説明

木材乾燥機における乾湿計の水補給装置

【課題】 容器の容積を木材の収容を阻害せずに大きくするとともに、内部の水が乾燥風によって蒸発され難くすることにより、湿球温度計の感温部に水を長期に亘って供給できるようにする。
【解決手段】 木材(7)を収容する乾燥箱(2)内の壁面(2a)に水(22)を収容する細長い容器(20)を水平方向に延在させて設け、該容器(20)の上面の一部に小面積の開口(20a)を形成し、該開口(20a)の上方に湿球温度計(17)の感温部(17a)を配置し、該感温部(17a)を吸水性資材(18)により包囲するとともに、該吸水性資材(18)の下部を前記開口(20a)から容器(20)内に収容する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木材を人工的に乾燥させる木材乾燥機の乾湿計に関し、特に湿球温度計の感温部に気化用の水を補給する水補給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術として、湿気の吸脱着によって電気抵抗値が変化する電気抵抗式の湿度計を木材が収容される乾燥箱内に設置するようにしたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記電気抵抗式の湿度計は、湿度を検知する検知部が乾燥箱内の気体中の湿気を吸脱着するため、耐久性が低下する問題があった。即ち、乾燥箱内に収容する木材には、海水、防腐剤、防かび剤、漂白剤等が含浸されていることが多く、このような木材を乾燥させると、乾燥箱内に塩素ガス、硫黄ガス等が発生し、上記検知部に高分子の薄膜が使用されている場合はこれが劣化したり、また、上記検知部に金属あるいは金属性の微粉末が使用されている場合はこれが錆びたりすることになる。
【0004】これの対策として、湿気を吸脱着しない乾湿計を使用する手段があるが、このものは、湿球温度計の感温部を湿らすために該感温部に気化用の水を補給する必要があり、この場合、従来の水補給用の容器は、容積が小さいとともに、容積に対する開口面積が大きいため、木材乾燥機のように、乾燥時間が5日〜10日間となる長時間を要するものには、上記感温部に水を安定して補給することができなかった。本発明は、上記問題を解消した新規な木材乾燥機における乾湿計の水補給装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、以下の如く構成したものである。即ち、木材を収容する略密閉された乾燥箱を設け、該乾燥箱内の壁面に水を収容する細長い容器を水平方向に延在させて設け、該容器の上面の一部に小面積の開口を形成し、該開口の上方に湿球温度計の感温部を配置し、該感温部を吸水性資材により包囲するとともに、該吸水性資材の下部を前記開口から容器内に収容する構成にしたものである。この場合、前記湿球温度計の感温部は、温度によって電気抵抗値が変化する感温素子にするとよい。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例を図面に基いて説明する。図において、図1は本発明が適用された木材乾燥機の側断面図、図2は図1の部分断面平面図、図3R>3は図1の要部拡大側断面図、図4は図3のVI-VI 断面図である。図1及び図2において、1は木材乾燥機であり、木材を収容する乾燥箱2と、減圧装置12、除湿装置13、冷却装置14等の機械部及び制御装置(制御盤)25等を収容する機械室3を有する。
【0007】上記乾燥箱2は、左右に細長い密閉した箱形に形成し、右部に開閉用の扉4を有し、底部に台車6が左右方向に走行するレール5を有する。レール5は乾燥箱2から右方に向かって延在させるとともに、入口部のレール5aは取外し可能とする。被乾燥用の木材7は上記台車6に積載してレール5を介して乾燥箱2内に収容し、該木材7を収容した後に入口部のレール5aを取外して扉4を閉じる。
【0008】上記乾燥箱2の内部に送風装置10、加熱装置(ヒーター)11を設置し、制御装置25により、上記送風装置10を作動させて乾燥箱2内の空気を循環させるとともに、加熱装置11を作動させて乾燥箱2内の空気を所定温度まで加熱し、また、機械室3内の減圧装置12、除湿装置13、冷却装置14を適宜作動させて上記乾燥箱2内の気圧、湿度、温度を制御して乾燥箱2内に収容した木材7を所定水分まで乾燥させる。
【0009】上記乾燥箱2内に乾湿計15、気圧計19を設置し、これら乾湿計15及び気圧計19の信号が上記制御装置25に入力されるようになっている。上記乾湿計15は、乾球温度計16と湿球温度計17とを有し、両者の感温部16a,17aは、温度によって電気抵抗値が変化する感温素子により形成されており、上記制御装置25は各乾球温度計16、湿球温度計17の検出値を入力し、これらを比較演算して乾燥箱2内の湿度を算出する。
【0010】上記湿球温度計17は、図3、図4に示すように、外側から乾燥箱2の側壁(壁面)2aに差込み、その内端側の感温部17aを乾燥箱2内に臨ませ、この感温部17aにガーゼ等の吸水性資材18を巻回して垂下させ、その下部を水を収容する容器20内に収容して該容器20内の水22を吸湿し、上記感温部17aに気化用の水を供給(補給)する。
【0011】上記容器20は、ステンレス鋼板、あるいはプラスチック板により、左右(水平)方向の長さLが約200cm、上下の高さHが約10cm、内外方向の幅Wが約5cmとなる細長い直方体状に形成し、上面の左端部に左右方向の幅が約3cm、内外方向の幅が約5cmとなる小面積の開口20aを形成し、上面の右端部に開閉蓋21によって開閉される給水口20bを形成し、この給水口20bから容器20内に水22を収容する。20cは容器20を側壁2aにビス止めする取付け板である。
【0012】湿球温度計17の感温部17aは、上記開口20aの上方に配置し、該感温部17aに巻回した吸水性資材18の下部を上記開口20aから容器20内に収容して該容器20内の水22内に浸す。また、乾球温度計16は、上記湿球温度計17から水平方向左方に離間させて外側から乾燥箱2の側壁2aに差込み、その内端側の感温部16aを上記湿球温度計17の感温部17aから水平方向左方に離間させて乾燥箱2内に臨ませる。そして、上記各乾球温度計16及び湿球温度計17のリード線16b,17bを前述した制御装置25に接続する。
【0013】制御装置25は、上記乾球温度計16、湿球温度計17及び気圧計19の測定値(信号)を入力して前述した加熱装置11、減圧装置12、除湿装置13及び冷却装置14を所定のプログラムに従って制御する。即ち、乾燥工程においては、送風装置10を起動させて乾燥箱24内の空気を循環させ、この状態で乾球温度計16の検出値(信号)を入力し、該検出値が例えば50℃未満の場合には加熱装置11を作動、50℃以上の場合には加熱装置11を停止させ、乾燥箱24内の温度を約50℃に保持する。
【0014】また、乾球温度計16及び湿球温度計17の検出値を入力して乾燥箱2内の湿度を算出し、これが例えば70%以上の場合には、除湿機13を作動させ、減圧機12は停止させる。また、乾燥箱2内の湿度が例えば60%以下になると、上記除湿機13を停止させるとともに、減圧機12を間欠的に作動させて乾燥箱2内の気圧を気圧計19の検出信号を入力して例えば水頭圧300mm以下にし、木材7の水分を内深部から表面に向けて積極的に移行させる。この動作を繰り返して乾燥箱2内の木材7の水分を所定の水分特性線に沿って例えば20%まで乾燥させる。なお、上記乾燥箱2内の設定温度および設定湿度は、木材7の種類によって適宜設定する。
【0015】この場合、上記乾燥工程の時間は、約5日〜10日となるが、湿球温度計17に水を供給するための容器20は、水平(左右)方向に細長く形成して乾燥箱2の内面に取付けるようにしたので、木材7の収容を阻害せずに容積を大きくすることができ、内部に大量の水を収容することができる。しかも水平方向に細長いので、消耗による容器20内の水位の変化が少なくなり、吸水性資材18が容器20内の水を長期に亘って安定して吸水し、これを湿球温度計17の感温部に補給することになる。また、上面の一部に小面積の開口20aを形成し、この部から湿球温度計17に水を供給するようにしたので、容器内の水が乾燥箱2の気流(乾燥風)によって蒸発され難くなり、上記のような長い乾燥時間であっても湿球温度計17に安定して水を供給(補給)することができる。
【0016】上記乾燥工程が終了したら、冷却工程に移行する。即ち、上記加熱装置11を停止、送風装置10作動させるとともに、冷却装置14を間欠作動させ、乾燥箱2内の温度(木材7の温度)を外気温度、例えば20℃に達するまで、所定の下降温度特性に沿って降下させる。また、上記冷却工程において、乾燥箱2内の湿度が、例えば70%以上になると上記除湿装置13を作動させ、70%以下になると該除湿装置13を停止させ、これにより乾燥箱2内の湿度を約70%に保持しつつ、乾燥箱2内の木材7の温度を外気温度まで降下させる。
【0017】
【発明の効果】以上の説明から明らかな如く、本発明は水を収容する容器を水平方向に細長くして乾燥箱内の壁面に設けるようにしたので、木材の収容を阻害せずに容積を大きくすることができ、内部に大量の水を収容することができるとともに、消耗による容器内の水位の変化が少なくなり、吸水性資材の吸水性能が長期に亘って安定してすることになる。また、湿球温度計の感温部に水を供給(補給)するための開口を上記容器の上面の一部に小面積で明けるようにしたので、容器内の水が乾燥箱の気流(乾燥風)によって蒸発され難くなり、長期に亘って湿球温度計の感温部に水を供給することができる。また、構造が簡単であるため、既設の木材乾燥機に容易に取付けることができる。しかも、容器を乾燥箱内に設置するので、乾燥箱の気圧(減圧、大気圧)に左右されることなく、安定して湿球温度計に水を補給することができる。また、湿球温度計の感温部を温度によって電気抵抗値が変化する感温素子としたので、計測値を制御装置に入力することができ、自動運転できる木材乾燥機に容易に適用することができる。等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された木材乾燥機の側断面図である。
【図2】図1の部分断面平面図である。
【図3】図1の要部拡大側断面図である。
【図4】図3のVI-VI 断面図である。
【符号の説明】
1 木材乾燥機
2 乾燥箱
2a 側壁(壁面)
3 機械室
4 扉
5 レール
6 台車
10 送風装置
11 加熱装置
13 除湿装置
14 冷却装置
15 乾湿計
16 乾球温度計
16a 感温部
16b リード線
17 湿球温度計
17a 感温部
17b リード線
18 吸湿資材
19 気圧計
20 容器
20a 開口
20b 給水口
20c 取付け板
21 開閉蓋
22 水
25 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】木材(7)を収容する略密閉された乾燥箱(2)を設け、該乾燥箱(2)内の壁面(2a)に水(22)を収容する細長い容器(20)を水平方向に延在させて設け、該容器(20)の上面の一部に小面積の開口(20a)を形成し、該開口(20a)の上方に湿球温度計(17)の感温部(17a)を配置し、該感温部(17a)を吸水性資材(18)により包囲するとともに、該吸水性資材(18)の下部を前記開口(20a)から容器(20)内に収容したことを特徴とする木材乾燥機における乾湿計の水補給装置。
【請求項2】前記湿球温度計(17)の感温部(17a)は、温度によって電気抵抗値が変化する感温素子としたことを特徴とする請求項1記載の木材乾燥機における乾湿計の水補給装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−46771(P2000−46771A)
【公開日】平成12年2月18日(2000.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−230193
【出願日】平成10年7月30日(1998.7.30)
【出願人】(394019163)
【Fターム(参考)】