説明

木材破砕機

【課題】単体で現場のニーズに柔軟に対応して被破砕木材を破砕することができる木材破砕機を提供する。
【解決手段】軸芯を中心に回転するドラム67と、ドラム67の周胴面上に配され、回転して被破砕木材を破砕する破砕ビット65と、ドラム67径方向外側に間隔を介して設けられている第2スクリーン70とを備え、第2スクリーン70の内径面の位置をドラム67径方向に進退させることによって、第2スクリーン70の内径面から破砕ビット65の最大回転軌道Rまでの間隙寸法Dを調整可能なように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪定枝材・間伐材、枝木材、廃木材等を破砕する木材破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
森林の造成・維持管理等で発生する剪定枝材や間伐材、森林で伐採した木材の枝払い等で発生する枝木材、木造建築物の解体等で発生する廃木材は、通常、最終的に産業廃棄物等として処理される。木材破砕機は、このような廃棄物としての木材の減容化や、破砕後の木材(木材チップ)を発酵させて有機肥料として再利用すること等を目的として、被破砕木材を所定の大きさに破砕するものである。近年、このような木材破砕機の用途は多様化しており、それらのニーズに対応した破砕機が求められている。
【0003】
このようなニーズの1つに対応したものに、生産する木材チップの粒径の制御を図った木材破砕機がある(特許文献1等参照)。この木材破砕機は、篩い部材を介して木材チップを排出することでその粒径を均一にする木材破砕機を篩い部材が交換できるように改良したものであり、所望の径から成る排出孔が配された篩い部材に適宜交換することによってチップ粒径の制御を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−346418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、木材チップを生産する際に重視される指標には、上記の木材チップ粒径の他にも複数あるが、ここでは粒度品質と処理量に着目する。これら2つの指標においては、ニーズによって木材チップの粒度品質より処理量が重視される場合もあれば、反対に粒度品質が優先される場合もある。そのため、単体で現場のニーズに応じて粒度品質と処理量の優先度を柔軟に選択できる木材破砕機が求められている。
【0006】
本発明の目的は単体で現場のニーズに柔軟に対応して被破砕木材を破砕することができる木材破砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、軸芯を中心に回転するドラムと、このドラムの周胴面上に配され、回転して被破砕木材を破砕する破砕ビットと、前記ドラム径方向外側に間隔を介して設けられている湾曲板部材とを備え、この湾曲板部材の内径面の位置を前記ドラム径方向に進退させることによって、前記湾曲板部材の内径面から前記破砕ビットの最大回転軌道までの間隙寸法を調整可能なように構成されているものとする。
【0008】
(2)上記(1)は、好ましくは、前記湾曲板部材は、交換することによって前記間隙寸法を調整することができる交換可能な部材であって、前記湾曲板部材とは内径面位置が異なる他の湾曲板部材と交換されることによって内径面位置を進退させて前記間隙寸法を調整するものとする。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)は、好ましくは、前記湾曲板部材は破砕木材の粒径を設定する排出孔を有しているものとする。
【0010】
(4)上記(3)は、好ましくは、前記間隙寸法を前記湾曲板部材の排出孔の径に応じて調整するように構成されているものとする。
【0011】
(5)上記(4)は、好ましくは、前記間隙寸法は前記排出孔の径より小さく設定されているものとする。
【0012】
(6)上記(5)は、好ましくは、前記間隙寸法をD[mm]、前記排出孔の径をr(12.5≦r)[mm]としたとき、前記間隙寸法D[mm]は、0.4r−5≦D≦0.4r+10[mm]となるように構成されているものとする。
【0013】
(7)本発明は、上記目的を達成するために、軸芯を中心に回転するドラムと、このドラムの周胴面上に配され、回転して被破砕木材を破砕する破砕ビットと、前記ドラム径方向外側に間隔を介して設けられている湾曲板部材とを備え、前記破砕ビットにおける前記ドラム径方向外側端部の位置を変更することによって、前記湾曲板部材の内径面から前記破砕ビットの最大回転軌道までの間隙寸法を調整可能なように構成されているものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、破砕ビットの回転軌道と破砕室の内径面との隙間寸法を調整することができるので、単体で現場のニーズに柔軟に対応して被破砕木材を破砕することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る自走式木材破砕機の全体構造を示す側面図、図2は図1に示した自走式木材破砕機の上面図、図3は後述する破砕装置12近傍の側面カバー内部の詳細構造を示す側面図である。なお、以下において、図1中の左・右に対応する方向を木材破砕機の後・前、又は一方・他方とする。
【0017】
図1〜図3において、本実施の形態の木材破砕機は、自力走行するための走行体(走行手段)1と、この走行体1に搭載した木材破砕機本体部2と、この木材破砕機本体部2からの破砕木材(木材チップ)を搬送し機外に排出する排出部である排出コンベア3と、機体各所に搭載した作動機器の動力源(エンジン)等を内蔵した動力装置(パワーユニット)4等で概略構成されている。次にこれら、走行体1、木材破砕機本体2、排出コンベア3、動力装置4の構成を順次説明していく。
【0018】
走行体1は、トラックフレーム5と、このトラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7と、出力軸を駆動輪6の軸に連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8と、駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9とで構成されている。また、36は上記トラックフレーム5上に設けた本体フレームで、この本体フレーム36によって、木材破砕機本体2や排出コンベア3、動力装置4等が支持されている。
【0019】
木材破砕機本体2は、投入される被破砕木材を受け入れるホッパ10と、このホッパ10内に収容配置された被破砕木材の搬送手段としての送りコンベア11と、この送りコンベア11によって導入された被破砕木材を破砕する破砕装置12(図3参照)と、この破砕装置12の手前で破砕装置12に導入される被破砕木材を送りコンベア11に押し付ける押圧コンベア装置13(図3参照)とを備えている。
【0020】
ホッパ10は、送りコンベア11の周囲を囲うような上部が開口した有底形状に形成され、本体フレーム36上の破砕ロータ61(図3参照)の後方側にほぼ水平に備えられている。このホッパ10は、送りコンベア11の後方側に設けられた後壁体14と、幅方向左右両側の外壁体15と、外壁体15の内側かつ送りコンベア11の幅方向両側に設けられ、その上部が送りコンベア11の搬送面より幾分上方に位置している側壁体(図示せず)と、この側壁体及び外壁体15の上部に掛け渡すようにして上方に向かって拡開形状に設けられた拡開部(あおり部)17と、送りコンベア11の下方側に僅かに間隙を介するように底部全面に設けた底壁体18(図3参照)と、前方側端部に設けた前壁体19(図3参照)とを備えている。
【0021】
送りコンベア11は、本体フレーム36の長手方向後方側にホッパ10内に収容されるようにして配設されており、破砕装置12に備えられた破砕ロータ61(後述する)に対向して設けたスプロケット状の駆動輪40と機体後方側に設けた従動輪(図示せず)との間に搬送体(チェーンベルト)42を掛け回して構成してある。駆動輪40の回転軸である駆動軸(図示せず)には送りコンベア11を駆動する駆動装置(図示せず)の出力軸が連結され、駆動装置の駆動力が駆動輪40に伝達される。搬送体42はチェーンベルトにより構成され、図2に示すように機体幅方向に複数列(本例では4列)列設してある。この搬送体42はゴムベルト等でも構成可能である。
【0022】
押圧コンベア装置13は、送りコンベア11の前端部上方において破砕装置12の上部を覆うように配設されており、送りコンベア11の駆動輪40の上方に対向して配置された押圧ローラ53と、この押圧ローラ53を支持する支持部材52とを備えている。
【0023】
支持部材52は、基端部に回動軸51を有するアーム部54と、アーム部54の下方に取り付けたブラケット部55とを備えている。ブラケット部55は押圧ローラ53を回転自在に支持している。このように構成することで、支持部材52は回動軸51を回動中心として上下回動できるので、押圧ローラ53が送りコンベア11に対して上下動するようになっている。また、アーム部54の破砕室60に臨む下面側には湾曲板68が取付けられている。この湾曲板68は、押えコンベア装置13の上下の揺動動作に伴って可動し、破砕室60の一部を構成している。なお、図3には図示していないが、回動軸51は破砕装置12等を囲う図示しないハウジングの側壁に軸受を介して回転自在に支持されている。駆動輪40の上方かつ被破砕木材投入方向上流側にはストッパ56が設けられている。ストッパ56は、押圧ローラ53が送りコンベア11の駆動輪40の近接位置まで下がるとブラケット部55と当接するように配置されており、押圧コンベア装置13の回動動作を制限している。
【0024】
押圧ローラ53は、特に図示していないが、中空のドラム状部材で構成されており、ドラム内部に自らの駆動装置(図示せず)を収容している。この駆動装置により、送りコンベア11による被破砕木材の搬送方向に転動する向き(図3では反時計回り)に被破砕木材の搬送速度とほぼ同じ周速度で押圧ローラ53が回転し、送りコンベア11上の被破砕木材を送りコンベア11と協動して押さえ込みながら破砕装置12に導入するようになっている。
【0025】
破砕装置12は、本体フレーム36の長手方向ほぼ中央部上の機体内部に搭載されており、破砕室60内で高速回転する破砕ロータ61と、この破砕ロータ61の回転方向(正転方向、図3中時計回り方向)に対向するように配置した第1アンビル62及び第2アンビル63とを備えており、送りコンベア11の前端部に対向するように設けられている。第1及び第2アンビル62,63は、例えば過度な衝撃が加わった場合等には、破砕ロータ61の正転方向に倣う方向に退避するように回動可能な構成となっている。
【0026】
破砕ロータ61は、軸受(図示せず)によって回転自在に支持された軸の軸芯を中心に回転するドラム67と、ドラム67の周胴面上に適宜配置されている複数の支持部材64と、これら支持部材64にそれぞれ取り付けられており被破砕木材を破砕する破砕ビット(衝突板、或いは破砕刃等)65とを備えている。破砕ビット65は、破砕ロータ61が正転方向に回転する際にその刃面が支持部材64に先行するように配置されている。また、各破砕ビット65は、ボルト66等によって支持部材64に固定されており、摩耗した場合にも容易に天地の入れ替えが可能であり、また、新しいものと交換可能な構成となっている。
【0027】
破砕室60は、破砕ロータ61に対し、上方側に設けられた前述の湾曲板68や、前方側及び下方側にそれぞれ設けられ、破砕された被破砕木材を通過させることにより破砕木材(木材チップ)の粒径を設定する多数の排出孔を有する第1スクリーン(篩部材,湾曲板部材)69及び第2スクリーン(篩部材,湾曲板部材)70等によって概ね画定され、その後方側は被破砕木材導入部として解放されている。
【0028】
第1及び第2スクリーン69,70は、湾曲板68と同様、破砕ビット65の回転軌道R(図3参照)にほぼ沿うような湾曲形状からなり、破砕ビット65と所定の間隔を介して着脱可能(交換可能)に配設されている(詳細は後述)。図3に示すように、回転軌道Rは、破砕ビット65の部分であって、ドラム67径方向(適宜、破砕ロータ61径方向とも称する)の外側端部に位置する部分の回転軌道(破砕ビット65の最大回転軌道)である。また、符号Dは、スクリーン69,70の内径面(破砕ロータ61側の面)から破砕ビット65の回転軌道Rまでの寸法(間隙寸法)を示す。
【0029】
また、前述した被破砕木材導入部の周辺には、駆動輪40の回転軌跡の上端よりも若干低位置、かつ駆動輪40との対向端部が極力駆動輪40の回転軌跡に近接するように前壁体19の上部に配置したスクレーパ48と、駆動輪40の回転軌跡に近接するように曲成され、ホッパ10の底壁体18及び前壁体19に連接した案内部材47が設けられている。
【0030】
上記のように構成された破砕装置12は、送りコンベア11によって送り込まれた被破砕木材を破砕ロータ61を高速回転させて破砕ビット65で打撃して粗破砕(1次破砕)し、粗破砕した木材片を第1アンビル62及び第2アンビル63に衝突させてその衝撃力によってさらに細かく破砕(2次破砕)するようになっている。破砕途中の木材片は、破砕室60内で破砕ロータ61の回転に伴って破砕室60内を周回し、破砕ビット65やアンビル62,63等と衝突を繰り返すうちにさらに細粒化される。そして、この木材片は、破砕室60内の壁面の一部を構成するスクリーン69,70の排出孔よりも粒径が小さくなった後に、スクリーン69,70を通過して排出コンベア3へ排出される。
【0031】
排出コンベア3は動力装置4から突出して設けた支持部材112によってその排出側(前方側)が支持されている。一方、この反対側(後方側)は支持部材113を介して本体フレーム36に懸架されている。これにより排出コンベア3は破砕装置12の下方から動力装置4の下方を通った後、機体前方側に向かって上り傾斜に配設されている。この排出コンベア3のフレーム114の長手方向前後両端にはそれぞれ駆動輪及び従動輪(ともに図示せず)が回転自在に設けられており、これら駆動輪及び従動輪にはコンベアベルト(図示せず)が掛け回してある。前方側に位置する駆動輪の回転軸には駆動装置(排出コンベア用油圧モータ)116が直結しており、この駆動装置116を回転駆動させることによって駆動輪と従動輪との間でコンベアベルトが循環駆動する。コンベアベルトの上方はコンベアフレーム114に固定したカバー115によって覆われており、コンベアベルト上の破砕木材が風等で飛散することを防止している。
【0032】
動力装置4は本体フレーム36の長手方向前方側端部上に支持部材117を介して搭載され、先の破砕装置12の前方側に位置している。この動力装置4には、エンジンやエンジンにより駆動される油圧ポンプや、油圧ポンプから各作動装置への圧油の流れを制御する制御弁、燃料や作動油を貯留するタンク類、エンジン冷却水を冷却するラジエータ、エアクリーナ等が内蔵されている。
【0033】
また、動力装置4の後方側かつ機体右側(図2中の下側)の区画には運転席118が設けられており、この運転席118には走行操作用の操作レバー119等が設けられている。一方、運転席118の下方の機体側部にはその他の操作・設定やモニタリング等を行うための操作盤120が設けられている。この操作盤120は、本実施の形態では地上から操作者が操作し易いように機体の側部に設けられているが、運転席118に設けても構わない。
【0034】
次に、本実施の形態の木材破砕機に備えられる第1及び第2スクリーン69,70について詳述する。ここでは、その中から第2スクリーン70を取り上げて説明する。なお、第1スクリーン69の構成は実質的に以下で説明する第2スクリーンの構成と同じであるので詳細な説明は省略し、同じ部分には同じ符号を付す。
【0035】
図4(a)〜(c)は本実施の形態の木材破砕機に備えられた第2スクリーンの側面図、図5(a)及び(b)はそれぞれ図4(b)に示した第2スクリーン70Bを図4(b)中のVa及びVb方向からみた矢視図、図6は図4(b)に示した第2スクリーン70Bの斜視図である。なお、先の各図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略するものとし、これ以降の他の図においても同様とする。
【0036】
図4(a)〜(c)が示す第2スクリーン70A,70B,70Cは、それぞれ前述の第2スクリーン70の交換用のスクリーンであり、篩い板部20の支持位置がそれぞれ異なっている。以下では、まず、第2スクリーン70Bについて説明する。
【0037】
図4〜図6において、第2スクリーン70Bは、破砕ビット65の回転軌道Rに沿うような湾曲形状からなる篩い板部(湾曲板部材)20Bと、篩い板部20B上に設けられた所定径から成る複数の孔であって、破砕木材が排出される際に通過する排出孔21Bと、破砕ビット65の回転軌道Rから篩い板部20Bの内径面までの隙間の距離が所定の間隔寸法Dとなるように篩い板部20Bを支持するフランジ部(支持部)22と、篩い板部20Bを破砕ロータ61径方向外側から支持することにより補強している補強部23とを備えている。なお、以下の説明における方向の説明については、木材破砕機にスクリーン70(70A〜C)を組み込んだときの状態における方向を用いる。
【0038】
フランジ部22は、篩い板部20Bを木材破砕機の幅方向両側から支持する湾曲形状の一対の部材であって、木材破砕機に固定されたスクリーン係合部材97における凹部111(図10(c)参照)と係合することにより第2スクリーン70Bの破砕室60における姿勢を保持するように構成されている。また、フランジ部22は破砕ロータ61径方向に所定の厚みを有しており、この厚みを利用して破砕ビット65の回転軌道Rに対する篩い板部20の支持位置を破砕ロータ61径方向に進退させることができる。これにより、篩い板部20の支持位置によって間隙寸法Dが調整可能で、さらに、フランジ部22を共通部分とする相互交換可能なスクリーン(例えば、第2スクリーン70A,70C)を構成することができる。なお、内径面位置が異なる交換用スクリーンの各篩い板部20の形状は、破砕室60が円筒形状に構成されるように、破砕ロータ61の回転中心を中心とし、そこから各内径面までの距離を半径とする円柱の一部にするのが好ましい。
【0039】
ところで、一般的に、間隙寸法Dは破砕室内を周回する際に木材が受ける破砕作用に影響を与えることが知られている。例えば、破砕ビット65やアンビル62,63によって1次及び2次破砕された後に破砕室60内を周回する破砕途中の木材のサイズが間隙寸法Dより大きい場合には、その木材は、破砕室60の内壁と破砕ビット65の回転軌道Rの隙間に逃げることなく破砕ロータ61の回転に同伴して破砕室60内を周回する。これにより、破砕途中の木材は、破砕室60内を周回する間に、破砕ビット65、アンビル62,63、又は破砕途中の他の木材片等と繰り返し衝突することにより破砕される。他方、破砕室60内を周回する木材のサイズが間隙寸法Dより小さい場合には、その木材は破砕室60の内壁と破砕ビット65の回転軌道Rの隙間に入り込むことができる。従って、上記のような周回に伴う破砕ビット65等との衝突による破砕作用は、木材のサイズが間隙寸法Dより大きい場合と比較して小さくなる。このように間隙寸法Dよりサイズが大きい木材には周回による破砕作用が相対的に強く働く。これを換言すれば、1次及び2次破砕を受けた木材は、排出孔21の径の大きさを考慮しなければ、破砕ロータ61の回転に伴って破砕室60内を周回するうちに、上記のような周回による破砕の影響を受けることにより間隙寸法Dの大きさ程度までは効率よく破砕され、間隙寸法Dより粒径の大きい木材チップが生産される割合は少なくなるということが言える。
【0040】
また、上記の破砕作用に基づいて木材チップの粒径と間隙寸法Dの関係をまとめると次のようになる。即ち、間隙寸法Dを所望のチップ粒径より小さくすれば、木材には周回による破砕作用が強く与えられる。つまり、木材は間隙寸法Dと同程度の粒径に至るまでは効率良く破砕されるので、生産される木材チップの粒径分布の質(以下、粒度品質とする)の向上を期待することができる。他方、間隙寸法Dを所望の粒径より大きくすれば、周回によって木材に与えられる破砕作用が弱くなる。従って、木材は間隙寸法D程度までしか破砕されないので粒度は粗くなるが、単位時間あたりに生産できる木材チップの量(以下、処理量とする)が優先されることが期待できる。このように、所望の粒径に応じて間隙寸法Dを調整することにより、粒度品質を重視するか、処理量を重視するかを適宜調整することができる。
【0041】
ところで、図4において、図4(a)に示した第2スクリーン70Aの篩い板部20Aは、第2スクリーン70Bの篩い板部20Bと比較して破砕ロータ61径方向内側に位置するように構成されている。また、これと反対に、図4(c)に示した第2スクリーン70Cの篩い板部20Cは、篩い板部20Bより径方向外側に位置している。ここで、例えば、図4(b)に示したスクリーン70Bが、その排出孔21Bの径によって設定されるチップ粒径において、粒度品質と処理量のバランスが最適になるように篩い板部20Bの位置が設定されているとともに、スクリーン70Bの排出孔21Bの径はスクリーン70Aとスクリーン70Cの排出孔の径と同一であるものと仮定する。この場合、上記のような排出孔21の径と間隙寸法Dの関係を考慮すると、スクリーン70Bと比較して、スクリーン70Aは粒度品質を重視する場合に用いる交換用部材であり、反対に、スクリーン70Cは処理量を重視する場合に用いる交換用部材であるいうことができる。
【0042】
このように本実施の形態は、フランジ部22による篩い板部20の支持位置が異なる交換用スクリーンを予め複数種類用意しておくことにより、木材破砕機における間隙寸法Dを調整するものである。これにより、上記において説明した木材チップの粒径と間隙寸法Dとの関係を利用して、生産する木材チップの粒度品質と処理量をニーズに応じて制御することができる。
【0043】
次に、粒度品質と処理量のバランスが概ね良好となる(即ち、粒度品質の良いチップを効率良く得ることができる)ような間隙寸法D[mm]の範囲について説明する。
【0044】
図7は粒度品質の良い木材チップを効率良く得るための間隙寸法Dと第1及び第2スクリーン69,70の排出孔径(r[mm]とする)の相関関係を表す図である。図7に示すように、排出孔径rを25mmに設定する場合には間隙寸法Dを好ましくは5〜20mmの範囲に、排出孔径rを50mmに設定する場合には間隙寸法Dを好ましくは15〜30mmの範囲に、また、排出孔径rを100mmに設定する場合には間隙寸法Dを好ましくは25〜40mmの範囲に設定すると粒度品質の良いチップを比較的効率良く得ることができる。また、図7が示すように排出孔径rと間隙寸法Dには概ね比例関係が成り立っており、斜線で示された領域(0.4r−5≦D≦0.4r+10)、かつ、排出孔径rが12.5〜150mm程度の範囲であれば、上記3つの場合と同様の効果を得ることができることを発明者らは知見した。なお、粒度品質の低下を防止するためには、上記のような排出孔径rの範囲に関わらず、少なくとも間隙寸法Dを排出孔径rより小さく設定すれば上記のような周回による破砕作用を積極的に利用することが可能である。
【0045】
なお、上記の説明においては、第2スクリーン70を間隙寸法Dの調整手段として利用する場合について説明してきたが、これと実質的に同じ構成から成る第1スクリーン69にも同様に適用可能であることは言うまでもない。
【0046】
次に、図8〜図10を用いて第1スクリーン69,第2スクリーン70の交換機構の構成について説明する。
【0047】
まず、図8及び図9を用いて、第1スクリーン69の付近の構成について説明する。
【0048】
図8(a),(b)は本実施の形態の木材破砕機に備えられた第1スクリーン付近の構成を抽出して示す図であり、図8(a)は破砕作業時の状態を示す図、図8(b)は第1スクリーン69が交換可能な状態を示す図である。また、図9は図8(a)中のIX-IX断面における矢視図である。
【0049】
図8及び図9に示すように、アーム71は木材破砕機本体2の幅方向に一対設けられており、各アーム71は回動軸72,73及びビーム74によって間隔を介して連結されている。また、アーム71は、第1スクリーン69のフランジ部22の形に切り取られ第1スクリーン69のフランジ部22と係合する凹部82をドラム67径方向外側に有しており、木材破砕機本体2に対して固定されている支持部材76とシアピン77を介して連結されている。回動軸72の両端部には軸受75が設けられており、軸受75は回動軸72を支持している。このような構成により、アーム71は、通常作業時には支持部材76によって本体2に対して固定され、破砕ビット65の回転軌道に対して第1アンビル62の破砕刃面が破砕室内で略直角を成すようにアンビル62を固定するとともに、第1スクリーン69の内径面が破砕ロータ61の回転中心を臨むように第1スクリーンの姿勢を固定している。
【0050】
シアピン77は、所定値以上の衝撃荷重が第1アンビル62を介してアーム71にかかった場合等には、破断してアーム71の拘束を解くように構成されている。したがって、第1アンビル62に過度な負荷がかかった場合にはアーム71は回動可能となるので、破砕ビット65回転方向に倣う方向(図8中反時計回り)に回動軸72を軸芯に回動し、アンビル62を破砕室60から退避させる。これによりアンビル62やその周辺の部材の損傷を防止することができる。ところで、図8中において、符号78を付した部材は木材破砕機本体の側面に対して固定されたストッパ78である。このストッパ78は、アーム71が回動軸72を中心に回動した場合に、アーム71と衝突することによってその回動範囲を制限するものであり、アーム71と他の構成部材が干渉することを防止している。
【0051】
スクリーン支持部材80(バナナプレート)は、回動軸73を介してアーム71と回動可能に連結されているとともに、回動軸73と異なる箇所に挿通された回動軸127を介して油圧シリンダ81のロッド側端部と連結している。また、油圧シリンダ81のボトム側端部は先のビーム74に連結している。即ち、スクリーン支持部材80は油圧シリンダ81の伸縮によって回動軸73を中心に回動するように構成されている。したがって、油圧シリンダ81が伸長するとスクリーン支持部材80は破砕室60に向かって回動するので、スクリーン支持部材80は、凹部82を介して係合する第1スクリーン69をドラム67径方向外側から内側に向かってアーム71に押さえ付けて拘束する。他方、油圧シリンダ81が縮短すると、破砕室60とは反対方向に回動するので第1スクリーン69の拘束は解かれ、第1スクリーン69を他のスクリーンと交換することができる。
【0052】
また、図9において、スクリーン支持部材80の回動をロックするロック機構85は、アーム71と固定関係にあるブラケット86と、ブラケット86にボトム側端部が固定され破砕機の幅方向に設けられたロックシリンダ87と、ロックシリンダ87のロッド側端部に固定されたテーパブロック88(係合部材)と、一端がテーパブロック88と係合するようになっており、他端がスクリーン支持部材80と固定されているテーパブロック89と、ロックシリンダ87の伸縮動作に伴うテーパブロック88のスライド動作を外側からガイドするガイド部材90とを備えている。
【0053】
このように構成したロック機構85において、ロックシリンダ87を伸長させると、テーパブロック88,89がそれぞれ係合し、スクリーン支持部材80がアーム71に対して相対的に回動することを拘束する。他方、ロックシリンダ87を縮短させると、テーパブロック88,89の係合が解かれるので、スクリーン支持部材80は回動可能に開放される。このようにロック機構85は、ロックシリンダ87の伸縮によってスクリーン支持部材80の回動を制御することができる。
【0054】
次に、図10を用いて、第2スクリーン70の付近の構成について説明する。
【0055】
図10(a)〜(c)は本実施の形態の木材破砕機に備えられた第2スクリーン70付近の構成を抽出して示す図であり、図10(a)は破砕作業時の状態を示す図、図10(b)はロック機構105の拘束を解除した状態を示す図、図10(c)は第2スクリーン70が交換可能な状態を示す図である。
【0056】
図10(a)〜(c)に示すように、第2スクリーン70交換機構は、押え板97、スクリーン支持部材98、油圧シリンダ101、ロック機構105等によって構成されている。
【0057】
押え板97は、第2スクリーン70の押え板であり、その外周部に第2スクリーン70の係合部22と係合する凹部111(図10(c)参照)を備えているとともに、破砕作業(図10(a)の状態のとき)等に伴う荷重を受けても姿勢維持が可能なように、例えば、木材破砕機(又は本体フレーム36上に別途設けた図示しない支持部材等)の内部側面に対してボルト等によって固定されている。
【0058】
スクリーン支持部材(バナナプレート)98は第2スクリーン70の係合部22を外周側から押え板97に押し付けて保持する枠型の支持部材である。このスクリーン支持部材(篩部材保持手段)98は、その周方向(破砕ロータ61の周方向)一方側(図10では左側)端部に設けた回動軸99が破砕機内部側面等に固定した軸受100によって支持され、上下方向に回動する(破砕ロータ61に対して進退する)構成となっている。スクリーン支持部材98の周方向他方側端部は、その破砕ロータ軸線方向両端の2箇所において、1対の油圧シリンダ(第1のアクチュエータ)101のロッド側端部とそれぞれ連結している。他方、油圧シリンダ101のボトム側端部は、破砕機内部側面にボルト等で固定した支持部材102にそれぞれ連結されて拘束されている。
【0059】
油圧シリンダ101の両端部は、それぞれ、スクリーン支持部材98、支持部材102とピンを介して回動可能に連結されているので、スクリーン支持部材98は油圧シリンダ101の伸縮動作に伴って回動軸99を支点に回動する。従って、油圧シリンダ101を伸長させることによって、スクリーン支持部材98を押え板97から離間させることができるので、第2スクリーン70は破砕ロータ61の軸線方向に引き抜き可能となり、第2スクリーン70を容易に交換できる構成となっている。なお、この油圧シリンダ101の伸縮操作は破砕機内部側面に設けた操作盤(図示せず)により、前述したスクリーン支持部材80を回動させる油圧シリンダ81の伸縮操作と共に行われる。
【0060】
ロック機構105は、スクリーン支持部材98の回動動作を拘束するものであり、油圧シリンダ101と同様、スクリーン支持部材98の破砕ロータ軸線方向両端側に一対設けられている。このロック機構105は、破砕機内部側面に固定されたブラケット106と、このブラケット106にボトム側端部が固定され前後方向(図10中左右方向)に設けたロックシリンダ(第2のアクチュエータ)107と、このロックシリンダ107のロッド側端部及びスクリーン支持部材98にそれぞれ固定され互いに係合するテーパ部を有するテーパブロック108,109と、破砕機内部側面にボルト等で固定され、ロックシリンダ107の伸縮動作に伴うテーパブロック(係合部材)108のスライド動作をガイドするガイド部材110とを備えている。
【0061】
テーパブロック108は、スクリーン支持部材98及び押え板97の間に第2スクリーン70が狭持されているとき、破砕ロータ61径方向外側からスクリーン支持部材98に設けたテーパブロック109に係合する。これにより、第2スクリーン70が挟持されているとき、ロックシリンダ107を伸長させ、テーパブロック108,109を係合させることで、スクリーン支持部材98の回動動作は拘束され、第2スクリーン70は破砕作業時の破砕室60を確定する位置(図10(a)の位置)で強固に固定、保持される。したがって、図10(c)のように油圧シリンダ101の伸長によりスクリーン支持部材98を回動させ第2スクリーン70を交換する場合は、まず図10(b)に示すようにロックシリンダ107を縮短させ、テーパブロック108,109の係合を解いた上で行う。なお、このロックシリンダ107の伸縮操作は、例えば、破砕機内部側面に設けた操作盤(図示せず)により、前述したスクリーン支持部材80の回動動作を拘束するロックシリンダ87の伸縮操作と共に行われる。
【0062】
次に、上記のように構成した本実施の形態に係る木材破砕機の動作を説明する。
【0063】
はじめに、スクリーン69,70の交換作業について説明する。本実施の形態の木材破砕機によって生産される木材チップの粒度品質と単位時間あたりの処理量のバランスは、破砕機に組み込んだ際に間隙寸法Dが異なる複数種類の第1及び第2スクリーン69,70を予め用意しておき、それらを適宜交換することにより調整される。
【0064】
まず、作業者は、破砕装置12の側面の扉133(図1参照)を開放する。次に、破砕機内部側面に設けた操作盤(図示せず)によって、ロックシリンダ87,107を縮短させてロックを解除する。続けて、この操作盤を操作して、油圧シリンダ81を縮短させると共に油圧シリンダ101を伸長させ、スクリーン支持部材80,98をそれぞれアーム71及び押え板97から離間させる。これにより、破砕機内部側面に適宜設けた開口部(図示せず)等を介して第1及び第2スクリーン69,70が交換可能となる。そして、作業者は手作業によって第1及び第2スクリーン69,70を破砕装置12の側方へ引き抜き、所望の間隙寸法Dが構成される新たな第1及び第2スクリーン69,70を挿入する。このようにして、スクリーンの交換が終了したら、上記と反対の手順でスクリーン支持部材80,98を元の位置に戻し、スクリーン交換作業を終了する。
【0065】
次に、本実施の形態における破砕作業中の動作について説明する。
【0066】
例えば、油圧ショベルのグラップル等、適宜の作業具によりホッパ10内に被破砕木材を投入すると、被破砕木材は、ホッパ10の拡開部17にガイドされて送りコンベア11の搬送体42上に載置され、循環駆動する搬送体42によって木材破砕機前方側に向かってほぼ水平方向に搬送される。
【0067】
送りコンベア11上の被破砕木材は、押圧コンベア装置13付近まで搬送されると、押圧コンベア装置13の押圧ローラ53の下部に入り込み押圧コンベア装置13を押し上げる。これにより、送りコンベア11上の被破砕木材は、押圧コンベア装置13の自重の作用により送りコンベア11との間に押圧把持された状態で、破砕室60へと導入される。これにより、被破砕木材は押圧ローラ54と送りコンベア11とに挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕室60内に突出する。そして、この突出部分に回転する破砕ロータ61の破砕ビット65が衝突することで比較的大雑把に1次破砕される。1次破砕された被破砕木材の木材片は、破砕ロータ61の外周側の破砕室60内の空間を破砕ロータ61の回転方向に周回し、第1及び第2アンビル62,63に順次衝突し、その衝撃力によってさらに細かく2次破砕される。
【0068】
以上のようにして破砕された破砕途中の木材片のうち第1及び第2スクリーン69,70に複数設けた排出孔21よりも大きなものは継続して破砕室60内を周回し、破砕ビット65や第1及び第2アンビル62,63等と再度衝突することにより、さらに破砕されていく。このようにして、第1及び第2スクリーン69,70の排出孔21を通過する粒径にまで粉砕されると、破砕木材(木材チップ)が第1又は第2スクリーン69,70の排出孔21を通過して、破砕装置12から排出される。
【0069】
破砕装置12から排出された破砕木材(木材チップ)は、シュート(図示せず)を介し循環駆動する排出コンベア3のコンベアベルト上に落下し、前方側(図1及び図2中右側)へと搬送され、リサイクル品として排出される。
【0070】
次に、以上のように構成及び動作する本実施の形態の作用及び効果を説明する。
【0071】
従来技術においては、スクリーンの内径面から破砕ビットの回転軌道までの間隙寸法を目的等に応じて適宜調整することが不可能であった。これに対して、本実施の形態においては、篩い板部20の支持位置の異なる交換用スクリーンを予め複数種類用意しておくことにより、ニーズに応じてこれら交換用スクリーンに適宜交換して間隙寸法Dを調整することができるので、木材チップを生産する際の粒度品質と処理量のバランスを適宜調整することができる。これにより、現場のニーズに柔軟に対応しながら単体の木材破砕機で効率良く破砕作業を行うことができる。
【0072】
また、従来技術では、スクリーンを交換して排出孔径を変更することによりチップ粒径を調整しようとしていたが、これだけでは、破砕途中の木材の破砕に影響を与える間隙寸法Dを変更することができず、設定した粒径に応じた破砕が破砕室内で行われないために、チップの粒度品質や処理量が低下する場合があった。これに対して、本実施の形態においては、フランジ部22による篩い板部20の支持位置と排出孔21の径の組合せを適宜選択できるように予め複数種類の交換用スクリーンを用意することによって、排出孔21の粒径の設定変更に応じて間隙寸法Dを調整することが可能である。これにより、チップ粒径の設定を変更しても、所望の間隙寸法で破砕することができるので、木材チップを生産する際の粒度品質と処理量のバランスを適宜調整することができる。
【0073】
また、従来技術では、投入する被破砕木材の形状によって破砕のされ方が異なり、処理能力が減量する場合や、粒度品質が低下する場合、又は、破砕効率が低下する場合等があった。しかし、本実施の形態では、このような場合においても間隙寸法Dを調整することができるので、目的に応じた破砕をすることができる。
【0074】
なお、以上の説明においては、スクリーン支持部材80,98によって支持されるとともに、凹部82,111と係合することによって破砕室を構成する交換可能なスクリーン69,70を利用して間隙寸法Dを調整する実施の形態について説明してきたが、破砕室61を構成する部材等を利用して間隙寸法Dを調整する手段はこれに限られない。例えば、破砕室60の木材破砕機幅方向両側面に破砕ロータ61の回転中心から同心円状に半径の異なる複数の凹部(溝部)を適宜設け、この各凹部と係合するような係合部を幅方向両側面に有するスクリーンを複数種類用意する。このような構成によっても、スクリーンを交換することによって、本実施の形態同様に段階的に間隙寸法Dを調整することが可能である。また、破砕室61を構成する木材破砕機幅方向の内壁面の少なくとも一部を破砕ロータ61径方向に沿って機械的に進退可能な構成(例えば、ネジ機構等を利用して破砕ロータ61径方向に進退する可動内壁面を設ける)として、間隙寸法Dを調整するような構成にしてもよい。
【0075】
また、上記の構成の他に、本実施の形態で説明した交換用のスクリーンとほぼ同様の形状から成り排出孔21が配されていない湾曲板部材を作成し、これらをスクリーン支持部材80,98を含むスクリーン交換機構に組み込んで木材破砕機を構成しても良い。このような部材を用いても、排出孔21の有無に関わらず間隙寸法Dは調整可能であるので、破砕室60内を周回する際に働く破砕作用を制御することができる。さらに、スクリーン交換機構を利用したものではなく、破砕ロータ61径方向に所定厚みを有する湾曲形状の板部材であって、破砕室60の木材破砕機幅方向の内壁面と接する外周面と、破砕ロータ61径方向内側の面(内径面)とを備え、ボルト等で交換可能に内壁面に取り付けられている湾曲板部材を用意し、この湾曲板部材を厚みが異なる他の湾曲板部材と交換することによって間隙寸法Dを調整するように木材破砕機を構成してもよい。
【0076】
以上の説明においては、破砕室60の壁面をかたちづくる部材等によって間隙寸法Dを調整する構成について説明したが、間隙寸法Dの調整手段は他の部材によっても調整可能である。その他の間隙寸法Dの調整部材の1つとしては、破砕ビット65が挙げられる。これには、まず、破砕ロータ61上の支持部材64に破砕ビット65を取り付けた状態で破砕ロータ61径方向の外側端部に位置する部分が他と異なる(即ち、破砕ロータ61径方向外側の破砕刃の長さが異なる)交換用の破砕ビットを複数種類用意する。そして、この破砕ビットによって間隙寸法Dを調整する際には、これら交換用の破砕ビットをニーズに応じて適宜交換して最大回転半径Rの大小を調整することによって間隙寸法Dを調整する。また、破砕ビット65を利用する他の手段としては、支持部材64にボルト締結する際に用いるボルト孔を天地非対称の位置に設けた破砕ビットを利用しても良い。この破砕ビットを利用して間隙寸法Dを調整する場合には、ボルト66を緩めて破砕ビットの天地を反転させることにより破砕ビットの破砕ロータ61径方向外側端部位置を変更する。このように構成しても、上記同様、間隙寸法Dを調整することができる。
【0077】
なお、以上において説明した、スクリーン、湾曲板部材、破砕ビットなどの各間隙調整手段を適宜組み合わせることによって間隙寸法Dを調整しても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0078】
さらに、以上においては、被破砕木材の押圧導入手段として、前述した押えコンベア装置13を採用したが、これに限られず、例えば、駆動ローラ及び従動ローラの間に無端状の部材(ベルトやチェーン等)を巻き回したものを用いてもよい。また、その押圧時の動作も、回動動作でなく上下動する構成として構わない。この場合も同様の効果を得る。
【0079】
また、本発明を自力走行可能な木材破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引して走行可能な移動式木材破砕機、若しくは例えばクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式木材破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式木材破砕機に適用しても良いことは言うまでもなく、これらの場合も上記と同様の効果を得る。
【0080】
以上においては破砕対象物(被破砕物)として木材を破砕する場合を取り上げて説明してきたが、破砕対象物は木材に限らず、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等も対象とすることができ、これらを破砕した場合についても上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の木材破砕機の実施の形態の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の木材破砕機の実施の形態の全体構造を示す上面図である。
【図3】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた破砕装置近傍の側面カバー内部の構造を示す側面図である。
【図4】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第2スクリーンの側面図である。
【図5】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第2スクリーンの側面図である図4(b)中のVa及びVb方向からの矢視図である。
【図6】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第2スクリーンの斜視図である。
【図7】粒度品質の良い木材チップを効率良く得るための間隙寸法Dと第1及び第2スクリーンの排出孔径の相関関係を表す図である。
【図8】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第1アンビル及び第1スクリーン付近の構成を抽出して示す図である。
【図9】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第1アンビル及び第1スクリーン付近の構成を抽出して示す図8中のIX-IX断面における矢視図である。
【図10】本発明の木材破砕機の実施の形態に備えられた第2スクリーン付近の構成を抽出して示す図である。
【符号の説明】
【0082】
D 間隙寸法
R 回転軌道
r 排出孔径
12 破砕装置
20 篩い板部(湾曲板部)
21 排出孔
22 フランジ部(支持部)
23 補強部
61 破砕ロータ
64 支持部材
65 破砕ビット
67 ドラム
69 第1スクリーン(篩部材,湾曲板部材)
70 第2スクリーン(篩部材,湾曲板部材)
80 スクリーン支持部材(篩部材保持手段)
82 凹部(係合部)
98 スクリーン支持部材(篩部材保持手段)
111 凹部(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯を中心に回転するドラムと、
このドラムの周胴面上に配され、回転して被破砕木材を破砕する破砕ビットと、
前記ドラム径方向外側に間隔を介して設けられている湾曲板部材とを備え、
この湾曲板部材の内径面の位置を前記ドラム径方向に進退させることによって、前記湾曲板部材の内径面から前記破砕ビットの最大回転軌道までの間隙寸法を調整可能なように構成されていることを特徴とする木材破砕機。
【請求項2】
請求項1記載の木材破砕機において、
前記湾曲板部材は、交換することによって前記間隙寸法を調整することができる交換可能な部材であって、前記湾曲板部材とは内径面位置が異なる他の湾曲板部材と交換されることによって内径面位置を進退させて前記間隙寸法を調整することを特徴とする木材破砕機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の木材破砕機において、
前記湾曲板部材は破砕木材の粒径を設定する排出孔を有していることを特徴とする木材破砕機。
【請求項4】
請求項3記載の木材破砕機において、
前記間隙寸法を前記湾曲板部材の排出孔の径に応じて調整するように構成されていることを特徴とする木材破砕機。
【請求項5】
請求項4記載の木材破砕機において、
前記間隙寸法は前記排出孔の径より小さく設定されていることを特徴とする木材破砕機。
【請求項6】
請求項5記載の木材破砕機において、
前記間隙寸法をD[mm]、前記排出孔の径をr(12.5≦r)[mm]としたとき、前記間隙寸法D[mm]は、
0.4r−5≦D≦0.4r+10[mm]
となるように構成されていることを特徴とする木材破砕機。
【請求項7】
軸芯を中心に回転するドラムと、
このドラムの周胴面上に配され、回転して被破砕木材を破砕する破砕ビットと、
前記ドラム径方向外側に間隔を介して設けられている湾曲板部材とを備え、
前記破砕ビットにおける前記ドラム径方向外側端部の位置を変更することによって、前記湾曲板部材の内径面から前記破砕ビットの最大回転軌道までの間隙寸法を調整可能なように構成されていることを特徴とする木材破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−260546(P2007−260546A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88085(P2006−88085)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】