説明

有機物の炭化方法

【課題】
有機廃棄物を過熱水蒸気で加熱、炭化する際に、冷材投入時の結露を防止して炭化開始温度まで急速に昇温できる炭化方法に関するものである。
【解決手段】
炭化炉の中に過熱水蒸気を吹き込んで有機物を炭化するに際して、該炭化炉内の温度を350℃以上に保持し、かつ該炭化炉から排出される排ガスの酸素量を2〜9%に調整して、該過熱水蒸気の吹込み流量1に対して、0.5〜1.2の割合の流量で、該炭化炉に吹き込むことを特徴とする有機物の炭化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物の炭化方法に係わり、更に詳しくは、有機廃棄物を過熱水蒸気で加熱、炭化する際に、冷材投入時の結露を防止して炭化開始温度まで急速昇温できる炭化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機廃棄物を過熱蒸気で炭化する技術はすで多く開示されている。たとえば特許文献1に開示されている。過熱水蒸気発生装置についても特許文献2、特許文献3に開示されているが、従来技術はいずれも過熱水蒸気の雰囲気で有機物を加熱して炭化すること、およびこのための過熱水蒸気発生装置に注力されているに過ぎない。
有機物を収容した釜に過熱蒸気を吹きこんで、有機物を加熱するとき、炭化炉に有機物の冷材を投入すると、水蒸気が結露してびしょびしょに濡れることはよく経験することである。
結露は釜の損傷、腐食を招く。また一旦結露した水を気化させるのはエネルギー的にも極めて不利である。
【0003】
【特許文献1】特開昭55−89385号公報
【特許文献2】特開2002−333103号公報
【特許文献3】特開2002−168401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる問題点にかんがみてなされたもので、その目的は、冷材を投入しても結露することなく、炭化の始まる温度まで急速昇温させることができ、爆発の心配のない安全、かつ省エネ性に極めて優れた炭化方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題に関して鋭意研究を行い、下記の知見を得た。
すなわち、
過熱水蒸気を炭化炉に吹き込んで有機物を炭化する際、炭化炉内の温度を350℃以上に保持し、かつ炭化炉から排出される排ガスの酸素量を2〜9%に調整して、炭化炉に吹き込む過熱水蒸気の流量1に対して、0.5〜1.2の割合の流量で吹込むと、炭化炉に有機物の冷材を投入しても、結露しないこと、そして急速昇温できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、下記の構成からなるものである。
1.炭化炉の中に過熱水蒸気を吹き込んで有機物を炭化するに際して、該炭化炉内の温度を350℃以上に保持し、かつ該炭化炉から排出される排ガスの酸素量を2〜9%に調整して、該過熱水蒸気の吹込み流量1に対して、0.5〜1.2の割合の流量で、該炭化炉に吹き込むことを特徴とする有機物の炭化方法。
【発明の効果】
【0006】
1.炭化炉に冷材を投入しても結露しない。
2. 爆発の心配のない安全操業が出来る(排ガスは過熱水蒸気を主成分としているので、爆発の心配がない安全なガスである)。
3.排ガスの熱を有効利用できるので熱効率的に極めて優れ、20〜30%ランニングコストを低減できる。
4.過熱水蒸気の吹込み量を減らしても炭化開始温度まで同等の昇温速度が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の有機物とは、いわゆる有機質廃棄物全般を意味するものである。生ごみ、汚泥、食品の加工粕、ビール粕、焼酎粕、おから、残飯、動物、家畜、鳥、人間の糞尿、動物、鳥、家畜の死体、家畜動物の肉骨粉、廃プラスチック等々である。これらは必要に応じて細かく分断して炭化炉に投入する。
【0008】
有機物を炭化するためには、炉内は少なくとも350℃以上に加熱する必要がある。
本発明は過熱水蒸気と共に、炭化炉から排出される排ガスを炉内に吹き込むので、過熱水蒸気と排ガスの混合ガスの温度が少なくとも350℃以上になるように調整する。
操業中の炭化炉の実稼動温度は、400〜500℃に達するので、炭化炉から排出直後の排ガスの温度も、400〜500℃に達する。従ってこの排ガスを断熱して再び炭化炉に吹き込み可能な場合は、吹込む過熱水蒸気の温度は必ずしも350℃に達していなくて もよい。排ガスの断熱が困難で温度が下がる場合は、適宜、吹込む過熱水蒸気の温度を上げたり、あるいは排ガスを再加熱して温度を上げればよい。
【0009】
本発明では、酸素を2〜9%含む排ガスを、過熱水蒸気の吹込み流量1に対して、 0.5〜1.2の割合の流量で吹き込むと、有機物が瞬間的に着火、燃焼して結露することなく昇温する。
酸素量2%未満、流量0.5未満では、着火が起こらない。着火が起こらない場合、結露する。また酸素量9%、及び流量1.2を越えると、有機物の燃焼が始まり、炭化不能になるので好ましくない。
【0010】
炭化炉から排出される過熱水蒸気の排ガスには、通常、酸素が2〜5%含まれているので、ほとんどの場合、排ガスの酸素量は調整せずそのまま炭化炉に吹込んでも良いが、炭化する有機物の種類によっては、酸素量が過不足をきたす場合がある。その場合は、必要に応じて、空気を混ぜて酸素量を調整すればよい。
【0011】
過熱水蒸気を利用した炭化炉の排ガスは、過熱水蒸気と、有機物からの非燃焼性揮発物、炭酸ガス等の燃焼生成物と微量の酸素が存在するのみで、可燃成分が存在せず、非燃焼性で爆発の心配のない極めて安全なガスであり、安全操業が実施できる。又これを炭化炉に再び吹込むことで排熱が有効活用でき、熱効率が大幅(20〜30%)に向上する。
【0012】
図面によって本発明を説明する。
図1は本発明方法の説明図である。
炭化する有機物(廃棄物)は、必要に応じて細かく分断して炭化炉の中に投入する。
炭化炉に吹込む過熱水蒸気は流量を調整して吹込む。炭化炉から排出される排ガスの一部は再び炭化炉に吹込まれる。
炭化炉に吹込む過熱水蒸気と排ガスの量の割合は、吹込む過熱水蒸気の流量1に対して、0.5〜1.2の割合の流量に調整する。
炭化炉に吹込む排ガスの酸素濃度は2〜9%に調整する。
炭化炉の中は、外から空気が浸入しないように大気圧より若干プラス圧に保持されるが、この状態で、炭化炉から外に排出される排ガスには概ね2〜5vol.%の酸素が含まれているので、酸素量を本発明範囲の2〜9%に保つために、特別な手段はとる必要はないが、まれに範囲を外れる場合(酸素が2%以下になる場合)があるので、排ガス排出ダクトに酸素センサー(図示していない)を取付けて、時々刻々変化する酸素量を測定して、酸素が欠乏状態になった時は空気を吹込んで調整する。
【0013】
炭化炉に吹込まれた排ガスは過熱水蒸気と混合されて、酸素量は希釈され、混合後の酸素量はほぼ4.5%以下となる。
【0014】
有機物の炭化は、ほぼ350℃から開始するので、炭化炉の中の温度は少なくとも350℃以上に保持する必要があるので、過熱水蒸気と排ガスの混合ガスの温度が350℃以上、最も好ましくは400〜500℃になるように過熱水蒸気と排ガスの温度調整する。
【0015】
炭化炉の中に投入された有機物は、インペラーで回転されながら乾燥、炭化されて下段に落下し、遂には底部に設けたダクトから下に落下して、外に排出される。
炭化炉から排出した排ガスで、炭化炉に吹込まれる排ガス以外の残りの排ガスは、そのまま排ガスフィルターで塵埃をろ過され、脱臭炉に導かれて、脱臭されて外に排出されることとなる。あるいは濾過後、一旦熱回収した後、脱臭炉に導かれて、脱臭されて外に排出されることとなる。
【0016】
なおここで、本発明に適用できる炭化炉は、本例に示した構造の炭化炉のみに限定されるものではなく、過熱水蒸気を使用する構造であればいかなる炭化炉でも、本発明に適用できることは言うまでもないことである。
【実施例1】
【0017】
有機物: 脱水した下水汚泥
炭化炉: 内容積φ700×900mm
炭化炉の炉内温度:400℃
炭化炉の炉内圧力:1.1気圧
過熱水蒸気だけを使用する操業(比較例)
上記炭化炉の中に450℃の過熱水蒸気(流量78m3/分)を吹き込んで、炭化炉の炉内温度400℃、炉内を1.1気圧に保持した。
排ガスの温度は400℃、酸素量は4%であった。
有機物冷材の投入
炉内に上記有機物の冷材50kgを投入した。
投入した有機物の面には過熱水蒸気が結露した。
結露した水分を蒸発させて350℃の炭化開始温度まで加熱するのに40分かかった。
過熱水蒸気と排ガスの吹込みを併用した操業(本発明の例)
過熱水蒸気の吹込み量を減らして、減らした分を排ガスで補うこととし、過熱水蒸気と排ガスを混合した後のガス量は、過熱水蒸気単独の場合(78m3/分)と同じとした。
過熱水蒸気の吹込み量 :38m3/分
400℃の排ガスの吹込み量:40m3/分
400℃の排ガスの酸素量 :3%
冷材投入
炉内に上記有機物50kg投入した。結露しなかった。
350℃の炭化開始温度まで加熱するのに40分かかった。
過熱水蒸気の吹込み量をほぼ半減しても昇温速度が低下することもなく、減らす前と同等の昇温速度を達成でき、なおかつ有機物単位重量あたりの炭化コストは30%コストダウンできた。
排ガスの吹込みは、結露防止と、省エネによる大幅なコストダウンに極めて有効であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
有機質廃棄物の冷材を結露させることなく急速炭化させることが出来、炭化処理の省エネに大きく貢献するものである。
廃棄物処理の分野で極めて有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明方法の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化炉の中に過熱水蒸気を吹き込んで有機物を炭化するに際して、該炭化炉内の温度を350℃以上に保持し、かつ該炭化炉から排出される排ガスの酸素量を2〜9%に調整して、該過熱水蒸気の吹込み流量1に対して、0.5〜1.2の割合の流量で、該炭化炉に吹き込むことを特徴とする有機物の炭化方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−328098(P2006−328098A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149229(P2005−149229)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(301047957)株式会社テラボンド (11)
【Fターム(参考)】