説明

木質系材の接合構造と接合方法

【課題】PEG系接着剤による木質系材の接着・接合において、接着強度が高く、寸法安定性に優れた木質系材接合構造ならびに木質系材接合方法を低廉なコストで実現する。そして例えば、その結果として、間伐材などによる新規な木質ボードの商業的生産を可能にすることを目的とする。
【解決手段】以下の工程からなる木質ボードの製造方法。
(イ)木質材から木質エレメントを製造する工程、
(ロ)木質エレメントをオゾン酸化処理する工程
(ハ)オゾン酸化処理した木質エレメントに主成分としてポリエチレングリコールを含有するとする接着剤(PEG系接着剤)を塗布する工程、
(ニ)前記工程(ハ)を経た木質エレメントをフォーミングして熱圧する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主成分としてポリエチレングリコール(以下PEGとする)を含有するいわゆるPEG系接着剤による木質系材の接着力を改善強化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅用、建材用など木材加工分野において、これまで使われてきた有機溶剤系接着剤に替えて、非有機溶剤タイプの接着剤が多く使われるようになっている。これは、有機溶剤による健康や環境への各種弊害が広く認識されるようなったからである。
【0003】
非有機溶剤タイプの接着剤として、PEG系接着剤が開発され、木材の接着、特に木質ボードの製造に使用されている。このPEG系接着剤は、PEG、スチレン・ブタジエンゴムエマルジョン(以下SBRとする)、イソバン(イソブチレン無水マレイン酸)、クレー等を主成分としており、PEGによる木材の可塑化で木材の自己接着を促進する一方、木材とPEG接着剤との水素結合、親和力の発現により、その接着メカニズムを機能させるようになっている。そして、PEGを主成分としたこの接着剤は木材の質感・風合いを損なわず、「木のぬくもり」を発現・維持できる一方、ホルムアルデヒドを含まないため、ホルムアルデヒドの放散もない優れた接着剤として種々の領域での利用が期待されている。
【0004】
しかしながら、PEG系接着剤は上記のような利点を有するが、その反面、接着強度が低く、機械的強度や寸法安定性に難があり、製造コストも高価であるなどの問題が克服できづ、その普及にはいまだしの感があり、以下に述べるように、せっかくの新技術も活用しきれていない面がある。
【0005】
すなわち、例えば、地球温暖化防止対策および地域林業振興のため、間伐材の有効利用が重要である。間伐材の有効利用の一つに、現在は木質系廃棄物で占められているボード原料への利用があるが、価格が高く、現状ではあまり利用されていない。
間伐材から製造するボードには、既存ボードとの差別化が重要であり、木材の特徴を活用した全く新しい木質ボードの開発が必要である。この対策として、PEGを主成分とした接着剤の利用により木材の質感・風合いが活かされて「木のぬくもり」を有する全く新しい木質ボードの実現が可能になる。
しかしながら、PEG系接着剤が高価であること、接着強度が低く、機械的強度や寸法安定性に難があることなどが、前述のような間伐材による新規なボードの商業生産の隘路となっているのが実情である。
【0006】
なお、本願発明に関連する技術が以下のような文献において開示されている。
【特許文献1】特開2003−268338号公報
【特許文献2】特開平10−287860号公報
【特許文献3】特許第3312138号公報
【特許文献4】特開2006−264072号公報
【特許文献5】特開2005−262721号公報
【特許文献6】特表2003−528203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、PEG系接着剤による木質系材の接着・接合において、接着強度が高く、寸法安定性に優れた木質系材接合構造ならびに木質系材接合方法を低廉なコストで実現する。
その結果として、間伐材などによる新規な木質ボードの商業的生産を可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、PEG系接着剤による木質系材接合構造において、前記木質系材は可塑化処理する構成となして、上記従来の課題の解決を図ろうとするものである。
【0009】
また、上記の木質系材接合構造において、前記木質系材の可塑化処理はオゾン酸化処理で構成することがある。
【0010】
さらに、上記の木質系材接合構造において、オゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%となすことがある。
【0011】
さらにまた、上記のPEG系接着剤による木質系材接合構造において、前記木質系材の木質成分に導入されたカルボキシル基とPEG系接着剤の水素結合により接着力を向上させる構成となすことがある。
【0012】
また、上記の木質系材接合構造において、木質系材の木質成分におけるカルボキシル基の導入手段は、オゾン酸化処理で構成することがある。
【0013】
そして、上記の木質系材接合構造において、オゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%となすことがある。
【0014】
本願発明はまた、以下の工程からなる木質系材の接合方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
すなわち、
(イ)木質系材の可塑化をなして木質系材相互の自己接着力を発現させるとともに木質系材の木質成分にカルボキシル基の導入をなす工程、
(ロ)次いで、工程(イ)を経た木質系材相互をPEG系接着剤により接合させる工程。
【0015】
また、上記の木質系材の接合方法において、木質系材の可塑化ならびに木質成分におけるカルボキシル基の導入は木質系材をオゾン酸化処理してなすことがある。
【0016】
さらに、上記の木質系材の接合方法において、木質系材のオゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%となすことがある。
【0017】
本願発明はまた、オゾン酸化処理した木質エレメントを主成分としてPEGを含有するとする接着剤(PEG系接着剤)で結合してなる木質ボードを提供して上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0018】
また、上記の木質ボードにおいて、木質エレメントのオゾン酸化処理におけるオゾン添加は0.1〜1%となすことがある。
【0019】
本願発明はまた、以下の工程からなる木質ボードの製造方法を提供する。
(ホ) 木質材から木質エレメントを製造する工程、
(ヘ) 木質エレメントをオゾン酸化処理する工程
(ト) オゾン酸化処理した木質エレメントに主成分としてPEGを含有するとする接着剤(PEG系接着剤)を塗布する工程、
(チ) 前記工程(ハ)を経た木質エレメントをフォーミングして熱圧する工程。
【0020】
また、上記の木質ボードの製造方法において、木質エレメントのオゾン酸化処理におけるオゾン添加は0.1〜1%となすことがある。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成により本願発明にあっては、PEG系接着剤による木質系材の接合において、
イ.木質系材とPEG系接着剤の親和力が向上し、接着強さが向上する。
ロ.木質系材とPEG系接着剤に水素結合が生じて、接着強さが向上する。
ハ.木材の可塑化が深化され、木質系材同士の密着性が向上して木質系材間の自己接着力が強化される。
ニ.PEG系接着剤の接着力が向上するので、PEG系接着剤においてnメチルピロドリン、水酸化アルミニウム等の構成要素を省略できるので接着剤の製造コストの低減化が可能となる。
ホ.木材の質感・風合いが活かされて「木のぬくもり」を有する木質ボードなどの住宅、建築用材を低廉なコストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本願発明者らは、先にオゾン酸化処理に係る親水化技術を開発し、これは特許第3312138号として登録されているが、本願発明はこのような親水化技術の応用例の一端でもある。
すなわち、PEGを含有するとする接着剤(PEG系接着剤)の利点を活かしつつ、短所を補完、換言すれば、木質系材における接着力を向上させるとともに、接着剤の使用量を減らすことにより、製造コストの削減を図ることを目的としている。
【0023】
オゾンは、リグニン芳香核を選択的に酸化し、開裂する。そしてカルボキシル基を導入する。よって、オゾン酸化処理によりリグニンが親水化し、木材に親水性がいっそう付与される。さらに、オゾン酸化処理は木材の質感等には全く影響を与えない。
また、オゾン酸化処理は、きわめて簡便かつ低コストな処理方法である。処理後に排出されるのは酸素のみであり、廃水処理の必要などもなく、現実的な処理方法である。オゾン酸化処理により接着力が向上すれば、接着剤の量を減らしても必要な性能を保持できる。 よって、高価なPEGを主成分とする接着剤(PEG系接着剤)を使用しても生産コストの低減が可能となる。
【0024】
PEG系接着剤による木質系材の接合において、接合しようとする木質系材はオゾン酸化処理によりその可塑化処理をなすのが好ましい。すなわち、まず、PEG系接着剤の塗布前に目的の木質系材をオゾン酸化処理する。
この処理は、原料ガスからオゾンを発生させるオゾン発生装置と、発生したオゾンと木質系材を所定時間接触させることのできるオゾン酸化処理装置を用いる。原料ガスとしては、酸素が好適であり、オゾンを約数%含む酸素ガスをオゾン酸化処理装置の反応槽に供給する。
【0025】
木質系材と反応させる反応させるオゾン量は木質系材重量に対して0.1−1%が好ましい。
オゾン発生装置に原料ガスとしての酸素を供給し、発生したオゾンを酸素とともに、パイプを通して所定流速で木質系材を収納する反応槽に導流する。この際、木質系材重量に対して所定割合の量のオゾンが接触できるように木質系材の重量、酸素ガス中のオゾン濃度に応じて、オゾン含有酸素ガスの流速と処理時間が決定される。そして、処理中に木質系材とオゾンが均一に反応できるように反応槽中の木質系材を攪拌するなどの対応が望ましい。
【0026】
次いで、オゾン酸化処理を終えた木質系材にPEG系接着剤を塗布する。接着剤の塗布箇所、塗布量、塗布手段は、接合あるいは接着しようとする木質系材の大小、接合目的等に応じて設定することになる。所要箇所に接着剤を塗布した後、その塗布面において木質系材を加熱、圧締等の手段を併用しつつ接合させることになる。
オゾン酸化処理により、木質系材は可塑化され、PEG系接着剤による可塑化と併せて木質系材の自己接着力が増強される一方、オゾン酸化処理により木質系材の木質成分に導入されたカルボキシル基とPEG系接着剤の水素結合により接着力はさらに増強され、従来の接着剤による接合と同等の接着強さが得られる。
【0027】
木質ボードの製造にあっては、原料木材を円盤式のナイフリングで切削し、ボード原料としての木質エレメントを製造する。
これを好ましくは含水率が約2−3%まで乾燥した後、前述の手法でオゾン酸化処理する。オゾン添加率は、0.5%前後が好ましい。木質エレメントは、回転ドラム式の塗布装置に収納し、スプレーでPEG系接着剤を塗布した。接着剤は固形分を基準にして、全乾木質エレメントに対して15%程度を塗布する。接着剤塗布後にフォーミングボックスを用いてマットに成型する。
このマットは、熱板温度180℃、熱圧時間15分で圧締する。圧力は、10−40kgf/cm2程度であり、ボード密度は0.7g/cm3とする。
【実施例】
【0028】
実施例1:
木質系材のオゾン酸化処理において、木質ボードの試作例を通して最適なオゾン添加率を解明する実験をなした。
イ:木質系エレメントの製作
木質ボードの原料にはヒノキを用いた。ヒノキを円盤式のナイフリングで切削し、ボード原料としての木質エレメントを製造し、これを含水率が約2−3%まで乾燥した。
ロ:木質エレメントのオゾン酸化処理
上記で得た木質エレメントをオゾン添加率が0%、0.25%、0.5%、1%の4水準でオゾン酸化処理した。
ハ:接着剤の塗布
オゾン酸化処理をした各木質エレメントをそれぞれ回転ドラム式の塗布装置に入れ、スプレーでPEG系接着剤を塗布した。接着剤は固形分を基準にして、全乾木質エレメントに対して15%を塗布した。
ニ:フォーミング、ボードの作製
接着剤塗布後に30cm×30cmのフォーミングボックスを用いて手巻きでマットを製造した。それを熱圧して木質ボードを得た。ボードの厚さは1cm、目標ボード密度を0.7g/cm3とした。そして、PEG系接着剤を使用したボードの最適プレス条件を解明するために、熱盤温度、熱圧時間の最適条件を検討した。熱盤温度は160、180、200℃とし、熱圧時間を10、15、20分とし、同一条件で2枚のボードを製造した。さらにマット含水率を調整するために、JIS A 5908
2003に準じて、曲げ強さ(MOR:Modulus of
rupture)、剥離強さ(IB:Internal bond
strength)、厚さ膨張率(TS:Thickness
swelling)を求めた。 それぞれの繰り返し数は12、13、12である。さらにIBに先立ち、試料より厚さ方向の密度分布を求めた。さらにオゾン酸化処理をしたものと未処理のもののマット含水率を10%、20%に調整してボードを製造した。また、本接着剤と従来の接着剤を比較するために一般的にボード製造に使用されているユリア樹脂およびメラミン樹脂を使用してボードを製造し、PEG系接着剤と比較した。
【0029】
上記木質ボードの試作を通して、まず、最適なオゾン添加率の解明をなした。図1は、オゾン添加率と曲げ強さ(MOR)の関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、オゾン添加率が0.5%でMORが最大となり、31.8MPaとなった。オゾン添加率が0%の場合と比べて約40%増加している。そして、それ以上のオゾンを添加してもMORの増加はないことが明らかである。
【0030】
次に、図2は、はく離強さ(IB)を示すグラフである。このIBもMORと同様に、オゾン添加率が0.5%で最大となっていて、このときのIBは0.95MPaを示している。
すなわち、オゾン添加率0%のIBの約2倍となっている。そして、さらにオゾン添加率が増加してもIBが増加しないことが判明する。
【0031】
以上より、オゾン酸化処理がPEG系接着剤の接着力を向上させるのに有効であること、および、最適なオゾン酸化処理条件が約0.5%であることが判明する。
【0032】
図3は、厚さ膨張率(TS)を示すグラフである。ここでもオゾン酸化処理がTSの低減に有効であることがわる。オゾン酸化処理によってTSが約60%に低減し、寸法安定性が改善される。しかし、それでもオゾン添加率が0.5%でTSが17.5%であり、一般的な木質ボードと比べると高く、今後の課題ともいえる。
【0033】
さて、オゾン酸化処理によってリグニンが親水化されるが、そのためマット含水率を上げることにより、オゾン酸化処理木材の可塑化が未処理木材よりも進むと考えられる。そこでマット含水率を変えた場合のボード性能評価を図4の表1に示す。
IBでは、未処理では違いはなかったが、オゾン酸化処理では増加している。IBは接着強さに大きく依存するが、オゾン酸化処理のIBで高マット含水率の効果が発現されたことにより、マットの高含水率がオゾン酸化処理の接着強さを向上させる効果が確認できた。
このように、表1に示す結果から、TSでもオゾン酸化処理および高マット含水率の効果は明らかである。特に、オゾン酸化処理、かつ、マット含水率20%ではTSが12.6%となり、JIS規格の基準値である12%に達するところまできている。
【0034】
次に、上記の各種試作木質ボードに関して、熱圧時間とボード性能の評価検証を行った。
まず、図5に示す表2は、熱盤温度およびボード中心部がそれぞれの温度に達するまでの時間を示している。熱盤温度が高いほど中心部の温度が早く所定の温度に達することがわかる。しかし、熱盤温度が高くなるとボード表面が焦げる傾向がある。
【0035】
そもそも、PEG系接着剤を用いる意義は木質感の発現、維持にあるから、熱盤温度を200℃ではなく、180℃に設定して検証して、180℃に設定した時の熱圧時間とボード性能の関係を明らかにした。その結果が図6に示す表3である。
熱圧時間が10分ではMOR、IBが低く、TSが高い。熱圧時間が15分および20分の性能には大きな相違はないが、10分より性能は向上している。よって熱圧時間は15分(ボード厚10mm)が適当であると考えられる。
しかしながら、商業生産におけるコスト、生産性の点で、ボード厚10mmの熱圧時間は10分程度が好適であり、通常の内装材として使用するには、この熱圧時間で性能的な問題はないと考えられる。
【0036】
図7に示す表4は、従来の接着剤(ユリア樹脂やメラミン樹脂)、PEG系接着剤それぞれによる木質ボードの性能検証結果を示す表である。前述したように、試作木質ボードの目標密度は0.7g/cm3であったが、いずれのボード密度も約0.79g/cm3と高い値になってしまった。よって、前述のPEG系接着剤のMORと比べてたいへん高い値を示している。
しかしながら、接着剤の性能の比較ではこの検証に供した木質ボード密度はほぼ等しいので問題ないと考えられる。
【0037】
ユリア樹脂やメラミン樹脂と比較して、PEG系接着剤のMORが低下している。しかし、IBに関しては、メラミン樹脂が高いものの、PEG系接着剤はユリア樹脂と変わらない値を示している。TSに関してはユリア樹脂の方がPEG系接着剤より低く、ユリア樹脂の寸法安定性がPEG系接着剤のそれより高いことが示された。
【0038】
ところでPEG系接着剤は、その特徴から内装用に特化した接着剤である。よってユリア樹脂の性能をまず基準にするべきであるが、MORの点では、ユリア樹脂に大きく劣るが、TSでは若干の低下、IBでそれほど変わらないことが示された。しかしながら、前述したように、オゾン酸化処理によってIBとTSは大きく改善できることが明らかになっており、オゾン酸化処理と組み合わせることによりPEG系接着剤がユリア樹脂と遜色のない、むしろ一部の性能ではユリア樹脂を上回る接着剤であることが判明する。
【0039】
以上検証したように、木質系材のオゾン酸化処理によってPEG系接着剤の接着力の大幅な改善が明らかになった。これにより、同じ強度を持った新型木質ボードを製造するのに要するPEG系接着剤の使用量は、約30%の削減の可能性がる。さらにマット含水率を高めることによってオゾン酸化処理の効果がいっそう発現される事も明らかとなった。すなわち、従来の内装用接着剤であるユリア樹脂の性能と同等もしくはそれを上回る性能がオゾン酸化処理で発現できる。
このことは、PEG系接着剤の使用量をなお一層削減出来る可能性を示している。また、厚さ10mmのボードの場合、熱圧時間は約15分、熱盤温度は約180℃が最適であることが判明したが、今後、オゾン酸化処理に加えて新たなプレス方法の導入により、さらなる熱圧時間の短縮も可能と考えられる。
【0040】
オゾン酸化処理がPEG系接着剤の使用量の削減効果に有効であることが明らかとなったが、PEG系接着剤は、現状ではオゾン酸化処理をしない木質材(未処理材)を前提としてその成分が構成されている。その結果、きわめて高価な成分が投入されていて、これがPEG系接着剤の高コストの原因になっている。木質材のオゾン酸化処理により、前記高価成分、例えばnメチルピロリドンや水酸化アルミニウムなどを省ける可能性がある。
このような改善によって、PEG系接着剤使用による木質材接合のトータルコストをいっそう削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】オゾン添加率と曲げ強さ(MOR)の関係を示すグラフである。
【図2】はく離強さ(IB)を示すグラフである。
【図3】厚さ膨張率(TS)を示すグラフである。
【図4】マット含水率を変えた場合の木質ボード性能評価を示す表である。
【図5】熱盤温度およびボード中心部がそれぞれの温度に達するまでの時間を示す表である。
【図6】180℃に設定した時の熱圧時間とボード性能の関係を示す表である。
【図7】従来の接着剤(ユリア樹脂やメラミン樹脂)、PEG系接着剤それぞれによる木質ボードの性能検証結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール(以下PEGとする)、スチレン・ブタジエンゴムエマルジョン(以下SBRとする)を主成分として含有するPEG系接着剤による木質系材接合構造であって、前記木質系材は可塑化処理してなるものであることを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の木質系材接合構造において、前記木質系材の可塑化処理はオゾン酸化処理であることを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項3】
請求項2記載の木質系材接合構造において、オゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%であることを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項4】
PEG、SBRを主成分として含有するPEG系接着剤による木質系材接合構造であって、前記木質系材の木質成分に導入されたカルボキシル基とPEG系接着剤の水素結合により接着力を向上させたことを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項5】
請求項4記載の木質系材接合構造において、木質系材の木質成分におけるカルボキシル基の導入手段は、オゾン酸化処理であることを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項6】
請求項5記載の木質系材接合構造において、オゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%であることを特徴とする木質系材接合構造。
【請求項7】
以下の工程からなる木質系材の接合方法。
(イ) 木質系材の可塑化をなして木質系材相互の自己接着力を発現させるとともに木質系材の木質成分にカルボキシル基の導入をなす工程、
(ロ) 次いで、工程(イ)を経た木質系材相互を主成分としてPEGを含有するPEG系接着剤により接合させる工程。
【請求項8】
請求項7記載の木質系材の接合方法において、木質系材の可塑化ならびに木質成分におけるカルボキシル基の導入は木質系材をオゾン酸化処理してなすようにしたことを特徴とする木質系材の接合方法。
【請求項9】
請求項8記載の木質系材の接合方法において、木質系材のオゾン酸化処理におけるオゾン添加率は0.1〜1%であることを特徴とする木質系材の接合方法。
【請求項10】
オゾン酸化処理した木質エレメントを主成分としてPEG、SBRを含有する接着剤(PEG系接着剤)で結合したことを特徴とする木質ボード。
【請求項11】
請求項10記載の木質ボードにおいて、木質エレメントのオゾン酸化処理におけるオゾン添加は0.1〜1%であることを特徴とする木質ボード。
【請求項12】
以下の工程からなる木質ボードの製造方法。
(イ) 木質材から木質エレメントを製造する工程、
(ロ) 木質エレメントをオゾン酸化処理する工程
(ハ) オゾン酸化処理した木質エレメントに主成分としてPEG、SBRを含有するとする接着剤(PEG系接着剤)を塗布する工程、
(ニ) 前記工程(ハ)を経た木質エレメントをフォーミングして熱圧する工程。
【請求項13】
請求項12記載の木質ボードの製造方法において、木質エレメントのオゾン酸化処理におけるオゾン添加は0.1〜1%であることを特徴とする木質ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−132086(P2009−132086A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311198(P2007−311198)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成18年度農林水産省「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【出願人】(300076541)親和木材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】