説明

未増幅DNAを用いた直接的SNP検出

本発明は、増幅させた核酸分子の生物学的複雑度よりも高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含むサンプル中の標的核酸分子を検出する方法を提供する。特に、本発明は、増幅させた核酸分子の生物学的複雑度よりも高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含むサンプル中の一塩基多型(SNP)を検出する方法およびプローブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅させた核酸分子の生物学的複雑度よりも高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含むサンプル、例えばゲノムDNAにおける標的核酸分子の検出方法に関する。特に、本発明は、ナノ粒子標識プローブを用いたSNP検出のための方法およびプローブに関する。本発明はまた、サンプル中の生物、特に細菌病原体(例えば、ブドウ球菌のDNA)を検出する方法、および抗生物質メチシリンに対して耐性を付与するmecA遺伝子のような抗生物質耐性遺伝子を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年12月12日に出願された米国仮出願第60/432,772号および2002年12月12日に出願された米国仮出願第60/433,442号(それらの開示は、参照により本明細書に援用される)に関し、それらの有益性を主張する。
【0003】
(本発明の背景)
種々の個体で観察されるゲノムDNA間の一塩基多型(SNP)すなわち一塩基の変異は、遺伝的多様性の基礎を形成するだけでなく、疾患傾向に関するマーカーとなり、疾患管理の向上を可能とし、疾患状態についての理解を高め、最終的にはより有効な薬剤の発見を促進することが期待されている。そのため、確実にかつ迅速にSNPを同定する方法を開発するという共通の目標をもって多数の努力が続けられている。これらの努力の大部分は、ヒトゲノムDNA(ハプロイドゲノム=3×10bp)の生来の複雑度およびその複雑度に関連する感度要件のために、PCRのような方法による標的の増幅を必要とする。ヒトゲノムDNAにおいて直接SNPを検出することができれば、アッセイが簡素化され、かつSNP同定における標的の増幅に関連するエラーが排除される。
【0004】
一塩基多型は、DNAシーケンシング、制限酵素分析または部位特異的ハイブリダイゼーションを含む多数の方法により同定することができる。しかしながら、SNPおよび突然変異に関する全ゲノムのハイスループットスクリーニングは、高い精度および感度で複数の遺伝子座を同時に解析する能力を必要とする。感度および特異性を増大するために、現在の一塩基検出のためのハイスループット法は、通常ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる標的核酸サンプルの増幅を含む工程に依存している(例えば、ニキフォロフ(Nikiforov)等の特許文献1;マッキントッシュ(McIntosh)等の特許文献2;ゴイレット(Goelet)等の特許文献3;非特許文献1〜9を参照)。通常、従来のハイブリダイゼーションによるSNP検出にPCR増幅が必須である理由は2つある。まず、ヒトの全DNA(ハプロイドゲノムあたり3,000,000,000塩基対のサイズを有する)を得た場合、SNP部位を含有する標的配列はその全DNAの非常に小さな画分に相当するにすぎない。例えば、20塩基長の標的配列は、全DNAのわずか0.00000033%にあたる(正常なゲノムに関しては当該標的配列が2コピー存在するが、これらは異なるSNP部位を有する可能性があり、したがって異なる部位とみなす)。したがって、数マイクログラムの一般的なDNAサンプルでは、感度が不足しているため現在の技法の多くには不十分な可能性がある。しかしながら、より重要な理由は、一塩基の識別を可能にするのに十分に短いオリゴヌクレオチドと20塩基長の標的配列をハイブリダイゼーションさせても、完全に標的領域にのみハイブリダイズするのではなく、ゲノム中の他の領域にも多少結合するということである。非標的DNAの量が圧倒的であることを考慮すると、非特異的ハイブリダイゼーションにより大きなバックグラウンドが生じ、特異的シグナルを隠してしまう。したがって、1つの標的領域をPCR増幅することは、非特異的配列の量を劇的に減少させるのに必要な工程である。この増幅工程を、「複雑度の低減」と称する。しかしながら、PCR技法の精度には限界がある。PCRプライマー対の組合せにより
、擬似反応産物が生成されたり、またはある特定の領域では反応産物が生成されなかったりする傾向にある。さらに、非標的配列がコピーされてしまった後や、あるいは誤った組込みのために標的配列にエラーが導入されてしまった場合には、最終反応産物におけるエラー数はPCR増幅の各回毎に指数関数的に増大する。したがって、PCRエラーは、核酸集団における稀な変異を探索する場合に重要な欠点であり得る。
【0005】
最後に、標的増幅を用いることの欠点は、各SNP部位が別個に増幅されなくてはならないことである。ヒトゲノムでは潜在的に数百万個ものSNPが存在するため、これは、克服しがたい作業となる。SNP部位特異的増幅の問題点を部分的に回避する「最先端の」増幅方法および戦略であっても、SNPの総数のほんの一部を同時に同定しうるにすぎない(0.1%未満)(例えば、非特許文献10を参照されたい)。ヒトゲノムプロジェクトのリーダー等の1人であるホワイトヘッド生物医学研究所(the Whitehead Institute for Biomedical Research )のエリック・ランダー(Eric Lander )は、SNPの全ゲノムスクリーニングにおける最も有意義な挑戦の1つとして、標的増幅の排除を挙げた(非特許文献11を参照)。したがって、当該技術分野では、標的の増幅すなわち複雑度の低減を必要としない、サンプルにおけるSNPを検出するためのより高感度で、効率の良い、かつ費用効率の良い方法の必要性が依然として存在する。
【0006】
DNA突然変異の同定もまた、生物学的微生物を同定するのに重要である(非特許文献12を参照されたい)。例えば、ブドウ球菌属には少なくとも38の異なる種が含まれ、これらの種のうちの多数が、病院内感染症で同定されている(非特許文献12)。したがって、生物の迅速な同定および種の特定は、患者の治療についての判断の助けとなる感染源を同定するために、かつ院内病原体への感染発生と交差感染とを疫学的に認識するのに重要である(非特許文献13)。生化学的試験に基づいて細菌を同定する従来の方法は、多くの場合時間がかかり(1日よりも長い)、特定種の正確な同定が可能でない場合が多い(非特許文献14)。したがって、特にブドウ球菌属のような院内病原体の場合に、核酸配列の同定に基づいて特定の細菌種を同定するための、より迅速、正確かつより安価な方法を開発するのに、相当の努力が注がれている。同じ科または属の微生物は、同じタンパク質をコードする系統学的に保存された遺伝子を含有する(非特許文献14)。同じ科由来の遺伝子配列は、通常高度に保存されているが、様々な遺伝子(例えば、16S rRNA)内部の種特異的配列突然変異が同定されている。16S rRNA遺伝子の可変領域を標的とするオリゴヌクレオチドプローブは、リアルタイムPCRアッセイで各種のコアグラーゼ陰性および陽性ブドウ球菌の種を同定するために開発された(非特許文献12)。
【0007】
さらに、PCR増幅したfemA遺伝子配列を用いて、ブドウ球菌の属、種および抗生物質耐性を同定するためのマイクロアレイが開発されている(非特許文献14)。このマイクロアレイは、臨床的に最も重要な5つのブドウ球菌種(黄色ブドウ球菌(S. aureus )、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、S.ヘモリティカス(S. haemolyticus )、S.ホミニス(S. hominis)、腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus))に関連したfemA遺伝子中の種特異的配列変異(3塩基以上の配列変異)を認識するオリゴヌクレオチドプローブを含み、その同じ遺伝子の保存領域を標的とするオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ブドウ球菌属を同定するものであった。しかしながら、マイクロアレイおよびリアルタイムPCRの両方を用いるアッセイの主な欠点の1つは、PCRの要件が臨床的にもコストの観点からも理想に満たない可能性があることである(上述のSNP同定についてのPCRに関する議論を参照)。したがって、当該技術分野では、標的の増幅すなわち複雑度の低減を必要としない、サンプル中の生物を検出し種を特定するためのより高感度で、有効で、かつ費用効率の良い方法の必要性が依然として存在する。
【特許文献1】米国特許第5,679,524号明細書、1997年10月21日発行
【特許文献2】国際公開公報第98/59066号パンフレット、1998年12月30日
【特許文献3】国際公開公報第95/12607号パンフレット、1995年5月11日
【非特許文献1】ワン(Wang)等、1998年、サイエンス誌(Science )第280巻、p.1077−1082
【非特許文献2】ティアギ(Tyagi )等、1998年、ネイチャー・バイオテクノロジー誌(Nature Biotechnol.)第16巻、p.49−53
【非特許文献3】チェン(Chen)等、1998年、ゲノム・リサーチ誌(Genome Res. )第8巻、p.549−556
【非特許文献4】パスティネン(Pastinen)等、1996年、クリニカル・ケミストリー誌(Clin. Chem. )第42巻、p.1391−1397
【非特許文献5】チェン(Chen)等、1997年、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス誌(Proc. Natl. Acad. Sci.)第94巻、p.10756−10761
【非特許文献6】シュバー(Shuber)等、1997年、ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス誌(Hum. Mol. Gen.)第6巻、p.337−347
【非特許文献7】ルー(Liu )等、1997年、ゲノム・リサーチ誌、第7巻、p.389−398
【非特許文献8】リバック(Livak )等、ネイチャー・ジェネティクス誌(Nature Genet. )第9巻、p.341−342
【非特許文献9】デイ(Day )およびハンフリーズ(Humphries )、1994年、アナリティカル・バイオケミストリー誌(Anal. Biochem.)第222巻、p.389−395
【非特許文献10】ケネディ(Kennedy )等、2003年、ネイチャー・バイオテクノロジー誌、第21巻、p.1233−1237
【非特許文献11】ランダー(Lander E. )1999年、ネイチャー・ジェネティクス誌別冊、第21巻、p.3−4
【非特許文献12】エドワーズ(Edwards )等、ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌(J. Clin. Micro. )第39巻、p.3047−3051
【非特許文献13】オリーブ(Olive )およびビーン(Bean)、1999年、ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌、第37巻、p.1661−1669
【非特許文献14】ハメルズ(Hamels)等、2001年、バイオテクニクス誌(Biotechniques )第31巻、p.1364−1372
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当該技術分野では、標的の増幅すなわち複雑度の低減を必要としない、サンプルにおけるSNPを検出するためのより高感度で、有効で、かつ費用効率の良い方法の必要性が依然として存在する。
【0009】
当該技術分野では、標的の増幅すなわち複雑度の低減を必要としない、サンプル中の生物を検出し種を特定するためのより高感度で、有効で、かつ費用効率の良い方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要約)
本発明は、サンプル中の標的核酸配列を検出する方法を提供し、ここで前記サンプルは、増幅させた核酸分子の生物学的複雑度よりも高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含み、標的核酸配列は、既知の核酸配列と少なくとも1ヌクレオチド異なっている。例えば
、1ヌクレオチドの差は、一塩基多型であり得る。
【0011】
一態様では、標的の増幅または複雑度の低減を予め実施せずにサンプル中の標的核酸配列を検出する方法は、以下の工程:a)捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列の第1の部分の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程であって、前記検出オリゴヌクレオチドは工程(a)の標的核酸配列の第2の部分の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、c)標的核酸配列の第1の部分への捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および標的核酸配列の第2の部分への検出プローブのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、標的核酸配列の第1および第2の部分とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む。
【0012】
別の態様では、標的の増幅または複雑度の低減を予め実施せずにサンプル中の標的核酸配列を検出する方法は、以下の工程:a)複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程であって、前記検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分であって基材上の捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、c)標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分への前記捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分への検出プローブのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、標的核酸配列とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む。
【0013】
本発明はまた、サンプル中の一塩基多型を同定する方法を提供し、ここで前記サンプルは、増幅させた核酸分子に比べて高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含む。
一態様では、標的の増幅または複雑度の低減を予め実施せずにサンプル中の一塩基多型を同定する方法は、以下の工程:a)少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、前記少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドが、特定の多型を含む核酸標的の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドが結合している検出プローブを供給する工程であって、前記検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の前記核酸標的の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、c)核酸標的への捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および核酸標的への検出プローブのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、核酸標的とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む。
【0014】
別の態様では、標的の増幅または複雑度の低減を予め実施せずにサンプル中の一塩基多型を同定する方法は、以下の工程:a)複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドは、それぞれが特定の多型を含む核酸標的の複数の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程であって、前記検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の核酸標的の少なくとも一部分であって基材上の捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、c)核酸標的の複数の部分への捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーシ
ョン、および核酸標的への検出プローブのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、核酸標的とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む。
【0015】
一実施形態では、標的核酸のヌクレオチド差または一塩基多型は、基材に結合された捕捉オリゴヌクレオチドにより、あるいは検出オリゴヌクレオチドにより認識され得る。
別の実施形態では、サンプル中の標的核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNAもしくは他の細胞小器官DNA、遊離した細胞DNA、ウイルスDNAもしくはウイルスRNA、あるいは上記の2つまたはそれ以上の混合物を含むことができる。
【0016】
一実施形態では、本発明の方法で使用する基材は、複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含むことができ、該捕捉オリゴヌクレオチドはそれぞれ1つまたはそれ以上の異なる一塩基多型またはヌクレオチド差を認識することができ、サンプルは、2以上の核酸標的を含むことができ、該核酸標的はそれぞれ前記複数の捕捉オリゴヌクレオチドのうち1つとハイブリダイズすることができる異なる一塩基多型またはヌクレオチド差を含む。さらに、本発明の方法では1つまたはそれ以上のタイプの検出プローブを提供することができ、該検出プローブにはそれぞれ、異なる核酸標的とハイブリダイズすることが可能である検出オリゴヌクレオチドが結合している。
【0017】
一実施形態では、サンプルを検出プローブと接触させてサンプル中に存在する核酸標的を検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることができ、続いて、検出プローブに結合した核酸標的を基材と接触させて核酸標的を基材上の捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることができる。あるいは、サンプルを基材と接触させてサンプル中に存在する核酸標的を捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることができ、続いて、捕捉オリゴヌクレオチドに結合した核酸標的を検出プローブと接触させて核酸標的を検出プローブ上の検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることができる。別の実施形態では、サンプルを、検出プローブおよび基材と同時に接触させることができる。
【0018】
さらに別の実施形態では、検出オリゴヌクレオチドは、検出可能な標識を含むことができる。標識は、例えば、蛍光性、発光性、リン光性、放射性、またはナノ粒子であってもよく、検出オリゴヌクレオチドは、デンドリマー、分子集合体、量子ドットまたはビーズに連結させることができる。標識は、例えば、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的または物理的手段による検出を可能にし得る。
【0019】
一実施形態では、検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブであり得る。ナノ粒子は、例えば、金または銀のような貴金属から作製することができる。ナノ粒子は、例えば光学スキャナまたはフラットベッド式スキャナを用いて検出することができる。スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結することができ、グレースケールの測定値が算出されることにより、検出された核酸の量の定量的測定が可能である。ナノ粒子が金、銀、または金属の自己組織化(autometallography )を促進しうる別の金属から作製される場合、標的核酸分子によりナノ粒子に結合される基材は、銀染色を用いてさらに高感度で検出することができる。あるいは、ナノ粒子に結合された基材を、ナノ粒子により散乱された光を検出することによって検出することもできる。
【0020】
別の実施形態では、基材に結合させるオリゴヌクレオチドを2つの電極の間に配置し、ナノ粒子を導電体の材料から作製し、本発明の方法の工程(d)に、導電率の変化を検出
することを含めることができる。さらに別の実施形態では、それぞれ異なる標的核酸配列を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドをアレイ状のスポットとして基材に結合させ、オリゴヌクレオチドのスポットそれぞれを2つの電極の間に配置し、ナノ粒子を導電体の材料から作製し、本発明の方法の工程(d)に、導電率の変化を検出することを含める。電極は、例えば金から作製することができ、ナノ粒子は、金から作製される。あるいは、導電率の変化を生じるように、基材を銀染色剤と接触させることができる。
【0021】
別の実施形態では、本発明の方法は、共通の属の2以上の種を識別するのに使用することができる。一態様では、これらの種においてヌクレオチドが非連続的に2つまたはそれ以上異なっている可能性がある。別の態様では、これらの種においてヌクレオチドが連続して2つまたはそれ以上異なっている可能性がある。
【0022】
一実施形態では、本発明の標的核酸配列はブドウ球菌属細菌の遺伝子の一部であり得る。この実施形態の一態様では、ブドウ球菌属細菌は、例えば、黄色ブドウ球菌、S.ヘモリティカス、表皮ブドウ球菌、S.ルグドゥネンシス(S. lugdunensis)、S.ホミニス、腐性ブドウ球菌であり得る。したがって、本発明の方法は、ブドウ球菌属の種の特定(すなわち、ブドウ球菌属細菌の異なる種を識別すること)に使用することができる。
【0023】
別の実施形態では、本発明の標的核酸配列は、mecA遺伝の一部であり得る。したがって、本発明の方法は、細菌のメチシリン耐性株を同定するのに使用することができる。
本発明のさらに別の実施形態では、標的核酸配列、捕捉オリゴヌクレオチド、および/ または検出オリゴヌクレオチドは、
【0024】
【化1】

に記載される配列を含むことができる(SEQ ID NOは配列番号を表す)。
【0025】
本発明の特定の好ましい実施形態は、以下の、ある特定の好ましい実施形態についてのより詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(好ましい実施形態についての詳細な説明)
状況により別途必要とされない限り、単数形の用語には複数形が包含されるものとし、複数形の用語には単数形が包含されるものとする。
【0027】
本開示において使用される場合、以下の用語は、別記しない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
本明細書で使用する場合、「核酸配列」、「核酸分子」または「核酸」は、本明細書中で規定するような1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本明細書中で使用する場合、「標的核酸分子」または「標的核酸配列」は、本発明の方法の使用者がサンプル中で検出したい配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。
【0028】
本明細書中で言及する場合の「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも10塩基長の一本鎖または二本鎖の核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態では、該ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドでよく、あるいはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であってもよい。前記修飾としては、ブロモウリジンのような塩基修飾、アラビノシドおよび2’,3’−ジデオキシリボースのようなリボース修飾、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデートおよびホスホロアミデートのようなヌクレオチド間結合修飾が挙げられる。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、一本鎖および二本鎖の形態のDNAを包含する。
【0029】
本明細書中で言及される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合のうち少なくともいずれかによって互いに連結された、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよび改変ヌクレオチドを包含する。オリゴヌクレオチドは、通常一本鎖で長さが200塩基以下の成員を含んでなるポリヌクレオチドのサブセットである。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは10〜60塩基長である。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、例えば突然変異遺伝子の構築に使用するために、一本鎖でも二本鎖でもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、タンパク質をコードする配列についてのセンスオリゴヌクレオチドでもアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。
【0030】
「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含する。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖残基等を有するヌクレオチドを包含する。「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホロアミデート等のようなオリゴヌクレオチド結合を包含する。例えば、ラプランシュ(LaPlanche )他、1986年、ヌクレイック・アシッド・リサーチ誌(Nucl. Acids Res.)第14巻、p.9081;ステック(Stec)他、1984年、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ誌(J. Am. Chem. Soc. )第106巻、p.6077;スタイン(Stein )他、1988年、ヌクレイック・アシッド・リサーチ誌、第16巻、p.3209、ゾン
(Zon )他、1991年、アンタイキャンサー・ドラッグ・デザイン誌(Anti-Cancer Drug Design )第6巻、p.539;ゾン(Zon )他、1991年、「オリゴヌクレオチドおよび類縁体:実践的手法(OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH)」p.87−108(エフ.エクスタイン(F. Eckstein )編)、英国オックスフォード所在のオックスフォード大学出版(Oxford University Press );ステック(Stec)他、米国特許第5,151,510号明細書;アルマンおよびパイマン(Uhlmann and Peyman)、1990年、ケミカル・レビューズ誌(Chemical Reviews)第90巻、p.543(これらの開示は、任意の目的で、参照により本明細書に援用される)を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、該オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの検出を可能にするための検出可能な標識を含むことができる。
【0031】
本発明の方法で使用する「位置決め可能な基材」とは、オリゴヌクレオチドを結合させることが可能な任意の表面であり得る。かかる表面としては、ガラス、金属、プラスチック、またはオリゴヌクレオチドが結合するように設計された官能基でコーティングされた材料が挙げられるが、これらに限定されない。コーティングは、一分子層より厚くてもよく、実際、コーティングは、多孔質三次元構造を生成し、オリゴヌクレオチドが拡散して該構造の内部表面に結合することが可能な十分な厚さを有する多孔質材料を包含することができる。
【0032】
本明細書中で使用する場合「捕捉オリゴヌクレオチド」という用語は、基材に結合され、かつ標的核酸分子上の相補的なヌクレオチド配列または遺伝子の所在を確認する(すなわち、サンプル中でハイブリダイズする)ことができる核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを指し、従って、ハイブリダイゼーションが起きると該捕捉オリゴヌクレオチドを介して標的核酸分子を基材に結合する。捕捉オリゴヌクレオチドの適切な例としては、DNA、RNA、PNA、LNA、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定はされない。捕捉オリゴヌクレオチドは、天然配列を含んでも合成配列を含んでもよく、修飾ヌクレオチドを含んでも含まなくてもよい。
【0033】
本発明の「検出プローブ」は、1つまたはそれ以上の検出オリゴヌクレオチドを結合させることができる任意の担体であってもよく、ここで、1つまたはそれ以上の検出オリゴヌクレオチドは、特定の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。担体自体が標識として作用してもよく、あるいは検出可能な標識を含有するか、または検出可能な標識で修飾されてもよく、あるいは検出オリゴヌクレオチドがかかる標識を担持してもよい。本発明の方法に適した担体としては、ナノ粒子、量子ドット、デンドリマー、半導体、ビーズ、アップまたはダウンコンバージョン蛍光体、巨大タンパク質、脂質、炭水化物、または十分な大きさを有する任意の適切な無機もしくは有機分子、あるいはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「検出オリゴヌクレオチド」という用語は、標的核酸分子上の相補的なヌクレオチド配列または遺伝子の所在を確認する(すなわち、サンプル中でハイブリダイズする)のに使用することができる核酸配列を含む、本明細書中で規定されるようなオリゴヌクレオチドである。検出オリゴヌクレオチドの適切な例としては、DNA、RNA、PNA、LNA、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。検出オリゴヌクレオチドは、天然配列を含んでも合成配列を含んでもよく、修飾ヌクレオチドを含んでも含まなくてもよい。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「標識」という用語は、光子的、電子的、光電子的、磁気的、重力的、音響的、酵素的、あるいは他の物理的または化学的手段により検出され得る検出可能なマーカーを指す。「標識された」という用語は、例えば、放射標識したヌクレオチドの組込み、あるいはオリゴヌクレオチドへの検出可能なマーカーの結合により、か
かる検出可能なマーカーが組込まれることを意味する。
【0036】
本明細書中で使用する場合の「サンプル」という用語は、核酸を含み、かつ本発明の方法で使用することができる任意の量の物質を指す。例えば、サンプルは生物学的サンプルであってもよく、あるいは、ヒト、動物、植物、真菌、酵母、細菌、ウイルス、組織培養物もしくはウイルス培養物、または上述の組合せに由来する生物学的サンプルから抽出されてもよい。サンプルは、固体組織(例えば、骨髄、リンパ節、脳、皮膚)、体液(例えば、血清、血液、尿、痰、精液またはリンパ液)、骨格組織、または個々の細胞を含有してもよく、あるいはそれらから抽出されてもよい。別例として、サンプルは、精製または部分的に精製された核酸分子を含むことができ、かつ、例えば、本発明の方法を首尾よく実施するのに適した条件をもたらすために使用される緩衝液および/または試薬を含むことができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、サンプル中の標的核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、細胞の核酸、または細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)もしくは寄生生物に由来する核酸、あるいはそれらの組合せを含むことができる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、核酸分子の「生物学的複雑度」とは、例えば、参照により本明細書に援用されるルーウィン(Lewin )の「遺伝子発現2、第2版:真核生物染色体(GENE EXPRESSION 2, Second Edition: Eukaryotic Chromosomes )」1980年、ニューヨーク所在のジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons )に記載されているように、該核酸分子中に存在する非反復ヌクレオチド配列の数を指す。例えば、非反復配列を含有する30塩基の単純なオリゴヌクレオチドの複雑度は30である。4,200,000塩基対を含有する大腸菌ゲノムの複雑度は、大腸菌ゲノムには本質的に反復配列が含まれないため、4,200,000である。しかしながら、ヒトゲノムは約3,000,000,000塩基対を有し、その大部分が反復配列である(例えば、約2,000,000,000塩基対)。ヒトゲノムの全体の複雑度(すなわち、非反復ヌクレオチドの数)は、約1,000,000,000程度である。
【0039】
DNA分子のような核酸分子の複雑度は、種々の反復配列(すなわち、核酸分子中に存在する種々の配列それぞれのコピー)の数には依存しない。例えば、あるDNAが、aヌクレオチド長の配列を1つ、bヌクレオチド長の配列を5コピー、およびcヌクレオチド長の配列を50コピー有する場合、複雑度は、a +b+cであるのに対して、配列aの反復頻度は1、bでは5、cでは10であろう。
【0040】
所与のDNA内の種々の配列の総長は、そのDNAに関してC1/2を算出することにより実験的に決定することができるが、C1/2は、下式:
1/2=1/k
(式中、Cは、時間t1/2での(反応が1/2完了した際の)一本鎖DNAの濃度であり、kは速度定数である)
で表される。C1/2は、2つの相補的DNA鎖が半分再会合するのに必要とされる値を表す。DNAの再会合は通常、一本鎖の状態のDNAの割合(C/C)または再会合した割合(1−C/C)をCtの対数に対してプロットするCot曲線の形態で表される。Cot曲線は、1968年にブリテン(Britten )およびコーン(Kohne )により導入された(1968年、サイエンス誌(Science )第161巻、p.529−540)。Cot曲線は、再会合している各配列の濃度が所与のDNAに関する再生の速度を決定することを示す。これに対し、C1/2は、反応中に存在する種々の配列の総長を表す。
【0041】
DNAのC1/2は、その複雑度に比例する。したがって、DNAの複雑度の決定
は、そのC1/2を既知の複雑度を有する標準DNAのC1/2と比較することにより達成することができる。通常、DNAの生物学的複雑度を決定するのに使用される標準DNAは大腸菌DNAであるが、大腸菌DNAの生物学的複雑度は、大腸菌ゲノム中のあらゆる配列が特有であるとされているため、そのゲノム長(4.2×10塩基対)に一致する。したがって、下式:
[C1/2(任意のDNA)]/[C1/2(大腸菌DNA)]
=[複雑度(任意のDNA)]/4.2×10
を用いて、DNAの生物学的複雑度を決定することができる
ある特定の実施形態では、本発明は、PCR法または特定のDNA配列を優先的に増幅する任意の他の方法による酵素的な複雑度の低減を必要とせずに、ヒトの全DNA中のヌクレオチド突然変異(例えば、一塩基多型)を有する標的核酸分子を信頼性高く検出および識別(すなわち、同定)する方法を提供する。具体的には、本発明の方法は、ハイブリダイゼーション条件(反応容量、塩、ホルムアミド、温度およびアッセイ方式を含む)、基材に結合された捕捉オリゴヌクレオチド配列、検出プローブ、ならびに捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブの両方により認識された標識核酸分子を検出するのに十分な感度を有する手段の組合せを含む。
【0042】
実施例で実証するように、本発明は、標的配列を選択的に濃縮するために予め増幅または複雑度の低減を実施することなく、かつあらゆる酵素反応の助けを伴わずに、2つのハイブリダイゼーション事象、すなわち標的配列の第1部分の捕捉プローブへのハイブリダーゼーションおよび前記標的配列の第2部分の検出プローブへのハイブリダイゼーションを包含する単一工程のハイブリダイゼーションにより、ヒトの全DNA中の一塩基多型を検出することのできる方法を初めて提供する。図1は、単一工程のハイブリダイゼーションを模式的に示す図である。上述したように、2つのハイブリダイゼーション事象は同じ反応において生じる。標的は、まず捕捉オリゴヌクレオチドに結合してから、模式図に示したナノ粒子のような検出プローブにもハイブリダイズしてもよいし、あるいは標的がまず検出プローブに結合し、続いて捕捉オリゴヌクレオチドに結合してもよい。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、PCR法または特定のDNA配列を優先的に増幅する任意の他の方法による酵素的な複雑度の低減を必要とせずに、ヒトの全DNA中の1つまたはそれ以上の非連続的なヌクレオチド突然変異を有する標的核酸分子を信頼性高く検出および識別(すなわち、同定)する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、共通の属の2以上の異なる種であって非連続的な2つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なっている種に由来する2つまたはそれ以上の標的核酸分子を、ヌクレオチドが1つまたはそれ以上異なる捕捉オリゴヌクレオチドおよび/またはヌクレオチドが1つまたはそれ以上異なる検出オリゴヌクレオチドを用いて識別するのに使用することができる。本発明の方法はまた、連続した2つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なっている共通の属の2以上の種を識別するのに使用することもできる。
【0044】
一実施形態では、本発明は、2工程のハイブリダイゼーションを用いて達成することができる。図2は、2工程のハイブリダイゼーションを模式的に示す図である。この処理工程では、ハイブリダイゼーション事象は、2つの別個の反応において起きる。標的は、まず捕捉オリゴヌクレオチドに結合し、非結合核酸すべてを除去した後に、捕捉された標的核酸の第2の部分に特異的に結合することができる検出プローブを提供する第2のハイブリダイゼーションが実施される。
【0045】
2工程ハイブリダイゼーションを包含する本発明の方法は、反応が2工程で行われるため、第1のハイブリダイゼーション事象(すなわち、標的核酸分子の捕捉)中に、検出プローブのある特定の固有の特性(例えば、ナノ粒子プローブの高いTmおよび鋭い融解挙動)を提供しなくても作動する。第1工程は、所望の標的配列のみを捕捉するのにはスト
リンジェンシーが十分ではない。したがって、続いて第2工程(検出プローブの結合)は、標的核酸分子に関して所望の特異性を達成するように提供される。これらの2つの識別力のあるハイブリダイゼーション事象の組合せが、標的核酸分子に関する全体的な特異性を可能にする。しかしながら、この優れた特異性を達成するためには、ハイブリダイゼーション条件は、非常にストリンジェントであるように選択される。かかるストリンジェントな条件下では、ほんの少量の標的および検出プローブしか捕捉プローブに捕捉されない。この量の標的は通常少なすぎて、標準的な蛍光方法ではバックグラウンドに埋もれてしまうので検出から漏れてしまう。したがって、適切に設計した検出プローブを用いてこの少量の標的を検出することが、本発明にとって重要である。本発明に記載する検出プローブは、通常多くの検出オリゴヌクレオチドを含有するように修飾され、この検出プローブのハイブリダイゼーション反応動態を高める担体部分から構成されている。次に、検出プローブはまた、1つまたはそれ以上の高感度の標識部分で標識され、適切な検出装置とともに、捕捉された少数の標的−検出プローブ複合体の検出を可能にする。したがって、この処理工程を機能させるには、すべての要素を高感度の検出システムと組み合わせて適切に調整することが必要である。
【0046】
本発明の2工程のハイブリダイゼーション方法は、検出工程に関して本明細書中に記載するように、任意の検出プローブを使用することを含みうる。好ましい実施形態では、ナノ粒子プローブを上記方法の第2工程で使用する。ナノ粒子を使用し、第2のハイブリダイゼーション工程でのストリンジェンシー条件が第1工程のストリンジェンシー条件と等しい場合、ナノ粒子プローブ上の検出オリゴヌクレオチドは、捕捉オリゴヌクレオチドよりも長くてもよい。したがって、ナノ粒子プローブ特有の特徴(高いTmおよび鋭い融解挙動)のために必要な条件は不要である。
【0047】
適切に設計された本発明の捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブと組み合わせた単一工程ならびに2工程のハイブリダイゼーション方法は、サンプル中の標的核酸配列を検出する従来の方法を上回る新規かつ予期せぬ利点を提供する。具体的には、本発明の方法は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる検出方法において必要とされるような、標的への結合の蓋然性を高めるために、標的の数を最大限とすると同時にサンプル中の非標的配列の相対濃度を減少させるための増幅工程を必要としない。予め標的配列を増幅することなく特異的に検出することは、非常にすばらしい利点を提供する。例えば、増幅により研究室または診断実験室由来の混入物汚染を招き、その結果偽陽性の試験結果を生じることが多い。PCR法または他の標的増幅法には、専門的訓練を積んだ技術者、値段の高い酵素および特殊設備を必要とする。最も重要なのは、増幅効率が各標的配列とプライマーの対により多様である可能性があり、従ってゲノム中に存在する標的配列を決定する、および/または該標的配列の相対量を決定する際の誤差または失敗につながることである。さらに、本発明の方法は工程数が少なく、したがって、サザンブロットアッセイおよびノーザンブロットアッセイのような核酸標的を検出するためのゲルを用いる方法よりも実施が簡単かつ効率的である。
【0048】
一実施形態では、本発明は、サンプル中の標的核酸配列を検出する方法であって、サンプルは増幅させた核酸分子より高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含み、標的核酸配列は既知の核酸配列と少なくとも1ヌクレオチド異なっていることを特徴とする方法を提供し、該方法は、以下の工程:a)捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、捕捉オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列の第1の部分の少なくとも一部を認識することができることを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程であって、検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の標的核酸配列の第2の部分の少なくとも一部とハイブリダイズすることができることを特徴とする工程と、c)標的核酸配列の第1の部分への捕捉オリゴヌクレオチドの特異的かつ選択的ハイブリダイゼーション、および標的核酸配列の第2の部分への
検出プローブの特異的かつ選択的なハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、標的核酸配列の第1および第2の部分とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む。別の実施形態では、位置決め可能な基材には、標的核酸配列の複数の部分を認識することができる複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合しており、1つまたはそれ以上の検出プローブは、標的核酸配列の1つまたは複数の部分であって捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分とハイブリダイズすることができる検出オリゴヌクレオチドを含んでなる。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、増幅させた核酸分子より高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含むサンプル中の一塩基多型を同定する方法を提供し、前記方法は、以下の工程:a)少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドは、特異的な多型を含む核酸標的を認識することができることを特徴とする工程と、b)検出オリゴヌクレオチドが結合している検出プローブを供給する工程であって、検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の核酸標的の少なくとも一部分とハイブリダイズしうることを特徴とする工程と、c)核酸標的への捕捉オリゴヌクレオチドの特異的かつ選択的なハイブリダイゼーション、および核酸標的への検出プローブのハイブリダイゼーションに有効な条件下で、サンプルを基材および検出プローブと接触させる工程と、d)捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが核酸標的とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程とを含む方法である。別の実施形態では、位置決め可能な基材には、標的核酸配列の複数の部分を認識することができる複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合しており、検出プローブは、標的核酸配列の一部分であって捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分とハイブリダイズしうる検出オリゴヌクレオチドを含んでなる。
【0050】
本発明の方法は、わずか1ヌクレオチドだけ異なっている2つの配列を識別することができる。したがって、特定の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1ヌクレオチドの突然変異を有する特異的な標的核酸分子を検出するために使用することができる。好ましい実施形態では、突然変異は一塩基多型(SNP)である。
【0051】
別の実施形態では、検出オリゴヌクレオチドは、検出可能なように標識することができる。ポリヌクレオチドを標識する様々な方法が当該技術分野で既知であり、本明細書中に開示する方法に好適に使用され得る。特定の実施形態では、本発明の検出可能な標識は、蛍光性、発光性、ラマン活性、リン光性、放射性であっても、または光散乱に有効であってもよく、特有の質量を有してもよく、あるいは他の場合は、何らかの他の容易かつ特異的に検出可能な物理的または化学的特性を有してもよい。また、上記検出可能な特性を高めるために、標識を凝集させてもよいし、あるいはデンドリマー、分子集合体、量子ドット、またはビーズのような担体に1つまたは複数個結合させてもよい。標識により、例えば、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、酵素的、化学的、ラマン的、または質量分析的手段による検出が可能となる。
【0052】
一実施形態では、本発明の検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合しているナノ粒子プローブであり得る。ナノ粒子は、その大きさに由来する特有の物理的および化学的特性により、注目の対象となっている。これらの特性により、ナノ粒子は、従来の検出方法よりも感度が高く、より特異的かつより費用効率のよい新たなタイプの生物学的センサの開発に有望な道筋を提供する。ナノ粒子を合成する方法、およびその結果得られる特性を研究するための方法論は、ここ10年にわたって広く開発されてきた(クラブンド(Klabunde)編、「化学におけるナノスケール材料(Nanoscale Materials in Chemistry)」、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、2001年)。しかしながら、生物学的検知におけるナノ粒子の使用は限られていた。というのも、対象とする生体
分子によりナノ粒子を機能化する強固な方法が、これらの異質な2つの材料が本質的に不適合性であるため存在しなかったからである。修飾オリゴヌクレオチドによりナノ粒子を機能化する非常に有効的な方法が開発されている。その全体が参照により援用される米国特許第6,361,944号明細書および同第6,417,340号明細書(譲受人:ナノスフェアー・インコーポレイテッド)を参照されたい。この製法によりオリゴヌクレオチドで強力に機能化されたナノ粒子が得られるが、該ナノ粒子は驚くべき粒子安定性およびハイブリダイゼーション特性を有する。得られたDNA修飾粒子は、高濃度の電解質を含有する溶液中での安定性、遠心分離または凍結に対する安定性、ならびに加熱および冷却を繰り返す場合の熱安定性で明らかなように、非常に強固であることも証明されている。この装着方法はまた、制御可能であり融通性も高い。種々の大きさおよび組成のナノ粒子が機能化されており、該ナノ粒子上へのオリゴヌクレオチド認識配列の装着は、前記装着方法により制御することが可能である。ナノ粒子の適切な例としては、米国特許第6,506,564号明細書、国際特許出願第PCT/US02/16382号、2003年5月7日に出願された米国特許出願第10/431,341号明細書、および国際特許出願第PCT/US03/14100号(これらはすべて、それらの全体が参照により本明細書に援用される)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0053】
DNA修飾されたナノ粒子、特にDNA修飾された金ナノ粒子プローブを調製する上述の装着方法は、オリゴヌクレオチドについて比色検知する新たな構想の開発を導いた。この方法は、対象とするDNA標的の2つの異なる領域に2つの金ナノ粒子プローブをハイブリダイゼーションさせることに基づいている。プローブはそれぞれ、同じ配列を有する複数のオリゴヌクレオチドで機能化されるため、十分な標的が存在する場合、標的の結合によって標的DNA/金ナノ粒子プローブ凝集体が形成される。DNA標的が認識されると、粒子の粒子間距離の減少により色彩の変化がもたらされる。この色彩の変化は、紫外可視分光光度計により光学的に、あるいは裸眼により視覚的に観察することができる。さらに、溶液を膜上で濃縮すると色彩が強まる。したがって、単純な色彩の変化により特定のDNA配列の有無を検証することができる。このアッセイを用いて、フェムトモル量およびナノモーラー濃度のモデルDNA標的ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅した核酸配列が検出されている。重要なことは、金プローブ/DNA標的複合体が極めて鋭敏な融解転移を示し、その結果DNA標的に対する非常に特異的な標識となることが実証されていることである。モデル系では、1塩基の挿入、欠失または不適正(ミスマッチ)が、色彩および温度に基づいたスポット試験により、あるいは凝集体の融解転移を分光学的に観察することにより、容易に検出可能であった(ストルホフ(Storhoff)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ誌(J. Am. Chem. Soc. )第120巻、p.1959、1998年)。同様に、例えば米国特許第5,506,564号明細書を参照されたい。
【0054】
融解転移が鋭敏であるため、ハイブリダイゼーションおよび検出を極めて高いストリンジェンシーの下で(例えば、完璧に適正な(マッチする)プローブ/標的の融解温度より1度下で)実施した場合、不適正な標的の存在下でさえ完全に適正な標的を検出することができる。分子蛍光体標識で観察されるような幅のある融解転移の場合、融解温度に近い温度でハイブリダイゼーションおよび検出を行うと、プローブ/標的複合体の部分的な融解による感度の低下と、さらには不適正なプローブ/標的複合体の部分的なハイブリダイゼーションによる不適正なプローブシグナルに起因する特異性の低下とが原因でシグナルを著しく損失するであろうことに留意することは重要である。したがって、ナノ粒子プローブは、核酸検出法のためにより特異性の高い検出を提供する。
【0055】
本明細書中で記載するように、ナノ粒子プローブ、特に金ナノ粒子プローブは、ゲノムDNAを用いた増幅を伴わない直接的なSNP検出に、驚くほどかつ予想外に適している。第1に、ナノ粒子オリゴヌクレオチド検出プローブで観察される極めて鋭敏な融解転移
により、アッセイの特異性が驚くほどかつかつてないほど変化し、ヒトゲノムDNAというバックグラウンド下であっても一塩基の識別が可能となりうる。第2に、DNAマイクロアレイを用いたアッセイにおける銀を用いたシグナル増幅手法により、極めて高度な感度の増強をさらに提供することができる。
【0056】
ナノ粒子は、例えば光学スキャナまたはフラットベッド式スキャナを用いて、本発明の方法において検出され得る。スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結されてもよく、グレースケールの測定値は、検出された核酸量を定量的に測定できるように算出される。
【0057】
適切なスキャナとしては、書類をコンピュータへと取り込むために使用される反射モードで作動可能なスキャナ(例えば、フラットベッド式スキャナ)、上記の機能を実施可能であるか、または同じタイプの光学系を利用するその他のデバイス、任意のタイプのグレースケールを感知する測定デバイス、および本発明の基材をスキャンするように変更された標準的なスキャナ(例えば、該基材用のホルダを含むように変更されたフラットベッド式スキャナ)が挙げられる(これまでのところ、透過モードで作動するスキャナを使用することが可能かどうかはわかっていない)。スキャナの解像度は、基材上の反応面積がスキャナの単一ピクセルよりも大きくなるように十分でなくてはならない。アッセイにより生じる検出可能な変化が基材を背景として観察することができるという条件下であれば(例えば、銀染色で生じるようなグレースポットは、白色のバックグラウンドを背景として観察できるが、グレー色のバックグラウンドを背景として観察することはできない)、任意の基材とともにスキャナを使用することができる。スキャナは、白黒スキャナ、または好ましくはカラースキャナであり得る。
【0058】
最も好ましくは、スキャナは、書類をコンピュータへと取り込むために使用されるタイプの標準的なカラースキャナである。かかるスキャナは、安価であり、市販されていて容易に入手可能である。例えば、Epson Expression 636(600×600dpi)、UMAX Astra 1200(300×300dpi)、またはMicrotec 1600(1600×1600dpi)を使用することができる。スキャナは、基材をスキャンすることにより得られた画像を加工するためのソフトウェアを搭載したコンピュータに連結される。該ソフトウェアは、Adobe Photoshop 5.2およびCorel Photopaint 8.0のような市販されていて容易に入手可能な標準的なソフトウェアでよい。該ソフトウェアを使用してグレースケールの測定値を算出することにより、アッセイの結果を定量化する手段が提供される。
【0059】
ソフトウェアはまた、着色スポットの色数を提供することができ、スキャンの画像(例えば、プリントアウト)を出力することができ、その画像を精査して核酸の存在、核酸の量、またはその両方の定性的に決定することができる。さらに、陽性の結果を表す色彩から陰性の結果を表す色彩を差し引くことにより、アッセイの感度を増大させることができることが見出されている。
【0060】
コンピュータは、市販されていて容易に入手可能である標準的なパーソナルコンピュータでよい。したがって、標準的なソフトウェアが搭載された標準的なコンピュータに連結された標準的なスキャナを使用することにより、アッセイが基材上で実施される場合、核酸を検出および定量化するための、利便性の高い、容易で安価な手段が提供されうる。スキャン結果をさらに参照または使用できるように、結果の記録を維持するためコンピュータ内に保管することもできる。当然のことながら、望ましい場合には、より高性能の装置およびソフトウェアを使用することができる。
【0061】
銀染色は、銀の還元を触媒する任意のタイプのナノ粒子とともに使用することができる
。貴金属(例えば、金および銀)で作製されたナノ粒子が好ましい。バッセル(Bassell )ら、ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー誌(J. Cell Biol. )第126巻、p.863−876、1994年;ブラウン‐ホーランド(Braun-Howland )ら、バイオテクニクス誌(Biotechniques )第13巻、p.928−931、1992年を参照されたい。核酸の検出に使用されるナノ粒子が銀の還元を触媒しない場合には、銀イオンを核酸と複合体形成させて還元を触媒することができる。ブラウン(Braun )ら、ネイチャー誌(Nature)第391巻、p.775、1998年を参照されたい。また、核酸上のリン酸基と反応することができる銀染色も知られている。
【0062】
銀染色は、上述のアッセイを含む基材上で実施される任意のアッセイにおいて検出可能な変化を生じさせるか、または増強するのに使用することができる。特に、銀染色は、単一タイプのナノ粒子を使用するアッセイに関する感度を非常に大きく高めることがわかっており、その結果、ナノ粒子、凝集体プローブおよびコアプローブの層の使用せずに済む場合が多い。
【0063】
別の実施形態では、基材に結合されるオリゴヌクレオチドが2つの電極の間に配置され、ナノ粒子は電導体である材料から作製され、本発明の工程(d)が導電率の変化を検出することを含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、それぞれが異なる標的核酸配列を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドがアレイ状のスポットとして基材に結合され、オリゴヌクレオチドの各スポットが2つの電極の間に配置され、ナノ粒子は電導体である材料から作製され、本発明の工程(d)が導電率の変化を検出することを含む。電極は、例えば金から作製することができ、ナノ粒子は、金から作製される。あるいは、基材を銀染色剤と接触させて、導電率の変化を生じさせることができる。
【0064】
特定の実施形態では、サンプル中の核酸分子は、増幅させた核酸分子よりも高い生物学的複雑度を有する。当業者であれば、例えば、ルーウィン(Lewin )の「遺伝子発現2、第2版:真核生物染色体(GENE EXPRESSION 2, Second Edition: Eukaryotic Chromosomes )」1980年、ニューヨーク所在のジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley
& Sons )(これは、参照により本明細書に援用される)に記載されるような方法を用いて、標的核酸配列の生物学的複雑度を容易に決定することができる。
【0065】
ハイブリダイゼーション反応動態は、反応パートナー、すなわち、ハイブリダイズすべき鎖の濃度に絶対的に依存する。細胞サンプルから抽出された一定量のDNAにおいては、全ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(存在する場合)、および染色体外エレメントのDNA(存在する場合)の量は、単に数マイクログラムにすぎない。したがって、ハイブリダイズすべき反応パートナーの実際の濃度は、これらの反応パートナーの大きさおよび抽出DNAの複雑度に依存する。例えば、単一ゲノム当たり1コピー存在する30塩基長の標的配列は、種々の供給源由来で種々の複雑度を有するDNAサンプル間で比較した場合には、種々の濃度で存在する。例えば、ヒトの全DNA1マイクログラム中の同じ標的配列の濃度は、細菌DNAサンプル1マイクログラム中では約1000倍低く、小プラスミドDNA1マイクログラムから構成されるサンプル中では、約1,000,000倍低くなる。
【0066】
ヒトゲノムの複雑度は高い(1×10ヌクレオチド)ことから、ヒトゲノムDNAが冗長で類似の配列を有するゆえに非常に高度の特異性が要求される。例えば、25量体(25mer)オリゴヌクレオチドを用いてヒト全ゲノムから捕捉鎖を識別するには、40,000,000:1の識別能力を有するレベルの特異性が必要である。さらに、野生型および突然変異型の標的は、25量体の捕捉配列中1塩基しか違わないので、首尾よく遺伝子型を決定するためには96%の相同性を有する2つの標的を識別する必要がある。本発明の方法により、驚くべきことに、かつ予期せぬことに、増幅させた核酸分子と比較し
て高い複雑度を有する標的核酸分子を効率的、特異的かつ高感度で検出することができる。
【0067】
ヒト組織に由来するサンプル中の標的核酸分子の生物学的複雑度は、およそ1,000,000,000であるが、植物または動物由来のゲノムに関しては、最大10倍高い場合も低い場合もありうる。好ましくは、生物学的複雑度は約50,000〜5,000,000,000である。最も好ましくは、生物学的複雑度は、約1,000,000,000である。
【0068】
一実施形態では、ハイブリダイゼーション条件は、特異的かつ選択的なハイブリダイゼーションに有効であり、該条件により、例えば以下の実施例に示すように、標的核酸が50,000以上の生物学的複雑度を有する核酸サンプルの一部である場合でさえ、標的核酸配列に対する捕捉オリゴヌクレオチドおよび/または検出オリゴヌクレオチドの一塩基のミスマッチを検出可能である。
【0069】
本発明の方法はさらに、生物学的微生物(例えば、ブドウ球菌属)の個々の種を同定するために、および/または抗生物質耐性を付与する遺伝子(例えば、抗生物質メチシリンに対する耐性を付与するmecA遺伝子)を検出するために使用することができる。
【0070】
黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性株(MRSA)は、世界的に第1位の院内病原体となっている。これらの細菌は、米国の大きな大学付属病院では、院内で発生するブドウ球菌感染全体の40%を超える感染の原因となっている。近年、これらの細菌は、比較的小さな病院ならびに養護施設で流行するようになってきた(200〜500床の病院では発生率20%)。ウェンゼル(Wenzel)ら、1992年、ジ・アメリカン・ジャーナル・オブ・ザ・メディカル・サイエンシズ誌(Am. J. Med. )第91巻(補遺3B)p.221−7)。MRSA株の特異かつ最も不都合な特性は、他の化学療法上有用な抗生物質に対するこの菌株の感受性を抑制する追加の耐性因子を獲得する能力を同菌株が有することである。かかる多耐性菌株は今や世界中で流行しており、最も「進化した」形態のこれらの病原体は、使用可能な抗菌剤の大部分に対して耐性メカニズムを保有している(ブラムバーグ(Blumberg)ら、1991年、ザ・ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズ誌(J. Inf. Disease )第63巻、p.1279−85)。
【0071】
メチシリン耐性の中心的な遺伝子要素は、いわゆるmecA遺伝子である。この遺伝子は、祖先のMRSA細胞が外来供給源から獲得したに違いない、ブドウ球菌由来でない未知のDNA片上に見出される。mecA遺伝子は、PBP2Aと呼ばれるペニシリン結合タンパク質(PBP)をコードするが(ムラカミ(Murakami)およびトマツ(Tomasz)、1989年、ジャーナル・オブ・バクテリオロジー誌(J. Bacteriol. )第171巻、p.874−79)、該タンパク質はβラクタム系抗生物質ファミリー全体に対する親和性が非常に低い。現在の見解では、PBP2Aは「代理の」細胞壁合成酵素の一種であって、補完的関係にある正常なPBP(細胞壁合成の正常な触媒)が、環境中のβラクタム系抗生物質により完全に不活性化されたためもはや機能し得ない場合に、ブドウ球菌中で不可欠な任務である細胞壁合成を請け負うことができる酵素である。抗生物質耐性の表現型に関するmecA遺伝子およびその遺伝子産物であるPBP2Aの重要な性質は、トランスポゾンTn551をmecA遺伝子へと組み込んだ初期のトランスポゾン不活化実験により実証された。同実験の結果では、最小阻害濃度(MIC)値が親細菌の1,600μg/mlからトランスポゾン突然変異体の約4μg/mlという低い値にまで、耐性レベルが劇的に降下した(マシューズ(Matthews)およびトマツ(Tomasz)、1990年、アンチマイクロバイアル・エージェンツ・アンド・ケモセラピー誌(Antimicrobial Agents
and Chemotherapy )、第34巻、p.1777−9)。
【0072】
病院で発生したブドウ球菌感染症は、抗生物質耐性株の増加、およびコアグラーゼ陰性のブドウ球菌種により引き起こされる感染数の増大を伴い、治療がますます困難になっている。これらの感染症の有効な治療は、種の同定(種の特定)および抗生物質耐性の決定に多くの試験が長い時間を必要とするために減衰される。種および抗生物質に対する耐性状態の両方を迅速に特定することにより、患者の治療課程をより早期に、かつ広範囲の抗生物質をあまり使用せずに実行することができる。したがって、ブドウ球菌属の種を同定および識別するため、およびmecA遺伝子検出のための少なくともいずれかについて、迅速で、高感度でかつ選択的な方法が明らかに必要とされている。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、ブドウ球菌属の種の特定および/またはメチシリン耐性遺伝子(mecA)検出用のオリゴヌクレオチド配列およびそれらの逆方向の相補配列、これらの配列を使用するナノ粒子標識プローブ、方法ならびにキットを提供する。上記配列は、ブドウ球菌属の種、または何らかの形態の抗生物質耐性を引き起こすmecA遺伝子に、非常に感度が高くかつ選択的であるように設計される。これらの配列は、mecA遺伝子の検出またはブドウ球菌株の種の特定を目的として、ならびにその他の系の陰性対照を意図して使用することができる。現在、以下の実施例に示すようにプローブTuf3およびTuf4、またはTuf5およびTuf6のいずれかのセットをプローブTuf2と組み合わせて用いて、黄色ブドウ球菌を表皮ブドウ球菌と識別することができる。16Sとラベルされた配列は、ブドウ球菌属に含まれる16S rRNAまたはDNAの存在を検出するのに使用される。標準的なホスホルアミダイト化学法のような従来の方法を用いて、これらの配列を捕捉プローブおよび/またはナノ粒子標識プローブとして創出することができる。
【0074】
本発明の別の実施形態では、本発明の配列を、未増幅ゲノムDNAを用いたブドウ球菌の種の特定および/またはmecAの検出のための方法に使用することができる。本発明のmecA遺伝子配列は、mecA遺伝子に関してわずか1×10−13M(100fM、3×10コピー)の二本鎖PCR産物および50μl反応物中の超音波処理した全ゲノムDNA33ng(1×10コピー)を本アッセイ条件およびアッセイ方式下で検出するのに用いられている(図21参照)。黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の種の特定に使用されるTuf遺伝子配列の感度ならびに特異性についても、PCR増幅遺伝子産物または細菌の全ゲノムDNAを用いたアッセイで試験した。現在の検出下限は、二本鎖PCR産物では1×10−12M(1pM、または3×10コピー)、50μl反応物中の超音波処理したゲノムDNAでは150ng(5×10コピー)であると判定された(図20参照)。これらのアッセイを実施した条件は後述する。本発明の方法は、驚くべきことに、予め複雑度を低減させたり標的を増幅したりせずに、細菌のゲノムDNAを用いて、1塩基対またはそれ以上異なっているDNA配列を識別することにより、ブドウ球菌属の種々の種を効率的、高感度かつ特異的に検出する。
【0075】
本発明のさらに別の実施形態では、PCRアンプリコンを用いる場合、その全体が参照により援用される国際特許出願第PCT/US01/46418号明細書(譲受人:ナノスフェアー・インコーポレイテッド(Nanosphere, Inc.)に記載されるように、アレイ基材に結合させた捕捉配列の代わりに第2のナノ粒子プローブを使用することができる。標的DNAが両方のナノ粒子プローブにハイブリダイズする場合(これが、色彩変化につながる)、この系は、光学的に(例えば、色彩または光散乱を)検出することができる。このタイプのアッセイは、上記アッセイに関して記載されているように、ブドウ球菌の種の特定またはmecA遺伝子検出の目的に使用することができる。
【実施例】
【0076】
本発明は、以下の例示的な実施例によりさらに実証される。実施例は、説明の目的で提供されるものであり、本発明をどのようにも限定することを意図するものではない。これ
らの実施例では、割合(%)はすべて、固体に関しては重量に基づき、液体に関しては容量に基づいており、温度はすべて、別記しない限り、摂氏温度である。
【0077】
[実施例1]
(ナノ粒子プローブを用いて未増幅ゲノムDNA中のSNPを同定する単一工程および2工程のハイブリダイゼーション法)
1997年7月21日に出願された国際特許出願第PCT/US97/12783号明細書、2000年6月26日に出願された同PCT/US00/17507号明細書、2001年1月12日に出願された同PCT/US01/01190号明細書(これらは、その全体が参照により援用される)に記載されている手法を用いて、第II因子、MTHFRおよび第V因子の標的配列を検出するための金ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブを調製した。図3は、野生型または突然変異型の捕捉プローブオリゴヌクレオチドを有するDNAマイクロアレイを用いた標的DNAの検出のための、オリゴヌクレオチドが結合している金ナノ粒子プローブの使用を概念的に示している。ナノ粒子に結合されたオリゴヌクレオチドの配列は、標的配列の一部分に相補的である一方で、ガラスチップに結合された捕捉オリゴヌクレオチドの配列は、標的配列の別の部分に相補的である。ハイブリダイゼーション条件下で、ナノ粒子プローブ、捕捉プローブ、および標的配列が結合して複合体を形成する。生じた複合体のシグナル検出は、従来の銀染色により増強することができる。
【0078】
(a)金ナノ粒子の調製
フレンス(Frens )、1973年、ネイチャー・フィジカル・サイエンス誌(Nature Phys. Sci. )第241巻、p.20およびグラバー(Grabar)、1995年、アナリティカル・ケミストリー誌(Anal. Chem. )第67巻、p.735に記載されるように、クエン酸塩によるHAuClの還元により、金コロイド(直径13nm)を調製した。簡潔に述べると、ガラス製品はすべて、王水(HCl 3部、HNO 1部)で清浄化して、Nanopure(R)HOですすぎ、使用前にオーブンで乾燥させた。HAuClおよびクエン酸ナトリウムは、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)から購入した。HAuCl水溶液(1mM、500mL)を攪拌しながら還流させた。次に、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50mL)を素早く添加した。溶液の色彩が淡黄色から赤紫色に変化し、還流を15分間続けた。室温にまで冷却した後、この赤色の溶液をミクロン・セパレーションズ・インコーポレイテッド(Micron Separations Inc. )製の1ミクロンフィルタに通して濾過した。ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard )の8452Aダイオードアレイ分光光度計を用いた紫外可視分光分析、および日立(Hitachi )の8100透過型電子顕微鏡を用いた透過型電子顕微鏡法(TEM)により、Auコロイドの特性を解析した。直径15nmの金粒子は、標的および10〜35ヌクレオチド範囲のプローブオリゴヌクレオチド配列とともに凝集すると、目で見える色彩変化をもたらす。
【0079】
(b)オリゴヌクレオチドの合成
MTHFR、第II因子または第V因子のDNA配列の一部分に相補的な捕捉プローブオリゴヌクレオチドを、ホスホルアミダイト化学法[エクスタイン,エフ.(Eckstein, F.)編、「オリゴヌクレオチドおよび類縁体:実践的手法(OL IGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH)」、オックスフォード所在のアイアールエル・プレス(IRL Press )、1991年]を用いて、ABI 8909 DNA合成機を用いてシング
ルカラムモード、1マイクロモルスケールで合成した。捕捉配列には、アレイ化工程の際に共有結合させるための活性基として機能するいずれかの3’−アミノ修飾基を含めた。オリゴヌクレオチドは、以下のDNA合成に関する標準的なプロトコルにより合成した。固体支持体に結合した3’−アミノ修飾基を有するカラム、標準的なヌクレオチドホスホルアミダイトおよび試薬は、グレン・リサーチ(Glen Research )から入手した。最終的
なジメトキシトリチル(DMT)保護基は、精製を補助するためにオリゴヌクレオチドから切断しなかった。合成後に、アンモニア水を用いて固体支持体からDNAを切断し、3’−末端に遊離アミンを含有するDNA分子の生成をもたらした。逆相カラム(Vydac)を装備したAgilent 1100シリーズ装置を用いて、0.03M EtNHOAc緩衝液(TEAA)(pH7)を95% CHCN/5% TEAAの1%/分の勾配とともに使用することにより、逆相HPLCを実施した。流速は1mL/分であり、260nmでUV検出した。回収および緩衝液の蒸発後、80%酢酸で室温にて30分間処理することにより、DMTをオリゴヌクレオチドから切断した。続いて、該溶液を蒸発させて、ほぼ乾固させ、水を添加して、切断されたDMTを酢酸エチルによりオリゴヌクレオチド水溶液から抽出した。オリゴヌクレオチドの量は、260nmでの吸光度により決定し、最終純度は、分析用逆相HPLCにより評価した。
【0080】
MTHFR遺伝子に関するアッセイで使用した捕捉配列は、以下の通りである:MTHFR野生型、5’GATGAAATCGCTCCCGCAGAC−NH 3’(MTHFR−SNP/Cap6−WT22、配列番号1)およびMTHFR突然変異体、5’ATGAAATCGCTCCCGCAGACA−NH 3’(MTHFR−SNP/Cap7−mut22、配列番号2)。第V因子遺伝子について相当する捕捉オリゴヌクレオチドは、以下の通りである:第V因子野生型、5’TGGACAGGCGAGGAATACAGGTAT−NH 3’(FV−Cap−WT24、配列番号3)および第V因子突然変異体、5’CTGGACAGGCAAGGAATACAGGTATT−NH
3’(FV−Cap−mut26、配列番号4)。第II因子野生型:5’CTCAGCGAGCCTCAATGCTCCC−NH 3’(FII−SNP/Cap1−WT22、配列番号5)および第II因子突然変異体、5’CTCTCAGCAAGCCTCAATGCTCC−NH 3’(FII−SNP/Cap1−mut23、配列番号6)。
【0081】
第II因子、MTHFRおよび第V因子遺伝子を検出するように設計された検出プローブオリゴヌクレオチドは、5’末端にあるステロイドジスルフィドリンカー、続いて認識配列を含む。該プローブに関する配列を記載する:FII(第II因子)プローブ、5’Epi−TCCTGGAACCAATCCCGTGAAAGAATTATTTTTGTGTTTCTAAAACT3’(FII−ProI−47、配列番号7)、MTHFRプローブ、5’Epi−AAAGATCCCGGGGACGATGGGGCAAGTGATGCCCATGTCGGTGCATGCCTTCACAAAG3’(MTHFR−ProII−58、配列番号8)、第V因子プローブ、5’Epi−CCACAGAAAATGATGCCCAGTGCTTAACAAGACCATACTACAGTGA3’(FV−Pro46、配列番号9)。
【0082】
プローブオリゴヌクレオチドの合成は、捕捉プローブに関して記載する方法に従ったが以下の変更を加えた。まず、アミノ修飾基カラムの代わりに、認識配列の3’末端を反映する適切なヌクレオチドを備えた支持体を使用した。次に、ステロイドジスルフィドを含有する修飾ホスホルアミダイトを使用することにより、5’末端ステロイド環状ジスルフィドをカップリング工程で導入した(その全体が参照により援用される、レスティンガー(Letsinger )ら、2000年、バイオコンジュゲート・ケミストリー誌(Bioconjugate
Chem.)第11巻、p.289−291および国際特許出願第PCT/US01/01190号明細書(ナノスフェアー・インコーポレイテッド(Nanosphere, Inc.)を参照されたい)。ホスホルアミダイト試薬は、以下のように調製され得る:エピアンドロステロン(0.5g)、1,2−ジチアン−4,5−ジオール(0.28g)およびp−トルエンスルホン酸(15mg)のトルエン(30mL)中の溶液を、水分除去用の条件下で(ディーン・スターク装置)7時間還流させた後、トルエンを減圧下で除去して、残渣を酢酸エチル中に溶解した。この溶液を水で洗浄して、硫酸ナトリウムで脱水し、シロップ状の
残渣になるまで濃縮し、この残渣をペンタン/エーテル中で一晩静置させると、白色固体としてステロイドジチオケタール化合物(400mg)が得られた(Rf(TLC、シリカプレート、溶離液としてエーテル)0.5)。比較用に、同じ条件下で得られるエピアンドロステロンおよび1,2−ジチアン−4,5−ジオールのRf値は、それぞれ0.4および0.3である。ペンタン/エーテルから再結晶させると白色粉末が得られた(mp
110〜112℃;H NMR,δ 3.6(1H COH)、3.54〜3.39(2H、m ジチアン環の2OCH)、3.2〜3.0(4H、m 2CHS)、2.1〜0.7(29H、m ステロイドH)、マススペクトル(ES)C2336に関する計算値(M+H)425.2179、実測値425.2151)。(C2337)Sの分析:計算値15.12;実測値15.26。ステロイドジスルフィドケタールホスホルアミダイト誘導体を調製するために、ステロイドジチオケタール(100mg)をTHF(3mL)中に溶解して、ドライアイスアルコール浴中で冷却した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(80μL)およびβ−シアノエチルクロロジイソプロピルホスホルアミダイト(80μL)を順次添加した後、混合物を室温に加温し、2時間攪拌し、酢酸エチル(100mL)と混合し、5%NaHCO水溶液および水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して乾固させた。残渣を最小量のジクロロメタン中に溶解して、ヘキサンの添加により−70℃で沈殿させて、真空下で乾燥させた(収量100mg:31P NMR 146.02)。DNA合成の完了後に、エピアンドロステロン−ジスルフィドが連結されたオリゴヌクレオチドを、アンモニア水条件下で支持体から脱保護し、上述のように逆相カラムを用いてHPLCにより精製した。
【0083】
(c)金ナノ粒子へのオリゴヌクレオチドの結合
最初にオリゴヌクレオチドの4μM溶液を、15nmのクエン酸塩で安定化させた金ナノ粒子コロイド溶液の約14nMの溶液とともに、最終容量2mLで24時間インキュベートすることにより、プローブを調製した。この調製物中の塩濃度を、室温で40時間にわたって、0.8Mにまで徐々に上昇させた。得られた溶液を0.2μmの酢酸セルロースフィルタに通し、13,000Gで20分間回転させることによりナノ粒子プローブをペレット化した。上清を除去した後、ペレットを水に再懸濁させた。最終工程で、プローブ溶液を再びペレット化して、プローブ貯蔵緩衝液(10mM リン酸、100mM NaCl、0.01%(w/v)NaN)に再懸濁させた。520nmでの吸光度に基づいて濃度を推定した後、濃度を10nMに調節した(ε=2.4×10−1cm−1)。
【0084】
第II因子、MTHFRおよび第V因子DNAに特異的な以下のナノ粒子−オリゴヌクレオチド複合体は、このようにして調製した:
第II因子プローブ:金−S’−5’−[TCCTGGAACCAATCCCGTGAAAGAATTATTTTTGTGTTTCTAAAACT−3’](FII−ProI−47、配列番号10)
MTHFRプローブ:金−S’−5’−[AAAGATCCCGGGGACGATGGGGCAAGTGATGCCCATGTCGGTGCATGCCTTCACAAAG−3’](MTHFR−II58、配列番号11)
第V因子プローブ:金−S’−5’−[CCACAGAAAATGATGCCCAGTGCTTAACAAGACCATACTACAGTGA−3’](FV−46、配列番号12)
S’は、エピアンドロステロンジスルフィド基を介して調製した結合ユニットを示し、nは、認識オリゴヌクレオチドの数を表す。
【0085】
(d)DNAマイクロアレイの調製
GMS417アレイヤー(アフィメトリクス(Affymetrix))を用いることにより、捕捉鎖をSuperaldehyde(商標)スライド(テレケム(Telechem))またはC
odeLink(商標)スライド(アマシャム・インコーポレイテッド(Amersham, Inc.))上に配列させた。配列させたスポットの位置付けは、各スライド上で複数のハイブリダイゼーション実験が可能であるように設計し、シリコーンガスケット(グレース・バイオラブス(Grace Biolabs ))を用いてスライドを仕切り個別の試験ウェルへと分割することにより達成させた。野生型および突然変異体のスポットは、製造業者により提供されたスポット用緩衝液中で3連スポットとした。製造業者により推奨されるプロトコルに従ってアレイ作製後のスライドの処理を行った。
【0086】
(e)ハイブリダイゼーション
(第V因子のSNP検出アッセイ手順)
第V因子のSNP検出は、以下のプロトコルを使用することにより実施した。野生型ホモ接合として遺伝子型同定された、超音波処理したヒト胎盤DNA、またはサケ精子DNA(シグマ(Sigma ))を、エタノールで沈殿させて、FVプローブ溶液の10nM溶液中に溶解した。最終的なハイブリダイゼーション混合液(5μL)が、3×SSC、0.03%Tween20、23%ホルムアミド、5nM FVプローブ、およびヒトDNA
10μgを含有するように、または表示のように、追加の構成成分をこの混合液に添加した。そのハイブリダイゼーション混合液を、4分間の99℃での熱変性工程後に試験ウェルに添加した。アレイを50℃で90分間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、0.5M NaNO、0.05%Tween20中に室温にて1分間アレイを浸漬することで開始した。ガスケットを除去して、試験スライドを再び0.5M NaNO/0.05%Tween20溶液中で洗浄して、穏やかに攪拌しながら、室温で3分間(2回)インキュベートした。スライドを上述のように銀増強溶液を用いて染色し、遠心乾燥機で乾燥させて、ArrayWorx(登録商標)バイオチップリーダー(モデル番号AWE、米国ワシントン州イサクアー(Issaquah)所在のアプライド・プレシジョン・インコーポレイテッド(Applied Precision Inc.))上で画像化した。
【0087】
(f)結果
(第V因子のSNP検出)
図4は、Superaldehyde(商標)スライド上でのヒトゲノムDNA中の第V因子遺伝子のSNPの識別を示す。試験アレイには、野生型および突然変異体の捕捉スポットが含まれている。上に示すアレイは野生型ヒトゲノムDNAとハイブリダイズさせたものであり、下のアレイは超音波処理したサケ精子DNAとハイブリダイズさせたものである。野生型のヒトゲノムDNAとハイブリダイゼーションさせた場合、野生型スポットのシグナルは突然変異体スポットよりも有意に高く、第V因子がホモ接合の野生型遺伝子型であることを示している。このハイブリダイゼーション条件下では、サケ精子DNAとハイブリダイゼーションさせた場合シグナルは観察されず、該アッセイにおける対照として機能している。SNPの識別は、CodeLink(登録商標)スライド上のアレイを用いた検査も実施した。
【0088】
wt(野生型)捕捉スポット上のハイブリダイゼーションが他の何らかの配列には起因せず、ヒト第V因子遺伝子を含有するゲノムに特異的であることを示すように、実験を設計した。ヒトwt全DNAを用いると、wt捕捉スポットでは予測された高いハイブリダイゼーションシグナルが観察され、約3倍弱いシグナルが、突然変異体スポットで観察された。しかしながら、サケ精子から抽出したゲノムDNAを標的として使用すると、このDNAはヒト第V因子遺伝子を含有しないため、シグナルは観察されない。
【0089】
本方法を、一塩基異なる(SNP部位の)2つの標的核酸を識別することが可能なものとするために、ハイブリダイゼーション条件を調節することが重要であることを図5に示す。標的配列(この場合、第V因子遺伝子中に突然変異を有するホモ接合の患者由来)が、由来を同じくする捕捉プローブ(すなわち、Mut−AまたはMut−B配列)に優先
的に結合するように、ホルムアミドとSSC緩衝液塩濃度との間の適切な平衡状態を決定しなくてはならない。さらに、図5は、ハイブリダイゼーションにおける捕捉オリゴヌクレオチド配列の様々な大きさの影響を示している。Mut−A配列は26ヌクレオチド長、Mut−B配列は21ヌクレオチド長とした。結果が示すように、15%FM/1×SSCの条件では特異的なシグナルに有意な差がみられたが、25%FM/6×SSCでは差は見られず、両方のプローブについて明瞭な強いシグナルがみられた。
【0090】
2以上のSNPタイプが同じ条件下で同じサンプル中に検出され得るかどうかを決定するために、野生型および突然変異型の第II因子ならびに第V因子遺伝子の存在に関してゲノムDNAを試験した。ヒトの正常な(wt)ゲノムDNA、基材に結合させた捕捉オリゴヌクレオチド、およびナノ粒子プローブを、35%FMおよび4×SSC中で40℃にて1時間一緒に混合した。シグナルは、第II因子および第V因子遺伝子の両方に関して、wt捕捉スポットで優先的に発生した(図6)。第II因子の突然変異に関してホモ接合で、第V因子に関してはwtホモ接合の個体由来のゲノム全DNAを用いた場合、同じハイブリダイゼーション条件下の同じアレイにおいて、第II因子の突然変異体捕捉スポットと第V因子のwt捕捉スポット上で優先的にシグナルが得られ、これらの2つの遺伝子に関するこの人物のSNP構成に関して同人物の遺伝子構成が正確にはっきりと同定された(図6)。結果から示されるように、2以上のSNPタイプを同じアレイ内かつ同じハイブリダイゼーション条件下で試験することができるように、捕捉オリゴヌクレオチド配列およびハイブリダイゼーション条件を設計することができる。また、使用するDNAの供給源が正常であるか突然変異体であるかどうかとは無関係に、wtDNAと突然変異DNAとの間でSNP識別が可能である。
【0091】
(2工程ハイブリダイゼーション)
SNP識別に対する様々なストリンジェンシー条件の影響を決定するために、さらに実験を行った。アッセイにおいて種々の割合(%)のホルムアミドを使用することにより、種々なストリンジェンシーで試験アレイをハイブリダイズさせた(図7)。ストリンジェンシーを増大させるとシグナルの損失が見られ、その結果シグナルの特異性が向上する。標的なしの対照では、シグナルがほとんど観察されなかった。スポットからシグナルを定量することにより、突然変異体スポットのシグナルよりも、野生型スポットについて3〜6倍高いシグナルが見られた(図7B)。総括すると、結果から、標的を増幅するいかなる戦略も必要とせずにゲノムDNA中のSNPを識別することが支持される。
【0092】
20個、21個、24個または26個のヌクレオチドを含む様々な長さの捕捉オリゴヌクレオチド(FV−WT20(配列番号13):5’(GGACAGGCGAGGAATACAGG)−(PEG)x3−NH3’、FV−mut21(配列番号14):5’(TGGACAGGCAAGGAATACAGG)−(PEG)x3−NH3’、FV−wt24(配列番号15):5’TGGACAGGCGAGGAATACAGGTAT−NH3’、FV−mut26(配列番号16):5’CTGGACAGGCAAGGAATACAGGTATT−NH3’)を、上述のようにCodeLink(登録商標)スライド上にプリントして、正常なヒト胎盤ゲノムDNA(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ(Sigma ))または第V因子突然変異型ヒトゲノムDNA(コリエル研究所(Coriell Institute )保存の培養物GM14899から単離、第V因子欠損)5μgに添加した。第1工程では、スライドおよびDNAを20%FM、30%FMまたは40%FM、および4×SSC/0.04%Tween中で40℃にて2時間インキュベートした。続いて、スライドを2×SSC中で室温にて3分間洗浄した。洗浄した後、第V因子を認識する検出オリゴヌクレオチドを有するナノ粒子プローブを添加し、次いで該混合物を40℃で1時間インキュベートした。シグナルは、上述のように銀染色により検出した。最適に調整した条件(この場合、30%FM)下で、ヒトwtDNAはwtプローブ上のみでシグナルを発生し、ヒト突然変異DNAは突然変異体捕捉プローブ上のみでシグ
ナルを発生することが結果により示された(図8)。ストリンジェンシー条件を変更することにより、識別の損失(ストリンジェンシーが低すぎる)またはシグナルの損失(ストリンジェンシーが高すぎる)がもたらされた。図9は、図8の完璧な(中央の)ハイブリダイゼーション条件に関する定量的データを示す。
【0093】
次に、様々な濃度のDNAを用いて最適条件下で実験を繰り返した。図10に見られるように、SNP識別は、DNA濃度が0.5μg、1.0μgおよび2.5μgの場合に成功した。したがって、本方法は、非常に少ない(1マイクログラム未満の)ヒト全DNAを用いてSNPを検出することができる。これらの結果はまた、捕捉オリゴヌクレオチドの設計、ならびに捕捉(および検出)プローブの長さおよびヌクレオチド組成に対してストリンジェンシー条件を適切に調整することの重要性を示した。
【0094】
2工程ハイブリダイゼーション法の再現性は、野生型のゲノム全DNA5μgを用いた10回の同一ハイブリダイゼーションを単一スライド上の別個のウェル中で実施することにより検査した。図11に示すような10個の別個のハイブリダイゼーションウェルにおける適正および不適正に関する正味のシグナル強度の標準偏差は重なり合わず、各ハイブリダイゼーション反応に関して、使用したDNAのSNP構成を信頼性をもって決定することができることが示された。
【0095】
次に、本方法を用いて、同じサンプル調製物における第V因子、第II因子およびMTHFRのSNPならびに野生型遺伝子を検出した。第V因子、第II因子またはMTHFRに関する捕捉オリゴヌクレオチドを上述のハイブリダイゼーション条件下で全ゲノムDNA5μgとともにインキュベートした。第V因子、第II因子またはMTHFRの検出に特異的なナノ粒子プローブを第二の工程で添加した。図12〜図14に示すこの実験の結果から、少なくとも3つの異なる遺伝子のSNP構成を、同じ条件下で単一アレイにおいて同時に分析することができることが示された。図13は、各遺伝子に関してヘテロ接合であった患者のDNAサンプル(GM16028)における、この多重SNP検出の結果を示す。図14は、第II因子に関してヘテロ接合であり、第V因子に関して野生型であり、かつMTHFRに関して突然変異型である患者における多重SNP検出の結果を示す。本方法は、この患者(患者サンプルGM00037)の遺伝子型を正確に同定した。これらの結果から、識別力がホモ接合およびヘテロ接合の突然変異遺伝子を識別するのに十分であることが示された。例えば、ヒトは、任意のあるSNPに関して、ホモ接合のwt、突然変異体、またはヘテロ接合(1つがwtであり、1つが突然変異であることを意味する)であり得る。これらの3つの異なる状態を、単一のアッセイで、3つの別個のSNP部位に関して独立に、正確に同定することができる。上記の結果から、本発明の方法によって単一サンプルにおいて複数のSNPを同時に同定することができることが示された。実験ではわずか3つのSNPのみについて検査したが、これは代表的な数字に過ぎないことが当業者には理解されよう。より多くのSNP部位を同じアレイ内で試験することができる。
【0096】
これらの実験に加えて、2人の異なる研究者が、これらの実施例に記載する方法を用いて、2人の異なる患者由来のDNA(患者GM14899のDNAに関してスライド1枚当たり1アレイ、および患者GM1600のDNAに関してスライド1枚当たり2アレイ)を用いて、8枚の異なるスライドに別個にハイブリダイズさせた。各アレイは、2つの遺伝子(第II因子および第V因子)それぞれに関して、および捕捉プローブのタイプ(突然変異体またはwt)それぞれに関して、4個の反復スポットを有するものとした。正味のシグナル強度を平均して、分類して、続いて最も低いシグナル強度から始めてプロットした。不適正のシグナル(各プロット上の低いほう)については、標準偏差の3倍を正味のシグナルの平均に加算した。突然変異体および対応するwtシグナルは、常に互いより上にプロットされた。図15に示すように、最も低いシグナル強度の場合でさえ、適正
の場合の正味のシグナルは常に、不適正シグナルの正味のシグナルに標準偏差の3倍を加えたものよりも大きかった。したがって、各場合において、正確なSNP構成は、99%より良好な信頼性で決定することができる。結果はさらに、本明細書に記載の方法の再現性および堅牢性を示している。
【0097】
[実施例2]
(本発明の方法に関するハイブリダイゼーション条件)
当該技術分野で記載される効率的なハイブリダイゼーション反応に関する標準的な推奨条件(ティ.マニアティス(T. Maniatis )、イー.エフ.フリッシュ(E.F. Fritsch)、ジェイ.サムブルック(J. Sambrook )ら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular cloning, A Laboratoy Manual )」、コールドスプリングハーバー研究所(Cold
Spring Harbor Laboratory )1982年、p.324)は、通常、塩濃度およびホルムアミド濃度を含む選択されたハイブリダイゼーション条件に関して算出されるTmより約10〜20℃低いハイブリダイゼーション温度と定めている。それぞれ正確なオリゴヌクレオチド配列および緩衝液条件に基づいて、様々なTm算出方法が存在する。例えば、かかる計算は、コンピュータプログラムを用いて行うことができ、該コンピュータプログラムは市販されており、またはオンラインでも利用可能である(例えば、ウェイン州立大学(the Wayne State University)のウェブサイトで開発され、維持管理されているHYTHER(商標)サーバなど)。このような計算のためのHYTHER(商標)サーバ上の利用可能なプログラムすべてを用いて、本発明者等は、捕捉プローブおよび検出プローブ(すなわち、オリゴヌクレオチド)の両方に関するTmをコンピュータ計算した。表1に示すように、捕捉プローブに関するTmは、ハイブリダイゼーションのために選択された温度(すなわち、40℃)以下であるか、またはその温度に非常に近い。したがって、これらの条件下では、非常に低いハイブリダイゼーション効率が予想される。さらに、捕捉オリゴヌクレオチドは、直接的に、すなわちリンカー配列なしで基材表面に結合され、その表面に最も近いオリゴヌクレオチドが標的配列へのハイブリダイゼーションに関与できない可能性があり、その結果有効なTmをさらに減少させることもありうる。当該技術分野における教示に基づいて、本発明の方法で使用する条件は、特に標的配列が、ヒトゲノムに代表されるような複雑なDNA混合物中のごく微小の割合(すなわち、1/100,000,000、すなわち百万分の1%)に相当する場合に、効率的なハイブリダイゼーションを予想外にも達成した。
【0098】
【表1】

[実施例3]
(ナノ粒子−オリゴヌクレオチド複合体プローブの調製)
この実施例では、代表的なナノ粒子−オリゴヌクレオチド複合体検出プローブを、mecAおよびTuf遺伝子標的のPCR増幅において使用するために調製した。標的のmecAまたはTuf遺伝子配列を検出するための金ナノ粒子−オリゴヌクレオチドプローブは、1997年7月21日に出願された国際出願第PCT/US97/12783号明細書、2000年6月26日に出願された同第PCT/US00/17507号明細書、2
001年1月12日に出願された同第PCT/US01/01190号明細書(これらは、その全体が参照により援用される)に記載されている手順を用いて調製した。
【0099】
(a)金ナノ粒子の調製
フレンス(Frens )、1973年、ネイチャー・フィジカル・サイエンス誌(Nature Phys. Sci. )第241巻、p.20およびグラバー(Grabar)、1995年、アナリティカル・ケミストリー誌(Anal. Chem. )第67巻、p.735に記載されているように、クエン酸塩によるHAuClの還元により、金コロイド(直径13nm)を調製した。簡潔に述べると、ガラス製品はすべて、王水(HCl 3部、HNO 1部)で清浄化して、Nanopure(R)HOですすぎ、使用前にオーブンで乾燥させた。HAuClおよびクエン酸ナトリウムは、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)から購入した。HAuCl水溶液(1mM、500mL)を攪拌しながら還流させた。次に、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50mL)を素早く添加した。溶液の色彩が淡黄色から赤紫色に変化し、還流を15分間続けた。室温にまで冷却した後、この赤色の溶液をミクロン・セパレーションズ・インコーポレイテッド(Micron Separations Inc. )製の1ミクロンフィルタに通して濾過した。ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard )の8452Aダイオードアレイ分光光度計を用いた紫外可視分光分析、および日立(Hitachi )の8100透過型電子顕微鏡を用いた透過型電子顕微鏡法(TEM)により、Auコロイドの特性を解析した。直径13nmの金粒子は、標的および10〜35ヌクレオチド範囲のプローブオリゴヌクレオチド配列とともに凝集すると、目で見える色彩変化をもたらす。
【0100】
(b)ステロイドジスルフィドの合成
mecAおよびTufDNA配列の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドを、ホスホルアミダイト化学法を用いて、シングルカラムモードで、ミリジーン(Milligene )のExpedite(商標)DNA合成機を用いて、1マイクロモルスケールで合成した。エクスタイン,エフ.(Eckstein, F.)編、「オリゴヌクレオチドおよび類縁体:実践的手法(OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH)」、オックスフォード所在のアイアールエル・プレス(IRL Press )、1991年。溶液はすべてミリジーン(Milligene )から購入した(DNA合成等級)。平均的なカップリング効率は、98%〜99.8%であり、最後のジメトキシトリチル(DMT)保護基は、精製を補助するためにオリゴヌクレオチドから切断しなかった。
【0101】
プローブ配列と標的とのハイブリダイゼーションを促進するために、デオキシアデノシンオリゴヌクレオチド(プローブTuf2以外のすべてのプローブについてda15pegとし、プローブTuf2はda10pegとする)を、スペーサーとしてプローブ配列中の5’末端に含めた。
【0102】
5’末端ステロイド環状ジスルフィドオリゴヌクレオチド誘導体(その全体が参照により援用される、レスティンガー(Letsinger )ら、2000年、バイオコンジュゲート・ケミストリー誌(Bioconjugate Chem.)第11巻、p.289−291および国際特許出願第PCT/US01/01190号明細書(ナノスフェアー・インコーポレイテッド(Nanosphere, Inc.))を参照されたい)を生成するために、トルエンの存在下で1,2−ジチアン−4,5−ジオール、エピアンドロステロンおよびp−トルエンスルホン酸(PTSA)を用いて調製した試薬である環状ジチアン連結エピアンドロステロンホスホルアミダイトを用いて、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)の自動合成機で最終的なカップリング反応を行った。該ホスホルアミダイト試薬は、以下のように調製され得る:エピアンドロステロン(0.5g)、1,2−ジチアン−4,5−ジオール(0.28g)およびp−トルエンスルホン酸(15mg)のトルエン(30mL)中の溶液を、水分除去用の条件下で(ディーン・スターク装置で)7時間還流させた後、トルエ
ンを減圧下で除去して、残渣を酢酸エチル中に溶解した。この溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水して、シロップ状の残渣になるまで濃縮し、該残渣をペンタン/エーテル中で一晩静置させると、白色固体としてステロイドジチオケタール化合物(400mg)が得られた(Rf(TLC、シリカプレート、溶離液としてエーテル)0.5)。比較用に、同じ条件下で得られるエピアンドロステロンおよび1,2−ジチアン−4,5−ジオールのRf値は、それぞれ0.4および0.3である。ペンタン/エーテルからの再結晶により、白色粉末が得られた。mp 110〜112℃;H NMR,δ 3.6(1H COH)、3.54〜3.39(2H、m ジチアン環の2OCH)、3.2〜3.0(4H、m 2CHS)、2.1〜0.7(29H、m ステロイドH)、マススペクトル(ES)C2336に関する計算値(M+H)425.2179、実測値425.2151。(C2337)Sの分析:計算値15.12;実測値15.26。ステロイドジスルフィドケタールホスホルアミダイト誘導体を調製するために、ステロイドジチオケタール(100mg)をTHF(3mL)中に溶解して、ドライアイスアルコール浴中で冷却した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(80μL)およびβ−シアノエチルクロロジイソプロピルホスホルアミダイト(80μL)を順次添加した後、混合物を室温に加温して、2時間攪拌し、酢酸エチル(100mL)と混合して、5%NaHCO水溶液および水で洗浄して、硫酸ナトリウムで脱水して、濃縮して乾固させた。残渣を最小量のジクロロメタン中に溶解して、ヘキサンの添加により−70℃で沈殿させて、真空下で乾燥させた(収量100mg;31P NMR 146.02)。エピアンドロステロン−ジスルフィドを結合させたオリゴヌクレオチドをアプライド・バイオシステムズの自動遺伝子合成機で合成し、最終的なDMT除去は実施しなかった。合成完了後、エピアンドロステロン−ジスルフィドを連結させたオリゴヌクレオチドを、アンモニア水条件下で支持体から脱保護して、逆相カラムを用いてHPLCにより精製した。
【0103】
ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard )のODS hypersil(登録商標)カラム(4.6×200mm、粒径5mm)を装備したダイオネクス(Dionex)のDX500システムを用いて、0.03M EtNHOAc緩衝液(TEAA)(pH7)を95% CHCN/5%TEAAの1%/分の勾配とともに使用することにより、逆相HPLCを実施した。流速は、1mL/分であり、260nmでUV検出した。分取用HPLCを用いて、DMTで保護された未修飾オリゴヌクレオチドを精製した。回収および緩衝液の蒸発後、80%酢酸で室温にて30分間処理することにより、DMTをオリゴヌクレオチドから切断した。続いて、溶液を蒸発させてほぼ乾固させ、水を添加し、酢酸エチルを用いて、オリゴヌクレオチド水溶液から切断したDMTを抽出した。オリゴヌクレオチドの量は、260nmでの吸光度により決定し、最終純度は、逆相HPLCにより評価した。
【0104】
(c)マイクロアレイ調製
DNA合成機を用いたDNA合成に関する以下の標準的なプロトコルにより、3’−アミノおよび5’−アミノ含有DNAを合成した。アミン修飾したDNAは、ArrayIt(商標)buffer plus(カタログ番号MSP、米国カリフォルニア州サニベール市所在の社名テレケム(Telechem))中の1mM DNA溶液をプリントすることにより、アルデヒドマイクロアレイスライドに結合させた。500ミクロンのプリント用ピンを備えたAffymetrix(登録商標)GMS417 アレイヤー(米国カリフォルニア州サンタクララ市所在のアフィメトリクス(Affymetrix))を用いて、スライド上にマイクロアレイを正確に配置した。該マイクロアレイスライドは、テレケム(Telechem)から購入したものであり(カタログ番号SMM、米国カリフォルニア州サニベール市)、アルデヒドで機能化された表面を有する。プリント後、スライドを周囲温度の加湿チャンバ中に12〜18時間入れた。スライドを取り出して、真空下で30分〜2時間乾燥させた。続いて、スライドを、0.2%(w/v)SDS中で2回洗浄し、水中で2回洗浄
して、残存するあらゆる未結合DNAを除去した。次に、20%(v/v)の100%エタノールを有する1×PBSに溶解した2.5M水素化ホウ素ナトリウム溶液を用いて、5分間浸すことにより、スライドを処理した。続いて、スライドを、0.2%(w/v)SDSで3回、および水で2回洗浄して、遠心分離して乾燥させた。
【0105】
(d)金ナノ粒子へのオリゴヌクレオチドの結合
上記(a)で記載したように調製した、クエン酸塩で安定化させた金ナノ粒子コロイド溶液(約10nM)を、(b)で記載したように調製した、硫黄で修飾したa15peg−プローブオリゴヌクレオチド(4μM)と混合して、20mlシンチレーションバイアル中で室温にて6時間静置した。該溶液に、0.1Mリン酸水素ナトリウム緩衝液(pH7.0)および5.0M NaClをそれぞれ添加して、0.01Mリン酸水素ナトリウムおよび0.1M NaClの溶液とし、さらに16時間静置した。塩化ナトリウムを、36時間かけて徐々に0.8M NaClまで添加して、得られた溶液をさらに18時間インキュベートした。該溶液の一部を1mlエッペンドルフチューブに取り、Eppendorf Centrifuge5414にて25分間、14,000rpmで遠心分離して、コロイド金(520nmでの吸光度で示されるように)7〜10%と一緒にオリゴヌクレオチドの大部分を(260nmでの吸光度で示されるように)含有する非常に淡い桃色の上清、およびチューブの底に密集した暗色のゼラチン状残渣を得た。上清を除去し、残渣を所望の緩衝液に再懸濁させた。この実施例では、使用した緩衝液は、pH7で0.1M NaCl、10mM クエン酸ナトリウムおよび0.01%アジ化ナトリウムを含む。
【0106】
mecAまたはTuf DNAに特異的な以下のナノ粒子−オリゴヌクレオチド検出プローブおよびアミンで修飾したDNA捕捉プローブはこのようにして調製された。ここで、オリゴヌクレオチドプローブは、アミンで修飾して捕捉プローブとしてスライドガラス上に固定化してもよいし、あるいはエピアンドロステロンリンカーで修飾して検出プローブとして金粒子上に固定化してもよい。換言すると、オリゴヌクレオチドおよびその逆方向の相補体は、捕捉プローブまたはナノ粒子検出プローブとして交換可能に使用することができる。
【0107】
(a)検出プローブ
【0108】
【化2】



S’は、エピアンドロステロンジスルフィド基を介して調製した結合単位を示し、nは、ナノ粒子オリゴヌクレオチド複合体を調製する際に使用した様々なオリゴヌクレオチド数を表す。
【0109】
【表2】



[実施例4]
(金ナノ粒子プローブによる細菌ゲノムDNAからのmecA遺伝子配列の検出)
この実施例では、アレイ方式で金ナノ粒子を用いた検出によりmecA遺伝子配列を検出する方法を記載する。捕捉プローブとしてmecA 2およびmecA 6オリゴヌクレオチドを有するマイクロアレイプレートを、検出プローブとしてmecA 4オリゴヌクレオチドで標識した金ナノ粒子と一緒に使用した。マイクロアレイプレート、捕捉プローブおよび検出プローブは、実施例3に記載するように調製した。
【0110】
実施例3に記載するように調製した、オリゴヌクレオチドプローブが結合された金ナノ粒子(直径13nm)を用いて、3成分サンドイッチアッセイ方式で、透明な基材にハイブリダイズさせたmecA遺伝子由来のDNAの存在を示した。続いて、プローブオリゴヌクレオチドを結合させたナノ粒子、およびメチシリン耐性(MecA+)またはメチシリン感受性(MecA−)の黄色ブドウ球菌細胞から単離したゲノムDNA標的を、これらの基材にコハイブリダイズさせた。したがって、表面にナノ粒子が存在すれば、mecA遺伝子配列の検出が示された(図16)。試験した標的量(250ng(7.5E7コピー)〜1μg(3.0E8コピー))では、結合したナノ粒子は裸眼により視覚化できなかった。基材表面にハイブリダイズさせたナノ粒子の視覚化を促進するために、ヒドロキノンにより銀イオンを触媒的に還元して、スライド表面上に金属銀を形成させるシグナル増幅方法を用いた。この方法は、組織化学的顕微鏡法研究における、タンパク質および抗体に結合させた金ナノ粒子を拡大するために使用されてきた(ハッカー(Hacker)、1989年、「金コロイド:原理、方法および応用(Colloidal Gold: Principles, Methods, and Applications )」、ハヤト、エム.エイ.(Hayat, M.A. )編、第1巻第10章、米国サンディエゴ所在のアカデミック・プレス(Academic Press);ゼーベ(Zehbe )ら、ジ・アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー誌(Am. J. Pathol.)、第150巻、p.1553、1997年)が、定量的DNAハイブリダイゼーションアッセイにおける該方法の使用は新規である(トムリンソン(Tomlinson )ら、アナリティカル・バイオケミストリー誌(Anal. Biochem.)、第171巻、p.217、1988年)。この方法は、非常に低い表面被覆率のナノ粒子プローブを単純なフラットベッド式スキャナまたは裸眼により可視化させることを可能にしただけでなく、染色領域上で銀により増幅された金プローブから散乱される光に基づいた標的ハイブリダイゼーションの定量化をも可能にした。注目すべきことに、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ゲノムDNAを含有するサンプルから得られるシグナル強度は、試験した各ゲノムDNA量では、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌ゲノムDNAから得られるシグナル強度よりも非常に大きかった。このことから、この検出方法論を複雑な細菌ゲノムDNAバックグラウンドの存在下でのmecA遺伝子の特異的な検出に使用することができることが実証された(図16)。この結果は、核酸の超高感度かつ選択性の極めて高い検出を可能にするナノ粒子−オリゴヌクレオチド複合体の驚くべき特徴である。この手法が、標的またはシグナル増幅の酵素的処理手順を必要とせず、細菌ゲノムDNAサンプルからの遺伝子検出の新規な方法を提供することにも留意すべきである。
【0111】
(a)標的DNAの調製
ブドウ球菌属細菌の細胞から単離精製されたゲノム全DNAは、ATCCから購入した。このゲノム全DNAを、実施例5に記載するように(以下を参照)超音波処理により断片化して、DNA分子をせん断した後、アレイ上でハイブリダイゼーションを行った。
【0112】
(b)mecA遺伝子検出アッセイ
(ii)アッセイ手順
250ng〜1μgの量の細菌ゲノムDNAおよび1nMナノ粒子プローブの反応混合物を、1×ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.05%Tween20)中で作製した。該反応混合物を95℃に5分間加熱した。続いて、反応混合物10〜25μlをマイクロアレイ表面に添加して、40℃および90%相対湿度にて2時間ハイブリダイズさせた。このマイクロアレイ表面を、5×SSC、0.05%Tween20中で室温にて30秒間洗浄し、続いて0.5M NaNOにより室温にてさらに30秒間洗浄した。マイクロアレイを乾燥させて、市販の等級の銀増強溶液(銀増強キット、カタログ番号SE−100、米国セントルイス所在のシグマ(Sigma ))を用いて4分間銀発色させた。続いて、銀染色したマイクロアレイプレートを洗浄して、乾燥させて、Arrayworx(登録商標)スキャナ(モデル番号AWE、米国ワシントン州イサクアー(Issaquah)所在のアプライド・プレシジョン・インコーポレイテッド(Applied Precision, Inc. ))を用いて画像化した。
【0113】
[実施例5]
(細菌ゲノムDNAおよび金ナノ粒子標識したTufプローブを用いたブドウ球菌の種の特定)
この実施例では、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対応するTuf遺伝子配列の識別によりブドウ球菌の種の特定を行った。黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の細菌細胞から単離したゲノム全DNAから増幅したTufの372bpのPCRアンプリコンは、陽性対照として機能してアレイの配列特異性を実証した。別個のハイブリダイゼーション反応において、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の細菌細胞から単離したゲノム全DNAを断片化してマイクロアレイプレートにハイブリダイズさせた。マイクロアレイプレートは、Tuf3およびTuf4捕捉プローブ、またはTuf5およびTuf6捕捉プローブを結合させたものとした。Tuf2オリゴヌクレオチドで標識した金ナノ粒子を検出プローブとして使用した。マイクロアレイプレート、捕捉プローブおよび検出プローブは、実施例3に記載するように調製した。Tuf 372bpアンプリコンは、従来のPCR増幅手順により調製した。
【0114】
(a)標的DNAの調製
ゲノムDNAを以下のように調製した:培養したブドウ球菌属細菌細胞から単離したゲノムDNAは、ATCC(American Type Culture Collection)から購入した。この乾燥DNAの一部(>10μg)を、200μl容量のDNaseを含まない水で再水和させた。続いてこの水和物を、米国ニューヨーク州ファーミングデール(Far mingdale )所
在のミゾニックス(Misonix )製の超音波細胞破砕器XLを用いて、2ワットで12〜0.5秒パルスにて超音波処理した。全DNAの濃度は、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes)の市販のPicogreen(登録商標)キットを用いて決定し、テカン(Tecan )のSpectrafluor plus(商品名)蛍光プレートリーダーで読み取った。DNA断片のサイズは、アジレント(Agilent )製の2100 Bioanalyzer(商品名)でスメア分析を実施することにより、平均1.5kbであると測定された。陽性対照であるtuf遺伝子の372塩基対PCRアンプリコンは、従来のPCR増幅技法を用いて、黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌のゲノムDNAから調製した。
【0115】
(b)Tuf遺伝子検出アッセイ手順
別個のハイブリダイゼーションウェルにおいて、表皮ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌の細菌細胞から単離した断片化ゲノム全DNA(8.0E07コピー、約250ng)および1nMナノ粒子プローブを1×ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.0
5%Tween20)中で混合した。陽性対照として、同じゲノムDNAサンプルのPCR増幅したTuf遺伝子断片を、スライドガラス上の別個のハイブリダイゼーションウェル中で、プローブおよび緩衝液と混合した。該反応混合物を95℃に5分間加熱した。続いて、反応混合物50μlをマイクロアレイ表面に添加して、45℃および90%相対湿度にて1.5時間ハイブリダイズさせた。このマイクロアレイ表面を、0.5M NaNO中で室温にて30秒間洗浄した。該マイクロアレイを乾燥させて、市販の等級の銀増強溶液(銀増強キット、カタログ番号SE−100、米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ(Sigma ))を用いて4分間銀発色させた。続いて、銀染色したマイクロアレイプレートを洗浄し、乾燥させて、アレイ上の銀増幅したナノ粒子プローブから散乱した光を、Arrayworx(登録商標)スキャナ(モデル番号AWE、米国ワシントン州イサクアー(Issaquah)所在のアプライド・プレシジョン(Applied Precision ))を用いて画像化および定量化した。
【0116】
結果を、Tuf3およびTuf4捕捉プローブに関しては図17(a)および図17(b)に、またTuf5およびTuf6捕捉プローブに関しては図17(c)および図17(d)に示す。Tuf3およびTuf4捕捉プローブセットを用いると、ゲノムDNAをアレイにハイブリダイズさせたとき、ブドウ球菌属の種である黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に相当する特異的シグナルがアレイ上に観察される。このことは、複雑度の低減およびPCRによるtuf遺伝子標的の増幅が、ゲノム全DNA存在下でのこれらの相関の高い配列の識別に必要とされないことを有効に実証している。Tuf5およびTu6捕捉プローブセットを用いると、適切な種に対応するシグナルも観察されるが、不適正の捕捉配列との交差反応性が幾らか見られ、識別率の低下につながっている。このことは、配列設計が種の正確な同定に極めて重要であることを示している。
【0117】
[実施例6]
(PCRアンプリコンならびに検出プローブとして金ナノ粒子標識したmecAおよびTufオリゴヌクレオチドを用いたブドウ球菌の種の特定とメチシリン耐性アッセイ)
この実施例では、黄色ブドウ球菌の属、種および抗生物質耐性状態を同定するように設計されたアレイを、16S rRNA遺伝子(属)、Tuf遺伝子(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌および腐性ブドウ球菌用の種特異的捕捉体)およびmecA遺伝子(抗生物質耐性状態)由来の配列を用いて製造した。表皮ブドウ球菌および腐性ブドウ球菌捕捉プローブは、一塩基のみ異なるのに対して、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌捕捉プローブは、3塩基異なることに留意されたい。マイクロアレイプレートには、以下の配列:16S 12、mecA 6、Tuf3、Tuf4、Tuf10捕捉プローブ、ならびに1つのハイブリダイゼーション陰性捕捉プローブ、をすべて結合させた。金ナノ粒子標識したTuf2、mecA4および16S 12プローブを検出プローブとして使用した。マイクロアレイプレート、捕捉および検出プローブは、実施例4に記載するように調製した。該アレイの特異性は、様々なメチシリン耐性およびメチシリン感受性のブドウ球菌種(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌および腐性ブドウ球菌)由来のPCR増幅遺伝子配列を用いて試験した。試験に使用した特異的なPCR増幅遺伝子断片を図18に示す(mecA 281、16S 451、およびTuf372)。図18に示す種々のブドウ球菌種由来のTuf遺伝子配列はGenBankから入手した。
【0118】
(標的の調製)
PCR増幅遺伝子産物は、標準的なPCR増幅手順を用いて調製した。
(アッセイ)
各反応は、50μlの5×SSC、0.05%Tween20、0.01%BSA、各ナノ粒子プローブ200pM、15%ホルムアミドおよび各標的アンプリコン750pMから構成されるものとした。該試薬を40℃および90%湿度にて1時間ハイブリダイズさせた。マイクロアレイ表面を、0.5M NaNO中で室温にて30秒間洗浄した。
マイクロアレイを乾燥させて、市販の等級の銀増強溶液(銀増強キット、カタログ番号SE−100、米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ)を用いて4分間銀発色させた。続いて、銀染色したマイクロアレイプレートを洗浄し、乾燥させて、Arrayworx(登録商標)スキャナ(モデル番号AWE、米国ワシントン州イサクアー所在のアプライド・プレシジョン)を用いて画像化した。
【0119】
結果を図19(a)および図19(b)に示す。5つの選択したブドウ球菌属サンプル(以下の表3を参照)の種およびメチシリン耐性状態は、PCRアンプリコンを用いて正確に同定され、標準的なPCR増幅手順を用いる場合のアレイ配列の特異性が実証された。
【0120】
【表3】

[実施例7]
(ゲノムDNAならびに金ナノ粒子標識したmecA、16SおよびTufプローブを用いたブドウ球菌の種の特定およびメチシリン耐性アッセイ)
この実施例では、黄色ブドウ球菌の属、種および抗生物質耐性状態の同定を、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の細菌細胞から単離したゲノム全DNAを用いて試験した。試験したゲノムDNAサンプルは、上記表3に記載のようにATCCにより特性解析されたものである。実施例6の実験で使用したマイクロアレイプレートおよび検出プローブをこの実施例でも使用した。マイクロアレイプレートならびに捕捉および検出プローブは、実施例3に記載するように調製した。ゲノムDNAサンプルは、実施例5に記載するように調製した。各反応は、50μlの5×SSC、0.05%Tween20、0.01%BSA、200pMの各ナノ粒子プローブ、15%ホルムアミドおよび3.3ng/μlの超音波処理したゲノムDNAから構成されるものとした。該試薬を40℃および90%湿度にて2時間ハイブリダイズさせた。マイクロアレイ表面を、0.5M NaNO中で室温にて30秒間洗浄した。マイクロアレイを乾燥させて、市販の等級の銀増強溶液(銀増強キット、カタログ番号SE−100、米国セントルイス所在のシグマ)を用いて4分間銀発色させた。続いて、銀染色したマイクロアレイプレートを洗浄し、乾燥させて、Arrayworx(登録商標)スキャナ(モデル番号AWE、米国ワシントン州イサクアー所在のアプライド・プレシジョン)を用いて画像化した。
【0121】
結果を図20に示す。注目すべきことに、ブドウ球菌の種および抗生物質耐性状態は、試験した3つのゲノムDNAサンプルに関して、各サンプルにおいて正しい捕捉プローブの部位でのみバックグラウンドに対して標準偏差の3倍を上回った正味のシグナル強度に基づいて、正確に同定された。この実験は、ブドウ球菌属ゲノムDNAを該アレイにハイブリダイズさせて、銀増幅した金ナノ粒子プローブで標識する場合に、tuf遺伝子内の一塩基突然変異でさえ検出することができることを実証している。したがって、ある遺伝子配列内にわずか1ヌクレオチド程度しか違いのない微生物の種の特定を、酵素を用いる
いかなる標的増幅法(例えば、PCR)もシグナル増幅法(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)も伴わないこの新規な検出方法論によって、達成可能である。
【0122】
アッセイ感度は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌細胞から単離した既知量のゲノム全DNAを本アッセイにおいて滴定し、mecA遺伝子捕捉プローブからの正味のシグナル強度を測定することにより測定された(図21)。検出可能な最低量は34ngであり、これは該ゲノムのおおよそ1千万コピーに相当する。上述の検出手順のさらなる最適化により、より低量のゲノムDNAが検出可能となるはずである。
【0123】
上述の開示は、本発明のある特定の実施形態について重点的に述べるものであり、本発明に対する変更形態または代替形態はすべて、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲の中にあることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の単一工程のハイブリダイゼーション法の模式図。
【図2】本発明の2工程のハイブリダイゼーション法の模式図。
【図3】ナノ粒子標識された検出プローブ、基材に結合させた野生型または突然変異型捕捉プローブ、および野生型標的をハイブリダイズさせた複合体を模式的に示す図。SNP検出に関しては、完全に適正な複合体(左)が維持される一方で不適正な複合体(右)が形成されるのを防止する適切な実験条件下でアッセイを実施する。
【図4】野生型(WT)または突然変異型(Mut)の第V因子遺伝子捕捉プローブを有するSuperaldehyde(登録商標)スライド上における、未増幅ヒトゲノムDNA(a)またはサケ精子DNA(b)を用いた第V因子遺伝子のSNP(1691 G→A)の検出を示す図。(c)野生型または突然変異型の捕捉プローブいずれかの存在下における、ヒトゲノムDNAおよび非特異的サケ精子DNAに関する検出シグナル強度の解析についてまとめたグラフ。
【図5】本発明の方法で1ヌクレオチド(SNP部位)が異なる2つの標的核酸の識別を可能にするためには、ハイブリダイゼーション条件を調節することが重要であることを示す図。
【図6】同じアレイ内かつ同じハイブリダイゼーション条件下で2以上のSNPタイプを試験することができ、かつ使用されるDNAとは無関係にwt DNAと突然変異DNAとの間でSNP識別が可能であるように、アレイ(捕捉プローブ配列)およびハイブリダイゼーション条件を設定することができることを示す図。
【図7】(a)野生型または突然変異型の第V因子遺伝子捕捉プローブをアレイ状に備えたCodeLink(登録商標)スライド上での、種々のホルムアミド濃度でのハイブリダイゼーションを用いた、未増幅ヒトゲノムDNAを用いた第V因子突然変異遺伝子のSNP(1691 G→A)の検出を示す図。(b)野生型または突然変異型の捕捉プローブいずれかの存在下における、種々のホルムアミド濃度によるハイブリダイゼーション後のヒトゲノムDNAに関する検出シグナル強度の解析についてまとめたグラフ。
【図8】最適に調整した条件下では、ヒトwtDNAはwtプローブ上でのみシグナルを生じ、ヒト突然変異型DNAは突然変異型捕捉プローブ上でのみシグナルを生じることを示す図。
【図9A】図8の完璧な(中央の)ハイブリダーゼーション条件に関する定量的データを示す図。
【図9B】図8の完璧な(中央の)ハイブリダーゼーション条件に関する定量的データを示す図。
【図9C】図8の完璧な(中央の)ハイブリダーゼーション条件に関する定量的データを示す図。
【図9D】図8の完璧な(中央の)ハイブリダーゼーション条件に関する定量的データを示す図。
【図10】非常にわずかな(1μg未満の)ヒト全DNAを用いてSNP識別を実施することができることを示す図。捕捉オリゴヌクレオチドの設計、ならびに捕捉(および検出)プローブの長さとヌクレオチド組成とに対してストリンジェンシー条件を適正なものとすることの重要性も示している。
【図11】1枚のスライド上で個別に10回分のハイブリダイゼーションを実施する、本発明の方法を用いたゲノムDNA中のSNP検出の結果を示す図。10個のハイブリダイゼーションウェル個々において、適正および不適正に関する正味のシグナル強度の標準偏差は重なり合わなかった。このことは、各ハイブリダイゼーション反応に関して、使用したDNAのSNP遺伝子型を信頼性高く決定することができたことを意味している。
【図12】第V因子、第II因子およびMTHFR遺伝子の遺伝子型を検出した、本発明の方法を用いた全ゲノムDNAについてのSNPの多重同定の結果を示す図。
【図13】患者サンプルGM16028由来の全ゲノムDNAについてのSNP多重検出の結果を示す図。本発明の方法により、単一個体における第V因子、第II因子およびMTHFR遺伝子に関するヘテロ接合のSNP遺伝子型を同定可能であることを実証している。
【図14】患者サンプルGM00037由来の全ゲノムDNAについてのSNP多重検出の結果を示す図。本発明の方法により、単一個体が、ある遺伝子(この場合、第V因子)に関して野生型であり、別の遺伝子(この場合、第II因子)に関してはヘテロ接合であり、および第3の遺伝子(この場合、MTHFR)に関しては突然変異型であることを同定可能であることを実証している。
【図15A】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図15B】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図15C】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図15D】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図15E】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図15F】3人の異なる研究者が別個の2つの患者サンプルに関して本発明の方法を実施して得られた結果を示す図。
【図16】スライドガラス上に固定化したmecA 2およびmecA 6捕捉オリゴヌクレオチド、ならびに検出プローブとしてmecA 4で標識した金ナノ粒子を用いた、メチシリン耐性(mecA+)黄色ブドウ球菌細胞から単離したブドウ球菌ゲノムDNA由来のmecA遺伝子の特異的検出を示す図。メチシリン感受性(mecA−)黄色ブドウ球菌細胞から単離したブドウ球菌ゲノムDNAを陰性対照として使用した。既知量のPCR増幅mecA遺伝子(MRSA 281bpと記した281塩基対フラグメント)を陽性対照として使用した。(a)は、種々の量のメチシリン耐性ゲノムDNA標的(7,500万〜3億コピー)、ならびに陽性対照および陰性対照サンプルを含有するマイクロアレイのウェルからのスキャンした一連の画像を示す。(b)は、サンプルのデータ解析を表すグラフである。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ゲノムDNA由来の正味のシグナルは、対応する陰性対照スポットのシグナルを差し引いてプロットされている。プロットすべてにおいて、水平な黒線は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌ゲノムDNAを含有する陰性対照スポットを標準偏差値の3倍上回る値を表す。この図は、細菌の全ゲノムDNAからmecAが特異的に検出されることを実証している。
【図17A】黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌(それぞれ、ATCC番号700699号および35984号)由来のPCRアンプリコンまたはゲノムDNAを用いた、黄色ブドウ球菌の種の特定を示す図。ゲノム全DNAの試験については、DNAサンプルを断片化するために超音波処理工程を実施した後、アレイハイブリダイゼーションを実施した。この図は、Tuf372bpアンプリコンまたはゲノムDNA(300ng、およそ8.0E7コピー)を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像である。水(標的なし)を対照として使用した。アレイプレートは、Tuf3およびTuf4捕捉プローブを結合させたものとした。金ナノ粒子標識したTuf2プローブを検出プローブとして使用した。
【図17B】黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌(それぞれ、ATCC番号700699号および35984号)由来のPCRアンプリコンまたはゲノムDNAを用いた、黄色ブドウ球菌の種の特定を示す図。ゲノム全DNAの試験については、DNAサンプルを断片化するために超音波処理工程を実施した後、アレイハイブリダイゼーションを実施した。このグラフは、図17Aで示したサンプルのデータ解析を表すグラフである。水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図17C】黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌(それぞれ、ATCC番号700699号および35984号)由来のPCRアンプリコンまたはゲノムDNAを用いた、黄色ブドウ球菌の種の特定を示す図。ゲノム全DNAの試験については、DNAサンプルを断片化するために超音波処理工程を実施した後、アレイハイブリダイゼーションを実施した。この図は、Tuf372bpアンプリコンまたはゲノムDNA(8.0E7コピー)に関する。アレイプレートは、Tuf5およびTuf6捕捉プローブを結合させたものとした。
【図17D】黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌(それぞれ、ATCC番号700699号および35984号)由来のPCRアンプリコンまたはゲノムDNAを用いた、黄色ブドウ球菌の種の特定を示す図。ゲノム全DNAの試験については、DNAサンプルを断片化するために超音波処理工程を実施した後、アレイハイブリダイゼーションを実施した。このグラフは、図17Cで示したサンプルのデータ解析を表すグラフである。水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図18A】実施例4〜6で使用した黄色ブドウ球菌mecA(281塩基対)、黄色ブドウ球菌coa(450塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(142塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(372塩基対)、および表皮ブドウ球菌Tuf(372塩基対)のPCRアンプリコンの配列を提供する図。
【図18B】実施例4〜6で使用した黄色ブドウ球菌mecA(281塩基対)、黄色ブドウ球菌coa(450塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(142塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(372塩基対)、および表皮ブドウ球菌Tuf(372塩基対)のPCRアンプリコンの配列を提供する図。
【図18C】実施例4〜6で使用した黄色ブドウ球菌mecA(281塩基対)、黄色ブドウ球菌coa(450塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(142塩基対)、黄色ブドウ球菌Tuf(372塩基対)、および表皮ブドウ球菌Tuf(372塩基対)のPCRアンプリコンの配列を提供する図。
【図19A】市販のブドウ球菌株ATCC35556から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。16S、TufまたはmecA遺伝子のPCR産物を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像であり、ATCC35556を表している。
【図19B】市販のブドウ球菌株ATCC35556から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC35556のデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図19C】市販のブドウ球菌株ATCC35984から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。16S、TufまたはmecA遺伝子のPCR産物を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像であり、ATCC35984を表している。
【図19D】市販のブドウ球菌株ATCC35984から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC35984のデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図19E】市販のブドウ球菌株ATCC12228から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。16S、TufまたはmecA遺伝子のPCR産物を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像であり、ATCC12228を表している。
【図19F】市販のブドウ球菌株ATCC12228から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC12228のデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図19G】市販のブドウ球菌株ATCC700699から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。16S、TufまたはmecA遺伝子のPCR産物を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像であり、ATCC700699を表している。
【図19H】市販のブドウ球菌株ATCC700699から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC700699のデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図19I】市販のブドウ球菌株ATCC15305から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。16S、TufまたはmecA遺伝子のPCR産物を含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像であり、ATCC15305を表している。
【図19J】市販のブドウ球菌株ATCC15305から採取したPCR増幅標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC15305のデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図20A】市販のブドウ球菌株ATCC35984から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC35984ゲノムDNAを含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像である。アレイプレートは、16S 12、mecA 6、Tuf3、Tuf4、Tuf10捕捉プローブとハイブリダイゼーション陰性対照とを含むものとした。金ナノ粒子標識した16S 13、mecA 4およびTuf2プローブを検出プローブとして使用した。
【図20B】市販のブドウ球菌株ATCC35984から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC35984サンプルのデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図20C】市販のブドウ球菌株ATCC700699から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC700699ゲノムDNAを含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像である。アレイプレートは、16S 12、mecA 6、Tuf3、Tuf4、Tuf10捕捉プローブとハイブリダイゼーション陰性対照とを含むものとした。金ナノ粒子標識した16S 13、mecA 4およびTuf2プローブを検出プローブとして使用した。
【図20D】市販のブドウ球菌株ATCC700699から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC700699サンプルのデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図20E】市販のブドウ球菌株ATCC12228から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC12228ゲノムDNAを含有するマイクロアレイのウェルからスキャンした一連の画像である。アレイプレートは、16S 12、mecA 6、Tuf3、Tuf4、Tuf10捕捉プローブとハイブリダイゼーション陰性対照とを含むものとした。金ナノ粒子標識した16S 13、mecA 4およびTuf2プローブを検出プローブとして使用した。
【図20F】市販のブドウ球菌株ATCC12228から採取した超音波処理ゲノムDNA標的を用いたブドウ球菌の種の特定およびmecA遺伝子の検出を示す図。ATCC12228サンプルのデータ解析を表す一連のグラフである。プロットすべてにおいて、水平の黒線は、バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値を表す。
【図21】ゲノムDNA標的を用いたmecA遺伝子検出に関する感度の限界を示すグラフ。ATCC700699のゲノムサンプルについて表3の配列を用いて、5×SCC、0.05%Tween20、0.01%BSA、15%(v/v)ホルムアミドおよび200pMナノ粒子プローブ中で、45℃で1.5時間としたmecA遺伝子検出のデータ解析である。このグラフは、50μlの反応物(ゲノム全DNA 34ng)において330fMの検出限界を示している。バックグラウンドを標準偏差値の3倍上回る値は、プロット中、80での水平線で表されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅させた核酸分子に比べて高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含んでなるサンプル中の標的核酸配列を検出する方法であって、前記標的核酸配列は1つまたはそれ以上の核酸配列と少なくとも1ヌクレオチド異なっており、前記方法は、
a)捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、該捕捉オリゴヌクレオチドは、前記標的核酸配列の第1の部分の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる検出プローブを供給する工程であって、該検出オリゴヌクレオチドは工程(a)の標的核酸配列の第2の部分の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
c)前記標的核酸配列の第1の部分への前記捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および前記標的核酸配列の第2の部分への前記検出プローブのハイブリダイゼーションに有効であり、かつ、前記標的と、少なくとも1ヌクレオチド異なる前記1つまたはそれ以上の核酸配列との間の識別を可能にするのに有効な条件下で、前記サンプルを前記基材および前記検出プローブと接触させる工程と、
d)前記捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、前記標的核酸配列の第1および第2の部分とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記標的核酸配列は一塩基多型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一塩基の差は、前記基材に結合された前記捕捉オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一塩基の差は、前記検出オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNAもしくは他の細胞小器官DNA、遊離した細胞DNA、ウイルスDNAもしくはウイルスRNA、または上記の2つもしくはそれ以上の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材は複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含み、該捕捉オリゴヌクレオチドはそれぞれ異なる一塩基多型を認識することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルは2以上の核酸標的を含み、該核酸標的はそれぞれ1つまたはそれ以上の異なる一塩基多型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたはそれ以上のタイプの検出プローブが提供され、該検出プローブにはそれぞれ異なる核酸標的とハイブリダイズすることが可能な検出オリゴヌクレオチドが結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させ、次いで、前記検出プローブに結合した前記核酸標的を、該核酸標的が前記基材上の前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記基材と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように基材と接触させ、次いで、前記捕捉オリゴヌクレオチドに結合した前記
核酸標的を、前記核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルを、前記検出プローブおよび前記基材と同時に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検出オリゴヌクレオチドは検出可能な標識を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記検出標識は、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的または物理的手段による検出を可能にする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標識は、蛍光性である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記標識は、発光性である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記標識は、リン光性である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記標識は、放射性である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記標識は、ナノ粒子である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記標識は、デンドリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記標識は、分子集合体である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記標識は、量子ドットである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記標識は、ビーズである、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ粒子は、貴金属から作製される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子は、金または銀から作製される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子は、金から作製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記検出工程は、前記基材を銀染色剤と接触させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記検出工程は、前記ナノ粒子により散乱される光を検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記検出工程は、光学式スキャナによる観察を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記検出工程は、フラットベッド式スキャナによる観察を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結され、前記グレースケールの測定値が算出されることにより、検出された核酸の量が定量的に測定される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記基材に結合される前記オリゴヌクレオチドは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は、導電体である材料から作製され、工程(d)は、導電率の変化を検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
それぞれが異なる標的核酸配列を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドが、アレイ状のスポットとして前記基材に結合され、かつオリゴヌクレオチドの各スポットが2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は導電体である材料から作製され、工程(d)は導電率の変化を検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
増幅させた核酸分子に比べて高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含んでなるサンプル中の、1つまたはそれ以上の標的核酸配列を検出する方法であって、前記1つまたはそれ以上の標的核酸配列はそれぞれ既知の核酸配列と少なくとも1ヌクレオチド異なっており、前記方法は、
a)複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、該捕捉オリゴヌクレオチドは、前記1つまたはそれ以上の標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上の検出プローブを供給する工程であって、該検出オリゴヌクレオチドは、工程(a)の1つまたはそれ以上の標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分であって前記基材上の捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
c)前記1つまたはそれ以上の標的核酸配列の1つまたはそれ以上の部分への前記捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない前記1つまたはそれ以上の標的核酸配列の部分への前記検出プローブのハイブリダイゼーションに有効であり、かつ少なくとも1ヌクレオチドが異なる標的の間の識別を可能にするのに有効な条件下で、前記サンプルを前記基材および前記検出プローブと接触させる工程と、
d)前記捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブのいずれかが、前記標的核酸配列のいずれかとハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と
を含む方法。
【請求項39】
前記標的核酸配列は一塩基多型を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
一塩基の差は、前記基材に結合された前記捕捉オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
一塩基の差は、前記検出オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記標的核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNAもしくは他の細胞小器官DNA、遊離した細胞DNA、ウイルスDNAもしくはウイルスRNA、または上記の2つもしくはそれ以上の混合物を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記基材は複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含み、該捕捉オリゴヌクレオチドはそれぞれ異なる一塩基多型を認識することができる、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記サンプルは2以上の核酸標的を含み、該核酸標的はそれぞれ異なる一塩基多型を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
1つまたはそれ以上のタイプの検出プローブが提供され、該検出プローブはそれぞれ異なる核酸標的とハイブリダイズすることが可能な検出オリゴヌクレオチドが結合している、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させ、次いで、前記検出プローブに結合した前記核酸標的を、該核酸標的が前記基材上の前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記基材と接触させる、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように基材と接触させ、次いで、前記捕捉オリゴヌクレオチドに結合した前記核酸標的を、前記核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させる、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記サンプルを、前記検出プローブおよび前記基材と同時に接触させる、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記検出プローブは検出可能な標識を含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記検出標識は、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的または物理的手段による検出を可能にする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標識は、蛍光性である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記標識は、発光性である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記標識は、リン光性である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記標識は、放射性である、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記標識は、ナノ粒子である、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記標識は、デンドリマーである、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記標識は、分子集合体である、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記標識は、量子ドットである、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記標識は、ビーズである、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項38に記載の方法。
【請求項61】
前記ナノ粒子は、貴金属から作製される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ナノ粒子は、金または銀から作製される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ナノ粒子は、金から作製される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記検出工程は、前記基材を銀染色剤と接触させることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記検出工程は、前記ナノ粒子により散乱される光の観察を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記検出工程は、光学式スキャナによる観察を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記検出工程は、フラットベッド式スキャナによる観察を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項68】
前記スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結され、前記グレースケールの測定値が算出されることにより、検出された核酸の量が定量的に測定される、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記基材に結合される前記オリゴヌクレオチドは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は、導電体である材料から作製され、工程(d)は、導電率の変化を検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項70】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
それぞれが異なる標的核酸配列を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドが、アレイ状のスポットとして前記基材に結合され、かつオリゴヌクレオチドの各スポットは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は導電体である材料から作製され、工程(d)は導電率の変化を検出することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項73】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
増幅させた核酸分子に比べて高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含んでなるサンプル中の、一塩基多型を同定する方法であって、前記方法は、
a)少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、該少なくとも1つの捕捉オリゴヌクレオチドは、特定の多型を含む核酸標的の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
b)検出オリゴヌクレオチドが結合している検出プローブを供給する工程であって、該検出オリゴヌクレオチドが、工程(a)の前記核酸標的の少なくとも一部に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
c)前記核酸標的への前記捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および前記核酸標的への前記検出プローブのハイブリダイゼーションに有効であり、かつ1ヌクレオチドが異なる標的の間の識別を可能にするのに有効な条件下で、前記サンプルを前記基材および前記検出プローブと接触させる工程と、
d)前記捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブが、前記核酸標的とハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と
を含む方法。
【請求項76】
前記多型は、前記基材に結合された前記捕捉オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記多型は、前記検出オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記サンプル中の前記核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNAもしくは他の細胞小器官DNA、遊離した細胞DNA、ウイルスDNAもしくはウイルスRNA、または上記の2つもしくはそれ以上の混合物を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記基材は複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含み、該捕捉オリゴヌクレオチドはそれぞれ異なる一塩基多型を認識することができる、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記サンプルは2以上の核酸標的を含み、該核酸標的はそれぞれ1つまたはそれ以上の異なる一塩基多型を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
1つまたはそれ以上のタイプの検出プローブが提供され、該検出プローブはそれぞれ異なる核酸標的とハイブリダイズすることが可能な検出オリゴヌクレオチドが結合している、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させ、次いで、前記検出プローブに結合した前記核酸標的を、該核酸標的が前記基材上の前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記基材と接触させる、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように基材と接触させ、次いで、前記捕捉オリゴヌクレオチドに結合した前記核酸標的を、前記核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させる、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記サンプルを、前記検出プローブおよび前記基材と同時に接触させる、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
前記検出プローブは検出可能な標識を含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項86】
前記検出標識は、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的または物理的手段による検出を可能にする、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記標識は、蛍光性である、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記標識は、ナノ粒子である、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記標識は、発光性である、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記標識は、リン光性である、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記標識は、放射性である、請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記標識は、デンドリマーである、請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記標識は、分子集合体である、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記標識は、量子ドットである、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
前記標識は、ビーズである、請求項85に記載の方法。
【請求項96】
前記検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項75に記載の方法。
【請求項97】
前記ナノ粒子は、貴金属から作製される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記ナノ粒子は、金または銀から作製される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記ナノ粒子は、金から作製される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記検出工程は、前記基材を銀染色剤と接触させることを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記検出工程は、前記ナノ粒子により散乱される光を検出することを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項102】
前記検出工程は、光学式スキャナによる観察を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項103】
前記検出工程は、フラットベッド式スキャナによる観察を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項104】
前記スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結され、前記グレースケールの測定値が算出されることにより、検出された核酸の量が定量的に測定される、請求項102または103に記載の方法。
【請求項105】
前記基材に結合される前記オリゴヌクレオチドは2つの電極の間に配置され、前記ナノ
粒子は、導電体である材料から作製され、工程(d)は、導電率の変化を検出することを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項106】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
それぞれが異なる一塩基多型を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドが、アレイ状のスポットとして前記基材に結合され、かつオリゴヌクレオチドの各スポットは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は導電体である材料から作製され、工程(d)は導電率の変化を検出することを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項109】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
増幅させた核酸分子に比べて高い生物学的複雑度を有する核酸分子を含んでなるサンプル中の、1つまたはそれ以上の一塩基多型を同定する方法であって、前記方法は、
a)複数の捕捉オリゴヌクレオチドが結合している位置決め可能な基材を供給する工程であって、該捕捉オリゴヌクレオチドが、それぞれが特定の多型を含む核酸標的の複数の部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
b)検出オリゴヌクレオチドを含んでなる1つまたはそれ以上の検出プローブを供給する工程であって、該検出オリゴヌクレオチドが、工程(a)の前記核酸標的のうちの1つの少なくとも一部分であって前記基材上の捕捉オリゴヌクレオチドにより認識されない部分に相補的な配列を有することを特徴とする工程と、
c)前記核酸標的の複数の部分への前記捕捉オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション、および前記核酸標的への前記検出プローブのハイブリダイゼーションに有効であり、かつ1ヌクレオチドが異なる標的間の識別を可能にするのに有効な条件下で、前記サンプルを前記基材および前記検出プローブと接触させる工程と、
d)前記捕捉オリゴヌクレオチドおよび検出プローブのいずれかが、前記核酸標的のいずれかとハイブリダイズしたかどうかを検出する工程と
を含む方法。
【請求項112】
前記多型は、前記基材に結合された前記捕捉オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記多型は、前記検出オリゴヌクレオチドにより認識される、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記サンプル中の前記核酸分子は、ゲノムDNA、ゲノムRNA、発現RNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNAもしくは他の細胞小器官DNA、遊離した細胞DNA、ウイルスDNAもしくはウイルスRNA、または上記の2つもしくはそれ以上の混合物を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
前記基材は複数の捕捉オリゴヌクレオチドを含み、該捕捉オリゴヌクレオチドはそれぞれ1つまたはそれ以上の異なる一塩基多型を認識することができる、請求項111に記載
の方法。
【請求項116】
前記サンプルは2以上の核酸標的を含み、該核酸標的はそれぞれ異なる一塩基多型を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項117】
1つまたはそれ以上のタイプの検出プローブが提供され、該検出プローブにはそれぞれ異なる核酸標的とハイブリダイズすることが可能な検出オリゴヌクレオチドが結合している、請求項111に記載の方法。
【請求項118】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させ、次いで、前記検出プローブに結合した前記核酸標的を、該核酸標的が前記基材上の前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記基材と接触させる、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
サンプルを、前記サンプル中に存在する核酸標的が捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように基材と接触させ、次いで、前記捕捉オリゴヌクレオチドに結合した前記核酸標的を、前記核酸標的が前記検出プローブ上の前記検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするように前記検出プローブと接触させる、請求項111に記載の方法。
【請求項120】
前記サンプルを、前記検出プローブおよび前記基材と同時に接触させる、請求項111に記載の方法。
【請求項121】
前記検出オリゴヌクレオチドは検出可能な標識を含んでなる、請求項111に記載の方法。
【請求項122】
前記検出標識は、光子的、電子的、音響的、光音響的、重力的、電気化学的、電気光学的、質量分析的、酵素的、化学的、生化学的または物理的手段による検出を可能にする、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記標識は、蛍光性である、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記標識は、発光性である、請求項121に記載の方法。
【請求項125】
前記標識は、リン光性である、請求項121に記載の方法。
【請求項126】
前記標識は、放射性である、請求項121に記載の方法。
【請求項127】
前記標識は、ナノ粒子である、請求項121に記載の方法。
【請求項128】
前記標識は、デンドリマーである、請求項121に記載の方法。
【請求項129】
前記標識は、分子集合体である、請求項121に記載の方法。
【請求項130】
前記標識は、量子ドットである、請求項121に記載の方法。
【請求項131】
前記標識は、ビーズである、請求項121に記載の方法。
【請求項132】
前記検出プローブは、検出オリゴヌクレオチドが結合したナノ粒子プローブである、請求項111に記載の方法。
【請求項133】
前記ナノ粒子は、貴金属から作製される、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記ナノ粒子は、金または銀から作製される、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記ナノ粒子は、金から作製される、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記検出工程は、前記基材を銀染色剤と接触させることを含む、請求項132に記載の方法。
【請求項137】
前記検出工程は、前記ナノ粒子により散乱される光を検出することを含む、請求項132に記載の方法。
【請求項138】
前記検出工程は、光学式スキャナによる観察を含む、請求項132に記載の方法。
【請求項139】
前記検出工程は、フラットベッド式スキャナによる観察を含む、請求項132に記載の方法。
【請求項140】
前記スキャナは、グレースケールの測定値を算出することが可能なソフトウェアを搭載したコンピュータに連結され、前記グレースケールの測定値が算出されることにより、検出された核酸の量が定量的に測定される、請求項138または139に記載の方法。
【請求項141】
前記基材に結合される前記オリゴヌクレオチドは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は、導電体である材料から作製され、工程(d)は、導電率の変化を検出することを含む、請求項132に記載の方法。
【請求項142】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
それぞれが異なる一塩基多型を認識することができる複数のオリゴヌクレオチドが、アレイ状のスポットとして前記基材に結合され、かつオリゴヌクレオチドの各スポットは2つの電極の間に配置され、前記ナノ粒子は導電体である材料から作製され、工程(d)は導電率の変化を検出することを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項145】
前記電極は金から作製され、前記ナノ粒子は金から作製される、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記導電率の変化を生じるように、前記基材を銀染色剤と接触させる、請求項146に記載の方法。
【請求項147】
前記高い生物学的複雑度は、約50,000より大きい、請求項1、38、75または111に記載の方法。
【請求項148】
前記高い生物学的複雑度は、約50,000〜約50,000,000,000である、請求項1、38、75または111に記載の方法。
【請求項149】
前記高い生物学的複雑度は、約1,000,000,000である、請求項1、38、
75または111に記載の方法。
【請求項150】
前記標的核酸配列は生物の遺伝子の一部である、請求項1または38に記載の方法。
【請求項151】
前記標的核酸配列はブドウ球菌属細菌の遺伝子の一部である、請求項1または38に記載の方法。
【請求項152】
前記ブドウ球菌属細菌は、黄色ブドウ球菌(S. aureus )、S.ヘモリティカス(S. haemolyticus )、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、S.ルグドゥネンシス(S. lugdunensis)、S.ホミニス(S. hominis)または腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)である、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記標的核酸配列は、Tuf遺伝子の一部である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記標的核酸配列は、femA遺伝子の一部である、請求項151に記載の方法。
【請求項155】
前記標的核酸配列は、16S rRNA遺伝子の一部である、請求項151に記載の方法。
【請求項156】
前記標的核酸配列は、hsp60遺伝子の一部である、請求項151に記載の方法。
【請求項157】
前記標的核酸配列は、sodA遺伝子の一部である、請求項151に記載の方法。
【請求項158】
前記標的核酸配列は、mecA遺伝子の一部である、請求項1または38に記載の方法。
【請求項159】
前記核酸配列は、
【化1】

に記載される配列を含んでなる、請求項1または38に記載の方法。
【請求項160】
前記検出オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、
【化2】

に記載される配列を含んでなる、請求項1または38に記載の方法。
【請求項161】
前記捕捉オリゴヌクレオチドは、
【化3】

に記載される配列を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項162】
前記捕捉オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、
【化4】

に記載される配列を含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項163】
前記標的核酸配列の少なくとも1つは、ブドウ球菌属細菌の遺伝子の一部であり、前記標的核酸配列の少なくとも1つは、mecA遺伝子の一部である、請求項38に記載の方法。
【請求項164】
前記方法は、共通の属の2つまたはそれ以上の種を識別するために使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項165】
前記種は、非連続的な2つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なっている、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記種は、連続的な2つまたはそれ以上のヌクレオチドが異なっている、請求項164に記載の方法。
【請求項167】
前記種は、少なくとも1ヌクレオチドが異なっている、請求項164に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【図19G】
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【図19H】
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【図19I】
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【図19J】
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【図20B】
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【図20D】
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【図20F】
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【図21】
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【公表番号】特表2006−517786(P2006−517786A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558222(P2004−558222)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/039836
【国際公開番号】WO2004/053105
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(501216012)ナノスフェアー インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】NANOSPHERE INC.
【Fターム(参考)】