説明

木質系成形品の製造方法及び木質系成形品

【課題】フィラー中充填となる木質系材料を用いた素材から樹脂含有ペレット等の木質系成形品を製造する際、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を製造することを課題とする。
【解決手段】100重量部の微粒状又は繊維状の木質系材料M1と、0.1〜42重量部の相溶化剤M3と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料M1が減容化された素材M5を押出機構A13により混合しながら不定形の状態で押し出し、押し出された不定形の素材M10と、前記相溶化剤M3の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の樹脂M2と、を少なくとも用いた素材M32を押出機構A53により混合しながら押し出して成形することにより、樹脂含有ペレット(木質系成形品)M40を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系材料、樹脂、及び、親水基を有し前記樹脂と相溶性のある相溶化剤、を少なくとも用いて成形品を製造する木質系成形品の製造方法、並びに、木質系成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木粉と熱可塑性樹脂とマレイン酸変性樹脂とを混練して押出成形することにより木質系の樹脂含有ペレットを形成し、該ペレットを混練して押出成形することによりウッドプラスチック(本成形品)を形成することが行われている。
また、特許文献1の実施例に記載されるように、80重量%の木粉と18重量%のポリプロピレンと2重量%のマレイン酸変性樹脂という木粉を多く含む素材(フィラー高充填の素材)を、同熱可塑性樹脂を溶融させながら押出機構で混合して成形することなく不定形の状態で押し出し、押し出した不定形の素材を粉砕機構で粉砕し、粉砕した素材を押出成形して木質系の樹脂含有ペレットを形成することも行われている。
【特許文献1】特開2006−256296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木粉等を混練して樹脂含有ペレットを押出成形する際、木粉が押出成形機のホッパ内で詰まる可能性がある。そのため、木粉を所定の大きさに固める減容化処理を行い、木粉の減容物をホッパに投入することが行われる。なお、減容化とは、素材の占める体積を減らす処理をいうものとする。
木粉を減容化すると、水分により木粉同士に強い水素結合が生じ、木粉同士が強く結びつくことがある。このような木粉の減容化物30〜70重量%及び熱可塑性樹脂(マレイン酸変性樹脂を含む)30〜70重量%という木粉と樹脂とを同程度含む素材(フィラー中充填の素材)を、同熱可塑性樹脂を溶融させながら不定形の状態で押し出し、押し出した不定形の素材を押出成形すると、成形品中に木粉の集合物(集合した塊)が含まれることがある。このことから、木粉の減容化物と樹脂とを同程度用いて木質系の樹脂含有ペレットを形成する際に木粉の集合物を小さくして木粉の分散を良好にさせ、本成形品(製品)の強度を向上させることが望まれている。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、フィラー中充填となる木質系材料を用いた素材から樹脂含有ペレット等の木質系成形品を製造する際、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、木質系材料、樹脂、及び、親水基を有し前記樹脂と相溶性のある相溶化剤、を少なくとも用いて成形品を製造する木質系成形品の製造方法であって、100重量部の微粒状又は繊維状の前記木質系材料と、0.1〜42重量部の前記相溶化剤と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材を押出機構により混合しながら不定形の状態で押し出す押出工程と、押し出された不定形の素材と、前記相溶化剤の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも用いた素材を押出機構により混合しながら押し出して成形する成形工程とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、木質系材料、樹脂、及び、親水基を有し前記樹脂と相溶性のある相溶化剤、を少なくとも用いて成形した木質系成形品であって、100重量部の微粒状又は繊維状の前記木質系材料と、0.1〜42重量部の前記相溶化剤と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材を押出機構により混合しながら不定形の状態で押し出し、押し出された不定形の素材と、前記相溶化剤の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも用いた素材を押出機構により混合しながら押し出して成形したことを特徴とする。
【0007】
上記相溶化剤は、親水基を有しているため、親水性の木質系材料となじむ。ここで、上記押出工程で混合される素材は、少なくとも微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材とされている。また、同素材は、100重量部の木質系材料に対して0.1〜42重量部の相溶化剤を含むので、木質系材料の配合割合がフィラー中充填よりも多い素材とされている。このため、混合により減容化物同士がぶつかって減容化物が剪断され、素材中で微粒状又は繊維状の木質系材料が良く分散して相溶化剤となじみ、このような状態の不定形の素材が押し出される。そして、木質系材料の分散の良好な不定形の素材と樹脂とが混合されると、相溶化剤により樹脂と木質系材料とが橋渡しされる。このような状態の素材が押し出されて成形されると、木質系材料の分散が良好で強度の良好な木質系成形品が形成される。また、形成された木質系成形品を少なくとも含む素材を押出機構により混合しながら押し出して成形した本成形品も、木質系材料の分散が良好で強度が良好となる。
ここで、上記木質系成形品を製造するために用いられる素材は、100重量部の木質系材料に対し樹脂と相溶化剤を合わせて43〜240重量部混合されるフィラー中充填の素材とされている。
【0008】
フィラー中充填となる配合割合の木質系材料の減容化物と樹脂と相溶化剤を一緒に混合しても木質系材料の集合物が十分に剪断されないことがあり、このような素材を不定形の状態で押し出して粉砕しても、素材中で木質系材料が十分に分散していないことがある。
【0009】
本発明では、一旦、フィラー中充填よりも多い配合割合の木質系材料と相溶化剤を含む素材を押出機構で混合しながら不定形の状態で押し出し、樹脂を加え、これらを押出機構で混合しながら押し出して成形するので、一回目の混合時に木質系材料の集合物が良好に剪断される。また、最初に相溶化剤を全て入れた素材が二回混合されるので、木質系材料と相溶化剤とが十分になじむ。従って、単にフィラー中充填の素材を二回押出機構で混合しながら押し出す場合よりも木質系材料の分散性が向上し、木質系成形品及び本成形品の強度が向上する。
【0010】
なお、本発明にいう木質系成形品には、木質系の樹脂含有ペレット、ペレットよりも大きい木質系の本成形品、の両方が含まれる。また、本発明にいう木質系成形品が最終製品、すなわち、本成形品とされてもよいし、木質系成形品を少なくとも用いて成形した後成形品が本成形品とされてもよい。
本発明にいう微粒状は、ペレットよりも細かい状態をいうものとし、粉末状を含むものとする。
本発明にいう減容化とは、素材の占める体積を減らす処理をいうものとし、固化やペレット化を含む概念とする。
上記押出工程で混合する素材は、木質系材料のみが減容化された素材でもよいし、木質系材料とともに相溶化剤等も一緒に減容化された素材でもよい。
上記押出工程と上記成形工程とでは、同じ押出機構を用いてもよいし、異なる押出機構を用いてもよい。
押出工程で混合する素材は、木質系材料と相溶化剤の双方のみでもよいし、成形工程で混合する樹脂等、木質系材料と相溶化剤の双方以外の素材を含んでいてもよい。成形工程で混合する素材は、押出工程で押し出された不定形の素材のみでもよいし、該不定形の素材以外の素材を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、フィラー中充填となる微粒状又は繊維状の木質系材料を用い、かつ、少なくとも微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材から木質系成形品を製造する際、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を製造することが可能になる。
請求項2に係る発明では、少ない相溶化剤でも木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を製造することが可能になる。
請求項3に係る発明では、押出工程で押し出された不定形の素材と樹脂とを少なくとも含む素材が減容化されるので、木質系成形品を成形する際、素材が減容化されていない場合と比べて素材の供給が容易になる。従って、木質系成形品の成形をさらに容易にさせることができる。
請求項4に係る発明では、フィラー中充填となる微粒状又は繊維状の木質系材料を用いた素材から成形される木質系成形品において、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)木質系成形品及び本成形品の製造方法の説明:
(2)木質系成形品及びその製造方法の作用、効果:
(3)各種変形例:
(4)実施例:
(5)まとめ:
【0013】
(1)木質系成形品及び本成形品の製造方法の説明:
図1と図2は、本発明の一実施形態に係る木質系成形品M40及び本成形品M50の製造方法を模式的に示している。図3は、木質系成形品の製造方法の変形例を模式的に示している。本実施形態に係る木質系成形品M40の製造方法は、木質系材料M1、樹脂M2、及び、親水基を有し前記樹脂M2と相溶性のある相溶化剤M3、を少なくとも用いて木質系成形品M40を製造する方法であって、以下述べる工程S1,S2を備える製造方法である。本製造方法の概略は、以下の通りである。
【0014】
すなわち、押出工程S1では、100重量部の微粒状又は繊維状の木質系材料M1と、0.1〜42重量部の相溶化剤M3と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料M1が減容化された素材M5を押出機構A24により混合しながら不定形の状態で押し出す。なお、混合は混練を含む概念とし、混練とは素材中の凝集物の引離しを目的とした破砕作用を積極的に求める処理をいうものとする。相溶化剤M3は、混合時に液状であればよいため、減容化の段階で固体状とされていてもよいし、押出機構A23に供給する段階で固体状とされていてもよい。
混合する素材M5は、木質系材料M1と相溶化剤M3の双方のみでもよいし、樹脂M2や添加剤M4,M6を含む素材でもよい。同素材M5は、図3に示すように微粒状又は繊維状の木質系材料M1のみが減容化された素材でもよいし、相溶化剤M3と樹脂M2と添加剤M4の少なくとも一部と一緒に微粒状又は繊維状の木質系材料M1が減容化された素材でもよい。
【0015】
成形工程S2では、押出工程S1で押し出された不定形の素材M10と、前記相溶化剤M3の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の樹脂M2と、を少なくとも用いた素材M32を押出機構A53により混合しながら押し出して成形する。成形される木質系成形品M40は、図1に示すような木質系の樹脂含有ペレットでもよいし、ペレットよりも大きい木質系の本成形品でもよい。成形品M40の成形は、押出成形が好適であるものの、射出成形等でもよい。
ここで、図1に示すように、不定形の素材M10と樹脂M2とを少なくとも一緒に減容化装置A40で減容化し、減容化した素材(減容化物)M30を少なくとも含む素材M32を押出機構A53により混合しながら押し出して成形してもよい。すると、不定形の素材M10と樹脂M2とを少なくとも含む素材が減容化されるので、木質系成形品M40を成形するとき、素材が減容化されていない場合と比べて素材の供給が容易になる。従って、木質系成形品M40の成形がさらに容易になる。むろん、不定形の素材M10を少なくとも含む素材を減容化装置A40で減容化した後、減容化した素材と樹脂M2とを少なくとも含む素材M32を押出機構A53により混合しながら押し出して成形することも可能である。
【0016】
なお、樹脂M2は、混合時に液状であればよいため、減容化の段階で固体状とされていてもよいし、押出機構A53に供給する段階で固体状とされていてもよい。減容化物M30を形成するための素材は、添加剤M11を含んでいてもよい。押出機構A53で混合する素材M32は、添加剤M31を含んでいてもよい。
【0017】
また、図2に示すように、不定形の素材M10を少なくとも用いて粉砕する粉砕工程を設け、粉砕された素材M20と樹脂M2とを少なくとも一緒に減容化装置A40で減容化し、減容化物M30を押出機構A53により混合しながら押し出して成形してもよい。不定形の素材M10が一旦粉砕されてから減容化されて木質系成形品M40の成形に用いられるので、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品が形成される。この場合、図2に示すように、粉砕後の素材M20と樹脂M2とを少なくとも一緒に減容化装置A40で減容化し、減容化物M30を少なくとも含む素材M32を押出機構A53により混合しながら押し出して成形してもよい。これにより、木質系成形品M40の成形がさらに容易になる。むろん、図3(b)に示すように、粉砕後の素材M30を少なくとも含む素材を減容化装置A40で減容化した後、減容化物M33と樹脂M2とを少なくとも含む素材を押出機構A53により混合しながら押し出して成形してもよい。
粉砕工程で粉砕する素材は、不定形の素材M10のみでもよいし、添加剤M11を含む素材でもよい。減容化物M30を形成するための素材は、添加剤M21を含んでいてもよい。押出機構A53で混合する素材M32は、添加剤M31を含んでいてもよい。
【0018】
添加剤M4,M6,M11,M21,M31は、固体状でもよいし、液状でもよい。
上述した素材M1,M2,M3,M4,M6,M11,M21,M31は、それぞれ、一種類の素材から構成されてもよいし、複数の種類の素材から構成されてもよい。
以上により、フィラー中充填となる微粒状又は繊維状の木質系材料M1を用いた素材から木質系成形品M40が形成される。
【0019】
図1に示すように、木質系成形品が樹脂含有ペレットM40である場合、本成形工程S3でペレットM40を少なくとも用いて本成形品M50を製造することになる。この本成形工程S3では、ペレットM40を少なくとも含む素材を押出機構A64により混合しながら押し出して成形する。本成形品M50の成形は、押出成形が好適であるものの、射出成形等でもよい。
混合する素材M42は、ペレットM40のみでもよいし、添加剤M41を含む素材でもよい。
【0020】
(各素材の説明)
木質系材料M1には、粉末状を含む微粒状又は繊維状の素材が用いられる。木質系材料M1には、木粉、木毛、木片、木質繊維、木質パルプ、木質繊維束、これらの組み合わせ、等の他、さらに、竹繊維、麻繊維、バカス、モミガラ、稲わら等セルロースを主成分とする材料を混合した素材、等を用いることができる。家具工場や建築現場等で発生する木材の切り屑、廃材の粉砕物、家具や建築用材等の廃棄物の粉砕物、等も、木質系材料M1として用いることができる。微粒状の木質系材料M1の粒径は、0.001〜1000μmが好ましく、大きさをより揃えるために0.02〜500μm、0.1〜200μmとしてもよい。
【0021】
樹脂M2には、溶融状態(液状)の熱可塑性樹脂、加熱することにより溶融可能な熱可塑性樹脂、液状の熱硬化性樹脂、これらの組み合わせ、等の合成樹脂等を用いることができる。なお、前記液状は、低粘度の液状から高粘度の液状まで全て含む。
樹脂M2に熱可塑性樹脂を用いると、成形装置A50,A60の加熱機構A54,A64で熱可塑性樹脂を溶融させることができるので、成形装置A50,A60に供給する樹脂M2を固形状にすることができる。
【0022】
樹脂M2に使用可能な熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリブテン(PB)、等)、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、塩化ビニル、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、これらの混合物、等を用いることができる。PPやPB等のポリオレフィンを含むポリオレフィンプラスチックは、容易に木質系成形品を成形することができる点で好適な樹脂である。
【0023】
樹脂M2に使用可能な熱硬化性樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、これらの混合物、等を用いることができる。液状熱硬化性樹脂には、必要に応じて、スチレンやビニルトルエン等のラジカル重合性モノマー、これらのオリゴマー、ハイドロキノンやp−ベンゾキノン等の重合禁止剤、充填材、滑剤、繊維状素材、核剤、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、等の添加剤が含まれていてもよい。例えば、液状の不飽和ポリエステル樹脂の場合、通常、不飽和ポリエステルとラジカル重合性モノマーと重合禁止剤が含まれている。
【0024】
ところで、木質系材料M1は、水酸基(ヒドロキシル基)等の親水基が多く存在するため、親水性を有する。一方、樹脂M2は、疎水性であることが多く、木質系材料M1となじまないことが多い。これら木質系材料M1と樹脂M2を橋渡しするため、親水基を有し、かつ、樹脂M2と相溶性のある相溶化剤M3が用いられる。すなわち、相溶化剤M3は、樹脂M2と混ざりながら自らの親水基により木質系材料M1となじみ、木質系材料M1と樹脂M2とを結び付ける。
【0025】
相溶化剤M3の親水基には、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルホン基、等の官能基がある。相溶化剤は、例えば、これらの官能基を含む化合物を合成樹脂の原料に添加して合成することにより得ることができる。通常、樹脂M2と相溶性のある合成樹脂の原料に不飽和酸を添加して共重合させて得られる酸変性合成樹脂を相溶化剤M3に用いることができる。樹脂M2が合成樹脂である場合、樹脂M2と相溶性のある合成樹脂は、樹脂M2そのもののでもよいし、樹脂M2とは異なる合成樹脂でもよい。
相溶化剤M3に熱可塑性の素材を用いると、コンパウンド生成装置A20の加熱機構A24で相溶化剤M3を溶融させることができるので、コンパウンド生成装置A20に供給する相溶化剤M3を固形状の素材とすることができる。熱可塑性の相溶化剤を得るための合成樹脂の原料には、熱可塑性樹脂を合成するための不飽和化合物が好適であり、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテン−1、等のα−オレフィン等の単量体を用いることができる。
【0026】
合成樹脂の原料に添加する不飽和酸には、マレイン酸や無水マレイン酸やフマル酸等の不飽和ジカルボン酸又は酸無水物、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸、メチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシルアクリレート等の不飽和カルボン酸のアルキルエステル誘導体、アクリルアミドやマレイン酸のモノ又はジエチルエステル等の不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸の誘導体、等を用いることができる。例えば、付加重合前の熱可塑性樹脂の原料に不飽和ジカルボン酸や不飽和カルボン酸等を添加して付加重合を行うと、カルボキシル基を有する酸変性樹脂(相溶化剤)が得られる。
相溶化剤を合成するための単量体と不飽和酸との配合割合は、モル数比で単量体60〜99%に対し不飽和酸1〜40%、単量体80〜98%に対し不飽和酸2〜20%等とすることができる。
【0027】
添加剤M4,M6,M11,M21,M31には、木質系材料以外の充填材、繊維状素材、滑剤、核剤、顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、補強剤、金属不活性化剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、防カビ剤、これらの組み合わせ、等を用いることができる。これらの添加剤は、固体でも液体でもよい。
【0028】
(各素材の配合比の説明)
押出工程S1では、100重量部の木質系材料M1に対して相溶化剤M3を0.1〜42重量部、より好ましくは1〜33重量部、さらに好ましくは2〜25重量部用いて混合する。なお、木質系材料M1と相溶化剤M3の双方のみを用いて混合する場合、木質系材料の配合比が70重量%強〜99.9重量%となり、相溶化剤の配合比が0.1重量%〜30重量%弱となる。相溶化剤M3の混合量を前記下限以上にするのは、木質系材料に相溶化剤を十分になじませて木質系成形品を十分強固にし、熱による木質系材料の褐変を防ぐためである。相溶化剤の混合量を0.1重量部未満にすると、木質系材料に相溶化剤がほとんどなじまず木質系成形品に十分な強度が得られないので、好ましくない。一方、相溶化剤M3の混合量を前記上限以下にするのは、相溶化剤M3に対して木質系材料M1を十分に多くして木質系材料M1を含む減容化物M5,M8を混合により剪断して木質系成形品を十分強固にするためである。
【0029】
この場合、成形工程S2の押出機構A53で混合される素材M32は、100重量部の木質系材料M1を含む不定形の素材M10と、相溶化剤M3の配合量(Wc)と合わせて43〜240重量部、より好ましくは54〜185重量部、さらに好ましくは67〜150重量部となる配合量(W1とする)の樹脂M2と、を少なくとも含む。すなわち、100重量部の木質系材料M1に対して(W1−Wc)重量部の樹脂M2を混合することになる。なお、木質系成形品M40の製造に添加剤を全く用いない場合、木質系材料M1の配合比が30重量%弱〜70重量%弱となり、樹脂M2と相溶化剤M3の合計の配合比が30重量%強〜70重量%強となる。従って、木質系成形品M40を製造するための素材M32は、フィラー中充填となる素材とされる。
【0030】
また、押出工程S1では、100重量部の木質系材料M1に対して、相溶化剤M3の配合量(Wcとする)と合わせて0.2〜42.1重量部、より好ましくは1.1〜33.1重量部、さらに好ましくは5.1〜25.1重量部となる配合量(W2とする)の樹脂M2を用いて混合してもよい。すなわち、100重量部の木質系材料M1に対して(W2−Wc)重量部の樹脂M2を用いて混合することになる。押出工程S1で樹脂M2を混合すると、木質系材料M1と相溶化剤M3とのなじみを向上させることができるので、少ない相溶化剤でも木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を形成することができる。
なお、相溶化剤M3及び樹脂M2の混合量の合計を前記下限以上、前記上限以下にするのは、樹脂M2を混合しない場合と同様である。
【0031】
この場合、成形工程S2の押出機構A53で混合される素材M32は、100重量部の木質系材料M1を含む不定形の素材M10と、押出工程S1で用いた相溶化剤M3及び樹脂M2の配合量(W2)と合わせて43〜240重量部、より好ましくは54〜185重量部、さらに好ましくは67〜150重量部となる配合量(W3とする)の樹脂と、を少なくとも含む。すなわち、成形工程S2では、100重量部の木質系材料M1に対して(W3−W2)重量部の樹脂M2を用いて混合することになる。
【0032】
添加剤を用いる場合、添加剤M4,M6,M11,M21,M31の合計の配合量は、木質感を十分に残し木質系成形品の強度を十分に確保する観点から、木質系材料M1と樹脂M2と相溶化剤M3の合計の配合量の1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。
【0033】
(各工程に使用可能な装置の説明)
押出工程S1では、減容化装置A10を用いることにより、微粒状又は繊維状の木質系材料M1を少なくとも含む素材を減容化する減容化処理を行うことができる。成形工程S2では、減容化装置A40を用いることにより、不定形の素材M10を少なくとも含む素材を減容化する減容化処理を行うことができる。なお、両減容化装置A10,A40は、同じ装置を用いてもよいし、異なる装置を用いてもよい。
【0034】
図4は、減容化装置A10,A40の一例を示している。ここで、同図の上段は減容化装置A10,A40の要部を斜視図により示し、同図の下段はB1−B1の位置から減容化装置A10,A40を断面視して示している。図示の減容化装置A10,A40は、素材を受け入れるための容器A11、略上下方向に貫通した押出口A12aが多数形成されたダイA12、容器A11内の素材を押出口A12aへ押し込むためのローラA13、該ローラを回転駆動するローラ駆動用電動モータA14、ダイA12の下面に摺接して回転するカッタA15bをカッタテーブルA15aに固定したダイフェースカッタ部A15、該ダイフェースカッタ部を回転駆動するカッタ駆動用電動モータA16、を備える。前記各部A11,A12,A13,A15は、主に金属で形成されている。
【0035】
ダイの押出口A12aの大きさは、ペレット程度の大きさとされ、直径1〜15mm程度、より好ましくは直径5〜8mm程度とされる。ローラA13は、略水平に配置された棒状部材A13aの両端に対してそれぞれ回転可能に取り付けられ、ダイA12上で回転するようにされている。また、ローラA13は、略上下方向に設けられた回転軸材A13bを中心として、モータA14の駆動によりダイA12上を周回し、容器A11内の素材に圧縮力を加えながら該素材をダイA12から押し出すようにされている。ダイフェースカッタ部A15は、モータA16の駆動によりダイA12の下面を摺動し、押出口A12aから下方へ押し出される略棒状の素材をペレット程度の長さ、すなわち、1〜30mm程度、より好ましくは3〜7mm程度に切断する。
【0036】
以上により、素材に含まれる微粒状又は繊維状の木質系材料M1は、減容化され、固化する。なお、前記固化とは、素材が固くなることをいうものとし、素材が液体状態から固体状態へ変化することに限られない。
なお、減容化装置A10には、特開2006-256296号公報に記載されたペレット成形装置の成形機構を用いることができる。
【0037】
押出工程S1では、コンパウンド生成装置A20を用いることにより、素材M7を押出機構A23により混練しながら不定形の状態で押し出すことができる。図1に示すコンパウンド生成装置A20は、素材M5,M6を投入するための金属製ホッパA21、筒状の金属製バレルA22、該バレルA22内で素材M7を混練しながら押し出す押出機構A23、バレルA22を加熱する加熱機構A24、を備える。相溶化剤M3や樹脂M2に固体状の熱可塑性樹脂を用いる場合、加熱機構A24で素材中の相溶化剤M3や樹脂M2を加熱して溶融状態にし、素材を軟化させる。本装置A20は、素材M7を不定形の状態で押し出すため、バレルA22のヘッド(下流側の端部)にダイを取り付けていない。なお、バレルA22のヘッドの位置における素材M7の圧力が5.0MPa以下、より好ましくは3.0MPa以下、さらに好ましくは1.0MPa以下となる開口を有するダイを取り付けてもよい。
【0038】
本コンパウンド生成装置A20として、図5に示すペレット製造装置を用いることができる。本装置は、軟化した素材を混合して不定形の状態で押し出すコンパウンド生成装置A20と、押し出された不定形の素材M10を少なくとも用いて粉砕する粉砕装置A30と、粉砕された素材M20を少なくとも含む素材を減容化する減容化装置A40とを備えている。コンパウンド生成装置A20は、バレルA2のヘッドの位置における素材の圧力が5.0MPa以下となるようにされた開口A22aから素材M7を不定形の状態で押し出し、不定形の素材M10を生成する。
なお、ペレット製造装置には、特開2006-256296号公報に記載されたペレット製造装置を用いることができる。
【0039】
図2に示すように粉砕工程を設ける場合、粉砕装置A30を用いることにより、素材M10,M11を粉砕することができる。本粉砕装置A30として、図5に示すペレット製造装置を用いることができる。本装置の粉砕装置A30は、素材M10,M11を投入するためのホッパA31、該ホッパの下部開口に連通する上部開口が形成された粉砕室A32、該粉砕室内の下部において上下方向に回転軸を向けて回転可能とされた回転テーブルA33、該回転テーブルの上面に取り付けられて粉砕室A32内の素材を回転動により粉砕する金属製回転刃A34、回転テーブルA33を回転駆動する電動モータA36、粉砕室A32の下側に設けられた粉砕物収容室A35、該粉砕物収容室に収容された粉砕後の素材M20を粉砕物吐出口A37aまで移送する粉砕物移送機A37、等を備える。すなわち、粉砕室A32内に導入された素材M10,M11は、回転する回転刃A34により粉砕され、粉砕物収容室A35へ落下し、粉砕物移送機A37で移送されて、粉砕物粉体吐出口A37aから吐出される。
【0040】
成形工程S2では、成形装置A50を用いることにより、素材M32を押出機構A53により混練しながら押し出して成形品M40の形状に成形することができる。図1に示す成形装置A50は、ペレットM40を形成するペレット成形装置とされている。同成形装置A50は、素材M30,M31を投入するための金属製ホッパA51、筒状の金属製バレルA52、該バレルA52内で素材M32を混練しながら押し出す押出機構A53、バレルA52を加熱する加熱機構A54、バレルA52のヘッドに取り付けられた金属製ダイA55、該ダイA55から押し出される略棒状の素材を所定の長さで切断する切断機構A56、を備える。樹脂M2や相溶化剤M3に固体状の熱可塑性樹脂を用いる場合、加熱機構A54で素材中の樹脂M2や相溶化剤M3を加熱して溶融状態にし、素材を軟化させる。ダイA55には、ペレットM40の大きさに合わせて直径1〜8mm程度、より好ましくは直径3〜5mm程度の貫通穴が多数形成されている。切断機構A56は、ダイA55の貫通穴から押し出される略棒状の素材をペレットの長さ、すなわち、1〜30mm程度、より好ましくは3〜7mm程度に切断する。これにより、木質系の樹脂含有ペレットM40が形成される。樹脂M2や相溶化剤M3が熱可塑性樹脂である場合、成形後にペレットM40が冷えて固化する。
【0041】
本成形工程S3では、成形装置A60を用いることにより、素材M42を押出機構A63により混練しながら押し出して本成形品M50の形状に成形することができる。図1に示す成形装置A60は、素材M40,M41を投入するための金属製ホッパA61、筒状の金属製バレルA62、該バレルA62内で素材M42を混練しながら押し出す押出機構A63、バレルA62を加熱する加熱機構A64、バレルA62のヘッドに取り付けられた金属製ダイA65、該ダイA65から押し出される略板状、略棒状、等の形状の素材を所定の長さで切断する切断機構A66、を備える。樹脂M2や相溶化剤M3に固体状の熱可塑性樹脂を用いる場合、加熱機構A64で素材中の樹脂M2や相溶化剤M3を加熱して溶融状態にし、素材を軟化させる。ダイA65には、本成形品M50の大きさに合わせた開口が形成されている。切断機構A66は、ダイA65の開口から押し出される素材を本成形品M50の長さに切断する。これにより、木質系の本成形品M50が形成される。樹脂M2や相溶化剤M3が熱可塑性樹脂である場合、成形後に本成形品M50が冷えて固化する。
【0042】
なお、上述した各押出機構A23,A53,A63は、バレルA22,A52,A62内に挿入した金属製スクリュー、該スクリューを回転駆動する回転駆動機構、等から構成することができる。また、各押出機構のスクリューは、一軸のみでもよいし、二軸以上設けられてもよい。また、スクリューは、軸方向の位置により直径が変化してもよい。
【0043】
本成形品M50を製造するため、図2に示すように、押出成形装置A60の代わりに射出成形装置A70を用いてもよい。本射出成形装置A70は、金型内に素材を押し出すための押出機構を有している。また、金型を加熱する加熱機構が射出成形装置A70に設けられると、熱可塑性樹脂を含むペレットM40を加熱により軟化させて射出成形することができる。
【0044】
(2)木質系成形品及びその製造方法の作用、効果:
次に、本製造方法の各工程の動作を説明しながら木質系成形品及びその製造方法の作用、効果を説明する。
図1に示す製造方法では、まず、微粒状又は繊維状の木質系材料M1及び相溶化剤M3、並びに、必要に応じて樹脂M2及び添加剤M4を減容化装置A10に投入し、減容化物M5を形成する。なお、樹脂M2や相溶化剤M3や添加剤M4が微粒状の固体であると、素材の減容化が容易であるので好適である。
ここで、図4に示すように、素材M1〜M4は、素材導入部である容器A11に投入され、押出口A12aから容器A11外へ略棒状に押し出されて、カッタA15bで切断される。これにより、素材M1〜M4に圧縮力が加えられ、素材M1〜M4が減容化されて減容化物M5となる。
また、図3(a)に示す製造方法では、微粒状又は繊維状の木質系材料M1のみから減容化物M8が形成される。
【0045】
微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化されると、木質系材料に含まれる水分により木質系材料同士に強い水素結合が生じ、木質系材料同士が強く結びついた塊となることがある。
また、減容化する素材が乾燥していると、素材を減容化しても十分に固化せずに崩れてしまい、微粒状又は繊維状に崩れた素材がコンパウンド生成装置のホッパ内で詰まる可能性がある。減容化後の素材が崩れないようにするため、微粒状又は繊維状の木質系材料に水を添加して木質系材料を減容化すると、減容化した素材は固化するものの、添加した水分により木質系材料同士に強い水素結合が生じ、木質系材料同士が強く結びついた塊が形成されることになる。
【0046】
ここで、図6に示す比較例のように、木質系材料M1及び相溶化剤M3とともに樹脂M2を全てコンパウンド生成装置A20に供給すると、100重量部の微粒状又は繊維状の木質系材料M1に対して樹脂M2及び相溶化剤M3を合計43〜240重量部含むフィラー中充填の素材を押出機構A23で混練しながら不定形の状態で押し出すことになる。樹脂M2及び相溶化剤M3の合計と木質系材料M1とを同程度含む素材を混練しても不定形の素材M10中に木質系材料の集合物が残存してしまう。これは、木質系材料M1の周りに液状の樹脂M2及び相溶化剤M3が多く存在するため、混練により木質系材料の集合物同士がぶつかろうとしても滑ってしまい、集合物に対して十分な剪断力が加わらないためと推察される。また、木質系材料の集合物が残存すると、集合物の中に相溶化剤が入らないため、木質系材料M1と相溶化剤M3とのなじみが良くないと推測される。
【0047】
また、生成した不定形の素材M10を粉砕装置A30で粉砕しても、木質系材料の集合物全てを砕くことはできず、粉砕後の素材M20に集合物の大きい粒が残存してしまう。さらに、粉砕後の素材M20を含むフィラー中充填の素材を押出機構A53で混練しながらペレット形状に押出成形しても集合物全てを砕くことはできず、フィラー中充填のペレットM40を押出機構で混練しながら押出成形しても集合物全てを砕くことはできない。いずれも工程も、木質系材料の周りに液状の樹脂M2及び相溶化剤M3が多く存在するため、集合物に対して十分な剪断力が加わらないためと推察され、木質系材料M1と相溶化剤M3とのなじみが良くないと推測される。
従って、形成される本成形品は、木質系材料の集合物の大きい粒が残存してしまう。
【0048】
本実施形態では、100重量部の微粒状又は繊維状の木質系材料M1に対し、樹脂を混合しない場合には相溶化剤M3を0.1〜42重量部、樹脂を混合する場合には樹脂M2及び相溶化剤M3を合計0.2〜42.1重量部含むフィラー高充填の素材をコンパウンド生成装置A20に供給することになる。相溶化剤M3や樹脂M2が固体状の熱可塑性樹脂である場合、コンパウンド生成装置A20に供給された素材M1〜M4は、加熱機構A24で加熱されて軟化し、押出機構A23で混練され、開口A22aから不定形の状態で押し出される。
フィラー高充填の素材を押出機構A23で混練しながら不定形の状態で押し出すと、不定形の素材M10中に木質系材料の集合物の大きい粒が残存しない。これは、木質系材料M1の周りに存在する液状の樹脂M2及び相溶化剤M3が少ないため、混練により木質系材料の集合物同士がぶつかり、集合物が剪断され、微粒状又は繊維状の木質系材料が良く分散するためと推察される。
【0049】
分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1は親水性であるため、押出機構A23で混練されるときに親水基を有する相溶化剤M3と良くなじむ。これにより、押出工程S1では、良く分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1に相溶化剤M3がなじんだ不定形の素材M10を生成することができる。
【0050】
その後、図1に示す成形工程S2では、不定形の素材M10と残りの樹脂M2と必要に応じて添加剤M11とを減容化装置A40に投入し、減容化物M30と必要に応じて添加剤M31とをペレット成形装置A50に投入し、フィラー中充填となった素材M30,M31を押出機構A53で混練しながらペレット形状に押出成形し、ペレットM40を形成する。図2に示す成形工程S2では、不定形の素材M10と必要に応じて添加剤M11とを粉砕装置A30で粉砕し、粉砕後の素材M20と残りの樹脂M2と必要に応じて添加剤M21とを減容化装置A40に投入し、減容化物M30を少なくとも用いてペレットM40を形成する。図3(b)に示す成形工程S2では、不定形の素材M10と必要に応じて添加剤M11とを粉砕装置A30で粉砕し、粉砕後の素材M20と必要に応じて添加剤M21とを減容化装置A40に投入し、減容化物M30と残りの樹脂M2とを少なくとも用いてペレットM40を形成する。
樹脂M2や相溶化剤M3が固体状の熱可塑性樹脂である場合、ペレット成形装置A50に供給された素材は、加熱機構A54で加熱されて軟化し、押出機構A53で混練され、ダイA55から押し出されて、切断される。
【0051】
いずれの成形工程S2でも、ペレットM40中の木質系材料に集合物の大きい粒が残存しない。これは、不定形の素材M10中で良く分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1に相溶化剤M3が良くなじんでいるため、このような素材を減容化しても微粒状又は繊維状の木質系材料M1同士に強い水素結合が生じず、減容化物がペレット成形装置A50の混練により容易に崩れるためと推察される。そして、木質系材料の分散の良好な不定形の素材M10と樹脂M2とを含む素材M32が混練されると、相溶化剤M3により樹脂M2と木質系材料M1とが橋渡しされる。
【0052】
その後、本成形工程S3では、例えば、ペレットM40と必要に応じて添加剤M41とを押出成形装置A60に投入し、フィラー中充填の素材M40,M41を押出機構A63で混練しながら押出成形し、本成形品M50を形成する。樹脂M2や相溶化剤M3が固体状の熱可塑性樹脂である場合、押出成形装置A60に供給された素材は、加熱機構A64で加熱されて軟化し、押出機構A63で混練され、ダイA65から押し出されて、切断される。むろん、素材M40,M41を射出成形装置A70に供給し、素材M40,M41を押出機構で混合しながら金型内へ押し出す射出成形を行い、本成形品M50を形成してもよい。
いずれの本成形工程S3でも、本成形品M50中の木質系材料に集合物の大きい粒が残存しない。これは、ペレットM40中で良く分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1に相溶化剤M3が良くなじみ、微粒状又は繊維状の木質系材料M1同士に強い水素結合が生じていないため、ペレットM40が成形装置A60,A70の混合により容易に崩れるためと推察される。また、本成形品M50中で良く分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1と樹脂M2とが相溶化剤M3で橋渡しされるので、本成形品M50の強度が向上する。
【0053】
以上説明したように、本発明では、一旦、フィラー中充填よりも多い配合割合の木質系材料と相溶化剤を含む素材を押出機構で混合しながら不定形の状態で押し出した後、樹脂を加えてフィラー中充填となった素材を押出機構で混合しながら押し出して成形するので、一回目の混合時に木質系材料の減容化物を十分に剪断することができる。従って、図6に示した比較例のようにフィラー中充填の素材を二回押出機構で混合しながら押し出す場合と比べ、木質系材料の分散性が向上し、ペレットM40及び本成形品M50中で分散した微粒状又は繊維状の木質系材料M1と樹脂M2とが相溶化剤M3によりなじむ。また、一回目の混合時に相溶化剤を全部入れるので、木質系材料と相溶化剤とが十分になじむ。さらに、ペレットM40及び本成形品M50は、高強度であるものの、樹脂製品を製造する装置を利用して容易に押出成形や射出成形等の成形を行うことができる。
従って、フィラー中充填となる微粒状又は繊維状の木質系材料を用い、かつ、少なくとも微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材から木質系成形品を製造する際、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させるペレット(木質系成形品)を容易に製造することができる。
【0054】
なお、減容化物M30,M33をペレット成形装置A50に供給する代わりに、成形装置A60,A70に直接供給して本成形品M50を製造してもよい。例えば、減容化物M30と必要に応じて添加剤M41とを押出成形装置A60に投入し、フィラー中充填の素材M30,M41を押出機構A63で混練しながら押出成形すると、本成形品M50が形成される。この場合、本発明にいう木質系成形品は、本成形品M50となる。
【0055】
なお、本成形品は、システムキッチンやシステムバスや洗面化粧台等の住宅設備、家具、建造物、等の材料として利用することができる。本製造方法により形成される木質系成形品は、これらのウッドプラスチック成形品を製造するための原料として利用することができ、製造、販売の対象となる。
【0056】
(3)各種変形例:
図1に示す減容化物M5や図3(a)に示す減容化物M8を入手することができれば、押出工程S1で減容化処理を行う必要は無い。この減容化処理を行わない製造方法も、本発明に含まれる。
上記不定形の素材M10は良く分散した微粒状又は繊維状の木質系材料に相溶化剤が良くなじんでいるので、不定形の素材M10を少なくとも用いた素材を減容化する処理を省略することが可能である。この減容化処理を行わない製造方法も、本発明に含まれる。
ペレット成形装置A50に供給する添加剤M31や成形装置A60,A70に供給する添加剤M41には、相溶化剤が含まれていてもよい。この場合、添加剤M4,M6,M11,M21,M31,M41の合計の配合量を1/2以下、より好ましくは1/4以下とすればよい。
【0057】
(4)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されない。
【0058】
[使用した素材]
木質系材料には、粒径1mm以下に粉砕した木粉(含水率5重量%、平均粒径100μm)を用いた。樹脂には、JIS K7210の附属書A表1の条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)におけるMFR(1999年改正後のJIS K7210に準拠したメルトマスフローレイト)が0.8g/10minの固体状のポリプロピレン(サンアロマ社製PB222A)を用いた。相溶化剤には、マレイン酸を用いてポリプロピレンを変性した固体状のマレイン酸変性樹脂(三洋化成社製ユーメックス1010)を用いた。
【0059】
[使用した装置]
減容化装置にはダルトン社製F40を用い、直径8mmの押出口から押し出される略棒状の素材を20mm程度に切断して多数の減容化物を形成した。
コンパウンド生成装置は、径80mmの加熱機付きコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン80)を用い、バレルのヘッドにダイを取り付けず、スクリューの回転速度を35rpmとして使用した。
粉砕装置には、井上電設社製のウッドグラインダーとファインシュレッダーとを用いた。
ペレット成形装置は、径80mmの加熱機付きコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン80)を用い、直径5mmの押出口を多数有するダイをバレルのヘッドに取り付け、スクリューの回転速度を35rpmとして使用した。
本成形用の押出成形装置は、径80mmの加熱機付きコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン80)を用い、110mm×9mm角の開口を有するダイをバレルのヘッドに取り付け、スクリューの回転速度を35rpmとして使用した。
【0060】
[実施例]
木粉100重量部、ポリプロピレン(PP)15.3重量部、マレイン酸変性樹脂2.4重量部を減容化装置に投入し、減容化物を形成した。この減容化物をコンパウンド生成装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら不定形の状態で押し出して容器に受け止めた。次に、容器に受け止めた不定形の素材を粉砕装置に供給して粉砕した。さらに、粉砕した素材(117.7重量部)とPP78.4重量部とを減容化装置に投入し、減容化物を形成した。この時点で、木粉100重量部、PP93.7重量部、マレイン酸変性樹脂2.4重量部が配合されていることになる。この配合の減容化物をペレット成形装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら径5mmの押出口から押し出し、5mm程度の長さに切断してペレットを作製した。
さらに、上記ペレットを本成形用の押出成形装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら押出成形した。
【0061】
[比較例]
木粉100重量部、PP93.7重量部、マレイン酸変性樹脂2.4重量部を減容化装置に投入し、減容化物を形成した。この減容化物をコンパウンド生成装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら不定形の状態で押し出して容器に受け止めた。次に、容器に受け止めた不定形の素材を粉砕装置に供給して粉砕した。さらに、粉砕した素材を減容化装置に投入し、減容化物を形成した。この減容化物をペレット成形装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら径5mmの押出口から押し出し、5mm程度の長さに切断してペレットを作製した。
さらに、上記ペレットを本成形用の押出成形装置に投入し、素材を230℃に加熱して混練しながら押出成形した。
【0062】
[評価方法]
実施例及び比較例で得られたペレット及び本成形品について、光学顕微鏡を用いて観察した。また、本成形品を20mm×100mm×9mmに切断して試験片を作成し、この試験片について、JIS K7171-1994(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に準拠した曲げ強度(曲げ強さ)及び曲げ弾性率を測定した。
【0063】
[試験結果]
試験結果を表1に示す。
【表1】

【0064】
比較例のペレット及び本成形品には、いずれも木粉の集合物がみられた。一方、実施例のペレット及び本成形品には、いずれも木粉の集合物がみられなかった。
また、実施例の本成形品の曲げ強度は、比較例の本成形品の曲げ強度よりも大きくなった。さらに、実施例の本成形品の曲げ弾性率は、比較例の本成形品の曲げ弾性率よりも大きくなった。
以上より、少量の樹脂と相溶化剤と木質系材料とを含んで減容化された素材を押出機構で混合して不定形の状態で押し出し、押し出された不定形の素材を粉砕し、粉砕された素材と残りの樹脂とを混合してペレットを形成すると、フィラー中充填となる配合割合ながら、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品が形成されることが確認された。
【0065】
(5)まとめ:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、フィラー中充填となる微粒状又は繊維状の木質系材料を用い、かつ、少なくとも微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材から木質系成形品を製造する際、木質系材料の分散が良好で本成形品の強度を向上させる木質系成形品を製造することが可能になる。
なお、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】木質系成形品及び本成形品の製造方法の一例を模式的に示す流れ図。
【図2】木質系成形品及び本成形品の製造方法の一例を模式的に示す流れ図。
【図3】木質系成形品の製造方法の変形例を模式的に示す流れ図。
【図4】減容化装置の要部を示す斜視図及びB1−B1断面図。
【図5】コンパウンド生成装置、粉砕装置、及び、減容化装置を示す垂直断面図。
【図6】木質系成形品及び本成形品の製造方法の比較例を模式的に示す流れ図。
【符号の説明】
【0067】
A10,A40…減容化装置、
A20…コンパウンド生成装置、A23…押出機構、
A30…粉砕装置、
A50…ペレット成形装置、A53…押出機構、
A60,A70…本成形装置、
M1…木質系材料、M2…樹脂、M3…相溶化剤、
M4,M6,M11,M21,M31,M41…添加剤、
M5,M8,M30,M33…減容化物、
M10…不定形の素材、M20…粉砕後の素材、
M40…ペレット(木質系成形品)、M50…本成形品、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系材料、樹脂、及び、親水基を有し前記樹脂と相溶性のある相溶化剤、を少なくとも用いて成形品を製造する木質系成形品の製造方法であって、
100重量部の微粒状又は繊維状の前記木質系材料と、0.1〜42重量部の前記相溶化剤と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材を押出機構により混合しながら不定形の状態で押し出す押出工程と、
押し出された不定形の素材と、前記相溶化剤の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも用いた素材を押出機構により混合しながら押し出して成形する成形工程とを備えることを特徴とする木質系成形品の製造方法。
【請求項2】
前記押出工程では、100重量部の前記微粒状又は繊維状の木質系材料と、0.1〜42重量部の前記相溶化剤と、前記相溶化剤の配合量と合わせて0.2〜42.1重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材を押出機構により混合しながら不定形の状態で押し出し、
前記成形工程では、前記不定形の素材と、前記押出工程で用いた前記相溶化剤及び前記樹脂の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも用いた素材を押出機構により混合しながら押し出して成形することを特徴とする請求項1に記載の木質系成形品の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程では、前記不定形の素材と、前記相溶化剤の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも混合して減容化し、減容化した素材を押出機構により混合しながら押し出して成形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質系成形品の製造方法。
【請求項4】
木質系材料、樹脂、及び、親水基を有し前記樹脂と相溶性のある相溶化剤、を少なくとも用いて成形した木質系成形品であって、
100重量部の微粒状又は繊維状の前記木質系材料と、0.1〜42重量部の前記相溶化剤と、を少なくとも含み、かつ、少なくとも前記微粒状又は繊維状の木質系材料が減容化された素材を押出機構により混合しながら不定形の状態で押し出し、
押し出された不定形の素材と、前記相溶化剤の配合量と合わせて43〜240重量部となる配合量の前記樹脂と、を少なくとも用いた素材を押出機構により混合しながら押し出して成形したことを特徴とする木質系成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18542(P2009−18542A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184638(P2007−184638)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】