杭と上部構造物の接造構造
【課題】 接合具を用いて杭と上部構造物を接合するに際し、杭の施工精度による杭心のずれを容易に吸収するとともに、上部構造物の固定作業性を向上すること。
【解決手段】 管状の杭10の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップ20の下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップ20の上面に、縦断面エ型の接合具30を横置きし、該接合具30の2枚の平行な板31、32の一方が該杭頭キャップ20の上面に固定され、接合具30の2枚の平行な板31、32の他方の上面に上部構造物Aが固定されているもの。
【解決手段】 管状の杭10の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップ20の下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップ20の上面に、縦断面エ型の接合具30を横置きし、該接合具30の2枚の平行な板31、32の一方が該杭頭キャップ20の上面に固定され、接合具30の2枚の平行な板31、32の他方の上面に上部構造物Aが固定されているもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭と上部構造物の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の杭と上部構造物の接合構造として、特許文献1に記載の如く、杭の上端部に、取付台を溶接し、この取付台の上に上部構造物としての建物ユニットの柱を載置し、柱に取付けられたジョイントピースと、ジョイントピースに重ねられた床梁とを、取付台にボルト止めするものがある。
【0003】
杭に対する上部構造物の固定をコンクリート等によらずボルトと取付台を用いて行なうことで、コンクリートの固化を待つ必要がなくて工事期間を短縮できるし、不等沈下現象が生じても、ボルトを取外して容易に不陸修正をできる等のメリットがある。
【特許文献1】特開平11-93273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の杭と上部構造物の接合構造において、取付台は杭の上端部に直に溶接されるものであり、取付台が杭の施工精度による杭心のずれを吸収して柱の上端部に設けられることの考慮がない。
【0005】
また、特許文献1の杭と上部構造物の接合構造において、取付台は、上板と下板の間に補強板を設けて高強度化されているものの、上板と下板の両端外縁と中央部のそれぞれに補強板を設けられて箱状化されている。このため、取付台の両端部が補強板により塞がれ、その上板の裏側に手を入れにくく、上部構造物のボルト止め作業性が悪い。
【0006】
本発明の課題は、接合具を用いて杭と上部構造物を接合するに際し、杭の施工精度による杭心のずれを容易に吸収するとともに、上部構造物の固定作業性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、管状の杭の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップの下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップの上面に、縦断面エ型の接合具を横置きし、該接合具の2枚の平行な板の一方が該杭頭キャップの上面に固定され、接合具の2枚の平行な板の他方の上面に上部構造物が固定されているようにしたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、上記2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されているようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、上記スチフナは、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1)
(a)杭の上端部と、上部構造物が固定される接合具の間に、杭頭キャップを介在させた。従って、杭の上端部に嵌め込んで固定した杭頭キャップの上面に、接合具の下板を現地にて固定するときに、接合具は杭頭キャップに対し杭の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収して固定できる。上部構造物は、接合具の上板に当初から定めてある固定位置にそのまま固定するだけで、杭心の水平方向ずれに関係なく、当初の据付予定位置に配置されるものとなる。
【0011】
(b)上述(a)において、杭頭キャップの円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした下部を杭の上端部の内孔に嵌め込んだまま、杭頭キャップを杭に対しあらゆる方向に傾斜させることができる。従って、杭心が仮に傾斜していても、杭頭キャップは杭心の傾斜を修正してその上面を水平になるように設置でき、接合具は水平な杭頭キャップの上面に固定できる。
【0012】
(c)接合具は縦断面エ型をなすことにより、高強度化されながら、両端部が塞がれることなく外方に開放される。従って、接合具の下板を杭頭キャップに固定し、又は接合具の上板に上部構造物を固定するに際し、接合具の上板と下板の間に手を入れ易く、ボルト止め等の固定作業性を向上できる。また、接合具の素材として一般品であるH型鋼を利用でき、コスト低減できる。
【0013】
(請求項2)
(d)接合具が、2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されることにより、接合具を一層高強度化できる。
【0014】
(請求項3)
(e)接合具のスチフナが、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられることにより、上部構造物の荷重を接合具のスチフナを直に通して杭に導き、上部構造物の支持強度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は杭と上部構造物の接合手順の前半工程を示す模式図、図2は杭と上部構造物の接合手順の後半工程を模式図、図3は実施例1の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図4は図3の側面図、図5の(A)は図3の上面図、(B)は図3の下面図、図6は実施例2の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図7は図6の側面図、図8の(A)は図6の上面図、(B)は図6の下面図、図9は実施例3の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図10は図9の側面図、図11の(A)は図9の上面図、(B)は図9の下面図、図12は実施例4の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図13は図12の側面図、図14の(A)は図12の上面図、(B)は図12の下面図、図15は実施例5の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図16は図15の側面図、図17の(A)は図15の上面図、(B)は図15の下面図、図18は杭頭キャップの変形例を示す模式図、図19は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【実施例】
【0016】
(実施例1)(図1〜図5)
本発明が適用される建物ユニットAは、図3〜図5に示す如く、四隅部の鋼製角パイプからなる柱1の下端と上端に溝形の鋼製ジョイントピース2が溶接により取付けられ、上下間のジョイントピース2の間に跨がり短い溝形の鋼製床梁3及び天井梁4(不図示)が溶接により取付けられるとともに、長い溝形の鋼製床梁5及び天井梁6(不図示)が溶接により取付けられ、柱1と梁3、4、5、6とがラーメン構造により接合された箱形の構造体を有している。この箱形構造体のほぼ平行な2本の長い天井梁6、6の間に複数本の木製小梁が架け渡され、ほぼ平行な2本の長い床梁5、5の間に鋼製角パイプからなる複数本の小梁が溝形取付片を介して架け渡されて建物ユニットAの骨組が構成されている。
【0017】
鋼管杭10の上端部に、杭頭キャップ20が固定され、杭頭キャップ20の上面に、H型鋼を横置きしてなる縦断面エ型の接合具30を載置し、接合具30の上下2枚の平行な板31、32の一方の下板32が杭頭キャップ20の上面に4本のボルト42より固定され、接合具30の上板32の上面に上部構造物としての建物ユニットAが1本のボルト50により固定される。
【0018】
杭頭キャップ20は、キャップ本体21の上端面に四角蓋板22を溶接して構成される。キャップ本体21は、杭頭キャップ20の下部を構成し、円錐形状をなす。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に円錐形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の円錐面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐面を周方向に溶接される。蓋板22には予めボルト40のための4個のボルト孔が穿設されている。
【0019】
接合具30は、2枚の平行な板である上下のフランジ31、32と、残る1枚の板であるウエブ33を有するH形鋼である。上フランジ31には予めボルト50のための1個のボルト孔50Aが穿設されている。下フランジ32のボルト40のためのボルト孔40Aは現地施工される。接合具30は、ウエブ33の両側に設けられて該ウエブ33に直交するスチフナ34により補強されている。スチフナ34は、上フランジ31と下フランジ32の一方又は両方と、ウエブ33に突合せ溶接される。接合具30の少なくとも一部のスチフナ34は、建物ユニットAの柱1の輪郭部直下、換言すれば柱1の板厚直下に対応する位置に設けられている。
【0020】
実施例1の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、建物ユニットAの1本の柱1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を正方形にし、上フランジ31に1個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0021】
従って、建物ユニットAの接合手順は以下の通りになる(図1、図2)。
(1)杭10の打設と杭頭処理(図1(A))
杭10を地面100に打設し、杭頭を地面100から所定高さ(h)に揃える。
【0022】
(2)杭位置測定(図1(B))
杭10の杭心の水平方向位置(x)、傾き(θ)を測定する。
【0023】
(3)杭頭キャップ20の取付け(図1(C))
杭10の杭頭に杭頭キャップ20の円錐形状のキャップ本体21を嵌め込み、かつキャップ本体21の円錐面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐面を溶接する。杭頭キャップ20の蓋板22はボルト40のための4個のボルト孔を予め穿設されている。
【0024】
(4)接合具30の加工(図2(A))
接合具30の下フランジ32に、杭頭キャップ20の蓋板22と接合するボルト40のための4個のボルト孔40Aを現地施工にて穿設する。尚、接合具30の上フランジ31はボルト50のための1個のボルト孔50Aを予め穿設されている。
【0025】
図5(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工誤差による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0026】
(5)接合具30の取付け(図2(B))
杭頭キャップ20の蓋板22に、接合具30の下フランジ32を載せてボルト40により固定する。杭10の上端部の高さにばらつきがあるときには、杭頭キャップ20の蓋板22の上に高さ調整用ライナを介し、このライナの上に接合具30の下フランジ32を載せることにより、杭10の上端部の高さのばらつきを吸収する。
【0027】
(6)建物ユニットAの設置(図2(C))
接合具30の上フランジ31に建物ユニットAの柱1を載置し、柱1に取付けられているジョイントピース2の下片、ジョイントピース2の下片に重ねられている床梁3(又は5)の下片を、ボルト50により上フランジ31に固定する。
【0028】
杭10に対する建物ユニットAの固定をコンクリートによらず杭頭キャップ20、接合具30、ボルト40、50を用いて行なうことで、コンクリートの固化を待つ必要がなくて工事期間を短縮できるし、不等沈下現象が生じても、ボルト50を取外して容易に不陸修正できる。
【0029】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)杭10の上端部と、建物ユニットAが固定される接合具30の間に、杭頭キャップ20を介在させた。従って、杭10の上端部に嵌め込んで固定した杭頭キャップ20の上面に、接合具30の下板32を現地にて固定するときに、接合具30は杭頭キャップ20に対し杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収して固定できる。建物ユニットAは、接合具30の上板31に当初から定めてある固定位置にそのまま固定するだけで、杭心の水平方向ずれに関係なく、当初の据付予定位置に配置されるものとなる。
【0030】
(b)上述(a)において、杭頭キャップ20の円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした下部を杭10の上端部の内孔に嵌め込んだまま、杭頭キャップ20を杭10に対しあらゆる方向に傾斜させることができる。従って、杭心が仮に傾斜していても、杭頭キャップ20は杭心の傾斜を修正してその上面を水平になるように設置でき、接合具は水平な杭頭キャップ20の上面に固定できる。
【0031】
(c)接合具30は縦断面エ型をなすことにより、高強度化されながら、両端部が塞がれることなく外方に開放される。従って、接合具30の下フランジ32を杭頭キャップ20に固定し、又は接合具30の上フランジ31に建物ユニットAを固定するに際し、接合具30の上フランジ31と下フランジ32の間に手を入れ易く、ボルト止め等の固定作業性を向上できる。また、接合具30の素材として一般品であるH型鋼を利用でき、コスト低減できる。
【0032】
(d)接合具30が、2枚の平行な板であるフランジ31、32と、残る1枚の板であるウエブ33とが、スチフナ34で補強されることにより、接合具30を一層高強度化できる。
【0033】
(e)接合具30のスチフナ34が、建物ユニットAに柱1がある場合、その柱1の輪郭部直下に設けられることにより、建物ユニットAの荷重を接合具30のスチフナ34を直に通して杭10に導き、建物ユニットAの支持強度を向上できる。
【0034】
(実施例2)(図6〜図8)
実施例2の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの妻方向に隣接する2個の建物ユニットAの隣接する2本の柱1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を実施例1のフランジ31、32と同じ正方形にし、上フランジ31に2個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0035】
図8(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0036】
実施例2にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0037】
(実施例3)(図9〜図11)
実施例3の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向に隣接する2個の建物ユニットAの隣接する2本の柱1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を桁方向に長い長方形にし、上フランジ31に2個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0038】
図11(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0039】
実施例3にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0040】
(実施例4)(図12〜図14)
実施例4の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向及び妻方向に隣接する3個の建物ユニットAの隣接する3本の柱1、1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を桁方向と妻方向に長いL形状にし、上フランジ31に3個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0041】
図14(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0042】
実施例4にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0043】
(実施例5)(図15〜図17)
実施例5の杭10、杭頭キャプ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向及び妻方向に隣接する4個の建物ユニットAの隣接する4本の柱1、1、1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を妻方向に長い長方形状にし、上フランジ31に4個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0044】
図17(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0045】
実施例5にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、杭頭キャップ20は、図18に示す如く、キャップ本体21を円錐台形状からなるものとしても良い。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に円錐台形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の円錐台面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐台面を周方向に溶接される。
【0047】
また、杭頭キャップ20は、図19に示す如く、キャップ本体21を部分球形状からなるものとしても良い。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に球形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の球面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の球面を周方向に溶接される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は杭と上部構造物の接合手順の前半工程を示す模式図である。
【図2】図2は杭と上部構造物の接合手順の後半工程を模式図である。
【図3】図3は実施例1の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図4】図4は図3の側面図である。
【図5】図5の(A)は図3の上面図、(B)は図3の下面図である。
【図6】図6は実施例2の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図7】図7は図6の側面図である。
【図8】図8の(A)は図6の上面図、(B)は図6の下面図である。
【図9】図9は実施例3の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図10】図10は図9の側面図である。
【図11】図11の(A)は図9の上面図、(B)は図9の下面図である。
【図12】図12は実施例4の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図13】図13は図12の側面図である。
【図14】図14の(A)は図12の上面図、(B)は図12の下面図である。
【図15】図15は実施例5の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図16】図16は図15の側面図である。
【図17】図17の(A)は図15の上面図、(B)は図15の下面図である。
【図18】図18は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【図19】図19は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
A 建物ユニット(上部構造物)
10 杭
20 杭頭キャップ
21 キャップ本体(下部)
30 接合具
31、32 板(フランジ)
33 ウエブ
34 スチフナ
【技術分野】
【0001】
本発明は杭と上部構造物の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の杭と上部構造物の接合構造として、特許文献1に記載の如く、杭の上端部に、取付台を溶接し、この取付台の上に上部構造物としての建物ユニットの柱を載置し、柱に取付けられたジョイントピースと、ジョイントピースに重ねられた床梁とを、取付台にボルト止めするものがある。
【0003】
杭に対する上部構造物の固定をコンクリート等によらずボルトと取付台を用いて行なうことで、コンクリートの固化を待つ必要がなくて工事期間を短縮できるし、不等沈下現象が生じても、ボルトを取外して容易に不陸修正をできる等のメリットがある。
【特許文献1】特開平11-93273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の杭と上部構造物の接合構造において、取付台は杭の上端部に直に溶接されるものであり、取付台が杭の施工精度による杭心のずれを吸収して柱の上端部に設けられることの考慮がない。
【0005】
また、特許文献1の杭と上部構造物の接合構造において、取付台は、上板と下板の間に補強板を設けて高強度化されているものの、上板と下板の両端外縁と中央部のそれぞれに補強板を設けられて箱状化されている。このため、取付台の両端部が補強板により塞がれ、その上板の裏側に手を入れにくく、上部構造物のボルト止め作業性が悪い。
【0006】
本発明の課題は、接合具を用いて杭と上部構造物を接合するに際し、杭の施工精度による杭心のずれを容易に吸収するとともに、上部構造物の固定作業性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、管状の杭の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップの下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップの上面に、縦断面エ型の接合具を横置きし、該接合具の2枚の平行な板の一方が該杭頭キャップの上面に固定され、接合具の2枚の平行な板の他方の上面に上部構造物が固定されているようにしたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、上記2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されているようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、上記スチフナは、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1)
(a)杭の上端部と、上部構造物が固定される接合具の間に、杭頭キャップを介在させた。従って、杭の上端部に嵌め込んで固定した杭頭キャップの上面に、接合具の下板を現地にて固定するときに、接合具は杭頭キャップに対し杭の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収して固定できる。上部構造物は、接合具の上板に当初から定めてある固定位置にそのまま固定するだけで、杭心の水平方向ずれに関係なく、当初の据付予定位置に配置されるものとなる。
【0011】
(b)上述(a)において、杭頭キャップの円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした下部を杭の上端部の内孔に嵌め込んだまま、杭頭キャップを杭に対しあらゆる方向に傾斜させることができる。従って、杭心が仮に傾斜していても、杭頭キャップは杭心の傾斜を修正してその上面を水平になるように設置でき、接合具は水平な杭頭キャップの上面に固定できる。
【0012】
(c)接合具は縦断面エ型をなすことにより、高強度化されながら、両端部が塞がれることなく外方に開放される。従って、接合具の下板を杭頭キャップに固定し、又は接合具の上板に上部構造物を固定するに際し、接合具の上板と下板の間に手を入れ易く、ボルト止め等の固定作業性を向上できる。また、接合具の素材として一般品であるH型鋼を利用でき、コスト低減できる。
【0013】
(請求項2)
(d)接合具が、2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されることにより、接合具を一層高強度化できる。
【0014】
(請求項3)
(e)接合具のスチフナが、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられることにより、上部構造物の荷重を接合具のスチフナを直に通して杭に導き、上部構造物の支持強度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は杭と上部構造物の接合手順の前半工程を示す模式図、図2は杭と上部構造物の接合手順の後半工程を模式図、図3は実施例1の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図4は図3の側面図、図5の(A)は図3の上面図、(B)は図3の下面図、図6は実施例2の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図7は図6の側面図、図8の(A)は図6の上面図、(B)は図6の下面図、図9は実施例3の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図10は図9の側面図、図11の(A)は図9の上面図、(B)は図9の下面図、図12は実施例4の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図13は図12の側面図、図14の(A)は図12の上面図、(B)は図12の下面図、図15は実施例5の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図、図16は図15の側面図、図17の(A)は図15の上面図、(B)は図15の下面図、図18は杭頭キャップの変形例を示す模式図、図19は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【実施例】
【0016】
(実施例1)(図1〜図5)
本発明が適用される建物ユニットAは、図3〜図5に示す如く、四隅部の鋼製角パイプからなる柱1の下端と上端に溝形の鋼製ジョイントピース2が溶接により取付けられ、上下間のジョイントピース2の間に跨がり短い溝形の鋼製床梁3及び天井梁4(不図示)が溶接により取付けられるとともに、長い溝形の鋼製床梁5及び天井梁6(不図示)が溶接により取付けられ、柱1と梁3、4、5、6とがラーメン構造により接合された箱形の構造体を有している。この箱形構造体のほぼ平行な2本の長い天井梁6、6の間に複数本の木製小梁が架け渡され、ほぼ平行な2本の長い床梁5、5の間に鋼製角パイプからなる複数本の小梁が溝形取付片を介して架け渡されて建物ユニットAの骨組が構成されている。
【0017】
鋼管杭10の上端部に、杭頭キャップ20が固定され、杭頭キャップ20の上面に、H型鋼を横置きしてなる縦断面エ型の接合具30を載置し、接合具30の上下2枚の平行な板31、32の一方の下板32が杭頭キャップ20の上面に4本のボルト42より固定され、接合具30の上板32の上面に上部構造物としての建物ユニットAが1本のボルト50により固定される。
【0018】
杭頭キャップ20は、キャップ本体21の上端面に四角蓋板22を溶接して構成される。キャップ本体21は、杭頭キャップ20の下部を構成し、円錐形状をなす。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に円錐形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の円錐面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐面を周方向に溶接される。蓋板22には予めボルト40のための4個のボルト孔が穿設されている。
【0019】
接合具30は、2枚の平行な板である上下のフランジ31、32と、残る1枚の板であるウエブ33を有するH形鋼である。上フランジ31には予めボルト50のための1個のボルト孔50Aが穿設されている。下フランジ32のボルト40のためのボルト孔40Aは現地施工される。接合具30は、ウエブ33の両側に設けられて該ウエブ33に直交するスチフナ34により補強されている。スチフナ34は、上フランジ31と下フランジ32の一方又は両方と、ウエブ33に突合せ溶接される。接合具30の少なくとも一部のスチフナ34は、建物ユニットAの柱1の輪郭部直下、換言すれば柱1の板厚直下に対応する位置に設けられている。
【0020】
実施例1の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、建物ユニットAの1本の柱1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を正方形にし、上フランジ31に1個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0021】
従って、建物ユニットAの接合手順は以下の通りになる(図1、図2)。
(1)杭10の打設と杭頭処理(図1(A))
杭10を地面100に打設し、杭頭を地面100から所定高さ(h)に揃える。
【0022】
(2)杭位置測定(図1(B))
杭10の杭心の水平方向位置(x)、傾き(θ)を測定する。
【0023】
(3)杭頭キャップ20の取付け(図1(C))
杭10の杭頭に杭頭キャップ20の円錐形状のキャップ本体21を嵌め込み、かつキャップ本体21の円錐面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐面を溶接する。杭頭キャップ20の蓋板22はボルト40のための4個のボルト孔を予め穿設されている。
【0024】
(4)接合具30の加工(図2(A))
接合具30の下フランジ32に、杭頭キャップ20の蓋板22と接合するボルト40のための4個のボルト孔40Aを現地施工にて穿設する。尚、接合具30の上フランジ31はボルト50のための1個のボルト孔50Aを予め穿設されている。
【0025】
図5(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工誤差による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0026】
(5)接合具30の取付け(図2(B))
杭頭キャップ20の蓋板22に、接合具30の下フランジ32を載せてボルト40により固定する。杭10の上端部の高さにばらつきがあるときには、杭頭キャップ20の蓋板22の上に高さ調整用ライナを介し、このライナの上に接合具30の下フランジ32を載せることにより、杭10の上端部の高さのばらつきを吸収する。
【0027】
(6)建物ユニットAの設置(図2(C))
接合具30の上フランジ31に建物ユニットAの柱1を載置し、柱1に取付けられているジョイントピース2の下片、ジョイントピース2の下片に重ねられている床梁3(又は5)の下片を、ボルト50により上フランジ31に固定する。
【0028】
杭10に対する建物ユニットAの固定をコンクリートによらず杭頭キャップ20、接合具30、ボルト40、50を用いて行なうことで、コンクリートの固化を待つ必要がなくて工事期間を短縮できるし、不等沈下現象が生じても、ボルト50を取外して容易に不陸修正できる。
【0029】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)杭10の上端部と、建物ユニットAが固定される接合具30の間に、杭頭キャップ20を介在させた。従って、杭10の上端部に嵌め込んで固定した杭頭キャップ20の上面に、接合具30の下板32を現地にて固定するときに、接合具30は杭頭キャップ20に対し杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収して固定できる。建物ユニットAは、接合具30の上板31に当初から定めてある固定位置にそのまま固定するだけで、杭心の水平方向ずれに関係なく、当初の据付予定位置に配置されるものとなる。
【0030】
(b)上述(a)において、杭頭キャップ20の円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした下部を杭10の上端部の内孔に嵌め込んだまま、杭頭キャップ20を杭10に対しあらゆる方向に傾斜させることができる。従って、杭心が仮に傾斜していても、杭頭キャップ20は杭心の傾斜を修正してその上面を水平になるように設置でき、接合具は水平な杭頭キャップ20の上面に固定できる。
【0031】
(c)接合具30は縦断面エ型をなすことにより、高強度化されながら、両端部が塞がれることなく外方に開放される。従って、接合具30の下フランジ32を杭頭キャップ20に固定し、又は接合具30の上フランジ31に建物ユニットAを固定するに際し、接合具30の上フランジ31と下フランジ32の間に手を入れ易く、ボルト止め等の固定作業性を向上できる。また、接合具30の素材として一般品であるH型鋼を利用でき、コスト低減できる。
【0032】
(d)接合具30が、2枚の平行な板であるフランジ31、32と、残る1枚の板であるウエブ33とが、スチフナ34で補強されることにより、接合具30を一層高強度化できる。
【0033】
(e)接合具30のスチフナ34が、建物ユニットAに柱1がある場合、その柱1の輪郭部直下に設けられることにより、建物ユニットAの荷重を接合具30のスチフナ34を直に通して杭10に導き、建物ユニットAの支持強度を向上できる。
【0034】
(実施例2)(図6〜図8)
実施例2の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの妻方向に隣接する2個の建物ユニットAの隣接する2本の柱1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を実施例1のフランジ31、32と同じ正方形にし、上フランジ31に2個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0035】
図8(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0036】
実施例2にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0037】
(実施例3)(図9〜図11)
実施例3の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向に隣接する2個の建物ユニットAの隣接する2本の柱1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を桁方向に長い長方形にし、上フランジ31に2個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0038】
図11(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0039】
実施例3にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0040】
(実施例4)(図12〜図14)
実施例4の杭10、杭頭キャップ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向及び妻方向に隣接する3個の建物ユニットAの隣接する3本の柱1、1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を桁方向と妻方向に長いL形状にし、上フランジ31に3個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0041】
図14(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0042】
実施例4にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0043】
(実施例5)(図15〜図17)
実施例5の杭10、杭頭キャプ20、接合具30は、実施例1と実質的に同様であるが、建物ユニットAの桁方向及び妻方向に隣接する4個の建物ユニットAの隣接する4本の柱1、1、1、1の下方に設けられるものであり、接合具30は上下のフランジ31、32を妻方向に長い長方形状にし、上フランジ31に4個のボルト孔50Aが穿設されて構成されている。
【0044】
図17(B)は杭10と杭頭キャップ20と接合具30を地面の側から上向きにみた下面図であるが、実線の杭10と杭頭キャップ20は正規位置、破線の杭10と杭頭キャップ20は杭心に水平方向ずれを生じたときの位置であり、接合具30の下フランジ32に設けられるボルト孔40Aは杭心の水平方向ずれに応じて正規位置からずれた杭頭キャップ20の蓋板22に予め穿設されているボルト孔に合致する位置に穿設される。これにより、建物ユニットAの所定の据付位置に対応する正規位置に接合具30を配置しながら、杭10及び杭頭キャップ20に対する接合具30のボルト止め位置を調整することにより、杭10の施工精度による杭心の水平方向ずれを吸収する。
【0045】
実施例5にあっても、実施例1におけると同様の作用効果を奏する。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、杭頭キャップ20は、図18に示す如く、キャップ本体21を円錐台形状からなるものとしても良い。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に円錐台形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の円錐台面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の円錐台面を周方向に溶接される。
【0047】
また、杭頭キャップ20は、図19に示す如く、キャップ本体21を部分球形状からなるものとしても良い。杭頭キャップ20は、杭10の上端部の内孔に球形状のキャップ本体21の高さ方向の概ね中間部程度までを嵌め込んだまま、キャップ本体21の球面を杭10の内孔端面に対し滑り移動させて蓋板22を杭10の杭心の傾きによらず、水平となるように調整し、杭10の上端外周にキャップ本体21の球面を周方向に溶接される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は杭と上部構造物の接合手順の前半工程を示す模式図である。
【図2】図2は杭と上部構造物の接合手順の後半工程を模式図である。
【図3】図3は実施例1の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図4】図4は図3の側面図である。
【図5】図5の(A)は図3の上面図、(B)は図3の下面図である。
【図6】図6は実施例2の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図7】図7は図6の側面図である。
【図8】図8の(A)は図6の上面図、(B)は図6の下面図である。
【図9】図9は実施例3の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図10】図10は図9の側面図である。
【図11】図11の(A)は図9の上面図、(B)は図9の下面図である。
【図12】図12は実施例4の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図13】図13は図12の側面図である。
【図14】図14の(A)は図12の上面図、(B)は図12の下面図である。
【図15】図15は実施例5の杭と上部構造物の接合構造を示す正面図である。
【図16】図16は図15の側面図である。
【図17】図17の(A)は図15の上面図、(B)は図15の下面図である。
【図18】図18は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【図19】図19は杭頭キャップの変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
A 建物ユニット(上部構造物)
10 杭
20 杭頭キャップ
21 キャップ本体(下部)
30 接合具
31、32 板(フランジ)
33 ウエブ
34 スチフナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の杭の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップの下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップの上面に、縦断面エ型の接合具を横置きし、該接合具の2枚の平行な板の一方が該杭頭キャップの上面に固定され、接合具の2枚の平行な板の他方の上面に上部構造物が固定されていることを特徴とする杭と上部構造物の接合構造。
【請求項2】
上記2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されていることを特徴とする請求項1記載の杭と上部構造物の接合構造。
【請求項3】
上記スチフナは、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられていることを特徴とする請求項2記載の杭と上部構造物の接合構造。
【請求項1】
管状の杭の上端部に、下部が円錐形状、又は円錐台形状、又は部分球形状をした杭頭キャップの下部が嵌め込まれて固定され、杭頭キャップの上面に、縦断面エ型の接合具を横置きし、該接合具の2枚の平行な板の一方が該杭頭キャップの上面に固定され、接合具の2枚の平行な板の他方の上面に上部構造物が固定されていることを特徴とする杭と上部構造物の接合構造。
【請求項2】
上記2枚の平行な板であるフランジと、残る1枚の板であるウエブとが、スチフナで補強されていることを特徴とする請求項1記載の杭と上部構造物の接合構造。
【請求項3】
上記スチフナは、上部構造物に柱がある場合、その柱の輪郭部直下に設けられていることを特徴とする請求項2記載の杭と上部構造物の接合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−57140(P2008−57140A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232826(P2006−232826)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]