説明

有機電界発光素子

【課題】陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子において、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を用いて、湿式法により発光層を形成する際に、ハンドリング性に優れ、発光層とその下層との間での混合を防止できる有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】ゲル化した架橋ポリマー、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む発光層、並びに、架橋剤により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLED、有機EL素子ともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
有機EL素子は、発光層及びその他の有機層を、例えば蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。湿式法の一形態として、インクジェット法又はノズルプリンティング法を利用して有機化合物を含む液体材料を充填し薄膜のパターンを形成する方式がある。しかしながら、この場合吐出された液体材料が隣接する画素に流出する等の問題が生じている。
このような問題に対して、通常、異なる薄膜領域を仕切る凸状の仕切部材(「バンク」また「凸部」とも呼ばれる)を設け、該仕切部材で囲まれた画素領域に異なる薄膜となる液体材料を充填する方法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また塗布法にて複数の有機層を有する有機EL素子を作製する場合、ある有機層上に、別の有機層形成用塗布液を塗布すると、下層が溶解し、層混合が起こるという問題がある。
特に正孔注入層又は正孔輸送層などの低バンドギャップ材料上に、発光層を塗布法により成膜する場合、低バンドギャップ材料と発光層とが混合することで、発光効率の低下につながる。
下層の溶解を防ぐ為に、下層に高分子材料を用いる方法や、下層を塗布後に架橋硬膜する方法が行われている。
【0005】
また発光層の形成用材料として、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体が知られている。例えば、非特許文献1には、液体状の有機半導体として、9−(2−エチルヘキシル)カルバゾールが記載されている。また特許文献2には、液晶性を有する有機半導体として、ディスコティック液晶性を有するトリフェニレン誘導体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3328297号公報
【特許文献2】特開平10−321371号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 95,053304(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を用いて、湿式法により発光層を形成する際に、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体は流動性があるため、ハンドリング性が悪くその向上が求められていた。また湿式法による層の形成においては、乾燥時に熱をかけることにより塗布液の対流が起こり、下層との間で混合が生じ素子性能に悪影響を与えるという問題があり、その改善が求められている。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子において、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を用いて、湿式法により発光層を形成する際に、ハンドリング性に優れ、発光層とその下層との間での混合を防止できる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、ゲル化した架橋ポリマー、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む発光層、並びに、架橋剤により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を有する有機電界発光素子により、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0012】
〔1〕 陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、
前記少なくとも一層の有機層が、架橋剤(B)により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を含み、
前記発光層が、ゲル化した架橋ポリマー(A)、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む、有機電界発光素子。
〔2〕 前記正孔注入層又は正孔輸送層上に、前記発光層が形成された、上記〔1〕に記載の有機電界発光素子。
〔3〕 前記発光層が、液体状の有機半導体を含有し、該液体状の有機半導体が25℃〜220℃の範囲で液体状の有機半導体である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の有機電界発光素子。
〔4〕 前記バンクが平坦部を有しない、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔5〕 前記発光層が下記一般式(C−1)で表される白金錯体を含有する、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
〔6〕 前記一般式(C−1)で表される白金錯体が、下記一般式(C−9)で表される白金錯体である、上記〔5〕に記載の有機電界発光素子。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(C−9)中、R〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
〔7〕 前記架橋剤(B)が、複数のビニル基又はアリル基を有する化合物である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔8〕 前記複数のビニル基又はアリル基を有する化合物が、下記一般式(1)又は一般式(2)で表わされる化合物である、上記〔7〕に記載の有機電界発光素子。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。R及びR’は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。)
〔9〕 前記架橋ポリマー(A)が、カルバゾール構造と、少なくとも2つの重合性不飽和基を有する化合物を重合してなる重合体である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔10〕 前記カルバゾール構造と、少なくとも2つの重合性不飽和基を有する化合物が、下記一般式(b)で表される、上記〔9〕に記載の有機電界発光素子。
【0021】
【化5】

【0022】
一般式(b)中、R及びR’は各々独立に、水素原子又は重合性不飽和基を表す。但し、R及びR’の少なくとも一方は重合性不飽和基を表す。
Arは芳香環を表す。
は1以上の整数を表す。但し、nが1のとき、R及びR’は共に重合性不飽和基を表す。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子において、ハンドリング性に優れ、発光層とその下層との間での混合を防止できる有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、陽極上に形成されたテーパ状のバンクの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、テーパ状のバンクの形状を示す断面図である。
【図3】図3は、バンクにより区切られた層形成領域に、正孔注入層又は正孔輸送層が形成され、更にその上に発光層が形成された構成の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0026】
本発明において、置換基群A、置換基群Bを下記のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、シアノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0027】
本発明の有機電界発光素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層が、架橋剤により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を含み、前記発光層が、ゲル化した架橋ポリマー、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む。
【0028】
上記本発明の構成により、ハンドリング性に優れ、発光層とその下層との間での混合を防止できる有機電界発光素子を提供することができる理由は定かではないが、以下のように推測される。
発光層において、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体がゲル化した架橋ポリマーと共に含まれることにより、これら有機半導体の流動性が減少して、ハンドリング性が向上する。また、塗布液の塗布後の乾燥時に熱をかけても対流が生じにくくなり、下層との間での混合が生じ難くなると推測される。更に、発光層より下層に位置する正孔注入層又は正孔輸送層が架橋剤により架橋されることにより、発光層との混合が一層生じ難くなると考えられる。
なお本発明の有機電界発光素子において、発光層、正孔注入層及び正孔輸送層はそれぞれ湿式法により形成される。
【0029】
以下、本発明の有機電界発光素子に係る構成について説明する。
【0030】
[1]テーパ状のバンク
本発明に係るテーパ状のバンクを、図1を参照して説明する。テーパ状のバンク23は、陽極22上に形成され、該バンク23により区切られて層形成領域24が形成される。本願において図示しないが、層形成領域24はバンク23により囲われており、隣り合う層形成領域24は、バンク23により全て仕切られている。
層形成領域24は、有機電界発光表示装置における画素領域であり、有機電界発光表示装置において使用される従来公知の画素領域のパターンに従って、パターン状に形成される。
【0031】
バンク23はテーパ状である限り、すなわち、陽極22からバンク23の上方へ向けて、バンク23の幅が細くなる形状である限り特に限定されない。
図1において、バンク23は円弧状の形状であるが、本発明に係るバンクの形状はテーパ状である限りこれに限定されず、円弧状(FIG.2A)、台形状(FIG.2B)、裾野状(FIG.2C)、三角状等が挙げられる。バンク23は少なくとも一部に曲率を有する(換言すると、少なくとも一部に曲面を有する)バンクであることが好ましい
またバンク23は平坦部を有しないことが好ましい。バンク23が平坦部を有しないことにより、バンクに付着した塗布液の液滴はバンク壁面に留まり難くなり、効率的に層形成領域へと移動することができる。
バンク23の幅は一般的には10〜50μmであり、好ましくは20〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。バンク23の高さは、一般的には1〜10μmであり、好ましくは2〜8μm、より好ましくは2〜5μmである。
バンク23は、より好ましくは円弧状、台形状であり、更に好ましくは円弧状である。
【0032】
バンク23の材質は、上記の純水に対する接触角の関係を満たす限り特に限定されないが、ポリイミド、ノボラック系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、疎水性の観点から、好ましくはポリイミドである。なお、バンクは必要に応じて撥水処理を施してもよい。具体的な方法としては、CVDによりCFをバンクに成膜したり、長鎖のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤や、フッ素ポリマーをバンクに混合してもよい。
バンクの形成方法としては、(1)感光性レジストやポリイミドを用いたUV光によるパターニングと現像を用いる方法、(2)アルカリ現像が可能なポリイミド上にレジストを積層塗布し、UV光によるパターニングと現像を用いる方法、(3)エポキシ樹脂を用いたスクリーン印刷によるパターニングとUV架橋を用いる方法などが挙げられる。
【0033】
層形成領域24はバンク23により囲われてなる領域であり、この領域に前記発光層を含む少なくとも一層の有機層が形成される。
層形成領域24の幅は、一般的には50〜500μmであり、好ましくは80〜300μmである。
本発明においては、上記層形成領域は上記の大きさを有するものであれば、その形状については特に制限はなく、四角形(長方形,正方形,菱形を含む)、多角形(5角形、6角形等)、円形(真円形,楕円形を含む)等の環状形状、十字形、その他これに類する形状等いかなる形状も可能であるが、インクジェット法による塗布方式においては、液滴が濡れ易い形状であることが好ましいことから、特に、エッジ部(例えば、四角形における角部や頂点部)を有する形状のものにおいては、該エッジ部を曲面としたものが好ましい。このようにすることで、塗布液が層形成領域に充填された時に、上記エッジ部分をぬれやすくすることができる。
【0034】
バンク23が形成される陽極22は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陽極は、通常透明陽極として設けられる。陽極22としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO等が挙げられ、加工性、電気伝導度の観点から、ITO、IZOが好ましく、ITOがより好ましい。
【0035】
[2]発光層
本発明の発光層は、ゲル化した架橋ポリマー、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む。
本発明において“発光層がゲル化した架橋ポリマーを含む”とは、液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体がゲル化した架橋ポリマーのネットワークにより高い粘性を持ち流動性を失い、系全体としては固体状になったものを言う。
以下に、本発明の発光層に含まれる液晶性を有する有機半導体、液体状の有機半導体、及びゲル化した架橋ポリマーについて説明する。
【0036】
[2−1]液晶性を有する有機半導体
液晶性を有する有機半導体としては、液晶性を有する公知の有機半導体が使用可能であるが、好ましくは液晶性を有するホスト材料又は液晶性を有する発光材料である。
液晶性を有するホスト材料としては、液晶性を有する、トリフェニレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられ、移動度の観点から、液晶性を有するトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0037】
〔液晶性を有するトリフェニレン誘導体〕
液晶性を有するトリフェニレン誘導体としては、従来から知られているディスコティック液晶性のトリフェニレン誘導体を使用できるが、例えば下記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体を挙げることができる。液晶性を有するトリフェニレン誘導体としては、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(N相)を発現するトリフェニレン誘導体であることが好ましい。本発明の塗布液が発光層形成用塗布液である場合、該塗布液から形成される発光層において、液晶性を有するトリフェニレン誘導体は、ホスト材料として機能する。液晶性を有するトリフェニレン誘導体は、高輝度で駆動させたときにも結晶化しにくい。また液晶性を有するトリフェニレン誘導体は配向しており、液晶性を示さないトリフェニレン誘導体と比較して、有機溶媒に対する溶解性が高い。
【0038】
【化6】

【0039】
上記一般式(T−I)において、Rは、R−、R−O−、R−CO−O−又はR−O−CO−を意味する。これら基を持つ化合物が全てディスコティック液晶性ではないが、公知技術等に基づきディスコティック液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0040】
としては、具体的には、R−、R−O−、R−O−R−、R−O−R−O−、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−COO−が挙げられる。ここで、Rは重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0041】
は重合性基を有していてもよいアルキル基を表し、重合性基を有する場合、アルキル基の最末端に重合性基を有することがN相の発現性の観点で好ましい。重合性基としては、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基等が挙げられ、重合の速度、合成の容易性及びコストの点で、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基が好ましく、アクリル酸エステル基がより好ましい。
で表される重合性基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0042】
としては、N相の発現性の観点で、R−O−Ph−COO−、R−(O−RnT−O−Ph−COO−、R−O−Ph−CH=CH−COO−が好ましく、R−O−Ph−COO−が更に好ましい。
【0043】
上記一般式(T−I)で表されるトリフェニレン誘導体は、N相を発現するという点で、下記一般式(T−II)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0044】
【化7】

【0045】
上記一般式(T−II)において、R’は、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnT−O−Ph−CO−、又はR−O−Ph−CH=CH−CO−を表す。R、Ph、R、及びnの定義は、前記一般式(T−I)におけるR、Ph、R、及びnと同義である。また上記一般式(T−II)におけるR、Ph、R、及びnの具体例及び好ましい範囲も、前記一般式(T−I)におけるものと同様である。
【0046】
’は、N相の発現が良好であることから、以下の一般式(T−II−1)〜(T−II−5)のいずれかで表されることがより好ましい。
【0047】
【化8】

【0048】
上記一般式(T−II−1)〜(T−II−5)中、n及びn’はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
は、重合性基を表す。
【0049】
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜20の整数であり、より好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは3〜10の整数である。
n’は、1以上の整数を表す。n’は、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
は、重合性基を表し、その具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(T−I)においてRで表されるアルキル基が有していてもよい重合性基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0050】
本発明における液晶性を有するトリフェニレン誘導体の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、更に好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0051】
本発明の発光層おける液晶性を有するホスト材料の含有量は、発光層の全質量を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0052】
以下に、液晶性を有するトリフェニレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
【化9】

【0054】
液晶性を有する発光材料としては、液晶性を有する、ピレン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられ、色純度の観点から、液晶性を有するピレン誘導体であることが好ましい。
【0055】
〔液晶性を有するピレン誘導体〕
液晶性を有するピレン誘導体としては、例えば下記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体を挙げることができる。
【0056】
【化10】

【0057】
上記一般式(P−I)において、Rは、R−、又はR−CO−を意味する。pは、置換基数であり、1〜5の整数を表す。これら基を持つ化合物が全て液晶性ではないが、公知技術等に基づき液晶性となる適切な基を選択して使用することが出来る。Rとしては、アルキル基、アルキル基にフェニレン基やシクロヘキシレン基等の環が組み合わされたもの、アルキル基の炭素−炭素間に酸素原子が配置されたもの等がある。
【0058】
としては、具体的には、R−、R−O−R−、R−O−Ph−CO−、R−(O−RnP−O−Ph−CO−、R−O−Ph−CH=CH−CO−、CH=CH−COO−R−O−Ph−CO−が挙げられる。ここで、Rはアルキル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、n、は−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。
【0059】
で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。Rで表されるアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、液晶性の点で直鎖であることが好ましい。
で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは3〜10の範囲である。
Phは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、有していてもよい置換基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられ、N相の発現性の観点で、アルキル基が好ましい。置換基としてのアルキル基、アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜10の範囲であり、更に好ましくは1〜6の範囲である。
は、−(O−R)−の繰り返し数であり、1以上の整数を表す。nは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜6の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
【0060】
としては、溶解性の観点で、R−が好ましい。
pは、置換基数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2の整数である。一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、少なくともベンゼン環の4位に置換基を有することが液晶性の付与、溶解性の観点で好ましい。
【0061】
上記一般式(P−I)で表されるピレン誘導体は、高い溶解性の点で、下記一般式(P−II)で表されるピレン誘導体であることが好ましい。
【0062】
【化11】

【0063】
上記一般式(P−II)中、Rは、一般式(P−I)におけるRと同義である。
【0064】
一般式(P−II)におけるRの具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(P−I)におけるものと同様である。
【0065】
液晶性を有するピレン誘導体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0066】
【化12】

【0067】
本発明の発光層における液晶性を有する発光材料の含有量は、発光層中の全質量を基準として、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、1.5〜10質量%であることが更に好ましい。
【0068】
[2−2]液体状の有機半導体
本発明に係る発光層に含まれる液体状の有機半導体としては、25℃(室温)で液体状の有機半導体(以下、“室温で液体状の有機半導体”とも言う)のみならず、本発明に係る発光層形成用塗布液の塗布後の乾燥時の加熱により溶融し、液体状となる有機半導体(以下、“加熱により溶融する有機半導体”とも言う)も含まれる。これら液体状の有機半導体は、好ましくは液体状のホスト材料である。液体状の有機半導体は、25℃〜220℃の範囲で液体状の有機半導体であることが好ましい。
以下それぞれについて説明する。
【0069】
〔室温で液体状の有機半導体〕
室温で液体状の有機半導体としては、Applied Physics Letters 95,053304(2009)に記載の9−(2−エチルヘキシル)カルバゾールが挙げられる。
【0070】
本発明の発光層形成用塗布液における室温で液体状の有機半導体の濃度は、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
本発明の発光層における室温で液体状の有機半導体の含有量は、発光層の全質量を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0071】
〔加熱により溶融する有機半導体〕
加熱により溶融する有機半導体は、発光層形成用塗布液の塗布後の乾燥時の加熱温度以下で溶融し、液体となる有機半導体である。加熱により溶融する有機半導体は、50℃〜220℃の範囲に融点を有する有機半導体であることが好ましく、より好ましくは65℃〜220℃の範囲に融点を有する有機半導体であり、更に好ましくは65℃〜180℃の範囲に融点を有する有機半導体である。
【0072】
上記50℃〜220℃の範囲に融点を有する有機半導体としては、非対称構造のカルバゾール誘導体、特開2007−269772に記載の下記構造式の化合物(融解温度170度)、N−カルバゾール誘導体等が挙げられ、非対称構造のカルバゾール誘導体、N−カルバゾール誘導体であることが素子耐久性の観点で好ましい。非対称構造のカルバゾール誘導体としては、低融点の観点から、下記一般式(Acz)で表される非対称構造のカルバゾール誘導体が好ましい。
【0073】
【化13】

【0074】
【化14】

【0075】
一般式(ACz)中、RAsはtert−ブチル基、tert−アミル基、又はトリメチルシリル基を表す。
【0076】
上記一般式(ACz)で表される化合物において、RAsがtert−ブチル基の時、融点は125℃であり、tert−アミル基の時、融点は128℃であり、トリメチルシリル基の時、融点は135℃である。
【0077】
またN−カルバゾール誘導体としては、低融点の観点から、下記一般式(Ncz)で表されるN−カルバゾール誘導体が好ましい。
【0078】
【化15】

【0079】
一般式(NCz)中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。
【0080】
で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20の範囲であり、より好ましくは1〜15の範囲であり、更に好ましくは1〜10の範囲であり、更により好ましくはメチル基、エチル基である。Rで表されるアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが、液晶性の点で直鎖であることが好ましい。
で表されるアリール基は炭素数は、好ましくは6〜20の範囲であり、より好ましくは6〜12の範囲であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0081】
上記一般式(NCz)で表される化合物の具体例としては、9−エチルカルバゾール(融点 68℃)、9−メチルカルバゾール(融点 89℃)、9−フェニルカルバゾール(融点 88℃)等が挙げられる。
【0082】
本発明の発光層における加熱により溶融する有機半導体の室温下における含有量は、発光層の全質量を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0083】
[2−3]架橋ポリマー(A)
本発明に係る架橋ポリマーとしては、ゲル化する限り、公知の架橋ポリマーが使用できる(以下、“架橋ポリマー(A)”とも呼ぶ)。架橋ポリマー(A)は、少なくとも2つの重合性基を有する重合性化合物を重合して得られる架橋ポリマーであり、重合性基としてはアクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、クロトン酸エステル基、エポキシ基、エチレン性不飽和基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。
架橋ポリマー(A)を誘導する重合性化合物は、電気伝導度の観点で、電荷輸送部位を有することが好ましく、正孔輸送部位、電子輸送部位及びバイポーラ性輸送部位のいずれかを有することがより好ましい。電荷輸送部位を有する重合性化合物から誘導される架橋ポリマー(A)としては、以下に記載するカルバゾール重合体A、カルバゾール重合体B及びアリールアミン重合体Cが挙げられる。
【0084】
〔カルバゾール重合体A〕
カルバゾール重合体Aは、少なくとも2つの飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を反応性基として有する化合物(化合物A)を少なくとも一部として含有し、かつ反応性基を介して前記化合物Aが重合してなる重合体(以下“重合体A”とも呼ぶ)である。
【0085】
本発明において、化合物Aが重合してなる重合体Aとは、重合体の一部に化合物Aが含有されていればよく、また反応性基(あるいは重合性基)を介して化合物Aが重合しているものである。
【0086】
本発明に係る化合物A又は該化合物Aの重合体Aは、溶液又は分散液として調製することができ、塗布によって作製された膜は均一であり有機エレクトロルミネッセンス素子として十分利用可能である。
【0087】
また、前記化合物A又は該化合物Aの重合体Aは青色のリン光発光ドーパントに対するホストとして利用できる十分に広いバンドギャップを有しており、外部取り出し量子効率が高く、かつ発光寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができ、更には該有機エレクトロルミネッセンス素子を具備した照明装置及び表示装置を提供することができる。
【0088】
化合物Aは有機エレクトロルミネッセンス素子中においてホスト化合物であることが最も好ましいが、発光層中の発光材料、即ち発光ドーパント、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料、電子輸送材料として使用してもよい。
【0089】
本発明の有機EL素子においては、化合物Aの状態、即ち重合前の状態(単量体、モノマーとも言う)で素子に組み込まれていてもよく、予め該化合物Aの重合体として調製され、素子の構成層に組み込まれていてもよい。
【0090】
特に塗布等の湿式法により素子の構成層が形成される場合、例えば、該化合物Aが発光層の形成時に単量体として組み込まれた場合には、紫外線照射等の光重合や加熱による熱重合等を行う工程を経て重合体を形成して得られた発光層上に、電子輸送層等を設けることが好ましい。
【0091】
化合物Aの塗布膜を作製後、重合前に、例えば、塗布溶媒の沸点より少し高い温度での加熱等、重合前に乾燥プロセスを入れることも好ましい。また、塗布膜を重合した後、適当な(重合膜を溶解しない)溶媒にて重合膜をリンスして不溶物を除いた後、更に上層を積層塗布する等のプロセスを付加することも好ましい。
【0092】
このように素子を使用することにより、重合反応が進行する場合には、発光寿命の長寿命化という素子の特性向上効果を得ることができる。
【0093】
化合物Aにおける飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環の反応性基について説明する。
【0094】
飽和炭化水素環とは炭素及び水素原子からなる環状分子であり、例えば、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基等)、シクロアルケニル基(例えば、シクロ−1−プロペニル基、シクロ−2−プロペニル基、シクロ−1−ブテニル基、シクロ−2−ブテニル基、シクロ−1,3−ブタジエニル基、シクロ−2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、シクロアルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)が挙げられる。
【0095】
炭素、水素以外の原子を含有する飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環の反応性基の例としては、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、シクロヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、シクロヘキシルウレイド基、シクロヘキシルスルホニル基が挙げられる。
【0096】
これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0097】
化合物Aは少なくとも2つの飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を反応性基として有している一般的に使用される有機EL素子用材料であれば特に問題はなく、好ましくは少なくとも2つのシクロプロピル基又はシクロブチル基で表される反応性基を有していればよく、中でも少なくとも2つのシクロプロピル基が置換されているホスト化合物が最も好ましい。
【0098】
前記シクロプロピル基又はシクロブチル基で表される反応性基を有する化合物Aにおいて、中でも、好ましい反応性基としてはシクロプロピル基が挙げられる。化合物Aが有する2つ以上の反応性基は同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
前記化合物Aは下記一般式(a)で表されることが好ましい。
【0100】
【化16】

【0101】
(式中、Ar〜Arは各々独立に、水素原子又は芳香環を表し、該芳香環の少なくとも2つはシクロプロピル基又はシクロブチル基で置換された芳香環である。)
【0102】
一般式(a)において、Ar〜Arで表される芳香環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香環は単環でもよく、縮合環でもよく、更に未置換でも、後述するような置換基を有していてもよい。
【0103】
Ar〜Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0104】
Ar〜Arで表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
【0105】
上記の中でも、一般式(a)において、Ar〜Arで表される芳香環として、好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、特に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環である。
【0106】
上記の中でも、置換基を有するベンゼン環が好ましく、特に好ましくはカルバゾリル基を有するベンゼン環が好ましい。
【0107】
また、一般式(a)において、Ar〜Arで表される芳香環としては、下記に示すような、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0108】
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。
【0109】
なお、以上の環は更に下記置換基を有していてもよい。
【0110】
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
【0111】
以下、本発明に係る化合物Aの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0112】
【化17】

【0113】
【化18】

【0114】
【化19】

【0115】
【化20】

【0116】
【化21】

【0117】
【化22】

【0118】
【化23】

【0119】
【化24】

【0120】
【化25】

【0121】
【化26】

【0122】
【化27】

【0123】
【化28】

【0124】
【化29】

【0125】
【化30】

【0126】
【化31】

【0127】
【化32】

【0128】
なお、本発明に係る化合物A、化合物Aの重合体Aは、従来公知の文献等を参照して合成することができる。
【0129】
〔カルバゾール重合体B〕
カルバゾール重合体Bは、カルバゾール構造と、少なくとも2つの重合性不飽和基を反応性基として有する化合物(化合物B)を少なくとも一部として含有し、かつ反応性基を介して前記化合物Bが重合してなる重合体(以下“重合体B”とも呼ぶ)である。
【0130】
本発明において、化合物Bが重合してなる重合体Bとは、重合体の一部に化合物Bが含有されていればよく、また反応性基(あるいは重合性基)を介して化合物Bが重合しているものである。
【0131】
本発明に係る化合物B又は該化合物Bの重合体Bは、溶液又は分散液として調製することができ、塗布によって作製された膜は均一であり有機エレクトロルミネッセンス素子として十分利用可能である。
【0132】
本発明の有機EL素子においては、化合物Bの状態、即ち重合前の状態(単量体、モノマーとも言う)で素子に組み込まれていてもよく、予め該化合物Bの重合体として調製され、素子の構成層に組み込まれていてもよい。
【0133】
特に塗布等の湿式法により素子の構成層が形成される場合、例えば、該化合物Bが発光層の形成時に単量体として組み込まれた場合には、紫外線照射等の光重合や加熱による熱重合等を行う工程を経て重合体を形成して得られた発光層上に、電子輸送層等を設けることが好ましい。
【0134】
化合物Bの塗布膜を作製後、重合前に、例えば、塗布溶媒の沸点より少し高い温度での加熱等、重合前に乾燥プロセスを入れることも好ましい。また、塗布膜を重合した後、適当な(重合膜を溶解しない)溶媒にて重合膜をリンスして不溶物を除いた後、更に上層を積層塗布する等のプロセスを付加することも好ましい。
【0135】
このように素子を使用することにより、重合反応が進行する場合には、発光寿命の長寿命化という素子の特性向上効果を得ることができる。
【0136】
化合物Bにおける重合性不飽和基としては、ラジカル、カチオン又は加熱により重合反応する結合を有する基が好ましい。
前記不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、チオ(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基及びチオ(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和基が挙げられる。
【0137】
前記(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基及びチオ(メタ)アクリロイル基以外の炭素−炭素不飽和基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基又は加熱により反応する結合を有する基が好ましい。このような炭素−炭素不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基、アリルエステル基、プロパルギルエーテル基、プロパルギルエステル基、ジシクロペンテニル基が好ましく、ビニル基、アリル基、アリルエステル基、プロパルギルエステル基、ジシクロペンテニル基が特に好ましく、ビニル基が最も好ましい。
化合物Bにおける重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、チオ(メタ)アクリロイル基又はビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はビニル基がより好ましく、ビニル基が最も好ましい。
【0138】
前記化合物Bは下記一般式(b)で表されることが好ましい。
【0139】
【化33】

【0140】
一般式(b)中、R及びR’は各々独立に、水素原子又は重合性不飽和基を表す。但し、R及びR’の少なくとも一方は重合性不飽和基を表す。
Arは芳香環を表す。
は1以上の整数を表す。但し、nが1のとき、R及びR’は共に重合性不飽和基を表す。
【0141】
及びR’で表される重合性不飽和基の具体例及び好ましい範囲は前述と同様であり、ビニル基が最も好ましい。
Arは芳香環を表し、好ましくは炭素数6〜20であり、より炭素数6〜10であり、更に好ましくはベンゼン環である。
は1以上の整数を表し、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、2が更に好ましい。
【0142】
以下、本発明に係る化合物Bの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0143】
【化34】

【0144】
なお、本発明に係る化合物B、化合物Bの重合体Bは、従来公知の文献等を参照して合成することができる。
【0145】
〔アリールアミン重合体C〕
アリールアミン重合体Cは、2個以上のトリアリールアミンユニットと、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を2個以上有するモノマー化合物(化合物C)を重合してなる重合体(以下“重合体C”とも呼ぶ)である。
前記化合物Cは下記一般式(C−1)で表されることが、電気伝導度の観点で好ましい。
【0146】
【化35】

【0147】
(一般式(C−1)中、R33は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35は各々独立にアリーレン基を表し、Ar33及びAr36は各々独立にアリール基を表す。Z32は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。)
【0148】
一般式(C−1)中、R33は水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基としては、側鎖導入反応率の低下抑制及び化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0149】
一般式(C−1)中、Tは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、などが挙げられ、絶縁性部位を少なくし、かつ化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、である。
また、該アルキレン基中には、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよく、該シクロアルキレン基、又はアリーレン基としては後述するTが表すシクロアルキレン基、又はアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0150】
が表すシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基である。
が表すアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられ、好ましくは、フェニレン基である。
【0151】
としてはアルキレン基が好ましい。
【0152】
一般式(C−1)中、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表す。化合物の結晶性を低下させること、電荷トラップにつながらないこと、結合自身の安定性を向上させるという理由から、Wは酸素原子が好ましい。
一般式(C−1)中、Vは2価の連結基を表す。Vの具体例及び好ましい範囲は前記Tの具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(C−1)中、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。ペンダント基の電荷耐性を低下させないという理由から、Xは−CH−が好ましい。
【0153】
一般式(C−1)中、pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。sが0の場合、TとVとは単結合で結合している。uが0の場合、WとXとは単結合で結合している。zが0の場合、VはAr35と直接結合している。
絶縁性部位を小さくすることと化合物の結晶性を低下させることを両立するという理由から、p、s、u、zは、これらの合計が1〜10になることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。
【0154】
一般式(C−1)中、Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35は各々独立にアリーレン基を表す。該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基であり、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、Ar31、Ar35は、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、Ar32、Ar34は、フェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基が好ましい。
【0155】
一般式(C−1)中、Ar33及びAr36は各々独立にアリール基を表す。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。
【0156】
一般式(C−1)中、Ar31〜Ar36で表されるアリーレン基又はアリール基は置換基を有してもよい。該置換基としては、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。)、シリル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。)などが挙げられる。
【0157】
一般式(C−1)において、Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35がフェニレン基であり、Ar33及びAr36がナフチレン基を表すことが特に好ましい。
【0158】
一般式(C−1)中、Z32は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、シリレン基が好ましい。
32が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基などが挙げられ、好ましくは、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基である。
【0159】
32が表すシクロアルキレン基としては、炭素数1〜10のシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基、である。
【0160】
32が表すシリレン基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が置換したシリレン基であり、より好ましくはジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基である。
【0161】
一般式(C−1)中、nは0又は1を表す。イオン化ポテンシャルを制御するために、nは0と1から適宜選択できる。
一般式(C−1)中、mは1以上の整数を表す。mはトリアリールアミンユニットの繰り返し数を表すものであり、mが2以上の場合、トリアリールアミンユニットどうしは、Ar35とZ32とで結合する。電荷輸送性とイオン化ポテンシャルの観点から適宜選択することができる。mは好ましくは1〜9の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。
【0162】
一般式(C−1)で表されるモノマー化合物は、アリールハライドとアリールアミンのPd触媒を用いたカップリング反応を段階的におこない、非対称構造とすることにより合成することができる。ここで、重合性の反応部位は、初めの反応工程に導入しても最後の反応工程に導入しても良いが、好ましくは最後の反応工程である。ここで、重合性の反応部位は、最後の反応工程で2個同時に導入することが好ましい。
反応温度は、50〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましい。
反応時間は、1時間〜3日が好ましく、2時間〜1日がより好ましい。
溶媒としては、Pdカップリング反応に利用できるものであれば何でも良いが、特にトルエン、DME(1,2−ジメトキシエタン)、THF、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)が好ましい。
【0163】
本発明の発光層における架橋ポリマー(A)の含有量は、発光層の全質量を基準として、2〜50質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることが更に好ましい。
【0164】
本発明の発光層は、上記の液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体以外の発光材料及びホスト材料を更に含有していてもよい。
上記の液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体以外に、発光層に含まれていてもよい発光材料としては、蛍光発光材料や燐光発光材料が挙げられ、これらは例えば、特開2008−270736号公報の段落番号[0100]〜[0164]、特開2007−266458号公報の段落番号[0088]〜[0090]に詳述されており、これら公報の記載の事項を本発明に適用することができる。
【0165】
上記燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体等の燐光発光性金属錯体化合物が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、Ir錯体、Pt錯体が特に好ましい。
【0166】
上記燐光発光材料としては、以下に示す一般式(E−1)で表されるイリジウム錯体、又は以下の一般式(C−1)で表される白金錯体を用いることが好ましい。
【0167】
一般式(E−1)について説明する。
【0168】
【化36】

【0169】
一般式(E−1)中、Z及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。
はZと窒素原子と共に5又は6員のヘテロ環を形成する原子群を表す。
はZと炭素原子と共に5又は6員環を形成する原子群を表す。
(X−Y)はモノアニオン性の二座配位子を表す。
E1は1〜3の整数を表す。
【0170】
E1は1〜3の整数を表し、好ましくは2又は3である。
及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Z及びZとして好ましくは炭素原子である。
【0171】
はZと窒素原子と共に5又は6員のヘテロ環を形成する原子群を表す。A、Z及び窒素原子を含む5又は6員のヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。
錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、A、Z及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環であり、更に好ましくはピリジン環、イミダゾール環であり、最も好ましくはピリジン環である。
【0172】
前記A、Z及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。
【0173】
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。
【0174】
窒素上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。
前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。これら形成される環は置換基を有していてもよく、置換基としては前述の炭素原子上の置換基、窒素原子上の置換基が挙げられる。
【0175】
はZと炭素原子を含む5又は6員環を表す。B、Z及び炭素原子で形成される5又は6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からB、Z及び炭素原子で形成される5又は6員環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0176】
前記B、Z及び炭素原子で形成される5又は6員環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。
【0177】
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素原子、シアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。
【0178】
窒素上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。これら形成される環は置換基を有していてもよく、置換基としては前述の炭素原子上の置換基、窒素原子上の置換基が挙げられる。
また前記A、Z及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環の置換基と、前記B、Z及び炭素原子で形成される5又は6員環の置換基とが連結して、前述と同様の縮合環を形成していてもよい。
【0179】
(X−Y)で表される配位子としては、従来公知の金属錯体に用いられる種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。
(X−Y)で表される配位子としては下記一般式(l−1)〜(l−14)が好ましいが、本発明はこれらに限定されない。
【0180】
【化37】

【0181】
*は一般式(E−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
【0182】
Rx、Ry及びRzが置換基を表す場合、該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。錯体合成が容易であるため好ましくは(I−1)、(I−4)、(I−5)であり、最も好ましくは(I−1)である。これらの配位子を有する錯体は、対応する配位子前駆体を用いることで公知の合成例と同様に合成できる。例えば国際公開2009−073245号46ページに記載の方法と同様に、市販のジフルオロアセチルアセトンを用いて以下に示す方法で合成する事ができる。
(X−Y)で表される配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体であり、錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から以下に示されるアセチルアセトネート(acac)であることが最も好ましい。
【0183】
【化38】

【0184】
*はイリジウムへの配位位置を表す。
【0185】
一般式(E−1)で表されるIr錯体の好ましい態様は、一般式(E−2)で表されるIr錯体である。
【0186】
【化39】

【0187】
一般式(E−2)中、AE1〜AE8はそれぞれ独立に、窒素原子又はC−Rを表す。
は水素原子又は置換基を表す。
(X−Y)はモノアニオン性の二座配位子を表す。
E2は1〜3の整数を表す。
【0188】
E1〜AE8はそれぞれ独立に、窒素原子又はC−Rを表す。Rは水素原子又は置換基を表し、R同士が互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては、前述の一般式(E−1)において述べた縮合環と同様のものが挙げられる。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
E1〜AE4として好ましくはC−Rであり、AE1〜AE4がC−Rである場合に、AE3のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はフッ素原子であり、特に好ましく水素原子、又はフッ素原子であり、AE1、AE2及びAE4のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はフッ素原子であり、特に好ましく水素原子である。
【0189】
E5〜AE8として好ましくはC−Rであり、AE5〜AE8がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、又はフッ素原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、又はフッ素原子であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、又はフッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、AE6が窒素原子であることが好ましい。
(X−Y)、及びnE2は一般式(E−1)における(X−Y)、及びnE1と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0190】
前記一般式(E−2)で表される化合物のより好ましい形態は、下記一般式(E−3)で表される化合物である。
【0191】
【化40】

【0192】
一般式(E−3)中、RT1、RT2、RT3、RT4、RT5、RT6及びRT7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
AはCR’又は窒素原子を表し、R’は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
T1〜RT7、及びR’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。これらのうち、RT1とRT7、又はRT5とRT6で縮環してベンゼン環を形成する場合が好ましく、RT5とRT6で縮環してベンゼン環を形成する場合が特に好ましい。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、モノアニオン性の二座配位子を表す。nE3は1〜3の整数を表す。
【0193】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RT1〜RT7、及びR’で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RT1〜RT7、及びR’で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
T1〜RT7、及びR’で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
T1〜RT7、及びR’で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0194】
T1〜RT7、及びR’で表されるペルフルオロアルキル基は、前述のアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられる。
【0195】
T1〜RT7、及びR’で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0196】
T1〜RT7、及びR’で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、7ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0197】
T1〜RT7、及びR’として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フルオロ基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0198】
T1〜RT7、及びR’は任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はRT1〜RT7、及びR’で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
またAがCR’を表すと共に、RT1〜RT7、及びR’のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で、残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT1〜RT7、及びR’のうち、0〜2つがアルキル基で、残りが全て水素原子である場合が特に好ましい。
【0199】
E3は2又は3であることが好ましい。錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
(X−Y)は、一般式(E−1)における(X−Y)と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0200】
前記一般式(E−3)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(E−4)で表される化合物である。
【0201】
【化41】

【0202】
一般式(E−4)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)及びnE4は、一般式(E−3)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)及びnE3と同義であり、好ましい範囲も同様である。R’〜R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
’〜R’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R’〜R’における好ましい範囲は、一般式(E−3)におけるRT1〜RT7、R’と同様である。またAがCR’を表すと共に、RT1〜RT4、R’、及びR’〜R’のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT1〜RT4、R’、及びR’〜R’のうち、0〜2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0203】
前記一般式(E−3)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(E−5)で表される化合物である。
【0204】
【化42】

【0205】
一般式(E−5)におけるRT2〜RT6、A、(X−Y)及びnE5は、一般式(E−3)におけるRT2〜RT6、A、(X−Y)及びnE3と同義であり、好ましい範囲も同様である。R’〜R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
T5、RT6、R’〜R’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R’〜R’における好ましい範囲は、一般式(E−3)におけるRT1〜RT7、R’と同様である。またAがCR’を表すと共に、RT2〜RT6、R’、及びR’〜R’のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT2〜RT6、R’、及びR’〜R’のうち、0〜2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0206】
一般式(E−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(E−6)で表される場合である。
【0207】
【化43】

【0208】
一般式(E−6)中、R1a〜R1kは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
1a〜R1kは、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、モノアニオン性の二座配位子を表す。
E6は1〜3の整数を表す。
【0209】
一般式(E−6)において、R1a〜R1kの好ましい範囲は、一般式(E−3)におけるRT1〜RT7、R’におけるものと同様である。またR1a〜R1kのうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、R1a〜R1kのうち、0〜2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
1jとR1kとが連結し単結合を形成する場合が特に好ましい。
(X−Y)、及びnE6の好ましい範囲は、一般式(E−3)における(X−Y)、及びnE3と同様である。
【0210】
一般式(E−6)で表される化合物のより好ましい形態は、下記一般式(E−7)で表される場合である。
【0211】
【化44】

【0212】
一般式(E−7)中、R1a〜R1iは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
1a〜R1iは、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、モノアニオン性の二座配位子を表す。
E7は1〜3の整数を表す。
【0213】
一般式(E−7)中、R1a〜R1iの定義や好ましい範囲は一般式(E−6)におけるR1a〜R1iと同様である。またR1a〜R1iのうち、0〜2つがアルキル基又はアリール基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましい。(X−Y)、及びnE7の定義や好ましい範囲は一般式(E−3)における(X−Y)、及びnE3と同様である。
【0214】
一般式(E−1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0215】
【化45】

【0216】
【化46】

【0217】
【化47】

【0218】
上記一般式(E−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0219】
本発明において、上記イリジウム錯体は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。 上記イリジウム錯体の発光層中の含有量は、発光層の全質量を基準として、2〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
【0220】
燐光発光材料として用いることができる白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される白金錯体である。
【0221】
【化48】

【0222】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0223】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0224】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0225】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。ここで、R及びR’はそれぞれ独立に、置換基を表す。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。 錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基であり、最も好ましくは単結合である。
【0226】
として好ましくはアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくはアルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくはアルキレン基、イミノ基であり、更に好ましくはメチレン基、イミノ基である。これらは置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
として更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基、アリールイミノ基であり、更に好ましくはジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基、フェニルイミノ基、4−t−ブチルフェニルイミノ基、3,5−ジ−t−ブチルフェニルイミノ基であり、特に好ましくはジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニルイミノ基である。
【0227】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0228】
【化49】

【0229】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22、B21、B22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表すが、2つ以上が窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。)
【0230】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0231】
21、A22、B21、B22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表すが、2つ以上が窒素原子を表し、2つ又は3つが窒素原子を表すことが好ましく、2つが窒素原子を表すことがより好ましい。錯体の安定性の観点からA21及びA22窒素原子を表す、又はB21及びB22が窒素原子であることを表すことが好ましい。
【0232】
21、Z22、Z23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22、Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0233】
前記Z21、Z22、Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。
【0234】
炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、又はシアノ基が更に好ましい。
【0235】
前記アルキル基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t−ブチル基、t−アミル基、s−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基を表し、縮環していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記トリフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜12が好ましく、例えば、メトキシ基、ブチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、s−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
前記へテロ環基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換の含窒素芳香族へテロ環基を表し、縮環していてもよく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、カルバゾール環などが挙げられ、カルバゾール環が好ましい。
前記ジアリールアミノ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のジアリールアミノ基を表し、縮環していてもよく、ジフェニルアミノ基、ジトルイルアミノ基、ジナフチルアミノ基などが挙げられる。
前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜20の置換又は無置換のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状いずれの構造であってもよい。前記ジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジt−アミルアミノ基、ジs−ブチルアミノ基などが挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、炭素数6〜10の置換又は無置換のアリールオキシ基を表し、縮環していてもよく、フェニルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
前記シリル基としては、炭素数3〜24の炭素原子で置換されたシリル基を表し、トリアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基のいずれであってもよい。前記シリル基としては、炭素数3〜18が好ましく、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0236】
これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及び直鎖状アルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素基、シアノ基、トリフルオロアルキル基などが選択される。
【0237】
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0238】
前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0239】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0240】
【化50】

【0241】
(式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。Y,Z、Mは、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子である。)
【0242】
一般式(C−3)について説明する。
31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0243】
301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はシアノ基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。該アルキル基、及びアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。A302、A305がC−Rである場合、該A302、A305のRとしては、素子の耐久性向上の観点からはアリール基が好ましく、発光波長が短いという観点では水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、フッ素基、シアノ基が好ましい。
301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0244】
307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308が窒素原子であることが好ましい。
【0245】
一般式(C−3)において2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点で有利である。
【0246】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
311、A312及びA313のうち少なくとも一つは窒素原子であることが好ましく、特にA311が窒素原子であることが好ましい。
【0247】
一般式(C−3)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3−1)で表される白金錯体である。
【0248】
【化51】

【0249】
(一般式(C−3−1)中、X,Y,Z、Mはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜R及びR30はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、qが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。Qは、炭素原子又は窒素原子である。)
【0250】
一般式(C−3−1)について説明する。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。nは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。pは、0〜2が好ましく、1〜2がより好ましい。qは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。
Arが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。Arが表すアリール基は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはアルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)である。これらの中でも、アスペクト比の観点で、直鎖状アルキル基及びアルキル基を置換基として有する前記置換基が好ましい。
Arとしてより好ましくは、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基を挙げることができる。
〜R及びR30として好ましくは、一般式(C−3)におけるRと同様のものを挙げることができ、好ましくは、R〜Rは、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基、シリル基を表す。Rは、トリフルオロアルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子が好ましく、トリフルオロアルキル基が更に好ましい。R30はトリフルオロアルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子が更に好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
m、n、p、q、が2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0251】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0252】
【化52】

【0253】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0254】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。
又はRで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
401〜A406として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A401〜A406がC−Rである場合に、A402、A405のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素基である。A401、A403、A404、A406のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましく水素原子である。
41は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0255】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、N(窒素原子)の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408及びA412のいずれかがN原子であることが好ましく、A408とA412が共にN原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、トリフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、トリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素基である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素基であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0256】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0257】
【化53】

【0258】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。Y及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、Z又はYが、窒素原子である)
【0259】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0260】
507、A508、A509、A510、A511及びA512は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A507、A508、A509、A510、A511及びA512がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A507、A508、A509、A510、A511及びA512のうち少なくとも一つはNであることが好ましく、特にA510又はA507がNであることが好ましい。
【0261】
一般式(C−5)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5−1)で表される白金錯体である。
【0262】
【化54】

【0263】
(一般式(C−5−1)中、X、Y、及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。m、n、p及び、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。Arは置換又は無置換のアリール基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、m、n、p、及びqが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
【0264】
及びRは、前記一般式(C−4)におけるA401〜A406及びL41と同義であり、好ましい範囲も同様である。
及びRとして好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
Arは一般式(C−3−1)におけるArと同義であり好ましいものも同様である。
m、n、p、qは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、mは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。nは、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましく、0が更に好ましい。pは、0〜2が好ましく、1がより好ましい。qは、0〜2が好ましく、1がより好ましい。
【0265】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0266】
【化55】

【0267】
(一般式(C−6)中、X,Y,及びZはそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表し、ZとYのいずれか一方が、窒素原子であり、Yが窒素原子のときは、Xは、炭素原子である。r、s、t、及びuは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、ヘテロ環基を表し、r、s、t、及びuが2以上の場合、各々隣同士で互いに連結して環状構造を形成してもよい。W及びWはそれぞれ独立に、アルキル基を表し、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0268】
r、s、t、u、は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。これらの中でも、rは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。sは、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。tは、0又は1が好ましく、uは、0又は1が好ましい。
及びRとして好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、トリフルオロアルキル基、ハロゲン原子であり、該アリール基はアルキル基を置換基として有していてもよい。
及びRとして好ましくは、アルキル基、トリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、アリール基が好ましく、該アリール基はアルキル基を置換基として有していてもよい。
及びWとして好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基等を挙げることができ、メチル基が好ましい。また、該アルキル基は、互いに連結して環状構造(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、好ましくはシクロプロパン)を形成してもよい。
【0269】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0270】
【化56】

【0271】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61はC−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Z61、Z62はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0272】
一般式(C−7)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0273】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0274】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0275】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。
炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0276】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0277】
一般式(C−7)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−8)で表される白金錯体である。
【0278】
【化57】

【0279】
(一般式(C−8)中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0280】
一般式(C−8)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−4)におけるA401〜A410と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0281】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、別の好ましい態様の1つとして下記一般式(C−9)で表される白金錯体が挙げられる。
【0282】
【化58】

【0283】
(一般式(C−9)中、R〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0284】
とR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成することが好ましい。RとR11、R12とR10、R14とR15、及びR13とR16がそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成することがより好ましい。
とR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16が、互いに結合して形成する環状構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、又はナフタレン環である。
また、R14とR15、R11とR12、R13とR16が互いに結合して環状構造を形成することが好ましい。
該環状構造は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用でき、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基がより好ましく、炭素数5〜15のアルキル基、炭素数5〜15のアルコキシ基が更に好ましい。
【0285】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の〔0143〕〜〔0152〕、〔0157〕〜〔0158〕、〔0162〕〜〔0168〕に記載の化合物、特開2006−256999号公報の〔0065〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−73891号公報の〔0063〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2007−324309号公報の〔0079〕〜〔0083〕に記載の化合物、特開2006−93542号公報の〔0065〕〜〔0090〕に記載の化合物、特開2007−96255号公報の〔0055〕〜〔0071〕に記載の化合物、特開2006−313796号公報の〔0043〕〜〔0046〕が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。なお、例示化合物におけるアルキル基及びアルキル基は直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基を含むものとし、好ましくは直鎖アルキル基である。
【0286】
【化59】

【0287】
【化60】

【0288】
【化61】

【0289】
【化62】

【0290】
【化63】

【0291】
【化64】

【0292】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0293】
本発明において、上記白金錯体は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の発光層における上記白金錯体の含有量は、発光層の全質量を基準として、1〜50質量%であることが好ましく、3〜40質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましい。
【0294】
上記の液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体以外に、発光層に含まれていてもよいホスト材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト材料は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0295】
本発明の発光層におけるホスト材料の含有量は、発光層の全質量を基準として、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましい。
【0296】
[2−4]溶媒
本発明の発光層形成用塗布液は、上述の液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を溶解又は相溶する溶媒(塗布溶媒)を更に含有していてもよい。前記溶媒(塗布溶媒)としては、有機半導体に応じて従来公知の溶媒を適宜使用可能である。
塗布溶媒としては例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0297】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。
【0298】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。
ケトン系溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ブタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0299】
本発明の発光層形成用塗布液は、前記層形成領域(有機電界発光表示装置における画素領域)に形成された、架橋剤により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層上に発光層形成用塗布液を塗布することが好ましい。
図3は本発明の発光層形成用塗布液により発光層25が、前記層形成領域24に形成された正孔注入層又は正孔輸送層26上に形成された状態を示す。
発光層形成用塗布液から形成される発光層としては、膜厚5nm〜50μmで使用されることが好ましく、膜厚30nm〜10μmで使用されることがより好ましい。塗布液中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、成膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明の発光層形成用塗布液中の全固形分濃度は、一般的には0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の塗布液中の粘度は、吐出安定性の観点から、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0300】
本発明の発光層形成用塗布液は、上記の成分を所定の有機溶媒に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体又は層上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0301】
本発明の発光層形成用塗布液の塗布方法は特に限定されず、従来公知のいかなる塗布方法によっても形成可能である。例えば、インクジェット法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、転写法、印刷法等が挙げられる。
塗布後の加熱温度及び時間は、塗布液が乾燥する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、120℃〜160℃が好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、好ましくは1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜25分である。
【0302】
[3]正孔注入層又は正孔輸送層
本発明に係る正孔注入層又は正孔輸送層は、架橋剤により架橋されてなる。少なくとも発光層に隣接する正孔輸送層が架橋剤により架橋されてなることが好ましく、本発明の効果がより一層奏されることから、正孔注入層及び正孔輸送層の両層が架橋剤により架橋されてなることがより好ましい。本発明に係る正孔注入層又は正孔輸送層は、少なくとも一種類の架橋剤(以下、“架橋剤(B)”ともいう)により、架橋剤(B)の分子間で架橋反応が進行して形成される限り特に限定されず、公知の架橋剤を有効に使用することができる。
【0303】
[3−1]架橋剤(B)
少なくとも一種類の架橋剤(B)は好ましくは、(1)アルコキシシラン化合物若しくはクロロシラン化合物、及び/又は(2)複数のビニル基又はアリル基を有する化合物を含有する。以下それぞれについて説明する。
【0304】
(1)アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物がアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物を含有する場合、該組成物を塗布後、加熱することにより、アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物の間でゾルゲル反応が進行し、これら化合物が縮合することで架橋反応が進行する。
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物において使用可能なアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシラン、ペンタフロオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシラン、プロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノエチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシラン)プロピル]エチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、(トリエトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、フェネチルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、ビス(トリクロロシリル)ヘキサン等の公知の化合物が挙げられ、アルコキシシランが好ましく、3級のアルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0305】
本発明の組成物において使用可能なアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物としては、以下の一般式(S−1)又は(S−2)で表される化合物も好ましい。
【0306】
【化65】

【0307】
一般式(S−1)及び(S−2)中、Rは塩素原子(Cl)、メトキシ基(OCH)又はエトキシ基(OCHCH)を表す。
’はメチル基(CH)、エチル基(CHCH)又はフェニル基(Ph)を表す。
は炭素数3以上の2価の連結基を表す。
はn価の官能基を表す。
は1〜3の整数を表す。但し、nが2又は3のとき、複数のR、複数のR’及び複数のLは各々同一でも異なっていてもよい。
【0308】
は塩素原子(Cl)、メトキシ基(OCH)又はエトキシ基(OCHCH)を表し、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
’はメチル基(CH)、エチル基(CHCH)又はフェニル基(Ph)を表し、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0309】
は炭素数3以上の2価の連結基を表す。該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0310】
はn価の官能基を表す。Aで表される官能基としては任意の基が挙げられるが、フェニル基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アミノ基、グリシドキシ基等の公知の官能基が挙げられ、好ましくはフェニル基、アミノ基、グリシドキシ基である。Aで表される官能基は後述の電荷輸送部位及び/又はビニル基を有していてもよく、Aで表される官能基自体が電荷輸送部位であってもよい。
【0311】
は1〜3の整数を表す。nは好ましくは1である。
【0312】
アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物は更に、電荷輸送部位及び/又はビニル基を有していてもよい。電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送性部位等が挙げられる。
正孔輸送部位としては、トリアリールアミン誘導体であるNPD、TPDなどの誘導体やカルバゾール誘導体、金属フタロシアニン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン誘導体等の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
電子輸送部位としては、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェナントレン誘導体、トリフェニレン誘導体、シロール誘導体、Al錯体、Zn錯体等の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
バイポーラ性輸送性部位としては、ベンゾオキサゾール誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体等の公知の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
電荷輸送部位を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物としては、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、APPROACHES TO ORGANIC LIGHT−EMITTERS VIA LAYER−BY−LAYER SELF−ASSEMBRLY、Polym. Prepr.、 1999、 40、 1196−1197に記載の化合物、Hole Mobilities in Sol−Gel Materials、Adv.Mater.Opt.Electron.、2000、10、69−79に記載の化合物、Air−stable,Cross−Likable,Hole−Inejection/Transporting Interlayers for Improved Charge Injection in Organic Light−Emitting Diodes、Chem.Mater.、2008、20、4873−4882に記載の化合物、Hybrid Organic−Inoganic Light−Emitting Diodes,Adv.Mate,1999,11,2,107−112に記載の化合物等の公知の材料が挙げられる。以下に、これら文献に記載の電荷輸送部位を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0313】
【化66】

【0314】
【化67】

【0315】
【化68】

【0316】
【化69】

【0317】
ビニル基を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン等の公知の材料が挙げられ、アルコキシシラン化合物が好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランがより好ましい。
【0318】
(2)複数のビニル基又はアリル基を有する化合物
本発明の組成物において使用可能な複数のビニル基又はアリル基を有する化合物は、2個以上のビニル基又はアリル基を有することが好ましく、2〜4個のビニル基又はアリル基を有することがより好ましい。
複数のビニル基又はアリル基を有する化合物の具体例としては、ブタジエン、ペンター1、4−ジエン、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオール ジビニルエーテル、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、アリルエーテル、オクタビニルオクタシラセスキオキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、VEctomer4010、4020、4040、4050、4060、4210、4220、4230(モルフレックス社商品名)等が挙げられ、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンがより好ましい。
複数のビニル基又はアリル基を有する化合物は更に、電荷輸送部位を有していてもよい。電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送部位等が挙げられ、これらの好ましい例は、上述の具体例及び好ましい例と同様である。
【0319】
複数のビニル基又はアリル基を有する化合物は、下記一般式(1)又は一般式(2)で表わされる化合物(以下、“アリールアミン誘導体(B)”ともいう)であることが、素子の耐久性の観点で好ましい。
【0320】
【化70】

【0321】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。R及びR’は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【0322】
【化71】

【0323】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。)
【0324】
上記一般式(1)中のR及びR’で表される重合性基、並びに、上記一般式(2)中のR及びR’はビニル基であることが最も好ましい。
R及びR’で表されるビニル基又はアリル基は、ベンゼン環の3位又は5位に置換することが、外部量子効率の観点から好ましい。
及びR’は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R及びR’で表される置換基としては、炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
及びR’は、水素原子であることが高移動度の観点で好ましい。
【0325】
電荷輸送部位及び複数のビニル基又はアリル基を有する化合物の具体例としては、以下に記載する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0326】
【化72】

【0327】
【化73】

【0328】
【化74】

【0329】
本発明において、架橋剤(B)は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
架橋剤(B)が電荷輸送部位を有さない場合、架橋剤(B)の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
架橋剤(B)が電荷輸送部位を有する場合、架橋剤(B)の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、20〜100質量%が好ましく、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。
【0330】
[3−2]電荷輸送部位を有するポリマー
架橋剤(B)が電荷輸送部位を有さない場合、本発明に係る正孔注入層又は正孔輸送層は、電荷輸送部位を有するポリマーを更に含有することが好ましい。電荷輸送部位を有するポリマーとしては、PEDOT/PSS、ポリチオフェン、ポリアリールアミン、ポリフルオレン等が挙げられ、好ましくはPEDOT/PSS、ポリアリールアミン、ポリフルオレンであり、より好ましくはポリアリールアミン、ポリフルオレンである。
【0331】
本発明に係る正孔注入層又は正孔輸送層において、電荷輸送部位を有するポリマーは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送部位を有するポリマーの正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、50〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜97質量%、更に好ましくは70〜95質量%である。
【0332】
[3−3]溶媒
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用塗布液において、上述の架橋剤(B)及び/又は電荷輸送部位を有するポリマーを溶解又は分散する溶媒(塗布溶媒)としては、有機物に応じて従来公知の溶媒を適宜使用可能である。
正孔注入層又は正孔輸送層形成用の塗布溶媒としては例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。これらの具体例及び好ましい例は、発光層形成用塗布液において説明したものと同様である。
正孔注入層又は正孔輸送層としては、膜厚5〜50nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚5〜40nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、成膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物中の全固形分濃度は、一般的には0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の組成物中の粘度は、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0333】
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物は、上記と同様にフィルター濾過できる。また、正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、上記した従来公知のいかなる塗布方法によっても形成可能である。
【0334】
本発明の正孔注入層又は正孔輸送層形成用組成物の塗布後、加熱することにより、架橋剤(B)分子間で架橋反応が進行する。
塗布後の加熱温度及び時間は、架橋反応が進行する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、好ましくは120℃〜160℃がより好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、好ましくは1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜30分である。
【0335】
また架橋反応が進行する限り、加熱に代えて次の重合方法によって架橋反応を進行させることも可能である。例えば、UV照射による架橋反応、白金触媒による架橋反応、塩化鉄などの鉄触媒による架橋反応等が挙げられる。これら重合方法は、加熱による重合方法と併用してもよい。
【0336】
[4]有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、本発明に係る上述の発光層及び正孔注入層又は正孔輸送層を有する。
より具体的には、本発明における有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該少なくとも一層の有機層が架橋剤により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を含み、該発光層が上述の発光層である。
【0337】
本発明の有機電界発光素子において、前記正孔注入層又は正孔輸送層上に、前記発光層が形成されることが好ましい。架橋された正孔注入層又は正孔輸送層と、ゲル化された発光層とが隣接することでこれら層の間での混合がより防止されるからである。
本発明の有機電界発光素子において、発光層及び正孔注入層又は正孔輸送層以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図4は、本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示している。なお図4において、テーパ状のバンクは省略している。
図4に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0338】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0339】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/励起子ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0340】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0341】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0342】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0343】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0344】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0345】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層、正孔注入層及び正孔輸送層以外の各有機層は、蒸着法やスパッタリング法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。
【0346】
本発明に係る発光層、正孔注入層及び正孔輸送層の他、有機層のいずれか一層は湿式法により成膜することが特に好ましい。また、他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタリング法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0347】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0348】
(発光層)
発光層中の燐光発光性化合物又は蛍光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物又は蛍光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0349】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層及び正孔輸送層の両方を有することが好ましい。正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0350】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。本発明の有機電界発光素子において電子輸送層は炭酸セシウム(CsCO)を含有することが好ましく、この場合陰極はITO(Indium Tin Oxide)であることがより好ましい。
【0351】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0352】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0353】
(励起子ブロック層の説明)
励起子ブロック層は、発光層と正孔輸送層の界面、若しくは発光層と電子輸送層の界面のいずれか一方、又は両方に形成する層であり、発光層中で生成した励起子が正孔輸送層や電子輸送層へ拡散し、発光することなく失活するのを防止する層のことである。励起子ブロック層としては、カルバゾール誘導体からなることが好ましい。
【0354】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0355】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0356】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0357】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0358】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0359】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0360】
(バンクの形成)
0.7mmの厚み、25mm角のガラス基板上に陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタリング蒸着したのち、エッチング及び洗浄した。ITOを成膜した基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
ITO電極上にポリイミド:HD−8820(日立化成デュポンマイクロシステムズ製品名)を用い、厚さ5μm、幅50μmで、上辺部が幅40μmで高さ1μmのテーパ状でかつ平坦部のないバンクを形成した。
【0361】
(実施例1)
以降のスピンコートと乾燥、アニール、ベーク処理は、グローブボックス(露点−60℃、酸素濃度10ppm)内で行った。
次に、バンクを形成した陽極(ITO)の層形成領域上に、下記構造式で表されるPTPDES(ケミプロ化成製、重量平均分子量=13000。nは括弧内の構造の繰り返し数を意味し、整数である。)1.9質量部と架橋剤:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製)を、電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解又は分散させた正孔注入層塗布液をコートした後、120℃で10分間乾燥し、160℃で60分間アニール処理することで、厚み40nmの正孔注入層を形成した。
【0362】
【化75】

【0363】
次に、架橋剤(B)として下記構造の正孔輸送材料HTL−1(米国特許US2008/0220265に記載のHTL−1)4質量部を、電子工業用2−ブタノン(関東化学製)996質量部に溶解させて、正孔輸送層塗布液を調製した。
この正孔輸送層塗布液を正孔注入層上にコートし、150℃で30分間乾燥することで厚み10nmの正孔輸送層を形成した。
【0364】
【化76】

【0365】
次に発光層として、ホスト材料として下記構造の9−エチルカルバゾール(融点:68℃、東京化成製)16質量部と、発光材料として下記構造のPt錯体E−1 2質量部と架橋剤として下記構造の化合物CL−1(特開2009−182298に記載)2質量部を電子工業用2−ブタノン(関東化学製)980質量部に溶解、分散し、正孔輸送層上に滴下、80℃で10分間乾燥、及び150℃で30分間アニール処理することで発光層を形成した。このとき、発光層において、化合物CL−1はゲル化した架橋ポリマーを形成した。
【0366】
【化77】

【0367】
次に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み35nmの電子輸送層を発光層上に形成した。
【0368】
【化78】

【0369】
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機電界発光素子を作製した。
【0370】
(比較例1)
正孔注入層に架橋剤を添加せずに、かつ正孔輸送層を形成しなかった以外には、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0371】
(比較例2)
発光層に架橋剤を添加しない以外には、実施例1と同様に有機電界発光素子を作製した。
【0372】
(評価)
<発光スペクトルの測定>
東陽テクニカ株式会社製ソースメジャーユニット2400を用いて、室温において、直流電圧を各素子に印加し、連続的に駆動を行い、発光させた。発光スペクトルはトプコン社製スペクトルアナライザーSR−3を用いて測定した。
<高温雰囲気での発光面>
70℃での恒温槽中で、10mA/cmの電流密度で駆動させ、その発光面を目視で観察した。
<Pt元素、N元素、In元素の膜厚プロファイル測定>
X線光電子分析装置(ESCA−XPS)によってPt元素、N元素、In元素の膜厚プロファイル測定を行った。X線光電子分光分析装置SSX−100(Surface Science Instruments社製)を用い、実施例1及び比較例1について、陽極のIn元素と正孔注入層及び発光層に含有されるN元素、並びに発光F元素の膜厚方向の含有率変化(膜厚プロファイル)を測定した。また、エッチングレートと膜厚から正孔注入層(正孔輸送層)と発光層とを帰属させた。
【0373】
【表1】

【0374】
Pt錯体の発光のピーク波長(600nm)に対し、比較例1ではピーク波長450nmの副発光が観測され、その強度比(450nm/600nm)は1/5であった。
膜厚プロファイル測定から、実施例1では発光層中のみにPt元素が検出された。比較例1ではPt元素が正孔注入層中から検出され、かつIn元素とPt元素が重なるようなプロファイルになった。本結果から、未架橋の正孔注入層(正孔輸送層)にPt錯体が浸透することで、EL駆動時に発光層中で正孔と電子が再結合する確率が低下し、かつ電子輸送層(Balq)が発光するものと予想される。
また、高温中で駆動させた場合において、比較例2の素子では発光層を未架橋であるためホスト材料が溶融し、熱対流により発光面が揺らいだものと推測される。一方、実施例1においては架橋することで対流を抑制し、均一な発光が得ることができた。
なお、室温で液状であるホスト材料9−(2−エチルヘキシルカルバゾール)においては、熱対流の影響が大きいと推測され、本発明の技術を適用することでより大きな効果が得られるものと推測される。
また、ゲル化していない比較例2の素子では、アニール処理後の基板搬送時に発光層の膜面の乱れが発生した。一方、ゲル化した実施例1では基板搬送による膜面の乱れがなく、平滑な面状を維持できた。
【符号の説明】
【0375】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子
22・・・陽極
23・・・バンク
24・・・層形成領域
25・・・発光層
26・・・正孔注入層又は正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記陽極上に形成されたテーパ状のバンクと、該バンクにより区切られた層形成領域と、該層形成領域に形成された、発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、
前記少なくとも一層の有機層が、架橋剤(B)により架橋された正孔注入層又は正孔輸送層を含み、
前記発光層が、ゲル化した架橋ポリマー(A)、及び液体状の有機半導体又は液晶性を有する有機半導体を含む、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記正孔注入層又は正孔輸送層上に、前記発光層が形成された、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層が、液体状の有機半導体を含有し、該液体状の有機半導体が25℃〜220℃の範囲で液体状の有機半導体である、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記バンクが平坦部を有しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層が下記一般式(C−1)で表される白金錯体を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【化1】

(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(C−1)で表される白金錯体が、下記一般式(C−9)で表される白金錯体である、請求項5に記載の有機電界発光素子。
【化2】

(一般式(C−9)中、R〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、ヘテロ環基を表し、RとR11、R11とR12、R12とR10、R14とR15、R13とR16はそれぞれ独立に、互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項7】
前記架橋剤(B)が、複数のビニル基又はアリル基を有する化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記複数のビニル基又はアリル基を有する化合物が、下記一般式(1)又は一般式(2)で表わされる化合物である、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【化3】

(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。R及びR’は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。)
【化4】

(式中、R及びR’は、それぞれ独立にビニル基又はアリル基を表す。)
【請求項9】
前記架橋ポリマー(A)が、カルバゾール構造と、少なくとも2つの重合性不飽和基を有する化合物を重合してなる重合体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記カルバゾール構造と、少なくとも2つの重合性不飽和基を有する化合物が、下記一般式(b)で表される、請求項9に記載の有機電界発光素子。
【化5】

一般式(b)中、R及びR’は各々独立に、水素原子又は重合性不飽和基を表す。但し、R及びR’の少なくとも一方は重合性不飽和基を表す。
Arは芳香環を表す。
は1以上の整数を表す。但し、nが1のとき、R及びR’は共に重合性不飽和基を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−79900(P2012−79900A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223265(P2010−223265)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】