説明

板状製品保護用カセットの変形検知システム

【課題】保護用カセットの許容量以上の変形を検知することで、保護用カセットと板状製品との接触を抑制して板状製品及び/又はカセットの損傷又は破損を未然に防止するようにした板状製品保護用カセットの変形検知システムを提供すること。
【解決手段】板状製品1を収納するようにした保護用カセット2を載置する置き台3の上部に複数の距離センサ4a、4b、4cを配置し、距離センサ4a、4b、4cにより、置き台3の上に載置した保護用カセット2の上面との距離を計測し、各距離センサ4a、4b、4cによる計測値a、b、cと、予め設定した許容値a、b、cとを比較することにより保護用カセット2の変形を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状製品保護用カセットの変形検知システムに関し、特に、液晶板製造工場等において、板状製品(液晶マスク)の搬送時や保管時における損傷、破損或いは不純物の付着を防止するようにした保護用カセットの変形を未然に検知することで、保護用カセットより出し入れする際、板状製品の損傷、破損等を防止するようにした板状製品保護用カセットの変形検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特に限定されるものではないが、例えば、液晶板製造工場等においては、液晶マスク等の板状製品(以下、「板状製品」という。)は、その搬送時や保管時に板状製品への不純物の付着、或いはその損傷、破損等を未然に防止するため、板状製品を図1に示すように、板状製品を収納できるようにした開閉可能な扉を備えたカセット内に収納し、カセット毎搬送或いは専用の置き台に載置して保管するようにしている。そして、この置き台上に載置した状態で所定の加工装置の位置で、必要に応じてカセット内の板状製品を取出用フォーク等を用いて出し入れするようにしている。
【0003】
ところで、このカセットは経年的に変形することがあり、特にカセット上面の中央部がその重量等により図3に示すように、垂れ下がるように変形することがある。このカセットの変形が許容量以上に達すると、カセットより板状製品を取出用フォークを用いて取り出し、或いは収納する際、板状製品を一端取出用フォークにて少し持ち上げて行うため、図3(B)に示すように、カセット天面の変形部と板状製品とが直接接触して板状製品及び/又はカセットが損傷又は破損するという問題があった。
また、この板状製品は高価であるとともに、通常製造工場には予備を備えていないため、板状製品が損傷又は破損すると、次の板状製品が入手するまで生産が停止するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、板状製品保護用カセットの有する問題点に鑑み、保護用カセットの許容量以上の変形を検知することで、保護用カセットと板状製品との接触を抑制して板状製品及び/又はカセットの損傷又は破損を未然に防止するようにした板状製品保護用カセットの変形検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムは、板状製品を収納するようにした保護用カセットを載置する置き台上部に複数の距離センサを配置し、距離センサにより、置き台上に載置した保護用カセット上面との距離を計測し、各距離センサによる計測値と、予め設定した許容値とを比較することにより保護用カセットの変形を検知するようにしたことを特徴とする。
【0006】
この場合において、複数の距離センサを、保護用カセット上面を定間隔毎に計測するよう配置することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムによれば、板状製品を収納するようにした保護用カセットを載置する置き台上部に複数の距離センサを配置し、距離センサにより、置き台上に載置した保護用カセット上面との距離を計測し、各距離センサによる計測値と、予め設定した許容値とを比較することにより保護用カセットの変形を検知することにより、簡易な方法で保護用カセット上面の変形を確実に検知することができるので、保護用カセットより板状製品を出し入れする際の損傷又は破損を未然に防止できるとともに、板状製品を収納する保護用カセット内の隙間を可及的に小とすることができ、保護用カセット高さを低く抑えることができる。
【0008】
また、複数の距離センサを、保護用カセット上面を定間隔毎に計測するよう配置することにより、保護用カセットの変形箇所に関係なく保護用カセットの良否を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜図4に、本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムの一実施例を示す。
【0011】
これは、特に限定されるものではないが、例えば、液晶板製造工場等において、液晶板等の板状製品を搬送或いは保管する際、板状製品1(液晶マスク)への不純物の付着や損傷、破損等を防止するため、開閉可能な扉(図示省略)を備えた保護用カセット2内に板状製品1を収納するようにし、カセット毎搬送、保管するようにしている。
【0012】
そして、保護用カセット2を所定位置、特に限定されるものではないが、例えば、加工装置等の所定位置に配設した置き台3に、図1に示すように、載置して保管するようにしている。
また、所定の加工装置(図示省略)の位置での置き台3上に保護用カセット2を載置した状態で、保護用カセット内に、図2(B)及び図3(B)に示すように、板状製品1の下部位置に取出用フォーク5等を挿入してカセット内の板状製品1を出し入れするようにしている。
なお、板状製品1の下部に挿入した取出用フォーク5等を一端少し持ち上げることにより、板状製品1を保護用カセット内の板状製品支持台21より持ち上げた後、出し入れするようにする。
【0013】
この保護用カセット2には、図2に示すように、内端部に板状製品1、特に限定されるものではないが、例えば、板状製品1の端部を摺動可能にして接触支持するための板状製品支持台21、21を備え、板状製品1を収納した状態では板状製品の上下面及び側面に所要の隙間を有するようにして保護用カセットの大きさが設定されている。
この保護用カセット2内で、かつ板状製品1の周囲に形成される隙間を可及的に小とすることで、保護用カセットのサイズを小さくすることができる。
なお、図2は保護用カセットの変形前の状態を示している。
【0014】
また、この保護用カセットを一時保管するための置き台3は、図1に示すように、保護用カセット2の両端部を支持するようにするとともに、置き台3の両端部に樹立した柱31、31間に、保護用カセット上方位置にて掛け渡すようにフレーム32を配設し、このフレーム32の下面側に、赤外線、電波などにて相対位置関係を測定するための距離センサ4a、4b、4cを複数個配設する。
この距離センサ4a、4b、4cは、下方の置き台3上に載置される保護用カセット2の天板22(天面)との距離を計測するようにしたもので、通常これは予め定めた間隔で、例えば、図4(A)に示すように、保護用カセット2の幅方向に沿って複数個、また、図4(B)に示すように、奥行き方向に沿って複数個を配設し、これにより保護用カセット上面を定間隔毎に計測できるようにする。
【0015】
なお、この場合、保護用カセット2を置き台3、3に載置する際、移載機等にて一定量を持ち上げる場合でも保護用カセット2の天板22が距離センサ4a、4b、4cと接触しないよう安全距離を有するように配置するとともに、保護用カセット2が置き台上に載置されたことを確認した後、全距離センサ4a、4b、4cが同時に作動して計測するようにする。
【0016】
次に、本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムの作用について説明する。
保護用カセット2は使用時経年的に変形を来し、特に保護用カセット2の天板22がその中央部が、図1に示すように、垂れ下がるように変形することがあり、かつこの変形も保護用カセット2毎に異なる。
板状製品1を収納した保護用カセット2が、所定の置き台3、3上に載置されると、予め設定した位置に配設した各距離センサ4a、4b、4cにて、これと対向する保護用カセット2の天面との距離を計測するようにする。
【0017】
この場合、各距離センサ4a、4b、4cは常に作動させておき、所定の置き台3、3上に載置したとき、計測するようにすることも、或いは保護用カセット2が所定の置き台上に載置されたことを検知して各距離センサ4a、4b、4cを自動的に作動するようにすることもできる。
【0018】
そして、この各距離センサ4a、4b、4c、特に限定されるものではないが、例えば、両端部の距離センサ4a、4c及び中央部の距離センサ4bによる保護用カセット2の天面との距離の計測値a、b、cと、予め設定した許容値a、b、cとを比較することにより保護用カセット2の変形を検知するようにしている。
この場合、特に限定されるものではないが、例えば、計測値a、b、cのいずれもが、予め設定した許容値a、b、cの範囲内であれば、検出回路にて保護用カセット2の変形に異常なしと判定し、取出用フォーク等による保護用カセット2内の板状製品1の出し入れ作業を開始するようにする。
一方、計測値a、b、cのいずれかが、予め設定した許容値a、b、cの範囲外であれば、検出回路にて保護用カセット2の変形に異常ありと判定し、保護用カセット2の変形異常を報知するとともに、取出用フォーク等による保護用カセット2内の板状製品1の出し入れ作業を停止するようにする。
【0019】
これにより、保護用カセット2の許容値以上の変形の有無を置き台上に載置するだけで自動的に、かつ瞬時に行うことができるので、保護用カセット内の板状製品1の出し入れ作業が安全に、円滑に行えるものとなる。
また、この板状製品は高価なものであるため、通常製造工場には予備を備えておらず、常に保護用カセット内に収納した状態で搬送、保管されている。このため、板状製品が損傷又は破損すると、その納期に時間が掛かり、予備を備えていなければ生産ラインが停止する虞があるが、保護用カセット内への出し入れ作業を開始する事前に、予め保護用カセットの変形の有無を検知することで、これらの不具合を未然に防止することができる。
さらに、板状製品を収納する保護用カセット内の隙間を可及的に小とすることができ、保護用カセット高さを低く抑えることができる。
【0020】
以上、本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムは、板状製品を収納してその搬送時や保管時における損傷、破損を防止するようにした保護用カセットの変形を、置き台上に載置するだけで、保護用カセットの許容以上の変形を検知して板状製品の損傷、破損等を保護するという特性を有していることから、液晶板製造の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の板状製品保護用カセットの変形検知システムの一実施例を示す説明図である。
【図2】保護用カセット内に板状製品を収納した状態を示し、(A)は板状製品の保管時の断面図、(B)は板状製品出し入れ時の断面図である。
【図3】板状製品を収納した保護用カセットが変形した状態を示し、(A)は板状製品の保管時の断面図、(B)は板状製品出し入れ時の断面図である。
【図4】置き台に保護用カセットを載置した状態を示し、(A)はその正面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 板状製品(液晶マスク)
2 保護用カセット
21 板状製品支持台
22 天板
3 置き台
31 柱
32 フレーム
4a 距離センサ
4b 距離センサ
4c 距離センサ
5 取出用フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状製品を収納するようにした保護用カセットを載置する置き台上部に複数の距離センサを配置し、距離センサにより、置き台上に載置した保護用カセット上面との距離を計測し、各距離センサによる計測値と、予め設定した許容値とを比較することにより保護用カセットの変形を検知するようにしたことを特徴とする板状製品保護用カセットの変形検知システム。
【請求項2】
複数の距離センサを、保護用カセット上面を定間隔毎に計測するよう配置したことを特徴とする請求項1記載の板状製品保護用カセットの変形検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−205274(P2008−205274A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40791(P2007−40791)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】