説明

植物によって生産される組換え前十二指腸リパーゼおよびペプチド誘導体、それらの取得方法およびそれらの用途

【課題】形質転換植物によって生産される組換え前十二指腸(preduodenal)リパーゼ及びペプチド誘導体、それらの取得方法及びそれらの用途の提供。
【解決手段】イヌ及びヒトの前十二指腸リパーゼをコードするcDNAを含有する組換えヌクレオチド配列を取得する。その組換えヌクレオチド配列を用い植物細胞(特にナス科植物:タバコ)を形質転換し、更に形質転換植物を得、それより抽出工程により前十二指腸リパーゼを取得する。上記リパーゼは医薬品組成物、機能性食品等の構成成分として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物による組換え前十二指腸(preduodenal)リパーゼの、特に、組換え胃リパーゼの生産、リパーゼ活性を有するそれらのポリペプチド誘導体、およびそれらの用途、特に機能性食品として、もしくは医薬組成物における、あるいは農業栄養物の(agro-alimentary)または工業的応用のための酵素処方物における用途に関する。
【0002】
イヌ胃リパーゼ(DGL)は、約50キロダルトン(kDa)の分子量を有する379アミノ酸(AA)の糖タンパク質であり、アミノ末端(NH−末端)にシグナルペプチドを有する前駆体の形態で合成され、イヌの胃底の粘メンブランの中間細胞(median cell)により分泌される(Carriere F.et al.,1991)。
【0003】
ヒト胃リパーゼ(HGL)は、前駆体の形態で天然に合成され、Bodmer et al.,1987による刊行物に記載されている。成熟HGLタンパク質は、379アミノ酸により構成されている。そのシグナルペプチド(HGLSP)は、19アミノ酸からなる。
【0004】
これらの酵素は、「前十二指腸の」と呼ばれるリパーゼのファミリーに属し、その内のあるメンバーは既に精製され、そしてある場合にはクローン化さえされている(Docherty A.J.P. et al., 1985; Bodmer M.W. et al., 1987; Moreau H. et al., 1988; 欧州特許第0191061号および第0261016号)。
【0005】
長い間、食物の脂質の加水分解は膵臓によって生産される酵素の作用により小腸で起きると当然のように考えられてきた(Bernard C.,1849)。
【0006】
しかしながら、複数の発見は、トリグリセリドの加水分解は前十二指腸の酵素という間接的な手段により胃で起き得るということを示唆していた(Volhard, F., 1901; Shonheyder, F., and Volquartz, K., 1945)。これらの酵素、特にイヌ胃リパーゼは、それらが哺乳動物の膵臓リパーゼとは区別される酵素的かつ物理化学的性質を有している。これらの胃リパーゼと膵臓リパーゼの差違は、実質的には以下の点に関する:分子量、アミノ酸組成、ペプシン耐性、基質特異性、作用の最適pHおよび酸性培地における安定性。
【0007】
さらに、in vitroでは、ある条件下で、長鎖のトリグリセリドの加水分解に関して胃と膵臓のリパーゼの間で相乗作用を示すことも可能である(Gargouri, Y et al., 1989)。
【0008】
患者が完全にもしくは部分的に外分泌腺膵臓分泌を欠いている、したがって、食物の加水分解に必要な酵素(アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ)を欠いているいくつかの病的状況(嚢胞性線維症、外分泌腺膵臓不全(exocrine pancreatic insufficiency))が知られている。腸で脂肪が吸収されないことは、特に長鎖のトリグリセリドの場合、これらの患者の脂肪便中にそれ自身が著しく増加することにより証明され、そして若い患者の場合、体重増加が非常に著しく低下することにより証明される。これを治すため、ブタ膵臓抽出物をこれらの被検体に食事時に投与する。これらの抽出物の治療効果は、DGLの同時処方により、その作用の長鎖トリグリセリドに対する特異性のため、著しく改善され得る。
【0009】
Carriere et al.,(1991)による記事は、DGLの精製およびNH−末端配列の決定を記載している。イヌの胃からこの酵素を抽出する方法も、この刊行物に記載されている。この方法は、本質的には、イヌの胃を、水溶性塩の存在下で酸性培地(pH2.5)に浸漬する工程を包含する。その塩は該培地中でリパーゼの塩析を促進する。このDGLは、分子ふるいによる濾過およびイオン交換クロマトグラフィーの工程により均質にまで精製され得る。これらの方法によって入手した精製DGLは、49,000ダルトンの分子量を有する糖タンパク質であり、そのうち6,000は、糖部分に相当し、そして43,000は、タンパク質部分に相当する。
【0010】
イヌの胃を調達する困難性という明らかな理由により、この方法の研究室におけるおよび工業的な開発が妨げられている。これにより、イヌの胃の使用を不要にするDGLの大量生産を可能にする方法の発見が必要とされる。
【0011】
DGLのヌクレオチド配列およびペプチド配列は、遺伝子工学を用いる方法により、DGLの工業的生産を目的として決定された。これらの研究は1993年12月16日に出願された国際出願第WO94/13816号の主題である。
【0012】
この国際出願に記載された組換えDGLの生産方法は、Escherichia coli(E.coli)を、DGLを生産し得る形質転換宿主細胞として請求している。
【0013】
E.coliによる組換えDGLの生産の間に出会ったいくつかの困難、特に、経費のかかる、発酵槽でのE.coliの大量培養の必要性により、発明者らはこのDGLの別の生産方法を探すようになった。
【0014】
哺乳動物細胞は、先験的に、哺乳動物遺伝子の発現にはより適切である。しかし、それらの使用によりタンパク質の成熟という問題が生じる。翻訳後成熟を現実化する酵素的な資質は、組織、器官もしくは種によりそれぞれ異なるのである。例えば、血漿タンパク質の翻訳後成熟は、それがヒトの血液から得た場合と組換え細胞、例えば、チャイニーズハムスターの卵巣細胞によって、もしくはトランスジェニック動物の乳の中で生産された場合で異なり得る。さらに、哺乳動物細胞によって得た低レベルの発現は非常に大量のin vitroでの培養に高い経費を必要とする。トランスジェニック動物(マウス、ヒツジおよびウシ)の乳中の組換えタンパク質の生産は、生産経費の減少、および発現レベルの問題の克服を可能にする。しかし、倫理上の問題およびウイルスおよびサブウイルスの混入(プリオン)の問題は残る。
【0015】
これらの理由により、哺乳動物遺伝子の植物細胞へのトランスジェネシス(transgenesis)は、組換えタンパク質の、生産経費の減少した、そしてウイルスもしくはサブウイルス混入の危険のない大量の生産のための経路を提供し得る。
【0016】
1983年、いくつかの研究所が、異種遺伝子を植物細胞のゲノムに移入すること(Bevan et al., 1983; Herrera-Estrella et al., 1983 aおよびb)、およびこれらの遺伝的に改変した細胞からトランスジェニック植物を再現することは可能であるということを発見した。したがって、その植物の全細胞は遺伝的に改変された性質を有し、それは、有性受精により子孫に伝えられる。
【0017】
これらの研究の結果、種々のチームが植物細胞もしくはトランスジェニック植物における哺乳動物組換えタンパク質の生産に携わった(Barta et al., 1986; Marx, 1982)。この分野における最初の真に重要な結果の一つは、トランスジェニックタバコ植物における抗体の生産であった(Hiatt et al.,1989)。
【0018】
異種タンパク質を種子内、すなわち植物内のタンパク質貯蔵部位で発現させるため、Vandekerckhoveのチーム(1989)は、leu−エンケファリンをコードする配列をArabidopsis thalianaの2Sアルブミンをコードする遺伝子に融合させた。この構築物を用いて、leu−エンケファリンを種子で特異的に、全タンパク質の0.1%のオーダーの発現レベルで発現するトランスジェニックアブラナ(rape)植物を生産した。1990年、Sijmonsとその同僚はヒト血清アルブミンの遺伝子をタバコおよび馬鈴薯の細胞に移入した。シグナルペプチドの起源が何であれ(ヒトもしくは植物)、ヒト血清アルブミンは全タンパク質の0.02%のオーダーのレベルで馬鈴薯の葉、茎および根茎で得られた。
【0019】
他の哺乳動物組換えタンパク質もまた、植物で生産されている:B型肝炎の表面抗原(Mason et al., 1992)、インターフェロン(De Zoeten et al., 1989; Edelbaum et al., 1992; Truve et al., 1993);ネズミ抗Streptococcus mutans抗体、虫歯用薬剤(Hiatt and Ma, 1992; Ma et al., 1994)、scFV抗ガン細胞抗体のフラグメント(Russel D., 1994)、抗ヘルペス抗体(Russel D., 1994)、ヒルジン(Moloney et al.,1994)、コレラトキシン(Hein R., 1994)およびヒト表皮成長因子(EGF)(Higo et al., 1993)。
【0020】
これらの研究の全ては、植物細胞内での哺乳動物組換えタンパク質の生産は可能であり、DNA配列からのタンパク質の合成の機構は動物細胞内と植物細胞内では同様であるということを示してきた。しかし、植物細胞と動物細胞には、特に、ポリマンノシドグリカンの複合グリカンへの成熟、またはシグナルペプチドの開裂部位では、いくつかの違いも存在し、したがって、活性なもしくは十分に活性な哺乳動物タンパク質は植物細胞の形質転換により得られるということが保証され得ない。
【0021】
本発明者らは、適切な組換えヌクレオチド配列によって形質転換された植物細胞の使用により、工業的応用において開発され得る、組換えDGLもしくは組換えHGL、または十分な酵素活性を有するこれらに由来するポリペプチドを入手することが可能であることを示した。
【0022】
本発明の目的は、植物による、哺乳動物組換え前十二指腸リパーゼの、より特定すると、組換えDGLもしくはHGLの、または酵素活性、より特定するとリパーゼ活性、を有するこれらから誘導されるポリペプチドの、新しい生産方法を提供することであり、その結果、上記組換えリパーゼもしくはそれらの誘導ポリペプチドが工業的に用いられ得る。
【0023】
本発明の別の目的は、そのような方法を実施するための手段、特に新しい組換えヌクレオチド配列、遺伝的に形質転換した植物細胞、遺伝的に形質転換した植物もしくは植物の一部(特に、葉、茎、果実、種子(seed)もしくは穀粒(grain)、根)、および遺伝的に形質転換されたこれらの植物もしくは植物の一部のフラグメントを提供することである。
【0024】
本発明の目的はまた、新しい哺乳動物組換え前十二指腸リパーゼ、もしくは任意の誘導されたポリペプチドであって酵素的に活性で遺伝的に形質転換された植物細胞もしくは植物から入手されるものを提供することである。
【0025】
本発明の目的はまた、酵素反応を、特に工業的規模で行う場合に用いられ得る新しい酵素組成物を提供することである。
【0026】
本発明の目的はまた、新しい医薬組成物、特に生物中のリパーゼの生産における欠陥に関する病因、例えば嚢胞性線維症の処置において医薬組成物を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、新しいエネルギー源、生物燃料ともいう、であって、石油から誘導される燃料より汚染度が少なく生産も安価であるという利点を有するものを提供することである。
【0028】
本発明は、以下の図面を補助として下記に例示される:
−図1は、cDNAのヌクレオチド配列を示し、そのうち1〜1,137位に位置するヌクレオチドが図2に示すDGLをコードし、SEQ ID NO:2に対応する、
−図2は、DGLのアミノ酸配列を示し、SEQ ID NO:2に対応する、
−図3は、図1に示したcDNAから誘導されたヌクレオチド配列を示し、SEQ ID NO:1に対応して、上記誘導配列の1〜1,137位に位置するこのヌクレオチドは図2に示すDGLをコードし、SEQ ID NO:2に対応する、
−図4は、cDNAのヌクレオチド配列を示し、このうち47〜1,240位に位置するヌクレオチドは398アミノ酸のHGLの前駆体をコードし、104〜1,240位に位置するヌクレオチドは379アミノ酸の成熟HGLをコードする、
−図5は、HGLのアミノ酸配列を示し、HGLの前駆体は、1〜398位に位置するアミノ酸の範囲に限定され、成熟HGLは、20〜398位に位置するアミノ酸の範囲に限定される、
−図6、7および8は、本発明による組換え配列によって形質転換したタバコXanthiの葉および種子、アブラナの種子、ならびにトマトの葉および果実によって生産された組換えポリペプチドについての「ウエスタン」型の免疫検出実験の結果を示す、
−図9および10は、タバコの葉から精製したDGLのそれぞれ、ポリアクリルアミドゲルの電気泳動による分析と、このゲルのニトロセルロースメンブランへの転写とイヌの胃の抗リパーゼ抗体からの曝露の結果を示す、
−図11は、組換えDGLのグリカン性残基のメンブラン上の検出の例を示す、
−図12は、アブラナ種子から精製したDGLのポリアクリルアミドゲルの電気泳動による分析を示す、
−図13、14および15は、本発明の形質転換種子からのメチルオレエートの調製により行った種々のテストを示す。
【0029】
本発明は、一方で、任意の哺乳動物前十二指腸リパーゼ、すなわち、それらをコードするヌクレオチド配列が少なくとも約75%の、特に約77%〜約85%の相同性%を有し、そのアミノ酸配列が少なくとも70%、特に約80〜約90%の相同性%を有し、酸耐性の性質を有し、そして約1〜約5のpHで、特に約1.5〜約2のpHで活性であるリパーゼ、をコードするcDNA、特に、任意の哺乳動物の胃リパーゼをコードするcDNA、もしくは上記の前十二指腸リパーゼから1つの(またはそれ以上の)アミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導されたポリペプチドであって、前十二指腸リパーゼについて上記に記載された性質を有するポリペプチドをコードするcDNA、他方で、植物細胞が該cDNAによってコードされた前十二指腸リパーゼを生産すること、もしくは上記で定義した誘導されたポリペプチドを生産することを可能にする要素、特に植物細胞の転写機構によって認識される転写プロモーターおよび転写ターミネーターを、これらの細胞からもしくはこれらの細胞から得られる植物から、哺乳動物組換え前十二指腸リパーゼを活性な酵素の形態でもしくは上記に定義した後者から誘導された1つの(またはそれ以上の)ポリペプチドを得るという観点から植物細胞を形質転換するための要素、を含む組換えヌクレオチド配列の用途に関する。
【0030】
本発明は、より特定すると、一方で、図1に示すcDNAであって、図2に示すイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードするもの、またはこのcDNAから、特に1つの(またはそれ以上の)ヌクレオチドの付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導されたヌクレオチド配列であって、そのアミノ酸配列が図2に示すDGLのそれと同じであるポリペプチド、またはDGLから1つの(またはそれ以上の)アミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導されたリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードし得る上記誘導された配列、および、他方では、植物細胞が上記cDNAによってもしくは上記誘導された配列によってコードされたポリペプチドを生産することを可能にする要素、特に植物細胞の転写機構により(より特定すると、後者のRNAポリメラーゼにより)認識される転写プロモーターおよび転写ターミネーターを、これらの細胞もしくは後者から得た植物から組換えDGLを活性な酵素の形態で、もしくは上記で定義した後者から誘導した1つ(もしくはそれ以上)のポリペプチドを得るために植物細胞を形質転換するのため、の要素を含む組換えヌクレオチド配列の用途に関する。
【0031】
本発明はまた、cDNAとして図1に示した上記で定義した任意の組換えヌクレオチド配列、または上記で定義したように後者から誘導したヌクレオチド配列にも関する。
【0032】
この点で、本発明はより特定すると、図1に示したcDNAを含む上記で定義した任意のヌクレオチド配列であって図2に示したイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする配列に関する。
【0033】
本発明は、より特定すると、図1に示したcDNAから誘導されたヌクレオチド配列を含む上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関し、上記誘導された配列は上記で定義され、図2に示すイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする。そのような誘導された配列は好都合には図3に示したものであり、図1に示したものに対応し、その中で、第12位のヌクレオチドAが、ヌクレオチドGによって置き換えられ、第13位のヌクレオチドTがヌクレオチドCで置き換えられ、そして第15位のヌクレオチドAがヌクレオチドTで置き換えられている。
【0034】
本発明による組換えヌクレオチド配列は、好都合には、本発明の組換えポリペプチド(すなわち、組換えDGLもしくは上記の誘導された配列)を植物細胞の特定の区画、特に小胞体もしくは液胞に、あるいは細胞外にさえも、すなわちペクトセルロジック壁にもしくはアポプラズムと呼ばれる細胞外空間に指向させるペプチドをコードする1つ(もしくはそれ以上)の配列を有する。
【0035】
本発明の植物細胞の形質転換に用いられ得る転写ターミネーターには、Franck et al., 1980による記事に記載されたカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)のpolyA 35Sターミネーター、もしくはノパリン(nopaline)を有するAgrobacterium tumefaciensのTiプラスミドのノパリンシンターゼの遺伝子の3’非コード領域に対応するpolyA NOSターミネーター(Depicker et al., 1982)が挙げられる。
【0036】
この点で、本発明は、該cDNAもしくはその誘導された配列の下流に、CaMVのpolyA 35SターミネーターもしくはAgrobacterium tumefaciensのpolyA NOSターミネーターを含有する上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関する。
【0037】
本発明の植物細胞の形質転換に用いられ得る転写プロモーターの中で挙げられるのは:
−35Sプロモーター、もしくは好都合にはCaMVの二重構造(double structured)35Sプロモーター(pd35S)で、これらのプロモーターは、本発明による組換えポリペプチドの発現を、本発明による形質転換された細胞から得た植物全体で可能にし、Kay et al., 1987による記事に記載されている、
−ラディッシュのクルシフェリンの遺伝子のpCRUプロモーターで、本発明による組換えポリペプチドの発現を、本発明による形質転換された細胞から得た植物の種子(seed)(もしくは穀粒(grain))内のみで可能にし、Depigny-This et al., 1992による記事に記載されている、
−pGEA1およびpGEA6プロモーターはそれぞれArabidopsis thalianaの穀粒であるGEA1およびGEA6の貯蔵タンパク質の遺伝子の5'非コード領域に対応し(Gaubier et al., 1993)、穀粒での特異的な発現を可能にする、
−キメラプロモーターであるスーパー−プロモーターpSP(PCT/US94/12946)は、Agrobacterium tumefaciensのオクトピンシンターゼの遺伝子のプロモーターの3つの転写アクチベーターの、Agrobacterium tumefaciensのマンノピンシンターゼ遺伝子のプロモーターの転写アクチベーターエレメントの、およびマンノピンシンターゼのプロモーターの融合により構成される、
−McElroy et al.,(1991)によって記載されたプラスミドpAct1-F4に含有される、コメのアクチンプロモーターとそれに続くコメのアクチンイントロン(pAR-IAR)、
−Reina et al., (1990)に記載されたプラスミドpγ63に含有されたトウモロコシのγゼイン(zeine)の遺伝子のプロモーター(pγzeine)で、トウモロコシ種子の胚乳における発現を可能にする。
【0038】
この点で、本発明は、該cDNAもしくはその誘導された配列の上流に、CaMVの二重構造35Sプロモーター(pd35S)もしくはラディッシュのクルシフェリンの遺伝子のpCRUプロモーターもしくはArabidopsis thalianaのpGEA1もしくはpGEA6、もしくはAgrobacterium tumefaciensのpSPスーパー−プロモーター、もしくはコメのpAR-IARプロモーター、もしくはトウモロコシのpγzeineプロモーターを含有する上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関する。
【0039】
本発明に用いられる指向(directing)ペプチドをコードする配列は植物の、ヒトのもしくは動物の起源である得る
植物起源の指向性ペプチドをコードする配列の中で挙げられるのは:
−(以下に続く実施例に示した)69ヌクレオチドのヌクレオチド配列で、サツマイモのスポラミンAの23アミノ酸のプレペプチド(シグナルペプチド)をコードするもの、このシグナルペプチドは、本発明の組換えポリヌクレオチドが本発明の形質転換された植物細胞の分泌系に進入することを可能にする(すなわち、おもに小胞体に進入する)、
−(以下に続く実施例に示した)42ヌクレオチドのヌクレオチド配列は、サツマイモのスポラミンAの14アミノ酸のN−末端液胞指向性プロペプチドをコードし、本発明の組換えポリペプチドが本発明の形質転換された植物細胞の液胞に蓄積することを可能にする、
−(以下に続く実施例に示した)111ヌクレオチドのヌクレオチド配列は、上記のプロペプチドである14アミノ酸が続いている上記のシグナルペプチドである23アミノ酸のN−末端部分からC−末端部分でできたスポラミンAの37アミノ酸のプレプロペプチドをコードし、このプレプロペプチドは、本発明の組換えポリペプチドが本発明の形質転換された植物細胞の分泌系に進入し液胞に蓄積することを可能にする、
上記の3つの配列はMurakami et al.,1986およびMatsuoka and Nakamura, 1991による記事に記載されている、
−特に、Schroeder et al., 1993、およびBednarek and Ralkhel 1991による記事のオオムギのレクチンのカルボキシ末端プロペプチド。
【0040】
ヒトもしくは動物起源の指向性ペプチドをコードする配列の中で挙げられるのは、欧州特許第0191061号に記載されたヒト胃リパーゼ(HGL)のシグナルペプチドをコードするもの、もしくは欧州特許出願第0542629号に記載されたウサギ胃リパーゼ(RGL)のそれをコードするもので、その配列は以下の実施例に示されており、もしくはヒト膵臓リパーゼ(HPL)のそれをコードするもの、もしくはイヌ胃リパーゼ(DGL)のそれをコードするものである。
【0041】
また、指向性ペプチドをコードする配列の中で挙げられるのは、テトラペプチドであるKDELをコードするもので、小胞体を指向することを可能にする。
【0042】
この点で、本発明は、シグナルペプチド、例えば、サツマイモのスポラミンAのそれ、またはHGLもしくはRGLもしくはDGLのそれの全てもしくは一部をコードする配列を含む上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関し、この配列は該組換えヌクレオチド配列内の上記cDNAもしくはその誘導された配列の上流であって用いられるプロモーターの下流に位置するシグナルペプチドをコードし、その結果、該組換えヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質において、シグナルペプチドの最後のC−末端のアミノ酸が上記cDNAもしくはその誘導された配列によってコードされるポリペプチドのN−末端の最初のアミノ酸に結合している。
【0043】
本発明はまた、液胞指向性ペプチド、特にサツマイモのスポラミンAのそれの全部または一部をコードする配列を含む上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関し、この配列は、該組換えヌクレオチド配列中のシグナルペプチドをコードする配列と上記cDNAもしくはその誘導された配列をコードする配列との間に位置する液胞指向性ペプチドをコードし、その結果、該組換えヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質において、液胞指向性ペプチドのN−末端の最初のアミノ酸がシグナルペプチドのC−末端の最後のアミノ酸に結合しており、該指向性ペプチドのC−末端の最後のアミノ酸は、上記cDNAもしくはその誘導された配列によってコードされるポリペプチドのN−末端の最初のアミノ酸に結合している。
【0044】
本発明はまた、液胞指向性ペプチド、特にオオムギのレクチンのそれの全部または一部をコードする配列を含む上記の任意の組換えヌクレオチド配列にも関し、液胞指向性ペプチドをコードするこの配列は、該組換えヌクレオチド配列内の該cDNAもしくはその誘導された配列をコードする配列の下流に位置し、その結果、該組換えヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質において、液胞指向性ペプチドのN−末端の最初のアミノ酸は該cDNAもしくはその誘導された配列によってコードされるポリペプチドのC−末端の最後のアミノ酸に結合している。
【0045】
本発明は、より特定すると以下の組換えヌクレオチド配列に関する:
−(pd35S-PS-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、スポラミンAのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pd35S-PPS-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、スポラミンAのプレプロペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pd35S-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、RGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列(すなわち、下記に示す実施例に示した最初の19アミノ酸の配列、C−末端の最後の3アミノ酸をコードする9ヌクレオチドがサプレッションされている)を含むもので、後者はすぐ後に図1に示したcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-PS-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、スポラミンAのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-PPS-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、スポラミンAのプレプロペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、DGLシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
(pGEA1-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、Arabidopsis thalianaのpGEA1プロモーター、RGLのシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
(pGEA6-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、Arabidopsis thalianaのpGEA6プロモーター、RGLのシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
(pAR-IAR-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、コメのpAR-IARプロモーター、RGLのシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35SターミネーターもしくはAgrobacterium tumefaciensのpolyA NOSターミネーターが続いている、
(pγzeine-RGLSP-DGLと呼ばれる)5’→3’方向に、トウモロコシのpγzeineプロモーター、RGLのシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
(pγzeine-RGLSP-DGL-KDELと呼ばれる)5’→3’方向に、トウモロコシのpγzeineプロモーター、RGLのシグナルペプチド(上記のような)の一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでテトラペプチドであるKDELをコードする配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている。
【0046】
本発明の組換えヌクレオチド配列は、好都合には、該組換え配列のマーカーとして、特に該組換え配列によって形質転換された植物細胞のヌクレオチド配列を、されてないものから区別するために用いられ得るヌクレオチド配列も含む。
【0047】
該組換え配列のマーカーとして用いられ得るそのようなヌクレオチド配列は、好ましくは、抗生物質に耐性な遺伝子から、特にカナマイシンに耐性な遺伝子から選択される。
【0048】
本発明はまた、その複製にとって必須ではない部位に挿入された本発明の組換えヌクレオチド配列を有する任意のベクター、特に、プラスミドベクターにも関する。
【0049】
本発明はまた、上記で定義したベクターによって形質転換された任意の宿主細胞、特に、任意の細菌、例えば、Agrobacterium tumefaciensにも関する。
【0050】
本発明はまた活性な酵素の形態の組換えDGLのおよび/または後者から、特に1つ(もしくはそれ以上の)アミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導された、1つの(もしくはそれ以上の)ポリペプチドの任意の調製方法にも関し、この(もしくはこれらの)誘導されたポリペプチドはリパーゼ活性を有し、以下の工程を包含する:
−本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えヌクレオチド配列がその細胞のゲノムに組み込まれるような植物細胞の形質転換、
−適切な場合、上記の形質転換細胞からの形質転換植物の生成、
−該細胞もしくは上記の形質転換植物内で生産された組換えDGLおよび/または上記の誘導されたポリペプチドの、特に抽出、適切なら続く精製による回収。
【0051】
本発明の上記の1つの実施態様によれば、植物細胞の形質転換は、Krens et al., 1982による記事に記載された方法に従って、本発明の組換えヌクレオチド配列をプロトプラストに、特に、後者を二価のカチオン(Ca2+)の存在するポリエチレングリコール(PEG)の溶液中でインキュベーションした後に、移入することにより実施することができる。
【0052】
植物細胞の形質転換はまた、エレクトロポレーションによっても、特にFromm et al., 1986による記事に記載された方法に従って、実施することができる。
【0053】
植物細胞の形質転換はまた、非常に速い速度で本発明の組換えヌクレオチド配列で被覆された金属の粒子の発射を可能にし、したがって遺伝子を細胞の核の内部に送達する遺伝子銃を用いることにより、特にSanford 1988による記事に記載された技術にしたがって、実施することもできる。
【0054】
植物細胞の形質転換の別な方法は、De La Penna et al., 1987による記事に記載されたような、細胞質もしくは核のマイクロインジェクションの方法である。
【0055】
本発明の上記の方法の特に好ましい実施態様によれば、植物細胞は、上記のように、後者を、本発明にしたがってベクターによって形質転換される細胞宿主と一緒にすることにより形質転換され、該細胞宿主は該植物細胞に感染することができ、後者のゲノムに、はじめは上記のベクターのゲノムに含まれていた本発明の組換えヌクレオチド配列を組込むことを可能にし得る。
【0056】
上記の用いる細胞宿主は、好都合には、特にBevan, 1984およびAn et al., 1986による記事に記載された方法によればAgrobacterium tumefaciensであり、また、特にJouanin et al., 1987による記事に記載された方法によればAgrobacterium rhizogenesである。
【0057】
本発明において形質転換され得る植物細胞のうち、アブラナ、タバコ、トウモロコシ、エンドウ、トマト、ニンジン、コムギ、オオムギ、馬鈴薯、ダイズ、ヒマワリ、レタス、コメおよびアルファルファのそれらが挙げられる。
【0058】
本発明の上記の方法の1つの実施態様によれば、本発明の形質転換された植物細胞は、in vitroで、特にバイオリアクターでBrodelius, 1988による記事に記載された方法により、液体培地内で培養するか、Brodelius, 1979による記事に記載された方法により、固定された形態で培養するか、あるいはまたDeno et al,, 1987による記事に記載された方法により、in vitroで形質転換された根を培養することにより実施され得る。
【0059】
上記のin vitro培養上清を、次いで、回収して、それらから、in vitroで培養された該形質転換された細胞により生産された組換えDGLおよび/または上記で定義した誘導されたポリペプチドを抽出し、適切ならば特にクロマトグラフィーで精製する。
【0060】
本発明の組換えDGLおよび/または誘導されたポリペプチドの上記の調製方法の好ましい実施態様によれば、植物細胞の形質転換に、該形質転換された細胞の適切な培地中での培養による形質転換された植物の生産工程が続く。そのようにして得られた植物全体の細胞で生産された組換えDGLおよび/または誘導されたポリペプチドは、抽出により回収され、この抽出は植物全体もしくはそれらの植物のフラグメント(特に、葉、茎、もしくは果実)、あるいはそれらの植物から生産される種子に対して実施され、この抽出には、適切なら、組換えDGLおよび/またはその誘導されたポリペプチドの精製が続く。
【0061】
上記の方法において組換えDGLおよび/またはその誘導されたペプチドの回収に用いられる形質転換された植物は、T0世代の植物であり、すなわち、本発明の形質転換された細胞を適切な培地上で培養することにより得られるものであり、あるいは好都合には先行世代の植物の自家受精により得られる次世代のもの(T1、T2など)で、そこでは本発明の組換えヌクレオチド配列はメンデルの法則に従って再生産される。
【0062】
本発明による方法を実施することにより得られ得る組換えDGLから誘導されるポリペプチドのうち、以下のものを挙げることができる:
−図2の55〜379位に位置するアミノ酸により限定されるポリペプチドで、ポリペプチド(Δ54)とも呼ばれ、SEQ ID NO:4で示されるポリペプチド。該ポリペプチドはSEQ ID NO:3によって示されるヌクレオチド配列によってコードされている、
−図2の5〜379位に位置するアミノ酸により限定されるポリペプチドで、ポリペプチド(Δ4)とも呼ばれ、SEQ ID NO:6で示されるポリペプチド。該ポリペプチドはSEQ ID NO:5によって示されるヌクレオチド配列によってコードされている。
【0063】
本発明はさらに特定すると、上記のような任意の、図2に示す組換えDGLの、そして適切な場合には、1つ(もしくはそれ以上)の誘導されたポリペプチド、特に上記のポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製方法に関し、この方法は、植物細胞の形質転換を、後者のゲノムに、一方で図1に示すcDNAを含み、他方でRGLの22アミノ酸のシグナルペプチドをコードする配列、好都合にはRGLのシグナルペプチドの最初の19アミノ酸コードするそれを含む上記の組換え配列の組込みによって行われる工程を特徴とする。
【0064】
本発明はより特定すると上記のような図2に示す組換えDGLの、適切な場合、ポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)と組み合わせた調製方法に関し、以下を包含することを特徴とする:
−植物の葉の外植細胞の、後者を上記の組換えヌクレオチド配列pd35S-RGLSP-DGLを含む上記のようなプラスミドで形質転換されたAgrobacterium tumefaciensの株と適切な培養上清上で一緒にすることによる形質転換、
−カナマイシン含有培地上での形質転換外植片の選択、
−上記の形質転換外植片から、それを適切な培地上で培養することにより形質転換植物を生産すること
−組換えDGLの抽出、および適切な場合、ポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の抽出、特に、上記の形質転換された植物の葉および/または種子および/または果実を適切な緩衝液中ですりぶつし、遠心分離し、酵素活性を有する植物抽出物を構成する上清を回収すること、
−適切な場合、先行工程の間に得られた抽出物から、特に上清に対して行われるクロマトグラフィーにより、組換えDGLを精製すること、それにより組換えDGLの調製物は実質的に純粋な形態となる。
【0065】
本発明はまた、実質的に純粋な形態の上記のポリペプチド(Δ54)またはポリペプチド(Δ4)の調製に、上記方法を使用することにも関し、上記の方法で得られた抽出物由来の後者の精製により、特に抽出物の上清に対して行われたクロマトグラフィーによる。
【0066】
本発明はまた、特に、適切な場合には、実質的に純粋な形態の、上記の方法の実行による、上記のポリペプチド(Δ4)の調製方法に関し、ここで、配列pd35S-RGLSP-DGLによって形質転換された細胞は、ナス科の外植細胞、特にタバコもしくはトマトである。
【0067】
上記の方法の1つの実施態様によれば、ポリペプチド(Δ4)は、具体的には、上記の形質転換されたタバコ植物の葉の抽出により得ることができ、特に、これらの葉を適切な緩衝液中で摩砕し、遠心分離しそして上清を回収することにより得ることができる。ポリペプチド(Δ4)は、次いで、該ポリペプチド(Δ4)を含有する上記の葉の抽出物から、特に上記の上清に対して行われるクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0068】
本発明はより特定すると、組換えDGLおよび/または上で定義した後者から誘導される1つ(もしくはそれ以上)のポリペプチドを調製するための上記の任意の方法に関し、植物細胞の形質転換の工程が、後者のゲノムへの、一方では図3に示すヌクレオチド配列を含み、他方では上記のスポラミンAのシグナルペプチドをコードする配列を含む配列の組込みにより行われることを特徴とする。
【0069】
上記の方法を実施することにより得られ得る組換えDGLから誘導されるポリペプチドのうち、上記のポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)が挙げられる。
【0070】
本発明は特に上記の組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製方法に関し、以下を包含することを特徴とする:
−植物の外植細胞(特に葉の外植片)の、後者を、組換えヌクレオチド配列pd35S-PS-DGLおよび/または配列pd35S-PPS-DGLを含有する上記のプラスミドで形質転換されたAgrobacterium tumefaciensの株と一緒にすることによる形質転換、
−カナマイシン含有培地上での形質転換された外植片の選択、
−上記の形質転換された外植片からの、適切な培地上での後者の培養による、形質転換された植物の生産、
−組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の、特に上記の形質転換された植物の葉および/または種子および/または果実の適切な緩衝液中での摩砕による抽出、遠心分離、および酵素活性を有する植物抽出物を構成する上清の回収、
−適切な場合、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の先行工程の間に得られた抽出物からの、特に上清に対して行われるクロマトグラフィーによる精製、それにより組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製物は実質的に純粋な形態となる。
【0071】
本発明は、より特定すると、上記のポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の、上記の方法の実施による、調製方法に関し、ここで、形質転換される細胞はナス科の、特にタバコもしくはトマトの葉の外植細胞である。
【0072】
本発明の上記の方法の特定の実施態様によれば、ポリペプチド(Δ54)は、特に、上記の形質転換されたタバコ種子から、特にそれらの種子を適切な緩衝液中で摩砕することによる抽出、遠心分離、および上清の回収により得ることができる。次いで、このポリペプチド(Δ54)は、該ポリペプチド(Δ54)を含有する上記の種子抽出物から、特に上記の上清に対して行われるクロマトグラフィーにより、精製することができる。
【0073】
本発明はより特定すると、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製方法に関し、以下を包含することを特徴とする:
−植物の外植細胞(特に葉の外植片)の、後者を、組換えヌクレオチド配列pCRU-PPS-DGLおよび/または配列pCRU-PS-DGLおよび/または配列pGEA1-RGLSP-DGLおよび/または配列pGEA6-RGLSP-DGLおよび/または配列pAR-IAR-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGL-KDELを含有する上記のプラスミドにより形質転換されたAgrobacterium tumefaciensの株と一緒にすることによる形質転換、
−カナマイシン含有培地上での形質転換された外植片の選択、
−上記の形質転換された外植片からの、適切な培地上での後者の培養による、形質転換された植物の生産、
−組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の、特に上記の形質転換された植物により生産された種子の適切な緩衝液中での摩砕による抽出、遠心分離、および酵素活性を有する植物抽出物を構成する上清の回収、
−適切な場合、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の先行工程の間に得られた抽出物からの、特に上清に対して行われるクロマトグラフィーによる精製、それにより組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製物は実質的に純粋な形態となる。
【0074】
本発明はより特定すると、上記のポリペプチド(Δ54)の、上記の方法を実施することによる調製方法に関し、ここで、形質転換される細胞はアブラナ、およびタバコの外植細胞であり、そしてポリペプチド(Δ54)の抽出は形質転換された種子の摩砕により行う。
【0075】
上記の方法で形質転換された植物細胞は、好都合にはタバコ、アブラナ、トウモロコシ、エンドウ、トマト、ニンジン、コムギ、オオムギ、馬鈴薯、ダイズ、ヒマワリ、レタス、コメおよびアルファルファから選択される。
【0076】
本発明のより特定の目的は、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製方法であり、以下を包含することを特徴とする:
−トウモロコシカルスの、配列pAR-IAR-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGL-KDELを含有するプラスミドによる粒子銃を用いる後者のボンバードによる形質転換、
−カナマイシンのような選択物質を含有する培地上での形質転換されたカルスの選択、
−上記の形質転換されたカルスからの、適切な培地上での後者の培養による、形質転換されたトウモロコシ植物の生産、
−組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の、特に上記の形質転換された植物により生産された種子の適切な緩衝液中での摩砕による抽出、遠心分離、および酵素活性を有する植物抽出物を構成する上清の回収、
−適切な場合、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の先行工程の間に得られた抽出物からの、特に上清に対して行われるクロマトグラフィーによる精製、それにより組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)の調製物は実質的に純粋な形態となる。
【0077】
本発明はまた、そのゲノムに安定な方法で組み込まれた本発明の上記のような1つ(もしくはそれ以上)の組換えヌクレオチド配列を含有する任意の遺伝的に形質転換された植物細胞にも関する。
【0078】
本発明はまた、本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有する、上記のような任意のトランスジェニック植物細胞にも関し、該植物細胞は、酵素活性、より特定すると、以下に定義するリパーゼ活性を有する植物細胞とも呼ばれる。
【0079】
本発明はまた、そのゲノムに安定な方法で組み込まれた、本発明の上記のような1つ(もしくはそれ以上)のヌクレオチド配列を有する遺伝的に形質転換された種子にも関する。
【0080】
本発明はまた、本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有する、上記のような任意のトランスジェニック種子にも関し、該種子は、酵素活性、より特定すると、以下に定義するリパーゼ活性を有する種子とも呼ばれる。
【0081】
本発明の形質転換された種子は、本発明の遺伝的に形質転換された植物から収穫されるものであり、これらの形質転換された植物は、上記のT0世代で本発明の形質転換された細胞の培養により生産されるものであるか、あるいは自家受精によって得られる次世代の(T1、T2など)ものまたは先行世代(上に示した)の掛け合わせ植物のいずれかである。
【0082】
本発明はまた、遺伝的に形質転換した植物もしくは植物の一部(特に、外植片、茎、葉、根、花粉など)に関し、それらがそのゲノムに安定な方法で組み込まれた1つ(もしくはそれ以上)の上記の本発明の組換えヌクレオチド配列を含有することを特徴とする。
【0083】
本発明はまた、本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有する、上記のトランスジェニック植物もしくはその植物の一部に関し、該植物もしくはその植物の一部は酵素活性、より特定すると、以下に定義するリパーゼ活性を有する植物もしくは植物断片とも呼ばれる。
【0084】
本発明はより特定すると、本発明の上記の細胞もしくは種子の培養により得られる上記の形質転換された植物に関する。
【0085】
本発明の形質転換された植物もしくはその一部は、好都合には、アブラナ、タバコ、トウモロコシ、エンドウ、トマト、ニンジン、コムギ、オオムギ、馬鈴薯、ダイズ、ヒマワリ、コメ、レタス、およびアルファルファもしくはこれらの植物の一部から選択される。
【0086】
本発明は酵素活性、より特定すると、以下に定義するリパーゼ活性を有する任意の植物抽出物で、上記の本発明の方法の一つを実施することにより調製され、活性な酵素として本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有するものに関する。
【0087】
本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の一部および植物抽出物のリパーゼ(もしくは脂肪分解)活性は、特に、短鎖のトリグリセリド(例えば、トリブチリン)を基質として用いるGargouri (Gargouri et al., 1986)の方法により測定することができる。この酵素活性は、単位Uで表され、1単位Uは、37℃、最適pH条件下で1分当たり、1μモルの遊離の脂肪酸を放出するのに必要な酵素の量に相当する。
【0088】
本発明の酵素活性を有する植物抽出物は、好都合には、酵素的に活性な組換えポリペプチドの重量%が、この抽出物中に存在するタンパク質の総重量の約0.1%〜20%、より特定すると約1%〜約15%であり、それは、葉の初期重量(Fresh weight:FW)のg当たり約0.5U〜約1,000U/gに、特に葉のFWの約10U/g〜約300U/g、または種子のFWの約1U/g〜約5,000U/g、特に種子の約10U/g〜約1,000U/gの酵素活性の測定単位に相当する。
【0089】
本発明は、より特定すると、以下の酵素活性を有する植物抽出物に関する:
★植物の葉および/または果実および/または種子の抽出物であって、上記の方法の1つにより配列pd35S-RGLSP-DGLもしくは配列pd35S-PS-DGLもしくは配列pd35S-PPS-DGLによるそれらの植物の外植細胞の形質転換によって得られ、かつ組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有するもの、特に:
−上記の方法により配列pd35S-PS-DGLもしくは配列pd35S-PPS-DGLによるタバコの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ54)をポリペプチド(Δ4)と組み合わせて含有するタバコの葉の抽出物で、これら2つのポリペプチドの混合物の、抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約20%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約100U/g〜約300U/gである、
−上記の方法により配列pd35S-PS-DGLもしくは配列pd35S-PPS-DGLによるトマトの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ54)をポリペプチド(Δ4)と組み合わせて含有するトマトの葉もしくは果実の抽出物で、これら2つのポリペプチドの混合物の、抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約20%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約100U/g〜約300U/gである、
−上記の方法により配列pd35S-RGLSP-DGLによるタバコの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ4)を含有するタバコの葉の抽出物で、このポリペプチド(Δ4)の、抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約20%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約100U/g〜約300U/gである、
−上記の方法により配列pd35S-PS-DGLもしくは配列pd35S-PPS-DGLによるタバコの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ54)を含有するタバコの葉の抽出物で、このポリペプチド(Δ54)の、抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約1%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約10U/g〜約300U/gである、
★植物の種子の抽出物であって、上記の方法の1つにより配列pCRU-PS-DGLもしくは配列pCRU-PPS-DGL、もしくは配列pGEA1-RGLSP-DGLもしくは配列pGEA6-RGLSP-DGLによるそれらの植物の外植細胞の形質転換によって得られ、かつ組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有するもの、特に:
−上記の方法により配列pCRU-PS-DGLもしくは配列pCRU-PPS-DGL、もしくは配列pGEA1-RGLSP-DGLもしくは配列pGEA6-RGLSP-DGLによるアブラナの種子の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ54)を含有するアブラナの種子の抽出物で、このポリペプチド(Δ54)の、該抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約1%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約10U/g〜約1,000U/gである、
★植物の種子の抽出物であって、上記の方法の1つにより配列pAR-IAR-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGL-KDELによるそれらの植物の外植細胞の形質転換によって得られ、かつ組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有するもの、特に:
−上記の方法により配列pAR-IAR-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGL-KDELによるアブラナの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ54)を含有するトウモロコシの種子の抽出物で、このポリペプチド(Δ54)の、該抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約1%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約10U/g〜約1,000U/gである。
【0090】
本発明はまた、任意の酵素的に活性な組換えDGLであって、そのアミノ酸配列が図2に示されているもの、後者から、特に1つ(もしくはそれ以上)のアミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導されるポリペプチドであって、これらの誘導されたポリペプチドはリパーゼ活性を有し、例えば、実質的に純粋な形態で上記の本発明の方法の一つを実施することによって得られるものにも関し、これらの方法は、本発明の組換えポリペプチドの精製の工程、特に、上記の酵素抽出物に対して行われるクロマトグラフィーによる工程を包含する。
【0091】
上記の組換えDGLから誘導されるポリペプチドとして、本発明は特に上記のポリペプチド(Δ54)および(Δ4)に関し、これらの分子量は、それぞれ約37kDaと、約49kDaである。
【0092】
上記のリパーゼ活性を有する酵素的に活性な組換えDGLもしくは誘導されたポリペプチドは、上記のGargouriの方法によって測定されたリパーゼ活性を有し得る任意の組換えポリペプチドを意味すると理解される。
【0093】
例示の方法により、本発明の組換えポリペプチドは、組換えポリペプチドの約10U/mg〜約1,000U/mg、好都合には約100U/mg〜約600U/mgのリパーゼ活性を有する。
【0094】
本発明はより特定すると、タバコの葉もしくは種子の抽出物の精製により得られる組換えDGLに関する。これらの葉もしくは種子は、形質転換されたタバコ植物を起源とし、それ自身は配列pd35S-RGLSP-DGLによって形質転換されたタバコ細胞から上記の方法により得られ、該組換えDGLは上記のリパーゼ活性を有している。
【0095】
本発明はまた、植物、特にナス科、例えば、形質転換されたタバコもしくはトマトの葉および/または種子および/または果実の酵素的抽出物の精製により得られたポリペプチド(Δ54)およびポリペプチド(Δ4)にも関する。この植物自体は、配列pd35S-PS-DGLもしくは配列pd35S-PPS-DGLもしくは配列pd35S-RGLSP-DGLにより形質転換された植物細胞から上記の方法により得られ、該組換えポリペプチド(Δ54)および(Δ4)は上記のリパーゼ活性を有している。
【0096】
本発明はまた、タバコの種子もしくはアブラナの種子の酵素抽出物の精製により得られるポリペプチド(Δ54)にも関する。これらの種子は、それぞれ形質転換されたタバコ植物もしくはアブラナ植物を起源とし、それ自体は、それぞれ配列pCRU-PS-DGLもしくは配列pCRU-PPS-DGLによって形質転換されたタバコ細胞もしくはアブラナ細胞から上記の方法により得られ、この組換えポリペプチド(Δ54)は、上記のリパーゼ活性を有している。
【0097】
本発明はまた、アブラナの種子の酵素抽出物の精製により得られるポリペプチド(Δ54)およびポリペプチド(Δ4)にも関する。これらの種子は、形質転換されたアブラナ植物を起源とし、それ自体は、それぞれ配列pGEA1-RGLSP-DGLおよび/または配列pGEA6-RGLSP-DGLによって形質転換されたアブラナ細胞から上記の方法により得られ、この組換えポリペプチド(Δ54)および(Δ4)は、上記のリパーゼ活性を有している。
【0098】
本発明はまた、トウモロコシの種子の酵素抽出物の精製により得られるポリペプチド(Δ54)およびポリペプチド(Δ4)にも関する。これらの種子は、形質転換されたトウモロコシ植物を起源とし、それ自体は、それぞれ配列pAR-IAR-RGLSP-DGLおよび/または配列pγzeine-RGLSP-DGL、および/または配列pγzeine-RGLSP-DGL-KDELによって形質転換されたトウモロコシ細胞から上記の方法により得られ、この組換えポリペプチド(Δ54)および(Δ4)は、上記のリパーゼ活性を有している。
【0099】
本発明のポリペプチド(Δ54)およびポリペプチド(Δ4)の見かけの分子量は、それぞれ、37kDaと49kDaであり、ポリアクリルアミドゲルによる分析およびニトロセルロースへの電気的転写(これらの方法は、以下の本発明の実施態様例で詳説する)後の免疫検出により測定された。
【0100】
本発明は、本発明の組換えポリペプチドに対する抗体、そしてより特定すると、本発明の組換えDGLに対する、および/または上記のポリペプチド(Δ54)に対するおよび/またはポリペプチド(Δ4)に対する抗体で、やはりHGLを認識し得る抗体に関する。
【0101】
そのような抗体は、これらのペプチドで動物を免疫し、続いて形成された抗体を回収することにより得ることができる。
【0102】
この産生がポリクローナル抗体に制限されないことはいうまでもない。
【0103】
それは、動物の脾臓細胞から、特に、一方は本発明の精製されたポリペプチドの一つに対して免疫されたマウスもしくはラットと、他方は適切なミエローマの細胞から従来の方法により形成された任意のハイブリドーマで、動物の最初の免疫に用いられた上記のペプチドならびにHGLを認識するモノクローナル抗体の生産能によって選択することができるハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体にも適用される。
【0104】
本発明はまた、本発明の形質転換された植物、植物の部分、植物細胞もしくは種子の、本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLもしくは上記で定義したその誘導されたポリペプチドの、特に、本発明の上記の方法の一つを実施することによる調製のための使用に関し、該組換えポリペプチドは、実質的に純粋な形態であるか、もしくは上記で定義した酵素活性を有する植物抽出物中に含有される。
【0105】
本発明はまた、ヒトもしくは動物の食物、植物もしくは植物の部分の分野における、上記で定義した本発明の酵素活性のもしくは本発明の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLもしくは上記で定義したその誘導されたポリペプチドの用途にも関する。
【0106】
本発明はより特定すると、本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に葉、果実、種子の食物としての用途に関する。
【0107】
この点で、本発明はより特定すると、上記の酵素活性を有する植物もしくはこの植物の部分、特に葉もしくは果実、または後者により産生される種子を含む任意の食物に関し、それらは人間もしくは動物にとって食用に適した性質を有し得る。
【0108】
本発明はまた、上記の酵素活性を有する1つ(もしくはそれ以上)の植物および/またはこの(これらの)植物の部分、特に、この(これらの)植物の葉および/または種子および/または果実および/または上記の酵素活性を有する1つ(もしくはそれ以上)の植物抽出物および/または本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えポリペプチドを含む任意の栄養組成物にも関し、適切ならば、1つ(もしくはそれ以上)の他の食用に適した化合物と組み合わせる。
【0109】
上記の栄養組成物に含まれる植物もしくは植物の部分は、好都合には、摩砕された物質の形態である。
【0110】
本発明の食物はまた、機能性食品とも呼ばれ、あるいは本発明の栄養組成物は、より特定すると、健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患っている個体によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にすることを意図している。この点で、本発明の食物もしくは栄養組成物は、好都合には、栄養補給物質として用いられる。
【0111】
本発明はまた、本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、もしくは植物細胞、あるいは上記で定義した酵素活性を有する植物抽出物、あるいは本発明の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLもしくは上記で定義したその誘導されポリペプチドの、健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患っている個体によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にすることを意図した薬剤(もしくは医薬組成物)の調製のための用途にも関する。
【0112】
特に、そのような医薬組成物は、好都合には、脂肪の吸収の機構を変える医学的処置を受けている個体もしくは高齢者に対して用いられる。
【0113】
本発明の医薬組成物はまた、より特定すると、その生物中で不十分なリパーゼ(特に胃腸および/または膵臓のリパーゼ)に関連した病状、より特定すると、嚢胞性線維症、外分泌腺膵臓不全のような病状の処置を意図する。
【0114】
本発明は、特に、上記の酵素活性を有する1つ(もしくはそれ以上)の植物抽出物および/または1つ(もしくはそれ以上)の本発明の組換えポリペプチドを含み、適切ならば、薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせた任意の医薬組成物に関する。
【0115】
本発明はまた、特に、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を実質的に純粋な形態でもしくは上記の酵素抽出物の形態で含む、上記の医薬組成物に関する。
【0116】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、経口で、特に、カプセル、錠剤もしくは希釈用の粉末の形態で投与され得るし、また投与される。
【0117】
ヒトの一日の用量は、好都合には、該医薬組成物が上記の酵素抽出物を含む場合には、約200mg〜約1,000mg、好ましくは主な食事時に配分され、該医薬組成物が実質的に純粋な形態の本発明の組換えポリペプチドを含む場合には約100mg〜約500mgである。
【0118】
本発明はまた、本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に、葉および/または果実および/または種子、または植物細胞、または上記で定義した酵素活性を有する植物抽出物、または本発明の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLもしくは上記で定義したその誘導されたポリペプチドを、工業の、農業栄養物の、もしくは農工業の分野、特に脂肪工業、脂肪化学もしくは牛乳工業で酵素反応を行うための用途に関する。
【0119】
この点で、本発明は、工業の、農業栄養物の、もしくは農工業の分野で、とくに脂肪工業、脂肪化学もしくは牛乳工業で、特に、酵素的生物変換もしくは生物触媒の、1以上の酵素反応を実施することによる任意の方法に関し、これらの酵素反応は、本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、あるいは、植物細胞、あるいは上記で定義した酵素活性を有する植物抽出物、あるいは本発明の組換えポリペプチド、例えば、組換えDGLもしくは上記で定義したその誘導されたポリペプチドという手段により実施される。
【0120】
本発明は、特に、工業の、農業栄養物の、もしくは農工業用途を意図した酵素調製物に関し、それは上記の方法を実施することに用いることができ、上記で定義した1つ(もしくはそれ以上)の酵素活性を有する植物抽出物、および/または1つ(もしくはそれ以上)の本発明の組換えポリペプチド、特に組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を、適切なら1つ(もしくはそれ以上)の添加剤もしくは上記の工業用途により用いられ得る他の酵素と組み合わせて含有する。
【0121】
本発明は、より特定すると、本発明の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、あるいは植物細胞を、工業的規模で、酵素的生物変換反応もしくは生物触媒反応、例えば、酵素的加水分解もしくはトランスエステル化、を行わせるための用途に関する。
【0122】
本発明の酵素活性を有する植物もしくはこれらの植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、または植物細胞は、好都合には、酵素源としても反応基質としてもどちらでも用いられる。
【0123】
本発明はまた、本発明の酵素活性を有する植物、もしくはこれらの植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、または植物細胞、より特定すると、組換えDGLおよび/またはポリペプチド(Δ54)および/またはポリペプチド(Δ4)を含有する植物、を用いる任意の生物触媒方法に関し、該植物もしくはその部分は、酵素源としても反応基質としてもどちらでも用いられる。
【0124】
本発明はより特定すると、本発明の酵素活性を有する植物もしくはこれらの植物の部分の生物燃料の調製のための用途に関する。
【0125】
この点で、本発明は、アルコール、特に、メタノールもしくはエタノールの、本発明の形質転換した植物の全部もしくは一部を摩砕した物質への添加、好ましくは、摩砕した物質は本発明の形質転換したアブラナ、ヒマワリ、もしくはダイズの種子のものであり、およびその生物燃料の回収、特に濾過による生物燃料の任意の調製方法に関する。
【0126】
本発明はまた、植物の脂肪酸のエステル、例えば、上記の方法を実施することにより得られるもの、特に、オレイン酸のメチルエステルに関する。
【0127】
本発明はまた、上記の方法を実施することにより得られる生物燃料に関し、より特定すると、植物の脂肪酸のエステルを含む上記の任意の生物燃料に関する。
【0128】
本発明はより特定すると、上記の方法をアブラナの種子に対して実施することにより得られる生物燃料で、オレイン酸のメチルエステルを含有するものに関する。
【0129】
本発明はまた、本発明の組換えポリペプチドに対する上記の抗体の、DGLもしくはHGLを含み得る生物学的試料中のそれの検出方法もしくはアッセイを行うための用途に関する。
【0130】
本発明はより特定すると、これらの抗体の、生物中のリパーゼの過剰産生、もしくは反対の、不足、または産生の欠除に関連した病状のin vitro診断方法を行うための用途に関する。
【0131】
患者から採取した生物学的試料に対して行われるこのin vitro診断法は、この試料を本発明の1以上の抗体と一緒にする工程、それに続く先行工程中に形成された任意の抗体−HGL複合体の検出の工程を包含する。
【0132】
この点で、本発明はまた、in vitro検出もしくは診断の上記の方法を行うための以下を含むキットにも関する:
−上記の抗体、好都合には、放射性にもしくは酵素的に標識されている、およびこれらの抗体とHGLとの間の免疫反応を行うのに好ましい培地を構成する試薬、
−これらの抗体とHGLとの間に形成された免疫学的複合体の検出を可能にする試薬。
【0133】
本発明は、より特定すると、一方で図4に示すcDNAであって図5に示すヒト胃リパーゼ(HGL)をコードするcDNA、もしくはこのcDNAから、特に1つ(もしくはそれ以上)のヌクレオチドの付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導されるヌクレオチド配列であって、該誘導された配列はポリペプチドで、そのアミノ酸配列が図5に示すHGLのそれと同一であるもの、または1つ(もしくはそれ以上)のアミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換によりHGLから誘導されるポリペプチドで、この誘導されたポリペプチドがリパーゼ活性をもつものをコードするもの、を含み、他方では、植物細胞が該cDNAによって、もしくは上記の誘導された配列によってコードされるポリペプチドを産生するのを可能にする要素、特に植物の転写機構(より特定すると転写ターミネーターのRNAポリメラーゼ)によって認識される転写プロモーターおよび転写ターミネーター、を含む組換えヌクレオチド配列の、これらの細胞もしくは後者から得られた植物から、活性な酵素の形態の組換えDGLもしくは上記で定義した後者から誘導された1つ(もしくはそれ以上)のポリペプチドを得るための、植物細胞の形質転換のための用途に関する。
【0134】
この点で、本発明は、組換えDGLの調製という観点による植物の形質転換における上記の任意の組換えヌクレオチド配列に関し、ここで、ヌクレオチド配列は、図1もしくは図3に示したDGLをコードし、HGLをコードし図4に示されるヌクレオチド配列で置換される。
【0135】
本発明はより特定すると、以下の組換えヌクレオチド配列に関する:
−(pSP-HGLSP-HGLと呼ばれる)5’→3’方向に、Agrobacterium tumefaciensのpSPプロモーター、HGLのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図4に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pSP-HPLSP-HGLと呼ばれる)5’→3’方向に、Agrobacterium tumefaciensのpSPプロモーター、HPLのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図4に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pSP-RGLSP-HGLと呼ばれる)5’→3’方向に、Agrobacterium tumefaciensのpSPプロモーター、RGLのシグナルペプチドをコードする配列(上記)をふくむもので、後者はすぐ後に図4に示したヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている。
【0136】
本発明はまた、上記のような、ベクターおよびこれらのベクターで形質転換された細胞性宿主であって、HGLおよび/またはその誘導された配列をコードする上記の組換えヌクレオチド配列を含むものにも関する。
【0137】
本発明はまた、活性な酵素の形態の組換えHGLおよび/または後者から、特に1つ(もしくはそれ以上)のアミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により誘導された1つ(もしくはそれ以上)のポリペプチドで、リパーゼの活性を有するものの調製のための任意の方法にも関し、以下を包含することを特徴とする:
−本発明の1つ(もしくはそれ以上)の組換えヌクレオチド配列がこれらの細胞のゲノムに組み込まれるような形質転換、
−適切なら、上記の形質転換された細胞からの形質転換された植物の生産、
−該細胞もしくは上記の形質転換された植物からの組換えHGLおよび/または上記の誘導されたポリペプチドの、特に抽出および適切ならそれに続く精製による回収。
【0138】
本発明はさらに特定すると、図4に示す配列を含む上記の組換え配列を用いる組換えDGLおよび/またはその誘導されたポリペプチドの生産にしたがった、組換えHGLの上記の方法の実施による任意の生産方法に関する。
【0139】
本発明の方法を実施することにより得ることができる組換えHGLから誘導されるポリペプチドのうち挙げられるのは:
−図5の74〜398位に位置するアミノ酸の範囲に限定されるポリペプチドで、ポリペプチド(Δ54HGL)とも呼ばれる、
−図5の24〜398位に位置するアミノ酸の範囲に限定されるポリペプチドで、ポリペプチド(Δ4HGL)とも呼ばれる。
【0140】
本発明はより特定すると、組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)の上記の調製方法に関し、以下を包含することを特徴とする:
−植物の葉の外植細胞の、後者を上記の組換えヌクレオチド配列pSP-HGLSP-HGLおよび/またはpSP-HPLSP-HGLおよび/またはpSP-RGLSP-HGLを含む上記のようなプラスミドにより形質転換されたAgrobacterium tumefaciensの株と適切な培養上清上で一緒にすることによる形質転換、
−カナマイシン含有培地上での形質転換外植片の選択、
−上記の形質転換外植片からの、後者の適切な培地上での培養による形質転換植物の生産、
−組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)の、特に、上記の形質転換された植物の葉および/または種子および/または果実を適切な緩衝液中での摩砕、遠心分離、および酵素活性を有する植物抽出物を構成する上清の回収による、抽出、
−適切な場合、先行工程の間に得られた抽出物からの、特に上清に対して行われるクロマトグラフィーによる、組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)の抽出、それにより組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)の調製物は実質的に純粋な形態となる。
【0141】
本発明はまた、そのゲノムに安定な方法で組み込まれた本発明の1つ(またはそれ以上)の上記の組換えヌクレオチド配列を含有する任意の植物もしくはこの植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子に関する。
【0142】
本発明は、酵素活性、より特定すると以下で定義するリパーゼ活性を有する、上記の本発明の方法の一つを実施することにより調製され、活性な酵素として、本発明の1つ(またはそれ以上)の組換えポリペプチド、例えば、組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)を含む任意の植物抽出物に関する。
【0143】
本発明はより特定すると、植物の外植片を、配列pSP-HGLSP-HGLおよび/または配列pSP-HPLSP-HGLおよび/または配列pSP-RGLSP-HGLを用いる形質転換により上記の方法の一つにより得た植物の葉および/または種子の抽出物で、組換えHGLおよび/またはポリペプチド(Δ54HGL)および/またはポリペプチド(Δ4HGL)を含むものに関する:特に
−上記の方法により配列pSP-HGLSP-HGL、または配列pSP-HPLSP-HGL、または配列pSP-RGLSP-HGLによるタバコの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、かつポリペプチド(Δ54HGL)を、ポリペプチド(Δ4HGL)と組み合わせて含有するタバコの葉または種子の抽出物であって、これら2つのポリペプチドの混合物の、該抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約20%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約100U/g〜約300U/gである、
−上記の方法により配列pSP-RGLSP-HGLによるタバコの葉の外植細胞の形質転換によって得られ、ポリペプチド(Δ4HGL)を含有するタバコの葉の抽出物で、このポリペプチドの、該抽出物中に存在するタンパク質の総重量に対する重量%は、約0.1%〜約20%であり、該抽出物の酵素活性は、FWの約100U/g〜約300U/gである。
【0144】
本発明はまた、任意の酵素的に活性な組換えHGLで、そのアミノ酸配列は図5に示されているもの、特に1つ(またはそれ以上)のアミノ酸の付加および/またはサプレッションおよび/または置換により後者から誘導されるポリペプチド、より特定すると、ポリペプチド(Δ54HGL)および(Δ4HGL)に関し、これらの誘導されたポリペプチドはリパーゼ活性を有し、上記の本発明の方法の一つを実施することにより実質的に純粋な形態で得られるものであり、これらの方法は、本発明の組換えポリペプチドの、特に上記の酵素抽出物に対して行われるクロマトグラフィーによる、精製の工程を包含する。
【0145】
組換えDGLについて先に記載したように、本発明はまた以下にも関する:
−本発明の組換えHGLもしくはその誘導されたポリペプチドに対するポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、および上記のようなそれらの用途、
−工業的目的のための、上記の酵素活性を有する植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、または植物の細胞または抽出物、あるいはまた本発明のHGLもしくはその誘導されたポリペプチドを基にした食物もしくは栄養組成物または医薬組成物、あるいは酵素調製物、
−本発明の組換えHGLもしくはその誘導されたポリペプチド、または上記で定義した酵素活性を有する植物、または植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子および/または植物抽出物から実施される、上記の任意の酵素的生物転換方法もしくは生物触媒、または生物燃料調製物。
【0146】
本発明は、上記の組換えヌクレオチド配列の調製および本発明の組換えポリペプチドを産生する形質転換された植物、および生物燃料の調製方法についての詳細な説明においてさらに説明される。
【0147】
1.イヌ胃リパーゼの組換えタンパク質をコードし、ナス科植物の葉および種子における発現を可能とするキメラ遺伝子の構築
I−A)組換えDGLをコードし、タバコにおける発現を可能とするキメラ遺伝子の構築
イヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする遺伝子の、タバコの葉および種子における発現には、以下の調節配列が必要である:
1.CaMV(カリフラワーモザイクウイルス)の二重構造プロモーター35S(pd35S)
これは、転写を活性化し、天然プロモーター35SのTATAエレメントの上流に位置する配列の重複(dupulication)に対応するものである(Kay et al., 1987)。
2.転写終結配列であるターミネーターpolyA 35Sは、カリフラワーモザイクウイルスの配列の3’非コード領域に対応し、二本鎖環状DNAであって、転写物35Sを産生する(Franck et al., 1980)。
【0148】
組換えDNA技術を用いることによる各種プラスミドの構築(Sambrook et al., 1989)は、pBIOC4に由来する。このバイナリープラスミドは、pGA492(An, 1986)に由来し、これは、そのトランスファーDNA上の、左右の境界の間に、Agrobacterium tumefaciensのプラスミドpTiT37を起源とする以下の配列を有する:
ノパリンシンターゼをコードするnos遺伝子の構造プロモーター(Depicker et al., 1982)、つまりネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(Berg and Berg, 1983)をコードするnptII遺伝子をコードする配列は、最初の8コドンの領域を欠失しており(その開始コドンはメチオニンATGである)、nos遺伝子をコードする配列の配列の最初の14コドンの配列(Depicker et al., 1982)、最初の14コドンの領域を失っているnos遺伝子をコードする配列、nosターミネーター(Depicker et al., 1982)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードするcat遺伝子に先行する多重クローニング部位(ポリリンカーとも呼ばれる)(HindIII-XbaI-SacI-HpaI-KpnI-ClaI-BglII)を含む領域(Close and Rodriguez, 1982)、およびAgrobacterium tumefaciens(Liu et al., 1993)のプラスミドpTiA6の遺伝子6の末端配列と融合している。cat遺伝子をコードするほぼすべての配列を除去するために、プラスミドpGA492を、SacI(ポリリンカーの制限部位)、そしてScaI(cat遺伝子の配列に存在する制限部位)により2回消化し、次に製造業者の指示にしたがって、酵素T4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)の作用に付した。改変プラスミド(20ng)の連結は、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl;酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uを含む10μlの反応媒質中、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。次に、保持されたクローンのプラスミドDNAのHindIII制限部位を、リン酸化HindIII-EcoRIアダプターを用いて、EcoRI制限部位に改変した(Stratagene Cloning Systems)。この改変を行うために、保持されたクローンのプラスミドDNA500ngを、HindIIIにより消化し、製造業者の指示にしたがって、ウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により、脱リン酸化し、HindIII-EcoRI DNAアダプター1,500ng、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)、および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間、共沈させた。12,000gで30分間遠心分離した後、沈殿したDNAを、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、水8μlにとり、65℃で10分間保持し、次に10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間連結させた。T4DNAリガーゼを、65℃で10分間不活性化した後、連結反応混合物を、EcoRIで消化し、0.8%アガロースゲルを用いた電気泳動により精製し、電気溶出(electroelute)(Sambrook et al., 1989)し、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)、および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、次に上述したように連結させた。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを、形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、特にHindIIIおよびEcoRIによる酵素消化により分析した。得られたバイナリープラスミドは、cat遺伝子をコードする配列の最後の9コドンを有しているのみであり、そのEcoRI部位が独自のものであり、pBIOC4と呼ぶことにした。
【0149】
プロモーターpd35SとターミネーターpolyA 35Sからなる発現カセットを、プラスミドpJIT163Δを用いて単離した。プラスミドpJIT163Δは、プラスミドpJIT163から誘導したものであり、これ自身は、プラスミドpJIT60から誘導したものである(Guerineau and Mullineaux, 1993)。プラスミドpJIT163は、ポリリンカーのHindIIIとSalI部位との間にATGコドンを有している。このATGを抑制し、プラスミドpJIT163Δを得るために、プラスミドpJIT163DNAを、HindIIIおよびSalIで2回消化し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動で精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、製造業者の指示にしたがってKlenow酵素(New England Biolabs)の作用に付し、1容量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)、そして次に1容量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)による抽出で脱タンパク質し、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)と、2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、最後に10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlと酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間連結させた。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。プロモーターpd35SとターミネーターpolyA 35S(SacI-XhoIフラグメント)からなる発現カセットを単離するために、保持されたクローンpJIT163ΔのプラスミドDNAを、SacIおよびXhoIで消化した。発現カセットを有するSacI-XhoIフラグメントを、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出(Sambrook et al., 1989)し、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)、そして2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、次に製造業者の指示にしたがってMung Bean Nuclease酵素(New England Biolabs)の作用に付した。この精製した挿入物(200ng)を、EcoRIで消化しておいたpBIOC4のプラスミドDNA(20ng)にクローニングし、酵素Mung Bean Nucleaseにより処理し、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化した。連結反応は、20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μl/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたプラスミドを、pBIOC21と呼ぶことにした。
【0150】
イヌ胃リパーゼ(DGL)は、前駆体の形で天然に合成される。成熟DGLタンパク質は、379アミノ酸からなる。DGLの相補DNAを、国際出願No. WO 94/13816に記載されているように、発現ベクターpRU303のBglIIおよびSalI部位でクローニングして、ベクターpDGL5.303とした。これを、バイナリープラスミドpBIOC25(PS−DGLを含む)、およびpBIOC26(PPS−DGLを含む)の構築のために用い、成熟DGLをコードする配列は、それぞれ植物由来のシグナルペプチド(PS)、またはプレプロペプチド(PPS、つまりN−末端液胞指向配列(vacuole-directing sequence)が続くシグナルペプチド)をコードするそれによって先行されている。それぞれ23および37のアミノ酸からなるPSおよびPPS配列は、サツマイモの塊茎状根の貯蔵タンパク質、スポラミンAの配列である(Murakami et al., 1986; Matsukoa and Nakamura, 1991)。
【0151】
成熟DGLの配列と、指向シグナル、PSまたはPPSのそれとの間の融合を簡略化するために、2個のオリゴデオキシヌクレオチド、5’caggagatc TTG TTT GGA AAG CTT CAT CCC 3’(プラスミド中に独自のBglII部位を含み、補助的HindIII部位を提供する)、および5’ CAT ATT CCT CAG CTG GGT ATC 3’(プラスミドに独自のPvuII部位を含む)を用いるPCRによる突然変異により、成熟DGL配列の4番目および5番目のコドンへ、補助的HindIII制限部位を導入することによって、プラスミドpDGL5.303を改変した。PCRによるBglII-PvuIIフラグメントの増幅は、10倍濃縮TaqDNAポリメラーゼ緩衝液(500mMのKCl、100mMのTris-HCl、pH9.0、および1%Triton x100)10μl、25mMのMgClを6μl、10mMのdNTP(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)3μl、上述の2種類のオリゴデオキシヌクレオチドそれぞれ100pM、マトリックスDNA(DGLの相補DNAを含む発現ベクターpRU303)5ng、TaqDNAポリメラーゼ(Promega)2.5U、そしてワセリン油2滴を含む反応媒質100μl中で行った。DNAは、94℃で5分間変性し、30サイクル(それぞれ、94℃での変性1分間、50℃でのハイブリダイゼーション1分間、72℃での伸長1分間からなる)に付し、次に72℃での伸長を5分間続けた。このPCR反応を、Perkin Elmer Cetusの「DNA Thermal Cycler」機中で行った。クロロホルムで抽出することによって、油状物を除去した。次に、反応媒質中に含まれるDNAフラグメントを、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)、そして2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間、沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、2種類の制限酵素、BglIIおよびPvuIIで消化させた。PCRに由来する消化されたDNAフラグメントを、2%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、そしてBglIIおよびPvuIIにより2回消化させ、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコール中での沈殿に付し、乾燥し、製造業者に指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたベクターpDGL5.303のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター100ng、および上述したPCRによる増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持されたいくつかのクローンのプラスミドDNAを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。このHindIII制限部位の導入によっても、DGLの遺伝子コードは改変されない。実際、天然DGL配列であるAAA TTA(Lys-Leu)は、AAG CTT(Lys-Leu)になる。得られたプラスミドは、pBIOC22と呼ぶことにし、以下に対応する成熟DGLタンパク質の配列を含んでいる:
【0152】
【表1】

【0153】
a.PS−DGLを含むバイナリープラスミドpBIOC25の構築
成熟DGLタンパク質のポリペプチドLeu-Phe-Gly-Lys(最初の4アミノ酸)をコードする配列を抑制するために、プラスミドpBIOC22を、全体的にはBglIIにより、部分的にはHindIIIにより、消化させた。この配列を、成熟DGLタンパク質をコードする配列の最初の4コドンのそれと融合した、23アミノ酸 のシグナルペプチドPSをコードする配列(ATG AAA GCC TTC ACA CTC GCT CTC TTC TTA GCT CTT TCC CTC TAT CTC CTG CCC AAT CCA GCC CAT TCC)と置換した(PS−成熟DGLの最初の4コドン)。配列、「PS−成熟DGLの最初の4コドン」を、プラスミドpMAT103(Matsuoka and Nakamura, 1991)を用いたPCRにより、2個の以下のオリゴデオキシヌクレオチド、5’caggagatctg ATG AAA GCC TTC ACA CTC GC3’および5’G ATG AAG CTT TCC AAA CAA GGA ATG GGC TGG ATT GGG CAG G3’により、段落Iに上述したPCR増幅のプロトコールにしたがって、増幅した。BGlIIおよびHindIIIによる二重酵素消化の後、PCR増幅に由来するDNAフラグメントを、2%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、そしてBglIIおよびHindIIIにより二重に消化させ、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、製造業者に指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC22のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター100ng、および上述したPCR増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持されたいくつかのクローンのプラスミドDNAを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。PSおよび成熟DGLの配列を、そのオープンリーディングフレームを保持しながら、クローニングした。PSおよび成熟DGLの配列の間の開裂配列は、Ser-Leuである。得られたプラスミドを、pBIOC23と呼ぶことにした。pBIOC23から出発して、PS−DGLの配列を有するBglII-XbaIフラグメントを、BglIIおよびXbaIによる二重酵素消化、0.8%アガロースゲルによる電気泳動による精製、電気溶出(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿、そして乾燥により単離した。次に、このDNAフラグメントを、製造業者の指示にしたがってKlenow酵素で処理し、そしてHindIII部位において消化し、Klenowで処理し、製造業者の指示にしたがって、ウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC21のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、および上述したPS−DGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたクローンを、pBIOC25と呼ぶことにした。組換えタンパク質PS−DGLをコードするフラグメントのヌクレオチド配列は、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。バイナリーベクターpBIOC25のプラスミドDNAを、Holsters et al.,(1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接形質転換により、導入した。保持されたクローンの有効性を、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0154】
b.PPS−DGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC26の構築
成熟DGLタンパク質のポリペプチドLeu-Phe-Gly-Lysをコードする配列を抑制するために、プラスミドpBIOC22を、全体的にはBglIIにより、部分的にはHindIIIにより、消化させた。この配列を、成熟DGLタンパク質の最初の4コドンのそれと融合した、37のアミノ酸 のシグナルペプチドPPSをコードする配列(ATG AAA GCC TTC ACA CTC GCT CTC TTC TTA GCT CTT TCC CTC TAT CTC CTG CCC AAT CCA GCC CAT TCC AGG TTC AAT CCC ATC CGC CTC CCC ACC ACA CAC GAA CCC GCC)と置換した(PPS−成熟DGLの最初の4コドン)。配列、「PPS−成熟DGLの最初の4コドン」を、プラスミドpMAT103(Matsuoka and Nakamura, 1991)を用いたPCRにより、2個の以下のオリゴデオキシヌクレオチド、5’caggagatctgATG AAA GCC TTC ACA CTC GC3’および5’G ATG AAG CTT TCC AAA CAA GGC GGG TTC GTG TGT GGT TG 3’により、段落Iに上述したPCR増幅のプロトコールにしたがって、増幅した。BglIIおよびHindIIIによる二重酵素消化の後、PCR増幅に由来するDNAフラグメントを、2%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、そしてBglIIおよびHindIIIにより二重消化させ、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC22のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター100ng、および上述したPCR増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。
【0155】
保持されたいくつかのクローンのプラスミドDNAを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により確認した。PPSおよび成熟DGLの配列を、そのオープンリーディングフレームを保持しながら、クローニングした。この2つの配列の間の開裂配列は、Ala-Leuである。得られたプラスミドを、pBIOC24と呼ぶことにした。pBIOC24から出発して、PPS−DGLの配列を有するBglII-XbaIフラグメントを、BglIIおよびXbaIによる二重酵素消化により単離し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールにより沈殿させ、そして乾燥した。次に、このDNAフラグメントを、製造業者の指示にしたがってKlenow酵素で処理し、そしてHindIII部位において消化し、Klenowで処理し、製造業者の指示にしたがって、ウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC21のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、および上述したPPS−DGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたクローンを、pBIOC26と呼ぶことにした。組換えタンパク質PPS−DGLをコードするフラグメントのヌクレオチド配列は、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により確認した。バイナリーベクターpBIOC26のプラスミドDNAを、Holsters et al., (1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接形質転換により、導入した。得られたクローンの有効性を、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0156】
c.RGLSP−DGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC41の構築
ウサギ胃リパーゼを、NH−末端に位置し、成熟リパーゼのポリペプチド配列に先行する22アミノ酸のシグナルペプチドからなる前駆体の形で、合成した。ウサギ胃リパーゼをコードする完全cDNAを含むクローンpJO101は、「Institut de Recherche Jouveinal」により1992年11月12日出願の、「ウサギ胃リパーゼおよびペプチド誘導体をコードする核酸、これらのポリペプチド産生のためのそれらの用途、および後者に基づく医薬組成物」という名称の欧州特許出願No. 92 403 055.4に記載されている。
【0157】
イヌ胃リパーゼのポリペプチド配列と、ウサギ胃リパーゼ前駆体のそれを並べることにより、LFGKの配列は、2つのタンパク質に存在することが証明されている。精製天然タンパク質(Moreau et al., 1988)から決定されたウサギリパーゼのポリペプチド配列においては、最初の3つの残基、L、F、およびGが存在せず、RGLの22アミノ酸のシグナルペプチドの部分を形成している。その結果、これらの3つの共通するアミノ酸を欠いたウサギ胃リパーゼのシグナルペプチドを、イヌ胃リパーゼの成熟タンパク質配列と融合させた。そのポリペプチド配列は、以下の19アミノ酸からなる:MWVLFMVAALLSALGTTHG。
【0158】
成熟DGLタンパク質のポリペプチドLeu-Phe-Gly-Lys(最初の4アミノ酸)をコードする配列を抑制するために、プラスミドpBIOC22を、全体的にはBglIIにより、部分的にはHindIIIにより、消化させた。この配列を、成熟DGLタンパク質の最初の4コドンのそれと融合した、19アミノ酸 のウサギ胃リパーゼのシグナルペプチドRGLSPをコードする配列(ATG TGG GTG CTT TTC ATG GTG GCA GCT TTG CTA TCT GCA CTT GGA ACT ACA CAT GGT)と置換した(「RGLSP−成熟DGLの最初の4コドン」)。配列、「RGLSP−成熟DGLの最初の4コドン」を、プラスミドpJO101を用いたPCRにより、2個の以下のオリゴデオキシヌクレオチド、5’aggagatctcaacaATG TGG GTG CTT TTC ATG GTG 3’および5’G ATG AAG CTT TCC AAA CAA ACC ATG TGT AGT TCC AAG TG 3’により、段落Iに上述したPCR増幅のプロトコールにしたがって、増幅した。BglIIおよびHindIIIによる二重酵素消化の後、PCR増幅に由来するDNAフラグメントを、2%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、そしてBglIIおよびHindIIIにより二重に消化させ、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC22のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター100ng、および上述したPCR増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含有する培地で選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持されたいくつかのクローンのプラスミドDNAを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。RGLSPおよび成熟DGLの配列を、そのオープンリーディングフレームを保持しながら(つまり、これらが独自のオープンリーディングフレームを構成するように)、クローニングした。RGLSPの配列と成熟DGLの配列の間の開裂配列は、Gly-Leuである。得られたプラスミドを、pBIOC40と呼ぶことにした。pBIOC40から出発して、RGLSPS−DGLの配列を有するBglII-XbaIフラグメントを、BglIIおよびXbaIによる二重酵素消化、0.8%アガロースゲルによる電気泳動による精製、電気溶出(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿、そして乾燥により単離した。次に、このDNAフラグメントを、製造業者の指示にしたがってKlenow酵素で処理し、そしてHindIII部位において消化し、Klenowで処理し、製造業者の指示にしたがって、ウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化しておいたpBIOC21のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、および上述したRGLSP−DGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlを含む培地で選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたクローンを、pBIOC41と呼ぶことにした。組換えタンパク質RGLSP−DGLをコードするフラグメントのヌクレオチド配列は、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。バイナリーベクターpBIOC41のプラスミドDNAを、Holsters et al., (1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接形質転換により、導入した。保持されたクローンの有効性を、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0159】
I−B)組換えDGLをコードし、トマトにおける発現を可能とするキメラ遺伝子の構築
ここで使用する構築物は、タバコの遺伝的形質転換に使用したものと同じであり、つまりプラスミドpBIOC25、pBIOC26、およびpBIOC41である。
【0160】
II.イヌ胃リパーゼの組換えタンパク質をコードし、アブラナ種子における発現を可能とするキメラ遺伝子の構築
a)プロモーターpCRUを含有するバイナリープラスミドpBIOC28の構築
アブラナ種子におけるイヌ胃リパーゼ(DGL)の発現には、以下の調節配列の間に、DGLをコードするcDNAの挿入が必要であった;
1.種子の貯蔵タンパク質、ラディッシュのクルシフェリンA(Cruciferin A)(Depigny-This et al.,1992)の遺伝子の5’非コード領域に対応し、種子における特異的な発現を可能とするプロモーターpCRU;
2.転写終結配列である二本鎖環状DNAのターミネーターpolyA 35S(カリフラワーモザイクウイルスの配列の3’非コード領域に対応する)(これは、転写物35Sを産生する)(Franck et al., 1980)
【0161】
pBIOC21に似ているが、プロモーターpd35Sが、プロモーターpCRUに置換されているバイナリープラスミドを得るために、プロモーターpCRUを含有する、「Klenowで処理されたEcoRI-BamHI」フラグメントを、pBI221(Depigny-This et al., 1992により販売)から誘導したプラスミド、pBI221-CRURSPを用いて単離した。プラスミドpBI221-CRURSPは、pBI221(Clontechにより販売)から、プロモーター35Sを、プロモーターpCRUで置換することによって、誘導する。
【0162】
プロモーターpCRUを有するフラグメント「Klenowで処理されたEcoRI-BamHI」は、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、そして次に、製造業者の指示にしたがってT4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)で処理し、BamHIで消化し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動で精製し、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化した、KpnIで消化したpJIT163(段落Iに記載されたような)のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、および上述した「Klenowで処理されたEcoRI-BamHI」のDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたプラスミドを、pBIOC27と呼ぶことにした。
【0163】
プロモーターpCRUとターミネーターpolyA 35Sからなる発現カセットを、pBIOC27を用い、XhoIによる全体的消化、続いてEcoRIによる部分的消化により単離した。これを、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、製造業者の指示にしたがってKlenow(New England Biolabs)で処理し、そしてEcoRI部位でKlenowで処理された、製造業者の指示にしたがってウシ腸アルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)で脱リン酸化されたpBIOC24のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、および上述したDNAフラグメントXho-I-EcoRI 200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlを含む培地で選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたプラスミドを、pBIOC28と呼ぶことにした。
【0164】
b.PPS−DGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC29の構築
pBIOC24を用いた、配列PPS−DGLを有するBglII-XbaIフラグメントの単離は、I−A−bに既に記載されている。Klenowで処理されたEcoRI部位で、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)で脱リン酸化した、pBIOC28のプラスミドDNAに、このフラグメントを連結した。連結は、上述の脱リン酸化ベクター20ng、およびPPS−DGLを含有するDNAフラグメントBglII-XbaI 200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlを含む培地で選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたプラスミドを、pBIOC29と呼ぶことにした。組換えタンパク質PPS−DGLのヌクレオチド配列は、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により確認した。バイナリーベクターpBIOC29のプラスミドDNAを、Holsters et al. (1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接形質転換により、導入した。保持されたクローンの有効性を、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0165】
c)pGEA1Dプロモーターを含有するバイナリープラスミドpBIOC90およびpBIOC91の構築
アブラナ種子におけるイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする動物遺伝子の発現には、以下の調節配列が必要であった:
1.種子の貯蔵タンパク質の遺伝子、Arabidopsis thaliana(Gaubier et al.,1993)のGEA1の5’非コード領域に対応し、種子における特異的発現を可能とするプロモーターpGEA1、;
2.転写終結配列である二本鎖環状DNAのターミネーターpolyA 35S(カリフラワーモザイクウイルスの配列の3’非コード領域に対応する)(これは、転写物35Sを産生する)(Franck et al., 1980)。
【0166】
pBIOC21に似ているが、プロモーターpd35Sが、プロモーターpGEA1Dに置換されている、バイナリープラスミドpBIOC90を得るために、プロモーターpGEA1を含有する、HindIII-Klenowで処理されたBamHIフラグメントを、プラスミドpGUS2-pGEA1を用いて単離した。pBI221から、プロモーターp35SをプロモーターpGEA1で置換することによって誘導されたクローンpGUS-2-pGEA1は、フレーム中に、2つのATGを含んでいる:遺伝子GEA1(Em2)のATGと、gus遺伝子のATGである。GEA1遺伝子のATGを、破壊した。次に、クローンpGUS-2-pGEA1のGEA1遺伝子のSalI部位と、ATGから上流にある配列の間に含まれるDNAフラグメントを、2種類のオリゴヌクレオチド(5’CAAACGTGTACAATAGCCC 3’および5’CCCGGGGATCCTTTTTTG3’)を用いてPCRにより増幅した。ハイブリダイゼーション温度は、調節した。PCRにより増幅したフラグメントを、SalIおよびBamHIで消化し、2%アガロースゲルによる電気泳動で精製し、電気溶出し(Sambrook et al. 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、そしてSalIおよびBamHIにより二重消化し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al.1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥しておいたpGUS-2-GEA1のプラスミドDNAに連結した。連結は、ベクター100ng、および上述したPCR増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持された特定のクローンを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。得られたクローンを、pGUS-2-pGEA1Dと呼ぶことにした。
【0167】
pGUS-2-pGEA1Dから単離し、製造業者(Biolabs)の指示にしたがってKlenow処理した、プロモーターpGEA1Dを有する、HindIII-BamHIフラグメントを、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al. 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、そして製造業者の指示にしたがって酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)で処理したKpnIおよびHINDIII部位でpBIOC21のプラスミドDNAに連結した。連結は、脱リン酸化したpBIOC21 20ng、および上述したXhoI-EcoRI DNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたプラスミドを、pBIOC90と呼ぶことにした。
【0168】
バイナリープラスミドpBIOC91を得るために、pBSII-pGEA1Dより単離した発現カセット「pGEA1D-tNOS」を、バイナリープラスミドpSCV1.2に導入した。これ自体は、(Fromm et al. (1986))に記載の発現カセット「p35S-nptII-tNOS」を有するHindIIIフラグメントを、Edwards G.A.によって1990年に構築されたpSCV1のHindIII部位に、通常のクローニング操作の後にクローニングすることによって得られた。
【0169】
プラスミドpBSII-pGEA1Dは、2つの段階で得られた;
−一方では、製造業者の指示にしたがって酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)で処理し、精製した、Agrobacterium tumefaciensのtNOS(ノパリンシンターゼの遺伝子のターミネーター)を有するSacI-EcoRIフラグメントを、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)によって脱リン酸化したpBSIISK+(Stratageneにより販売)のEcoRV部位にクローニングした。連結は、脱リン酸化ベクター20ng、および上述のtNOSを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持された特定のクローンを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により確認した。得られたプラスミドを、pBSII-tNOSと呼ぶことにした。
【0170】
−他方、酵素Klenowで処理したHindIIIおよびBamHIで二重消化し、精製したpGEA1Dを有するフラグメントを、プラスミドpBSII-tNOSの「Klenowで処理したXbaIおよびBamHI」部位においてクローニングした。連結は、上述のベクター100ng、および上述のDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたプラスミドを、pBSII-pGEA1Dと呼ぶことにした。
【0171】
次に、Klenowで処理されたXbaI-HindIIIフラグメントによって保持されている発現カセット「pGEA1D-tNOS」を、製造業者の指示にしたがってウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)によって脱リン酸化したpSCV1.2のSmaI部位にクローニングした。連結は、脱リン酸化pSCV1.2 20ng、および発現カセット「pGEA1D-tNOS」を有するフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたプラスミドを、pBIOC91と呼ぶことにした。
【0172】
d)pGEA6Dプロモーターを含有するバイナリープラスミドpBIOC92の構築
アブラナ種子におけるイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする動物遺伝子の発現には、以下の調節配列が必要であった;
1.種子の貯蔵タンパク質の遺伝子、Arabidopsis thaliana (Gaubier et al.,1993)のGEA6の5’非コード領域に対応し、種子における特異的発現を可能とするプロモーターpGEA6;
2.転写終結配列である二本鎖環状DNAのターミネーターpolyA 35S(カリフラワーモザイクウイルスの配列の3’非コード領域に対応する)(これは、転写物35Sを産生する)(Franck et al., 1980)。
【0173】
pBIOC21に似ているが、プロモーターpd35Sが、プロモーターpGEA6Dで置換されている、バイナリープラスミドpBIOC92を得るために、プロモーターpGEA6を含有する、フラグメントEcoRI-Klenow処理されたBamHIを、プラスミドpGUS2-pGEA6を用いて単離した。pUC18から誘導されたクローンpGUS-2-pGEA6は、相内に2つのATGを有している:GEA6遺伝子(Em6)のATG、およびgus遺伝子のATG。GEA6遺伝子のATGを破壊した。次に、クローンpGUS-2-pGEA6のGEA6遺伝子の、AccI部位とATGの上流の配列との間に含まれるDNAフラグメントを、2種類のオリゴヌクレオチド(5’AAGTACGGCCACTACCACG3’および5’CCCGGGGATCCTGGCTC3’)を用いて、PCRにより増幅した。ハイブリダイゼーション温度は、調節した。
【0174】
PCRにより増幅したフラグメントは、AccIおよびBamHIで消化し、2%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1090)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、そしてAccIおよびBamHIにより二重消化し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al. 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥しておいたpGUS-2-GEA6のプラスミドDNAに連結した。連結は、上述のベクター100ng、および上述したPCR増幅に由来する消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。保持された特定のクローンを、T7TM配列決定キット(Pharmacia社販売)による配列決定により、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により確認した。得られたクローンを、pGUS-2-pGEA6Dと呼ぶことにした。
【0175】
pGUS-1-pGEA6Dから単離されたプロモーターpGEA6Dを有し、製造業者(Biolabs)の指示にしたがってKlenow処理されたEcoRI-BamHIフラグメントを、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、そして改変pBIOC21のプラスミドDNAに、Klenow処理されたXhoI部位において連結した。改変したプラスミドpBIOC21は、プロモーターpd35Sを有するフラグメントを除去するとともにそれを、pBSIISK+のKpnI-XhoI-SalI-ClaL-HindIII-BamHI-SmaI-EcoRI-EcoRV部位の化合物ポリリンカーを有するKpnI-EcoRVフラグメントと置換するため、pBIOC21を、Klenow処理されたHindIIIおよびKpnIにより二重消化することによって得たものである。
【0176】
連結は、脱リン酸化した改変pBIOC21 20ng、および上述したEcoRI-BamHI DNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにしておいた細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択した、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)で抽出し、制限酵素による酵素消化で分析した。得られたプラスミドを、pBIOC92と呼ぶことにした。
【0177】
e)RGLSP−DGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC93、pBIOC94、pBIOC95、pBIOC96、およびpBIOC97の構築
プラスミドpBIOC40は、上述した。このプラスミドは、配列RGLSP−DGLを有するフラグメントBglII-XbaIを含む。
【0178】
このフラグメントを、BglIIおよびXbaIによる二重酵素消化により単離し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、Klenowで処理し、そしてKlenow処理したEcoRIで消化し、脱リン酸化した(上述の)pBIOC28に連結して、pBIOC93を得るか;、あるいはKlenow処理したEcoRIで消化し、脱リン酸化したpBIOC90に連結して、pBIOC94を得るか;あるいはSmaIで消化し、脱リン酸化したpBIOC91に連結して、pBIOC95を得るか、あるいはKlenow処理したHindIIIにより消化し、脱リン酸化したpBIOC92に連結して、pBIOC96を得た。
【0179】
プラスミドpBIOC97は、発現カセット「pGEA6D-RGLSP-DGL-t35S」を有するフラグメントKpnI-EcoRVのクローニングにより得られるが、この発現カセットは、酵素T4DNAポリメラーゼで処理し、0.8%アガロースゲルによる電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコールによる沈殿に付し、乾燥し、そしてSmaIにより消化し、脱リン酸化したpSCV1.2に連結したものである。発現カセット「pGEA6D-RGLSP-DGL-t35S」は、pBIOC92に由来する。
【0180】
III.ヒト胃リパーゼ組換えタンパク質をコードし、例えばタバコ葉および種子中に構造的発現を可能にするキメラ遺伝子の構築
a)キメラプロモーターSUPER-PROMOTOR pSPを含有するバイナリープラスミドpBIOC82の構築
ヒト胃リパーゼ(HGL)をコードする遺伝子のタバコ葉における発現には、以下の調節配列を必要とした;
1.キメラプロモーターSUPER-PROMOTOR(pSP;PCT/US94/12946)。これは、Agrobacterium tumefaciensのオクトピンシンターゼ遺伝子のプロモーターの3つの転写活性要素、Agrobacterium tumefaciensのマンノピンシンターゼ遺伝子のプロモーターの転写活性要素、およびマンノピンシンターゼプロモーターの融合により構築される。
2.カリフラワーモザクウイルス二本鎖環状DNAの配列の3’非コード領域に対応し、転写物35S を生成する、転写終結配列ターミネーターpolyA 35S(Franck et al., 1980)
【0181】
pBIOC21と同様なプラスミドであるが、プロモーターpd35SがプロモーターpSPで置換されているバイナリープラスミドを得るためには、プロモーターpSPを含有するKlenow酵素処理したpvuII-SalIフラグメントを、pBISNIプラスミド(PCT/US94/12946)を用いて単離し、1%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、アルコールで沈殿させ、乾燥して、KpnIおよびEcoRIで二重に消化し、DNAT4ポリメラーゼ処理し、製造者の指示にしたがって仔牛腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により脱リン酸化したプラスミドDNAであるpBIOC81に連結した。プラスミドpBIOC81はXbaI部位を除去したpBIOC21に相当する。これを行うためには、プラスミドpBIOC21をXbaIで消化し、次いでKlenow酵素処理に付し、T4DNAリガーゼの作用により連結した。
【0182】
連結は、上記の脱リン酸したベクター20ngおよび、上記のpSPを有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよびT4DNAリガーゼ酵素(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを、形質転換した(Hanahan,1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素による酵素消化によって分析した。得られたプラスミドをpBIOC82と呼ぶことにした。
【0183】
ヒト胃リパーゼ(HGL)は、天然には、Bodmer et al.,1987の刊行物に記載された前駆体の形で合成される。成熟HGLタンパク質は、379個のアミノ酸から構成されている。そのシグナルペプチド(HGLSP)は、19個のアミノ酸からなる。HGLSPとHGLの間の制限部位は、Gly-Leuである。
【0184】
HGLの前駆体をコードする配列は、HGLSP−HGLを含有するpBIOC85、HPLSP−HGLを含有するpBIOC87およびRGLSP−HGLを含有するpBIOC89の、バイナリープラスミドの構築に用いられ、この時、HGLをコードする配列は、その天然のシグナルペプチドHGLSP、ヒト膵臓リパーゼのシグナルペプチド(HPLSP;Giller et al., 1992)およびウサギ胃リパーゼシグナルペプチド(RGLSP;上記;欧州特許第92.403055.4号)をそれぞれコードする配列により先導される。
【0185】
HGLの前駆体をコードする配列は、PstIおよびDraIによる二重消化により単離され、0.8%アガロース上で電気泳動により精製され、電気溶出され(Sambrook et al., 1989)、1/10容量のPH4.8の3M酢酸ナトリウム、2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄して乾燥した。次いで、Stratagene社から販売されているpBSIISK+プラスミドのPstIおよびSpeI部位でクローン化した(製造会社の指示により、酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)の作用に付した)。連結は、ベクター100ngおよび上記のHGL前駆体をコードする配列を有しているDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間行った。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択し、得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素による酵素消化によって分析した。得られたプラスミドを、pBIOC83と呼ぶことにした。
【0186】
2つのオリゴデオキシヌクレオチド、すなわち5’aaactgcaggctcgag TTG TTT GGA AAA TTA CAT CCT GGA tcc CCT GAA GTG ACT ATG 3’(独自のPstI、XhoIおよびBamHI部位を有する)および5’AAT GGT GGT GCC CTG GGA ATG GCC AAC ATA GTG TAG CTG C 3’(独自のMscI部位をプラスミドpBIOC83中に有する)を用いたPCR法による部位特異的変異により、9番目と10番目のコドンにそれまで存在しなかったBamHI部位を導入することにより、成熟したHGLをコードする配列を改変した。
【0187】
PstI-MscIフラグメントのPCR増幅は、10倍濃縮TaqDNAポリメラーゼ緩衝液(KCl 500M、Tris-HCl(pH9.0)100mMおよび1%Triton x100)10μl、25mMのMgCl26μl、10mMのdNTP(dATP,dCTP、dGTPおよびdTTP)3μl、上記の2つのオリゴデオキシ−ヌクレオチド各100pM、マトリックスDNA(ベクターpBIOC83)5ng、TagDNAポリメラーゼ(Promega)2.5Uおよびワセリン油2滴を含む反応媒質100μl中で実施した。DNAを、94℃で5分間変性させ、94℃での変性1分間、65℃でのハイブリダイゼーション1分間および72℃での伸長1分間から構成されるサイクルを30回繰り返し、次いで72℃での伸長を5分間継続した。このPCR反応は、Perkin Elmer Cetus社の「DNA Thermal Cycler」機により実施した。クロロホルムによる抽出によって油状物を除去した。反応媒質中に含まれるDNAフラグメントを、次いで1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥し、PstIおよびMscIの2つの制限酵素により消化した。PCR増幅により得たこの消化されたDNAフラグメントを、2%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出(Sambrook et al., 1989)し、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥して、次いで、PstIおよびMscIで2回消化し、0.8%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコールで沈殿させ、乾燥したプラスミドDNApBIOC83に連結した。連結は、ベクター100ngおよび上記のPCRによる増幅で得た、消化されたDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μl、および酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択されて得られたクローンのプラスミドDNAは、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。いくつかの保持されたクローンは、Pharmacia社から販売されているT7TM配列決定キットを用いてジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により配列分析することにより確認された。BamHI制限部位の導入によりHGLの遺伝コードが改変されることはない。実際、天然のHGL配列GGA AGC(Gly-Ser)は、GGA TCC(Gly-Ser)となった。得られたプラスミドをpBIOC84と呼ぶことにした。
【0188】
b)HGLSP−HGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC85の構築
HGLSP−HGL配列を含有するPstI-XbaIフラグメントを、PstIおよびXbaIによる二重の酵素消化によってpBIOC83から単離し、0.8%アガロースゲル上で電気泳動させ、電気溶出し(Sambrook et al.,1989)、アルコールで沈殿させて乾燥した。次いで、このDNAフラグメントを酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)により、製造会社の指示にしたがって処理し、EcoRI部位で消化され、Klenow酵素(Biolabs)で処理して、仔牛腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)により、製造会社の指示にしたがって脱リン酸化したpBIOC82のプラスミドDNAに連結した。連結は、上記した脱リン酸したベクター20ngおよび、上記のHGLSP−HGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択されて得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素による酵素消化により分析した。得られたクローンをpBIOC85と呼ぶことにした。組換えタンパク質HGLSP−HGLをコードするこのフラグメントの核酸配列は、Pharmacia社から販売されている、T7TM配列決定キットにより、ジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)で配列決定して確認された。HGLSP配列と成熟HGL配列との間の制限配列は、Gly-Leuである。バイナリーベクターpBIOC85のプラスミドDNAを、Holsters et al.(1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接的形質転換により導入した。保持されたクローンの有効性は、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認された。
【0189】
c)HPLSP−HGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC86の構築
シグナルペプチドHGLSPおよび成熟HGLタンパク質の最初の8個のアミノ酸(Leu-Phe-Gly-Lys-Leu-His-Pro-Gly)をコードする配列を抑制するため、プラスミドpBIOC84を、PstIおよびBamHIにより二重消化した。この配列を、成熟HGLタンパク質の最初の8コドンをコードする配列に融合させた16アミノ酸のシグナルペプチドHPLSP(ATG CTG CCA CTT TGG ACT CTT TCA CTG CTG CTG GGA GCA GTA GCA GGA)をコードする配列により置換した(「HPLSP−成熟HGLの最初の8コドン」)。配列「HPLSP−成熟HGLの最初の8コドン」は、マトリックス5’aaactgcaggctcgagaacaATG CTG CCA CTT TGG ACT CTT TCA CTG CTG CTG GGA GCA GTA GCA GGA TTG TTT GGA AAA TTA CAT CCT GGA tcc CCT G 3’から、5’aaactgcaggctcgagaacaATG C 3’および5’C AGG gga TCC AGG ATG TAA TTT TCC 3’の2つのオリゴデオキシヌクレオチドを用いて以前に記載されたPCR増幅プロトコルにしたがい、PCRにより増幅された(上記段落I参照)。ハイブリダイゼーション温度は調整した。PstIおよびBamHIによる二重の酵素消化の後、PCR増幅により得られたこのDNAフラグメントを2%アガロースゲル上で電気泳動して精製し、電気溶出し(Sambrook et al. 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥して、次いで、PstIおよびBamHIで2重消化し、0.8%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出(Sambrook et al.,1989)し、アルコールで沈殿させ、乾燥したプラスミドDNA pBIOC84に連結した。連結は、ベクター100ngおよび上記したPCR増幅により得られた消化DNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、酵素10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5 αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。ある種の保持されたクローンは、Pharmacia社から販売されているT7TM配列決定キットを用いてジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により配列を確認した。HPLSPおよび成熟HGLの配列を、これらのオープンリーディングフレームを保持しつつクローン化した(すなわち、それらが独自のオープンリーディングフレームを構築するように)。HPLSP配列と成熟HGL配列との間の制限配列は、Gly-Leuである。得られたプラスミドをpBIOC86と呼ぶことにした。
【0190】
HPLSP−HGL配列を含有しているPstI-XbaIフラグメントを、BIOC86から、PstIおよびXbaIによる二重の酵素消化により単離し、0.8%アガロースゲル上の電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥した。次いで、このDNAフラグメントを酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)により製造会社の指示にしたがって処理して、EcoRI部位で消化され、Klenow酵素(Biolabsb)により処理され、製造会社の指示どおりにウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)によって脱リン酸化されたプラスミドDNAであるpBIOC82に連結した。連結は、上記の脱リン酸化したベクター20ngおよび上記したHPLSP−HGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)の存在下、14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlを含有する媒質中で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。得られたクローンをpBIOC87と呼ぶことにした。組換えタンパク質HPLSP−HGLをコードするフラグメントの核酸配列は、Pharmacia社から販売されているT7TM配列決定キットを用いてジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により配列を確認した。バイナリーベクターpBIOC87のプラスミドDNAを、Holsters et al. (1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接的形質転換により導入した。保持されたクローンの有効性は、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0191】
d)RGLSP−HGLを含有するバイナリープラスミドpBIOC89の構築
シグナルペプチドHGLSPおよび成熟HGLタンパク質の最初の8個のアミノ酸(Leu-Phe-Gly-Lys-Leu-His-Pro-Gly)をコードする配列を抑制するため、プラスミドpBIOC84を、PstIおよびBamHIにより二重消化した。この配列を、成熟HGLタンパク質の最初の8コドンに融合させた19アミノ酸のシグナルペプチドRGLSP(ATG TGG GTG CTT TTC ATG GTG GCA GCT TTG CTA TCT GCA CTT GGA ACT ACA CAT GGT)をコードする配列により置換した(「RGLSP−成熟HGLの最初の8コドン」)。配列「RGLSP−成熟HGLの最初の8コドン」は、上記のPCR増幅プロトコールにしたがって、マトリックス5’aaactgcaggctcgagaacATG TGG GTG CTT TTC ATG GTG GCA GCT TTG CTA TCT GCA CTT GGA ACT ACA CAT GGT TTG TTT GGA AAA TTA CAT CCT GGA tcc CCT G 3’から、5’aaactgcaggctcgagaacaATG TGG 3’および5’C AGG gga TCC AGG ATG TAA TTT TCC 3’の2つのオリゴデオキシヌクレオチドを用いてPCRにより増幅された(上記段落I参照)。ハイブリダイゼーション温度は調整した。PstIおよびBamHIによる二重の酵素消化の後、PCR増幅により得られたこのDNAフラグメントを2%アガロースゲル上で電気泳動して精製し、電気溶出し(Sambrook et al. 1989)、1/10容量の3M酢酸ナトリウム(pH4.8)および2.5容量の無水エタノールの存在下、−80℃で30分間沈殿させ、12,000gで30分間遠心分離し、70%エタノールで洗浄し、乾燥して、次いで、PstIおよびBamHIで2回消化し、0.8%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出(Sambrook et al.,1989)し、アルコールで沈殿させ、乾燥したプラスミドDNAであるpBIOC84に連結した。連結は、ベクター100ngおよび上記したPCR増幅により得られた消化DNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlで選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。ある種の保持されたクローンは、Pharmacia社から販売されているT7TM配列決定キットを用いてジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al., 1977)により配列を確認した。RGLSPおよび成熟HGLの配列を、これらのオープンリーディングフレームを保持しつつクローン化した(すなわち、それらが独自のオープンリーディングフレームを構築するように)。配列RGLSPと成熟HGLとの間の制限配列は、Gly-Leuである。得られたプラスミドをpBIOC88と呼ぶことにした。
【0192】
RGLSP−HGL配列を含有しているPstI-XbaIフラグメントを、pBIOC88から、PstIおよびXbaIによる二重の酵素消化により単離し、0.8%アガロースゲル上の電気泳動により精製し、電気溶出し(Sambrook et al., 1989)、アルコールによる沈殿に付し、乾燥した。次いで、このDNAフラグメントを酵素T4DNAポリメラーゼ(Biolabs)により製造会社の指示にしたがって処理して、XbaI部位で消化され、Klenow酵素(Biolabs)により処理され、製造会社の指示どおりにウシ腸のアルカリホスファターゼ酵素(Boehringer Mannheim)によって脱リン酸化されたプラスミドDNAであるpBIOC82に連結した。連結は、上記の脱リン酸化したベクター20ngおよび上記のRGLSP−HGLを含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl 中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下で14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。テトラサイクリン12μg/mlで選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。得られたクローンをpBIOC89と呼ぶことにした。組換えタンパク質RGLSP−HGLをコードするフラグメントの核酸配列は、Pharmacia社から販売されているT7TM配列決定キットを用いてジデオキシヌクレオチド法(Sanger et al.,1977)により配列を確認した。バイナリーベクターpBIOC89のプラスミドDNAを、Holsters et al. (1978)の方法にしたがって、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株に直接的形質転換により導入した。保持されたクローンの有効性は、導入されたプラスミドDNAの酵素消化により確認した。
【0193】
IV.イヌ胃リパーゼの組換えタンパク質をコードし、トウモロコシ種子における発現を可能にするキメラ遺伝子の構築
a)RGLSP−DGLを含有し、トウモロコシ種子において構成的発現を可能にするプラスミドpBIOC98およびpBIOC99の構築
イヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする動物遺伝子のトウモロコシ種子における構成的発現には、以下の調節配列が必要であった;
1.構成的発現を可能にする2つのプロモーターのうちの一つ:
−McElroy et al.(1991)により記載された、プラスミドpAct1-F4中に含有される、コメのアクチンイントロンが続いているコメのアクチンプロモーター(pAR-IAR);
−CaMV(カリフラワーモザイクウイルス)の二重構造プロモーター35S(pd35S。これは、天然35SプロモーターのTATAエレメントから上流に位置する、転写を活性化する配列の重複に相当する(Kay et al., 1987);
2.2つのターミネーターのうちの一つ:
−転写終結配列であるターミネーターpolyA 35S、これは、カリフラワーモザイクウイルスの二本鎖環状DNAの配列の3’非コード領域に相当し、転写物35Sを生成する(Franck et al., 1980);
−転写終結配列であるターミネーターpolyA NOS、これは、Agrobacterium tumefaciensノパリン(nopaline)株のTiプラスミドのノパリンシンターゼの遺伝子の3’非コード領域に相当する(Depecker et al., 1982)。
【0194】
RGLSP−DGLをコードする配列がpAR-IARのコントロールの下に置かれているプラスミドpBIOC98は、RGLSP−DGLをコードする配列を、pBSII-pAR-IAR-tNOSの「NcoIおよびSalI」部位に有しているBglII-XbaIフラグメントをクローン化することにより得られる。
【0195】
RGLSP−DGLをコードする配列を含有するBglII-XBaIフラグメントを、BglIIおよびXbaIにより二重に酵素消化してpBIOC40(上記)から単離し、0.8%アガロースゲル上で電気泳動により精製し、電気溶出し、アルコールで沈殿、乾燥し、次いでKlenow酵素により処理した。プラスミドpBSII-pAR-IAR-tNOSをSalIおよびNcoIで二重消化し、精製し、Mung Bean Nucleaseb酵素(Biolabs)で処理し、製造会社の指示にしたがって仔牛腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim)で脱リン酸化した。連結は、脱リン酸化したベクター20ng、および上記RGLSP−DGLをコードする配列を含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたプラスミドDNAのクローンを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。得られたプラスミドをpBIOC98と呼ぶことにした。
【0196】
プラスミドpAct1-F4から単離された「gus遺伝子をコードする配列のpAR-IAR-start」に対応する配列を含有するSnaBI-KpnIフラグメントのpBSII-tNOSの「Klenow酵素およびKpnIにより処理されたEco01091」部位でのクローニングから、pBSII-pAR-IAR-tNOSプラスミドが得られた。連結は、ベクター100ngおよび上記のDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。
【0197】
Clontech社から販売されているpBI121から単離されたtNOS配列を有するSacI-EcoRIフラグメントを、SacIおよびEcoRVによる二重酵素消化により、Stratagene社から販売されているpBSIISK+の脱リン酸化部位EcoRVでクローニングし、2%アガロースゲル上の電気泳動により精製し、そしてT4DNAポリメラーゼ酵素によって処理することによりプラスミドpBSII-tNOSを得た。連結は、脱リン酸化ベクター20ngおよび上記のtNOS配列を含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000の2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。
【0198】
RGLSP−DGLをコードする配列がpd35Sのコントロール下に置かれているプラスミドpBIOC99は、プラスミドpBSII-t35Sの「KpnIおよびBamHI」部位における、上記のpBIOC41から単離された「pd35S-RGLSP-DGL」に対応する配列を含有するKpnI-BamHIフラグメントのクローニングにより得られる。連結は、ベクター100ng、および上記DNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNA リガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間消化して実施した。予め受容能を持つようにした細菌Eschericha coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。
【0199】
プラスミドpBSII-t35Sは、Stratagen社から販売されているプラスミドpBSIISK+の、Klenow酵素処理した脱リン酸化部位SpeIにおいて、pJITI63(上記)から単離されたt35S配列を含有するSmaI-EcoRVフラグメントをSmaIおよびEcoRVによる二重の酵素消化によってクローニングし、2%アガロースゲル上での電気泳動により精製することにより得られる。連結は、脱リン酸化ベクター20ng、および上記のt35S配列を含有するDNAフラグメント200ngにより、反応媒質20μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)2μl、50%ポリエチレングリコール8000 2μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)5Uの存在下、14℃で16時間実施した。予め受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。
【0200】
b)それぞれRGLSP−DGLおよびRGLSP−DGL−KDELを含有し、トウモロコシ種子胚乳における発現を可能にするpBIOC100およびpBIOC101の構築
トウモロコシ種子胚乳におけるイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードする動物遺伝子の発現には、以下の調節配列が必要である;
1.Reina et al.,1990により記載されたプラスミドp γ63中に含有されるトウモロコシγゼインの遺伝子プロモーター(pγzein)。プラスミドpγ63は、そのHindIIIおよびEcoRI部位の間にClontech社から販売されているpBI221の発現カセット「p35S-gus-tNOS]を有している、プラスミドpUC18のHindIIIおよびXbaI部位においてpγzeinをクローニングすることにより得られる。これは、トウモロコシ種子胚乳における発現を可能にする。
2.Agrobacterium tumefaciensノパリン株のTiプラスミドのノパリンシンターゼ遺伝子の3’非コード領域に相当する、転写終結配列ターミネーターpolyA NOS(Depicker et al.,1982)
【0201】
RGLSP−DGLをコードする配列がpγzeinの調節の下に置かれているプラスミドpBIOC100は、「酵素T4DNAポリメラーゼおよびBamHIにより処理されたプラスミドpγ63のSacI」の部位で、pBIOC40(上記)から単離された「Klenow酵素により処理されたXbaI-BglII」フラグメントをクローニングすることにより、得られる。連結は、ベクター100ngおよび上記したDNAフラグメント50ngにより、反応媒質10μl中、10倍濃縮T4DNAリガーゼ緩衝液(Amersham)1μlおよび酵素T4DNAリガーゼ(Amersham)2.5Uの存在下、14℃で16時間実施した。あらかじめ受容能を持つようにした細菌Escherichia coli DH5αを形質転換した(Hanahan, 1983)。アンピシリン50μg/mlを含む培地で選択して得られたクローンのプラスミドDNAを、アルカリ溶解法(Birnboim and Doly, 1979)により抽出し、制限酵素を用いた酵素消化により分析した。得られたプラスミドをpBIOC100と呼ぶことにした。
【0202】
プラスミドpBIOC101は、pBIOC100のNcoI-AflIIフラグメントを、上記した方法によりPCR増幅して得られた停止コドンの前に位置するテトラペプチドKDEL(小胞体内へ指向させる)をコードする配列を含有するNcoI-AflIIフラグメントにより置き換えることにより得られる。この反応の間に用いられる2つのオリゴデオキシヌクレオチドは:5’ AAT CAC TTG GAC TTT ATC TGG Gcc atg gAT GCC 3’(独自のNcoI部位)および、5’ATT ctt aag AAA CTT TAT TGC CAA ATG TTT GAA CGA TCG GGG AAA TTC GAC GCG TCT AGA ACT ATA GCT CAT CCT TAT TAT CTG TTC CCA TCA TGG 3’(KDELおよび独自のAflII部位をコードする配列)である。ハイブリダイゼーションの温度は70℃であった。クローニングを前記のようにして実施した。
【0203】
V.トランスジェニックアブラナ植物の生産の例
アブラナの一種(Brassica napusのWESTAR種またはLimagrain株)の種子を、Domestosの15%溶液中で40分間消毒する。滅菌水で4回洗浄した後、直径7cm、高さ10cmの鉢1個あたり種子20個の量で、5g/lの寒天ゲルで固化した30g/lのショ糖を含むMurashigeおよびSkoogの無機培地(Sigma M5519)上で種子を発芽させる。これらの鉢を、80μEm-2S-1前後の光度下、16時間/8時間の光周期で26℃の栽培室内に置く。
【0204】
発芽の5日後に、子葉節の約1mm上方でそれぞれの葉柄を切断することによって、無菌条件下で子葉を除去する。
【0205】
平行して、プラスミドpBIOC29(またはpBIOC25)を有する、すなわち、指令シグナルPPS(またはPS)をコードする配列に融合させた、イヌ胃リパーゼをコードする配列をプロモーターpCRU(またはpd35S)の制御下で挿入したプラスミドpGAZEを有するAgrobacterium tumefaciensを、用いた株の選択に用い得る抗生物質を補った、50ml三角フラスコ内の細菌培地2YT[Sambrook et al.,1989]10ml中で28℃で36時間、前培養する。
【0206】
この前培養物を用いて、同じ条件下で調製した新たな細菌培養物を1%の量で播種する。14時間後、培養物を3,000×gで15分間遠心分離し、細菌を等量の液体発芽培地に溶かす。この懸濁液を、直径5cmのペトリ皿に、5ml/皿の量で分割する。
【0207】
こうして調製したアグロバクテリア液に、葉柄の切断端を数秒間浸漬し、次いで、葉柄を再生培地に数mm押し込む。この培地は、発芽培地と同じ塩基組成を有し、芽の新形成を促進する植物ホルモンであるベンジルアミノプリン(BAP)4mg/mlを加えてある。直径9cmのペトリ皿(Greiner 参照番号664102)で、1皿あたり10個の外植片(葉柄付きの子葉)を栽培する。
【0208】
発芽と同じ環境条件下での同時培養の2日後に、選択剤:45mg/lの硫酸カナマイシン(Sigma、参照番号K4000)、および制菌剤:クラブラン酸のカリウム塩1/6(重量比)とアモキシシリンのナトリウム塩(Augmentin、注射可)5/6との600mg/lの量での混合物を補った、前述の培地を有するPhytatray box(Sigma、参照番号P1552)に、外植片を移植する。
【0209】
外植片は、3週間の間隔でのその後2回の機会に、同じ条件下の新たな培地に無菌条件下で移植する。
【0210】
2回か3回目の移植の終了時に出現した緑色の芽を外植片から分離し、前述のと同じであるがBAPを欠く培地を容れた、直径5cm、高さ10cmの透明な鉢で個別に栽培する。3週間栽培した後、形質転換した芽の茎を切断し、芽を新鮮な培地の鉢に移植する。3〜4週間の終りに、根は、苗木のフィトトロン内での順化を可能にするのに充分なまでに発育する。緑色でないか、または根付かなかった芽は除去する。次いで、これらの苗木を、水で飽和させた土壌(Standard NF、U44551:褐色ピート40%、ふるいにかけたヒース30%、および砂30%)を満たした側面7cmの大鉢に移植する。このフィトトロン(温度21℃、光周期16時間/8時間、および相対湿度84%)での順化の2週間後に、遅効性肥料(Osmocote、土壌1lあたり4gの量で)で強化した同じ土壌を満たした、直径12cmの鉢に苗木を再移植し、次いで、1日2回水を2分間撒水する18℃に調節した温室(S2級)に移す。
【0211】
開花を見たときは、他家受精を防ぐように、これらに袋(Crispac、参照番号SM 570y、300mm×700mm)をかける。
【0212】
莢が成熟に達したとき、これらを採集、乾燥し、次いで破砕する。得られた種子は、生化学的活性の分析に用いる。トランスジェニックな子孫を、100〜150mg/lの量(遺伝子型による)で硫酸カナマイシンを含有する培地での発芽によって選択する。作業条件は、上記のそれと同じであるが、ガラス管内で1管あたり1個の種子として発芽を実施する点が異なる。最初の3週間に二次根を発生した苗木のみを、フィトトロンで順化させてから温室へと移す。
【0213】
VI.トランスジェニックなナス科の植物の生産の例
a)トランスジェニックなタバコ植物の生産
形質転換の実験に用いるタバコ植物(Nicotiana tabacum var.XanthiNCおよびPBD6)を、MurashigeおよびSkoog (1962)の基礎培地上でin vitroで栽培するが、これにはGamborg et al.(1968)によるビタミン類(Sigma、参照番号M0404)、20g/lの量のショ糖および8g/lの量の寒天(Merck)を加えておく。培地のpHを灰汁溶液で5.8に調整してから、120℃で20分間オートクレーブにかける。30日ごとに節間で切断することによって、タバコの苗木をこの増殖培地MS20に移植する。
【0214】
in vitro培養はすべて、下記に規定した条件下で気候的に制御した室内で実施する:
−30μEm-2S-1の光度;16時間の光周期;
−日中26℃、夜間24℃の温度周期。
【0215】
用いた形質転換の手法は、Horsch et al.(1985)のそれに由来する。
【0216】
プラスミドpBIOC29、pBIOC26またはpBIOC25を有するAgrobacterium tumefaciens LBA4404株は、撹拌下、28℃で48時間、LB培地[Sambrook et al.,1989]中で前培養するが、これには適切な抗生物質(リファンピシンおよびテトラサイクリン)を添加しておく。次いで、この前培養物を同じ培地で50倍に希釈し、同じ条件下で培養する。一晩の後、培養物を遠心分離し(10分、3,000×g)、細菌を等量の液体培地MS30(ショ糖30g/l)に溶かし、この懸濁液を10倍に希釈する。
【0217】
約1cm2の外植片を、上記の苗木の葉から切り出す。その後、細菌懸濁液に1時間接触させ、次いで、濾紙上で急速に乾燥させ、同時培養培地(固体のMS30)上に置く。
【0218】
2日後に、ペトリ皿の選択剤のカナマイシン(200mg/l)、制菌剤のオーグメンチン(Augmentin:400mg/l)、および芽の誘導に必要なホルモン類(BAP1mg/l、およびANA0.1mg/l)を含有する再生培地MS30上へと外植片を移す。2週間栽培した後、外植片を同じ培地に移植する。更に2週間後、カナマイシンおよびAugmentinを加えた培地MS20で構成される、ペトリ皿の発生培地上に芽を移植する。15日後、芽の半数を移植する。根付くのに約20日を要し、その終りには、苗木は、節間で切断することによってクローニングするか、温室に移植することができる。
【0219】
b)トランスジェニックトマト植物の生産
品種UC82Bのトマトの種子を、10%Domestosで15分間滅菌し、滅菌水で3回洗浄する。最後の洗浄は、撹拌下で10分間実施する。
【0220】
こうして滅菌した種子を、培地MSSV/2(Nitschによるビタミン類[ThomasおよびPratt、1981]、ショ糖30g/l、寒天(Merck)8g/lを加えたMurashigeおよびSkoog(1962、Sigma、参照番号M6899)/2の基礎培地、pH5.9)上で、気候制御した室内(30μEm-2S-1の光度、16時間/8時間の光周期、26℃)で、7または8日間発芽させる。
【0221】
用いた形質転換の手法は、Fillatti et al.(1987)のそれに由来する。
【0222】
プラスミドpBIOC25またはpBIOC26を有するAgrobacterium tumefaciens LBA4404株は、適切な抗生物質(リファンピシンおよびテトラサイクリン)を添加したLB培地で、撹拌下、28℃で24時間、前培養する。次いで、この前培養物を、同じ培地で50倍に希釈し、同じ条件下で一晩培養する。600nmでのODを測定し、アグロバクテリアを遠心分離し(10分間、3,000×g)、600nmで0.8のODを得るように液体培地KCMS[Fillatti et al.,1987による刊行物に記載]に溶かす。
【0223】
Fillatti et al,(1987)が記載したプロトコルのいくつかの段階では、技術的改良を用いた。
【0224】
外植片の前培養、および同時培養は、Fillatti et al,(1987)が記載したとおりに実施したが、培地KCMSは、アセトシリンゴン(200mM)で補強した点が異なる。
【0225】
洗浄培地2Zは、カルベニシリンに代えて500mg/lのセフォタキシムを加える点が異なる。用いた発生培地は、MurashigeおよびSkoogの基礎培地(Sigma、MS6899)からなり、これにNitschによるビタミン類、ショ糖20g/l、カナマイシン50mg/l、オーグメンチン200mg/l、ANA1mg/l、およびゼアチン0.5mg/lを加えてある。
【0226】
VII.トランスジェニックトウモロコシ植物の生産
a)遺伝的形質転換の標的としてのコウモロコシカルスの生産および利用
用いる方法が何であれ(エレクトロポレーション;Agrobacteria、微細繊維(microfibre)、粒子銃)、トウモロコシの遺伝的形質転換は、一般に、植物全体を再生できる能力を保持した、急速に分裂する未分化細胞の利用を必要とする。この種の細胞は、トウモロコシの胚のほぐしやすい(friable)カルス(タイプIIと呼ばれる)を包含する。
【0227】
これらのカルスは、遺伝子型H1IIの未成熟の胚からか(A188×B73)、またはArmstrongが記載した方法および培地で得られる[Malze Handbook; (1994) M. Freeling, V. Walbot, Eds.; pp. 665-671]。このようにして得られたカルスを、開始培地での15日ごとの連続移植によって増殖させ、そして維持する。
【0228】
次いで、Vain et al.が記載した方法[Plant Cell Tissue and Organ Culture (1989), 18:143-151]に従って、細胞のホルモンおよび浸透圧のバランスを変えることによって、これらのカルスから苗木を再生させる。次いで、これらの植物を温室内で順化させ、そこで、交配または自家受精させることができる。
【0229】
b)トウモロコシの遺伝的形質転換のための粒子銃の利用
先行段落は、形質転換に必要な細胞系の生産および再生を記載しているが;ここで、改変された遺伝子の、植物のゲノムへの安定した組込みを導く、遺伝的形質転換の方法を記載する。この方法は、J. Finerが記載したもの[Plant Cell Report (1992), 11:323-328]と同一の粒子銃の利用に依存し;標的細胞は、段落1に記載のカルスフラグメントである。表面積が10〜20mm2のこれらのフラグメントを、射撃の4時間前に、開始培地と同一の培地を容れたペトリ皿の中心に1皿あたり16個の割合で配置したが、これには0.2Mのマンニトールと0.2Mのソルビトールとを加えてある。導入しようとする遺伝子を有するプラスミドを、Qiagen(登録商標)カラムで、製造者の指示に従って精製する。次いで、Kleinが記載したプロトコル[Nature (1987), 327:70-73]に従って、タングステン(M10)の粒子表面に沈澱させる。こうして被覆した粒子を、J. Finerが記載した銃およびプロトコル[Plant Cell Report (1992), 11:323-328]によって、標的細胞に向けて発射する。
【0230】
次いで、こうして射撃したカルスの皿を、Scellofrais(登録商標)を用いて密閉し、次いで、暗所で27℃で培養する。最初の移植は24時間後に実施し、次いで、15日ごとに3カ月間、開始培地と同一であるが、用いた遺伝子に応じて変え得る種類および濃度の選択剤を加えた培地上で実施する(段落3を参照されたい)。用い得る選択剤は、一般に、一定の除草剤(Basta(登録商標)、Round up(登録商標))、または一定の抗生物質(ヒグロマイシン、カナマイシン)の活性化合物からなる。
【0231】
3ケ月後、ときにはそれより早期に、通常、そして大部分は、1コピーまたはそれ以上の選択遺伝子がその遺伝子プールに組み込まれた細胞の分裂から得られる細胞で構成される、その増殖が選択剤で阻害されないカルスが得られる。そのようなカルスが得られる頻度は、射撃した皿1枚あたり約0.8個のカルスである。
【0232】
これらのカルスを同定、個別化かつ増幅し、次いで、苗木を再生するように培養する(段落aを参照されたい)。形質転換しなかった細胞によるいかなる干渉も避けるため、これらの操作はすべて、選択剤を含有する培地上で実施する。
【0233】
こうして再生した植物を、温室内で順化させ、次いで栽培し、ここで交配または自家受精することができる。
【0234】
VIII.トランスジェニックタバコ植物でのイヌの胃リパーゼの発現の分析
a)プロトコル
温室内の植物から採集したタバコの葉からのリパーゼの抽出のプロトコルは、下記のとおりである:葉1g(初期重量:Fresh weight)を、液体窒素中で、次いで4℃で、1mMEDTAおよび10mMメルカプトエタノールを加えた25mM Tris-HCl緩衝液5ml、pH7.5(緩衝液A)、または1mMEDTA、10mMβ−メルカプトエタノール、0.2%Triton x-100および250mMNaClを加えた25mMグリシン−HCl緩衝液5ml(緩衝液B)中で摩砕する。直ちに、摩砕した全材料を、4℃で15分間、10,000×gで遠心分離する。
【0235】
タバコの種子については、緩衝液Bで、緩衝液4mlあたり種子0.1gの量で抽出を実施する。
【0236】
リパーゼ活性は、Gargouri et al.(1986)の滴定分析法によって、pH-STATを用いて測定するが、ここで用いる基質はトリブチリンである。トリブチリンの乳濁液(乳濁液30mlあたり4ml)は、胆汁塩(1.04g/l)、ウシアルブミン(0.1g/l)およびNaCl(9g/l)の存在下で渦流として調製する。分析は、リパーゼの作用下で遊離された酪酸の、37℃で5.5に調整したpHでの炭酸ナトリウムの溶液による中和を含む。1単位のリパーゼは、最適のpH条件下(5.5)、37℃で1分間に1μMの脂肪酸の遊離を生じる酵素の量に相当する。天然の(精製された)イヌ胃リパーゼは、タンパク質1mgあたり570単位の比活性を有する。リパーゼ活性は、摩砕した全材料、沈澱または遠心分離上清について測定することができる。
【0237】
遠心分離上清(緩衝液A)の総可溶性タンパク質の分析は、Bradford(1976)の方法によって実施する。
【0238】
遠心分離上清に対するサンドイッチELISA試験[Carriere et al.,1993]も、天然の抗DGLポリクローナル抗体の2集団を用いて実施する。第一の集団は、ヒト胃リパーゼと反応し、Affigel 10のカラムに接合したヒト胃リパーゼに対する全抗血清を用いて親和性によって精製しておいた、抗体を含む[Aoubala et al., 1993]。これらの抗体を用いて、ELISAプレートのウェルを1μg/mlの濃度で被覆する。第二の集団は、ヒトリパーゼを認識しない抗体を含む。次いでこれらを、Sepharoseのカラムで精製し、プロテインAに結合させ、次いでビオチンに結合させる。抗体の固着は、その酵素活性が基質のo−フェニレンジアミンを用いて立証される、ストレプトアビジン/ペルオキシダーゼ複合体という間接的手段によって検出する。得られた結果は、定性的な値であり、記号+および−を用いて記録する。抽出緩衝液にCHAPS型の界面活性剤(3−(3−コールアミドプロピル)ジメチル−アンモニオ−1−プロパンスルホネート(Sigma)を加えることによって、抽出の収率を向上させることができる。実際に、この場合は、上清での抽出収率は、約100%まで上昇する(表1を参照されたい)。
【0239】
【表2】

【0240】
b)植物シグナルペプチドによる発現;pBIOC25およびpBIOC26で形質転換したタバコの葉および種子に対する分析;ELISA試験
Xanthiの遺伝子型の98例のT0の植物(15〜20葉期)で得られた結果を表2に示す。分析はすべて、遠心分離前の葉または種子の摩砕混合物に対して実施した。各構築物について、測定した活性は、形質転換体により広範囲の変動性を示す。植物の約20%は、活性が皆無であるか、または検出するには弱過ぎる活性を有する。平均活性および最大活性を表2に示す。
【0241】
総タンパク質の量は、3構築物についてほぼ同じであって、平均が、葉ではFW(初期重量)1gあたり7および8mgであり、種子ではFW1gあたり34、31および38mgである。
【0242】
構築物pBIOC26で形質転換した葉での平均リパーゼ活性は、34U/g FW、すなわち総タンパク質については0.8%の発現である。種子では、平均活性は36U/g FW、すなわち0.2%である。形質転換体の一つで得られた最大活性は、146U/g FW(葉;発現2.5%)、および148U/g FW(種子;発現0.7%)である。
【0243】
構築物pBIOC25で形質転換した植物で分析した酵素活性も、同様である。葉での平均活性は、34U/g FW(発現0.8%)であり、最大活性は134U/g FW(総タンパク質の3%)である。種子では、平均活性は42U/g FW(0.3%)であり、最大活性は159U/g FW(1%)である。
【0244】
構築物pBIOC29で形質転換した植物については、葉では活性が全く検出されない(種子特異的プロモーター)。種子では、平均活性は12U/g FW(発現0.1%)であり、最大活性は137U/g FW(0.7%)である。
【0245】
同じ形質転換事象の葉および種子での発現は、概して、良好な相関関係を示す。
【0246】
ELISA試験の結果も、酵素活性の分析のそれと一致する。すなわちリパーゼ活性を有する植物は、ELISA試験で陽性の結果を与える。
【0247】
これらの同じ植物でその後得られた結果は、リパーゼ活性が植物の発生の過程で変異できることを示す。実際に、総タンパク質に関してその発現が12〜15葉期で3%であった植物は、その後の分析の際に6%の発現を示した(開花したより年長の植物)。
【0248】
【表3】

【0249】
FW:初期重量;最小:最小のものを発現する形質転換事象について得られた値;最大:最大のものを発現する形質転換事象について得られた値;n:分析した形質転換事象の数。
【0250】
b)RGLのシグナルペプチドによる発現;タバコの葉でのリパーゼ活性の分析
XanthiおよびpBD6の遺伝子型の44例のT0の植物(15〜20葉期)で得られた結果は、下記のとおりである:
分析はすべて、遠心分離前の葉の摩砕混合物に対して実施した。測定された活性は、形質転換体により広範囲の変動性を示す。植物の約20%は、活性が皆無であるか、または検出するには弱過ぎる活性を有する。構築物pBIOC41で形質転換した葉での平均リパーゼ活性は、遺伝子型Xanthiについては38U/g FWであり、遺伝子型PBD6については48U/g FWである。最大活性は、それぞれ152および226U/g FWである。
【0251】
IX.トランスジェニックトマト植物でのイヌ胃リパーゼの発現の分析
a)プロトコル
トマトの葉および果実からのリパーゼの抽出のプロトコルは、タバコの葉について記載したのと同様であるが、新鮮材料1gを緩衝液B4mlに溶かす点が異なる。リパーゼ活性は、タバコの葉について記載したとおりに測定する。
【0252】
b)トマトの果実での分析
一次形質転換体30個の果実を分析した。
【0253】
果実で分析したリパーゼ活性は、同じ形質転換体に対する果実に応じて変動性である。それは、試験した構築物(pBIOC25またはpBIOC26)とは無関係に、熟した果実については5U/g FW、未熟な果実については35U/g FWという平均である。
【0254】
果実の熟成の間に、活性が低下することに注目しなければならない。例えば、与えられた一次形質転換体について、リパーゼ活性は、直径が10mmの緑色の果実については132U/g FW、直径が33mmの赤−緑色の果実については44U/g FW、そして直径が45mmの赤色の果実については36U/g FWである。
【0255】
X.組換えDGLの「ウエスタン」型の免疫検出
a)トランスジェニックタバコ、およびアブラナの葉と種子とで発現したDGL
a.1)植物のシグナルペプチドによる発現;pBIOC25、pBIOC26およびpBIOC29によって形質転換したタバコ、ならびにアブラナの葉および種子での免疫検出
イヌ胃リパーゼについての「ウエスタン」型の免疫検出実験(「ウエスタンブロット」)[Renart and Sandoval, 1984]を、緩衝液Aおよび緩衝液Bで抽出したタバコの葉、ならびにタバコおよびアブラナの種子のタンパク質に対して実施した(上記の抽出プロトコルを参照されたい)。これらの実験を実施するために、抽出したタンパク質(サンプルあたり30μgの総タンパク質)を、初めに、Laemmli U.K.(1970)の手法に従って、12.5%の変性ポリアクリルアミドゲル上で分離し、次いで、ニトロセルロースメンブランに移す。モルモットで得られた抗イヌリパーゼポリクローナル抗体をプローブとして用い、アルカリホスファターゼで標識したモルモットの抗IgG抗体を用いて、検出を実施する。
【0256】
対照タンパク質は、天然のイヌ胃リパーゼであって、約50kDaの見かけ分子量での単一のバンドの形態で移動する(LC、図6)。イヌ胃リパーゼの移動は、形質転換しなかったタバコの葉の抽出物の存在下では、僅かに抑えられる(図6、LC+T)。
【0257】
形質転換しなかったタバコおよびアブラナの葉と種子とのタンパク質抽出物では、バンドが全く検出されない。タバコの葉で生産されたリパーゼは、2本のバンドの形態をなす。定量的に最大であるバンドは、約37kDaの見かけ分子量を有し、上記ポリペプチド(Δ54)に相当する。細い方のバンドは、約49kDaの見かけ分子量を有し、上記ポリペプチド(Δ4)に相当する(図6、F)。種子のタンパク質抽出物では、より低分子量のバンドのみ視認できる(図6、GTおよびGC)。
【0258】
a.2)RGLのシグナルペプチドによる発現;pBIOC41で形質転換したタバコの葉および種子での免疫検出
緩衝液Bで抽出したタバコの葉および種子のタンパク質に対して(上記抽出プロトコルを参照されたい)、ウエスタンブロット[Renart and Sandoval、1984]を実施した。抽出したタンパク質を、初めに、Laemmli (1970)の手法に従って変性ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)上で分離し、次いで、ニトロセルロースメンブランに移す。モルモットで得られた抗イヌリパーゼポリクローナル抗体をプローブとして用い、アルカリホスファターゼで標識した抗モルモット抗体を用いて、検出を実施する。
【0259】
タバコの葉のウエスタンブロットの例を図7に示す。対照タンパク質は、イヌ胃リパーゼであって、約50kDaの見かけ分子量での単一のバンドの形態で移動する。形質転換しなかったタバコの葉のタンパク質抽出物では、バンドが全く検出されない(T)。葉の抽出物で生産されたリパーゼは、約48〜49kDaの見かけ分子量での主バンドの形態をなし、上記ポリペプチド(D4)に相当する。
【0260】
構築物pBIOC41で形質転換したタバコの種子では、組換えリパーゼは、葉でのそれと同じ形態をなす。
【0261】
b)形質転換したタバコの葉のタンパク質抽出物中のDGL;脱グリコシル化の実験
脱グリコシル化実験のためのタンパク質抽出のプロトコルは、下記のとおりである:葉0.5g(初期重量)を、液体窒素中で、次いで4℃で、変性緩衝液(1%β−メルカプトエタノール、25mMEDTAおよび1%SDSを加えた100mMリン酸緩衝液、pH7.5)1ml中で摩砕する。摩砕した材料を、4℃で15分間、10,000×gで遠心分離する。タンパク質を変性させるため、上清を100℃で5分間インキュベーションして次いで10,000×gで2分間遠心分離する。次いで、上清を脱グリコシル化緩衝液(1%β−メルカプトエタノール、25mMEDTA、0.1%SDSおよび1%オクチルグリコシドを加えた100mMリン酸緩衝液、pH7.5)で10倍に希釈する。酵素(N−グリコシダーゼF、PNGアーゼ、Boehringer)を、上清100μlあたり1Uの量で加える。酵素なしの対照を各サンプルについて実施する。対照タンパク質(イヌまたはウサギの胃リパーゼ)の脱グリコシル化を、同じ条件下で実施する。種々のタンパク質サンプルを、室温で8時間インキュベーションする。次いで、先行段落で述べたとおり、ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によってタンパク質を分離し、ニトロセルロースメンブランに移す。
【0262】
「ウエスタンブロット」の結果によれば、対照として用いた胃リパーゼは、約50kDaの見かけ分子量を有する。脱グリコシル化の後では、その見かけ分子量は、わずか約43kDaである。
【0263】
上記の条件下のPNGアーゼなしでインキュベーションした後では、タバコの葉で生産されたリパーゼは、見かけ分子量が49kDa(ポリペプチド(Δ4))、37kDa(ポリペプチド(Δ54))および28kDaの3本のバンドの形態で現われる。分子量28kDaのバンドは、疑いもなく、室温で8時間のインキュベーションの際に生じたタンパク質分解の結果である。脱グリコシル化の後、3本のバンドの分子量は約1〜2kDa減少し、タバコの葉で生産されたタンパク質はグリコシル化されていることを示す。
【0264】
c)トランスジェニックトマトの葉および果実で発現されるDGL
緩衝液Bで抽出したトマトの葉および果実のタンパク質で(上記の抽出プロトコルを参照されたい)、イヌ胃リパーゼについての「ウエスタン型」の免疫検出実験を実施した。これらの実験を実施するため、抽出したタンパク質(葉および果実について、それぞれ15μgおよび6μgの総可溶性タンパク質)を、段落X.a)に記載のとおりに変性性ポリアクリルアミドゲル上で分離する。
【0265】
対照タンパク質は、天然胃リパーゼ(トラック4、図8)であって、約50kDaの見かけ分子量での単一バンドの形態で移動する。
【0266】
形質転換しなかったトマトの葉および果実のタンパク質抽出物では、バンドが全く検出されない。
【0267】
トマトの葉および果実で生産されたリパーゼは、いずれの構築物(pBIOC25またはpBIOC26)を用いても、2本のバンドの形態をなす。定量的に最大であるバンドは、約37kDaの見かけ分子量を有し、上記ポリペプチド(Δ54)に相当する。細い方のバンドは、約49kDaの見かけ分子量を有し、上記ポリペプチド(Δ4)に相当する(図8)。
【0268】
XI.植物からのイヌ胃リパーゼの精製
a)タバコの葉からのDGLの精製
タバコの葉で生産されたイヌ胃リパーゼの活性を、pHスタット(Mettler-Toledo-DL25)を用いて、調節されたpHを5.5に、温度を37℃に保ち、滴定分析法によって決定するが、基質としてはトリブチリンを用いる:渦流とした0.15MのNaClの水溶液29ml中に、トリブチリン1mlを乳化する。分析は、リパーゼの作用下で遊離された酪酸を、活発な機械的撹拌によって乳濁液を維持しつつ、0.02N炭酸ナトリウムの添加によって中和することを含む。1リパーゼ単位は、これらのpHおよび温度の条件下で1分間に遊離される脂肪酸1μMに相当する。
【0269】
最初のクロマトグラフィー段階の後、Gargouri et al.(1986)が記載した分析に従って、0.15MのNaCl、2mMタウロデオキシコール酸ナトリウムおよび1.5μMウシ血清アルブミンの溶液29ml中トリブチリン1mlの乳濁液について、分析サンプル0.5mlを用いてリパーゼ活性を証明する。
【0270】
凍結乾燥した葉1gを、30mlの20mMグリシン緩衝液、pH2.5の中で4℃で摩砕し、混合物を15分間穏やかに撹拌する。浸漬の間、1NのHClの添加によってpHを2.5に保つ。浸漬の産物を15,000×gで5分間遠心分離する。1NのNaOHの添加によって、上清のpHを4に調整する。Miracloth(Calbiochem)による濾過の後、すべての上清を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.0および20mMNaClの緩衝液中で平衡化し、10ml(直径1.6cm)の陽イオン交換樹脂カラム(S-Sepharose Fast Flow樹脂:Pharmacia)に、毎分1mlの流速でかける。2mlの画分を捕集する。上清の通過後、平衡緩衝液40mlでカラムを洗浄する。カラムに保持されたタンパク質を、下記のプロトコルに従って溶離させる:
−リパーゼ活性を含まないタンパク質の第一の組のピークの溶離のための、30分の過程での、20mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0中の20mMから210mMまでのNaClの線形勾配で、分析サンプル1mlについて試験を実施する。
−210mMNaClで20分間のプラトー。
−第二の組のピークの溶離のための、30分の過程での、20mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.0中の210mMから500mMまでのNaClの線形勾配。分析サンプル0.5mlについて測定されたリパーゼ活性は、この第二の勾配の間に、300〜400mMのイオン強度で溶離される。
【0271】
30kDaの分子量限界のOmegacellという濃縮セル(Filtron Technology Corporation)を用いて、活性分画を捕集かつ濃縮する。
【0272】
濃縮物を、10mMTris−HCl、pH8の緩衝液に対して12時間透析し、次いで、10mMTris−HCl緩衝液、pH8で平衡化した陰イオン交換樹脂カラム(直径0.5cmおよび高さ5cmのMonoQ HR5/5:Pharmacia)にかける。分析サンプル0.5mlについて、リパーゼ活性を測定する。流速は毎分1ml、すなわち2.0mPaの圧力に保つ。保持されない画分の溶離、および10mlの10mMTris−HCl緩衝液、pH8でのカラムの洗浄の後、0〜400mMNaClのイオン強度の線形勾配を、60分の過程で適用する。リパーゼ活性は、100mM〜200mMのイオン強度に対して溶離される。
【0273】
30kDaの分子量限界のOmegacell濃縮セルを用いて、活性画分を捕集し、濃縮する。濃縮物は、タバコの葉から抽出されたイヌ胃リパーゼの精製された形態を構成する。
【0274】
タンパク質濃度は、上清の濃度についてM. Bradford (1976)の方法に従い、最初のイオン交換クロマトグラフィー後の溶液に対してO.H. Lowry(1951)の方法に従って測定する。
【0275】
U.K. Laemmli(1970)の手法に従い、変性ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE、12.5%)上での電気泳動によって、精製の様々な段階を分析する。ポリアクリルアミドゲル上でこのようにして分離されたタンパク質を、一方では、クーマシーブルーでの染色によって検出し、他方では、20mMTrisベース、150mMグリシンおよび20%エタノールの緩衝液中でメンブラン1cm2あたり2.3mAでの半乾式電気転写(Transblot SD、Biorad)の手法によって、ニトロセルロースメンブランに移す。ニトロセルロースメンブランに移された組換えイヌ胃リパーゼを、下記のプロトコルによる免疫検出によって検出する:
−5%の量の脱脂粉乳、および0.2%の量のTween 20を加えたPBS緩衝液で1/5,000に希釈した、モルモットで得られたイヌ胃抗リパーゼポリクローナル抗体による、室温で1時間の標的タンパク質の標識化、
−1%の量の脱脂粉乳および0.1%の量のTween 20を加えたPBS緩衝液の、それぞれ10分間の連続する3回の浴中でのメンブランの洗浄、
−1%の量の脱脂粉乳、および0.1%の量のTween 20を加えたPBS緩衝液で1/2,000に希釈した、ペルオキシダーゼ(Sigma)に結合させた抗モルモット抗体による、室温で1時間の標識化、
−1%の量の脱脂粉乳および0.1%の量のTween 20を加えたPBS緩衝液の、それぞれ10分間の連続する3回の浴中でのメンブランの洗浄、
−H22の存在下での、4−クロロ−1−ナフトール(Sigma)に対するペルオキシダーゼの、経時的に安定である青の発色を生じる作用の検出。
【0276】
葉で生産されるリパーゼは、約49kDa(ポリペプチド(Δ4))および37kDa(ポリペプチド(Δ54))の2本のバンドの形態をなす。
【0277】
b)タバコの葉からのDGLの精製の変法
タバコの葉で生産されたイヌ胃リパーゼの活性を、pHスタット(Mettler-Toledo-DL25)を用いて、Gargouri et al.(1986)が記載した滴定分析法によって決定する。
【0278】
短鎖トリグリセリドについての分析は、トリブチリンを基質として用いて実施する:トリブチリン1mlを、0.15MのNaCl、1.5μMウシ血清アルブミン(BSA)および2mMタウロデオキシコール酸ナトリウム(NaTDC)の水溶液29mlに乳濁させる。調節されたpHを5.0に、温度を37℃に保つ。
【0279】
分析は、リパーゼの作用下で遊離された酪酸を、活発な機械的撹拌によって乳濁液を維持しつつ、0.02N炭酸ナトリウムの添加によって中和することを含む。
【0280】
長鎖トリグリセリドの分析は、30%の精製ダイズ油、1.2%の精製卵リン脂質、1.67%の無水グリセリン(IntralipidTM30%-Pharmacia AB, Stockholm, Sweden)による水性乳濁液を基質として用いて実施する。この懸濁液10mlを、0.15MのNaCl、30μM BSAおよび3.5mMCaCl2の水溶液20mlに乳濁させる。調節されたpHを4.0に、温度を37℃に保つ。
【0281】
分析は、リパーゼの作用下で遊離された脂肪酸を、活発な機械的撹拌によって乳濁液を維持しつつ、pHを4から9に跳躍させた後に0.2N炭酸ナトリウムを加えることにより中和することからなる。
【0282】
1リパーゼ単位は、各基質について規定されたpHおよび温度の条件下で1分間に遊離される脂肪酸1μMに相当する。
【0283】
凍結乾燥した葉2gを、60mlの0.2MのNaCl、pH3中で4℃で摩砕し、混合物を4℃で15分間穏やかに撹拌する。この浸漬の間、1NのHClの添加によってpHを3に保つ。浸漬の産物(ホモジネート)を10,000×gで10分間遠心分離する。Miracloth(Calbiochem)、および0.45μのミリポアフィルターによる濾過の後、すべての上清を、20mM酢酸ナトリウム、0.2MNaCl、pH3の緩衝液で平衡化した陽イオン交換樹脂カラム(Resource S、6ml:Pharmacia :内径16mm×30mm)に、8ml/分(240cm・h-1)の流速で注入する。
【0284】
保持されなかった画分の通過後、その容積の30倍の平衡緩衝液でカラムを洗浄する。カラムに保持されたタンパク質は、7カラム容での20mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH3中の0.2M〜0.5MのNaClの線形勾配で溶離する。4mlの画分を捕集する。
【0285】
分析サンプル0.5mlについて測定したリパーゼ活性は、0.35MNaClのイオン強度で溶離される。
【0286】
30kDaの分子量限界のOmegacell濃縮セル(Filtron Technology Corporation)を用いて、活性画分を捕集し濃縮する。
【0287】
O. H. Lowry (1951)の方法に従って、タンパク質濃度の測定を実施する。
【0288】
ポリアクリルアミドゲルの例、およびニトロセルロースメンブランへのこのゲルの転写と、イヌ胃抗リパーゼ抗体からの検出との結果を示す(図9および10)が、検出は、活性化剤(ECLウエスタンブロッティング:Amersham Life Science)の存在下でのルミノールに対するペルオキシダーゼの作用によって、そして記録は、写真フィルム上で行った。
−タンパク質でのグリカン性残渣の存在を、下記のプロトコルに従って決定した:
・ミクロセルロースメンブランへのタンパク質の固定化、
・過ヨウ素酸塩による処理、
・アルカリホスファターゼと結合したストレプトアビジンとの特異的反応、
・アルカリホスファターゼ(Glycotrack Oxford Glylosystem)との発色反応。
グリカン性残渣のメンブラン検出の例を示す(図11)。
画分の純度は、高性能液体クロマトグラフィーによって確保する。
クロマトグラフはWaters 625 LCである。
ダイオードアレー検出器はWaters 991である。
カラムはVydac C4である。
溶離条件:
【0289】
【表4】

【0290】
緩衝液A:89.9%H2O、10%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸。
緩衝液B:100%アセトニトリル。
【0291】
【表5】

【0292】
【表6】

【0293】
c)アブラナの種子からのDGLの精製
アブラナの種子で生産された組換えDGLの活性を、葉からの抽出の場合と同じ方法で決定する。
【0294】
アブラナの種子10gを、液体窒素中でよく摩砕する。得られた粉末を、ヘキサンを用い、12時間の穏やかな撹拌下、4℃での第一の浸漬によって脱脂する。全体をデカントし、ヘキサンを除去する。それぞれ4℃での1/2時間の穏やかな撹拌下で、粉末をヘキサン100mlで2回洗浄する。デカントによってヘキサンを除去する。ロータリーエバポレーター(Heidolph 94200)内で粉末を乾燥する。脱脂した粉末は、-20℃で貯蔵する。
【0295】
DGLの抽出は、脱脂した粉末から、pH3(1NHCl)のNaClの0.2M水溶液中に、粉末0.1gにつき水溶液2mlの割合で4℃で30分間浸漬することによって実施する。浸漬から得られた材料を、10,000×gで4℃で10分間遠心分離する。
【0296】
ペレットを除去する。上清が種子抽出物を構成する。
【0297】
種子抽出物を、10mM酢酸ナトリウム、pH4、140mMNaCl、3mMKClの緩衝液に対して透析し、次いで、樹脂(ヒドラジドAvidgel:Bioprobe International, Inc.)に結合させた、モルモットから得られたイヌ胃抗リパーゼポリクローナル抗体で構成した免疫アフィニティーカラムにかける。
【0298】
樹脂/種子抽出物の接触は、穏やかな撹拌下、4℃で30分間とする。次いで、樹脂を10カラム容の緩衝液、すなわち10mM酢酸ナトリウム、pH4、150mMNaCl、3mMKClで洗浄する。DGLを5カラム容の緩衝液、すなわち0.2Mのグリシン、pH2.8、150mMNaClで溶離させる。捕集した画分は、1カラム容に等しい体積を有し、体積比1/20の1M Tris緩衝液、pH9を含有する。変性性培地中のポリアクリルアミドゲル上の電気泳動による分析(図12を参照されたい)は、約37kDaの分子量のタンパク質を示す。
【0299】
XII.脂肪酸エステルの合成
試験は、形質転換しなかったアブラナの種子で実施し、与えたリパーゼは:
−固定化酵素の調製品の形態(リポザイムlipozyme(Novo))、または遊離形態(ウサギ胃リパーゼ(JO 4002))のいずれか、または
−イヌ胃リパーゼの遺伝子で形質転換したタバコの種子の形態(タバコT14−44、0.85%の発現)
である。
【0300】
エステル化反応は、撹拌ベンチ(250rpm)上に置いた、密封するよう栓をしたガラス瓶内で、37℃で16時間実施する。用いた有機溶媒はヘキサンであって、その中で、脂肪酸は可溶性である。アブラナの種子に含まれるトリアシルグリセロールの理論量に対する化学量で、メタノールを加える。
【0301】
アブラナの脂肪酸の主成分はオレイン酸であり、選んだ参照用対照も、オレイン酸のメチルエステルである。合成は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって追跡する。移動溶媒は、ヘキサン、ジエチルエーテルおよび水の混合物(70:10:1)である。プレートでの検出は、エタノール中の硫酸(5%)を吹付けた後、高温条件下で実施する。
【0302】
第一の試験では、メタノール27μl(0.66mmol)およびリポザイム0.02gをナタネ油0.2g(0.22mmol)に加え:参照用オレイン酸メチルのレベルで出現したスポットは皆無であった(図13、カラム2)。
【0303】
第二の試験では、ナタネ油を、乾燥状態で摩砕したアブラナの種子0.5gに置き換え、ヘキサン1mlを加える:メチルエステルが合成される(図13、カラム5)。
【0304】
続く試験では、上記の条件を下記の変更とともに反復する:リポザイムの量を0.006gに減らし、リポザイムをウサギ胃リパーゼ(JO 4002を0.007g)に置き換える。オレイン酸メチルは、リポザイムの存在下で合成されるが、JO 4002の存在下では合成されない(図14、カラム2)。
【0305】
最終的に、最後の試験では、形質転換したタバコの種子によって、リパーゼを与える(タバコの種子1g)。メチルエステルの特徴的なスポットが出現する(図15、カラム3)。
【0306】
結論として、上記の結果は、アブラナの種子の抽出物、アルコール、およびトランスジェニックタバコが生産した組換えイヌ胃リパーゼを一緒にするならば、生物燃料として利用できるメチルエステルの合成を導くエステル化反応が得られることを立証する。
【0307】
【表7−1】

【0308】
【表7−2】

【0309】
【表7−3】

【0310】
【表7−4】

【0311】
【表7−5】

【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】−図1:DGLをコードするcDNAのヌクレオチド配列。
【図2】−図2:DGLのアミノ酸配列。
【図3】−図3:DGLをコードするcDNAに由来する、図2に示すDGLをコードするヌクレオチド配列。
【図4】−図4:HGLをコードするcDNAのヌクレオチド配列、およびHGLのアミノ酸配列。
【図5】−図5:HGLのアミノ酸配列。
【図6】−図6:構築物pBIOC26、pBIOC25およびpBIOC29 で形質転換したXanthiのタバコの葉および種子、ならびにアブラナの種子によって生産された組換えポリペプチドの免疫検出;E:分子量範囲;LC:イヌ胃リパーゼ;F:構築物pBIOC25で形質転換した、タバコの葉、およびGT:タバコの種子;GC:構築物pBIOC29で形質転換したアブラナの種子;T:形質転換しなかったタバコの葉。
【図7】−図7:構築物pBIOC25 およびpBIOC41で形質転換したタバコの葉によって生産された組換えポリペプチドの免疫検出;E:分子量範囲;LC:イヌ胃リパーゼ;1および3:構築物pBIOC41で形質転換したタバコの葉;2:構築物pBIOC25で形質転換したタバコの葉;T:形質転換しなかったタバコの葉。
【図8】−図8:構築物pBIOC25およびpBIOC26で形質転換したトマトの葉および果実によって生産された組換えポリペプチドの免疫検出:T1:形質転換しなかったトマトの果実、1および3:形質転換したトマトの果実、2:形質転換したトマトの葉、R:分子量範囲、LC:イヌ胃リパーゼT2:形質転換しなかったトマトの葉。
【図9】−図9:変性性培地でのポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)上での電気泳動による分析。1:アブラナ種子の抽出物。2:タバコの葉から生産された組換えイヌ胃リパーゼ。3:天然のイヌ胃リパーゼ。4:分子量範囲。
【図10】−図10:ニトロセルロースメンブランへの転写後の先行分析の免疫検出:1:天然のイヌ胃リパーゼ。2:タバコの葉から生産された組換えイヌ胃リパーゼ。3:アブラナの種子の抽出物。
【図11】−図11:ニトロセルロースメンブランへの移転後のポリアクリルアミドゲルからのグリカン性残渣の存在下での免疫検出:1:アブラナ種子の抽出物。2:タバコの葉から生産された組換えイヌ胃リパーゼ。3:天然のイヌ胃リパーゼ。
【図12】−図12:アブラナの種子で生産されたr−DGLの免疫精製のSDS−PAGE分析:1:天然のイヌ胃リパーゼ。2:組換えイヌ胃リパーゼ。3〜6:免疫精製カラムから溶離された保持されなかった画分。
【図13】−図13:TLCプレートでの検出;1:ナタネ油、酵素なし;2:ナタネ油+リポザイム;3.オレイン酸のメチルエステル;4:アブラナの種子、酵素なし;5:アブラナの種子+リポザイム。
【図14】−図14:TLCプレートの検出;1および4:酵素なしのアブラナの種子;2:アブラナの種子+JO4002;3:オレイン酸のメチルエステル;5:アブラナの種子+リポザイム。
【図15】−図15:TLCプレートでの検出;1:モノオレイン、ジオレイン、トリオレイン;2:オレイン酸のメチルエステル;3:アブラナの種子+形質転換したタバコの種子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方で図2に示されるイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードし、他方で植物細胞が該cDNAによってコードされたイヌ胃リパーゼを産生することを可能にする要素、特に植物細胞の転写機構によって認識される転写プロモーターおよび転写ターミネーターをコードする、図3に示される組換えヌクレオチド配列の使用であって、該細胞からまたは該細胞から得られる植物から、組換えDGLを活性な酵素の形態で得るという観点で植物細胞を形質転換するための、使用。
【請求項2】
組換えヌクレオチドであって、一方で図3に示されるcDNAであって、図2に示されるイヌ胃リパーゼ(DGL)をコードし、他方で植物細胞が該cDNAによってコードされたイヌ胃リパーゼを産生することを可能にする要素、特に植物細胞の転写機構によって認識される転写プロモーターおよび転写ターミネーターをコードすることを特徴とする、組換えヌクレオチド。
【請求項3】
−該cDNAの下流に、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)のポリA35Sターミネーターまたはアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のポリA NOSターミネーターを、
−該cDNAの上流に、35Sプロモーター、CaMVからの重複する構成プロモーターである35Sプロモーター(pd35S)、ラディッシュのクルシフェリン遺伝子のpCRUプロモーター、アラビドプシス サリアナ(Arabidopsis thaliana)のpGEA1もしくはpGEA6プロモーター、アグロバクテリウム ツメファシエンスのpSPキメラプロモーター、pAR-IARイネプロモーターまたはpγzeinトウモロコシプロモーターを、
含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えヌクレオチド。
【請求項4】
組換えDGLを予め決められた植物細胞区画に指向させるペプチドをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の組換えヌクレオチド。
【請求項5】
以下から選択されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の組換えヌクレオチド:
−(pd35S-PS-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、スポラミンAのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pd35S-PPS-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、スポラミンAのプレプロペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pd35S-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、CaMVのpd35Sプロモーター、RGL(rabbit gastic lipase)のシグナルペプチドの一部をコードする配列であって、以下に示す実施例に示した最初の19アミノ酸の配列からなり、C-末端の最後の3アミノ酸をコードする9ヌクレオチドが欠失しているものを含むもので、後者はすぐ後に図3に示したヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-PS-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、スポラミンAのシグナルペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-PPS-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、スポラミンAのプレプロペプチドをコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pCRU-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、クルシフェリンのpCRUプロモーター、上記のようなRGLシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pGEA1-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、Arabidopsis thalianaのpGEA1プロモーター、上記のようなRGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pGEA6-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、Arabidopsis thalianaのpGEA6プロモーター、上記のようなRGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図1もしくは図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pAR-IAR-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、イネのpAR-IARプロモーター、上記のようなRGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者の配列はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでCaMVのpolyA 35SターミネーターもしくはAgrobacterium tumefaciensのポリANOSターミネーターが続いている、
−(pγzein-PSLGL-LGCと呼ばれる)5’→3’方向に、トウモロコシのpγzeineプロモーター、上記のようなRGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者の配列はすぐ後に図3に示すcDNA、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている、
−(pγzein-PSLGL-LGC-KDELと呼ばれる)5’→3’方向に、トウモロコシのpγzeineプロモーター、上記のようなRGLのシグナルペプチドの一部をコードする配列を含むもので、後者はすぐ後に図3に示すヌクレオチド配列、次いでテトラペプチドであるKDELをコードする配列、次いでCaMVのpolyA 35Sターミネーターが続いている。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列をその複製に必須ではない部位に含んでいる、特にプラスミドであるベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターにより形質転換された、特に、Agrobacterium tumefaciensのような細菌である、細胞宿主。
【請求項8】
活性酵素形態の組換えDGLの製造方法であって:
−特に、請求項6に記載のベクターにより形質転換された請求項7に記載の細胞宿主を用いて、請求項2〜5のいずれか1項に記載の組換え配列がこれらの細胞のゲノムに組み込まれるような方法で植物細胞を形質転換すること、
−場合により、上記の形質転換された細胞から形質転換された植物を得ること、
−上記の細胞もしくは形質転換された植物中に産生される上記の組換えDGLを、特に抽出および場合によりそれに続く精製により回収すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の1以上の組換えヌクレオチド配列がそのゲノムに安定に組み込まれており、場合により、酵素活性、より特定するとリパーゼ活性、を有する組換えDGLを含む、特に、アブラナ、タバコ、トウモロコシ、エンドウ、トマト、ニンジン、コムギ、オオムギ、馬鈴薯、ダイズ、ヒマワリ、レタス、コメ、アルファルファおよびビートの根(beetroot)から選択されることを特徴とする、遺伝的に形質転換された植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子および/または植物細胞。
【請求項10】
そのアミノ酸配列が図2に示される酵素的に活性な組換えDGLか、図2の55〜379位に位置するアミノ酸に限定されるポリペプチドから選択されるポリペプチドまたは図2の35〜379位に位置するアミノ酸に限定されるポリペプチドであって、これらのポリペプチドはリパーゼ活性を有し、請求項8に記載の方法を行うことにより実質的に純粋な形態で得られ、この方法は、組換えDGLおよび/または上記のポリペプチドを、特に得られた酵素抽出物に対して行われるクロマトグラフィーにより精製する工程を包含する、組換えDGLまたは誘導ポリペプチド。
【請求項11】
酵素的に活性な組換えDGL、図2に示されたアミノ酸配列、および/またはリパーゼを有する、図2の55位〜379位に位置するアミノ酸により限定されたポリペプチドもしくは図2の35位〜379位に位置するアミノ酸により限定されたポリペプチドを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法を実施することにより得られる、酵素活性を有する植物抽出物。
【請求項12】
酵素的に活性な組換えポリペプチドの重量%が、抽出物中に存在するタンパク質の総重量の約0.1%〜20%、特に約1%〜約15%であり、それは、葉の初期重量(FW)のg当たり約0.5U〜約1,000U/gに、特に葉のFWの約10U/g〜約300U/g、または種子のFWの約1U/g〜約5,000U/g、特に種子の約10U/g〜約1,000U/gの酵素活性の測定単位に相当することを特徴とし、ここで、酵素活性がGargoury5(Gastroenterology, 91, 919-925(1986))に記載の方法による単位で与えられる、請求項11に記載の酵素活性を有する植物抽出物。
【請求項13】
請求項9に記載した遺伝的に形質転換した植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、もしくは植物細胞の、健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患う個体、好ましくは脂肪の吸収の機構を変える医学的処置を受けている個体もしくは高齢者によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にすることを意図した薬剤の製造、および好ましくは生物における、好ましくは胃腸および/または膵臓のリパーゼであるリパーゼの不足に関連した病状、さらに好ましくは嚢胞性線維症、外分泌腺膵臓不全の処置のための薬剤の製造のための使用。
【請求項14】
請求項10に記載の組換えDGLの、健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患う個体、好ましくは脂肪の吸収の機構を変える医学的処置を受けている個体もしくは高齢者によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にすることを意図した薬剤の製造、および好ましくは生物における、好ましくは胃腸および/または膵臓のリパーゼであるリパーゼの不足に関連した病状、さらに好ましくは嚢胞性線維症、外分泌腺膵臓不全の処置のための薬剤の製造のための使用。
【請求項15】
請求項11または12に記載の酵素抽出物の、健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患う個体、好ましくは脂肪の吸収の機構を変える医学的処置を受けている個体もしくは高齢者によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にすることを意図した薬剤の製造、および好ましくは生物における、好ましくは胃腸および/または膵臓のリパーゼであるリパーゼの不足に関連した病状、さらに好ましくは嚢胞性線維症、外分泌腺膵臓不全の処置のための薬剤の製造のための使用。
【請求項16】
組換えDGLおよび/または請求項10に記載のいくつかのポリペプチド、および/または請求項11または12に記載の1以上の酵素抽出物を、場合により薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせて含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項9に記載の遺伝的に形質転換した植物もしくは植物の部分、特に葉および/または果実および/または種子、もしくは植物細胞の、ヒトまたは動物の栄養補給を意図した食品、好ましくは健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患う個体によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にする機能性食品の製造のための使用。
【請求項18】
請求項10に記載の組換えDGLの、ヒトまたは動物の栄養補給を意図した食品、好ましくは健康な個体もしくは胃腸および/または膵臓のリパーゼの産生レベルに影響を与えるかもしくは与えない1以上の病状を患う個体によって摂取される動物性もしくは植物性の脂肪の吸収を容易にする機能性食品の製造のための使用。
【請求項19】
請求項9に記載の1以上の植物および/または植物の部分、ならびに/あるいは請求項10に記載の組換えDGLおよび/または1以上のポリペプチド、ならびに/あるいは請求項11または12に記載の1以上の酵素抽出物を含むことを特徴とする、機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−325590(P2007−325590A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130029(P2007−130029)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【分割の表示】特願平8−531529の分割
【原出願日】平成8年4月19日(1996.4.19)
【出願人】(507125169)メリスタン・テラプーティック・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】MERISTEM THERAPEUTICS S.A.
【出願人】(507125170)
【氏名又は名称原語表記】PARKE−DAVIS SCA
【Fターム(参考)】