説明

有機ELディスプレイの製造方法

【課題】リフトオフ法の問題点を克服することができる、マスキング手段を用いた無機絶縁膜の形成方法、およびそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法の提供。
【解決手段】透明電極基板、透明電極、絶縁膜、有機EL層、および反射電極を含み、該絶縁膜は透明電極と反射電極との交差部分に開口部を有する有機ELディスプレイの製造方法であって、透明電極上にメタル立体マスクを載置した状態で、絶縁膜を形成する工程を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物材料のエレクトロルミネセンスを利用した有機ELディスプレイの1つに、パッシブマトリクス(単純マトリクス)駆動ディスプレイがある。その代表的構成例を図1に示す。図1に示すパッシブマトリクス駆動ディスプレイは、基板410上に、第1の方向に延びる複数のストライプ形状の部分から構成される第1電極420と、第2の方向に延びる複数のストライプ形状の部分から構成される第2電極440と、第1および反射電極に挟持される有機EL層430を含み、ここで、第1の方向は第2の方向と交叉する方向、好ましくは直交する方向である。第1電極420と第2電極440との交叉領域が1つの発光部(画素ないし副画素)をなし、複数の発光部を配列することによって表示部が形成される。
【0003】
このような構造を有するパッシブマトリクス駆動ディスプレイにおいて、第1電極420および第2電極440の縁部は、電極形状が急激に変化するために電界集中が発生しやすい部位である。電極の縁部に過度の電界集中が発生した場合、当該部分の有機EL層の絶縁破壊が起こり、第1電極420と第2電極440が短絡される恐れがある。第1電極420と第2電極440との短絡が発生した場合、当該第1電極420または第2電極440の上に配置される全ての発光部が常時発光するなどの表示欠陥が発生する。
【0004】
このような第1電極420と第2電極440との短絡を防止するための手段として、第1電極420および第2電極440の縁部に絶縁膜を形成する方法(特許文献1参照)、および該絶縁膜材料としてポリイミド、酸化ケイ素、窒化ケイ素を用いる方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
絶縁膜材料として、ポリイミド、ノボラック樹脂などの有機材料を用いることの利点は、十分な耐電圧を達成する膜厚の層をフォトリソグラフ法などの方法を用いて簡便に形成することができる点にある。しかしながら、これらの材料は吸湿性が高いために、有機EL層の劣化をもたらす水分が含有される可能性が高く、有機EL層を形成する前に十分な脱水工程を行うことが必要となる。たとえば、車載表示装置などの高い信頼性が求められる製品に有機ELディスプレイを使用するためには、高温高湿下などの悪条件下でも輝度低下の小さいディスプレイが求められる。しかしながら、このような悪条件下、特に高温の駆動においては絶縁膜の有機材料からの水分放出が加速的に発生して有機EL層に拡散し、有機EL層の劣化が起こって輝度の低下が起こる。
【0006】
上記の水分の放出を回避する手段として、有機材料よりも吸湿性の低い無機材料を用いて絶縁膜を形成することが提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特許第2911552号公報
【特許文献2】特開平9−330792号公報
【特許文献3】特開2003−86382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無機材料を用いて絶縁膜を形成する際の課題として、以下の点を挙げることができる:
(1) 特に電界集中の発生しやすい透明電極縁部において、十分な耐電圧を達成する膜厚を有すること;
(2) ピンホールの発生を抑制して、十分な耐電圧を保持すること;
(3) 絶縁膜縁部において、反射電極の断線が発生しない程度の滑らかなテーパー形状を有すること;
(4) 絶縁膜をパターニングする際に、表示欠陥の原因となるような透明電極の表面粗さの増大、および有機物残渣の発生がないこと;
(5) 高精度のパターニングが行えること。
【0009】
前述の特許文献3においては、透明電極の発光部を形成する部分(反射電極との交叉部分)のみに開口部を設けた無機材料からなる絶縁膜の構成が開示されているものの、そのような絶縁膜の成膜方法およびパターニング方法は開示されていない。
【0010】
また、近年、リフトオフ法を用いて無機材料からなる絶縁膜を形成する方法が提案されている。この方法においては、透明電極上に予めリフトオフレジストを設けて電極表面を保護した後に、絶縁膜を構成する無機材料を付着させ、次いでリフトオフレジストを除去することによって所望の形状を有する絶縁膜が形成される。しかしながら、この方法においては、所望のパターンを有するリフトオフレジストの形成にフォトリソグラフ法(レジスト塗布、パターン露光、現像)が必要であること、あらかじめ形成されるリフトオフレジストの形状によって、無機絶縁膜の縁部の形状が影響を受けること、および電極表面のリフトオフレジスト残渣(有機物)による汚染などの問題点がある。
【0011】
これに対して、マスキング手段を用いる無機絶縁膜の形成が可能になれば、フォトリソグラフ工程を排除することができ、製造工程の大幅なコストダウンが可能となる。したがって、本発明の課題は、前述のリフトオフ法の問題点を克服することができる、マスキング手段を用いた無機絶縁膜の形成方法、およびそれを用いた有機ELディスプレイの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、透明電極基板を準備する工程と、透明電極基板上に透明電極を形成する工程と、透明電極上にメタル立体マスクを載置した状態で、絶縁膜を形成する工程と、有機EL層を形成する工程と、反射電極を形成する工程とを備え、透明電極基板、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる透明電極、絶縁膜、有機EL層、および第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる反射電極を含み、前記第1の方向は前記第2の方向と交叉する方向であり、前記絶縁膜は前記透明電極および前記反射電極の交差部分に開口部を有する有機ELディスプレイの製造することを特徴とする。ここで、前記メタル立体マスクは、複数のマスク本体と、前記マスク本体に相当する位置に複数の開口部を有するマスク支持体とを含み、前記開口部の幅が前記マスク本体の幅の110〜150%であり、前記マスク本体と前記マスク支持体との距離が前記マスク本体の幅の50〜100%であることが望ましい。また、前記絶縁膜を形成する工程が、蒸着法、スパッタ法、およびCVD法からなる群から選択されるドライプロセスによって実施されてもよい。さらに、絶縁膜は、SiO、AlO、TiO、TaOおよびZnOからなる群から選択される金属酸化物、SiN、SiAlNからなる群から選択される金属酸窒化物、またはSiから形成されてもよい。また、前記透明電極基板が、透明基板と、該透明基板上に設けられた複数種の色変換フィルタ層と、該色変換フィルタ層を覆って平坦な上平面を有する平坦化層と、該平坦化層の上のパッシベーション層とを含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のような構成を採ることによって、本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、反射電極の断線が発生しない程度の滑らかなテーパー形状を有する縁部を形成し、表示欠陥の原因となるような透明電極の表面粗さの増大、および有機物残渣の発生がなく、かつ高精度のパターニングを行うことが可能な絶縁膜の形成方法を提供する。本発明の方法で得られた無機材料から成る絶縁膜は、吸湿性が低く、かつ、特に電界集中の発生しやすい透明電極縁部において十分な耐電圧を達成する膜厚を有するので、得られた有機ELディスプレイは長期間にわたって安定に駆動することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製造方法によって得られる有機ELディスプレイの基本的構造を図2および図3に示す。図2において、透明基板11の表面上に、複数種の色変換フィルタ層12(R,G,B)、平坦化層13およびパッシベーション層14が形成されている。本明細書において、透明基板11からパッシベーション層14までの構造を総称して、透明電極基板10と呼ぶ。透明電極基板10の上に、透明電極20、無機絶縁膜30、有機EL層40、および反射電極50が積層されている。透明電極20は第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分から構成され、反射電極50は第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分から構成されており、第1の方向は第2の方向と交叉する方向、好ましくは直交する方向である。
【0015】
図3は、本発明の製造方法によって得られる有機ELディスプレイの無機絶縁膜30以下の構造を示す上面図である。無機絶縁膜30は、透明電極20の外部駆動回路との接続に用いられる部分、透明電極20と反射電極50との交叉領域の開口部32、および反射電極50と外部駆動回路とを接続する反射電極端子54とを接続するための端子接続開口部34を除いて、透明電極基板10のほぼ全面にわたって形成されている。ここで、絶縁膜30は、反射電極端子54の一部を覆うように形成されているが、反射電極端子54の全面を露出させる構成であってもよい。なお、図3においては、反射電極50を複数のストライプ形状に分離するための反射電極分離隔壁52(第2の方向に延びる複数の部分から構成され、透明電極との交叉領域全てにわたり、反射電極端子の側部に至る)をさらに示した。
【0016】
以下に、本発明の製造方法によって得られる有機ELディスプレイの各構成層について説明する。透明基板11は、可視光(波長400〜700nm)に対して透明であり、積層される層の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐えるものであるべきであり、および寸法安定性に優れていることが好ましい。好ましい透明基板は、ガラス基板、およびポリオレフィン、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートを含む)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂などの樹脂で形成された剛直性の樹脂基板を含む。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートを含む)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、基板として用いてもよい。ガラス、ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂を含む。ホウケイ酸ガラスまたは青板ガラス等が特に好ましいものである。
【0017】
色変換フィルタ層12(R,G,B)は、カラーフィルタ層、色変換層、またはカラーフィルタ層と色変換層との積層構造のいずれであってもよい。カラーフィルタ層は、特定の波長域の光を透過させる層である。一方、色変換層は、入射光の波長分布変換を行い異なる波長域の光を放射する層である。色変換フィルタ層としてカラーフィルタ層と色変換層との積層構造を用いる場合、カラーフィルタ層を透明基板11の側に配置することが望ましい。このような配置とすることによって、色変換層にて波長分布変換されて放射される光の色純度をカラーフィルタ層を用いて向上させることが可能となる。図2に示すように、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3種の色変換フィルタ層12を用いる場合、赤色(R)および緑色(G)については、色変換フィルタ層は少なくとも色変換層を含み、カラーフィルタ層と色変換層との積層構造を用いることが好ましい。一方、青色(B)については、青色色変化フィルタ層12Bをカラーフィルタ層および必要に応じて無着色のクリア層を用いて形成することができる。カラーフィルタ層は、フラットパネルディスプレイ用材料などの当該技術において知られている任意の材料を用いて形成することができる。
【0018】
色変換層は、1種または複数種の色変換色素と、マトリクス樹脂とを含む層である。色変換色素は、入射光を吸収して、異なる波長域の光を放射する色素である。たとえば、青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウムパークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などを用いることができる。また、青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、たとえば3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノ−クマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などを用いることができる。マトリクス樹脂としては、熱可塑性樹脂に加えて、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)の硬化物を用いることができる。青色変換フィルタ層12Bにおいてクリア層を併用する場合、クリア層は前述のマトリクス樹脂を用いて形成することができる。
【0019】
平坦化層13は、色変換フィルタ上に形成される透明電極20と反射電極50間の短絡の原因となる透明電極基板10の表面の凹凸を平滑化するための層である。色変換フィルタ層12を覆う平坦化層13は、色変換フィルタ層12の機能を損なうことなく形成することができ、かつ適度な弾力性を有する材料から形成することができる。平坦化層13は、単層から構成されてもよいし、複数の材料を積層したものであってもよい。好ましい材料は、表面硬度が鉛筆硬度2H以上であり、0.3MPa以上のヤング率を有し、光出力部上に平滑な塗膜を形成することができ、色変換フィルタ層の変形などを発生させず、かつその機能を低下させないポリマー材料である。より好ましくは、該材料は、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電気絶縁性を有するポリマー材料である。そのようなポリマー材料の例は、イミド変性シリコーン樹脂、無機金属化合物(TiO、Al、SiO等)をアクリル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の中に分散した材料、アクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマーの反応性ビニル基を有した樹脂、レジスト樹脂、フッ素系樹脂、またはエポキシ樹脂、エポキシ変性アクリレート樹脂などの光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらポリマー材料を用いて平坦化層6を形成する方法には、特に制限はない。たとえば、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法など)、あるいは湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法など)のような慣用の手法により形成することができる。
【0020】
パッシベーション層14は、その下に形成される色変換フィルタ層12および平坦化層13からの酸素、低分子成分および水分の透過を防止し、それらによる有機EL層40の機能低下を防止することに有効である。パッシベーション層14は、有機EL層40の発光を色変換フィルタ層へと透過させるために、その発光波長域において透明であることが好ましい。これらの要請を満たすために、パッシベーション層14は、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電気絶縁性を有し、水分、酸素および低分子成分に対するバリア性を有し、好ましくは鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有する材料で形成される。例えば、SiO、AlO、TiO、TaO、ZnO等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物、SiN等の金属酸窒化物等の材料を使用できる。
【0021】
透明電極20は、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分から形成される。縁部における電界集中を低減するために、図2に示したようにテーパー形状を有することが望ましい。透明電極20は、波長400〜800nmの光に対して好ましくは50%以上、より好ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。透明電極20は、ITO(In−Sn酸化物)、IZO(In−Zn酸化物)、Al−Sn酸化物(ATO)、NESA膜、Sn酸化物、In酸化物、Zn酸化物、Zn−Al酸化物、Zn−Ga酸化物、またはこれらの酸化物に対してF、Sbなどのドーパントを添加した導電性透明金属酸化物を用いて形成することができる。特に、室温成膜により比較的低抵抗な膜が得られ、かつ弱酸によるパターニングが可能であることから、IZOを用いることが好ましい。透明電極20は、通常50nm以上、好ましくは50nm〜1μm、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
【0022】
上記のような材料を用いて形成される透明電極20は、通常の場合、陽極(正孔注入電極)として用いられる。透明電極20を陰極(電子注入電極)として用いる場合には、透明電極20と有機EL層40との界面にバッファ層(不図示)を設けて、電子注入効率を向上させることが望ましい。バッファ層の材料としては、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などの用いることができるが、それらに限定されるものではない。バッファ層の膜厚は、駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常の場合には10nm以下であることが好ましい。
【0023】
絶縁膜30は、および透明電極20と反射電極50との短絡を防止するための層である。さらに、本発明においては、透明電極20の複数のストライプ形状の縁部における電界集中による有機EL層40の絶縁破壊を防止するための機能を有する。前述のように、絶縁膜30は、透明電極20と反射電極50との交叉領域の開口部32を除いて、透明電極基板10およびおよび透明電極20を覆うように形成される。必要に応じて、絶縁膜は、図3に示す反射電極端子54の一部をも合わせて覆うように延在することができ、その場合には反射電極50と反射電極端子54との電気的接続のための端子接続開口部34が設けられる。絶縁膜30用の材料は、SiO、AlO、TiO、TaO、ZnO等の金属酸化物、Si等の金属窒化物、SiN、SiAlN等の金属酸窒化物等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0024】
有機EL層40は、有機発光層を少なくとも含み、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および/または電子注入層を含む。これらの各層は、それぞれにおいて所望される特性を実現するのに充分な膜厚を有して形成される。たとえば、下記のような層構成からなるものが採用される。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子注入層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(7)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(上記の構成において、陽極として機能する電極が左側に接続され、陰極として機能する電極が右側に接続される)
【0025】
有機発光層の材料としては、任意の公知の材料を用いることができる。たとえば、青色から青緑色の発光を得るためには、例えば縮合芳香環化合物、環集合化合物、金属錯体(Alqのようなアルミニウム錯体など)、スチリルベンゼン系化合物(4,4’−ビス(ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)など)、ポルフィリン系化合物、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、芳香族ジメチリディン系化合物などの材料が好ましく使用される。あるいはまた、ホスト化合物にドーパントを添加することによって、種々の波長域の光を発する有機発光層を形成してもよい。ホスト化合物としては、ジスチリルアリーレン系化合物(たとえば出光興産製IDE−120など)、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)等を用いることができる。ドーパントとしては、ペリレン(青紫色)、クマリン6(青色)、キナクリドン系化合物(青緑色〜緑色)、ルブレン(黄色)、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM、赤色)、白金オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP、赤色)などを用いることができる。
【0026】
正孔注入層の材料としては、Pc類(CuPcなどを含む)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。正孔輸送層は、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、オキサジアゾール部分構造を有する材料を用いて形成することができる。用いることができる材料は、好ましくは、TPD、α−NPD、MTDAPB(o−,m−,p−)、m−MTDATAなどを含む。
【0027】
電子輸送層の材料としては、Alqのようなアルミニウム錯体;PBD、TPOBのようなオキサジアゾール誘導体;TAZのようなトリアゾール誘導体;以下に示す構造を有するもののようなトリアジン誘導体;フェニルキノキサリン類;BMB−2Tのようなチオフェン誘導体などを用いることができる。電子注入層の材料としては、Alqのようなアルミニウム錯体、あるいはアルカリ金属ないしアルカリ土類金属をドープしたアルミニウムのキノリノール錯体などを用いることができる。
【0028】
有機EL層40を構成するそれぞれの層は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
【0029】
反射電極50は、第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分から形成される。第2の方向は、透明電極20を形成するストライプ形状部分が延びる方向である第1の方向と交叉する方向であり、好ましくは第1の方向と直交する方向である。反射電極50は、高反射率の金属、アモルファス合金、微結晶性合金を用いて形成されることが好ましい。高反射率の金属は、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどを含む。高反射率のアモルファス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを含む。高反射率の微結晶性合金は、NiAlなどを含む。
【0030】
反射電極50は、通常の場合、陰極として用いられる。反射電極50を陰極として用いる場合には、前述の高反射率金属、アモルファス合金または微結晶性合金に対して、仕事関数が小さい材料であるリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属を添加して合金化し、電子注入効率を向上させることができる。あるいはまた、反射電極50と有機EL層40との界面に、前述のバッファ層を設けて有機EL層40に対する電子注入の効率を向上させてもよい。反射電極50を陽極として用いる場合には、反射電極50と有機EL層40との界面に、前述の導電性透明金属酸化物の層を設けて有機EL層40に対する正孔注入の効率を向上させてもよい。反射電極50は、通常50nm以上、好ましくは50nm〜1μm、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
【0031】
次に、本発明の有機ELディスプレイの製造方法を説明する。最初に、透明電極基板10を準備する。この工程は、a)透明基板11上に、複数種の色変換フィルタ層12を形成する工程、b)平坦化層13を形成する工程、およびc)パッシベーション層14を形成する工程を含む。複数種の色変換フィルタ層12は、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法などのような慣用の手法により、当該層の材料を透明基板11全面に付着させ、その後にフォトリソグラフ法のような慣用のパターニング手段を用いて、所望の形状および位置に形成される。あるいはまた、スクリーン印刷などの印刷手段を用いて、所望の形状および位置に当該材料を付着させてもよい。色変換フィルタ層12がカラーフィルタ層および色変換層の積層構造である場合、それら各層について上記の手法をとることができる。平坦化層13は、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法などの慣用の手法を用いて材料を付着させることによって、形成することができる。パッシベーション層14は、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法、ディップ法などの慣用の手段を用いて形成することができる。
【0032】
次に、透明電極基板10の上に透明電極20を形成する。透明電極20は、透明電極形成材料を透明電極基板10全面に付着させ、その上にフォトレジストを付着させ、所望のストライプ形状部分を与えるように画像様露光し、現像し、得られたパターン状レジストを用いて透明電極形成材料のエッチングを行い、そしてレジストを除去することによって形成することができる。この際に、全面に形成された透明電極形成材料層に対するフォトレジストの密着性を低下させて、透明電極形成材料層とフォトレジストとの間にエッチング液を侵入しやすくさせることによって、各ストライプ形状部分の縁部を傾斜させて、所望されるテーパー形状の透明電極20を得ることができる。フォトレジストの密着性を低下させる手段としては、たとえば、フォトレジスト付着の際に行われるベーキング段階において、ベーキング温度を低下させること、またはベーキング時間を短縮することを用いることができる。
【0033】
この段階で、必要に応じて、透明電極基板の1つの縁部に、反射電極50を外部駆動回路に接続するための反射電極端子54を形成してもよい。
【0034】
次に、メタル立体マスクを用いて、絶縁膜30を形成する。本発明において用いることができるメタル立体マスク60を図4に示す。図4(a)は、メタル立体マスク60の構成例を示す斜視図であり、(b)および(c)は、それぞれ1つの開口部の構成例を示した幅方向における断面図である。メタル立体マスク60は、複数のマスク本体80と、該マスク本体に対応する位置に複数の開口部90を有するマスク支持体70とを有する。マスク本体80は、図4(b)に示すように、開口部90の周縁においてマスク支持体70に連結される1つまたは複数の梁82に設けられた1つまたは複数の直支柱84によって、マスク支持体70と連結されてもよい。あるいはまた、図4(c)に示すように、開口部90の周縁においてマスク支持体70に連結される1つまたは複数の斜支柱86によって、マスク支持体70と連結されてもよい。
【0035】
マスク本体80は、透明電極20と反射電極50との交叉領域に設けられる開口部32に相当する大きさおよび形状を有する。図2に示したような形状の絶縁膜を形成するために、マスク本体80は、透明電極20を構成するストライプ形状部分のテーパー形状の上面の幅の50〜100%の幅(図4(b)および(c)に示した、第2の方向にある寸法a)を有することが望ましい。より好ましくは、マスク本体80は、該テーパー形状上面の幅の70〜90%の幅を有する。マスク本体80の長さは、反射電極50を構成するストライプ形状部分の幅を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、マスク本体80の長さは、反射電極50を構成するストライプ形状部分の幅の50〜100%の長さを有する。さらに、マスク本体80の厚さもまた、得られる絶縁膜30の形状に影響を与える要素である。一般的に、マスク本体80は、10〜100μmの厚さを有することが望ましい。
【0036】
マスク支持体70に設けられる開口部90の幅(図4(b)および(c)に示した寸法b)およびマスク支持体70とマスク本体80との距離(図4(b)および(c)に示した寸法c)は、所望される絶縁膜30の形状を達成するために、絶縁膜材料の積層に用いられる方法に依存して変化し得る。一般的には、寸法aは、寸法bの110〜150%の長さであることが望ましい。また、開口部の長さ(寸法bに直交する方向、すなわち第1の方向)は、マスク本体80の長さの110〜150%であることが望ましい。さらに、寸法cは、一般的にはマスク本体の幅(寸法a)の50〜100%であることが望ましい。
【0037】
一方、マスク支持体70の厚さおよび他の部分の寸法は、寸法bと製造する有機ELディスプレイの画素ピッチとの関係、メタル立体マスク60の構造強度を維持するための条件などを考慮して適宜決定し得るものである。同様に、梁82、直支柱84および斜支柱86の幅および厚さについては、マスク本体80を支持するのに必要な構造強度、得られる絶縁膜30の形状への影響を考慮しつつ、可能な限り小さくすることが望ましい。
【0038】
このようなメタル立体マスク60は、近年の金属加工技術の飛躍的進歩により、種々の方法で作製することが可能である。たとえば、1つの方法として、電鋳技術(電気鋳造、エレクトロフォーミング)を用いることが可能である。電鋳技術とは、母型(ワックスなどを用いて作製される)の上に、電気メッキ法(ニッケルメッキなど)を用いて所望の厚さの金属層を電着させ、これを母型から剥離して製品を得る方法である。電鋳技術においては、母型の形状を変更することによって従来の技術(プレス成形、レーザー加工など)では困難な立体的な形状の作製が可能となる。また、絶縁膜30を形成する際の温度上昇を考慮すると、変形しにくく、かつ高い寸法精度を有するメタルを立体マスクの材料として用いることが望ましい。
【0039】
前述のメタル立体マスク60を用いた絶縁膜30の形成方法を、図5を参照して説明する。図5(a)に示すように、予め透明電極20以下の構造を形成した中間製品に対して、メタル立体マスク60を載置する。この際に、マスク本体80が透明電極20と反射電極50の交叉が予定されている領域に位置合わせをする。透明電極基板10の上に反射電極端子54が配設されている場合には、端子接続開口部34に相当する領域にもマスク本体80が載置される。
【0040】
次に、図5(b)に示すように、マスク支持体70の側から、透明電極基板10およびマスク本体80に覆われなかった透明電極20の縁部の上に絶縁膜材料を堆積させる。絶縁膜材料の堆積は、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などを含む)、化学気相蒸着(CVD)法、スパッタ法などを用いることができ、好ましくは付着材料粒子(反応性イオンを含む)の指向性が低い化学気相蒸着(CVD)法またはスパッタ法が用いられる。付着材料粒子の指向性が高い蒸着法を使用する場合、蒸着源を中間製品から偏心させ、絶縁膜材料の粒子を中間製品表面に対して斜め方向から入射させることによって、透明電極基板10および透明電極20の縁部に対して所望の形状の絶縁膜を形成することができる。蒸着法を使用する場合には、必要に応じて中間製品を回転させて、蒸着源からの距離を平均化し、形状の再現性を向上させてもよい。
【0041】
最後に、図5(c)に示すように、メタル立体マスク60を取り外して、所望の形状の絶縁膜30が形成された半製品を得ることができる。得られた絶縁膜30は、透明電極20と反射電極50との交叉領域の開口部32、および存在する場合には反射電極端子54の反射電極50との接続領域に端子接続開口部34を有する。また、絶縁膜30の開口部のそれぞれの縁部は、なだらかなテーパー形状を有し、その上に形成される反射電極50の断線を起こすことがない。
【0042】
次に、必要に応じて、透明電極20の複数のストライプ形状部分が延びる第1の方向に交叉(好ましくは直交)する第2の方向に延び、逆テーパー形状を有する反射電極分離隔壁52を形成する。反射電極分離隔壁52は、第1の方向にて隣接する絶縁膜30の開口部を分離するように形成される。また、反射電極端子54が配設されている場合には、反射電極分離隔壁52は、端子接続開口部34に至るように形成される。なお、反射電極50をマスキングを用いる方法で形成する場合には、この工程は不要である。
【0043】
次に、蒸着法を用いて、有機EL層40を形成する。多層構成の有機EL層40を用いる場合には、各構成層の材料を順次蒸着させることによって、有機EL層40が形成される。
【0044】
最後に、蒸着法、スパッタ法などのドライプロセスを用いて反射電極50を形成する。反射電極50は、前述の逆テーパー形状の反射電極分離隔壁52またはマスキング手段によって、第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分に分離される。反射電極端子54が予め形成されている場合、反射電極50の複数のストライプ形状部分のそれぞれは、端子接続開口部34において反射電極端子54と接続される。
【0045】
さらに、周囲環境に存在する水分および酸素などからデバイスを保護する目的で、ガラスなどの封止基板を用いて有機ELディスプレイを封止してもよい。封止基板の貼り合わせは、UV硬化型、熱硬化型などの各種接着剤を用いて行うことが可能である。あるいはまた、有機ELディスプレイの反射電極50側を封止樹脂で被覆することによって封止を行うことも可能である。
【0046】
また、上記の説明においては、フルカラー表示が可能な有機ELディスプレイを形成することを目的として、複数種の色変換フィルタ層を含む透明電極基板10を用いた例を説明したが、モノクロ表示有機ELディスプレイを形成する場合には、透明電極基板10として透明基板11そのものを用いてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0047】
本発明の製造方法を用いて160画素×120画素(各画素はRGBの副画素で構成される)、画素ピッチ0.33mmの有機ELディスプレイを製造した。最初に、透明基板11としてのコーニングガラス(50×50×1.1mm)上に青色フィルタ材料(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製:カラーモザイクCB−7001)をスピンコート法にて塗布後、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、0.1mm幅、0.33mmピッチ、膜厚10μmの第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる青色変換フィルタ層12B(カラーフィルタ層のみで形成される)を形成した。
【0048】
クマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂組成物の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化学株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶液を、前述の透明基板11上にスピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、0.1mm幅、0.33mmピッチ、膜厚10μmの第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる緑色変換フィルタ層12G(色変換層のみで形成される)を形成した。
【0049】
クマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3質量部)、ベーシックバイオレット11(0.3質量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂組成物の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化学株式会社)100重量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶液を、前述の透明基板11上にスピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、0.1mm幅、0.33mmピッチ、膜厚10μmの第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる赤色変換フィルタ層12R(色変換層のみで形成される)を形成した。
【0050】
次に、RGBの色変換フィルタ層12を形成した透明基板上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法にて塗布した後に、高圧水銀灯を照射して、膜厚8μm(色変換フィルタ層上の厚さ)の平坦化層13を形成した。平坦化層13の形成時に、色変換フィルタ層12のストライプ形状に変形などの故障は発生せず、かつ得られた平坦化層13の上表面は平坦であった。さらに、室温におけるDCスパッタ法を用いて、SiOを300nm堆積させて、パッシベーション層14を形成して、透明電極基板10を得た。この際に、スパッタターゲットとしてSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。
【0051】
次に、透明電極基板10のパッシベーション層14の上に、室温におけるスパッタ法を用いて、膜厚200nmのIZO膜を形成した。この際に、スパッタターゲットとしてIZOを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。得られたIZO膜の上にレジストを形成し、フォトリソグラフ法によりレジストをパターニングした後にシュウ酸をエッチング液として用いてIZO膜をパターニングして、幅0.1mm、0.11mmピッチの第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる透明電極20を得た。透明電極20の複数のストライプ形状部分は、色変換フィルタ層12(R,G,B)の複数のストライプ形状部分に相当する位置に形成され、外部駆動回路との接続部位から、透明電極基板10の他端まで延在した。
【0052】
次に、透明電極20を形成した透明電極基板10の上に、CCDカメラによりマスク本体80と透明電極20との位置合わせを行いながら、メタル立体マスク60を載置した。用いたメタル立体マスク60のマスク本体80は100μm(図4の寸法a)×270μm×厚さ25μmの寸法の矩形形状を有し、第1の方向のピッチ0.11mm、第2の方向のピッチ0.33mmで配列されていた。メタル立体マスク60の開口部90は、200μm(図4の寸法b)×400μmの寸法の矩形形状を有し、第1の方向のピッチ0.11mm、第2の方向のピッチ0.33mmで配列されていた。また、マスク本体80とマスク支持体70との距離(図4の寸法c)は100μmであった。室温におけるDCスパッタ法を用いて、SiOを300nm(最厚部)堆積させて、その後にメタル立体マスク60を除去して、絶縁膜30を形成した。絶縁膜30は透明電極20の外部駆動回路との接続部分およびマスク本体80の位置を除いて透明電極基板10のほぼ全面に形成された。得られた絶縁膜30の断面観察によれば、絶縁膜30の開口部の縁はなだらかなテーパー形状を有していた。
【0053】
次いで透明電極20を形成した半製品を抵抗加熱蒸着装置内に装着して、有機EL層40を形成した。有機EL層40は、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層の4層構成とした。真空槽内圧を1×10−5Paまで減圧し、厚さ100nmの銅フタロシアニン(CuPc、正孔注入層)、厚さ20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD、正孔輸送層)、厚さ30nmの4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi、発光層)、および厚さ20nmのアルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq、電子注入層)を、真空を破ることなく積層して、有機EL層40を得た。
【0054】
さらに真空を破ることなしに、マスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(質量比10:1)を積層して、複数のストライプ形状部分からなる反射電極50を形成した。反射電極50のストライプ形状部分のそれぞれは、透明電極20のものと直交して第2の方向に延び、幅0.3mm、ピッチ0.33mmを有した。
【0055】
最後に、グローブボックス内の乾燥窒素雰囲気(酸素および水分ともに10ppm以下)中において、封止ガラス(不図示)およびUV硬化型接着剤を用いて、有機EL素子を形成した側を封止して、有機ELディスプレイを得た。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来型構造のパッシブマトリクス駆動型ディスプレイを示す分解斜視図である。
【図2】本発明の製造方法により得られる有機ELディスプレイの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の製造方法により得られる有機ELディスプレイの一例を示す上面図である。
【図4】本発明の方法において用いられるメタル立体マスクの構成例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)および(c)は、それぞれ1つの開口部の構成例を示した幅方向における断面図である。
【図5】本発明の製造方法における絶縁膜の形成工程を示す図であり、(a)〜(c)は各段階をしめす断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 透明電極基板
11 透明基板
12(R,G,B) 色変換フィルタ層
13 平坦化層
14 パッシベーション層
20 透明電極
30 絶縁膜
32 開口部
34 端子接続開口部
40 有機EL層
50 反射電極
52 反射電極分離隔壁
54 反射電極端子
60 メタル立体マスク
70 マスク支持体
80 マスク本体
82 梁
84 直支柱
86 斜支柱
90 開口部
410 基板
420 第1電極
430 有機EL層
440 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極基板、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる透明電極、絶縁膜、有機EL層、および第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分からなる反射電極を含み、前記第1の方向は前記第2の方向と交叉する方向であり、前記絶縁膜は前記透明電極および前記反射電極の交差部分に開口部を有する有機ELディスプレイの製造方法であって、
透明電極基板を準備する工程と、
透明電極基板上に透明電極を形成する工程と、
透明電極上にメタル立体マスクを載置した状態で、絶縁膜を形成する工程と、
有機EL層を形成する工程と、
反射電極を形成する工程と
を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記メタル立体マスクは、複数のマスク本体と、前記マスク本体に相当する位置に複数の開口部を有するマスク支持体とを含み、前記開口部の幅が前記マスク本体の幅の110〜150%であり、前記マスク本体と前記マスク支持体との距離が前記マスク本体の幅の50〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜を形成する工程が、蒸着法、スパッタ法、およびCVD法からなる群から選択されるドライプロセスによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜が、SiO、AlO、TiO、TaOおよびZnOからなる群から選択される金属酸化物、SiN、SiAlNからなる群から選択される金属酸窒化物、またはSiから形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記透明電極基板が、透明基板と、該透明基板上に設けられた複数種の色変換フィルタ層と、該色変換フィルタ層を覆って平坦な上平面を有する平坦化層と、該平坦化層の上のパッシベーション層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−234426(P2007−234426A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55360(P2006−55360)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】