説明

桑条抽出エキスの製法

【課題】 1−デオキシノジリマイシンによるα−グルコシダーゼの活性阻害とポリフェノール類によるα−アミラーゼの活性阻害の相乗効果により血糖値抑制効果を増強させた桑条(枝及び幹)抽出エキスを提供する。
【解決手段】 従来、廃棄処分されていた桑条のチップを圧縮機で絞り、1−デオキシノジリマイシン及びポリフェノール類を高濃度に含有し、高い血糖値抑制効果を有する桑条抽出エキスを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
日常の食生活で多く摂取する糖類によって発症する糖尿病はじめ多くの生活習慣病を予防する目的としてこれまで廃棄物として焼却処分されていた桑条チップ抽出エキスに血糖値上昇抑制作用を見出した技術。
【背景技術】
【0002】
近年の日本人に見られる生活習慣病は欧米化の食生活によるものとされているが、日常の食生活が大きく反映し、米や穀物の摂取による糖類の過剰に起因している可能性が高い。特に糖尿病は食生活の改善が最大の予防治療の手段とされ低カロリーの食事、運動療法、薬物療法など専門機関で指導実施されている。
【0003】
このところ糖類の吸収を抑制または糖類の分解代謝を調節する薬剤の開発が進みα−グルコシダーゼ阻害剤として「アカルボーズ」「ベイズイン」等が上市され今では糖尿病、肥満の治療予防薬として主流を占めている感がある。「桑白皮」として糖尿病や高血圧などの生薬として用いられ、その作用の多くは血糖値上昇抑制作用に関するものであった。その後現代にいたって、血糖値上昇抑制作用の機序が1−デオキシノジリマイシンによるα−グルコシダーゼ阻害作用(YOSIKUNI,Y.,Agric.Biol.Chem.52,pp ,1988)に基づくことが明らかにされた。近年、桑葉に関して熱抽出エキスにα−アミラーゼ阻害作用、マルターゼ、スクラーゼ阻害作用が見出され、その作用物質が1−デオキシノジリマイシン以外の成分であることが示唆されている。1−デオキシノジリマイシンは桑以外では中南米産のザコビニア属の植物と放線菌の培養液にしか見出されていない。したがって、桑には他の植物に見られない特異的な血糖値上昇抑制物質が存在していることは明らかである。
【発明しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、桑条抽出エキスにも従来報告されている桑白皮や桑葉同様の血糖値上昇抑制物質が存在することを本発明で明らかにし、桑条抽出エキスが糖尿病患者はもとより血糖値の上昇が懸念される二次性糖尿病が予知される人への改善と発症の予防に大変有用性のある機能性健康食品として発展する可能性がある。
【実施例】
【0005】
春に桑株から生じた桑条を2−6ヶ月後に伐採し、1週間から12ヶ月間乾燥したもの20キログラムを約0.5〜5センチメートルのチップ状に破砕した。これを水に浸漬した後、圧縮機で絞り10リットルの抽出エキスを得た。浸漬圧縮して得られたエキス10リットルを85℃以下の温浴中で連続濃縮し、濃縮エキス500ミリリットルを得た。
1−デオキシノジリマイシンの定量法
【0006】
浸漬圧縮エキスおよび濃縮エキスを0.5ミリリットルを正確にキャップ付ネジ口試験管にとり、30mMホウ酸緩衝液2.4ml、4−Fluro−7−nitrobenzofurazan5.0ミリグラムをエタノール1ミリリットルに溶解した溶液100マイクロリットルを正確に加えて混合する。混合溶液を60℃40分間加温後、直ちに冷却し、1N塩酸2ミリリットルを正確に加えた。この混合液20マイクロリットルをHPLCで分析した。分析にはxxxx社製のHPLCシステム(モデルLC−10A)を用い、カラムはODSカラム(YMC−pack DOS−A A−302)を、移動層はA液;0.05%リン酸、B液;メタノール:5%リン酸(99:1)を用い、0分(A100%)−45分(95%、B5%)のグラジエント系(流速1ミリリットl/分、温度40℃)により分析し、Ex470nm、Em530nmで蛍光強度を測定し求めた。
総ポリフェノールの定量法
【0007】
総ポリフェノールの定量はフェノール発色試験錠(和光純薬工業株式会社)を用い比色法で行った。試験溶液10ミリリットリにフェノール発色試験錠1錠を加え室温で20分間放置後、510nmにおける吸光度を測定しコーヒー酸量として算出した。
【実施例3】
【0008】
桑幹浸漬抽出エキスおよび濃縮エキスの1−デオキシノジリマイシンおよび総ポリフェノールの含有量

阿武らによって報告されている(日本食品保蔵科学会雑誌VOL.30 No.5,2004)桑葉エキス中に含まれる1−デオキシノジリマイシンの含有量に比べ、桑条浸漬抽出エキス中の1−デオキシノジリマイシン含有量の方が勝る結果が得られた。また、総ポリフェノール含量も桑葉エキスの報告内容を上回る成績が得られた。この成績は、桑葉エキスを凌駕する血糖値上昇抑制効果が桑条浸漬抽出エキスにあることを示唆している。
【実施例】
【0009】
桑条浸漬エキスおよび過熱濃縮エキスの経口投与による血糖上昇抑抑制作用
実験前日一晩絶食された7週令のWister系雄性ラツトを用い、澱粉及びショ糖を含む人工飼料投与前に桑条浸漬抽出エキスおよび加熱濃縮エキスを経口投与し、経時的に各群5匹の血糖値をグルコースオキシダーゼ法にて測定し平均値から上昇抑制率を算出し、エキス非投与群と比較した。血糖値の変化率(%)は下式より求めた。
血糖値の変化率(%)
=検体投与後の血糖値(mg/dl)/検体投与前の血糖値(mg/dl)x100

投与10分後から血糖値が100%以上上昇した無処置対象群に対して、桑条浸漬エキス群および濃縮エキス群では共々血糖値はほとんど上昇せず100分後まで検体投与前の血糖値とほぼ同じ値で推移した。以上の結果は1−デオキシノジリマイシンによるグルコシダーゼの阻害のみならず、ポリフェノール類によるアミラーゼの阻害が起こったことを示している。
【発明の効果】
【00010】
桑条抽出エキスに含まれる1−デオキシノジリマイシンやポリフェノールは水溶性であることから有効成分の濃度調整が容易であり飲料水は基より日常の菓子類に至るまで使用が可能である。即ち食品、食品添加物、化粧品、医薬等の分野での血糖値上昇抑制剤、また、桑条エキスのポリフェノール成分は、桑葉抽出エキスに含まれるクロロゲン酸、コーヒー酸、アストラガリンなどと同様の物質群からなると考えられ、これらの物質はアミラーゼ阻害作用を有することが報告されている。特にクロロゲン酸は、葉のエキス中で含量が多くα−アミラーゼ阻害活性に関与していることが認められている。桑条エキスにも含量が多いことが予測されるクロロゲン酸は、肝臓における過剰な糖新生の抑制に関与するグルコース−6−フォスファターゼ阻害作用やインスリン分泌促進作用を示すとの報告があり、抗糖尿病作用以外の肝障害予防作用、老化防止などの発展的な作用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質1−デオキシノジリマイシンおよびポリフェノール類を含有する桑株から生じた桑条(桑枝)を伐採後天日乾燥せしめた桑条チップを水に浸漬して得られる浸漬抽出エキスおよび85℃以下の温浴によって得られた加熱濃縮エキス。
【請求項2】
乾燥桑条の浸漬抽出エキス25ml/kgおよび加熱濃縮エキス0.5ml/kg投与群のラットは澱粉及びショ糖を含む飼料群の血糖値上昇を100分後まで抑制した成績から、桑条浸漬抽出エキスは1−デオキシノジリマイシンによるグルコシダーゼ阻害とポリフェノール類によるアミラーゼ阻害により小腸でのグルコース吸収を抑制する特異的な相乗効果が発揮される請求項1に記載の1−デオキシノジリマイシンおよびポリフェノール類を含有するエキス。

【公開番号】特開2007−51120(P2007−51120A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269101(P2005−269101)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000246996)株式会社シルク工芸 (2)
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【出願人】(506078714)
【Fターム(参考)】