。電子顕微鏡写真では、単結晶であれば結晶面がしっかり出ており、粒子の上からさらに結晶が現れるような形状であれば、多
結晶である。多結晶の一次粒子が小さく多くの粒子が凝集して二次粒子をつくっている場合球状になる。アモルファスであれば必ず球状である。エックス線回折では単結晶であればシャープなピークが得られる。Sherreの式を利用してX 線のピークの1/2 高さの幅から結晶子サイズを評価できる。該評価により得られた結晶子サイズが電子顕微鏡像から評価される粒子径と同一であれば、単結晶と評価される。熱重量分析では、熱天秤により、乾燥不活性ガス中で加熱すると、100℃付近で吸着していた水分の蒸発による重量減少が、
また、さらに250℃程度までで粒子内からの脱水による重量減少がみられる。有機物質を
含む場合には、250〜400℃においてさらに大きな重量減少が観察される。本発明の技術で得られた粒子の場合、400℃まで昇温しても、結晶内部からの脱水による重量減少は最大10% 以下であり、低温で合成されたナノ粒子の場合と大きく異なる。かくして、本発明に
したがって得られる金属酸化物微粒子の微粒子の特徴としては、高い結晶性、例えば、X 線回折でシャープなピークを有している、電子線回折でドットあるいはリングが観察される、熱重量分析で結晶水の脱水が乾粒子あたり10% 以下、及び/又は電子顕微鏡写真で一次粒子が結晶面を持っているなどが挙げられる。
【0042】
ナノ粒子は、例えば、SiO2が顔料、触媒担体、高温材料、ハニカム、耐食性材料などの用途に、Fe2O3 が顔料、磁性材料などの用途に、CeO2が研磨剤、触媒担体、イオン導電体、固体電解質などの用途に、TiO2が光触媒、顔料、化粧品などの用途に、Y2O3が顔料、触媒担体などの用途に、InO が透明導電体などの用途に、ZnOが螢光体材料、導電性材料、
顔料、電子材料などの用途に、SiO2が触媒担体、ゼオライト、フィラー、ビーズなどの用途に、SnO2が導電性材料、導電体、センサーなどの用途に、Nb2O3 が磁性材料などの用途に、CuやAgやAlは電極、触媒材料などの用途に、Niは電極、磁性材料、触媒材料などの用途に、CoやFeは磁性材料、触媒材料などの用途に、Ag/Cu は電極、触媒材料などの用途に、さらにB4C, AlN, TiB2などは高温材料、高強度材料などの用途に応用される。
ナノ粒子やナノ粒子を特定の配列で有する薄膜はそれぞれ特有の優れた特性を示すことが認められている。例えば、ナノ粒子を単層配列したものでは、磁性ナノ粒子などのように緻密化充填を可能にし、近接場記憶素子として優れた機能を示すことが知られており、磁気テープなどに応用されて優れた特性を示し有用である。また,分散系パターンに配列されたものでは,例えば、ナノ蛍光体などでは,量子サイズ効果が得られることから、量子効果蛍光体、量子効果発光体、LSI高密度実装基盤などの製品を提供できる。チタニア
などのナノ粒子を多層同時配列したようなものでは、低光散乱や光触媒効果など優れた機能を示し、湿式光電変換素子、高機能光触媒コーティングなどとなる。粒子分散膜では、補強効果や難燃効果など優れた機能を持つものが提供でき、半導体封止剤などにできる。
本発明で得られるナノ粒子は、ユーザーニーズに適合した粒子として機能する。例えば、半導体パッケージング用高濃度チタン酸バリウム分散樹脂、インクジェット用ナノ粒子分散インク、電池材料、触媒材料、潤滑剤などとして有用であり、それらは次のように調製できる。
【0043】
半導体などの電子部品にはパッケージ外からの電気的外乱を除くために、高誘電率樹脂によるパッケージングが必要である。そのための方法としてチタン酸バリウム粒子分散熱硬化性樹脂が使用される。本半導体などのパッケージング用高濃度チタン酸バリウム分散樹脂においては、チタン酸バリウム粒子を高濃度分散することが求められていた。界面活性剤を用いた樹脂中へのチタバリ分散は可能であるが、界面での誘電損失が生じるという問題がある。本発明のナノ粒子の製造技術を使用すれば、化学結合で表面修飾した粒子を合成でき、しかも、究極的には樹脂と同じモノマーを導入して、樹脂と無機材料が一体となった材料が合成できる。
ナノ粒子はその色合い、発色の良さ、耐久性など優れた物性を示すことから、ハイテク機器用のインク、例えば、インクジェット用ナノ粒子分散インクに利用する。ナノ粒子を分散させたインクによるインクジェットプリンターは、インクジェットによる配線、回路図等の作製に使用することが期待される。しかし、そのためにはそれに適したナノ粒子合
成とその高濃度で溶剤に分散せしめることが必要である。本発明のナノ粒子の製造技術によりインク溶剤と同じ高分子を有する粒子合成が可能となる。
電池材料,例えば、Liイオン電池やキャパシタ材料などの電極材料は、炭素材料と混合して製品用材料化される。電池材料が炭素および溶剤と十分に分散する必要がある。一般には、分散剤を用いた処理が必要となるが、本発明のナノ粒子の製造技術により分散剤を一切用いずに溶剤とも均質分散する材料が合成できる。
【0044】
担持金属触媒は、金属が持つ電子軌道が酸化物触媒と相互作用して電荷移動が生じることにより活性化する。そこで、ナノメートルオーダーで異種材料を混合できる本発明のナノ粒子粒子の製造技術を用いれば、金属と酸化物が接触する活性点を高密度に有する触媒の調製が可能となり、優れた触媒材料となる。
また、潤滑剤は固体間にはたらく摩擦を軽減するために用いられているが、ナノ粒子が潤滑剤に含まれることにより、ナノベアリングとして働くことが期待できる。具体的には、せん断力をベアリングの回転運動エネルギーに転化せしめて、もう一方の面にせん断力としてそれが伝達することを防ぐ。従来、潤滑剤としては有機高分子が用いられてきたが、本発明のナノ粒子の製造技術によりこれに強固な構造を持つナノ粒子を分散することが可能となる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例1】
【0045】
〔金ナノ粒子の合成〕
(a)オレイルアミン: HAuCl4(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF中
で5分間超音波照射処理して、Auナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミン(oleylamine)を入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003mol HAuCl4を撹拌しながら添加し
、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プロー
ブを当該溶液中に直接浸し、超音波照射(ultrasound irradiation: USI)を開始した。数
分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを5分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、4〜5nmの球状金微粒子(sperical gold particles)を得た。本実施例1(a)で得られた金ナノ粒子サンプルをTEMで観察
した結果を、図1に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図2に示す。
【0046】
(b)5分間超音波照射に代えて10分間超音波照射処理する以外は、上記実施例1(a)の処理工程を繰り返した。この結果、おおよそ5nmの球状金微粒子を得た。本実施例1(b)で
得られた金ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図3及び図5に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図4に示す。
【0047】
(c)デシルアミン: HAuCl4=30:1の条件下、デシルアミンとDMF中で10分間超音波照射処理して、Auナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと25mLのデシルアミン(decylamine)を入れ、次に油浴上で65〜70℃に
加温した。その溶液中へ0.003mol HAuCl4を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次
にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸
し、超音波照射(ultrasound irradiation: USI)を開始した。数分間の照射の後、その澄
んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを10分間継続した。該USI後合成された微粒子をメタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のデシルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、20nmの球状金微粒子を得た。本実施例1(c)で得られた金
ナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図6に示す。また、該サンプルの粒径分布を
測定した結果を、図7に示す。
【0048】
(d)8mLのDMFと30mLのオレイルアミンの混合物の代わりに30mLのオレイルアミンを使用
し、USI後合成された微粒子をメタノールでもって処理する以外は、上記実施例1(b)の処理工程を繰り返した。この結果、おおよそ12nmの球状金微粒子を比較的広い粒径分布を持つものとして得た。本実施例1(d)で得られた金ナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図8に示す。
【0049】
(e)オレイルアミン: HAuCl4=30:1の条件の代わりに、オレイルアミン: HAuCl4=10:1
の条件を使用し、0.003mol HAuCl4の代わりに、0.009mol HAuCl4を使用する以外は、上記実施例1(b)の処理工程を繰り返した。この結果、おおよそ15nmの球状金微粒子を得た。
本実施例1(e)で得られた金ナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図9に示す。
【0050】
(f) 8mLのDMFと30mLのオレイルアミンの混合物の代わりに、8mLのDMFと22mLのオレイルアミンと8mLのオレイン酸の混合物を使用し、オレイルアミン: HAuCl4=30:1の条件の代
わりに、オレイルアミン: オレイン酸: HAuCl4=22.5:7.5:1の条件を使用する以外は、上記実施例1(b)の処理工程を繰り返した。この結果、おおよそ5〜6nmの球状金微粒子を
得た。
【実施例2】
【0051】
〔銀ナノ粒子の合成〕
オレイルアミン: 酢酸銀(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で15分間超音波照射処理して、Agナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの酢酸銀を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に
直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは
、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを15分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、5nmの球状銀微粒子(sperical silver particles)を得た。本実施例2で得られた銀ナノ
粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図10及び図12に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図11に示す。
【実施例3】
【0052】
〔白金ナノ粒子の合成〕
オレイルアミン: 白金アセチルアセトナート(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイ
ルアミンとDMF中で20分間超音波照射処理して、Ptナノ粒子を製造した。すなわち、代表
的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの白金アセチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセッ
トした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後
、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを20分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、3〜4nmの球状白金微粒子(sperical platinum
particles)を得た。本実施例3で得られた白金ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察し
た結果を、それぞれ図13及び図14に示す。
【実施例4】
【0053】
〔パラジウムナノ粒子の合成〕
オレイルアミン: 酢酸パラジウム(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で30分間超音波照射処理して、Pdナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの酢酸パラジウムを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プロー
ブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁っ
てきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続
した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ
、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、8nmの板状パラジウム微粒子(plate-like palladium particles)を得た。本実施例4で得られたパラジウムナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図15及び図16に示す。
【実施例5】
【0054】
〔ニッケルナノ粒子の合成〕
オレイルアミン: 酢酸ニッケル(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で10分間超音波照射処理して、Niナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの酢酸ニッケルを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを
当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってき
た。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを10分間継続した
。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次
に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、30nmのファセット型ニッケル微粒子(facetted nickel particles)を得た
。本実施例5で得られたニッケルナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図17に示す

【実施例6】
【0055】
〔コバルトナノ粒子の合成〕
オレイルアミン: 酢酸コバルト(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF
中で20分間超音波照射処理して、Coナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの酢酸コバルトを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを
当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってき
た。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを20分間継続した
。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次
に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、35〜40nmのファセット型コバルト微粒子(facetted cobalt particles)を
得た。
【実施例7】
【0056】
〔硫化亜鉛ナノ粒子〕
(a)オレイルアミン: エチルキサントゲン酸亜鉛(プリカーサー)=20:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で7〜8分間超音波照射処理して、ZnSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのエチルキサントゲ
ン酸亜鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)
にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照
射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを7〜8分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、4.5〜5nmの長さと1nmの幅を持つ硫化
亜鉛ロッド(ZnS rods)を得た。本実施例7(a)で得られた硫化亜鉛ナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図18に示す。
【0057】
(b)7〜8分間超音波照射に代えて30分間超音波照射処理する以外は、上記実施例7(a)の処理工程を繰り返した。この結果、おおよそ200nmの長さと1nmの幅を持つ硫化亜鉛ワイア(ZnS wires)を得た。本実施例7(b)で得られた硫化亜鉛ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図19及び図20に示す。
【0058】
(c) オレイルアミン: オレイン酸=3:1及び安定化剤の全量: エチルキサントゲン酸亜
鉛(プリカーサー)=40:1の条件下、DMFとオレイルアミンとオレイン酸の混合物中で30分間超音波照射処理して、ZnSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンとオレイン酸の混合物(オレイルアミン: オレイン酸=3:1、モル比)を入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.00225molのエチルキサントゲン酸亜鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に
直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは
、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンとオレイン酸のほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、5〜6nmの球状硫化亜鉛微粒子(spherical zinc sulfide particles)を得た。本実施例7(c)で得られた硫化亜鉛ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、そ
れぞれ図21及び図23に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図22に示す。
【実施例8】
【0059】
〔硫化カドミウムナノ粒子〕
(a)オレイルアミン: エチルキサントゲン酸カドミウム(プリカーサー)=20:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で30分間超音波照射処理して、CdSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのエチルキサン
トゲン酸カドミウムを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ20〜30nmの長さと5nm
の幅を持つ硫化カドミウムロッド、ダイポッド、トリポッド(cadmium rods, dipods, tripods)を得た。本実施例8(a)で得られた硫化カドミウムナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図24及び図25に示す。
【0060】
(b) オレイルアミン: オレイン酸=3:1及び安定化剤の全量: エチルキサントゲン酸カ
ドミウム(プリカーサー)=40:1の条件下、DMFとオレイルアミンとオレイン酸の混合物中で30分間超音波照射処理して、CdSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示
すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンとオレイン酸の混合物(オレイルアミン: オレイン酸=3:1、モル比)を入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温し
た。その溶液中へ0.00225molのエチルキサントゲン酸カドミウムを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブ
を当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁って
きた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続し
た。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、
次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンとオレイン酸のほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、5nmの球状硫化カドミウム微粒子(spherical cadmium sulfide particles)を得た。本実施例8(b)で得られた硫化カドミウムナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図26に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図27に示す。
【実施例9】
【0061】
〔セレン化亜鉛ナノ粒子〕
(a)オレイルアミン: 酢酸亜鉛(プリカーサー)=20:1の条件下、オレイルアミンとDMF
中で10分間超音波照射処理して、ZnSeナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molの酢酸亜鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を
得た。得られた液に別に調製した6mLのDMFと0.004molのセレノ尿素の溶液を添加した。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸
し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒
子が形成していることを示すものである。そのUSIを10分間継続した。該USI後合成された
微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、5nmの
長さと1nmの幅を持つセレン化亜鉛ロッド(ZnSe rods)を得た。
【0062】
(b)オレイルアミン: 酢酸亜鉛(プリカーサー)=20:1の条件下、オレイルアミンとDMF
中で30分間超音波照射処理して、ZnSeナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molの酢酸亜鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を
得た。得られた液に別に調製した6mLのDMFと0.004molのセレノ尿素の溶液を添加した。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸
し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒
子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ300nmの長さと1nmの幅を持つセレン化亜鉛ワイア(ZnSe wires)を得た。本実施例9(b)
で得られたセレン化亜鉛ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図28及び図29に示す。
【0063】
(c)オレイルアミン: オレイン酸=3:1及び安定化剤の全量: 酢酸亜鉛 (プリカーサー)=40:1の条件下、DMFとオレイルアミンとオレイン酸の混合物中で30分間超音波照射処理
して、ZnSeナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、14mLのDMFと30mLのオレイルアミンとオレイン酸の混合物(オレイルアミン: オレイン酸=3:1、モル比)を入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.00225molの酢酸亜鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。得られた液に別に調製した6mLのDMFと0.002molのセレノ尿素の溶液を添加した。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)に
セットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射
の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンとオレイン酸のほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、6nmの球状セレン化亜鉛微粒
子(zinc selenide spherical particles)を得た。本実施例9(c)で得られたセレン化亜鉛ナノ粒子サンプルをXRD及びTEMで観察した結果を、それぞれ図30及び図31に示す。
【実施例10】
【0064】
〔硫化鉛ナノ粒子〕
オレイルアミン: エチルキサントゲン酸鉛(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイル
アミン中で4〜5分間超音波照射処理して、PbSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な
合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molのエチルキサントゲン酸鉛を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型
プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液
は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを4〜5
分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを
形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2
〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、30nmの縁部の長さを持つ硫化鉛キューブ(PbS cubes)を得た
。本実施例10で得られた硫化鉛ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図32及び図33に示す。
【実施例11】
【0065】
〔硫化銅ナノ粒子〕
オレイルアミン: エチルキサントゲン酸銅(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイル
アミン中で4〜5分間超音波照射処理して、CuSナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な
合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molのエチルキサントゲン酸銅を撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型
プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液
は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを4〜5
分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを
形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、30nmの縁部の長さを持つ硫化銅六角形板状体(CuS hexagonal
plates)を得た。本実施例11で得られた硫化銅ナノ粒子サンプルをXRDで観察した結果を
、図34に示す。
【実施例12】
【0066】
〔酸化亜鉛ナノ粒子〕
オレイルアミン: 亜鉛アセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下、オレイ
ルアミンとDMF中で30分間超音波照射処理して、ZnOナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、8mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molの亜鉛アセチルアセトナ
ートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセ
ットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の
後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを30分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、外観がきれいな酸化亜鉛フラワーを得た。本実施例12で得られた酸化亜鉛ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図35及び図36に示す。
【実施例13】
【0067】
〔In2O3ナノ粒子〕
オレイルアミン: インジウムアセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下、
オレイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、In2O3ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのインジウムア
セチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでも
って処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、10nmの酸化インジウムの球状微粒子を得た。本実施例13で得られた酸化インジウムナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図37及び図38に示す。
【実施例14】
【0068】
〔Ga2O3ナノ粒子〕
オレイルアミン: ガリウムアセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下、オ
レイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、Ga2O3ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのガリウムアセチ
ルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ8nmの酸化ガリウムの球状
微粒子を得た。本実施例14で得られた酸化ガリウムナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図40及び図41に示す。
【実施例15】
【0069】
〔Mn3O4ナノ粒子〕
オレイルアミン: マンガンアセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下、オ
レイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、Mn3O4ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのマンガンアセチ
ルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ6nmの四三酸化マンガンの
球状微粒子を得た。本実施例15で得られた四三酸化マンガンナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図42及び図43に示す。
【実施例16】
【0070】
〔Eu2O3ナノ粒子〕
オレイルアミン: ユーロピウムアセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下
、オレイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、Eu2O3ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.0045molのユーロピウ
ムアセチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成しているこ
とを示すものである。そのUSIを45分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ5nmの酸化ユーロ
ピウムの球状微粒子を得た。本実施例16で得られたEu2O3ナノ粒子サンプルをTEM及びXRD
で観察した結果を、それぞれ図44及び図45に示す。
【実施例17】
【0071】
〔四酸化三鉄ナノ粒子〕
(a)オレイルアミン: 鉄(III)アセチルアセトナート(プリカーサー)=30:1の条件下、
オレイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、Fe3O4ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.003molの鉄(III)アセチ
ルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってきた。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、5nmの球状微粒子を得た。本実施例17(a)で得られたFe3O4ナノ粒子サンプルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図46及
び図47に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図48に示す。
【0072】
(b) オレイルアミン: 鉄(III)アセチルアセトナート(プリカーサー)=30:1の条件に代えて10:1の条件とし、0.003molに代えて0.009molの鉄(III)アセチルアセトナートを使用
し、45分間超音波照射に代えて60分間超音波照射処理する以外は、上記実施例17(a)の処
理工程を繰り返した。この結果、10nmの球状微粒子を得た。
【実施例18】
【0073】
〔CoFe2O4ナノ粒子〕
オレイルアミン: 鉄(III)アセチルアセトナート(プリカーサー)=30:1の条件下、オレイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、CoFe2O4ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.002molの鉄(III)アセチル
アセトナートと0.001molのコバルト(II)アセチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを
当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってき
た。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した
。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次
に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、12nmの球状微粒子を得た。本実施例18で得られたCoFe2O4ナノ粒子サンプ
ルをTEM及びXRDで観察した結果を、それぞれ図49及び図51に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を、図50に示す。
【実施例19】
【0074】
〔NiFe2O4ナノ粒子〕
オレイルアミン: 鉄(III)アセチルアセトナート(プリカーサー)=30:1の条件下、オレ
イルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、NiFe2O4ナノ粒子を製造した。すなわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.002molの鉄(III)アセチル
アセトナートと0.001molのニッケル(II)アセチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを
当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。数分間の照射の後、その澄んだ溶液は濁ってき
た。該濁りは、微粒子が形成していることを示すものである。そのUSIを45分間継続した
。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形成させ、次
に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、10nmの球状微粒子を得た。本実施例19で得られたNiFe2O4ナノ粒子サンプ
ルをTEMで観察した結果を、図52に示す。また、該サンプルの粒径分布を測定した結果を
、図53に示す。
【実施例20】
【0075】
〔CoTiO3ナノ粒子〕
オレイルアミン: コバルト(II)アセチルアセトナート(プリカーサー)=20:1の条件下
、オレイルアミンとDMF中で45分間超音波照射処理して、CoTiO3ナノ粒子を製造した。す
なわち、代表的な合成法を示すと、50mLのガラス製ビーカーに、6mLのDMFと30mLのオレイルアミンを入れ、次に油浴上で65〜70℃に加温した。その溶液中へ0.00225molのコバルト(II)アセチルアセトナートを撹拌しながら添加し、澄んだ溶液を得た。次にその澄んでいる溶液を高強度超音波照射装置(ホーン型プローブ付きホモジナイザー、Branson 450D、周波数: 20KHz)にセットした。ホーン型プローブを当該溶液中に直接浸し、USIを開始した。1分間の照射の後、0.00225molのチタニウムイソプロポキシドを注入し、USIを45分
間継続した。該USI後合成された微粒子をエタノールでもって処理して綿状の固まりを形
成させ、次に遠心処理した後再度トルエンなどの疎水性溶媒に懸濁させた。本工程を2〜3回繰り返し、遊離のオレイルアミンのほとんどすべてを取り除いた後、得られたサンプルを保存した。この結果、おおよそ3nmの球状微粒子を得た。本実施例20で得られたCoTiO3ナノ粒子サンプルをTEMで観察した結果を、図54に示す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の技術を適用することにより、様々な特有の優れた性状・特性・機能を示すナノ粒子を製造できる。特に、金属ナノ粒子、硫化金属ナノ粒子、セレン化金属ナノ粒子、多元系金属ナノ粒子を簡単な方法で得ることができ、さらにそのナノ粒子の粒子サイズをコントロール可能で、均一な粒子サイズの製品を得ることができ、半導体材料、結晶性材料としても優れている。本発明で得られたナノ粒子は、セラミックスのナノ構造改質材、光機能コーティング材、電磁波遮蔽材料、二次電池用材料、蛍光材料、電子部品材料、磁気記録材料、研摩材料などの産業・工業材料、医薬品・化粧品材料として利用するのに、優れている。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明で得られた金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図2】図1に示されている金ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図3】本発明で得られた金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図4】図3に示されている金ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図5】図3に示されている金ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図6】本発明で得られた金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図7】図6に示されている金ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図8】本発明で得られた金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図9】本発明で得られた金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図10】本発明で得られた銀ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図11】図10に示されている銀ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図12】図10に示されている銀ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図13】本発明で得られた白金ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図14】図13に示されている白金ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図15】本発明で得られたパラジウムナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図16】図15に示されているパラジウムナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図17】本発明で得られたニッケルナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図18】本発明で得られた硫化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図19】本発明で得られた硫化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図20】図19に示されている硫化亜鉛ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図21】本発明で得られた硫化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図22】図21に示されている硫化亜鉛ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図23】図21に示されている硫化亜鉛ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図24】本発明で得られた硫化カドミウムナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図25】図24に示されている硫化カドミウムナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図26】本発明で得られた硫化カドミウムナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図27】図26に示されている硫化カドミウムナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図28】本発明で得られたセレン化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図29】図28に示されているセレン化亜鉛ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図30】本発明で得られたセレン化亜鉛ナノ粒子のXRD観察の結果を示す。
【図31】図30に示されているセレン化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図32】本発明で得られた硫化鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図33】図32に示されている硫化鉛ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図34】本発明で得られた硫化銅ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図35】本発明で得られた酸化亜鉛ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図36】図35に示されている酸化亜鉛ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図37】本発明で得られたIn2O3ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図38】図37に示されているIn2O3ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図39】図37に示されているIn2O3ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図40】本発明で得られたGa2O3ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図41】図40に示されているGa2O3ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図42】本発明で得られたMn3O4ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図43】図42に示されているMn3O4ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図44】本発明で得られたEu2O3ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図45】図44に示されているEu2O3ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図46】本発明で得られたFe3O4ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図47】図46に示されているFe3O4ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図48】図46に示されているFe3O4ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図49】本発明で得られたCoFe2O4ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図50】図49に示されているCoFe2O4ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図51】図49に示されているCoFe2O4ナノ粒子サンプルのXRD観察の結果を示す。
【図52】本発明で得られたNiFe2O4ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。
【図53】図52に示されているNiFe2O4ナノ粒子サンプルの粒径分布を測定した結果を示すグラフである。
【図54】本発明で得られたCoTiO3ナノ粒子のTEM観察の結果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子前駆体とナノ粒子安定化剤とを含有する液状混合系からソノケミストリーによりナノメーターサイズの粒子を形成させる反応場に、低沸点の有機溶媒を共存せしめ、該有機溶媒存在下に超音波照射を加えて該ナノメーターサイズの粒子形成を行うことを特徴とするナノメーターサイズの粒子の製造法。
【請求項2】
ナノ粒子安定化剤が、有機カルボン酸類、有機窒素化合物類、有機硫黄化合物類、及び、有機リン化合物類からなる群から選択されたものである請求項1に記載のナノメーターサイズの粒子の製造法。
【請求項3】
有機溶媒が、沸点200℃以下の低沸点溶媒である請求項1又は2に記載のナノメーターサ
イズの粒子の製造法。
【請求項4】
有機溶媒が、メタノール、エタノール又はジメチルホルムアミド(DMF)である請求項1〜
3のいずれか一に記載のナノメーターサイズの粒子の製造法。


【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図16】
image rotate

【図20】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図25】
image rotate

【図27】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図36】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図41】
image rotate

【図43】
image rotate

【図45】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図53】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図21】
image rotate

【図24】
image rotate

【図26】
image rotate

【図28】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図35】
image rotate

【図37】
image rotate

【図40】
image rotate

【図42】
image rotate

【図44】
image rotate

【図46】
image rotate

【図49】
image rotate

【図52】
image rotate

【図54】
image rotate


【公開番号】特開2010−82776(P2010−82776A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256632(P2008−256632)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】