有機EL表示パネルの製造方法、及びこの製造方法により製造した有機EL表示パネル
【課題】 基板や有機膜に損傷を与えることなく、高精度で所望の有機膜等を成膜可能とした有機EL表示パネルの製造方法と、この方法で製造した有機EL表示パネルを提供する。
【解決手段】 蒸着マスク21に表示パネルのパネルパターン領域に対応した開口部103を有する。この開口部103は、蒸着マスク21が基板101と接触する面から後退させた凹面内の底面に有し、蒸着マスク101の開口部103を基板101から所定のギャップ空間23をもって離間して蒸着源105からの蒸着粒子粒を開口部103を通して基板101に蒸着する
【解決手段】 蒸着マスク21に表示パネルのパネルパターン領域に対応した開口部103を有する。この開口部103は、蒸着マスク21が基板101と接触する面から後退させた凹面内の底面に有し、蒸着マスク101の開口部103を基板101から所定のギャップ空間23をもって離間して蒸着源105からの蒸着粒子粒を開口部103を通して基板101に蒸着する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルに係り、特に蒸着マスクを用いて基板上に蒸着により発光層等の有機薄膜あるいは電極膜を所定のパターンに形成する製造方法に好適なものであり、その蒸着のための蒸着マスクの構造にも特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
通常、低分子系有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示パネル(OLEDとも言う)の形成にはマスク蒸着法が用いられる。このマスク蒸着法では、蒸着精度を上げるために有機ELパネルを構成する表示パネルを構成する基板(例えばTFT回路基板、TFT基板、以下単に基板とも言う)に蒸着マスク(金属材料で構成されるものであるため、メタルマスクとも言う)を密着させて発光層等の有機膜や電極の成膜を行う。なお、有機膜には絶縁膜も含む。また、本発明は有機膜に限らず、電極膜の成膜にも適用できるものであるが、以下では、主として有機発光層の成膜について説明する。
【0003】
図15は、蒸着マスクを用いた発光層等の有機膜の形成方法を説明する有機EL表示パネルの製造方法の模式図である。図15において、基板101は有機EL表示パネルを構成するTFT基板を示す。この基板には、通常はガラス板が使用される。基板101の主表面(有機発光層の形成面)側に開口部103を有する蒸着マスク102を密着させた状態で蒸着を行う。この密着は、基板101の背面(主面と反対面)にマグネット板104を貼り合わせることで、磁性体金属で構成された蒸着マスク102を引き付けて行う。
【0004】
基板101に蒸着マスク102を密着させた状態で、蒸着源105から蒸発させた蒸着粒子流を蒸着マスク102の開口部103を通して基板101に蒸着させ、有機材料の薄膜層107を形成する。このとき、蒸着マスク102の開口部103以外の表面にも薄膜層107が形成される。
【0005】
しかし、蒸着マスク102を基板101の全面にわたって完全に密着させることは困難であり、蒸着マスク102との接触による基板101の損傷や、接触面の異物の影響が大きい。これらは、マスク蒸着をOLEDの量産に適用する上で大きな障害となっている。
【0006】
この種のマスク蒸着による有機EL基板へのOLED膜形成に関するものとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8を挙げることができる。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、基板と蒸着マスクとを磁力による密着させて蒸着を行う方法に関して開示がある。また、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8には、基板あるいは蒸着マスクに突起やリブあるいは凹凸や粗面化を施すことで接触面積を小さくし、両者の接触による基板のダメージを低減させたものが開示されている。
【特許文献1】特開2004―146251号公報
【特許文献2】特開2004― 79349号公報
【特許文献3】特開2002― 47560号公報
【特許文献4】特開2002― 75638号公報
【特許文献5】特開2004― 71554号公報
【特許文献6】特開2003― 59671号公報
【特許文献7】特開2003―213401号公報
【特許文献8】特開2003―253434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板に蒸着マスクを密着させて有機ELの発光層等の有機膜を該基板の所定部分に蒸着する従来の方法では、(1)基板上に蒸着マスクが密着するため、成膜したOLED膜等の有機膜に損傷を与え易い。(2)基板と蒸着マスクに対し連続的に成膜がなされるため、蒸着マスクと基板とを引き離す時に膜剥がれが発生し、これが異物発生の原因となる。(3)基板と蒸着マスクの熱膨張係数差の影響を受け易く、基板と蒸着マスクとが擦れて損傷発生や異物発生の原因となる。(4)蒸着マスクを基板全体に渡って完全に密着させることは困難であるため、蒸着精度の基板内分布が大きくなったり、微細パターン部が捩れたりすることも多くなる。
【0008】
前記特許文献に開示された対策のうち、基板上にリブや突起を設ける方法は当該基板のコストを押し上げる。また、機械的ダメージ低減効果は小さい。蒸着マスクの表面に凹凸を設ける方法は蒸着マスクの作製が困難で、蒸着パターン精度を確保するのが難しい。いずれの場合も、表示パネルの有効エリアで基板と蒸着マスクとは密着しており、この部分でのOLED膜等の有機膜の損傷や異物の発生を抑制することは難しい。なお、蒸着マスクと基板を離しながら蒸着する方法もあるが、この方法では蒸着マスクと基板の位置合わせが非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は、基板や有機膜に損傷を与えることなく、高精度で所望の有機膜等を成膜可能とした有機EL表示パネルの製造方法と、この方法で製造した有機EL表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者等は、OLED膜等の有機膜形成用蒸着マスクの開発過程において、蒸着マスクに用いるマスク形成用基材シートの板厚方向の構造を工夫することにより、ホトリソグラフィプロセスでの露光工程におけるプロキシミティー露光に類似したマスク蒸着が可能であることを見出し、これに基づいて本発明を構成したものである
【0011】
本発明は、1枚の大サイズの母基板から小形サイズの表示パネルを多数個形成できる蒸着マスクを対象とする。基本的には蒸着マスクと基板を密着させるが、それぞれの表示パネルが存在する領域では蒸着マスクと基板を接触させないようにしてOLED膜等の有機薄膜の蒸着を行う。
【0012】
本発明の有機EL表示パネルの製造に用いる蒸着マスクは、その表示パネルを形成する領域に対面する蒸着マスクを基板の面から後退させた凹面として、蒸着マスクが基板に接触しないようにする。この凹面内の底面となる領域にOLEDの発光層等の有機薄膜を蒸着するための必要な開口部を設ける。
【0013】
本発明の有機EL表示パネルの製造方法は、有機EL表示パネルを構成する基板の表面に、所定パターンの開口部を有する蒸着マスクを密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記所定パターンに応じた薄膜パターンを形成する有機EL表示素子の製造方法である。そして、前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内の底面に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記薄膜パターンを蒸着することを特徴とする。
【0014】
本発明の有機EL表示パネルは、基板上に、少なくとも、一方の電極と発光層を含む有機層および他方の電極とを順次積層して形成される。そして、前記有機層が、当該有機層のパターンに対応した開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記有機層を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、特許請求の範囲に記載された構成、および後述する実施の形態に開示される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0016】
基板上にOLEDの発光層パターンを形成する場所において、蒸着マスクと回路基板は密着していないことから、基板上に形成したOLEDの発光層等の薄膜の蒸着マスクによる損傷はない。これにより、蒸着マスクによるOLEDの発光層等の薄膜の特性劣化が抑制される。
【0017】
既に形成したOLEDの発光層等の薄膜と蒸着マスクとが接触しないことから、位置合わせでの接触に起因する膜剥がれによる異物発生が抑制される。これにより、製造歩留りを向上させることができる。
【0018】
基板上の薄膜層と蒸着マスク上の薄膜層とが連続しないため、蒸着マスクと基板の引き剥がし時の膜剥がれによる異物発生が抑制される。
【0019】
蒸発源と基板の間に蒸着マスクが存在し、基板と蒸着マスクの接触面積が小さいことから、基板の温度上昇を抑制できる。従って、低熱膨張材料により蒸着マスクを作製することにより、蒸着工程における蒸着マスクパターンと回路基板の位置ずれを抑制できる。これにより、蒸発源からの熱輻射の影響を受けにくくなるため、蒸着マスクと基板の位置合わせ精度を高<することができる。さらに、蒸着マスクが成膜面に接していないことから、成膜に伴う異常放電等を抑制でき、スパッタ成膜やCVD成膜への適用も可能となる。
【0020】
このように、本発明によれば、OLED層へのダメージがな<、異物発生が抑制できることから、製品の特性向上、歩留り向上、製造原価低減に大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について実施例の図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例1を説明する模式図である。基板101は有機EL表示パネルを構成するTFT基板で、ガラス板で構成される母基板を示す。ここでは、基板101から紙面横方向にn個(図1では4個)、紙面に垂直な方向にm個)のn×m個の小型パネルすなわち個々の有機EL表示パネル(単に表示パネルとも称する)を製作するものとする。図1には、表示パネルの有効領域をパネルパターン部24(24a、24b、24c、24d)として示す。
【0023】
基板101の主面側には、開口部103を有する蒸着マスク21を配置させた状態で蒸着を行う。実施例1では、蒸着マスク21はマスクフレーム22に接着剤、あるいは溶接により固定されている。蒸着マスク21の開口部103は基板101の表面から後退した凹面内の底面に設けられ、基板101の間にギャップ空間(間隙)23が形成されている。このギャップ空間23以外では蒸着マスク21と基板101の両者は密着している。
【0024】
蒸着源105から蒸発させた蒸着粒子流106は、蒸着マスク21の各パネルパターン部24(24a、24b、24c、24d)の開口部103を通して基板101の主面に蒸着され、有機材料の薄膜層を形成する。なお、図1では、蒸着マスクと基板の上に形成された薄膜層は省略した。
【0025】
マスクフレーム22の構成材料としては、インバーや42アロイ等の鉄系合金、またはアルミニウムを主成分としたものを用いることができる。これらの中から、成膜する基板101や蒸着マスク21の材質を考慮して選択する。
【0026】
マグネット板104は、蒸着マスク21と基板101を密着させる働きをする。この場合、蒸着マスク2の全部または一部を磁性体材料で作製したものを用いる。
【0027】
図2、図3、図6は、図1に示した蒸着マスク21で形成される表示パネルのパネルパターン部24を拡大した断面図であり、本発明による蒸着マスクの板厚方向の種々の構造例を示す。また、図4、図5、図7は、図2、図3、図6に示した構造を有する各蒸着マスクの製造プロセスの説明図である。
【0028】
蒸着マスク21と基板101とは基本的には密着させるが、蒸着マスク21の表示パネルの有効領域を作製する部分であるパネルパターン部24(24a〜24d)では、蒸着マスク21と基板101の間にギャップ空間23を形成し、このパネルパターン部24(24a〜24d)では蒸着マスク21と基板101を接触させない。
【0029】
蒸着マスク21のギャップ空間23を形成するパネルパターン部24(24a〜24d)に有機層パターン形成のための開口部103を形成する。該開口部103を通して有機薄膜層107を成する。従って、基板101上に形成される有機薄膜層107と蒸着マスク21は非接触となる。
【0030】
そのため、基板101に形成された有機薄膜層107の蒸着マスク21による機械的な損傷は発生しない。また、基板101上の有機薄膜層107と蒸着マスク21上の有機薄膜層107が連続していないため、蒸着マスク21と基板101の引き剥がし時の膜剥がれによる異物発生も抑制できる。
【0031】
蒸着源105からの輻射熟により、蒸着マスク21と基板101の温度は上昇する。しかし、蒸着マスク21と基板101は表示パネル形成部分(すなわち、表示パネルの有効領域形成部)であるパネルパターン部24で非接触となっており、接触面積が小さいため、基板101の温度上昇を小さくできる。さらに、蒸着マスク21を低熟膨張材料(インバー、スーパーインバー等)で作製することにより、蒸着マスク21と基板101のパターン位置ずれを抑制できる。例えば、基板101が無アルカリガラスで、蒸着マスク21がインバーである場合は、3ppm/℃の熱膨張係数差が生じるが、基板101の温度を蒸着マスク21の温度より約3℃低くすることによって温度上昇による位置合わせずれを抑制できる。
【0032】
図2に示した蒸着マスクの第1構成例は単一部材で蒸着マスクを構成したものである。蒸着マスク21を構成する部材としては、鉄‐ニッケル系合金やニッケル等を用いることができる。蒸着マスク21の製造にはエッチングやめっき法を用いることができる。表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を構成する部材32にはテンションを付与して緩まないようにする。
【0033】
有機薄膜層107は基板101と蒸着マスク21上に形成されているが、基板101と蒸着マスク21上では連続しておらず、蒸着マスク21を基板101から引き離す際の膜切断がないため、異物発生を防止できる。
【0034】
基板101と蒸着マスク21は接触場所25で密着させる必要があるため、蒸着マスク21を磁性体で構成し、基板101の背面に設置したマグネット板104で吸着する。かかる方法によれば、基板101と蒸着マスク21をマグネット板104により密着させることができ、基板101と蒸着マスク21のずれを防止することができ、基板と蒸着マスクの位置合わせ精度を高くできる。
【0035】
図3は、蒸着マスク第2構成例を説明する図2と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。図3も、図1の蒸着マスク21内の表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を拡大したもので、蒸着マスク21の板厚方向の構造例を示す。
【0036】
この蒸着マスク21は2つの部材31、32の積層構造となっている。第1部材31と第2部材32は、インバーや42アロイ等の鉄系合金やニッケル合金等から選択されるが、蒸着マスクに要求される仕様や加工性を考慮してその組み合わせを選択する。
【0037】
図3に示した構成の蒸着マスクは、図2に示した構成の蒸着マスクと同じ効果を得ることができるが、2つの部材31と部材32の材質を調整することにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、2つの部材31と32を選択エッチング可能な材質とすることにより、ギャップ空間23や開口部103の加工精度を図2に示した構成例より高くすることができる。その組み合わせの例として、ニッケルを主成分とするニッケル系合金と鉄を主成分とする鉄系合金(インバー、42アロイ等)がある。
【0038】
基板101と蒸着マスク21が密着する部分(接触場所25)を磁性体で構成し、ギャップ空間23と接する部分を非磁性体で構成することができる。これにより、磁石104による表示パネル形成部24の歪みや変形を抑制しながら、基板101と蒸着マスク21の密着性をあげることができる。ギャップ空間23の構造は第1部材31の厚み分基板101の表面から後退した凹面部で形成され、凹面部の底面に開口部103が形成される。
【0039】
基板101と蒸着マスク21が密着する部分よりもギャップ空間23と接する部分の熱膨張係数を小さくすることにより、温度上昇による小形パネル形成部24の蒸着マスク21の変形やたるみを防止することができる。その組み合わせ例の1つとしては、第2部材32をインバー、第1部材31を42アロイとすることができる。
【0040】
図4は、図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの1例を説明する図である。蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。
【0041】
(A)・・・第1部材31(インバーあるいはスーパーインバー)と第2部材32(42アロイ)からなるマスクシート部材70の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。部材31の板厚を例えば0.005mmとし、部材32の板厚を0.015〜O.050mmとする。
【0042】
(B)・・・第2部材32上に所定のレジストパターン71を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には周知のホトリソグラフィ法を用いることができる。なお、第1部材31の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。
【0043】
(C)・・・第2部材32を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部72を形成する。
【0044】
(D)・・・第2部材32上に形成したレジストパターン71と第1部材31上に形成した保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0045】
(E)・・・第1部材31上に所定のレジストパターン73を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成は(7B)と同様でよい。なお、第2部材32の表直には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。
【0046】
(F)・・・第1部材31を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部74を形成する。
【0047】
(G)・・・第2部材32上に形成したレジストパターン73と保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0048】
これにより、図3に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との閲で形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が形成される。
【0049】
図5は、図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの他例を説明する図である。この蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。
【0050】
この製造方法は、めっき法とエッチング法を組み合わせたものである。ここでは、部材32をめっき法で形成し、第1部材31をエッチング法で加工しているが、この逆でも差し支えない。
【0051】
(A)・・・インバー等からなるマスクシート母材80の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。マスクシート母材80の板厚は、蒸着マスクの機械強度や寸法精度を考慮し、例えば0.005〜0.050mmとする。
【0052】
(B)・・・マスクシート母材80の一方の主表面上に所定のレジストパターン81を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には前記と同様、周知の方法を用いれば良い。なお、マスクシート母材80の他方の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(C)において、保護膜形成面へのめっき層の形成を防止する。
【0053】
(C)・・・周知のめっき法により、ニッケル(Ni)を主成分とするめっき層82を形成する。
【0054】
(D)・・・マスクシート母材80上に形成したレジストパターン81と保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、蒸着マスク21を構成する部材32が形成される。部材32には蒸着を行うための開口部103が形成される。
【0055】
(E)・・・マスクシート母材80の前記めっき層82を形成していない面上に所定のレジストパターン83を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には周知の方法を用いれば良い。なお、めっき層82から構成される部材32の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。これにより、部材32の表面を工程(F)でのエッチング液から保護する。
【0056】
(F)・・・マスクシート母材80を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部84を形成する。
【0057】
(G)・・・マスクシート母材80上に形成したレジストパターン83と第2部材32上の保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、図3に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との間に形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が設けられている。
【0058】
図6は、蒸着マスク第3構成例を説明する図2や図3と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。図6も、図1の蒸着マスク21内の表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を拡大したもので、蒸着マスク21の板厚方向の構造例を示す。
【0059】
この蒸着マスク21は3つの第1部材41、第2部材42、第3部材43により構成されている。第1部材41、第2部材42はインバーあるいは42アロイ等の鉄系合金やニッケル合金等から選択されるが、蒸着マスクに要求される仕様や加工性を考慮してその組み合わせを選択する。
【0060】
第3部材43は第1部材41と第2部材42を固定する接着剤で、第1部材41、第2部材42を加工して蒸着マスクを作製する際のバリア層として働く。これを構成する材料はその目的に合わせて選択すればよく、好適材料としてはチタン(Ti)やニッケル(Ni)などがある。
【0061】
この構成例の場合でも、図3に示した実施例で得られた効果を得ることができる。得られる効果は図3に示した第2構成例より大きい。また、第3部材43を第1部材41と第2部材42の間に挿入することにより、下記の効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、第3部材43にバリア層としての機能を持たせることにより、第1部材41、第2部材42それぞれの加工信頼性を確保できるようになるため、選択基準を緩めることができ、第1部材41と第2部材42を同一材料にすることも可能となる。また、第3部材43により蒸着用開口部を第1部材41により例えばギャップ空間23を形成し、第2部材42を蒸着マスク21の補強材とすることにより、微細パターンとしての機械的強度を高めた蒸着マスク21を得ることができる。
【0063】
図7は、図6に示した表示パネル形成部24を有する蒸着マスクの製造工程を説明する図である。この蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。この製造方法ではエッチンゲ法を用いているが、めっきとの組み合わせも可能である。
【0064】
(A)・・・第1部材41と第2部材42の間に第3部材43を挿入したマスクシート部材90の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。第1部材41と第2部材42として、インバーや42アロイ等の鉄系合金を用いる。中間層とする第3部材43としてはチタン(Ti)やニッケル(Ni)等の高融点金属を用いる。第1部材41の板厚を例えば0.005mmとし、第2部材42の板厚を0.015〜0.050mmとする。第3部材43の厚みは0.001〜0.01mmとする。
【0065】
(B)・・・第1部材42上に所定のレジストパターン91を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には前記と同様に、周知の方法を用いれば良い。なお、第1部材41の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(9C)において、保護膜形成面のエッチング液による損傷を防止する。
【0066】
(C)・・・第1部材42を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部92を形成する。この際、第3部材43はエッチング液から第1部材41を保護する。
【0067】
(D)・・・第2部材42上に形成したレジストパターン91と第1部材41上に形成した保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0068】
(E)・・・第1部材41上に所定のレジストパターン93を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また,レジストパターン形成には周知の方法を用いれば良い。なお、第2部材42の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(9F)において、保護膜形成面のエッチング液による損傷を防止する。
【0069】
(F)・・・第1部材41を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工する。この際、第3部材43はエッチング液から第2部材42を保護する。次いで、所定のエッチング液により第3部材43を除去する。これにより、第2部材42と第3部材43に開口部94を形成する。
【0070】
(G)・・・第1部材41上に形成したレジストパターン93と第2部材42上の保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、図4に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との間で形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が設けられている。
【実施例2】
【0071】
図8は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例2を説明する模式図である。図8には、実施例2における蒸着マスクの構造例と該蒸着マスクによる蒸着パターン形成方法の概略を示す。なお、蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。この実施例では、蒸着マスク51は固定のためのマスクフレームを有しない。この点が実施例1と異なる。他の構成は実施例1と同様である。
【0072】
蒸着マスク51と基板101はマグネット104の吸着力により密着されている。この実施例でも、ギャップ空聞23を介して蒸着パターンが形成されるため、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、マスクフレームに固定されるものでないため、マスクフレームヘの貼付けに関する技術課題もなくなる。蒸着マスクの板厚方向の断面構造は図2、図3、図6の何れでも差し支えない。
【0073】
蒸着マスク51は補強支持するマスクフレームを有しないため、十分な強度を確保し、弛みも抑制しなければならない。そのため、蒸着マスク51の板厚を厚くする必要があり、蒸着マスクの解像度が実施例1に比べて若干低下する。しかし、部品点数が削減でき、蒸着マスクの製造コスト低減に効果がある。
【実施例3】
【0074】
図9は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例3を説明する模式図である。図9は実施例3における蒸着マスクの構造例と該蒸着マスクによる蒸着パターン形成方法の概略を示す。なお、蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。
【0075】
実施例3も、実施例2と同じく、蒸着マスク61はマスクフレームに固定していない。この点が実施例1と異なる。蒸着マスク61と基板101はマグネット104の吸引力により密着されている。実施例3では、蒸着マスク61の基板101と密着する部分65の板厚を厚くすることにより、実施例2に比較して機械的強度が改善されている。このため、実施例2で得られた効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0076】
実施例3は、実施例2に比べて機械的強度が高い。蒸着マスク61をマスクフレームに固定する構造でないため、マスクフレームヘの貼付けに関する技術課題もなくなる。また、部品点数が削減されるため、蒸着マスクの製造コスト低減に効果がある。
【0077】
なお、この蒸着マスク61として、前記図6で説明したような3層構造とすることが望ましい。蒸着マスク61を3層構造とすることで、第3部材43により蒸着パターン形成用の開口部103を第1部材41と第2部材42の一方で基板101とのギャップ空間23を、他方で機械的補強することにより、以下のような効果を得ることができる。
【0078】
蒸着パターンの解像度をあげることが可能となる。ギャップ空間23における基板101と蒸着マスク61の間隔を自由に設計できる。マスクフレームをなくすことができる。これらにより、マスク蒸着プロセスのコスト低減に大き<寄与する。
【実施例4】
【0079】
図10は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例4を説明する模式図である。蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。実施例4は、基本的には実施例1と同じ構造であるが、実施例1との相違点は、蒸着パターンを形成する開口部103が微細開口部ではなく、各表示パネルのパネルパターン領域24(24a〜24d)に対応した大きな開口部となっていることにある。開口部103はギャップ空間23を形成する凹面部よりも若干狭く形成されているが、両者が同一のサイズであってもよい。実施例4は、モノカラー用OLED膜(エリアカラー含む)や電極膜保護膜の成膜に適している。
【0080】
実施例4は、寸法精度の高くない領域の成膜に好適であり、実施例1と同一の効果を得ることができる。成膜面において基板101と蒸着マスク21は接していないことから、荷電粒子の影響が大きいスパッタ法やCVD法等の化学蒸着法にも適用できる。この場合、ギャップ空間23における基板101と蒸着マスク21の距離を大きくし、蒸着マスク内開口部103を複数個形成するのも有効である。この場合、荷電粒子に対するシールド効果が期待できる。
【0081】
また、高い寸法精度が要求されないことから、蒸着マスク21を厚くできることから、高い機械強度を確保でき、マスクフレーム22無しでの運用が容易となる。そして、低コスト化に貢献できる。なお、蒸着マスク21の板厚方向の断面構造は、図2、図3、図6に示したものの何れを用いてもよい。
【0082】
図11は、図1乃至図9で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの有機発光層の一例を説明する模式図である。ここでは、基板101上に赤色素子R、緑色素子G、青色素子BからなるOLEDのストライプパターンを形成した状態を示す。図11の(A)は基板101上に複数の表示パネル24を形成した様子を示す。図11の(B)は表示パネル24の一部拡大図である。OLEDの赤色素子R、緑色素子G、青色素子Bがストライプパターン状に形成されている。図11の(C)は同(B)に示した表示パネル24の一部を拡大して示した断面図である。
【0083】
実施例1乃至実施例3で説明した蒸着マスクはOLEDの発光層等の有機膜131のマスク蒸着(3色色分け方式)に適用できる。ギャップ空間23における基板101と蒸着マスクの間の距離が大きくなるとパターン周辺がボケてくる。このボケる領域の大きさを考慮してギャップ空間23における基板101と蒸着マスクの間の距離を定める必要がある。
【0084】
図12は、実施例4で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの電極膜の一例を説明する模式図である。ここでは、基板101上にアルミニウム(Al)からなる電極膜141をマスク蒸着により形成したものである。図12の(A)は基板101上に実施例4で説明した蒸着マスクにより表示パネルの電極膜141を形成した様子を示す。図12の(B)は同(A)のA‐B線に沿った電極膜141の蒸着パターンを有する基板101の断面図である。この蒸着パターンは表示パネルの有効領域に対応している。電極膜141は、例えば陽極である。このように、本発明による蒸着マスクはOLED用電極(Al等)の成膜に適用でき、またその他パターン精度の要求されないモノクロパターン用OLED膜や保護膜の成膜にも適用できる。
【0085】
図13は、基板上に形成された薄膜層の蒸着マスクにより覆われている部分への回り込み量ΔLとギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgの関係を示した図である。本発明によるマスク蒸着では、蒸着マスクに覆われている部分に回り込んで、成膜されてはいけない基板領域にも成膜されてしまう。この回り込む量ΔLは、図13の(B)に示すように、蒸着マスク102の開口部103の縁から薄膜層107がはみでた量として定義する。
【0086】
回り込み量ΔLは、図13の(A)に示すように、ギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgが大きくなるにつれて増大する。回り込み量ΔLはギャップ量Lgに略比例して増加するが、この傾きは蒸発源からの蒸発粒子流の指向性等により調整できる。例えば、精密蒸着マスクの板厚が0.001〜O.05mmである場合、指向性の高い蒸発源を用いることによって図13の(A)の関係を得ることができる。
【0087】
0LEDの発光層のように微細パターンを形成する精密蒸着マスクでは、ギャップ空間23での基板101と蒸着マスクの間のギャップ量Lgを0.05mm以下にすることによって回り込み量ΔLの少ない高精度蒸着パターンを得ることができる。
【0088】
蒸着マスク102と基板101は、ギャップ空間23において接触しなければ差し支えない。成膜時の温度上昇等の影響を考えると、このギャップ空間23の間隔としては0.001mmは確保しておいた方が望ましい。
【0089】
図14は、有機EL表示パネルの構造例を説明する1画素付近の断面図である。この1画素はカラー表示では副画素となる。図14において、ガラスを好適とする基板101の主面にシリコン半導体層110、ゲート電極111、ソース・ドレイン電極112からなる薄膜トランジスタTFTが作り込まれている。薄膜トランジスタTFTはソース電極とドレイン電極を持つが、ここでは、ソース・ドレイン電極112として示した。
【0090】
ソース・ドレイン電極112には、有機EL素子の一方の電極としての陽極113が接続されている。陽極113の上層には絶縁層を有し、この絶縁層の画素部を除去して画素開口部が形成されている。画素開口部を囲んで残る絶縁層はバンク(突堤)を形成し、絶縁層を除去して露呈した陽極113の上に有機EL発光層114が蒸着されている。そして、この有機EL発光層114を覆って他方の電極である陰極115が成膜されている。
【0091】
そして、陽極113、有機EL発光層114、陰極115の積層構造で発光素子ELが構成される。なお、符号116、117、118、119は絶縁層である。符号121は封止板であり、ここではガラス板が用いられているが、金属缶を用いたものもある。また、通常、この封止板121の内側には乾燥剤が内臓されて、有機EL材料の湿気対策がなされている。
【0092】
図14は、有機EL発光層114の発光を基板101側から出射させるボトムエミッション型の所謂有機EL表示パネルである。しかし、本発明は、図14に示したような構造の有機ELに限るものではなく、封止板121側から発光を取り出すトップエミッション型の有機ELにも適用できることは明らかである。その場合の電極構造、電極材料はボトムエミッション型の場合とは若干異なる。これらの有機EL表示パネルの構造は既知である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例1を説明する模式図である。
【図2】蒸着マスク第1構成例を説明する表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図3】蒸着マスク第2構成例を説明する図2と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図4】図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの1例を説明する図である。
【図5】図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの他例を説明する図である。
【図6】蒸着マスク第3構成例を説明する図2や図3と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図7】図6に示した表示パネル形成部を有する蒸着マスクの製造工程を説明する図である。
【図8】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例2を説明する模式図である。
【図9】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例3を説明する模式図である。
【図10】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例4を説明する模式図である
【図11】図1乃至図9で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの有機発行層の一例を説明する模式図である。
【図12】実施例4で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの電極膜の一例を説明する模式図である。
【図13】基板上に形成された薄膜層の蒸着マスクにより覆われている部分への回り込み量△Lとギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgの関係を示した図である。
【図14】有機EL表示パネルの構造例を説明する1画素付近の断面図である。
【図15】蒸着マスクを用いた発光層等の有機膜の形成方法を説明する有機EL表示パネルの製造方法の模式図である。
【符号の説明】
【0094】
101・・・基板、103・・・開口部、104・・・マグネット板、105・・・蒸着源、106・・・蒸着粒子粒、21・・・蒸着マスク、22・・・マスクフレーム、23・・・ギャップ空間、24(24a、24b、24c、24d)・・・パネルパターン部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルに係り、特に蒸着マスクを用いて基板上に蒸着により発光層等の有機薄膜あるいは電極膜を所定のパターンに形成する製造方法に好適なものであり、その蒸着のための蒸着マスクの構造にも特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
通常、低分子系有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示パネル(OLEDとも言う)の形成にはマスク蒸着法が用いられる。このマスク蒸着法では、蒸着精度を上げるために有機ELパネルを構成する表示パネルを構成する基板(例えばTFT回路基板、TFT基板、以下単に基板とも言う)に蒸着マスク(金属材料で構成されるものであるため、メタルマスクとも言う)を密着させて発光層等の有機膜や電極の成膜を行う。なお、有機膜には絶縁膜も含む。また、本発明は有機膜に限らず、電極膜の成膜にも適用できるものであるが、以下では、主として有機発光層の成膜について説明する。
【0003】
図15は、蒸着マスクを用いた発光層等の有機膜の形成方法を説明する有機EL表示パネルの製造方法の模式図である。図15において、基板101は有機EL表示パネルを構成するTFT基板を示す。この基板には、通常はガラス板が使用される。基板101の主表面(有機発光層の形成面)側に開口部103を有する蒸着マスク102を密着させた状態で蒸着を行う。この密着は、基板101の背面(主面と反対面)にマグネット板104を貼り合わせることで、磁性体金属で構成された蒸着マスク102を引き付けて行う。
【0004】
基板101に蒸着マスク102を密着させた状態で、蒸着源105から蒸発させた蒸着粒子流を蒸着マスク102の開口部103を通して基板101に蒸着させ、有機材料の薄膜層107を形成する。このとき、蒸着マスク102の開口部103以外の表面にも薄膜層107が形成される。
【0005】
しかし、蒸着マスク102を基板101の全面にわたって完全に密着させることは困難であり、蒸着マスク102との接触による基板101の損傷や、接触面の異物の影響が大きい。これらは、マスク蒸着をOLEDの量産に適用する上で大きな障害となっている。
【0006】
この種のマスク蒸着による有機EL基板へのOLED膜形成に関するものとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8を挙げることができる。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、基板と蒸着マスクとを磁力による密着させて蒸着を行う方法に関して開示がある。また、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8には、基板あるいは蒸着マスクに突起やリブあるいは凹凸や粗面化を施すことで接触面積を小さくし、両者の接触による基板のダメージを低減させたものが開示されている。
【特許文献1】特開2004―146251号公報
【特許文献2】特開2004― 79349号公報
【特許文献3】特開2002― 47560号公報
【特許文献4】特開2002― 75638号公報
【特許文献5】特開2004― 71554号公報
【特許文献6】特開2003― 59671号公報
【特許文献7】特開2003―213401号公報
【特許文献8】特開2003―253434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板に蒸着マスクを密着させて有機ELの発光層等の有機膜を該基板の所定部分に蒸着する従来の方法では、(1)基板上に蒸着マスクが密着するため、成膜したOLED膜等の有機膜に損傷を与え易い。(2)基板と蒸着マスクに対し連続的に成膜がなされるため、蒸着マスクと基板とを引き離す時に膜剥がれが発生し、これが異物発生の原因となる。(3)基板と蒸着マスクの熱膨張係数差の影響を受け易く、基板と蒸着マスクとが擦れて損傷発生や異物発生の原因となる。(4)蒸着マスクを基板全体に渡って完全に密着させることは困難であるため、蒸着精度の基板内分布が大きくなったり、微細パターン部が捩れたりすることも多くなる。
【0008】
前記特許文献に開示された対策のうち、基板上にリブや突起を設ける方法は当該基板のコストを押し上げる。また、機械的ダメージ低減効果は小さい。蒸着マスクの表面に凹凸を設ける方法は蒸着マスクの作製が困難で、蒸着パターン精度を確保するのが難しい。いずれの場合も、表示パネルの有効エリアで基板と蒸着マスクとは密着しており、この部分でのOLED膜等の有機膜の損傷や異物の発生を抑制することは難しい。なお、蒸着マスクと基板を離しながら蒸着する方法もあるが、この方法では蒸着マスクと基板の位置合わせが非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は、基板や有機膜に損傷を与えることなく、高精度で所望の有機膜等を成膜可能とした有機EL表示パネルの製造方法と、この方法で製造した有機EL表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者等は、OLED膜等の有機膜形成用蒸着マスクの開発過程において、蒸着マスクに用いるマスク形成用基材シートの板厚方向の構造を工夫することにより、ホトリソグラフィプロセスでの露光工程におけるプロキシミティー露光に類似したマスク蒸着が可能であることを見出し、これに基づいて本発明を構成したものである
【0011】
本発明は、1枚の大サイズの母基板から小形サイズの表示パネルを多数個形成できる蒸着マスクを対象とする。基本的には蒸着マスクと基板を密着させるが、それぞれの表示パネルが存在する領域では蒸着マスクと基板を接触させないようにしてOLED膜等の有機薄膜の蒸着を行う。
【0012】
本発明の有機EL表示パネルの製造に用いる蒸着マスクは、その表示パネルを形成する領域に対面する蒸着マスクを基板の面から後退させた凹面として、蒸着マスクが基板に接触しないようにする。この凹面内の底面となる領域にOLEDの発光層等の有機薄膜を蒸着するための必要な開口部を設ける。
【0013】
本発明の有機EL表示パネルの製造方法は、有機EL表示パネルを構成する基板の表面に、所定パターンの開口部を有する蒸着マスクを密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記所定パターンに応じた薄膜パターンを形成する有機EL表示素子の製造方法である。そして、前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内の底面に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記薄膜パターンを蒸着することを特徴とする。
【0014】
本発明の有機EL表示パネルは、基板上に、少なくとも、一方の電極と発光層を含む有機層および他方の電極とを順次積層して形成される。そして、前記有機層が、当該有機層のパターンに対応した開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記有機層を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、特許請求の範囲に記載された構成、および後述する実施の形態に開示される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0016】
基板上にOLEDの発光層パターンを形成する場所において、蒸着マスクと回路基板は密着していないことから、基板上に形成したOLEDの発光層等の薄膜の蒸着マスクによる損傷はない。これにより、蒸着マスクによるOLEDの発光層等の薄膜の特性劣化が抑制される。
【0017】
既に形成したOLEDの発光層等の薄膜と蒸着マスクとが接触しないことから、位置合わせでの接触に起因する膜剥がれによる異物発生が抑制される。これにより、製造歩留りを向上させることができる。
【0018】
基板上の薄膜層と蒸着マスク上の薄膜層とが連続しないため、蒸着マスクと基板の引き剥がし時の膜剥がれによる異物発生が抑制される。
【0019】
蒸発源と基板の間に蒸着マスクが存在し、基板と蒸着マスクの接触面積が小さいことから、基板の温度上昇を抑制できる。従って、低熱膨張材料により蒸着マスクを作製することにより、蒸着工程における蒸着マスクパターンと回路基板の位置ずれを抑制できる。これにより、蒸発源からの熱輻射の影響を受けにくくなるため、蒸着マスクと基板の位置合わせ精度を高<することができる。さらに、蒸着マスクが成膜面に接していないことから、成膜に伴う異常放電等を抑制でき、スパッタ成膜やCVD成膜への適用も可能となる。
【0020】
このように、本発明によれば、OLED層へのダメージがな<、異物発生が抑制できることから、製品の特性向上、歩留り向上、製造原価低減に大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について実施例の図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例1を説明する模式図である。基板101は有機EL表示パネルを構成するTFT基板で、ガラス板で構成される母基板を示す。ここでは、基板101から紙面横方向にn個(図1では4個)、紙面に垂直な方向にm個)のn×m個の小型パネルすなわち個々の有機EL表示パネル(単に表示パネルとも称する)を製作するものとする。図1には、表示パネルの有効領域をパネルパターン部24(24a、24b、24c、24d)として示す。
【0023】
基板101の主面側には、開口部103を有する蒸着マスク21を配置させた状態で蒸着を行う。実施例1では、蒸着マスク21はマスクフレーム22に接着剤、あるいは溶接により固定されている。蒸着マスク21の開口部103は基板101の表面から後退した凹面内の底面に設けられ、基板101の間にギャップ空間(間隙)23が形成されている。このギャップ空間23以外では蒸着マスク21と基板101の両者は密着している。
【0024】
蒸着源105から蒸発させた蒸着粒子流106は、蒸着マスク21の各パネルパターン部24(24a、24b、24c、24d)の開口部103を通して基板101の主面に蒸着され、有機材料の薄膜層を形成する。なお、図1では、蒸着マスクと基板の上に形成された薄膜層は省略した。
【0025】
マスクフレーム22の構成材料としては、インバーや42アロイ等の鉄系合金、またはアルミニウムを主成分としたものを用いることができる。これらの中から、成膜する基板101や蒸着マスク21の材質を考慮して選択する。
【0026】
マグネット板104は、蒸着マスク21と基板101を密着させる働きをする。この場合、蒸着マスク2の全部または一部を磁性体材料で作製したものを用いる。
【0027】
図2、図3、図6は、図1に示した蒸着マスク21で形成される表示パネルのパネルパターン部24を拡大した断面図であり、本発明による蒸着マスクの板厚方向の種々の構造例を示す。また、図4、図5、図7は、図2、図3、図6に示した構造を有する各蒸着マスクの製造プロセスの説明図である。
【0028】
蒸着マスク21と基板101とは基本的には密着させるが、蒸着マスク21の表示パネルの有効領域を作製する部分であるパネルパターン部24(24a〜24d)では、蒸着マスク21と基板101の間にギャップ空間23を形成し、このパネルパターン部24(24a〜24d)では蒸着マスク21と基板101を接触させない。
【0029】
蒸着マスク21のギャップ空間23を形成するパネルパターン部24(24a〜24d)に有機層パターン形成のための開口部103を形成する。該開口部103を通して有機薄膜層107を成する。従って、基板101上に形成される有機薄膜層107と蒸着マスク21は非接触となる。
【0030】
そのため、基板101に形成された有機薄膜層107の蒸着マスク21による機械的な損傷は発生しない。また、基板101上の有機薄膜層107と蒸着マスク21上の有機薄膜層107が連続していないため、蒸着マスク21と基板101の引き剥がし時の膜剥がれによる異物発生も抑制できる。
【0031】
蒸着源105からの輻射熟により、蒸着マスク21と基板101の温度は上昇する。しかし、蒸着マスク21と基板101は表示パネル形成部分(すなわち、表示パネルの有効領域形成部)であるパネルパターン部24で非接触となっており、接触面積が小さいため、基板101の温度上昇を小さくできる。さらに、蒸着マスク21を低熟膨張材料(インバー、スーパーインバー等)で作製することにより、蒸着マスク21と基板101のパターン位置ずれを抑制できる。例えば、基板101が無アルカリガラスで、蒸着マスク21がインバーである場合は、3ppm/℃の熱膨張係数差が生じるが、基板101の温度を蒸着マスク21の温度より約3℃低くすることによって温度上昇による位置合わせずれを抑制できる。
【0032】
図2に示した蒸着マスクの第1構成例は単一部材で蒸着マスクを構成したものである。蒸着マスク21を構成する部材としては、鉄‐ニッケル系合金やニッケル等を用いることができる。蒸着マスク21の製造にはエッチングやめっき法を用いることができる。表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を構成する部材32にはテンションを付与して緩まないようにする。
【0033】
有機薄膜層107は基板101と蒸着マスク21上に形成されているが、基板101と蒸着マスク21上では連続しておらず、蒸着マスク21を基板101から引き離す際の膜切断がないため、異物発生を防止できる。
【0034】
基板101と蒸着マスク21は接触場所25で密着させる必要があるため、蒸着マスク21を磁性体で構成し、基板101の背面に設置したマグネット板104で吸着する。かかる方法によれば、基板101と蒸着マスク21をマグネット板104により密着させることができ、基板101と蒸着マスク21のずれを防止することができ、基板と蒸着マスクの位置合わせ精度を高くできる。
【0035】
図3は、蒸着マスク第2構成例を説明する図2と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。図3も、図1の蒸着マスク21内の表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を拡大したもので、蒸着マスク21の板厚方向の構造例を示す。
【0036】
この蒸着マスク21は2つの部材31、32の積層構造となっている。第1部材31と第2部材32は、インバーや42アロイ等の鉄系合金やニッケル合金等から選択されるが、蒸着マスクに要求される仕様や加工性を考慮してその組み合わせを選択する。
【0037】
図3に示した構成の蒸着マスクは、図2に示した構成の蒸着マスクと同じ効果を得ることができるが、2つの部材31と部材32の材質を調整することにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、2つの部材31と32を選択エッチング可能な材質とすることにより、ギャップ空間23や開口部103の加工精度を図2に示した構成例より高くすることができる。その組み合わせの例として、ニッケルを主成分とするニッケル系合金と鉄を主成分とする鉄系合金(インバー、42アロイ等)がある。
【0038】
基板101と蒸着マスク21が密着する部分(接触場所25)を磁性体で構成し、ギャップ空間23と接する部分を非磁性体で構成することができる。これにより、磁石104による表示パネル形成部24の歪みや変形を抑制しながら、基板101と蒸着マスク21の密着性をあげることができる。ギャップ空間23の構造は第1部材31の厚み分基板101の表面から後退した凹面部で形成され、凹面部の底面に開口部103が形成される。
【0039】
基板101と蒸着マスク21が密着する部分よりもギャップ空間23と接する部分の熱膨張係数を小さくすることにより、温度上昇による小形パネル形成部24の蒸着マスク21の変形やたるみを防止することができる。その組み合わせ例の1つとしては、第2部材32をインバー、第1部材31を42アロイとすることができる。
【0040】
図4は、図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの1例を説明する図である。蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。
【0041】
(A)・・・第1部材31(インバーあるいはスーパーインバー)と第2部材32(42アロイ)からなるマスクシート部材70の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。部材31の板厚を例えば0.005mmとし、部材32の板厚を0.015〜O.050mmとする。
【0042】
(B)・・・第2部材32上に所定のレジストパターン71を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には周知のホトリソグラフィ法を用いることができる。なお、第1部材31の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。
【0043】
(C)・・・第2部材32を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部72を形成する。
【0044】
(D)・・・第2部材32上に形成したレジストパターン71と第1部材31上に形成した保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0045】
(E)・・・第1部材31上に所定のレジストパターン73を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成は(7B)と同様でよい。なお、第2部材32の表直には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。
【0046】
(F)・・・第1部材31を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部74を形成する。
【0047】
(G)・・・第2部材32上に形成したレジストパターン73と保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0048】
これにより、図3に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との閲で形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が形成される。
【0049】
図5は、図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの他例を説明する図である。この蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。
【0050】
この製造方法は、めっき法とエッチング法を組み合わせたものである。ここでは、部材32をめっき法で形成し、第1部材31をエッチング法で加工しているが、この逆でも差し支えない。
【0051】
(A)・・・インバー等からなるマスクシート母材80の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。マスクシート母材80の板厚は、蒸着マスクの機械強度や寸法精度を考慮し、例えば0.005〜0.050mmとする。
【0052】
(B)・・・マスクシート母材80の一方の主表面上に所定のレジストパターン81を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には前記と同様、周知の方法を用いれば良い。なお、マスクシート母材80の他方の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(C)において、保護膜形成面へのめっき層の形成を防止する。
【0053】
(C)・・・周知のめっき法により、ニッケル(Ni)を主成分とするめっき層82を形成する。
【0054】
(D)・・・マスクシート母材80上に形成したレジストパターン81と保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、蒸着マスク21を構成する部材32が形成される。部材32には蒸着を行うための開口部103が形成される。
【0055】
(E)・・・マスクシート母材80の前記めっき層82を形成していない面上に所定のレジストパターン83を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には周知の方法を用いれば良い。なお、めっき層82から構成される部材32の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。これにより、部材32の表面を工程(F)でのエッチング液から保護する。
【0056】
(F)・・・マスクシート母材80を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部84を形成する。
【0057】
(G)・・・マスクシート母材80上に形成したレジストパターン83と第2部材32上の保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、図3に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との間に形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が設けられている。
【0058】
図6は、蒸着マスク第3構成例を説明する図2や図3と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。図6も、図1の蒸着マスク21内の表示パネル形成部分すなわちパネルパターン部24を拡大したもので、蒸着マスク21の板厚方向の構造例を示す。
【0059】
この蒸着マスク21は3つの第1部材41、第2部材42、第3部材43により構成されている。第1部材41、第2部材42はインバーあるいは42アロイ等の鉄系合金やニッケル合金等から選択されるが、蒸着マスクに要求される仕様や加工性を考慮してその組み合わせを選択する。
【0060】
第3部材43は第1部材41と第2部材42を固定する接着剤で、第1部材41、第2部材42を加工して蒸着マスクを作製する際のバリア層として働く。これを構成する材料はその目的に合わせて選択すればよく、好適材料としてはチタン(Ti)やニッケル(Ni)などがある。
【0061】
この構成例の場合でも、図3に示した実施例で得られた効果を得ることができる。得られる効果は図3に示した第2構成例より大きい。また、第3部材43を第1部材41と第2部材42の間に挿入することにより、下記の効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、第3部材43にバリア層としての機能を持たせることにより、第1部材41、第2部材42それぞれの加工信頼性を確保できるようになるため、選択基準を緩めることができ、第1部材41と第2部材42を同一材料にすることも可能となる。また、第3部材43により蒸着用開口部を第1部材41により例えばギャップ空間23を形成し、第2部材42を蒸着マスク21の補強材とすることにより、微細パターンとしての機械的強度を高めた蒸着マスク21を得ることができる。
【0063】
図7は、図6に示した表示パネル形成部24を有する蒸着マスクの製造工程を説明する図である。この蒸着マスクは(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)の順で製造される。この製造方法ではエッチンゲ法を用いているが、めっきとの組み合わせも可能である。
【0064】
(A)・・・第1部材41と第2部材42の間に第3部材43を挿入したマスクシート部材90の表面を研磨などにより平坦かつ平滑にする。第1部材41と第2部材42として、インバーや42アロイ等の鉄系合金を用いる。中間層とする第3部材43としてはチタン(Ti)やニッケル(Ni)等の高融点金属を用いる。第1部材41の板厚を例えば0.005mmとし、第2部材42の板厚を0.015〜0.050mmとする。第3部材43の厚みは0.001〜0.01mmとする。
【0065】
(B)・・・第1部材42上に所定のレジストパターン91を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また、レジストパターン形成には前記と同様に、周知の方法を用いれば良い。なお、第1部材41の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(9C)において、保護膜形成面のエッチング液による損傷を防止する。
【0066】
(C)・・・第1部材42を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工し、開口部92を形成する。この際、第3部材43はエッチング液から第1部材41を保護する。
【0067】
(D)・・・第2部材42上に形成したレジストパターン91と第1部材41上に形成した保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。
【0068】
(E)・・・第1部材41上に所定のレジストパターン93を形成する。レジスト材料はドライフィルムでも液状レジストでも差し支えない。また,レジストパターン形成には周知の方法を用いれば良い。なお、第2部材42の表面には有機材料からなる保護膜(図示せず)を形成しておく。該保護膜は、工程(9F)において、保護膜形成面のエッチング液による損傷を防止する。
【0069】
(F)・・・第1部材41を、例えば塩化第2鉄を主成分とするエッチング液を用いたスプレーエッチングにより加工する。この際、第3部材43はエッチング液から第2部材42を保護する。次いで、所定のエッチング液により第3部材43を除去する。これにより、第2部材42と第3部材43に開口部94を形成する。
【0070】
(G)・・・第1部材41上に形成したレジストパターン93と第2部材42上の保護膜(図示せず)を剥離液を用いて除去する。これにより、図4に示した蒸着マスク21が完成する。この蒸着マスク21には、基板101との間で形成するギャップ空間23と蒸着パターン形成用の開口部103が設けられている。
【実施例2】
【0071】
図8は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例2を説明する模式図である。図8には、実施例2における蒸着マスクの構造例と該蒸着マスクによる蒸着パターン形成方法の概略を示す。なお、蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。この実施例では、蒸着マスク51は固定のためのマスクフレームを有しない。この点が実施例1と異なる。他の構成は実施例1と同様である。
【0072】
蒸着マスク51と基板101はマグネット104の吸着力により密着されている。この実施例でも、ギャップ空聞23を介して蒸着パターンが形成されるため、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、マスクフレームに固定されるものでないため、マスクフレームヘの貼付けに関する技術課題もなくなる。蒸着マスクの板厚方向の断面構造は図2、図3、図6の何れでも差し支えない。
【0073】
蒸着マスク51は補強支持するマスクフレームを有しないため、十分な強度を確保し、弛みも抑制しなければならない。そのため、蒸着マスク51の板厚を厚くする必要があり、蒸着マスクの解像度が実施例1に比べて若干低下する。しかし、部品点数が削減でき、蒸着マスクの製造コスト低減に効果がある。
【実施例3】
【0074】
図9は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例3を説明する模式図である。図9は実施例3における蒸着マスクの構造例と該蒸着マスクによる蒸着パターン形成方法の概略を示す。なお、蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。
【0075】
実施例3も、実施例2と同じく、蒸着マスク61はマスクフレームに固定していない。この点が実施例1と異なる。蒸着マスク61と基板101はマグネット104の吸引力により密着されている。実施例3では、蒸着マスク61の基板101と密着する部分65の板厚を厚くすることにより、実施例2に比較して機械的強度が改善されている。このため、実施例2で得られた効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0076】
実施例3は、実施例2に比べて機械的強度が高い。蒸着マスク61をマスクフレームに固定する構造でないため、マスクフレームヘの貼付けに関する技術課題もなくなる。また、部品点数が削減されるため、蒸着マスクの製造コスト低減に効果がある。
【0077】
なお、この蒸着マスク61として、前記図6で説明したような3層構造とすることが望ましい。蒸着マスク61を3層構造とすることで、第3部材43により蒸着パターン形成用の開口部103を第1部材41と第2部材42の一方で基板101とのギャップ空間23を、他方で機械的補強することにより、以下のような効果を得ることができる。
【0078】
蒸着パターンの解像度をあげることが可能となる。ギャップ空間23における基板101と蒸着マスク61の間隔を自由に設計できる。マスクフレームをなくすことができる。これらにより、マスク蒸着プロセスのコスト低減に大き<寄与する。
【実施例4】
【0079】
図10は、本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例4を説明する模式図である。蒸着マスクと基板の上に形成されている薄膜層は図示を省略した。実施例4は、基本的には実施例1と同じ構造であるが、実施例1との相違点は、蒸着パターンを形成する開口部103が微細開口部ではなく、各表示パネルのパネルパターン領域24(24a〜24d)に対応した大きな開口部となっていることにある。開口部103はギャップ空間23を形成する凹面部よりも若干狭く形成されているが、両者が同一のサイズであってもよい。実施例4は、モノカラー用OLED膜(エリアカラー含む)や電極膜保護膜の成膜に適している。
【0080】
実施例4は、寸法精度の高くない領域の成膜に好適であり、実施例1と同一の効果を得ることができる。成膜面において基板101と蒸着マスク21は接していないことから、荷電粒子の影響が大きいスパッタ法やCVD法等の化学蒸着法にも適用できる。この場合、ギャップ空間23における基板101と蒸着マスク21の距離を大きくし、蒸着マスク内開口部103を複数個形成するのも有効である。この場合、荷電粒子に対するシールド効果が期待できる。
【0081】
また、高い寸法精度が要求されないことから、蒸着マスク21を厚くできることから、高い機械強度を確保でき、マスクフレーム22無しでの運用が容易となる。そして、低コスト化に貢献できる。なお、蒸着マスク21の板厚方向の断面構造は、図2、図3、図6に示したものの何れを用いてもよい。
【0082】
図11は、図1乃至図9で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの有機発光層の一例を説明する模式図である。ここでは、基板101上に赤色素子R、緑色素子G、青色素子BからなるOLEDのストライプパターンを形成した状態を示す。図11の(A)は基板101上に複数の表示パネル24を形成した様子を示す。図11の(B)は表示パネル24の一部拡大図である。OLEDの赤色素子R、緑色素子G、青色素子Bがストライプパターン状に形成されている。図11の(C)は同(B)に示した表示パネル24の一部を拡大して示した断面図である。
【0083】
実施例1乃至実施例3で説明した蒸着マスクはOLEDの発光層等の有機膜131のマスク蒸着(3色色分け方式)に適用できる。ギャップ空間23における基板101と蒸着マスクの間の距離が大きくなるとパターン周辺がボケてくる。このボケる領域の大きさを考慮してギャップ空間23における基板101と蒸着マスクの間の距離を定める必要がある。
【0084】
図12は、実施例4で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの電極膜の一例を説明する模式図である。ここでは、基板101上にアルミニウム(Al)からなる電極膜141をマスク蒸着により形成したものである。図12の(A)は基板101上に実施例4で説明した蒸着マスクにより表示パネルの電極膜141を形成した様子を示す。図12の(B)は同(A)のA‐B線に沿った電極膜141の蒸着パターンを有する基板101の断面図である。この蒸着パターンは表示パネルの有効領域に対応している。電極膜141は、例えば陽極である。このように、本発明による蒸着マスクはOLED用電極(Al等)の成膜に適用でき、またその他パターン精度の要求されないモノクロパターン用OLED膜や保護膜の成膜にも適用できる。
【0085】
図13は、基板上に形成された薄膜層の蒸着マスクにより覆われている部分への回り込み量ΔLとギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgの関係を示した図である。本発明によるマスク蒸着では、蒸着マスクに覆われている部分に回り込んで、成膜されてはいけない基板領域にも成膜されてしまう。この回り込む量ΔLは、図13の(B)に示すように、蒸着マスク102の開口部103の縁から薄膜層107がはみでた量として定義する。
【0086】
回り込み量ΔLは、図13の(A)に示すように、ギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgが大きくなるにつれて増大する。回り込み量ΔLはギャップ量Lgに略比例して増加するが、この傾きは蒸発源からの蒸発粒子流の指向性等により調整できる。例えば、精密蒸着マスクの板厚が0.001〜O.05mmである場合、指向性の高い蒸発源を用いることによって図13の(A)の関係を得ることができる。
【0087】
0LEDの発光層のように微細パターンを形成する精密蒸着マスクでは、ギャップ空間23での基板101と蒸着マスクの間のギャップ量Lgを0.05mm以下にすることによって回り込み量ΔLの少ない高精度蒸着パターンを得ることができる。
【0088】
蒸着マスク102と基板101は、ギャップ空間23において接触しなければ差し支えない。成膜時の温度上昇等の影響を考えると、このギャップ空間23の間隔としては0.001mmは確保しておいた方が望ましい。
【0089】
図14は、有機EL表示パネルの構造例を説明する1画素付近の断面図である。この1画素はカラー表示では副画素となる。図14において、ガラスを好適とする基板101の主面にシリコン半導体層110、ゲート電極111、ソース・ドレイン電極112からなる薄膜トランジスタTFTが作り込まれている。薄膜トランジスタTFTはソース電極とドレイン電極を持つが、ここでは、ソース・ドレイン電極112として示した。
【0090】
ソース・ドレイン電極112には、有機EL素子の一方の電極としての陽極113が接続されている。陽極113の上層には絶縁層を有し、この絶縁層の画素部を除去して画素開口部が形成されている。画素開口部を囲んで残る絶縁層はバンク(突堤)を形成し、絶縁層を除去して露呈した陽極113の上に有機EL発光層114が蒸着されている。そして、この有機EL発光層114を覆って他方の電極である陰極115が成膜されている。
【0091】
そして、陽極113、有機EL発光層114、陰極115の積層構造で発光素子ELが構成される。なお、符号116、117、118、119は絶縁層である。符号121は封止板であり、ここではガラス板が用いられているが、金属缶を用いたものもある。また、通常、この封止板121の内側には乾燥剤が内臓されて、有機EL材料の湿気対策がなされている。
【0092】
図14は、有機EL発光層114の発光を基板101側から出射させるボトムエミッション型の所謂有機EL表示パネルである。しかし、本発明は、図14に示したような構造の有機ELに限るものではなく、封止板121側から発光を取り出すトップエミッション型の有機ELにも適用できることは明らかである。その場合の電極構造、電極材料はボトムエミッション型の場合とは若干異なる。これらの有機EL表示パネルの構造は既知である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例1を説明する模式図である。
【図2】蒸着マスク第1構成例を説明する表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図3】蒸着マスク第2構成例を説明する図2と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図4】図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの1例を説明する図である。
【図5】図3に示したパネルパターン部を有する蒸着マスクの製造プロセスの他例を説明する図である。
【図6】蒸着マスク第3構成例を説明する図2や図3と同様の表示パネルのパネルパターン部を拡大した断面図である。
【図7】図6に示した表示パネル形成部を有する蒸着マスクの製造工程を説明する図である。
【図8】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例2を説明する模式図である。
【図9】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例3を説明する模式図である。
【図10】本発明による有機EL表示パネルの製造方法の実施例4を説明する模式図である
【図11】図1乃至図9で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの有機発行層の一例を説明する模式図である。
【図12】実施例4で説明した蒸着マスクを適用した有機EL表示パネルの電極膜の一例を説明する模式図である。
【図13】基板上に形成された薄膜層の蒸着マスクにより覆われている部分への回り込み量△Lとギャップ空間での基板と蒸着マスクの間のギャップ量Lgの関係を示した図である。
【図14】有機EL表示パネルの構造例を説明する1画素付近の断面図である。
【図15】蒸着マスクを用いた発光層等の有機膜の形成方法を説明する有機EL表示パネルの製造方法の模式図である。
【符号の説明】
【0094】
101・・・基板、103・・・開口部、104・・・マグネット板、105・・・蒸着源、106・・・蒸着粒子粒、21・・・蒸着マスク、22・・・マスクフレーム、23・・・ギャップ空間、24(24a、24b、24c、24d)・・・パネルパターン部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL表示素子を構成する基板の表面に、所定パターンの開口部を有する蒸着マスクを密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記所定パターンに応じた薄膜パターンを形成する有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記薄膜パターンを蒸着することを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記開口部を設けた前記凹面の部分と前記基板の間で形成される前記ギャップを0.001〜0.05mmとしたことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分の板厚方向が少なくとも2つ以上の部材によって構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分を構成する部材の熱膨張係数が、前記基板に接触しない部分の部材より大であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分を構成する部材の少なくとも1つが磁性体により構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と接触しない部分を構成する部材を非磁性体により構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクが、マスクフレームに固定されて支持されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクが、接着剤又は溶接の何れかによって前記マスクフレームに固定されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段が真空蒸着法であることを特徴とする有機EL表示装置パネルの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段がスパッタリング法であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段が化学蒸着法であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項12】
基板上に、少なくとも、第1の電極と発光層を含む有機層および第2の電極とを順次積層して形成された有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極が、当該第2の電極のパターンに対応した開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記第2の電極を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項13】
請求項12に記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極が、当該第2の電極のパターンに開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記第2の電極を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極の上層を覆って保護層を有することを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項15】
請求項14に記載の有機EL表示パネルであって、
前記保護層が、当該保護層のパターンに開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記保護層を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項16】
請求項12乃至請求項15の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記有機層を蒸着する方法が、真空蒸着法であることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項17】
請求項13乃至請求項16の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極を蒸着する方法が、真空蒸着法又はスパッタリング法であることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項18】
請求項15乃至請求項17の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記保護層を蒸着する方法が、真空蒸着法又はスパッタリング法もしくは化学蒸着法の何れかであることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項1】
有機EL表示素子を構成する基板の表面に、所定パターンの開口部を有する蒸着マスクを密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記所定パターンに応じた薄膜パターンを形成する有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップをもって離間して前記薄膜パターンを蒸着することを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記開口部を設けた前記凹面の部分と前記基板の間で形成される前記ギャップを0.001〜0.05mmとしたことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分の板厚方向が少なくとも2つ以上の部材によって構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分を構成する部材の熱膨張係数が、前記基板に接触しない部分の部材より大であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と密着する部分を構成する部材の少なくとも1つが磁性体により構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクの前記基板と接触しない部分を構成する部材を非磁性体により構成されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクが、マスクフレームに固定されて支持されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜パターンの形成に用いる前記蒸着マスクが、接着剤又は溶接の何れかによって前記マスクフレームに固定されていることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段が真空蒸着法であることを特徴とする有機EL表示装置パネルの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段がスパッタリング法であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記薄膜層形成手段が化学蒸着法であることを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項12】
基板上に、少なくとも、第1の電極と発光層を含む有機層および第2の電極とを順次積層して形成された有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極が、当該第2の電極のパターンに対応した開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記第2の電極を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項13】
請求項12に記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極が、当該第2の電極のパターンに開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記第2の電極を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極の上層を覆って保護層を有することを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項15】
請求項14に記載の有機EL表示パネルであって、
前記保護層が、当該保護層のパターンに開口部を有する蒸着マスクを前記基板の表面に密着させ、薄膜層形成手段から前記蒸着マスクの前記開口部を通して前記基板の表面に前記パターンに応じて形成されたものであり、
前記蒸着マスクの前記開口部は、当該蒸着マスクが前記基板と接触する面から後退させた凹面内に有し、前記蒸着マスクの開口部を前記基板から所定のギャップを離間して前記保護層を蒸着する方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項16】
請求項12乃至請求項15の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記有機層を蒸着する方法が、真空蒸着法であることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項17】
請求項13乃至請求項16の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記第2の電極を蒸着する方法が、真空蒸着法又はスパッタリング法であることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項18】
請求項15乃至請求項17の何れかに記載の有機EL表示パネルであって、
前記保護層を蒸着する方法が、真空蒸着法又はスパッタリング法もしくは化学蒸着法の何れかであることを特徴とする有機EL表示パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−95324(P2007−95324A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279225(P2005−279225)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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