板型ヒートパイプとその製造方法
【課題】コンテナを形成する板材、伝熱板材が、ズレ等が生じることなく一体的に接合され、プリント基板(搭載される電子部品を含む)の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる、電気接続箱等の電子装置において使用される板型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【解決手段】密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板型ヒートパイプ、特に、車両等の環境(熱、振動等)に厳しい部位に搭載される電気接続箱において使用される板型ヒートパイプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の快適性に対するニーズの高まりに伴い、車両に搭載される電装品は増加する傾向にある。具体的には、例えば、オーディオ、ナビゲーション、テレビ、電動アンテナ、エアコン、リヤウインドウヒータ、シートヒータ、パワーシート、サスペンションの硬さ制御装置等の様々な電装品が車両に搭載されるようになっている。
【0003】
これらの電装品への電源供給は、エンジンルームのバッテリ近傍等に取り付けられた電気接続箱を経由して供給される。なお、電気接続箱には、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止するヒューズや、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御するリレー等が搭載されている。
【0004】
電気接続箱には、フューズホルダFH、リレーRL、CPU等の電気部品およびこれらと導通した回路パターンが実装されたプリント基板、熱伝導性絶縁シート、金属スペーサ、ヒートパイプが組み付けられている。特開2001−119838号公報(以下、先行技術1という)に開示されているように、熱伝導性絶縁シートと金属スペーサが一体的に形成され、このように放熱シート付金属スペーサの吸熱部が偏平形状のヒートパイプに重ね合わされて電気接続箱に組み入れられることが開示されている。先行技術1によると、リレー、ヒューズ、CPU等の電気部品やこれと導通した回路パターンでの発熱がプリント基板で均熱化され、放熱シート付金属スペーサを介してヒートパイプに放熱される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した放熱シート付金属スペーサとヒートパイプとを密着させるための組立て作業が必要であり、更に、耐振性に劣るという問題点がある。
【0006】
従って、この発明の目的は、上述した従来の問題点を解決して、コンテナを形成する板材、伝熱板材が、ズレ等が生じることなく一体的に接合され、プリント基板(搭載される電子部品を含む)の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる、電気接続箱等の電子装置において使用される板型ヒートパイプを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、
先ず、別々に調製し、密着させて組立てている伝熱板材(即ち、金属スペーサ)とコンテナを接合して一体化することによって、伝熱板材とコンテナとを密着させるための組立て作業が不用になり、部品数を少なくして熱抵抗を小さくし、更に、耐振性を向上させることができることが判明した。更に、コンテナを2枚の板材によって形成するときには、2枚の板材の一方の板材に凸部、他方の板材に孔部を設け、このように形成された位置決め用の孔部に凸部を装入してカシメ、次いで、コンテナと伝熱板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の、例えば、凸部と凹部とからなる嵌合部を設け、凸部を凹部に(塑性変形を伴うこと無く)圧入固定し、更にコンテナと伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、貫通ピンを挿入してカシメることによって、位置ずれを起こすことなく、コンテナと伝熱板材が容易に接合されることが判明した。
【0008】
この発明は、上述した研究結果に基づいてなされたものであって、この発明の板型ヒートパイプの第1の態様は、密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0009】
この発明の板型ヒートパイプの第2の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部の対、または、凸部および孔部の対からなっている、板型ヒートパイプである。
【0010】
この発明の板型ヒートパイプの第3の態様は、前記コンテナが上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって一体形成されたコンテナからなっている、板型ヒートパイプである。
【0011】
この発明の板型ヒートパイプの第4の態様は、少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入される密閉されたコンテナと、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0012】
この発明の板型ヒートパイプの第5の態様は、少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される多孔管形状に形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第2嵌合部とを備え、
前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0013】
この発明の板型ヒートパイプの第6の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、板型ヒートパイプである。
【0014】
この発明の板型ヒートパイプの第7の態様は、前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部と前記貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、前記貫通ピンをカシメて、前記コンテナと前記伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている、板型ヒートパイプである。
【0015】
この発明の板型ヒートパイプの第8の態様は、前記伝熱板材に開口部が設けられ、前記開口部がプリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している、板型ヒートパイプである。
【0016】
この発明の板型ヒートパイプの第9の態様は、前記接合がブレージングによって行われる、板型ヒートパイプである。
【0017】
この発明の板型ヒートパイプの第10の態様は、前記コンテナの前記2枚の板材の一方にエンボス加工が施され、前記エンボス加工が施された前記板材の前記伝熱板材と接続される面に、前記伝熱板材を支える第3凸部を備えている、板型ヒートパイプである。
【0018】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第1の態様は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0019】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第2の態様は、前記コンテナの前記2枚の板材と前記2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0020】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第3の態様は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0021】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第4の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0022】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第5の態様は、前記伝熱板材および前記コンテナを接合する際に、前記コンテナおよび前記伝熱板材におもりを載せて接合を行う、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
この発明の板型ヒートパイプおよびその製造方法の態様について図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の板型ヒートパイプは、密閉された空間を形成するコンテナと、コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、コンテナおよび伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた位置決め用の嵌合部とを備え、嵌合部を嵌合固定して、伝熱板材と作動流体が封入されているコンテナが接合された板型ヒートパイプである。
【0024】
嵌合部は、例えば、1対の凸部と凹部との組合わせ、または、1対の凸部と孔部との組合わせからなっている。即ち、上述した態様においては、コンテナに位置決め用の凸部を形成し、伝熱板材に対応する凹部を形成して、このように形成された凸部と凹部とを組合わせて、圧入固定する。圧入固定とは、カシメのように塑性変形を伴わず、弾性変形域において凹部に凸部を圧しながら挿入して固定することを意味する。嵌合固定は、上述した圧入固定やカシメ固定の意味を含み、かつ、カシメのように塑性変形を伴わず、弾性変形域を含み、必ずしも圧する必要なく、例えば、凹部と凸部とを嵌め合わせて固定することをも意味する。
コンテナは、例えば、上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって、作動流体の流路(流路数は任意に設けられる)を含めて一体形成されたコンテナからなっている。
【0025】
上下2枚の板材によって形成されたコンテナを使用する、この発明の板型ヒートパイプは、少なくとも1枚の伝熱板材と、伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、コンテナの2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、コンテナおよび伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、第1嵌合部をカシメ固定し、第2嵌合部を嵌合固定して、伝熱板材およびコンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。カシメ固定は、例えば、凹部に凸部を挿入し、凸部を塑性変形によってカシメて、固定することを意味する。
【0026】
図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の上方からみた斜視図である。図1に示すように、この発明の板型ヒートパイプ1は、上板材5、下板材6の2枚の板材によって形成されたその中に作動流体が封入され密閉されたコンテナ2と、コンテナの表面および裏面に熱的に接続された伝熱板材3、4とを備えている。コンテナを形成する2枚の板材には、(後述する)位置決め用の、第1孔部および第1凸部からなる第1嵌合部が設けられ、第1孔部に第1凸部を挿入して、塑性変形を伴うカシメによって、2枚の板材が、接合に先立ち、カシメ固定される。
【0027】
第1嵌合部は少なくとも1個、好ましくは2個以上形成される。なお、第1孔部、第1凸部は何れの板材に形成しても良く、孔部と凸部が対になるように対応する位置に設けられれば良い。上述したように、コンテナを形成する2枚の板材(上板材、下板材)は、塑性変形を伴うカシメによって、カシメ固定される。コンテナ2には、耐圧強度を高めるためのエンボス加工16が施されている。第1嵌合部は、上述した他に、第1凸部とそれに対応する第1凹部からなっていてもよい。
【0028】
更に、このように固定されたコンテナ2と、少なくとも1枚の伝熱板材3、4とが、(後述する)位置決め用の、第2孔部と第2凸部とからなる第2嵌合部8によって固定される。第2嵌合部は第2凸部とそれに対応する第2凹部からなっていてもよい。コンテナと伝熱板材とを固定する第2嵌合部においては、第2孔部と第2凸部または第2凸部と第2凹部とが、塑性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合される。従って、第2嵌合部においては、塑性変形をともなうカシメは行われず、例えば、第2凸部が第2凹部に圧入固定される。
【0029】
図2は、図1に示したこの発明の板型ヒートパイプの1つの態様の下方からみた斜視図である。図2に示すように、コンテナを形成する下板材の一方の端部に作動流体注入口7が設けられている。この態様の板型ヒートパイプには上板材5および下板材6のそれぞれに対応して伝熱板材3、4が、上述した第2嵌合部によって圧入固定されている。
【0030】
図3は、この発明の板型ヒートパイプを説明する分解図である。図3(a)に全体を、図3R>3(b)に第1嵌合部の拡大したものを、図3(c)に第2嵌合部の拡大したものをそれぞれ示す。図3に示すように、この発明の板型ヒートパイプ1は、エンボス加工が施された上板材5、および、下板材6の2枚の板材によって形成されたその中に作動流体が封入され密閉されたコンテナ2と、コンテナの表面および裏面に熱的に接続された伝熱板材3、4とを備えている。コンテナを形成する上板材および下板材には、位置決め用の、第1孔部12および第1凸部11からなる第1嵌合部が設けられている。第1嵌合部はコンテナの両端部にそれぞれ設けられている。更に、下板材の一方の端部には作動流体注入口7が設けられている。作動流体注入口7に対応する上板材の部位は、空洞部が形成されるように凸形に延伸されている。上板材の両端部に設けられた第1孔部に、下板材の両端部に設けられた対応する第1凸部を挿入して、塑性変形を伴うカシメによって、上板材および下板材の2枚の板材が、接合に先立ち、カシメ固定される。
【0031】
上述したように、第1嵌合部は少なくとも1個、好ましくは2個以上形成される。なお、第1孔部、第1凸部は何れの板材に形成しても良く、孔部と凸部が対になるように対応する位置に設けられれば良い。第1嵌合部は、上述した他に、第1凸部とそれに対応する第1凹部からなっていてもよい。図6および図7に第1嵌合部の詳細を示す。図6に示すように、第1嵌合部は第1孔部および第1凸部からなっている。即ち、下板材6に形成された第1凸部11に上板材5に形成された第1孔部12が嵌合されて、位置決めされる。図7R>7に示すように、このように嵌合された第1嵌合部の第1凸部がカシメられて横方向に拡大して、上板材と下板材とが固定される。
【0032】
更に、このように固定されたコンテナ2と、伝熱板材3、4とが、位置決め用の、第2孔部13と第2凸部14とからなる第2嵌合部によって固定される。上述したように第2嵌合部は第2凸部とそれに対応する第2凹部からなっていてもよい。更に、コンテナ2と伝熱板材3、4とを固定する第2嵌合部においては、第2孔部13と第2凸部14または第2凸部と第2凹部とが、塑性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合される。従って、第2嵌合部においては、塑性変形をともなうカシメは行われず、例えば、第2凸部14が第2孔部13にに圧入固定される。
【0033】
更に、図3に示すように、コンテナを形成する上板材5、下板材6、伝熱板材3、4を貫通する貫通孔部9が設けられている。貫通孔部には貫通ピンが挿入される。即ち、上述した2枚の板材によって形成されるコンテナを備えたこの発明の板型ヒートパイプにおいては、コンテナを形成する2枚の板材は第1嵌合部において、位置決めされ、カシメ固定され、コンテナと伝熱板材は、第2嵌合部において位置決めされ、後述するように、貫通孔部に挿入された貫通ピンをカシメて、固定される。
【0034】
伝熱板3、4は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、電気部品端子突起部に対応している開口部10を有している。即ち、プリント基板の板面から下方に突出する突起部と、伝熱板材が接触しないように、電気部品の端子の配置に合わせて、予め開口部が形成されている。
【0035】
更に、図3に示すように、コンテナには、エンボス加工が施された上板材の伝熱板材と接続される面に、伝熱板材を支える第3凸部15を備えている。その詳細を図11に示す。図11に示すように、上板材の4隅に、伝熱板材の方向に膨らんで形成された第3凸部15が設けられている。このように第3凸部を設けることによって、伝熱板の4隅を支え、ブレージング等の熱処理によって伝熱板材が下方に向かって変形する(ダレる)のを防止することができる。従って、伝熱板材におけるプリント基板との接触面の平面度を維持することができ、熱抵抗を小さくすることができる。
【0036】
更に、この発明の板型ヒートパイプは、コンテナと2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部と貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、貫通ピンをカシメて、コンテナと伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている。即ち、図3に示すように、伝熱板の端部およびコンテナの端部、例えば4隅に貫通孔9が形成されている。図9および図10にその詳細を示す。
【0037】
図9は図8の部分断面図である。図9に示すように、重ね合わされた伝熱板材3、コンテナを形成する上板材5、下板材6および伝熱板材4を貫通するように形成された貫通孔部9に、貫通ピン19を挿入する。次いで、図10に示すように、貫通孔部9に挿入された貫通ピン19の中心部をカシメると、貫通ピンが上下方向から圧迫されて、中心部から円周部方向に放射状に力が加わり、伝熱板材3、コンテナを形成する上板材5、下板材6および伝熱板材4が、重ね合わされた状態で正確に固定される。図8に貫通孔部に挿入された貫通ピンがカシメられた状態を示す。図8に示すように、伝熱板材3、上板材5および下板材6からなるコンテナ2が、貫通孔部に挿入されカシメられた貫通ピンによって固定されている。
【0038】
このように、位置決め用の、第1孔部12および第1凸部11からなる第1嵌合部によってコンテナを形成する上板材5および下板材6がその内部に空洞部を形成するように位置決めされて、カシメ固定され、このように固定されたコンテナ2と、開口部を有する伝熱板材3、4とが、位置決め用の、第2孔部13と第2凸部14とからなる第2嵌合部によって嵌合固定され、コンテナの上板材の伝熱板材と接触する面に形成された、伝熱板材を支える第3凸部15によって伝熱板材が支えられ、更に、コンテナと2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部と貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなるカシメ固定部によって、貫通ピンがカシメられて、コンテナと伝熱板材とが固定された状態で、ブレージングによって接合が行われる。
【0039】
図1から図3において説明したこの発明の板型ヒートパイプのコンテナを更に詳細に説明する。図4は、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して上方から示す図である。上板材5にはエンボス加工が施され、両端部(即ち、コンテナの封じ切り部を備えた一方の端部およびコンテナの延伸部の他方の端部)にはそれぞれ位置決め用の第1嵌合部の第1孔部が設けられている。更に、コンテナの4隅には、伝熱板の4隅を支える第3凸部15が設けられている。
【0040】
下板材6は、平板な板材からなっており、下板材6の両端部には、位置決め用の第1嵌合部の第1凸部が設けられている。下板材6の一方の端部に、更に、作動流体注入口7が設けられている。図5は、図4に対し反対方向から見た図であり、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して下方から示す図である。図5に示すように、上板材5は、エンボス加工が施され、空洞部を形成するように、周辺部と凸部からなっている。このように形成された上板材および下板材を組み合わせることによって、
上板材の周辺部と平板な下板材とが密着して、内部に空洞部を形成するように、第1嵌合部によって、正確に位置決めされる。
【0041】
次にこの発明の板型ヒートパイプの製造方法を説明する。
この発明の板型ヒートパイプの製造方法は、下記からなっている。
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
コンテナの2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
コンテナおよび伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
第1嵌合部および第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する。
【0042】
上述した第1嵌合部は、第1孔部と第1凸部からなっており、第1孔部に第1凸部を挿入し、第1凸部をカシメて固定する。上述した第2嵌合部は、第2孔部と第2凸部からなっており、第2孔部と第2凸部は弾性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合され、位置決めされる。即ち、第1嵌合部の嵌合固定は、塑性変形を伴い、第2嵌合部の嵌合固定は、塑性変形を伴わない。
【0043】
更に、伝熱板材とコンテナとを接合するに先だって、コンテナの2枚の板材と2枚の伝熱板材とを貫通する(共通)貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを装入して、貫通ピンをカシメる。即ち、上述した第1嵌合部は位置決め用の第1孔部に第1凸部を挿入し、第1凸部をカシメて固定するのに対して、上述した第2嵌合部は、位置決め用の第2孔部に第2凸部を挿入し、その状態で、上述したように、コンテナの2枚の板材と2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを装入して、貫通ピンをカシメる。
【0044】
このようにコンテナの2枚の板材が第1嵌合部によって位置決めされカシメ固定され、伝熱板材とコンテナとが第2嵌合部によって位置決めされ、貫通孔部と貫通ピンとからなるカシメ固定部によって、コンテナと伝熱板材とが固定された状態で、更に、図12に示すように、その上におもりを載せて、ブレージングを行って、コンテナと伝熱板材とが一体化された板型ヒートパイプを製造する。
【0045】
この発明の板型ヒートパイプによると、上述したように、4枚板材からなる板型ヒートパイプにおいて、コンテナを形成する2枚の板材の一方に凸部、他方に孔部を設け、凸部を孔部に組み付けて凸部をカシメ固定し、次いで、コンテナには凸部、開口部を備えた伝熱板材には孔部を設け、凸部を孔部に挿入して、コンテナを形成する2枚の板材および2枚の伝熱板材を位置決めし、更に、4枚の板材に貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを指し込み、上下方向から貫通ピンをカシメ固定するので、位置決め用の凸部、孔部が離れることが無いので、作業性が向上する。更に、コンテナを形成する板材には、伝熱板材に向かって突出した支え部があるので、伝熱板材が接合時に変形する(だれる)のを防止することができ、更に、4枚の板材が所定の位置に固定されているので、平面方向の寸法が安定する。
【0046】
更に、4枚の板材が固定された状態で、おもりを全体的に荷重が加わるように載せてブレージングするので、安定した形状の板型ヒートパイプを製造することができる。おもりは、板型ヒートパイプのサイズに応じてその形状を変えることができるので、熱容量の調整が可能であり、最適で安定した寸法、ろう付け状態を得ることができる。
この発明の板型ヒートパイプにおいては、板型ヒートパイプの上板材に伝熱板材がろう付け等によって接合され、更に、板型ヒートパイプの下板材に別の伝熱板材がろう付け等によって接合されている。板型ヒートパイプの上板材および下板材はろう付け等によって接合され、その中に作動流体が封入された密閉された空洞部を形成している。
【0047】
従って、伝熱板材、板型ヒートパイプの上板材、板型ヒートパイプの下板材、伝熱板材が一体的に形成され、伝熱板材と、板型ヒートパイプの上板材との間の熱抵抗を小さくすることができ、更に、板型ヒートパイプの下板材と伝熱板材との間の熱抵抗を小さくすることができる。
板型ヒートパイプと一体的に形成された伝熱板材の上方には、プリント基板が当接され、固定される。プリント基板の下方には、複数の電子部品端子突起部(リード端子)が下方に向かって突き出している。伝熱板材の厚さは、電子部品端子突起部の高さよりも大きいことが必要である。
伝熱板材には、プリント基板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、突起部に対応した凹部(または開口部)が設けられている。
プリント基板の熱によって板型ヒートパイプのコンテナ内に収容された作動流体が蒸発し、所定の位置に速やかに移動される。更に、凝縮した作動流体が速やかに還流して、再度、プリント基板の熱を極めて効率的に放熱する。
【0048】
更に、板型ヒートパイプの上板材と一体的に接合された伝熱板材とプリント基板との間に熱伝導絶縁シートを設けることによって、板型ヒートパイプの上板材と一体的に接合された伝熱板材とプリント基板との間の絶縁が確保される。
伝熱板材は、熱伝導性に優れた部材、例えば、アルミニウム、その他の金属材料からなっている。伝熱板材の材質は、板型ヒートパイプの上板材、下板材と同一材質が好ましい。エンボス加工が施された中心部は、板型ヒートパイプの下板材と、ろう付け等によって接合されている。従って、作動流体の蒸発に伴う圧力に対して板型ヒートパイプの強度を高めることができる。
【0049】
両面に、伝熱板材を接合する態様について述べたが、何れか一方のみに伝熱板材を接合してもよい。
板型ヒートパイプは、密封された空洞部を備えており、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の輸送が行われる。熱の一部は、板型ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を直接伝わって運ばれるが、大部分の熱は、作動流体による相変態と移動によって移動される。
【0050】
板型ヒートパイプの吸熱側において、発熱電子部品から伝わった熱は、板型ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気が板型ヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。そして、液相に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって、熱の移動がなされる。
【0051】
板型ヒートパイプ内の作動流体としては通常、水や水溶液、アルコール、その他有機溶剤等が使用される。特殊な用途としては水銀を作動流体に用いる場合もある。前述したように板型ヒートパイプは内部の作動流体の相変態等の作用を利用するものであるので、密封された内部への作動流体以外のガス等の混入をなるべく避けるように製造されることになる。このような混入物は、通常、製造途中に混入する大気(空気)や作動流体中に溶在している炭酸ガス等である。板型ヒートパイプの形状は、使用目的に応じて、任意に選定することができる。更に、板型ヒートパイプで移動した熱を放熱フィンまたはファン等を使用して強制的に冷却してもよい。
【0052】
この発明の板型ヒートパイプのコンテナの材質は、銅またはアルミニウム等の熱伝導の良好な金属を使用することができる。変形加工する場合、加工性に優れたアルミニウム材が好ましい。
更に、この発明の板型ヒートパイプにおいて、コンテナ内にウイックが設けられていてもよい。
【0053】
【発明の効果】
上述したように、この発明によると、コンテナを形成する板材、伝熱板材が位置決め固定されて、接合されるので、ズレ等が生じることなく、伝熱板材とコンテナが一体的に接合され、プリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる、電気接続箱等の電子装置において使用される板型ヒートパイプを提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の上方からみた斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したこの発明の板型ヒートパイプの1つの態様の下方からみた斜視図である。
【図3】図3は、この発明の板型ヒートパイプを説明する分解図である。
【図4】図4は、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して上方から示す図である。
【図5】図5は、図4に対し反対方向から見た図であり、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して下方から示す図である。
【図6】図6は、第1嵌合部の細部を示す図である。
【図7】図7は、第1嵌合部の細部を示す図である。
【図8】図8は、貫通孔部に挿入された貫通ピンがカシメられて、コンテナおよび伝熱板材が固定された状態を示す図である。
【図9】図9は、図8の部分断面図である。
【図10】図10は、貫通孔部に挿入された貫通ピンをカシメた図である。
【図11】図11は、伝熱板材を支える第3凸部を示す図である。
【図12】図12は、おもりを載せて板型ヒートパイプを製造する方法を示す図である。
【符号の説明】
1.板型ヒートパイプ
2.コンテナ
3.伝熱板材
4.伝熱板材
5.コンテナの上板材
6.コンテナの下板材
7.作動流体注入口
8.第2嵌合部
9.貫通孔部
10.開口部
11.第1凸部
12.第1孔部
13.第2孔部
14.第2凸部
15.第3凸部
17.おもり
18.おもり
19.貫通ピン
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板型ヒートパイプ、特に、車両等の環境(熱、振動等)に厳しい部位に搭載される電気接続箱において使用される板型ヒートパイプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の快適性に対するニーズの高まりに伴い、車両に搭載される電装品は増加する傾向にある。具体的には、例えば、オーディオ、ナビゲーション、テレビ、電動アンテナ、エアコン、リヤウインドウヒータ、シートヒータ、パワーシート、サスペンションの硬さ制御装置等の様々な電装品が車両に搭載されるようになっている。
【0003】
これらの電装品への電源供給は、エンジンルームのバッテリ近傍等に取り付けられた電気接続箱を経由して供給される。なお、電気接続箱には、ワイヤハーネスのボディとの短絡時やモータ等の負荷の故障時に車両火災の発生を阻止するヒューズや、運転席近傍の操作スイッチ等と連動して電装品への電源供給を制御するリレー等が搭載されている。
【0004】
電気接続箱には、フューズホルダFH、リレーRL、CPU等の電気部品およびこれらと導通した回路パターンが実装されたプリント基板、熱伝導性絶縁シート、金属スペーサ、ヒートパイプが組み付けられている。特開2001−119838号公報(以下、先行技術1という)に開示されているように、熱伝導性絶縁シートと金属スペーサが一体的に形成され、このように放熱シート付金属スペーサの吸熱部が偏平形状のヒートパイプに重ね合わされて電気接続箱に組み入れられることが開示されている。先行技術1によると、リレー、ヒューズ、CPU等の電気部品やこれと導通した回路パターンでの発熱がプリント基板で均熱化され、放熱シート付金属スペーサを介してヒートパイプに放熱される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した放熱シート付金属スペーサとヒートパイプとを密着させるための組立て作業が必要であり、更に、耐振性に劣るという問題点がある。
【0006】
従って、この発明の目的は、上述した従来の問題点を解決して、コンテナを形成する板材、伝熱板材が、ズレ等が生じることなく一体的に接合され、プリント基板(搭載される電子部品を含む)の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる、電気接続箱等の電子装置において使用される板型ヒートパイプを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、
先ず、別々に調製し、密着させて組立てている伝熱板材(即ち、金属スペーサ)とコンテナを接合して一体化することによって、伝熱板材とコンテナとを密着させるための組立て作業が不用になり、部品数を少なくして熱抵抗を小さくし、更に、耐振性を向上させることができることが判明した。更に、コンテナを2枚の板材によって形成するときには、2枚の板材の一方の板材に凸部、他方の板材に孔部を設け、このように形成された位置決め用の孔部に凸部を装入してカシメ、次いで、コンテナと伝熱板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の、例えば、凸部と凹部とからなる嵌合部を設け、凸部を凹部に(塑性変形を伴うこと無く)圧入固定し、更にコンテナと伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、貫通ピンを挿入してカシメることによって、位置ずれを起こすことなく、コンテナと伝熱板材が容易に接合されることが判明した。
【0008】
この発明は、上述した研究結果に基づいてなされたものであって、この発明の板型ヒートパイプの第1の態様は、密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0009】
この発明の板型ヒートパイプの第2の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部の対、または、凸部および孔部の対からなっている、板型ヒートパイプである。
【0010】
この発明の板型ヒートパイプの第3の態様は、前記コンテナが上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって一体形成されたコンテナからなっている、板型ヒートパイプである。
【0011】
この発明の板型ヒートパイプの第4の態様は、少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入される密閉されたコンテナと、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0012】
この発明の板型ヒートパイプの第5の態様は、少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される多孔管形状に形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第2嵌合部とを備え、
前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。
【0013】
この発明の板型ヒートパイプの第6の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、板型ヒートパイプである。
【0014】
この発明の板型ヒートパイプの第7の態様は、前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部と前記貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、前記貫通ピンをカシメて、前記コンテナと前記伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている、板型ヒートパイプである。
【0015】
この発明の板型ヒートパイプの第8の態様は、前記伝熱板材に開口部が設けられ、前記開口部がプリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している、板型ヒートパイプである。
【0016】
この発明の板型ヒートパイプの第9の態様は、前記接合がブレージングによって行われる、板型ヒートパイプである。
【0017】
この発明の板型ヒートパイプの第10の態様は、前記コンテナの前記2枚の板材の一方にエンボス加工が施され、前記エンボス加工が施された前記板材の前記伝熱板材と接続される面に、前記伝熱板材を支える第3凸部を備えている、板型ヒートパイプである。
【0018】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第1の態様は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0019】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第2の態様は、前記コンテナの前記2枚の板材と前記2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0020】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第3の態様は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0021】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第4の態様は、前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0022】
この発明の板型ヒートパイプの製造方法の第5の態様は、前記伝熱板材および前記コンテナを接合する際に、前記コンテナおよび前記伝熱板材におもりを載せて接合を行う、板型ヒートパイプの製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
この発明の板型ヒートパイプおよびその製造方法の態様について図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の板型ヒートパイプは、密閉された空間を形成するコンテナと、コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、コンテナおよび伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた位置決め用の嵌合部とを備え、嵌合部を嵌合固定して、伝熱板材と作動流体が封入されているコンテナが接合された板型ヒートパイプである。
【0024】
嵌合部は、例えば、1対の凸部と凹部との組合わせ、または、1対の凸部と孔部との組合わせからなっている。即ち、上述した態様においては、コンテナに位置決め用の凸部を形成し、伝熱板材に対応する凹部を形成して、このように形成された凸部と凹部とを組合わせて、圧入固定する。圧入固定とは、カシメのように塑性変形を伴わず、弾性変形域において凹部に凸部を圧しながら挿入して固定することを意味する。嵌合固定は、上述した圧入固定やカシメ固定の意味を含み、かつ、カシメのように塑性変形を伴わず、弾性変形域を含み、必ずしも圧する必要なく、例えば、凹部と凸部とを嵌め合わせて固定することをも意味する。
コンテナは、例えば、上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって、作動流体の流路(流路数は任意に設けられる)を含めて一体形成されたコンテナからなっている。
【0025】
上下2枚の板材によって形成されたコンテナを使用する、この発明の板型ヒートパイプは、少なくとも1枚の伝熱板材と、伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、コンテナの2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、コンテナおよび伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、第1嵌合部をカシメ固定し、第2嵌合部を嵌合固定して、伝熱板材およびコンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプである。カシメ固定は、例えば、凹部に凸部を挿入し、凸部を塑性変形によってカシメて、固定することを意味する。
【0026】
図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の上方からみた斜視図である。図1に示すように、この発明の板型ヒートパイプ1は、上板材5、下板材6の2枚の板材によって形成されたその中に作動流体が封入され密閉されたコンテナ2と、コンテナの表面および裏面に熱的に接続された伝熱板材3、4とを備えている。コンテナを形成する2枚の板材には、(後述する)位置決め用の、第1孔部および第1凸部からなる第1嵌合部が設けられ、第1孔部に第1凸部を挿入して、塑性変形を伴うカシメによって、2枚の板材が、接合に先立ち、カシメ固定される。
【0027】
第1嵌合部は少なくとも1個、好ましくは2個以上形成される。なお、第1孔部、第1凸部は何れの板材に形成しても良く、孔部と凸部が対になるように対応する位置に設けられれば良い。上述したように、コンテナを形成する2枚の板材(上板材、下板材)は、塑性変形を伴うカシメによって、カシメ固定される。コンテナ2には、耐圧強度を高めるためのエンボス加工16が施されている。第1嵌合部は、上述した他に、第1凸部とそれに対応する第1凹部からなっていてもよい。
【0028】
更に、このように固定されたコンテナ2と、少なくとも1枚の伝熱板材3、4とが、(後述する)位置決め用の、第2孔部と第2凸部とからなる第2嵌合部8によって固定される。第2嵌合部は第2凸部とそれに対応する第2凹部からなっていてもよい。コンテナと伝熱板材とを固定する第2嵌合部においては、第2孔部と第2凸部または第2凸部と第2凹部とが、塑性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合される。従って、第2嵌合部においては、塑性変形をともなうカシメは行われず、例えば、第2凸部が第2凹部に圧入固定される。
【0029】
図2は、図1に示したこの発明の板型ヒートパイプの1つの態様の下方からみた斜視図である。図2に示すように、コンテナを形成する下板材の一方の端部に作動流体注入口7が設けられている。この態様の板型ヒートパイプには上板材5および下板材6のそれぞれに対応して伝熱板材3、4が、上述した第2嵌合部によって圧入固定されている。
【0030】
図3は、この発明の板型ヒートパイプを説明する分解図である。図3(a)に全体を、図3R>3(b)に第1嵌合部の拡大したものを、図3(c)に第2嵌合部の拡大したものをそれぞれ示す。図3に示すように、この発明の板型ヒートパイプ1は、エンボス加工が施された上板材5、および、下板材6の2枚の板材によって形成されたその中に作動流体が封入され密閉されたコンテナ2と、コンテナの表面および裏面に熱的に接続された伝熱板材3、4とを備えている。コンテナを形成する上板材および下板材には、位置決め用の、第1孔部12および第1凸部11からなる第1嵌合部が設けられている。第1嵌合部はコンテナの両端部にそれぞれ設けられている。更に、下板材の一方の端部には作動流体注入口7が設けられている。作動流体注入口7に対応する上板材の部位は、空洞部が形成されるように凸形に延伸されている。上板材の両端部に設けられた第1孔部に、下板材の両端部に設けられた対応する第1凸部を挿入して、塑性変形を伴うカシメによって、上板材および下板材の2枚の板材が、接合に先立ち、カシメ固定される。
【0031】
上述したように、第1嵌合部は少なくとも1個、好ましくは2個以上形成される。なお、第1孔部、第1凸部は何れの板材に形成しても良く、孔部と凸部が対になるように対応する位置に設けられれば良い。第1嵌合部は、上述した他に、第1凸部とそれに対応する第1凹部からなっていてもよい。図6および図7に第1嵌合部の詳細を示す。図6に示すように、第1嵌合部は第1孔部および第1凸部からなっている。即ち、下板材6に形成された第1凸部11に上板材5に形成された第1孔部12が嵌合されて、位置決めされる。図7R>7に示すように、このように嵌合された第1嵌合部の第1凸部がカシメられて横方向に拡大して、上板材と下板材とが固定される。
【0032】
更に、このように固定されたコンテナ2と、伝熱板材3、4とが、位置決め用の、第2孔部13と第2凸部14とからなる第2嵌合部によって固定される。上述したように第2嵌合部は第2凸部とそれに対応する第2凹部からなっていてもよい。更に、コンテナ2と伝熱板材3、4とを固定する第2嵌合部においては、第2孔部13と第2凸部14または第2凸部と第2凹部とが、塑性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合される。従って、第2嵌合部においては、塑性変形をともなうカシメは行われず、例えば、第2凸部14が第2孔部13にに圧入固定される。
【0033】
更に、図3に示すように、コンテナを形成する上板材5、下板材6、伝熱板材3、4を貫通する貫通孔部9が設けられている。貫通孔部には貫通ピンが挿入される。即ち、上述した2枚の板材によって形成されるコンテナを備えたこの発明の板型ヒートパイプにおいては、コンテナを形成する2枚の板材は第1嵌合部において、位置決めされ、カシメ固定され、コンテナと伝熱板材は、第2嵌合部において位置決めされ、後述するように、貫通孔部に挿入された貫通ピンをカシメて、固定される。
【0034】
伝熱板3、4は、プリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、電気部品端子突起部に対応している開口部10を有している。即ち、プリント基板の板面から下方に突出する突起部と、伝熱板材が接触しないように、電気部品の端子の配置に合わせて、予め開口部が形成されている。
【0035】
更に、図3に示すように、コンテナには、エンボス加工が施された上板材の伝熱板材と接続される面に、伝熱板材を支える第3凸部15を備えている。その詳細を図11に示す。図11に示すように、上板材の4隅に、伝熱板材の方向に膨らんで形成された第3凸部15が設けられている。このように第3凸部を設けることによって、伝熱板の4隅を支え、ブレージング等の熱処理によって伝熱板材が下方に向かって変形する(ダレる)のを防止することができる。従って、伝熱板材におけるプリント基板との接触面の平面度を維持することができ、熱抵抗を小さくすることができる。
【0036】
更に、この発明の板型ヒートパイプは、コンテナと2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部と貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、貫通ピンをカシメて、コンテナと伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている。即ち、図3に示すように、伝熱板の端部およびコンテナの端部、例えば4隅に貫通孔9が形成されている。図9および図10にその詳細を示す。
【0037】
図9は図8の部分断面図である。図9に示すように、重ね合わされた伝熱板材3、コンテナを形成する上板材5、下板材6および伝熱板材4を貫通するように形成された貫通孔部9に、貫通ピン19を挿入する。次いで、図10に示すように、貫通孔部9に挿入された貫通ピン19の中心部をカシメると、貫通ピンが上下方向から圧迫されて、中心部から円周部方向に放射状に力が加わり、伝熱板材3、コンテナを形成する上板材5、下板材6および伝熱板材4が、重ね合わされた状態で正確に固定される。図8に貫通孔部に挿入された貫通ピンがカシメられた状態を示す。図8に示すように、伝熱板材3、上板材5および下板材6からなるコンテナ2が、貫通孔部に挿入されカシメられた貫通ピンによって固定されている。
【0038】
このように、位置決め用の、第1孔部12および第1凸部11からなる第1嵌合部によってコンテナを形成する上板材5および下板材6がその内部に空洞部を形成するように位置決めされて、カシメ固定され、このように固定されたコンテナ2と、開口部を有する伝熱板材3、4とが、位置決め用の、第2孔部13と第2凸部14とからなる第2嵌合部によって嵌合固定され、コンテナの上板材の伝熱板材と接触する面に形成された、伝熱板材を支える第3凸部15によって伝熱板材が支えられ、更に、コンテナと2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部と貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなるカシメ固定部によって、貫通ピンがカシメられて、コンテナと伝熱板材とが固定された状態で、ブレージングによって接合が行われる。
【0039】
図1から図3において説明したこの発明の板型ヒートパイプのコンテナを更に詳細に説明する。図4は、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して上方から示す図である。上板材5にはエンボス加工が施され、両端部(即ち、コンテナの封じ切り部を備えた一方の端部およびコンテナの延伸部の他方の端部)にはそれぞれ位置決め用の第1嵌合部の第1孔部が設けられている。更に、コンテナの4隅には、伝熱板の4隅を支える第3凸部15が設けられている。
【0040】
下板材6は、平板な板材からなっており、下板材6の両端部には、位置決め用の第1嵌合部の第1凸部が設けられている。下板材6の一方の端部に、更に、作動流体注入口7が設けられている。図5は、図4に対し反対方向から見た図であり、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して下方から示す図である。図5に示すように、上板材5は、エンボス加工が施され、空洞部を形成するように、周辺部と凸部からなっている。このように形成された上板材および下板材を組み合わせることによって、
上板材の周辺部と平板な下板材とが密着して、内部に空洞部を形成するように、第1嵌合部によって、正確に位置決めされる。
【0041】
次にこの発明の板型ヒートパイプの製造方法を説明する。
この発明の板型ヒートパイプの製造方法は、下記からなっている。
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
コンテナの2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
コンテナおよび伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
第1嵌合部および第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する。
【0042】
上述した第1嵌合部は、第1孔部と第1凸部からなっており、第1孔部に第1凸部を挿入し、第1凸部をカシメて固定する。上述した第2嵌合部は、第2孔部と第2凸部からなっており、第2孔部と第2凸部は弾性変形を伴わず、弾性変形域において嵌合され、位置決めされる。即ち、第1嵌合部の嵌合固定は、塑性変形を伴い、第2嵌合部の嵌合固定は、塑性変形を伴わない。
【0043】
更に、伝熱板材とコンテナとを接合するに先だって、コンテナの2枚の板材と2枚の伝熱板材とを貫通する(共通)貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを装入して、貫通ピンをカシメる。即ち、上述した第1嵌合部は位置決め用の第1孔部に第1凸部を挿入し、第1凸部をカシメて固定するのに対して、上述した第2嵌合部は、位置決め用の第2孔部に第2凸部を挿入し、その状態で、上述したように、コンテナの2枚の板材と2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを装入して、貫通ピンをカシメる。
【0044】
このようにコンテナの2枚の板材が第1嵌合部によって位置決めされカシメ固定され、伝熱板材とコンテナとが第2嵌合部によって位置決めされ、貫通孔部と貫通ピンとからなるカシメ固定部によって、コンテナと伝熱板材とが固定された状態で、更に、図12に示すように、その上におもりを載せて、ブレージングを行って、コンテナと伝熱板材とが一体化された板型ヒートパイプを製造する。
【0045】
この発明の板型ヒートパイプによると、上述したように、4枚板材からなる板型ヒートパイプにおいて、コンテナを形成する2枚の板材の一方に凸部、他方に孔部を設け、凸部を孔部に組み付けて凸部をカシメ固定し、次いで、コンテナには凸部、開口部を備えた伝熱板材には孔部を設け、凸部を孔部に挿入して、コンテナを形成する2枚の板材および2枚の伝熱板材を位置決めし、更に、4枚の板材に貫通孔部を設け、貫通孔部に貫通ピンを指し込み、上下方向から貫通ピンをカシメ固定するので、位置決め用の凸部、孔部が離れることが無いので、作業性が向上する。更に、コンテナを形成する板材には、伝熱板材に向かって突出した支え部があるので、伝熱板材が接合時に変形する(だれる)のを防止することができ、更に、4枚の板材が所定の位置に固定されているので、平面方向の寸法が安定する。
【0046】
更に、4枚の板材が固定された状態で、おもりを全体的に荷重が加わるように載せてブレージングするので、安定した形状の板型ヒートパイプを製造することができる。おもりは、板型ヒートパイプのサイズに応じてその形状を変えることができるので、熱容量の調整が可能であり、最適で安定した寸法、ろう付け状態を得ることができる。
この発明の板型ヒートパイプにおいては、板型ヒートパイプの上板材に伝熱板材がろう付け等によって接合され、更に、板型ヒートパイプの下板材に別の伝熱板材がろう付け等によって接合されている。板型ヒートパイプの上板材および下板材はろう付け等によって接合され、その中に作動流体が封入された密閉された空洞部を形成している。
【0047】
従って、伝熱板材、板型ヒートパイプの上板材、板型ヒートパイプの下板材、伝熱板材が一体的に形成され、伝熱板材と、板型ヒートパイプの上板材との間の熱抵抗を小さくすることができ、更に、板型ヒートパイプの下板材と伝熱板材との間の熱抵抗を小さくすることができる。
板型ヒートパイプと一体的に形成された伝熱板材の上方には、プリント基板が当接され、固定される。プリント基板の下方には、複数の電子部品端子突起部(リード端子)が下方に向かって突き出している。伝熱板材の厚さは、電子部品端子突起部の高さよりも大きいことが必要である。
伝熱板材には、プリント基板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、突起部に対応した凹部(または開口部)が設けられている。
プリント基板の熱によって板型ヒートパイプのコンテナ内に収容された作動流体が蒸発し、所定の位置に速やかに移動される。更に、凝縮した作動流体が速やかに還流して、再度、プリント基板の熱を極めて効率的に放熱する。
【0048】
更に、板型ヒートパイプの上板材と一体的に接合された伝熱板材とプリント基板との間に熱伝導絶縁シートを設けることによって、板型ヒートパイプの上板材と一体的に接合された伝熱板材とプリント基板との間の絶縁が確保される。
伝熱板材は、熱伝導性に優れた部材、例えば、アルミニウム、その他の金属材料からなっている。伝熱板材の材質は、板型ヒートパイプの上板材、下板材と同一材質が好ましい。エンボス加工が施された中心部は、板型ヒートパイプの下板材と、ろう付け等によって接合されている。従って、作動流体の蒸発に伴う圧力に対して板型ヒートパイプの強度を高めることができる。
【0049】
両面に、伝熱板材を接合する態様について述べたが、何れか一方のみに伝熱板材を接合してもよい。
板型ヒートパイプは、密封された空洞部を備えており、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の輸送が行われる。熱の一部は、板型ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を直接伝わって運ばれるが、大部分の熱は、作動流体による相変態と移動によって移動される。
【0050】
板型ヒートパイプの吸熱側において、発熱電子部品から伝わった熱は、板型ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気が板型ヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却され再び液相状態に戻る。そして、液相に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって、熱の移動がなされる。
【0051】
板型ヒートパイプ内の作動流体としては通常、水や水溶液、アルコール、その他有機溶剤等が使用される。特殊な用途としては水銀を作動流体に用いる場合もある。前述したように板型ヒートパイプは内部の作動流体の相変態等の作用を利用するものであるので、密封された内部への作動流体以外のガス等の混入をなるべく避けるように製造されることになる。このような混入物は、通常、製造途中に混入する大気(空気)や作動流体中に溶在している炭酸ガス等である。板型ヒートパイプの形状は、使用目的に応じて、任意に選定することができる。更に、板型ヒートパイプで移動した熱を放熱フィンまたはファン等を使用して強制的に冷却してもよい。
【0052】
この発明の板型ヒートパイプのコンテナの材質は、銅またはアルミニウム等の熱伝導の良好な金属を使用することができる。変形加工する場合、加工性に優れたアルミニウム材が好ましい。
更に、この発明の板型ヒートパイプにおいて、コンテナ内にウイックが設けられていてもよい。
【0053】
【発明の効果】
上述したように、この発明によると、コンテナを形成する板材、伝熱板材が位置決め固定されて、接合されるので、ズレ等が生じることなく、伝熱板材とコンテナが一体的に接合され、プリント基板の発熱を筐体外に効率的に放熱することができる、電気接続箱等の電子装置において使用される板型ヒートパイプを提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の板型ヒートパイプの1つの態様の上方からみた斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したこの発明の板型ヒートパイプの1つの態様の下方からみた斜視図である。
【図3】図3は、この発明の板型ヒートパイプを説明する分解図である。
【図4】図4は、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して上方から示す図である。
【図5】図5は、図4に対し反対方向から見た図であり、コンテナを形成する上板材および下板材の2枚の板材を分解して下方から示す図である。
【図6】図6は、第1嵌合部の細部を示す図である。
【図7】図7は、第1嵌合部の細部を示す図である。
【図8】図8は、貫通孔部に挿入された貫通ピンがカシメられて、コンテナおよび伝熱板材が固定された状態を示す図である。
【図9】図9は、図8の部分断面図である。
【図10】図10は、貫通孔部に挿入された貫通ピンをカシメた図である。
【図11】図11は、伝熱板材を支える第3凸部を示す図である。
【図12】図12は、おもりを載せて板型ヒートパイプを製造する方法を示す図である。
【符号の説明】
1.板型ヒートパイプ
2.コンテナ
3.伝熱板材
4.伝熱板材
5.コンテナの上板材
6.コンテナの下板材
7.作動流体注入口
8.第2嵌合部
9.貫通孔部
10.開口部
11.第1凸部
12.第1孔部
13.第2孔部
14.第2凸部
15.第3凸部
17.おもり
18.おもり
19.貫通ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項1に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記コンテナが上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって一体形成されたコンテナからなっている、請求項1または2に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項4】
少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入される密閉されたコンテナと、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項5】
少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第2嵌合部とを備え、
前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項4または5に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部と前記貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、前記貫通ピンをカシメて、前記コンテナと前記伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている、請求項4から6の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項8】
前記伝熱板材に開口部が設けられ、前記開口部がプリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している、請求項1から7の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項9】
前記接合がブレージングによって行われる、請求項1から8の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項10】
前記コンテナの前記2枚の板材の一方にエンボス加工が施され、前記エンボス加工が施された前記板材の前記伝熱板材と接続される面に、前記伝熱板材を支える第3凸部を備えている、請求項4に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項11】
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項12】
前記コンテナの前記2枚の板材と前記2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、請求項11に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項13】
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項14】
前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、請求項13に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項15】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項11または13に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項16】
前記伝熱板材および前記コンテナを接合する際に、前記コンテナおよび前記伝熱板材におもりを載せて接合を行う、請求項11から15の何れか1項に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項1】
密閉された空間を形成するコンテナと、
前記コンテナに熱的に接続される少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の嵌合部とを備え、
前記嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と作動流体が封入されている前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項1に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記コンテナが上下2枚の板材によって形成されたコンテナ、または、部材の押し出し加工によって一体形成されたコンテナからなっている、請求項1または2に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項4】
少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入される密閉されたコンテナと、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第1嵌合部と、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた位置決め用の少なくとも1個の第2嵌合部とを備え、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項5】
少なくとも1枚の伝熱板材と、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入されている密閉されたコンテナと、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に設けられた少なくとも1個の位置決め用の第2嵌合部とを備え、
前記第2嵌合部を嵌合固定して、接合し、前記伝熱板材と前記コンテナが一体的に接合された板型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項4または5に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部と前記貫通孔部に挿入される貫通ピンとからなり、前記貫通ピンをカシメて、前記コンテナと前記伝熱板材とを固定することができるカシメ固定部を更に備えている、請求項4から6の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項8】
前記伝熱板材に開口部が設けられ、前記開口部がプリント基板の板面から突出する電気部品端子突起部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している、請求項1から7の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項9】
前記接合がブレージングによって行われる、請求項1から8の何れか1項に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項10】
前記コンテナの前記2枚の板材の一方にエンボス加工が施され、前記エンボス加工が施された前記板材の前記伝熱板材と接続される面に、前記伝熱板材を支える第3凸部を備えている、請求項4に記載の板型ヒートパイプ。
【請求項11】
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される2枚の板材によって形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナの前記2枚の板材の一方の板材および他方の板材のそれぞれ対応する部位に位置決め用の第1嵌合部を設け、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第1嵌合部をカシメ固定し、前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項12】
前記コンテナの前記2枚の板材と前記2枚の伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、請求項11に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項13】
プリント基板の板面から突出する電気部品端子凸部との接触を避けるための、前記電気部品端子突起部に対応している開口部を有する少なくとも1枚の伝熱板材を調製し、
前記伝熱板材が熱的に接続される部材の押し出し加工によって一体形成された、その中に作動流体が封入され密閉されるコンテナを調製し、
前記コンテナおよび前記伝熱板材のそれぞれに対応する部位に位置決め用の第2嵌合部を設け、
前記第2嵌合部を嵌合固定し、
このように固定された前記伝熱板材と前記コンテナとを接合し、
前記コンテナに作動流体を封入して密閉して板型ヒートパイプを調製する、板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項14】
前記コンテナと2枚の前記伝熱板材とを貫通する貫通孔部を設け、前記貫通孔部に貫通ピンを装入して、前記貫通ピンをカシメる工程を更に備えている、請求項13に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項15】
前記嵌合部が凸部および凹部、または、凸部および孔部からなっている、請求項11または13に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【請求項16】
前記伝熱板材および前記コンテナを接合する際に、前記コンテナおよび前記伝熱板材におもりを載せて接合を行う、請求項11から15の何れか1項に記載の板型ヒートパイプの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2004−76951(P2004−76951A)
【公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−233374(P2002−233374)
【出願日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(593030439)株式会社ニッケイ加工 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(593030439)株式会社ニッケイ加工 (1)
【Fターム(参考)】
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