説明

植物油のエステル交換アルコキシル化からの安定なアルコキシル化脂肪酸アルキルエステル

アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルは、バイオ成分原料(好ましくはトリグリセリドを含有する)から製造される。トリグリセリドは、酸性触媒の存在下で、アルコールと反応されて、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルが形成されることができる。これは、脂肪酸アルキルエステルの非アルコキシル化型に比較して、石油化学生成物の低温特性および/または酸化安定性の向上をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシル化ディーゼル沸点範囲生成物を、ジクリセリドおよび/またはトリグリセリド含有原料などのバイオ成分原料から製造するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
バイオ成分素材に基づく燃料は、恐らくは、将来、次第に一般的になるであろう。既に、幾多の政府は、モーター燃料プールがバイオ成分素材(植物、動物、魚類、または藻類ベースの油脂など)から誘導される燃料を、最小パーセントで含有するという現在および将来の要求を制定している。
【0003】
ディーゼル範囲燃料をバイオ成分原料から創生するための一つの現行技術は、トリグリセリドを、エステル交換によって、脂肪酸アルキルエステル(脂肪酸メチルエステル(FAME)など)に転化することである。エステル交換反応の典型的な生成物は、グリセロール、および脂肪酸アルキルエステル(大略、元のトリグリセリドの脂肪酸鎖、およびエステル交換に用いられるアルキルアルコールに対応する)である。エステル交換反応は、酸を用いて、接触反応させることができる。しかし、典型的には、塩基接触反応が、より早い反応速度の理由から用いられる。
【0004】
ディーゼル燃料に用いるために典型的に製造される脂肪酸メチルエステルは、多数の欠点を有する。例えば、長さ約C14〜約C20の飽和炭素鎖を有する脂肪酸メチルエステル(ディーゼル範囲で沸騰する)は、典型的には、不十分な低温流動特性を有する。一方、長さ約C14〜約C20の炭素鎖を有する不飽和脂肪酸メチルエステルは、典型的には、許容可能な低温流動特性を有する。しかし、酸化をより受け易い。従って、バイオディーゼルとして用いるためのより適切な化合物が、望まれるであろう。
【0005】
特許文献1には、アリール炭化水素を、脂肪酸または脂肪酸エステルのオレフィン全てに亘って付加するための方法が記載される。芳香族基の付加は、酸特性を有するクレーまたはゼオライトを用いて接触反応させる。反応は、圧力50psig〜200psig(350kPag〜1.4MPag)で行なわれる。
【0006】
特許文献2には、アリール炭化水素を、脂肪族炭化水素のオレフィン全てに亘って付加するための方法が記載される。芳香族基の付加は、超酸を用いて接触反応させる。
【0007】
特許文献3には、脂肪酸をトリグリセリドから製造するための方法が記載される。トリグリセリドは、固体酸触媒の存在下でアルコールへ曝露される。大気圧または大気圧近傍の反応圧が記載される。
【0008】
特許文献4には、脂肪酸アルキルエステルを形成するための方法が記載される。その方法の一つには、植物油を、酸性官能基を組込んだ樹脂発泡体の存在下でアルコールへ暴露する工程が含まれる。スルホン酸基が、樹脂発泡体の可能な酸性官能基として記載される。温度50℃〜120℃、および大気圧近傍の反応圧力が記載される。
【0009】
特許文献5には、有機酸またはエステルとアルコールとの反応において、エーテルよりむしろエステルを優先的に形成するための方法が記載される。その方法には、有機酸またはエステルを、表面が酸性官能基を含むように修飾されているビニル芳香族ポリマービーズの存在下でアルコールへ曝露する工程が含まれる。スルホン酸およびクロロスルホン酸が、ビーズの官能基化剤として記載される。ビーズの内部は、官能基化されない。反応条件については、温度130℃未満が、ビーズの安定性の理由から記載され、かつ大気圧近傍の圧力が記載される。
【0010】
特許文献6には、CまたはCオレフィンを、酸官能基化ビニル芳香族ビーズ触媒の存在下でC〜Cアルコールと反応させる方法が記載される。プロセスは、オリゴメリゼーションおよびエーテル化を引起すものとして記載される。プロセスは、反応混合物の沸点で行われる。
【0011】
特許文献7には、留出油燃料または潤滑油組成物を製造するためのプロセスが記載される。プロセスには、C以上のオレフィンを、イオン性液体触媒の存在下でイソパラフィンと反応させる工程が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,840,942号明細書
【特許文献2】米国特許第5,034,161号明細書
【特許文献3】特開06−313188号公報
【特許文献4】米国特許第7,488,837号明細書
【特許文献5】米国特許第5,426,199号明細書
【特許文献6】米国特許第5,003,124号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2007/0142690号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態においては、ディーゼル沸点範囲生成物を製造するための方法が提供される。本方法には、バッチ式反応器において、グリセリド少なくとも約50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価約0.1mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、約7個以下の炭素を有するアルコールへ曝露する工程が含まれる。アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルは、アルコールから分離されて、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル生成物を形成することができる。得られる脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、好都合には、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも2℃低いくもり点を有することができる。
【0014】
他の実施形態においては、ディーゼル沸点範囲生成物を製造するための方法が提供される。本方法には、バッチ式反応器において、トリグリセリド少なくとも約50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価約5mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する固体触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、4個以下の炭素を有するアルコールへ曝露し、その際効果的な条件には、少なくとも約350kPagの圧力および少なくとも約200℃の温度が含まれる工程が含まれる。固体触媒は、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルから分離されることができる。アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルはまた、アルコールから分離されることができる。分離により、好都合には、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル反応生成物の形成がもたらされることができる。脂肪酸アルキルエステル反応生成物はまた、好都合に、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも5℃低いくもり点を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の反応を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
種々の実施形態においては、トリグリセリドなどのグリセリドを、ディーゼル沸点範囲化合物へ効果的に転化するための方法が提供される。これは、(トリ)グリセリド化合物を、適切なアルコールと反応させるプロセスを用いて達成される。生じる一つのトリグリセリド反応は、エステル交換であり、これにより、脂肪酸アルキルエステルおよびグリセロールの形成がもたらされる。他の反応は、トリグリセリドの長い炭素鎖テールにある二重結合のいくつかまたは全てを、アルコキシル化することである。これらの二つの反応は、プロセスにおいては、いかなる順序でも生じることができる。このプロセスで形成される脂肪酸アルキルエステルは、ディーゼル沸点範囲生成物に対応することができる。好ましい実施形態においては、このプロセスで形成される脂肪酸アルキルエステルは、僅かなオレフィン結合を有するか、またはそれを全く有しなくてもよい。
【0017】
バイオディーゼルに対する関心事の二つの領域には、低温流動特性、および貯蔵/熱安定性が含まれる。バイオディーゼルをトリグリセリドから製造するための従来のプロセスには、典型的には、エステル交換が含まれる。脂肪酸メチルエステル(FAME)を形成するためのメタノールとのエステル交換などである。いくつかのFAMEの変型(カノーラメチルエステルなど)は、他の脂肪酸メチルエステル(タロウーメチルエステル(+14℃)など)より、比較的低いくもり点(−3℃)を有する。カノーラメチルエステルなどのFAMEの変型の低減されたくもり点は、部分的には、より多量のオレフィン結合を分子の脂肪酸部分に有することによると考えられる。これらのFAME分子の例には、例えばメチルオレートおよびメチルリノレエートが含まれる。対照的に、タロウーメチルエステル(しばしば、脂肪酸メチルエステルの混合物を表すことがある)は、多量の飽和炭素鎖を含む傾向がある場合がある。
【0018】
脂肪酸メチルエステル主鎖におけるオレフィン結合は、低温特性を向上することができるものの、オレフィン結合はまた、バイオディーゼルの酸化安定性を低減する傾向がある場合がある。オレフィン結合は、燃料および潤滑油の両方に問題を引起す場合がある。例えば、オレフィン結合は、オリゴマー化して、「ガム」デポジットが燃料中に形成されることがある。オレフィン結合はまた、酸化することがある。これは、潤滑油の特別の問題であることがある。例えば、酸化されたバイオディーゼル燃料は、潤滑油添加剤と、「潤滑油希釈」の過程で相互作用することがあろうし、また実質的に潤滑油寿命に影響を与えることがある。
【0019】
上記の問題を最小にする一つの方法は、二重結合の一部または全てを水素添加して、飽和脂肪酸メチルエステル(メチルステアレートなど)が製造されることである場合がある。メチルステアレートは、典型的には、比較的安定と考えられるが、融点約40℃を有する。これは、それを、燃料用途に望ましくなくする。多量のメチルステアレート(タロウーメチルエステルなど)を含むものを含有するバイオディーゼル燃料は、典型的には、不十分な低温特性を示すが、向上された酸化安定性を示すことができる。他の飽和メチルエステルを含有するバイオディーゼル燃料はまた、比較的不十分な低温特性を示す傾向がある場合がある。あまり望まれない低温特性を示すことに加えて、水素を用いてFAMEのオレフィン結合を飽和することはまた、水素源を必要とする。これは、特に製油所ベースのプロセスにおいては、高価であり、かつ供給が困難である場合がある。
【0020】
種々の実施形態においては、次に記載されるエステル交換およびアルコキシル化プロセスは、脂肪酸アルキルエステルを含むディーゼル沸点範囲生成物を形成する他の方法を越えるいくつかの利点を提供することができる。本方法は、低減されたオレフィン結合数を有するか、好ましくはオレフィン結合を全く有しない脂肪酸アルキルエステルを、単一工程のプロセスで製造することを可能にすることができる。適切な温度および圧力の条件、並びに適切な酸触媒を選択することに基づいて、エステル交換およびアルコキシル化のプロセスは、同じ反応工程で生じることができる。本方法によりまた、所望のディーゼル沸点範囲生成物を他の反応体および触媒から容易に分離することが可能になることができる。酸触媒(固体である場合)は、ろ過によるなどで、物理的に、ディーゼル沸点範囲生成物から分離されることができる。一方、いかなる残留するアルコールおよび/またはグリセロールも、大きな沸点差により、蒸留によって除去されることができる。加えて、本方法は、強い液体酸(硫酸など)を用いることを必要としない。従って、潜在的に付随する廃棄物処理の有害レベルおよび/またはその量の問題が低減される。種々の実施形態においては、得られる生成物は、向上された低温特性を有し、一方また低減された重合傾向、即ち低減された「ガム」を有するという利点を有することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態の反応例を示す。図1においては、トリグリセリド反応体は、三つの異なるタイプの炭素側鎖を有して示される。側鎖の二つには、オレフィン結合が存在する。トリグリセリドを、酸性触媒の存在下でアルコールと反応させた後、三つの脂肪酸アルキルエステル、並びにグリセロールが製造される。各脂肪酸アルキルエステルの長い炭素側鎖は、トリグリセリド反応体からの炭素側鎖の一つに対応する。しかし、一つ以上のオレフィン結合を含む反応体の炭素側鎖については、オレフィン結合は、アルコキシ基を付加することにより消滅されている。
【0022】
原料材/反応物質
本明細書で用いられるように、「バイオ成分原料材」とは、植物性油脂および/または動物性油脂(それぞれ、藻類および魚類の油脂を含む)などの生物学的原料物質成分から誘導される炭化水素原料材(典型的にはまた、いくつかの酸素原子を含有する)をいう。本文書の目的に対しては、植物性油脂とは、一般に、任意の植物ベース物質をいい、これには、ジャトロファ属からの植物などの素材から誘導される熱分解油および油脂が含まれることに注目されたい。本発明で用いられることができる植物油、動物脂、および藻類油脂には、好都合には、トリグリセリドおよび/または遊離脂肪酸(FFA)を含む任意のものが含まれることができる。トリグリセリドおよびFFAは、典型的には、脂肪族炭化水素鎖をそれらの構造内に含有する。これは、炭素約10〜約26個(例えば炭素約14〜約22個、または好ましくは炭素約16〜約18個)を有する。生物学的原料物質成分から誘導される原料の他のタイプには、脂肪酸アルキルエステルなどの脂肪酸エステル(例えば、FAMEおよび/またはFAEE)が含まれる。バイオ成分原料材の例には、限定されることなく、菜種(カノーラ)油、落花生油、ひまわり油、トール油、トウモロコシ油、大豆油、ヒマシ油、ジャトロファ油、ホホバ油、オリーブ油、椿油、獣油脂、亜麻仁油、パーム油など、およびそれらの組合せが含まれることができる。種々の実施形態においては、バイオ成分原料は、トリグリセリド少なくとも約50wt%、例えば少なくとも約75wt%、少なくとも約90wt%、または少なくとも約95wt%を含有することができる。
【0023】
他の実施形態においては、バイオ成分原料材には、モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドおよびジグリセリドの組合せ、またはトリグリセリドと組合せた上記の任意のものが含まれることができる。原料がモノグリセリドおよび/またはジグリセリドを含む実施形態においては、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドは、少なくとも部分的に、トリグリセリドの加水分解生成物を含むことができる。加えてまたは別に、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドは、少なくとも部分的に、エステル交換プロセスの副生物を含むことができる。勿論、当業者は、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドはまた、本発明の種々の実施形態のエステル交換およびアルコキシル化プロセスの過程で形成されることができることを理解するであろう。
【0024】
本記載においては、グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、または任意の他のタイプのポリグリセリドが含まれると定義される。原料材がグリセリドを含む実施形態においては、グリセリドは、全て同じであることができるか、またはグリセリドの混合物が提供されることができる。グリセリドの混合物は、モノグリセリド、ジグリセリド、および/またはトリグリセリドが存在することに起因する混合物であることができる。グリセリドの混合物は、加えてまたは別に、例えば多数のタイプのモノグリセリド、ジグリセリド、および/またはトリグリセリドが存在することに起因する混合物であることができる。
【0025】
バイオ成分原料材には、しばしば、種々のタイプのグリセリド(トリグリセリドなど)および/または脂肪酸の混合物が含まれることができる。グリセリドおよび/または脂肪酸の混合物には、飽和および不飽和の両炭素鎖が含まれることができる。これらの混合物を含む実施形態においては、グリセリドおよび/または脂肪酸少なくとも約10wt%には、不飽和炭素鎖が、例えば少なくとも約20wt%、少なくとも約30wt%、または少なくとも約40wt%含まれる。他の実施形態においては、グリセリドおよび/または脂肪酸約85wt%以下には、不飽和炭素鎖が、例えば約75wt%以下、約65wt%以下、または約55wt%以下含まれることができる。実施形態においては、バイオ成分原料材は、グリセリド少なくとも約50wt%、例えば少なくとも約75wt%、または少なくとも約90wt%であることができる。好ましい実施形態においては、グリセリドは、トリグリセリドであることができる。
【0026】
バイオ成分ベースのディーゼル沸点範囲原料ストリームは、典型的には、低い窒素および硫黄含有量を有することができる。例えば、バイオ成分ベースの原料ストリームは、窒素(窒素含有化合物の形態)百万分の約三百重量部(約300wppm)以下を含有することがある。窒素および/または硫黄の代わりに、バイオ成分ベースの原料中の主要なヘテロ原子成分は、酸素(酸素含有化合物の形態)である。適切なバイオ成分ディーゼル沸点範囲原料ストリームには、酸素(約10wt%〜約12wt%)以下が含まれることができる。好ましい実施形態においては、バイオ成分原料ストリームの硫黄含有量は、好都合には約15wppm以下、好ましくは約10wppm以下であることができる。但し、いくつかの実施形態においては、バイオ成分原料ストリームは、実質的に、硫黄を含まないことができる(例えば、50wppm以下、好ましくは20wppm以下、例えば15wppm以下、10wppm以下、5wppm以下、3wppm以下、2wppm以下、1wppm以下、500wppb以下、200wppb以下、100wppb以下、50wppb以下を含有するか、または測定可能な硫黄を完全に含まないことができる)。
【0027】
種々の実施形態で用いられる他の反応体は、短鎖アルコールである。適切なアルコールには、炭素1〜7個、好ましくは炭素1〜4個を含有するアルコールが含まれる。好ましくは、アルコールは、第一級アルコールである。適切なアルコールの例には、限定されることなく、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソ−アミルアルコール、n−ペンタノール、メトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、エトキシエタノールなど、およびそれらの組合せが含まれることができる。実施形態においては、アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、またはそれらの組合せを含む。
【0028】
触媒
種々の実施形態においては、酸触媒は、酸性官能基を含有するクレー(K10TMモンモリロナイトなど、Flukaから商業的に入手可能である)を用いることによって提供されることができる。他の例には、Clarion470TMまたはClarion550TM(American Colloid Companyから商業的に入手可能である)が含まれることができる。好ましくは、クレーは、固体であることができ、かつ粉末形態で用いられることができる。
【0029】
より一般的には、酸価約0.1mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する触媒が用いられることができる。好ましくは、酸価は、約5mg/gKOH〜約30mg/gKOHであることができる。この酸価の尺度とは、クレーの酸値を中和するのに必要とされるKOHの量をいう。他の実施形態においては、酸価は、少なくとも約0.1mg/gKOH、例えば少なくとも約0.5mg/gKOH、少なくとも約2.5mg/gKOH、少なくとも約5mg/gKOH、または少なくとも約10mg/gKOHであることができる。加えてまたは別に、酸価は、約30mg/gKOH以下、例えば約25mg/gKOH以下、または約20mg/gKOH以下であることができる。好ましくは、触媒は、クレーまたはゼオライトの粉末または樹脂ビーズなどの固体からなる。より好ましくは、触媒は、クレーまたはゼオライトの粉末である。触媒が固体からなる実施形態においては、固体の比表面積は、少なくとも約40m/g、例えば少なくとも約100m/g、または少なくとも約200m/gであることができる。加えてまたは別に、固体の比表面積は、約350m/g以下、例えば約300m/g以下、または約250m/g以下であることができる。一つの好ましい実施形態においては、固体触媒の表面積は、約200m/g〜約300m/gであることができる。
【0030】
いくつかの条件下では、Nafion(登録商標)メンブラン(DuPontから商業的に入手可能である)などの膜がまた、使用可能であることがある。Nafion(登録商標)は、スルホネート基を含有するテトラフロオロエチレンコポリマーである。しかし、より過酷な条件下(温度約200℃超など)では、Nafion(登録商標)メンブランは、用いるのに適切であるのに、十分な安定性を有しないことがある。
【0031】
反応の環境
種々の実施形態においては、反応は、好ましくは、連続流式環境とは対照的に、バッチ式環境で行われる。反応槽は、オートクレーブ、または槽の内容物へ熱を供給することが可能であり、かつ高圧で運転可能な他の槽であることができる。好ましくは、反応槽には、撹拌機構が含まれることができる。従来の撹拌方法は、当業者に知られている。
【0032】
実施形態においては、酸触媒およびアルコキシ基素材(例えば、クレーおよびアルコール)は、反応槽に導入され、次いで混合および加熱されることができる。トリグリセリドを含むバイオ成分原料(植物油など)が、次いで、反応槽に導入されることができる。トリグリセリド原料は、一定時間に亘って付加されて、より完全な反応を可能とすることができる。反応生成物は、次いで、ろ過されて、例えばクレー触媒が除去されることができる。反応生成物は、次いで、気化されて、例えば過剰なアルコールが除去されることができ、主に脂肪酸アルキルエステル生成物が残される。別に、アルコールおよびバイオ成分原料は、同時にまたは他の好都合な順序で、反応槽へ添加することができる。
【0033】
触媒およびアルコキシ素材の初期加熱中の温度は、好都合には、トリグリセリド原料との反応に選択される温度と類似であることができる。温度は、約130℃〜約250℃、または好ましくは約200℃以上であることができる。他の実施形態においては、温度は、少なくとも約130℃、例えば少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、または少なくとも約220℃であることができる。加えてまたは別に、温度は、約275℃以下、例えば約250℃以下、または約225℃以下であることができる。圧力は、約50psig〜約400psig(約350kPag〜約2.8MPag)であることができる。種々の実施形態においては、圧力は、少なくとも約50psig(約350kPag)、例えば少なくとも約75psig(約520kPag)、または少なくとも約100psig(約690kPa)であることができる。加えてまたは別に、圧力は、約400psig(約2.8MPag)以下、例えば約300psig(約2.1MPag)以下、約250psig(約1.7MPag)以下、または約200psig(約1.4MPag)以下であることができる。
【0034】
実施形態においては、反応圧力は、反応で用いられるアルコールの蒸気圧に基づいて決定されることができる。例えば、メタノールの蒸気圧(約150℃)は、約220psi(約1.5MPa)である。他の実施形態においては、全反応圧力は、反応における個々の液体成分の蒸気圧とは異なって設定されることができる。
【0035】
反応時間は、条件および反応体に従って、約0.5〜約8時間で異なることができる。他の実施形態においては、反応時間は、少なくとも約0.5時間、例えば少なくとも約1時間、または少なくとも約2.5時間であることができる。加えてまたは別に、反応時間は、約7時間以下、例えば約6時間以下、約5時間以下、または約4時間以下であることができる。反応の進行を追跡する一つの方法は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、1070cm−1〜約1210cm−1の範囲にあるエーテルピークを監視することであることができる。
【0036】
反応が、十分におよび/または実質的に完了した後、望ましい生成物は、任意の好都合な方法によって、アルコールおよび酸性固体から分離されることができる。例えば、クレーまたはゼオライトの粉末は、ろ過によって、生成物から分離されることができる。酸性固体は、次いで、アルコールですすがれて、依然として固体中に残存するあらゆる生成物が、洗浄されて除かれることができる。すすぎアルコールは、生成物へ添加される。生成物は、次いで、任意の好都合な方法(蒸留など)によってアルコールから分離されることができる。例えば、アルコールは、典型的には、沸点約100℃未満を有するであろうし、一方生成物は、好都合には、ディーゼル範囲(約175℃〜約350℃、好ましくは少なくとも約230℃)で沸騰することができる。
【0037】
反応生成物
種々の実施形態においては、得られる生成物は、飽和非アルコキシル化脂肪酸に比較して、向上された低温特性を有することができ、一方また低減された重合傾向を有する。低温特性の例には、限定されることなく、くもり点および流動点が含まれることができる。
【0038】
実施形態においては、トリグリセリドを含有するバイオ成分原料を、適切な酸性触媒の存在下でアルコールと反応させることにより、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルの混合物がもたらされることができる。製造されるアルコキシル化エステルの混合物の性質は、いくつかの因子にしたがうことができる。第一に、元のトリグリセリド中の三つの炭素鎖テールのいかなる相違も、一般には、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルの脂肪酸部分において、対応する相違をもたらすであろう。トリグリセリドとの炭素鎖の相違は、特定タイプの原料における相違(大豆油、パーム油、タロー油脂等に存在する炭素鎖の相違など)によることができる。相違はまた、異なるタイプのバイオ成分原料のブレンドを用いることによることもある。
【0039】
アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルの変型の他の原因は、炭素鎖中のいずれかの二重結合のアルコキシル化によることがある。いくつかの変型は、アルコキシ基がオレフィン結合に関与するいずれの炭素へ付加されることができるかによる、位置的な変型であろう。立体効果が、特定の炭素位置の付加、または特定の立体化学における付加を表さない限り、アルコキシ基の付加は、異なる炭素位置で統計学的に置換される異性体、および恐らくは立体異性体の製造をもたらすに違いない。脂肪酸エステルのほんの部分的なアルコキシル化が生じる場合には、完全にアルコキシル化される脂肪酸アルキルエステル/いくつかのオレフィン結合を依然として含有するものとの間の相違が、また存在することができる。
【0040】
種々の実施形態においては、反応によって製造される脂肪酸アルキルエステルは、トリグリセリド反応体の初期の炭素鎖のオレフィン結合の数に関して、反応中にアルコキシル化されるオレフィン結合の数によって特徴付けられることができる。反応体のオレフィン結合の数に関しては、オレフィン結合の少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、アルコキシル化されることができる。オレフィン結合の少なくとも約95%が、アルコキシル化される(好ましくは少なくとも約98%、または少なくとも約99%)実施形態においては、反応生成物は、実質的にアルコキシル化されているとみなされることができる。
【0041】
上記される方法に従って製造される、少なくとも部分的にアルコキシル化された脂肪酸アルキルエステルは、他のプロセスによって形成される脂肪酸アルキルエステルに関して、種々の利点を有することができる。脂肪酸アルキルエステルのオレフィン結合位置でのアルコキシ基の付加は、低温流動特性の向上をもたらすことができる。オレフィン部位でのアルコキシ基の付加はまた、オレフィンの消滅をもたらし、従って重合によるガム形成の可能性が低減される。
【0042】
好ましくは、エステル交換およびアルコキシル化に用いられるアルコールは、第一級アルコールである。メタノール、エタノール、またはn−プロパノールなどである。より長い炭素鎖を有するアルコールもまた、潜在的には、用いられることができるであろう。しかし、炭素約7個より大きな側鎖を脂肪酸アルキルエステルへ付加することは、より低い燃料揮発性およびより低いセタン価をもたらすことができる。
【0043】
低温特性の向上可能性のタイプの例としては、種々のタイプの分子の間の比較がなされることができる。有機分子をオレフィン結合においてアルコキシル化することは、分枝を分子へ加えることに類推されることができる。メチル分枝が、オレフィン結合で付加される場合には、オレフィンの除去は、炭素数を変化させず、一方メチル基の付加は、基当りに炭素1個を加える。従って、比較の一つのタイプは、C18分子(飽和または不飽和のいずれも)、および分枝を含むより高級な炭素数を有する対応する分子の間の相違を比較することであろう。
【0044】
例としては、C18非分枝アルカンは、くもり点約31℃を有することができる。一つのメチル分枝が、C18アルカンに付加される(従って、全炭素19個を有するアルカンが作製される)場合には、くもり点は、恐らくは約−59℃である。2つのメチル分枝が、C18アルカンに付加される(従って、全炭素20個を有するアルカンが作製される)場合には、くもり点は、恐らくは約−65℃である。従って、炭素が鎖に付加されているとしても、鎖中の分枝の存在は、くもり点の低下約90℃(一分枝)または約95℃(二分枝)をもたらす。本明細書に記載されて示されるくもり点の低下は、アルカンに対するものであるものの、類似の低下は、脂肪酸アルキルエステルに対して、恐らくは観察される。従って、実施形態においては、本請求発明のアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルは、対応する飽和脂肪酸アルキルエステルのくもり点より、少なくとも50℃低いくもり点を有することができる。例えば、少なくとも約75℃低いか、または少なくとも約85℃低い。
【0045】
飽和/不飽和脂肪酸に関して、ステアリン酸メチルは、炭素18個の主鎖および一炭素エステルを有する飽和脂肪酸エステルである。ステアリン酸メチルの流動点は、約40℃である。リノール酸メチルはまた、C18主鎖および一炭素エステルを有する。しかし、鎖には、2つのオレフィン結合が含まれる。リノール酸メチルの流動点は、約−35℃である。従って、2つのオレフィン結合を含むことにより、流動点の低下約75℃がもたらされる。これらのC18脂肪酸エステルのくもり点は、類似の方法で比較すべきであると考えられる。明確のために、脂肪酸エステル分子が「Cxx」脂肪酸エステルとして特定される場合には、意味されることは、「xx」が、エステルの炭素側鎖(即ち主鎖)上の炭素数であり、二個の酸素原子に結合されるカルボン酸炭素が含まれることである。但し、エステル炭素は、「Cxx」に含まれず、エステルの酸素側鎖(即ちエステル鎖)上の炭素であり、カルボキシレート酸素で終わる。
【0046】
上記の例に基づいて、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルはまた、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルの低温特性に類似か、またはそれより良好な低温特性を有すると予想される。更に、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルは、オレフィン結合部位で付加される炭素により、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルより少ない炭素を有するであろう。しかし、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルはまた、類似の不飽和脂肪酸アルキルエステルに比較して、向上された安定性の利点を有する傾向がある。実施形態においては、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルは、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルのくもり点より少なくとも約5℃低い、例えば少なくとも約10℃低い、少なくとも約15℃低い、または少なくとも約20℃低いくもり点を示す。
【0047】
上記の比較は、対応する分子の低温特性の比較に焦点を合わせている。しかし、多くのタイプのバイオ成分原料については、原料は、飽和および不飽和脂肪酸の混合物から構成されることができる。これらの原料が、本発明の実施形態に従って用いられる場合には、得られる脂肪酸アルキルエステルは、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルおよび飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物であることができる。
【0048】
脂肪酸アルキルエステルの混合物のくもり点特性は、典型的には、特定の混合物によるであろう。典型的なバイオ成分原料素材は、不飽和分子約10wt%〜約90wt%を含有することがあろう。より少量の不飽和分子を含有する混合物については、本発明のくもり点低下の利点は、対応して、より少ないと考えられる。実施形態においては、本発明の実施形態に従って製造される、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルおよび飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物は、不飽和および飽和脂肪酸アルキルエステルの対応する混合物のくもり点より、少なくとも約2℃低い、例えば少なくとも約5℃低い、少なくとも約7℃低い、少なくとも約10℃低い、少なくとも約15℃低い、または少なくとも約20℃低いくもり点を有することができる。他の実施形態においては、本発明の実施形態に従って製造されるアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルおよび飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物は、飽和脂肪酸アルキルエステルの対応する混合物のくもり点より、少なくとも約5℃低い、例えば少なくとも約15℃低い、少なくとも約25℃低い、または少なくとも約35℃低いくもり点を有することができる。
【0049】
加えてまたは別に、本発明には、次の実施形態が含まれる。
【0050】
実施形態1
ディーゼル沸点範囲生成物を製造するための方法であって、本方法は、バッチ式反応器において、グリセリド少なくとも約50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価約0.1mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、約7個以下の炭素を有するアルコールへ曝露する工程と、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルをアルコールから分離して、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル生成物が形成され、その際脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも2℃低いくもり点を有する工程とを含む。
【0051】
実施形態2
ディーゼル沸点範囲生成物を製造するための方法であって、本方法は、バッチ式反応器において、トリグリセリド少なくとも約50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価約5mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する固体触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、4個以下の炭素を有するアルコールへ曝露し、その際効果的な条件には、少なくとも約350kPagの圧力および少なくとも約200℃の温度が含まれる工程と、固体触媒をアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルから分離する工程と、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルをアルコールから分離して、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル反応生成物が形成され、その際脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも5℃低いくもり点を有する工程とを含む。
【0052】
実施形態3
触媒は、固体である実施形態1の方法。
【0053】
実施形態4
更に、固体触媒を、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルから分離する工程を含む実施形態2の方法。
【0054】
実施形態5
触媒は、酸価約5mg/gKOH〜約30mg/gKOHを有する実施形態1,3、または4の方法。
【0055】
実施形態6
触媒は、比表面積約40m/g〜約300m/g、例えば約200m/g〜約300m/gを有する先の実施形態のいずれかの方法。
【0056】
実施形態7
効果的な条件には、圧力約350kPag〜約2.8MPagおよび温度約130℃〜約250℃が含まれる先の実施形態のいずれかの方法。
【0057】
実施形態8
バイオ成分原料は、触媒の存在下で約1〜約5時間、アルコールへ曝露される先の請求項のいずれかの方法。
【0058】
実施形態9
温度は、少なくとも約200℃であるか、圧力は、少なくとも約690kPaであるか、またはその両方である実施形態8または実施形態9の方法。
【0059】
実施形態10
バイオ成分原料には、グリセリド少なくとも約90wt%が含まれる先の実施形態のいずれかの方法。
【0060】
実施形態11
原料材は、唯一グリセリドから構成される先の実施形態のいずれかの方法。
【0061】
実施形態12
反応生成物には、異なる炭素原子数を有するアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルが含まれる先の実施形態のいずれかの方法。
【0062】
実施形態13
反応生成物には、異なるアルコキシ基数を有するアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルが含まれる先の実施形態のいずれかの方法。
【0063】
実施形態14
脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも7℃低い、好ましくは少なくとも10℃低いくもり点を有する先の実施形態のいずれかの方法。
【0064】
実施形態15
前記バイオ成分原料には、グリセリド、および/または不飽和炭素鎖を有する脂肪酸約10wt%〜約85wt%が含まれ、その際グリセリドは、好ましくはトリグリセリドを含む先の実施形態のいずれかの方法。
【0065】
提案される実施例
1リットルの撹拌タンクオートクレーブに、K10TMモンモリロナイト約100gを、メタノール250mLと共に充填する。混合物を、約150℃へ加熱する。ついで、カノーラ油缶の約50gを、約1時間に亘って添加する。反応混合物を、約150℃および圧力約220psig(1.5MPag)で、約3時間〜約6時間撹拌する。反応の進行を、液体の試料(試料1gなど)を抜取り、FTIRによって分析することによって監視する。運転の完了時に、オートクレーブを、常温(凡そ20〜25℃)へ下げて冷却する。圧力は、当然に、略大気圧(約0psig)へ戻る。反応混合物を、次いでろ過する。例えば、Whitman No.1TMろ紙を通す。クレーを、メタノールで洗浄する。洗浄物および反応混合物を、減圧下に蒸発させて、過剰なアルコールを除去する。得られる生成物を、精製し、標準的技術によって分析する。
【0066】
本発明は、特定の実施形態について記載および例証されているものの、当業者は、本発明が、本明細書に必ずしも例証されない変型にも役立つことを理解するであろう。この理由から、本発明の真の範囲を決定する目的に対しては、添付される請求が、唯一参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル沸点範囲生成物を製造する方法であって、
バッチ式反応器において、グリセリド少なくとも50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価0.1mg/gKOH〜30mg/gKOHを有する触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、7個以下の炭素を有するアルコールへ曝露する工程;および
アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルをアルコールから分離して、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル生成物を形成する工程であって、脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも2℃低いくもり点を有する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ディーゼル沸点範囲生成物を製造する方法であって、
バッチ式反応器において、トリグリセリド少なくとも50wt%を含有するバイオ成分原料を、酸価5mg/gKOH〜30mg/gKOHを有する固体触媒の存在下で、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルを製造するのに効果的な条件下に、4個以下の炭素を有するアルコールへ曝露する工程であって、効果的な条件には、少なくとも350kPagの圧力および少なくとも200℃の温度が含まれる工程;
固体触媒をアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルから分離する工程;および
アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルをアルコールから分離して、ディーゼル範囲で沸騰する脂肪酸アルキルエステル反応生成物を形成する工程であって、脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも5℃低いくもり点を有する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記触媒は、固体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体触媒を、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステルから分離する工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、酸価5mg/gKOH〜30mg/gKOHを有することを特徴とする請求項1、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、比表面積40m/g〜300m/g、例えば200m/g〜300m/gを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記効果的な条件には、350kPag〜2.8MPagの圧力および130℃〜250℃の温度が含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記バイオ成分原料は、触媒の存在下で1〜5時間、アルコールへ曝露されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記温度が少なくとも200℃であるか、前記圧力が少なくとも690kPaであるか、またはその両方であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオ成分原料には、グリセリド少なくとも90wt%が含まれることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記原料材は、単一のグリセリドから構成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記反応生成物には、異なる炭素原子数を有するアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルが含まれることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記反応生成物には、異なるアルコキシ基数を有するアルコキシル化脂肪酸アルキルエステルが含まれることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記脂肪酸アルキルエステル反応生成物は、対応する不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する反応生成物のくもり点より、少なくとも7℃低い、好ましくは少なくとも10℃低いくもり点を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記バイオ成分原料には、グリセリドおよび/または不飽和炭素鎖を有する脂肪酸10wt%〜85wt%が含まれ、
前記グリセリドは、好ましくはトリグリセリドを含む
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−503947(P2013−503947A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528088(P2012−528088)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/047814
【国際公開番号】WO2011/029000
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】