説明

椅子の手摺り構造

【課題】玄関先に配置される椅子に設けられる手摺りを利用して腰を下ろしたり立ち上がったりでき、しかも手摺りに掴まり立ちしても安定性の高い椅子の手摺り構造を提供する。
【解決手段】座板2の框側端部に手摺り4が設けられ、該手摺り4には框面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部5を有する支持機構6を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般住宅などの建物の玄関先の土間に配置され、履物を脱いで框に上がる際に利用する椅子の手摺り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
急速に高齢化社会に移行しつつある我が国においては、高齢者、足腰が不自由な身障者(以下「高齢者等」という)が全体として増えており、これらの高齢者等が玄関先等で履物を履き替える場合には、立ったまま背を丸めて履物を脱いだり履いたりする動作は足腰に過度の負担がかかり、苦痛を伴う場合が多い。また、脱いだ下履きを上履きに履き替る場合には履物を収納する必要があるため更に負担が大きい。
【0003】
かかる課題を解決するため、図7(a)(b)において、玄関の土間51から框52にわたってベンチ53を設けることが考えられる。高齢者の場合、手摺り54aに掴まりながらベンチ53に座って履物を脱いだり、手摺り54bに掴まったままベンチ53から立ち上がったりすることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7(a)(b)の手摺り54aは土間51にアンカーボルト55により固定されており、手摺り54bは壁56に設けられる柱57の位置にねじ58により固定されている。これらの手摺り54a、54bは一旦設置されると、床や壁にボルト穴が傷として残るため移設することは難しい。また、後付けで壁面等に据え付ける場合には、設置に適した箇所を探さなければならないため、設置作業を慎重に行わなければならない。また、一度据え付けるとその後の改変を行い難いという課題がある。
これに対して、玄関に配置される椅子に設けられる手摺りを利用すれば、設置についての制約や移設する際の建物の傷は生じない。しかしながら、利用者が掴まりながら座ったり立ち上がったりするため、不安定になり易いという課題がある。
【0005】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、玄関先に配置される椅子に設けられる手摺りを利用して腰を下ろしたり立ち上がったりでき、しかも手摺りに掴まり立ちしても安定性の高い椅子の手摺り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
建物の玄関先に座板の短手方向一方側を壁面に近接し長手方向の一方側を框に近接して配置される椅子の手摺り構造において、座板の框側端部に手摺りが設けられ、該手摺りには框面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部を有する支持機構を備えたことを特徴とする。
また、手摺りは、環状に形成された把持部が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられることを特徴とする。
或いは、手摺りは、座板上で壁面に平行に設置され、環状に形成された把持部のうち座板に平行部分が座板面に固定され、座板に垂直部分に支持機構が設けられていることを特徴とする。
また、支持機構の支持脚部を中心に回動可能な安定脚部が設けられることを特徴とする。
また、環状に形成された把持部には、壁面に接触してガタつきをなくす長さ調整可能なアーム部を有する当接機構を備えたことを特徴とする。
また、座板の框側端部に、壁面と平行な第1の手摺りと該第1の手摺りより高さが低く壁面と直交する第2の手摺りが交叉して設けられることを特徴とする。この場合、第1の手摺りは、環状に形成された把持部のうち座板に平行部分が座板面に固定され、座板に垂直部分に支持機構が設けられていることを特徴とする。
また、他の構成としては、建物の玄関先に座板の短手方向一方側を壁面に近接し長手方向の一方側を框に近接して配置される椅子の手摺り構造において、座板の框側端部に、壁面と直交する向きに高さの異なる第1の手摺りと第2の手摺りが階段状に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した椅子の手摺り構造を用いれば、座板の框側端部に手摺りが設けられ、該手摺りには框面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部を有する支持機構を備えたので、手摺りより支持脚部を框面に接触するように高さ調整しておくことで、手摺りに掴まり立ちしても椅子は垂直荷重を受けることがないので、座板の長手方向の安定性が高い。
手摺りは、環状に形成された把持部が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられることにより、座板に座った状態から掴まり立ちがし易く、土間から框へ上がる際にも框から土間へ降りる際にも利用できる。
また、手摺りは、座板上で壁面に平行に設置され、環状に形成された把持部のうち座板に平行部分が座板面に固定され、座板に垂直部分に支持機構が設けられていることにより、オーバーハングがないため手摺りに掴まり立ちする際の垂直荷重を椅子脚部と支持脚部で分散して受けるため、座板の長手方向の安定性がさらに高まる。
また、支持機構の支持脚部を中心に回動可能な安定脚部が設けられることにより、安定脚部を框面に所定角度で張り出すことにより、座板の長手方向のみならず短手方向の安定性が高まる。
また、環状に形成された把持部には、壁面に接触してガタつきをなくす長さ調整可能なアーム部を有する当接機構を備えたことにより、手摺りに掴まり立ちした際に壁面への水平荷重をアーム部で受けるため、座板の長手方向のみならず短手方向の安定性も向上する。
また、座板の框側端部に、壁面と平行な第1の手摺りと該第1の手摺りより高さが低く壁面と直交する第2の手摺りが交叉して設けられることにより、高さの低い第2の手摺りに掴まりながら椅子から立ち上がったり座ったりすることができ、高さの高い第1の手摺りに掴まり立ちしながら土間から框ヘ上がったり框から土間へ降りたりすることができる。よって、高齢者にとっては履物を履きかえる際の身体の負担が減りしかも、掴まり立ちしても椅子脚部と支持脚部により垂直荷重を分散して受けるので安定性が高い。
また、座板の框側端部に、壁面と直交する向きに高さの異なる第1の手摺りと第2の手摺りが階段状に設けられることにより、高さの低い手前側の第1の手摺りに掴まりながら椅子から立ち上がったり座ったりすることができ、高さの高い第2の手摺りに掴まり立ちしながら土間から框ヘ上がったり框から土間へ降りたりすることができる。よって、高齢者にとっては履物を履きかえる際の身体の負担が減り、しかも座板短手方向に第1、第2の手摺りが設けられるため座板が幅広に設計されるので手摺りに掴まり立ちしても安定性が高く、手摺り構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る椅子の手摺り構造の最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0009】
先ず、図1を参照して椅子の概略構成について説明する。
図1(a)(b)(c)において、椅子1は利用者が座る座板2と該座板2を支持する柱状の脚部3及び手摺り4を備えている。手摺り4は框側脚部3にねじ止めされている。手摺り4には框面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部5を有する支持機構6が設けられている。支持機構6は、例えば支持脚部5がねじ嵌合により回転することで高さ位置を変更できるようになっていても良いし、支持脚部5が筒体にスライド可能に収納されており所定位置で固定できるように構成されているなどの高さ調整機構により、任意の高さに調整することができる。手摺り4は、環状に形成された把持部7が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられる。
【0010】
椅子1は、土間8に座板2の短手方向一方側を壁9に近接し長手方向の一方側を框10に近接して配置される。手摺り4の支持機構6に設けられる支持脚部5を框面に接触して荷重を受ける高さ位置まで高さ調整して設置が完了する。これにより、手摺り4に掴まり立ちしても椅子1は垂直荷重を受けることがないので、座板2の長手方向の安定性が高い。
手摺り4は、環状に形成された把持部7が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられることにより、利用者が座板2に座った状態から掴まり立ちがし易く、土間8から框10へ上がる際にも框10から土間8へ降りる際にも利用できる。
【0011】
次に、手摺り構造の他例について、図2を参照して説明する。図1と同一部材には同一番号を付して説明を援用する。図2(a)(b)(c)において、手摺り4は、壁9に平行に設置される。具体的には、手摺り4は環状に形成された把持部7のうち座板2に平行部分7aが座板面に固定され、座板2に垂直部分7bに支持機構6が設けられている。支持機構6に設けられる支持脚部5は框面に接触して荷重を受ける高さ位置まで高さ調整して設置される。このような手摺り構造によれば、椅子1側及び框10側にオーバーハングがないため、手摺り4に掴まり立ちする際の垂直荷重を椅子脚部3と支持脚部5で分散して受けるため、座板2の長手方向の安定性がさらに高まる。
【0012】
次に、手摺り構造の他例について、図3を参照して説明する。図1と同一部材には同一番号を付して説明を援用する。図3(a)(b)(c)において、手摺り4は、図1と同様であり、框側脚部3にねじ止めされている。手摺り4には框面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部5を有する支持機構6が設けられている。手摺り4は、環状に形成された把持部7が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられる。また、支持機構6の支持脚部5を中心に回動可能な安定脚部11が設けられる。この安定脚部11を図3(b)の実線方向に張り出すことで、手摺り4に掴まり立ちする際の座板長手方向の安定性が向上する。また、安定脚部11を図3(b)の破線方向(実線方向から時計回り方向へ45度回転)に張り出すことにより、座板長手方向のみならず短手方向の安定性も向上する。
【0013】
次に、手摺り構造の他例について、図4を参照して説明する。図1と同一部材には同一番号を付して説明を援用する。図4(a)(b)(c)において、手摺り4は、図2と同様であり、壁9に平行に設置される。手摺り4は環状に形成された把持部7のうち座板2に平行部分7aが座板面に固定され、座板2に垂直部分7bに支持機構6が設けられている。支持機構6に設けられる支持脚部5は框面に接触して荷重を受ける高さ位置まで高さ調整して設置される。また、把持部7には、壁9の壁面に接触してガタつきをなくす長さ調整可能なアーム部12を有する当接機構13が設けられている。
【0014】
当接機構13は、例えばアーム部6がねじ嵌合により回転することでアーム長を変更できるようになっていても良いし、アーム部6が筒体にスライド可能に収納されており所定位置で固定できるように構成されているなどの長さ調整機構により、任意の長さに調整することができる。この手摺り構造によれば、手摺り4に掴まり立ちした際に壁面への水平荷重をアーム部6で受けるため、座板2の長手方向のみならず短手方向の安定性も向上する。
【0015】
次に、手摺り構造の他例について、図5を参照して説明する。図1と同一部材には同一番号を付して説明を援用する。図5(a)(b)(c)において、座板2の框側端部に、壁面と平行な第1の手摺り14と該第1の手摺り14より高さが低く壁面と直交する第2の手摺り15が交叉(直交)して設けられる。第1の手摺り14は図2と同様であり、壁9に平行に設置される。第1の手摺り14は、環状に形成された把持部7のうち座板2に平行部分7aが座板面に固定され、座板2に垂直部分7bに支持機構6が設けられている。支持機構6に設けられる支持脚部5は框面に接触して荷重を受ける高さ位置まで高さ調整して設置される。第2の手摺り15は、座板2の上面框側端部に固定されている。
【0016】
上記手摺り構造によれば、高さの低い第2の手摺り15に掴まりながら椅子から立ち上がったり座ったりすることができ、高さの高い第1の手摺り14に掴まり立ちしながら土間8から框10ヘ上がったり框10から土間8へ降りたりすることができる。よって、高齢者にとっては履物を履きかえる際の身体の負担が減りしかも、掴まり立ちしても椅子脚部3と支持脚部5により垂直荷重を分散して受けるので安定性が高い。
【0017】
次に、椅子の手摺り構造の他例について、図6を参照して説明する。図1と同一部材には同一番号を付して説明を援用する。図6(a)(b)において、椅子1は建物の玄関先に座板2の短手方向一方側を壁面に近接し長手方向の一方側を框10に近接して配置されるのは同様である。椅子1の座板2には、框側端部に壁9の壁面と直交する向きに高さの異なる第1の手摺り16と第2の手摺り17が階段状に設けられる。
【0018】
利用者は、高さの低い第1の手摺り16に掴まりながら椅子1から立ち上がったり座ったりすることができ、高さの高い第2の手摺り17に掴まり立ちしながら土間8から框10ヘ上がったり框10から土間8へ降りたりすることができる。この場合には、高齢者にとっては履物を履きかえる際の身体の負担が減り、しかも座板短手方向に第1、第2の手摺り16、17が設けられるため座板2が幅広に設計されるので手摺りに掴まり立ちしても安定性が高い。また、第1、第2の手摺り16、17には垂直荷重を受ける支持機構を設ける必要がないので、手摺りの構造が簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】椅子の手すり構造を示す正面図、平面図、右側面図である。
【図2】他例に係る椅子の手摺り構造の正面図、平面図、右側面図である。
【図3】他例に係る椅子の手摺り構造の正面図、平面図、右側面図である。
【図4】他例に係る椅子の手摺り構造の正面図、平面図、右側面図である。
【図5】他例に係る椅子の手摺り構造の正面図、平面図、右側面図である。
【図6】他例に係る椅子の手摺り構造の正面図及び右側面図である。
【図7】従来の玄関構造の一例を示す正面図及び平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 椅子
2 座板
3 脚部
4 手摺り
5 支持脚部
6 支持機構
7 把持部
8 土間
9 壁
10 框
11 安定脚部
12 アーム部
13 当接機構
14、16 第1の手摺り
15、17 第2の手摺り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の玄関先に座板の短手方向一方側を壁面に近接し長手方向の一方側を框に近接して配置される椅子の手摺り構造において、
座板の框側端部に手摺りが設けられ、該手摺りには框床面に接触して荷重を受ける高さ調整可能な支持脚部を有する支持機構を備えたことを特徴とする椅子の手摺り構造。
【請求項2】
手摺りは、環状に形成された把持部が座板面上及び框面上にオーバーハングして設けられることを特徴とする請求項1記載の椅子の手摺り構造。
【請求項3】
手摺りは、環状に形成された把持部のうち座板に平行部分が座板面に固定され、座板に垂直部分に支持機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の手摺り構造。
【請求項4】
支持機構の支持脚部を中心に回動可能な安定脚部が設けられることを特徴とする請求項1記載の椅子の手摺り構造。
【請求項5】
環状に形成された把持部には、壁面に接触してガタつきをなくす長さ調整可能なアーム部を有する当接機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の椅子の手摺り構造。
【請求項6】
座板の框側端部に、壁面と平行な第1の手摺りと該第1の手摺りより高さが低く壁面と直交する第2の手摺りが交叉して設けられることを特徴とする請求項1記載の椅子の手摺り構造。
【請求項7】
第1の手摺りは、環状に形成された把持部のうち座板に平行部分が座板面に固定され、座板に垂直部分に支持機構が設けられていることを特徴とする請求項6記載の椅子の手摺り構造。
【請求項8】
建物の玄関先に座板の短手方向一方側を壁面に近接し長手方向の一方側を框に近接して配置される椅子の手摺り構造において、
座板の框側端部に、壁面と直交する向きに高さの異なる第1の手摺りと第2の手摺りが階段状に設けられることを特徴とする椅子の手摺り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−191954(P2006−191954A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3687(P2005−3687)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(594055170)北斗制御株式会社 (19)
【Fターム(参考)】