説明

植物における香味および芳香性の揮発性物質の合成のための材料および方法

本発明は、植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、このポリヌクレオチドは、トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする。本発明はまた植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、このポリヌクレオチドは、トマトフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチドおよびフェニルアラニンデカルボキシラーゼポリペプチドに関する。本発明はまた、植物に対して揮発性の増大した香味および芳香を与えるための方法に関する。植物は本発明の一つまたは複数のポリヌクレオチドで形質転換されてもよい。本発明はまた、これらの形質転換された植物細胞、植物組織ならびに植物およびそのトランスジェニック子孫に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国国立科学財団(National Science Foundation)助成金番号7223426-12の下、合衆国政府の支援によってなされた。合衆国政府は本発明において特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年10月3日出願の米国特許仮出願第60/508,568号および2004年3月31日出願の米国特許仮出願第60/558,504号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
果実は、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤および繊維の大部分をもたらすヒトの食餌の主な構成要素である。香味および栄養組成は、プラスのヒトの利益のために明確かつ顕著な可能性を有するが、それらは、その一般的に複雑な生合成および調節経路に起因して、伝統的な育種またはトランスジェニックのアプローチのいずれかによって改変するには困難な形質であることが証明されている。実際、香味を含む生物学的な項目は十分には規定されていない。多くの果実において代表的に香味とみなされているものは糖、酸および複数の揮発性の二次代謝物間の複雑な相互作用の産物である(Buttery et al., 1988;Baldwin et al.,2000)。これらの化合物の合成および蓄積は、植物の増殖および発達のさらなる局面にまた影響し得る多くの遺伝子の協調された活性の結果である。従って、ヒトの利点のためのこれらの形質の効率的な操作には、関与する経路およびそれを制御する調節システムのさらに広い知識が必要である。ゲノミクスの出現前には、研究者らは、対象となるプロセスにおいて重要ないくつかの遺伝子に対してただ1つの活性のみに集中して、そのそれぞれの効果を相対的に分離して見ていた。実際的な観点では、香味および栄養は密接に関連しており、消費のための食物の選択には香味が直接影響するので同等に重要であり、従って、ヒトの食餌に対してプラスの栄養的な結果を有する。
【0004】
果実を有する作物は、分類学上多様である(例えば、トウガラシ、トマト、メロン、リンゴ、バナナ、ブドウ)。しかし、それらは共通の特徴を共有する。全てではないがほとんどの果実は、肥大した子房である。栽培品種化された植物がどのようにして果実を保有するようになるか、またはそれらが熟成する機序という本発明者らの知識はまだ初歩的であるが、他のいかなる種よりもトマト(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))におけるこれらのプロセスについては公知である(概説については、Giovannoni(2001)を参照のこと)。さらに、準同質遺伝子系統(Near Isogenic Lines)(NILs)、一遺伝子熟成変異体(single gene ripening mutants)、およびトランスジェニック系統の多様なセットは、果実の発達および熟成の遺伝的調節が研究され得る入口に相当する(Gray et al.,1994;Giovannoni et al.,1999)。以下に記載される遺伝的に十分特徴付けられたトマトの生殖質の多様性(表1)は、他の結実する種では比類がない。それにもかかわらず、果実の熟成は種間で変化する協調的に調節される生化学的事象の複雑な合計であるが、重要な調節性の構成要素は維持されていると考えられるということを理解することが重要である(HobsonおよびGrierson,1993)。例えば、1つのグループが果実の熟成に必須である2つの遺伝子RINおよびNORを最近同定した(Giovannoni,2001;Vrebalov et al.,2002)。これらの遺伝子の果実特異的な熟成誘導性のホモログはイチゴおよびバナナから同定されている(Vrebalov et al.,2002)。イチゴは非クリマクテリック(climacteric)であり(すなわち、熟成の間の呼吸またはエチレン生合成において増大がない)、かつ果実の熟成の間のカロチノイドよりも高レベルのアントシアニンを蓄積するという点で、イチゴは、トマトと比較して極めて異なる熟成プログラムを受けている。さらに、これは解剖学的には花床であるが、ほとんどの果実は子房である。バナナは、その果実がまた肥大した心皮であるが、単子葉植物であるという点で興味深い。単子葉植物および双子葉植物の間で共有される明らかに同様の熟成制御によって、基本的な熟成調節は、進化を通して保存されている可能性が高いことが示される。まとめると、これらの結果によって、特定の栄養および香味の成分は果実種の間で変化し得るが、それらは、同様の遺伝的制御システムを有する同様の経路を通じた調節された代謝フラックスに起因するようであることが示唆される。従って、トマトで同定された調節性および生合成の遺伝子によって、広範な農業上重要な果実種において同じまたは関連の化合物の改変が可能になる。
【0005】
トマトは植物の遺伝学、発達、生理学および果実熟成のモデルシステムとして長く役立っており、これによって、この経済学的に重要な植物の生物学に関与する実質的な情報の蓄積が生じている。トマトの多くの実験的なツールおよび特徴によって、トマトは果実の熟成の研究に理想的となる。これらとしては、過剰な生殖質の収集、多くの天然の、誘導されたかつトランスジェニックの変異体、通常の形質転換技術、高密度および拡大RFLPマップ、多数のcDNAおよびゲノムライブラリー、小型のゲノム、比較的短い寿命ならびに成長および維持の容易さが挙げられる。さらに、発達しており、かつ発達し続けている多くのゲノムツールとしては、a)23個の異なるトマト組織/処理からの140,000を超えるEST配列(約30,000非重複)(果実由来のESTの三分の一である)と、b)発達されて利用されているEST発現アレイ(bti.cornell.edu/CGEP/CGEP.htmlを参照のこと)と、c)遺伝子単離および最終的なゲノム配列決定を容易にするような遺伝的マップと強く結びついているトマトの物理的マップの発達の活動の近年の始まりとが挙げられる(Tanksley et al.,NSF tomato genome project,1992)。トマトの果実の生物学における集中的な研究の労力によって、植物の生物学の分野で広範な影響を有する多くの重要な発見が生じており、これには、アンチセンス技術による遺伝子発現の制御、果実の発達および熟成に影響する多くの遺伝子の特徴付け、エチレン合成および知覚のための遺伝子の特徴づけ、ならびに熟成調節および花の発達の分子調節に対するエチレン応答の最近の関連が挙げられる(Vrebalov et al.,2002)。
【0006】
果実の成熟および熟成は農産物として可食性であってかつ有用な器官に関する発達の最終段階で生じる生化学的および生理学的な変化の総和である。これらの変化としては高頻度に、細胞壁の超微細構造および構成の改変、糖へのデンプンの変換、色素および栄養の生合成/蓄積における変化、ならびに香味および芳香の揮発性物質レベルの上昇が挙げられる(Rhodes,1980;HobsonおよびGrierson,1993)。いくつかの熟成効果、例えば、カルテノイドおよびビタミンC合成および蓄積は、成熟果実の栄養価に直接影響しているが、他の影響する香味および風合い(例えば、揮発性物質、糖および酸)が、総消費レベルに対するその寄与によってヒトの栄養に対する直接の影響を有し得る。要するに、「風味が良好であるほど」、消費が増大する。これは、特に重要である。なぜなら食物の選択が劣っていれば社会経済的なラダーのより低い段階における小児および社会のメンバーに対して不釣合いな影響を発揮するからである。
【0007】
ほとんどの果実は、成熟の間、色、風合い、風味および栄養の組成物において改変を示すが、熟成の2つの主な分類であるクリマクテリックおよび非クリマクテリックが、呼吸およびエチレン合成率に基づいて果実を識別するために利用されている。クリマクテリックの果実、例えば、トマト、アボカド、バナナ、モモおよびリンゴは、熟成の間のその呼吸の増大およびエチレン合成率によって、イチゴ、ブドウおよび柑橘類のような非クリマクテリックの果実から識別される(Lelievre et al.,1998)。トマトでは、熟成の調整および完了にエチレンが必要であることが示されている(Yang,1985;TuckerおよびBrady,1987;Klee et al.,1991;Picton et al.,1993;Lanahan et al.,1994)。クリマクテリックの熟成の調整における分子レベルでのエチレンの重要な役割は、トマトにおけるエチレン誘導性の熟成関連遺伝子の発現の解析によって最初に観察された(Lincoln et al.,1987;Maunders et al.,1987)。多くの果実発達関連遺伝子はこれまでに、種々の発現パターンおよび生化学的機能によって単離されている(Gray et al.,1994に概説された)。多くの果実発達および熟成関連遺伝子のインビボ機能が、トマトにおいてアンチセンス抑制および/または変異相補性によって試験されている。例えば、ポリガラクツロナーゼは、果実の軟化にほとんど影響しないために、熟成関連ペクチン脱重合および病原体感受性に必要であることが示された(Smith et al.,1988,Giovannoni et al.,1989,Kramer et al.,1990)。フィトエンシンターゼの阻害によって、カロチノイド生合成の低下、ならびに果実および花の色素沈着の低下が生じた(FrayおよびGrierson,1993)。エチレン発生の減少によって、ACCシンターゼ(ACS)およびACCオキシダーゼ(ACO)アンチセンス株の熟成阻害が生じた(Oeller et al.,1991;Hamilton et al.,1990)が、NRエチレンレセプターの優勢な変異体対立遺伝子の導入によって、植物では、果実の熟成に関与する実質上あらゆる測定可能なエチレン応答が阻害された(Wilkinson et al.,1995;Yen et al.,1995)。
【0008】
複数のトマト熟成関連遺伝子の発現解析によって、あるサブセットは発生上制御されたエチレン誘導能を示す、すなわち、それらは熟成中の果実においてのみエチレン誘導性であることが示される。例としてはACOおよびACS遺伝子のファミリーのメンバー(Theologis et al.,1993;BlumeおよびGrierson,1997;Nakatsuka et al.,1998)、NRエチレンレセプター(Wilkinson et al.,1995;Payton et al.,1996;Lashbrook et al.,1998)およびE8(Deikman et al.,1992)が挙げられる。非エチレン媒介性の熟成制御についてのさらなる証拠は、外因性のエチレンに応答して熟成できないが、エチレン感受性の兆候およびいくつかのエチレン調節性遺伝子の誘導を含むシグナル伝達を示す、rin(熟成インヒビター(ripening-inhibitor))およびnor(非熟成(non-ripening))のような熟成障害変異体における遺伝子発現の解析から得られる(Yen et al.,1995)。これらの結果によって、調節性の束縛が、一般的なエチレン生合成およびシグナル伝達に加えてクリマクテリックの果実成熟に置かれることが示唆される。このような機序は、特定のサブセットのエチレン調節性遺伝子、またはRIN(Vrebalov et al.,2002)およびNOR転写因子の両方についての事例であるとみなされるような、エチレンとは別に作用する、エチレン以外の因子の果実特異的な調節を含み得る。これは、特に興味深い。なぜならエチレンと、発生および環境のシグナルとの間の関係のより深い理解によって、香味およびヒトの栄養に影響する経路に対する種々のシグナル伝達システムの影響が明らかになる可能性が高いからである。実際は多数の環境的要因、例えば、光および温度が果実の熟成の程度および速度に劇的に影響し得、これにはカロチノイドおよび香味化合物の蓄積に対する有意な影響を伴う(HobsonおよびGrierson,1993;Yen et al.,1997)。
【0009】
多数の植物代謝物は、「栄養性化合物(nutritive compounds)」網が推測である場合に列挙され得る。これらとしては、ほんの2〜3例を挙げれば種々の抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、繊維、脂質およびアミノ酸が挙げられる。さらに、上記のとおり、当業者は、香味およびさらなる品質の特性の改変が果実または野菜の消費の増大を通じて健康の改善をもたらし得ると合理的に主張することができる。
【0010】
なかでもトマトの果実は、米国、南米および欧州におけるヒトの食餌においてリコピン、βカロチンおよびビタミンC(アスコルビン酸)の最高の供給源であり、アジアおよび中東において一貫して益々重要になっている。直接の栄養的な価値に加えて、カロチノイドは、特に、果実の香味および芳香に影響する化合物に代謝され、従って、新鮮かつ処理された産物を得るのに重要な影響を有する。βカロチンを通じたフィトエンからの合成工程をコードする遺伝子(Bartley et al.,1994;Ronen et al.,1999)は、カロチノイドレベルの改変についての潜在的な調節ポイントである。実際、利用可能なデータによって、リコピンの蓄積は、その合成を進行する遺伝子の上方制御および熟成の間にそれをさらに代謝する遺伝子の下方制御の協調に起因することが示される(Ronen et al.,1999)。広範なレベルのリコピンおよびβカロチンを示す、多くの変異したトランスジェニックのRIおよび育種系統が利用可能である(表1)。特定の変異体は、触媒工程のいくつかに相当する(例えば、r=フィトエンシンターゼならびにcrおよびB=リコピンシクラーゼ;Hamilton et al.,1990;Ronen et al.,1999)が、その他のhp-1およびhp-2などは、環境応答の調節因子である。アンチセンスフィトエンシンターゼのトマト株は、全てのカロチノイド誘導性揮発性物質が大きく低下している(Baldwin et al.,2000)。さらに、エチレンの合成または知覚の変化したトランスジェニック株および変異株は、ばらついたカロチノイドレベルを示す(表1)。
【0011】
(表1)カロチノイド、フラボノイド、ビタミンCの変化したトマト生殖質

破線は、変異体であって、対応する遺伝子がクローニングされている変異体(第一段)とそれを有さない変異体(第二段)とを区別している。最後の段は、エチレン合成または応答が変化し、かつカロチノイド蓄積において相当する変化を伴うトランスジェニック株を示している。()で示される遺伝子型は、ある範囲のカロチノイド蓄積レベルを実証する、複数の独立したトランスジェニック株が利用可能であるものを示している。**各々がカロチノイドおよびフラボノイドの蓄積に対して種々の程度の効果を有するhp-1の3つの異なる変異体対立遺伝子は、M.Koornneefによって提供された。B=βカロチン。L=リコピン。ビタミンCおよび揮発性物質の定量的データは、これらの株の多くについては未知であり(NA)、それらのそれぞれの表現型は、それらが一方でまたは両方で変化されている可能性が高いことを示唆する。
【0012】
香味揮発性物質の場合、合成の経路は、多くの場合、十分に確立されていない。例えば、βイオノンおよびβダマセノンのようなアポカロチノイドの合成は全く未知である。ごく最近、インビトロでβイオノンのようなアポカロチノイドを合成するシロイヌナズナ(Arabidopsis)の酵素CCD1(カロチノイド切断ジオキシゲナーゼ(Carotenoid Cleavage Dioxygenase))が同定されている(Schwartz et al.,2001)。この遺伝子は、多重遺伝子ファミリーの一部であり、そのいくつかはABAのような他のアポカロチノイドの合成を担う(Tan et al.,1997)。CCD1は、9-10および9’-10’結合において複数のカロチノイド基質を切断して、潜在的にβイオノンのような揮発性物質を遊離するが、これはインビボでは確認されていない。同様に、いくつかの異なる揮発性物質が脂質の分解から誘導される(表2)。それらの合成におけるおそらく最初の工程は、リポキシゲナーゼ(LOX)の作用である(RileyおよびThompson,1997;Baldwin et al.,2000)。現在では、14の異なるESTコンティグがトマトのデータベースにあって、推定でLOXとして同定されている。脂質由来の揮発性物質との相関を示す任意のLOXが解析の候補配列である。これは正確には、この種の相関性のある生化学および発現のアプローチであり、これによってイチゴの揮発性合成における重要な酵素の同定が得られた(Aharoni et al.,2000)。
【0013】
(表2)トマトの16の最も重要な香味揮発性物質

揮発性物質を、匂いの単位(濃度×ヒトの検出能力)に基づいて重要性によって順位付けする。濃度は、代表的な市販のトマトの平均値である。匂いの特徴は、訓練を受けた熟練した判定員によって決定した。
【発明の開示】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明は、植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、ポリヌクレオチドは、トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする。別の態様では、ポリヌクレオチドは、ペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチドに関する。
【0015】
本発明は、植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、ポリヌクレオチドは、トマトフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるフェニルアラニンデカルボキシラーゼポリペプチドに関する。
【0016】
本発明はまた、植物に対して増大した香味および芳香の揮発性物質を提供するための方法に関する。植物は本発明の一つまたは複数のポリヌクレオチドで形質転換されてもよい。本発明はまた、これらの形質転換された植物細胞、植物組織、ならびに植物およびそのトランスジェニック子孫に関する。
【0017】
発明の詳細な開示
本発明は、植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、このポリヌクレオチドは、トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする。しかし他の植物種の相同な2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内であることが意図される。別の態様では、このポリヌクレオチドは、ペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする。例示的な態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有するトマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチド、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする。別の例示的な態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を有するペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチド、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする。特定の態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:2の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。さらなる特異的な態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。従って、本発明は、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:11に示されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:11の、縮重変種を含む変種に関する。ひとつの態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド172〜1155を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜990を含む。
【0018】
本発明は、植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドに関する。ひとつの態様では、このポリヌクレオチドは、トマトのフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする。しかし、他の植物種の相同なフェニルアラニンデカルボキシラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内であることが意図される。例示的な態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列を有するトマトフェニルアラニンデカルボキシラーゼポリペプチド、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする。特定の態様では、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、SEQ ID NO:4、6、8もしくは12に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:5、7、9もしくは13の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。従って、本発明は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8もしくはSEQ ID NO:12に示されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8もしくはSEQ ID NO:12の、縮重変種を含む変種に関する。ひとつの態様では、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1395を含む。別の態様では、SEQ ID NO:7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、SEQ ID NO:6、8もしくは12に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1413を含む。
【0019】
本発明はまた、植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド発現構築物に関する。ひとつの態様では、本発明の発現構築物は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むトマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードするポリヌクレオチド配列を含む。別の例示的な態様では、本発明の発現構築物は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を有するペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼポリペプチドまたはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードするポリヌクレオチド配列を含む。特定の態様では、このポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:2の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。さらなる特異的な態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド172〜1155を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜990を含む。
【0020】
本発明はまた、植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド発現構築物に関する。ひとつの態様では、本発明の発現構築物は、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列を含むトマトのフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種を含む。特定の態様では、このポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:4、6、8もしくは12に示されるポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:5、7、9もしくは13の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1395を含む。別の態様では、SEQ ID NO:7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ、SEQ ID NO:6、8もしくは12に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1413を含む。
【0021】
本発明の発現構築物は一般に、この発現構築物が発現されることを意図している宿主細胞において機能的である調節エレメントを含む。従って、当業者は、細菌の宿主細胞、酵母の宿主細胞、植物の宿主細胞、昆虫の宿主細胞、哺乳動物の宿主細胞およびヒトの宿主細胞における使用のための調節性エレメントを選択し得る。調節性エレメントとしては、プロモーター、転写終止配列、翻訳終止配列、エンハンサーおよびポリアデニル化エレメントが挙げられる。本明細書において用いる場合、「発現構築物」という用語は、作動可能に連結された核酸配列の転写を提供する核酸配列の組み合わせをいう。本明細書において用いる場合、「作動可能に連結された(operably linked)」という用語は、記載された構成要素の並置であって、この構成要素がその意図される様式で機能することを可能にする関係である並置をいう。一般には、作動可能に連結された構成要素は、連続した関係である。
【0022】
本発明の発現構築物は、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列に対して作動可能に連結されたプロモーター配列を含んでもよい。ひとつの態様では、このプロモーターは、本発明のポリヌクレオチドの過剰発現をもたらすものである。作動可能に連結された核酸配列の過剰発現に有用なプロモーターは、当技術分野において公知である。プロモーターは、当技術分野において公知の標準的な技術を用いてポリヌクレオチド配列または発現構築物に組み込まれ得る。プロモーターの複数のコピーまたは複数のプロモーターは、本発明の発現構築物において用いられ得る。好ましい態様では、プロモーターは、発現構築物における転写開始部位からほぼ同じ距離に位置し得る。なぜなら、その天然の遺伝的環境における転写開始部位由来であるからである。この距離のある程度のバラツキは、プロモーター活性の実質的な低下がないままに可能である。転写開始部位が代表的には、発現構築物に含まれる。
【0023】
発現構築物が植物細胞において提供されるかまたは植物細胞に導入されるならば、例えば、カリフラワー・モザイクウイルス(CaMV)35S(強化されたCaMV 35Sプロモーターを含む(例えば、米国特許第5,106,739号を参照のこと))またはCaMV 19Sプロモーターなどの植物ウイルスプロモーターが用いられ得る。例示的な態様では、このプロモーターは、ゴマハノグサモザイクウイルス(figwort mosaic virus)35Sプロモーターである。植物における発現構築物に用いられ得る他のプロモーターとしては、例えば、以下が挙げられ、プロリフェラ(prolifera)プロモーター、Ap3プロモーター、熱ショックプロモーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)のT-DNA 1’-プロモーターまたはT-DNA 2’-プロモーター、ポリガラクツロナーゼプロモーター、ペチュニア由来のカルコンシンターゼA(CHS-A)プロモーター、タバコPR-laプロモーター、ユビキチンプロモーター(米国特許第6,528,701号および同第6,054,574号)、アクチンプロモーター、alcA遺伝子プロモーター、pin2プロモーター(Xu et al.,1993)、トウモロコシWipIプロモーター、トウモロコシtrpA遺伝子プロモーター(米国特許第5,625,136号)、トウモロコシCDPK遺伝子プロモーター、およびRUBISCO SSUプロモーター(米国特許第5,034,322号)もまた用いられ得る。組織特異的プロモーター、例えば、果実特異的プロモーター、例えば、トマトのE8プロモーター(アクセッション番号:AF515784;Good et al.(1994))、ハイブリッドE4/E8プロモーター(米国特許第6,118,049号)、LeExp-1プロモーター(米国特許第6,340,748号)、およびトマトのポリガラクツロナーゼ-βサブユニットプロモーター(米国特許第6,127,179号)が用いられ得る。花器官特異的プロモーターは、植物の花器官において本発明のポリヌクレオチドを発現するために本発明の発現構築物とともに用いられ得る。花器官特異的プロモーターの例としては、米国特許第6,462,185号;同第5,859,328号;同第5,652,354号;同第5,639,948号;および同第5,589,610号に記載される任意のプロモーター配列が挙げられる。種子特異的なプロモーター、例えば、β-ファゼオリン遺伝子(例えば、インゲンマメのもの)、またはグリシニン遺伝子(例えば、ダイズのもの)などに由来するプロモーターも用いられ得る。根特異的なプロモーター、例えば、米国特許第6,455,760号もしくは米国特許第6,696,623号に、または米国特許出願第20040078841号;同第20040067506号;同第20040019934号;同第20030177536号;同第20030084486号;もしくは同第20040123349号記載の任意のプロモーター配列が、本発明の発現構築物で用いられ得る。構成的プロモーター(例えば、CaMV、ユビキチン、アクチンまたはNOSプロモーター)、発生調節プロモーター、および誘導性プロモーター(例えば、熱、光、ホルモンまたは化合物によって誘導され得るプロモーター)もまた、本発明のポリヌクレオチド発現構築物との使用のために意図される。
【0024】
動物細胞における発現のため、本発明の発現構築物は、ポリヌクレオチド配列の転写を誘導し得る適切なプロモーターを含んでもよい。細胞が哺乳動物細胞であれば、例えば、アクチンプロモーター、メタロチオネインプロモーター、NF-κBプロモーター、EGRプロモーター、SREプロモーター、IL-2プロモーター、NFATプロモーター、オステオカルシンプロモーター、SV40初期プロモーターおよびSV40後期プロモーター、Lckプロモーター、BMP5プロモーター、TRP-1プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス末端反復配列プロモーター、STATプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターのようなプロモーターを発現構築物において用いてもよい。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞における発現のために本発明の発現構築物と用いられ得る。
【0025】
原核生物システムにおける発現のため、本発明の発現構築物は、例えば、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター、λPLプロモーター、βラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、phoAプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーターまたはtacプロモーターのようなプロモーターを含み得る(de Boer et al.,1983)。
【0026】
酵母細胞における本発明の発現構築物との使用のために適切なプロモーターとしては、限定はしないが、3-ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、メタロチオネインプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ-2-プロモーター、およびヘキソキナーゼプロモーターが挙げられる。
【0027】
本発明の発現構築物は任意で、転写終止配列、翻訳終止配列、シグナルペプチドをコードする配列および/またはエンハンサーエレメントを含んでもよい。転写終止領域は代表的には、真核生物またはウイルスの遺伝子配列の3’非翻訳領域から得ることができる。転写終止配列は、効率的な終止をもたらすためにコード配列の下流に位置してもよい。シグナルペプチド配列とは、特定のオルガネラ区画からタンパク質の作用および細胞外の環境の部位に及ぶ広範な翻訳後の細胞内目的地に対して作動可能に連結された成熟ポリペプチドの再配置を担う、タンパク質のアミノ末端に代表的に存在する短いアミノ酸配列である。作動可能に連結されたシグナルペプチド配列の使用を通じた意図される細胞および/または細胞外の目的地に対して遺伝子産物を標的することは、本発明のポリペプチドとの使用のために意図される。古典的なエンハンサーは、遺伝子転写を増大するシス作用エレメントであり、かつまた発現構築物中に含まれてもよい。古典的なエンハンサーエレメントが当技術分野において公知であり、これには限定はしないが、CaMV35Sエンハンサーエレメント、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターエンハンサーエレメント、およびSV40エンハンサーエレメントが挙げられる。遺伝子発現を増強するイントロン媒介性エンハンサーエレメントも、当技術分野において公知である。これらのエレメントは、転写領域内に存在してもよく、かつ方向依存性である。例としては、トウモロコシ シュランクン-1(shrunken-1)エンハンサーエレメントが挙げられる(ClancyおよびHannah,2002)。
【0028】
発現構築物から転写されたmRNAのポリアデニル化を指向するDNA配列はまた、発現構築物に含まれてもよく、限定はしないがオクトピンシンターゼまたはノパリンシンターゼのシグナルが挙げられる。本発明の発現構築物はまた、他の遺伝子の転位を指向するポリヌクレオチド配列、すなわちトランスポゾンを含んでもよい。
【0029】
発現構築物はまた、例えば、形質転換された細胞を選択するための抗生物質耐性および/または除草剤耐性をコードする遺伝子を含む一つまたは複数の優勢選択マーカー(dominant selectable marker)遺伝子を含んでもよい。抗生物質耐性遺伝子は、以下の抗生物質の一つまたは複数に対して耐性を提供し得る。ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、パロモマイシン、ネオマイシンおよびスペクチノマイシン。カナマイシン耐性は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPT II)によって提供され得る。除草剤耐性遺伝子は、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼまたはグリフォセートに対する抵抗性を与え得る。細胞形質転換スクリーニングのために用いられる他のマーカーとしては、βグルクロニダーゼ(GUS)、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ノパリンシンターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)または強化GFP(Yang et al.,1996)をコードする遺伝子が挙げられる。
【0030】
本発明はまた、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドベクターに関する。特有の制限酵素部位が、ポリヌクレオチドベクターへの挿入を可能にするために本発明の発現構築物またはポリヌクレオチドの5’および3’末端に含まれてもよい。本明細書において用いる場合、「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと結合させた場合複製し得、細胞間でポリヌクレオチド配列を移動し得る、例えば、プラスミド、コスミド、染色体、ファージ、ウイルスなどを含む任意の遺伝的エレメントをいう。ベクターは、選択された宿主細胞においてベクターを複製することを可能にするヌクレオチド配列を含む。限定はしないがpBR322、pUCシリーズ、M13シリーズおよびpBLUESCRIPTベクター(Stratagene,La Jolla,CA)を含む多数のベクターが発現および/またはクローニングのために利用可能である。
【0031】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドのコード配列または非コード配列に対してハイブリダイズし得る、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーのような、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーに関する。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする核酸配列を検出するための方法において用いられ得る。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、PCR方法および核酸増幅に関与する他の方法において用いられ得る。好ましい態様では、本発明のプローブまたはプライマーは、ストリンジェントな条件下で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズし得る。本発明のプローブおよびプライマーは任意で、検出可能標識またはレポーター分子、例えば、蛍光分子、酵素、放射性部分(例えば、3H、35S、1251、など)などを含んでもよい。本発明のプローブおよびプライマーは、それらが使用されている方法またはアッセイ法のために適切な任意の長さであってもよい。代表的には、本発明のプローブおよびプライマーは、10〜500またはそれ以上のヌクレオチド長である。10〜20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、91〜100またはそれ以上のヌクレオチド長であるプローブおよびプライマーが、本発明の範囲内と考えられる。本発明のプローブおよびプライマーは、ポリヌクレオチド配列との完全な(100%)ヌクレオチド配列同一性を有してもよいし、またはこの配列同一性は100%未満であってもよい。例えば、プローブまたはプライマーと配列との間の配列同一性は、このプローブまたはプライマーが、本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る限りは、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%、70%または任意の他の割合の配列同一性であってもよい。本発明の例示的なプローブおよびプライマーは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列を有するもの、またはSEQ ID NO:3の機能的なフラグメントもしくは変種を含む。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAのいずれかから構成され得る。好ましくは、ポリヌクレオチドは、DNAから構成される。本発明はまた、本明細書において開示されるポリヌクレオチドに対して配列において相補的であるポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、精製または単離された形態で提供され得る。
【0033】
遺伝子コードの縮重性のおかげで、種々の異なるポリヌクレオチド配列が、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼおよびフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードし得る。全ての可能性のあるトリプレットコドン(ここではUはTも意味する)および各々のコドンによってコードされるアミノ酸を示す表は、Lewin(1995)に記載される。さらに、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素と同じもの、または本質的に同じものをコードする別のポリヌクレオチド配列を作製することは当技術分野において訓練された当業者の技術の十分な範囲内である。これらの縮重変種または別のポリヌクレオチド配列は、本発明の範囲内である。「本質的に同じ」配列とう言及は、本明細書において用いる場合、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの機能活性を大きく変更しないアミノ酸の置換、欠失、付加または挿入をコードする配列をいう。本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列の対立遺伝子変種もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0034】
本発明はまた、単離された植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼに関する。ひとつの態様では、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼは、トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼである。別の態様では、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼは、ペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼである。特定の態様では、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼは、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:11に示されるようなアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種を有する。本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素は、当技術分野において公知の標準的な技術を用いて精製され得る。ひとつの態様では、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドは、大腸菌(E.coli)のような微生物に組み込まれて、この微生物中で2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼを発現し、次いでそれから単離される。
【0035】
本発明はまた、単離された植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼに関する。ひとつの態様では、このフェニルアラニンデカルボキシラーゼは、トマトのフェニルアラニンデカルボキシラーゼである。特定の態様では、フェニルアラニンデカルボキシラーゼは、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるようなアミノ酸配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種を有する。本発明のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素は、当技術分野において公知の標準的な技術を用いて精製され得る。ひとつの態様では、フェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドは、大腸菌のような微生物に組み込まれて、この微生物中でフェニルアラニンデカルボキシラーゼを発現し、次いでそれから単離される。
【0036】
本発明のポリペプチド、およびそのペプチドフラグメントを用いて、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体を生成する抗体を生成してもよく、このような抗体は本発明の範囲内と考えられる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよく、かつ当技術分野において公知の標準的な方法を用いて生成かつ単離され得る。
【0037】
本発明のポリペプチドフラグメントは代表的には、SEQ ID NO:2の約もしくは少なくとも

個のアミノ酸という連続した長さ;またはSEQ ID NO:5の約もしくは少なくとも

個のアミノ酸という連続した長さ;またはSEQ ID NO:7、9もしくは13の約もしくは少なくとも

個のアミノ酸という連続した長さ;またはSEQ ID NO:11の約もしくは少なくとも

個のアミノ酸という連続した長さを含む。
【0038】
本発明のポリペプチドフラグメントは、少なくとも約25個の連続アミノ酸からSEQ ID NO:2、5、7、9、11または13に示される配列よりも1アミノ酸短い長さまでの任意の整数であってもよい。従って、SEQ ID NO:2については、ポリペプチドフラグメントは、約25〜327アミノ酸の連続アミノ酸の任意の整数であってもよく;SEQ ID NO:5については、ポリペプチドフラグメントは、約25〜464アミノ酸の連続アミノ酸の任意の整数であってもよく;SEQ ID NO:7、9または13については、ポリペプチドフラグメントは、約25〜470アミノ酸の連続アミノ酸の任意の整数であってもよく;SEQ ID NO:11については、ポリペプチドフラグメントは、約25〜329アミノ酸の連続アミノ酸の任意の整数であってもよい。「整数」いう用語は本明細書においてその数学的意味で用いられ、従って代表的な整数としては以下が挙げられる。


【0039】
本発明の各々のポリペプチドフラグメントはまた、そのN末端およびC末端位置に関して記載されてもよい。例えば、約25個の連続のアミノ酸からSEQ ID NO:2、5、7、9、11および13の全長ポリペプチドより1アミノ酸短いものまでのN末端からC末端のフラグメントの組み合わせが本発明に含まれる。従って、例えばSEQ ID NO:2を用いれば、25連続のアミノ酸フラグメントとは、

からなる群より選択されるSEQ ID NO:2のアミノ酸に相当する。同様に、SEQ ID NO:2の26個の連続するアミノ酸と327個の連続するアミノ酸との間の全ての他のフラグメントのサイズに相当するアミノ酸が、本発明に包含され、かつまたこれらの例に基づいて直ちに認識され得る。従って、本明細書が不必要に長くなるのを回避するために、SEQ ID NO:2のポリペプチドの種々のフラグメントを例示するさらなる例は、本明細書において個々には列挙されない。上記のようなフラグメントの態様はまた、このSEQ ID NO:5、7、9、11および13のポリペプチドについても、このポリペプチドがそれぞれ、465、471、471、330および471アミノ酸長であることを考慮して考えられ、かつ本明細書が不必要に長くなることを回避するために本明細書には個々には列挙しない。
【0040】
a)SEQ ID NO:2の

または
個の連続するアミノ酸と;
b)SEQ ID NO:5の

個の連続するアミノ酸と;
c)SEQ ID NO:7、9または13の

個の連続するアミノ酸と;
d)SEQ ID NO:11の

個の連続するアミノ酸とを含むポリペプチドフラグメントは、代わりに、式「n〜c(n to c)」(nとcを含む)によって記載されてもよく、ここで「n」は、このポリペプチドのN末端アミノ酸位置に等しく、かつ「c」は、C末端アミノ酸位置に等しい。本発明のこの態様では、「n」は、1という下限と全長ポリペプチドのアミノ酸の総数のマイナス24(例えば、SEQ ID NO:2については328-24=304)という上限とを有する整数である。「c」は、25と全長ポリペプチド配列のアミノ酸数との間の整数(SEQ ID NO:2については328)、かつ「n」は「c」よりも少なくとも24ずつ小さい整数である。従って、SEQ ID NO:2については、「n」は、「n」が「c」よりも少なくとも24ずつ少ない値である条件では、

からなるリストより選択される任意の整数であり;かつ「c」は、

からなる群より選択される任意の整数である。「n」および「c」の位置のあらゆる組み合わせが、本発明のポリペプチドフラグメントの特定の態様として含まれる。上記のフラグメントの態様がまた、SEQ ID NO:5、7、9、11および13のポリペプチドについても、このポリペプチドがそれぞれ、465、471、471、330および471アミノ酸長であることを考慮して考えられ、かつ本明細書が不必要に長くなることを回避するために本明細書には個々には列挙しない。本発明の任意のポリペプチドフラグメント態様を記載するために用いられる全ての範囲が、他に特に示さない限り含まれる。
【0041】
本明細書に記載のように、本発明の植物2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼのフラグメントは、タンパク質分解性の酵素(例えば、トリプシン、キモトリプシンまたはコラゲナーゼ)、または化学試薬、例えば、臭化シアン(CNBr)を用いて本発明のポリペプチドを切断することによって得ることができる。または、ポリペプチドフラグメントは、高度に酸性の環境、例えば、pH2.5で生成され得る。ポリペプチドフラグメントはまた、化学合成によって、または本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素のフラグメント、例えば、SEQ ID NO:2もしくはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列のフラグメントである2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ、またはSEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列のフラグメントであるフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を用いて調製されてもよい。
【0042】
本発明の植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素において特異的に例示されるかまたは天然に存在するアミノ酸以外のアミノ酸の置換はまた、本発明の範囲内であるものとする。例えば、非天然のアミノ酸は、置換されたアミノ酸を有する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素が、アミノ酸が置換されていない2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼと実質的に同じ生物学的活性を保持する限り、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼのアミノ酸について置換されてもよい。非天然のアミノ酸の例としては、限定はしないが、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、ホモセリン、フェニルグリシン、タウリン、ヨードチロシン、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、ε-アミノヘキサン酸、6-アミノヘキサン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、ノルロイシン、ノルバリン、サルコシン、ホモシトルリン、システイン酸、τ-ブチルグリシン、τ-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、C-メチルアミノ酸、N-メチルアミノ酸および一般的アミノ酸アナログが挙げられる。非天然のアミノ酸はまた、誘導体化された側鎖を有するアミノ酸を含む。さらに、タンパク質中の任意のアミノ酸は、D(右旋性)型またはL(左旋性)型のアミノ酸であってもよい。本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素のタンパク質配列の対立遺伝子変種はまた、本発明の範囲内に包含される。
【0043】
アミノ酸は一般に、以下のクラスに分類され得る。非極性、非荷電極性、塩基性および酸性。1つのクラスのアミノ酸を有する本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素が同じクラスの別のアミノ酸で置換されている保存的置換は、この置換を有する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素が、置換を有さない2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素と実質的に同じ生物学的活性を依然として保持している限り、本発明の範囲内に収まる。配列中に一つまたは複数のアミノ酸置換を有する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドは、本発明の範囲内であると考えられる。下の表3は、各々のクラスに属するアミノ酸の例のリストを示す。
【0044】
(表3)

【0045】
一文字のアミノ酸省略形を表4に定義する。
【0046】
(表4)

【0047】
本発明はまた、本発明の酵素活性のある2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼもしくはフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素をコードする本発明のポリヌクレオチドの変種に関する。変種配列は、この配列の一つまたは複数のヌクレオチドが置換、欠失および/または挿入されている配列を含む。DNAの天然のヌクレオチドについて置換され得るヌクレオチドは、限定はしないが、イノシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、ヒポキサンチン、1-メチルグアニン、5-メチルシトシンおよびトリチル化塩基を含み得る塩基部分を有する。配列中のヌクレオチドの糖部分もまた改変されてもよく、これには限定はしないが、アラビノース、キシルロースおよびヘキソースが挙げられる。さらに、ヌクレオチドのアデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシル塩基は、アセチル、メチルおよび/またはチオ基で改変されてもよい。ヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む配列は、当技術分野において公知の標準的な技術を用いて調製および試験され得る。
【0048】
本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼおよびフェニルアラニンデカルボキシラーゼのフラグメントおよび変種は、本明細書に記載されるように生成され、かつ当技術分野において公知の標準的な技術を用いて酵素的な機能の存在について試験され得る。例えば、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのフラグメントおよび/または変種を試験するためには、フェニルアセトアルデヒドの2-フェニルエタノールへの変換を本発明によってアッセイしてもよい。従って当業者は、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのフラグメントおよび変種を容易に調製かつ試験し得、かつこのフラグメントまたは変種が全長または野性型の植物2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼに対して機能的な酵素活性を保持しているか否かを決定し得る。同様に、フェニルアラニンからフェネチルアミンへの変換についてのアッセイ法は、本発明のフェニルアラニンデカルボキシラーゼのフラグメントおよび/または変種の酵素活性を評価するために用いられ得る。
【0049】
本発明の範囲内と考えられるポリヌクレオチドおよびポリペプチドはまた、本明細書において特異的に例示される本発明の配列とのさらに特定的な同一性および/または類似性の範囲に関して規定され得る。配列同一性は代表的には、60%より大きく、好ましくは75%より大きく、さらに好ましくは80%より大きく、それよりさらに好ましくは90%より大きく、かつ95%より大きくてもよい。ある配列の同一性および/または類似性は、本明細書に例示される配列と比較して49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。他に特定しない限り、本明細書において用いられる2つの配列の配列同一性パーセントおよび/または2つの配列の類似性は、KarlinおよびAltschul(1993)において改変されるような、KarlinおよびAltschul(1990)のアルゴリズムを用いて決定され得る。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。BLAST検索は、所望の配列同一性パーセントを有する配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行なってもよい。比較目的のためにギャップアライメントを得るために、ギャップBLAST(Gapped BLAST)をAltschul et al.(1997)に記載されるように用いてもよい。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(NBLASTおよびXBLAST)のデフォールトパラメーターを用いてもよい。NCBI/NIHウェブサイトを参照のこと。
【0050】
本発明はまた、本明細書に例示されるポリヌクレオチド配列と実質的に相同である配列であって、標準的なストリンジェントな条件および標準的な方法の下で、その配列とハイブリダイズすることを可能にする配列を有するポリヌクレオチド分子を意図する(Maniatis et al.,1982)。本明細書において用いる場合、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな」条件とは、ハイブリダイゼーションが代表的には6×SSPE、5×デンハート溶液(Denhardt's solution)、0.1% SDS、0.1 mg/ml変性DNA中でのDNAハイブリッドの融点(Tm)より低い20〜25Cで一晩行なわれる条件をいう。融点Tmは、以下の式(Beltz et al.,1983)で記載される。
Tm=81.5C+16.6Log[Na+]+0.41(G+C%)-0.61(ホルミアミド%)-600/塩基対中の二本鎖の長さ。
【0051】
洗浄は代表的には以下のように行われる。
(1)1×SSPE、0.1%SDS中で15分間室温で2回(低ストリンジェンシーの洗浄)。
(2)0.2×SSPE、0.1% SDS中で15分間Tm-20Cで1回(中ストリンジェンシーの洗浄)。
【0052】
本明細書において用いる場合、「核酸」および「ポリヌクレオチド」いう用語は、一本鎖型または二本鎖型のいずれであっても、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたは混合されたデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドポリマーをいい、かつ他に限定しない限り、天然に存在するヌクレオチドと同様に機能し得る天然のヌクレオチドの公知のアナログを包含する。ポリヌクレオチド配列としては、RNAに転写されるDNA鎖配列および転写されるDNA鎖に相補的である鎖の配列が挙げられる。このポリヌクレオチド配列はまた、全長配列および全長配列に由来する短い配列の両方を含む。例示された配列の対立遺伝子変種はまた、本発明の範囲内に収まる。ポリヌクレオチド配列は、センスおよびアンチセンス鎖の両方を個々の鎖または二本鎖のいずれかで含む。
【0053】
本発明はまた、本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドで形質転換された細胞に関する。ひとつの態様では、この細胞は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含むポリヌクレオチド配列で形質転換される。特定の態様では、この細胞は、SEQ ID NO:1に示されるポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:2の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列で形質転換される。ひとつの態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド172〜1155を含む。別の態様では、細胞は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含むポリヌクレオチド配列で形質転換される。特異的な態様では、植物は、SEQ ID NO:10に示されるポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列で形質転換される。ひとつの態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜990を含む。
【0054】
本発明はまた、本発明のフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする本発明のポリヌクレオチドで形質転換された細胞に関する。ひとつの態様では、この細胞は、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含むポリヌクレオチド配列で形質転換される。特定の態様では、この細胞は、SEQ ID NO:4、6、8もしくは12に示されるポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:5、7、9もしくは13の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列で形質転換される。ひとつの態様では、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1395を含む。別の態様では、SEQ ID NO:7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、それぞれSEQ ID NO:6、8もしくは12に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1413を含む。
【0055】
好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、本発明の発現構築物において提供される。形質転換された細胞は、原核生物細胞、例えば、大腸菌もしくは枯草菌(B.subtilis)のような細菌細胞であってもよく、または形質転換された細胞は、真核生物細胞、例えば、プロトプラストを含む植物細胞、もしくは動物細胞であってもよい。植物細胞としては、限定はしないが、双子葉植物、単子葉植物および針葉樹の細胞が挙げられる。ひとつの態様では、植物細胞はトマト由来の細胞である。例示的な態様では、植物細胞は、ペチュニア植物由来の細胞である。動物細胞としては、ヒト細胞、哺乳動物細胞、トリ細胞および昆虫細胞が挙げられる。哺乳動物細胞としては、限定はしないが、COS、3T3およびCHO細胞が挙げられる。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドで形質転換されるか、またはそれを含むように育種された植物、植物組織および植物細胞も、本発明によって意図される。本発明の範囲内の植物としては、単子葉植物、例えば、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、トウモロコシ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、ココナツ、ユリ、牧草(grasses)およびキビが挙げられる。本発明の範囲内の植物としてはまた、双子葉植物、例えば、トマト、エンドウマメ、アルファルファ、メロン、ヒヨコマメ、チコリ、クローバー、ケール、レンズマメ、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、セイヨウアブラナ、ブドウ、ヒマワリ、レタス、キュウリ、スイカ、リンゴ、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、タンジェリン、グレープフルーツ、ライム)、西洋ナシ、プラム、モモ、イチジク、スグリ、マスクメロン、カボチャ(squash)、サクランボ、砂糖ダイコン、茶、イチゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、キイチゴ、ローガンベリー、バラ、キク、シシトウガラシ、ナス、およびワタなど;ならびに針葉樹が挙げられる。好ましくは、植物、植物組織または植物細胞はトマトである。本発明のポリヌクレオチドを含む観賞用植物およびハーブ植物はまた、本発明の範囲内であるものとする。観賞用植物としては、バラ、ペチュニア、カーネーション、ラン、チューリップ、クチナシなどが挙げられる。ハーブ植物としては、パセリ、セージ、ローズマリーおよびタイムなどが挙げられる。ある遺伝子で植物細胞を形質転換するための技術は、当技術分野において公知であり、かつ例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染、微粒子銃(biolistic)法、エレクトロポレーション、塩化カルシウム処理などが挙げられる。形質転換された細胞は、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて植物に選択、再分化および増殖され得る。したがって、本発明の方法はまた、そのゲノム中に本発明のポリヌクレオチドが組み込まれているトランスジェニック植物ならびにその組織および細胞に関する。本発明の任意の形質転換されたまたはトランスジェニックの植物細胞または植物の種子および子孫も、本発明の範囲内に含まれる。
【0057】
本発明はまた、植物細胞のゲノムに本発明の一つまたは複数のポリヌクレオチドを組み込むこと、およびこのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現することによって果実または花の増大した香味または芳香を植物に与える方法に関する。ひとつの態様では、植物を本発明の形質転換された植物細胞から成長させる。好ましくは、このポリヌクレオチドは、この植物と同じ植物種に由来する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼまたはフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする。ひとつの態様では、この植物はトマトである。別の態様では、この植物はバラまたは他のよい香りのする観賞用植物である。それらの態様では、果実の香味の増大が所望される場合、好ましくは本発明の(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドが果実中で発現される。果実または花の芳香の増大または増強が所望される態様では、好ましくは本発明の(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドが果実および/または花において発現される。特定の態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードするポリヌクレオチドが植物ゲノムに組み込まれる。ひとつの態様では、この植物はトマト植物である。例示的な態様では、この植物はペチュニア植物である。特定の態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:2の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド172〜1155を含む。特定の態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードするポリヌクレオチドがトマト植物のゲノムに組み込まれる。特定の態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜990を含む。別の特定の態様では、SEQ ID NO:5、7、9もしくは13に示されるアミノ酸配列またはその酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードするポリヌクレオチドがトマト植物のゲノムに組み込まれる。特定の態様では、このポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4、6、8もしくは12に示されるヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:5、7、9もしくは13の酵素活性のあるフラグメントもしくは変種をコードする配列を含む。ひとつの態様では、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1395を含む。別の特定の態様では、SEQ ID NO:7もしくは9に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:6もしくは8に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜1413を含む。本発明のポリヌクレオチドの発現のレベルは、低、中または高レベルの発現をもたらすプロモーターの使用を含む、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて操作され得る。
【0058】
本発明はまた、2-フェニルエタノールを産生するための方法に関する。ひとつの態様では、組換え産生された本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼは、フェニルアセトアルデヒドのような適切な基質を2-フェニルエタノールへ酵素により変換するために用いられ得る。別の態様では、酵母または大腸菌のような微生物は、本発明の植物2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素、かつ任意で、一つまたは複数の酵素、例えば、フェニルアラニンデカルボキシラーゼおよびフェニルエチルアミンオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドで形質転換されて、このような酵素を発現し得、それらの酵素反応を通じて、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼについて適切な基質(例えば、フェニルアセトアルデヒド)が2-フェニルエタノールに変換される。形質転換された微生物は、増殖されて、ポリヌクレオチドは構成的に発現されるかまたは誘導され、かつ2-フェニルエタノールがこの微生物から単離され得る。
【0059】
本発明はまた、フェニルエチルアミンを産生する方法に関する。ひとつの態様では、本発明の組換え産生されたフェニルアラニンデカルボキシラーゼは、フェニルアラニンのような適切な基質をフェネチルアミンに酵素により変換するために用いられ得る。別の態様では、酵母または大腸菌のような微生物は、本発明の植物フェニルアラニンデカルボキシラーゼ、および任意で、一つまたは複数の酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換されて、このような酵素を発現し得、それらの酵素反応を通じて、フェニルアラニンデカルボキシラーゼについて適切な基質(例えば、フェニルアラニン)がフェネチルアミンに変換される。形質転換された微生物は、増殖されて、ポリヌクレオチドは構成的に発現されるかまたは誘導され、かつフェネチルアミンがこの微生物から単離され得る。
【0060】
本明細書において言及されるかまたは引用される全ての特許、特許出願、仮出願および刊行物は、本明細書の明確な開示と矛盾しない程度まで、その全体が参照により組み入れられ、これには、全ての図面および表が挙げられる。
【0061】
材料および方法
植物材料
トマト(リコペルシコン・エスクレンタム Mill. cv. M82)およびリコペルシコン・ペンネルリィ(Lycopersicon pennellii)遺伝子移入株8-2および8-2-1(EshedおよびZamir,1994)を、標準的な条件下で温室または野外で成長させた。ペチュニア植物を標準的な条件下において温室で成長させた。
【0062】
揮発性収集物
揮発性物質をSchmelz et al.(2003)によって記載されるように、約100gの刻んだ熟れたトマトの果実から収集した。ペチュニアの揮発性物質は、夕暮れ時に収穫した各植物由来の5つの花から収集した。揮発性物質は、Agilent DB-5カラム上で分けて、Agilent 6890Nガスクロマトグラフ上で分析した。
【0063】
マイクロアレイ
トマトcDNAマイクロアレイは、Moore et al.(2002)において記載された。総RNAを前に記載されたとおり単離した(Ciardi et al.,2000)。アレイをM82および遺伝子移入株8-2-1の果実由来のCy3またはCy5標識したcDNAとハイブリダイズした。アレイを数回行ない、色素を反転させて、発現データの正確性を確実にさせた。
【0064】
大腸菌における2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ発現
全長の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼcDNAをプライマー

を用いてトマト果実のcDNAから5’RACEによってクローニングした。配列解析後、全長cDNAをPCRによって得た。コード領域を、組換えによってGSTタグ(Invitrogen)を含むベクターpDEST15にクローニングして、誘導性タンパク質発現のために大腸菌株BL21-SI(Invitrogen)に形質転換した。大腸菌の粗抽出物の酵素活性を、基質としてフェニルアセトアルデヒド、桂皮アルデヒドまたはバニリンを用いてLarroy et al.(2002)の方法によって決定した。
【0065】
トランスジェニック・ペチュニア植物の産生
全長2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼcDNA(SEQ ID NO:1)をゴマハノグサモザイクウイルス(figwort mosaic virus)35Sプロモーター(Richins et al.,1987)、続いてアグロバクテリウムノパリンシンターゼ(Agrobacterium nopaline synthase)(nos)3’ターミネーターの制御下でベクターにクローニングした。導入遺伝子を、選択マーカーとしてカナマイシン耐性を用いてWilkinson et al.(1997)の方法によってペチュニア栽培種Mitchell(Petunia hybrida cv. Mitchell)二倍体に導入した。
【0066】
インビボでのフェニルアラニンデカルボキシラーゼ活性アッセイ法
トマト(M82または遺伝子移入株8-2-1)果実の果皮ディスクを1μCiのユニバーサル標識を行った14C-フェニルアラニンとともに8時間インキュベートした。果皮ディスクを、この果皮ディスク上に浮遊した2N KOHの濾紙ディスクとともに密閉したフラスコ中でインキュベートさせること、続いてシンチレーションカウントすることによって、14C-CO2の産生を測定した。14C-フェニルアラニンおよび14C-フェニルエチルアミンを、Rontein et al.(2001)によって記載されるように、果皮ディスクから抽出して、BioRex-70カラムと直列のAG-1(OH-)カラムを用いて分けた。14C-フェニルエチルアミンの産生は、薄層クロマトグラフィーによって確認した。
【0067】
大腸菌におけるフェニルアラニンデカルボキシラーゼ発現
全長の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼcDNAをTIGRデータベースから推定クローンを配列決定することによってクローニングした。配列解析後、全長コード配列をPCRによって入手して、ベクターpENTR/D-TOPO中にクローニングした。次いで、コード領域を、組換えによってGSTタグ(Invitrogen)を含むベクターpDEST15にクローニングして、誘導性のタンパク質発現のために大腸菌株BL21-AI(Invitrogen)中に形質転換した。組換えタンパク質の産生は、抗GST抗体でのタンパク質ブロッティングによって確認した。19.4mMフェニルアラニンを含有する培地中で芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼを発現する大腸菌株を増殖させることによって酵素活性を決定した。揮発性化合物を、等容積のヘキサンを用いて培養物から抽出した。抽出物を濃縮して、Agilent 6890N ガスクロマトグラフ上でAgilent DB-5カラムでのガスクロマトグラフィーによって分析した。フェネチルアミンの同定は、Schmelz et al.(2001)によって記載されるとおりGC質量分析によって確認した。
【0068】
サザンブロッティング
リコペルシコン・エスクレンタムM82または8-2-1、またはリコペルシコン・ペンネルリィの葉由来のDNAを、EcoRI、EcoRV、Dral、HaeIIIまたはScalで消化した。サザンブロッティングを、Sambrook et al.(1989)によって記載されるとおり行なった。
【0069】
以下は、本発明を行なうための手順を例示する実施例である。これらの実施例は、限定と解釈されるべきではない。全ての割合は重量によるものであり、かつ全ての溶媒混合物の割合は、他に注記される値による。
【0070】
実施例1-揮発性物質分析
DB5カラム上のGCによる揮発性物質分析によって、リコペルシコン・ペンネルリィ遺伝子移入株(IL)8-2-1由来の熟した果実における高レベルのフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールを示した。他のトマトの揮発性物質のレベルは、対照のM82の果実と同様であった(図1)。2-フェニルエタノールのレベルは、M82果実よりも8-2-1の果実において約250倍高かった。IL8-2-1の果実でのフェニルアセトアルデヒドのレベルは、対照の果実においてよりも約20倍高かった(図2)。IL8-2-1の果実は、フェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールの花の芳香と一致して、別の花の(バラの様な)芳香を有した。
【0071】
実施例2-マイクロアレイ解析
約3,000のトマトcDNAを含むマイクロアレイによって、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(cLET2M9)が対照のM82果実におけるよりもIL8-2-1の果実において高度に発現され;一方関連のトマトアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子は、IL8-2-1果実において上方制御されなかったことが示された(表5)。
【0072】
(表5)2つのアルコールデヒドロゲナーゼ様遺伝子のマイクロアレイ遺伝子発現データ

M82および遺伝子移入株8-2-1の果実から抽出されたRNAを、cDNAマイクロアレイを用いて比較した。正の値によって、遺伝子移入株8-2-1の果実における、より高いRNA発現レベルが示される。負の値によって、M82果実における、より高い発現が示される。
【0073】
クローンcLET2M9は、部分的なcDNAでしかないので、このクローンの全長cDNA配列を5’RACEによって得た。次いで、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼの全長cDNA配列をPCRによって得て、配列解析によって確認した(図3A)。2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼの推定アミノ酸配列は図3B(SEQ ID NO:2)に示される。植物では、フェニルアセトアルデヒドのような基質は、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼによって2-フェニルエタノールに変換され得る(図4)。
【0074】
実施例3-酵素活性
全長cLET2M9および関連のcLEG71F12の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼコード領域を、GSTタグを有するベクターpDEST15にクローニングして、誘導性発現のために大腸菌BL21-SI細胞中に形質転換した。大腸菌における組換えタンパク質の産生は、抗GST抗体でのウエスタンブロッティングによって決定した。フェニルアセトアルデヒドおよびいくつかの関連の基質に対するアルコールデヒドロゲナーゼの活性は、NADPHのレベルの低下およびOD340の低下によって分光光度により決定した(図5)。活性の最高レベルは、基質としてフェニルアセトアルデヒドで観察された。より低い活性レベルはまた、基質として桂皮アルデヒドで観察されたが、基質としてバニリンで示された活性は無視できるものであった。大腸菌において発現されたcLEG71F12由来のタンパク質は、試験した3つの基質においてごくわずかな活性しか示さなかった。
【0075】
実施例4-トランスジェニックペチュニアにおける2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼの発現
全長トマト2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼcDNAを、構成的に発現されたゴマノハグサモザイクウイルスプロモーターの制御下でペチュニア栽培種Mitchellに導入した。いくつかのトランスジェニックのペチュニア株は、花においてトマト遺伝子を高レベルで発現した(データ示さず)。野性型ペチュニアの花は、比較的高レベルのフェニルアセトアルデヒドおよび低レベルの2-フェニルエタノールを発生する。しかし、トマト2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドを発現するトランスジェニックのペチュニアの花は、野性型の花よりも高レベルの2-フェニルエタノールおよび低レベルのフェニルアセトアルデヒドを有する(図6)。他のペチュニアの花の揮発性物質のレベルは、トランスジェニックの花において野性型と同様であった。トランスジェニックの株ではある範囲のフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールのレベルが見られたが、ほとんどの株は、野性型の花よりも高レベルの2-フェニルエタノールおよび低レベルのフェニルアセトアルデヒドを有した(図7)。全体として、これらのデータによって、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼトマトの導入遺伝子の導入はペチュニアの花においてフェニルアセトアルデヒドの2-フェニルエタノールへの変換を生じることが示される。
【0076】
実施例5-種々の基質に対する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼの活性
フェニルアセトアルデヒドおよび関連の基質に対する、大腸菌で発現されたLePEDHのアルコールデヒドロゲナーゼ活性についてのKm。全長cLET2M9の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼコード領域を、Hisタグを有するベクターpDEST17にクローニングして、誘導性発現のために大腸菌BL21-AI細胞に形質転換した。フェニルアセトアルデヒドおよびいくつかの関連の基質に対するアルコールデヒドロゲナーゼ活性を決定した。活性の最高レベルは、基質としてフェニルアセトアルデヒドで観察された。より低い活性レベルはまた、基質として桂皮アルデヒドおよびベンズアルデヒドで観察されたが、基質としてサリチルアルデヒドでは検出可能な活性は示されなかった。
【0077】
(表6)LePEDHの基質特異性

【0078】
実施例6-インビボの芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ活性
植物における2-フェニルエタノールの形成のための経路は、図4に示される。この経路では、フェニルアラニンは、フェニルアラニンデカルボキシラーゼによってフェネチルアミンに、続いてアミンオキシダーゼによるフェネチルアミンのフェニルアセトアルデヒドへの変換によって、変換される。次いでフェニルアセトアルデヒドは、2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼによって2-フェニルエタノールに変換される。この経路における第一段階を確認するため、トマト果実の果皮ディスクを14C-フェニルアラニンとともにインキュベートした。次いで、デカルボキシラーゼ反応の産物である14Cフェネチルアミンおよび14C-CO2の形成を決定した(表7)。高レベルのフェネチルアミンおよびCO2の両方が、対照のM82果皮ディスクにおいてよりもIL8-2-1果皮ディスクにおいて形成され(表7)、かつIL8-2-1トマトの果実における、より高レベルのフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールと相関している。これらの結果によって、フェネチルアミンが、フェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールへの経路における中間体であり得ることが示される。
【0079】
(表7)14Cフェニルアラニンを供給されたM82およびIL8-2-1トマト果皮ディスクのフェニルアラニンデカルボキシラーゼ活性

果皮ディスクに、8時間にわたって1μCiのユニバーサル標識を行った14Cフェニルアラニンを供給し、産生された14C-CO2および14Cフェネチルアミンの量を決定した。
【0080】
実施例7-推定の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ遺伝子の同定
フェネチルアミンへのフェニルアラニンの変換は、フェニルアラニンデカルボキシラーゼによって触媒される。従って、トマトの配列データベースを、他の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼに対して類似性を有するcDNAについて検索した。リコペルシコン・エスクレンタムcDNA配列のいくつかのクローンを同定したが、2つが芳香族のアミノ酸デカルボキシラーゼよりもヒスチジンデカルボキシラーゼに対してさらに類似であった。これらの遺伝子の各々の全長コード配列をPCRによって得て、配列解析によって確認した。
【0081】
実施例8-酵素活性
全長の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼのコード領域を、GSTタグを有するベクターpDEST15にクローニングして、誘導性発現のために大腸菌BL21-SI細胞中に形質転換した。大腸菌における組換えタンパク質の産生は、抗GST抗体を用いたウエスタンブロッティングによって決定した。推定の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼを発現する大腸菌培養物を、フェニルアラニンの存在下で増殖させた。揮発性化合物をこれらの培養物から抽出して、ガスクロマトグラフィーによって分析した。2つの推定の芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(cLEC73K23およびcLEC75E21)を発現する大腸菌培養物は、フェネチルアミンと同じ保持時間の化合物を産生したが、対照の培養物は産生しなかった(図13)。3つの他の推定アミノ酸デカルボキシラーゼを発現する大腸菌培養物は、フェネチルアミンを産生しなかった。サンプル中のフェネチルアミンの存在は、GC-MSによって確認された。フェニルアラニンデカルボキシラーゼの核酸コード配列およびアミノ酸配列は、図8A〜8B(SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5)、ならびに図9A〜9B(SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7)に示される。cLEC73K23およびcLEC75E21のcDNA配列は、お互いに対して79%の同一性を示すが、アミノ酸配列は、お互いに対して85%類似および81%同一である。
【0082】
実施例9-サザンブロッティング
フェニルアラニンデカルボキシラーゼ活性を有する遺伝子が、第8染色体上にリコペルシコン・ペンネルリィ遺伝子移入を有する8-2-1果実におけるフェニルアラニン由来揮発性物質の変化したレベルの原因となり得るか否かを決定するために、M82、8-2-1およびリコペルシコン・ペンネルリィのゲノムDNAでのサザンブロットを、プローブとしてcLEC73K23を用いて行なった。M82とリコペルシコン・ペンネルリィとの間の多型を、EcoRI、EcoRVおよびScaIを用いて観察した(図10)。これらの酵素の各々を用いる、8-2-1の制限酵素パターンはリコペルシコン・ペンネルリィに対して同一であって、このことは遺伝子移入株8-2-1におけるcLEC73K23遺伝子が、親のリコペルシコン・ペンネルリィに由来することを示している。
【0083】
実施例10-リコペルシコン・ペンネルリィcLEC73K23配列のクローニング
リコペルシコン・ペンネルリィcLEC73K23遺伝子の配列をコードする核酸は、リコペルシコン・エスクレンタムcLEC73K23の5’および3’末端由来のプライマーを用いてPCRによって得た。次いで、リコペルシコン・ペンネルリィ遺伝子の正確な5’末端および3’末端を5’および3’RACEによって得た。この遺伝子およびアミノ酸配列の全長コード配列は、図11A〜11B(SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9)に示される。リコペルシコン・ペンネルリィおよびリコペルシコン・エスクレンタムのcLEC73K23のcDNA配列は、95%同一であるが、アミノ酸配列は、98%類似および97%同一である。リコペルシコン・ペンネルリィおよびリコペルシコン・エスクレンタムcLEC73K23配列とリコペルシコン・エスクレンタムcLEC75E21配列のアミノ酸アライメントは図12に示される。
【0084】
本明細書に記載される実施例および態様は、例示の目的に過ぎないこと、およびそれに関する種々の改変または変化が、当業者に示唆され、かつ本出願の精神および範囲内に含まれることが理解されるべきである。さらに、任意の発明の任意の構成要素もしくは制限または本明細書に開示されるその態様は、任意のおよび/または全ての他の構成要素もしくは制限(個々にまたは任意の組み合わせで)、または本明細書に開示される任意の他の発明もしくは態様と組み合わされてもよく、かつ全てのこのような組み合わせは、それに対する限定なしに本発明の範囲で意図される。
【0085】
参照文献
米国特許第5,106,739号
米国特許第5,625,136号
米国特許第5,034,322号
米国特許第5,589,610号
米国特許第5,639,948号
米国特許第6,462,185号
米国特許第6,528,701号
米国特許第6,054,574号
米国特許第6,118,049号
米国特許第6,340,748号
米国特許第6,127,179号
米国特許第5,859,328号
米国特許第5,652,354号
米国特許第6,455,760号
米国特許第6,696,623号
公報米国特許出願第20040078841号
公報米国特許出願第20040067506号
公報米国特許出願第20040019934号
公報米国特許出願第20030177536号
公報米国特許出願第20030084486号
公報米国特許出願第20040123349号






【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】M82または遺伝子移入株8-2-1完熟果実から収集した揮発性物質のGCプロファイルの結果を示す。遺伝子移入株8-2-1の果実は、対照のM82の果実よりも高レベルのフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールを有する。
【図2】対照のM82およびリコペルシコン・ペンネルリィ遺伝子移入株8-2-1の果実におけるフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールのレベルのグラフである。データは、対照のM82の果実の%として提示する。
【図3】本発明の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼの全長cDNA(SEQ ID NO:1)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図4】植物における揮発性のフェニルアセトアルデヒドおよび2-フェニルエタノールの産生の経路を示す。フェニルアラニンは、フェニルアラニンデカルボキシラーゼによって脱炭酸されてフェネチルアミンが形成される。次いで、フェネチルアミンはアミンオキシダーゼによってフェニルアセトアルデヒドに変換され、続いて2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼによって2-フェニルエタノールに変換される。
【図5】フェニルアセトアルデヒドおよび関連の基質に対する2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのアルコールデヒドロゲナーゼ活性の結果を示す。活性は、OD(340nm)における基質の消失および低下によって決定される。最高の活性レベルは、基質としてフェニルアセトアルデヒドで観察される。
【図6】トマト2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する野生型Mitchell二倍体(MD)ペチュニアの花およびトランスジェニックのペチュニアの花から放出された揮発性物質のGCプロファイルの結果を示す。トランスジェニックの花では、より高いレベルの2-フェニルエタノールおよびそれより低いレベルのフェニルアセトアルデヒドが、野生型の花と比較して観察される。
【図7】トマト2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する野生型Mitchell二倍体(MD)およびトランスジェニック株のペチュニアの花から放出された2-フェニルエタノールおよびフェニルアセトアルデヒドのレベルのグラフである。
【図8】本発明のトマトフェニルアラニンデカルボキシラーゼcLEC75E21の全長コード配列(SEQ ID NO:4)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:5)を示す。
【図9】本発明のトマトフェニルアラニンデカルボキシラーゼcLEC73K23の全長コード配列(SEQ ID NO:6)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:7)を示す。
【図10】cLEC73K23がリコペルシコン・ペンネルリィの遺伝子移入株(IL)8-2-1上でトマト第8染色体上に存在することを示すサザンブロットである。cLEC73K23のcDNAにハイブリダイズされたリコペルシコン・ペンネルリィおよびIL8-2-1のゲノムDNAの制限酵素パターンは同一であるが、リコペルシコン・エスクレンタムM82の制限酵素パターンは異なる。
【図11】本発明のcLEC73K23と同様のリコペルシコン・ペンネルリィのフェニルアラニンデカルボキシラーゼの全長コード配列(SEQ ID NO:8)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:9)を示す。
【図12】リコペルシコン・エスクレンタムcLEC73K23(SEQ ID NO:7)、リコペルシコン・エスクレンタムcLEC75E21(SEQ ID NO:5)およびリコペルシコン・ペンネルリィのcLEC73K23のホモログ(SEQ ID NO:9)のアミノ酸配列アライメントを示す。
【図13】トマト芳香性アミノ酸デカルボキシラーゼ遺伝子cLEC73K23およびcLEC75E21を発現する大腸菌培養物から抽出された揮発性化合物のガスクロマトグラフィーのプロファイルを示す。これらのトマト遺伝子を発現する大腸菌は、フェニルアラニンを含む培地中でフェネチルアミンを産生するが、対照の大腸菌培養物は産生しない。
【図14】トマトフェニルエタノールデヒドロゲナーゼのペチュニアホモログのヌクレオチド(SEQ ID NO:10)およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)を示す。この大腸菌が発現したタンパク質は、インビトロにおいてフェニルエタノールデヒドロゲナーゼ活性を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0087】
配列の簡単な説明
SEQ ID NO:1は、本発明による2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:2は、本発明のSEQ ID NO:1によってコードされる2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:3は、本発明に従って用いられ得るオリゴヌクレオチドPCRプライマーを示す。SEQ ID NO:4は、本発明によるフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:5は、本発明のSEQ ID NO:4によってコードされるフェニルアラニンデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:6は、本発明によるフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:7は、本発明のSEQ ID NO:6によってコードされるフェニルアラニンデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:8は、本発明によるフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:9は、本発明のSEQ ID NO:8によってコードされるフェニルアラニンデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:10は、本発明によるトマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのペチュニアホモログをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:11は、本発明のSEQ ID NO:10によってコードされる2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列を示す。SEQ ID NO:12は、本発明によるフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列を示す。SEQ ID NO:13は、本発明のSEQ ID NO:12によってコードされるフェニルアラニンデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素をコードする単離されたポリヌクレオチド、またはその酵素活性のあるフラグメント。
【請求項2】
トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼがSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項3記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポリヌクレオチドがペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼをコードする、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼがSEQ ID NO:11に示されるヌクレオチド配列を有する、請求項5記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
SEQ ID NO:10に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ、またはその酵素活性のあるフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
トマトのフェニルアラニンデカルボキシラーゼをコードする、請求項8記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
フェニルアラニンデカルボキシラーゼがSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
フェニルアラニンデカルボキシラーゼがSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
フェニルアラニンデカルボキシラーゼがSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
フェニルアラニンデカルボキシラーゼがSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を有する、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
SEQ ID NO:4に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
SEQ ID NO:6に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
SEQ ID NO:8に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
SEQ ID NO:12に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド発現構築物。
【請求項19】
ポリヌクレオチドに対して作動可能に連結された一つまたは複数の調節エレメントを含む、請求項18記載の発現構築物。
【請求項20】
調節エレメントがプロモーター、転写終止配列、翻訳終止配列、エンハンサー、およびポリアデニル化配列からなる群より選択される、請求項19記載の発現構築物。
【請求項21】
プロモーターが植物細胞において機能的なプロモーターである、請求項20記載の発現構築物。
【請求項22】
プロモーターが種子特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、発生調節プロモーター、または誘導性プロモーターである、請求項21記載の発現構築物。
【請求項23】
種子特異的プロモーターがβ-ファゼオリン遺伝子プロモーターまたはグリシニン遺伝子プロモーターである、請求項22記載の発現構築物。
【請求項24】
構成的プロモーターがCaMvプロモーター、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーターまたはNOSプロモーターである、請求項22記載の発現構築物。
【請求項25】
組織特異的プロモーターが果実特異的プロモーターである、請求項22記載の発現構築物。
【請求項26】
果実特異的プロモーターがE8プロモーター、ハイブリッドE4/E8プロモーター、LeExp-1プロモーター、およびポリガラクツロナーゼ-β-サブユニットプロモーターからなる群より選択される、請求項22記載の発現構築物。
【請求項27】
組織特異的プロモーターが花器官特異的プロモーターである、請求項22記載の発現構築物。
【請求項28】
プロモーターが、CaMV 35Sプロモーター、CaMV19Sプロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーター、プロリフェラプロモーター、Ap3プロモーター、熱ショックプロモーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumafaciens)のT-DNA1’-プロモーターまたはT-DNA2’-プロモーター、ポリガラクツロナーゼプロモーター、ペチュニア カルコンシンターゼA(CHS-A)プロモーター、タバコPR-1aプロモーター、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、alcA遺伝子プロモーター、pin2プロモーター、トウモロコシWipIプロモーター、トウモロコシtrpA遺伝子プロモーター、トウモロコシCDPK遺伝子プロモーター、およびRUBISCO SSUプロモーターからなる群より選択される、請求項21記載の発現構築物。
【請求項29】
選択マーカー遺伝子を含む、請求項18記載の発現構築物。
【請求項30】
遺伝子が抗生物質耐性をコードする遺伝子および除草剤耐性をコードする遺伝子からなる群より選択される、請求項29記載の発現構築物。
【請求項31】
抗生物質耐性遺伝子が、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、パロモマイシン、ネオマイシンおよびスペクチノマイシンからなる群より選択される、請求項30記載の発現構築物。
【請求項32】
除草剤耐性遺伝子がホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼまたはグリフォセートに対する耐性を提供する遺伝子である、請求項30記載の発現構築物。
【請求項33】
遺伝子が、β-グルクロニダーゼ(GUS)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ノパリンシンターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)および強化GFPをコードする遺伝子からなる群より選択される、請求項29記載の発現構築物。
【請求項34】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを用いて形質転換された細胞。
【請求項35】
ポリヌクレオチドが、請求項18〜33のいずれか一項に記載の発現構築物において提供される、請求項34記載の細胞。
【請求項36】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを用いて形質転換されるかまたは該ポリヌクレオチドを含むように育種された、植物、植物組織または植物細胞。
【請求項37】
ポリヌクレオチドが発現構築物において提供される、請求項36記載の植物。
【請求項38】
単子葉植物である、請求項36記載の植物。
【請求項39】
単子葉植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、トウモロコシ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、ココナツ、ユリ、牧草およびキビからなる群より選択される、請求項38記載の植物。
【請求項40】
双子葉植物である、請求項36記載の植物。
【請求項41】
双子葉植物が、トマト、エンドウマメ、アルファルファ、メロン、ヒヨコマメ、チコリ、クローバー、ケール、レンズマメ、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、セイヨウアブラナ、ブドウ、ヒマワリ、レタス、キュウリ、スイカ、リンゴ、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、タンジェリン、グレープフルーツ、ライム)、西洋ナシ、プラム、モモ、イチジク、スグリ、マスクメロン、カボチャ、サクランボ、砂糖ダイコン、茶、イチゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、キイチゴ、ローガンベリー、バラ、キク、シシトウガラシ、ナス、およびワタからなる群より選択される、請求項40記載の植物。
【請求項42】
トマトである、請求項36記載の植物。
【請求項43】
観賞用植物である、請求項36記載の植物。
【請求項44】
観賞用植物が、バラ、ペチュニア、カーネーション、ラン、チューリップ、およびクチナシからなる群より選択される、請求項43記載の植物。
【請求項45】
ハーブ植物である、請求項36記載の植物。
【請求項46】
ハーブ植物がパセリ、セージ、ローズマリーおよびタイムからなる群より選択される、請求項45記載の植物。
【請求項47】
植物に増大した香味または芳香を提供するための方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載の一つまたは複数のポリヌクレオチドを組み込む工程と、一つまたは複数の該ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現させる工程とを含む、方法。
【請求項48】
ポリヌクレオチドが発現構築物において提供される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
植物が単子葉植物である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
単子葉植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、トウモロコシ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、ココナツ、ユリ、牧草およびキビからなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
植物が双子葉植物である、請求項47記載の方法。
【請求項52】
双子葉植物が、トマト、エンドウマメ、アルファルファ、メロン、ヒヨコマメ、チコリ、クローバー、ケール、レンズマメ、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、セイヨウアブラナ、ブドウ、ヒマワリ、レタス、キュウリ、スイカ、リンゴ、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、タンジェリン、グレープフルーツ、ライム)、西洋ナシ、プラム、モモ、イチジク、スグリ、マスクメロン、カボチャ、サクランボ、砂糖ダイコン、茶、イチゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、キイチゴ、ローガンベリー、バラ、キク、シシトウガラシ、ナス、およびワタからなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
植物がトマトである、請求項47記載の方法。
【請求項54】
植物が観賞用植物である、請求項47記載の方法。
【請求項55】
観賞用植物が、バラ、ペチュニア、カーネーション、ラン、チューリップ、およびクチナシからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
植物がハーブ植物である、請求項47記載の方法。
【請求項57】
ハーブ植物がパセリ、セージ、ローズマリーおよびタイムからなる群より選択される、請求項56記載の植物。
【請求項58】
植物、植物組織、または植物細胞のゲノムに組み込まれた請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、トランスジェニックの植物、植物組織、または植物細胞。
【請求項59】
単子葉植物である、請求項58記載の植物。
【請求項60】
単子葉植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、トウモロコシ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、ココナツ、ユリ、牧草およびキビからなる群より選択される、請求項59記載の植物。
【請求項61】
双子葉植物である、請求項58記載の植物。
【請求項62】
双子葉植物が、トマト、エンドウマメ、アルファルファ、メロン、ヒヨコマメ、チコリ、クローバー、ケール、レンズマメ、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、セイヨウアブラナ、ブドウ、ヒマワリ、レタス、キュウリ、スイカ、リンゴ、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、タンジェリン、グレープフルーツ、ライム)、西洋ナシ、プラム、モモ、イチジク、スグリ、マスクメロン、カボチャ、サクランボ、砂糖ダイコン、茶、イチゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、キイチゴ、ローガンベリー、バラ、キク、シシトウガラシ、ナス、およびワタからなる群より選択される、請求項61記載の植物。
【請求項63】
トマトである、請求項58記載の植物。
【請求項64】
観賞用植物である、請求項58記載の植物。
【請求項65】
観賞用植物が、バラ、ペチュニア、カーネーション、ラン、チューリップ、およびクチナシからなる群より選択される、請求項64記載の植物。
【請求項66】
ハーブ植物である、請求項58記載の植物。
【請求項67】
ハーブ植物がパセリ、セージ、ローズマリーおよびタイムからなる群より選択される、請求項66記載の植物。
【請求項68】
単離された植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素、またはその酵素活性のあるフラグメント。
【請求項69】
トマトの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼである、請求項68記載の植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素。
【請求項70】
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2の酵素活性のあるフラグメントを有する、請求項68記載の植物2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素。
【請求項71】
ペチュニアの2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼである、請求項68記載の植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素。
【請求項72】
SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11の酵素活性のあるフラグメントを有する、請求項68記載の植物の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼ酵素。
【請求項73】
単離された植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素、またはその酵素活性のあるフラグメント。
【請求項74】
トマトのフェニルアラニンデカルボキシラーゼである、請求項73記載の植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素。
【請求項75】
SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、もしくはSEQ ID NO:13のいずれかに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9もしくはSEQ ID NO:13の酵素活性のあるフラグメントを有する、請求項73記載の植物のフェニルアラニンデカルボキシラーゼ酵素。
【請求項76】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドのコード配列または非コード配列に対してハイブリダイズし得る、オリゴヌクレオチドのプローブまたはプライマー。
【請求項77】
SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列、またはその機能的なフラグメントを含む、請求項76記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項78】
適切な基質と請求項68〜72のいずれか一項に記載の2-フェニルエタノールデヒドロゲナーゼとを接触させる工程であって、該基質が2-フェニルエタノールに変換される工程を含む、2-フェニルエタノールを産生するための方法。
【請求項79】
基質がフェニルアセトアルデヒドである、請求項78記載の方法。
【請求項80】
適切な基質と請求項73〜75のいずれか一項に記載のフェニルアラニンデカルボキシラーゼとを接触させる工程であって、該基質がフェネチルアミンに変換される工程を含む、フェネチルアミンを産生するための方法。
【請求項81】
基質がフェニルアラニンである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
香味または芳香の増大を示す植物を産生するための方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを植物細胞に組み込む工程と、該植物細胞から植物を成長させる工程とを含む、方法。
【請求項83】
植物細胞から成長させる植物が、ポリヌクレオチドの発現のために選択される、請求項82記載の方法。
【請求項84】
ポリヌクレオチドが請求項18〜33のいずれか一項に記載の発現構築物において提供される、請求項82記載の方法。
【請求項85】
植物が単子葉植物である、請求項82記載の方法。
【請求項86】
単子葉植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、トウモロコシ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、ココナツ、ユリ、牧草およびキビからなる群より選択される、請求項85記載の方法。
【請求項87】
植物が双子葉植物である、請求項82記載の方法。
【請求項88】
双子葉植物が、トマト、エンドウマメ、アルファルファ、メロン、ヒヨコマメ、チコリ、クローバー、ケール、レンズマメ、ダイズ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、セイヨウアブラナ、ブドウ、ヒマワリ、レタス、キュウリ、スイカ、リンゴ、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、タンジェリン、グレープフルーツ、ライム)、西洋ナシ、プラム、モモ、イチジク、スグリ、マスクメロン、カボチャ、サクランボ、砂糖ダイコン、茶、イチゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、キイチゴ、ローガンベリー、バラ、キク、シシトウガラシ、ナス、およびワタからなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
植物がトマトである、請求項82記載の方法。
【請求項90】
植物が観賞用植物である、請求項82記載の方法。
【請求項91】
観賞用植物が、バラ、ペチュニア、カーネーション、ラン、チューリップ、およびクチナシからなる群より選択される、請求項90記載の方法。
【請求項92】
植物がハーブ植物である、請求項82記載の方法。
【請求項93】
ハーブ植物がパセリ、セージ、ローズマリーおよびタイムからなる群より選択される、請求項92記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2007−507237(P2007−507237A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534218(P2006−534218)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032599
【国際公開番号】WO2005/035752
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(304006056)ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファウンデイション インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】