説明

核酸構造解析装置及びプログラム

【課題】核酸の解離曲線に含まれる核酸の構造に関する有用な情報を得ることをできるようにする。
【解決手段】吸光度計12によって、温度上昇に応じた試料溶液の吸光度を測定する。そして、コンピュータ12の温度算出部50によって、試料溶液に含有されたDNAの融解温度を算出し、含量算出部52によって、算出された融解温度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAのGC含量を算出する。そして、相対比算出部54によって、同じGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度に対する、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度の比を算出する。構想解析部58によって、複数種類のDNAの構造の各々についての試料溶液の温度上昇に応じた吸光度の比の各々と、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度の比とを比較して、試料溶液に含有された解析対象のDNAの構造を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸構造解析装置及びプログラムに係り、特に、試料溶液の吸光度を測定して、試料溶液の核酸の構造を解析する核酸構造解析装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、核酸の二重鎖解離曲線の研究が行われており、特にDNAにおいて、塩基配列に含有されるシトシン・グアニン塩基対(CG塩基対)とアデニン・チミン塩基対(AT塩基対)との割合が、主にその解離の性質を決定していると考えられている。
【0003】
核酸の解離曲線を利用して、核酸の配列情報や構造変化の有無を得る方法が知られている(特許文献1〜特許文献3)。この方法では、核酸を含有する溶液の温度を変化させ、温度変化に伴う核酸の形態変化(吸光度の変化又は蛍光強度の変化)に基づいて、核酸の配列情報や構造変化の有無を得ている。
【特許文献1】特開2007−143420号公報
【特許文献2】特開2005−10049号公報
【特許文献3】特開2003−180351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1〜特許文献3に記載の技術では、温度変化に伴う吸光度の変化から、核酸の配列情報や構造変化の有無を得ているにすぎず、核酸の解離曲線に含まれる核酸の構造に関するさらなる有用な情報を得ることが出来なかった、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、核酸の解離曲線に含まれる核酸の構造に関する有用な情報を得ることをできる核酸構造解析装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明に係る核酸構造解析装置は、解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度を制御する温度制御手段と、前記温度制御手段で制御された温度に応じた前記試料溶液の吸光度を測定する吸光度測定手段と、前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸の融解温度を算出する温度算出手段と、前記温度算出手段によって算出された融解温度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸のGC含量又はAT含量を算出する含量算出手段と、GC含量又はAT含量が異なる基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め求められた前記温度に応じた吸光度を記憶した吸光度記憶手段と、前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度と、前記吸光度記憶手段に記憶され、かつ、前記含量算出手段によって算出されたGC含量又はAT含量に対応するGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、前記基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する前記解析対象の核酸を含有する前記試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出する相対値算出手段と、予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類の核酸の構造の各々について記憶した相対値記憶手段と、前記相対値記憶手段に記憶された前記温度に応じた吸光度の相対値の各々と、前記相対値算出手段によって算出された前記温度に応じた吸光度の相対値とを比較して、前記試料溶液に含有された核酸の構造を特定する構造特定手段とを含んで構成されている。
【0007】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度を制御する温度制御手段、前記温度制御手段で制御された温度に応じた前記試料溶液の吸光度を測定する吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸の融解温度を算出する温度算出手段、前記温度算出手段によって算出された融解温度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸のGC含量又はAT含量を算出する含量算出手段、前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度と、GC含量又はAT含量が異なる基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め求められた前記温度に応じた吸光度を記憶した吸光度記憶手段に記憶され、かつ、前記含量算出手段によって算出されたGC含量又はAT含量に対応するGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、前記基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する前記解析対象の核酸を含有する前記試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出する相対値算出手段、及び予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類の核酸の構造の各々について記憶した相対値記憶手段に記憶された前記温度に応じた吸光度の相対値の各々と、前記相対値算出手段によって算出された前記温度に応じた吸光度の相対値とを比較して、前記試料溶液に含有された核酸の構造を特定する構造特定手段として機能させるためのプログラムである。
【0008】
本発明によれば、吸光度記憶手段に、GC含量又はAT含量が異なる基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め求められた温度に応じた吸光度を記憶し、また、相対値記憶手段に、予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類の核酸の構造の各々について記憶しておく。
【0009】
そして、温度制御手段によって、解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度を制御し、吸光度測定手段によって、温度制御手段で制御された温度に応じた前記試料溶液の吸光度を測定する。
【0010】
そして、温度算出手段によって、吸光度測定手段によって測定された温度に応じた試料溶液の吸光度に基づいて、試料溶液に含有された核酸の融解温度を算出し、温度算出手段によって算出された融解温度に基づいて、試料溶液に含有された核酸のGC含量又はAT含量を算出する。
【0011】
次に、相対値算出手段によって、吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度と、吸光度記憶手段に記憶され、かつ、含量算出手段によって算出されたGC含量又はAT含量に対応するGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出する。
【0012】
そして、構造特定手段によって、相対値記憶手段に記憶された温度に応じた吸光度の相対値の各々と、相対値算出手段によって算出された温度に応じた吸光度の相対値とを比較して、試料溶液に含有された核酸の構造を特定する。
【0013】
このように、同じGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出し、予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた温度に応じた吸光度の相対値と比較して、試料溶液に含有された核酸の構造を特定することにより、核酸の解離曲線に含まれる核酸の構造に関する有用な情報を得ることをできる。
【0014】
本発明に係る相対値記憶手段は、予めCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類のCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布の各々について記憶し、構造特定手段は、試料溶液に含有された核酸のCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布を特定することができる。
【0015】
本発明に係る相対値記憶手段は、含まれるパリンドローム構造が予め分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類のパリンドローム構造の各々について記憶し、構造特定手段は、試料溶液に含有された核酸のパリンドローム構造を特定することができる。
【0016】
なお、予め分かっているパリンドローム構造として、パリンドローム構造の有無や、パリンドローム構造の数及び大きさがある。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の核酸構造解析装置及びプログラムによれば、同じGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出し、予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた温度に応じた吸光度の相対値と比較して、試料溶液に含有された核酸の構造を特定することにより、核酸の解離曲線に含まれる核酸の構造に関する有用な情報を得ることをできる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るDNA構造解析システム10は、紫外可視分光光度計を用いた吸光度計12と、各種の演算処理や制御処理を行うコンピュータ14と、参照セル16及び試料セル18を備えた試料ユニット20と、試料ユニット20の温度を制御する高精度温度制御装置22を備えている。
【0020】
吸光度計12は、光を発する光源24と、回折格子を内蔵し、光源24から入射された光から例えば260nmの波長を有する単色光を取り出す分光器26とを備えている。分光器26から取り出された単色光は、反射鏡28によりセクタ鏡30に送られ、セクタ鏡30により試料側光束Sと参照側光束Rとの2光束に時分割される。また、セクタ鏡30には光の遮蔽部が設けられており、試料側光束S及び参照側光束Rの発生期間と交互に遮光期間が発生するようにしている。
【0021】
試料側光束Sは、反射鏡32を介して、試料ユニット20に備えられた試料セル18に照射され、また、参照側光束Rは、反射鏡34を介して、試料ユニット20内の参照セル16に照射される。
【0022】
また、吸光度計12は、試料セル18を通過した光を、反射鏡36、40を介して検出するとともに、参照セル16の透過光を、反射鏡38を介して検出する光検出器42と、光検出器42の検出結果に基づいて、試料セル18の試料溶液の吸光度及び参照セル16の溶液の吸光度を算出し、これらの吸光度比を算出する吸光度算出器44と、サンプルホールド回路やA/D変換器などを含み、吸光度算出器44によって算出された吸光度比をコンピュータ14へ出力するためのインタフェース(I/F)46とを備えている。
【0023】
なお、本実施の形態では、それぞれのDNAの測定結果を比較しやすくするために、吸光度の値について、参照セル16に対する吸光度の値で全測定値を補正し、吸光度の測定値として吸光度比を用いたが、これに限定されるものではなく、試料セル18の試料溶液の吸光度の値を、そのまま吸光度の測定値として用いてもよい。
【0024】
試料セル18には、解析対象のDNA(以下では、特に明記しない限り、DNAは二本鎖DNAを表わしているものとする)を含有した試料溶液が収容されており、参照セル16には、試料溶液と同じ液体が、DNAを含有せずに収容されている。また、参照セル16及び試料セル18は恒温ブロック(図示省略)に保持されている。
【0025】
コンピュータ14は、CPU、後述するDNA構造解析処理ルーチンのプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、HDD、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このコンピュータ14をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、吸光度計12や高精度温度制御装置22内の各部の動作を制御する主制御部48と、吸光度計12で測定された温度上昇に応じた吸光度比の変化に基づいて、解析対象のDNAの融解温度Tmを算出する温度算出部50と、融解温度Tmに基づいて、解析対象のDNAのGC含量を算出する含量算出部52と、0〜100%の1%毎に異なるGC含量の基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め測定された温度上昇に応じた吸光度比の変化を記憶した基準吸光度データベース53と、吸光度計12で測定された温度上昇に応じた吸光度比の変化と基準吸光度データベース53に記憶された温度上昇に応じた吸光度比の変化とに基づいて、吸光度の相対値として、吸光度比の比の変化を算出する相対比算出部54と、複数種類のDNAの構造の各々に対する吸光度比の比の変化を記憶した相対比データベース56と、算出された吸光度比の比の変化と、記憶された吸光度比の比の変化の各々とを比較して、解析対象のDNAの構造を解析する構造解析部58とを備えている。
【0026】
また、コンピュータ14には、測定に関連する各種パラメータの設定や各種測定、処理の指示を行うための入力部60、及び操作のための補助的情報や測定結果等を画面に表示する表示部62が接続されている。入力部60は、例えばキーボードやポインティングデバイスなどである。
【0027】
高精度温度制御装置22は、ペルチエ素子などを含んで構成され、かつ、試料ユニット20の恒温ブロックを加温又は冷却して、参照セル16及び試料セル18の温度を調整する温度調整部64と、恒温ブロックに付設された温度センサ65と、温度センサ65の検出温度に応じて、目標温度となるように温度調整部64を制御する温度制御部66とを備えている。温度制御部66は、コンピュータ14の主制御部48から、温度の制御目標値Tcを受け取り、検出温度がその制御目標値Tcになるように、つまりその差がゼロになるように温度調整部64に供給する電力を制御する。
【0028】
次に、本実施の形態の原理について説明する。二重鎖DNAは、熱により一重鎖同士に解離する。その際の熱力学的性質が、図2に示すような解離曲線で表わされ、この解離曲線には、DNAが二重鎖を形成する様々な要因が内包されている。例えば、上記図2に示すように、一塩基のみが異なり、互いにGC含量が異なる40塩基のDNA(配列番号1及び2)では、温度上昇に応じた吸光度比の変化が異なる。
【0029】
本発明者は、上記の解離曲線をより詳細に測定及び解析することで、解離曲線から、CG塩基対とAT塩基対との割合やGC含量だけでなく、塩基配列におけるCG塩基対又はAT塩基対の分布や、二次的に形成された立体構造(パリンドローム構造)などを解析することができることを見いだした。
【0030】
例えば、図3に示すように、CG塩基対が挿入された位置のみが異なる塩基配列(配列番号2、3、4)では、GC含量が同じであっても、CG塩基対が配置された位置によって、温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線が異なる。また、図4に示すように、DNAの塩基配列における挿入されたCG塩基対の位置が異なる塩基配列(配列番号5〜7)では、GC含量が同じであっても、温度上昇に応じた吸光度比の変化が示す解離曲線が異なる。また、図5に示すように、CG塩基対の分布がほぼ同じであって、DNAの塩基配列が異なる塩基配列(配列番号8及び9、図5のSTD40−1及びSTD40−2参照)では、GC含量が同じであるため、温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線がほぼ同一となる。
【0031】
また、図6(A)〜(C)に示すように、CG塩基対の分布の偏り方が異なる塩基配列(配列番号10〜12、図6のCG50center、CG50right、及びCG50left参照)では、GC含量が同じであっても、CG塩基対の分布の偏り方(CG塩基対が中央部分に偏っている分布、CG塩基対が右側部分に偏っている分布、及びCG塩基対が左側部分に偏っている分布)によって、図7に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線が異なる。
【0032】
ここで、上記図7に示す温度上昇に応じた吸光度比の変化の解離曲線を、同じGC含量の基準核酸(CG塩基対が均一に分布している塩基配列の核酸)について得られる温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線で除算すると、図8に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線が得られ、GC含量が吸光度の変化に与える影響を除去することができる。この温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線におけるピークの出方によって、CG塩基対の分布の偏り方を特定することができる。
【0033】
また、図9(A)〜(E)に示すように、CG塩基対の分布が異なる塩基配列(配列番号13〜17、図9のT1〜T5参照)では、CG塩基対の分布(CG塩基対が均一な分布、右側より左側にCG塩基対が偏っている分布、左側より右側にCG塩基対が偏っている分布、両端部より中央にCG塩基対が偏っている分布、及び中央より両端部にCG塩基対が偏っている分布)によって、図10に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線が異なる。
【0034】
ここで、上記図10に示す温度上昇に応じた吸光度比の変化の解離曲線を、同じGC含量の基準核酸(配列番号13に記載の塩基配列の核酸)について得られる温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線で除算すると、図11に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線が得られ、GC含量が吸光度の変化に与える影響を除去することができる。この温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線におけるピークの出方によって、CG塩基対の分布を特定することができる。
【0035】
また、図12(A)〜(D)に示すように、パリンドローム構造の有無や含まれるパリンドローム構造の種類が異なる塩基配列(配列番号18〜21、図12のSTD40、pal10、pal5、Pal5pal5参照)では、パリンドローム構造の有無や含まれるパリンドローム構造の数や大きさが異なり(パリンドローム構造が形成されていない場合、10bpのパリンドローム構造が1箇所形成されている場合、5bpのパリンドローム構造が1箇所形成されている場合、及び5bpのパリンドローム構造が2箇所形成されている場合)、図13に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線が異なる。
【0036】
ここで、上記図13に示す温度上昇に応じた吸光度比の変化の解離曲線に対して、同じGC含量の基準核酸(パリンドローム構造が形成されておらず、かつ、CG塩基対が均一に分布している配列番号18に記載の塩基配列の核酸)について得られる温度上昇に応じた吸光度比の変化を示す解離曲線で除算すると、図14に示すように、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線が得られ、GC含量が吸光度の変化に与える影響を除去することができる。この温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を示す曲線におけるピークの出方によって、パリンドローム構造の有無や含まれるパリンドローム構造の種類を特定することができる。
【0037】
そこで、本実施の形態に係るDNA構造解析システム10では、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方(例えば、CG塩基対が塩基配列の全体に均一に分布している場合、塩基配列の中央にCG塩基対が偏って分布している場合、塩基配列の右側にCG塩基対が偏って分布している場合、及び塩基配列の左側にCG塩基対が偏って分布している場合など)の各々であることが分かっているDNAを含有した試料溶液の各々に対して、上述した温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を予め測定し、相対比データベース56に、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々に対応して、上記図8、11に示すような、測定した温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を記憶しておく。
【0038】
また、含まれるパリンドローム構造の種類(例えば、パリンドローム構造が形成されていない場合、1対のパリンドローム構造が形成されている場合、複数対のパリンドローム構造が形成されている場合、形成されているパリンドローム構造の長さが長い場合、及び形成されているパリンドローム構造の長さが短い場合など)があることが分かっているDNAを含有した試料溶液の各々に対して、上述した温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を予め測定し、相対比データベース56に、複数種類のパリンドローム構造の各々に対応して、上記図14に示すような、測定した温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を記憶しておく。
【0039】
また、構造解析部58は、解析対象のDNAを含有した試料セル18に対して測定された温度上昇に応じた吸光度比の比の変化と、相対比データベース56に記憶された、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々に対応する温度上昇に応じた吸光度比の比の変化とを比較して、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化の類似度を各々算出し、類似度が最も高い吸光度比の比の変化に対応するCG塩基対の分布の偏り方を、解析対象のDNAの塩基配列におけるCG塩基対の分布の偏り方として解析する。
【0040】
また、構造解析部58は、解析対象のDNAを含有した試料セル18に対して測定された温度上昇に応じた吸光度比の比の変化と、相対比データベース56に記憶された、複数種類のパリンドローム構造の各々に対応する温度上昇に応じた吸光度比の比の変化とを比較して、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化の類似度を各々算出し、類似度が最も高い吸光度比の比の変化に対応するパリンドローム構造を、解析対象のDNAの塩基配列に形成されたパリンドローム構造として解析する。
【0041】
ここで、本実施の形態に係るDNA構造解析システム10によるDNA構造の解析方法の概要について説明する。
【0042】
GC含量が異なる複数の基準DNA(0〜100%の1%毎にGC含量が異なる複数の基準DNA)を用意し、各基準DNAを含有した複数の試料溶液の温度を制御し、制御された温度に応じた試料溶液の吸光度を測定する。そして、各基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度に応じた吸光度を記憶しておく。
【0043】
また、予めCG塩基対の分布の偏り方が分かっているDNAを、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について用意し、各DNAを含有した試料溶液の温度を制御し、制御された温度に応じた試料溶液の吸光度を測定する。そして、測定された測定された温度に応じた試料溶液の吸光度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAの融解温度を算出し、算出された融解温度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAのGC含量を算出する。そして、記憶されている各基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度に応じた吸光度から、算出されたGC含量に対応するGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度を取得し、測定された温度に応じた試料溶液の吸光度と、取得された基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する、DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出する。複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について、上記のように、試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出し、算出された試料溶液の温度に応じた吸光度の比を、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について記憶する。
【0044】
また、含まれるパリンドローム構造が予め分かっているDNAを、複数種類のパリンドローム構造の各々について用意し、各DNAを含有した試料溶液の温度を制御し、制御された温度に応じた試料溶液の吸光度を測定する。そして、測定された測定された温度に応じた試料溶液の吸光度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAの融解温度を算出し、算出された融解温度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAのGC含量を算出する。そして、記憶されている各基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度に応じた吸光度から、算出されたGC含量に対応するGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度を取得し、測定された温度に応じた試料溶液の吸光度と、取得された基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する、DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出する。複数種類のパリンドローム構造の各々について、上記のように、試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出し、算出された試料溶液の温度に応じた吸光度の比を、複数種類のパリンドローム構造の各々について記憶する。
【0045】
次に、解析対象のDNAを含有した試料溶液の温度を制御し、制御された温度に応じた試料溶液の吸光度を測定する。そして、測定された測定された温度に応じた試料溶液の吸光度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAの融解温度を算出し、算出された融解温度に基づいて、試料溶液に含有されたDNAのGC含量を算出する。
【0046】
そして、記憶されている各基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度に応じた吸光度から、算出されたGC含量に対応するGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度を取得し、測定された温度に応じた試料溶液の吸光度と、取得された基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、基準DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出する。
【0047】
そして、記憶されている複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々についての試料溶液の温度に応じた吸光度の比を取得し、取得した温度に応じた吸光度の比の各々と、算出された解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比とを比較して、試料溶液に含有された解析対象のDNAのCG塩基対の分布の偏り方を特定する。
【0048】
また、記憶されている複数種類のパリンドローム構造の各々についての試料溶液の温度に応じた吸光度の比を取得し、取得した温度に応じた吸光度の比の各々と、算出された解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比とを比較して、試料溶液に含有された解析対象のDNAのパリンドローム構造を特定する。
【0049】
次に、本実施の形態に係るDNA構造解析システム10によるDNA構造の解析方法について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、塩基配列の違いの認識を、縦軸に吸光度比をとり、横軸に温度をとる解離曲線を比較することによっておこなった。また、基準DNAとして、内部の塩基配列にパリンドローム構造を含まず、CG塩基対の分布に偏りもない塩基配列(CG塩基対とAT塩基対とが全体に分散している塩基配列)を用いた。また、DNAのサンプルとして、二重鎖をとるようなオリゴヌクレオチドを設計し、二重鎖を形成するよう事前に調整したもの(濃度200pmol/μl)を使用した。また、0.1×SSC溶液4ml内に20μl(吸光度にしておよそ0.3)を添加した状態の試料溶液を使用した。
【0050】
まず、0〜100%の1%毎にGC含量が異なる複数の基準DNAを用意し、各基準DNAを含有した試料溶液の温度を制御し、温度上昇に応じた試料溶液の吸光度比を測定する。そして、各基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度上昇に応じた吸光度比を、基準吸光度データベース53に記憶する。
【0051】
そして、予めCG塩基対の分布の偏り方が分かっている既知構造DNAを、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について用意し、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について、同じGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比に対する、既知構造DNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比を算出して、相対比データベース56に記憶する。
【0052】
また、含まれるパリンドローム構造が予め分かっている既知構造DNAを、複数種類のパリンドローム構造(パリンドローム構造が形成されていないものも含む)の各々について用意し、複数種類のパリンドローム構造の各々について、基準DNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比に対する、既知構造DNAを含有する試料溶液の温度に応じた吸光度の比を算出して、相対比データベース56に記憶する。
【0053】
そして、解析対象のDNAを含有した試料溶液を試料セル18に収容し、コンピュータ14において、図15に示すDNA構造解析処理ルーチンを実行する。
【0054】
まず、ステップ100において、試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化を測定する。上記ステップ100では、高精度温度制御装置22によって、例えば39℃から80℃まで0.1度ずつ上昇させて二重鎖DNAを解離させ、吸光度計12によって、各温度において、試料セル18の吸光度と、参照セル16の吸光度とを測定する。そして、各温度における試料セル18の吸光度を参照セル16の吸光度で除算して、各温度における試料溶液の吸光度比を算出し、試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化を測定する。
【0055】
そして、ステップ102において、上記ステップ100で得られた試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化に基づいて、融解温度Tmを測定する。
【0056】
次のステップ104では、上記ステップ102で測定された融解温度Tmに基づいて、以下の(1)式に従って、試料溶液に含有されたDNAのGC含量(%GC)を算出する。
Tm=8.15+1.66×log10[S]+0.41×(%GC)−(500/n)
・・・(1)
【0057】
ここで、[S]は、塩のモル濃度(M)であり、解析対象のDNAについて予め測定された値を用いる。また、nは、オリゴヌクレオチドの長さ(bp)であり、解析対象のDNAについて予め測定された値を用いる。
【0058】
そして、ステップ106において、上記ステップ104で算出されたGC含量と同じGC含量である基準DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化を、基準吸光度データベース53から取得する。なお、基準吸光度データベース53に、同じGC含量である基準DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化がない場合には、算出されたGC含量に最も近いGC含量に対する基準DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の変化を、基準吸光度データベース53から取得すればよい。
【0059】
次のステップ108では、以下の(2)式に従って、上記ステップ100で測定された試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比Abs(X)の変化を、上記ステップ106で取得された基準DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比Abs(STD)の変化で除算して、試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比Dの変化を算出する。
D=Abs(X)/Abs(STD) ・・・(2)
そして、ステップ110で、相対比データベース56から、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々に対する既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を取得し、ステップ112において、上記ステップ108で算出された試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化と、上記ステップ110で取得された既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化との類似度を、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について算出する。上記ステップ112では、例えば、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化のピーク部分について、吸光度比の比の差の総和が大きい場合には、低い類似度を算出し、ピーク部分の吸光度比の比の差の総和が小さい場合には、高い類似度を算出する。
【0060】
そして、ステップ114において、上記ステップ112で算出された類似度に基づいて、最も高い類似度に対応するCG塩基対の分布の偏り方を、解析対象のDNAのCG塩基対の分布の偏り方として推定する。
【0061】
次のステップ116では、相対比データベース56から、複数種類のパリンドローム構造の各々に対する既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を取得し、ステップ118において、上記ステップ108で算出された試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化と、上記ステップ116で取得された既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化との類似度を、上記ステップ112と同様に、複数種類のパリンドローム構造の各々について算出する。
【0062】
そして、ステップ120において、上記ステップ112で算出された類似度に基づいて、最も高い類似度に対応するパリンドローム構造を、解析対象のDNAに形成されたパリンドローム構造として推定して、DNA構造解析処理ルーチンを終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係るDNA構造解析システムによれば、解析対象のDNAのGC含量と同じGC含量の基準DNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比に対する、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比を算出し、予め構造が分かっているDNAを含有した試料溶液に対して求めた温度上昇に応じた吸光度比の比と比較して、試料溶液に含有されたDNAの構造を特定することにより、DNAの解離曲線に含まれるDNAの構造に関する有用な情報を得ることをできる。
【0064】
また、CG塩基対の分布の偏り方が分かっている既知構造DNAを、複数種類のCG塩基対の分布の偏り方の各々について用意し、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比を、既知構造DNAを含有した試料溶液に対して求めた温度上昇に応じた吸光度比の比と比較することにより、解析対象のDNAのCG塩基対の分布の偏り方を解析することができる。
【0065】
また、含まれるパリンドローム構造が分かっている既知構造DNAを、複数種類のパリンドローム構造の各々について用意し、解析対象のDNAを含有する試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比を、既知構造DNAを含有した試料溶液に対して求めた温度上昇に応じた吸光度比の比と比較することにより、解析対象のDNAに形成されたパリンドローム構造の有無や、含まれるパリンドローム構造の数や大きさを解析することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係るDNA構造解析システムは、核酸の物理的性質を利用したシンプルな機構に基づくため、DNAのサンプルに特別な何かを施す必要はなく、また、一回の測定にかかる時間が温度上昇するまでの時間であるため、非常に簡便な測定を行う事が可能である。従って、時間的コスト及び経済的コストをかけずに、核酸に固有の塩基配列情報や立体構造情報を得ることができる。
【0067】
また、本実施の形態に係るDNA構造解析システムを、発展の見込まれているオーダーメイド医療など、DNA配列の識別及び診断の分野に応用することができる。その上、近い将来、核酸を化学材料として扱う新規テクノロジー産業が生まれた場合には、その分野において、材料としてのDNAの品質管理として、本実施の形態に係るDNA構造解析システムを応用することができる。
【0068】
なお、上記の実施の形態では、A塩基による吸光度がピークとなる260nmの波長の光を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の波長の光を用いて、試料溶液の吸光度を測定するようにしてもよい。例えば、G塩基による吸光度がピークとなる253nmの波長の光、T塩基による吸光度がピークとなる267nmの波長の光、又はC塩基による吸光度がピークとなる271nmの波長の光を用いてもよい。この場合には、図16(A)〜(D)に示すように、253nm、260nm、267nm、及び271nmのどの波長の光を用いても、複数種類のDB塩基の分布の偏り方である塩基配列14〜17に記載の塩基配列について、吸光度比の比の同様な変化が得られるため、260nmの波長の光を用いる場合と同様に、解析対象のDNAについて、CG塩基対の分布の偏り方を特定することができる。また、図17(A)〜(D)に示すように、253nm、260nm、267nm、及び271nmのどの波長の光を用いても、複数種類のパリンドローム構造である塩基配列19〜21に記載の塩基配列について、吸光度比の比の同様な変化が得られるため、260nmの波長の光を用いる場合と同様に、解析対象のDNAについて、パリンドローム構造を特定することができる。
【0069】
また、試料溶液の吸光度の測定値として、吸光度比を用いる場合を例に説明したが、吸光度の測定値として、試料溶液の吸光度の値を用いても良い。この場合には、試料溶液の温度上昇に応じた吸光度の変化を、同じGC含量の基準DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度の変化で除算して、吸光度の比の変化を算出し、記憶された吸光度の比の変化と比較すればよい。
【0070】
また、試料溶液に含有されるDNAについて、GC含量を算出する場合を例に説明したが、AT含量を算出するようにしてもよい。この場合には、AT含量が異なる複数の基準DNAを用意し、各基準DNAを含有する複数の試料溶液の各々について測定された温度上昇に応じた吸光度比の変化を基準吸光度データベースに記憶しておけばよい。そして、解析対象のDNAのAT含量と同じAT含量の基準DNAを含有する試料溶液の各々について測定された温度上昇に応じた吸光度比の変化を用いて、温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を算出すればよい。
【0071】
また、解析対象のDNAのCG塩基対の分布の偏り方を解析する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、解析対象のDNAのAT塩基対の分布の偏り方を解析するようにしてもよい。この場合には、複数種類のAT塩基対の分布の偏り方の各々について既知構造DNAを用意し、複数種類のAT塩基対の分布の偏り方の各々について、既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化を算出し、相対比データベースに記憶しておけばよい。そして、解析対象のDNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化と、記憶された既知構造DNAを含有した試料溶液の温度上昇に応じた吸光度比の比の変化とを比較して、解析対象のDNAのAT塩基対の分布の偏り方を解析すればよい。
【0072】
また、DNAを解析対象とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、二本鎖構造をとり得るRNAを解析対象とした構造解析システムに、本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態に係るDNA構造解析システムの構成を示す概略図である。
【図2】GC含量が異なっている2つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図3】CG塩基対が配置された位置が異なる3つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図4】CG塩基対の分布が異なる3つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図5】GC含量が同じであって、CG塩基対の分布が同じである2つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図6】(A)CG塩基対が中央部分に偏っているDNAを示すイメージ図、(B)CG塩基対が右側部分に偏っているDNAを示すイメージ図、及び(C)CG塩基対が左側部分に偏っているDNAを示すイメージ図である。
【図7】CG塩基対が偏っている部分が異なる3つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図8】CG塩基対が偏っている部分が異なる3つのDNAにおける解離曲線を、基準DNAの解離曲線で除算した比の曲線を示すグラフである。
【図9】(A)均一にCG塩基対が分布している塩基配列を示す図、(B)右側より左側にCG塩基対が偏って分布している塩基配列を示す図、(C)左側より右側にCG塩基対が偏って分布している塩基配列を示す図、(D)両端部より中央にCG塩基対が偏って分布している塩基配列を示す図、及び(E)中央より両端部にCG塩基対が偏って分布している塩基配列を示す図である。
【図10】CG塩基対の分布が異なっている5つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図11】CG塩基対の分布が異なっている5つのDNAにおける解離曲線を、基準DNAの解離曲線で除算した比の曲線を示すグラフである。
【図12】(A)パリンドローム構造が形成されていないDNAの構造を示すイメージ図、(B)10bpのパリンドローム構造が1対形成されているDNAの構造を示すイメージ図、(C)5bpのパリンドローム構造が1対形成されているDNAの構造を示すイメージ図、及び(D)5bpのパリンドローム構造が2対形成されているDNAの構造を示すイメージ図である。
【図13】パリンドローム構造の有無や、パリンドローム構造の数や大きさが異なる4つのDNAにおける解離曲線を示すグラフである。
【図14】パリンドローム構造の有無や、含まれるパリンドローム構造の数や大きさが異なる4つのDNAにおける解離曲線を、基準DNAの解離曲線で除算した比の曲線を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態に係るDNA構造解析システムのコンピュータにおけるDNA構造解析処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図16】(A)253nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のDB塩基の分布の偏り方のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、(B)260nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のDB塩基の分布の偏り方のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、(C)267nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のDB塩基の分布の偏り方のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、及び(D)271nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のDB塩基の分布の偏り方のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフである。
【図17】(A)253nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のパリンドローム構造のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、(B)260nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のパリンドローム構造のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、(C)267nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のパリンドローム構造のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフ、及び(D)271nmの波長の光を用いた場合に得られる複数種類のパリンドローム構造のDNAに対する吸光度比の比の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
10 DNA構造解析システム
12 吸光度計
14 コンピュータ
16 参照セル
18 試料セル
20 試料ユニット
22 高精度温度制御装置
24 光源
26 分光器
42 光検出器
44 吸光度算出器
48 主制御部
50 温度算出部
52 含量算出部
53 基準吸光度データベース
54 相対比算出部
56 相対比データベース
58 構造解析部
60 入力部
62 表示部
64 温度調整部
65 温度センサ
66 温度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度を制御する温度制御手段と、
前記温度制御手段で制御された温度に応じた前記試料溶液の吸光度を測定する吸光度測定手段と、
前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸の融解温度を算出する温度算出手段と、
前記温度算出手段によって算出された融解温度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸のGC含量又はAT含量を算出する含量算出手段と、
GC含量又はAT含量が異なる基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め求められた前記温度に応じた吸光度を記憶した吸光度記憶手段と、
前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度と、前記吸光度記憶手段に記憶され、かつ、前記含量算出手段によって算出されたGC含量又はAT含量に対応するGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、前記基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する前記解析対象の核酸を含有する前記試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出する相対値算出手段と、
予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類の核酸の構造の各々について記憶した相対値記憶手段と、
前記相対値記憶手段に記憶された前記温度に応じた吸光度の相対値の各々と、前記相対値算出手段によって算出された前記温度に応じた吸光度の相対値とを比較して、前記試料溶液に含有された核酸の構造を特定する構造特定手段と、
を含む核酸構造解析装置。
【請求項2】
前記相対値記憶手段は、予めCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類のCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布の各々について記憶し、
前記構造特定手段は、前記試料溶液に含有された核酸のCG塩基対及びAT塩基対の少なくとも一方の分布を特定する請求項1記載の核酸構造解析装置。
【請求項3】
前記相対値記憶手段は、含まれるパリンドローム構造が予め分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類のパリンドローム構造の各々について記憶し、
前記構造特定手段は、前記試料溶液に含有された核酸のパリンドローム構造を特定する請求項1記載の核酸構造解析装置。
【請求項4】
コンピュータを、
解析対象の核酸を含有する試料溶液の温度を制御する温度制御手段、
前記温度制御手段で制御された温度に応じた前記試料溶液の吸光度を測定する吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸の融解温度を算出する温度算出手段、
前記温度算出手段によって算出された融解温度に基づいて、前記試料溶液に含有された核酸のGC含量又はAT含量を算出する含量算出手段、
前記吸光度測定手段によって測定された前記温度に応じた前記試料溶液の吸光度と、GC含量又はAT含量が異なる基準核酸を含有する複数の試料溶液の各々について予め求められた前記温度に応じた吸光度を記憶した吸光度記憶手段に記憶され、かつ、前記含量算出手段によって算出されたGC含量又はAT含量に対応するGC含量又はAT含量の基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度とに基づいて、前記基準核酸を含有する試料溶液の温度に応じた吸光度に対する前記解析対象の核酸を含有する前記試料溶液の温度に応じた吸光度の相対値を算出する相対値算出手段、及び
予め構造が分かっている核酸を含有した試料溶液に対して求めた前記温度に応じた吸光度の相対値を、複数種類の核酸の構造の各々について記憶した相対値記憶手段に記憶された前記温度に応じた吸光度の相対値の各々と、前記相対値算出手段によって算出された前記温度に応じた吸光度の相対値とを比較して、前記試料溶液に含有された核酸の構造を特定する構造特定手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−139178(P2009−139178A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314725(P2007−314725)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】