説明

有機電子素子用機能性膜

【課題】有機電子素子の構成層として有用な電荷注入機能および電荷移動機能に優れた機能性膜を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物と、亜鉛、クロムおよびマンガンを初めとする特定の遷移金属の金属塩とからなる組み合わせであって、その光の吸収スペクトルを一階微分形で表した曲線が、240nm〜400nmの波長範囲に有する最小値に対してその4分の1よりも小さい極小値を430nm〜800nmの範囲に有しない組み合わせを含む有機電子素子用機能性膜。
【化1】


(ここで、Arはn価の共役基を表し、Jは前記金属塩を構成する上記遷移金属のイオンに配位可能な原子を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、nは2以上20以下の整数を表し、複数のJは同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子用機能性膜、該機能性膜を使用する有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELデバイスに代表される有機電子デバイスが注目されている。有機電子デバイスとしては低電力化によって無機電子デバイスよりも省電力が可能と考えられているが、金属から有機材料および有機材料から別の有機材料への電荷の注入と、有機材料そのものの導電性の低さによって、低電力化は十分には実現されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、有機電子デバイスの低電力化、すなわち高効率化を実現しうる優れた有機電子素子用機能性膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題が、
下式(1)で表される化合物と、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、La、Ce、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiからなる群から選ばれる遷移金属(以下、「特定遷移金属」という)の金属塩との組み合わせであって、
その光の吸収スペクトルを一階微分形で表した曲線が、240nm〜400nmの波長範囲に有する最小値に対してその4分の1よりも小さい極小値を430nm〜800nmの範囲に有しない組み合わせを含む有機電子素子用機能性膜。
【0005】
【化1】

(ここで、Arはn価の共役基を表し、Jは前記金属塩を構成する金属イオンに配位可能な原子を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、nは2以上20以下の整数を表し、複数のJは同一でも異なっていてもよい。)
【0006】
以下、該発明に関連した他の発明とともに、これら発明の代表的な好ましい実施形態を挙げる。
【0007】
上記機能性膜に一実施形態として、前記の式(1)で表される化合物と金属塩とからなる組み合わせが、該化合物と該金属イオンとで形成された錯体を含む機能性膜を提供する。
【0008】
上記の機能性膜において、前記の式(1)で表される化合物/前記金属イオンのモル比が0.3〜5.0であることが好ましい。
【0009】
上記の配位基Jが有する前記配位可能な原子は炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはそれらの2種以上の組み合わせであることが好ましく、特に窒素原子であることが好ましい。
【0010】
上記の配位基Jが前記金属イオンに配位可能な原子を1〜3個有することが好ましい。
【0011】
配位基Jはビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であることが好ましい。
【0012】
前記の共役基Arは芳香族炭化水素基であることが好ましい。なかでも、共役基Arがフェニレン基、フルオレンジイル基またはそれらの組み合わせであることがより好ましい。
【0013】
前記遷移金属の金属塩は亜鉛、クロムまたはマンガンの塩であることが好ましい。中でも亜鉛塩であることがより好ましい。
【0014】
本発明は、第二に、上記の機能性膜からなる有機電子素子用電荷注入層を提供する。
【0015】
本発明は、第三に、上記の機能性膜からなる有機電子素子用電荷移動層を提供する。
【0016】
本発明は、第四に、上記の機能性膜と、該機能性膜の両側のおのおのに直接にまたは少なくとも一つの別の層を介して設けられた少なくとも一つの電極とを備えた(すなわち、有機電子素子としては、少なくとも二つの電極を備えた)有機電子素子を提供する。
【0017】
該有機電子素子としては、有機発光素子、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子等をあげることができる。
【0018】
上記有機電子素子の好ましい一実施形態として、該機能性膜と、該機能性膜の少なくとも片側に設けられた少なくとも一つの電極と、該機能性膜及び該電極の間に設けられた少なくとも一層の発光層を有し、発光性である有機電子素子を提供する。
【0019】
本発明は第五に、下記の式(2)で表されるフルオレン系化合物を提供する。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Jは前記の特定遷移金属の金属イオンに配位可能な原子を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、Rは1価の炭化水素基である。2個のRは、同一であっても異なっていてもよい。2個のJは同一であっても異なっていてもよい。)
上記のフルオレン系化合物において、Jがビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であるものが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、第六に、新規化合物として、式(2)で表されるフルオレン系化合物と特定遷移金属の塩とからなる錯体を提供する。
【0023】
該錯体において、上記特定遷移金属の塩は亜鉛塩、クロム塩またはマンガン塩であることが好ましく、さらに亜鉛塩であることが特に好ましい。その具体例として下記の式(3)で表される繰返し単位を有する錯体を提供する。
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、Jは亜鉛イオンに配位可能な原子を1〜3個有する1価の配位基であり、Rは1価の炭化水素基であり、(AN)n−はn価の対アニオン(但し、nは1または2の整数)であり、破線は1〜3本の配位結合を示す。)
式(3)において、Jはビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であることが好ましい。Rはアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有機電子素子用機能性膜では、式(1)で表される化合物と特定遷移金属の塩とからなる組み合わせが良好な導電性を示し、金属電極などからの電荷の注入性および電荷の移動性を高める。該組み合わせは、金属原子と有機物間に形成される配位結合により生じる金属錯体の状態にある場合が確認されたが、常に金属錯体の状態にあるとは限らない。それにも関わらず、いずれにせよ、該組み合わせが分子間ネットワークを形成し、金属電極などからの電荷の注入性および電荷の移動性を高める。そのため、本発明の有機電子素子用機能性膜は、有機電子デバイスにおいて、電荷注入層、電荷輸送層またはその両方の機能を兼ね備える層として極めて有用であり、例えば発光効率などの効率を高めるものである。したがって、該機能性膜は、有機発光素子、有機トランジスタ、有機太陽電池等の製造に有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を説明するための、(A)は仮想的な吸収スペクトルを示し、(B)はその一階微分曲線を示す。
【図2】実施例1で得られた化合物X−Znの吸収スペクトル(A)、その一階微分曲線(B)およびそれをスムージング処理した曲線(C)を示す。
【図3】比較例1で得られた化合物X−Coの吸収スペクトル(A)、その一階微分曲線(B)およびそれをスムージング処理した曲線(C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0029】
式(1)におけるJで表される「配位基」とは、上記金属イオンに配位可能な原子(以下、「配位原子」という)を1個以上8個以下、構成原子として含む基を意味する。配位基Jを構成する原子の数は配位原子を含めて2個以上500個以下であり、好ましくは6個以上200個以下であり、より好ましくは6個以上100個以下であり、さらに好ましくは8個以上70個以下である。配位原子の数は1個以上8個以下であるが、1個以上6個以下が好ましく、1個以上4個以下がより好ましく、1個以上3個以下が特に好ましい。
【0030】
「配位原子」は、一組の孤立電子対を有して金属塩中の金属イオンに配位可能な状態の原子であり、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子があげられる。ひとつの配位基Jに含まれる配位原子は、原子種として単一種でも複数種であってもよく、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子および酸素原子がより好ましく、窒素原子がさらに好ましい。
【0031】
本発明におけるJの配位基の例は、下に示す化合物の任意のHを1個取り去ることにより生じる残基である。1個のHを取り去られる前の原化合物は、下に例示の化合物のおのおのにおいて、取り去られるH以外の別の1つ以上のHがRで置換されたものでもよい。ここで、Rは下に例示する通りであり、ひとつの化合物に複数の置換基Rが存在する場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。この例示の中では、bipy、phen、およびtpyから任意のHを一個取り去ることによりそれぞれ生じるビピリジル基、フェナントロリニル基およびターピリジル基(以下、本明細書においては、これらの三種の基を総じて「ターピリジル基等」ともいう)がJとして好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
上記Raは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基(即ち、アラルキル基)、1価の複素環基、炭化水素オキシ基、炭化水素二置換アミノ基、炭化水素メルカプト基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、又は炭化水素スルホニル基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。Raとしては、好ましくはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0034】
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素原子数が通常1〜20であり、好ましくは炭素原子数1〜15であり、より好ましくは1〜10であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられ、素子特性、合成の行いやすさ等の観点からは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。Raが複数存在する場合には、2つのアルキル基どうしが結合してアルキレン基を形成することにより環を形成してもよい。
【0035】
アリール基は、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接またはビニレン基等を介して結合したものも含まれる。アリール基は、全炭素原子数が通常6〜60であり、好ましくは7〜48である。その具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられ、これらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、置換アミノ基などの置換基を有していてもよい。これらの有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点からは、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、およびアルキルオキシカルボニル基からなる群から選ばれる1つ以上を置換基として有するフェニル基が好ましく、その具体例としては、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、メシチル基、4−i−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−i−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−イソアミルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル基、2,5−ジ(t−ブチル)フェニル基、4−ヘプチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−ノニルフェニル基、4−デシルフェニル基、4−ドデシルフェニル基、3−メチルオキシフェニル基、4−メチルオキシフェニル基、3,5−ジメチルオキシフェニル基、4−プロピルオキシフェニル基、4−i−プロピルオキシフェニル基、4−ブチルオキシフェニル基、4−i−ブチルオキシフェニル基、4−t−ブチルオキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、3,5−ジヘキシルオキシフェニル基、4−ヘプチルオキシフェニル基、4−オクチルオキシフェニル基、4−ノニルオキシフェニル基、4−(メトキシメトキシ)フェニル基、3−(メトキシメトキシ)フェニル基、4−(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3−(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3,5−ビス(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3−メトキシカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、3,5−ジメトキシカルボニルフェニル基、3−エトキシカルボニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−メトキシフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−エトキシフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−ヘキシルオキシフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基が挙げられる。
【0036】
アリールアルキル基は、炭素原子数が通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、その具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が例示され、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点からは、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0037】
1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、炭素原子数は通常4〜60であり、好ましくは4〜20である。なお、複素環基の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。ここに複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。具体的には、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基が例示され、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0038】
本発明において、「共役基」とは相互に共役関係にある2個以上のπ結合(即ち、二重結合および三重結合)を含む基を意味する。
【0039】
式(1)におけるn価の共役基としては、n価の芳香族基、n価の共役脂肪族炭化水素基が例示できる。式(1)におけるn価の共役基としては、さらに、芳香族基、有橋多環式芳香族基および共役脂肪族炭化水素基からなる群から2〜20個を選び結合させてなるn価の基も例示できる。nは2以上20以下の整数を表すが、2以上12以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2および3が特に好ましく、2がとりわけ好ましい。
【0040】
ここでn価の芳香族基とは、芳香族化合物(置換もしくは非置換の芳香族炭素環式化合物および置換もしくは非置換の芳香族複素環式化合物)の環に結合する水素原子がn個脱離して生ずる残基である。該芳香族基は、炭素原子数が通常6〜60であり、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、さらに好ましくは6〜25であり、特に好ましくは6〜20である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。置換基としては、Rとして上述したものが挙げられる。
【0041】
上記芳香族化合物の具体例としては、下記式(A−1)〜(A−38)で表される芳香族化合物および(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物が挙げられる。好ましくは式(A−1)〜(A−8)、(A−12)、(A−13)、(A−18)、(A−20)〜(A−24)、(A−28)〜(A−38)および(B−1)〜(B−8)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは式(A−1)〜(A−8)、(A−13)、(A−20)〜(A−24)、(B−1)〜(B−5)および(B−8)で表される芳香族化合物であり、さらに好ましくは式(A−1)〜(A−3)、(A−13)および(A−20)〜(A−24)で表される芳香族化合物であり、特に好ましくは式(A−1)〜(A−3)および(A−13)で表される芳香族化合物である。
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
(上記の式中において、Rは前記の通りである。)
【0045】
n価の芳香族基の例として、n価の有橋多環式芳香族基も挙げられる。n価の有橋多環式芳香族基は、有橋多環式芳香族化合物に結合する水素原子がn個脱離して生ずる残基である。
【0046】
上記の有橋多環式芳香族化合物の具体例としては、下記式(C−1)〜(C−24)のものが挙げられる。これらの例示化合物を構成する環に結合した水素原子の一部または全部が置換基Rで置換されていてもよい。置換基Rとしては、Rについて既に述べた説明、例示が当てはまる。好ましくは式(C−1)〜(C−14)、(C−16)、(C−21)および(C−22)で表される有橋多環式芳香族化合物であり、より好ましくは(C−1)〜(C−13)で表される有橋多環式芳香族化合物であり、さらに好ましくは(C−1)および(C−2)で表される有橋多環式芳香族化合物であり、特に好ましくは(C−1)で表される有橋多環式芳香族化合物である。
【0047】
【化7】

【0048】
(上記の式中において、Rは前記の通りである。)
【0049】
ここでn価の共役脂肪族炭化水素基とは、共役脂肪族炭化水素化合物のsp混成炭素またはsp混成炭素に結合する水素原子がn個脱離して生ずる基である。
【0050】
上記の共役脂肪族炭化水素化合物の具体例としては、下記式(D−1)〜(D−12)で表される共役脂肪族炭化水素化合物が挙げられ、好ましくは式(D−1)〜(D−8)で表される共役脂肪族炭化水素化合物であり、より好ましくは(D−1)〜(D−4)で表される共役脂肪族炭化水素化合物であり、さらに好ましくは(D−1)、(D−2)で表される共役脂肪族炭化水素化合物であり、特に好ましくは(D−1)で表される共役脂肪族炭化水素化合物である。
【0051】
【化8】

【0052】
式(1)で表される化合物は、本発明の式(1)で表される化合物と金属塩とからなる組み合わせにおいて配位子として作用し錯体を形成する。該式(1)で表される化合物の例として下記式(H−1)〜(H−112)のものが挙げられ、好ましくは式(H−1)〜(H−16)、(H−17)〜(H−47)、(H−51)〜(H−57)、(H−59)〜(H−62)および(H−64)〜(H−112)で表される配位子(以下H−D群)であり、より好ましくは式(H−1)〜(H−8)、(H−10)、(H−12)、(H−14)〜(H−15)、(H−18)〜(H−21)、(H−23)、(H−24)、(H−26)〜(H−30)、(H−72)〜(H−75)、(H−77)〜(H−84)、(H−86)〜(H−88)、(H−92)、(H−93)、(H−96)、(H−100)〜(H−103)および(H−105)〜(H−112)で表される配位子(以下H−C群)であり、さらに好ましくは式(H−1)、(H−2)、(H−4)、(H−6)、(H−8)、(H−15)、(H−18)〜(H−20)、(H−26)〜(H−30)、(H−72)、(H−74)、(H−79)、(H−83)、(H−86)〜(H−88)、(H−92)、(H−100)、(H−101)、(H−103)、(H−105)〜(H−107)、および(H−109)〜(H−112)で表される配位子(以下H−B群)であり、特に好ましくは式(H−1)および(H−28)〜(H−30)で表される配位子(以下H−A群)である。
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
本発明で用いられる金属塩は、特定遷移金属の金属カチオンとアニオンからなる塩である。金属カチオンは電気的に中性な金属原子から電子を1〜7個取り除いてなるイオンである。本発明において好ましい、電気的に中性な金属原子を、元素記号を用いて例示すると、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、La、Ce、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiが挙げられ、中でもTi、V、Cr、Mn、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、PtおよびHg(以下M−D群)が好ましく、Cr、Mn、Zn、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、IrおよびPt(以下M−C群)がより好ましく、Cr、Mn、Zn、Mo、Ru、Pd、Ag、およびCd(以下M−B群)がさらに好ましく、Zn、Cr、Mn、Ru、Rh、PdおよびAg(以下M−A群)が特に好ましく、Zn、CrおよびMnがさらに特に好ましい。
【0058】
本発明で用いられる金属カチオンは上記に例示された電気的に中性な特定遷移金属の金属原子を元素記号から電子を1〜7個取り除いて生成するイオンが例示でき、中でもAl3+、Sc3+、Ti4+、V3+、V5+、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Zn2+、Ga3+、Ge2+、Ge4+、Y3+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、Pd、Ag、Cd2+、In3+、Sn2+、Sn4+、Sb3+、La3+、Ce3+、Ce4+、Eu3+、Hf4+、Ta5+、W6+、Re6+、Os2+、Os4+、Ir4+、Pt2+、Pt4+、Hg、Hg2+、Tl、Tl3+、Pb2+、Pb4+およびBi3+(以下I−D群)が好ましく、Sc3+、Ti4+、V3+、V5+、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Zn2+、Y3+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、Pd、Ag、Cd2+、Hf4+、Ta5+、W6+、Re6+、Os2+、Os4+、Ir4+、Pt2+およびPt4+(以下I−C群)がより好ましく、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Zn2+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、Pd、Ag、Cd2+、Ta5+、W6+、Re6+、Os2+、Os4+、Ir4+、Pt2+およびPt4+(以下I−B群)がさらに好ましく、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Zn2+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、PdおよびAg(以下I−A群)が特に好ましく、Zn2+、Cr2+およびMn2+がとりわけ好ましい。
【0059】
本発明の、式(1)で表される化合物と金属塩とからなる組み合わせにおいて、式(1)の化合物と金属イオンとは配位結合を形成することは分析により確認されている。この際に生じる錯イオンの対イオンであるアニオンとしては、使用する金属塩により、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、アセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンおよびテトラフェニルホウ酸イオンが挙げられる。本発明の組み合わせに含まれるアニオンの種類の数は6種以下1種以上が好ましく、4種以下1種以上がより好ましく、3種以下1種以上がさらに好ましく、2種以下1種以上が特に好ましい。
【0060】
本発明は式(1)で表される構造を有する配位子と、金属イオンとの組み合わせとしては、H−C群から選ばれる少なくとも1種の配位子とI−C群から選ばれる少なくとも1種のカチオンとを含む組み合わせが好ましく、H−B群から選ばれる少なくとも1種の配位子とI−B群から選ばれる少なくとも1種のカチオンとを含む組み合わせがより好ましく、H−B群から選ばれる少なくとも1種とI−A群から選ばれる少なくとも1種とを含む組み合わせがさらに好ましく、H−A群から選ばれる少なくとも1種の配位子とI−A群から選ばれる少なくとも1種のカチオンとを含む組み合わせが特に好ましい。上記各群それぞれより選ばれる種の数は6種以下1種以上が好ましく、4種以下1種以上がより好ましく、3種以下1種以上がさらに好ましく、2種以下1種以上が特に好ましい。
【0061】
本発明に用いられる組み合わせにおいて、式(1)で表される構造を有する配位子と金属カチオンとの間に配位結合が生成される。この結合の生成反応は可逆的であり、溶媒に溶解させたり、熱を与えることによって結合が切れる場合があるが、特に固体状態では結合は十分に強く、[−配位子−金属カチオン−]の繰り返しが連続してネットワークが形成され、配位子と金属カチオンとの間での電荷の授受が起こることによってネットワーク内での電荷の移動がなめらかに起こる。特にArが3価以上であると、このネットワークが三次元的に構築されることになる。したがって本発明に用いられる組み合わせは導電性の高い材料となる。
【0062】
上記ネットワークは高分子化合物としてみることができる。一般的な高分子化合物と同様に取り扱うことが可能な場合があり、溶媒に溶かしてGPC測定もしくはTOF−MS測定によって分子量を求めることができる場合がある。しかし、上記のように該組み合わせ中で形成される配位結合は切れ易いため分子量を求めることは困難であり、固体状態にあるときと溶液状態にあるときでも異なることもある。求めることができた場合でも測定方法およびその条件によって得られる分子量は異なる場合がある。
【0063】
本発明に用いられる式(1)の化合物と金属塩とからなる組み合わせにおいては、「その吸収スペクトルを一階微分形で表した曲線が、240nm〜400nmの波長範囲に有する最小値に対してその4分の1よりも小さい極小値を430nm〜800nmの範囲に有しない」ことが必要である。一般的に、配位子と金属カチオンとの間での配位結合が生成すると、特異な可視光吸収性が通常生じる。しかし、可視光領域(約430nm〜約800nmの範囲)における吸収は弱いかまたは吸収がない方が配位子と金属カチオンの間の配位結合がほどよく弱くなり、組み合わせの導電性が高い。上記の吸収スペクトルの一階微分曲線についての要件は、このことを一般的に表現したものである。ただし、スペクトルの一階微分形は、半値幅5nm未満のピークはノイズであるので、そのようなピークが無くなるようにスムージングをかける必要がある。
【0064】
本発明においてこのように吸収スペクトルの一階微分曲線により可視領域における吸収の有無を評価することが合理的であることをより詳しく説明する。吸光スペクトルにおいて、ある膜のある波長範囲に吸収が少ないことを一義的に定義することは難しい。膜厚が変われば光の吸収は多くなり、さらに、膜表面と、膜と基板の界面における反射の具合の影響があるので、溶液を測定する場合のように吸光係数を求めることはできない。別の方法として、ある波長における吸光度を基準としての吸光度の該基準値に対する比で評価する(即ち、小さいほど吸収が少ないと評価する)ことが考えられるが、本発明の場合には、配位結合由来の特異な可視光吸収の程度を対象としているので、配位子となる化合物が独自に有する吸収は除外されなければならない。すなわち、可視光の波長範囲での吸収のピークの有無が重要である。しかし、ある波長をピークとする光の吸収は一般に一定範囲の分布があるので、ある吸収が他の吸収の裾に重なりその極大吸収(ピーク)が隠れてしまうことが多い。図1の(A)は仮想的な吸収スペクトルを示すが、320nm、400nmおよび490nmにピークを有する三つの吸収を100:30:15で足し合わせたスペクトルのシミュレーションを示している。490nmの光は可視光であり、本発明での議論の対象であるが、490nmに吸収極大は認められない。種々のスペクトルの解析において、このような結果が得られることは珍しくない。このような場合にはスペクトルの一階微分形を用いて解析することが合理的である場合がある。例えばESR(電子スピン共鳴)スペクトルからラジカルの構造を特定する目的で、一階微分形を用いるのは常套手段として周知である。これは一階微分形によってピークの存在が明らかになるためである。図1の(B)には一階微分形を示した。490nmのピークが、波長の位置はわずかに短い側あるいは長い側にシフトするものの、一階微分曲線において極大および極小として明確に顕れる。そこで、一階微分曲線の極小値を用いて、配位結合由来の吸収の有無を評価することが合理的である。
【0065】
仮想的な吸収スペクトルを示す図1の(A)を用いて具体的に説明する。吸収スペクトルにおける波長wでの強度を関数F(w)で表すと、その一階微分形はdF(w)/dwで表される。これを図示したものが図1の(B)である。微分形スペクトルにおけるa点は366nmにあり、240nm〜400nmでの最小値(−0.0105)である。これに対しb点は534nmにある極小値(−0.0024)である。この値は、240nm〜400nmでの最小値(−0.0105)の4分の1(−0.0026)以下ではない。したがって、図1の吸収スペクトルの場合、その一階微分形において、240nm〜400nmでの最小値に対してその4分の1以下である極小値が430nm〜800nmの範囲に存在せず、本発明の条件を満たしている。
【0066】
本発明に用いられる組み合わせの吸収スペクトルは、石英ガラス板上に該組み合わせを通常溶液状態で塗布して塗膜を形成し、汎用の紫外可視吸収スペクトル測定装置で観測することができる。
【0067】
例えば、有機発光素子において、発光層からの発光と同等の発光が本発明の機能性膜から出てしまうと、素子として望まない色の光が出ることになる。従って、本発明の機能性膜は、素子中において発光層以上に光らないことが好ましく、発光層に対して10分の1以上に光らないことがより好ましく、発光層に対して50分の1以上に光らないことが特に好ましい。これは素子の発光スペクトルを測定することで、発光層からの発光と比較することで確認することができる。
【0068】
本発明の機能性膜は、該組み合わせを含み、膜厚は1nm以上10μm以下が好ましく、1nm以上1μm以下がより好ましく、1nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0069】
<任意的成分>
本発明の機能性膜は、所要の成分を通常溶媒に溶解した液状組成物として塗布、乾燥することにより形成することができる。該組成物には上記の組み合わせ以外の他の成分を必要に応じて配合することができる。
【0070】
該組成物には、機能性膜に導電性以外の機能を付与するために目的に応じた添加物を添加してもよい。例えば、強靭性、柔軟性、演色性、高屈折性、低屈折性、耐熱性、対酸素安定性、耐候性、耐水性、耐湿性および他の材料との接着性などの性質を向上するために、分子量50〜100万の有機化合物やその他の添加剤(例えば、色素、可塑剤、硬化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤、漂白剤、界面活性剤、接着剤)、樹脂繊維、金属粒子(合金および金属酸化物を含む)、金属ナノファイバー(合金および金属酸化物を含む)、炭素材料(繊維、カーボンナノファイバー、フラーレン、ケッチェンブラックなど)、ガラス繊維、およびアルカリ金属塩が挙げられる。組成物が上記添加物を含むことによって、結果的に機能性膜が可視光の吸収を有するようになってもよい。
【0071】
上記の液状組成物は、素子作製時において液状である組成物を意味し、典型的には、常圧(即ち、1気圧)、25℃において液状のものを意味する。また、液状組成物は、一般的には、インク、インク組成物、溶液等と呼ばれることがある。
【0072】
液状組成物は、他の正孔輸送材料、他の電子輸送材料、安定剤、粘度および/または表面張力を調節するための添加剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。これらの任意成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0073】
上記他の正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体等が挙げられる。
【0074】
上記他の電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0075】
上記安定剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0076】
上記粘度および/または表面張力を調節するための添加剤としては、粘度を高めるための高分子量の化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤等を適宜組み合わせて使用すればよい。
【0077】
上記高分子量の化合物としては、電荷輸送を阻害しないものであればよく、通常、液状組成物の溶媒に可溶性のものである。高分子量の化合物としては、高分子量のポリスチレン、高分子量のポリメチルメタクリレート等を用いることができる。上記高分子量の化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。
【0078】
上記酸化防止剤としては、電荷輸送を阻害しないものであればよく、組成物が溶媒を含む場合には、通常、該溶媒に可溶性のものである。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が例示される。酸化防止剤を用いることにより、上記組成物、溶媒の保存安定性を改善し得る。
【0079】
液状組成物が他の正孔輸送材料を含有する場合には、該液状組成物中の該正孔輸送材料の割合は、通常、1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。また、本発明で用いられる液状組成物が他の電子輸送材料を含有する場合には、該液状組成物中の該電子輸送材料の割合は、通常、1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。
【0080】
本発明の機能性膜を上記液状組成物を用いて成膜する場合、該液状組成物を塗布した後、乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用できるので、製造上非常に有利である。なお、乾燥の際には、50〜150℃程度に加温した状態で乾燥してもよく、また、10-3Pa程度に減圧して乾燥させてもよい。
【0081】
液状組成物を用いた成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、キャピラリコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0082】
液状組成物中の溶媒の割合は、該液状組成物の全重量に対して、通常、1〜99.9重量%であり、好ましくは60〜99.9重量%であり、より好ましく90〜99.8重量%である。液状組成物の粘度は印刷法によって異なるが、25℃において0.5〜500mPa・sが好ましく、インクジェットプリント法等、液状組成物が吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目詰まりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において0.5〜20mPa・sが好ましい。
【0083】
液状組成物に含まれる溶媒としては、該液状組成物中の該溶媒以外の成分を溶解または分散できるものが好ましい。該溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコールおよびその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの溶媒は、1種単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。上記溶媒のうち、ベンゼン環を1個以上含む構造を有し、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を1種類以上含むことが、粘度、成膜性等の観点から好ましい。溶媒の種類としては、液状組成物中の溶媒以外の成分の有機溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、メチルベンゾエート、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンがより好ましく、キシレン、アニソール、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルメチルベンゾエートのうち少なくとも1種類を含むことが更に好ましい。
【0084】
液状組成物に含まれる溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上が好ましく、2〜3種類がより好ましく、2種類が特に好ましい。
【0085】
液状組成物に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、1種類の溶媒は沸点が180℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることがより好ましい。また、粘度の観点から、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶解することが好ましい。
【0086】
液状組成物に3種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200℃以上300℃以下の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点から、3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒には、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましい。
【0087】
液状組成物に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度および成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、液状組成物に含まれる全溶媒の重量の40〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%であることがさらに好ましい。
【0088】
<用途>
本発明の機能性膜は、導電性を有し、有機電子素子に、例えば電荷輸送層、電荷注入層として使用することができる。
【0089】
該有機電子素子は、上述したように、該機能性膜と、該機能性膜の両側のおのおのに直接にまたは少なくとも一つの別の層を介して設けられた少なくとも一つの電極とを備えた素子として構成される。即ち、このような有機電子素子では、機能性膜の両側に少なくとも一個ずつの電極を有する。
【0090】
該有機電子素子としては、例えば有機発光素子、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子が挙げられる。
【0091】
本発明の機能性膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。該機能性膜に、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。
【0092】
該機能性膜は、電子移動度または正孔移動度のいずれか大きいほうが、好ましくは10-5cm2/V/秒以上であり、より好ましくは10-3cm2/V/秒以上であり、さらに好ましくは10-1cm2/V/秒以上である。また、有機半導体薄膜を用いて、有機トランジスタを作製することができる。具体的には、SiO2等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0093】
・有機トランジスタ:
有機トランジスタ素子は、上記機能性膜を含む有機トランジスタ素子である。以下、有機トランジスタ素子の一態様である電界効果トランジスタ素子を説明する。
【0094】
本発明の機能性膜は、電界効果トランジスタ素子の材料として、中でも活性層として好適に用いることができる。電界効果トランジスタ素子の構造としては、通常は、ソース電極およびドレイン電極が組成物からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていればよい。
【0095】
電界効果トランジスタ素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0096】
電界効果トランジスタ素子は、公知の方法、例えば、特開平5-110069号公報に記載の方法により製造することができる。
【0097】
活性層を形成する際に、有機溶媒可溶性の高分子化合物を用いることが製造上有利であり好ましい。有機溶媒可溶性の高分子化合物を溶媒に溶解させてなる溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、キャピラリコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0098】
電界効果トランジスタ素子を作製後、封止してなる封止電界効果トランジスタ素子が好ましい。これにより、電界効果トランジスタ素子が、大気から遮断され、電界効果トランジスタ素子の特性の低下を抑えることができる。
【0099】
封止方法としては、紫外線(UV)硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法、ガラス板やフィルムをUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等で張り合わせる方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため電界効果トランジスタ素子を作製後、封止するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中で)行うことが好ましい。
【0100】
・有機光電変換素子:
本発明の機能性膜は有機光電変換素子(例えば、太陽電池)に用いることができる。
【0101】
該機能性膜は、有機光電変換素子の材料として、中でも有機半導体と金属との界面を利用するショットキー障壁型素子の有機半導体層として、また、有機半導体と無機半導体あるいは有機半導体どうしの界面を利用するpnへテロ接合型素子の有機半導体層として、好適に用いることができる。
【0102】
さらに、ドナー・アクセプターの接触面積を増大させたバルクヘテロ接合型素子における電子供与性高分子、電子受容性高分子として、また、高分子・低分子複合系を用いる有機光電変換素子、例えば、電子受容体としてフラーレン誘導体を分散したバルクヘテロ接合型有機光電変換素子の電子供与性共役系高分子(分散支持体)として、好適に用いることができる。
【0103】
有機光電変換素子の構造としては、例えば、pnへテロ接合型素子では、オーム性電極、例えば、ITO上に、p型半導体層を形成し、さらに、n型半導体層を積層し、その上にオーム性電極が設けられていればよい。
【0104】
有機光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0105】
有機光電変換素子は、公知の方法、例えば、Synth.Met.,102,982(1999)に記載の方法やScience,270,1789(1995)に記載の方法により製造することができる。
【0106】
・発光素子:
本発明の機能性膜は発光素子に用いることができる。
【0107】
発光素子は、陽極および陰極からなる電極と、該電極間に設けられた発光層および/または該電極間に設けられる電荷輸送層とを有する。本発明の機能性膜は、かかる発光素子において、(1)陰極と発光層との間に電子輸送層として、(2)陽極と発光層との間に正孔輸送層として、(3)陰極と発光層との間に電子輸送層として、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層として、用いられる。
【0108】
より具体的には、以下のa)〜c)の構造が例示される。
a)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
b)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
c)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は隣接して積層されている各層の境界を示す。以下同じ。)
【0109】
上記発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。また、発光層に隣接した正孔輸送層をインターレイヤー層と呼ぶ場合もある。
【0110】
発光層の成膜方法としては、溶液からの成膜による方法が挙げられる。溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、キャピラリコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。なお、この溶液からの成膜は、後述の正孔輸送層、電子輸送層の成膜にも有用である。
【0111】
発光素子の作製の際に、本発明の機能性膜を形成するには、上記液状組成物を用い、該液状組成物を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上有利である。
【0112】
発光層の膜厚は、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0113】
発光素子が正孔輸送層を有する場合、該正孔輸送層を本発明の機能性膜で形成することができる。このとき、他の正孔輸送材料を必要に応じて添加できることは上述した通りである。
【0114】
正孔輸送層の成膜方法としては、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が挙げられる。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0115】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0116】
正孔輸送層の膜厚は、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0117】
発光素子が電子輸送層を有する場合、該電子輸送材料を本発明の機能性膜で形成することができる。このとき、他の電子輸送材料を必要に応じて添加できることは上述した通りである。
【0118】
電子輸送層の成膜方法としては、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、溶液または溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0119】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0120】
電子輸送層の膜厚は、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0121】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と呼ぶことがある。本発明の機能性膜はこのような電荷注入層として用いることができる。
【0122】
さらに、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して上記の電荷注入層または絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。本発明の機能性膜はこのような電荷注入層や電荷輸送層として用いることができる。
【0123】
積層する層の順番や数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して選択すればよい。
【0124】
本発明の機能性膜を電荷注入層として設けた発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子が挙げられる。
【0125】
例えば、具体的には、以下のd)〜o)の構造が挙げられる。
d)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
e)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
k)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
n)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0126】
電荷注入層としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が挙げられる。
【0127】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5〜103S/cmであることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5〜102S/cmがより好ましく、10-5〜101S/cmがさらに好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5〜103S/cmとするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0128】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられ、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0129】
電荷注入層の膜厚は、例えば、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0130】
本発明の機能性膜からなる電荷注入層に必要に応じて用いる他の材料としては、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が挙げられる。
【0131】
絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。この絶縁層の平均厚さは、通常、0.1〜20nmであり、好ましくは0.5〜10nm、より好ましくは1〜5nmである。絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0132】
具体的には、例えば、以下のp)〜x)の構造が挙げられる。
p)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
q)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
r)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
s)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
t)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
u)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
w)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
x)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
【0133】
発光素子を形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよく、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0134】
通常は、陽極および陰極からなる電極の少なくとも一方が透明または半透明であり、陽極側が透明または半透明であることが好ましい。
【0135】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性無機化合物を用いて作製された膜、NESAや、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0136】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0137】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0138】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、およびそれらのうち2種以上の合金、あるいはそれらのうち1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0139】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0140】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよく、陰極作製後、該発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
【0141】
該保護層としては、樹脂、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1種以上の方策をとることが好ましい。
【0142】
本発明の発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置(例えば、バックライト等)、フラットパネルディスプレイ等の表示装置等に用いることができる。
【0143】
本発明の発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、上記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0144】
さらに、上記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、または面状の照明用光源として好適に用いることができる。例えば照明用光源には白色発光、赤色発光、緑色発光または青色発光等の発光色が挙げられる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0145】
ところで、本発明により提供される上記の式(2)で表されるフルオレン系化合物において、Jは特定遷移金属の金属イオンに配位可能な原子(具体的には、上述したように、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、窒素原子が好ましい。)を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、また、式(3)で表される繰返し単位において、Jは亜鉛イオンに配位可能な原子を1〜3個有する1価の配位基であり、具体的には、ビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であることが好ましく、ターピリジル基であることがより好ましい。また、Rで表される1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ドデシル基、ペンタデシル基等の炭素原子数1〜15のアルキル基が好ましく、1〜12のアルキル基がより好ましく、6〜10のアルキル基が特に好ましい。具体的にはヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデカニル基が特に好ましい。二つのRは同一でも異なってもよい。
【0146】
さらに、本発明は、式(2)で表されるフルオレン系化合物と特定遷移金属の金属塩とからなる錯体を提供する。
【0147】
該錯体において、特定遷移金属塩の金属塩として好ましい例は上述した通りであり、特に亜鉛塩、クロム塩、マンガン塩であることが好ましく、さらに亜鉛塩が好ましい。その具体例として下記の式(3)で表される繰返し単位を有する錯体を提供する。
【0148】
【化13】

【0149】
(式中、Jは亜鉛イオンに配位可能な原子を1〜3個有する1価の配位基であり、Rは1価の炭化水素基であり、(AN)n−はn価の対アニオン(但し、nは1または2の整数)であり、破線は1〜3本の配位結合を示す。2個のRは、同一であっても異なっていてもよい。2個のJ1は同一であっても異なっていてもよい。)
【0150】
式(3)において、Jはビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であることが好ましい。二つのRは同一でも異なってもよく、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基が好ましく、中でも、式(2)について説明したように、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ドデシル基、ペンタデシル基等の炭素原子数1〜15のアルキル基がより好ましく、1〜12のアルキル基が更に好ましく、6〜10のアルキル基が特に好ましく、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデカニル基がとりわけ好ましい。
【実施例】
【0151】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0152】
〔合成例1〕
(2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボラン)の合成)
窒素置換気流下で、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン80g(0.15 mol)を取り、1.08 Lのメチル−t−ブチルエーテルに溶解させた。−78 ℃まで冷却した後、n−ブチルリチウム(15重量%ヘキサン溶液) 240mL (0.38 mol)を滴下し、0 ℃で2時間撹拌し再び−78℃まで冷却した。続いてボロン酸トリイソプロピル71.3g (0.38 mol)を滴下し室温で一晩放置した。反応液を0℃まで冷却した後、撹拌しながらイオン交換水(300mL)を滴下し、30分撹拌した後に30分静置して濃縮した。残渣を0℃まで冷却し35重量%塩酸80 mLをイオン交換水1Lで希釈した塩酸水溶液を注いで加水分解を行い、トルエンで抽出し濃縮し、窒素気流下で硫酸マグネシウム164.1g(0.34 mol)を添加した。その後、エチレングリコール51.08g(0.823mol)滴下し、室温で2時間撹拌した。反応終了後はろ過により硫酸マグネシウムを除去、溶媒を留去することで粘液状の粗生成物22gを得た。ヘキサン/アセトニトリルから再結晶をおこない、粉末状の生成物を得た。これをH−NMRの測定に供し、下記のデータが得られた。これに基づいて、生成物は、2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボラン)であると同定した。
【0153】
H−NMR (ppm/300MHz,CDCl) 0.5(4H),0.8(6H),1.0〜1.3(4H),2.0(4H),4.4(8H)7.7〜7.8(6H)
【0154】
〔合成例2〕
4’−ブロモ−2,2’:6’,2’’−ターピリジン(TCI社製)1.70g(5.45mmol)と2,2’−(9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジイル)ビス(1,3,2−ジオキサボラン)1.16g(2.18mmol)をAliquat336(アルドリッチ社製)0.14gとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(アルドリッチ社製)0.20g(0.17mmol)の存在下でテトラヒドロフラン(THF)68.0mL中でアルゴン雰囲気下で攪拌した。そこに炭酸ナトリウム1.385gの水溶液34.0mLを滴下し、3時間40分還流させた。冷却後、水洗しアセトニトリルに沈殿させ、濾過後、乾燥させて、粉末状の生成物を得た。これをH−NMRの測定に供し、下記のデータが得られた。これに基づいて、生成物は、下記の式で表される化合物(以下、「化合物X」という)であることを同定した。収量1.009g、収率54.3%。
【0155】
H−NMR(ppm/300MHz,CDCl): 0.6〜0.8(10H),1.0〜1.2(20H),2.2(4H),7.4(4H),7.8〜8.0(10H),8.7(4H),8.8(8H)
【0156】
【化14】

【0157】
〔実施例1〕
化合物X0.17g(0.20mmol)をトルエンに溶解させて205mLとした溶液に、酢酸亜鉛二水和物0.045g(0.20mmol)のメタノール溶液13mLを滴下し、100℃で3時間攪拌し、濃縮後に酢酸エチルに沈殿させ、遠心分離機で生成物を分離し、乾燥させた。下記式で表される化合物(以下、「化合物X−Zn」という)として、収量0.082g、収率39%。
【0158】
上記のようにして得られた化合物Xと金属塩との反応生成物についてH−NMR測定を行ったところ、下記のデータが得られた。これにより、該生成物中に配位結合が生成し、化合物X−Znが含まれていることを確認した。
【0159】
H−NMR (ppm/300MHz,CDCl) 0.7〜0.9(10H),1.0〜1.2(20H),2.2(4H),7.6(4H),7.7(2H),7.8(2H),7.9〜8.1(6H),8.3(4H),8.4(4H),9.1(4H)
【0160】
【化15】

【0161】
(式中、nは繰返し数を示す。)
【0162】
・吸収スペクトルの測定:
得られた化合物X−Znを含む生成物1.5mgをメタノール1mLに溶かしスピンコート法によって厚さ10nmの膜を石英ガラス上に作製し、吸収スペクトルを測定した。図2に、そのスペクトルを(A)として示し、その一階微分曲線を(B)として、そして、それにスムージングを施した曲線を(C)として示す。(C)に示した曲線において、240nm〜400nmの範囲の最小値は247nmにおける−0.00213であり、その四分の一である−0.00053よりも小さい極小値は430nm〜800nmの範囲に認められない。
【0163】
〔比較例1〕
化合物X0.17g(0.20mmol)をトルエンに溶解させて205mLとした溶液に、酢酸コバルト四水和物0.050g(0.20mmol)をメタノールに溶解させて15mLとした溶液を滴下し、100℃で2時間半攪拌し、濃縮後にテトラヒドロフランに滴下して生成物を沈殿させ、上澄みを捨て、酢酸エチルで分散させて、遠心分離機で生成物を分離し、乾燥させた。下記の化合物X−Coとして、収量0.015g、収率7.3%。
【0164】
上記のようにして得られた化合物Xと金属塩との反応生成物についてH−NMR測定を行ったところ、下記のデータが得られた。これにより、該生成物中に配位結合が生成し、下記の式で表される化合物(以下、「化合物X−Co」という)が含まれていることを確認した。
【0165】
【化16】

【0166】
(式中、nは繰返し数を示す。)
【0167】
・吸収スペクトルの測定:
得られた化合物X−Coを含む生成物について、実施例1と同様にして膜を作製し、吸収スペクトルを測定した。図3に、得られた吸収スペクトル(A)として示し、その一階微分曲線を(B)として、そして、それにスムージングを施した曲線を(C)として示す。曲線(C)において、240nmから400nmの範囲の最小値は249nmにおける−0.00224であり、その四分の一である−0.00056よりも小さい極小値−0.00058が波長430nmの位置に認められる。
【0168】
〔実施例2〕
−有機発光素子の製造−
陽極としてITOが成膜されパターニングされたガラス基板のITO陽極上に、正孔注入材料溶液としてポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸溶液(スタルクヴイテック(株)製、商品名「Baytron」)を用いて乾燥後の膜厚が60nmになるようにスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を200℃で10分加熱して、正孔注入層を形成した。
【0169】
次に、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基および架橋基を含む重合体(WO2005/052027に記載のP1を0.6重量%有するキシレン溶液を調製し、上記基板上に形成した正孔注入層の上にスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。この基板を200℃で15分間加熱し、塗膜を不溶化させて正孔輸送層を形成した。
【0170】
次に発光高分子材料であるBP361(サメイション(株)製)を1.3重量%含有するキシレン溶液を調製し、上記正孔輸送層を形成した基板の正孔輸送層の上にスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。この基板を130℃で15分間加熱し、発光層を形成した。
【0171】
次に化合物X−Zn1.5mgをメタノール1mLに溶かし、上記発光層を形成した基板の発光層の上にスピンコート法により塗布し、塗膜を形成した。この基板を130℃で15分間加熱し電子注入層を形成した。
【0172】
上記電子注入層を形成した基板を真空装置内に挿入し、真空蒸着法によってAlを80nm成膜し、陰極を形成し、有機発光素子1を得た。
【0173】
〔比較例2〕
化合物X−Znの代わりに化合物X−Coを用いた以外は、実施例2と同様に操作し、有機発光素子2を得た。
【0174】
〔比較例3〕
化合物X−Znを含む層を形成しなかった以外は、実施例2と同様に操作し、有機発光素子3を得た。
【0175】
〔素子評価〕
上記で得られた有機発光素子1、2および3のおのおのに、10Vの順方向電圧を印加し、発光輝度と発光効率を測定した。結果を表1に示す。
【0176】
【表1】

【0177】
表1から明らかなように、本発明の機能性膜を含む有機発光素子は、前記機能性膜を含まない電界発光素子に比べ、発光輝度・発光効率ともに顕著に優れる。これは、発光層への電荷の注入性および/または電荷の輸送性が向上したためである。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の機能性膜は、例えば、有機発光素子、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子等の有機電子素子の電荷注入層や電荷輸送層として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される化合物と、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、La、Ce、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiからなる群から選ばれる遷移金属の金属塩との組み合わせであって、
その光の吸収スペクトルを一階微分形で表した曲線が、240nm〜400nmの波長範囲に有する最小値に対してその4分の1よりも小さい極小値を430nm〜800nmの範囲に有しない組み合わせを含む有機電子素子用機能性膜。
【化1】

(ここで、Arはn価の共役基を表し、Jは前記金属塩を構成する金属イオンに配位可能な原子を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、nは2以上20以下の整数を表し、複数のJは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の機能性膜であって、前記の式(1)で表される化合物と前記金属塩とからなる組み合わせが、該化合物と該金属イオンとで形成された錯体を含む機能性膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の機能性膜であって、前記の式(1)で表される化合物/前記金属イオンのモル比が0.3〜5.0である機能性膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能性膜であって、配位基Jが有する前記配位可能な原子が炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはそれらの2種以上の組み合わせである機能性膜。
【請求項5】
請求項4に記載の機能性膜であって、配位基Jが有する前記配位可能な原子が窒素原子である機能性膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の機能性膜であって、前記の金属イオンに配位基Jが配位可能な原子を1〜3個有する機能性膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性膜であって、配位基Jがビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基である機能性膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の機能性膜であって、共役基Arが芳香族炭化水素基である機能性膜。
【請求項9】
請求項8に記載の機能性膜であって、共役基Arがフェニレン基、フルオレンジイル基またはそれらの組み合わせを含む機能性膜。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の機能性膜からなる有機電子素子用電荷注入層。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の機能性膜からなる有機電子素子用電荷移動層。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の機能性膜と、該機能性膜の両側のおのおのに直接にまたは少なくとも一つの別の層を介して設けられた少なくとも一つの電極とを備えた有機電子素子。
【請求項13】
有機発光素子、有機トランジスタ素子または有機光電変換素子である請求項12に記載の有機電子素子。
【請求項14】
請求項12または13に記載の有機電子素子であって、該機能性膜と、該機能性膜の少なくとも片側に設けられた少なくとも一つの電極と、該機能性膜及び該電極の間に設けられた少なくとも一層の発光層を有し、発光性である有機電子素子。
【請求項15】
下記の式(2)で表されるフルオレン系化合物。
【化2】


(2)
(式中、JはAl、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、La、Ce、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiからなる群から選ばれる遷移金属の金属イオンに配位可能な原子を1個以上8個以下有する1価の配位基であり、Rは1価の炭化水素基である。2個のRは、同一であっても異なっていてもよい。2個のJは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項16】
請求項15に記載のフルオレン系化合物であって、前記の金属イオンに配位可能な原子が、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはそれらの2種以上の組み合わせであるフルオレン系化合物。
【請求項17】
請求項16に記載のフルオレン系化合物であって、前記の金属イオンに配位可能な原子が窒素原子であるフルオレン系化合物。
【請求項18】
請求項17に記載のフルオレン系化合物であって、Jがビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基であるフルオレン系化合物。
【請求項19】
請求項15に記載の式(2)で表されるフルオレン系化合物と、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、La、Ce、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、PbおよびBiからなる群から選ばれる遷移金属の金属塩とからなる錯体。
【請求項20】
請求項19に記載の錯体であって、下記の式(3)で表される繰返し単位を有する錯体。
【化3】


(式中、Jは亜鉛イオンに配位可能な原子を1〜3個有する1価の配位基であり、Rは1価の炭化水素基であり、(AN)n−はn価の対アニオン(但し、nは1または2の整数)であり、破線は1〜3本の配位結合を示す。2個のRは、同一であっても異なっていてもよい。2個のJ1は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項21】
請求項20に記載の錯体であって、Jがビピリジル基、ターピリジル基またはフェナントロリニル基である錯体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−35386(P2011−35386A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153773(P2010−153773)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】