説明

板材反転装置

【課題】上面が裏面である板材に対しては反転させ、上面が表面である板材に対しては反転させることなく、搬送できて、作業者自身の手作業でなく、自動化を可能とした板材反転装置を提供する。
【解決手段】板材1をその幅方向に沿って搬送する搬送手段2と、搬送手段2に搬送されている板材1の表裏を判別する表裏判別手段3と、搬送手段2にて搬送されている板材1を所定搬送範囲内で挟持する板材挟持手段4と、板材挟持手段4の少なくとも板材挟持部5を180°反転させる反転手段6と、表裏判別手段3にて上面が表面となっていると判別された板材1を板材挟持手段4による板材挟持位置7から回避させる回避手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材(板状に加工された木材)の上面が表面となるように搬送する板材反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材において、年輪の目に沿うように接線方向に切り出した板の表面に現れる木目を板目と呼ぶ。木目は柾目のように整った縞模様とはならず、不規則な曲線模様となる。板目の板には裏表があり、切り出しの際に外辺部側に面していた方が表面、中心部側に面していた方が裏面となる。木口を見るとカタカナの「ハ」の字状に目が走っているが、ハの字の狭い方が表、広い方が裏となる。
【0003】
板状に切り出された木材は乾燥することで反りが生じる。この反りは、木材の木口面(丸太状の材木を横切りにした年輪が現れる面)に描かれる湾曲した年輪の線が真っ直ぐになるように生じ、板状の木材を、表裏を上下にして木口面から見た場合に、年輪の中心となる芯が上方に位置して現れていれば、端部が下方を向くように、つまり上凸状として反り、逆に芯が下方に位置していれば、端部が上方を向くように、つまり下凸状として反りが発生するものである。
【0004】
そのため、板状に切り出された木材の表裏が所望する向きとなるように、搬送する必要がある。このような搬送装置には、チェーンコンベアを用いたものがある(特許文献1)。特許文献1に記載の搬送装置は、無端(エンドレス)チェーンに、木材に穿刺可能な突起を設けたものである。すなわち、チェーン状に載置された木材に突起が食い込んで、木材に揺動を規制しながら、搬送するものである。
【特許文献1】特開2004−99271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、前記特許文献1に記載の搬送装置では、安定した板材の搬送が可能であるが、板材に突起が食い込むものであるので、板材を痛め易い。しかも、この搬送装置にて搬送した後、他の搬送手段等に移送する場合、板材には突起が食い込んでおり、移送を滑らかに行うことができない。
【0006】
特に、前記したように、板材には表裏があるので、このような搬送装置では、上面が表面となるように搬送する必要がある。すなわち、上面が裏面となっている板材に対しては、上下反転させる必要があった。しかしながら、従来では、手作業により修正しなければならず、長尺で重い木材を高速で搬送しながら修正作業を行う。このため、重労働であり、作業者に与える負担が大きく、自動化が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、上面が裏面である板材に対しては反転させ、上面が表面である板材に対しては反転させることなく、搬送できて、作業者自身の手作業でなく、自動化を可能とした板材反転装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の板材反転装置は、板材をその幅方向に沿って搬送する搬送手段と、搬送手段に搬送されている板材の表裏を判別する表裏判別手段と、搬送手段にて搬送されている板材を所定搬送範囲内で挟持する板材挟持手段と、板材挟持手段の少なくとも板材挟持部を180°反転させる反転手段と、表裏判別手段にて上面が表面となっていると判別された板材を前記板材挟持手段による板材挟持位置から回避させる回避手段とを備えたものである。
【0009】
本発明の板材反転装置によれば、表裏判別手段にて上面が裏面となっていると判断された場合、回避手段が作動せず、上面が裏面となっている板材が所定搬送範囲内に入れば、板材挟持手段にてこの板材を挟持することになる。板材挟持手段にて板材が挟持されれば、反転手段を介して、板材挟持手段の板材挟持部が180°反転する。これによって、上面が裏面となっている板材が180°反転して上面が表面となる。また、表裏判別手段にて上面が表面となっていると判断された場合、回避手段にて、この板材を板材挟持手段による板材挟持位置から回避させることになる。このため、上面が表面となっていると判断された板材は、板材挟持手段にて挟持されることなく、そのままの姿勢を維持しながら、所定搬送範囲を搬送される。すなわち、搬送手段の上流側から下流側へ搬送された板材は、搬送手段の下流側において、全ての板材は上面が表面となっている。また、板材は、所定搬送範囲から出れば、板材挟持手段による板材の挟持が解除されているので、この板材反転装置からの他の装置への移送が容易となる。
【0010】
搬送手段は、複数の搬送用テーブル台と、搬送用テーブル台間に配設されるエンドレス状の複数のチェーンコンベアとを備え、チェーンコンベアに係止片を設け、チェーンコンベアの駆動により、チェーンコンベアの係止片が板材に係止して、搬送用テーブル台上を板材が走行する。これによれば、板材を傷めることなく安定して搬送することができる。
【0011】
表裏判別手段は、板材に形成される判別用着色部を検出するカラーセンサにて構成することができる。ここで、カラーセンサとは、検出物体にスポット光を照射して検出物体からの反射による受光の色成分分析により色判別を行うセンサである。このため、このカラーセンサにて、判別用着色部の色判別が可能となる。したがって、例えば、裏面または表面にカラーセンサにより色判別が可能な判別用着色部を設けることによって、カラーセンサがその判別用着色部を判別すれば、その判別用着色部が形成された裏面または表面がセンサ側(例えば、上面側)を向いていることを判別することができる。これによって、裏面が上面を向いていれば、前記回避手段による板材挟持位置からの回避が行われず、表面が上面を向いていれば、前記回避手段による板材挟持位置からの回避が行われる。すなわち、カラーセンサに基づく表裏判別によって、裏面が上面を向いている場合のみ、板材の反転が行われ、反転の有無の判断精度が向上する。
【0012】
板材挟持手段は、一対の挟持爪部材と、この挟持爪部材の開閉を行う開閉機構とを備え、一対の挟持爪部材の閉状態で前記搬送手段にて搬送されている板材を挟持する。この板材挟持手段によれば、開閉機構による挟持爪部材の閉動作によって搬送手段にて搬送されている板材を挟持することができ、開閉機構による挟持爪部材の開動作によって板材の挟持解除を行うことができる。
【0013】
反転手段は、前記板材挟持手段の少なくとも一対のアームを含む板材挟持部を、板材の走行に同期して180°水平軸心廻りに回転させるカム機構を備える。このような反転手段を用いることによって、板材を搬送しつつ反転させることができる。
【0014】
回避手段は、表裏判別手段にて上面が表面となっていると判別された板材を、搬送方向と直交する方向に押圧する押圧機構を備える。このような回避手段によって、板材挟持手段による板材の挟持範囲から板材を外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の板材反転装置では、搬送手段の上流側から下流側へ搬送された板材は、搬送手段の下流側において、全ての板材は上面が表面となっている。このため、作業者自身による板材の反転作業を行う必要がなくなり、作業者の作業の軽減を図ることができる。しかも、搬送手段の下流側では、挟持手段による板材の挟持が解除されているので、この板材反転装置からの他の装置への移送が容易となり、作業性の向上を図ることができる。
【0016】
搬送手段によって、板材を傷めることなく安定して搬送することができ、板材の品質の低下を防止でき、しかも、短時間の搬送が可能となる。
【0017】
表裏判別手段を構成するカラーセンサに基づく表裏判別によって、裏面が上面を向いている場合のみ、板材の反転が行われ、反転の有無の精度が向上する。
【0018】
板材挟持手段によれば、搬送手段にて搬送されている板材の一端部を挟持することができ、また、この挟持状態で、反転手段にて板材を180°反転させることができ、安定した反転作業を行うことができる。しかもこの反転手段によれば、搬送手段にて搬送されている板材を搬送しつつ反転させることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0019】
回避手段では、上面が表面となっていると判別された板材を、板材挟持手段による板材の挟持範囲から外すことができ、上面が表面となっている板材を反転させて裏返すことがない。このため、この板材反転装置では、安定した反転機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る板材反転装置の実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。
【0021】
図1と図2は本発明の板材反転装置の要部を示している。この板材反転装置は、板材1(板状に加工された木材)をその幅方向に沿って搬送する搬送手段2(図8参照)と、搬送手段2に搬送されている板材1の表裏を判別する表裏判別手段3(図11参照)と、搬送手段2にて搬送されている板材1を所定搬送範囲H内で挟持する板材挟持手段4と、板材挟持手段4の少なくとも板材挟持部5を180°反転させる反転手段6と、表裏判別手段3にて上面1aが表面となっていると判別された板材1を板材挟持手段4による板材挟持位置7から回避させる回避手段8(図12参照)とを備える。
【0022】
搬送手段2は、図8に示すように、複数の搬送用テーブル台10と、搬送用テーブル台間に配設されるエンドレス状の複数のチェーンコンベア11とを備える。チェーンコンベア11は、図9と図10に示すように、ローラチェーン19を備える。ローラチェーン19は、外リンク12と内リンク13を交互に組合せて連結したものである。すなわち、外リンク12は2枚の外プレート14、14と2本のピン15、15を圧入して結合し、内リンク13は2枚の内プレート16、16と2個のブシュ17、17を圧入して結合している。
【0023】
そして、このローラチェーン19は、搬送用テーブル台10の下方位置に配設された図示省略の駆動スプロケットと従動スプロケットに掛け回され、駆動スプロケットの駆動によって、ローラチェーン19が扁平楕円形にエンドレス状に走行する。また、全ローラチェーン19は同期して駆動する。
【0024】
このローラチェーン19には係止片18が設けられている。すなわち、係止片18は、矩形平板体からなり、所定ピッチ毎に内リンク13の各内プレート16、16の長手方向中央部から外方(走行時に描くエンドレス状の扁平楕円形の外径側)へ突出するように設けられる。
【0025】
ローラチェーン19の走行中のエンドレス状の扁平楕円形の上面は、搬送用テーブル台10の上面と同一乃至上面よりも僅かに低く設定され、係止片18が搬送用テーブル台10の上面から突出する。ローラチェーン19は、搬送手段2の上流側から下流側へ図8の矢印Aのように走行する。このため、搬送手段2の上流側において板材1が搬送用テーブル台10上に供給されれば、図10に示すように、各ローラチェーン19の係止片18が板材1の下流側の端面1cに係止し、ローラチェーン19の走行に伴って、板材1は矢印A方向へ搬送される。
【0026】
表裏判別手段3は、図11に示すように、板材1に形成される判別用着色部20を検出するカラーセンサ21にて構成することができる。ここで、カラーセンサ21とは、検出物体(この場合、判別用着色部20)にスポット光を照射して検出物体(判別用着色部20)からの反射による受光の色成分分析により色判別を行うセンサである。このため、このカラーセンサ21にて、判別用着色部20の色判別が可能となる。判別用着色部20としては、使用するカラーセンサ21にて色判別が可能な色(例えば、赤、黄、青等)を板材1の表面に塗布すればよい。
【0027】
また、このカラーセンサ21には図11に示すように、制御手段22が接続され、この制御手段22に回避手段8が接続される。すなわち、カラーセンサ21にて、判別用着色部20を確認すれば、そのことが制御手段22に入力され、この制御手段22の制御によって回避手段8が駆動する。なお、制御手段22は例えばマイクロコンピュータにて構成することができる。
【0028】
回避手段8は、図12に示すように、板材押圧板25と、この板材押圧板25を揺動させるシリンダ機構26とを有する押圧機構23を備える。すなわち、板材押圧板25は、その一端部25aがヒンジ27を介して、上下方向軸廻りに回動可能とされ、その他端部25bにシリンダ機構26のピストンロッド26bの先端部が枢結されている。板材押圧板25は、図8に示すように、搬送手段2の一端側の上流端よりも僅か上流に配置される。この場合、搬送手段2の上流端には、搬送手段2に板材1を供給するための供給手段30が設けられ、この供給手段30の搬送手段2側の一端側縁31に板材押圧板25が配置される。また、回避手段8は、前記表裏判別手段3よりも搬送手段2側に配設される。
【0029】
供給手段30は、図示省略するが、搬送手段2と同様、複数の搬送用テーブル台と、搬送用テーブル台間に配設されるエンドレス状の複数のチェーンコンベアとを備える。すなわち、チェーンコンベアが回転駆動することによって、複数の板材1が順次搬送手段2に供給される。この際、板材1は、その長手方向がこのチェーンコンベアによる搬送方向と直交する方向に配設された状態で搬送される。この供給手段30においては、板材1の一端側の端面1bが前記一端側縁31に沿うように搬送される。
【0030】
板材挟持手段4は、図3から図5に示すように、一対の挟持爪部材32、32と、この挟持爪部材32、32の開閉を行う開閉機構33とを備える。すなわち、挟持爪部材32は、揺動アーム34と、この揺動アーム34の先端に付設される板材押え部材35とを備える。揺動アーム34は、板材1の搬送方向に直交する方向に沿って配設される本体片34aと、この本体片34aの先端縁に搬送方向に沿って配設される副片34bとからなる。
【0031】
また、板材押え部材35は、揺動アーム34の先端に固着される矩形平板状の基板36と、この基板36にクッション部材37を介して、所定離間距離をもって相対面するように配設される矩形平板状の押え板38とを備える。なお、基板36と押え板38とは、長辺の長さ寸法(長手方向寸法)を略同一に設定するとともに、短辺の長さ寸法(短手方向寸法)を基板36よりも押え板38を短くしている。また、基板36と押え板38とは、先端縁を上方から見て一致するように配置される。クッション部材37は、押え板38から基板36に向かって延びるロッド40と、このロッド40に外嵌されるコイルスプリングからなる弾性部材41とを備える。すなわち、ロッド40は、その先端ねじ部が押え板38に螺合されるボルト部材42と、ボルト部材42のヘッド部近傍に付設される受けリング43とを備え、ボルト部材42は基板36に設けられた貫孔に遊嵌状に挿通されている。また、この板材挟持手段4の板材非挟持状態で、弾性部材41はその弾性力にて、基板36と押え板38との間隔を所定間隔に保持する。
【0032】
このため、板材挟持手段4にて、板材1を挟持すれば、板材1からの反力によって、各押え板38,38はそれぞれ基板36側へ押圧される。すなわち、板材1から反力を受けることによって、弾性的に押え板38が基板36側に押圧される。
【0033】
また、揺動アーム34は、その基端側が保持部材45側に揺動可能に連結されている。保持部材45は、基板46と、この基板46から板材側へ突設される上下一対ずつの保持片47、47とを備え、相対面する保持片47、47間にギア(ピニオン)48が介装されている。ギア48には切欠部49が設けられ、この切欠部49に揺動アーム34の基端側が嵌合し、ネジ部材50にて揺動アーム34の基端側とギア48とが一体化される。
【0034】
開閉機構33は、シャフト51と、このシャフト51の先端に連設されるラック部52と、このラック部52に噛合する前記ピニオン48とを備え、シャフト51はカム機構53を介してその軸心方向に沿って往復動する。
【0035】
カム機構53は、図4に示すようカムプレート55と、前記シャフト51の基端側に付設されるローラ56等を備える。この場合、シャフト51の基端側には、このシャフト51を矢印B(軸心方向)に沿って押圧する押圧手段57が付設されている。
【0036】
押圧手段57は、一対のスプリング58と、シャフト51から延びてスプリング58の一端部58aが係止される基端側保持部材59と、スプリング58の他端部58bが係止される先端側保持部材60とを備える。
【0037】
基端側保持部材59は、シャフト51から延びる延伸体59aと、この延伸体59aの端部に連設されるスプリング係止体59bとからなり、スプリング58の一端部58aがスプリング係止体59bに係止している。先端側保持部材60は、後述するガイド機構70側に付設される基板62と、この基板62に付設されるスプリング係止体63とを備える。基端側保持部材59の延伸体59aのスプリング係止体側の裏面に前記ローラ56が付設されている。
【0038】
また、カムプレート55は、板材搬送方向に沿って配設された扁平板状体からなる本体部55aと、上流側幅狭部55bと、下流側幅狭部55cとからなる。上流側幅狭部55b及び下流側幅狭部55cは、外側縁66側において切欠部を形成することによって構成することができる。すなわち、切欠部の切欠面は、アール部65aを介して反本体側に向かって順次縮小するテーパ面65bと、アール部65cを介して内側縁と略平行をなす直線部65dとで構成される。
【0039】
このため、図4に示す状態では、ローラ56が本体部55aの外側縁66に接触して、スプリング58の弾発力に抗して、シャフト51を矢印C方向へ引っ張ることになる。このように、シャフト51が矢印C方向へ引っ張られば、図3の実線で示すように、一対の挟持爪部材32,32が閉状態となる。また、挟持爪部材32,32と、開閉機構33等で構成される板材ハンドリング構造部Mが、後述する搬送手段71を介して上流側から下流側へ搬送された場合、直線部65dに接触し、この状態では、スプリング58の弾発力によって、シャフト51が矢印B方向へ引っ張られた状態となっている。シャフト51が矢印B方向へ引っ張られた状態では、図3に示す仮想線に示すように、ラック52が前進(板材1側へスライドした)状態になっている。このため、ラック52に噛合しているギア48が矢印D方向に回転して、挟持爪部材32,32がギア48の軸心を中心に矢印Eのように揺動して、仮想線で示す状態となっている。つまり、挟持爪部材32,32が開状態となっている。
【0040】
また、板材ハンドリング構造部Mがさらに下流側へ走行すれば、ローラ56が直線部65dからアール部65cを介してテーパ部65bを転動することになる。このテーパ部65bを転動することによって、シャフト51は順次矢印C方向へ引っ張られる。このため、ラック52に噛合しているギア48が矢印F方向に回転して、挟持爪部材32,32がギア48の軸心を中心に矢印Gのように揺動して、閉状態となっていく。そして、本体部55aの外側縁66に接触するようになれば、前記したように、図3に示すように、完全閉状態となる。
【0041】
反転手段6は、前記板材挟持手段7の一対の挟持爪部材32、32を含む板材挟持部5を、板材1の走行に同期して180°水平軸心廻りに回転させるカム機構75と、このカム機構75によって回転するギア機構74とを備える。図3と図6に示すように、ギア機構74は、大ギア72とこの大ギア72に噛合する小ギア73とを有する。大ギア72はガイド機構70に連結された保持体76にその軸心廻り回転可能に枢結されている。
【0042】
図3に示すように、保持体76は円筒部77と、この円筒部77の反板材挟持手段側の端部に設けられる垂下片78と、垂下片78と180°反対側において円筒部77から突設される鍔部79、79とを備える。円筒部77にはシャフト51がその軸方向の往復動が可能な鍔付き筒状体80が嵌入されている。また、この筒状体80は、その鍔部81に前記保持部材45の基板46が取り付けられ、反鍔部側の端面に前記ギア機構74の小ギア73が取り付けられている。このため、大ギア72が回転して小ギア73が回転すれば、筒状体80を介して保持体76が回転し、筒状体80の軸心廻りに挟持爪部材32,32を含む板材挟持部5が回転する。
【0043】
また、ガイド機構70は、図4に示すように、カムプレート55と平行に搬送手段2の上流側から下流側に沿って配設される帯状平板体からなるガイドレール82と、ガイドレール82に沿って走行する走行体83とを備える。
【0044】
走行体83は、前記保持体76の鍔部79、79に取り付けられる一対の支持片84、84と、支持片84、84に付設されるガイドローラ85a、85b、85cとを備える。ガイドローラ85aは、図4に示すように、各支持片84、84毎に一対ずつ配置され、ガイドローラ85bは、図6に示すように、各支持片84、84毎に1個ずつ配置され、ガイドローラ85cは、図4に示すように、各支持片84、84毎に一対ずつ配置される。このため、走行体83、延いてはこの板材ハンドリング構造部Mはガイドレール82に沿って上下左右にがたつくことなく安定して走行することになる。
【0045】
ところで、板材ハンドリング構造部Mは、図1と図2に示すような駆動機構90にてガイドレール82に沿って走行することになる。駆動機構90は、チェーンコンベア91と、このチェーンコンベア91を駆動させる図示省略の駆動用モータ等からなる。チェーンコンベア91は、駆動スプロケット92と従動スプロケット93と、これらに掛け回されるローラチェーン94とからなる。なお、駆動スプロケット92及び従動スプロケット93の回転軸95,96は、基枠台97に軸受を介して枢支されている。
【0046】
また、ローラチェーン94に複数の板材ハンドリング構造部Mが所定ピッチで連結されている。すなわち、図6に示すように、ローラチェーン94は、外リンク100と内リンク101を交互に組合せて連結したものである。外リンク100は2枚の外プレート102、102と2本のピン103、103を圧入して結合し、内リンク101は2枚の内プレート104、104と2個のブシュ105、105を圧入して結合している。
【0047】
そして、ローラチェーン94の所定間隔毎の外リンク100に連結部材106を介して板材ハンドリング構造部Mが連結される。連結部材106は、前記図3に示すように、外リンク100の外プレート102から延びる鍔状体にて構成することができる。そして、この連結部材106が前記保持体76に固着される。このため、駆動機構90が駆動することによって、ローラチェーン94がエンドレス状に走行し、この走行に伴って連結部材106を介して所定間隔毎に配設された板材ハンドリング構造部Mが図2に示す矢印X方向のエンドレス走行を行うことになる。
【0048】
ところで、ローラチェーン94の外径側には、板材ハンドリング構造部Mの走行案内路108が設けられている。走行案内路108は、上下に配設される一対の前記ガイドレール82,82と、ガイドレール82,82の端部を連結する端部湾曲部109、109とを備える。端部湾曲部109は、板材搬送方向と直交する方向に沿って所定間隔で配設される一対の円弧状平板110,110を備える。
【0049】
すなわち、走行案内路108の上下では、前記したように、板材ハンドリング構造部Mは、各ローラ85a、85b、85cがガイドレール82,82に対して転動して、ガイドレール82,82に案内されて走行する。また、端部湾曲部109では、ローラ85cが円弧状平板110の内面を転動し、円弧状平板110に案内されて走行する。このため、安定した走行が可能となる。
【0050】
前記基枠台97は、図1と図2に示すように、上枠97aと、下枠97bと、一対の側枠97c,97dとからなり、上方のガイドレール82は上枠97aに支持ロッド111を介して所定高さに水平状に配置され、下方のガイドレール82は下枠97bに支持ロッド112を介して所定高さに水平状に配置されている。
【0051】
反転手段6のカム機構75は、前記ギア機構74の大ギア72に付設されるローラ115と、このローラ115が転動するガイド116とを備える。ガイド116は、その上面に上流側から下流側に向かって順次上り勾配となる傾斜面117を有する平板体からなる。
【0052】
図6に示すように、走行体83の支持片84には支持アーム120が付設され、この支持アーム120と大ギア72とがコイルスプリング等の弾発部材121にて連結されている。支持アーム120は、支持片84に固着されるアーム本体122と、アーム本体122に連設される弾発部材支持片部123とを備える。弾発部材支持片部123に係止用突起124が設けられるとともに、大ギア72に係止用突起125が設けられ、係止用突起124に弾発部材121の一端部121aが係止され、係止用突起125に弾発部材121の他端部121bが係止されている。
【0053】
この場合、外力等が負荷しない自由状態において、弾発部材121の軸心線と、大ギア72の回転中心Oと、ローラ115の中心O1とは略同一直線上に配置されている。板材ハンドリング構造部Mが上流側から下流側へ走行していけば、ローラ115がガイド116を転動して、上昇していくことになる。この際、ローラ115は、その中心O1が大ギア72の回転中心Oよりも下流側に位置しているので、この上昇に伴って、図7に示すように、矢印Y1の方向に回転していく。この回転量(回転角)θは、ローラ115がガイド116の上流端から下流端まで転動した際の量であり、この量だけ回転すれば、小ギア73はその軸心O2を中心として、弾発部材121の弾性力に効して矢印Y2方向に180°反転するように設定している。このように、小ギア73が180°反転すれば、前記したように、保持体76の円筒部77を介して、挟持爪部材32,32を含む板材挟持部5が180°反転する。また、ローラ115のガイド116からの押圧力が解除されれば、大ギア72は矢印Y3方向に回転し、この回転によって、小ギア73が矢印Y4方向に回転し、板材挟持部5が180°反転する。
【0054】
次に、前記のように構成した板材反転装置を使用した板材1の搬送方法を説明する。板材1はこの板材反転装置よりも上流側に配置された供給手段30から供給されることになるが、供給された板材1の上面が表面なっている状態(表を向いている状態)では、図8の仮想線で示すように、その板材1が矢印K方向に押圧された状態となる。
【0055】
すなわち、板材1の端面1b側の表面には、カラーセンサ21にて検出が可能な判別用着色部20が形成されており、板材1の上面が表面なっている状態では、カラーセンサ21はこの判別用着色部20を検出することになる。このように、検出すれば、検出信号が制御手段22に送られ、この制御手段22の制御によって、回避手段8が駆動して板材1が押圧される。この場合、シリンダ機構26のピストンロッド26bが伸びて板材押圧板25が揺動し、この板材押圧板25によって板材1を押圧することができる。このため、板材1は、端面1bが一端側縁31から離れた状態で搬送手段2へ移送される。
【0056】
また、板材1の上面が裏面なっている状態では、カラーセンサ21が判別用着色部20を検出しない。このため、板材押圧板25が作動せず、その板材1は、端面1bが一端側縁31に沿った状態で搬送手段2へ移送される。
【0057】
板材1(1A)が矢印A方向に搬送手段2へ供給されれば、供給手段30からの押圧力で、まずこの板材1Aよりも下流側の係止片18に下流端面1dが当接して、板材1Aよりも上流側の係止片18が上流端面1cに当接するまで待つ。
【0058】
係止片18が上流端面1cに当接すれば、ローラチェーン19の駆動に伴って下流側へ搬送される。このように搬送されていけば、板材ハンドリング構造部Mは、まず図1のM1のように、ガイドレール82にガイドされる状態となるとともに、ローラ56がカムプレート55の下流側幅狭部55bの直線部65dに当接する状態となる。そして、この状態からさらに、板材ハンドリング構造部Mが下流側へ走行していけば、ローラ56が下流側幅狭部55bのテーパ部65bを走行していき、順次シャフト51が反板材側へ引っ張られる。このように、引っ張られれば、揺動アーム34、34が仮想線で示す状態から実線で示す状態となるように揺動する。すなわち、揺動アーム34、34が開状態から閉状態となるように揺動する。そして、ローラ56がカムプレート55の外側縁66に対応する状態となれば、シャフト51が最大に反板材側へ引っ張られた状態となる。つまり、揺動アーム34、34が完全閉状態となる。
【0059】
このように、揺動アーム34、34が完全閉状態となれば、板材1の端部を揺動アーム34、34にて上下から挟持することができる。板材1の端部を挟持した揺動アーム34、34を含む板材ハンドリング構造部Mがさらに下流側へ搬送されることによって、ローラ115がガイド116の傾斜面117を転動することになる。このため、ローラ115が順次上昇していき、この上昇に伴って、大ギア72が図7の矢印Y1方向へ回転して、小ギア73が矢印Y2方向へ180°回転する。
【0060】
この小ギア73の矢印Y2方向の180°回転によって、この板材ハンドリング構造部Mの揺動アーム34、34は板材1の端部を挟持したまま180°反転する。このため、板材1は、上面が表面を向く状態となる。
【0061】
また、上面が表面を向いた状態で、搬送手段2に板材1が供給されれば、この板材1は図8の1Bに示すように、搬送手段2の一側端2aから離れた状態となっている。このため、揺動アーム34、34が開状態から閉状態となるように揺動しても、この揺動アーム34、34にて挟持可能範囲外に板材1の端部が位置しているので、揺動アーム34、34にて板材1の端部は挟持されない。このため、板材ハンドリング構造部Mの揺動アーム34、34が180°反転しても、板材1を反転させることがない。
【0062】
また、板材ハンドリング構造部Mが下流側幅狭部55bに達すれば、揺動アーム34、34は開状態となる。すなわち、ローラ56が下流側幅狭部55bのテーパ面65bを転動することになれば、シャフト51が図3に示す矢印B方向へ押圧されていく。このシャフト51の矢印B方向の移動によって、揺動アーム34,34が仮想線で示すように、閉状態から開状態へ揺動していく。このように、開状態となれば、板材1を挟持していた揺動アーム34、34による挟持が解除される。そして、ローラ56が直線部65dを転動することになれば、揺動アーム34,34が完全開状態となって、この板材ハンドリング構造部Mはさらに下流側へ流れ、上方のガイドレール82から下流側の端部湾曲部109に案内される。
【0063】
このように、板材ハンドリング構造部Mは、案内路108に案内されて、エンドレス状に走行し、上面が裏面となっている板材1は180°反転させつつ搬送手段2の上流側から下流側へ搬送され、上面が表面となっている板材1は180°反転させることなく、搬送手段2の上流側から下流側へ搬送される。
【0064】
この板材反転装置によれば、表裏判別手段3にて上面が裏面となっていると判断された場合、回避手段8が作動せず、この上面が裏面となっている板材1が所定搬送範囲H内に入れば、板材挟持手段7にてこの板材1を挟持することになる。板材挟持手段7にて板材が挟持されれば、反転手段を介して、板材挟持手段7の板材挟持部5が180°反転する。これによって、上面が裏面となっている板材1が180°反転して上面が表面となる。また、表裏判別手段3にて上面が表面となっていると判断された場合、回避手段8にて、この板材1を板材挟持手段4による板材挟持位置から回避させることになる。このため、上面が表面となっていると判断された板材1は、板材挟持手段4にて挟持されることなく、そのままの姿勢を維持しながら、所定搬送範囲を搬送される。すなわち、搬送手段2の上流側から下流側へ搬送された板材1は、搬送手段2の下流側において、全ての板材1は上面が裏面となっている。このため、作業者自身による板材1の反転作業を行う必要がなくなり、作業者の作業の軽減を図ることができる。しかも、搬送手段2の下流側では、挟持手段4による板材1の挟持が解除されているので、この板材反転装置からの他の装置への移送が容易となり、作業性の向上を図ることができる。また、板材1は、所定搬送範囲から出れば、板材挟持手段4による板材の挟持が解除されているので、この板材反転装置からの他の装置への移送が容易となる。
【0065】
搬送手段2は、複数の搬送用テーブル台10と、搬送用テーブル台10間に配設されるエンドレス状の複数のチェーンコンベア11とを備え、チェーンコンベア11に係止片18を設け、チェーンコンベア11の駆動により、チェーンコンベア11の係止片18が板材1に係止して、搬送用テーブル台上を板材が走行する。これによれば、板材1を傷めることなく安定して搬送することができ、品質の低下を防止でき、しかも、短時間の搬送が可能となる。
【0066】
表裏判別手段3を構成するカラーセンサに基づく表裏判別によって、裏面が上面を向いている場合のみ、板材1の反転が行われ、反転の有無の精度が向上する。
【0067】
板材挟持手段4によれば、搬送手段2にて搬送されている板材1を挟持することができ、また、この挟持状態で、反転手段6にて板材を180°反転させることができ、安定した反転作業を行うことができる。この反転手段6によれば、搬送手段2にて搬送されている板材1を搬送しつつ反転させることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0068】
回避手段8では、上面が表面となっていると判別された板材1を、板材挟持手段4による板材1の挟持範囲から外すことができ、上面が表面となっている板材1を反転させて裏返すことがない。
【0069】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、搬送手段2の搬送用テーブル10の大きさ、配設数等は搬送される板材1の大きさ等に基づいて種々変更することができる。また、チェーンコンベア11に設けられる係止片18の配設ピッチも、この搬送手段2にて搬送される板材を挟持手段4にて挟持でき、しかもこの挟持されている板材1の反転手段6にて反転できるものであれば、種々変更できる。このため、板材ハンドリング構造部Mの数の増減も任意である。また、表裏判別手段3として、前記実施形態では、板材1の表面に判別用着色部20を形成し、この判別用着色部20をカラーセンサが検出すれば、この板材1の表面が上面を向いていると判断するようにしていたが、板材1の裏面に判別用着色部20を形成し、判別用着色部20をカラーセンサが検出すれば、この板材1の裏面が上面を向いていると判断するようにしてもよい。
【0070】
回避手段8として、板材1を押圧して、板材挟持位置から回避させればよいので、シリンダ機構26によって、板材25をこのシリンダ機構26のピストンロッド26bの軸方向に沿って往復動させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態を示す板材反転装置の要部平面図である。
【図2】前記板材反転装置の要部正面図である。
【図3】前記板材反転装置の板材ハンドリング構造部の拡大側面図である。
【図4】前記板材反転装置の板材ハンドリング構造部の拡大平面図である。
【図5】前記板材反転装置の揺動アームの先端部の背面図である。
【図6】前記板材反転装置の反転手段を示す要部拡大図である。
【図7】前記板材反転装置の反転手段を示す要部拡大図である。
【図8】前記板材反転装置の搬送手段の簡略平面図である。
【図9】前記板材反転装置の搬送手段の要部拡大平面図である。
【図10】前記板材反転装置の搬送手段の要部拡大正面図である。
【図11】前記板材反転装置の表裏判別手段の簡略図である。
【図12】前記板材反転装置の回避手段の簡略図である。
【符号の説明】
【0072】
1 板材
2 搬送手段
3 表裏判別手段
4 板材挟持手段
5 板材挟持部
6 反転手段
7 板材挟持位置
8 回避手段
10 搬送用テーブル台
11 チェーンコンベア
20 判別用着色部
21 カラーセンサ
23 押圧機構
32 挟持爪部材
75 カム機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材をその幅方向に沿って搬送する搬送手段と、
搬送手段に搬送されている板材の表裏を判別する表裏判別手段と、
搬送手段にて搬送されている板材を所定搬送範囲内で挟持する板材挟持手段と、
板材挟持手段の少なくとも板材挟持部を180°反転させる反転手段と、
表裏判別手段にて上面が表面となっていると判別された板材を前記板材挟持手段による板材挟持位置から回避させる回避手段とを備えたことを特徴とする板材反転装置。
【請求項2】
搬送手段は、複数の搬送用テーブル台と、搬送用テーブル台間に配設されるエンドレス状の複数のチェーンコンベアとを備え、チェーンコンベアに係止片を設け、チェーンコンベアの駆動により、チェーンコンベアの係止片が板材に係止して、搬送用テーブル台上を板材が走行することを特徴とする請求項1に記載の板材反転装置。
【請求項3】
表裏判別手段は、板材に形成される判別用着色部を検出するカラーセンサにて構成したことを特徴とする請求項1に記載の板材反転装置。
【請求項4】
板材挟持手段は、一対の挟持爪部材と、この挟持爪部材の開閉を行う開閉機構とを備え、一対の挟持爪部材の閉状態で前記搬送手段にて搬送されている板材を挟持することを特徴とする請求項1に記載の板材反転装置。
【請求項5】
反転手段は、前記板材挟持手段の少なくとも一対の挟持爪部材を含む板材挟持部を、板材の走行に同期して180°水平軸心廻りに回転させるカム機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の板材反転装置。
【請求項6】
回避手段は、前記表裏判別手段にて上面が表面となっていると判別された板材を、搬送方向と直交する方向に押圧する押圧機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の板材反転装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−35380(P2009−35380A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201035(P2007−201035)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(396026400)株式会社鈴工 (9)
【Fターム(参考)】