説明

有機発光ダイオードの改善のためのポリチオフェン配合物

【課題】EL装置の正孔注入層の製造のために極めて適しており、かつこれらの正孔注入層が、特に小さい粒度を必要とすることなく、クロストークの発生を抑制しうる配合物を開発及び提供する。
【解決手段】A)一般式(I−a)及び/又は(I−b)[式中、A、Y、R、xは明細書中に記載される意味を有する]で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンと、B)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーと、C)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーとを含有する配合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオフェンと他のポリマーとを含有する配合物、その使用並びに前記配合物を含有する正孔注入層を有する電界発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光装置(EL装置)は、該装置が電圧を印加した場合に電流により発光することを特徴としている。かかる装置は、長い間、“発光ダイオード”(LED)という名称によって知られていた。その発光は、正電荷(正孔)と負電荷(電子)との再結合及び光の送出によって生ずる。
【0003】
当該技術分野で慣用のLEDは、全て大抵は、無機半導体材料から製造される。しかしながら、必須成分が有機材料であるEL装置は、数年に亘って知られている。
【0004】
これらの有機EL装置は、一般に、1層以上の有機電荷輸送化合物層を有する。
【0005】
EL装置の主要な層構造は、例えば以下のとおりである:
1 キャリヤー、基板
2 ベース電極
3 正孔注入層
4 電子ブロック層
5 発光体層
6 正孔ブロック層
7 電子注入層
8 トップ電極
9 接点
10 カバー、封止
この構造は、最も詳細な事例を表しており、1つの層が幾つかの働きに取って代わるのであれば、個々の層を省くことによってその構造を簡易化することができる。最も簡単な事例では、EL装置は2つの電極を有し、それらの間には発光を含む全ての機能を満たす有機層が存在する。
【0006】
しかしながら、実際には、光束密度の増大のために、電子注入層及び/又は正孔注入層が電界発光構築物中にあることが特に好ましいと判明している。
【0007】
EP−A−686662号から、導電性有機ポリマー、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、例えばポリヒドロキシ化合物又はラクタムとの特定の混合物を電界発光ディスプレイ中の電極として使用することは知られている。しかしながら、実際には、これらの電極は、特に大面積ディスプレイのためには不適当な導電性を有することが分かっている。他方で、その導電性は、小さなディスプレイ(発光面積<1cm)のためには適している。
【0008】
DE−A−19627071号からは、ポリマー型の有機導電体、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を正孔注入層として使用することが知られている。前記手段によって、電界発光ディスプレイの発光強度は、ポリマー型の有機中間層を有さない構築物と比較して相当高めることができる。ポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)分散液の粒度を下げることによって、その導電性の調整の制御が可能である。従って、隣接するアドレス線の電気的なオーバートーキング(クロストーク)を、特にパッシブマトリクスディスプレイにおいて回避することが可能である(EP−A−1227529号)。
【0009】
EP−A1564251号は、更に、これらのディスプレイの寿命が特定のポリマー型のアニオンを使用することによって改善されうることを報告している。
【0010】
だがそれにも拘わらず、公知の材料の正孔注入層の導電性は、幾つかの用途、例えばパッシブマトリクスディスプレイについては、粒度を介した調節の制御の可能性があるにもかかわらず高すぎ、又は該ディスプレイの製造は、粒度の事前の縮小のために高い費用がかかるため、もはや十分に経済的ではない。
【0011】
従って引き続き、高い発光強度(光度)と長寿命とに加えて、公知のEL装置よりも低い正孔注入層の導電性を有するEL装置を製造する必要があった。例えば、パッシブマトリクスディスプレイにおいては、クロストークを減少させるが、特に小さい粒度を有する出発材料を使用する必要がないといった優れた効果を有する。
【特許文献1】EP−A−686662号
【特許文献2】DE−A−19627071号
【特許文献3】EP−A−1227529号
【特許文献4】EP−A1564251号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、かかるEL装置の製造のために適した配合物を開発及び提供することであった。更なる目的は、これらの材料から改善されたEL装置を製造することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、今まで知られていなかった、特定の置換されていてよいポリチオフェンと他のポリマーとを含有する配合物が、EL装置の正孔注入層の製造のために極めて適しており、かつこれらの正孔注入層が、特に小さい粒度を必要とすることなく、クロストークの発生を抑制しうることが判明した。
【0014】
従って、本発明は、
A)一般式(I−a)及び/又は(I−b)
【0015】
【化1】

[式中、
Aは、置換されていてよいC〜C−アルキレン基、有利には置換されていてよいエチレン基又はプロピレン基、特に有利には1,2−エタンジイル基を表し、
Yは、互いに無関係に、O又はSを表し、
Rは、直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18−アルキル基、有利には直鎖状又は分枝鎖状のC〜C14−アルキル基、特に有利にはメチル基又はエチル基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C14−アリール基、C〜C18−アラルキル基、C〜C−ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8の整数、有利には0、1又は2、特に有利には0又は1を表し、
幾つかの基RがAに結合されている場合に、これらは同一又は異なってよい]で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェン(その際、一般式(I−a)においてYがOを表す場合に、該ポリチオフェンは、更に、一般式(I−a)で示され、その式中、YがSを表す繰返単位を有するか、又は一般式(I−b)で示される繰返単位を有する)と、
B)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマー(その際、Mは、H、Li、Na、K、Rb、Cs又はNH、有利にはH、Na又はKを表す)と、
C)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマー(その際、Mは、H、Li、Na、K、Rb、Cs又はNH、有利にはH、Na又はKを表す)と
を含有する配合物を提供する。
【0016】
一般式(I)は、置換基Rがアルキレン基Aにx個結合してよいことを意味すると解釈されるべきである。
【0017】
本発明の範囲における、配合物(組成物)は、固体、溶液又は分散液としての、成分A)、B)及びC)の任意の混合物である。1種又は複数種のポリチオフェンA)に加えて、他の公知の導電性ポリマー、特に置換されていてよいポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン、例えば一般式(I−a)で示され、その式中、YがOを表す繰返単位のホモポリチオフェンを使用することもできる。一般式(I−a)で示され、その式中、YがOを表す繰返単位のかかる有利なホモポリチオフェンは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。これらの種々の導電性ポリマーは、ポリチオフェンA)との任意の所望の混合物で使用することができる。
【0018】
本願では、置換されている、とは、表現として特に挙げられない限りは、アルキル、有利にはC〜C20−アルキル、シクロアルキル、有利にはC〜C20−シクロアルキル、アリール、有利にはC〜C14−アリール、ハロゲン、有利にはCl、Br、I、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、シアノ、アルキルシラン及びアルコキシシラン基並びにカルボキサミド基の系列から選択される基で置換されていることを意味すると解釈されるべきである。
【0019】
本発明による配合物の有利な実施態様においては、一般式(I−a)及び/又は(I−b)で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンは、一般式(I−aa)及び/又は(I−bb)
【0020】
【化2】

で示され、その式中、R、Y及びxが前記の意味を有する繰返単位を有するポリチオフェンである。
【0021】
前記の記載による非常に特に有利な配合物においては、xは、0又は1を表す。xが1の場合には、Rは、特に有利には、メチル又はヒドロキシメチルを表す。
【0022】
本発明による配合物の更に有利な実施態様においては、一般式(I−a)及び/又は(I−b)で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンA)は、一般式(I−aa−1)及び/又は(I−aa−2)及び/又は(I−bb−1)
【0023】
【化3】

で示される繰返単位を有するポリチオフェンである。
【0024】
本発明の範囲においては、接頭語の、ポリ、という用語は、1つより多い同一又は異なる繰返単位を有するポリマー又はポリチオフェンを意味するものと解釈されるべきである。ポリチオフェンは、一般式(I−a)及び/又は(I−b)
で示される繰返単位を全体でn個有し、その際、nは、2〜2000、有利には2〜100の整数であってよい。一般式(I−a)及び/又は(I−b)の繰返単位は、それぞれの場合において、ポリチオフェン内では同一又は異なってよい。有利なポリチオフェンは、それぞれの場合に一般式(I−a)で示され、その式中、YがSを表す同一の繰返単位を有するポリチオフェン、それぞれの場合に一般式(I−b)で示され、その式中、YがSを表す同一の繰返単位を有するポリチオフェン、及び一般式(I−a)で示され、その式中、YがOとSの両者を表す繰返単位を有するコポリマー又は一般式(I−a)及び(I−b)の繰返単位を有するコポリマーである。これらは、特に有利には一般式(I−aa)で示され、その式中、YがSを表す繰返単位のホモポリチオフェン又は一般式(I−bb)の繰返単位のホモポリチオフェン、非常に特に有利には式(I−aa−2)又は(I−bb−1)の繰返単位のホモポリチオフェンである。更に特に有利なポリチオフェンは、一般式(I−aa)で示され、その式中、YがOとSの両者を表す繰返単位又は一般式(I−aa)及び(I−bb)の繰返単位のコポリチオフェン、非常に特に有利には一般式(I−aa−1)及び(I−aa−2)の繰返単位のコポリチオフェン、一般式(I−aa−1)及び(I−bb−1)の繰返単位のコポリチオフェンもしくは一般式(I−aa−2)及び(I−bb−1)の繰返単位のコポリチオフェンである。
【0025】
本発明の範囲においては、繰返単位は、一般式(I−a)、(I−b)、(I−aa)、(I−bb)、(I−aa−1)、(I−aa−2)又は(I−bb−1)の単位を意味すると解釈されるべきであり、それらを以下に、ポリチオフェンがそれらを1個又は複数個有するかにかかわらず、一般式(I)の繰返単位としてまとめる。つまり、一般式(I)の単位は、またポリチオフェンがその単位を1個だけしか有さなくても繰返単位としても解釈されるべきである。
【0026】
また、本発明による配合物は、一般式(I)で示される繰返単位を有する前記の少なくとも1種のポリチオフェンに加えて、他の導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリピロール又は他のポリチオフェンを混合物中に含有する配合物であってよい。有利な実施態様においては、本発明による配合物は、一般式(I)の繰返単位を有する前記のポリチオフェンA)に加えて、別のポリチオフェンとしてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を混合物中に含有してよい。
【0027】
ポリチオフェンは、有利にはそれぞれの場合に、末端基でHを有する。
【0028】
ポリチオフェンA)は、全体で一般式(I)の繰返単位をn個有し、その際、nは、有利には2〜1000の整数、好ましくは3〜100の整数、特に有利には4〜15の整数である。
【0029】
〜C−アルキレン基Aは、特にメチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレン又はn−ペンチレンである。C〜C18−アルキルは、特に直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピルもしくはイソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルもしくはt−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル又はn−オクタデシルを表し、C〜C12−シクロアルキルは、C〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロデシルを表し、C〜C14−アリールは、C〜C14−アリール基、例えばフェニル又はナフチルを表し、C〜C18−アラルキルは、C〜C18−アラルキル基、例えばベンジルを表し、かつC〜C18−アルキルアリールは、C〜C18−アルキルアリール基、例えばo−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、3,4−キシリル、3,5−キシリル又はメシチルを表す。前記の列記は、例として本発明を説明するものであり、決定的なものとして考慮されるべきではない。
【0030】
一般式(I)で示される繰返単位を有する前記のポリチオフェンA)の製造は、原則的に、EP−A440957号、Blanchard,Philippe;Cappon,Alexandre;Levillain,Eric;Nicolas,Yohann;Frere,Pierre;Roncali,Jean,Organic Letters(2002),4(4),607−609及びLee,Byoungchul;Seshadri,Venkatara−manan;Sotzing,Gregory A.,Synthetic Metals(2005),152(1−3),177−180に記載されている。
【0031】
相応のモノマー型の出発化合物の重合は、好適な溶剤中で好適な酸化剤を用いて行われる。好適な酸化剤の例は、鉄(III)塩、特にFeCl及び芳香族及び脂肪族のスルホン酸の鉄(III)塩、H、KCr、K、Na、KMnO、アルカリ金属過ホウ酸塩及びアルカリ金属又はアンモニウム過硫酸塩又はこれらの酸化剤の混合物である。更なる好適な酸化剤は、例えばHandbook of Conducting Polymers(ed.Skotheim,T.A.),Marcel Dekker:New York,1986,vol.1,46−57に記載されている。特に有利な酸化剤は、FeCl、Na及びK又はその混合物である。重合は、有利には、−20〜100℃の反応温度で実施される。20〜100℃の反応温度が特に好ましい。適宜、該反応溶液を、次いで少なくとも1種のイオン交換体で処理する。
【0032】
前記の反応のために適した溶剤は、例えば極性溶剤、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、グリセロール又はこれらの混合物である。脂肪族ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル、脂肪族及び環状のアミド、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)及びスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらの互いの混合物又はこれらと前記の溶剤との混合物も適している。
【0033】
一般式(I)の繰返単位を有するポリチオフェンA)の製造のための相応のモノマー型の化合物は公知である。それらの製造は、例えば、3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボン酸エステルのアルカリ金属塩と相応のアルキレン二ハロゲン化物とを反応させ、そして引き続き遊離の3,4−(アルキレンジオキシ)チオフェン−2,5−ジカルボン酸を脱カルボキシル化すること(例えばTetrahedron 1967,23,2437−2441及びJ.Am.Chem.Soc.1945,67,2217−2218を参照)によるか、3,4−ジアルコキシチオフェンと2−メルカプト−エタノールとでエーテル交換反応をすること(Blanchard,Philippe;Cappon,Alexandre;Levillain,Eric;Nicolas,Yohann;Frere,Pierre;Roncali,Jean,Organic Letters(2002),4(4),607−609)によるか、又はチエノ(3,4−b)チオフェンの場合には、L.Brandsma,H.D.Verkrujisse,Synth.Commun.20(1990)2275に従うことで可能である。
【0034】
得られたポリチオフェンは、極性溶剤又は極性溶剤混合物中に非常に易溶性又は易分散性である。
【0035】
本発明による配合物は、少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)に加えて、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の他のポリマーB)を含有する。好適なSO基又はCOO基を有するポリマーB)は、有利には、完全に共役していない主鎖を有するポリマーであり、これは以下に非共役ポリマーとしても略記する。好適なSO基又はCOO基を有するポリマーB)の挙げることができる例は、ポリマー型のカルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はポリマレイン酸又はポリマー型のスルホン酸、例えばポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸である。ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と他の重合可能なモノマー、例えばアクリル酸エステル及びスチレンとのコポリマーも、更に可能である。ポリスチレンスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸−コ−マレイン酸)又はポリ(ビニルスルホン酸)が特に適している。非常に特に適した配合物は、該配合物が、ポリスチレンスルホン酸(PSS)を、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーB)として有することを特徴とする。
【0036】
これらのポリマーB)は、有利には、極性溶剤、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、グリセロール、脂肪族ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル、脂肪族及び環状のアミド、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)及びスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらを含有する混合物中に、有利には水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール及びn−ブタノール又はこれらの混合物中に可溶性又は分散性である。
【0037】
前記の記載による特に適した配合物は、該配合物が、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)として、例えば一般式(II−a)及び(II−b)
【0038】
【化4】

[式中、Rは、少なくとも1つの、有利には1〜30個の一般式(II−c)
【0039】
【化5】

で示される繰返単位を有する基を表す]で示される繰返単位を有するポリマーを含有することを特徴とする。
【0040】
かかる過フッ素化されたポリマーは、例えばNafion(登録商標)という商標名で市販されているポリマー又はLiquion(登録商標)という商標名で市販されている溶解された形のポリマーである。
【0041】
特に有利な実施態様においては、該新規の配合物は、Nafion(登録商標)(テトラフルオロエチレンと、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)モノ(テトラフルオロビニルスルホン酸)エーテルのトリフルオロビニルエーテルとのコポリマー)を、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーC)として含有する。
【0042】
SO基又はCOO基を有するポリマーB)としてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含有し、かつSO基又はCOO基を有する部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)としてNafion(登録商標)(テトラフルオロエチレンと、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)モノ(テトラフルオロビニルスルホン酸)エーテルのトリフルオロビニルエーテルとのコポリマー)を含有する配合物が、特に好ましい。
【0043】
ポリ酸の分子量は、有利には1000〜2000000、特に有利には2000〜500000である。ポリ酸又はそれらのアルカリ金属塩は、市販品、例えばポリスチレンスルホン酸及びポリアクリル酸であるか、又はこれらは公知法(例えばHouben Weyl,Methoden der organischen Chemie,vol.E 20 Makromolekulare Stoffe,part 2,(1987),p. 1141 et seq.を参照のこと)によって製造することができる。
【0044】
1種又は複数種のポリチオフェンA)及び、適宜、そこに含まれる追加的な導電性ポリマーと、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種のポリマーB)との質量比が、1対2(1:2)〜1対25(1:25)、有利には1対2(1:2)〜1対20(1:20)である配合物が、非常に特に好ましい。
【0045】
1種又は複数種のポリチオフェンA)及び、適宜、そこに含まれる追加的な導電性ポリマーと、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)との質量比が、1対1(1:1)〜1対50(1:50)、有利には1対2(1:2)〜1対30(1:30)である配合物が、更に非常に特に好ましい。
【0046】
1種又は複数種のポリチオフェンA)と、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種のポリマーB)との質量比及び1種又は複数種のポリチオフェンA)と、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)との質量比の2種の質量比の全ての所望の組合せを、有利な配合物において実現することができ、これらは本願に開示されたものとする。
【0047】
該新規の配合物は、更に、追加的に、少なくとも1種の極性希釈剤D)(極性溶剤)を含有してよい。本発明の範囲では、極性希釈剤D)(極性溶剤)は、16MPa1/2以上、有利には19MPa1/2以上の溶解度パラメータδを有する希釈剤を意味するものと解釈されるべきである。溶解度パラメータは、一般に、標準温度(20℃)で測定される。溶解度パラメータの測定法及び計算法については、J.Brandrup et al.,Polymer Handbook,4th ed.,1999,VII/675−VII/688を参照のこと。溶解度パラメータは、例えばJ.Brandrup et al.,Polymer Handbook,4th ed.,1999,VII/688−VII/697において表にして示されている。有利な極性希釈剤D)は、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、グリセロール、脂肪族ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル、脂肪族及び環状のアミド、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)及びスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)又はこれらを含有する混合物である。特に有利な極性希釈剤D)は、水、アルコール又はこれらを含有する混合物であり、かつ水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール又はn−ブタノール又はこれらを含有する混合物が非常に特に好ましい。有利な実施態様においては、該新規の配合物は、水と少なくとも1種のアルコールとの混合物を極性希釈剤D)として含有する。
【0048】
かかる新規の有利な、少なくとも1種の極性希釈剤D)を含有する配合物は、有利には、99.99〜80質量%、特に有利には99.8〜95質量%の1種又は複数種の極性希釈剤を含有し、かつ0.01〜20質量%、特に有利には0.2〜5質量%の固体含量を有する、すなわち、全体で、0.01〜20質量%、特に有利には0.2〜5質量%の1種又は複数種のポリチオフェンA)、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種のポリマーB)及びC)と、場合によりそこに含まれる更なる成分、例えばバインダー、架橋剤及び/又は界面活性剤を、溶解された及び/又は分散された形で含有する。
【0049】
新規の有利な、少なくとも1種の極性希釈剤を含有する配合物の20℃での粘度は、希釈剤の粘度と、200mPas、有利には<100mPasの粘度との間の粘度である。
【0050】
所望の固体含量と所望の粘度を達成するために、希釈剤の所望量を、蒸留、有利には真空中での蒸留によって又は他の方法、例えば限外濾過によって配合物から除去することができる。
【0051】
有機のポリマー型のバインダー及び/又は無機の低分子量の架橋剤又は界面活性剤を、更に本発明による配合物に添加してよい。相応のバインダーは、例えばEP−A564911号に記載されている。本願で挙げられる例は、バインダーとしてのポリビニルカルバゾール、シラン、例えばSilquest(登録商標)A187(OSi specialities社)又は架橋剤としての界面活性剤、例えばfluorosurfactant FT248(Bayer AG社)である。
【0052】
該配合物は、有利には、EP−A991303号に記載されるような限界値で少量のイオン性不純物を含有してよい。該配合物は、有利には、1000ppm未満のイオン性不純物を含有する。
【0053】
本発明による配合物は、単純な様式で、既に完成された、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーB)及び少なくとも1種のポリチオフェンA)を本発明による場合により溶液又は分散液の形である配合物について前記した質量比で含有する混合物と、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)とを、本発明による場合により溶液又は分散液の形である配合物について前記したポリチオフェンA)に対する質量比で混合することによって製造することができる。同様に本発明は、本発明による配合物の前記製造方法を提供する。例えば、既に完成された、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーB)及び少なくとも1種のポリチオフェンA)を含有する混合物と、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)とを混合し、そして場合によりこの混合物に少なくとも1種の希釈剤を添加して、有利にはこの混合物を少なくとも1種の希釈剤中に完全に又は部分的に溶解又は分散させることが可能である。また、既に完成された、SO基又はCOO基を有するポリマーB)及び少なくとも1種のポリチオフェンA)を含有する混合物に、事前に少なくとも1種の希釈剤D)を添加し、有利にはこの完成された混合物を少なくとも1種の希釈剤D)中に完全に又は部分的に溶解又は分散させて、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)を希釈剤中に溶解又は分散させ、次いで前記の1種又は複数種の溶液及び/又は分散液を混合することも可能である。適宜、全ての又は幾つかの希釈剤D)又は希釈剤混合物を、次いで前記混合物から、例えば蒸留又は他の方法によって再び除去することができる。
【0054】
驚くべきことに、本発明による配合物は、EL装置、有機太陽電池、有機レーザダイオード、有機薄膜トランジスタ又は有機電界効果トランジスタ中の正孔注入層又は正孔輸送層の製造のために、電極又は導電性コーティングの製造のために極めて適している。
【0055】
従ってまた、本発明は、本発明による配合物を、EL装置中の正孔注入層の製造のために、電極又は導電性コーティングの製造のために用いる使用を提供する。
【0056】
これらのEL装置は、ディスプレイエレメント(ディスプレイ)として、例えば平面スクリーン、例えばラップトップ、ページャー、携帯電話、ナビゲーション機器、カーラジオ、自動車両計器パネルにおいて、又は平面発光体、例えばランプ、発光面、LCDディスプレイ用の背面照明、信号として使用される。
【0057】
特に、本発明による配合物を含有する正孔注入層を有するEL装置は、高い発光強度(光度)及び長寿命の点で区別されるが、公知のEL装置に対して、例えばパッシブマトリクスディスプレイにおいてクロストークを回避するために粒度を費用をかけて制御する必要がないという利点を有する。
【0058】
クロストークは、当業者には、パッシブマトリクスディスプレイにおける隣接するアドレス線間での電気的なオーバートーキングを意味するものと解釈されるべきである。OLEDにおけるクロストークを回避するためには、使用される層のいずれも、1E4オーム・cm未満の比電気抵抗を有さないことが必要である。特に正孔注入層のためには、その抵抗率が1・10オーム・cm〜1・10オーム・cmの範囲で維持される必要がある。その上限は、該層にわたる電圧の降下を最小限にする必要性からもたらされる。その抵抗率は、導電性ポリマー層の表面抵抗と層厚との積から算出される。導電性ポリマーについての表面抵抗は、DIN EN ISO3915に従って測定され、そしてポリマー層の厚さは、触針式プロフィルメータを用いて測定される。
【0059】
本発明による配合物は、EL装置で達成される電気的整流比の点で更なる利点をもたらす。この比は、当業者によって、固定電圧における順方向電流と逆方向電流との比率を意味すると解釈される。OLEDが順方向に分極していれば、すなわちアノード、例えばITOアノードの接続が電圧源の陽極に対してなされ、かつ蒸着された金属電極が陰極に接続されていれば、こうして順方向電流“I+”が流れる。極性が逆であれば、逆電流“I−”が流れる。パッシブマトリクス型OLEDの駆動に際して、大部分の個々の発光点(ピクセル)は逆方向に分極されるので、電気的損失を低く保つには最も高い可能な整流比が望ましい。整流比I+/I−が1・10より大きいことが推奨される。
【0060】
従ってまた、本発明は、本発明による配合物を含有する正孔注入層を有するEL装置、特に発光ダイオードを提供する。これらは、有利には少なくとも2つの電極を有し、そのうち場合により少なくとも1つが、場合により透明な基板に適用されており、それらの2つの電極の間に少なくとも1つの発光体層を有し、かつ該2つの電極の1つと発光体層との間に少なくとも1つの正孔注入層を有するEL装置であって、該正孔注入層が本発明による配合物を含有することを特徴とするEL装置である。
【0061】
多くの大面積のEL装置、例えば大面積の電界発光ディスプレイエレメントの製造において、通電電極の少なくとも1つが、透明かつ導電性の材料から製造されることが好ましい。好適なかかる透明かつ導電性の電極材料の例は、
a)金属酸化物、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、スズ酸化物(NESA)、ドープされたスズ酸化物、ドープされた亜鉛酸化物など、
b)半透明金属薄膜、例えばAu、Pt、Ag、Cuなど、
c)半透明の導電性ポリマー、例えばポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなど
である。
【0062】
前記の透明かつ導電性の材料の1つから製造されない電極は、有利には金属電極、特に金属カソードである。
【0063】
金属カソードに適した材料は、電気光学的な構造に慣用であり、かつ当業者に公知の材料である。可能な金属カソードは、有利には低い発光仕事量(work of emission)のもの、例えばMg、Ca又はBa又は金属塩、例えばLiFである。
【0064】
好適な場合により透明な基板は、例えばガラス、極薄ガラス(フレキシブルガラス)又はプラスチック、有利にはプラスチックフィルムである。
【0065】
基板のために特に適したプラスチックは、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばPET及びPEN(ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−ナフタレンジカルボキシレート)、コポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン又は環状ポリオレフィン又は環状オレフィンコポリマー(COC)、水素化スチレンポリマー又は水素化スチレンコポリマーである。
【0066】
好適なポリマー基板は、例えばフィルム、例えばポリエステルフィルム、Sumitomo社製のPESフィルム又はBayer AG社製のポリカーボネートフィルム(Makrofol(登録商標))であってよい。
【0067】
本発明によるEL装置の発光体層は、少なくとも1種の発光体材料を含有する。好適な発光体材料は、電気光学的な構造に慣用であり、かつ当業者に公知の材料である。有利な可能な発光体材料は、共役ポリマー、例えばポリフェニレン−ビニレン及び/又はポリフルオレン、例えばポリパラフェニレン−ビニレン誘導体及びポリフルオレン誘導体(これらは、例えばWO−A90/13148号に記載される)又は低分子量発光体のクラスの発光体(また業界では小分子とも呼ばれる)、例えばアルミニウム錯体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、蛍光色素、例えばキナクリドン又は燐光発光体、例えばIr(ppy)である。発光体材料は、例えばDE−A19627071号に記載されている。
【0068】
前記の層に加えて、更なる機能層、例えば更なる電荷注入層、例えば電子注入層、電荷輸送層又は電荷ブロック中間層がかかる電界発光体層構造(EL装置)中に含まれていてよい。かかる層構造は、当業者に公知であり、かつ例えばJ.R.Sheats et al.Science 273,(1996),884に記載されている。1層が、幾つかの機能を取って代わってもよい。例えば、前記の発光体材料は、正孔輸送中間層と組み合わせて、正孔注入層と発光体層との間で使用することができる(例えばUS4,539,507号及びUS5,150,006号を参照)。
【0069】
原則的にかかるEL装置の製造は当業者に公知である。例えば、該装置は、電極を基板に対して、溶液又は分散液から適用するか又は蒸着によって適用することによって製造することができる。例えば、金属酸化物電極又は半透明の金属薄膜電極を、有利には基板に対して蒸着によって適用するが、一方で、半透明の導電性のポリマー電極は、有利には溶液又は分散液から適用される。適宜、接着促進剤を、蒸着によって又は溶液又は分散液から適用してから、基板に電極材料が適用される。電極材料で被覆された幾つかのかかる基板は、また既に市販されている(例えばKガラス、ITO被覆ガラス基板)次いで正孔注入層が電極に適用されてよく、それは本発明による配合物を有する正孔注入層を有する本発明によるEL装置の場合には溶液又は分散液から行われることが好ましい。次いで更なる層を、正孔注入層に、冒頭に示した順序で(個々の層を省けることを考慮に入れて)、使用される材料に依存して溶液又は分散液から又は蒸着によって適用する。次いで該層装置を、接続して封止する。
【0070】
本発明による配合物を含有する正孔注入層の製造は、公知の技術によって実施される。このために、本発明による配合物は(場合により溶剤中で)、電極に、有利にはベース電極に対して薄膜として適用される。好適な溶剤は、前記の極性希釈剤、有利には水、アルコール又はこれらの混合物である。好適なアルコールは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール及びn−ブタノールである。
【0071】
これらの溶剤の使用は、他の層を、正孔注入層が攻撃又は再溶解されることなく、有機溶剤、例えば芳香族又は脂肪族の炭化水素混合物から適用できるという利点を有する。
【0072】
本発明による配合物は(場合により溶剤中で)、電極上に、印刷技術によって、例えばスピンコート、キャスティング、ナイフ塗布、印刷、カーテンキャスティング(curtain casting)などによって一様に分配することができる。次いで該層を、室温又は300℃までの温度、有利には100〜200℃の温度で乾燥させることができる。
【0073】
本発明による配合物は(場合により溶剤中で)、更に有利には、インクジェットのような技術によってパターン形成された形で適用することができる。この技術は当業者に公知であり、その際、水溶性及び水分散されるポリチオフェン、例えば3,4−ポリエチレンジオキシ−チオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDT:PSS)を使用することが、例えばScience,vol.279,1135,1998及びDE−A19841804号に記載されている。
【0074】
本発明による配合物は(場合により溶剤中で)、有利には適用前にフィルタを通して濾過される。
【0075】
精製のために濾過することができる配合物は、特に容易に得ることができ、例えばそれは、一般式(I)の繰返単位を有する1種又は複数種のポリチオフェンの1質量部に対して、有利には1〜30質量部、特に有利には2〜25質量部の、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種のポリマーB)が溶剤D)中で使用される場合である。
【0076】
正孔注入層の厚さは、例えば3〜500nm、有利には10〜200nmである。
【実施例】
【0077】
実施例1
ポリ(エチレンオキシチアチオフェン)−PPS錯体とNafion(登録商標)とのその混合物の製造
1.06gのPSS(分子量M=48000)、0.47gのEOTT及び0.25gのヨウ素酸ナトリウムを103.7gの水中に溶かした溶液を、50℃で7日間撹拌した。次いで、その深青色の反応混合物を、それぞれ9gのカチオン及びアニオン交換体(Lewatit(登録商標)S100及びLewatit(登録商標)MP62)で8時間脱イオン化し、そして次いで該イオン交換樹脂を濾別した。イオン含量:1ppmの硫酸イオン、14ppmのNa、<20ppmのヨウ化物イオン。
【0078】
得られた脱イオン化配合物を以下のとおり混合して、本発明による混合物を製造した:
19.6gの前記の脱イオン化配合物
(これは0.225gのPEOTT−PSS錯体に相当する)
12.97gの水
12.1gのエタノール
10.75gのLiquion(登録商標)1100(Ion Power Inc.社(米国)製のNafion(登録商標)を含有する溶液、2−プロパノール/HO中の5質量%濃度溶液、1100当量)
(これは0.5gのNafion(登録商標)に相当する)
このために、エタノールと水を、まずLiquion(登録商標)1100中に計量し、該混合物を23℃で1/4時間撹拌し、そして次いでPEOTT−PSS錯体を計量供給して、その後に該混合物を23℃で更に1/2時間撹拌した。
【0079】
モノマー:PSS:フッ素化されたポリマーの質量比は、1:2.3:7.3に相当する。
【0080】
実施例2
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸と過フッ素化されたポリマーとの混合物の製造
ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸溶液(H.C.Starck GmbH社、脱塩されたBaytron(登録商標)PH)を、Nafion(登録商標)溶液(Liquion(登録商標)1100、2−プロパノール/HO中5質量%濃度溶液、1100当量、Ion Power Inc.社(米国))と、PEDT:PSS:Nafion(登録商標)の質量比1:2.5:7.5で混合した。
【0081】
実施例3
実施例1からの本発明による配合物を使用して、有機発光ダイオード(OLED)を構築した。OLEDの製造の手順は以下のとおりである:
1. ITO被覆基板の製造
ITO被覆ガラス(Merck Balzers AG社、FL、部品番号253674XO)を、50mm×50mmのサイズの小片(基板)に切断した。次いでそれらの基板を、3%濃度のMucasol水溶液中で超音波浴において15分間清浄化した。次いで、それらの基板を蒸留水ですすぎ、そして遠心分離器中でスピン乾燥させた。このすすぎと乾燥の作業は10回繰り返した。被覆直前に、ITO被覆側を、UV/オゾンリアクター(PR−100、UVP Inc.社(英国ケンブリッジ在)において10分間清浄化させた。
【0082】
2. 正孔注入層の適用
約10mlの、実施例1からの本発明による配合物を濾過した(Millipore HV、0.45μm)。清浄化したITO被覆基板を、塗料用スピンコーターに載置し、そして濾過された溶液を、基板のITO被覆側にわたって分配させた。次いで上澄み溶液を、500rpmでのプレートの回転によって30秒間の期間にわたり蓋を閉じて振り落とした。次いで、前記のように被覆された基板を、ホットプレート上で200℃で5分間乾燥させた。その層厚は、50nmであった(Tencor、Alphastep 500)。
【0083】
導電性は、Ag電極を2.5cm長で0.5mmの間隔でストリップマスクを介して蒸着させることによって別個の層で測定した(方法工程4と類似)。電位計で測定された表面抵抗を層厚と乗算して、抵抗率を得た。
【0084】
3. 発光体層の適用
発光体Green 1300 LUMATION(商標)(Dow Chemical Company社)の1質量%濃度のキシレン溶液5mlを濾過(Millipore HV、0.45μm)し、そして乾燥された正孔注入層上に分配させた。次いで発光体の上澄み溶液を、500rpmでのプレートの回転によって30秒間の期間にわたり蓋を閉じて振り落とした。次いで、その層をホットプレート上で110℃で5分間にわたり乾燥させた。全層厚は、130nmであった。
【0085】
全ての更なる方法工程は、純粋なN雰囲気(不活性ガスグローブボックスシステム(inert gas glove box system)、M.Braun,Garching)中で行い、その中に被覆された基板を移した。被覆された基板をまずここでホットプレート上で130℃で15分間にわたり乾燥させた。
【0086】
4. 金属カソードの適用
金属電極は、発光体層上にカソードとして蒸着させた。このために、発光体層を有する基板を、2.5mm直径の穿孔を有するストリップマスクの下に載置した。5nm厚のBa層と、次いで200nm厚のAg層とを、連続的に2つの蒸着用ボートから、圧力p=10−3Paで蒸着させた。蒸着速度は、Baについては10Å/秒であり、かつAgについては20Å/秒である。隔離された金属電極は、4.9mmの面積を有していた。
【0087】
5. OLEDの特性決定
有機LEDの2つの電極を、電圧源に電気リードを介して接続(接触)させた。陽極を、ITO電極に接続し、そして陰極を、金属電極に薄い可撓性のAuワイヤを介して接続した。OLED電流と電界発光強度(検出はホトダイオード(EG&G C30809E)を用いた)の電圧に対する依存性を記録した。次いで寿命を、I=0.32mA(8mA/cm)の定電流を該装置に流し、そして電圧と光強度とを時間の関数としてモニタリングすることによって測定した。
【0088】
比較例3.1
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸とNafion(登録商標)との混合物を正孔注入層として用いたOLEDの製造
手順は、実施例3と同様であるが、方法工程2に以下の変更を加えた:
2. 正孔注入層の適用
実施例2からの約10mlの溶液を濾過した(Millipore HV、0.45μm)。次いでITO被覆基板を、塗料用スピンコーターに載置し、そして濾過された溶液を、基板のITO被覆側にわたって分配させた。次いで上澄み溶液を、850rpmでのプレートの回転によって30秒間の期間にわたり蓋を閉じて振り落とした。次いで、前記のように被覆された基板を、ホットプレート上で200℃で5分間乾燥させた。層厚は50nmであった。
【0089】
金属カソードは、方法工程4に従って実施例3からの層構造を共通に適用して、比較可能性を確保した。特性決定は、実施例3と同様に行った。
【0090】
第1表:実施例3と比較例3.1からの装置の特性ラインの測定の結果
【0091】
【表1】

【0092】
実施例1からの本発明による配合物を含有する正孔注入層を用いた本発明によるOLEDは、パッシブマトリクス型OLEDで使用するのに十分に高い抵抗率を有した。それに対して、比較例の抵抗率は低すぎ、隣接するアドレス線間の電気的オーバートーキング(クロストーク)がその結果である。
【0093】
実施例3からの本発明によるOLEDの更なる利点は、比較例によるOLEDと比較した場合の、その高い効率とかなり優れた整流比である。
【0094】
実施例4
ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)/ポリスチレンスルホン酸錯体及びそのNafion(登録商標)との混合物の製造
1.25gのPSS(分子量M=460000g/モル)、195.6gの水及び1.44gの水中1%濃度の硫酸鉄(III)溶液の溶液を、室温で撹拌した。285mgのチエノ[3,4−b]チオフェンを添加し、そして該溶液を1時間撹拌した。726mgのペルオキソ二硫酸ナトリウムを添加した。3時間撹拌した後に、215mgのチエノ[3,4−b]チオフェンを添加し、そして更に15分後に、474mgのペルオキソ二硫酸ナトリウムを添加した。18時間撹拌した後に、該混合物を10gのカチオン交換体及び6gのアニオン交換体(Lewatit(登録商標)S100及びLewatit(登録商標)MP62)で8時間脱イオン化させ、そして該イオン交換樹脂を次いで濾別した。ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PTT/PSS)の分散液を、回転蒸発器上で半分の容量にまで濃縮した。
【0095】
得られた配合物を以下のとおり混合して、本発明による混合物を製造した:
20gの前記の脱イオン化配合物
(これは0.3gのPTT−PSS錯体に相当する)
13gの水
12.1gのエタノール
13.82gのLiquion(登録商標)1100(Ion Power Inc.社(米国)製のNafion(登録商標)を含有する溶液、2−プロパノール/HO中の5質量%濃度溶液、1100当量)
(これは0.64gのNafion(登録商標)に相当する)
このために、エタノールと水を、まずLiquion(登録商標)1100中に計量し、該混合物を23℃で1/4時間撹拌し、そして次いでPTT−PSS錯体を計量供給して、その後に該混合物を23℃で更に1/2時間撹拌した。
【0096】
モノマー:PSS:フッ素化されたポリマーの質量比は、1:2.5:7.5に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
A)一般式(I−a)及び/又は(I−b)
【化1】

[式中、
Aは、置換されていてよいC〜C−アルキレン基、有利には置換されていてよいエチレン基又はプロピレン基を表し、
Yは、互いに無関係に、O又はSを表し、
Rは、直鎖状又は分枝鎖状のC〜C18−アルキル基、C〜C12−シクロアルキル基、C〜C14−アリール基、C〜C18−アラルキル基、C〜C−ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシル基を表し、
xは、0〜8の整数を表し、
幾つかの基RがAに結合されている場合に、これらは同一又は異なってよい]で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェン(その際、一般式(I−a)においてYがOを表す場合に、該ポリチオフェンは、更に、一般式(I−a)で示され、その式中、YがSを表す繰返単位を有するか、又は一般式(I−b)で示される繰返単位を有する)と、
B)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマー(その際、Mは、H、Li、Na、K、Rb、Cs又はNH、有利にはH、Na又はKを表す)と、
C)SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマー(その際、Mは、H、Li、Na、K、Rb、Cs又はNH、有利にはH、Na又はKを表す)と
を含有する配合物。
【請求項2】
請求項1記載の配合物であって、一般式(I−a)及び/又は(I−b)で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンが、一般式(I−aa)及び/又は(I−bb)
【化2】

で示され、その式中、R、Y及びxが請求項1に示される意味を有し、かつ有利にはxが0又は1を表す繰返単位を有することを特徴とする配合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配合物であって、一般式(I−a)及び/又は(I−b)で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンが、一般式(I−aa−1)及び/又は(I−aa−2)及び/又は(I−bb−1)
【化3】

で示される繰返単位を有することを特徴とする配合物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の配合物であって、一般式(I−a)及び/又は(I−b)の繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンが、それぞれの場合に一般式(I−a)で示され、その式中、YがSを表す同一の繰返単位を有するポリチオフェン、それぞれの場合に一般式(I−b)で示され、その式中、YがSを表す同一の繰返単位を有するポリチオフェン、又は一般式(I−a)で示され、その式中、YがOとSの両者を表す繰返単位を有するコポリマー、又は一般式(I−a)及び(I−b)で示される繰返単位を有するコポリマーであることを特徴とする配合物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の配合物であって、一般式(I−a)及び/又は(I−b)で示される繰返単位を有する少なくとも1種のポリチオフェンに加えて、他の導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン、有利にはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含有することを特徴とする配合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の配合物であって、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーB)として、ポリスチレンスルホン酸(PSS)を含有することを特徴とする配合物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の配合物であって、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)として、テトラフルオロエチレンと、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)モノ(テトラフルオロビニルスルホン酸)エーテルのトリフルオロビニルエーテルとのコポリマーを含有することを特徴とする配合物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の配合物であって、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)として、例えば一般式(II−a)及び(II−b)
【化4】

[式中、Rは、少なくとも1個、有利には1〜30個の式(II−c)
【化5】

で示される繰返単位を有する基を表す]で示される繰返単位を有するポリマーを含有することを特徴とする配合物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の配合物であって、1種又は複数種のポリチオフェンA)と、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)との質量比が、1:2〜1:15であることを特徴とする配合物。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の配合物であって、1種又は複数種のポリチオフェンA)と、SO基又はCOO基を有する1種又は複数種のポリマーB)との質量比が、1:2〜1:25であることを特徴とする配合物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の配合物であって、追加的に、少なくとも1種の極性希釈剤を含有することを特徴とする配合物。
【請求項12】
請求項11記載の配合物であって、極性希釈剤D)として、水、アルコール、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール又はn−ブタノールからなる系列のアルコール又はこれらの希釈剤の少なくとも1つを含有する任意の所望の混合物を使用することを特徴とする配合物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の配合物の製造方法において、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種のポリマーB)及び少なくとも1種のポリチオフェンA)を含有する混合物を、場合により希釈剤の存在下で溶液又は分散液の形で、SO基又はCOO基を有する少なくとも1種の部分的にフッ素化された又は過フッ素化されたポリマーC)と、場合により希釈剤の存在下で溶液又は分散液の形で、混合することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項記載の配合物を、電界発光装置、有機太陽電池、有機レーザダイオード、有機薄膜トランジスタ又は有機電界効果トランジスタ中の正孔注入層又は正孔輸送層の製造のために、電極又は導電性コーティングの製造のために用いる使用。
【請求項15】
少なくとも2つの電極を有し、そのうち場合により少なくとも1つが、場合により透明な基板に適用されており、それらの2つの電極の間に少なくとも1つの発光体層を有し、かつ該2つの電極の1つと発光体層との間に少なくとも1つの正孔注入層を有する電界発光装置、特に発光ダイオードであって、該正孔注入層が請求項1から12までのいずれか1項記載の配合物を含有することを特徴とする電界発光装置。

【公開番号】特開2007−191715(P2007−191715A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10570(P2007−10570)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(506350458)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシヤフト (14)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】