説明

植物抽出物含有組成物

【課題】優れたFGF−5遺伝子発現抑制作用を有する植物抽出物を含有する組成物を提供する。
【解決手段】ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウから選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物及びクミスクチンの抽出物を含有することを特徴とする組成物を提供する。好ましくは、水、エタノールまたは水、エタノールの混液の何れかの溶媒を使用し得られた抽出物を含有させ、皮膚外用剤もくしは経口組成物とする。これらを使用することで優れた育毛効果や心疾患予防効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウからなる群から選ばれる一種または二種以上の植物抽出物及びクミスクチン抽出物を含有する植物抽出物含有組成物に関し、更に詳しくは、線維芽細胞増殖因子5(以下、「FGF−5」と略する。)遺伝子の発現抑制効果を有する植物抽出物含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
FGF−5は線維芽細胞の増殖活性を有する因子のひとつであり、近年、神経細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞や骨芽細胞の増殖・分化促進または抑制効果、血小板や発毛・育毛の調節作用も有することが知られてきた。そこで、FGF−5の産生に関与するFGF−5遺伝子の発現が調節できれば、皮膚組織、循環器系組織、骨格系組織や毛髪に対して種々の効果が期待できる。(特許文献1)
【0003】
ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウ、クミスクチンは、健康増進や美容の目的で茶などの形態で食用にされている植物であるが、FGF−5遺伝子の発現を抑制する効果があることは知られていない。
【特許文献1】特開2000−344796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クミスクチン抽出物とヒメウィキョウなどから選ばれる特定の植物抽出物を配合した優れたFGF−5遺伝子の発現を抑制する作用を有する植物抽出物含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討したところヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウからなる群から選ばれる一種または二種以上の植物抽出物及びクミスクチン抽出物を組み合わせて配合した植物抽出物含有組成物に優れたFGF−5遺伝子発現抑制作用があることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は下記の植物抽出物含有組成物を提供するものである。
項1. ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウからなる群から選ばれる一種または二種以上の植物抽出物及びクミスクチン抽出物を含有することを特徴とする植物抽出物含有組成物。
項2. 前記植物抽出物の抽出溶媒が、水、エタノール、あるいは含水エタノールの何れかであることを特徴とする項1記載の組成物。
項3. クミスクチン抽出物の抽出溶媒が、水、メタノール、エタノールまたはそれらの混合溶媒の何れかであることを特徴とする項1記載の植物抽出物含有組成物。
項4. 皮膚外用剤である項1〜3の何れかに記載の植物抽出物含有組成物。
項5.経口組成物である項1〜3の何れかに記載の植物抽出物含有組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れたFGF−5遺伝子発現抑制作用を有する植物抽出物含有組成物が提供され、そのFGF−5遺伝子の発現を抑制する作用により、脱毛予防効果、心疾患予防効果、骨代謝改善効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いるヒメウィキョウ抽出物は、西アジア原産のセリ科の多年草植物であるヒメウィキョウの葉、茎部、果実、種子または地上部の抽出物であり、特に果実、種子の抽出物が好適である。
【0010】
本発明に用いるグリーンオーツ抽出物は、別名エンバクまたはオーツ麦と呼ばれる、ユーラシア大陸原産のイネ科植物であるグリーンオーツの葉、茎部、種子または地上部の抽出物であり、特に緑色を呈する地上部の抽出物が好適である。
【0011】
本発明に用いるギシギシ抽出物は、日本や朝鮮半島に分布するタデ科多年草植物であるギシギシ、ナカバギシギシ、アレチギシギシの葉、茎部、果実部、地上部または根部の抽出物であり、特に葉部や茎部の抽出物が好ましい。
【0012】
本発明に用いるラケモサ抽出物は、別名ブラックコホシュと呼ばれ、北米原産のキンポウゲ科多年草植物であるラケモサの葉、茎部または地上部の抽出物である。
【0013】
本発明に用いるチャボトケイソウ抽出物は、別名パッションフラワーと呼ばれる、中央アメリカ原産のトケイソウ科蔓性多年草植物であるチャボトケソウの葉、茎部、花部、種子または地上部の抽出物であり、特に地上部の抽出物が好ましい。
【0014】
本発明に用いるクミスクチン抽出物は、別名ネコノヒゲと呼ばれる、インド、マレーシア原産のシソ科多年草植物であるクミスクチンの葉、茎部または地上部の抽出物であり、特に地上部の抽出物が好ましい。
【0015】
本発明に用いる植物抽出物およびクミスクチン抽出物は、常法により製造でき、抽出溶媒の種類や使用量、抽出温度、抽出時間等は、適宜設定することができる。
【0016】
抽出溶媒としては、水、エチルアルコール、石油エーテル、ヘキサン、ブタノール、プロパノール、メタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられ、このうち、水、エタノールなどの極性溶媒が好ましく、特に水、エタノール及び含水エタノール好ましい。
【0017】
これら植物抽出物は、更に濃縮、スプレードライ、凍結乾燥、精製などの処理することができる。
【0018】
本発明では、ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウの抽出物から単独もしくは二種以上を選択して、配合でき、それらとクミスクチン抽出物との配合比率は、任意に設定できる。
【0019】
本発明の植物抽出物含有組成物における植物抽出物およびクミスクチン抽出物の含有量は、添加形態および投与形態によっても異なるが、広い範囲から選択できる。例えば、植物抽出物またはクミスクチン抽出物の配合量は、溶媒抽出乾燥物換算で、組成物中に0.01〜60重量%配合することができ、0.1〜20重量%配合することが好ましい。また、植物抽出物およびクミスクチン抽出物の配合比率は、植物抽出物の合計量とクミスクチン抽出物の配合重量比率が1:10〜10:1が好ましく、5:1〜1:3がより好ましい。
【0020】
本発明の植物抽出物含有組成物は、優れたFGF−5遺伝子発現抑制作用を有することから、育毛効果を奏する医薬部外品、医薬品、毛髪用化粧料、機能性食品等や心疾患を予防する医薬部外品、医薬品、機能性食品等として提供できる。その投与形態は、経口、あるいは外用の何れでもよいが、経口投与が好ましい。
【0021】
本発明の植物抽出物含有組成物を皮膚外用剤とする場合、頭皮に、効果的に塗布される態様が好ましく、例えば、液剤、エアゾール剤、ジェル剤などが挙げられ、育毛剤、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアクリーム、シャンプー、リンス、トリートメント、整髪剤等として提供できる。
【0022】
本発明の植物抽出物含有組成物を経口組成物とする場合、錠剤、顆粒、細粒、粉体、タブレット、カプセル、液体、ペースト、ゲルなどの態様、すなわち、粉末茶、サプリメント、トローチ、飲料などとして食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品などに提供できる。
【0023】
本発明の植物抽出物含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、植物抽出物のほかに、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合できる薬効剤、例えば、抗炎症剤、細胞不活化剤、皮脂分泌抑制剤、抹消血管拡張剤、アミノ酸類、ビタミン類等、精製水、エタノール、油性物質、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定化剤等を任意に組み合わせて配合することができる。
【実施例】
【0024】
以下、試験例、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<試験例1;FGF−5遺伝子の発現抑制効果>
下記の植物抽出物を各濃度でクミスクチン抽出物と組み合わせた場合のFGF−5遺伝子の発現抑制効果を、ヒト毛乳頭細胞を用いて評価した。結果を、段落番号[0029]に示す。
【0026】
評価に供したクミスクチン抽出物および植物抽出物
クミスクチン抽出物:地上部を熱水で抽出し、粉末化したもの。
チャボトケイソウ:地上部を60%含水エタノールで抽出し、粉末化したもの。
ヒメウィキョウ:種子を含む果実を熱水で抽出し、粉末化したもの。
グリーンオーツ:緑色を呈する地上部を30%含水エタノールで抽出し、粉末化したもの。
セイヨウカボチャ:種子を60%含水アルコールで抽出し、粉末化したもの。
ギシギシ:乾燥葉部2.5gを250mlの熱水で15分間抽出して得られた液体。
ラケモサ:乾燥葉部2.5gを250mlの熱水で15分間抽出して得られた液体。
ニトベギク:全草を熱水で抽出し、粉末化したもの。
コーヒー豆:未焙煎のコーヒー豆を60%含水アルコールで抽出し、粉末化したもの。
【0027】
試験方法
PCGMを用いてヒト毛乳頭細胞をサブコンフルエントになるまで培養した。培養した細胞に試験サンプルを添加し、1%FBS−DMEM培地でさらに24時間培養した後、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法を用いてFGF−5遺伝子の発現量を測定した。得られた測定値は下記の数1にしたがって換算し、クミスクチン抽出物のFGF−5遺伝子発現抑制効果の増強率を求めた。
試験サンプルは、クミスクチン抽出物(測定時濃度 10μg/ml)と前記の植物抽出物を各濃度(測定時濃度)で組み合わせたものを用いた。また、ネガティブコントロールは蒸留水を、ポジティブコントロールはクミスクチン抽出物(測定時濃度 10μg/ml)を用いた。
【0028】
【数1】

A:ネガティブコントロール
B:ポジティブコントロール
C:試験サンプル
【0029】

【0030】
以上の試験により、ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウの各抽出物とクミスクチン抽出物を併用することで優れたFGF−5遺伝子の発現抑制効果が得られることが判明した。すなわち、クミスクチン抽出物とヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウの各抽出物を組合わせて配合した植物抽出物含有組成物は、優れた脱毛予防効果、抗癌効果や心筋梗塞予防効果を有することが期待できる。
【0031】
下記原料を使用して常法により植物抽出物含有組成物を製造した。なお、(%)は(重量%)を意味する。
【0032】
実施例1
常法に従い、下記の顆粒状食品を製造した。

【0033】
実施例2
常法に従い、下記の粉末茶を製造した。

【0034】
実施例3
常法に従い、下記のタブレットを製造した。

【0035】
実施例4
常法に従い、下記のタブレットを製造した。

【0036】
実施例5
常法に従い、下記の飲料を製造した。

【0037】
実施例6
常法に従い、下記の頭皮用ローションを製造した。

【0038】
実施例7
常法に従い、下記の育毛剤を製造した。

【0039】
実施例8
常法に従い、下記のヘアトニックを製造した。

【0040】
実施例9
常法に従い、下記のヘアジェルを製造した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒメウィキョウ、グリーンオーツ、ギシギシ、ラケモサ、チャボトケイソウからなる群から選ばれる一種または二種以上の植物抽出物及びクミスクチン抽出物を含有することを特徴とする植物抽出物含有組成物。
【請求項2】
前記植物抽出物の抽出溶媒が、水、エタノール、あるいは含水エタノールの何れかであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
クミスクチン抽出物の抽出溶媒が、水、メタノール、エタノールまたはそれらの混合溶媒の何れかであることを特徴とする請求項1記載の植物抽出物含有組成物。
【請求項4】
皮膚外用剤である請求項1〜3の何れかに記載の植物抽出物含有組成物。
【請求項5】
経口組成物である請求項1〜3の何れかに記載の植物抽出物含有組成物。

【公開番号】特開2010−143862(P2010−143862A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323281(P2008−323281)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】