説明

架空ケーブルの地上高測定装置

【課題】ケーブル状の細い被測定部でも簡単に地上高さを測定する。
【解決手段】略上方の所定の立体角の範囲で測長レーザー光を2次元走査して測長を行なうレーザーレーダと、該測長レーザー光の照射方向と鉛直方向の成す角度と、該測長の結果とに基づき前記範囲内における最低の鉛直高さを得るコンピュータと、該最低の鉛直高さを数値で表示する表示器と、を備えた。範囲内の2次元走査は1乃至数秒以内で行なえることが望ましい。走査後に、最低値が得られたレーザー照射方向に固定して照射を行い、ケーブルに当たったレーザー光を目視で確認できるようにしても良く、或いは範囲内の各所での測定結果を被測定物の形状や位置が認識できるようにグラフィカル表示してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空ケーブルの地上高測定装置に関し、特に複雑な操作が不要な架空ケーブルの地上高測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像伝送用の電気ケーブルや光ファイバケーブル等を空中に懸架して設置する場合、ケーブルの地上からの高さが種々の法令や規則を満足しているか確認する必要があり、竿状の物差しを地上から伸ばして測定する方法が一般的である。
しかし上記方法では、最も低い箇所の地上高を得るために、ケーブルの直下において複数個所で測定を繰り返すこととなり、特に道路上での長時間の測定は第三者の通行の妨げになることがある。
【0003】
一方で、建築現場などでは、ハンディ型のレーザー距離計或いはレーザー測距儀などが使用されている。レーザー測距儀は、鉛直度センサを内蔵し、目標物までの距離と仰角とから目標物の高さを測定して直読みできるものである。
【0004】
この他、本発明に関連する技術として、トロリ線に照射したレーザー光束の反射の受光角度をCCDリニアセンサで検出する、トロリ線の高さ測定装置が知られる(例えば、特許文献2参照。)。
また、スキャンミラ−を用いて、レ−ザ測距装置のビ−ムを鉛直下方を中心にして揺動させ、線下物体までの距離を揺動角の関数として求める架空電線の線下物体距離測定装置が知られる(例えば、特許文献3参照。)。
また、姿勢角センサ、レーザセンサ及びスキャナーを備えてレーザー測距を行なう航空機搭載地形計測装置及び方法が知られる(例えば、特許文献4参照。)。
また、自動車の運転支援システム用の、二次元スキャン機構を備えたレーザーレーダ(LIDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Rangingとも言う)が知られる(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−30924号公報
【特許文献2】特開平6‐258030号公報
【特許文献3】特開平7−154909号公報
【特許文献4】特開2003−156330号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】宮崎秀徳、外2名,「第3世代レーザーレーダの開発」,OMRON TECHNICS,オムロン株式会社,平成18年9月,第47巻,第1号(通巻155号),p.57−63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のレーザー測距儀で測定できる高さはピンポイントなものであり、細いケーブルに対してレーザー光束を手動で合わせるのは容易なことではない。またケーブルの直下が地面のどこなのか見定めることができなければ、正確な地上高は測定できない。
また、特許文献2乃至4に記載の技術では、架線或いは計測対象に対して計器を移動させる手段が必須となり、通常のケーブル敷設工事に用いるには大掛かり過ぎるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の架空ケーブルの地上高測定装置は、略上方の所定の立体角の範囲で測長レーザー光を2次元走査して測長を行なうレーザーレーダと、該測長レーザー光の照射方向と鉛直方向の成す角度と、該測長の結果とに基づき前記範囲内における最低の鉛直高さを得るコンピュータと、該最低の鉛直高さを数値で表示する表示器と、を備えた。走査後に、最低値が得られたレーザー照射方向に固定して照射を行い、ケーブルに当たったレーザー光を目視で確認できるようにしても良く、或いは範囲内の各所での測定結果を被測定物の形状や位置が認識できるようにグラフィカル表示してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定物の下に地上高測定装置を置きボタンを押すだけの簡単な操作で、容易に被測定物の最低部における地上高を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の地上高測定装置を用いた測定状況を示す模式図
【図2】本発明の地上高測定装置の上面外観図
【図3】本実施例1の地上高測定装置の表示部の表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る地上高測定装置を用いた測定状況を示す模式図である。本例の地上高測定装置は、ケーブルの下方の地面に直接置かれ、略上方の長方形が張る立体角の範囲で測長レーザー光を2次元走査し、測長を行なう。即ち、非特許文献1等に記載されたレーザーレーダと同様の手法により、パルス状のレーザー光がケーブルで反射されて戻ってくるまでの時間から、地上高測定装置とケーブルとの間の距離が求まり、そのときのレーザー光の照射方向と鉛直方向との方向余弦を、当該距離に乗じて、鉛直高さを得る。
【0012】
図2は、本例の地上高測定装置の上面外観図である。ON/OFFボタンにより電源を入れ、測定ボタンを押すと、スキャナー部の窓から走査されたレーザー光が発射される。レーザー光にはクラス3Rのものを用い、範囲内の2次元走査は1乃至数秒以内で行なえることが望ましい。走査が終了すると、走査範囲中で最低の鉛直高さに、所定の補正を施して、表示部に数値として表示する。
表示部には、各種のエラー(例えば最低値が走査範囲の端部で得られたこと)を表示するようにしても良い。また、所定のボタン操作により、最低値が得られた時のレーザー照射方向に固定して(或いは微小に走査して)照射を行い、ケーブルに当たったレーザー光の反射を目視で確認できるようにしても良い。その場合、レーザーの走査光学系として、振動を利用したガルバノ方式ではなく、ステッピングモータ等を利用して静的に角度を制御できる方式を用いる必要がある。
【実施例1】
【0013】
実施例1では、上記した地上高測定装置の細部を説明する。
本例の地上高測定装置は、レーザーの走査光学系として、地上高測定装置自体の鉛直軸(例えば上面パネルに対して垂直な軸)をZ’軸とすると、Z’軸に互いに直交するX軸、Y軸を回転軸とするような2軸ジンバルを用いる。そしてX軸とY軸が交わる原点Oから常にレーザー光が発射されると看做せるようにする。なお測長誤差は±0.5cmに収まれば十分であるので、X軸とY軸が厳密に交差せずに数mmずれていてもよい。
X軸回りの回転による走査とY軸回りの回転による走査との内、一方は全範囲で行なうが、他方は、それまでの走査により反射光(又は有効な測定距離)が得られた位置を中心に所定の角度だけ走査すればよい。測長範囲の上限はせいぜい数十mであるので、測長方式としては、光の伝播時間に基づく方式に限らず、特開2008−51764に記載のような視差に基づく方式でも良い。
また、本例の地上高測定装置は、電子的に読み取り可能な鉛直器を備える。鉛直器は、真の鉛直軸Zが、Z’軸に対して傾いている度合いを、X軸とY軸に相当する2軸で測定する。つまり傾きが、X軸回りの角度(Z−Y平面内での角度)θ’と、Y軸回りの角度(Z−X平面内での角度)φ’として測定され、Z軸のZ’軸に対する方向余弦はcos(θ’)cos(φ’)となる。
【0014】
図3は、本実施例1の地上高測定装置の表示部の表示例を示す図である。表示部はドットマトリクスディスプレイであり、走査した領域に対応させて、有効な距離或いは高さが測定できたか否かを2値表示する。この表示は走査の進行に対応してなされ、最後に最低の高さが測定された箇所にI字状のマーカを表示する。架空ケーブルを測定した場合、図示したように1本の線が表示されることになるが、当該線が表示部内に適切に収まっていれば、地上高測定装置の設置位置及び向きが妥当であることが確認できる。
【0015】
本実施例1の地上高測定装置は、走査光学系や表示機の制御及び最低の地上高さの計算等を行なうマイクロコンピュータを備えるとともに、GPS受信機もしくは広角レンズ付き電子カメラと、通信インタフェースを備える。GPS受信機はレーザー走査中に経緯度、標高、時刻等を得、広角レンズ付き電子カメラは、被測定物を視野角に含む上方を撮影し、画像データを得る。通信インタフェースは、USB(商標)やBluetooth(商標)等であり、測定完了後に自動的に或いは所定のボタン操作により、得られた経緯度や画像データ等を測定結果と共に接続先のノートパソコンや携帯電話機等に出力する。出力形式は、テキスト形式、或いは測定結果報告書等の所定様式で記載されたグラフィック形式とする。Bluetoothを用いた場合、一般オブジェクト交換若しくはファイル転送プロファイルを用いて自動的に報告書等が携帯電話に送信され、そのままメールに添付して送信することもできる。
【符号の説明】
【0016】
1:地上高測定装置、2:ON/OFFボタン、3測定ボタン、
4:スキャナー部、 5:表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略上方の所定の立体角の範囲で測長レーザー光を2次元走査し、測長を行なうレーザーレーダと、
該測長の結果と、該測長レーザー光の照射方向と鉛直方向との成す角度と、に基づき、前記範囲内における最低の鉛直高さを得るコンピュータと、
該最低の鉛直高さを数値で表示する表示器と、を備える架空ケーブルの地上高測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−249665(P2010−249665A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99557(P2009−99557)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】