説明

染色されたフォトレジストとその方法及びそれからなる工業製品

【課題】 本発明は新規なフォトレジスト及びそれに用いる染料化合物を提供する。
【解決手段】 本発明は、樹脂バインダー、光活性成分、特に酸発生剤、及び、1つ又はそれ以上の発色団を含有する染料物質からなる新規なフォトレジスト組成物に関する。本発明のフォトレジスト組成物は、照射線の望ましくない反射を減少させることができる。本発明の好ましい染料化合物は、遠紫外領域に吸収帯を有するアントラセンや他の多環式部分などからなる発色団を1つ又はそれ以上有する高分子物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠紫外線露光に特に適合し、そしてサブミクロン単位の高分解特性を形成する性能を持つ新規のフォトレジスト化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは基板上へ画像を転写するために使用される感光性フィルムである。フォトレジストはネガまたはポジの画像を形成する。フォトレジストの塗膜層を基板上に形成したあと、塗膜層はフォトレジストコーティングに潜像を形成するために紫外線のような活性化エネルギー源によりパターン化されたフォトマスクを通して露光される。フォトマスクは、活性放射線を透過しない領域および透過する領域を有し、そしてそれはフォトレジストを塗布した基板に目的とする画像を転写する。レリーフ画像はレジスト塗膜の潜像パターンの形成により転写される。フォトレジストの使用については、デフォレスト(Deforest)著の「フォトレジスト材料及び方法」(Photoresist Materials and Processes; McGraw Hill Book Company, New york, 1975)、及びモロー著(Moreau)の「半導体リトソグラフィー、原理、実用及び材料」(Semiconductor Lithography,Principles,Practices and Materials; Plenum Press, New york)に記載がある。
【0003】
さらに、最近、遠紫外光線を使って光で画像作成ができるフォトレジスト構成物が知られている。このようなフォトレジストはネガ型でもポジ型でも可能であり、光により発生する酸の単位当たりに多くの架橋反応(ネガ型の場合)又は脱保護反応(ポジ型の場合)を包含する。別の表現では光により発生する酸は触媒的に作用する。ポジ型化学増幅レジストの場合、いくつかのカチオン性開始剤を使用するとフォトレジストバインダーから懸吊している幾つかの“保護”基の開裂、或いはフォトレジストバインダーの骨格を構成する幾つかの基の開裂が引き起こされる。例えば、米国特許第5,075,199号、同第4,968,581号、同第4,883,740号、同第4,810,613号及び同第4,491,628号、並びにカナダ特許出願書第2,001,384号を参照されたい。フォトレジスト塗布層を露光することによって選択的に保護基が開裂するとき、例えばカルボキシル又はイミドのような極性官能基が生成し、それによってレジスト塗布層の露光領域と未露光領域との溶解特性に差が生じる。
【0004】
フォトレジストの重要な特性は画像分解能である。サブミクロン及びサブハーフミクロンの次元の線を含み、そして垂直または基本的に垂直な側壁を持つ、現像されたフォトレジストの細い線の精密な画像は塗布された基板に、基板のパターンを正確に転写することが非常に好ましい。しかしながら、現在の多くのフォトレジストはそのような高解像度の細い線の画像を得ることができない。
【0005】
たとえば、フォトレジストに露光するための活性化放射線の反射はしばしばフォトレジスト層に転写された画像の分解能の限界を示す。基板/フォトレジスト表面からの放射線の反射は露光中のフォトレジストに対する放射線の強度に変化を生ずる。その結果、像上に幅の一定しないフォトレジストの線を生ずる。放射線は露光が意図されていないフォトレジストの領域に対して基板/フォトレジスト表面からもまた散乱される。散乱と反射の総計は典型的には局所毎に異なるであろう。その結果線の幅のばらつきを生ずる。
【0006】
活性化放射線の反射もまた”定常波効果”としてこの技術分野で知られている現象を引き起こす。露光装置レンズの色収差の効果を減少するために、単一または準単一の放射線がフォトレジスト投影技術において一般的に利用されている。しかしながら、フォトレジスト/基板表面の放射線の反射のために、単一または準単一の放射線がフォトレジストの露光に使われるとき建設的及び破壊的な干渉が特に顕著となる。そのような場合反射された光はフォトレジスト中で定常波を形成するような光の干渉を起こす。反射しやすい基板の場合、振幅の大きな定常波が波の極小において露光されたフォトレジストの薄い層を形成することになるのでその問題が悪化する。このような露光された層は、フォトレジストの側面におけるエッジ処理の問題を生ずるために正確なフォトレジストの現像を阻害することになる。フォトレジストを露光するために必要な時間は、フォトレジストの量が増加すると露光に必要な照射の総量が増大するために、フォトレジストの厚さに応じて増加する関数となるのが一般的である。しかしながら、定常波効果のために、露光する時間は、(単純な増加関数ではなく)フォトレジストとしての機能を満たす最大の厚さと最小の厚さの間でいろいろと変化する(例えば、極大値や極小値を有するような)、他の因子を含むものとなる。もしフォトレジストの厚さが一様でないのならばこの問題はさらに深刻となり、その結果線幅の制御ができなくなる。
【0007】
基板表面の状態(substrate topography)のばらつきもまた解像度を悪化させる反射問題を生ずる。基板上の画像(image)も、ばらばらで制御されていない方向への散乱または反射による不確定な照射を生じさせ、フォトレジストの現像の一様さに影響する。基板上の画像がさらに複雑な回路を設計するための努力をもって、さらに複雑になればなるほど、照射線の反射の効果はさらに深刻になる。たとえば、よくマイクロエレクトロニック基板で使用される金属種を連結した基板は、その表面の状態また高反射領域があるために特に問題となる。
【0008】
高密度半導体装置に関する近年の傾向としては、産業においてエキサイマーレーザー光(248.4nm)、ArFエキサイマーレーザー光(193nm)、電子線およびソフトx−線を含む遠紫外線(DUV)(300nm、または、より短い波長)に露光源の波長を短くする傾向がある。フォトレジスト塗膜に転写するための波長の短い光の使用は、フォトレジスト層へのより深い浸透となりそしてフォトレジスト層に戻る露光エネルギーの反射を増加する。それゆえ、短い波長の使用は基板表面からの反射の問題を悪化させる。
【0009】
それゆえ新しい、サブミクロンおよびサブハーフミクロン次元の図を含む高解像度の細い線の図を得ることができるようなフォトレジスト組成物を得ることが望ましい。また、遠紫外線によって転写されうる新しいフォトレジスト組成物を得ることがより望ましい。さらに、露光照射線の反射を減少させるフォトレジストを得ることが特に望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は新規のフォトレジスト組成物を提供する。一般的には樹脂バインダー、光活性成分、特に酸発生剤、そして露光照射の不要な反射を減少することが出来る一つかそれ以上の発色団を含む染料からなる。好ましい染料は、遠紫外露光照射を効果的に吸収する一つかそれ以上の発色団を含む高分子物質(一般的にここでは「染料樹脂」と言う。)である。
【0011】
本発明の染料の好ましい発色団は、炭素環式または複素環式の多環式部分を含むものである。式−(C=O)O(CH)n−アントラセンで示される基のようなアントラセンエステルを含む、この場合のnは0から約6までのの整数である、アントラセンは特に好ましい発色団である。他の適切な発色団は、ヒドロキシキノリニル基、フェナントレニル基、アクリジン基のようなキノリニル基又は環に置換基を有するキノリニル誘導体である。
【0012】
一般に、本発明の染料樹脂は、単位当たり約5〜90%の前述の発色団を含む、好ましくは染料樹脂の単位当たり約10〜80%のものである。本発明の染料樹脂の重量平均は分子量は、少なくとも約500ダルトンである。本発明の好ましい染料樹脂は、248nmで少なくとも約4単位/μの光学密度を有するものである。より好ましくは、一般に共重合体の染料樹脂であり、アントラセン共重合体、特にアントラセン/アクリル樹脂を含むものてある。
【0013】
フォトレジストの本発明の染料樹脂の使用は、露光照射線の望ましくない反射の実質的な減少、及び、解像度を高め、そして現像されたレジストの画像の線幅の問題を解消し、レジストの顕著なリソグラフにおける改良となる。後の実施例の結果を参照されたい。
【0014】
さらに、本発明は、レリーフ画像を形成するための方法、並びに、本発明のフォトレジスでコーティングされたマイクロエレクトロニックウェハーまたはフラットパネルディスプレー用の基板のような基板を有する新規の工業製品を提供する。新規のポリマーもまた提供するものである。本発明の他の態様を以下に説明する。
【0015】
上記の通り、本発明のフォトレジストの好ましい染料化合物は、露光照射線の望ましくない反射を有意に防ぐために、遠紫外照射線を効果的に吸収することができる一つまたはそれ以上の発色団を含むものである。
【0016】
芳香族、特に多環式炭化水素または多環式複素環単位が、この染料化合物の遠紫外染色団として典型的には好ましいものである。たとえば、3〜8員環で、環当たり0から3のN、O及びS原子を持つ2から3又はそれ以上の縮合環若しくは独立した環を有する基が挙げられる。そのような発色団としては、より具体的には、置換もしくは非置換のアントラセニル、置換もしくは非置換のフェナントリル、置換もしくは非置換のアクリジン、置換もしくは非置換のキノリニル及びヒドロキシキノリニル基の様な環置換キノリニル類を挙げることができる。
【0017】
前述のように、置換または非置換のアントラセニル基類は、発色団として特に好ましい。例えば、好ましい染料樹脂としては、次式(I)で示されるような、特にアクリル樹脂に懸垂されたアントラセニル基を有するものである。
【0018】
【化6】

【0019】
上記式中、Rは、各々独立して、置換または非置換アルキル基、好ましくは炭素数1〜約10の、更に典型的には1から約6の炭素数を有するアルキル基であり、Wは化学結合または置換または非置換のアルキレン基、好ましくは炭素数1〜約4のものであり、さらに好ましくは置換または非置換のメチレン(−CH−)基であり、
は、各々独立して、ハロゲン(特にF、Cl、Br、I)、好ましくは、炭素数1〜約12の置換もしくは非置換のアルキル基、好ましくは1ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルコキシ基、好ましくは2ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルケニル基、好ましくは2ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキニル基、好ましくは1ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基などであり、
mは、0(アントラセニル環の全部が水素置換されたとき)から9の整数であり、好ましくはmは0か1または2であり、
xは、ポリマー中のアルキルアクリレート単位のモル分率又はモルパーセントであり、好ましくは約10から約80パーセントであり、
yは、ポリマーの中のアントラセン単位を有する部分のモル分率又はモルパーセントであり、好ましくは約5から90%であり、そして、それぞれのZはポリマー単位の間の橋架け基(bridge group)であり、例えば、好ましくは1ないし約10個の炭素原子、より典型的には約1ないし約6個の炭素原子、更に好ましくは1ないし約3個の炭素原子を有し、そして必要に応じて1ないし約3個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよい置換もしくは非置換のアルキレン基であるか、或いは、Zは好ましくは2ないし約10個の炭素原子を有し、そして必要に応じて1ないし約3個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよい置換もしくは非置換のアルケニル基又はアルキニル基である。この例示したポリマーも必要ならば他の単位を含んでもよい。しかし、ポリマーは少なくとも約10モル%のアントラセン単位を含むことが望ましい。ヒドロキシアルキル基は特に好ましいR基である。特に、R基が2−ヒトロキシエチル(−CHCHOH)のような第一級の水酸基を持つアルキル基である場合が好ましい。好ましい樹脂バインダーは、9−(メチレン)アントラセンエステル単位(すなわち、Wがメチレン基であり、そのメチレン基がアントラセンの9−位に置換したもの。)を有するものである。特に好ましい染料樹脂は以下に述べる実施例1に示した式(III)で示されるものである。
【0020】
本発明の他の好ましい染料樹脂は、置換された又は非置換のキノリニル又はヒドロキシキノリニルのようなひとつかそれ以上のN、O又はS異項原子を有するキノリニル誘導体である。このポリマーは、ポリマー骨格から懸吊されたカルボキシ及び/又はアルキルエステル単位のような他の単位を含んでもよい。特に好ましい染料樹脂は次式(II)で示されるアクリルポリマーである。
【0021】
【化7】

【0022】
は、各々独立して、置換又は非置換のアルキル基、好ましくは1から約10炭素原子、更に典型的には1から約6炭素を有するものであり、W’は、化学結合または置換又は非置換のアルキレン基、好ましくは1から約4炭素原子をもち、W’は好ましくは結合であり、Gは炭素、窒素、酸素又は硫黄であり、Rは、各々独立して、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、好ましくは1ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキル基、好ましくは1ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルコキシ基、好ましくは2ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルケニル基、好ましくは2ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキニル基、好ましくは、1ないし約12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基などであり、
mは、0(環の全部が水素原子で置換されたとき。)から7の整数であり、そして好ましくはmは0.1又は2であり、
x’は、ポリマー中のアルキルアクリレート単位のモル分率又はモルパーセントであり、好ましくは10から約80パーセントである。
y’は、ポリマー中のキノリニル又はヒドロキシキノリニル単位のモル分率又はモルパーセントであり、好ましくは約5から約90パーセントであり、そして、
各Zはポリマー単位の間の橋架け基(bridge group)であり、例えば、好ましくは1ないし約10個の炭素原子、より典型的には約1ないし約6個の炭素原子、更に好ましくは1ないし約3個の炭素原子を有し、そして必要に応じて1ないし約3個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよい置換もしくは非置換のアルキレン基であるか、或いは、Zは好ましくは2ないし約10個の炭素を有し、そして必要に応じて1ないし約3個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよい置換もしくは非置換のアルケニル基又はアルキニル基である。このポリマーはもし必要ならば、他の単位を含んでもよい、しかし好ましくはポリマーはキノリニル及び/又はヒドロキシキノリニル単位の少なくとも約10モルパーセント含む。ヒドロキシアルキル基は、R基として特に好まれる。特に、Rが2−ヒドロキシエチルのように第一級の水酸基を有するアルキル基が好ましい。
【0023】
前述の置換基類(R、R、R、R、Z、W、W’および置換基としての発色団)は、ハロゲン(F、Cl又はBr)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルカノイル基例えばアシル基のようなC-のアルカノイル基のようなアルカノイル基又はその類縁体、1から約8個の炭素原子をもつアルキル基、1つかそれ以上の不飽和結合を有し、かつ、2から約8個の炭素原子をもつアルキニル基又はアルキニル基、1から約6個の炭素原子をもつアルコキシ基などの1個以上の適当な基によって、1個以上の置換可能な位置を置換されていてもよい。
【0024】
本発明の染料樹脂は好ましくは、少なくとも一つのモノマーがアントラセニル基、キノリニル基又はヒドロキシキノリニル基などの発色団基を含むモノマーである、二つ又はそれ以上の異なるモノマーを集合することにより調整される。好適な方法としては、ラジカル集合が挙げられる。たとえば、種々のユニットを供給し得るモノマー類をラジカル開始剤の存在のもとで、好ましくは不活性気体(たとえばN又はアルゴン)中で、約70℃かそれ以上くらいの温度に上げて、もっとも反応温度は採用された特定の試薬の反応性及び反応溶媒(溶媒が用いられる場合。)の沸点によって異なってもよいのであるが、このような条件で行うこともできる。具体的な反応条件下は、以下の実施例を参照されたい。具体的な特定化された系の適切な反応温度は、現在の開示に基づき当業者ならば既に経験上知り得ることである。反応溶媒は望むならば用いてよい。好適な溶媒は、プロパノール及びブタノールのようなアルコール及びベンゼン、クロロベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族溶媒である。ジメチルソルホキサイド、ジメチルホルムアミド及びTHFもまた好適である。重合反応は、無溶媒で行うこともできる。本発明のコポリマーを調整するために種々のラジカル開始剤を使用することができる。たとえば、アゾビス−2,2’−イソブチロニトリル(AIBN)および1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)のようなアゾ化合物を用いることもできる。また、過酸化物、過酸化エステル、過酸およびパーサルファイト(persulfates)も採用しうる。
【0025】
あまり好ましくないが、前もって形成された樹脂に、発色団を含有するものを反応させて、染料樹脂を調整することもできる。例えば、ノボラックまたはポリ(ビニルフェノール)ポリマー又は共重合体のようなフェノール樹脂に、アントラニルカルボン酸を反応させることもできる。
【0026】
本発明の好ましい色素樹脂は、約500から約10,000,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する。さらに典型的には約1,000から約1,000,000ダルトンのMwであり、さらに典型的には約5,000から約200,000ダルトンであり、さらにより典型的には約5,000から約110,000ダルトンである。そして、数平均分子量(Mn)は約500から約1,000,000ダルトンである。特に好ましい染料樹脂は、少なくとも7,000又は80,000ダルトン以下のMwを有するものである。本発明のポリマーの分子量(MwかMnのいずれか)は、ゲルパーミションクロマトグラフィーにより適宜決定される。
【0027】
染料樹脂は、100から約300nmの範囲の遠紫外波長でよい吸収を示すものである。さらに、本発明における好ましい樹脂バインダーは、約248nmで、ミクロン当たり(少なくとも約3)吸光度単位(absorbance unit)(吸収 ユニット/ミクロン)の光学密度を持ち、好ましくは248nmで約5から20またはそれ以上のミクロン当たりの吸光度単位である。より好ましくは248nmで約8から20またはそれ以上のミクロン当たりの吸光度単位である。特定の樹脂に対するより高い吸光度は、樹脂上の発色団単位のパーセンテージの増加により得られる。ここで使われた樹脂の光学密度は、以下の手順により決定される。シリコンウェハー(例えば、4インチウェハー)及び磨かれたクォーツウェハー(例えば、4インチウェハー)の上に樹脂の溶液をスピンコーティングする。ウェハーは約110℃で60秒間ソフトに焼成される。塗布層の厚さはプロメトリクスSM300シックネス測定器(Prometrix SM300 Thicknes Measurement tool)を用いることにより決定される。吸収スペクトル曲線は、塗布層から得られ、たとえば、キャリー13UV−VISスペクトロフォトメーター(Cary 13UV−VIS Spectrophotometer)をもちいる。吸光度を1.0μmの厚さのフィルムに規格化する。
【0028】
フォトレジスト組成物の染料樹脂の濃度は、比較的広い範囲で適用される。そして一般的には、染料樹脂は、フォトレジストの乾燥成分の総計の約10〜70重量%の濃度で用いられる。より一般的には乾燥成分の総計(溶剤を除く全てのレジスト成分)の約20〜50重量%である。
【0029】
前述のとおり、染料化合物に加えて、本発明のフォトレジストは樹脂バインダーと光活性成分を含む。本発明のネガレジストは架橋成分も含む。光活性成分は光酸または光塩基発生剤(a photoacid or a photobase generator)のいづれかが適切であろう。しかしながら、特にポジ型レジストに、光酸発生剤はさらに一般的に用いられている。
【0030】
好ましくはフォトレジストの樹脂バインダーは、フォトイメージされたレジスト成分をアルカリ水溶液で現像できる官能基を持つ。ヒドロキシル基またはカルボキシレートのような極性官能基を含む樹脂バインダーが好ましい。そして樹脂バインダーは、アルカリ溶液で現像できる十分な量のレジスト成分として、レジスト組成物において使用される。
【0031】
一般的に好ましい樹脂バインダーは、ノボラック樹脂、アルケニルフェノールのホモおよびコポリマーおよびN−ヒドロキシフェニル−マレイミデスのホモおよびコポリマーなどとして当業者に公知のフェノールアルデヒド縮合物などのフェノール性樹脂である。
【0032】
ノボラック樹脂を調整するための、アルデヒド(特にホルムアルデヒド)との縮合に好適なフェノール類の例としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、チモールおよびそれらの混合物などが挙げられる。酸触媒による縮合反応は、重量平均分子量(Mw)にして約500から100,000ダルトンの好適なノボラック樹脂の調整に適している。ポリビニル(フェノール)類は、たとえば、米国特許第4,439,516号で開示されている方法により調整することができる。好ましい樹脂バインダーおよびそれらの合成法は、米国特許第5,128,230号にも開示されている。
【0033】
ポリ(ビニルフェノール)類は、ブロック重合により形成されうる。これは、触媒の存在下に対応するモノマーをケンダク重合又は溶液重合により調整される。ポリビニルフェノール樹脂の製造に有用なビニルフェノール類は、たとえば、商業的に入手可能なクマリンまたは置換クマリンの加水分解し、引き続いて、得られたヒドロキシケイ皮酸類を脱炭酸することにより調整することができる。また、使用しうるビニルフェノールは、対応するヒドロキシアルキルフェノール類を脱水するか、又は、マロン酸と置換または非置換ヒドロキシベンズアルデヒドの反応により得られるヒドロキシケイ皮酸類を脱炭酸することにより得ることもできる。そのようなビニルフェノールから合成される好ましいポリビニルフェノール樹脂は、約2,000から60,000ダルトンの分子量(Mw)を有する。
【0034】
フェノール及び非芳香族性環式アルコール単位を有する共重合体もまた本発明のレジストの樹脂バインダーとして好ましいものである。この共重合体は、ノボラックまたはポリ(ビニルフェノール)樹脂の部分水素化により合成することができる。そのような共重合体およびフォトレジスト成分としてのそれらの使用については、サッカレー(Thackeray)らの米国特許第5,128,232号に開示されている。
【0035】
他の好ましい樹脂バインダーとしては、ビスヒドロキシメチル化化合物から形成される樹脂、及び、ブロックノボラック樹脂が挙げられる。米国特許第5,130410号および5,128,230号には、そのような樹脂およびフォトレジスト成分としての使用が開示されている。加えて、類似するか又は異なる種類の成分からなる1種又は2種以上の樹脂バインダーを、フォトレジスト組成物のリソグラフィー特性の付加的な制御性を付与するために、これらを混合か結合させて用いることができる。たとえば、これらの樹脂類の混合は、フォトスピードおよび温度特性の調節のため並びに現像におけるレジストの溶出状態を制御するために行われることもある。
【0036】
本発明の好適なフォトレジストの一種は、前記の染料樹脂、溶出速度抑制剤として作用する光酸発生剤、および、ノボラック若しくはポリ(ビニルフェノール)又はその部分水素化物のような樹脂バインダーの成分からなる「従来型」のポジ型のレジストである。このレジストの塗布層が光活性化されると、光活性成分が酸性物質に変わる。これによって生じる酸性の光生成物を含む塗布層の領域は、影響を受けない、(すなわち活性化されていない)光活性成分のみを含む領域よりも、水性アルカリ性現像液に溶解しやすくなる。これらのポジ型レジストに用いられる光活性成分は、一般的には、2,1,4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルおよび2,1,5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステルのようなキノンジアゾ類である。
【0037】
別の特に好ましい態様においては、本発明は、前記の染料樹脂を含有する化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を提供する。化学増幅型のフォトレジスト組成物は、例えば、米国特許第4,968,581号;4,883,740号;4,810,613号;4,491,628号および5,492,793号などに多数開示されている。これら全ては、ここに引用することにより、化学増幅型ポジ型フォトレジストの作り方および使い方についての教示を本明細書に組み入れる。特に好ましい本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジストは、光酸発生剤およびフェノール性および非フェノール性単位の両方を含むコポリマーからなる樹脂バインダーの混合物からなるものである。たとえば、そのようなコポリマーのうちの好ましいグループの一つは、実質的に、基本的にまたは完全にコポリマーの非−フェノール性単位上にのみ酸放出基を有するものである。一つの特に好ましい共重合体バインダーは以下の式で示される繰り返し単位x及びyを有するものである。
【0038】
【化8】

【0039】
上記式中、ヒドロキシル基はコポリマーのオルト、メタまたはパラの位置に存在し、そしてR’は1から約18、さらに一般的には1から約6又は8の炭素原子を有する置換または非置換のアルキル基である。tert−ブチル基は一般的には好適なR’基である。R’基は、たとえば、一つ又はそれ以上のハロゲン(特にF、ClまたはBr)、Cアルコキシ基、Cアルケニル基、などで必要により置換されてもよい。上記式中のフェノール性単位の部分も、前記した置換基により置換されていてもよい。xおよびyの単位は通常コポリマーのなかで交互にあってもよく、また、ポリマー中にランダムに存在していてもよい。このようなコポリマーは容易に形成することができる。たとえば、上記式で示される樹脂については、ビニルフェノールおよびt−ブチルアクリレートなどの置換または非置換アルキルアクリレートを、当業者には公知のフリーラジカル条件下で縮合することにより調整できる。アクリレート中の置換エステル部分、即ち、R’−O−C(=O)−部分が、その樹脂の酸放出基として働き、そして本樹脂を含むフォトレジストの塗膜層の露光により、光酸に誘発される開裂を生じることになる。好ましいコポリマーは、Mwが約8,000から約50,000、好ましくは約15,000から約30,000であり、分子量分布が約3かそれ以下、さらに好ましくは約2かそれ以下である。非フェノール性樹脂もまた本発明の組成物の樹脂バインダーとして使うことができる。このような非フェノール性樹脂としては、たとえばt−ブチルアクリレートまたはt−ブチルメタクリレートのようなアルキルアクリレート、および、ビニルノルボルニルまたはビニルシクロヘキサノール化合物のような脂環式ビニル化合物との共重合体などがある。このようなコポリマーも、前記ラジカル重合や他の公知の方法により合成されうる。そして、これらの共重合体のMwは、約8,000から約50,000で、分子量分布が約3かそれ以下であるものが好ましい。他の好ましい化学増幅型ポジ型フォトレジストは、シンタ(Sinta)らの米国特許第5,258,257号に開示されている。
【0040】
本発明の好ましいネガ型レジスト組成物は、前記の染料樹脂、および、酸により補強、架橋または硬化させることができる物質の混合物よりなる。
【0041】
特に好ましいネガ型レジスト組成物は、本発明の染料樹脂、フェノール性樹脂のような樹脂バインダー、架橋成分および光酸発生剤からなるものである。このような組成物およびそれらの使用は、欧州特許出願第0164248号および0232972号並びにサッカレー(Thackeray)らの米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂バインダーとして用いるための好ましいフェノール性樹脂としては、上述したノボラック類やポリ(ビニルフェノール)類などがある。好ましい架橋剤としては、メラミン、グリコーリルス(glycourils)などのアミンベースの物質、ベンゾグアナミンベースの物質および尿素ベースの物資などがある。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が一般的にもっとも好ましい。そのような架橋剤は商業的に入手可能である、たとえば、ミラミン樹脂はアメリカンサイナミド社(American Cyanamid)よりサイメル300、301および303(Cymel 300,301 and 303)の商品名で売られている。グリコウリル樹脂はアメリカンサイナミド社(American Cyanamid)よりサイメル1170、1171、1172(Cymel 170,1171,1172)、パウダーリンク1174(Powderlink 1174)の商品名で売られているし、尿素ベースの樹脂はビートル60、65および80(Beetle 60,65 and 80)の商品名で、そしてベンゾグアナミン樹脂はサイメル1123および1125(Cymel 1123,1125)の商品名で売られている。
【0042】
一般に、スルホネート化合物が好ましい光酸発生剤(PAG類)であり、特にスルホネート塩類が好ましい。特に好ましい2種類の薬品は次のPAGの1及び2である。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
このようなスルホネート化合物は後記の実施例7で開示している方法により調製でき、その実施例7には前記PAGの1の合成を詳述している。ほぼモル当量のt−ブチルベンゼン及びベンゼンを第1段階で無水酢酸及びKIOと一緒に反応させることを除いて、後記の実施例7と同じ手順で前記スルホネートPAGの2を調製できる。また、対イオンのアニオン部分がトリフルオロメチルスルホネート(CFSO)又はベンゼンスルネートである前記の2種のヨードニウム化合物も好ましい。これらのスルホネートPAG類は、本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジストの使用のために特に好ましい。
【0046】
他の好適なスルホネートPAG類には、スルホネート化エステル類及びスルホニルオキシケトン類が挙げられる。ベンゾイントシラート、t−ブチルフェニルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテート及びt−ブチルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートを含めて、適当なスルホネートPAG類の開示に関しては、「ジャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド テクノロジー(J.of Photopolymer Science and Technology)、第4巻3号、第337〜340頁(1991年)」を参照されたい。好ましいスルホネートPAG類は、シンタ等の米国特許第5,344,742号にも開示されている。
【0047】
オニウム塩も本発明の組成物の好ましい酸発生剤である。弱い求核アニオンであるオニウム塩は特に好適であることが判っている。そのようなアニオンの例は、二価ないし七価の金属又は非金属、例えばSb、Sn、Fe、Bi、Al、Ga、In、Ti、Zr、Sc、D、Cr、Hf及びCu、並びにB、P及びAsなどのハロゲン錯アニオンである。好適なオニウム塩の例は、周期律表の■族aとb、■族aとb及び■族の、ジアリール−ジアゾニウム塩及びオニウム塩であり、例えば、ハロニウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びアルソニウム塩、芳香族スルホニウム塩及びスルホオキソニウム塩又はセレニウム塩である。好適で好ましいオニウム塩の例は、米国特許第4,442,197号、同第4,603,101号及び同第4,624,912号に見ることができる。
【0048】
他の有用な酸発生剤には、ニトロベンジルエステル系統、及びs−トリアジン誘導体が挙げられる。好適なs−トリアジン酸発生剤は、例えば米国特許第4,189,323号に開示されている。
【0049】
ハロゲン化非イオン性光酸発生化合物もまた好適である。この例としては、例えば、1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン(DDT);1,1−ビス[p−メトキシフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン;1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロデカン;1,10−ジブロモデカン;1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2−ジクロロエタン;4,4−ジクロロ−2−(トリクロロメチル)−ベンズヒドロール(ケルサン(Kelthane));ヘキサクロロジメチルスルホン;2−クロロ−6−(トリクロロメチル)−ピリジン;o,o−ジエチル−o−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジル)ホスホロチオネート;1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン; N−(1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエチル)アセトアミド;トリス[2,3−ジブロモプロピル]イソシアヌレート;2,2−ビス[p−クロロフェニル]−1,1−ジクロロエチレン;トリス[トリクロロメチル]−s−トリアジン;及びそれらの異性体、類縁体、同族体及びこれらの誘導体などが挙げられる。他の好適な光酸発生剤もヨーロッパ特許出願第0164248号及び同第0232972号にも開示されている。遠紫外露光用として特に好ましい酸発生剤としては、1,1−ビス(p−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン(DDT);1,1−ビス(p−メトキシフェノール)−2,2,2−トリクロロエタン;1,1−ビス(クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール;トリス(1,2,3−メタンスルホニル)ベンゼン;及び、トリス(トリクロロメチル)トリアジンなどが挙げられる。
【0050】
上述したとおり、本発明は光塩基発生化合物を含有してなるフォトレジスト組成物をも提供するものである。特に本発明の染料物質、上述したフェノール性樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤、および、活性照射に露光すると塩基促進架橋反応を行う光塩基発生化合物からなる塩基−硬化型組成物に関するものである。好適な光塩基発生化合物および塩基−硬化型組成物の使用方法は、クナドセン(Knudsen)らの米国特許第5,262,280号に開示されている。前述のメラミン樹脂のようなアミン−ベースの架橋剤が塩基−硬化型組成物には好適である。
【0051】
本発明のフォトレジストは、さらに他の物質を含んでもよい。必要に応じて加えられる好ましい添加物としては、塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)又はTBAH(後述の実施例7を参照)の乳酸塩であり、これによって、現像されるレジストレリーフ画像の解像度を高めることができる。添加される塩基の量は、比較的少量、例えば感光性成分に対して約1ないし20重量パーセントで使用するのが適当である。
【0052】
必要に応じて入れる他の添加剤には、線条防止剤、可塑剤、増速剤等が挙げられる。上述の樹脂物質に加えて染色化合物もまた欲するなら採用できる。このような必要に応じて入れられる添加剤は、比較的高濃度で用いられる増量剤(fillers)や添加染料を除き、比較的低濃度で用いられるのが普通である。例えば、レジストの全乾燥重量の約5から30重量パーセント程度である。
【0053】
本発明の組成物は、当業者には容易に調製できる。例えば、本発明のフォトレジスト組成物は、適当な溶媒にフォトレジスト成分を溶解することにより調製することができる。この際に使用される溶媒としては、例えば、乳酸エチル;2−メトキシエチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル;メチルエチルケトンのようなセロソルブエステル;及び3−エトキシーエチルプロピオネートなどが挙げられる。典型的には、フォトレジスト組成物の固形分は、この組成物の全重量の約5と35重量パーセントの間で変動する。樹脂バインダー及びPAG成分は、膜状の塗布層を形成し、高品質の潜像とレリーフ画像を形成するのに充分な量で含まれていなければならない。レジスト成分の好ましい量の例については後記の実施例を参照されたい。
【0054】
本発明の組成物は、公知の手順に従って使用される。本発明の液状塗布組成物は、例えばスピニング、浸漬、ローラコーティング又は従来からの塗布技術によって基板に塗布される。スピンコーティングの場合、塗布液の固形分を調節すると、使用する特定のスピニング装置、塗布液の粘度、スピナーの速度及びスピニングに要する時間によって所望の膜厚にすることができる。
【0055】
本発明のレジスト組成物は、フォトレジストを使う塗装作業が含まれるプロセスにおいて従来から使用されている基板に塗布されるのに適している。例えば、この組成物は、マイクロプロセッサー及び他の集積回路部品を製造するためのシリコン又は二酸化シリコンウェハーに塗布できる。アルミニウム−酸化アルミニウム、ヒ素化ガリウム、セラミック、石英又は銅基板も使用できる。液晶ディスプレー、及び例えばガラス基板、インジウム酸化錫被覆型基板等の他のフラットパネルディスプレー用基板にも使用するのに適している。
【0056】
フォトレジストを表面に塗布した後、好ましくはフォトレジストの塗膜が粘着しなくなるまで塗膜を加熱によって乾燥して溶媒を取り除く。それが終わると、従来の方法でマスクを通してその塗膜に画像形成を行う。露光は、フォトレジスト系の感光性成分を効果的に活性化して、パターン化された画像をレジスト塗布層に形成するほど充分にするのであって、更に詳しくは、露光装置、及びフォトレジスト組成物の成分にもよるが、露光エネルギーは、一般的には約10から300mJ/cmの範囲である。
【0057】
本発明のレジスト組成物の塗布層は、遠紫外領域、即ち350nm以下、更に一般的には約300nm以下で、一般的には、約150ないし300又は350nmの領域の露光波長によって光活性化されるのが好ましい。特に好ましい露光波長は約248nmである。
【0058】
露光に続いて、この組成物の膜状層を塗布層の露光された領域と露光されない領域の間の溶解度の違いをつくるまたは高めるため約50℃から約160℃の範囲の温度でベーキングするのが好ましい。たとえば、ネガ型フォトレジストは酸発生および塩素促進化架橋反応を誘導するため露光後加熱することが一般的に必要であり、そして多くの化学増幅型ポジ型フォトレジストは酸促進化脱保護反応を誘導するために露光後加熱を必要とする。
【0059】
露光後の加熱の後、形成されたフィルムが現像される。この現像は、好ましくは無機アルカリ性物質のような、塩基性水溶液の現像液を使用する。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム;テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液のような第四アンモニウムヒドロキシド溶液;エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン又はメチルジエチルアミンのような種々のアミン溶液;ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンのようなアルコールアミン類;ピロール、ピリジンのような環式アミン類等が挙げられる。一般的には、現像処理は当業者に公知の手順によって行うことができる。
【0060】
基板上のフォトレジスト塗膜を現像した後は、例えば当業者に公知の手順に従って、レジストが消失された基板領域を化学的にエッチングするか、或いはメッキすることによって、現像された基板は、レジストが消失された基板領域により選択的に加工することができる。マイクロエレクトロニクス用基板の製造、例えば二酸化シリコンウェハーの製造の場合、好適なエッチング剤としては、ガス状エッチング剤(例えばオキシジェンプラズマ流)およびハイドロフローリック酸エッチング溶液などがある。本発明の組成物はそのようなエッチング液に耐性が高いので、サブミクロンの幅の線などの、高い解像度での加工が可能となる。このような処理の後、レジストは公知の剥離手段により加工済みの基板から取り除かれる。
【0061】
本明細書において記載された文献の内容は、これを引用することにより本明細書に組み入れられている。次の実施例は本発明をより具体的に説明するものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
なお、以下の実施例において、レジスト組成における染料として用いられたメチルアントラセンメタクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート(ANTMA−HEMA)コポリマー樹脂は、Mn、Mwおよびパーセントアントラセン単位並びにその他のその実施例で開示されたその他の特性とともに、以下の実施例1により製造される式(III)で示される物質であった。以下の実施例で用いられた樹脂バインダーの物質は、ビニルフェノールおよびt−ブチルアクリレートの共重合体で、Mwが約20,000である。そして、この共重合体は、日本の東京の丸善石油社(Maruzen Oil Company)から丸善CTBA161(Maruzen CTBA 161)の商品名で購入できる。実施例で使用したシルウェットL−7604(登録商標)(SilwetL−7604)レベリング剤は、ユニオンカーバイド社(Union Carbide)より商業的に入手可能である。
【実施例】
【0063】
実施例1 好ましい染料樹脂の調製

1.発色団を用いたモノマーの調製
A.クロロキシンメタクリレートの調製
マグネティックスターラーと窒素導入部を装備した500mlの丸底フラスコに、5.0g(0.0234mol)の5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリン(クロロキシン)、2.01g(0.0234mol)のメタクリル酸、500mlの塩化メチレン、1.43g(0.5eq.)の4−ジメチルアミノ−ピリジン(DMAP)、及び、6.72gの1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカーボジイミド(EDCI)を満たした。反応混合物は、12時間25℃で、窒素雰囲気下にて撹拌された。生成物はカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製され、黄白色の固体(収量67%)を得た。
B.メチルアントラセンメタクリレートの調製
メチルアントラセンメタクリレート(CHC(=CH)COCH−9−アントラセン)は、「マクロモレキュールズ」誌(”Macromolecules”17(2):235(1984))に開示されている方法で調製した。
【0064】
2.樹脂の調製
メチルアントラセンメタクリレート(ANTMA)/ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のコポリマー、すなわち下記式(III)のコポリマーを以下により調製した。
300mlの3つ口フラスコにマグネティックスターラー、コンデンサー、窒素導入部及び真空ポンプ接続部を取り付け、16.0g(0.1229mol)のHEMA(蒸留精製済みのもの)、8.49g(0.0307mol)のメチルアントラセンメタクリレート、0.2449g(1重量%)のAIBN、及び、180mlのTHFで満たした。反応フラスコは液体窒素中で冷却され、その間フラスコ内を窒素でパージした。該反応フラスコの内容物が冷凍されたとき、該フラスコ内は真空にされ、その後窒素で3回パージした。反応混合物は、18時間還流下で撹拌された。黄白色のポリマーを300mlのエーテル中に沈殿させ、濾過し、それから真空下50℃で乾燥した。ANTMA/HEMAコポリマーが得られた(収率86%)が、これは81モル%の−CHC(CH)(COCHCHOH)−単位と19モル%の−CHC(CH)(COCH−9−アントラセン)−単位を有し、Mnが2295、Mwが19150、及びTgが110℃であった。このANTMA/HEMA染料樹脂は下記式(III)に示される構造を有し、式中、xは約81%であり、yは約19%であった。
【0065】
【化11】

【0066】
さらに、ANTMA/HEMAコポリマーとHEMA/クロロキシンメタクリレートコポリマーが、同様の方法で調製された。なお、HEMA/クロロキシンメタクリレートコポリマーを調製する場合には、メチルアントラセンメタクリレートの代わりにクロロキシンメタクリレートが用いられた。
【0067】
実施例2
ANTMA/HEMA染料溶液(式(III)に示されるANTMA/HEMA樹脂の5重量%乳酸エチル溶液)の10.664g、ポリヒドロキシスチレン−t−ブチルアクリレートコポリマーの固体2.664g、シルウエットL−7604界面活性剤(商品名)溶液(乳酸エチル中に固体で10%)の0.126g、及び、乳酸エチルをさらに6.525gからなる溶液を調製した。該溶液は0.2μmのPTFEメンブランスフィルターにより、濾過された。
ANTMA/HEMAコポリマーと同じ濃度の染料が用いられて、染料溶液がさらに生成された。これらの染料を表1に示した。染料物を含まない試料もさらに評価した。
水晶(クウォーツ)及びシリコンウェハーに染色されたポリマー溶液を塗布して、光学特性を試験した。ウェハーを、真空ホットプレートと、GCAミクロトラックコーティング及びベーキング装置上で、100℃で60秒間ソフトベーキングした。シリコンウェハーはコーティング膜厚とコーシー係数(cauchy coefficient)を検査した。吸光スペクトルは、キャリー(Cary)13UV−VISスペクトロフォトメーターにより、200nm〜500nmが用いられた。248nmにおける吸光度 (ABS)を表1に示した。クウォーツウェハーも続いて、60秒間、125℃及び150℃でベーキングされた(スペクトル曲線はそれぞれのベーキングの後に実行された)。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例3
ポリヒドロキスチレン−t−ブチルアクリレートコポリマーの固体6.083g、ジ−tert−ブチルフェニルヨードニウム ショウノウスルホン酸の光酸発生剤溶液(photoacid generator)(10w%の固形分を含む乳酸エチル溶液)の2.432g、テトラブチルアンモニウムヒドロオキサイドラクテート溶液(10w%の固形分を含む乳酸エチル溶液)の0.136g、ANTMA/HEMA染料溶液(37.5vol%アニソール:62.5vol%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に固体として34wt%)の0.181g、シルウエットL−7604界面活性剤(商品名)溶液(乳酸エチル中に固体で10%)の0.322g、及び、乳酸エチルをさらに30.850gからなるフォトレジスト組成物(レジスト1)を調製した。
さらに2つのフォトレジスト(レジスト2とレジスト3)を、ANTMA/HEMA染料溶液の量がフォトレジストフィルムの光学的濃度を調節しながら変えられたことを除いて、前記のレジスト1と同様の方法で生成した。ANTMA/HEMA染料溶液の量は、レジスト2が0.524g、レジスト3が0.864gであった。このようにレジスト1〜3は、染料固体(wt)/ポリマー固体(wt)の比が、それぞれ1、3及び5%であった。
【0070】
シリコンウェハーにはHMDSが下塗りされ、レジスト1〜3がそれぞれフィルム膜厚0.86μmとなるよう塗布された。膜厚の測定には、プロメトリックスSM300(Prometrix SM300)フィルム膜厚測定器が使用された。クウォーツウェハーには、さらにレジスト1〜3を、光学特性を試験するため塗布され、表2にその吸光度が示されている。これらのウェハーは、真空ホットプレートと、GCAミクロトラックコーティング及びベーキング装置上で、130℃で60秒間ソフトベーキングした。塗膜されたウェハーを、それから、90秒140℃で、露光後焼成(post-exposure bake)し、60秒間、GCAミクロトラック装置上でシングル吹き付けパドル(single spray puddle)により、シップレー マイクロポジットCD−26(Shipley Microposit CD-26)の0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド現像液を用いて現像した。
ソフトベーキングされ、フォトレジストコーティングされたウェハーを、ブランク クォーツ レティクル(blank quartz reticle)を用いて、0.2〜20.0mJ/cmの間で、0.2mJ/cmずつ増加させて照射した。照射にあたり必要となるエネルギー量が調べられ(表3を参照のこと)、焦点距離での照射の配置(focus-exposure arrays)が濃い線/空間の組と孤立した線条を有するレティクルを用いて行われた。
【0071】
【表2】

【表3】

【0072】
実施例4
2種類のフォトレジストを調製した。ひとつは、実施例1のANTMA/HEMA染料樹脂を含有し、他方は染料組成物を含有しないものとした。染色されたフォトレジストは、ポリヒドロキシスチレン−t−ブチルアクリレートコポリマーの固体5.860g、ジ−tert−ブチルフェニルヨードニウムショウノウスルホン酸の光酸発生剤溶液(photoacid generator)(10w%の固形分を含む乳酸エチル溶液)の2.345g、テトラブチルアンモニウムヒドロオキサイド乳酸エステル溶液(10w%の固形分を含む乳酸エチル溶液)の0.131g、ANTMA/HEMA染料溶液(37.5vol%アニソール:62.5vol%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に固体として34wt%)の0.864g、シルウエットL−7604界面活性剤(商品名)溶液(乳酸エチル中に固体で10wt%含まれる)の0.322g、及び、乳酸エチルをさらに30.491gを含有してなった。
染色されていないフォトレジストは、ポリヒドロキシスチレン−t−ブチルアクリレートコポリマーの固体13.249g、ジ−tert−ブチルフェニルヨードニウムショウノウスルホン酸の光酸発生剤溶液(photoacid generator)(10w%の固形分を含む乳酸エチル溶液)の5.374g、テトラブチルアンモニウムヒドロオキサイド乳酸エステル溶液(10w%の固形分を含むの固形分を含む乳酸エチル溶液)の0.333g、及び、乳酸エチルをさらに80.164gを含有してなった。
【0073】
シリコンウェハーにはHMDSを下塗りしてから、膜厚が6600〜7800オングストロームとなるようフォトレジストを塗布した。プロメトリックスSM300(Prometrix SM300)フィルム膜厚測定器が使用された。これらのウェハーは、真空ホットプレートと、GCAミクロトラックコーティング及びベーキング装置上で、130℃で60秒間ソフトベーキングした。塗膜されたウェハーを、その後ブランククウォーツからなるレティクルにより調節し、GCA XLS7800エキシマ レーザー ステッパーにて照射した。照射されたウェハーを、それから、90秒140℃で、露光後焼成(post-exposure bake)し、60秒間、GCAミクロトラック装置上でシングル吹き付けパドル(single spray puddle)により、シップレー マイクロポジットCD−26(Shipley Microposit CD-26)の0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド現像液を用いて現像した。
照射にあたり必要となるフォトレジストへの透過エネルギー量(E mJ/cm)が、膜厚に対して、調べられた。ANTMA/HEMA染料樹脂を含有するレジストは、照射の光線量を50%まで減少した。特に、染料を含有しないフォトレジストはおよそ44%まで、ANTMA/HEMA染料樹脂を含有スルフォトレジストはおよそ21%まで、減少した。
【0074】
実施例5
4種類のレジストを調製した。そのうち、3種には下記のように種々の染料添加のための物質により(フォトレジストフィルムの光学濃度を変えるため)ANTMA/HEMA染料樹脂を含有させ、1種には染料組成物を含有させなかった。フォトレジストの組成は下記の表4のとおりとした。
【0075】
【表4】

【0076】
樹脂バインダー:ポリヒドロキシスチレン−t−ブチルアクリレート
コポリマー
PAG:ジ−tert−ブチルフェニルヨードニウムショウノウスルホン酸
光酸発生剤
染料樹脂:ANTMA/HEMA
界面活性剤:シルウェットL−7604
スタビライザー:TBAH 乳酸塩
【0077】
シリコンウェハーはHMDSで下塗りしてから、膜厚が7600(最小エネルギー光線量)〜7235(最大エネルギー光線量)オングストロームとなるようフォトレジストを塗布した。プロメトリックスSM300(Prometrix SM300)フィルム膜厚測定器が使用された。これらのウェハーは、真空ホットプレートと、GCAミクロトラックコーティング及びベーキング装置上で、130℃で60秒間ソフトベーキングした。塗膜されたウェハーを、その後ブランククウォーツからなるレティクルにより調節したGCA XLS7800エキシマ レーザー ステッパーにて照射した。照射されたウェハーを、それから、90秒140℃で、露光後焼成(post-exposure bake)し、60秒間、GCAミクロトラック装置上でシングル吹き付けパドル(single spray puddle)により、シップレー マイクロポジットCD−26(Shipley Microposit CD-26)の0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド現像液を用いて現像した。
染色されたローディング(dyed loading)が増加するにつれ、定常波が著しく減少した。これは、現像されたフォトレジストのレリーフ画像の電子スキャンマイクログラフ(scanning electron micrograph:SEM)分析によっても示された。
SEMの示すところでは、中程度に染色したフォトレジストの解像度及び線形マスキング(masking linearity)の能力については、染色されていないフォトレジストに比べよい結果を得た。
さらに、焦点の深さ(depth-of-focus)と寛容度(latitude)の双方についても、染色されていないフォトレジストに比べ、改良されていた。
【0078】
実施例6
染料樹脂ANTMA/HEMAの特性を維持したまま工業製品として製造の再現性があるかどうかを、染料樹脂ANTMA/HEMAの3つの異なる製造ロットをもちいて試験した。これらの3つのロットは、以下に示す「バッチ1」、「バッチ2」、「バッチ3」である。
【0079】
3種のフォトレジスト(レジスト1〜3)を調製した。
レジスト1は、「バッチ1」の染料樹脂を0.142g含有している。
レジスト2は、「バッチ2」の染料樹脂を0.142g含有している。
レジスト3は、「バッチ3」の染料樹脂を0.142g含有している。
各々のレジスト1〜3は、ポリヒドロキシスチレン−t−ブチルアクリレート共重合体溶液(20%の固形分を含有する乳酸エチル溶液)37.700g、ジ−t−ブチルフェニルヨードニウム ショウノウスルホン酸からなる光酸発生剤(10%の固形分を含有する乳酸エチル溶液)3.016g、安定化剤溶液(10%の固形分を含有する乳酸エチル溶液)0.167g、及び、乳酸エチル8.575gをさらに含有するものである。
【0080】
シリコンウエハーをHMDSで下塗りし、前記のレジストを用いて厚さ0.765μmのコーティングをした。コーティング層の厚さは、プロメトリックスSM300(Prometrix SM300)で測定した。ウエハーを減圧ホットプレート(GCAミクロトラック(GCA MicroTrack)コーティング加熱装置)で、130℃で60秒間、穏やかに加熱した。
コーティングされたウエハーは、ブランククオーツ(blank quartz)、線が密集した部分及び独立した線を有する回路パターン焼き付け用原板(レティクル)を用いて、エキサイマーレーザー(GCA XLS 7800)が照射された。照射されたウエハーは、140℃で90秒間、照射後の加熱処理がされ、次いで、20秒/25秒の二重スプレーパドルにより現像された。現像は、シップレー社のマイクロポジット CD−26 0.26N テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像液を用いて、GCAマイクロトラックシステムにより行われた。
【0081】
レジストがコーティングされ、穏やかな加熱処理がされたウエハーは、0.2mJ/cmで照射され、この照射エネルギーはブランククオーツレティクルを用いてO.2から20.0mJ/cmまで増加された。次いで、照射後の加熱処理がされ、レジストが現像された。こうして、照射に必要なエネルギーが決定された。また、照射時の焦点は、線が密集した部分及び独立した線を有するレティクルを用いて行われた。結果を次の表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
実施例7
(1) 上記のPAGの1、即ち、(ビス−(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム(+/−)−10−樟脳スルホン酸エステルを以下に示す方法で製造した。
2Lの3つ口丸底フラスコにヨウ素酸カリウム(214.00g、1.00モル)、t−ブチルベンゼン(268.44g、2.00モル)及び無水酢酸(408.36g、4.00モル)を入れた。このフラスコには、効率の良い上蓋式櫂形撹はん機、温度計及びNバブラー付きの均圧式滴下ロートが具備されていた。この反応混合物を氷水浴中で10℃まで冷却し、前記の滴下ロートから濃硫酸(215.78g、2.20モル)を滴下しながら加えた。反応温度が約25℃を維持するような速度でこの滴下を行ったので、2時間を要した。添加が進むにつれて、初めの白色懸濁物が橙黄色になった。この添加が終わると、この反応混合物を室温(20℃)で更に22時間撹はんした。この反応混合物を5〜10℃まで冷却した後、30℃より低い温度を維持しつつ、水(600ml)を30分間かけて滴下しながら加えた(最初の75mlは、初期発熱を制御するように特に遅い速度で添加しなければならないが、それを過ぎると、残りの水はそれまでよりも速く添加してもよいことに留意されたい)。この不透明な混合物を、未反応のt−ブチルベンゼン及び副生成物の少量の4−t−ブチルヨードベンゼンを除くために、2Lの分液ロートで、ヘキサン(3×100ml)で洗浄した後、この硫酸水素ジアリールヨードニウム水溶液を3Lの反応容器に入れた。この溶液を5〜10℃まで冷却し、(+/−)−10−ショウノウスルホン酸(232.30g、1.00モル)を撹はんしながら徐々に加えた後、この時に生成した溶液を水酸化アンモニウム(620ml、9.20モル)で中和した。使用した塩基の量は反応容器中の全酸性種を中和するのに必要な理論量であったので、反応は定量的に行われたと考えられた。25℃よりも低い温度を維持するようにこの塩基の添加を行うと、約1時間を要する。この添加が終りに近くなり、そして反応混合物のpHが7に近づくにつれて、粗製ジアリールヨードニウムショウノウスルホネートが黄褐色の固体として沈澱した。この懸濁物を室温で3時間撹はんを続けた後、次のように物質を単離した。この黄褐色固体を吸引濾過によって集め、未乾燥のままでジクロロメタン(1L)で処理し、洗浄物がpH7〜8(1×200ml)の範囲になるまで希水酸化アンモニウム(2.5重量%、5ml 14.8N NHOH+195ml HO )で洗浄した後、そのpHを水(2×200ml)で約7に戻した。乾燥(MgSO)後、前記のジクロロメタンを減圧下で除去し、更に残留物を真空中で50℃で16時間乾燥すると、黄褐色固体の粗生成物を得た(390.56g)。次に、こうして生成した黄褐色固体を次の方法で再結晶化により精製した。2Lの丸底フラスコの中でこの黄褐色固体を還流用の最少量のイソプロパノール(375gのPAGに対して1150mlのIPA)に溶かすと、暗赤色の均一な溶液となった。還流時の加熱溶液を2Lのコニカルフラスコに移した後、放置して冷却した。この溶液が未だ温かいうちにヘキサン(500ml)を加えると、直ちに結晶が晶出した。この結晶を含む混合物を放置して室温まで冷却した後、4時間静置した。この結晶を含む溶液を、氷−水浴中で1.5時間、5℃まで冷却した後、この固体を吸引濾過によって集めて、非常に冷したイソプロパノール−ヘキサン(アルコール:ヘキサン比1:3、2×200ml、使用前にドライアイス−アセトン浴でこの溶媒混合物を冷却して調製した)で白色になるまで洗浄した。PAG(ジ−(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム(+/−)−10−ショウノウスルホナート)がさらさらとした白い粉末として単離されるまで、この白色固体を1時間アスピレーターで吸引して乾燥した。この段階で約285gのPAGが得られる。同様な方法で2回目の再結晶化を行うことができる。
【0084】
(2) TBAHの乳酸塩(テトラ−n−ブチルアンモニウム d/l−乳酸塩;(CHCHCHCH+−O(CO)CH(OH)CH)は、以下の方法で製造することができる。
テトラ−n−ブチルアンモニウム ブロマイド(16.12g、50.0ミリモル)の水(50ml)溶液に、乳酸銀(9.85g、50.0ミリモル)の水(100ml)からなる灰色の懸濁液を加えた。反応液は灰白色になったので、臭化銀が生成し、これの沈殿物を含む反応液になったものと考えられる。この反応懸濁液を、室温で15時間撹拌した。固形物を濾別し、水(3×50ml)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、減圧下で濃縮し、得られた油状物を減圧下50℃で24時間乾燥した。標題の化合物を無色油状物として得た(16.62g、99%)。室温で放置すると、この油状物はワックス状の半個体になる。
【0085】
以上の実施例は、本発明を具体例に例示したものであり、本発明の趣旨を理解することにより本発明の範囲内において、種々の変更や飾修が行えることは当業者には容易に理解されるところである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂バインダー、光活性成分及びアントラセン基を含有する染料化合物からなるフォトレジスト組成物。
【請求項2】
染料化合物がポリマーである請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項3】
ポリマーが、少なくとも5,000の重量平均分子量を有するものである請求項2に記載のフォトレジスト。
【請求項4】
染料化合物が共重合体である請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項5】
染料化合物が、アントラセン部分とアクリル系部分とを含有する共重合体である請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項6】
染料化合物が、次式(I)、
【化1】

( 式中、Rは各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示し、
Wは、化学結合または置換若しくは非置換のアルキレン基を示し、
は、各々独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置 換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、置換 若しくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は水酸基 を示し、
mは、0(アントラセン環が全て水素原子の場合)〜9の整数を示し、
x及びyは、それぞれの単位のモル分率を示し、
Zは各々、ポリマー単位の橋架け基を示す。)
で示されるものである請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項7】
染料化合物が、次式(III)、
【化2】

で示されるものである請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項8】
レジストがポジ型である請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項9】
レジストがネガ型である請求項1に記載のフォトレジスト。
【請求項10】
樹脂バインダー、光活性剤、及び、1つ又はそれ以上の多環式発色団を含有する高分子量の染料からなるフォトレジスト。
【請求項11】
発色団が遠紫外線を吸収するものである請求項10に記載のフォトレジスト。
【請求項12】
発色団が、フェナンシル基、アクリジン基、キノリニル基及び環に置換基を有するキノリニル基からなる群より選ばれるものである請求項10に記載のフォトレジスト。
【請求項13】
染料が共重合体である請求項10に記載のフォトレジスト。
【請求項14】
染料がアルリル系共重合体である請求項10に記載のフォトレジスト。
【請求項15】
染料が次式(II)、
【化3】

( 式中、Rは各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示し、
W’は、化学結合又は置換若しくは非置換のアルキレン基を示し、
Gは、炭素、窒素、酸素又は硫黄を示し、
は各々独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若 しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若し くは非置換のアルキニル基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、 ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示し、
mは、0〜7の整数を示し、
x’及びy’は、それぞれの単位のモル分率を示し、
Zは各々、ポリマー単位の橋架け基を示す。)
で示されるものである請求項10に記載のフォトレジスト。
【請求項16】
基板上に請求項1に記載のフォトレジストの層を形成し、レリーフ画像を形成するように基板上のフォトレジスト層に照射し、これを現像することからなる、フォトレジストのレリーフ画像を形成する方法。
【請求項17】
基板上に請求項10に記載のフォトレジストの層を形成し、レリーフ画像を形成するように基板上のフォトレジスト層に照射し、これを現像することからなる、フォトレジストのレリーフ画像を形成する方法。
【請求項18】
請求項1に記載のフォトレジスト組成物でコーティングされた工業製品。
【請求項19】
基板がマイクロエレクトロニクス用ウェハー又はフラットパネルディスプレー基板である請求項18に記載の工業製品。
【請求項20】
請求項10に記載のフォトレジスト組成物でコーティングされた工業製品。
【請求項21】
次式(I)又は(II)、
【化4】

( 式中、Rは各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示し、
Wは、化学結合または置換若しくは非置換のアルキレン基を示し、
は、各々独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置 換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、置換 若しくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基又は水酸基 を示し、
mは、0(アントラセン環が全て水素原子の場合)〜9の整数を示し、
x及びyは、それぞれの単位のモル分率を示し、
Zは各々、ポリマー単位の橋架け基を示す。)
【化5】

( 式中、Rは各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示し、
W’は、化学結合又は置換若しくは非置換のアルキレン基を示し、
Gは、炭素、窒素、酸素又は硫黄を示し、
は各々独立して、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若 しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若し くは非置換のアルキニル基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、シアノ基、 ニトロ基、アミノ基又は水酸基を示し、
mは、0〜7の整数を示し、
x’及びy’は、それぞれの単位のモル分率を示し、
Zは各々、ポリマー単位の橋架け基を示す。)
で示されるポリマー。

【公開番号】特開2007−58236(P2007−58236A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−290286(P2006−290286)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【分割の表示】特願平9−307762の分割
【原出願日】平成9年10月6日(1997.10.6)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】