説明

植物栽培装置、育苗装置および植物栽培方法

【課題】植物栽培装置において、供給する養液や水の使用量を低減すると共に簡単な設備を簡単として設備コストを低減する。
【解決手段】栽培植物の少なくとも根部が垂れ下がる中空部を有する栽培ボックスと、前記栽培ボックスの中空部内に設置され、該中空部に配列される前記栽培植物に向けて養液を霧状として直接に噴射するノズルを備え、前記ノズルから噴射される養液を含む霧を、前記中空部の全体に充満させると共に、該中空部内を流れる前記霧で前記栽培植物の根に揺れを与える構成としていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培装置、育苗装置および植物栽培方法に関し、特に、植物工場や家庭菜園で好適に用いられるものであり、土を使わないと共に養液や水の供給量をできるだけ少量とし、砂漠や水の少ない乾燥地域での植物栽培にも好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置は従来より多数提案されており、そのうちで、霧栽培方法は、栽培植物の根部に養液を含む霧を噴霧している。この霧栽培方法は、養液の吸収率を高め、育生を速めることができると共に、自動化、省力化ができる等の利点がある。
前記霧植物栽培方法として、特開2008−104377号公報、特開平3−224420号公報、特開昭62−74228号公報等が提案されている。
また、霧栽培方法とは別に、養液に栽培植物の根部を常時浸漬する水耕栽培方法も提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104377号公報
【特許文献2】特開平3−224420号公報
【特許文献3】特開昭62−74228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1〜3の霧栽培では、養液を含む霧を発生させる噴霧発生装置と植物を植え付けている栽培装置とは分離し、噴霧発生装置から配管を通して栽培装置へ霧を供給している。このように配管を介して霧を栽培装置へ供給すると、栽培装置内部の加湿効率が低い問題があり、そのため、大量の養液や水を供給する必要がある。かつ、栽培装置内には前記配管と連結したノズルを栽培植物の配置間隔とあわせて複数個配置する必要があり、設備コストがかかる問題がある。
また、水耕栽培も大量の養液や水を供給する必要があり、そのため、貯液設備、流液設備、配管設備や制御設備が必要となり、設備コストがかかる問題がある。さらに、水耕栽培では水中に常時根部が浸かっているため、根腐りが発生しやすい問題もある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、噴霧発生装置で発生させる養液を含む霧を効率良く栽培植物に供給して、水や養液の使用量を抑制できるようにし、かつ、簡単な設備として設備コストの低減を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の発明として、
栽培植物の少なくとも根部が垂れ下がる中空部を有する栽培ボックスと、
前記栽培ボックスの中空部内に設置され、該中空部に並列される前記栽培植物に向けて養液を霧状として直接に噴射するノズルを備え、
前記ノズルから噴射される養液を含む霧を、前記中空部の全体に充満させると共に、該中空部内を流れる霧で前記栽培植物の根に揺れを与える構成としていることを特徴とする植物栽培装置を提供している。
【0007】
前記のように、本発明では、栽培植物の根部を垂れ下げて配列する中空部内にノズルを配置し、該ノズルから根部に向けて養液を霧状として直接に噴射することを特徴としている。該構成とすると、ノズルからの噴射される霧の風速で根部を揺らすことができ、根部の全面を霧に接触させて根部から養分の吸収を効率的に行わせることができ、植物の生長を促進させることができる。
かつ、中空部内に養液を含む霧を充満させることで、養液を無駄なく植物に吸収させることができるため、肥料および水の供給量を低減でき、コストの低減を図ることができる。かつ、養液や水の貯留設備、配管設備を簡素化でき、設備コストも低減できる。
なお、養液を霧状として噴射すると共に、適時水だけを霧状として噴射してもよい。
【0008】
前記栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で、前記栽培ボックスの上面開口を閉鎖して、前記中空部を形成することが好ましい。
【0009】
前記のように、栽培植物の少なくとも根部にノズルから噴射される養液を含む霧を接触させて吸収させる必要があるが、根部に限定されず、養液や水をノズルから噴射して地上部の茎や葉部にも接触させて吸収させることができる構成としてもよい。
【0010】
即ち、前記栽培ボックス内に、栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で区画される上下中空部を設け、
前記上下中空部にそれぞれ前記ノズルを配置し、下部中空部内に設置したノズルから噴射される養液を含む霧を栽培植物の根部に供給する一方、上部中空部内に設置したノズルから噴射される養液および水を栽培植物の地上部の茎および葉部に供給する構成としてもよい。
【0011】
前記ノズルを前記栽培植物の根部を配列する中空部を囲む一側壁の内面に沿って取り付け、該一側壁から対向する他側壁に向けて並列される前記栽培植物の根部に向けて、前記霧を0.5m/s以上で噴射し、該霧で前記中空部内の湿度を95%以上とし、かつ、
前記ノズルは、養液を含む液体と空気とからなる2流体を混合して平均粒径10μm未満の水滴として噴射するノズル、または養液を含む液体のみからなる1流体を平均粒径10μm以上30μm以下の水滴として噴射するノズルとしていることが好ましい。
【0012】
前記ノズルから噴射する霧は、肥料を所要倍率で水で希釈した養液からなる水滴を含むものである。該養液を含む霧は前記中空部内が湿度95%以上に保持されるように間欠的にノズルから噴射することが好ましい。
【0013】
前記のように、ノズルは養液からなる液体と空気とからなる2流体を混合して、平均粒径10μm未満の水滴を含むドライフォグとして噴射する2流体ノズル、または養液からなる液体のみからなる1流体を平均粒径10μm以上30μm以下の水滴を含むセミドライフォグとして噴射する1流体ノズルを用いている。
前記ドライフォグとは空中に浮遊し物体に付着しない濡れない霧である。前記セミドライフォグとは物体に付着するがすぐに蒸発する霧である。
このように、ドラフォグまたはセミドライフォグとすることで、前記中空部中に養液の水滴を浮遊させ、下部に水滴として落下させにくくすることで、前記中空部中にノズルから噴射する霧を浮遊させて充満させやすくすることができる。
前記ドライフォグを2流体ノズルから噴射しているのは、液体を空気と混合させることで液滴を微粒化できることによる。一方、1流体ノズルから液体のみを噴射しても、液滴を10μm以上30μm以下のセミドライフォグとすることは可能であり、エアを不要とすることで、圧力エア源に要するコストを不要して、コスト削減を図ることができる。
【0014】
前記栽培ボックスの1つの中空部を囲む一方の側壁に、前記ノズルを1つ取り付けていることが好ましい。
前記のように、従来提案されている装置では、間隔をあけて配置される栽培植物と対応させて複数のノズルを配置している場合が多い。これに対して、本発明では1つの中空部に1つのノズルを取り付け、該ノズルからの噴霧を中空部の一方側から他方側へと流している。これにより、中空部の一方側から他方側へと並設した複数の栽培植物に養液を含む霧を供給することができる。このように、ノズルを1つとすることで配管を簡素化でき、設備コストを低減できる。かつ、メンテナンスも簡単とすることができる。
【0015】
前記栽培ボックスを上下複数段で設置し、各栽培ボックスの上壁を水平配置し、この上壁に前記支持材で閉鎖する開口を設けていることが好ましい。
上下複数段で設置する栽培ボックスは成長する栽培植物の高さに応じた間隔をあけ、かつ、各栽培ボックスの上部に照明装置等を配置している。
【0016】
前記のように、栽培植物の根部を配置する中空部を囲む上壁に開口を設け、前記栽培植物を揺動自在に支持する支持材で前記開口を閉鎖している。
上部に前記根部が配列される中空部内には、その下部に、前記ノズルの設置側の一方側から他方側に向けて上向きに傾斜する傾斜板を配置すると共に、該傾斜板の傾斜方向の両端と前記栽培ボックスの両側壁内面との間に循環流発生用の隙間をあけ、
前記ノズルから噴射する霧が前記傾斜板の上面に沿って流れた後に前記循環流発生用の隙間を通って前記傾斜板の下面側に流れ込み、該傾斜板を挟んで前記中空部内を循環する構成としていることが好ましい。
【0017】
栽培ボックスの長さが、例えば6m以上と長い場合には、ノズルから噴射する霧を栽培植物に均等に供給しにくいため、前記した傾斜板を配置し、かつ、傾斜板に沿って霧を循環させることにより、中空部内に並設する栽培植物の全体に養液を含む霧を均等に供給すると共に、該霧を循環流とすることで流れを持続できるようにしている。
傾斜板をノズル設置側の一端から他端に向けて上向き傾斜させているのは、ノズル設置側では噴射される霧の流速が早いため、霧の流通容積を大として流速を低下させる一方、ノズル設置側から離れると霧の速度は低下するため流通容積を小として流速の低下を抑制している。このように、上面に配置する支持材で支持されている栽培植物に対して供給する霧の速度を略一定とすることで、各栽培植物に対する養液の供給量を均等化できる。
なお、栽培ボックスの長さが1〜3m程度と短い場合には、ノズルから噴射する霧を全栽培植物に直接に吹き付けることができるため、前記傾斜板は必ずしも設置する必要はない。
【0018】
前記ノズル設置側と反対側の前記循環流発生用の隙間を通して前記傾斜板の下面側に前記霧を誘導するファンを設置していることが好ましい。
前記ファンを設置すると、傾斜板を挟んで還流する霧の循環流れを強制的に発生させることができる。これにより、養液を含む霧の流れで栽培植物の垂れ下がっている根部を揺らせることができ、栽培植物の生長を促進できる。
【0019】
前記栽培ボックスの開口を閉鎖する支持材は、形状保持力を有する発泡スチロール板からなる支持板を備え、該支持板に間隔をあけて複数の植付穴を穿設し、各植付穴の少なくとも底面を吸水穴となる連続空孔を有する弾性発泡シートで塞ぎ、該弾性発泡シートを前記植物栽培の根部で突き破って前記中空部に根部を垂れ下げていることが好ましい。
【0020】
前記支持板として発泡スチロール板を用いると、軽量化できると共に断熱性を持たせることができ、中空部内の過熱化を防止でき、根腐れを防止できる。
前記弾性発泡シートとしてスポンジシートが好適に用いられる。該スポンジシートは空孔が微小で密であることが好ましい。かつ、該スポンジシートは厚さ1mm〜5mmの範囲の薄肉とし、出来るだけ薄くしていることが好ましい。このように薄肉化すると、養液が浸透し易い。かつ、栽培植物の成長する根部でスポンジシートを容易に突き破らせて、養液を含む霧を充満させる中空部内に栽培植物の根部を自動的に垂れ下がらせることができる。
【0021】
前記発泡スチロール板の上面に遮熱シートを積層して前記支持材を積層板としていることが好ましい。該遮熱シートとしてアルミ箔、該アルミ箔と微小凸部を多数突設した樹脂シートとの積層シート等が好適に用いられる。
【0022】
前記支持材の上方には照明手段を設置して栽培植物の地上部を照明するが、該照明手段から発生する照明光で支持材が過熱されると、中空部内も過熱化され、中空部内で栽培植物の根腐れが発生する恐れがある。よって、照明光を反射する前記アルミ箔またはアルミ箔の積層材を配置し、中空部内の過熱を防止することが好ましい。
【0023】
同様な理由から、前記栽培ボックスの中空部を囲む側壁および底壁に断熱材および遮光材を積層していることが好ましい。
断熱材としては発泡スチロール等、遮光材としては黒色ビニルシート等が好適に用いられ、栽培ボックスの前記側壁及び底壁の外面に貼り付けている。
【0024】
前記支持材に設けた植付穴に着脱自在に内嵌するポットを設け、該ポットの上端に前記植付穴の周縁に載置するフランジを設け、スポンジシートからなる前記弾性発泡シートを前記ポットの内周面から底面開口に沿って取り付け、各ポット内に前記栽培植物を揺動自在に支持することが好ましい。
【0025】
なお、前記弾性発泡シートの周縁を植付穴の上面側周縁に固定して、該弾性発泡シートを植付穴の内周面に沿って配置し、該植付穴の底面開口を塞ぐように位置させることができれば、前記ポットを不要としてもよい。
前記植付穴の形状は限定されないが、下向きに縮小するテーパ穴とすると、前記ポットを用いずにスポンジシートを内嵌保持しやすくなる。
【0026】
前記栽培ボックスの開口に配置する前記支持材は複数枚とし、これら複数の支持材を前記栽培ボックスの開口に着脱自在に取り付けて並列配置することが好ましい。
【0027】
また、第2の発明として、前記栽培植物をフロート支持する支持材を養液を貯溜する育苗容器に浮せ、前記支持材に設けた植付穴の底面開口を閉鎖するスポンジシートを前記植付穴より養液側へと突出させて該スポンジシートの底部に養液を浸透させ、前記スポンジシートの底部上を栽培植物の種または苗の載置面としている育苗装置を提供している。
【0028】
前記第1の発明は、植物に根が出て、該根がスポンジシートを突き破って支持材から垂れ下がった状態から育生する植物栽培装置である。
これに対して、第2の発明の育苗装置は、種またはスポンジシートを根が突き破れない状態の苗を支持材で保持して、養液を溜めた容器内に浮かせて育生する装置である。
該育苗容器では、支持材に設けた植付穴内に配置したスポンジシートの上面で種または苗を保持し、スポンジシートの下面から浸透してくる養液を種または苗に供給して生育している。前記支持材は発泡スチロール板で形成しているため、養液を貯留した浅底の容器内に浮かせることができ、簡単に支持材を設置できると共に取り出すことができる。また、養液に支持材を浮かせ、種と養液の液面を同じ高さとすることで、種の成長を一定にすることができ、栽培管理を容易とすることができる。
【0029】
さらに、第3の発明として、前記第2の発明の育苗装置で育成した栽培植物の根部が前記スポンジシートを突き破ると、育成した植物を前記支持材に保持した状態で前記育苗容器から取り出し、第1の発明の植物栽培装置の栽培ボックスの開口に移し変えて取り付ける植物栽培方法を提供している。
【0030】
前記植物栽培方法によれば、育苗装置の容器内で、種から根部が出て、該根部がスポンジシートを突き破った状態まで育てた後、支持材を取り出して栽培装置の栽培ボックスに移し変えるだけでよい。このように、支持材やポットから栽培植物を取り出して移動させるのではなく、支持材で支持した状態で移動させるため、栽培植物へのダメージを無くして短時間で移植することができる。
【0031】
本発明の栽培装置および栽培方法で栽培できる植物としては、サラダナ、リーフレタス、ベビーリーフ、ミズナ、大葉、ケーキキャベツなどの葉菜、トマト、イチゴ、メロン、マンゴーなどの果菜、ジャガイモ、ラデイッシュなどの根菜が挙げられる。さらに、花類を栽培することもできる。
【発明の効果】
【0032】
前記第1の発明の植物栽培装置では、栽培植物の根部を栽培ボックスの中空部に垂れ下げ、該中空部内に設置したノズルから養液を含む霧を根部に向けて直接に噴霧しているため、根部を揺らせながら養分を吸収させることができ、栽培植物の生長を促進できる。
また、養液を含む霧を根部に向けて直接に噴霧しているため、効率よく養分を根部に吸収させることができ、その結果、肥料や水の使用量を減少できる。かつ、中空部内にノズルを配置しているため、ノズル設置の設備を簡素化でき、設備コストを低減することもできる。
【0033】
前記第2の発明の育苗装置では、栽培植物を種(または苗)の段階から根が張り出す状態まで確実に生長させることができる。
【0034】
かつ、第3の発明の栽培方法では、育苗装置で生長させた栽培植物を栽培装置へ移植する際に、支持材ごと栽培植物を移動できるため、栽培植物にダメージを与えず、短時間に効率よく移植することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)(B)は本発明の第1実施形態の栽培装置のユニットを示す斜視図である。
【図2】(A)は栽培装置と制御装置とを示す斜視図、(B)は栽培装置と制御装置との関係を示す説明図である。
【図3】前記栽培装置の栽培ボックスの概略断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】栽培ボックスに栽培植物を保持した支持材の蓋をかぶせる状態を示す斜視図である。
【図6】前記支持材の拡大断面図である。
【図7】(A)(B)は前記栽培ボックス内に設置する2流体ノズルを示す図面である。
【図8】(A)(B)は前記栽培ボックス内に設置する1流体ノズルを示す図面である。
【図9】(A)(B)は第2実施形態を示し、育苗容器に支持材を浸けた状態の断面図である。
【図10】第3実施形態を示す概略図である。
【図11】(A)〜(D)は第3実施形態の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の栽培装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に第1実施形態を示す。
第1実施形態の植物栽培装置は、図1(A)(B)および図2に示すように、複数の栽培ボックス1を搭載フレーム10に載置して上下複数段に配置している。これを1つのユニットUとすると、複数のユニットを植物工場内に設置している。
なお、栽培ボックス1は植物工場の建屋内に設置する以外に、ビニルハウス等の温室内に設置してもよいし、家庭で栽培する場合は庭やベランダに設置してもよい。
【0037】
前記各栽培ボックス1は横長なボックスからなり、本実施形態では長さLが6m、幅Wが1mであり、上下2段に栽培ボックス1を搭載フレーム10に搭載した状態で1ユニットUの高さHを2mとしている。なお、該栽培ボックス1の長さ、幅、高さは制限されない。該栽培ボックス1は樹脂または繊維強化樹脂の成形品としている。但し、樹脂成形品に限定されず、中空部を略密閉できる強度材から形成すれば、材質は限定されない。
【0038】
各栽培ボックス1には長さ方向Lに一定間隔をあけると共に、幅方向Wにも一定間隔をあけて多数個の栽培植物Pを栽培できる大きさとしている。本実施形態では栽培植物Pは野菜からなる作物としいる。
【0039】
図3〜5に示すように、栽培ボックス1は底壁1a、長さ方向に対向する左右側壁1b、1c、および前後側壁1d、1eを備えた直方体形状とし、上面は開口1hとしている。該開口1hを閉鎖する蓋材として複数の支持材2(2A〜2E)を備えている。図4に示すように、各支持材2は幅方向Wの両端に突設した係止部2aを備え、該係止部2aを栽培ボックス1の前後側壁1d、1eの上端面に係止して着脱自在に取り付けている。
【0040】
前記各支持材2で開口1hを閉鎖することにより栽培ボックス1の内部に略密閉された中空部3を形成している。該中空部3内に前記支持材2でフロート支持された栽培植物Pの根Prを上面から垂れ下げている。即ち、中空部3を根部収容空間としている。
【0041】
前記支持材2は、形状保持力を有する発泡スチロール板からなる支持板20と、該支持板20の上面に固着する遮熱シート21とからなる積層板としている。該遮熱シートとしてはアルミ箔または微小凸部を多数突設した樹脂シートの表面にアルミ箔をラミネートした積層シートを用いている。
前記支持板20と遮熱シート21との積層板からなる各支持材2には、長さ方向Lと幅方向Wに間隔をあけて、複数個の植付穴22を設けている。これら植付穴22は、図6に示すように、下向きに縮径するテーパ穴としているが、穴の形状は限定されない。
【0042】
各植付穴22には、上端にフランジ23aを突設した台円錐筒形状のポット23を上方から挿入して内嵌し、フランジ23aを植付穴22の周縁上面に載置してポット23を支持材2に着脱自在に取り付けている。該ポット23の内周面に沿ってスポンジシート24からなる弾性発泡シートを取り付け、該スポンジシート24でポット23および植付穴22の底面開口を閉鎖している。
【0043】
前記スポンジシート24は微小な空孔が密に連続して形成されたものとし、その肉厚は1mm〜5mmの薄肉とし、本実施形態では約2mmとしている。
前記各ポット23のスポンジシート24で囲まれた空間に、各1本の栽培植物Pの根部Prと地上部Puの境界が挿入されている。植付穴22およびポット23の底面開口を閉鎖するスポンジシート24の閉鎖部24aを栽培植物Pの根部Prが突き破って垂れ下がっている。このように、栽培植物Pを支持材2でフロート支持している。
【0044】
前記栽培植物Pをフロート支持した支持材2で栽培ボックス1の上面開口1hを閉鎖すると、中空部3内には上面から栽培植物Pの根部Prが長さ方向および幅方向に一定間隔をあけて垂れ下がった状態で並列している。かつ、中空部3内に垂れ下がった各栽培植物Pの根部Prは中空部3内に垂れ下がっているだけであるため、揺動しやすくなっている。
【0045】
前記栽培ボックス1の中空部3を囲む図中左側壁1bの内面の幅方向Wの略中央位置に、1本のノズル5を取り付けている。該ノズル5は肥料を水により所要倍率で希釈した養液を平均粒径10μm未満のドライフォグとして噴射する2流体ノズルとしている。
該ノズル5には図2に示すように栽培ボックス1の外部に配置した制御装置に接続した配管7を通して養液を供給すると共に、コンプレッサー45(またはブロアから)圧力空気を供給し、中空部3内に配置したノズル5から対向する右側壁1cに向けてドライフォグを噴霧している。これにより栽培ボックス1の左右両側壁1bと1cとの間に配列した栽培植物Pの根部Prにドライフォグを直接に吹き付け、根部Prを揺らせると共に養液の液滴を根部Prに接触させて養液を吸収させている。なお、ノズル5からドライフォグとして噴射する霧は養液の水滴を含む霧に限定されず、必要に応じて、水だけをドライフォグとして供給する場合もある。
【0046】
また、栽培ボックス1の中空部3内の下部に、図3、4に示すように、ノズル5の設置側の側壁1b側から側壁1c側に向けて上向きに傾斜する傾斜板8を配置している。該傾斜板8の傾斜角度θは5度以下で、2度〜3度の範囲としていることが好ましい。
ノズル5は傾斜板8より上方位置に配置している。傾斜板8の長さは栽培ボックス1の長さLより若干短くし、傾斜板8の長さ方向の両端と栽培ボックス1の側壁1b、1cの内面との間にそれぞれ循環流発生用の隙間9A、9Bを設けている。これにより、ノズル5から噴射するドライフォグの霧Mが傾斜板8の上面に沿って流れた後に循環流発生用の隙間9Aを通って傾斜板8の下面側へと流れ、循環流発生用の隙間9Bから傾斜板8の上面側へと流れ、傾斜板8を挟んで循環できるようにしている。
【0047】
図4に示すように、傾斜板8の幅は栽培ボックス1の幅Wと同等とし、傾斜板8の上面側を流れる霧Mが幅方向から傾斜板8の下面側へと流れ込まないようにしている。
また、ノズル5の設置側と反対側の循環流発生用の隙間9Aを通して傾斜板8の下面側に霧Mを確実に誘導できるようにファン11を設置している。このファン11により傾斜板8の上面側を流れる霧Mを吸引して傾斜板8の下面側で吐出させて前記循環流れを強制的に発生させている。
【0048】
さらに、ノズル5にもファン12を付設して、ノズル5から噴射する霧Mが傾斜板8の上面に沿って流れると共に側壁1cへ届くように噴射距離を増大させ、かつ、霧Mに0.5m/secの風速を与えている。なお、栽培ボックス1の長さが比較的短い場合には、ノズル5に付設するファン12を無くすことができる。
【0049】
前記のように、中空部3内に傾斜板8を配置すると共に、ファン11、12を配置することで、中空部3内に養液を含む霧Mに循環流れを発生させ、霧Mが中空部3内で滞留させないようにしている。このように、霧Mの循環流れで中空部3内に垂れ下がらせた栽培植物Pの根部Prを揺らすことで、栽培植物の成長を促進できる。
【0050】
さらに、中空部3を囲む栽培ボックス1の底壁1a、側壁1b〜1eの外面に黒色ビニルシートからなる遮光材15と、発泡スチロールからなる断熱材16を積層している。これにより、中空部3内の過熱を防止すると共に遮光し、栽培植物Pの根部Prにとって最適環境に保持している。
【0051】
前記中空部3に設置するノズル5として前記のように2流体ノズルを用いてドライフォッグからなる霧Mを噴霧させている。この種の2流体ノズルとしては本出願人が提供しているドライフォグ発生用の2流体ノズルが好適に用いられる。本実施形態では、特開2008−306585号公報に記載の図7(A)(B)に示すノズル5を用いている。
【0052】
前記ノズル5は、本体52の中心線(S1)上の噴射側先端に第一噴口53を設け、該第一噴口53を挟むと共に第一噴口53より噴射側(X)に突出する位置に第二噴口54と第三噴口55とを設けている。該第二噴口54と第三噴口55とは中心線(S1)を支軸として対称としている。
【0053】
本体52には液体を流通させる液体流路57と、圧搾空気を流通させる空気流路58とを設け、液体流路57と空気流路58のそれぞれ一端は、本体52の流体供給側の端面52aに液体供給口57a、空気供給口58aとして開口している。
前記液体流路57と空気流路58とは第二噴口54と第三噴口55に連通して気液混合液を噴射させ、第一噴口53には空気流路58のみを連通させてエアを噴射させ、これら3つの噴口から噴射する流体を噴射側(X)の1つの衝突点(P0)で衝突させている。
【0054】
前記のように、第一噴口53は本体52の中心線(S1)上に位置する噴射側端面52bの中心に設けた突出部52cの先端に設けている。本体52の外周部を噴射側に向けて拡径させ、左右両側の中央部に更に噴射側へ拡径しながら突出させた分岐部52d、52eを設けている。各分岐部52d、52eの先端側は逆方向の縮径方向へ屈折させた屈折部52f、52gを設けている。一方の屈折部52fの先端に第二噴口54を設け、他方の屈折部52gの先端に第三噴口55を設けている。
【0055】
前記液体流路57は液体供給口57aと連通させた流入路57bを2方向に分岐させ、前記分岐部52dから屈折部52fを通り第二噴口54に達する分岐通路57cと、前記分岐部52eから屈折部52gを通り第三噴口55に達する分岐通路57dを設けている。
前記空気流路58は空気供給口58aと連通させた流入路58bを3方向に分岐させ、第一噴口53に連通する分岐通路58c、第二噴口54に連通する分岐通路58d、第三噴口55に連通する分岐通路58eを設けている。
前記第二噴口54と第三噴口55とからは、それぞれ、液体流路57と空気流路58とから供給される水と空気を液体を中心として空気を外周側から外部混合して気液混合液として噴射している。
【0056】
第二噴口54の中心線(S2)と第三噴口55の中心線(S3)は、ノズル中心線(S1)の噴射側(X)の延長線に向けて傾斜し、前記衝突点P0で交差させ、該衝突点P0で第一噴口53からの噴射する空気と、第二噴口54および第三噴口55から噴射する気液混合液の3つの流体を衝突させている。
また、第一噴口53の先端点から衝突点(P0)までの距離L1は、第二、第三噴口54、55の先端点から衝突点(P0)までの距離L2は前記距離L1より短い(L2<L1)としている。
【0057】
前記構成としたノズル5では、第一噴口53から噴射する空気と、第二、第三噴口54、55から噴射する気液混合液が、第一噴口53の先端から距離L1をあけた1つの衝突点(P0)で衝突して外部混合する。
この3方からの流体の衝突で衝突点(P0)に超音波が発生し、該超音波により混合した流体を超音波振動で霧中の粒子をより10μm未満に微粒化でき、ドライフォグからなる霧を発生させることができる。
【0058】
前記した植物栽培装置の栽培ボックス1を植物工場内に設置し、かつ、植物工場内には、図2(A)(B)に示すように、栽培ボックス1に隣接して制御装置を設置している。この制御装置で図1に示すユニットUを複数台制御している。
【0059】
また、各栽培ボックス1の上方に蛍光灯またはLEDからなる照明装置40およびCO供給ヘッダ41を設置し、さらに、側方に送風ファン、温度・風・C0の検出センサーユニット43を設置している。栽培ボックス1の中空部3内の温度および湿度を測定するセンサー44も設置している。
さらに、栽培ボックス1の外部に設置した制御ボックス80にコンプレッサー45、エアータンク46、液肥タンク47、ポンプ48、C0ボンベ49を接続している。
コンプレッサー45からの圧力空気、液肥タンク47からの養液を制御ボックス80で調整して配合し、配管7を通してノズル5へ送給し、所要時間毎に養液を含む霧Mを噴霧している。
【0060】
前記植物栽培装置を用いた栽培方法について、以下に説明する。
栽培ボックス1の上面の開口1hを図5に示すように、支持材2で閉鎖し、中空部3を略密閉している。支持材2には、その各植付穴22内に栽培植物Pを収容したポット23を挿入して取りつけている。よって、支持材2で開口1hを閉鎖した状態で中空部3内には上方に配置する支持材2から長さ方向Lおよび幅方向Wに一定間隔をあけて栽培植物Pの根部Prが垂れ下がった状態となる。
【0061】
前記中空部3内にはノズル5から定期的に養液を含む霧Mを噴霧し、中空部3内を湿度95%以上となるように霧Mを充満させている。
また、ノズル5から噴射する霧Mの噴射圧およびファン11、12から供給する風により、養液を含む霧Mを風速0.5m/sec以上としている。この風速を有する霧Mを中空部3内で傾斜板8の上面側を、ノズル5の設置側の側壁1bから対向する側壁1c側へと流通させ、ついで、ファン11により吸引して、傾斜板8の下面側で側壁1c側から側壁1b側へと流通させている。このように、中空部3内で霧Mを滞留させずに循環流れとして、栽培植物Pの根部Prを揺らせながら霧Mを接触させて、養液を根部Prに吸収させている。また、養液をノズル5から噴射すると共に、水だけを定期的に噴射してもよい。
【0062】
このように、養液や水をドライフォグにして栽培植物Pの根部Prにとって最適な状態で、かつ、最適な量を供給でき、栽培植物に最適な環境を与えることができる。よって、収穫量を増大させることができる。
また、栽培植物Pの生長に必要な養液をドライフォグにして中空部3内に直接噴射することで、養液や水の使用量を最小とすることができる。また、ドライフォグとして中空部3内の全体に略均等に充満させるために、ノズル5は1つでよく複数個数を設置する必要はない。かつ、ドライフォグは中空部3の空中に浮遊させることができるため、中空部3内に垂れ下げる全ての根部Prに均等に養液や水を供給することができ、栽培植物Pを均等は生長させることができる。
さらに、中空部3の空間に養液や水の粒子が浮遊し、中空部3の底部に落下して液層として溜まらないため、根腐れ等の発生を抑制、防止できる。
【0063】
前記第1実施形態では、栽培ボックス1内に設置するノズル5として、ドライフォグを発生させる2流体ノズルを用いているが、図8(A)(B)に示すように1流体ノズル5−1を用いてもよい。該1流体ノズル5−1では、肥料を所要倍率で希釈した液肥からなる液体のみを噴霧し、10μm以上30μm以下のセミドライフォグを発生させている。ノズル5ー1から噴霧する霧をセミドライフォグとしても、水滴が落下せず、中空部3の空中に浮遊させることができるため、第1実施形態と同様の作用効果を有する。
【0064】
前記図8に示す1流体ノズル5−1は本出願人の先願である特開2008−104929号公報に開示したノズルである。
該ノズル5−1は筒状の本体62、該本体62の噴射側壁62bの内面に固定したノズルチップ63からなる。本体62は円筒状の周壁62aの一端を噴射側壁62bで閉鎖し、その中央に噴口62cを設ける一方、周壁62aの他端は開口62dとし、開口62dは供給用配管と連通し、本体62の中空部62eに流入している。
【0065】
前記ノズルチップ63は大略円盤形状とし、本体62の成型時にモールドして、本体62の噴射側壁62bの内面に固定している。ノズルチップ63は本体62の噴射側壁62bの中心の噴口62cと連通する噴射穴63aを中央部に備え、噴射穴63aから噴口62cを通して旋回流として養液および水を噴霧する構成としている。前記噴射穴63aは、流入側から縮径するテーパ状穴部63a−1と、該テーパ状穴部63a−1に連続して噴口62cに連通する小径穴部63a−2とからなる。図8(B)に示すように、ノズルチップ63の内面には90度間隔をあけて円弧状に湾曲させた旋回溝63bを設け、これら旋回溝63bの内周端をテーパ状穴部63a−1の周縁と連通させ、旋回溝63bを通して液体を旋回させながら流入する構成としている。
【0066】
前記1流体ノズル5−1では、配管から本体62に流入する水は、噴射側において、ノズルチップ63の旋回溝63bを通り、旋回流となって噴射穴63aのテーパ状穴部63a−1に流入する。該テーパ状穴部63a−1内で、該穴部の内周面に旋回しながら衝突するため水滴が微細化され、該テーパ状穴部63a−1より噴射側の小径穴部63a−2に流入し、さらに、連通した本体62の噴口62cから、10〜30μmの微細な水滴となって、セミドライフォグとして噴射される。
【0067】
図9(A)(B)に第2実施形態の育苗装置を示す。
第2実施形態の育苗装置で用いる育苗容器30は1枚の前記支持材2を浮遊させる上面開口の浅底の容器である。なお、育苗容器30を大きくして複数枚の支持材2を浮遊させてもよい。該育苗容器30内には養液Qを貯溜し、発泡スチロールからなる軽量な支持板からなる支持材2を液面に浮かせている。
【0068】
前記支持材2に設けた植付穴22およびポット23の底面開口を閉鎖するスポンジシート24の閉鎖部24aを養液Q側へと突出させ、スポンジシート24の閉鎖部24aに養液Qを常時浸透させている。図9(A)に示すように、スポンジシート24の閉鎖部24a上に栽培植物Pの種Psを撒いている。
【0069】
このように、育苗容器30内でスポンジシート24で保持した種Psを常時養液Qに接触させていることにより、種Psの発芽を促進し、図9(B)に示すように、苗Pyに生長させることができる。なお、苗Pyの状態でスポンジシート24で保持してポット23に収容してもよい。
【0070】
このように、育苗容器30内の種Psを苗Pyに生長させ、さらに、前記図6に示すように、苗Pyの根部Prがスポンジシート24を突き破る状態まで生長すると、支持材2を育苗容器30から引き上げて取り出している。支持材2で栽培植物Pを保持した状態で、前記図5に示すように、第1実施形態の栽培装置の栽培ボックス1へと移動させ、上面の開口1hに閉鎖するようにかぶせる。
【0071】
前記のように育苗容器30で種(または苗)の段階から生長させた後、支持材2ごと移動させるために栽培植物Pにダメージを与えない利点がある。かつ、支持材2を移動させるだけであるため、育苗容器30から栽培ボックス1への移植を短時間で効率よく行うことができる。
【0072】
図10に第3実施形態を示す。
第3実施形態は、栽培植物Pの根部Prに養液を含む霧を噴射しているだけでなく、栽培植物Pの地上部である茎や葉部に向けてノズルから養液および水を直接噴射している。なお、栽培植物の茎や葉部に対しても、根部と同様にドライフォグまたはセミドライフォグにして養液を供給してもよい。
【0073】
具体的には栽培ボックス1内に、栽培植物Pの根部Prと地上部Puとの境界をフロート支持する前記支持材2で区画して下側の中空部3と上側の中空部70を設けている。
前記上下の中空部3、70にそれぞれ各1つのノズル5ー1、71を配置している。下側の中空部3は前記第1実施形態と同様としているが、傾斜板は配置していない。上側の中空部70に配置するノルズ71は1流体ノズルとしている。
下側の中空部3および上側の中空部70内の湿度、温度を検出するセンサ72A、72Bを設置し、該センサ72A、72Bからの検出信号を制御ボックス80に送信し、ノズル5−1、71からの養液および水の噴射を制御している。
【0074】
なお、図11(A)〜(D)に第3実施形態の変形例を示す。
いずれの変形例も、栽培ボックス1内に、栽培植物Pの根部Prと地上部Puとの境界ラインを階段状または傾斜状に変形させ、栽培スペースを有効利用できるようにしている。他の構成は第3実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0075】
1 栽培ボックス
2 支持材
5、5−1 ノズル
8 傾斜板
10 搭載フレーム
11、12 ファン
20 支持板
22 植付穴
23 ポット
24 スポンジシート
30 育苗容器
80 制御ボックス
P 栽培植物
Pr 根部
Ps 種
Py 苗
Pu 地上部
M 養液を含む霧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の少なくとも根部が垂れ下がる中空部を有する栽培ボックスと、
前記栽培ボックスの中空部内に設置され、該中空部に配列される前記栽培植物に向けて養液を霧状として直接に噴射するノズルを備え、
前記ノズルから噴射される養液を含む霧を、前記中空部の全体に充満させると共に、該中空部内を流れる前記霧で前記栽培植物の根に揺れを与える構成としていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で、前記栽培ボックスの上面開口を閉鎖して、前記中空部を形成している請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記栽培ボックス内に、栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で区画される上下中空部を設け、
前記上下中空部にそれぞれ前記ノズルを配置し、下中空部内に設置したノズルから噴射される養液を含む霧を栽培植物の根部に供給する一方、上中空部内に設置したノズルから噴射される養液および水を栽培植物の地上部の茎および葉部に供給する構成としている請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記ノズルを前記栽培植物の根部を配列する前記中空部を囲む一側壁の内面に取り付け、該一側壁から対向する他側壁に向けて並列される前記栽培植物の根部に向けて、前記霧を0.5m/s以上で噴射され、かつ、該噴射される霧で前記中空部内の湿度を95%以上とし、さらに、
前記ノズルは、養液または水からなる液体と空気とからなる2流体の混合液を平均粒径10μm未満の水滴として噴射するノズル、または養液または水からなる液体のみの1流体を平均粒径10μm以上30μm以下の水滴として噴射するノズルとしている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記栽培ボックスの1つの中空部に、前記ノズルを1つ取り付けている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記栽培植物の根部を垂れ下げる前記中空部内の下部に、前記ノズルの設置側の一方側から他方側に向けて上向きに傾斜する傾斜板を配置すると共に、該傾斜板の傾斜方向の両端と前記栽培ボックスの両側壁内面との間に循環流発生用の隙間をあけ、
前記ノズルから噴射する霧が前記傾斜板の上面に沿って流れた後に前記循環流発生用の隙間を通って前記傾斜板の下面側に流れ込み、該傾斜板を挟んで前記中空部内を循環する構成としている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記ノズル設置側と反対側の前記循環流発生用の隙間を通して前記傾斜板の下面側に前記霧を誘導するファンを設置している請求項6に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記栽培ボックスの開口を閉鎖する支持材は、形状保持力を有する発泡スチロール板からなる支持板を備え、該支持板に間隔をあけて複数の植付穴を穿設し、各植付穴の少なくとも底面を吸水穴となる連続空孔を有する弾性発泡シートで塞ぎ、該弾性発泡シートを前記植物栽培の根部で突き破って前記中空部に根部を垂れ下げている請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記発泡スチロール板の上面に遮熱シートを積層して前記支持材を積層板としている請求項8に記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記栽培植物の根部を配置している前記中空部を囲む側壁および底壁に断熱材および遮光材を積層している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項11】
前記支持材に設けた植付穴に着脱自在に内嵌するポットを設け、該ポットの上端に前記植付穴の周縁に載置するフランジを設け、スポンジシートからなる前記弾性発泡シートを前記ポットの内周面から底面開口に沿って取り付け、各ポット内に前記栽培植物を揺動自在に支持している請求項8または請求項9に記載の植物栽培装置。
【請求項12】
前記栽培ボックスの開口に配置する前記支持材は複数枚とし、これら複数の支持材を前記栽培ボックスの開口に着脱自在に取り付けて並列配置している請求項2乃至請求項11のいずれか1項の記載の植物栽培装置。
【請求項13】
請求項2に記載の支持材を養液を貯溜する育苗容器に浮せ、前記支持材に設けた植付穴の底面開口を閉鎖するスポンジシートを前記植付穴より養液側へと突出させて該スポンジシートの底部に養液を浸透させ、前記スポンジシートの底部上を栽培植物の種または苗を載置面としている育苗装置。
【請求項14】
請求項13に記載の育苗容器で育成した栽培植物の根元が前記スポンジシートを突き破ると、育成した植物を前記支持材に保持した状態で前記育苗容器から取り出し、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の植物栽培装置の栽培ボックスの開口に移し変えて取り付ける植物栽培方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−10651(P2012−10651A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150556(P2010−150556)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(390002118)株式会社いけうち (26)
【Fターム(参考)】