説明

材料を精密加工するための装置

【課題】材料及び組織を精密に加工するためのフェムト秒レーザシステム、特に、生体材料好ましくは眼を精密にマイクロメートル精度加工するためのレーザ装置を提供すること。
【解決手段】ビーム光源15を有するパルスレーザシステム10、ビーム光源としての空洞集積フェムト秒発振器11を備えた、材料90具体的には生体材料を精密加工するための装置、及びビーム光源の作動ビームを、少なくとも一つのビーム偏向手段を備えるビーム装置を使用することにより材料に当てることができる、ビーム光源としての空洞集積フェムト秒発振器を有するレーザパルスシステムと、ビーム偏向及びレーザパルス放出のための手段を含むビーム偏向手段と相互に関連するパルス放出とを備え、材料、具体的には生体材料の精密加工のための装置により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料及び組織を精密に加工するためのフェムト秒レーザシステム、特に、生体材料好ましくは眼を精密にマイクロメートル精度加工するためのレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術への有益な貢献としては、大きなスポット直径(mm〜cm)を備えたレーザにより材料の広範囲なエリアを加工する際に、肉眼で見える量の材料がどのようにしてマイクロメートル精度で切断され、蒸発または融解されるのかについて、出願特許明細書DE 197 46 483に記述されている。(CO2レーザ、Nd:ヤグ、エキシマーなど)
【0003】
先行技術へのさらに有益な貢献としては、最も実現可能で精密な材料加工を確実にするために、どのようにしてレーザビームが偏向させられるかについて出願特許明細書DE 197 27 573に記述されている。
【0004】
US 5,656,186に、材料に応じて特定のパルス継続時間を選択することにより、有害な副作用(融解端、熱損傷、音響衝撃波、クラック)を防止するかまたは最小限にとどめつつ材料を加工するための方法に関する記述がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第197 46 483号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第197 27 573号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第5,656,186号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Konig et al.,「Optics Letters Vol.26, No.11(2001)」(米国)、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザが材料を加工する効力は、光の強さが失明する限界を超えるほど強いレーザ焦点の小さな空間領域(通常、数μm3)に限られる。この焦点空間に位置しているので、材料の結束は破壊され、キャビテーション泡が生じる。レーザ焦点が各レーザパルスにつき新しい位置に導かれるのであれば、線形、二次元、または三次元の切断パターンが生成される。加工の最後には、材料が切断面に沿って容易に機械的に切除されるために、隣り合うキャビテーション泡どうしの間の距離は焦点直径にほぼ一致していなければならない。
【0008】
従来のフェムト秒レーザパルスによる材料加工をするのためのレーザ装置では、フェムト秒発振器による各パルスが増幅される再生増幅器を使用している。発振器それ自体ではナノジュール程度のパルスエネルギーしか供給しないが、再生増幅器により数ミリジュール程度のパルスエネルギーにまで増幅される。繰り返し周波数は、増幅器内で連結及び分断するためにポッケルスセルを使用することにより、kMzで10s程度に限られる。これらのレーザ光源は、レーザパルス当たりの摩耗率が高い用途には適しているのであるが、上記のような精密切断のための用途には望ましくない。
【0009】
K. Konig et al., Optics Letters Vol.26, No.11(2001)に、フェムト秒発振器からのナノジュールパルスによって組織内で切断がどのようになされ得るかが記述されている。しかしながら、単一のレーザパルスではキャビテーション泡が形成されず、切断作用を達成するためには数個のパルスが同じ点に位置していることが必要であるので、この方法は、マイクロメータ規模の非常に精密な切断形状にしか適していない。このレーザ光源は工業用途や医療用途には適していない。
【0010】
そのため、本発明は、先行技術のこれらの欠点が克服された、材料を精密加工するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、各請求項にある方法または装置によって達成される。さらに有利なものが各請求項によって提供される。
【0012】
その目的は、ビーム光源を有するパルスレーザシステムと、ビーム光源として提供される空洞集積フェムト秒発振器とを備えることにより、材料特に生体材料を精密加工するための装置により達成される。
【0013】
さらに、その目的は、ビーム光源の作動ビームを、少なくとも一つのビーム偏向手段を備えるビーム装置を使用することにより材料に当てることができる、ビーム光源としての空洞集積フェムト秒発振器を有するレーザパルスシステムと、ビーム偏向及びレーザパルス放出のための手段を含むビーム偏向手段と相互に関連するパルス放出とを備え、材料、具体的には生体材料の精密加工のための装置により達成される。レーザ放出は、レーザが一つのレーザパルスに向けて放出されて、その最大繰り返し周波数に相当する一つのレーザパルスをレーザが再度放出できるとすぐに、レーザパルスが起こされるようになっている。パルス放出のビーム偏向との相互関係は、特に、パルス放出はビームがある一点に向けられた時に起こすことができ、こうしてパルス放出はビーム偏向に依存して引き起こされるようになっている。
【0014】
同様に、その目的は、ビーム光源としての空洞集積フェムト秒レーザ発振器を有するパルスレーザシステムと、約100nJから10μJ、好ましくは500nJから5μJの放射線エネルギーとを備え、材料特に生体材料を精密加工するための装置により達成される。放射線の繰り返し周波数は、50khzから1Mhzであることが好ましく、特に100khzから500khzであることが好ましい。放射線の焦点直径は、約500nmから10mmであることが好ましく、特に3μmから5μmであることが好ましい。放射線のパルス継続時間は、約100fsから1psであることが好ましく、特に200fsから300fsであることが好ましい。
【0015】
ビーム形成及び/またはビーム偏向のための手段、または、より一般的な言葉によると、ビーム形成と偏向のためのシステムは、回折性または屈折性のマイクロレンズシステム、または適応レンズシステム、または標準光学システムを含む。いくつかの標準的または従来の光学素子は、回折性または屈折性を有する光学素子により置き換えることができる。このような比較的高価なビーム形成及び偏向のためのシステムを使う場合は、比較的単純なレーザを使用することができる。
【0016】
この材料精密加工装置は、眼科治療、具体的には、眼の視力欠陥を修復のために使用されることが好ましい。この装置は、視力欠陥を治療ために、角膜の組織弁またはレンティクルを切除することに使用できる。さらに、レンティクルを切除することに加えて、本発明による装置により、例えば、すぐ近くの場所または不透明な場所の形をとって、角膜中に屈折構造を生成することができる。
【0017】
同様に、レーザ発射では、直接、屈折構造を生成するようにすることが可能である。例えば、材料または液体を沸騰させることにより、眼レンズに小さな泡が生成される。このため、本発明による装置により提供するには、比較的低いエネルギーの非常に多くのレーザ発射が必要である。
【0018】
同様に、本発明による装置では、標的とした切除片を、例えば眼レンズのような組織の中に取り込むことができ、こうして、眼レンズの曲面性、弾力性を改善することができ、隣り合う組織部分どうしがより容易に互いに押し合うようになる。材料、具体的には生体材料を加工する装置は、本発明の設計では、老視を治療する装置として使用することができる。ビーム形成は、従来と同じように、または回折性か屈折性のあるマイクロレンズシステム、または適応レンズシステムにより起こされる。ビーム偏向はスキャンシステムにより起こされることが好ましい。
【0019】
モードロッキングの始動及び位置固定のための直接ダイオードポンプフェムト秒発振器(場合によりSESAM(半導体可飽和吸収ミラー)による)、及び共振器内の分散補正のためのチャープミラーは、理想的なソースを提供する。「空洞集積」により、マイクロジュールのパルスエネルギーは、通常は数十MHzで放出されるナノジュールパルスの代わりに、低い繰り返し周波数で生成することができる。共振器のレーザパルスの各回転中に空洞内パルスエネルギーの小部分(通常、約1パーセント)を不活発に切り離す代わりに、レーザパルスは共振器中で数回転する間に維持されたままであり、それから、レーザ容量の大部分が共振器から一回活発に切り離される。残るレーザパルスエネルギーは、その後、さらにパルスが切り離されるまでに、共振器中で数回転するうちに再び飽和値まで増幅される。mWで100s程度という同じ平均的なレーザ容量であるとすると、このように、マイクロジュール程度までのレーザパルスは、0〜数MHzの繰り返し周波数で生成される。レーザパルスの活発な切り離しには、応答時間が高速な電子光学的または音響光学的デフレクターを使用することができる。10psより短いパルス継続時間は、好ましくは1psより短く、特に100〜200fsが生成されることが好ましい。
【0020】
材料、好ましくはマイクロメートル精度で加工された材料は、格子、コンタクトレンズ、プラスチック、眼球内レンズ(IOL)、半導体ウエハー、超小型光学要素などの、マイクロメートル範囲の構造を有する材料を含むことができる。例えば、組織のような生体材料が好ましく、特に人間の眼がより好ましい。
【0021】
パルスレーザシステムは、フェムト秒パルス生成のためのレーザビーム光源と、対応する光学素子、具体的にはミラーやレンズなどとの組み合わせである。
【0022】
このレーザ装置により、そのパルスエネルギーが、顕微鏡的または肉眼的な切断形状を、好ましくはマイクロメートル精度で、同時に高い繰り返し周波数により実現でき、あるシステムが提供される。もし、先行技術のように、発振器は、マイクロジュールのパルスエネルギーを発生させるために再生増幅器内において後に増幅されるならば、増幅器内において連結及び分断するのに使用されるポッケルスセルにより、レーザ増幅器システムの繰り返し周波数は制限される。本発明によるレーザに関しては、これらの不都合はない。本発明による装置では、マイクロジュールエネルギーを発生でき、ゼロから数MHzの繰り返し周波数に調節可能である。特に、数マイクロジュールのエネルギー、kHzで100s程度の繰り返し周波数が使用されることが好ましい。そして、発振器は、平均許容能力がmWで100s程度で運転される。直接ダイオードポンプ発振器がビーム光源として使用されることが好ましい。これが特に容易で信頼性がある。
【0023】
本発明による装置の設計においては、ビーム偏向する手段はスキャンモードで稼動されるという条件で行う。ビーム光源の作動中ビームは、一次元内で周期的に繰り返される進路に偏向され、その結果、例えば、異なった次元での円形進路や、らせん形進路が生成される。作動中ビームの進路は、回転を維持されているか、または一つの進路にある装置、例えば、ミラー、レンズ、格子、またはそれらと同様なものにより生成される。ビーム偏向の手段は、例えば機械的走査装置なような、予め決められた進路を移動可能なように収められた走査装置を含む。本発明は、レーザをその偏向システムの自然進路に偏向する偏向システムを使用する。即ち、例えば、回転偏向システムの場合は軌道に偏向するような偏向システムを使用する。各位置に到達してそこでレーザパルスを起こす代わりに、予め決められた位置に到達して偏向システムが休止するとすぐに、偏向システムの進路は止まることなく移動して、焦点移動の進路速度を介して調節され予め選択された繰り返し周波数でパルスが決められた点において発生し始める。このように、焦点位置がある点に到達するとすぐに、レーザが放出されるか、またはトリガーされる、即ち、レーザパルスを発射するよう指示される。レーザがレーザパルスに向けて放たれるようにされており、また、その最大繰り返し周波数に応じたレーザパルスをレーザが再度放てると、このレーザパルスは起こされる。このことは有効体積、即ち、隣り合う有効体積が一定で予め決められた間隔、例えば、焦点直径ほどに配列されていることを特徴とする、本来予め決められた進路に沿って、短いパルス継続時間の間にレーザ焦点により修正される材料中部位の足跡に通じる。偏向システムの自然進路の僅かな修正によって、例えば、軌道半径の僅かな縮小によって、例えば、隣り合う有効体積間の距離により、切除形状を形成するまで蓄積される、さらなる足跡が描かれる。例えば、同一中心の進路、またはらせん進路、または同様なものが、ここに生成される。偏向ミラーが使用されるとすれば、これは、例えば、ミラーの回転が一定に維持されている間に傾斜を変えることにより起こされる。目的は、有効体積の一様な格子またはレーザ焦点により、望む切断表面を覆うことである。偏向システムの自然進路は、ある時間シーケンスで素早く移動させることができる。レーザの時間シーケンスの調節は、レーザ発射により望む切断表面を覆うことになる。
【0024】
空洞集積フェムト秒発振器は、この処置に要求されるビーム光源特性、即ち、偏向システムによりプリセットされた時に引き起こすという特性を有している。従って、ビーム光源の個々のパルスは、偏向システムがプリセットされた位置に到達した時に引き起こされる。均等な時間間隔毎に引き起こされる進路移動であることが有利である。短いパルス長の場合、ここでは、高い最大繰り返し周波数及び適度なパルスエネルギーが要求され、空洞集積フェムト秒発振器は、本発明によるシステムのための理想的な放射線源に現在のところ相当する。
【0025】
本発明のさらに進んだ実施形態としては、ビーム形成、及び/またはビーム誘導誘導、及び/またはビーム偏向、及び/またはビーム集光のためのビーム装置もまた提供される。これらのビーム装置によって、計画した用途が要求する通りに、ビームは加工される材料に正確に向けられて誘導される。1μmほどの焦点直径に焦点を合わされた極短波のレーザパルスは、精密に決められた小さい焦点体積において、材料の結束を解くことができ、または、熱的、音響的、または機械的負荷を材料内の近接したエリアに及ぼすことなく、材料内の構造的変化を引き起こすことができる。センチメートル単位で計測される巨視的な切断部及び構造のために、レーザ焦点は、加工材料を貫く三次元でスキャンされる。高い精密による高速な加工を実現するために、ビーム光源、ビーム誘導、形成、スキャナ、スキャンアルゴリズム、及び焦点レンズシステムがどのように調和されるかは、用途により決まる。
【0026】
ビーム形成は、レーザが相応する小さい焦点に合わせられるようなビーム直径を拡げる望遠鏡(好ましくは、収れん及び発散レンズを有するガリレイ望遠鏡)によって起こされることが好ましい。望遠鏡の画像化誤差を最小限に抑えるレンズシステムが使用されることが好ましい。
【0027】
ビーム誘導は、ビームが個々の副構成要素に角度を向けられる、複数のミラーまたは一対のミラーにより引き起こされることが好ましい。
【0028】
従来のスキャナ、または閉ループ操作のガルバノミラーなどの機械的レーザビーム偏向システムは、ビーム偏向を実行できる。しかしながら、プリセット進路(例えば、軌道)を進み、その結果、決められた位置でビーム光源がトリガーされることによりレーザパルスが引き起こされるような機械的スキャナが好ましい。このように、切断面の大きいエリアが、最大の繰り返し周波数で、比較的ゆっくりとしたスキャナ移動で加工される。切断面のさらに小さいエリアに加工がなされる場合(例えば、軌道半径が小さすぎる場合)、レーザの繰り返し周波数もまた低くされ得ることが好ましい。切断面の小さいエリアでは(例えば、軌道半径が非常に小さい場合)、繰り返し周波数は、偏向装置の制限された角速度によって制御される最大進路速度を減じるように適合されていることが好ましい。光学偏向素子の回転に基づく偏向ユニットでは、速度が一定で、また、レーザ焦点の進路移動の角速度が一定で操作されることが技術的により単純である。軌道を小さくするまたは大きくするには、進路半径を変えることにより、レーザの繰り返し周波数を新しい進路速度に調節する。円の一部を加工することは、全てのスポットが最大繰り返し周波数に設定された時よりも、加工時間が2の要素によってのみ大きくされる結果になる。加工中のいくつかの段階で偏向ユニットの速度を調節することにより、加工時間をさらに一層少なくできる。
【0029】
ビーム集光装置は、材料上または材料内にあるビーム焦点において材料の結束を破壊する役目をする(光破断)。一般的に、これには材料の局所的な蒸発が伴う。このため、レーザは、マイクロメートル範囲の直径に焦点を合わせられることが好ましい。これは、可視光の回折限界に近くにあり、また赤外線の近くにある。従って、集光レンズシステムは、高い開口数及び短い焦点距離及び大きい光学孔(拡張されたレーザビーム直径)を有することが好ましい。レーザ光源を離れているビームは、材料または組織に焦点を合わす前に、直径が拡張される。このため、ビーム誘導、偏向、集光のためのシステムは、大きいビーム直径に設計されることが好ましい。
【0030】
レーザ光源、ビーム偏向(スキャナ)、及び集光レンズシステムは、精密で迅速な切断が光破断によって可能となるように調和される。焦点直径がnmからμm程度で100s、スポット直径程度のスポット距離のレーザ発射が材料に当てられる。
【0031】
特に、ビーム装置、具体的には偏向装置がプログラム化可能であることが好ましい。各ビーム装置とプログラムに応じた制御とが調和する結果、パルスレーザシステムと一体となったビーム装置のシステムは、材料及び材料が使用されるための切断仕様に対して精密に合わせられることができる。こうして、パラメータの設定は、前もって選択され、また、加工される材料の透過性及び屈折力に対して調和され、また、切断形状及び稼働継続時間に関する要求に適合されることができる。
【0032】
本発明では、加工材料の位置決め及び/または固定のための保持装置を備えていることが好ましい。これらの保持装置があることによって、本発明の装置によって生成されるマイクロメートル精度の構造は、加工材料、具体的には眼の制御できない動きによって逆に影響されないことが保証される。
【0033】
そのような固定及び位置決めの装置は、加工対象を最適な配列にすべく移動および傾斜するための多軸配列容量を備えた単純な加工対象用留め具である。例えば、眼などの器官を医療用の固定装置は、生物学的条件にも適応されなければならない。人間の眼は、例えば、接触ガラスや真空吸引リングを用いて固定することができる。
【0034】
固定装置は、接触ガラスであることが好ましい。この接触ガラスは、平坦であるか、または加工される材料、具体的には角膜の曲面にほぼ対応していることが好ましい。
【0035】
吸引リングが固定装置として使用されることが好ましい。吸引リングは、レーザ焦点に関連する角膜の位置となる、レーザ装置のビーム孔にしっかりと固定されていることが好ましい。
【0036】
本発明のさらに進んだ装置では、100nJから100mJ、より好ましくは1mJのパルスエネルギーが空洞集積フェムト秒発振器により提供される。このパルスエネルギーでは、特に、パルス継続時間が300fsより短い場合に、光破断が材料のトリガエリアにおいてマイクロメートル程度で引き起こされ、キャビテーション泡が生成される。並んでして配置される発射は、このキャビテーション泡の隣にさらなるキャビテーション泡を生成する。これらの泡により、材料構造は永久に、または少なくとも加工の終わりまで持続して破壊される。
【0037】
100kHzから10MHzの繰り返し周波数のレーザパルスが空洞集積フェムト秒発振器により提供されることが特に好ましい。繰り返し周波数は、偏向システムの速度(例えば、偏向レンズシステムの最大速度)に一致させられることが好ましい。眼への使用では、加工時間が一分より短くなる、300kHzの繰り返し周波数で、およそ50Hzの速度で使用されることが好ましい。
【0038】
これらの繰り返し周波数では、光破断のためのレーザ作動は、前もって設定されたパルスエネルギーと偏向システムに合わせて正確に位置させることができる。これにより、材料構造は、ごく限られた焦点体積内で破壊され、一方、材料内のごく密接したエリア(1マイクロメートルも離れていない)では、概して何も変化はない。これにより、材料内のごく近くのエリアを維持しつつ、高い加工精度になる。加工されないエリアにおける熱的及び機械的負荷は、他の加工方法よりもはるかに少ない。
【0039】
本発明のさらに進んだ装置では、ビーム光源の作動ビームは、ビーム装置、具体的には偏向装置により、決められた形状で、材料に応じて一時的に決められて作動させることができる。各構成要素の協力により、切断及び構造を実現することができる。材料構造が溶かされているスポットを生成する場合には、決められたパルスパラメータ(パルスエネルギー、パルス継続時間、焦点)のレーザパルスが、一般的に満たされている。切断及び構造のためには、多数のそのようなスポットが互いにそばに密接していなければならない。隣り合うスポット間の距離は、処理の最後において、スポット直径に一致していなければならない。これにより、レーザ焦点が材料上または材料内を通してスキャンするために動くことができる。レーザ焦点は、予め設定された、三次元でマイクロメートル精度の幾何学的進路に沿うことが好ましい。こうして、例えば、組織内にある一つの表面の後ろにある、希望する表面、例えば、隣り合うマイクロメートルほどのスポットの矩形表面がスキャンされるように引き起こされる加工材料に、切断部を生成することが可能となる。材料の結束は、この平面上で精密に消滅させられ、その結果、組織内の「切断」が実現される。同様に、スキャナを軌道上で円運動させることにより、レーザ焦点を加工材料に当てることができる。続いて起こる作動ビームのらせん誘導により、円筒表面を材料から切除することができる。光破断は、非常に狭いエリアで起こることが好ましく、レーザビームは、材料がレーザにより貫通させられて焦点の外側で破壊されることなく、組織に作用する。このように、どのような望む幾何学的進路、従って、どんな形状であっても、材料において光破断により切除することができる。
【0040】
本発明のさらに進んだ実施形態では、パルス作動ビームは、ビーム偏向装置により材料に当てることができる、その最中に作動ビームのパルスを修正することができる装置が提供される。作動中ビームのビームを加工材料の上に誘導しつつ、繰り返し周波数を修正するための装置を備えることにより、ビームが偏向装置によって加工材料に様々な角度あるいは様々な速度で導かれるとしても、こうして、処理中の材料に規則的なスポットパターンが精密に生成される。特に際だって有利なのは、例えば、偏向装置が、加工材料の上の軌道上にあるビームを偏向し、これらの軌道が偏向装置、具体的には、偏向ミラーの特定の回転周波数で生成される場合である。仮に、例えば、回転周波数50Hzで、レーザビームが直径1cmの軌道上に、繰り返し周波数300kHzで誘導されるならば、60,000個のスポットが回転の各軌道上に一様に分配されて置かれる。仮に、ビームが、わずか直径0.5cmの円上に、偏向装置と同じ周波数で誘導されるのであれば、ビームを大きい方の軌道に誘導する時に、パルス作動中ビームの繰り返し周波数を小さくすることにより、加工材料上の各スポット間と同じ距離が実現される。偏向装置によって伝わる幾何学的形状に対応して繰り返し周波数を修正することにより、基本的に一定なスポット距離で加工される材料に、どのような幾何学的形状パターンでも実現できる。例えば、らせんは、偏向装置の回転周波数が一定に維持されても、繰り返し周波数が絶え間なく減少しながら進むことができる。さらに、他のどのような望む幾何学的形状でも考え得る。材料上の各スポット間の一定距離を実際は維持するつもりでなくて、特定のエリアで高いスポット密度を、他のエリアで低いスポット密度を実現するつもりであっても、作動ビームの繰り返し周波数用のパラメータ選択と、偏向装置の周波数または局所進路とを組み合わせることにより、これは同様に実現できる。従って、徐々に異なるエリアで異なった焦点密度になることも実現できることが好ましい。例えば、円では、端からの焦点距離がさらに長くなりつつ、中心は非常に短い焦点距離であることが可能である。
【0041】
その目的は、空洞集積フェムト秒発振器のビーム光源のフェムト秒パルスを材料、具体積には、生体材料に当てるための方法によっても実現できる。その方法では、材料が光破断、またはレーザビームの焦点で結束を破壊されるかによって加工される。
【0042】
本発明の方法としては、パルスレーザビームが、偏向装置によって加工材料に向けて偏向され、レーザビームのパルスの繰り返し周波数は、材料上に生成されるスポットのパターンに対応して修正されることが好ましい。このようにすれば、どのような望ましいスポットパターンでも、また特に、どのような望ましい個々のスポット間の距離でも、望ましい外形で加工材料上に実現できる。光破断により形成するそれぞれのスポットのキャビテーション泡が、隣りのスポットのキャビテーション泡のすぐ隣りに置かれるように、スポットパターンが加工材料上に分布されることが特に好ましい。このように、すぐ隣りのキャビテーション泡の望ましい切断パターンが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるレーザの一実施形態の略図。
【図2】本発明によるレーザのさらに進んだ実施形態における、外科用顕微鏡と加工される眼とを示す図。
【図3】本発明によるレーザシステムにより実現可能な切除パターン例の略図。
【図4】曲線上のレーザスポット配列の概略詳細図。
【図5】共振器の中及び外におけるレーザパルス配列の時系列パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明に係る装置は、眼の角膜またはレンズを加工することによる屈折矯正手術に使用することができる。
【0045】
本発明のさらに有利な設計点は、図面を使用して以下で説明する。それらは、図1〜5に図示されている。
【0046】
図1は、本発明によるレーザシステムの一実施形態における各構成要素の概略図である。加工装置1は、ビーム光源としての空洞集積fs発振器11を含む。レーザビーム15は、ビーム拡張レンズシステム21上にあるミラーとビームスプリッタ57とを介して分断される。拡張されたレーザビーム15'は、その後、例えばスキャナのようなビーム偏向装置を介して、ビーム集光装置24上のXY方向に偏向される。これはZ軸に置き換え可能であり、ビーム集光装置をZ方向に沿って置き換えることにより、焦点の置き換えが可能である。その代わりに、制御された方法により焦点位置をZ方向に置き換えるために、焦点距離を調節可能な焦点光学システムを使用できる。焦点を合わせたレーザスポット16は、こうして、加工される材料90上に向けられ、材料90は固定装置32により位置決めされる。ここで、材料90は、加工されるコンタクトレンズである。スポット16も同様に、固定装置32を、材料上のXY'方向または材料中のZ'方向に置き換えることにより位置合わせできる。
【0047】
ビーム光源11により発生されるレーザビーム15は、加工装置1を通じて材料90上に焦点を合わすことができる。数マイクロメータの焦点直径は、数センチメータの焦点距離を有するレンズシステムを通じて、数ミリメータのビーム直径を有するレーザビーム15の焦点を合わすことにより達成される。例えば、ガウスビームプロファイルでは、波長1000nm、ビーム直径10mmのレーザビームが焦点距離50mmに焦点を合わすとすると、3マイクロメータの焦点直径が生じる。
【0048】
概して、レーザビーム15は、ビーム光源11の出力として、最適な焦点合わせに必要とされるよりも小さいビーム直径を有する。ビーム直径は、ビーム拡張レンズシステム21の要求に合わせることができる。ビーム拡張レンズシステム21としては、無限に合わせることができるガリレイ望遠鏡(発散レンズに加え収れんレンズがある)が使用されることが好ましい。ある状況下で即座に焦点を合わせることができれば、視力障害になっていないであろう。このように、レーザエネルギーの持続性が優れており、ビームプロファイルが常に好ましい状態である。望遠鏡の最適な画像化特性となるようなレンズシステムを使用することが好ましい。望遠鏡を調整することにより、ビーム光源11のビーム発散の発生ばらつきも補正することができる。
【0049】
本実施形態では、レーザ焦点は、材料の上をスキャンするか、または材料を通り抜けてスキャンするように移動される。こうして、レーザ焦点またはレーザスポット16は、三次元にマイクロメートル精度でスキャンされる。拡張レーザビーム15'は、偏向装置23を通じて、元のビーム方向に対して垂直な方向に偏向される。その課程で、焦点16の位置は、元のビーム方向に対して垂直に、焦点レンズシステム24に応じて移動する。こうして、焦点は、元々平面でありレーザビーム方向に対して垂直な(X/Y方向)表面に移動することができる。ビーム方向に対して平行な移動は、一つには、加工中の材料を移動させることにより(矢印Z')起こすことができる。スキャンアルゴリズムは、加工中の材料はただゆっくりと移動されればよく、偏向ユニットにより高速なスキャン移動がなされるように設計されていることが好ましい。他方には、焦点レンズシステムは、こうしてZ方向の焦点を下げるために、レーザビーム方向(矢印Z)に対して平行に移動することができる。特に医療用途の場合には、二番目の方法のほうが好ましい。なぜなら、普通、患者を素速く動かせないからである。
【0050】
加工される材料90は、固定用レーザ装置及び調整装置32に対して固定される。ここで、固定装置は、材料90に示された切除パターンを実現できるために、垂直かつビーム方向に対して平行に並べられていることが好ましい。パイロットレーザ27からの、調和するレーザビーム15、15'と同一線形順序に並んでいて目視できるレーザビームは、その調節を助ける。
【0051】
ミラーまたはミラーの組み合わせ22は、ビーム誘導及び各構成要素との間でのビーム位置調整のために設けられている。ミラーの状態は、対抗するレーザがミラーを破壊しないように、また、ミラーが対抗するレーザの波長を非常によく反射し、パイロットレーザを十分に反射するように選択されることが好ましい。特に、少なくとも一方のミラーが、いわゆる「チャープミラー」であり、ビーム進路に含まれる全てのレンズシステムの分散を、好ましくは加工焦点において短いパルスにするために補正できることが好ましい。
【0052】
図2は、外科用顕微鏡を備えた、本発明のさらに進んだレーザ加工装置の実施形態を示す。構造は基本的に図1の構造と一致する。各部には、それぞれ符号が付されている。ここでは、人間の眼が材料90として示されている。本実施形態を通して、人間の眼の角膜を精密に切除することができるこのレーザ装置について、以下、詳細に説明する。角膜の屈曲に沿っており眼の光軸に位置する曲面は、フェムト秒レーザパルスにより角膜の内部で切除される。曲面から角膜の外部に切除され、円弧状に分割された形状の切除端面を通じて、角膜弁の形状は、レーザ切除後に脇に収めることができる。
【0053】
このような弁は、眼の屈折障害を補正できるようにレーザ切除により角膜の厚さが変えられるLASIK手術の準備として役立つ。現在、この切除は、機械的な角膜切開刀により実施されており、これには医師側に多大な熟練が要求され、危険である。さらに、弁の最初の曲面と一緒に、弁を折り畳んだ後に取り除くことができるレンティクルを囲む、より曲率の大きい曲面を通じて、角膜の屈折矯正は同様の手順で行われる。
【0054】
本発明の詳細な設計点では、眼は吸引リング32により、平面か、または、好ましくは基本的に角膜の屈曲に適応した形状をした接触ガラス31の上で押される。吸引リングは、レーザ焦点に対する角膜の決められた位置を保証するレーザ装置にあるビーム孔にしっかりと接続されている。拡張されたフェムト秒レーザビームは、レンズシステム24によって、角膜中に焦点を合わせられる。レーザ波長を非常によく偏向し、可視光を伝達しているビームスプリッタは、レーザビームを、眼を観察して中心に据えるための外科用顕微鏡のビーム進路に反射する。焦点レンズシステム24は、顕微鏡の対象の一部分を形成する。バンドリングレンズシステムと一緒に、角膜実物そのままの像を生成することができ、立体接眼レンズ80で三次元的に見ることが出来る。ビーム偏向ユニット23は、拡張されたレーザビーム15をその伝播方向に対して垂直な方向に偏向する。こうして、レーザ焦点は、角膜中の様々な点に向けることができる。焦点深さは、焦点レンズシステム24を光軸に沿って移動させることにより、または焦点レンズシステムの焦点距離を調節することにより変えることができる。
【0055】
軌道は偏向ユニットにより移動させられることが好ましい。円のエリアを切除するには、円の半径は、軌道から軌道へと減縮され、繰り返し周波数は一様なスポット距離が保持されるように調整される。焦点深さは、切り込みが角膜の屈曲に沿うように、軌道から軌道へと調整される。視力の乱視矯正(シリンダー矯正)を取り入れる場合には、焦点深さが軌道中で、シリンダレンズ部を有するレンティクルを形成するように、上と下に二度移動することができる。固定された半径を持つフラップの端では、フラップ基端からの焦点深さは、シリンダー外皮が生成されるように、角膜の外側へとゆっくりと移動される。円周の円弧切片上では、レーザビームは、用意されたフラップがしっかりと維持されるための「フック」を残すために、中断させなければならない。このため、レーザ光源11からのレーザパルスを切り離しは、単純に中断させられる。
【0056】
ビーム光源11は、好ましくは直接ダイオードで送り込まれる、「空洞集積」フェムト秒発振器であり、従って、単純であり信頼性がある。放出されるレーザビーム15は、ガリレイ望遠鏡で1〜2cmのビーム直径に拡張されることが好ましい。拡張されたレーザビーム15と同一線形順序に並んで、パイロットレーザ27より可視的なレーザビームが付加され、それからスキャンされて、加工用レーザビームと共に焦点を合わせられる。この目的のため、ビームスプリッタ57は、フェムト秒レーザ波長に対する透過性があり、パイロットビームに対する反射性がある。
【0057】
可能な切除形状の多様性は、スキャンアルゴリズムのみによって決まる。原理として、記述されているようなレーザ装置は、眼の透明な構成要素(角膜、レンズ、硝子体)や、強膜、虹彩、毛様体などの不透明な部位の中で、切除または構造上の変形がなされなければならないような非常に多くの用途(例えば、視力の反射矯正のため)に適している。本発明は、このように、一般性と、この小さな部位領域の用途であっても精密である(まわりの組織を破壊しない)という点から見て、従来の技術よりも遙かに優れている。
【0058】
図3は、本発明によるレーザシステムで実現可能な、3aからdの切断形状の適用例の詳細図である。これらの用途は、例示にすぎず、他のどのような望む形状でも実現できる。材料90の結束性は、レーザ(光破断)の焦点16において破壊される。一般的に、これには材料の局所的な蒸発を伴う。レーザパルスの動きに追従して、材料の構造が永久的に、または、少なくとも加工時間の間はキャビテーション泡(以下においては、スポット16とも言う)という小さい体積に維持されて、破壊される。強く集光されるフェムト秒レーザまたは発振器を使用することにより、レーザ作動の最も精密な位置が提供される。はっきりと区分けされた焦点エリアにおいて、材料構造がこのように破壊される一方、すぐ隣り合ったエリア(1マイクロメートルも離れていなくても)では、一般的に、材料に変化は起こらない。これにより、高い加工精度を実現できるが、すぐ隣の材料エリアは破壊しないということになる
【0059】
切断や構造としては、材料の構造を破壊する非常に多くの個々のスポットが、互いに密接に並んで置かれている。隣り合ったスポット間の距離は、処理の最後の時点で、スポット直径程度である。図3aでは、決められた体積(例えば、材料中のボア)が、各スポット16によりその体積を完全に消失させることにより、生成される。そのような不透明な材料の場合には、この処理が、レーザに直面するスポットの層から始まり、それぞれの層に施される。
【0060】
図3bでは、ボアの端がスポットにより覆われている。ここでは、材料を貫いた切除が示されている。スポット16は、破線で引かれているZ軸に対して回転対称になっている。このように、掘削コアが加工材料90の中央に生成される。掘削コアは、結合片として取り除くことができる。このように、必要とされるレーザパルス数は、特にボア断面エリアでは、図3aと比較して、実質的に減少する。
【0061】
図3cは、透明材料90の下から切り取った部分を示す。材料90からの放射が吸収されていないので、結合材料片は、スポットが表面に接する場合、切除端にスポットを置くことにより、材料から取り除くことができる。
【0062】
図3dは、どのようにして、透明材料中にその材料組織に応じて空洞または構造を生成することができるかを示す。
【0063】
肉眼で見える切除形状(センチメートル程度)には、スポットが密集して切除表面(図3b及びcのように)を覆うだけであっても、数百万のレーザスポットが必要とされる。多くの用途(特に、医療用途)では、加工や処理の時間をできるだけ短くすることが有利である。そのため、レーザ装置のレーザ光源は、レーザパルスを高い繰り返し周波数で放出できなければならない。継続的に稼働している先行技術によるフェムト秒レーザ発振器では、たいてい数十MHzの繰り返し周波数である。材料に光学的破壊を生じさせるには、焦点レンズシステムの焦点距離が十分に大きい場合(数cmの作動距離)、nJ程度のパルスエネルギーでは十分でない。しかしながら、本発明によるレーザシステムでは、これが実現できる。
【0064】
図4は、各レーザパルスにより加工される各スポット16が、スキャナにより継続的に伝播される進路に沿って並べられている、実施可能なスキャンパターンの断面を概略的に示す。ビーム光源11の高い繰り返し周波数で十分大きいスポット間距離を実現するためには、焦点は、スキャンの三次元うち少なくとも一次元において、非常に高速に移動する。そのため、スキャンアルゴリズムは、偏向ユニットの自然移動に応じた進路に沿ってスポットが置かれているものが好ましい。他の二次元の移動は、比較的低速で行われることができる。偏向ユニットの自然進路は、例えば、固定された回転周波数で偏向ユニットが移動する軌道が可能である。軌道半径は及び焦点深さ(Z方向)は、徐々に変化させることができるスキャン変数である。この変数は、特に、回転対称な切除形状が生成されなければならない場合に適している。レーザの繰り返し周波数は、軌道の回転周波数が、最大軌道(B)で伝播される場合に、ビーム光源の最大繰り返し周波数が望むスポット距離bになるように選択されるときに特に効果的である。軌道半径(A)が切除パターンを伝播する最中で次第に小さくなる場合、それに相応してレーザ光源の繰り返し周波数は減少することができ、その結果、最適なスポット距離が再度生じる。この繰り返し周波数の調節は、適当な空洞集積発振器により直接可能である。回転周波数をビーム光源の繰り返し周波数へ調整することは、技術的により困難になる。もし、それぞれの軌道(A、B)において継続的に行うのであれば、特に困難になる。しかしながら、加工時間を短縮するためには、回転周波数をいくつかのステップで小さい軌道に調整することは有利になる。
【0065】
図5は、レーザ共振器の中及び外におけるレーザパルスの可能な系列を示す。発振器40におけるレーザパルスの回転周波数は、共振器長さのみに依存し、特定のビーム光源に予め設定されており、数メートルの共振器長さにおいて約100MHzである。空洞集積の原理は、変換可能な光学素子を有する共振器中を回転しているパルス45の一部を特定の時に切り離すというものである。空洞内パルスエネルギーの大部分は、ビーム光源を離れ、出力パルス46としてビーム偏向システムへと誘導される。
【0066】
共振器に残ったパルスエネルギーは、共振器中で何回も回転した後に飽和値42にまで再度増幅されて、再度切り離すことができるようになる。こうして、切り離されたレーザパルス46は、空洞内のパルス45よりも低い繰り返し周波数となる。最大繰り返し周波数は、レーザパルス切り離し後に飽和パルスエネルギーが回復する時までにプリセットされる。空洞内パルスエネルギーのパターンは、図5の42として示された挙動にほぼ一致している。
【0067】
繰り返し周波数は、飽和パルスエネルギーに到達後のある一瞬に43、44を再度切り離すだけで容易に減少させることができる。切り離された二つのレーザパルス間の時間(繰り返し周波数の逆数)は、共振器における回転時間のステップに応じて、無限大(繰り返し周波数ゼロ)と最小値(最大繰り返し周波数)との間で自由に設定することができる。このように、パルス系列周波数は、ビーム偏向システムの偏向速度に適応させることができる。切り離された繰り返し周波数と共振器の回転周波数との典型的な比率である1:100では、置かれたレーザスポット数当たりの偏向ユニットにおける回転数は、最小ステップで0.1(1%)に変化させることができる。異なる軌道上のスポット距離は、わずか1%でばらつくにすぎない。
【0068】
本発明では、レーザ装置は、フェムト秒ビーム光源、好ましくは、ビーム形成と誘導のための手段、プログラム化可能なビーム偏向、ビーム焦点と加工される材料または組織を位置決めして固定する装置を備えて提供されている。この装置は、レーザパルスパラメータ、繰り返し周波数については精密な切除及び構造形成に適し、偏向速度と精度に適していることが好ましい。レーザ波長を透過する材料の場合、加工は材料内部で行われる。取り除かれる材料は、レーザにより完全に除去される必要はなく、むしろ、密着した材料エリアは適当な切除制御により破壊されないで取り除くことができる。切断の精度は、レーザ焦点の直径に依存し、マイクロメートル以下程度である。ピコ秒より明らかに短いパルス継続時間を有するレーザパルスを使用することにより、隣り合う材料または組織の損傷がほとんど完全に軽減され、従って加工精度に大幅に寄与し、また、特に生体内の繊細な組織の治療が可能になる。
【符号の説明】
【0069】
1…加工装置、10…レーザシステム、11…空洞集積フェムト秒発振器、15…レーザビーム、15'…拡張レーザビーム、16…レーザスポット/レーザ焦点、20…ビーム装置、21…ビーム形成装置/ビーム拡張レンズシステム、22…ビーム誘導装置/ミラー、23…ビーム偏向装置/スキャナ、24…ビーム集光装置/レンズ、27…パイロットレーザ、30…保持装置、31…位置決め装置/接触ガラス、32…固定装置/吸引リング、80…観察用顕微鏡、90…材料/眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム光源(15)を有するパルスレーザシステム(10)を備え、空洞集積フェムト秒発振器(11)がビーム光源として備えられていることを特徴とする、材料(90)具体的には生体材料を精密加工するための装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101082(P2012−101082A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253954(P2011−253954)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2003−559712(P2003−559712)の分割
【原出願日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願人】(502303382)カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (16)
【Fターム(参考)】