説明

栗の殺虫及び保存方法

【課題】 クリ果実の臭化メチル燻蒸に替わるクリシギゾウムシの防除方法を提供する。
【解決手段】 絶縁雰囲気内に導電性電極を設置し、この導電性電極に100〜30,000Vの電圧を印加して導電性電極の周囲に静電場を発生せしめ、この静電場内に収穫した栗を絶縁状態で設置し、庫内温度を0℃〜−6℃に設定して処理する栗の殺虫及び保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な栗の殺虫及び保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫した栗は、ほぼ100%クリシギゾウムシの卵が入っている。従来は、収穫した栗を短期間の内に臭化メチル燻蒸処理して、クリシギゾウムシの卵を防除していた。しかし、臭化メチルがオゾン層破壊物質であるところから、現在は原則使用禁止となっており、これに替わる防除方法の開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、人体に無害なアルカリ水溶液に生栗を浸漬する技術が記載されている。また、特許文献2には、臭化メチルに代えてヨウ化メチルの燻蒸を行う技術が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明を実施する冷蔵室の概略を示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2は、冷蔵庫内に設置するアルミ製シェルフの斜視図である。(実施例1)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
絶縁雰囲気内に導電性電極を設置し、この導電性電極に電圧を印加して導電性電極の周囲に100V〜30,000Vの静電場を発生せしめ、この静電場内に収穫した栗を絶縁状態で設置し、庫内温度を0℃〜−6℃に設定して殺虫及び保存処理する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、出荷直後(10月2日)のクリ果実1を、図2に示すようにネット2に入れ、ネット2を約10袋をプラスチックース3に入れてから、図1に示すように冷蔵室4の中に設置したアルミ製シェルフ5の棚6に、多数収納する。この冷蔵室4は低温(−4℃〜−6℃)に保持されており、アルミ製シェルフ5には冷蔵室4の壁面7から来る電源コード8が接続されていて、約3,500Vの高電圧が印加されている。尚、壁面7は絶縁されており、また、その外壁9との間は断熱材10が充填されている。尚、符号11は冷蔵室4に出入りする扉、符号12は電源コード8基部の絶縁碍子、符号13はアルミ製シェルフ5の絶縁碍子である。そして、この静電場(冷蔵室4)内に栗1を入れてから、1日後、3日後、6日後、10日後及び15日後にそれぞれ回収した。
【0015】
上記の回収したクリ果実を、24℃の恒温槽に5日間置いた後、各20果を無作為に選び、皮を剥きせん孔しているクリシギゾウムシ幼虫の生死虫を計数した。幼虫の生死については仮死状態を考慮し、1日放置した後に判定した。また、被害果粒については、各処理30日後までの被害果と脱出してきた幼虫数を計数した。また、対照として10月2日に臭化メチル処理したクリ果実を用い、無処理については、出荷直後のクリ果実をそれぞれ、24℃の恒温槽に入れたものを調査した。
【0016】
調査した結果、無処理では被害果率は78.5%と高く、虫数も多かった。(表1)。低温での静電処理では処理期間が長くなるとクリシギゾウムシ幼虫による被害が少なくなり、10日間以上の処理では特に少なかった(表1、表2)。また、クリ果実中での死亡虫は3日目以降多くなった(表2)。死亡幼虫の多くの固体は若齢幼虫であったが、老齢幼虫の死亡も確認された。尚、表1は低温静電処理後のクリシギゾウムシ幼虫による被害果率(処理30日後調査)、表2は低温静電処理によるクリシギゾウムシ幼虫の殺虫効果(処理5日後調査)である。

【表1】


【表2】

【0017】
尚、3日目以降の庫内温度及び湿度の推移は表3(日別)に示す通りであり、最低室温が、−7℃以下になっており、そのため皮を剥いたとき果実の表面の色が幾分変色していた(クリ果実の静電処理をしない場合の凍結温度は−3.8℃とされているが、3,500V程度の静電処理をした場合、−6℃程度までは凍結しない)。1,000V程度だと、−4〜−5℃程度までは凍結しない。7,000V程度でも、凍結しないのは−6℃程度までである。

【表3】

【0018】
次に、長期(1ケ月)間、−1℃で静電処理した結果、栗ショ糖の分析値が、冷蔵庫保存のものに比べて18%も向上した。その結果を表4に示す。表中の数値は、栗ショ糖の糖度である。また、同温度で5ケ月間静電処理したクリ果実は、幾分柔らかくなっていたが、甘味が増して素晴らしい味になっていた。

【表4】

【産業上の利用可能性】
【0019】
電圧を印加し雰囲気を0℃〜−6℃に維持することにより、栗を長期にわたって変質することなく保存することができ、またクリシギゾウムシの幼虫が防除でき、栗産業について大きな貢献をなすものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁雰囲気内に導電性電極を設置し、この導電性電極に電圧を印加して導電性電極の周囲に静電場を発生せしめ、この静電場内に収穫した栗を絶縁状態で設置し、庫内温度を0℃〜−6℃に設定して処理することを特徴とする、栗の殺虫及び保存方法。
【請求項2】
静電場内に、10日以上入れておくものである、請求項1記載の栗の殺虫及び保存方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−284901(P2009−284901A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112173(P2009−112173)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(503320164)石見銀山農業協同組合 (2)
【出願人】(503311298)株式会社フィールテクノロジー (6)
【Fターム(参考)】